(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態における移動式型枠装置の概略構成を示す。尚、
図1の左右半部は、それぞれ、トンネル軸方向における異なる位置でのトンネルの横断面を示す。特に、
図1の左半部は、移動式型枠装置を切羽側(妻側)から見たトンネルの横断面図である。
図2は
図1のA−A断面図である。
図3は
図1のB−B断面図である。尚、本実施形態において、トンネル覆工進行方向とは、トンネル軸方向に沿って、坑口側(ラップ側)から切羽側(妻側)に向かう方向を意味する。また、以下の説明では、トンネル幅方向が左右方向(横方向)に対応する。
【0016】
移動式型枠装置1は、吹付コンクリート2により一次覆工された山岳トンネルの坑内に配置されている。
移動式型枠装置1は、トンネルの底面3上をトンネル軸方向に走行可能な門型の移動台車(ガントリー)4と、ガントリー4をその上方より覆うように配置されるアーチ状のウォール52と、ガントリー4及びウォール52をそれらの上方より覆うように配置され得るアーチ状の型枠5と、ウォール52(特に、後述する側ウォール52b)に固定されて型枠5の内周面の側部(左右両側部)に当接可能な受け部材100とを備える。ウォール52はガントリー4と型枠5との間に位置可能である(後述する
図8(イ)参照)。
【0017】
ガントリー4は、トンネル軸方向に所定の長さを有しており、その前後端(トンネル軸方向端)の脚部41の下端には、トンネル底面3上に敷設されたレール42上を移動する自走装置43が設けられている。ここで、レール42はトンネル軸方向に所定の長さで延在している。尚、本実施形態では、ガントリー4は、自走装置43により走行するが、走行形態はこれに限らず、例えば、ガントリー4は、電動ウインチ等の牽引装置によって牽引されて走行するように構成されてもよい。
また、ガントリー4のトンネル軸方向の中間に位置する複数の脚部44にはそれぞれ下端に補助ジャッキ45が設けられている。補助ジャッキ45は、ガントリー4の停止時にガントリー4の移動を制限するものである。
【0018】
ガントリー4の断面門型形状の内方には、トンネル軸方向に作業車両(例えばずり出しトラック)が容易に通過できるように、内部空間46が形成されている。
ガントリー4には、送風用の風管47と、トンネル掘削ずり搬出用の連続ベルコン装置(図示せず)と、作業足場(図示せず)とが設けられている。尚、本実施形態では連続ベルコン装置が設置されているが、連続ベルコン装置が設置されない場合もある。作業足場は、コンクリートの打設作業時やフォームの着脱作業時等に使用される。このように、覆工コンクリートの作業場所は設備が複雑に配置されている。
また、ガントリー4には、覆工用のコンクリートを圧送するための配管(図示せず)が設けられており、これら配管の先端部は、それぞれ、型枠5に設けられた打設孔(図示せず)に案内されている。
【0019】
型枠5(後述するフォーム51)は、吹付コンクリート2の内周面(トンネル内周面)との間にコンクリート打設用の空間Sを形成する。
型枠5は、トンネル軸方向に所定幅(例えば1.5m幅)を有するアーチ状のフォーム51をトンネル軸方向に複数(例えば7個)互いに連結して1スパン(例えば10.5m)として構成されている。尚、フォーム51の幅はこれに限らない。また、型枠5の1スパン当たりのフォーム51の個数はこれに限らない。
【0020】
フォーム51は、頂部に位置する天端フォーム51aと、天端フォーム51aの両端にヒンジ機構を介して枢支された側フォーム51bと、側フォーム51bの下端にヒンジ機構を介して枢支された下端フォーム51cと、を備える。換言すれば、フォーム51は、トンネル周方向に直列に5つの小フォーム(1つの天端フォーム51aと、2つの側フォーム51bと、2つの下端フォーム51cと)に分割されて、隣接する小フォーム同士がヒンジ機構を介して互いに連結されている。尚、本実施形態では、フォーム51は、トンネル周方向に直列に5つの小フォームに分割されているが、分割の個数はこれに限らない。
【0021】
天端フォーム51a、側フォーム51b、及び下端フォーム51cは各々が弧状に延びている。天端フォーム51a、側フォーム51b、及び下端フォーム51cは各々が箱型の鋼製フォームであり、トンネル内周面に対向する側で閉口し、トンネル内方に向かう側で開口している。この箱型の鋼製フォームは、トンネル周方向に延びて所定の長さを有する弧状のウェブ51wを含んで構成されている。ここで、側フォーム51bについては、ウェブ51wのトンネル内方側端部にフランジ部51t(
図3参照)が設けられている。つまり、側フォーム51bのトンネル内方側端部にフランジ部51tが設けられている。尚、フランジ部51tのうちトンネル内方に向かう側の表面が、本発明の「型枠の内周面の側部」に対応する。また、型枠5の1スパンにおいて、複数のウェブ51wが、トンネル軸方向に互いに間隔を空けて配置されている。
【0022】
本実施形態では、型枠5の1スパンにおいて、複数(
図2及び
図3では8本)のウォール52が、トンネル軸方向に互いに間隔を空けて配置されている。尚、ウォール52の本数は8本に限らない。
ウォール52は、頂部に位置する天端ウォール52aと、天端ウォール52aの両端にヒンジ機構を介して枢支された側ウォール52bとを備える。換言すれば、ウォール52は、トンネル周方向に直列に3つの小ウォール(1つの天端ウォール52aと、2つの側ウォール52bと)に分割されて、隣接する小ウォール同士がヒンジ機構を介して互いに連結されている。側ウォール52bは、その上端部が天端ウォール52aに枢支されている。尚、本実施形態では、ウォール52は、トンネル周方向に直列に3つの小ウォールに分割されているが、分割の個数はこれに限らない。
【0023】
天端ウォール52a及び側ウォール52bは、それぞれ、外フランジ(トンネル径方向外側のフランジ)、内フランジ(トンネル径方向内側のフランジ)、及びウェブからなるH形断面を有し、トンネル周方向に延びて所定の長さを有する弧状の鋼材により構成される。すなわち、天端ウォール52a及び側ウォール52bは弧状である。天端ウォール52a及び側ウォール52bはトンネル軸方向に所定の長さ(幅)を有する。天端ウォール52a及び側ウォール52bは枠体であり得る。
【0024】
天端ウォール52aには、トンネル幅方向に延在する横ビーム61が接続されている。横ビーム61は、その両端が、天端ウォール52aの左右両下端部に接続している。それゆえ、横ビーム61は、その両端にて、天端ウォール52aを支持する。
本実施形態では、トンネル軸方向に互いに間隔を空けて配置される複数のウォール52の各々に対応するように、複数の横ビーム61が、トンネル軸方向に互いに間隔を空けて配置されている。
【0025】
複数の横ビーム61上には、トンネル軸方向に延びる所定長さ(例えば1スパン分の長さ)の一対の縦ビーム62,62が設置されている。縦ビーム62は、例えば、上フランジ、下フランジ、及びウェブからなるH形鋼材により構成される。
【0026】
天端ウォール52aが固定された横ビーム61は、ガントリー4に複数設けられたジャッキ(例えば油圧ジャッキ)55によって昇降可能に支持されている。従って、天端ウォール52aは、横ビーム61及びジャッキ55を介して、ガントリー4に連結されている。また、ジャッキ55によって本発明の「昇降装置」の機能が実現される。また、ジャッキ55は上下方向に伸縮自在である。
【0027】
受け部材100は、梁部材101と桁部材102とにより構成されている。
梁部材101は、トンネル軸方向に延在している。梁部材101は例えばH形鋼材により構成される。梁部材101は側ウォール52bに固定されている。
【0028】
梁部材101のトンネル径方向外側には桁部材102が固定されている。桁部材102のトンネル径方向外側の表面は、型枠5の内周面の側部(フランジ部51tのうちトンネル内方に向かう側の表面)に沿う形状をなしている。それゆえ、桁部材102の当該表面は型枠5の内周面の側部(フランジ部51tのうちトンネル内方に向かう側の表面)に面接触可能である。従って、桁部材102は、その一側が梁部材101に固定されており、他側が型枠5の内周面の側部(フランジ部51tのうちトンネル内方に向かう側の表面)に当接可能である。
【0029】
本実施形態では、左右両側において、複数(
図1では左右各2本ずつ)の受け部材100が上下方向に(換言すれば、トンネル周方向に)互いに間隔を空けて配置されている。尚、受け部材100の本数はこれに限らない。
複数の梁部材101(受け部材100)の各々には、複数(
図3では8本)のジャッキ(例えば油圧ジャッキ)56の一端部が接続されている。ジャッキ56の他端部は、ガントリー4に接続されている。ジャッキ56はトンネル幅方向に伸縮自在である。
【0030】
側ウォール52bは、梁部材101(受け部材100)を介してジャッキ56に連結されており、ジャッキ56の伸縮によって、トンネル内外方向に移動させられる。従って、側ウォール52bは、梁部材101(受け部材100)及びジャッキ56を介して、ガントリー4に連結されている。
【0031】
伸縮自在なジャッキ57(例えば油圧ジャッキ)は、ガントリー4の脚部41,44及び下端フォーム51cに着脱可能に取付けられている。また、天端フォーム51a及び側フォーム51bは、それぞれ、後述するフォーム引き寄せジャッキ70を用いて、縦ビーム62及び梁部材101と一体化され得る。従って、フォーム51が縦ビーム62及び梁部材101と一体化されている場合には、フォーム51は、ジャッキ55〜57の伸縮によって、吹付コンクリート2の内周面(トンネル内周面)との間に空間Sを形成する展開状態と、この展開状態よりもトンネル径方向に小さい縮径状態とに変形可能である(すなわち、展開・縮径することができる)。
【0032】
尚、フォーム51の縮径度合いが大きい場合には、ジャッキ57を取り外して下端フォーム51cを図示しないチェーンブロック等で吊り上げることで、下端フォーム51cのトンネル底面3への接触を防止することができる(後述する
図9参照)。
【0033】
一方、ウォール52は、ジャッキ55,56の伸縮によって、横ビーム61及び梁部材101を介して、フォーム51の展開状態に追従した展開状態と、この展開状態よりもトンネル径方向に小さい縮径状態とに変形可能である(すなわち、展開・縮径することができる)。
【0034】
ここにおいて、移動式型枠装置1は、ジャッキ55,56、横ビーム61、及び、ウォール52を含む連結手段150を備えている。連結手段150は、受け部材100をガントリー4に連結するものである。
また、移動式型枠装置1は、ガントリー4に設けられて天端フォーム51a(型枠5)を昇降する昇降手段を備える。この昇降手段は、ジャッキ55、横ビーム61、縦ビーム62、及び、後述するフォーム受けジャッキ80を含む。
【0035】
移動式型枠装置1については、天端フォーム51a及び側フォーム51bがフォーム引き寄せジャッキ70を介して縦ビーム62及び梁部材101と一体化されているときに、フォーム51が展開状態であり、かつ、ウォール52が展開状態である場合には、ウォール52のうち少なくともトンネル径方向外側の部分が、フォーム51内に収容され得る(
図1参照)。すなわち、ウォール52の少なくとも一部が型枠5内に収容可能である。この収容時には、トンネル軸方向に見て、ウォール52のうち少なくともトンネル径方向外側の部分と、フォーム51のウェブ51wのうち少なくともトンネル径方向内側の部分とが重なり合う。つまり、この収容時には、トンネル軸方向に見て、ウォール52とフォーム51のウェブ51wとが少なくとも部分的に重なり合う。
【0036】
図2に示すように、各縦ビーム62上には、フォーム引き寄せジャッキ70と、フォーム受けジャッキ80と、フォーム受け部材91とが、それぞれ設けられている。
ここで、型枠5を構成する複数の天端フォーム51aについては、坑口側から切羽側へ向かって順に、7つの天端フォーム51a−1,…,51a−7が互いに連結固定されて一体化されているとして、以下説明する。
【0037】
フォーム引き寄せジャッキ70は、縦ビーム62上のトンネル軸方向の複数箇所(例えば4箇所)に設けられている。尚、
図2では、天端フォーム51a−1,51a−3,51a−5,51a−7が、それぞれ、フォーム引き寄せジャッキ70によって縦ビーム62に連結される例を示しているが、フォーム引き寄せジャッキ70の配置はこれに限らない。
【0038】
図4は、
図2の部分Cの部分拡大図であり、天端フォーム51a−3と縦ビーム62とを連結するフォーム引き寄せジャッキ70の概略構成を示す。
フォーム引き寄せジャッキ70は、例えば棒ジャッキであり、ターンバックルのように伸縮自在である。フォーム引き寄せジャッキ70は、その一端部のヒンジ部71を介して、縦ビーム62に起立・倒伏自在に枢支されている。フォーム引き寄せジャッキ70の他端部には、フック部72が予め形成されている。
【0039】
天端フォーム51a−3の箱型内面にはベース部材73が懸垂固定されている。ベース部材73は、フォーム引き寄せジャッキ70のフック部72が係合可能な構成となっている。
天端フォーム51a−1,51a−5,51a−7と縦ビーム62とをそれぞれ連結するフォーム引き寄せジャッキ70についても、
図4に示すフォーム引き寄せジャッキ70と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0040】
図3に示すように、各梁部材101にはフォーム引き寄せジャッキ70が設けられている。ここで、型枠5を構成する複数の側フォーム51bについては、坑口側から切羽側へ向かって順に、7つの側フォーム51b−1,…,51b−7が互いに連結固定されて一体化されているとして、以下説明する。
【0041】
フォーム引き寄せジャッキ70は、梁部材101におけるトンネル軸方向の複数箇所(例えば4箇所)に設けられている。尚、
図3では、側フォーム51b−1,51b−3,51b−5,51b−7が、それぞれ、フォーム引き寄せジャッキ70によって梁部材101に連結される例を示しているが、フォーム引き寄せジャッキ70の配置はこれに限らない。
【0042】
側フォーム51b−1,51b−3,51b−5,51b−7と梁部材101とをそれぞれ連結するフォーム引き寄せジャッキ70についても、
図4に示すフォーム引き寄せジャッキ70と同様の構成であるので、その説明を省略する。
このように、複数のフォーム引き寄せジャッキ70がトンネル周方向及びトンネル軸方向に分散配置されている(
図1〜
図3参照)。
【0043】
これら複数のフォーム引き寄せジャッキ70は、天端フォーム51a及び側フォーム51bが縦ビーム62及び梁部材101と連結されるときに起立して、フック部72がベース部材73に係合する。この係合時に、フォーム引き寄せジャッキ70を短縮することにより、フォーム51がガントリー4側に引き寄せられる(すなわち、トンネル径方向外方からトンネル径方向内方へ引き寄せられる)。このようにフォーム51がガントリー4側に引き寄せられて、側フォーム51bのフランジ部51tが受け部材100の桁部材102に面接触することにより、側フォーム51bが受け部材100に固定されて受け部材100と一体化する。すなわち、フォーム引き寄せジャッキ70が本発明の「固定装置」として機能して、型枠5の側部(側フォーム51b)を受け部材100に固定する。
【0044】
また、天端フォーム51a及び側フォーム51bと縦ビーム62及び梁部材101との連結が解除されるときには、フォーム引き寄せジャッキ70を緩めて、フック部72をベース部材73から取り外すと共に、フォーム引き寄せジャッキ70をトンネル軸方向に倒す(
図4参照)。
【0045】
尚、本実施形態では、フォーム引き寄せジャッキ70のフック部72を用いて、フォーム引き寄せジャッキ70の他端部とベース部材73とを固定する例を説明したが、この他、止めピン等の金具を用いて、フォーム引き寄せジャッキ70の他端部とベース部材73とを固定してもよい。
【0046】
図2に戻り、フォーム受けジャッキ80は、縦ビーム62上のトンネル軸方向の複数箇所(例えば2箇所)に設けられている。尚、
図2では、天端フォーム51a−2,51a−6が、それぞれ、フォーム受けジャッキ80によって支持され得る例を示しているが、フォーム受けジャッキ80の配置はこれに限らない。
【0047】
図5は、フォーム受けジャッキ80の作動状態を示す図であり、
図2のD−D断面に対応している。
図5(a)は、フォーム受けジャッキ80が伸長して天端フォーム51a−6を支持している状態を示す。
図5(b)は、フォーム受けジャッキ80が短縮して、天端フォーム51a−6を支持していない状態を示す。
【0048】
フォーム受けジャッキ80は、例えば手動式のジャーナルジャッキであり、その基端部80aが縦ビーム62上に固定されて立設されている。フォーム受けジャッキ80は、鉛直方向に伸縮可能である。フォーム受けジャッキ80の先端部には、凸状部材81が取り付けられている。凸状部材81は、切羽側から見て上方に向かって先細のテーパ状をなしている。すなわち、フォーム受けジャッキ80については、その上端に、凸状部材81によって、凸部が形成されている。
天端フォーム51a−6の箱型内面にはブロック形状のフォーム側位置合わせ部材82が懸垂固定されている。フォーム側位置合わせ部材82の下面には、切羽側から見て下方に向かうほど幅広になる略V字形断面(換言すれば漏斗状断面)を有する凹部83が形成されている。
【0049】
ここで、凸状部材81と、フォーム側位置合わせ部材82の凹部83とについては、凸状部材81の上端部81aがフォーム側位置合わせ部材82の凹部83の上端部83aに接触しているときに、ガントリー4のトンネル幅方向でのセンター位置(基準位置)と、フォーム51のトンネル幅方向でのセンター位置(基準位置)とが一致するように、適宜配置されている。
尚、天端フォーム51a−2を支持し得るフォーム受けジャッキ80についても前述のフォーム受けジャッキ80と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0050】
図2に戻り、フォーム受け部材91は、縦ビーム62上のトンネル軸方向の複数箇所(例えば2箇所)に設けられている。尚、
図2では、天端フォーム51a−1,51a−7が、それぞれ、フォーム受け部材91によって位置合わせされ得る例を示しているが、フォーム受け部材91の配置はこれに限らない。
【0051】
図6は、フォーム受け部材91の概略構成を示し、
図2のE−E断面に対応している。
フォーム受け部材91は、例えば、鉛直方向に沿って延在する所定長さのH形鋼材により構成され、その基端部91aが縦ビーム62上に固定されて立設されている。フォーム受け部材91の先端部には、凸状部材93が取り付けられている。凸状部材93は、切羽側から見て上方に向かって先細のテーパ状をなしている。すなわち、フォーム受け部材91については、その上端に、凸状部材93によって、凸部が形成されている。
【0052】
天端フォーム51a−7の箱型内面にはブロック形状のフォーム側位置合わせ部材92が懸垂固定されている。フォーム側位置合わせ部材92の下面には、切羽側から見て下方に向かうほど幅広になる略V字形断面(換言すれば漏斗状断面)を有する凹部94が形成されている。
【0053】
フォーム受け部材91の基端部91aから凸状部材93の上端部93aまでの高さHについては、天端フォーム51aがフォーム引き寄せジャッキ70を介して縦ビーム62に連結されるときに、凸状部材93の上端部93aが凹部94の上端部94aに接触するように、予め設定される。
また、凸状部材93と、フォーム側位置合わせ部材92の凹部94とについては、凸状部材93の上端部93aがフォーム側位置合わせ部材92の凹部94の上端部94aに接触しているときに、ガントリー4のトンネル幅方向でのセンター位置(基準位置)と、フォーム51のトンネル幅方向でのセンター位置(基準位置)とが一致するように、適宜配置されている。
尚、天端フォーム51a−1を位置合わせし得るフォーム受け部材91についても前述のフォーム受け部材91と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0054】
図1に戻り、天端フォーム51a及び側フォーム51bがフォーム受け部材91及び受け部材100によって受けられてフォーム引き寄せジャッキ70を介して一体化された状態でフォーム51及びウォール52が展開されると、フォーム51は、吹付コンクリート2の内周面(トンネル内周面)との間にコンクリート打設用の空間Sを形成する。
この空間S内にコンクリートが打設されると、このコンクリートは、フォーム51、フォーム受け部材91、縦ビーム62、受け部材100、ウォール52、横ビーム61、ジャッキ55〜57、及び、ガントリー4によって支持される。換言すれば、フォーム51は、フォーム受け部材91、縦ビーム62、受け部材100、ウォール52、横ビーム61、及び、ジャッキ55〜57を介してガントリー4に支持されて、空間S内のコンクリートを支持し得る。
【0055】
コンクリートの打設から所定期間が経過した後に、フォーム51の展開状態を維持しつつ、フォーム51をフォーム受け部材91、受け部材100、及びジャッキ57より離脱させて受け部材100を側フォーム51bから離間させる場合には、フォーム51は、コンクリートが打設された位置(コンクリート打設位置)に存置され、空間S内に打設されたコンクリートを保護する。ここで、前述の所定期間とは、打設されたコンクリートがその自重や施工中に加わる荷重に耐えられる強度(圧縮強度)に達するまでの期間であり(換言すれば、打設されたコンクリートが自立可能な強度に達するまでの期間であり)、トンネルの大きさ、形状、覆工厚さ、環境温度・湿度等の施工条件、コンクリートの成分等を考慮して予め設定される。
【0056】
コンクリートの型枠としては、一般に、鋼製のフォームや木製のコンパネ等が多く使用される。これらの型枠を用いてコンクリートを打設した場合、一定期間を経過すると、硬化したコンクリートと型枠との間には型枠を付着しようとする付着力が発生する。この付着力により、これら型枠はコンクリートに付着する。また、本実施形態のフォーム51は、アーチ状の断面を有することにより、一定の形状保持力を有する。従って、打設されたコンクリートが自立可能な強度となった後に支保手段(フォーム受け部材91及び受け部材100など)を離脱させても、フォーム51はコンクリート打設位置に存置可能である。
【0057】
次に、移動式型枠装置1を用いる覆工コンクリートの構築方法について、前述の
図1〜
図6に加えて
図7〜
図9を用いて説明する。
図7は、覆工コンクリートの構築方法を模式的に示している。
図8及び
図9は、覆工コンクリートの構築時における移動式型枠装置の作動状態を示している。
【0058】
図7において、長方形のマス目1つ分は、トンネル内周面における型枠5の1スパン分(すなわち、フォーム51の7個分)の領域に対応している。一点鎖線で示された長方形のマス目は、覆工コンクリートの構築が完了した領域である。実線で示された長方形のマス目は、1スパン分(1連分)のフォームが存在している領域である。2重実線で示された長方形のマス目は、1スパン分(1連分)のフォーム及びウォールを含む移動式型枠装置が存在している領域である。破線で示された長方形のマス目は、覆工コンクリートの構築が未だ開始されていない領域である。比較的粗いドッドで示された領域は、コンクリートの養生が完了した領域である。比較的密なドットで示された領域は、コンクリートの養生を行っている領域である。斜線で示された領域は、コンクリートの打設を行っている領域か、又は、コンクリートの打設を行って所定期間を経過していない領域である。
【0059】
図7(A)に示す各スパンをトンネル覆工進行方向に順に説明すると、スパン1,2ではそれぞれ、コンクリートの養生が完了し、脱型も完了して、覆工コンクリートの構築が完了している。スパン3では、コンクリートを打設した位置に存置されている1連分のフォーム202によって、コンクリートの養生が行われている。スパン4には、1連分のフォーム201を含む展開状態の移動式型枠装置1が配置されている。ここで、フォーム201,202は各々が前述のフォーム51と同様の構成を有している。フォーム201は、吹付コンクリート2の内周面(トンネル内周面)との間にコンクリート打設用の空間Sを形成し、この空間S内にコンクリートが打設されている(
図8(ア)参照)。ここでは、展開状態のフォーム201の内周面の側部(フランジ部51tのうちトンネル内方に向かう側の表面)を受け部材100(桁部材102のトンネル径方向外側の表面)に当接させた状態で空間S内にコンクリートが打設されている。スパン5〜8は、覆工コンクリートの構築が未だ開始されていない。
【0060】
スパン4におけるコンクリートの打設が完了した後、前述の所定期間が経過すると、
図7(B)に示すように、スパン4では、フォーム201の展開状態を維持しつつ、フォーム受け部材91、受け部材100、及びジャッキ57をフォーム201より離脱させて受け部材100を側フォーム201bから離間させ、ウォール52を縮径させ、フォーム201をコンクリート打設位置に存置させることにより、この位置のコンクリートの養生を行う(
図8(イ)参照)。そして、縮径状態のウォール52を含む移動式型枠装置1を、スパン4(フォーム201の展開位置)から、それよりトンネル覆工進行方向後方にて養生を完了したフォーム202の展開位置(スパン3)まで後進させる。この後、ウォール52を展開させてフォーム202とフォーム受け部材91及び受け部材100とを一体化する。
【0061】
ここで、フォーム202とフォーム受け部材91及び受け部材100とを一体化する手順について説明する。
まず、ジャッキ55を用いて、天端ウォール52aを含むウォール52の上昇が行われる。この上昇については、短縮状態のフォーム受けジャッキ80の凸状部材81の上端部81aがフォーム側位置合わせ部材82の凹部83の上端部83aに接触する数cm手前で停止する。
【0062】
次に、フォーム受けジャッキ80を手動で伸長して凸状部材81の上端部81aをフォーム側位置合わせ部材82の凹部83の上端部83aに接触させる(
図5(a)参照)。このフォーム受けジャッキ80の伸長時には、凸状部材81の上端部81aが、フォーム側位置合わせ部材82の凹部83の表面に沿って案内されて、フォーム側位置合わせ部材82の凹部83の上端部83aに達する。これにより、ガントリー4に対するフォーム202の位置合わせが行われる。
【0063】
次に、覆工コンクリートからのフォーム202の脱型を行う。これにより、天端フォーム202aは、フォーム側位置合わせ部材82及び凸状部材81を介して、フォーム受けジャッキ80によって支持される。それゆえ、天端フォーム202aを含むフォーム202全体が、フォーム側位置合わせ部材82及び凸状部材81を介して、フォーム受けジャッキ80によって支持される。
【0064】
次に、フォーム受けジャッキ80を手動で短縮する。このフォーム受けジャッキ80の短縮時には、フォーム受け部材91に取り付けられた凸状部材93の上端部93aが、フォーム側位置合わせ部材92の凹部94の表面に沿って案内されて、フォーム側位置合わせ部材92の凹部94の上端部94aに達する(
図6参照)。これにより、ガントリー4に対するフォーム202の位置合わせが行われる。
このようにして、天端フォーム202aを含むフォーム202がフォーム受け部材91に載置される。
【0065】
この後に、フォーム引き寄せジャッキ70を用いて、フォーム202とフォーム受け部材91及び受け部材100とを一体化する(
図2〜
図4参照)。このときには、フォーム202の側フォーム202bのフランジ部51tが受け部材100の桁部材102に面接触している。つまり、このときには、フォーム202が受け部材100に当接している。
【0066】
次に、この一体化状態でウォール52及びフォーム202を縮径させる(
図9(ウ)参照)。
次に、縮径状態のフォーム202を含む移動式型枠装置1を、トンネル覆工進行方向に前進させて、スパン4のフォーム201内を通過させて(
図9(エ)参照)、
図7(C)に示すように、フォーム201(スパン4)よりトンネル覆工進行方向前方のコンクリート打設位置(スパン5)まで移動させる。
【0067】
そして、
図7(D)に示すように、スパン5にて、前述の
図7(A)と同様に、フォーム202が、吹付コンクリート2の内周面(トンネル内周面)との間にコンクリート打設用の空間Sを形成し、この空間S内にコンクリートが打設される。尚、このときには、展開状態のフォーム202の内周面の側部(フランジ部51tのうちトンネル内方に向かう側の表面)を受け部材100(桁部材102のトンネル径方向外側の表面)に当接させた状態で空間S内にコンクリートが打設される。
以上の工程を繰り返すことにより、覆工コンクリートの構築を、トンネル覆工進行方向に進行させることができる。
【0068】
本実施形態によれば、移動式型枠装置1は、トンネル内周面へのコンクリートの打設に用いられるものである。移動式型枠装置1は、トンネル底面3上をトンネル軸方向に走行可能な門型の移動台車(ガントリー4)と、ガントリー4をその上方より覆うように配置可能であり、トンネル内周面に対向する外周面を有するアーチ状の型枠5と、型枠5の内周面の側部(側フォーム51bのフランジ部51tのうちトンネル内方に向かう側の表面)に当接可能であり、かつ、トンネル軸方向に延在する受け部材100と、受け部材100をガントリー4に連結する連結手段150と、を備える。型枠5は、トンネル内周面との間にコンクリート打設用の空間Sを形成する展開状態とこの展開状態よりもトンネル径方向に小さい縮径状態とに変形可能である。これにより、特許文献1に開示のような、型枠を支持するための支持コンクリートを予め構築する作業や、型枠と支持コンクリートとをボルトを介して固定する作業などを省略することができるので、覆工コンクリート構築時の施工効率化を実現することができる。
【0069】
また本実施形態によれば、連結手段150は伸縮自在なジャッキ56を含む。ジャッキ56の一端部が受け部材100に接続されており、ジャッキ56の他端部が移動台車(ガントリー4)に接続されている。これにより、ジャッキ56の伸縮に応じて受け部材100を移動させることができる。
【0070】
また本実施形態によれば、受け部材100は梁部材101と桁部材102とにより構成されている。梁部材101はトンネル軸方向に延在する。梁部材101にはジャッキ56の一端部が接続されている。桁部材102は、その一側が梁部材101に固定されて他側が型枠5の内周面の側部(側フォーム51bのフランジ部51tのうちトンネル内方に向かう側の表面)に当接可能である。これにより、受け部材100を簡素な構成とすることができる。
【0071】
また本実施形態によれば、桁部材102は、型枠5の内周面の側部(側フォーム51bのフランジ部51tのうちトンネル内方に向かう側の表面)に面接触可能である。これにより、受け部材100が型枠5を安定的に受けることができる。
また本実施形態によれば、ジャッキ56はトンネル幅方向に伸縮自在である。これにより、ジャッキ56の伸縮に応じて受け部材100をトンネル幅方向に移動させることができる。
【0072】
また本実施形態によれば、連結手段150は、型枠5と移動台車(ガントリー4)との間に位置可能なアーチ状のウォール52を含む(
図8(イ)参照)。ウォール52は、頂部に位置する天端ウォール52aと、天端ウォール52aの両端に枢支された側ウォール52bとを備える。側ウォール52bに受け部材100が固定されている。これにより、受け部材100が側ウォール52bと一体的に移動することができる。
【0073】
また本実施形態によれば、連結手段150は、移動台車(ガントリー4)に設けられて天端ウォール52aを昇降する昇降装置(ジャッキ55)を含む。これにより、ジャッキ55を作動させることでウォール52を昇降させることができる。
【0074】
また本実施形態によれば、複数のウォール52がトンネル軸方向に互いに間隔を空けて配置されている(
図2及び
図3参照)。これにより、隣り合うウォール52同士の間に、フォーム引き寄せジャッキ70、フォーム受けジャッキ80、及び、フォーム受け部材91を配置することができる。
【0075】
また本実施形態によれば、ウォール52の少なくとも一部が型枠5内(フォーム51内)に収容可能である。換言すれば、ウォール52の少なくとも一部が型枠5内(フォーム51内)に入り込むことが可能である。これにより、フォーム51内の空間を有効に活用することができる。尚、本実施形態では、トンネル軸方向に見て、型枠5を構成するウェブ51wとウォール52とが少なくとも部分的に重なり合うように、ウォール52の少なくとも一部が型枠5内に収容され得る。
【0076】
また本実施形態によれば、連結手段150は、上端部が枢支された弧状の側ウォール52bを含む。側ウォール52bに受け部材100が固定されている。これにより、受け部材100が側ウォール52bと一体的に移動することができる。
【0077】
また本実施形態によれば、複数の側ウォール52bがトンネル軸方向に互いに間隔を空けて配置されている(
図3参照)。これにより、隣り合う側ウォール52b同士の間に、フォーム引き寄せジャッキ70を配置することができる。
【0078】
また本実施形態によれば、側ウォール52bの少なくとも一部が型枠5内(フォーム51内)に収容可能である。換言すれば、側ウォール52bの少なくとも一部が型枠5内(フォーム51内)に入り込むことが可能である。これにより、フォーム51内の空間を有効に活用することができる。尚、本実施形態では、トンネル軸方向に見て、型枠5を構成するウェブ51wと側ウォール52bとが少なくとも部分的に重なり合うように、側ウォール52bの少なくとも一部が型枠5内に収容され得る。
【0079】
また本実施形態によれば、複数の受け部材100が上下方向に(換言すれば、トンネル周方向に)互いに間隔を空けて配置されている。これにより、隣り合う受け部材100同士の間に、配管や配線などをトンネル軸方向に沿って略直線状に配置することができるので、配管や配線などを効率良く配置することができる。
【0080】
また本実施形態によれば、移動式型枠装置1は、型枠5の側部(側フォーム51b)を受け部材100に固定する固定装置(フォーム引き寄せジャッキ70)を備える。ゆえに、フォーム受け部材91及び受け部材100がフォーム51を受けているときに、これらが相互にフォーム引き寄せジャッキ70によって固定されて一体化され得るので、空間S内へのコンクリート打設時にフォーム51に偏荷重が作用しても、当該偏荷重によるフォーム51のフォーム受け部材91及び受け部材100に対する位置ずれを抑制して、これらの一体性を良好に維持することができる。
【0081】
また本実施形態によれば、フォーム51はトンネル周方向に直列に少なくとも5つの小フォーム(1つの天端フォーム51aと、2つの側フォーム51bと、2つの下端フォーム51cと)に分割されて、隣接する小フォーム同士がヒンジ機構を介して互いに連結される。これにより、フォーム51は多関節型となるので、大断面トンネルにおける覆工コンクリートの構築時でもフォーム51の展開・縮径を良好に行うことができる。
【0082】
また本実施形態によれば、ウォール52はトンネル周方向に直列に少なくとも3つの小ウォール(1つの天端ウォール52aと、2つの側ウォール52bと)に分割されて、隣接する小ウォール同士がヒンジ機構を介して互いに連結される。これにより、ウォール52は多関節型となるので、大断面トンネルにおける覆工コンクリートの構築時でもウォール52の展開・縮径を良好に行うことができる。
【0083】
また本実施形態によれば、移動式型枠装置1を用いてトンネル内周面にコンクリートを打設して覆工コンクリートを構築する方法(覆工コンクリートの構築方法)は、展開状態の型枠5の内周面の側部(フランジ部51tのうちトンネル内方に向かう側の表面)を受け部材100に当接させた状態で空間S内にコンクリートを打設すること(
図8(ア)参照)、及び、所定期間経過後に、型枠5の展開状態を維持しつつ、受け部材100を型枠5の内周面の側部(フランジ部51tのうちトンネル内方に向かう側の表面)から離間させ、型枠5をコンクリート打設位置に存置させて、コンクリートの保護を行うこと(
図8(イ)参照)、を含む。これにより、例えば、打設から所定期間経過して自立可能な強度に達したコンクリートが、存置された型枠5によって保護されるので、型枠5から離脱された受け部材100を含む移動式型枠装置1は、次のコンクリート打設作業の準備に入ることができる。従って、覆工コンクリート構築時の施工効率化を実現することができる。また、自立可能な強度に達したコンクリートについては、存置された型枠5によって養生が十分に継続されるので、覆工コンクリートの高品質化を実現することができる。
【0084】
尚、本実施形態では、フォーム受け部材91の代わりとしてフォーム受けジャッキ80を用いてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、ガントリー4に設けられて天端フォーム51a(型枠5)を昇降する昇降手段が、ジャッキ55、横ビーム61、縦ビーム62、及び、フォーム受けジャッキ80により構成されているが、これに代えて、当該昇降手段が、上下方向に伸縮自在なジャッキ(例えば油圧ジャッキ)により構成されてもよい。このジャッキは、上端部が天端フォーム51a(型枠5)に着脱可能に接続されて、下端部がガントリー4に接続され得る。このジャッキの上端部と天端フォーム51a(型枠5)とを着脱可能に接続するために、周知の止めピン等の金具を用いてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、側ウォール52bの上端部が天端ウォール52aに枢支されているが、これに代えて、本実施形態の変形例として、側ウォール52bの上端部が横ビーム61又はガントリー4自体に枢支されてもよい。この変形例において、連結手段150は、上端部が枢支された弧状の側ウォール52bを含む。側ウォール52bに受け部材100が固定され得る。これにより、受け部材100が側ウォール52bと一体的に移動することができる。また、この変形例において、複数の側ウォール52bがトンネル軸方向に互いに間隔を空けて配置され得る。これにより、隣り合う側ウォール52b同士の間に、フォーム引き寄せジャッキ70を配置することができる。また、この変形例において、側ウォール52bの少なくとも一部が型枠5内(フォーム51内)に収容可能であることが好ましい。換言すれば、側ウォール52bの少なくとも一部が型枠5内(フォーム51内)に入り込むことが可能であることが好ましい。これにより、フォーム51内の空間を有効に活用することができる。この場合においては、トンネル軸方向に見て、型枠5を構成するウェブ51wと側ウォール52bとが少なくとも部分的に重なり合うように、側ウォール52bの少なくとも一部が型枠5内に収容され得る。
【0087】
また、本実施形態では、覆工コンクリートの構築方法として、2連分のフォーム201,202を交互にトンネル覆工進行方向に進行させる例を用いて説明したが、フォームの連数はこれに限らず、例えば、3連分のフォームを交互にトンネル覆工進行方向に進行させてもよい。この場合には、3連分のフォームのうち、1連分のフォームをコンクリート打設用とし、残りの2連分のフォームをコンクリートの養生用とすることで、養生期間を本実施形態より長くすることができるので、覆工コンクリートの更なる高品質化を実現することができる。更に、覆工コンクリートの品質を確保するためにコンクリートが自立可能な強度となる期間を経過した後も一定期間型枠を存置することが必要な場合等は、複数のフォームを移動台車により移動使用することで工期短縮を図ることができる。
【0088】
また、本実施形態では、山岳トンネルにおける覆工コンクリートの構築方法を説明したが、トンネルの形態はこれに限らず、例えばシールドトンネルにおいても、セグメントによる一次覆工体の構築の後に、移動式型枠装置1を用いて、覆工コンクリートの構築を行うことが可能である。
【0089】
また、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
尚、出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
トンネル内周面へのコンクリートの打設に用いられる移動式型枠装置であって、
トンネルの底面上をトンネル軸方向に走行可能な門型の移動台車と、
前記移動台車をその上方より覆うように配置可能であり、トンネル内周面に対向する外周面を有するアーチ状の型枠と、
前記型枠の内周面の側部に当接可能であり、かつ、トンネル軸方向に延在する受け部材と、
前記受け部材を前記移動台車に連結する連結手段と、
を備え、
前記型枠は、トンネル内周面との間にコンクリート打設用の空間を形成する展開状態と前記展開状態よりもトンネル径方向に小さい縮径状態とに変形可能である、
移動式型枠装置。
[請求項2]
前記連結手段は伸縮自在なジャッキを含み、
前記ジャッキの一端部が前記受け部材に接続されており、前記ジャッキの他端部が前記移動台車に接続されている、請求項1に記載の移動式型枠装置。
[請求項3]
前記受け部材は梁部材と桁部材とにより構成され、
前記梁部材はトンネル軸方向に延在し、
前記梁部材には前記ジャッキの一端部が接続されており、
前記桁部材は、その一側が前記梁部材に固定されて他側が前記型枠の内周面の側部に当接可能である、請求項2に記載の移動式型枠装置。
[請求項4]
前記桁部材は、前記型枠の内周面の側部に面接触可能である、請求項3に記載の移動式型枠装置。
[請求項5]
前記ジャッキはトンネル幅方向に伸縮自在である、請求項2〜請求項4のいずれか1つに記載の移動式型枠装置。
[請求項6]
前記連結手段は、前記型枠と前記移動台車との間に位置可能なアーチ状のウォールを含み、
前記ウォールは、頂部に位置する天端ウォールと、前記天端ウォールの両端に枢支された側ウォールとを備え、
前記側ウォールに前記受け部材が固定されている、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の移動式型枠装置。
[請求項7]
前記連結手段は、前記移動台車に設けられて前記天端ウォールを昇降する昇降装置を含む、請求項6に記載の移動式型枠装置。
[請求項8]
複数の前記ウォールがトンネル軸方向に互いに間隔を空けて配置されている、請求項6又は請求項7に記載の移動式型枠装置。
[請求項9]
前記ウォールの少なくとも一部が前記型枠内に収容可能である、請求項6〜請求項8のいずれか1つに記載の移動式型枠装置。
[請求項10]
前記連結手段は、上端部が枢支された弧状の側ウォールを含み、
前記側ウォールに前記受け部材が固定されている、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の移動式型枠装置。
[請求項11]
複数の前記側ウォールがトンネル軸方向に互いに間隔を空けて配置されている、請求項10に記載の移動式型枠装置。
[請求項12]
前記側ウォールの少なくとも一部が前記型枠内に収容可能である、請求項10又は請求項11に記載の移動式型枠装置。
[請求項13]
複数の前記受け部材が上下方向に互いに間隔を空けて配置されている、請求項1〜請求項12のいずれか1つに記載の移動式型枠装置。
[請求項14]
前記型枠の側部を前記受け部材に固定する固定装置を更に備える、請求項1〜請求項13のいずれか1つに記載の移動式型枠装置。
[請求項15]
請求項1〜請求項14のいずれか1つに記載の移動式型枠装置を用いてトンネル内周面にコンクリートを打設して覆工コンクリートを構築する方法であって、
展開状態の前記型枠の内周面の側部を前記受け部材に当接させた状態で前記空間内にコンクリートを打設すること、及び、
所定期間経過後に、前記型枠の展開状態を維持しつつ、前記受け部材を前記型枠の内周面の側部から離間させ、前記型枠をコンクリート打設位置に存置させて、コンクリートの保護を行うこと、
を含む、覆工コンクリートの構築方法。