特許第6720075号(P6720075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720075
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】癌のための併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20200629BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20200629BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200629BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   A61K39/395 NZNA
   A61K31/506
   A61K31/519
   A61K45/00
   A61P43/00 121
   A61K39/395 D
   A61P35/00
   A61P43/00 105
【請求項の数】8
【全頁数】72
(21)【出願番号】特願2016-516755(P2016-516755)
(86)(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公表番号】特表2016-524618(P2016-524618A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】US2014039686
(87)【国際公開番号】WO2014193898
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2017年5月10日
(31)【優先権主張番号】61/829,472
(32)【優先日】2013年5月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/873,476
(32)【優先日】2013年9月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/981,906
(32)【優先日】2014年4月21日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596129215
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Merck Sharp & Dohme Corp.
(73)【特許権者】
【識別番号】514238179
【氏名又は名称】ノヴァルティス・ファーマ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アクセル・フーズ
(72)【発明者】
【氏名】キース・ダブリュー・オーフォード
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタラマン・スリラム
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ・エム・ピンヘイロ
(72)【発明者】
【氏名】スコット・ダブリュー・エビングハウス
【審査官】 渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/019906(WO,A1)
【文献】 特表2013−508294(JP,A)
【文献】 Journal of Clinical Oncology,2012年 5月20日,30(15_suppl),3528-3528,DOI:10.1200/jco.2012.30.15_suppl.3528
【文献】 N Engl J Med.,2012年11月 1日,367(18),p.1694-1703
【文献】 高橋俊二,悪性黒色腫に対する新しい分子標的薬,癌と化学療法,2013年 1月,Vol.40, No.1,p.19-25
【文献】 MENAA, Farid,Latest Approved Therapies for Metastatic Melanoma: What Comes Next?,Journal of Skin Cancer,2013年 2月24日,Article ID 735282,p.1-10
【文献】 近藤英生ほか,抗PD−1抗体,呼吸,2013年12月,Vol.32, No.12,p.1141-1147
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 31/00
A61K 45/00
A61K 38/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ヒトPD−1抗体と、化合物A及び化合物B両方とを含む黒色腫を治療するための組み合わせ物であって、
前記化合物Aが構造(I)
【化1】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、
前記化合物Bが構造(II)
【化2】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩であり、
前記抗ヒトPD−1抗体は、配列番号21に記載のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号22に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、組み合わせ物。
【請求項2】
前記化合物Bがダブラフェニブである、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項3】
前記化合物Aがトラメチニブである、請求項1又は2に記載の組み合わせ物。
【請求項4】
前記黒色腫が、BRAF V600変異検査に陽性反応を示す進行性黒色腫である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項5】
前記黒色腫が、BRAF V600変異検査に陰性反応を示す進行性黒色腫である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項6】
前記化合物BがN−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩であり、前記化合物AがN−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項7】
前記抗ヒトPD−1抗体が、3週ごとに1回2mg/kgまたは2週間ごとに1回10mg/kgの量で投与され、前記化合物Aが、毎日1回2mgの量で投与され、前記化合物Bが、毎日2回150mgの量で投与される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項8】
静脈内投与される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物の癌を治療するための方法、及び当該治療に有用な組み合わせに関する。特に、本方法は、B−Raf阻害剤、特に、N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドもしくはその薬学的に許容可能な塩、及び/またはMEK阻害剤である、N−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドもしくはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、及びPD−1アンタゴニスト(たとえば、抗PD−1抗体もしくはその抗原結合断片、または抗PD−リガンド抗体もしくはその抗原結合断片)を含む新規の組み合わせ、同組み合わせを含む医薬組成物、ならびに当該組み合わせ及び当該組成物を、MEKの阻害及び/もしくはB−Rafの阻害及び/もしくは内因性PD−L1及び/もしくはPD−L2のPD−1への結合を阻害することが有益である状態、たとえば癌の治療に用いるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌を含む過剰増殖性疾患の有効な治療が腫瘍学分野における継続目標である。一般に、癌は、細胞分裂、分化及びアポトーシス細胞死を制御する正常なプロセスの調節解除から生じ、際限のない成長、局所増大及び全身性転移の可能性のある悪性細胞の増殖を特徴とする。正常なプロセスの調節解除には、シグナル伝達経路における異常及び正常細胞で認められるものとは異なる因子への応答が挙げられる。
【0003】
酵素の重要な大規模ファミリーは、プロテインキナーゼ酵素ファミリーである。現在、異なる既知のプロテインキナーゼが約500存在する。プロテインキナーゼは、ATP−Mg2+複合体のγ−リン酸基をアミノ酸側鎖に転移することによって、種々のタンパク質中のアミノ酸側鎖のリン酸化を触媒する働きをする。これらの酵素は、細胞内部のシグナル伝達プロセスの大部分を制御し、これによりタンパク質中のセリン、スレオニン及びチロシン残基のヒドロキシル基の可逆的リン酸化を介して、細胞の機能、成長、分化及び破壊(アポトーシス)を支配する。
【0004】
プロテインキナーゼが、シグナル伝達、転写調節、細胞運動性及び細胞分裂を含めた多くの細胞機能の重要な調節因子であることが研究により示されている。また、複数の癌遺伝子がプロテインキナーゼをコードしていることも示されており、これはキナーゼが腫瘍形成に関与していることを示唆している。これらのプロセスは、多くの場合、それぞれのキナーゼ自身が1つまたは複数のキナーゼによって調節されるという複雑に絡み合った経路によって、高度に調節されている。したがって、異常なまたは不適切なプロテインキナーゼ活性は、良性及び悪性の増殖性疾患ならびに免疫系及び神経系の不適切な活性化に起因する疾患を含めた、このような異常性キナーゼ活性に関連する疾患状態の発生をもたらし得る。プロテインキナーゼは、その生理学的関連性、多様性及び偏在性のため、生化学的研究及び医学的研究において、最も重要で、かつ広く研究されている酵素ファミリーの1つとなっている。
【0005】
酵素のプロテインキナーゼファミリ−は、通常、リン酸化するアミノ酸残基に基づいて、プロテインチロシンキナーゼとプロテインセリン/スレオニンキナーゼの2つの主要なサブファミリーに分類される。プロテインセリン/スレオニンキナーゼ(PSTK)には、環状AMP及び環状GMP依存性プロテインキナーゼ、カルシウム及びリン脂質依存性プロテインキナーゼ、カルシウム及びカルモジュリン依存性プロテインキナーゼ、カゼインキナーゼ、細胞分裂周期プロテインキナーゼなどが挙げられる。これらのキナーゼは、通常、細胞質内にあるか、おそらくはタンパク質を固定することによって、細胞の粒状画分に結合している。異常なプロテインセリン/スレオニンキナーゼ活性は、多数の病態、たとえば関節リウマチ、乾癬、敗血性ショック、骨損失、多くの癌及び他の増殖性疾患に関与しているか、その関与が疑われている。したがって、セリン/スレオニンキナーゼ及び当該キナーゼが一部を担うシグナル伝達経路は、医薬品設計にとって重要な標的である。チロシンキナーゼは、チロシン残基をリン酸化するものであり、細胞制御において同じく重要な役割を果たす。これらのキナーゼは、増殖因子及びホルモンなどの分子に対する複数の受容体を含み、これらには、上皮増殖因子受容体、インスリン受容体、血小板由来増殖因子受容体などが挙げられる。多くのチロシンキナーゼが、膜貫通タンパク質であり、その受容体ドメインが細胞外に位置し、キナーゼドメインが内部に位置することが研究により示されている。また、チロシンキナーゼの調節因子を特定するための多くの研究も同様に進行している。
【0006】
受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、受容体チロシンキナーゼ自身を含む種々のタンパク質中のある特定のチロシルアミノ酸残基のリン酸化を触媒し、細胞の成長、増殖及び分化を支配する。
【0007】
いくつかのRTKの下流には複数のシグナル伝達経路があり、その中にRas−Raf−MEK−ERKキナーゼ経路がある。増殖因子、ホルモン、サイトカインなどに応答したRas GTPaseタンパク質の活性化が、Rafキナーゼのリン酸化及び活性化を刺激するということが現在わかっている。次いで、これらのキナーゼは、細胞内プロテインキナーゼであるMEK1及びMEK2をリン酸化して活性化し、これが次に、他のプロテインキナーゼのERK1及び2をリン酸化して活性化する。このシグナル伝達経路は、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路または細胞質内カスケードとしても知られ、成長シグナルに対する細胞応答を媒介する。この経路の最終的機能は、細胞膜での受容体活性と、細胞の増殖、分化及び生存を支配する細胞質内または細胞核の標的の修飾とを結びつけることである。
【0008】
この経路の構成的活性化は、細胞形質転換を誘導するのに十分である。異常な受容体チロシンキナーゼ活性化、Ras変異またはRaf変異に起因するMAPキナーゼ経路の調節不全的活性化は、ヒトの癌において頻繁にみられるものであり、異常な成長制御を決定する主要因となっている。ヒトの悪性腫瘍では、Ras変異が一般的であり、癌の約30%で特定されている。GTPaseタンパク質(グアノシン三リン酸をグアノシン二リン酸に変換するタンパク質)のRasファミリーは、活性化した増殖因子受容体から下流の細胞内パートナーにシグナルを中継する。活性の膜結合Rasによって動員される標的のなかで顕著なものは、セリン/スレオニンプロテインキナーゼのRafファミリーである。Rafファミリーは、Rasの下流エフェクターとして作用する3つの関連キナーゼ(A−、B−及びC−Raf)から構成される。Rasによって媒介されるRaf活性化は、次に、MEK1及びMEK2(MAP/ERKキナーゼ1及び2)の活性化を誘発し、次いでこれがERK1及びERK2(細胞外シグナル調節キナーゼ1及び2)をチロシン185とスレオニン183でリン酸化する。活性化したERK1及びERK2は核内に移行して蓄積し、核内において、細胞の増殖及び生存を制御する転写因子を含む、種々の基質をリン酸化することができる。ヒト癌の発生におけるRas/Raf/MEK/ERK経路の重要性を考慮し、このシグナル伝達カスケードのキナーゼ成分が、癌及び他の増殖性疾患の疾患進行を調節するための重要な潜在的標的として新たに浮上している。
【0009】
MEK1及びMEK2は、種々のMAPキナーゼのスレオニン残基及びチロシン残基をリン酸化する二重特異性キナーゼ(MEK1〜7)という、より大きなファミリーのメンバーである。MEK1及びMEK2は、別個の遺伝子によってコードされているが、C末端の触媒キナーゼドメイン内と大部分のN末端調節領域の双方において、高い相同性(80%)を共有している。MEK1及びMEK2の腫瘍形成形態は、ヒト癌において認められたことはないが、MEKの構成的活性化により細胞形質転換がもたらされることが示されている。Rafに加えて、MEKも同様に、他の癌遺伝子によって活性化され得る。これまでに、MEK1及びMEK2の基質として知られているのは、ERK1及びERK2のみである。チロシン残基及びスレオニン残基の両方をリン酸化するという独特の能力に加え、この珍しい基質特異性により、MEK1及びMEK2は、シグナル伝達カスケード中で重要な位置を占めており、このシグナル伝達カスケードにより、これらのMEKタンパク質は多数の細胞外シグナルをMAPK経路に統合することが可能になっている。
【0010】
したがって、MAPKキナーゼ経路のタンパク質(たとえば、MEK)の阻害剤が、増殖性または浸潤性疾患の封じ込め及び/または治療に使用するための抗増殖性アポトーシス促進性薬剤と抗浸潤性薬剤の両方として有用であるはずだということが認識されている。
【0011】
さらに、MEK阻害活性を有する化合物がERK1/2活性の阻害及び細胞増殖の抑制を効果的に誘導すること(The Journal of Biological Chemistry,vol.276,No.4 pp.2686−2692,2001)も知られており、当該化合物が、腫瘍形成及び/または癌などの望ましくない細胞増殖によって引き起こされる疾患に効果を示すことが予想される。種々のRas GTPase及びB−Rafキナーゼにおいて、MAPK経路の持続的及び構成的活性化を招き、最終的には細胞分裂及び生存の増大をもたらし得る変異が特定されている。これらの変異は、広範囲にわたるヒト癌の確立、発生及び進行と強く関連づけられている。たとえば、黒色腫では、BRAF変異の80%超が、BRAFタンパク質の600番目に位置するアミノ酸バリン(V)のグルタミン酸(E)への置換(V600E)を生じており、黒色腫変異の約3〜20%は、600番目に位置するバリン(V)のリジン(K)への置換(V600K)である(Gorden et al.,Cancer Res(2003)63:3955−3957;Houben et al.,J Carcinog(2004)3:6;Kumar et al.,Clin Cancer Res.(2003)9:3362−3368;Libra et al.,Cell Cycle(2005)4:1382−1384;Omholt et al.Clin Cancer Res(2003)9:6483−6488。シグナル伝達におけるRafキナーゼの生物学的役割、特にB−Rafの生物学的役割は、Davies,H.,et al.,Nature(2002)9:1−6;Garnett,M.J.&Marais,R.,Cancer Cell(2004)6:313−319;Zebisch,A.&Troppmair,J.,Cell.Mol.Life Sci.(2006)63:1314−1330;Midgley,R.S.&Kerr,D.J.,Crit.Rev.Onc/Hematol.(2002)44:109−120;Smith,R.A.,et al.,Curr.Top.Med.Chem.(2006)6:1071−1089及びDownward,J.,Nat.Rev.Cancer(2003)3:11−22に記載されている。
【0012】
MAPK経路シグナル伝達を活性化するB−Rafキナーゼの自然発生変異が高い割合でヒト黒色腫(Davies(2002)同上)及び甲状腺癌(Cohen et al J.Nat.Cancer Inst.(2003)95(8)625−627及びKimura et al Cancer Res.(2003)63(7)1454−1457)で認められており、さらに、より低い割合ではあるが、有意な頻度で、以下においても認められている。
【0013】
バレット腺癌(Garnett et al.,Cancer Cell(2004)6 313−319及びSommerer et al Oncogene(2004)23(2)554−558)、胆道癌(Zebisch et al.,Cell.Mol.Life Sci.(2006)63 1314−1330)、乳癌(Davies(2002)同上)、子宮頸癌(Moreno−Bueno et al Clin.Cancer Res.(2006)12(12)3865−3866)、胆管癌(Tannapfel et al Gut(2003)52(5)706−712)、神経膠芽腫、星状細胞腫及び上衣腫などの原発性中枢神経系腫瘍(Knobbe et al Acta Neuropathol.(Berl.)(2004)108(6)467−470,Davies(2002)同上、及びGarnett et al.,Cancer Cell(2004)同上)ならびに続発性中枢神経系腫瘍(すなわち、中枢神経系外を起源にする腫瘍の中枢神経系への転移)を含めた中枢神経系腫瘍、大腸直腸癌を含む結腸直腸癌(Yuen et al Cancer Res.(2002)62(22)6451−6455,Davies(2002)同上及びZebisch et al.,Cell.Mol.Life Sci.(2006)、胃癌(Lee et al Oncogene(2003)22(44)6942−6945)、頭頸部扁平上皮癌を含む頭頸部の癌(Cohen et al J.Nat.Cancer Inst.(2003)95(8)625−627及びWeber et al Oncogene(2003)22(30)4757−4759)、白血病(Garnett et al.,Cancer Cell(2004)同上、特に急性リンパ芽球性白血病(Garnett et al.,Cancer Cell(2004)同上、及びGustafsson et al Leukemia(2005)19(2)310−312)、急性骨髄性白血病(AML)(Lee et al Leukemia(2004)18(1)170−172、及びChristiansen et al Leukemia(2005)19(12)2232−2240)、骨髄異形成症候群(Christiansen et al Leukemia(2005)同上)及び慢性骨髄性白血病(Mizuchi et al Biochem.Biophys.Res.Commun.(2005)326(3)645−651)、ホジキンリンパ腫(Figl et al Arch.Dermatol.(2007)143(4)495−499)、非ホジキンリンパ腫(Lee et al Br.J.Cancer(2003)89(10)1958−1960)、巨核芽球性白血病(Eychene et al Oncogene(1995)10(6)1159−1165)ならびに多発性骨髄腫(Ng et al Br.J.Haematol.(2003)123(4)637−645)を含めた血液癌、肝細胞癌(Garnett et al.,Cancer Cell(2004)、小細胞肺癌(Pardo et al EMBO J.(2006)25(13)3078−3088)及び非小細胞肺癌(Davies(2002)同上)を含む肺癌(Brose et al Cancer Res.(2002)62(23)6997−7000,Cohen et al J.Nat.Cancer Inst.(2003)同上、及びDavies(2002)同上)、卵巣癌(Russell&McCluggage J.Pathol.(2004)203(2)617−619及びDavies(2002)同上)、子宮内膜癌(Garnett et al.,Cancer Cell(2004)同上、及びMoreno−Bueno et al Clin.Cancer Res.(2006)同上)、膵臓癌(Ishimura et al Cancer Lett.(2003)199(2)169−173)、下垂体腺腫(De Martino et al J.Endocrinol.Invest.(2007)30(1)RC1−3)、前立腺癌(Cho et al Int.J.Cancer(2006)119(8)1858−1862)、腎臓癌(Nagy et al Int.J.Cancer(2003)106(6)980−981)、肉腫(Davies(2002)同上)ならびに皮膚癌(Rodriguez−Viciana et al Science(2006)311(5765)1287−1290及びDavies(2002)同上)。c−Rafの過剰発現は、AML(Zebisch et al.,Cancer Res.(2006)66(7)3401−3408及びZebisch(Cell.Mol.Life Sci.(2006))及び赤白血病(Zebisch et al.,Cell.Mol.Life Sci.(2006)と関連づけられている。
【0014】
これらの癌においてRafファミリーキナーゼが果たす役割と、B−Rafキナーゼ活性の阻害を選択的に標的にした薬剤を含む、ある範囲の前臨床薬及び治療薬を用いた試験研究(King A.J.,et al.,(2006)Cancer Res.66:11100−11105)によって、1つまたは複数のRafファミリーキナーゼの阻害剤が、こうした癌またはRafキナーゼに関連する他の状態の治療に有用であろうことが一般に認められている。
【0015】
B−Rafの変異はまた、心顔皮膚症候群(Rodriguez−Viciana et al Science(2006)311(5765)1287−1290)及び多発性嚢胞腎疾患(Nagao et al Kidney Int.(2003)63(2)427−437)含めた他の状態にも関係するとされている。
【0016】
プログラム細胞死1(PD−1)は、元々、アポトーシスに至るマウスT細胞株のサブトラクティブハイブリダイゼーションによって特定された50〜55kDaのI型膜貫通受容体である(Ishida et al.,1992,Embo J.11:3887−95)。CD28遺伝子ファミリーのメンバーであるPD−1は、活性化したT細胞、B細胞及び骨髄系細胞上に発現する(Greenwald et al.,2005,Annu.Rev.Immunol.23:515−48;Sharpe et al.,2007,Nat.Immunol.8:239−45)。
【0017】
2004年10月26日及び2006年9月5日にC.Wood及びG.Freemanに対してそれぞれ発行された米国特許第6,808,710号及び同第7,101,550号は、PD−1受容体のシグナル伝達を、たとえば、PD−1に結合する抗体を用いて、活性化または阻害することによって免疫反応の調節を試みるための方法を開示している。
【0018】
プライミング時のPD−1抑制シグナルを遮断することが免疫細胞応答性を減少させるという観察に基づいて、2006年4月18日にB.Carreno及びJ.Leonardに発行された米国特許第7,029,674号は、免疫細胞と、PD−1シグナル伝達を阻害する薬剤とを接触させることによって、当該細胞の活性化を低減させるための方法を開示している。さらに、米国特許第7,595,048号及び米国特許第8,168,179号は、抗PD−1抗体を用いて癌を治療するための方法を開示している。
【0019】
PD−1経路は、黒色腫及び他の腫瘍型を治療するための療法を開発する研究者にとって極めて興味深いものとなっている。PD−1受容体は、活性化T細胞の表面上に発現し、抗原提示細胞(PD−L1及びPD−L2)の表面上のリガンドに結合し、免疫応答を調節する相互作用となる。多くの癌細胞がその表面上にPD−L1を高度に発現しており、これにより、T細胞は、PD−L1とPD−1との相互作用を介して機能停止に至り、抗腫瘍応答を起こすことができなくなる。
【0020】
PD−1は、T細胞活性化を負に調節するものであり、この抑制機能は、その細胞質ドメインの免疫受容体チロシン系抑制性モチーフ(ITIM)と関連している(Greenwald et al.、同上;Parry et al.,2005,Mol.Cell.Biol.25:9543−53)。このPD−1の抑制機能の破綻が自己免疫につながり得る。たとえば、C57B1/6マウスのPD−1ノックアウトがループス様症候群に至る一方、BALB/cマウスは拡張型心筋症の発症に至る(Nishimura et al.,1999,Immunity 11:141−51;Okazaki et al.,2003,Nat.Med.9:1477−83)。ヒトでは、PD−1遺伝子座の一塩基多型が全身性エリテマトーデス、1型糖尿病、関節リウマチの高発症及び多発性硬化症の進行に関連している。逆のシナリオもまた有害な影響を及ぼし得る。PD−1による持続的な負のシグナルは、腫瘍の免疫回避及び慢性ウイルス感染症などの多くの病的状態におけるT細胞の機能障害に関係するとされている。
【0021】
宿主抗腫瘍免疫は、主として腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の影響を受ける(Galore et al.,2006,Science 313:1960−4)。複数の方面のエビデンスにより、TILがPD−1抑制性制御を受けることが示されている。第1に、PD−L1発現が多くのヒト及びマウスの腫瘍系統で確認されており、その発現はさらにIFN−γによってインビトロで上方制御され得る(Dong et al.,2002,Nat.Med.8:793−800)。第2に、腫瘍細胞によるPD−L1の発現は、インビトロでの抗腫瘍T細胞による溶解への耐性に直接関係しているとされている(Dong et al.、同上;Blank et al.,2004,Cancer Res.64:1140−5)。第3に、PD−1ノックアウトマウスは、腫瘍攻撃試験に耐性があり(Iwai et al.,2005,Int.Immunol.17:133−44)、PD−1ノックアウトマウス由来のT細胞を担腫瘍マウスに養子移入すると、腫瘍拒絶に極めて効果的である(Blank et al.、同上)。第4に、モノクローナル抗体によってPD−1抑制シグナルを遮断すると、マウスの宿主抗腫瘍免疫を高めることができる(Iwai et al.、同上;Hirano et al.,2005,Cancer Res.65:1089−96)。第5に、腫瘍における高度のPD−L1発現(免疫組織化学染色により検出)は、多くのヒト癌型の予後不良に関連している(Hamanishi et al.,2007,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104:3360−5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第6,808,710号
【特許文献2】米国特許第7,101,550号
【特許文献3】米国特許第7,029,674号
【特許文献4】米国特許第7,595,048号
【特許文献5】米国特許第8,168,179号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】The Journal of Biological Chemistry,vol.276,No.4 pp.2686−2692,2001
【非特許文献2】Gorden et al.,Cancer Res(2003)63:3955−3957
【非特許文献3】Houben et al.,J Carcinog(2004)3:6
【非特許文献4】Kumar et al.,Clin Cancer Res.(2003)9:3362−3368
【非特許文献5】Libra et al.,Cell Cycle(2005)4:1382−1384
【非特許文献6】Omholt et al.Clin Cancer Res(2003)9:6483−6488
【非特許文献7】Davies,H.,et al.,Nature(2002)9:1−6
【非特許文献8】Garnett,M.J.&Marais,R.,Cancer Cell(2004)6:313−319
【非特許文献9】Zebisch,A.&Troppmair,J.,Cell.Mol.Life Sci.(2006)63:1314−1330
【非特許文献10】Midgley,R.S.&Kerr,D.J.,Crit.Rev.Onc/Hematol.(2002)44:109−120
【非特許文献11】Smith,R.A.,et al.,Curr.Top.Med.Chem.(2006)6:1071−1089
【非特許文献12】Downward,J.,Nat.Rev.Cancer(2003)3:11−22
【非特許文献13】Cohen et al J.Nat.Cancer Inst.(2003)95(8)625−627
【非特許文献14】Kimura et al Cancer Res.(2003)63(7)1454−1457
【非特許文献15】Garnett et al.,Cancer Cell(2004)6 313−319
【非特許文献16】Sommerer et al Oncogene(2004)23(2)554−558
【非特許文献17】Zebisch et al.,Cell.Mol.Life Sci.(2006)63 1314−1330
【非特許文献18】Moreno−Bueno et al Clin.Cancer Res.(2006)12(12)3865−3866
【非特許文献19】Tannapfel et al Gut(2003)52(5)706−712
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【非特許文献21】Zebisch et al.,Cell.Mol.Life Sci.(2006)
【非特許文献22】Lee et al Oncogene(2003)22(44)6942−6945
【非特許文献23】Cohen et al J.Nat.Cancer Inst.(2003)95(8)625−627
【非特許文献24】Weber et al Oncogene(2003)22(30)4757−4759
【非特許文献25】Gustafsson et al Leukemia(2005)19(2)310−312
【非特許文献26】Lee et al Leukemia(2004)18(1)170−172
【非特許文献27】Christiansen et al Leukemia(2005)19(12)2232−2240
【非特許文献28】Mizuchi et al Biochem.Biophys.Res.Commun.(2005)326(3)645−651
【非特許文献29】Figl et al Arch.Dermatol.(2007)143(4)495−499
【非特許文献30】Lee et al Br.J.Cancer(2003)89(10)1958−1960
【非特許文献31】Eychene et al Oncogene(1995)10(6)1159−1165
【非特許文献32】Ng et al Br.J.Haematol.(2003)123(4)637−645
【非特許文献33】Garnett et al.,Cancer Cell(2004)
【非特許文献34】Pardo et al EMBO J.(2006)25(13)3078−3088
【非特許文献35】Brose et al Cancer Res.(2002)62(23)6997−7000
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【非特許文献37】Ishimura et al Cancer Lett.(2003)199(2)169−173
【非特許文献38】De Martino et al J.Endocrinol.Invest.(2007)30(1)RC1−3
【非特許文献39】Cho et al Int.J.Cancer(2006)119(8)1858−1862
【非特許文献40】Nagy et al Int.J.Cancer(2003)106(6)980−981
【非特許文献41】Rodriguez−Viciana et al Science(2006)311(5765)1287−1290
【非特許文献42】Zebisch et al.,Cancer Res.(2006)66(7)3401−3408
【非特許文献43】Zebisch(Cell.Mol.Life Sci.(2006)
【非特許文献44】Zebisch et al.,Cell.Mol.Life Sci.(2006)
【非特許文献45】King A.J.,et al.,(2006)Cancer Res.66:11100−11105
【非特許文献46】Rodriguez−Viciana et al Science(2006)311(5765)1287−1290
【非特許文献47】Nagao et al Kidney Int.(2003)63(2)427−437
【非特許文献48】Ishida et al.,1992,Embo J.11:3887−95
【非特許文献49】Greenwald et al.,2005,Annu.Rev.Immunol.23:515−48
【非特許文献50】Sharpe et al.,2007,Nat.Immunol.8:239−45
【非特許文献51】Parry et al.,2005,Mol.Cell.Biol.25:9543−53
【非特許文献52】Nishimura et al.,1999,Immunity 11:141−51
【非特許文献53】Okazaki et al.,2003,Nat.Med.9:1477−83
【非特許文献54】Galore et al.,2006,Science 313:1960−4
【非特許文献55】Dong et al.,2002,Nat.Med.8:793−800
【非特許文献56】Blank et al.,2004,Cancer Res.64:1140−5
【非特許文献57】Iwai et al.,2005,Int.Immunol.17:133−44
【非特許文献58】Hirano et al.,2005,Cancer Res.65:1089−96
【非特許文献59】Hamanishi et al.,2007,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104:3360−5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
癌治療は近年大きく進歩してきたが、癌の影響に苦しむ人に対するより効果的な治療及び/または改良された治療が依然として求められている。本発明は、この要求に応えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、癌の治療におけるB−Raf阻害剤及び/またはMEK阻害剤ならびに抗PD−1抗体もしくはその抗原結合断片の組み合わせに関する。
本発明は、各剤を単独に投与する治療よりも有利であり、MEK阻害剤とB−RAF阻害剤の組み合わせによる治療よりも有利である治療薬の組み合わせに関する。特に、B−Raf阻害剤である、N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドもしくはその薬学的に許容可能な塩、及び/またはMEK阻害剤である、N−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドもしくはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、及びPD−1アンタゴニスト(たとえば、MK−3475もしくはその抗原結合断片)を含む薬物の組み合わせについて記載する。
【0026】
本発明のMEK阻害剤は、構造(I):
【化1】
の構造またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物(本明細書において、「化合物A」と総称する)で表される。
本発明のB−Raf阻害剤は、構造(II):
【化2】
の構造またはその薬学的に許容可能な塩(本明細書において、「化合物B」と総称する)で表される。
【0027】
本発明のPD−1アンタゴニストは、PD−L1のPD−1への結合を阻害し、好ましくは、PD−L2のPD−1への結合も阻害する。好ましくは、PD−1アンタゴニストは、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であり、PD−1に特異的に結合し、PD−L1のPD−1への結合を阻止する。1つの特に好ましい実施形態において、PD−1アンタゴニストは、PD−1に結合し、PD−L1とPD−L2の両方のPD−1への結合を阻止する抗PD−1モノクローナル抗体である。
【0028】
BMS−936558及びMDX1106としても知られるニボルマブは、PD−1に結合する完全ヒト型IgG4モノクローナル抗体であり、Bristol−Myers Squibbと小野薬品工業によって癌治療用に設計されている。
【0029】
ランブロリズマブとして以前知られたMK−3475は、PD−1に結合するヒト化IgG4モノクローナル抗体であり、MerckとCoによって癌治療用に開発されている。
【0030】
本発明の第1の態様において、PD−1アンタゴニストと、化合物A及び化合物Bのうちの1つまたは両方とを含む組み合わせであって、
化合物Bが構造(II)
【化3】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩であり、
化合物Aが構造(I)
【化4】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物である、組み合わせを提供する。
【0031】
本発明の別の態様において、PD−1アンタゴニストと、化合物A及び化合物Bのうちの1つまたは両方とを含む組み合わせであって、化合物BがN−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドメタンスルホネートであり、化合物AがN−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドジメチルスルホキシド(溶媒和物)である、組み合わせを提供する。
【0032】
本発明の別の態様において、PD−1アンタゴニストと、化合物A及び化合物Bのうちの1つまたは両方とを含む、治療で使用するための組み合わせであって、
化合物Bが構造(II):
【化5】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩であり、
化合物Aが構造(I):
【化6】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物である、組み合わせを提供する。
【0033】
本発明の上記態様のいずれかのいくつかの実施形態において、本組み合わせのPD−1アンタゴニストは、抗ヒトPD−1抗体またはその抗原結合断片であり、本組み合わせは、ヒトの癌の治療にて使用するためのものである。より好ましい実施形態において、癌は黒色腫である。
【0034】
本発明の上記態様のいずれかの他の実施形態において、本組み合わせは、化合物A及び化合物Bのそれぞれを含み、PD−1アンタゴニストは、抗ヒトPD−1抗体またはその抗原結合断片であり、本組み合わせは、BRAF V600変異検査に陽性反応を示す進行性または転移性黒色腫を有するヒトの治療にて使用するためのものである。
【0035】
本発明の上記態様のいずれかのさらに他の実施形態において、本組み合わせは、化合物Bを含まず、PD−1アンタゴニストは、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片であり、本組み合わせは、BRAF V600変異検査に陰性反応を示す進行性または転移性黒色腫を有する患者の治療にて使用するためのものである。
【0036】
本発明の上記態様のいずれかのさらに他の実施形態において、本組み合わせは、化合物Aを含まず、PD−1アンタゴニストは、抗ヒトPD−1抗体またはその抗原結合断片であり、本組み合わせは、BRAF V600変異検査に陽性反応を示す進行性または転移性黒色腫を有するヒトの治療にて使用するためのものである。
【0037】
本発明の別の態様において、癌を治療するためにPD−1アンタゴニストと組み合わせて使用するための医薬組成物であって、化合物A及び/または化合物Bを、薬学的に許容可能な希釈剤または担体とともに含み、
化合物Aが構造(I)
【化7】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、
化合物Bが構造(II)
【化8】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である、医薬組成物を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、化合物A及び化合物Bのそれぞれを含み、PD−1アンタゴニストは、抗ヒトPD−1抗体またはその抗原結合断片であり、癌は、BRAF V600変異検査に陽性反応を示す進行性黒色腫である。
【0039】
他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、化合物Bを含まず、PD−1アンタゴニストは、抗ヒトPD−1抗体またはその抗原結合断片であり、癌は、BRAF V600変異検査に陰性反応を示す進行性黒色腫である。
【0040】
さらに他の実施形態において、本発明の上記医薬組成物は、化合物Aを含まず、PD−1アンタゴニストは、抗ヒトPD−1抗体またはその抗原結合断片であり、癌は、BRAF V600変異検査に陽性反応を示す進行性黒色腫である。
【0041】
本発明のさらに別の態様において、PD−1アンタゴニストを、薬学的に許容可能な希釈剤または担体とともに含む、癌を治療するために併用療法にて使用するための医薬組成物であって、併用療法が当該医薬組成物と、化合物A及び化合物Bのうちの1つまたは両方とを含み、化合物Aが構造(I):
【化9】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物であり、
化合物Bが構造(II):
【化10】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である、医薬組成物を提供する。
【0042】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物のPD−1アンタゴニストは、抗ヒトPD−1抗体またはその抗原結合断片である。
【0043】
別の態様において、癌治療のために併用するための薬剤の製造における、MK−3475またはその抗原結合断片と、化合物A及び化合物Bのうちの1つまたは両方とを含む組み合わせの使用であって、
化合物Bが構造(II)
【化11】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩であり、
化合物Aが構造(I)
【化12】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物である、使用を提供する。
【0044】
別の態様において、哺乳動物の癌を治療するための方法であって、当該哺乳動物に併用療法を施すことを含み、当該併用療法が、治療的有効量のPD−1アンタゴニストと、治療的有効量の化合物A及び治療的有効量の化合物Bのうちの1つまたは両方とを含み、
化合物Bが構造(II):
【化13】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩であり、
化合物Aが構造(I):
【化14】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物である、方法を提供する。
【0045】
別の態様において、癌治療を必要とするヒトの癌を治療するための方法であって、当該ヒトに併用療法を施すことを含み、当該併用療法が、治療的有効量のPD−1アンタゴニストと、治療的有効量の化合物A及び治療的有効量の化合物Bのうちの1つまたは両方とを含み、PD−1アンタゴニストが抗ヒトPD−1抗体またはその抗原結合断片であり、化合物BがN−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩であり、化合物AがN−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物である、方法を提供する。
【0046】
別の態様において、癌治療を必要とするヒトの癌を治療するための方法であって、PD−1アンタゴニストと、化合物A及び化合物Bのうちの1つまたは両方とを含む治療的有効量の併用療法を当該ヒトに施すことを含み、PD−1アンタゴニストが抗ヒトPD−1抗体または抗原結合断片であり、化合物BがN−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドメタンスルホネートであり、化合物AがN−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドジメチルスルホキシド溶媒和物である、方法を提供する。
【0047】
本発明のさらなる態様において、治療的有効量の本発明の組み合わせを投与することを含む、癌治療を必要とする哺乳動物の癌を治療するための方法であって、当該組み合わせが特定期間内、かつある継続時間投与される方法を提供する。
【0048】
いくつかの実施形態において、本発明の治療方法は、BRAF V600変異検査に陽性反応を示す進行性黒色腫と診断されたヒトを治療することを含み、施される併用療法は、化合物A及び化合物Bのそれぞれと、抗ヒトPD−1抗体を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、本発明の治療方法は、BRAF V600変異検査に陰性反応を示す進行性黒色腫と診断されたヒトを治療することを含み、施される併用療法は、化合物A及びPD−1アンタゴニストである抗ヒトPD−1モノクローナル抗体のそれぞれを含むが、化合物Bを含まない。
【0050】
さらに他の実施形態において、BRAF V600変異検査に陽性反応を示す進行性黒色腫と診断されたヒトを、PD−1アンタゴニストである抗ヒトPD−1モノクローナル抗体及び化合物Bのそれぞれを含むが、化合物Aを含まない併用療法を施すことによって治療する。
【0051】
本発明の上記態様のいずれかのいくつかの実施形態において、癌はヒトPD−L1発現検査に陽性反応を示すものであり、PD−L1アンタゴニストはニボルマブまたはMK−3475であり、特に好ましい実施形態において、PD−L1アンタゴニストはMK−3475であり、化合物Aはトラメチニブであり、化合物Bはダブラフェニブである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明にて有用な例示の抗PD−1モノクローナル抗体の軽鎖CDR及び重鎖CDRのアミノ酸配列を示す(配列番号1〜6)。
図2】本発明にて有用な別の例示の抗PD−1モノクローナル抗体の軽鎖CDR及び重鎖CDRのアミノ酸配列を示す(配列番号7〜12)。
図3】本発明にて有用な例示の抗PD−1モノクローナル抗体の重鎖可変領域及び完全長重鎖のアミノ酸配列を示す(配列番号13及び配列番号14)。
図4】本発明にて有用な例示の抗PD−1モノクローナル抗体の別の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す(配列番号15〜17)。
図5A】本発明にて有用な例示の抗PD−1モノクローナル抗体の別の軽鎖のアミノ酸配列を示す(配列番号18及び19)。
図5B】本発明にて有用な例示の抗PD−1モノクローナル抗体の別の軽鎖のアミノ酸配列を示す(配列番号20)。
図6】MK−3475の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を示す(それぞれ配列番号21及び22)。
図7】ニボルマブの重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を示す(それぞれ配列番号23及び24)。
図8A】マウス抗マウスPD−1抗体とトラメチニブによる併用療法と、いずれかの薬剤のみによる単剤療法との担腫瘍マウスにおける抗腫瘍作用の比較を示す。図8Aは、アイソタイプ抗体+ビヒクル(対照)、マウス抗PD−1Ab(抗PD−1)、トラメチニブまたはトラメチニブと抗PD−1の両方の同時投与による治療期間中の各日での平均腫瘍体積を示す。
図8B図8Bは、治療の初日(左のグラフ、0日)または治療の23日後(右のグラフ、23日)における、各治療群の個々のマウスの腫瘍体積値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
I.略語
本発明の詳細な説明及び実施例では、以下の略語を使用する。
BID 1日2回
CDR 相補性決定領域
CHO チャイニーズハムスター卵巣
DFS 無病生存
DTR 用量制限毒性
FFPE ホルマリン固定パラフィン包理
FR フレームワーク領域
IgG 免疫グロブリンG
IHC 免疫組織化学または免疫組織化学の
MTD 最大耐性量
NCBI 国立生物工学情報センター
NCI 国立癌研究所
OR 総合効果
OS 全生存
PD 進行性疾患
PFS 無増悪生存
PR 部分的効果
Q2W 2週間ごとに1回
Q3W 3週間ごとに1回
QD 1日1回
RECIST 固形癌の効果判定基準
SD 安定的疾患
VH 免疫グロブリン重鎖可変領域
VK 免疫グロブリンκ軽鎖可変領域
【0054】
II.定義
本発明がより容易に理解できるように、ある特定の科学技術用語を以下に特に定義する。本文書にて別途定義されない限り、本明細書で用いられるすべての他の科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通に解釈されるものと同じ意味を有する。
【0055】
本明細書で使用する場合、添付する特許請求の範囲を含め、「a」、「an」及び「the」などの単語の単数形は、文脈上で別途明記されない限り、その対応する複数形の意味を含む。
【0056】
「投与」及び「処置」は、動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官または生体液に対して適用される場合、外因性の薬剤、治療薬、診断薬または組成物の当該動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官または生体液への接触を指す。細胞の処置は、試薬の当該細胞への接触と、当該細胞が液体と接触している場合には、試薬の当該液体への接触とを包含する。「投与」及び「処置」はまた、たとえば、試薬、診断用化合物、結合化合物または別の細胞による、細胞のインビトロ及びエクスビボの処置も意味する。「対象」という用語は、あらゆる生物体を含み、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物(たとえば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)、最も好ましくはヒトである。
【0057】
本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、所望の生物学的活性または結合活性を呈する、あらゆる形態の抗体を指す。したがって、「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、限定するものではないが、具体的には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(たとえば二重特異性抗体)、ヒト化、完全ヒト抗体、キメラ抗体及びラクダ化単一ドメイン抗体を含む。「親抗体」は、抗体をヒト治療物として使用するためにヒト化するなどの使用目的に合わせた抗体修正を施す前に、免疫系を抗原にさらすことによって得た抗体である。
【0058】
一般に、基本的なモノクローナル抗体の構造単位は、四量体である。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖の対を含み、各対が1つの「軽」鎖(約25kDa)と、1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主として抗原認識を担う、約100〜110個またはそれ以上のアミノ酸からなる可変領域を含む。重鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を画定し得る。典型的に、ヒト軽鎖は、κ軽鎖とλ軽鎖に分類される。さらに、ヒト重鎖は、通常、μ、δ、γ、αまたはεに分類され、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEという抗体のアイソタイプを定義する。軽鎖及び重鎖中では、可変領域と定常領域が約12またはそれ以上のアミノ酸からなる「J」領域によって連結され、重鎖はまた約10以上のアミノ酸からなる「D」領域を含んでいる。Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989)を広く参照されたい。
【0059】
各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗原結合部位を形成する。したがって、一般的に、完全な抗体は2つの結合部位を持つ。二価抗体または二重特異性抗体を除き、2つの結合部位は通常同じである。
【0060】
典型的に、重鎖と軽鎖の両方の可変ドメインは、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる3つの超可変領域を含み、これは比較的保存的なフレームワーク領域(FR)内に位置する。CDRは通常、フレームワーク領域によって整列され、特異的エピトープに結合することができる。一般に、軽鎖と重鎖の両可変ドメインは、N末端からC末端にかけて、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の配分は、一般に、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabat,et al.;National Institutes of Health,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91−3242(1991);Kabat(1978)Adv.Prot.Chem.32:1−75;Kabat,et al.,(1977)J.Biol.Chem.252:6609−6616;Chothia,et al.,(1987)J Mol.Biol.196:901−917またはChothia,et al.,(1989)Nature 342:878−883の定義に従う。
【0061】
本明細書で使用する場合、「超可変領域」という用語は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」(すなわち、軽鎖可変ドメイン内のCDRL1、CDRL2及びCDRL3、ならびに重鎖可変ドメイン内のCDRH1、CDRH2及びCDRH3)のアミノ酸残基からなる。Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(抗体のCDR領域を配列により定義)を参照されたい。またChothia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901−917(抗体のCDR領域を構造により定義)も参照されたい。本明細書で使用する場合、「フレームワーク」または「FR」残基という用語は、本明細書にてCDR残基と定義する超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を指す。
【0062】
本明細書で使用する場合、特に指定がない限り、「抗体断片」または「抗原結合断片」とは、抗体の抗原結合断片、すなわち、その完全長抗体によって結合される抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片、たとえば1つまたは複数のCDR領域を保持している断片を指す。抗体結合断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)及びFvの各断片、ダイアボディ、直鎖抗体、単鎖抗体分子、たとえばsc−Fv、ナノボディならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
特定の標的タンパク質に「特異的に結合する」抗体は、他のタンパク質と比較して当該標的に対して優先的な結合を示す抗体である。ただし、この特異性は完全な結合特異性を要するものではない。抗体は、その結合が、たとえば、偽陽性などの望ましくない結果を生じることなく、試料中の標的タンパク質の存在を決定づける場合、その目的の標的に対して「特異的」であるとみなされる。本発明で有用な抗体またはその結合断片は、非標的タンパク質との親和性よりも、少なくとも2倍超、好ましくは10倍超、より好ましくは少なくとも20倍超、最も好ましくは少なくとも100倍超の親和性で標的タンパク質に結合する。本明細書で使用する場合、抗体が、所与のアミノ酸配列、たとえば、成熟ヒトPD−1またはヒトPD−L1分子のアミノ酸配列を含むポリペプチドに結合し、当該配列を欠くタンパク質には結合しない場合、当該抗体は、当該ポリペプチドに特異的に結合するという。特定のヒト標的タンパク質に特異的に結合する抗体は、好ましくは、1×10−7M以下、より好ましくは5×10−8M以下、より好ましくは1×10−8M以下、より好ましくは5×10−9M以下のKで当該標的タンパク質に結合する抗体を指す。抗体のKを求めるための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を用いるものである。
【0064】
「キメラ抗体」は、重鎖及び/または軽鎖のある部分が、特定種(たとえばヒト)に由来する抗体中または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であり、当該鎖の残部が、別の種(たとえばマウス)に由来する抗体中または別の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である抗体を指し、さらに、所望の生物学的活性を示す限り、当該抗体の断片を指す。
【0065】
「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を指す。ヒト抗体は、マウス、マウス細胞またはマウス細胞由来のハイブリドーマ中で産生される場合、マウス炭水化物鎖を含み得る。同様に、「マウス抗体」または「ラット抗体」は、それぞれマウスまたはラットの免疫グロブリン配列のみを含む抗体を指す。
【0066】
「ヒト化抗体」は、非ヒト(たとえばマウス)抗体及びヒト抗体由来の配列を含む抗体の形態を指す。当該抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常は2つの可変ドメインを実質的にすべて含み、その超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、通常はヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を任意に含む。ヒト化抗体と親げっ歯類抗体とを区別する必要がある場合は、「hum」、「hu」または「h」という接頭辞を抗体クローンの表記に加える。げっ歯類抗体のヒト化形態は、一般に、親であるげっ歯類抗体と同じCDR配列を含むが、ヒト化抗体の親和性の向上、安定性の向上または他の理由によりある特定のアミノ酸置換を含めてもよい。
【0067】
本明細書で使用する場合、B−Raf阻害剤である、N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩は、化合物構造(II):
【化15】
またはその薬学的に許容可能な塩で表される。便宜上、可能な化合物及び塩の群をまとめて化合物Bと呼ぶ。これは、化合物Bへの言及が当該化合物またはその薬学的に許容可能な塩のいずれかを選択的に指すことを意味する。本発明の態様のいずれかにて使用するための特に好ましいB−Raf阻害剤は、TAFINLAR(登録商標)の商標名にて知られているダブラフェニブメシラートである。TAFINLAR(ダブラフェニブ)カプセル剤は、50mgと75mgの経口投与用カプセル剤として供給されており、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム及び微結晶セルロースの不活性成分を含んでいる。
【0068】
BRAF V600変異という用語は、600番目に位置するバリンがグルタミン酸(E)に置換されていること(V600E)、及び/または600番目に位置するバリンがリジン(K)に置換されていること(V600K)を意味する。BRAF V600変異検査の陽性反応は、これらの置換のいずれかまたは両方の存在の検出を意味し、BRAF V600変異検査の陰性反応は、これらの置換の両方の非存在を意味する。BRAF V600E変異及びV600K変異を検出するための市販の体外診断用医薬品(IVD)キットは、THxID(商標)BRAFという商標名でbioMerieux SAから上市されている。
【0069】
「バイオ治療薬」は、腫瘍の維持及び/もしくは増殖を助長するまたは抗腫瘍免疫応答を抑制する任意の生物学的経路におけるリガンド/受容体シグナル伝達を遮断する、抗体または融合タンパク質などの生物学的分子を意味する。
【0070】
「癌」、「癌性」または「悪性」という用語は、無秩序な細胞増殖を概して特徴とする哺乳動物の生理学的状態を指すか、当該状態を表すものである。癌の例には、癌腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫及び肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌のより具体的な例には、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、胃腸(管)癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓癌、多形膠芽腫、子宮頸癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌及び頭頸部癌が挙げられる。本発明に従って治療され得る特に好ましい癌は、PD−L1発現検査での陽性反応と、BRAF V600変異検査での陽性反応(化合物Bを含む実施形態の場合)またはBRAF V600変異検査での陰性反応(化合物Bを含まない実施形態の場合)のどちらかを有するものである。本明細書で使用する場合、進行性黒色腫は切除不能ステージIII)を指し、転移性黒色腫はステージIVの黒色腫を指す。
【0071】
「CDR」または「CDR(複数)」は、本明細書で使用する場合、免疫グロブリンの可変領域中の相補性決定領域を意味し、特に指定のない限り、Kabatの番号付けシステムを用いて定義される。
【0072】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の種類には、アルキル化剤、代謝拮抗物質、キナーゼ阻害剤、紡錘体毒植物アルカノイド、細胞傷害性/抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、光増感剤、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)、抗プロゲステロン、エストロゲン受容体抑制剤(ERD)、エストロゲン受容体拮抗剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン作動剤、抗アンドロゲン剤、アロマターゼ阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、異常細胞の増殖または腫瘍の成長に関与する遺伝子の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の治療法に有用な化学療法剤には、細胞増殖抑制剤及び/または細胞傷害性薬剤が挙げられる。
【0073】
「Chothia」とは、本明細書で使用する場合、Al−Lazikani et al.,JMB 273:927−948(1997)に記載された抗体番号付けシステムを意味する。
【0074】
「本発明の組み合わせ」及び「本発明の併用療法」は、PD−1アンタゴニストと、BRAF阻害剤、好適には化合物B及びMEK阻害剤、好ましくは化合物Aのうちの1つまたは両方との組み合わせを指す。
【0075】
「保存的に改変された変異」または「保存的置換」は、類似の特徴(たとえば、電荷、側鎖の大きさ、疎水性/親水性、骨格構造及び剛直性など)を有する他のアミノ酸によるタンパク質中のアミノ酸の置換であって、その改変が、当該タンパク質の生物学的活性または他の所望の特性、たとえば抗原親和性及び/または抗原特異性などを変えることなく、高い頻度でなされ得るものを指す。当業者には、一般に、ポリペプチドの非本質的領域における1つのアミノ酸置換が生物学的活性を実質的に変えるものではないことが認識されている(たとえば、Watson et al.(1987)Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Ed.)を参照)。さらに、構造的または機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を破壊する可能性が低い。代表的な保存的置換を下記の表1に示す。
【表1】
【0076】
「本質的になる(consists essentially of)」及び「本質的になる(consist essentially of)」または「本質的になり(consisting essentially of)」などの変形は、本明細書及び特許請求の範囲を通して使用する場合、任意の列挙した要素または要素群の包含、ならびに明記した投薬レジメン、方法または組成物の基本的または新規の特性を著しく変更しない、列挙した要素と類似した性質または異なる性質の他の要素の任意的包含を示す。非限定的な例として、列挙したアミノ酸配列から本質的になるPD−1アンタゴニストは、当該結合化合物の特性に著しい影響を及ぼさない1つまたは複数のアミノ酸残基の置換を含んでいる、1つまたは複数のアミノ酸も含み得る。
【0077】
「診断用抗PD−Lモノクローナル抗体」は、ある特定の哺乳動物細胞の表面上に発現した指定のPD−L(PD−L1またはPDL2)の成熟形に特異的に結合するmAbを意味する。成熟PD−Lは、リーダーペプチドとも呼ばれる前分泌リーダー配列を欠いている。「PD−L」及び「成熟PD−L」という用語は、本明細書では同じ意味で用いられ、特に指定のない限り、または文脈から明瞭である以外は、同じ分子を意味するものと理解される。
【0078】
本明細書で使用する場合、診断用抗ヒトPD−L1 mAbは、成熟ヒトPD−L1に特異的に結合するモノクローナル抗体を指す。成熟ヒトPD−L1分子は、以下の配列のアミノ酸19〜290からなる。
【0079】
MRIFAVFIFMTYWHLLNAFTVTVPKDLYVVEYGSNMTIECKFPVEKQLDLAALIVYWEMEDKNIIQFVHGEEDLKVQHSSYRQRARLLKDQLSLGNAALQITDVKLQDAGVYRCMISYGGADYKRITVKVNAPYNKINQRILVVDPVTSEHELTCQAEGYPKAEVIWTSSDHQVLSGKTTTTNSKREEKLFNVTSTLRINTTTNEIFYCTFRRLDPEENHTAELVIPELPLAHPPNERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMDVKKCGIQDTNSKKQSDTHLEET(配列番号25)。
【0080】
ホルマリン固定パラフィン包理(FFPE)腫瘍組織片中のPD−L1発現を免疫組織化学(IHC)検出するための診断用mAbとして有用な診断用抗ヒトPD−L1 mAbの具体例は、2013年12月18日に出願された同時係属国際特許出願番号PCT/US13/075932に記載の抗体20C3及び抗体22C3である。FFPE組織片中のPD−L1発現のIHC検出に有用であることが報告されている別の抗ヒトPD−L1 mAb(Chen,B.J.et al.,Clin Cancer Res 19:3462−3473(2013))は、Sino Biological,Inc.から一般に入手できるウサギ抗ヒトPD−L1 mAb(Beijing,P.R.China;カタログ番号10084−R015)である。
【0081】
「フレームワーク領域」または「FR」は、本明細書で使用する場合、CDR領域を除く免疫グロブリン可変領域を意味する。
【0082】
「相同性」は、最適に並置した際の2つのペプチド配列の間の配列類似性を指す。2つの比較配列中のある位置が両方とも同一のアミノ酸モノマーサブユニットによって占められている場合、たとえば、2つの異なるAbの軽鎖CDR中のある位置がアラニンによって占められている場合、その2つのAbは当該位置において相同である。相同性の百分率は、2つの配列によって共有される相同位置の数を、比較した位置の総数で除算し、100をかけたものである。たとえば、配列を最適に並置した際に、2つの配列中の位置の10のうち8つが一致または相同する場合、この2つの配列は80%相同である。一般に、最大百分率の相同性を得るように2つの配列を並置して比較を行う。たとえば、BLASTアルゴリズムを用いて、アルゴリズムのパラメータを各参照配列の全長にわたって各配列間が最大一致となるように選択することにより、比較を行うことが可能である。
【0083】
以下の参考資料が、配列解析によく使用されるBLASTアルゴリズムに関するものである。BLAST ALGORITHMS:Altschul,S.F.,et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403−410;Gish,W.,et al.,(1993)Nature Genet.3:266−272;Madden,T.L.,et al.,(1996)Meth.Enzymol.266:131−141;Altschul,S.F.,et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389−3402;Zhang,J.,et al.,(1997)Genome Res.7:649−656;Wootton,J.C.,et al.,(1993)Comput.Chem.17:149−163;Hancock,J.M.et al.,(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67−70;ALIGNMENT SCORING SYSTEMS:Dayhoff,M.O.,et al.,“A model of evolutionary change in proteins.” in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(ed.),pp.345−352,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Schwartz,R.M.,et al.,“Matrices for detecting distant relationships.” in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.” M.O.Dayhoff(ed.),pp.353−358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Altschul,S.F.,(1991)J.Mol.Biol.219:555−565;States,D.J.,et al.,(1991)Methods 3:66−70;Henikoff,S.,et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919;Altschul,S.F.,et al.,(1993)J.Mol.Evol.36:290−300;ALIGNMENT STATISTICS:Karlin,S.,et al.,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268;Karlin,S.,et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877;Dembo,A.,et al.,(1994)Ann.Prob.22:2022−2039及びAltschul,S.F.“Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.” in Theoretical and Computational Methods in Genome Research(S.Suhai,ed.),(1997)pp.1−14,Plenum,New York。
【0084】
「単離された抗体」及び「単離された抗体断片」は、精製状態のものを指し、当該文脈において、当該指定分子が核酸、タンパク質、脂質、炭水化物などの他の生物学的分子、または細胞残屑及び成長培地などの他の物質を実質的に含まないことを意味する。一般に、「単離された」という用語は、本明細書に記載の結合化合物の実験的または治療的使用に実質的な妨げとなる量で存在する場合以外において、こうした物質の完全な不存在または水、緩衝剤もしくは塩の不存在を指すことを意図するものではない。
【0085】
「Kabat」は、本明細書で使用する場合、Elvin A.Kabatによって開発された免疫グロブリンのアライメント及び番号付けシステムを意味する((1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.)。
【0086】
本明細書で使用する場合、MEK阻害剤である、N−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、構造(I):
【化16】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物で表される。便宜上、可能な化合物及び塩または溶媒和物の群をまとめて化合物Aと呼ぶ。これは、化合物Aへの言及が当該化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物のいずれかを選択的に指すことを意味する。命名規則により、式(I)の化合物をN−{3−[3−シクロプロピル−5−[(2−フルオロ−4−ヨードフェニル)アミノ]−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロピリド[4,3−d]ピリミジン−1(2H)−イル]フェニル}アセトアミドと適切に呼ぶ場合もある。本発明の態様のいずれかにて使用するための特に好ましいMEK阻害剤は、MEKINIST(商標)の商標名にて知られているトラメチニブジメチルスルホキシドである。MEKINIST(トラメチニブ)錠剤は、0.5mg、1mg及び2mgの経口投与用錠剤として供給されている。MEKINIST錠剤のコアは、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、ヒプロメロース、ステアリン酸マグネシウム(植物源)マンニトール、微結晶セルロース、ラウリル硫酸ナトリウムの不活性成分を含み、MEKINIST錠剤のコーティングは、ヒプロメロース、酸化鉄赤(2mg錠剤)、酸化鉄黄(0.5mg錠剤)、ポリエチレングリコール、ポリソルベート80(2mg錠剤)及び二酸化チタンの不活性成分を含む。
【0087】
「モノクローナル抗体」または「mAb」または「Mab」は、本明細書で使用する場合、実質的に均質な抗体の集団を指す。すなわち、この集団に含まれる抗体分子は、微量に存在し得る想定される自然発生変異を除いて、アミノ酸配列が同一である。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、通常、多数の異なる抗体であって、その可変ドメイン、特にそのCDR中に異なるアミノ酸配列を有し、異なるエピトープに特異的であることが多い、多数の異なる抗体を含む。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体集団から取得される抗体の性質を示すものであり、特定の方法による抗体製造を必要とするように解釈されるものではない。たとえば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.(1975)Nature 256:495が最初に記載したハイブリドーマ法によって製造することもできるし、または組み換えDNA法によって製造することもできる(たとえば米国特許第4,816,567号を参照)。「モノクローナル抗体」はまた、たとえば、Clackson et al.(1991)Nature 352:624−628及びMarks et al.(1991)J.Mol.Biol.222:581−597に記載された技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731も参照されたい。
【0088】
「患者」または「被験者」は、治療が望まれるか、臨床試験、疫学研究に参加しているか、対照として使用される任意の単一の対象を指し、ヒト及び哺乳動物の獣医学上の患者、たとえばウシ、ウマ、イヌ及びネコなどが挙げられる。
【0089】
「PD−1アンタゴニスト」は、癌細胞上に発現したPD−L1が免疫細胞(T細胞、B細胞、NKT細胞)上に発現したPD−1に結合することを阻止する、好ましくは癌細胞上に発現したPD−L2が免疫細胞に発現したPD−1に結合することを同じく阻害する、任意の化学的化合物または生物学的分子を意味する。PD−1及びそのリガンドの代替名または同義語には、PD−1については、PDCD1、PD1、CD279及びSLEB2、PD−L1については、PDCD1L1、PDL1、B7H1、B7−4、CD274及びB7−H、ならびにPD−L2については、PDCD1L2、PDL2、B7−DC、Btdc及びCD273が挙げられる。ヒト個体が治療される場合の本発明の態様または実施形態の任意の実施形態において、PD−1アンタゴニストは、ヒトPD−L1のヒトPD−1への結合を阻止し、好ましくはヒトPD−L1とPD−L2の両方のヒトPD−1への結合を阻止する。ヒトPD−1アミノ酸配列は、NCBI Locus No.:NP_005009にて確認できる。ヒトPD−L1及びPD−L2のアミノ酸配列は、それぞれNCBI Locus No.:NP_054862及びNP_079515にて確認できる。
【0090】
本発明の態様のいずれかにて有用なPD−1アンタゴニストには、PD−1またはPD−L1に特異的に結合する、好ましくはヒトPD−1またはヒトPD−L1に特異的に結合する、モノクローナル抗体(mAb)またはその抗原結合断片が挙げられる。mAbは、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であってよく、ヒト定常領域を含み得る。いくつかの実施形態において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の各定常領域からなる群から選択され、好ましい実施態様において、ヒト定常領域は、IgG1またはIgG4の定常領域である。いくつかの実施形態において、抗原結合断片は、Fab、Fab’−SH、F(ab’)、scFv及びFvの各断片からなる群から選択される。
【0091】
ヒトPD−1に結合し、本発明の種々の態様及び実施形態にて有用なmAbの例は、US7488802、US7521051、US8008449、US8354509、US8168757、WO2004/004771、WO2004/072286、WO2004/056875及びUS2011/0271358に記載されている。
【0092】
本発明の態様及び実施形態のいずれかにてPD−1アンタゴニストとして有用な具体的な抗ヒトPD−1 mAbには、WHO Drug Information,Vol.27,No.2,pages 161−162(2013)に記載の構造を有し、図6に示す重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を含むヒト化IgG4 mAbである、MK−3475;WHO Drug Information,Vol.27,No.1,pages 68−69(2013)に記載の構造を有し、図7に示す重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を含むヒトIgG4 mAbである、ニボルマブ;WO2008/156712に記載のヒト化抗体h409A11、h409A16及びh409A17ならびにMedimmuneによって開発されているAMP−514が挙げられる。
【0093】
本発明の態様及び実施形態のいずれかにて有用な他のPD−1アンタゴニストには、PD−1に特異的に結合する、好ましくはヒトPD−1に特異的に結合するイムノアドヘシン、たとえば、PD−L1またはPD−L2の細胞外部分またはPD−1結合部分を免疫グロブリン分子のFc領域などの定常領域に融合させた融合タンパク質が挙げられる。PD−1に特異的に結合するイムノアドヘシン分子の例は、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載されている。本発明の治療法、薬剤及び使用においてPD−1アンタゴニストとして有用な具体的な融合タンパク質には、PD−L2−FC融合タンパク質であり、ヒトPD−1に結合するAMP−224(B7−DCIgとしても知られる)が挙げられる。
【0094】
本発明の態様のいずれかのいくつかの好ましい実施形態において、PD−1アンタゴニストは、ヒトPD−1に結合し、(a)軽鎖CDR配列番号1、2及び3ならびに重鎖CDR配列番号4、5及び6、または(b)軽鎖CDR配列番号7、8及び9ならびに重鎖CDR配列番号10、11及び12を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
【0095】
本発明の態様のいずれかの他の好ましい実施形態において、PD−1アンタゴニストは、ヒトPD−1に特異的に結合し、(a)配列番号13またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号15またはその変異体、配列番号16またはその変異体及び配列番号17またはその変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。重鎖可変領域配列の変異体は、フレームワーク領域内(すなわちCDR外)に最大17の保存的アミノ酸置換を有すること以外、参照配列と同一であり、好ましくは、フレームワーク領域内に10、9、8、7、6または5未満の保存的アミノ酸置換を有する。軽鎖可変領域配列の変異体は、フレームワーク領域内(すなわちCDR外)に最大5の保存的アミノ酸置換を有すること以外、参照配列と同一であり、好ましくは、フレームワーク領域内に4、3または2未満の保存的アミノ酸置換を有する。
【0096】
本発明の態様の別の好ましい実施形態において、PD−1アンタゴニストは、ヒトPD−1に特異的に結合し、(a)配列番号14を含む重鎖と、(b)配列番号18、配列番号19または配列番号20を含む軽鎖とを含む、モノクローナル抗体である。
【0097】
本発明の態様のさらに別の好ましい実施形態において、PD−1アンタゴニストは、ヒトPD−1に特異的に結合し、(a)配列番号14を含む重鎖と、(b)配列番号18を含む軽鎖とを含む、モノクローナル抗体である。
【0098】
以下の表2に、本発明の種々の態様にて使用するための代表的な抗PD−1 mAbのアミノ酸配列の一覧を記載する。配列は図1〜5に示す。
【表2】
【0099】
「PD−L1」または「PD−L2」の発現は、本明細書で使用する場合、指定したPD−Lタンパク質の細胞表面上の検出可能なレベルの発現、または指定したPD−LのmRNAの細胞内もしくは組織内での検出可能なレベルの発現を意味する。PD−Lタンパク質発現は、診断用PD−L抗体を用いて、腫瘍組織片のIHCアッセイまたはフローサイトメトリーにより検出することができる。あるいは、所望のPD−L対象、たとえばPD−L1またはPD−L2に特異的に結合する結合剤(たとえば、抗体断片、アフィボディなど)を用いるPET撮影により、腫瘍細胞によるPD−Lタンパク質発現を検出してもよい。PD−LのmRNA発現の検出技術及び測定技術には、RT−PCR及びリアルタイム定量的RT−PCRが挙げられる。
【0100】
腫瘍組織片のIHCアッセイにおいてPD−L1タンパク質発現を定量化するための手法については、複数記載されている。たとえば、Thompson,R.H.,et al.,PNAS 101(49);17174−17179(2004);Thompson,R.H.et al.,Cancer Res.66:3381−3385(2006);Gadiot,J.,et al.,Cancer 117:2192−2201(2011);Taube,J.M.et al.,Sci Transl Med 4,127ra37(2012)及びToplian,S.L.et al.,New Eng.J Med.366(26):2443−2454(2012)を参照されたい。
【0101】
1つの手法は、PD−L1発現の陽性または陰性という簡単な二値エンドポイントを採用しており、陽性結果を、細胞表面膜染色の組織学的エビデンスを呈する腫瘍細胞の割合を基準にして定義する。全腫瘍細胞の少なくとも1%、好ましくは5%である場合、その腫瘍組織片はPD−L1発現陽性とみなされる。
【0102】
別の手法では、腫瘍組織片のPD−L1発現を、腫瘍細胞だけでなく、主にリンパ球を含む浸潤免疫細胞でも定量化する。膜染色を呈する腫瘍細胞と浸潤免疫細胞のパーセンテージを、5%未満、5〜9%、以後100%までの10%増分として個別に定量化する。腫瘍細胞については、スコアが5%未満のスコアである場合をPD−L1発現陰性として、スコアが5%以上である場合を陽性とみなす。免疫浸潤物におけるPD−L1発現は、膜染色細胞の百分率に浸潤物の強度(なし(0)、弱(スコア1、微量のリンパ球)、中(スコア2、リンパ組織球集塊による腫瘍の局所性浸潤)または強(スコア3、びまん性浸潤)に分類)を乗じることによって決定する、調整済み炎症スコア(AIS)と呼ばれる半定量的測定で報告される。AISが5以上である場合、その腫瘍組織片は、免疫浸潤物によるPD−L1発現陽性とみなされる。
【0103】
PD−LのmRNA発現レベルは、定量的RT−PCRにて頻繁に使用されるユビキチンCなどの1つまたは複数の参照遺伝子のmRNA発現レベルとの比較が可能である。
【0104】
いくつかの実施形態において、腫瘍内の悪性細胞及び/または浸潤免疫細胞によるPD−L1(タンパク質及び/またはmRNA)の発現レベルは、適切な対照によるPD−L1(タンパク質及び/またはmRNA)の発現レベルとの比較に基づいて、「過剰発現」であるまたは「高い」と決定される。たとえば、対照PD−L1タンパク質またはmRNAの発現レベルは、同種の非悪性細胞または適合する正常組織から得た切片において定量化したレベルであってよい。いくつかの好ましい実施形態において、腫瘍サンプルにおけるPD−L1タンパク質(及び/またはPD−L1 mRNA)が対照よりも少なくとも10%、20%または30%多い場合、当該サンプルにおけるPD−L1発現は高いと決定される。
【0105】
「RECIST1.1治療効果基準」は、本明細書で使用する場合、標的病変または非標的病変について、治療効果の測定に適宜基づいて、Eisenhauer et al.,E.A.et al.,Eur.J Cancer 45:228−247(2009)に規定された定義を意味する。
【0106】
「持続的効果」は、本明細書に記載の治療薬または併用療法による治療中断後の治療効果の持続を意味する。いくつかの実施形態において、治療期間と少なくとも同じ長さか、治療期間よりも少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍または3倍長い期間の持続的効果がある。
【0107】
「組織片」は、組織サンプルの一部分または一片、たとえば、正常組織または腫瘍のサンプルから切り取った薄切組織片を指す。
【0108】
癌を「治療する」または「治療すること」は、本明細書で使用する場合、癌を有する対象または癌の診断を受けた対象に、少なくとも1つの肯定的な治療効果、たとえば、癌細胞数の減少、腫瘍サイズの縮小、癌細胞の周辺器官への浸潤率の低減または腫瘍転移率もしくは腫瘍成長率の低減などを達成するために、本発明の組み合わせを施すことを意味する。癌における肯定的な治療効果は、様々な方法で測定することができる(W.A.Weber,J.Nucl.Med.50:1S−10S(2009)参照)。たとえば、NCI基準によれば、腫瘍増殖抑制に関しては、T/C≦42%が抗腫瘍活性の最低レベルである。T/C(%)=治療群の腫瘍体積の中央値/対照群の腫瘍体積の中央値×100とした場合、T/Cが10%未満であると、抗腫瘍活性レベルが高いとみなされる。いくつかの実施形態において、本発明の組み合わせによって達成される治療は、PR、CR、OR、PFS、DFS及びOSのいずれかである。PFSは、「腫瘍無進行期間」ともいわれ、治療期間中及び治療期間後の癌成長のない期間を示し、患者がCRまたはPRを受けた時間量だけでなく、患者がSD経験を有した時間量も示す。DFSは、治療期間中及び治療期間後に、患者が疾患のない状況を維持している期間を指す。OSは、ナイーブまたは未処置の個人または患者と比較した平均寿命の延びを指す。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の組み合わせの効果は、RECIST1.1治療効果基準を用いて評価されるPR、CR、PFS、DFS、ORまたはOSのいずれかである。癌患者の治療に効果的である本発明の組み合わせに関する治療レジメンは、患者の疾患状態、年齢及び体重、ならびに対象において抗癌応答を誘発する治療の効能などの因子によって変動し得る。本発明の態様のいずれかの実施形態は、あらゆる対象において肯定的な治療効果を達成するのに功を奏さないこともあるが、スチューデントのt検定、χ検定、マン−ホイットニーによるU検定、クラスカル−ウォリス検定(H検定)、ヨンクヒール−タプストラ検定及びウィルコクソン検定などの当該技術分野において知られている任意の統計的検定によって求められる統計的に有意な数の対象において効果的である。
【0109】
「治療レジメン」、「投薬プロトコル」及び投薬レジメンという用語は、本発明の組み合わせにおける各治療薬の投与用量及び投与時を指すために同じ意味で用いられる。
【0110】
「腫瘍」または「新生物」は、癌の診断を受けた対象または癌の疑いがある対象に対して適用される場合、悪性または悪性と思われる任意の大きさの新生物または組織の塊を指し、原発腫瘍及び続発性新生物を含む。固形腫瘍は、通常、嚢胞または液体部分を含まない組織の異常な増殖または塊である。固形腫瘍の各種類は、その固形腫瘍を形成する細胞の種類によって名付けられる。固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫及びリンパ腫である。白血病(血液の癌)は通常、固形腫瘍を形成しない(National Cancer Institute,Dictionary of Cancer Terms)。
【0111】
「腫瘍量」は、「腫瘍負荷」とも呼ばれ、全身に分布する腫瘍組織の総量を指す。腫瘍量は、リンパ節及び骨髄を含む全身の癌細胞の総数または腫瘍の全体サイズを指す。腫瘍量は、対象から切除した腫瘍の寸法を、たとえば測径器を用いて測定すること、または体内の腫瘍寸法であれば、たとえば超音波、骨スキャン、コンピュータ断層撮影(CT)もしくは磁気共鳴画像法(MRI)スキャンなどの画像診断技術を用いて測定することなどの当該技術分野において知られている種々の方法によって決定することができる。
【0112】
「腫瘍サイズ」という用語は、腫瘍の長さ及び幅として測定することが可能な腫瘍の全体サイズを指す。腫瘍サイズは、対象から切除した腫瘍の寸法を、たとえば測径器を用いて測定すること、または体内の腫瘍寸法であれば、たとえば骨スキャン、超音波、CTもしくはMRIスキャンなどの画像診断技術を用いて測定することなどの当該技術分野において知られている種々の方法によって決定することができる。
【0113】
「可変領域」または「V領域」は、本明細書で使用する場合、種々の抗体間で配列が可変であるIgG鎖のセグメントを意味する。軽鎖ではKabat残基109、重鎖では113に及ぶ。
【0114】
III.組み合わせ、組成物、使用及び治療方法
本発明の組み合わせの治療的有効量の投与は、本組み合わせが、治療的有効量の成分化合物の個別投与と比較して、i)最も活性のある単剤よりも抗癌作用がより大きいこと、ii)相乗的または相乗効果の高い抗癌活性、iii)副作用プロファイルの少ない高抗癌活性をもたらす投薬プロトコル、iv)中毒作用プロファイルの低減、v)治療可能期間の拡大、またはvi)成分化合物の1つまたは両方のバイオアベイラビリティの拡大の特性向上のうちの1つまたは複数を提供するという点から、個々の成分化合物よりも有益である。
【0115】
化合物A及び/またはBは、1つまたは複数のキラル原子を含み得、または別様に鏡像異性体として存在することが可能である。したがって、本発明の化合物は、鏡像異性体の混合物はもとより、精製した鏡像異性体または鏡像異性体を濃縮した混合物を包含する。また、すべての互変異性体及び互変異性体の混合物が化合物A及び化合物Bの範囲内に包含されることも理解される。
【0116】
さらに、化合物A及びBが、別個にまたは両方ともに、溶媒和物として存在し得ることも理解される。本明細書で使用する場合、「溶媒和物」という用語は、溶質(本発明の場合、式(I)もしくは(II)の化合物またはその塩と溶媒とによって形成された可変の化学量論の複合体を指す。本発明のためのこうした溶媒は、当該溶質の生物学的活性を妨げるものではない。好適な溶媒の例には、水、メタノール、ジメチルスルホキシド、エタノール及び酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、使用される溶媒は、薬学的に許容可能な溶媒である。別の実施形態において、使用される溶媒は水である。
【0117】
化合物A及びBは、周知の多形体という特徴である、2つ以上の形態に結晶化する能力を有し得、こうした多形形態(「多形体」)が化合物A及びBの範囲内であることが理解される。多形体は、一般に、温度もしくは圧力またはその両方の変化に応じて生じ得、結晶化プロセスにおける変化にも起因し得る。多形体は、X線回折パターン、溶解度及び融点などの当該技術分野において知られている種々の物理的特性によって区別することができる。
【0118】
化合物Aは、その薬学的に許容可能な塩及び溶媒和物とともに、MEK活性の阻害剤として特に癌の治療に有用であるものとして、2005年6月10日の国際出願日を有する国際出願番号PCT/JP2005/011082であり、2005年12月22日の国際公開日を有する国際公開番号WO2005/121142にて開示され、特許請求されている。当該出願は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。化合物Aは実施例4−1の化合物である。化合物Aは、国際出願番号PCT/JP2005/011082に記載の通りに調製することができる。化合物Aは、2006年1月19日に公開された米国特許公開番号US2006/0014768に記載の通りに調製することができる。当該出願は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
好適には、化合物Aはジメチルスルホキシド溶媒和物の形態である。好適には、化合物Aはナトリウム塩の形態である。好適には、化合物Aは、水和物、酢酸、エタノール、ニトロメタン、クロロベンゼン、1−ペンタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール及び3−メチル−1−ブタノールから選択される溶媒和物の形態である。これらの溶媒和物及び塩の形態は、当業者であれば、国際出願番号PCT/JP2005/011082または米国特許公開番号US2006/0014768の記載から調製可能である。
【0120】
化合物Bは、その薬学的に許容可能な塩とともに、BRaf活性の阻害剤として特に癌の治療に有用であるものとして、PCT特許出願番号PCT/US09/42682にて開示され、特許請求されている。化合物Bは、当該出願の実施例58aから58eにより実現される。このPCT出願は、公開公報WO2009/137391として2009年11月12日に公開されており、当該出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
より詳細には、化合物Bは以下の方法に従って調製され得る。
【0122】
方法1:化合物B(第1の結晶形)−N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
【化17】
【0123】
N−{3−[5−(2−クロロ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(196mg、0.364mmol)及びアンモニアの7Mメタノール(8ml、56.0mmol)中懸濁液を密封チューブ中で90℃まで24時間加熱した。この反応物をDCMで希釈し、シリカゲルを加え、濃縮した。この粗生成物を、シリカゲルでクロマトグラフィーにかけ、100%DCMから1:1[DCM:(9:1 EtOAc:MeOH)]を用いて溶出した。きれいな分画を濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物を、逆相HPLC(いずれも0.1%TFAを含む、アセトニトリル:水の勾配)によって再精製した。合わせたきれいな分画を濃縮し、次いでDCMと飽和NaHCOの間に分配した。DCM層を分離し、NaSO上で乾燥させた。表題化合物である、N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドを得た(94mg、収率47%)。H NMR(400 MHz,DMSO−d6)δ ppm 10.83(s,1 H),7.93(d,J=5.2 Hz,1 H),7.55 − 7.70(m,1 H),7.35 − 7.43(m,1 H),7.31(t,J=6.3 Hz,1 H),7.14 − 7.27(m,3 H),6.70(s,2 H),5.79(d,J=5.13 Hz,1 H),1.35(s,9 H).MS(ESI):519.9 [M+H]
【0124】
方法2:化合物B(別の結晶形)−N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド 19.6mgのN−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(実施例58aに従って調製され得る)を、室温で、2mLのバイアル中で、500Lの酢酸エチルと合わせた。このスラリーを、48時間、0〜40℃の間の温度サイクルにかけた。得られたスラリーを室温まで冷却し、固体を真空濾過によって回収した。この固体をラマン、PXRD、DSC/TGA分析によって分析すると、上記の実施例58aから得られた結晶形とは異なる結晶形であることが示された。
【0125】
方法3:化合物B(別の結晶形、大規模バッチ)−N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
【化18】
【0126】
工程A:3−{[(2,6−ジフルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−2−フルオロ安息香酸メチル
【化19】
【0127】
3−アミノ−2−フルオロ安息香酸メチル(50g、1当量)を反応器に入れ、次いでジクロロメタン(250mL、5倍量)を入れた。この内容物を撹拌し、約15℃まで冷却し、ピリジン(26.2mL、1.1当量)を加えた。このピリジンの添加後、反応器の内容物を約15℃に調整し、滴下漏斗を介して2,6−ジフルオロベンゼンスルホニルクロリド(39.7mL、1.0当量)の添加を開始した。添加の間、温度を25℃未満に維持した。添加終了後、反応器の内容物を20〜25℃まで加温し、一晩保持した。酢酸エチル(150mL)を添加し、ジクロロメタンを蒸留により除去した。蒸留が完了したら、次いで反応混合物を酢酸エチル(5倍量)でもう一回希釈し、濃縮した。この反応混合物を酢酸エチル(10倍量)及び水(4倍量)で希釈し、すべての固形分が溶解するまで、撹拌しながら内容物を50〜55℃まで加熱した。層を静置し、分離した。有機層を水(4倍量)で希釈し、内容物を50〜55℃まで20〜30分間加熱した。層を静置し、次いで分離し、酢酸エチル層を減圧下で約3倍量まで濃縮した。酢酸エチル(5倍量)を添加し、減圧下で約3倍量まで再度濃縮した。次いで、シクロヘキサン(9倍量)をこの反応器に加え、内容物を30分間加熱還流し、次いで0℃まで冷却した。固体を濾過し、シクロヘキサン(2×100mL)ですすいだ。この固体を一晩風乾し、3−{[(2,6−ジフルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−2−フルオロ安息香酸メチル(94.1g、91%)を得た。
【0128】
工程B:N−{3−[(2−クロロ−4−ピリミジニル)アセチル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
【化20】
【0129】
上記の工程Aに概ね従って調製した3−{[(2,6−ジフルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−2−フルオロ安息香酸メチル(490g、1当量)をTHF(2.45L、5倍量)中に溶解し、撹拌し、0〜3℃まで冷却した。1Mリチウムビス(トリメチルシリル)アミドのTHF(5.25L、3.7当量)中溶液をこの反応混合物に入れ、次いでTHF(2.45L、5倍量)中の2−クロロ−4−メチルピリミジン(238g、1.3当量)を加えた。次いでこの反応物を1時間撹拌した。この反応物を、4.5M HCl(3.92L、8倍量)でクエンチした。水層(下層)を除去し、捨てた。有機層を、減圧下で約2Lまで濃縮した。IPAC(酢酸イソプロピル)(2.45L)をこの反応混合物に加え、次いでこれを約2Lまで濃縮した。IPAC(0.5L)及びMTBE(2.45L)を加え、N下で一晩撹拌した。固体を濾過した。この固体及び母濾液を一緒に戻し、数時間撹拌した。固体を濾過し、MTBE(約5倍量)で洗浄した。この固体を、50℃の真空オーブン中に一晩置いた。この固体を30℃の真空オーブン中で週末にわたって乾燥させ、N−{3−[(2−クロロ−4−ピリミジニル)アセチル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(479g、72%)を得た。
【0130】
工程C:N−{3−[5−(2−クロロ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
【化21】
【0131】
反応容器に、N−{3−[(2−クロロ−4−ピリミジニル)アセチル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(30g、1当量)を入れ、次いでジクロロメタン(300mL)を入れた。この反応スラリーを約10℃まで冷却し、N−ブロモスクシンイミド(「NBS」)(12.09g、1当量)をほぼ3等分にして添加し、各添加の間に10〜15分間撹拌した。NBSの最後の添加の後、反応混合物を約20℃まで加温し、45分間撹拌した。次いで水(5倍量)をこの反応容器に加え、混合物を撹拌し、次いで層を分離した。水(5倍量)をジクロロメタン層に再度加え、混合物を撹拌し、層を分離した。ジクロロメタン層を約120mLまで濃縮した。酢酸エチル(7倍量)をこの反応混合物に加え、約120mLまで濃縮した。次いでジメチルアセトアミド(270mL)をこの反応混合物に加え、約10℃まで冷却した。2,2−ジメチルプロパンチオアミド(1.3g、0.5当量)を2等分にして、この反応器の内容物に加え、添加と添加との間は約5分間撹拌した。この反応物を20〜25℃まで加温した。45分後、反応器の内容物を75℃まで加熱し、1.75時間保持した。次いでこの反応混合物を5℃まで冷却し、30℃未満の温度を維持しながら、水(270ml)をゆっくり入れた。次いで酢酸エチル(4倍量)を入れ、この混合物を撹拌し、層を分離した。酢酸エチル(7倍量)を水層に再度入れ、内容物を撹拌し、分離した。酢酸エチル(7倍量)を水層に再度入れ、内容物を撹拌し、分離した。有機層を合わせ、水(4倍量)で4回洗浄し、20〜25℃で一晩撹拌した。次いで加熱及び真空下で有機層を120mLまで濃縮した。次いで反応器の内容物を50℃まで加熱し、ヘプタン(120mL)をゆっくり加えた。ヘプタンの添加後、反応器の内容物を加熱還流し、次いで0℃まで冷却し、約2時間保持した。固体を濾過し、ヘプタン(2×2倍量)ですすいだ。次いでこの固体生成物を真空下で30℃にて乾燥させ、N−{3−[5−(2−クロロ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(28.8g、80%)を得た。
【0132】
工程D:N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド
【0133】
1galの圧力反応器中で、上記の工程Cに従って調製したN−{3−[5−(2−クロロ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(120g)と、水酸化アンモニウム(28〜30%、2.4L、20倍量)との混合物を、密閉した圧力反応器中で98〜103℃まで加熱し、この温度で2時間撹拌した。この反応物を室温(20℃)までゆっくり冷却し、一晩撹拌した。固体を濾過し、最小量の母液で洗浄し、真空下で乾燥した。この固体をEtOAc(15倍量)/水(2倍量)の混合物に添加し、完全に溶解するまで60〜70℃で加熱し、水層を除去し、捨てた。このEtOAC層に水(1倍量)を入れ、HCl水溶液でpH約5.4〜5.5に中和し、水(1倍量)を添加した。60〜70℃で水層を除去し、捨てた。60〜70℃で有機層を水(1倍量)で洗浄し、水層を除去し、捨てた。有機層を60℃で濾過し、3倍量まで濃縮した。EtOAc(6倍量)をこの混合物に入れ、加熱し、72℃で10分間撹拌し、次いで20℃まで冷却し、一晩撹拌した。真空蒸留によってEtOAcを除去し、反応混合物を約3倍量まで濃縮した。この反応混合物を、約65〜70℃で約30分間維持した。上記の実施例58bにおいてヘプタンスラリー中で調製した(実施例58bの手順によって調製できる)結晶と同じ結晶形を有する生成物の結晶を入れた。65〜70℃でヘプタン(9倍量)をゆっくり加えた。このスラリーを65〜70℃で2〜3時間撹拌し、次いで0〜5℃までゆっくり冷却した。生成物を濾過し、EtOAc/ヘプタン(3/1 v/v、4倍量)で洗浄し、真空下で45℃にて乾燥させ、N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(102.3g、88%)を得た。
【0134】
方法4:化合物B(メシル酸塩)−N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドメタンスルホネート
【化22】
【0135】
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(204mg、0.393mmol)のイソプロパノール(2mL)中溶液に、メタンスルホン酸(0.131mL、0.393mmol)を添加し、この溶液を室温で3時間撹拌した。白色沈殿物が生じ、このスラリーを濾過し、ジエチルエーテルですすぎ、表題の生成物を白色の結晶性固体として得た(210mg、83%収率)。H NMR(400 MHz,DMSO−d6)δ ppm 10.85(s,1 H)7.92 − 8.05(m,1 H)7.56 − 7.72(m,1 H)6.91 − 7.50(m,7 H)5.83 − 5.98(m,1 H)2.18 − 2.32(m,3 H)1.36(s,9 H).MS(ESI):520.0 [M+H]
【0136】
方法5:化合物B(別のメシル酸塩の実施形態)−N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドメタンスルホネート
【0137】
N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(実施例58aに従って調製し得るもの)(2.37g、4.56mmol)を、予め濾過したアセトニトリル(5.25倍量、12.4mL)と合わせた。HO(0.75当量、1.78mL)中のメタンスルホン酸(mesic acid)(1.1当量、5.02mmol、0.48g)の予め濾過した溶液を20℃で添加した。低い撹拌速度を維持しながら、得られた混合物の温度を50〜60℃まで上げた。混合物の温度が50〜60℃に達したら、N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドメタンスルホネートの種スラリー(0.2倍量の予め濾過したアセトニトリル中でスラリー化した1.0%w/w)を添加し、固体が沈降しないように十分に速い速度で撹拌しながら、この混合物を50〜60℃で2時間熟成させた。次いでこの混合物を0.25℃/分で0〜5℃まで冷却し、0〜5℃で6時間保持した。この混合物を濾過し、湿ったケーキを、予め濾過したアセトニトリルで2回洗浄した。最初の洗液は14.2ml(6倍量)の予め濾過したアセトニトリルからなり、第2の洗液は9.5ml(4倍量)の予め濾過したアセトニトリルからなった。この湿った固体を真空下で50℃にて乾燥させ、2.39g(85.1%収率)の生成物を得た。
【0138】
典型的には、本発明の塩は薬学的に許容可能な塩である。「薬学的に許容可能な塩」という用語の中に包含される塩は、本発明の化合物の無毒性塩を指す。本発明の化合物の塩は、本発明の化合物中の置換基上にある窒素から誘導される酸付加塩を含み得る。代表的な塩には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチルブロミド、硝酸メチル、メチル硫酸塩、マレイン酸一カリウム塩、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミン、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、カリウム、サリチル酸塩、ナトリウム、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオダイド、トリメチルアンモニウム及び吉草酸塩などの塩が挙げられる。薬学的に許容可能ではない他の塩は、本発明の化合物の調製において有用であり得、これらの塩は、本発明のさらなる態様を形成する。塩は、当業者であれば容易に調製することができる。
【0139】
療法に使用するために、化合物A及びBを未加工の化学物質として投与することができるが、この活性成分を医薬組成物として提示することが可能である。したがって、本発明は、化合物A及び/または化合物Bと、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含む医薬組成物をさらに提供する。化合物A及びBは、上記の通りである。担体、希釈剤または賦形剤は、製剤の他の成分との適合性があるという意味で許容可能なものであり、医薬製剤化が可能であり、そのレシピエントに対して有害であってはならない。本発明の別の態様によれば、化合物A及び/または化合物Bを、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体、希釈剤もしくは賦形剤と混合することを含む、医薬組成物の製造方法も提供される。利用される医薬組成物のこうした成分は、別個の薬学的組み合わせで提供されてもよいし、1つの医薬組成物中で一緒に製剤化されてもよい。したがって、本発明は、医薬組成物の組み合わせであって、その1つが化合物A及び1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体、希釈剤もしくは賦形剤と、化合物B及び1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含有する医薬組成物とを含む、医薬組成物の組み合わせをさらに提供する。
【0140】
化合物A及び/または化合物Bを含む医薬組成物は、PD−1アンタゴニストを含む医薬組成物と組み合わせて使用することができる。同様に、本発明の組み合わせの薬剤のそれぞれは、互いに組み合わせて使用するための別個の医薬組成物として製剤化することができる。
【0141】
医薬組成物は、1単位用量あたりに所定量の活性成分を含有する単位用量形態で提供され得る。当業者に知られているように、1用量あたりの活性成分の量は、治療対象の状態、投与経路ならびに患者の年齢、体重及び状態に依存する。好ましい単位用量の組成物は、1日用量もしくは分割用量またはその適切な一部分の活性成分を含有する組成物である。さらに、このような医薬組成物は、薬学分野でよく知られた方法のいずれかによって調製され得る。
【0142】
化合物A及びBは、いずれかの適切な経路によって投与され得る。好適な経路には、経口、経直腸、経鼻、局所(口腔内及び舌下を含む)、経膣及び非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内及び硬膜外を含む)が挙げられる。好ましい経路は、たとえば、本組み合わせのレシピエントの状態及び治療対象の癌に応じて変わり得るということは理解されるであろう。投与する薬剤のそれぞれを同じ経路または異なる経路で投与してもよいこと、ならびに化合物A及びBを一緒にまたは別個の医薬組成物中に配合してもよいことも理解されよう。
【0143】
本発明の組み合わせにおける任意のバイオ治療薬、たとえば抗PD−1抗体などは、静脈内(IV)注入及び皮下注入を含めた非経口で投与され得る。
【0144】
経口投与に適した医薬組成物は、カプセル剤もしくは錠剤、散剤もしくは顆粒、水性もしくは非水性液体中の液剤もしくは懸濁剤、食用フォームもしくはホイップ、または水中油型乳濁液もしくは油中水型乳濁液などの個別単位として提供され得る。
【0145】
たとえば、活性薬物成分は、錠剤またはカプセル剤の形態での経口投与のために、経口用の無毒性の薬学的に許容可能な不活性な担体、たとえば、エタノール、グリセロール、水などと合わせることができる。散剤は、本化合物を好適な微細サイズへと細かく砕き、同様に細かく砕いた医薬担体、たとえば、デンプンまたはマンニトールなどの食用炭水化物などと混合することにより調製される。矯味矯臭剤、防腐剤、分散剤及び着色剤も存在し得る。
【0146】
カプセル剤は、粉末混合物を上記のように調製し、形成されたゼラチンシースに充填することにより作製される。充填操作の前に、コロイドシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固体ポリエチレングリコールなどの流動促進剤及び潤滑剤を粉末混合物に添加することができる。カプセル剤が服用されるときの薬剤の利用能を改善するために、寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムなどの崩壊剤または溶解補助剤も加えることができる。
【0147】
さらに、所望される場合または必要な場合、好適な結合剤、潤滑剤、崩壊剤及び着色剤もまた粒状にされ得、この粉末混合物を錠剤機に通すことができる。この結果物は不完全に形成されたスラッグであり、これを顆粒に破砕する。この顆粒を潤滑化し、上記混合物に組み込むことができる。好適な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、グルコースまたはβ−ラクトースなどの天然の糖、トウモロコシ甘味料、アラビアゴム、トラガントまたはアルギン酸ナトリウムなどの天然及び合成ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの剤形中で使用される潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤には、限定するものではないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。錠剤は、たとえば、粉末混合物を調製し、顆粒化またはスラッグ化し、潤滑剤及び崩壊剤を添加し、錠剤へと押し固めることにより製剤化される。本化合物、好適には細かく砕いた本化合物を上記の希釈剤または基剤と、必要に応じて、カルボキシメチルセルロース、アルジネート、ゼラチンもしくはポリビニルピロリドンなどの結合剤、パラフィンなどの溶解遅延剤、第四級塩などの再吸収促進剤、及び/またはベントナイト、カオリンもしくはリン酸二カルシウムなどの吸収剤と混合することにより粉末混合物を調製する。この粉末混合物を、シロップ、デンプンペースト、アラビアゴム粘液またはセルロース誘導体もしくは高分子材料の溶液などの結合剤で湿らせ、ふるいに押し通すことにより顆粒化することができる。別の選択肢として、錠剤成形型への付着を防止するために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油が添加される。この潤滑済み混合物を、次いで圧縮して錠剤にする。また、本発明の化合物は、自由流動性の不活性な担体と合わせて、顆粒化または小塊化の工程を経ることなく、圧縮し、直接錠剤にすることができる。セラックの封止被膜、糖または高分子材料のコーティング及びワックスの艶出しコーティングからなる透明または不透明な保護コーティングを施すことができる。これらのコーティングには、異なる単位用量を区別するために、色素が添加され得る。
【0148】
液剤、シロップ剤及びエリキシル剤などの経口用流体は、一定量が所定量の本化合物を含有するように、用量単位形態で調製され得る。シロップ剤は、本化合物を、好適に風味付きの水溶液に溶解させることにより調製することができる。一方、エリキシル剤は、無毒性のアルコール性ビヒクルを使用することにより調製される。懸濁剤は、本化合物を無毒性のビヒクル中に分散させることにより製剤化することができる。エトキシル化イソステアリルアルコール及びポリオキシエチレンソルビトールエーテルなどの溶解剤及び乳化剤、防腐剤、ペパーミント油などの香料添加物または天然甘味料もしくはサッカリンまたは他の人工甘味料なども添加され得る。
【0149】
必要に応じて、経口投与用組成物をマイクロカプセル化してよい。本組成物はまた、たとえば、微粒子物質をポリマー、ワックスなどでコーティングするか、微粒子物質をポリマー、ワックスなどの中に埋め込むことにより、その放出を長期化または持続させるように調製することができる。
【0150】
本発明による使用のための薬剤は、小型単層小胞体、大型単層小胞体及び多層小胞体などのリポソーム送達系の形態でも投与することができる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの種々のリン脂質から形成することができる。
【0151】
また、本発明による使用のための薬剤は、本化合物分子が結合する個々の担体であるモノクローナル抗体を使用することによっても送達することができる。本化合物はまた、標的を設定できる薬物担体である可溶性ポリマーと結合させてもよい。このようなポリマーには、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノールまたはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリジンを挙げることができる。さらに、本化合物は、薬物の制御放出を達成するのに有用なある種の生分解性ポリマー、たとえば、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート及びヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーに結合させてもよい。
【0152】
経皮投与に適した医薬組成物は、レシピエントの表皮とぴったりと接触した状態を長期間維持することを意図した個別のパッチとして提供され得る。たとえば、活性成分は、Pharmaceutical Research,3(6),318(1986)に概して記載されているようなイオン導入法によって、パッチから送達され得る。
【0153】
局所投与に適した医薬組成物は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、液剤、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾルまたはオイルとして製剤化され得る。
【0154】
目または他の外部組織、たとえば口及び皮膚の治療の場合、本組成物は、好ましくは、局所用の軟膏剤またはクリーム剤として適用される。軟膏剤に製剤化される場合、本活性成分は、パラフィン系軟膏基剤または水混和性軟膏基剤のいずれかとともに用いられ得る。あるいは、本活性成分は、水中油型クリーム基剤または油中水型基剤とともにクリーム剤に製剤化され得る。
【0155】
目への局所投与に適した医薬組成物には、好適な担体、特に水性溶媒中に本活性成分が溶解または懸濁されている点眼薬が挙げられる。
【0156】
口腔中での局所投与に適した医薬組成物には、トローチ剤、薬用キャンディー及び口腔洗浄剤が挙げられる。
【0157】
経直腸投与に適した医薬組成物は、坐剤または浣腸剤として提供され得る。
【0158】
担体が固体である経鼻投与に適した医薬組成物には、たとえば20〜500ミクロンの範囲の粒径を有する粗粉末が挙げられる。この場合、鼻のすぐ近くに保持した粉末容器からにおいを嗅ぐように、すなわち急速に吸入して、鼻内を通過させて当該粗粉末を投与する。担体が液体である鼻腔スプレーとしてまたは点鼻剤としての投与に好適な組成物には、本活性成分の水性または油性の液剤が挙げられる。
【0159】
吸入による投与に適した医薬組成物には、様々な種類の定量加圧式エアロゾル、ネブライザまたは注入器によって生成され得る微細粒子粉またはミストが挙げられる。
【0160】
経膣投与に適した医薬組成物は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー組成物として提供され得る。
【0161】
非経口投与に適した医薬組成物には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤及び製剤と対象のレシピエントの血液とを等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の滅菌注射液、ならびに懸濁化剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁剤が挙げられる。この組成物は、単位用量または複数回用量の容器、たとえば密封されたアンプル及びバイアルで提供され得、使用直前に注入用の滅菌した液体担体、たとえば水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)の状態で保存され得る。即時注射液及び即時懸濁剤は、滅菌した散剤、顆粒及び錠剤から調製され得る。
【0162】
PD−1アンタゴニストがバイオ治療薬、たとえばPD−1またはPD−L1に結合するモノクローナル抗体である場合、当該アンタゴニストは、従来の細胞培養を使用してCHO細胞内で産生し、これを従来の回収/精製技術を用いて単離することができる。PD−1アンタゴニストとして抗PD−1抗体を含む医薬組成物は、液剤として提供してもよいし、凍結乾燥した粉末を使用前に注入用滅菌水で溶くことで調製してもよい。WO2012/135408は、本発明での使用に適するMK−3475を含む液剤及び凍結乾燥薬剤の調製について記載している。いくつかの好ましい実施形態において、MK−3475を含む薬剤は、約50mgのMK−3475を含有するガラスバイアルで提供される。
【0163】
上記で特に言及した成分に加えて、本組成物は、該当する製剤の種別を考慮して、当該技術分野にて一般に使用される他の薬剤を含み得ることを理解すべきである。たとえば、経口投与に適した組成物は、矯味矯臭剤を含み得る。
【0164】
化合物A及びBは、両化合物を含む単一の医薬組成物で同時に投与することによって、本発明による組み合わせに用いることができる。あるいは、本組み合わせは、それぞれが化合物A及びBのうちの1つを含む別個の医薬組成物で、たとえば、化合物Aまたは化合物Bが最初に投与され、他方が次に投与されるように順次別々に施されてもよい。このような順次投与は、時間的に近くてもよいし(たとえば同時に)または時間的に離れていてもよい。さらに、本化合物が同じ剤形で投与されるかどうかは重要でなく、たとえば、一方の化合物が局所投与され、他方の化合物が経口投与されてもよい。好適には、両方の化合物が経口投与される。
【0165】
したがって、一実施形態において、単一または複数用量の化合物Aは、単一または複数用量の化合物B及び単一または複数用量のPD−1アンタゴニストと同時にまたは別々に投与される。
【0166】
一実施形態において、複数用量の化合物Aは、複数用量の化合物B及び複数用量のMK−3475またはその抗原結合断片と同時にまたは別々に投与される。
【0167】
一実施形態において、複数用量の化合物Aは、単一用量の化合物B及び単一用量のニボルマブもしくはその抗原結合断片またはMK−3475もしくはその抗原結合断片と同時にまたは別々に投与される。
【0168】
上記実施形態のすべてにおいて、化合物Aが最初に投与されてもよいし、化合物Bが最初に投与されてもよいし、PD−1アンタゴニストが最初に投与されてもよい。
【0169】
本組み合わせは、組み合わせキットとして提供することができる。本発明で使用する「組み合わせキット」または「パーツキット」は、本発明の投薬プロトコルに従って、化合物B及び/または化合物AならびにPD−1アンタゴニスト、たとえば抗PD−1抗体もしくはその抗原結合断片を投与するために使用される医薬組成物または医薬組成物類を意味する。化合物A、B及び抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が同時に投与される場合、本組み合わせキットは、化合物A及び化合物Bを錠剤などの単一の医薬組成物または別個の医薬組成物中に含み、ニボルマブもしくはその抗原結合断片またはMK−3475もしくはその抗原結合断片をバイアル中に含み得る。化合物A及びBが同時に投与されない場合、本組み合わせキットは、化合物B及び/または化合物Aを別個の医薬組成物で含み、ニボルマブもしくはその抗原結合断片またはMK−3475もしくはその抗原結合断片を含有する別の医薬組成物を含み得る。この場合、化合物B及び/または化合物Aは単一のパッケージ中であるか、化合物B及び/または化合物Aは別個のパッケージ中の別個の医薬組成物のいずれかである。
【0170】
一実施形態において、式Iの上記化合物またはその薬学的に許容可能な塩が経口投与に適した錠剤形態で提供される組み合わせキットが提供される。一実施形態において、式IIの上記化合物またはその薬学的に許容可能な塩が経口投与に適した錠剤形態で提供される組み合わせキットが提供される。一実施形態において、上記抗PD−1抗体またはその抗原結合断片がIV投与用に製剤化される組み合わせキットが提供される。一実施形態において、上記抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が皮下投与用に製剤化される組み合わせキットが提供される。
【0171】
一態様において、薬学的に許容可能な補助剤、希釈剤または担体を伴った化合物A、薬学的に許容可能な補助剤、希釈剤または担体を伴った化合物B、及び薬学的に許容可能な補助剤、希釈剤または担体を伴った抗PD−1抗体またはその抗原結合断片の各構成要素を含むパーツキットが提供される。
【0172】
本発明の一実施形態において、本パーツキットは、
薬学的に許容可能な補助剤、希釈剤もしくは担体を伴った化合物B、及び/または
薬学的に許容可能な補助剤、希釈剤もしくは担体を伴った化合物A、ならびに
抗PD−1抗体もしくはその抗原結合断片の各構成要素を含み、
各構成要素が個別順次投与及び/または同時投与に適した形態で提供される。
【0173】
一実施形態において、本パーツキットは、
薬学的に許容可能な補助剤、希釈剤もしくは担体を伴った化合物Bを含む第1の容器、及び/または薬学的に許容可能な補助剤、希釈剤もしくは担体を伴った化合物Aを含む第2の容器、ならびにニボルマブもしくはその抗原結合断片もしくはMK−3475もしくはその抗原結合断片を含む第3の容器を含む。
【0174】
本組み合わせキットは、説明書、たとえば用量及び投与の説明書も備え得る。このような用量及び投与の説明書は、たとえば製剤ラベルにより医師に対して提供される種類のものであり得、患者に対する説明書などの、医師によって提供される種類のものであり得る。
【0175】
本明細書で使用する「負荷投与量」という用語は、化合物Bもしくは化合物Aまたは抗PD−1抗体の単回投与または短期継続レジメンであって、たとえば薬物の血中濃度レベルを急激に上昇させるために、対象に投与される維持量よりも高い用量であるものを意味することが理解されよう。好適には、本発明で使用するための短期継続レジメンは、1〜14日、好適には1〜7日、好適には1〜3日、好適には3日間、好適には2日間、好適には1日間である。いくつかの実施形態において、「負荷投与量」は、薬物の血中濃度を治療的に有効なレベルまで上昇させることができる。いくつかの実施形態において、「負荷投与量」は、その薬物の維持量と併用して、薬剤の血中濃度を治療的に有効なレベルまで上昇させることができる。「負荷投与量」の化合物A及び/または化合物Bは、1日あたり1回または1日あたり複数回(たとえば、1日あたり4回まで)投与され得る。好適には、「負荷投与量」の化合物A及び/または化合物Bは1日1回投与される。好適には、負荷投与量は、維持量の2〜100倍、好適には2〜10倍、好適には2〜5倍、好適には2倍、好適には3倍、好適には4倍、好適には5倍の量である。好適には、負荷投与量は、1〜7日間、好適には1〜5日間、好適には1〜3日間、好適には1日間、好適には2日間、好適には3日間投与され、その後、維持量投薬プロトコルが続く。
【0176】
本明細書で使用する「維持量」という用語は、連続的に投与され(たとえば、少なくとも2回)、かつ本化合物の血中濃度レベルを治療的に有効なレベルまでゆっくりと上げること、または治療的に有効なレベルを維持することのいずれかが意図されている用量を意味することが理解されよう。化合物A及び/または化合物Bの維持量は、通常、1日あたり1回投与され、維持量の一日用量は、負荷投与量の一日総用量よりも少ない。
【0177】
好適には、本発明の組み合わせは、ある「特定期間」内で投与される。
【0178】
「特定期間」という用語及びその派生語は、本明細書で使用する場合、本組み合わせの第1の化合物と本組み合わせの最後の化合物の投与の間の時間の間隔を意味する。たとえば、化合物Aが1番目に投与され、化合物Bが2番目に投与され、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が3番目に投与される場合、化合物Aと抗PD−1抗体またはその抗原結合断片の投与の間の時間間隔が特定期間となる。本発明の1つの化合物が1日に複数回投与される場合、特定期間は、ある特定の日の各成分の最初の投与に基づいて算出される。特定の日の間の最初の投与の後である本発明の化合物のすべての投与は、この特定期間を算出する際には考慮されない。
【0179】
好適には、化合物A、任意に化合物B、及び抗PD−1抗体またはその抗原結合断片とが「特定期間」内に投与され、かつ同時に投与されない場合、これらの化合物は互いに約24時間以内に両方とも投与され(この場合、特定期間は約24時間となる)、好適にはこれらの化合物は互いに約12時間以内に投与され(この場合、特定期間は約12時間となる)、好適にはこれらの化合物は互いに約11時間以内に投与され(この場合、特定期間は約11時間となる)、好適にはこれらの化合物は互いに約10時間以内に投与され(この場合、特定期間は約10時間となる)、好適にはこれらの化合物は互いに約9時間以内に投与され(この場合、特定期間は約9時間となる)、好適にはこれらの化合物は互いに約8時間以内に投与され(この場合、特定期間は約8時間となる)、好適にはこれらの化合物は互いに約7時間以内に投与され(この場合、特定期間は約7時間となる)、好適にはこれらの化合物は互いに約6時間以内に投与され(この場合、特定期間は約6時間となる)、好適にはこれらの化合物は互いに約5時間以内に投与され(この場合、特定期間は約5時間となる)、好適にはこれらの化合物は互いに約4時間以内に投与され(この場合、特定期間は約4時間となる)、好適にはこれらの化合物は互いに約3時間以内に投与され(この場合、特定期間は約3時間となる)、好適にはこれらの化合物は互いに約2時間以内に投与され(この場合、特定期間は約2時間となる)、好適にはこれらの化合物は互いに約1時間以内に投与される(この場合、特定期間は約1時間となり、同時投与とみなされる)。
【0180】
好適には、本発明の組み合わせがある「特定期間」の間に投与される場合、これらの化合物は、ある「継続期間」に同時投与される。
【0181】
「継続期間」という用語及びその派生語は、化合物B及び/または化合物Aに関して本明細書で使用する場合、化合物A及び任意の化合物Bが表記された連続する日数の間投与され、次いで、任意で、成分化合物のうち1つのみが連続する日数の間投与されることを意味する。
【0182】
「継続期間」という用語及びその派生語は、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片について本明細書で使用する場合、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が表記された連続する週の間、1週間に1回投与されることを意味する。
【0183】
「特定期間」投与について:
【0184】
好適には、化合物A、任意に化合物B、及び抗PD−1抗体またはその抗原結合断片は、ある特定期間内に少なくとも1日投与され(この場合、継続期間は少なくとも1日となる)、好適には、治療期間中、化合物A、任意に化合物B、及び抗PD−1抗体またはその抗原結合断片は、ある特定期間内に少なくとも連続する3日の間投与され、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が当該期間中に1回任意で投与され(この場合、継続期間は少なくとも3日となる)、好適には、治療期間中、化合物A、任意に化合物B、及び抗PD−1抗体またはその抗原結合断片は、ある特定期間内に少なくとも連続する5日の間投与され、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が当該期間中に1回任意で投与され(この場合、継続期間は少なくとも5日となる)、好適には、治療期間中、化合物A、任意に化合物B、及び抗PD−1抗体またはその抗原結合断片は、ある特定期間内に少なくとも連続する7日の間投与され、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が当該期間中に1回任意で投与され(この場合、継続期間は少なくとも7日となる)、好適には、治療期間中、化合物A、任意に化合物B、及び抗PD−1抗体またはその抗原結合断片は、ある特定期間内に少なくとも連続する14日の間投与され、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が当該期間中に週1回任意で投与され(この場合、継続期間は少なくとも14日となる)、好適には、治療期間中、化合物A、任意に化合物B、及び抗PD−1抗体またはその抗原結合断片は、ある特定期間内に少なくとも連続する28日の間投与され、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が当該期間中に週1回任意で投与される(この場合、継続期間は少なくとも28日となる)。
【0185】
好適には、これらの成分が「特定期間」の間に投与されない場合、これらの成分は順に投与される。「順次投与」という用語及びその派生語は、本明細書で使用する場合、化合物A、任意に化合物Bまたは抗PD−1抗体もしくはその抗原結合断片の本組み合わせのうちの第1の成分が連続する2日以上の間投与され、次いで本組み合わせの第2の成分が連続する2日以上の間投与され、本組み合わせの最後の成分が連続する2日以上の間投与されることを意味する。また、化合物A、任意に化合物B及び抗PD−1抗体またはその抗原結合断片の順次投与の間に利用される休薬期間が本発明において企図される。本明細書で使用する場合、休薬期間は、化合物A、任意に化合物B及び抗PD−1抗体またはその抗原結合断片のうちの1つの順次投与後で、本発明の他の成分の投与前の日数の期間である。好適には、休薬期間は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日及び14日から選択される日数の期間である。
【0186】
順次投与について:
【0187】
好適には、化合物Bがこの順序の最初に投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが投与され、続いて抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が投与される。好適には、化合物Bが連続する1〜30日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが連続する1〜30日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与される。好適には、化合物Bが連続する1〜21日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが連続する1〜21日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与される。好適には、化合物Bが連続する1〜14日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが連続する1〜14日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与される。好適には、化合物Bが連続する14日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが連続する7日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与される。好適には、化合物Bが連続する7日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが連続する7日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与される。
【0188】
好適には、化合物Aがこの順序の最初に投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが任意で投与され、続いて抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が投与される。好適には、化合物Aが連続する1〜30日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが連続する1〜30日の間任意で投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与される。好適には、化合物Aが連続する1〜21日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが連続する1〜21日の間任意で投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与される。好適には、化合物Aが連続する1〜14日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが連続する1〜14日の間任意で投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与される。好適には、化合物Aが連続する14日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが連続する14日の間任意で投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与される。好適には、化合物Aが連続する7日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが連続する7日の間任意で投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与される。
【0189】
好適には、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片がこの順序の最初に投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが任意で投与され、次いで任意の休薬期間があり、続いて化合物Aが投与される。好適には、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、化合物Bが連続する1〜30日の間任意で投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが連続する1〜30日の間投与される。好適には、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、化合物Bが連続する1〜21日の間任意で投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが連続する1〜21日の間投与される。好適には、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、化合物Bが連続する1〜14日の間任意で投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが連続する1〜14日の間投与される。好適には、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、化合物Bが連続する14日の間任意で投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが連続する14日の間投与される。好適には、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、化合物Bが連続する7日の間任意で投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが連続する7日の間投与される。
【0190】
好適には、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片がこの順序の最初に投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが投与され、次いで任意の休薬期間があり、続いて化合物Bが任意で投与される。好適には、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、化合物Aが連続する1〜30日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが連続する1〜30日の間任意で投与される。好適には、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、化合物Aが連続する1〜21日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが連続する1〜21日の間任意で投与される。好適には、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、化合物Aが連続する1〜14日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが連続する1〜14日の間任意で投与される。好適には、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、化合物Aが連続する14日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが連続する14日の間任意で投与される。好適には、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、化合物Aが連続する7日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが連続する7日の間任意で投与される。
【0191】
好適には、化合物Aがこの順序の最初に投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が投与され、続いて化合物Bが任意で投与される。好適には、化合物Aが連続する1〜30日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが連続する1〜30日の間任意で投与される。好適には、化合物Aが連続する1〜21日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが連続する1〜21日の間任意で投与される。好適には、化合物Aが連続する1〜14日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが連続する1〜14日の間任意で投与される。好適には、化合物Aが連続する14日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが連続する14日の間任意で投与される。好適には、化合物Aが連続する7日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Bが連続する7日の間任意で投与される。
【0192】
好適には、化合物Bがこの順序の最初に投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が投与され、続いて化合物Aが投与される。好適には、化合物Bが連続する1〜30日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが連続する1〜30日の間投与される。好適には、化合物Bが連続する1〜21日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが連続する1〜21日の間投与される。好適には、化合物Bが連続する1〜14日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが連続する1〜14日の間投与される。好適には、化合物Bが連続する14日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが連続する14日の間投与される。好適には、化合物Bが連続する7日の間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後抗PD−1抗体またはその抗原結合断片が週1回、1〜10週間投与され、次いで任意の休薬期間があり、その後化合物Aが連続する7日の間投与される。
【0193】
「特定期間」投与及び「順次」投与の後に反復投薬が続いてもよいし、交互投薬プロトコルが続いてもよいし、また、休薬期間がこの反復投薬または交互投薬プロトコルの前に存在してもよいことが理解される。
【0194】
好適には、本発明による組み合わせの一部として投与される化合物Aの量(塩を形成していない/溶媒和されていない量の重量に基づく)は、約0.125mg〜約10mgから選択される量であり、好適には当該量は約0.25mg〜約9mgから選択される量であり、好適には当該量は約0.25mg〜約8mgから選択される量であり、好適には当該量は約0.5mg〜約8mgから選択される量であり、好適には当該量は約0.5mg〜約7mgから選択される量であり、好適には当該量は約1mg〜約7mgから選択される量であり、好適には当該量は約5mgである。したがって、本発明による組み合わせの一部として投与される化合物Aの量は、約0.125mg〜約10mgから選択される量である。たとえば、本発明による組み合わせの一部として投与される化合物Aの量は、0.125mg、0.25mg、0.5mg、0.75mg、1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg、10mgであり得る。
【0195】
好適には、選択された量の化合物Aは1日1〜4回投与される。好適には、選択された量の化合物Aは1日2回投与される。好適には、選択された量の化合物Aは1日1回投与される。好適には、化合物Aの投与は負荷投与量で開始する。好適には、負荷投与量は、維持量の2〜100倍、好適には2〜10倍、好適には2〜5倍、好適には2倍、好適には3倍、好適には4倍、好適には5倍の量である。好適には、負荷投与量は、1〜7日間、好適には1〜5日間、好適には1〜3日間、好適には1日間、好適には2日間、好適には3日間投与され、その後、維持量投薬プロトコルが続く。
【0196】
好適には、本発明による組み合わせの一部として任意に投与される化合物Bの量(塩を形成していない/溶媒和されていない量の重量に基づく)は、約10mg〜約600mgから選択される量である。好適には当該量は約30mg〜約300mgから選択され、好適には当該量は約30mg〜約280mgから選択され、好適には当該量は約40mg〜約260mgから選択され、好適には当該量は約60mg〜約240mgから選択され、好適には当該量は約80mg〜約220mgから選択され、好適には当該量は約90mg〜約210mgから選択され、好適には当該量は約100mg〜約200mgから選択され、好適には当該量は約110mg〜約190mgから選択され、好適には当該量は約120mg〜約180mgから選択され、好適には当該量は約130mg〜約170mgから選択され、好適には当該量は約140mg〜約160mgから選択され、好適には当該量は約150mgである。したがって、本発明による組み合わせの一部として投与される化合物Bの量は、約10mg〜約300mgから選択される量である。たとえば、本発明による組み合わせの一部として投与される化合物Bの量は、好適には、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mg及び300mgから選択される。好適には、選択された量の化合物Bは1日1〜4回投与される。好適には、選択された量の化合物Bは1日2回投与される。好適には、化合物Bは1日2回投与される。好適には、選択された量の化合物Bは1日1回投与される。
【0197】
好適には、化合物Bの投与は負荷投与量で開始する。好適には、負荷投与量は、維持量の2〜100倍、好適には2〜10倍、好適には2〜5倍、好適には2倍、好適には3倍、好適には4倍、好適には5倍の量である。好適には、負荷投与量は、1〜7日間、好適には1〜5日間、好適には1〜3日間、好適には1日間、好適には2日間、好適には3日間投与され、その後、維持量投薬プロトコルが続く。
【0198】
抗PD−1抗体またはその抗原結合断片は、約50mg/m/週〜約700mg/m/週の用量、好適には、100mg/m/週〜約600mg/m/週、好適には、200mg/m/週〜約500mg/m/週または1、2、3、5または10mg/kgの用量で、治療期間全体で約14日(±2日)または約21日(±2日)または約30日(±2日)の間隔で投与される。
【0199】
一実施形態において、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片は、最初の投与が400mg/m/週〜約500mg/m/週の量で、後続の各投与が200mg/m/週〜300mg/m/週の量で週1回投与される。一実施形態において、抗PD−1抗体は、約0.3〜約3.0mg/kgから最大約10mg/kgの用量で投与される。本発明の抗PD−1抗体またはその抗原結合断片は、静脈内投与用及び/または皮下投与用に製剤化され得る。用量は、毎日、毎週、2週に1回、3週に1回、4週に1回及び/または毎月投与され得る。
【0200】
本発明はまた、上記のPD−1アンタゴニストと薬学的に許容可能な賦形剤とを含む薬剤を提供する。PD−1アンタゴニストがバイオ治療薬、たとえばmAbである場合、当該アンタゴニストは、従来の細胞培養及び回収/精製技術を使用してCHO細胞内で産生することができる。
【0201】
いくつかの実施形態において、PD−1アンタゴニストとして抗PD−1抗体を含む薬剤は、液剤として提供してもよいし、凍結乾燥した粉末を使用前に注入用滅菌水で溶くことで調製してもよい。WO2012/135408は、本発明での使用に適するMK−3475を含む液剤及び凍結乾燥薬剤の調製について記載している。いくつかの好ましい実施形態において、MK−3475を含む薬剤は、約50mgのMK−3475を含有するガラスバイアルで提供される。
【0202】
本発明の一実施形態は、少なくとも8週間、好適には少なくとも4週間、好適には少なくとも2週間、好適には少なくとも10日間、好適には少なくとも7日間、1日1回投与される化合物A、1日1回または2回任意に投与される化合物B及び前述のプロトコルに従って投与されるMK−3475の組み合わせを提供し、好適にはすべての3つの化合物が各7日間の初日に投与される。
【0203】
本発明の一実施形態は、少なくとも8週間、好適には少なくとも4週間、好適には少なくとも2週間、好適には少なくとも10日間、好適には少なくとも7日間、1日1回投与される化合物A、1日1回または2回任意に投与される化合物B及び前述のプロトコルに従って投与されるニボルマブの組み合わせを提供し、好適にはすべての3つの化合物が各7日間の初日に投与される。
【0204】
本明細書で使用する場合、化合物A及び化合物Bに関して明記したすべての量は、遊離化合物または塩を形成していない化合物の量として示している。
【0205】
上記の医薬組成物、組み合わせ、組み合わせキット、使用及び治療法のいずれかのいくつかの実施形態において、化合物AはMEKINIST(トラメチニブ)錠剤で2mgを1錠として毎日1回投与され、化合物BはTANIFLAR(ダブラフェニブ)カプセル剤で75mgを2錠または50mgを3錠として毎日2回投与され、PD−1アンタゴニストはMK−3475であり、2mg/kgの用量で3週ごとに1回または10mg/kgの用量で2週ごとに1回静脈内注入によって投与される。
【0206】
治療方法
【0207】
本発明の組み合わせ及び併用治療は、BRAF及び/もしくはMEKの阻害ならびに/またはPD−1の抑制シグナルを遮断することによる免疫応答の強化が有益である疾患に有用性があると考えられる。
【0208】
したがって、本発明はまた、治療にて使用するための本発明の組み合わせであって、特にBRAF及び/もしくはMEKの阻害ならびに/またはPD−1の抑制シグナルを遮断することによる免疫応答の強化が有益である疾患、とりわけ癌の治療において使用するための組み合わせを提供する。
【0209】
本発明のさらなる態様は、BRAF及び/もしくはMEKの阻害ならびに/またはPD−1の抑制シグナルを遮断することによる免疫応答の強化が有益であり、本発明の組み合わせを施すことを含む、疾患の治療方法を提供する。
【0210】
本発明のさらなる態様は、BRAF及び/もしくはMEKの阻害ならびに/またはPD−1の抑制シグナルを遮断することによる免疫応答の強化が有益である疾患の治療のための薬剤の製造における本発明の組み合わせの使用を提供する。
【0211】
典型的には、当該疾患は、BRAF及び/もしくはMEKの阻害ならびに/またはPD−1の抑制シグナルを遮断することによる免疫応答の強化が有益な効果を持つような癌である。本発明の組み合わせを用いた治療に好適な癌の例には、原発性及び転移性の形態の頭頸部癌、乳癌、肺癌、結腸癌、卵巣癌及び前立腺癌が挙げられるが、これらに限定されない。好適には、癌は、脳癌(神経膠腫)、神経膠芽腫、星状細胞腫、多形膠芽腫、バナヤン−ゾナナ症候群、カウデン病、レルミット−デュクロ病、乳癌、炎症性乳癌、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、上衣腫、髄芽腫、結腸癌、頭頸部癌、腎癌、肺癌、肝癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、骨肉腫、骨巨細胞腫、甲状腺癌、リンパ芽球性T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、ヘアリー細胞白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、AML、慢性好中球性白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、形質細胞腫、免疫芽球性大細胞型白血病、マントル細胞白血病、多発性骨髄腫、巨核芽球性白血病、多発性骨髄腫、急性巨核球性白血病、前骨髄球性白血病、赤白血病、悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ芽球性T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、神経芽細胞腫、膀胱癌、尿路上皮癌、肺癌、外陰癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎癌、中皮腫、食道癌、唾液腺癌、肝細胞癌、胃癌、鼻咽頭癌、頬癌、口腔癌、GIST(消化管間質腫瘍)及び精巣癌から選択される。
【0212】
さらに、治療対象の癌の例には、バレット腺癌、胆道癌、乳癌、子宮頸癌、胆管癌、神経膠芽腫、星状細胞腫(たとえば多形膠芽腫)及び上衣腫などの原発性中枢神経系腫、及び続発性中枢神経系腫瘍(すなわち、中枢神経系外を起源にする腫瘍の中枢神経系への転移)を含めた中枢神経系腫瘍、大腸結腸癌を含めた結直腸癌、胃癌、頭頸部扁平上皮癌を含む頭頸部の癌、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、巨核芽球性白血病、多発性骨髄腫及び赤白血病などの白血病及びリンパ腫を含めた血液癌、肝細胞癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含めた肺癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膵臓癌、下垂体腺腫、前立腺癌、腎臓癌、肉腫、黒色腫を含む皮膚癌、ならびに甲状腺癌が挙げられる。
【0213】
好適には、本発明は、脳癌(神経膠腫)、神経膠芽腫、星状細胞腫、多形膠芽腫、バナヤン−ゾナナ症候群、カウデン病、レルミット−デュクロ病、乳癌、結腸癌、頭頸部癌、腎癌、肺癌、肝癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫及び甲状腺癌から選択される癌を治療するためのまたはその重症度を低減するための方法に関する。
【0214】
好適には、本発明は、卵巣癌、乳癌、膵臓癌及び前立腺癌から選択される癌を治療するためのまたはその重症度を低減するための方法に関する。
【0215】
好適には、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における前癌性症候群を治療するためのまたはその重症度を低減するための方法に関し、前癌性症候群は、頸部上皮内癌、意味不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、頸部損傷、皮膚母斑(早期黒色腫)、前立腺上皮内(管内)腫瘍(PIN)、腺管上皮内癌(DCIS)、結腸ポリープ及び重症肝炎または肝硬変から選択される。
【0216】
好適には、本発明は、Raf及びKRASの野生型もしくは変異体のいずれかならびにPI3K/Ptenの野生型もしくは変異体のいずれかである癌を治療するためのまたはその重症度を低減するための方法に関する。これには、RafとKRASの両方及びPI3K/PTENが野生型である癌、Raf、KRAS及びPI3K/PTENが変異体である癌、Rafが変異体でありKRAS及びPI3K/PTENが野生型である癌、Raf及びKRASが野生型でありPI3K/PTENが変異体である癌を有する患者が含まれる。
【0217】
当該技術分野で理解される「野生型」という用語は、遺伝子改変のない未変性の集団で生じるポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列を指す。また当該技術分野で理解されるように、「変異体」は、それぞれ野生型のポリペプチドまたはポリヌクレオチドにみられるアミノ酸または核酸と比較して、対応するアミノ酸または核酸に少なくとも1つの改変を有するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列を包含する。変異体という用語には、最も一般的にみられる(野生型)核酸鎖と比較して、1つの塩基対の相違が核酸鎖の配列中に存在する、一塩基多型(SNP)が含まれる。好適には、癌がRaf野生型もしくはBRAF野生型またはBRAF V600変異検査陰性である場合、化合物A及び抗PD−1抗体またはその抗原結合断片のみが投与され、化合物Bは投与されない。
【0218】
Rafが野生型または変異体のいずれかである癌、PI3K/Ptenが野生型または変異体のいずれかである癌、及び野生型または変異体である癌は、既知の方法にて特定される。
【0219】
たとえば、野生型または変異体のRafまたはPI3K/PTENの腫瘍細胞は、DNA増幅及び塩基配列決定技術、DNA及びRNA検出技術(限定するものではないが、それぞれノーザンブロット、サザンブロットを含む)ならびに/または種々のバイオチップ技術及びアレイ技術によって特定することができる。野生型及び変異体のポリペプチドは、限定するものではないが、ELISA、ウエスタンブロットまたは免疫細胞化学などの免疫診断技術を含めた各種技術によって検出することができる。好適には、加ピロリン酸分解活性化重合(PAP)及び/またはPCR法を用いることができる。Liu,Q et al;Human Mutation 23:426−436(2004)。
【0220】
好ましい一実施形態において、BRAF V600変異検査に陽性反応を示す進行性または転移性黒色腫を有する患者には、(i)1mg/kg Q3W、2mg/kg Q3Wまたは10mg/kg Q2Wの用量のMK−3475、(ii)100 BIDまたは150 BIDの用量のダブラフェニブ、及び(iii)1mgまたは2mg QDの用量のトラメチニブの組み合わせが投与される。
【0221】
別の好ましい実施形態において、BRAF V600変異検査に陰性反応を示す進行性または転移性黒色腫を有する患者には、(i)2mg/kg Q3Wまたは10mg/kg Q2Wの用量のMK−3475、及び1mg QDまたは2mg QDの用量のトラメチニブの組み合わせが投与される。
【0222】
さらに別の好ましい実施形態において、BRAF V600変異検査に陽性反応を示す進行性または転移性黒色腫を有する患者には、(i)1mg/kg Q3W、2mg/kg Q3Wまたは10mg/kg Q2Wの用量のMK−3475、及び100mg BID または150 BIDの用量のダブラフェニブの組み合わせが投与される。
【0223】
上記の好ましい実施形態のいずれかにおいて、好ましい開始用量は、MK−3475が2mg/kg Q3W、ダブラフェニブが150mg BID、トラメチニブが2mg QDである。当該組み合わせによる治療中に、患者がキナーゼ阻害剤に関連する有害事象を受ける場合には、ダブラフェニブ及び/またはトラメチニブの用量を最大出発用量の半分まで減らすのが好ましい。当該組み合わせによる治療中に、患者が免疫関連の有害事象を受ける場合には、MK−3475の用量を半分の開始用量、たとえば1mg/kg Q3Wまで低減する。
【0224】
進行性または転移性黒色腫の治療に関する上記の好ましい実施形態のそれぞれにおいて、MK−3475は、好ましくは、10mMのヒスチジン緩衝液(pH5.5)中に25mg/mlのMK−3475、7%(w/v)のスクロース、0.02%(w/v)のポリソルベート80を含む液状医薬組成物として投与され、選択された用量の組成物が約30分(たとえば25〜40分)の時間をかけてIV注入により投与される。
【0225】
進行性または転移性黒色腫の治療に関する上記の実施形態のいずれかにおいて、当該組み合わせは、少なくとも1サイクル6週間投与され、好ましくは、治療期間は少なくとも6、12、18または24ヶ月のいずれかで、CR後及びPDの観察後少なくとも2サイクルである。
【0226】
進行性または転移性黒色腫の治療に関する上記の実施形態のいずれかにおいて、本組み合わせは、PD−L1発現検査に陽性反応を示す腫瘍を有する患者に投与される。
【0227】
進行性または転移性黒色腫の治療に関する上記の実施形態のいずれかにおいて、患者は、好ましくはブドウ膜または眼内黒色腫の診断を受けておらず、PD−1、PD−L1、CTLA4、BRAF、MEKまたはMAPK経路中の他の分子を標的にする薬剤を用いた転移性または進行性黒色腫の全身治療を先に受けていないのが好ましい。
【0228】
本発明の組み合わせは、単独で、または1つもしくは複数の他の治療薬と組み合わせて用いることができる。したがって、本発明は、さらなる態様において、本発明の組み合わせとさらなる治療薬とを含むさらなる組み合わせ、当該組み合わせを含む組成物及び薬剤、ならびに当該さらなる組み合わせ、組成物及び薬剤の治療における使用、特に、MEKの阻害及び/もしくはBRAFの阻害ならびに/またはPD−1の抑制シグナル伝達を遮断することによる免疫応答の強化に対して感受性のある疾患の治療における使用を提供する。
【0229】
一実施形態において、本発明の組み合わせは、癌治療の他の治療法と一緒に使用してもよい。特に、抗新生物治療において、前述の治療法以外の他の化学療法薬、ホルモン剤、抗体剤ならびに外科的治療及び/または放射線治療との併用療法が想定される。したがって、本発明による併用療法は、化合物A、化合物B及びMK−3475またはニボルマブの投与、ならびに他の抗新生物薬などの他の治療薬の使用を含む。こうした薬剤の組み合わせは、一緒に投与しても個別に投与してもよく、個別に投与する場合は、任意の順序で同時にまたは連続的に行ってよく、時間的に近くても離れていてもよい。一実施形態において、本薬剤の組み合わせは、化合物A、化合物B及びMK−3475、ならびに少なくとも1つの任意追加の抗新生物薬を含む。一実施形態において、本薬剤の組み合わせは、化合物A、化合物B及びニボルマブ、ならびに少なくとも1つの任意追加の抗新生物薬を含む。
【0230】
一実施形態において、さらなる抗癌治療は、外科的治療及び/または放射線治療である。
【0231】
一実施形態において、さらなる抗癌治療は、少なくとも1つの追加の抗新生物薬である。
【0232】
治療対象の感受性腫瘍に対して活性のあるあらゆる抗新生物薬を本組み合わせに利用することができる。典型的な有用な抗新生物薬には、ジテルペノイド及びビンカアルカロイドなどの抗微小管薬、白金配位錯体、ナイトロジェンマスタード、オキサアザホスホリン、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、及びトリアゼンなどのアルキル化剤、アントラサイクリン、アクチノマイシン及びブレオマイシンなどの抗生物剤、エピポドフィロトキシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤、プリン及びピリミジン類似体及び抗葉酸化合物などの代謝拮抗剤、カンプトテシンなどのトポイソメラーゼI阻害剤、ホルモン及びホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシン血管新生阻害剤、免疫療法薬、アポトーシス促進剤、ならびに細胞周期シグナル伝達阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0233】
抗微小管薬または有糸分裂阻害薬:抗微小管薬または有糸分裂阻害薬は、細胞周期のM期または有糸分裂期の間、腫瘍細胞の微小管に対して活性を示す期特異的な薬剤である。抗微小管薬の例には、ジテルペノイド及びビンカアルカロイドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0234】
ジテルペノイドは、天然の供給源に由来し、細胞周期のG/M期に作用する期特異的抗癌剤である。ジテルペノイドは、微小管のβ−チューブリンサブユニットを、このタンパク質と結合することにより安定化すると考えられる。その後、このタンパク質の分解が阻害され、有糸分裂が停止されて細胞死に至ると思われる。ジテルペノイドの例には、パクリタキセル及びその類似体のドセタキセルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0235】
パクリタキセル、すなわち5β,20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサ−ヒドロキシタクス−11−エン−9−オン4,10−ジアセテート2−ベンゾエートの13−位での(2R,3S)−N−ベンゾイル−3−フェニルイソセリンとのエステルは、タイヘイヨウイチイの木(Taxus brevifolia)から単離される天然ジテルペン産物であり、注射液TAXOL(登録商標)として市販されている。これは、テルペンのタキサン類の1つである。パクリタキセルは、米国で難治性の卵巣癌の治療(Markman et al.,Yale Journal of Biology and Medicine,64:583,1991;McGuire et al.,Ann.lntem,Med.,111:273,1989)及び乳癌の治療(Holmes et al.,J.Nat.Cancer Inst.,83:1797,1991.)における臨床使用が承認されている。パクリタキセルは、皮膚癌(Einzig et.al.,Proc.Am.Soc.Clin.Oncol.,20:46)及び頭頸部癌(Forastire et.al.,Sem.Oncol.,20:56,1990)の新生物治療のための可能性のある候補である。またこの化合物は、多発性嚢胞腎疾患(Woo et.al.,Nature,368:750.1994)、肺癌及びマラリアの治療にも可能性がある。パクリタキセルを用いた患者の治療により、閾値濃度(50nM)を上回る投薬継続期間に関連した骨髄抑制(複数の細胞系統、Ignoff,R.J.et.al,Cancer Chemotherapy Pocket Guide,19988)がもたらされる(Kearns,C.M.et.al.,Seminars in Oncology,3(6)p.16−23,1995)。
【0236】
ドセタキセル、すなわち(2R,3S)−N−カルボキシ−3−フェニルイソセリン,N−tert−ブチルエステルの13−位での5β−20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタクス−11−エン−9−オン4−アセテート2−ベンゾエートとのエステルの三水和物は、TAXOTERE(登録商標)として、注射液として市販されている。ドセタキセルは乳癌の治療に適応がある。ドセタキセルは、セイヨウイチイの木の針状葉から抽出される天然の前駆体である、10−デアセチル−バッカチンIIIを使用して調製されるパクリタキセル(上記を参照)の半合成の誘導体である。
【0237】
ビンカアルカロイドは、ツルニチニチソウ植物に由来する期特異的抗新生物薬である。ビンカアルカロイドは、チューブリンに特異的に結合することにより、細胞周期のM期(有糸分裂)で作用する。その結果、結合したチューブリン分子は、微小管に重合できなくなる。有糸分裂は、細胞分裂中期で停止され、細胞死が続くと考えられる。ビンカアルカロイドの例には、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0238】
ビンブラスチン、すなわち硫酸ビンカロイコブラスチンは、VELBAN(登録商標)として、注射液として市販されている。ビンブラスチンは、種々の固形腫瘍の第二選択療法として適応の可能性を有するが、主に、精巣癌ならびにホジキン病、リンパ球性及び組織球性リンパ腫を含めた各種リンパ腫の治療に適応がある。骨髄抑制は、ビンブラスチンの用量制限副作用である。
【0239】
ビンクリスチン、すなわち22−オキソビンカロイコブラスチン−硫酸塩、は、ONCOVIN(登録商標)として、注射液として市販されている。ビンクリスチンは、急性白血病の治療に適応があり、ホジキン悪性リンパ腫及び非ホジキン悪性リンパ腫のための治療レジメンでの使用が見いだされている。脱毛症及び神経学的作用は、ビンクリスチンの最も一般的な副作用であり、より小さい程度ではあるが骨髄抑制及び胃腸の粘膜炎作用が生じる。
【0240】
ビノレルビン、すなわち3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−C’−ノルビンカロイコブラスチン[R−(R,R)−2,3−ジヒドロキシブタンジオエート(1:2)(塩)]は、酒石酸ビノレルビンの注射液(NAVELBINE(登録商標))として市販されており、これは、半合成のビンカアルカロイドである。ビノレルビンは、単剤としてまたはシスプラチンなどの他の化学療法剤と組み合わせて、種々の固形腫瘍、特に非小細胞肺癌、進行性乳癌及びホルモン不応性前立腺癌の治療に適応がある。骨髄抑制は、ビノレルビンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0241】
白金配位錯体:白金配位錯体は、DNAとの相互作用が可能な期特異的でない抗癌剤である。白金錯体は、腫瘍細胞に進入し、アクア化を受けて、DNAと鎖内及び鎖間の架橋を形成し、腫瘍に対して有害な生物学的効果を引き起こす。白金配位錯体の例には、オキサリプラチン、シスプラチン及びカルボプラチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0242】
シスプラチン、すなわちシス−ジアミンジクロロ白金は、PLATINOL(登録商標)として、注射液として市販されている。シスプラチンは、主に、転移性の精巣癌及び卵巣癌ならびに進行膀胱癌の治療に適応がある。
【0243】
カルボプラチン、すなわち白金ジアミン[1,1−シクロブタン−ジカルボキシレート(2−)−O,O’]は、PARAPLATIN(登録商標)として、注射液として市販されている。カルボプラチンは、主に、進行卵巣癌の第一選択及び第二選択の治療に適応がある。
【0244】
アルキル化剤:アルキル化剤は、期特異的でない抗癌剤であり、強い求電子剤である。通常、アルキル化剤は、リン酸、アミノ基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基及びイミダゾール基などのDNA分子の求核性部分を介するアルキル化によって、DNAと共有結合を形成する。このようなアルキル化は核酸機能を破壊し、細胞死へと導く。アルキル化剤の例には、シクロホスファミド、メルファラン及びクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード、ブスルファンなどのアルキルスルホネート、カルムスチンなどのニトロソウレアならびにダカルバジンなどのトリアゼンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0245】
シクロホスファミド、すなわち2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキサアザホスホリン2−オキシド一水和物は、CYTOXAN(登録商標)として、注射液または錠剤として市販されている。シクロホスファミドは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫及び白血病の治療に適応がある。
【0246】
メルファラン、すなわち4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニンは、ALKERAN(登録商標)として、注射液または錠剤として市販されている。メルファランは、多発性骨髄腫及び切除不可能な卵巣上皮癌の待機療法に適応がある。骨髄抑制は、メルファランの最も一般的な用量制限副作用である。
【0247】
クロラムブシル、すなわち4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸は、LEUKERAN(登録商標)錠剤として市販されている。クロラムブシルは、慢性リンパ性白血病ならびにリンパ肉腫、巨大濾胞性リンパ腫及びホジキン病などの悪性リンパ腫の待機療法に適応がある。
【0248】
ブスルファン、すなわち1,4−ブタンジオールジメタンスルホネートは、MYLERAN(登録商標)錠剤として市販されている。ブスルファンは、慢性骨髄性白血病の待機療法に適応がある。
【0249】
カルムスチン、すなわち1,3−[ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレアは、BiCNU(登録商標)として、凍結乾燥した物質の単一バイアルとして市販されている。カルムスチンは、単剤としてまたは他の薬剤と組み合わせて、脳腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキン病及び非ホジキンリンパ腫のための待機療法に適応がある。
【0250】
ダカルバジン、すなわち5−(3,3−ジメチル−1−トリアゼノ)−イミダゾール−4−カルボキサミドは、DTIC−Dome(登録商標)として、物質の単一バイアルとして市販されている。ダカルバジンは、転移性の悪性黒色腫の治療に適応があり、また他の薬剤と組み合わせてホジキン病の第二選択治療に適応がある。
【0251】
抗生物質抗新生物薬:抗生物質抗新生物薬は、DNAに結合またはインターカレートする、期特異的でない薬剤である。通常、こうした作用により安定なDNA複合体または鎖の切断が生じ、核酸の通常機能が破壊され、細胞死に至る。抗生物質抗新生物薬の例には、ダクチノマイシンなどのアクチノマイシン、ダウノルビシン及びドキソルビシンなどのアントラサイクリンならびにブレオマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0252】
アクチノマイシンDとしても知られるダクチノマイシンは、COSMEGEN(登録商標)として、注射用形態で市販されている。ダクチノマイシンは、ウィルムス腫瘍及び横紋筋肉腫の治療に適応がある。
【0253】
ダウノルビシン、すなわち(8S−シス−)−8−アセチル−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12ナフタセンジオン塩酸塩は、DAUNOXOME(登録商標)としてリポソーム注射用形態として、またはCERUBIDINE(登録商標)として注射剤として市販されている。ダウノルビシンは、急性非リンパ球性白血病及び進行したHIV関連カポジ肉腫の治療における寛解導入療法に適応がある。
【0254】
ドキソルビシン、すなわち(8S,10S)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル)オキシ]−8−グリコロイル,7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12ナフタセンジオン塩酸塩は、RUBEX(登録商標)またはADRIAMYCIN RDF(登録商標)として、注射用形態として市販されている。ドキソルビシンは、主に、急性リンパ芽球性白血病及び急性骨髄芽球性白血病の治療に適応があるが、いくつかの固形腫瘍及びリンパ腫の治療においても有用な成分である。
【0255】
ストレプトマイセス・ベルチシルス(Streptomyces verticillus)の株から単離される細胞毒性糖ペプチド抗生物質の混合物であるブレオマイシンは、BLENOXANE(登録商標)として市販されている。ブレオマイシンは、単剤としてまたは他の薬剤と組み合わせて、扁平上皮細胞癌、リンパ腫及び精巣癌の待機療法として適応がある。
【0256】
トポイソメラーゼII阻害剤:トポイソメラーゼII阻害剤には、エピポドフィロトキシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0257】
エピポドフィロトキシンは、マンドレイク植物に由来する期特異的抗新生物薬である。エピポドフィロトキシンは、通常、トポイソメラーゼII及びDNAと三元複合体を形成してDNA鎖の切断を引き起こすことにより、細胞周期のS期及びG期において細胞に影響を及ぼす。この鎖の切断が蓄積し、細胞死が続いて起こる。エピポドフィロトキシンの例には、エトポシド及びテニポシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0258】
エトポシド、すなわち4’−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−0−(R)−エチリデン−β−D−グルコピラノシド]は、VePESID(登録商標)として、注射液またはカプセル剤として市販されており、VP−16として一般に知られている。エトポシドは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、精巣癌及び非小細胞肺癌の治療に適応がある。
【0259】
テニポシド、すなわち4’−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−0−(R)−テニリデン−β−D−グルコピラノシド]は、VUMON(登録商標)として、注射液として市販されており、VM−26として一般に知られている。テニポシドは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、小児の急性白血病の治療に適応がある。
【0260】
代謝拮抗剤新生物薬:代謝拮抗剤新生物薬は、DNA合成を阻害することまたはプリンもしくはピリミジン塩基の合成を阻害することでDNA合成を制限することにより、細胞周期のS期(DNA合成)で作用する、期特異的抗新生物薬である。その結果、S期は進行せず、細胞死が続けて起こる。代謝拮抗剤抗新生物薬の例には、フルオロウラシル、メトトレキセート、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン及びゲムシタビンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0261】
5−フルオロウラシル、すなわち5−フルオロ−2,4−(1H,3H)ピリミジンジオンは、フルオロウラシルとして市販されている。5−フルオロウラシルの投与は、チミジル酸合成の阻害を生じ、RNA及びDNAの両方に取り込まれる。その結果は、通常、細胞死である。5−フルオロウラシルは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、乳房、結腸、直腸、胃及び膵臓の癌の治療に適応がある。他のフルオロピリミジン類似体には、5−フルオロデオキシウリジン(フロクスウリジン)及び5−フルオロデオキシウリジン一リン酸が挙げられる。
【0262】
シタラビン、すなわち4−アミノ−1−β−D−アラビノフラノシル−2(1H)−ピリミジノンは、CYTOSAR−U(登録商標)として市販されており、Ara−Cとして一般に知られている。シタラビンは、成長するDNA鎖へのシタラビンの末端組み込みによってDNA鎖の延長を阻害することにより、S期において細胞期特異性を示すと考えられる。シタラビンは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、急性白血病の治療に適応がある。他のシチジン類似体には、5−アザシチジン及び2’,2’−ジフルオロデオキシシチジン(ゲムシタビン)が挙げられる。
【0263】
メルカプトプリン、すなわち1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオン一水和物は、PURINETHOL(登録商標)として市販されている。メルカプトプリンは、いまだ特定されていない機序によってDNA合成を阻害することによりS期において細胞期特異性を示す。メルカプトプリンは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、急性白血病の治療に適応がある。有用なメルカプトプリン類似体はアザチオプリンである。
【0264】
チオグアニン、すなわち2−アミノ−1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオンは、TABLOID(登録商標)として市販されている。チオグアニンは、いまだ特定されていない機序によってDNA合成を阻害することによりS期において細胞期特異性を示す。チオグアニンは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、急性白血病の治療に適応がある。他のプリン類似体には、ペントスタチン、エリスロヒドロキシノニルアデニン、リン酸フルダラビン及びクラドリビンが挙げられる。
【0265】
ゲムシタビン、すなわち2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン一塩酸塩(β−異性体)は、GEMZAR(登録商標)として市販されている。ゲムシタビンは、G1/S境界で細胞の進行を遮断することによりS期において細胞期特異性を示す。ゲムシタビンは、シスプラチンと組み合わせて局所進行性非小細胞肺癌の治療に適応があり、単独で局所進行性膵臓癌の治療に適応がある。
【0266】
メトトレキセート、すなわちN−[4[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸は、メトトレキセートナトリウムとして市販されている。メトトレキセートは、プリンヌクレオチド及びチミジル酸の合成に必要とされるジヒドロ葉酸レダクターゼの阻害を通してDNAの合成、修復及び/または複製を阻害することにより、特異的にS期において細胞期効果を示す。メトトレキセートは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、絨毛癌、髄膜白血病、非ホジキンリンパ腫ならびに乳房、頭部、頸部、卵巣及び膀胱の癌の治療に適応がある。
【0267】
トポイソメラーゼI阻害剤:カンプトテシン及びカンプトテシン誘導体を含めたカンプトテシンは、トポイソメラーゼI阻害剤として利用できるかまたは開発中である。カンプトテシン細胞傷害活性は、そのトポイソメラーゼI阻害活性と関連すると考えられる。カンプトテシンの例には、イリノテカン、トポテカン及び下記の7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20−カンプトテシンの種々の光学異性体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0268】
イリノテカンHCl、すなわち(4S)−4,11−ジエチル−4−ヒドロキシ−9−[(4−ピペリジノピペリジノ)カルボニルオキシ]−1H−ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14(4H,12H)−ジオン塩酸塩は、注射液のCAMPTOSAR(登録商標)として市販されている。イリノテカンは、自身の活性代謝産物SN−38とともに、トポイソメラーゼI−DNA複合体に結合するカンプトテシンの誘導体である。細胞毒性は、トポイソメラーゼI:DNA:イリノテカンまたはSN−38の三元複合体と複製酵素との相互作用によって引き起こされる回復不能な二重鎖の切断の結果として生じるものと考えられる。イリノテカンは、結腸または直腸の転移性癌の治療に適応がある。
【0269】
トポテカンHCl、すなわち(S)−10−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−エチル−4,9−ジヒドロキシ−1H−ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14−(4H,12H)−ジオン一塩酸塩は、注射液のHYCAMTIN(登録商標)として市販されている。トポテカンは、トポイソメラーゼI−DNA複合体に結合するカンプトテシンの誘導体であり、DNA分子のねじれ歪みに応答してトポイソメラーゼIによって引き起こされる一重鎖の切断の再連結を防止する。トポテカンは、卵巣癌及び小細胞肺癌の転移性癌の第二選択治療に適応がある。
【0270】
ホルモン及びホルモン類似体:ホルモン及びホルモン類似体は、ホルモンと癌の成長及び/または成長の欠如との間に関係がある癌を治療するために有用な化合物である。癌治療において有用なホルモン及びホルモン類似体の例には、小児の悪性リンパ腫及び急性白血病の治療において有用なプレドニゾン及びプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド、副腎皮質癌及びエストロゲン受容体を含有するホルモン依存性乳癌の治療において有用なアミノグルテチミドならびにアナストロゾール、レトラゾール、ボラゾール及びエキセメスタンなどの他のアロマターゼ阻害剤、ホルモン依存性乳癌及び子宮内膜癌の治療において有用な酢酸メゲストロールなどのプロゲストリン、エストロゲン、アンドロゲンならびに前立腺癌及び良性前立腺肥大の治療において有用なフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロン及び5α−還元酵素、たとえばフィナステリド及びデュタステリドなどの抗アンドロゲン、ホルモン依存性乳癌及び他の感受性癌の治療において有用なタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェンなどの抗エストロゲン剤ならびに米国特許第5,681,835号、同第5,877,219号及び同第6,207,716号に記載されるものなどの選択的エストロゲン受容体調節剤(SERMS)、ならびに前立腺癌の治療のために黄体形成ホルモン(LH)及び/または卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出を刺激する性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)及びその類似体、たとえば、酢酸ゴセレリン及びリュープロリドなどのLHRHアゴニスト及びアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。
【0271】
シグナル伝達経路阻害剤:シグナル伝達経路阻害剤は、細胞内変化を惹起する化学プロセスを遮断または阻害する阻害剤である。本明細書で使用する場合、この変化は細胞増殖または分化である。本発明で有用なシグナル伝達阻害剤には、受容体チロシンキナーゼ、非受容体チロシンキナーゼ、SH2/SH3ドメイン遮断剤、セリン/トレオニンキナーゼ、ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ、ミオイノシトールシグナル伝達及びRas癌遺伝子の阻害剤が挙げられる。
【0272】
いくつかのプロテインチロシンキナーゼは、細胞成長の調節に関与する種々のタンパク質中の特定のチロシル残基のリン酸化を触媒する。このようなプロテインチロシンキナーゼは、受容体または非受容体キナーゼに大まかに分類することができる。
【0273】
受容体チロシンキナーゼは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン及びチロシンキナーゼドメインを有する膜貫通型タンパク質である。受容体チロシンキナーゼは、細胞成長の調節に関与し、一般に成長因子受容体と呼ばれる。これらのキナーゼの大半が、たとえば過剰発現または変異により不適切にまたは無秩序に活性化すると、すなわち異常なキナーゼ増殖因子受容体活性となり、無秩序な細胞成長がもたらされることが示されている。したがって、こうした異常なキナーゼ活性は、悪性の組織成長に関連づけられてきた。結果として、こうしたキナーゼの阻害剤は、癌治療方法を提供し得る。成長因子受容体には、たとえば、上皮成長因子受容体(EGFr)、血小板由来成長因子受容体(PDGFr)、erbB2、erbB4、ret、血管内皮増殖因子受容体(VEGFr)、免疫グロブリン様及び上皮成長因子相同ドメインを有するチロシンキナーゼ(TIE−2)、インスリン成長因子−I(IGFI)受容体、マクロファージコロニー刺激因子(cfms)、BTK、ckit、cmet、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、Trk受容体(TrkA、TrkB及びTrkC)、エフリン(eph)受容体ならびにRET癌原遺伝子が挙げられる。複数の成長受容体阻害剤が開発中であり、これらには、リガンドアンタゴニスト、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤及びアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。成長因子受容体及び成長因子受容体の機能を阻害する薬剤は、たとえばKath,John C.,Exp.Opin.Ther.Patents(2000)10(6):803−818;Shawver et al DDT Vol 2,No.2 February 1997及びLofts,F.J.et al,“Growth factor receptors as targets,” New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy,ed.Workman,Paul and Kerr,David,CRC press 1994,Londonに記載されている。
【0274】
成長因子受容体キナーゼではないチロシンキナーゼは、非受容体チロシンキナーゼと呼ばれる。抗癌剤の標的または潜在的な標的である、本発明において有用な非受容体チロシンキナーゼには、cSrc、Lck、Fyn、Yes、Jak、cAbl、FAK(接着斑キナーゼ)、ブルトン型チロシンキナーゼ及びBcr−Ablが挙げられる。このような非受容体キナーゼ及び非受容体チロシンキナーゼの機能を阻害する薬剤は、Sinh,S.and Corey,S.J.,(1999)Journal of Hematotherapy and Stem Cell Research 8(5):465−80及びBolen,J.B.,Brugge,J.S.,(1997)Annual review of Immunology.15:371−404に記載されている。
【0275】
SH2/SH3ドメイン遮断剤は、PI3−K p85サブユニット、Srcファミリーキナーゼ、アダプター分子(Shc、Crk、Nck、Grb2)及びRas−GAPを含めた種々の酵素またはアダプタータンパク質においてSH2またはSH3ドメイン結合を破壊する薬剤である。抗癌剤の標的としてのSH2/SH3ドメインは、Smithgall,T.E.(1995),Journal of Pharmacological and Toxicological Methods.34(3)125−32で論じられている。
【0276】
Rafキナーゼ(rafk)、分裂促進因子または細胞外調節キナーゼ(MEK)及び細胞外調節キナーゼ(ERK)の遮断薬を含むMAPキナーゼカスケード遮断薬などのセリン/スレオニンキナーゼの阻害剤、ならびにPKC(α、β、γ、ε、μ、λ、ι、ζ)の遮断薬を含むプロテインキナーゼCファミリーメンバー遮断薬。IkBキナーゼファミリー(IKKa、IKKb)、PKBファミリーキナーゼ、aktキナーゼファミリーのメンバー及びTGFβ受容体キナーゼ。このようなセリン/スレオニンキナーゼ及びその阻害剤は、Yamamoto,T.,Taya,S.,Kaibuchi,K.,(1999),Journal of Biochemistry.126(5)799−803;Brodt,P,Samani,A.,and Navab,R.(2000), Biochemical Pharmacology,60.1101−1107;Massague,J.,Weis−Garcia,F.(1996)Cancer Surveys.27:41−64;Philip,P.A.,and Harris,A.L.(1995),Cancer Treatment and Research.78:3−27,Lackey,K.et al Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters,(10),2000,223−226、米国特許第6,268,391号、ならびにMartinez−Iacaci,L.,et al,Int.J.Cancer(2000),88(1),44−52に記載されている。
【0277】
PI3−キナーゼ、ATM、DNA−PK及びKuの遮断薬を含めたホスファチジルイノシトール−3キナーゼファミリーのメンバーの阻害剤も本発明で有用である。このようなキナーゼは、Abraham,R.T.(1996),Current Opinion in Immunology.8(3)412−8;Canman,C.E.,Lim,D.S.(1998),Oncogene 17(25)3301−3308;Jackson,S.P.(1997),International Journal of Biochemistry and Cell Biology.29(7):935−8及びZhong,H.et al,Cancer res,(2000)60(6),1541−1545で論じられている。
【0278】
ホスホリパーゼC遮断薬及びミオイノシトール類似体などのミオイノシトールシグナル伝達阻害剤も本発明で有用である。このようなシグナル阻害剤は、Powis,G.,and Kozikowski A.,(1994)New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy ed.,Paul Workman and David Kerr,CRC press 1994,Londonに記載されている。
【0279】
別の群のシグナル伝達経路阻害剤は、Ras癌遺伝子の阻害剤である。このような阻害剤には、ファルネシルトランスフェラーゼ、ゲラニル−ゲラニルトランスフェラーゼ及びCAAXプロテアーゼの阻害剤、ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム及び免疫療法が挙げられる。このような阻害剤は、野生型変異体rasを含有する細胞においてras活性化を遮断し、これにより抗増殖薬として作用することが示されている。Ras癌遺伝子阻害については、Scharovsky,O.G.,Rozados,V.R.,Gervasoni,S.I.Matar,P.(2000),Journal of Biomedical Science.7(4)292−8;Ashby,M.N.(1998),Current Opinion in Lipidology.9(2)99−102及びBioChim.Biophys.Acta,(19899)1423(3):19−30で論じられている。
【0280】
前述したように、受容体キナーゼリガンド結合に対する抗体アンタゴニストも、シグナル伝達阻害剤として機能し得る。この群のシグナル伝達経路阻害剤には、受容体チロシンキナーゼの細胞外リガンド結合ドメインに対するヒト化抗体の使用が挙げられる。たとえば、Imclone C225 EGFR特異的抗体(Green,M.C.et al,Monoclonal Antibody Therapy for Solid Tumors,Cancer Treat.Rev.,(2000),26(4),269−286)参照)、Herceptin(登録商標)erbB2抗体(Tyrosine Kinase Signalling in Breast cancer:erbB Family Receptor Tyrosine Kinases,Breast cancer Res.,2000,2(3),176−183参照)及び2CB VEGFR2特異的抗体(Brekken,R.A.et al,Selective Inhibition of VEGFR2 Activity by a monoclonal Anti−VEGF antibody blocks tumor growth in mice,Cancer Res.(2000)60,5117−5124参照)である。
【0281】
抗血管新生薬:非受容体血管新生阻害剤を含めた抗血管新生薬も有用であり得る。血管内皮成長因子の効果を阻害するものなどの抗血管新生薬(たとえば抗血管内皮細胞成長因子抗体ベバシズマブ[Avastin(商標)]、及び他の機序によって働く化合物(たとえばリノミド、インテグリンαvβ3機能の阻害剤、エンドスタチン及びアンギオスタチン)。
【0282】
免疫療法薬:免疫療法レジメンで使用される薬剤も、式(I)の化合物と組み合わせて有用であり得る。たとえば患者の腫瘍細胞の免疫原性を上げるためのエクスビボ及びインビボアプローチを含めた免疫療法アプローチ、たとえばインターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子などのサイトカインを用いたトランスフェクション、T細胞アネルギーを低下させるためのアプローチ、サイトカインをトランスフェクトした樹状細胞などのトランスフェクトした免疫細胞を用いるアプローチ、サイトカインで形質移入した腫瘍細胞株を用いるアプローチ、ならびに抗イディオタイプ抗体を用いるアプローチ。
【0283】
アポトーシス促進剤:アポトーシス促進レジメンで使用される薬剤(たとえば、bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチド)も本発明の組み合わせで使用され得る。
【0284】
細胞周期シグナル伝達阻害剤:細胞周期シグナル伝達阻害剤は、細胞周期の制御に関与する分子を阻害する。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と呼ばれるプロテインキナーゼのファミリー及びサイクリンと呼ばれるタンパク質のファミリーとのその相互作用は、真核細胞周期の進行を制御する。異なるサイクリン/CDK複合体の協調的な活性化及び不活化は、細胞周期の正常な進行のために必要である。複数の細胞周期シグナル伝達阻害剤が開発中である。たとえば、CDK2、CDK4及びCDK6を含めたサイクリン依存性キナーゼならびに同阻害剤の例は、たとえば、Rosania et al,Exp.Opin.Ther.Patents(2000)10(2):215−230に記載されている。
【0285】
一実施形態において、本発明の組み合わせは、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物と、抗微小管薬、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモン及びホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシン血管新生阻害剤、免疫療法薬、アポトーシス促進剤ならびに細胞周期シグナル伝達阻害剤から選択される少なくとも1つの抗新生物薬とを含む。
【0286】
一実施形態において、本発明の組み合わせは、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物と、ジテルペノイド及びビンカアルカロイドから選択される抗微小管薬である少なくとも1つの抗新生物薬とを含む。
【0287】
さらなる実施形態において、少なくとも1つの抗新生物薬はジテルペノイドである。
【0288】
さらなる実施形態において、少なくとも1つの抗新生物薬はビンカアルカロイドである。
【0289】
一実施形態において、本発明の組み合わせは、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物と、白金配位錯体である少なくとも1つの抗新生物薬とを含む。
【0290】
さらなる実施形態において、少なくとも1つの抗新生物薬はパクリタキセル、カルボプラチンまたはビノレルビンである。
【0291】
さらなる実施形態において、少なくとも1つの抗新生物薬はカルボプラチンである。
【0292】
さらなる実施形態において、少なくとも1つの抗新生物薬はビノレルビンである。
【0293】
さらなる実施形態において、少なくとも1つの抗新生物薬はパクリタキセルである。
【0294】
一実施形態において、本発明の組み合わせは、式Iの化合物及びその塩または溶媒和物と、シグナル伝達経路阻害剤である少なくとも1つの抗新生物薬とを含む。
【0295】
さらなる実施形態において、シグナル伝達経路阻害剤は、成長因子受容体キナーゼVEGFR2、TIE2、PDGFR、BTK、erbB2、EGFr、IGFR−1、TrkA、TrkB、TrkCまたはc−fmsの阻害剤である。
【0296】
さらなる実施形態において、シグナル伝達経路阻害剤は、セリン/スレオニンキナーゼrafk、aktまたはPKC−ζの阻害剤である。
【0297】
さらなる実施形態において、シグナル伝達経路阻害剤は、キナーゼのsrcファミリーから選択される非受容体チロシンキナーゼの阻害剤である。
【0298】
さらなる実施形態において、シグナル伝達経路阻害剤は、c−srcの阻害剤である。
【0299】
さらなる実施形態において、シグナル伝達経路阻害剤は、ファルネシルトランスフェラーゼ及びゲラニルゲラニルトランスフェラーゼの阻害剤から選択されるRas癌遺伝子の阻害剤である。
【0300】
さらなる実施形態において、シグナル伝達経路阻害剤は、PI3Kからなる群から選択されるセリン/スレオニンキナーゼの阻害剤である。
【0301】
さらなる実施形態において、シグナル伝達経路阻害剤は、二重EGFr/erbB2阻害剤、たとえばN−{3−クロロ−4−[(3−フルオロベンジル)オキシ]フェニル}−6−[5−({[2−(メタンスルホニル)エチル]アミノ}メチル)−2−フリル]−4−キナゾリンアミン(下記の構造)である。
【化23】
【0302】
一実施形態において、本発明の組み合わせは、式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物と、細胞周期シグナル伝達阻害剤である少なくとも1つの抗新生物薬とを含む。
【0303】
さらなる実施形態において、細胞周期シグナル伝達阻害剤は、CDK2、CDK4またはCDK6の阻害剤である。
【0304】
一実施形態において、本発明の方法及び使用における哺乳動物はヒトである。
【0305】
記載したように、本発明の組み合わせ及び併用療法の治療的有効量の活性成分(PD−1アンタゴニストならびに化合物A及び化合物Bのうちの1つまたは両方)がヒトに投与される。通常、本発明の投与薬剤の治療的有効量は、多数の因子、たとえば対象の年齢及び体重、治療を要する対象の正確な状態、状態の重症度、製剤の性質ならびに投与経路などに依存する。最終的に、治療的有効量は、主治医の判断に基づく。
【0306】
本発明の組み合わせは、既知の手順に従って、有効性、利点及び相乗作用について試験が行われる。好適には、本発明の組み合わせは、以下の組み合わせ細胞増殖アッセイの手順に概ね従って、有効性、利点及び相乗作用について試験が行われる。384ウェルプレートに10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した各細胞型に適する培地中に500細胞/ウェルで細胞を播種し、37℃、5%COにて一晩インキュベートする。細胞を、化合物Aの希釈物(化合物なしを含む、化合物に応じて1〜20mMより開始する2倍希釈の20種の希釈物)により、384ウェルプレートの左から右へ格子状に処理し、また化合物B(化合物なしを含む、化合物に応じて1〜20mMより開始する2倍希釈の20種の希釈物)により、384ウェルプレートの上から下へ格子状に任意に処理し、抗PD−1抗体またはその抗原結合断片でも処置し、さらに72時間上述の通りインキュベートする。場合により、化合物を千鳥状に加え、インキュベーション時間を最大7日まで延長してよい。CellTiter−Glo(登録商標)試薬を製造業者のプロトコルに従って用いて細胞成長を測定し、0.5秒読み取りの発光モードに設定したPerkinElmer EnVision(商標)リーダー上にてシグナルを読み取る。以下に記載する通りにデータを解析する。
【0307】
結果は、t=0の値のパーセンテージとして示し、化合物濃度に対してプロットする。t=0の値は、100%に正規化したものであり、化合物の添加時に存在する細胞の数を表す。細胞応答は、各化合物及び/または化合物の組み合わせについて、Microsoft Excelソフトウェア用のIDBS XLfitプラグインを用いた濃度に対する細胞生存率の4または6パラメータ曲線当てはめを用いて判定し、細胞成長の50%阻害に要する濃度(gIC50)を決定する。バックグラウンド補正は、細胞を含まないウェルの値を差し引くことで行う。各薬物組み合わせにおいて、組み合わせ指数(CI)、最高単剤超過(EOHSA)及びBliss超過(EOBliss)を、Chou and Talalay(1984)Advances in Enzyme Regulation,22,37 to 55及びBerenbaum,MC(1981)Adv.Cancer Research,35,269−335に記載のものなどの既知の方法に従って算出する。
【0308】
本発明の組み合わせは、癌の治療において有利な治療的有用性を決定するために、上記のアッセイで試験する。
【実施例】
【0309】
以下の実施例は例示のみを目的にするものであり、いかなる形でも本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0310】
実施例1−キット組成物
以下の表I及びIIに示す通り、スクロース、微結晶セルロースならびに本発明の組み合わせの化合物A及びBを、表示の比率で10%ゼラチン溶液と個別に混合し、顆粒化する。湿った顆粒をふるいにかけ、乾燥させ、デンプン、タルク及びステアリン酸と混合し、次いで、ふるいにかけ、圧縮して錠剤にする。また、表IIIに記載するMK−3475のバイアルもキットに含まれる。
【表3】
【表4】
表III
MK−3475は、ヒスチジン緩衝液10mM(pH5.5)中のMK−3475 25mg/ml、スクロース7%(w/v)、ポリソルベート80 0.02%(w/v)からなる液剤として供給され得る。
【0311】
実施例2 担腫瘍マウスに対するPD−1アンタゴニスト及びトラメチニブの同時投与の抗腫瘍応答
本実験では、(i)マウスアイソタイプIgG1のマウス抗マウスPD−1モノクローナル抗体(抗PD1)を用いた単剤療法、(ii)トラメチニブを用いた単剤療法、及び(iii)抗PD1とトラメチニブとを同時投与する併用療法の3つのレジメンのうちの1つを用いた治療に対する担腫瘍マウスの抗腫瘍応答を比較した。マウスアイソタイプIgG1は、ヒトアイソタイプIgG4に対応するマウスの類似アイソタイプである。
【0312】
ヒト腫瘍細胞または腫瘍移植片は、免疫不全動物中で異種移植片として成長できるが、機能的免疫系を欠くため、免疫療法を試験するには用いることができない。免疫療法または免疫療法と他の薬剤との組み合わせについての有意性のある評価のためには、完全な免疫系を有する動物内で同系腫瘍が成長する同系モデルを使用する必要がある。CT−26は、BALB/cマウス系統と同系のマウス結腸直腸腺癌細胞株である。CT−26は、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ経路を活性化するKRAS変異を保持していることから、トラメチニブ(分裂促進因子活性化プロテインキナーゼの阻害剤)に対する感受性を評価するのに適切なモデルとなる。また、この抗PD−1治療後の腫瘍の分子プロファイルを解釈することが可能であるため、抗PD−1抗体の作用機序を評価するための適切なモデル系でもある。
【0313】
本研究の担腫瘍マウスは、対数期でサブコンフルエントのCT−26細胞3×10個を7〜8週齢の平均体重20gのメスBALB/cマウスの右下背面脇腹に注入することから始めた。これらのマウスの平均腫瘍体積が約126立方ミリメートル(図8Bの0日と記載した左パネル)に達したら、担腫瘍マウスを1群あたりマウス12匹からなる4つの治療群、(1)アイソタイプ+ビヒクル対照群、(2)抗PD1+ビヒクル対照、(3)トラメチニブ+アイソタイプ対照及び(4)抗PD1+トラメチニブに無作為に割り付けた。ビヒクル対照は、注入向け等級の水pH8.0中の0.5%HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、Sigma)及び0.2%Tween80(Sigma)とした。アイソタイプ対照は、アデノウイルスヘキソン25に特異的なマウスモノクローナル抗体とし、マウスアイソタイプIgG1のものとした。抗PD1を治療群2及び4に5日ごとに10mg/kg i.p.で各5サイクルの間投与した。最初の投薬を図8にて0日と示す。トラメチニブを治療群3及び4に毎日1mg/kgで23日間投与した。最初の投薬を図8にて0日と示す。
【0314】
驚くべきことに、潜在的なT細胞免疫抑制剤であるトラメチニブの投与は、併用治療群における抗PD1の抗腫瘍作用に拮抗しないようであった。それどころか、図8に示す結果から証明されるように、抗PD1とトラメチニブの同時投与の平均抗腫瘍応答は、いずれの単剤治療で観察された抗腫瘍応答よりも大きかった(p<0.001)。さらに、併用療法では、23日の治療期間終了時にコホートの17%(12匹中2匹)で完全退縮(CR)(測定可能な腫瘍なし)がもたらされたが、単剤治療群ではCRは認められなかった。一元配置ANOVA/ボンフェローニを用いて研究終了時の平均腫瘍体積を比較すると(図8B右パネル)、トラメチニブ+抗PD1の組み合わせを用いて治療したマウスの腫瘍体積は、トラメチニブ単独で治療したマウスの腫瘍体積よりも有意に小さかった。
【0315】
実施例3 PD−1アンタゴニスト、MEK阻害剤及びBRAF阻害剤の組み合わせの臨床安全性及び有効性
進行性黒色腫を有する被験者におけるトラメチニブ及びダブラフェニブと組み合わせたMK−3475の安全性及び有効性を評価するために第I/II相試験を実施する。本試験は、「医薬品の臨床試験の実施の基準」に則って実施される、進行性または転移性黒色腫を有する被験者における経口用ダブラフェニブ及び/またはトラメチニブと組み合わせた静脈内(IV)MK−3475の世界的多施設共同第I/II相の3部試験である。
【0316】
第1部は、本試験の非無作為化多施設共同非盲検部分であり、従来の3+3の用量漸増デザインを用いて、BRAF変異陽性(V600E/K)黒色腫の被検者におけるダブラフェニブ及びトラメチニブと組み合わせたMK−3475(MK+D+T)の安全性、忍容性及び用量を評価する。第2部は、本試験の非無作為化多施設共同非盲検部分であり、拡大コホートを用いて、(MK+D+T)の安全性のさらなる評価と、用量の確認を行う。さらに、第2部では、拡大コホートを用いて、(MK+T)の組み合わせの安全性及び予備的有効性をさらに評価する。第3部は、3つの組み合わせ(MK+D+T)対プラセボとD+Tの組み合わせ(PBO+D+T)の確定用量の無作為化(1:1)実薬対照多施設共同2群試験である。被験者は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)のパフォーマンススケール(0対1)及び乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベル(>1.1×ULN対≦1.1×ULN)で層化する。本試験のより具体的な概要を下記表に示す。
【表5】
【0317】
以下の表に配列表の配列に関する概略を記す。
【表6】
【0318】
本発明の好ましい実施形態を上記に例示したが、本発明が本明細書に開示した明確な説明に限定されないこと、及び以下の特許請求の範囲内に該当するすべての変更に対する権利が留保されることは理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]