【文献】
Hiroki Uoyama et al.,Highly efficient organic light-emitting diodes from delayed fluorescence,NATURE,英国,Macmillan Publishers Limited.,2012年12月13日,VoL492,第234-238頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一つのタイプの有機ルミネッセント化合物(TADF化合物)と有機溶媒もしくは種々の有機溶媒の混合物とを含む調合物であって、TADF化合物は、0.15eV以下の、最低三重項状態T1と第1励起一重項状態S1との間の離隔を有し、調合物は、無機半導体材料から、または量子ドットもしくは量子ロッドから選ばれる少なくとも一つのさらなる成分を含み、また、調合物は、第1のマトリックス材料と第2のマトリックス材料とを含み、ここで、第1のマトリックス材料は電子輸送マトリックス材料であるか、または正孔輸送マトリックス材料の何れかであり、第2の電子輸送マトリックス材料は3.5eV以上のHOMOとLUMO間のバンドギャップを有することを特徴とする調合物。
溶媒もしくは複数の溶媒の表面張力が、少なくとも28mN/m、好ましくは、少なくとも30mN/m、非常に好ましくは、少なくとも32mN/m、非常に特に好ましくは、少なくとも35mN/mであることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項記載の調合物。
溶媒もしくは溶媒混合物中で使用される複数の溶媒の分子量が、1000g/mol以下、好ましくは、700g/mol以下、非常に好ましくは、500g/mol以下、特に好ましくは、300g/mol以下であることを特徴とする、請求項1〜6何れか1項記載の調合物。
全調合物に基づいて、調合物中のTADF化合物の濃度が、1〜20重量%の範囲、好ましくは、3〜15重量%の範囲、非常に好ましくは、5〜12重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1〜7何れか1項記載の調合物。
溶媒は、トルエン、アニソール、o-、m-もしくはp-キシレン、メチルベンゾエート、メシチレン、テトラリン、ベラトール、THF、メチル-THF、THP、クロロベンゼン、ジオキサン、フェノキシトルエン、特に、3-フェノキシトルエン、(-)-フェンコヌ、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルベンゾチアゾール、2-フェノキシエタノール、2-ピロリジノン、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチルアニソール、アセトフェノン、α-テルピネオール、ベンゾチアゾール、ブチルベンゾエート、クメン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン、ドデシルベンゼン、エチルベンゾエート、インダン、メチルベンゾエート、NMP、p-シメン、フェネトール、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエステル、トリエチレングリコールブチルメチルエステル、ジエチレングリコールジブチルエステル、トリエチレングリコールジメチルエステル、ジエチレングリコールモノブチルエ−テル、トリプロピレングリコールジメチルエ−テル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、2-イソプロピルナフタレン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタンもしくはこれら溶媒の混合物から選ばれることを特徴とする、請求項1〜8何れか1項記載の調合物。
調合物は、少なくとも一つの有機マトリックス材料を含み、ここで、有機マトリックス材料は、好ましくは、カルバゾール、インデノカルバゾール、インドロカルバゾール、トリアジン、ピリミジン、ラクタム、ケトン、ホスフィンオキシド、トリフェニレン、ジアリールフルオレン(特に、9,9'-ジアリールフルオレン、P08/044; WO2009/124627)またはジベンゾフランであることを特徴とする、請求項1〜9何れか1項記載の調合物。
調合物は、マトリックス材料を含み、ここで、TADF化合物の最低非占有分子軌道(LUMO):LUMO(TADF)およびマトリックスの最高占有子軌道(HOMO):HOMO(マトリックス)に対して、以下が適用されることを特徴とする、請求項1〜10何れか1項記載の調合物:
[LUMO(TADF)−HOMO(マトリックス)]は、[S1(TADF)−0.4eV]以上であり、
式中、S1(TADF)は、TADF化合物の第1励起一重項状態S1である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭い一重項-三重項離隔を有するルミネッセント化合物を含む調合物と有機電子素子製造のためのそれらの使用に関する。
【0002】
有機半導体が機能性材料として用いられる有機電子素子の構造は、たとえばUS4539507、US5151629、EP0676461およびWO98/27136に記載されている。これは、有機発光ダイオード(OLED)であり、有機エレクトロルミッセンス素子の群から特定の素子である。ここで用いられる発光材料は、また特に、蛍光ではなく燐光を呈する有機金属イリジウムおよび白金錯体である (M.A.Baldoら、Appl.Phys.Lett.1999、75、4−6)。量子力学的理由により、4倍までのエネルギーおよびパワー効率の増加が、燐光発光エミッターとして有機金属化合物を使用して可能である。
【0003】
有機金属イリジウムおよび白金錯体により達成される良好な結果にもかかわらず、それらは、しかしながら、多くの欠点を有しており、イリジウムと白金は、稀少であり高価な金属である。したがって、資源保存のために、これらの稀少金属の使用を回避できることが望ましい。さらに、このタイプの金属は、幾つかの場合では、純粋有機化合物よりも低い熱安定性を有し、同等の良好な効率をもたらせば、この理由で、純粋有機化合物を使用することは有利でもあろう。さらに、高い効率と寿命を有する青色、特に、深青色で燐光発光するイリジウムもしくは白金エミッターは、実現するのは技術的に困難であり、ここでも、改善の必要性が存在する。さらに、幾つかの用途で必要とされるとおり、OLEDが高温で駆動される場合に、IrまたはPtエミッターを含む燐光OLEDの寿命における改善の必要性が存在する。さらに、電子素子の製造のための多くの公知の有機半導体材料は、真空昇華による気相堆積により適用され、幾つかの場合で非常に複雑で高価である。さらに、全ての材料が気相堆積により適用することができるわけではなく、ある種の有機材料は、良好な光電子特性にもかかわらず、その貧弱な加工性により電子素子に使用することができない。特に、電子素子の大量生産のためには、有機材料の安価な加工に、極めて大きな商業的関心がある。したがって、溶液から加工することのできる極めて効率的な有機分子が望まれる。
【0004】
燐光金属錯体の代替的開発は、熱活性化遅延蛍光(TADF)を示すエミッターの使用である(たとえば、H. Uoyama et al., Nature 2012, Vol. 492, 234)。これらは、最低三重項状態T
1と第1励起一重項状態S
1との間のエネルギー離隔が小さく、その結果、このエネルギー離隔がより小さいか、熱エネルギー領域内である有機材料である。量子統計的理由で、励起状態は、OLEDでの電子励起に関して、三重項状態で75%の範囲まで、一重項状態で25%の範囲までで起こる。純粋有機分子は、通常三重項状態から発光することができないことから、これは励起状態の75%を発光に利用することはできず、原則として、励起エネルギーの25%だけを光に変換することができることを意味する。しかしながら、最低三重項状態と最低励起一重項状態との間のエネルギー離隔が存在しないか、またはk
BTにより記載される熱エネルギーよりは著しくより大きくないならば、分子の第1励起一重項状態は、熱励起を通じて三重項状態からアクセス可能であり、熱的に占有することができる。この一重項状態は、蛍光発光が可能である発光状態であるから、この状態は、光の生成のために使用することができる。したがって、100%までの電気エネルギーの光への変換は、原則として、エミッターとしての純粋有機材料の使用について可能である。よって、19%を超える外部量子効率が、先行技術において記載されるが、燐光OLEDと同程度である。したがって、このタイプの純粋有機材料を使用して、非常に良好な効率を達成することができると同時にイリジウムまたは白金等の稀少金属の使用を回避することができる。さらに、これらの材料を使用して、高効率の青色発光OLEDを実現することができる。
【0005】
先行技術に記載されたTADFを呈する化合物は、これらの化合物を含む電子素子を製造するために、昇華による真空気相堆積により、全て適用される。
【0006】
一般的に言って、先行技術からの化合物の場合、特に、加工性に関して、改善への考慮すべきニーズが未だ存在する。特に、OLED等の有機電子素子製造時の故障率は、未だにあまりにも大きく、製造プロセスの経済的効率に逆効果となる。
【0007】
したがって、本発明が基礎とする技術的目的は、有機電子素子、特に、OLEDの安価な製造を可能とし、素子は非常に良好な性能データを有し、素子製造時の故障率が改善された物質の組成物の提供に存する。
【0008】
驚くべきことに、その技術的目的は、以下により詳細に説明される調合物により達成されることが見出された。これらの調合物は、溶液から加工される有機電子素子、特に、OLEDの製造を可能とする。本発明の調合物により製造された素子は、極めて良好な性能データを有し、顕著に低減した製造プロセス中の故障率を示す。したがって、本発明による調合物は、先行技術で知られる不利益を克服する。電子素子は、溶液から簡単に製造することができる。したがって、調合物は、電子素子の安価で信頼できる大量生産に適している。
【0009】
したがって、本発明は、少なくとも一つのタイプの有機ルミネッセント有機化合物(TADF化合物)と少なくとも一つの有機溶媒を含む調合物であって、TADF化合物は、0.15eV以下の、最低三重項状態T
1と第1励起一重項状態S
1との間の離隔を有することを特徴とする調合物に関する。
【0010】
本出願における調合物は、少なくとも一つのTADF分子に加えて、有機溶媒もしくは有機溶媒の混合物を含む組成物の意味で使用される。ここで、溶媒もしくは溶媒の混合物は、好ましくは、過剰に存在する。
【0011】
本出願における溶媒混合物は、少なくとも2種の異なる溶媒の混合物の意味で使用される。
【0012】
さらに、調合物は液体形態であることが好ましい。ここで、調合物は、真溶液、エマルジョン、ミニエマルジョン、分散液もしくは懸濁液であり得、調合物は真溶液であることが、非常に好ましい。
【0013】
本発明の他の場所で示されるとおりに、調合物は、有機電子素子の層、特に、OLEDの発光層の製造のために使用される。層の製造中に、溶媒もしくは溶媒の混合物は除去され、その結果、TADF化合物は、残留する溶媒もしくは溶媒の混合物に関して、層中に過剰に存在する。溶媒もしくは溶媒の混合物は、好ましくは、有機電子素子の層中に、存在しても、痕跡量でのみ存在する。溶媒もしくは溶媒の混合物は完全に除去され、それゆえ適用された層中にもはや見出されないことが非常に好ましい。
【0014】
TADF化合物は、金属を含まない炭素含有化合物である。特に、TADF化合物は、元素C、H、D、B、Si、N、P、O、S、F、Cl、BrおよびIから構築される有機化合物である。
【0015】
TADF化合物は、0.12eV以下、特に好ましくは、0.10eV以下、非常に特に好ましくは、0.08eV以下、特別に好ましくは、0.05eV以下のS
1とT
1との間の離隔を有する。
【0016】
好ましい1態様では、TADF化合物のS
1準位は、T
1準位より高いエネルギーを有する。エネルギー準位S
1とT
1との間の離隔は、以下のとおり定義される:ΔE=E(S
1)−E(T
1)、ここで、ΔEは、0.15eV以下、好ましくは、0.12eV以下、特に好ましくは、0.10eV以下、非常に特に好ましくは、0.08eV以下、特別に好ましくは、0.05eV以下である。
【0017】
本発明の意味でのルミッセント化合物は、有機エレクトロルミネッセント素子中に存在するままの環境下で光学的励起により室温で発光することができる化合物の意味で使用される。化合物は、好ましくは、少なくとも40%の、特に好ましくは、少なくとも50%の、非常に特に好ましくは、少なくとも60%の、特別に好ましくは、少なくとも70%のルミネッセント量子効率を有する。ここで、ルミネッセント量子効率は、有機エレクトロルミネッセント素子中で利用されるままの、マトリックス材料との混合物中において層中で決定される。本発明の目的のために、ルミネッセント量子収率の測定が実行される方法は、例部分において一般的用語で詳細に説明される。
【0018】
TADF化合物は、短い減衰時間を有することが、さらに好ましい。減衰時間は、好ましくは、50μs以下である。本発明の目的のために、減衰時間を測定する方法は、例部分において一般的用語で詳細に説明される。
【0019】
最低励起一重項状態(S
1)と最低三重項状態(T
1)のエネルギーは、量子化学計算により決定される。本発明の意味でこの決定を実行する方法は、例部分において一般的に詳細に説明される。
【0020】
TADF化合物は、好ましくは、ドナーおよびアクセプター両置換基を有する芳香族化合物であり、ここで、化合物のLUMOとHOMOは、弱く空間的に重複を示すだけである。
【0021】
TADF化合物は、ある種の電子遷移(電荷輸送状態)に関与する分子軌道の小さい空間的重複Λを有する。
【0022】
本出願の意味での分子軌道の小さい空間的重複は、パラメターΛの値が、0.3未満、好ましくは、0.2未満、非常に好ましくは、0.1未満、特別に好ましくは、0.05未満であることを意味する。パラメターΛを測定する方法は、例部分において一般的用語で詳細に説明される。
【0023】
ドナーまたはアクセプター置換基により理解されるものは、当業者に十分に知られている。適切なドナー置換基は、特に、ジアリール-およびジヘテロアリールアミノ基とカルバゾール基もしくはカルバゾール誘導体であり、好ましくは、夫々、Nを介して芳香族化合物に結合する。これらの基は、さらに置換されてもよい。適切なアクセプター置換基は、特に、シアノ基であるが、たとえば、電子不足ヘテロアリール基であり、さらに置換基されてよい。
【0024】
本出願でのアクセプター基A(アクセプター置換基とも呼ばれる)は、電子受容性基を有する基の意味で使用される。アクセプター基の元で理解されるものは、当業者に周知である。アクセプター基は、負の誘起効果(−I)および/または負の共鳴効果(−M)を有することが好ましい。ハムレット方程式によるパラメータの決定も、当業者に周知である。適切なアクセプター置換基は、特に、シアノ基であるが、CF
3であり、たとえば、電子不足ヘテロアリール基であって、さらに置換されてもよい。好ましい電子不足ヘテロアリール基の例は、トリアジン、ピリミジン、ホスフィンオキシドおよびケトンの基から選ばれる
本出願でのドナー基A(ドナー置換基とも呼ばれる)は、電子供与性基である基の意味で使用される。ドナー基の元で理解されるものは、当業者に周知である。ドナー基は、正の誘起効果(−I)および/または正の共鳴効果(−M)を有することが好ましい。ハムレット方程式によるパラメータの決定は、当業者に周知である。適切なドナー置換基は、特に、ジアリール-もしくはジヘテロアリールアミノ基とカルバゾール基もしくはインデノカルバゾールもしくはインドロカルバゾール等のカルバゾール誘導体であり、好ましくは、夫々、ブリッジVにまたはNを介して基Aに結合する。これらの基は、さらに置換されてもよい。
【0025】
TADFを呈する適当な分子の例は、以下の概観で示される構造である。
【0026】
【化1-1】
【0027】
【化1-2】
【0028】
多様なTADF化合物が先行技術で知られており、当業者は、絶対に何の困難性もなく先行技術からTADF化合物を提供される(たとえば、Tanaka et al., Chem-is-try of Materials 25(18), 3766 (2013)、Zhang et al., Nature Photonics advance online publication, 1 (2014)、doi: 10.1038/nphoton.2014.12、Sere-vicius et al., Physical Chemistry Chemical Physics 15(38), 15850 (2013)、Youn Lee et al., Applied Physics Letters 101(9), 093306 (2012)、Nasu et al., ChemComm, 49, 10385 (2013)、WO2013/154064、WO2013/161437、WO2013/081088、WO2013/011954)。
【0029】
したがって、TADF化合物は、好ましくは、ドナーおよびアクセプター置換基の両方を有する芳香族化合物である。
【0030】
使用される溶媒もしくは複数の溶媒(溶媒混合物の場合)は、好ましくは、少なくとも28mN/m、好ましくは、少なくとも30mN/m、非常に好ましくは、少なくとも32mN/m、非常に特に好ましくは、少なくとも35mN/mの表面張力を有する。
【0031】
さらに、溶媒もしくは複数の溶媒の沸点もしくは昇華点は、好ましくは、300℃未満、好ましくは、260℃未満である。
【0032】
溶媒もしくは溶媒混合物の個々の溶媒の粘度は、3mPa
*s超、より好ましくは5mPa
*s超である。
【0033】
さらに、溶媒もしくは複数の溶媒は、好ましくは、1000g/mol以下、好ましくは、700g/mol以下、非常に好ましくは、500g/mol以下、特に好ましくは、300g/mol以下の分子量を有する。
【0034】
既述したとおりに、溶媒もしくは溶媒混合物の溶媒は、TADF化合物と比べて、調合物中に過剰に存在する。全調合物に基づいて、調合物中のTADF化合物の濃度は、好ましくは、1〜20重量%の範囲、非常に好ましくは、3〜15重量%の範囲、特に好ましくは、5〜12重量%の範囲である。
【0035】
当業者は、本発明による調合物を調製するために、種々の溶媒もしくは溶媒混合物を選ぶことができるであろう。
【0036】
適切で好ましい溶媒は、たとえば、トルエン、アニソール、o-、m-もしくはp-キシレン、メチルベンゾエート、メシチレン、テトラリン、ベラトール、THF、メチル-THF、THP、クロロベンゼン、ジオキサン、フェノキシトルエン、特に、3-フェノキシトルエン、(-)-フェンコヌ、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルベンゾチアゾール、2-フェノキシエタノール、2-ピロリジノン、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチルアニソール、アセトフェノン、α-テルピネオール、ベンゾチアゾール、ブチルベンゾエート、クメン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン、ドデシルベンゼン、エチルベンゾエート、インダン、メチルベンゾエート、NMP、p-シメン、フェネトール、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエステル、トリエチレングリコールブチルメチルエステル、ジエチレングリコールジブチルエステル、トリエチレングリコールジメチルエステル、ジエチレングリコールモノブチルエ−テル、トリプロピレングリコールジメチルエ−テル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、2-イソプロピルナフタレン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタンもしくはこれら溶媒の混合物から選ばれる。
【0037】
本発明の調合物は、好ましくは、低分子量有機半導体材料を、好ましくは、0.01〜20重量%、非常に好ましくは、0.05〜10重量%、特に好ましくは、0.1〜5重量%、特別に好ましくは、0.5〜5重量%含んでよく、ここで、低分子量有機半導体材料(たとえば、TADF化合物、マトリックス材料、正孔輸送および電子輸送材料、正孔および電子ブロック材料)は、2000g/mol以下、好ましくは、1500g/mol以下、非常に好ましくは、1000g/mol以下、非常に特に好ましくは、700g/mol以下、特別に好ましくは、600g/mol以下の分子量を有するものの意味で使用される。
【0038】
本発明の調合物は、一以上の有機溶媒、好ましくは、少なくとも一つの芳香族溶媒を含む。溶媒は、好ましくは、トルエン、o-、m-あるいはp-キシレン、フェノキシトルエン、トリメチルベンゼン(たとえば、1,2,3-、1,2,4-および1,3,5-トリメチルベンゼン)、テトラリン、他のモノ-、ジ-、トリ-およびテトラアルキルベンゼン(たとえば、ジエチルベンゼン、メチルクメン、テトラメチルベンゼン等)等の芳香族炭化水素、芳香族エーテル(たとえば、アニソール、アルキルアニソール、たとえば、メチルアニソールの2-,3-および4-アイソマー、ジメチルアニソールの、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-および3,5アイソマー)、ナフタレン誘導体、アルキルナフタレン誘導体(たとえば、1-および2-メチルナフタレン)、ジ-およびテトラヒドロナフタレン誘導体より成る群から選ばれる。好ましいのは、同様に、芳香族エステル(たとえば、アルキルベンゾエート)、芳香族ケトン(たとえば、アセトフェノン、プロピオフェノン)、アルキルケトン(たとえば、シクロヘキサノン)、複素環式溶媒(たとえば、チオフェン、モノ-、ジ-およびトリアルキルチオフェン、2-アルキルチアゾール、ベンゾチアゾール等、ピリジン)、ハロアリーレンおよびアニリン誘導体である。これらの溶媒は、ハロゲン原子を含んでもよい。
【0039】
特に、好ましいものは:3-フルロ-トリフルオロメチルベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ジオキサン、トリフルオロメトキシベンゼン、4-フルオロ-ベンゼントリフルオリド、3-フルオロピリジン、トルエン、2-フルオロトルエン、2-フルオロ-ベンゼントリフルオリド、3-フルオロトルエン、ピリジン、4-フルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、1-クロロ-2,4-ジフルオロベンゼン、2-フルオロピリジン、3-クロロフルオロベンゼン、1-クロロ-2,5-ジフルオロベンゼン、4-クロロフルオロベンゼン、クロロベンゼン、2-クロロフルオロベンゼン、p-キシレン、m-キシレン、o-キシレン、2,6-ルチジン、2-フルオロ-m-キシレン、3-フルオロ-o-キシレン、2-クロロフルオロベンゼントリフルオリド、ジメチルホルムアミド、2-クロロ-6-フルオロトルエン、2-フルオロアニソール、アニソール、2,3-ジメチルピラジン、ブロモベンゼン、4-フルオロアニソール、3-フルロアニソール、3-トリフルオロメチルアニソール、2-メチルアニソール、フェネトール、ベンゼンジオキソール、4-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-フルオロ-3-メチルアニソール、1,2-ジクロロベンゼン、2-フルロベンゼンニトリル、4-フルオロベラトール、2,6-ジメチルアニソール、アニリン、3-フルオロベンゼンニトリル、2,5-ジメチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール、ベンゼンニトリル、3,5-ジメチルアニソール、N,N-ジメチルアニリン、1-フルオロ-3,5-ジメトキシベンゼン、フェニルアセテート、N-メチルアニリン、メチルベンゾエート、N-メチルピロリドン、モルホリン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、o-トルニトリル、ベラトール、エチルベンゾエート、N,N-ジエチルアニリン、プロピルベンゾエート、1-メチルナフタレン、ブチルベンゾエート、2-メチルビフェニル、2-フェニルピリジンまたは2,2’-ビトリルである。
【0040】
特に、好ましいのは、芳香族炭化水素、特に、トルエン、フェノキシトルエン、ジメチルベンゼン(キシレン)、トリメチルベンゼン、テトラリンおよびメチルナフタレン、芳香族エーテル、特に、アニソールおよび芳香族エステル、特に、メチルベンゾエートである。
【0041】
特別に好ましいのは、芳香族エーテル、特に、アニソールおよびアルキルアニソール等のその誘導体と芳香族エステル、特に、メチルベンゾエートである。
【0042】
これらの溶媒は、2、3以上の混合物として使用することができる。
【0043】
好ましい有機溶媒は、17.0〜23.2MPa
0.5の範囲のH
d、0.2〜12.5MPa
0.5の範囲のH
p0.9〜14.2MPa
0.5の範囲のH
hのハンセン溶解度パラメーターを有することができる。より好ましい有機溶媒は、18.5〜21.0MPa
0.5の範囲のH
d、2.0〜6.0MPa
0.5の範囲のH
p、2.0〜6.0MPa
0.5の範囲のH
hのハンセン溶解度パラメーターを有する。
【0044】
【表1-1】
【0045】
【表1-2】
【0046】
【表1-3】
【0047】
【表1-4】
【0048】
H
dは、分散の寄与を意味し、
H
pは、極性の寄与を意味し、
H
hは、水素結合の寄与を意味する。
【0049】
好ましくは、溶媒は、用いられる圧力、非常に好ましくは、大気圧(1013hPa)で、<300℃、特に好ましくは、≦260℃、特別に好ましくは、≦220℃の沸点または昇華温度を有する。蒸発は、たとえば、熱および/または減圧の使用により早めることもできる。予期せざる改善は、少なくとも100℃、好ましくは、少なくとも130℃の沸点を有する溶媒の使用により達成することができる。
【0050】
通常、有機溶媒は、少なくとも28mN/m、好ましくは、少なくとも30mN/m、特に好ましくは、少なくとも32mN/m、特別に好ましくは、少なくとも35mN/mの表面張力を有することができる。表面張力は、25℃で、FTA(First Ten Angstrom)125接触角ゴニオメーターを使用して測定することができる。その方法の詳細は、Roger P.Woodward,Ph.D.により発表された「Surface Tension Measurements Using the Drop Shape Method」、First Ten Angstromから入手可能である。好ましくは、ペンダントドロップ法を、表面張力を測定するために使用することができる。
【0051】
概算のために、表面張力は、Hansen Solubility Parameters:A User’s Handbook、第2版、C.M.Hansen(2007)、Taylor and Francis Group,LLC(HSPiPマニュアル)に詳述されている式によるハンセン溶解度パラメータを使用して計算することができる。
【0052】
【数1】
【0053】
H
dは、分散の寄与を意味し、
H
pは、極性の寄与を意味し、
H
hは、水素結合の寄与を意味し、
MVolは、モル体積を意味する。
【0054】
ハンセン溶解度パラメータは、HansonおよびAbbotらにより提供されているHansen Solubility Parameters in Practice (HSPiP) program(第2版)にしたがって決定することができる。
【0055】
好ましくは、溶媒は、少なくとも0.01、好ましくは、少なくとも0.1、好ましくは、少なくとも0.5、特に好ましくは、少なくとも5、非常に特に好ましくは、少なくとも10、特別に好ましくは、少なくとも20という相対蒸発速度(酢酸ブチル=100)を有する。相対蒸発速度は、DIN53170:2009-08により決定することができる。概算のために、相対蒸発速度は、前述および後述のHSPiPプログラムを使用するハンセン溶解度パラメータを使用して計算することができる。
【0056】
本発明の調合物は、好ましくは、少なくとも70重量%、特に好ましくは、少なくとも80重量%、特別に好ましくは、少なくとも90重量%の有機溶媒を含む。
【0057】
本発明のさらに好ましい1態様では、本発明の調合物は、不活性バインダーとして少なくとも一つのポリマー状材料を含む。これは、ポリマーが半導体特性を有さないか、または組成物中で半導体材料の一つと化学的反応しないことを意味する。不活性ポリマーバインダーの低伝導性は、誘電率として測定することができる。本発明にしたがう好ましいバインダーは、低誘電率を有する材料であり、すなわち1,000Hzで3.3以下の誘電率を有する。有機バインダーは、好ましくは、1,000Hzで3.0以下、より好ましくは、2.9以下の誘電率を有する。好ましくは、有機バインダーは、好ましくは、1,000Hzで1.7を超える誘電率を有する。バインダーの誘電率は、2.0〜2.9の範囲であることが、特に好ましい。以前以後で使用される用語「化学的に反応する」は、製造、貯蔵、輸送および/または調合物とOLED素子のための使用条件下での、伝導性添加物の有機発光材料および/または電荷輸送材料との可能な酸化もしくは他の化学反応を意味する。
【0058】
好ましくは、ポリマーバインダーは、1,000〜50,000,000g/molの範囲、特に好ましくは、1,500〜10,000,000g/molの範囲、特別に好ましくは、2,000〜5,000,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する。驚くべき効果は、好ましくは、10,000g/mol以上、特に好ましくは、100,000g/mol以上の重量平均分子量を有するポリマーにより実現することができる。
【0059】
特に、ポリマーは、1.0〜10.0の範囲、特に好ましくは、1.1〜5.0の範囲、特別に好ましくは、1.2〜3の範囲の多分散指数M
w/M
nを有し得る。
【0060】
通常、ポリマーバインダーは、上記および下記の本組成物の溶媒に分散または溶解することができる。好ましくは、ポリマーバインダーは、有機溶媒に溶解することができ、溶媒におけるポリマーバインダーの溶解度は、少なくとも1g/l、特に好ましくは、少なくとも5g/l、特別に好ましくは、少なくとも10g/lである。
【0061】
本発明の特別な1態様によれば、組成物は、好ましくは、0.1〜10重量%、特に好ましくは、0.25〜5重量%、特別に好ましくは、0.5〜4重量%のポリマーバインダーを含む。
【0062】
特別な1態様によれば、ポリマーバインダーは、好ましくは、スチレンおよび/またはオレフィン由来の反復単位を含む。好ましいポリマーバインダーは、少なくとも80重量%、好ましくは、90重量%、特に好ましくは、99重量%のスチレンモノマーおよび/またはオレフィン由来の反復単位を含む。
【0063】
スチレンモノマーは、当分野において周知である。これらのモノマーとしては、スチレン、側鎖でアルキル置換基により置換されているスチレン、たとえば、α−メチルスチレンおよびα−エチルスチレン、環でアルキル置換基により置換されているスチレン、たとえば、ビニルトルエンおよびp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、たとえば、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン、およびテトラブロモスチレンがある。
【0064】
オレフィンは、水素および炭素原子からなるモノマーである。これらのモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン、および1,3−ブタジエンがある。
【0065】
本発明の特別な1側面によれば、ポリマーバインダーは、50,000g〜2,000,000g/molの範囲、好ましくは、100,000g〜750,000g/molの範囲、特に好ましくは、150,000g〜600,000g/molの範囲、特別に好ましくは、200,000g〜500,000g/molの範囲の重量平均分子量を有するポリスチレンである。
【0066】
本発明のさらなる態様によれば、ポリマーバインダーは、40,000g〜120,000g/molの範囲、特に好ましくは、60,000g〜100,000g/molの範囲の重量平均分子量を有するポリ-4-メチルスチレンである。
【0067】
特に、バインダーは、1,000g〜20,000g/molの範囲、特に好ましくは、1,500g〜6,000g/molの範囲の重量平均分子量を有するポリ-α-メチルスチレンであり得る。
【0068】
有用で好ましいポリマーバインダーは、15.7〜23.0MPa
0.5の範囲のH
d、0.0〜20.0MPa
0.5の範囲のH
p、および0.0〜12.5MPa
0.5の範囲のH
hというハンセン溶解度パラメータを有する。特に好ましいポリマーバインダーは、17.0〜21.0MPa
0.5の範囲のH
d、1.0〜5.0MPa
0.5の範囲のH
p、および2.0〜10.0MPa
0.5の範囲のH
hというハンセン溶解度パラメータを有する。特別に好ましいポリマーバインダーは、19.0〜21.0MPa
0.5の範囲のH
d、1.0〜3.0MPa
0.5の範囲のH
pおよび2.5〜5.0MPa
0.5の範囲のH
hというハンセン溶解度パラメータを有する。
【0069】
ハンセン溶解度パラメータは、the Hansen Solubility Parameters in Practice (HSPiP) program (2
nd edition) as avail-able from Hanson and Abbot et al.を使用して決定することができる。
【0070】
有用なポリマーバインダーの例は、WO 2011/076325 A1の表1に開示されている。
【0071】
本発明の好ましい1態様によれば、不活性バインダーは、−70〜160℃、好ましくは、0〜150℃、特に好ましくは50〜140℃、特別に好ましくは、70〜130℃の範囲のガラス転移温度を有するポリマーである。ガラス転移温度は、ポリマーのDSCを測定することによって決定することができる(DIN EN ISO11357、加熱速度10℃/分)。
【0072】
本発明による調合物は、追加的に、たとえば、界面活性化合物、潤滑剤、分散剤、疎水剤、接着剤、流動性向上剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤(反応性であっても非反応性であってもよい)、補助剤、着色剤、染料もしくは顔料、増感剤、安定剤、ナノ粒子または阻害剤のような、1種以上のさらなる成分を含むことができる。しかし、これらのさらなる構成成分は、有機半導体材料を酸化可能であるべきではなく、そうでなくても、有機半導体材料と化学的に反応可能であるべきではなく、または有機半導体材料に電気的ドーピング効果を与えるべきではない。
【0073】
目覚ましい改良は、揮発性湿潤剤で実現することができる。以上および以下で使用する「揮発性」という用語は、有機半導体材料がOLED素子の基板上に堆積された後に、これらの材料またはOLED素子に著しく損傷を与えない(温度および/または減圧のような)条件下で、薬剤を、蒸発により有機半導体材料から除去できることを意味する。好ましくは、これは、湿潤剤が、用いられる圧力、非常に好ましくは、大気圧(1013hPa)で、<350℃、特に好ましくは、≦300℃、特別に好ましくは、≦250℃の沸点または昇華温度を有することを意味する。蒸発は、たとえば、熱および/または減圧の使用によって、早めることもできる。
【0074】
目覚ましい効果は、類似の沸点を有する揮発性成分を含む調合物を使用して実現することができる。好ましくは、湿潤剤と有機溶媒の沸点の差は、−50℃〜50℃の範囲、特に好ましくは、−30℃〜30℃の範囲、特別に好ましくは、−20℃〜20℃の範囲にある。
【0075】
好ましい湿潤剤は、非芳香族化合物である。さらに好ましくは、湿潤剤は、非イオン性化合物である。特に有用な湿潤剤は、最大で35mN/m、好ましくは、最大で30mN/m、特に好ましくは、最大で25mN/mの表面張力を有する。表面張力は、25℃で、FTA(First Ten Angstrom)125接触角ゴニオメーターを使用して測定することができる。その方法の詳細は、Roger P.Woodward,Ph.D.による「Surface Tension Measurements Using the Drop Shape Method」を公開している、First Ten Angstromから入手可能である。好ましくは、表面張力を測定するために、ペンダントドロップ法を使用することができる。
【0076】
本発明の特別な1側面によれば、有機溶媒と湿潤剤の表面張力の差は、好ましくは、少なくとも1mN/m、好ましくは、少なくとも5mN/m、特に好ましくは、少なくとも10mN/mである。
【0077】
本発明の特別な1側面によれば、湿潤添加剤は、少なくとも0.01、好ましくは、少なくとも0.1、好ましくは、少なくとも0.5,特に好ましくは、少なくとも5、非常に特に好ましくは、少なくとも10、特別に好ましくは、少なくとも20の相対蒸発速度(酢酸ブチル=100)を含み得る。
【0078】
予期せざる改善は、同様の相対蒸発速度(酢酸ブチル=100)を有する溶媒と湿潤剤とを含む組成物により達成することができる。好ましくは、有機溶媒と湿潤剤の相対蒸発速度(酢酸ブチル=100)の差は、−20〜20の範囲、特に好ましくは、−10〜10の範囲である。本発明の好ましい1態様によれば、有機溶媒の相対蒸発速度(酢酸ブチル=100)に対する湿潤剤の相対蒸発速度(酢酸ブチル=100)の比は、230:1〜1:230、好ましくは、20:1〜1:20、特に好ましくは、5:1〜1:5の範囲である。
【0079】
予期せぬ改良は、少なくとも100g/mol、好ましくは、少なくとも150g/mol、特に好ましくは、少なくとも180g/mol、特別に好ましくは、少なくとも200g/molの分子量を含む湿潤剤によって実現することができる。
【0080】
OSCを酸化しない、そうでなくても、OSCと化学的に反応しない、適切かつ好ましい湿潤剤は、シロキサン、アルカン、アミン、アルケン、アルキン、アルコール、および/またはこれらの化合物のハロゲン化誘導体からなる群から選択される。さらに、フルオロエーテル、フルオロエステル、および/またはフルオロケトンを使用することができる。特に好ましくは、これらの化合物は、6〜20個の炭素原子、特に、8〜16個の炭素原子を有するメチルシロキサン、C
7〜C
14アルカン、C
7〜C
14アルケン、C
7〜C
14アルキン、7〜14個の炭素原子を有するアルコール、7〜14個の炭素原子を有するフルオロエーテル、7〜14個の炭素原子を有するフルオロエステル、および7〜14個の炭素原子を有するフルオロケトンから選択される。特別に好ましい湿潤剤は、8〜14個の炭素原子を有するメチルシロキサンである。
【0081】
湿潤剤として有用で好ましい化合物の例は、WO 2011/076325 A1に開示されている。
【0082】
調合物は、好ましくは、多くとも5重量%、特に好ましくは、多くとも3重量%、特別に好ましくは、多くとも1重量%の湿潤添加剤を含む。組成物は、好ましくは、0.01〜5重量%、特に好ましくは、0.05〜3重量%、特別に好ましくは、001〜1重量%の湿潤剤を含む。
【0083】
本発明の調合物は、さらなる化合物を含んでよい。さらなる化合物は、無機もしくは有機化合物であり得る。さらなる化合物は、好ましくは、有機半導体材料であり、非常に好ましくは、蛍光エミッター、燐光エミッター、ホスト材料、マトリックス材料、電子輸送材料、電子注入材料、正孔伝導材料、正孔注入材料、n-ドーパント、広バンドギャップ材料、電子ブロック材料および正孔ブロック材料より成る群から選ばれる。
【0084】
本発明の意味での蛍光エミッター(いわゆる蛍光ドーパント)は、発光が、スピン許容遷移、好ましくは、励起一重項状態からの遷移により生じる化合物である。
【0085】
用語「燐光ドーパント」(いわゆる燐光ドーパント)は、発光が、スピン禁制遷移、たとえば、より高いスピン量子数を有する状態、たとえば、五重項状態からの遷移により生じる化合物を典型的には包含し、遷移は、好ましくは、三重項状態からの遷移である。
【0086】
適切な燐光発光ドーパントは、特に、適切な励起により、好ましくは、可視域で発光する化合物であり、また、20より大きい、好ましくは、38〜84の、特に好ましくは、56〜80の原子番号を有する少なくとも一つの原子を含む。使用される燐光発光ドーパントは、好ましくは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウムを含む化合物、特に、イリジウム、白金または銅を含む化合物である。
【0087】
本出願の目的のために、すべてのルミネッセントイリジウム、白金または銅錯体が、燐光化合物とみなされる。
【0088】
【化2-1】
【0089】
【化2-2】
【0090】
【化2-3】
【0091】
【化2-4】
【0092】
【化2-5】
【0093】
【化2-6】
【0094】
【化2-7】
【0095】
【化2-8】
【0096】
【化2-9】
【0097】
【化2-10】
【0098】
マトリックス材料とドーパントを含む系中のドーパントは、本出願では一般的に、混合物中のその割合がより少ない成分の意味で使用される。対応して、マトリックス材料とドーパントを含む系中のマトリックス材料は、混合物中のその割合がより多い成分の意味で使用される
本発明の調合物中に存在してよい上記さらなる化合物は、当業者に周知である。したがって、当業者は、広範囲の公知化合物から選択することができるであろう。
【0099】
好ましい1態様では、調合物は、さらなる化合物として、少なくとも一つの有機マトリックス材料を含み、ここで、有機マトリックス材料は、好ましくは、カルバゾール、インデノカルバゾール、インドロカルバゾール(たとえば、EP13001800.5)、トリアジン、ピリミジン、ラクタム、ケトン、ホスフィンオキシド、たとえば、EP13001797.3に記載されたとおり、トリフェニレン、ジアリールフルオレン(特に、9,9'-ジアリールフルオレン、WO2009/124627に記載されたとおり)またはジベンゾフランである。
【0100】
マトリックス材料は、好ましくは、正孔伝導マトリックス材料であり、好ましくは、カルバゾール、インデノカルバゾールおよびインドロカルバゾールの群から選ばれる。
【0101】
さらに、マトリックス材料は、好ましくは、電子伝導マトリックス材料であり、好ましくは、トリアジン、ピリミジン、ラクタム、ケトンおよびホスフィンオキシドの群から選ばれる。
【0102】
さらに、調合物は、好ましくは、トリフェニレンマトリックスを含む。本発明の目的のために好ましい典型的なトリフェニレンマトリックス化合物は、EP1888708に開示されている。
【0103】
調合物は、また、好ましくは、ジベンゾフランマトリックスを含む。
【0104】
調合物中に存在する有機マトリックス材料とTADF化合物は、好ましくは、以下の条件を満足し;
[LUMO(TADF)−HOMO(マトリックス)]は、[S
1(TADF)−0.4eV]より大であり、
式中、S
1(TADF)は、TADF化合物の第1励起一重項状態S
1である。
LUMO(TADF)は、TADF化合物のLUMOエネルギーであり、HOMO(マトリックス)は、マトリックスのHOMOエネルギーである。
【0105】
調合物は、第1のマトリックス材料に加えて、非常に特に好ましくは、第2のマトリックス材料をも含む。混合マトリックス系は、特に有利な効果を示す。これらの混合マトリックス系を含む電子素子は、非常に良好な性能データを有することが多い。混合マトリックス系は、たとえば、US6,392,250 B1と US6,803,720 B2に開示されている。
【0106】
第1のマトリックス材料が電子輸送マトリックス材料であり、第2のマトリックス材料が、正孔輸送マトリックス材料であることが非常に特に好ましい。電子輸送マトリックス材料は、好ましくは、トリアジン、ピリミジン、ラクタム、ケトン、ホスフィンオキシドであり、正孔輸送マトリックス材料は、好ましくは、カルバゾール、インデノカルバゾールもしくはインドロカルバゾールである。
【0107】
第1のマトリックス材料も第2のマトリックス材料も、電子輸送マトリックス材料であり、好ましくは、トリアジン、ピリミジン、ラクタム、ケトン、ホスフィンオキシドであることがさらに非常に特に好ましい。
【0108】
第1のマトリックス材料も第2のマトリックス材料も、正孔輸送マトリックス材料であり、好ましくは、カルバゾール、インデノカルバゾールもしくはインドロカルバゾールであることがさらに非常に特に好ましい。
【0109】
第1のマトリックス材料が、電子輸送マトリックス材料か正孔輸送マトリックス材料の何れかであり、第2のマトリックス材料が広バンドギャップを有する化合物であることが特別に好ましい。これらの化合物は、広バンドギャップ材料と呼ばれる(US7,294,849))。
【0110】
広バンドギャップ材料は、好ましくは、2.5eV以上、より好ましくは、3.0eV以上、非常に好ましくは、3.2eV以上、非常に特に好ましくは、3.5eV以上、特別に好ましくは、3.7eV以上のバンドギャップを有する。本出願でのバンドギャップは、HOMOとLUMOのエネルギー準位の差から計算される。
【0111】
TADF化合物は、電子素子においてエミッターとして用いることができる。本発明のさらなる1態様では、TADF化合物は、マトリックス材料として使用することもできる。この場合に、TADF化合物は、エミッターへそのエネルギーを移送し、電子素子から最大に放射放出する。任意のエミッターが、この目的に基本的に適している。マトリックス材料としてのTADF化合物の使用は、特に有利な性能データを有する電子素子を可能とする。エミッターは、ナノ粒子であることが特に好ましい。
【0112】
したがって、調合物は、ナノ結晶化合物またはナノ粒子を含むことが非常に有利である。ナノ結晶またはナノ粒子は、量子ドットもしくは量子ロッドを含む。これらの化合物の助けにより、非常に低い故障率を有し、狭いバンドを有する放出を示す効率的なOLEDと他の有機電子素子を安価に製造することができる。さらに、優秀な色純度と色質(CRI−演色評価数)を示す発光素子を得ることができる。さらに、このようなOLEDの発光色(CIE 1931 RGB)を、非常に簡単に正確に調整することができる。
【0113】
調合物は、ナノ粒子とTADF化合物に加えて、好ましくは、上記電子輸送マトリックス化合物または上記正孔輸送マトリックス化合物であるさらなるマトリックス化合物を含むことも非常に特に好ましい。
【0114】
量子ドットと量子ロッドの両者を非常に簡単に製造することができる。粒子サイズは、放出放射の色の決定因子であり、簡単に調整することができる。さらに、量子ドットと量子ロッドは、多くの通常の溶媒に可溶性であり、溶液系の製造プロセスに極めて適している。
【0115】
半導体材料を含む最初の単分散コロイド状量子ドットは、CdE(E=S、Se、Te)系であり、いわゆるTOPO(トリオクチルホスフィンオキシド)法により製造された(J. Am. Chem. Soc. 115[19], 8706-8715, 1993)。
【0116】
量子ドットと量子ロッドの製造のための多様な方法が当業者に知られており、好ましいのは、無機量子ドットの制御された成長のためのコロイド系の溶液系方法の使用である(Science 271:933 (1996); J. Am. Chem. Soc. 30:7019-7029 (1997); J. Am. Chem. Soc. 115:8706 (1993))。
【0117】
量子ドットと量子ロッドに使用される適切な半導体は、たとえば、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnO、ZnS、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe等のII-VI族元素およびたとえば、CdZnSe等のそれらの混合物:
たとえば、InAs、InP、GaAs、GaP、InN、GaN、InSb、GaSb、AlP、AlAs、AlSb等のIII-V族元素およびたとえば、InAsP、CdSeTe、ZnCdSe、InGaAs等のそれらの混合物;
たとえば、PbSe、PbTeおよびPbS等のIV-VI族元素およびそれらの混合物;
たとえば、InSe、InTe、InS、GaSe等のIII-VI族元素およびInGaSe、InSeS等のそれらの混合物;
たとえば、SiおよびGeとその混合物等のIV族半導体および上記材料の混合物から選ばれる。
【0118】
量子ドットと量子ロッドのためのさらに適切な半導体材料は、US 10/796,832に開示されたものを含み、II-VI族、III-V族、IV-IV族およびIV族半導体からの元素を含む任意の型の半導体を含む。特に適切な半導体の選択は、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C(ダイアモンドを含む)、P、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlS、AlSb、BaS、BaSe、BaTe、CaS、CaSe、CaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Si
3N
4、Ge
3N
4、Al
2O
3(Al,Ga,In)
2(S,Se,Te)
3およびAl
2COと2以上の前記半導体の適切な組み合わせである。
【0119】
II-VI族、III-V族、IV-IV族およびIV族半導体からの元素から選ばれる量子ドットと量子ロッドは、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSおよびその組み合わせから選ばれることが好ましい。
【0120】
QDとQRにおいて、フォトルミネッセンスとエレクトロルミネッセンスが、ナノ粒子のバンドエッジ状態から生じる。X. Peng, et al., J. Am. Chem. Soc. Vol119:7019-7029 (1997)で報告されたとおり、ナノ粒子からの放射バンドエッジ放出は、表面電子状態から発する非放射性減衰チャネルに匹敵する。
【0121】
コア/シェル構造を有する量子ドットと量子ロッドは、特に有利であることが証明された(J. Am. Chem. Soc. Vol119:7019-7029 (1997))。
【0122】
コア/シェル構造は、シェル材料を含む有機金属前駆体が、前駆体として使用される場合に得ることができる。これらの前駆体は、コアナノ粒子との反応混合物に添加される。製造プロセスに関するさらなる詳細は、先行技術から当業者に周知である。
【0123】
好ましい1態様では、ZnSがシェル材料として使用される。
【0124】
量子ドットと量子ロッドが、II-VI族からの半導体材料、それらの混合物およびそれらのコア/シェル構造であることが、さらに好ましい。ここで、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTeおよびそれらの混合物が、非常に好ましい。
【0125】
量子ドットと量子ロッドは、粒子表面に結合するさらなるリガンドを含んでよい。この目的のために適切なリガンドは、先行技術から周知であり、たとえばUS10/656910およびUS60/578236に開示されている。これは、量子ドットと量子ロッドの種々の特性を改善することを可能とする。これは、マトリックス材料とポリマーのある種の溶媒中の溶解度を改善することを可能とする。さらに好ましいリガンドは、US2007/0034833A1およびUS20050109989A1に開示されている。
【0126】
ここで使用される量子ドットと量子ロッドは、単分散サイズ分布を本質的に有するナノ粒子である。粒子の次元は約1nm〜500nmである。単分散は、粒子が、粒子の前記次元の士10%のサイズ分布を有する。
【0127】
量子ロッド製造のための典型的な構造とプロセスは、US2013/0135558 A1に開示されている。
【0128】
本発明の調合物は、電子素子での層の製造のために使用することができ、本発明の調合物により製造される層は、溶液から適用される。
【0129】
たとえば、OLED等の有機電子素子の製造において、2つの基本的に相異なるプロセス間の区別がなされる。第1のプロセスでは、関連する化合物は、真空気相堆積により適用される。このプロセスは、極めて複雑で高価である。第2のプロセスでは、関連する化合物は、溶液から適用される。
【0130】
ある種の電子素子は、多層系から構築される。この型の多層系の製造においては、両上記プロセスを用いることができる。個々の層は気相堆積により適用され、他の層が溶液から加工されることがある。
【0131】
したがって、本発明は、さらに、有機エレクトロルミッセンス素子の製造方法に関し、電子素子の少なくとも一つの層が、本発明の調合物の助けにより溶液から製造されることを特徴とする。
【0132】
溶液からの層の製造のための典型的なプロセスは、たとえば、スピンコーティング、もしくは、たとえば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、もしくはノズル印刷、特に好ましくは、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)もしくはインクジェット印刷のような任意の所望の印刷プロセスである。この目的のために調合物が必要である。
【0133】
有機電子素子は、好ましくは、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(TFT)、有機エレクトロルミッセンス素子、有機太陽電池(OSC)、有機光学検査素子、有機光受容体であるが、好ましくは、有機エレクトロルミッセンス素子(OPC)である。
【0134】
非常に好ましい有機エレクトロルミッセンス素子は、有機発光トランジスタ(OLET)、有機電場消光素子(OFQD)、有機発光電子化学電池(OLEC、LEC、LEEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)および有機発光ダイオード(OLED)、好ましくは、OLEDおよびOLED、非常に好ましくは、OLEDである。
【0135】
調合物は、当業者に高度に習熟したプロセスにより製造することができる。典型的には、調合物の個々の成分は、要すれば熱の供給により、混合され、攪拌される。調合物は、不活性ガスで飽和された溶媒を使用して、脱気されまたは調製されることが多い。有害な化合物による電子素子の汚染を防止するために、全体として、溶媒と非常に高純度の他の成分だけが使用される。特に、有機エレクトロルミッセンス素子の性能データがそれらの存在により大いに害され得ることから、特に、調合物中の水、酸素およびハロゲン含量は低く保たれねばならない。
【0136】
本発明による調合物は、先行技術を超える一以上の以下の驚くべき利点によって区別される。
1.本発明による調合物により製造された電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセント素子は、極めて良好な安定性を有する。特に、故障数は、真空蒸発により製造された電子素子と比べて、調合物により顕著に減じることができる。
2.本発明による調合物により製造された電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセント素子は、先行技術からの電子素子と比べて、同等の効率と電圧を有する。
3.本発明による調合物により製造された電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセント素子は、簡単に、安価で製造することができ、それゆえ、商業製品の大量生産に、特に適している。
4.本発明の調合物により、有機電子素子の層を、特に、複数の成分(たとえば、複数のマトリックス化合物)を含む有機エレクトロルミッセンス素子において、極めて簡単に、安価な方法で製造することができる。
5.本発明の調合物により、製造プロセスは、新たな要請に極めて容易に適合することができる。
【0137】
本発明に記載された態様の変形は、本発明の範囲に入ることを指摘しなければならない。本発明に開示された各特長は、明らかに排除されなければ、同じ、等価、または同様の目的を果たす代替的特徴により置き代えられ得る。したがって、本発明に開示された各特徴は、他に断らなければ、一般的に一連の例または等価物もしくは同じ特徴とみなされる。
【0138】
本発明のすべての特徴は、ある特徴および/または工程が相互に排除しない限り、互いに組み合わせることができる。これは、本発明の好ましい特徴にあてはまる。同様に、非本質的な組み合わせの特徴が、(組み合わせではなく)別に使用されてよい。
【0139】
本発明の多くの特徴、特に、好ましい態様の特徴は、それ自身発明性があり、本発明の態様の部分としてみなされるだけではない。現在クレームされた発明に加えてまたその代替として、独立した保護が、これらの特徴のために追及されてよい。
【0140】
ここで、本発明で開示された技術的アクションに関する教示が、抽出され、他の例と組み合わせることができる。
【0141】
本発明は、以下の例により詳細に説明されるが、それにより限定するものではない。
【0142】
当業者は発明性を要することなく、さらなる本発明の電子素子を製造するために、説明を使用し、特許請求された全範囲で本発明を実施することができるであろう。
【0143】
本発明は、以下の例により詳細に説明されるが、それにより限定するものではない。当業者は発明性を要することなく、開示された全範囲で本発明を実施し、本発明の有機エレクトロルミッセンス素子を製造するために、説明を使用することができるであろう。
【0144】
例:
例1
決定方法
HOMO、LUMO、一重項準位および三重項準位の決定
材料の分子軌道のエネルギー準位と、最低の三重項状態T
1または最低の励起一重項状態S
1のエネルギーとを、量子化学計算によって決定する。この目的のために、「ガウシアン09、改訂D.01」ソフトウエアパッケージ(Gaussian Inc.)を本願で使用する。金属を含まない有機物質(「org.」方法で示される)を計算するために、最初に、電荷0およびマルチプリシティ1による、準実験的方法AM1(ガウシアンインプットライン#AM1 opt)を使用して、幾何学的な最適化を実施する。続いて幾何学的な最適化を基準にして、電子基底状態および三重項準位についてのエネルギー計算(一点)を実施する。ここでは、6−31G(d)ベースセット(ガウシアンインプットライン"# B3PW91/6-31G(d) td=(50-50,nstates=4)")を用いるTDDFT(時間依存密度汎関数法)B3PW91を使用する(電荷0、マルチプリシティ1)。有機金属化合物(“org-m”法と示されている)に対しては、ジオメトリーは、ハートリー-フォック法およびLanL2MBベースセット(ガウシアンインプットライン"# HF/LanL2MB opt")(電荷0、マルチプリシティ1)を用いて最適化される。エネルギー計算は、前述したように有機物質と同じように実行されるが、「LanL2DZ」ベースセットが金属原子のために使用され、「6−31G(d)」ベースセットがリガンドのために使用されるという違いがある(ガウシアンインプットライン"#B3PW91/gen pseudo=lanl2 td=(50-50,nstates=4)")。エネルギー計算は、たとえば、ハートリー単位で、2つの電子により占有される最後の軌道としてHOMO(アルファocc.固有値)と、ハートリー単位で、最初に占有されなかった軌道としてLUMO(アルファvirt.固有値)とを与え、ここではHEhとLEhは、それぞれハートリー単位のHOMOエネルギーと、ハートリー単位のLUMOエネルギーとを表している。HOMO−1,HOMO−2,…LUMO+1,LUMO+2等のような他のエネルギー準位のエネルギーは、ハートリー単位で、同じようにして得られる。
【0145】
本願の目的では、eVでの、CV測定((HEh*27.212)-0.9899)/1.1206)を参照して較正された値は、占有軌道のエネルギー準位としてみなされる。
【0146】
本願の目的では、eVでの、CV測定((LEh*27.212)-2.0041)/1.385)を参照して較正された値は、非占有軌道のエネルギー準位としてみなされる。
【0147】
材料の最低三重項状態T
1は、量子化学エネルギー計算から生じる最低エネルギーをもつ三重項状態の相対的励起エネルギー(eVで示す)として定義される。
【0148】
最低の励起された一重項状態S
1は、量子化学エネルギー計算から生じる二番目に最低のエネルギーをもつ一重項状態の相対的励起エネルギー(eVで示す)として定義される。
【0149】
ここに記載された方法は、使用されるソフトウエアパッケージとは独立しており、常に同じ結果を与える。この目的のためによく利用されるプログラムの例は、「ガウシアン09W (Gaussian Inc.)とQ-Chem 4.1 (Q-Chem, Inc.)」である。本願では、「ガウシアン09W」ソフトウエアパッケージをエネルギー計算に使用する。
【0150】
表2はHOMOおよびLUMOエネルギー準位と、種々の材料のS
1およびT
1を示している。
【0151】
分子軌道の重複の決定
ある電子遷移(電荷−移動状態)に関与する分子軌道の重複は、パラメーターΛを使用して説明される。パラメーターΛの意味は当業者によく知られている。先行技術で説明されている方法によるパラメーターの決定は、当業者にはまったく問題を与えない。本願の目的では、パラメーターΛは、D. J. Tozer et al. (J. Chem. Phys. 128, 044118 (2008))によれば、たとえば、Q-Chem, Inc.製のQ-Chem 4.1ソフトウエアパッケージで実施されている、PBHT法から決定される。ここでは分子軌道は前述した方法によって計算される。占有分子軌道ψ
iと非占有(バーチャル)分子軌道ψ
aとのすべての可能な対についての空間的重複を続いて、以下の式から決定する:
【0152】
【数2】
【0153】
ここでは、軌道の絶対値を計算に使用する。
【0154】
パラメーターΛは次いで、次式にしたがい、占有および非占有分子軌道のすべての対iaにおける加重和から得られる
【0155】
【数3】
【0156】
ここでは、値κ
iaは、Tozer et al.の方法によって、分解されたTD(時間依存)固有値式の励起ベクトルにおける軌道係数から決定され、ここでは0≦Λ≦1である。
【0157】
PL量子効率(PLQE)の決定
使用される発光層の50nm厚の膜が、石英基板に適用される。この膜は、発光層が1以上のさらなる素子(たとえば、量子ドット、無機半導体または有機半導体)をもたなければ、対応するOLEDの発光層と同じ濃度で同じ材料を含む。この場合、PLQEの測定のための膜は、さらなる素子は別として、すべての材料を含み、存在する材料の混合比はOLEDの発光層のものに対応する。OLEDの発光層の製造と同じ製造条件を、PLQEの測定のための膜の製造で使用する。この膜の吸収スペクトルを350−500nmの範囲の波長において測定する。この目的のために、試料の反射スペクトルR(λ)と透過スペクトルT(λ)とが入射角6°で測定される(すなわち、実質的に垂直の入射)。本願の目的では吸収スペクトルを、A(λ)=1−R(λ)−T(λ)として定義する。
【0158】
350−500nmの範囲でA(λ)が0.3未満またはそれに等しいならば、350−500nmの範囲の吸収スペクトルの最大に属する波長を、λ
excと定義する。任意の波長に対してA(λ)が0.3よりも大きいならば、A(λ)が0.3未満の値から0.3を超える値へ変化する最大波長、あるいは0.3を超える値から0.3未満の値へ変化する最大波長をλ
excとして定義する。
【0159】
PLQEは、Hamamatsu C9920-02測定システムを使用して、測定される。その原理は、定義された波長の光による試料の励起と、吸収および発光された放射の測定とに基づいている。試料は、測定中、ウルブリヒト球(「積分球」)に位置される。励起光のスペクトルは、おおよそ、10nm未満の半値全幅と、先に定義したようなピーク波長λ
excとを有するガウシアンである。
【0160】
PLQEは、前記測定システムでは一般的である評価法により測定される。厳格に確実にすべきことは、いかなるときでも、試料が酸素と接触をしないことであり、その理由は、S
1とT
1との間のエネルギー離隔が小さい材料のPLQEが、酸素によって非常に大幅に減少されるためである(H. Uoyama et al., Nature 2012, Vol. 492, 234)。測定を室温で実施する。
【0161】
減衰時間の測定
減衰時間を、「PL量子効率(PLQE)の決定」で前述したように、製造された試料を使用して測定する。試料をレーザーパルス(波長266nm、パルス期間1.5ns、パルスエネルギー200μJ、ビーム直径4mm)により、室温で励起する。ここでは、試料を真空に位置させる(10
−5ミリバール未満)。励起後(t=0として定義)、時間にわたる、発光されたフォトルミネッセンスの強度の変化を測定する。フォトルミネッセンスは、TADF化合物の即発蛍光が原因で、初めは急落を示す。時間の継続につれて、ゆっくりとした落下、即ち遅延蛍光が観察される(たとえば、H. Uoyama et al., Nature, vol. 492, no. 7428, pp. 234-238, 2012 と、K. Masui et al., Organic Electronics, vol. 14, no. 11, pp. 2721-2726, 2013を参照)。本願の意味では、減衰時間t
aは、遅延蛍光の減衰時間であり、次のように決定される:時間t
dが選択され、その時間では、即発蛍光は遅延蛍光の強度を非常に下回るように減衰し、よってそれに続く減衰時間の決定は即発蛍光による影響を受けない。この選択は当業者により行われることができ、一般的な専門家の知識に属する。時間t
dからの測定データについて、減衰時間t
a=t
e−t
dが決定される。ここでt
eはt=t
d後の時間であり、その時間では、強度は初めは、t=t
dにおけるその値の1/eまで低下する。
【0162】
例2
素子例
以下の例で必要とされる材料を表1に示す。関連されるHOMOおよびLUMOエネルギー準位と、S
1およびT
1とを表2に示す。
【0163】
真空処理されたOLED
厚さ50nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆された、(laboratoryの食器洗浄機、Merck Extran洗浄剤)ガラス板を、湿式洗浄し、引き続き、15分間、窒素雰囲気中で250℃で加熱することにより乾燥させ、被覆前に130秒間、酸素プラズマで処理する。これらのプラズマ処理されたガラス板は、OLEDが適用される基板を形成する。基板は被覆前は真空に置かれる。被覆はプラズマ処理後、遅くても10分間で開始する。
【0164】
材料は、真空室において、熱気相堆積により適用される。ここで、発光層は、常に、少なくとも一種のマトリックス材料(ホスト材料)と、発光材料からなる。これは共蒸発により一定の体積割合で一種または複数のマトリックス材料と予備混合される。ここで、IC1(60%):WB1(30%):D1(10%)等の表現は、材料IC1が60体積%の割合で層中に存在し、WB1が30体積%の割合で層中に在在し、D1が10体積%の割合で層中に存在することを意味する。同じように、電子輸送層も、二種の材料の混合物からなることができる。
【0165】
OLEDの特性決定のため、電流/電圧/輝度特性線が測定される。輝度は較正されたフォトダイオードを使用して測定される。さらに、エレクトロルミネセンススペクトルは輝度1000cd/m
2で測定される。外部量子効率(EQE、パーセントで測定)はランベルト発光特性を仮定して、計算される。
【0166】
先行技術による例V1:
40nmのBPA1、次いで60nmのIC1(60%):WB1(30%):D1(10%)、次いで10nmのST1、次いで40nmのST1(50%):LiQ(50%)、最後にカソードとして100nmのアルミニウムの層配列が、調製された基板へ熱蒸発により適用される。
【0167】
発光層は84%(λ
exc=350nm)のPLQEと、4.9μs(t
d=6μs)の減衰時間を示す。
【0168】
OLEDは緑色発光を示し、1000cd/m
2において15.1%のEQEであり、この輝度では7.2Vの電圧を必要とする。64の素子がこの例から製造される。200時間にわたって20mA/cm
2で動作したとき、7つの素子が故障し、すなわちこれらは発光を全く示さなかった。
【0169】
先行技術による例V2:
40nmのBPA1、次いで60nmのIC1(30%):WB1(60%):D1(10%)、次いで10nmのST1、次いで40nmのST1(50%):LiQ(50%)、最後にカソードとして100nmのアルミニウムの層配列が、調製された基板へ熱蒸発により適用される。
【0170】
発光層は79%(λ
exc=350nm)のPLQEと、5.1μs(t
d=7μs)の減衰時間を示す。
【0171】
OLEDは緑色発光を示し、1000cd/m
2において13.9%のEQEであり、この輝度では6.8Vの電圧を必要とする。64の素子がこの例から製造される。200時間にわたって20mA/cm
2で動作したとき、5つの素子が故障し、すなわちこれらは発光を全く示さなかった。
【0172】
溶液処理された発光層を有するOLED
以下説明する例では、溶液ベースおよび真空ベースで適用される層は、OLED内で組み合わされ、よって、発光層を含めこれまでの処理が、溶液から実行され、引き続く層では熱真空蒸発により行われる。
【0173】
厚さ50nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆された、清浄にした(Miele laboratoryの食器洗浄機、Merck Extran洗浄剤で洗浄した)ガラス板を、UVオゾンプラズマで20分間処理し、続いて、20nmのPEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレン・スルホン酸)で水溶液からのスピンコート、Heraeus Precious Metals GmbH、独国からCLEVIOS(登録商標)P VP AI 4083として購入)で被覆される。これらの基板をその後、180℃で10分間の加熱により乾燥させる。
【0174】
20nmの厚さを有する正孔輸送層をこれらの基板に適用する。これは以下の構造式のポリマーからなり、
【0175】
【化3】
【0176】
WO 2010/097155にしたがい合成されている。材料をトルエン中に溶解させる。溶液の固形分の含有量は5g/lである。厚さ20nmの層を、そこから窒素雰囲気中でスピンコートにより適用する。その後、試料を180℃で60分間、窒素雰囲気中で加熱することにより乾燥させる。
【0177】
次いで、発光層を適用する。これは常に少なくとも一種のマトリックス材料(ホスト材料)と発光ドーパント(エミッター)からなる。IC2(60%):WB1(30%):D1(10%)等の表現は、材料IC2が発光層が製造される溶液中に60体積%の割合で存在し、WB1が30体積%の割合で在在し、D1が10体積%の割合で存在することを意味している。発光層の対応する固形分混合物はトルエン中に溶解されている。固形分含有量は18g/lである。発光層は窒素雰囲気中で、スピンコートによって適用され、窒素雰囲気中で、180℃で10分間の加熱により乾燥される。
【0178】
その後、試料を空気に触れさせず、真空室へ導入し、さらなる層を蒸発により適用する。このタイプの層が複数の材料からなるならば、前述の熱蒸発により適用された層についての命名法を、個々の素子の混合比に適用する。
【0179】
OLEDを、真空処理されたOLEDについて前述したように特性決定する。
【0180】
本発明による例E1:発光層では、固形分混合物IC2(60%):WB1(30%):D1(10%)を使用する。厚さ60nmの発光層を、前述したように、そこから製造する。厚さ10nmの材料ST1の層、次いで厚さ40nmのST1(50%):LiQ(50%)の層が、ひきつづき熱真空蒸発により適用される。厚さ100nmのアルミニウム層が引き続き、真空蒸発によりカソードとして適用される。
【0181】
発光層は82%(λ
exc=350nm)のPLQEと、4.6μs(t
d=5μs)の減衰時間を示す。
【0182】
OLEDは緑色発光を示し、1000cd/m
2において14.2%のEQEであり、この輝度では7.4Vの電圧を必要とする。64の素子がこの例から製造される。200時間にわたって20mA/cm
2で動作したとき、2つの素子が故障し、すなわちこれらは発光を全く示さなかった。
【0183】
本発明による例E2:OLEDは例E1に対応するが、混合物IC2(60%):WB1(30%):D1(10%)を混合物IC2(30%):WB1(60%):D1(10%)に置き換える違いがある。
【0184】
発光層は75%(λ
exc=350nm)のPLQEと、4.7μs(t
d=5μs)の減衰時間を示す。
【0185】
OLEDは緑色発光を示し、1000cd/m
2において12.9%のEQEであり、この輝度では6.9Vの電圧を必要とする。64の素子がこの例から製造される。200時間にわたって20mA/cm
2で動作したとき、故障した素子はなかった。
【0186】
真空処理された発光層を有する(先行技術による)例V3:OLEDは例E1のOLEDに対応するが、発光層が真空処理され、すなわち厚さ60nmの、発光層IC2(60%):WB1(30%):D1(10%)が真空蒸発により製造される違いがある。
【0187】
発光層は86%(λ
exc=350nm)のPLQEと、4.7μs(t
d=5μs)の減衰時間を示す。
【0188】
OLEDは緑色発光を示し、1000cd/m
2において13.5%のEQEであり、この輝度では7.5Vの電圧を必要とする。64の素子がこの例から製造される。200時間にわたって20mA/cm
2で動作したとき、4つの素子が故障し、すなわちこれらは発光を全く示さなかった。
【0189】
例の比較
先行技術の例V1、V2と、本発明の例E1、E2では、夫々の処理タイプに適合された非常に類似した材料を使用している。特に、化合物D1をすべての例で、TADFとして使用する。
【0190】
例V1とE1、またはV2とE2の比較は、真空処理された発光層と同程度の効率と電圧が、溶液処理された発光層で達成されることができることを示している。しかし、動作において、真空処理されたOLEDの故障率が著しく高い。
【0191】
例V3とE1では、同じ材料を使用するが、E1では発光層が溶液から製造され、V3では発光層が真空蒸発により製造された違いがある。性能データは同程度であるが、溶液処理された発光層を有するOLEDは、著しく少ない故障を示している。
【0192】
量子ロッドを含む発光層を有するOLED
OLEDは例E1に対応するが、混合物IC2(60%):WB1(30%):D1(10%)を混合物IC2(45%):WB1(23%):D1(7%):QRod(25%)に置き換える違いがある。ここではQRodは赤色発光量子ロッドであり、これは直径3.9nmを有するCdSeコアを含み、長さ35nmの周囲ロッドはCdSからなる。使用するキャッピング剤はオクタデシルホスホン酸である。QRodのピーク波長は635nmであり、半値幅は30nmである。QRodのない発光層は、81%のPLQE(λ
exc=350nm)と、4.8μs(t
d=5μs)の減衰時間を示す。
【0193】
OLEDは黄色発光を示し、すなわちD1の緑色発光およびQRodの赤色発光の混合物である。EQEは1000cd/m
2において8.4%であり、この輝度には電圧9.4Vが必要とされる。
【0194】
【表2】
【0195】
【表3】