特許第6720100号(P6720100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720100
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】水処理方法及び水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20060101AFI20200629BHJP
【FI】
   C02F3/34 101C
   C02F3/34 Z
   C02F3/34 101A
   C02F3/34 101B
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-33967(P2017-33967)
(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公開番号】特開2018-138292(P2018-138292A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2019年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】楠本 勝子
(72)【発明者】
【氏名】葛 甬生
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−137152(JP,A)
【文献】 特開2015−131253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/28−3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液中に含まれるアンモニア性窒素の一部を亜硝酸化槽内に収容された亜硝酸化菌の作用により亜硝酸性窒素に部分亜硝酸化して、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含む亜硝酸化処理液を得る亜硝酸化処理において、前記亜硝酸化槽へ流入する前記被処理液のアンモニア性窒素濃度と前記亜硝酸化槽から流出する前記亜硝酸化処理液のアンモニア性窒素濃度を測定することと、前記測定に基づいて、前記被処理液のアンモニア性窒素濃度に対する前記亜硝酸化処理液のアンモニア性窒素濃度の濃度比が0.3〜0.5の範囲になるように、前記被処理液に添加するアルカリの添加量を制御することと、
前記亜硝酸化処理液を固液分離した分離液を、嫌気性条件下で嫌気性アンモニア酸化菌に接触させ、嫌気性アンモニア酸化処理液を得る嫌気性アンモニア酸化処理をすることと
を含む水処理方法。
【請求項2】
前記アルカリの添加量を制御することが、前記濃度比が0.3よりも小さくなる場合には前記アルカリの添加量を減少させるように制御し、前記濃度比が0.5よりも大きくなる場合には前記アルカリの添加量を増加させるように制御することを含む請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記被処理液を前記亜硝酸化処理する前に、前記被処理液を活性汚泥中の従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理して第1従属脱窒処理液を得る第1従属脱窒処理と
記嫌気性アンモニア酸化処理液中に含まれる亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を、活性汚泥中の従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理して第2従属脱窒処理液を得る第2従属脱窒処理と
を更に含む請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項4】
被処理液中に含まれるアンモニア性窒素の一部を亜硝酸化菌の作用により亜硝酸性窒素に部分亜硝酸化して、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含む亜硝酸化処理液を得る亜硝酸化槽と、
前記亜硝酸化処理液を固液分離する固液分離装置と、
前記固液分離後の亜硝酸化処理液を、嫌気性条件下で嫌気性アンモニア酸化菌に接触させ、嫌気性アンモニア酸化処理液を得る嫌気性アンモニア酸化槽と、
前記亜硝酸化槽へ流入する前記被処理液のアンモニア性窒素濃度を測定する第1の測定器と、
前記亜硝酸化槽から流出する前記亜硝酸化処理液のアンモニア性窒素濃度を測定する第2の測定器と、を備え、
前記第1及び第2の測定器の測定結果に基づいて、前記被処理液のアンモニア性窒素濃度に対する前記亜硝酸化処理液のアンモニア性窒素濃度の濃度比が0.3〜0.5の範囲になるように、前記被処理液に添加するアルカリの添加量を制御することを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
前記濃度比が0.3よりも小さくなる場合には、前記第1及び第2の測定器の測定結果と前記被処理液のM−アルカリ度とに基づいて、前記アルカリの添加量を減少させるように制御し、前記濃度比が0.5よりも大きくなる場合には前記アルカリの添加量を増加させるように制御することを含む請求項に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理方法及び水処理装置に関し、特に窒素含有被処理液を処理する水処理方法及び水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水中に含まれる窒素は、湖沼及び湾などの閉鎖系水域における富栄養化の原因物質であり、排水処理工程で効率的に除去されることが望まれる。排水から窒素を除去する方法としては生物学的硝化脱窒法が多用されている。生物学的硝化脱窒法では、原水中のアンモニア性窒素を、好気状態の反応槽、通称硝化槽においてアンモニア酸化細菌(AOB)により亜硝酸性窒素(NO2−N)に酸化し、次に亜硝酸性窒素を亜硝酸酸化細菌(NOB)により硝酸性窒素(NO3−N)に酸化する。さらに、この硝化槽からの処理液を、嫌気状態の反応槽、通称脱窒槽に導入して、硝化槽処理液中の硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素を従属栄養性細菌である脱窒菌を用いて有機物を電子供与体として利用しながら無害の窒素ガスに還元している。
【0003】
このような従来の生物学的硝化脱窒法では、アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に酸化する硝化工程において多量の酸素(空気)を必要とし、また、脱窒工程では電子供与体としてのメタノールの使用量が多量であり、ランニングコストを増加させるという課題があった。そこで、近年では、生物学的硝化脱窒法に代わる処理方法として、嫌気性アンモニア酸化処理法(Anaerobic Ammonium Oxidation Process)、所謂アナモックス反応によるアンモニア脱窒法を利用した水処理が進められている。アンモニア脱窒法は、独立栄養性脱窒細菌の作用で、嫌気性条件の下、アンモニア性窒素で亜硝酸性窒素を還元して窒素ガスに変換する方法である。
【0004】
この変換の反応式は次の反応式のように表される。
1.0NH4++1.32NO2-+0.066HCO3-+0.13H+
→1.02N2+0.26NO3-+0.066CH20.50.15+2.03H2O・・・(1)
アンモニア脱窒法においては、(1)式に示されるように脱窒素のために排水中のアンモニア性窒素を脱窒素の水素供与体として利用する。このため、当該反応の前工程で原水中のアンモニア性窒素を亜硝酸化する必要があるが、アンモニア性窒素の約半量を亜硝酸化するだけであり、従来のように硝酸にまで酸化させる必要はないことから、酸素供給量も著しく減少させることが可能である。従って、亜硝酸化型硝化工程と嫌気性アンモニア酸化工程を組み合わせた水処理は、従来の硝化工程と脱窒工程を組み合わせた水処理と比較して、全体のランニングコストを低減することができる。
【0005】
亜硝酸化型硝化工程と嫌気性アンモニア酸化工程を組み合わせた水処理を安定して行おうとする場合、(1)式からみて、亜硝酸化型硝化工程でNH4+に対するNO2-の比率が1.32となるように硝化を制御することが望ましい。しかしながら、一般的に硝化プロセスでは、以下の反応式(2)及び(3)に示すように、好気条件において原水中のアンモニア性窒素(NH4−N)はアンモニア酸化反応及び亜硝酸酸化反応を経て、最終的には硝酸性窒素(NO3−N)となる。両者の反応はほぼ同時に起こるので、アンモニア酸化のみを進行させることは通常困難とされている。
NH4++1.5O2→NO2-+2H++H2O・・・(2)
NO2-+0.5O2→NO3-・・・(3)
【0006】
このような背景の下、亜硝酸化型硝化工程と嫌気性アンモニア酸化工程を組み合わせた水処理を安定して行うべく、研究開発が進められている。特開2014−104416号公報(特許文献1)においては、亜硝酸化型硝化工程における全窒素濃度とアンモニア性窒素濃度を検出し、その差分に基づいて亜硝酸性窒素を算出し、硝化槽から流出する処理水中のアンモニア性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度の割合が所定の割合(例:1.00〜1.32)に近づくように、硝化槽中のDO(溶存酸素)濃度を制御する方法が記載されている。
【0007】
特許第5581872号公報(特許文献2)では、被処理液のアンモニア性窒素濃度(NH4−N)及びM−アルカリ度を予め測定し、測定結果から被処理液のM−アルカリ度/NH4−N比が3.7〜4.4となるように亜硝酸化槽にアルカリ又は酸を注入するとともに、亜硝酸化槽のpHに基づいて、亜硝酸化槽内のDO濃度を上昇又は低下させるように制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−104416号公報
【特許文献2】特許第5581872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、常にアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の濃度を把握し、その差分により目標とするDO値を設定して、設定したDO値に近づくように曝気量を調整しなければならない。DO濃度の制御は、曝気ブロワ等で吹込む空気量を調整することで行うが、目的とする曝気量に対して過曝気又は曝気不足の状態を起こす可能性が高く、調整が困難である。本発明者の実験によれば、亜硝酸化型硝化工程においてDO制御だけでは、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の比率を適正値に保つことが難しいことも確認されている。
【0010】
特許文献2では、DO制御に加え、亜硝酸化槽に導入する被処理液のM−アルカリ度/NH4−N比が3.7〜4.4となるように亜硝酸化槽にアルカリ又は酸を注入する方法が提案されている。しかしながら、特許文献2では、被処理液のM−アルカリ度及びNH4−N濃度を予め測定し、予め得られた測定値に基づいて制御を行うものであり、時間の経過に伴う被処理液の濃度変動が考慮されていない。よって、亜硝酸化槽へ流入する被処理液中の成分濃度の変動が生じる場合に有効な処理方法及び装置の改良も望まれる。
【0011】
特許文献2の改良策の1つとして、亜硝酸化槽に流入する被処理液のM−アルカリ度及びNH4−N濃度を常時モニタリングする測定器を設置することが、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の比率を常時適正値に保つ上では有効である。しかしながら、亜硝酸化槽に流入する被処理液をリアルタイムでモニタリングするために専用の測定器を用意する必要があることから、より経済性に優れた安価な測定器を用いた別の手法の検討も必要である。
【0012】
上記課題を鑑み、本発明は、経済的且つ簡単な手法で亜硝酸化槽内のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の比率を安定的に適正値に保つことが可能な窒素含有被処理液の水処理方法及び水処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、亜硝酸化槽に導入される被処理液と亜硝酸化槽から流出した亜硝酸化処理液のアンモニア性窒素濃度とを測定し、その濃度比が適正な範囲となるように亜硝酸化槽内に添加するアルカリの添加量を制御することが有効であるとの知見を得た。
【0014】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、被処理液中に含まれるアンモニア性窒素の一部を亜硝酸化槽内に収容された亜硝酸化菌の作用により亜硝酸性窒素に部分亜硝酸化して、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含む亜硝酸化処理液を得る亜硝酸化処理において、亜硝酸化槽へ流入する被処理液のアンモニア性窒素濃度と亜硝酸化槽から流出する亜硝酸化処理液のアンモニア性窒素濃度を測定することと、測定に基づいて、被処理液のアンモニア性窒素濃度に対する亜硝酸化処理液のアンモニア性窒素濃度の濃度比が0.3〜0.5の範囲になるように、被処理液に添加するアルカリの添加量を制御することを含む水処理方法が提供される。
【0015】
本発明に係る水処理方法は一実施態様において、亜硝酸化槽内の被処理液の溶存酸素濃度を1.0〜8.0mg/Lとすることを含む。
【0016】
本発明に係る水処理方法は別の一実施態様において、亜硝酸化槽内の被処理液のpHを4.8〜9.0とすることを含む。
【0017】
本発明に係る水処理方法は更に別の一実施態様において、アルカリの添加量を制御することが、濃度比が0.3よりも小さくなる場合にはアルカリの添加量を減少させるように制御し、濃度比が0.5よりも大きくなる場合にはアルカリの添加量を増加させるように制御することを含む。
【0018】
本発明に係る水処理方法は更に別の一実施態様において、亜硝酸化処理液を、嫌気性条件下で嫌気性アンモニア酸化菌に接触させ、嫌気性アンモニア酸化処理液を得る嫌気性アンモニア酸化処理を更に含む。
【0019】
本発明に係る水処理方法は更に別の一実施態様において、被処理液を亜硝酸化処理する前に、被処理液を活性汚泥中の従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理して第1従属脱窒処理液を得る第1従属脱窒処理と、亜硝酸化処理液を、嫌気性条件下で嫌気性アンモニア酸化菌に接触させ、嫌気性アンモニア酸化処理液を得る嫌気性アンモニア酸化処理と、嫌気性アンモニア酸化処理液中に含まれる亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を、活性汚泥中の従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理して第2従属脱窒処理液を得る第2従属脱窒処理とを更に含む。
【0020】
本発明は別の一側面において、被処理液中に含まれるアンモニア性窒素の一部を亜硝酸化菌の作用により亜硝酸性窒素に部分亜硝酸化して、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含む亜硝酸化処理液を得る亜硝酸化槽と、亜硝酸化槽へ流入する被処理液のアンモニア性窒素濃度を測定する第1の測定器と、亜硝酸化槽から流出する亜硝酸化処理液のアンモニア性窒素濃度を測定する第2の測定器と、を備え、第1及び第2の測定器の測定結果に基づいて、被処理液のアンモニア性窒素濃度に対する亜硝酸化処理液のアンモニア性窒素濃度の濃度比が0.3〜0.5の範囲になるように、被処理液に添加するアルカリの添加量を制御することを特徴とする水処理装置が提供される。
【0021】
本発明に係る水処理装置は一実施態様において、濃度比が0.3よりも小さくなる場合には、第1及び第2の測定器の測定結果と被処理液のM−アルカリ度とに基づいて、アルカリの添加量を減少させるように制御し、濃度比が0.5よりも大きくなる場合にはアルカリの添加量を増加させるように制御することを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、経済的且つ簡単な手法で亜硝酸化槽内のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の比率を常時適正値に保つことが可能な窒素含有被処理液の水処理方法及び水処理装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係る水処理装置の一例を表す概略図である。
図2】本発明の実施の形態に係る水処理方法の一例を示すフロー図である。
図3】本発明の実施の形態の第1の変形例に係る水処理装置の一例を表す概略図である。
図4】本発明の実施の形態の第2の変形例に係る水処理装置の一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。又、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の構造、配置などを下記のものに特定するものでない。
【0025】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施の形態に係る脱窒処理装置は、図1に示すように、被処理液中に含まれるアンモニア性窒素の一部を亜硝酸化菌の作用により亜硝酸性窒素に部分亜硝酸化して、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含む亜硝酸化処理液を得る亜硝酸化槽12と、亜硝酸化処理液を、嫌気性条件下で嫌気性アンモニア酸化菌に接触させ、嫌気性アンモニア酸化処理液を得る嫌気性アンモニア酸化槽13とを備える。
【0026】
本発明に用いられる被処理液としては特に制限されないが、アンモニア性窒素を含有する被処理液が好適であり、より好適には硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の少なくとも一方、又は有機物を含有してもよく、その場合には、被処理液に対し脱窒処理や活性汚泥処理等の所定の前処理を行ってもよい。被処理液は、亜硝酸化槽12へ供給され、亜硝酸化槽12では、亜硝酸化菌(硝化菌ともいう)の働きにより、被処理液に含まれるアンモニア性窒素(NH4−N)の一部を亜硝酸性窒素(NO2−N)に変換する部分亜硝酸化処理が行われる。
【0027】
部分亜硝酸化処理では、亜硝酸化菌を安定して亜硝酸化槽12内に維持することが望ましい。亜硝酸化菌を安定して維持するための方法としては、亜硝酸化槽12内に亜硝酸化菌を付着固定できる高分子流動担体(高分子生物担体)を添加すること等が挙げられる。これにより、亜硝酸化菌を安定して付着できることから、亜硝酸化槽12において安定した亜硝酸化性能が得られる。
【0028】
亜硝酸化槽12に充填される高分子生物担体としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、光硬化性樹脂等の合成高分子、カラギーナン、アルギン酸ソーダ等の高分子を用いたゲル担体、ポリエチレンやポリウレタン、ポリポロピレン等からなる流動担体が挙げられる。
【0029】
担体の形状としては球形、四角形、円筒形の何れも使用可能であり、その有効径は亜硝酸化槽12の出口のスクリーンより安定して分離できる3〜10mmが好ましい。担体比重は曝気状態において均一に流動可能となる1.01〜1.05であるものが好ましい。また、担体充填量は均一に混合流動可能となる10〜30Vol%であることが望ましい。
【0030】
亜硝酸化槽12内においては、担体および活性汚泥の沈降と滞留を妨げ、微生物を活性させるという理由により液を流動させること及び酸素を供給することが好ましい。液を流動させる方法としては、機械撹拌、散気筒等による曝気装置が挙げられ、撹拌と酸素供給を同時に行うことができるという理由により散気筒等による曝気装置が好ましい。図1に示す亜硝酸化槽12においては、ブロア及び散気筒を備えた曝気装置21aが設置されている。酸素供給用のガスとしては、空気、酸素等が利用可能であり、装置が容易になるという理由により空気が好ましい。
【0031】
亜硝酸化槽12は、亜硝酸化槽12内の被処理液のDO濃度を測定するDO計31を更に備えることができる。DO計31としては、一般に入手可能な汎用のDO計を用いることができる。亜硝酸化槽12内に収容された被処理液のDO濃度が1.0mg/Lよりも小さくなると、硝化が抑制され、所定の比率まで亜硝酸化することが難しいという場合がある。一方、亜硝酸化槽12内に収容された被処理液のDO濃度が8.0mg/Lよりも大きくなると、DOの残留が顕著になり、後段のアンモニア脱窒槽への持ち込みDOが増え、アンモニア脱窒の阻害要因になる懸念があるという場合がある。このため、DO計31を用いて亜硝酸化槽12内に収容された被処理液のDO濃度をモニタリングすることにより、亜硝酸化槽12内に収容された被処理液のDO濃度が1.0〜8.0mg/L、より好ましくは4.0〜6.0mg/Lの範囲内になるように調整されることが好ましい。
【0032】
DO濃度の制御は、DO計31の検出結果に基づいて、所定の濃度範囲外となった場合に操作者により手動で曝気手段の曝気量を調整して行ってもよいし、制御装置27により自動制御してもよい。
【0033】
亜硝酸化槽12は、亜硝酸化槽12内の被処理液のpHを測定するpH計32を更に備えることができる。pH計32としては、一般に入手可能な汎用のpH計を用いることができる。亜硝酸化槽12内に収容された被処理液のpHが4.8よりも小さくなると、アルカリ度が不足し、硝化が進行しないという場合がある。一方、亜硝酸化槽12内に収容された被処理液のpHが9.0より大きくなると、亜硝酸化槽に残留するアンモニア性窒素由来の遊離アンモニアが増加し、硝化が阻害される恐れがある。このため、pH計32を用いて亜硝酸化槽12内に収容された被処理液のpHをモニタリングすることにより、亜硝酸化槽12内に収容された被処理液のpHが4.8〜9.0、より好ましくは5.0〜7.5、より好ましくは5.5〜6.5の範囲内になるように調整されることが好ましい。
【0034】
pHの制御は、pH計32の検出結果に基づいて、所定の濃度範囲外となった場合に操作者により酸又はアルカリを添加するように調整してもよいし、制御装置27により自動制御してもよい。
【0035】
亜硝酸化槽12の前段及び後段には、第1の測定器25及び第2の測定器26がそれぞれ設けられている。第1の測定器25は、亜硝酸化槽12へ流入する被処理液のアンモニア性窒素(NH4−N)濃度D1を測定する。第2の測定器は、亜硝酸化槽12から流出する亜硝酸化処理液のアンモニア性窒素(NH4−N)濃度D2を測定する。
【0036】
ここで、第1の測定器25及び第2の測定器26としては、例えば、一般的に入手可能な汎用のアンモニア計を用いることができる。一般的に入手可能なアンモニア計を利用することで、測定器の設置に必要な費用が安価で済み、例えば、被処理液のM−アルカリ度を測定するための測定器を特別に用意する場合に比べて、経済的且つ簡単な手法で、亜硝酸化槽内のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の比率を把握することができる。
【0037】
亜硝酸化槽12においては、第1及び第2の測定器25、26の測定結果に基づいて、被処理液のアンモニア性窒素濃度(NH4−Nα)(単位:mg/L)に対する亜硝酸化処理液のアンモニア性窒素濃度(NH4−Nβ)(単位:mg/L)の濃度比(NH4−Nβ/NH4−Nα)が、0.3〜0.5になるように、被処理液に添加するアルカリの添加量を制御する。
【0038】
第1の測定器25及び第2の測定器26の測定結果から、濃度比(NH4−Nβ/NH4−Nα)が0.3〜0.5、好ましくは0.4〜0.45となるように、亜硝酸化槽12へ流入する被処理液に添加するアルカリの添加量を制御することによって、亜硝酸化処理液のNO2−N/NH4−N比を、嫌気性アンモニア酸化における理想値であるほぼ1.32に常時保つことが可能になる。
【0039】
濃度比の制御は、操作者が処理中、定期的に第1及び第2の測定器25、26の測定結果に基づいて算出することにより、注入装置28から注入するアルカリの添加量を制御してもよいし、制御装置27を用いて自動制御してもよい。制御装置27としては、例えば本発明に係る制御アルゴリズムに基づいて、所定の動作指令を送出する汎用又は専用の計算機(コンピュータ)が利用可能である。
【0040】
制御装置27は、第1及び第2の測定器25、26の測定結果と、亜硝酸化槽12に流入する被処理液のM−アルカリ度の値に基づいて、アルカリの注入量を算出し、アルカリの注入量を増加又は減少させる。アルカリの注入量の制御は、段階制御、P制御、PI制御及びPID制御などのフィードバック制御を採用することにより実施してもよい。亜硝酸化槽12へ添加されるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の水溶液が挙げられる。亜硝酸化槽12へ添加される酸としては硫酸、塩酸等が挙げられる。
【0041】
例えば、制御装置27は、図2に示すフローチャートに基づいて、アルカリの添加量を制御することができる。即ち、まず、図2のステップS1において、スタート時に設定されたアルカリの添加量に基づいて、図1の注入装置28からアルカリが添加される。ステップS2において、制御装置27の判定手段(図示せず)は、被処理液のNH4−N濃度(NH4−Nα)に対する亜硝酸化処理液のNH4−N濃度(NH4−Nβ)の濃度比(NH4−Nβ/NH4−Nα)が、0.3〜0.5の範囲内であるか否か判定する。判定の結果、濃度比が範囲内である場合には、ステップS3aへ進み、アルカリの添加量を変更せずに処理を続ける(現状維持)。
【0042】
ステップS2において、濃度比が0.3〜0.5の範囲内に無い場合には、ステップS3b又はステップS3cへ進む。即ち、ステップS3bにおいて、濃度比(NH4−Nβ/NH4−Nα)が0.3よりも小さい場合には、亜硝酸化槽12内が硝化過剰であることを意味するため、ステップS4bへ進み、制御装置27が備える注入量変更手段(図示せず)が、段階制御又はPID制御等により、亜硝酸化槽12内へ添加されるアルカリの添加量を減少させるように制御する。
【0043】
一方、ステップS3cにおいて、濃度比(NH4−Nβ/NH4−Nα)が0.5よりも大きい場合には、亜硝酸化槽12内が硝化不足であることを意味するため、ステップS4cへ進み、制御装置27が備える注入量変更手段(図示せず)が、段階制御又はPID制御等により、亜硝酸化槽12内へ添加されるアルカリの添加量を増加させるように制御する。その後ステップS5へ進み、ステップS3a〜S3cを繰り返す場合はステップS2へ戻り、亜硝酸化槽12の処理が終了する場合には処理を終了する。
【0044】
上記のように処理された亜硝酸化処理液のNO2−N/NH4−N比は、嫌気性アンモニア酸化における理想値であるほぼ1.32となる。亜硝酸化処理液は、嫌気性アンモニア酸化槽13へ送られる。
【0045】
嫌気性アンモニア酸化槽13においては、独立栄養細菌である嫌気性アンモニア酸化菌を付着固定した高分子流動担体が添加されており、嫌気性アンモニア酸化槽13に亜硝酸化処理液を供給することにより、アンモニア性窒素を水素供与体、亜硝酸性窒素を水素受容体とする独立栄養性脱窒反応を進行させる。
【0046】
ここでは、増殖の遅い嫌気性アンモニア酸化菌を槽内にできるだけ多く保持することが重要である。嫌気性アンモニア酸化槽13に嫌気性アンモニア酸化菌を付着固定できる高分子流動担体(高分子生物担体)を充填すれば、嫌気性アンモニア酸化菌を安定して付着できることから、嫌気性アンモニア酸化槽13において安定した脱窒性能が得られる。また、嫌気性アンモニア酸化により発生する窒素ガスを嫌気性アンモニア酸化槽13内で循環させて高分子流動担体を流動させることにより、より安定した脱窒性能が得られる。
【0047】
嫌気性アンモニア酸化槽13に充填する高分子生物担体としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルアミド、光硬化性樹脂等の合成高分子、カラギーナン、アルギン酸ソーダ等の高分子を用いたゲル担体、ポリエチレンやポリウレタン、ポリポロピレン等からなる流動担体が挙げられる。
【0048】
担体の形状としては球形、四角形、円筒形の何れも使用可能であり、その有効径は嫌気性アンモニア酸化槽13の出口のスクリーンより安定して分離できる3〜10mmが好ましい。担体として表面に微細孔径を多く有するもの、内部中空であるスポンジ、表面に無数の凹凸を有するものが嫌気性アンモニア酸化菌の付着固定が速く、短期間で高い脱窒性能が得られる。さらに長期間、脱窒槽内嫌気性アンモニア酸化菌を高濃度に維持できることから、安定した脱窒性能が得られる。
【0049】
担体比重は嫌気状態において撹拌により均一流動できる1.01〜1.10であるものが好ましい。担体充填量は脱窒槽内において局部堆積のないように10〜30Vol%とすることが望ましい。
【0050】
嫌気性アンモニア酸化槽13内において担体を流動させる方法としては、機械撹拌及びガス撹拌の何れを採用してもよい。例えば、撹拌羽を用いた機械撹拌、ガス循環を用いた内部ガス循環方式のいずれも効果的である。機械撹拌の場合は撹拌羽と担体との衝突による担体に付着した嫌気性アンモニア酸化菌の剥離を抑制するために撹拌羽の回転速度ができるだけ緩慢であることが望ましい。一方、ガス撹拌の場合は、担体と撹拌羽との衝突がないことから、担体に付着した嫌気性アンモニア酸化菌の剥離が少なく、高濃度の嫌気性アンモニア酸化菌を嫌気性アンモニア酸化槽13内に保持することが可能である。図1に示す嫌気性アンモニア酸化槽13においては、ガス撹拌用の散気筒21bが設置されている。ガス撹拌用のガスとしては、窒素・空気が上げられ、脱窒反応に必要な嫌気環境を維持するという理由により窒素による撹拌が好ましく、嫌気性アンモニア酸化槽13で発生する窒素を使うことがより好ましい。
【0051】
本発明の実施の形態に係る水処理装置及び水処理方法によれば、亜硝酸化槽12の前段及び後段に、第1の測定器25及び第2の測定器26をそれぞれ設置して、亜硝酸化槽12に導入される被処理液と亜硝酸化槽12から流出した亜硝酸化処理液のアンモニア性窒素濃度を測定し、その濃度比を制御する。これにより、従来、主たる制御方法として用いられてきたDO制御よりもより簡単且つ経済的かつ確実に、亜硝酸化槽内のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の比率を常時適正値に保つことが可能な窒素含有被処理液の水処理方法及び水処理装置が提供できる。第1の測定器25及び第2の測定器26としては汎用のアンモニア計を用いることができるので、本発明専用の濃度測定装置等を設ける必要が無く、経済的である。
【0052】
(第1の変形例)
本発明の実施の形態の第1の変形例に係る水処理装置は、図3に示すように、亜硝酸化槽12の前段に第1従属脱窒槽11を備え、嫌気性アンモニア酸化槽13の後段に、第2従属脱窒槽14、再曝気槽15、濃縮分離槽16aを順に備える点が、図1に示す水処理装置と異なる。
【0053】
(第1従属脱窒槽)
第1従属脱窒槽11は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の少なくとも一方と、アンモニア性窒素と、有機物とを含有する被処理液を、活性汚泥中の従属栄養性細菌を用いた脱窒反応、典型的には活性汚泥中の主に従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理して第1従属脱窒処理液を得るための反応槽である。
【0054】
第1従属脱窒槽11にはアンモニア性窒素及び有機物を含有する被処理液と、亜硝酸化槽12から機構17を介して循環する亜硝酸化処理液と、濃縮分離槽16aから機構18aを介して返送される濃縮汚泥が被処理液として流入する。第1従属脱窒槽11では、活性汚泥中の従属栄養性細菌である脱窒菌を用いて、典型的には活性汚泥中の主に従属栄養性細菌である脱窒菌を用いて、被処理液中の有機物を電子供与体として利用しながら窒素ガスを発生させる従属栄養脱窒反応を進行させる。
【0055】
従属栄養脱窒反応により脱窒できるNOX−N量は、第1従属脱窒槽11に流入されるBOD量に依存する。通常は、NOX−Nが1gに対しBODが約2〜3g必要となる。第1従属脱窒槽11に流入するBODは、被処理液のBODを測定することにより予め測定できる。このため、亜硝酸化槽12から第1従属脱窒槽11へ循環する亜硝酸化処理液に含まれるNOX−N量が、第1従属脱窒槽11における脱窒処理により処理される被処理液中のBOD量に対して理論上必要量(例えば約1/3倍)となるように、亜硝酸化処理液の循環流量を調整すれば、第1従属脱窒槽11でNOX−Nを確実に除去できる上、被処理液中のBODも同時に消費して、被処理液中のBODを小さくすることができる。
【0056】
その結果、第1従属脱窒槽11から得られる第1従属脱窒処理液は、BOD残留が少なく、窒素成分として、主にアンモニア性窒素(NH4−N)を含有することとなる。すなわち、第1従属脱窒処理液に残留する窒素の形態はほとんどがアンモニア性窒素(NH4−N)となるため、NH4−N及びT−Nは概ね同じ挙動を示す。また、第1従属脱窒槽11で処理された第1従属脱窒処理液の全窒素濃度(T−N)は、亜硝酸化処理液を循環させない場合に比べて低減されていることから、嫌気性アンモニア酸化槽13のT−N負荷も低減でき、嫌気性アンモニア酸化槽13がコンパクトとなる。
【0057】
第1従属脱窒槽11内の液は撹拌機構24aにより流動させることが可能である。液を流動させることで活性汚泥の沈降と滞留を妨げるという利点が得られる。液を流動させる方法としては、撹拌羽を用いた機械撹拌、ガス循環を用いた内部ガス循環方式のいずれも効果的である。ガス撹拌用のガスとしては、窒素、空気等が上げられ、脱窒反応に必要な嫌気環境を維持するため、窒素による撹拌が好ましく、第1従属脱窒槽11で発生する窒素を使うことがより好ましい。図示の実施形態においては、撹拌羽を用いた機械撹拌を採用している。
【0058】
(循環流量)
亜硝酸化槽12で処理された亜硝酸化処理液の一部は、亜硝酸化槽12の出口側と第1従属脱窒槽11の入口側とを繋ぐ配管等の機構17(亜硝酸化処理液循環手段)によって循環されるが、亜硝酸化処理液の循環処理は、被処理液の供給流量(流入流量)に対する亜硝酸化処理液の循環流量の比(r)を、以下の関係式(4)に基づいて決定することが好ましい。
r=a×2.32/(1.32×3×(1−a/3)) ・・・(4)
(4)式において、rは被処理液の供給流量に対する亜硝酸化処理液の循環流量の比[−]を示し、aは被処理液の全窒素濃度に対する生物化学的酸素要求量の比(BOD/T−N比)を示す。
【0059】
(4)式より求めた循環流量で亜硝酸化処理液を第1従属脱窒槽11に循環すれば、第1従属脱窒槽11に流入する被処理液のBODを利用した脱窒により、循環された亜硝酸化処理液中のNO2−N成分を完全にN2に変換することができる。
【0060】
例えば、被処理液のBOD/T−N比が1.6の場合、循環流量比rは2.0[−]とすることが好ましい。即ち、被処理液を供給流量100L/dayで供給する場合には、亜硝酸化処理液の循環流量を200L/dayで供給するのが好ましい。
【0061】
(第2従属脱窒槽)
第2従属脱窒槽14は、嫌気性アンモニア酸化槽13からの流出液に含まれる亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を、活性汚泥中または流動担体または固定担体などの従属栄養性細菌を用いた脱窒反応、典型的には活性汚泥中の主に従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理して第2従属脱窒処理液を得るための反応槽である。
【0062】
嫌気性アンモニア酸化槽13においては、亜硝酸性窒素及びアンモニア性窒素が過不足なく反応することが理想的であるが、実際には亜硝酸性窒素及びアンモニア性窒素の何れかが未反応の状態で、嫌気性アンモニア酸化槽13から流出する場合がある。また、亜硝酸性窒素及びアンモニア性窒素が過不足なく反応したとしてもNO3−Nが生成する。このため、要求される処理水質に応じて、さらに後段に第2従属脱窒槽14を別に設ければ、処理液の全窒素濃度(T−N)の更なる低減が可能である。
【0063】
第2従属脱窒槽14では、メタノール等の水素供与体を添加しつつ、嫌気性アンモニア酸化槽13からの流出液に含まれる亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を、活性汚泥中の従属栄養性細菌を用いた脱窒反応、典型的には活性汚泥中の主に従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理して第2従属脱窒処理液を得ることができる。このため、前記嫌気性アンモニア酸化槽13から亜硝酸性窒素が流出したとしても処理可能である。但し、第2従属脱窒槽14ではアンモニア性窒素(NH4−N)を処理することはできないため、嫌気性アンモニア酸化槽13の流出液には、NH4−NよりもNOX−Nを残留させるほうが好ましい。
【0064】
第2従属脱窒槽14内の液は撹拌機構24bにより流動させることが可能である。液を流動させることで活性汚泥の沈降と滞留を妨げるという利点が得られる。液を流動させる方法としては、撹拌羽を用いた機械撹拌、ガス循環を用いた内部ガス循環方式のいずれも効果的である。ガス撹拌用のガスとしては、窒素・空気等が上げられ、脱窒反応に必要な嫌気環境を維持するという理由により窒素による撹拌が好ましく、第2従属脱窒槽14で発生する窒素を使うことがより好ましい。図示の実施形態においては、撹拌羽を用いた機械撹拌を採用している。
【0065】
嫌気性アンモニア酸化槽13と第2従属脱窒槽14の間には、嫌気性アンモニア酸化処理液に含まれる嫌気性アンモニア酸化菌を固液分離するための装置(図示省略)を設置することができる。嫌気性アンモニア酸化菌を固液分離する装置としては、限定的ではないが、重力濃縮分離装置以外に、膜分離装置、遠心濃縮分離装置、加圧浮上分離装置、多重円板濃縮分離装置等が挙げられる。
【0066】
嫌気性アンモニア酸化槽13と第2従属脱窒槽14の間の固液分離装置にて濃縮分離された濃縮汚泥は配管等により嫌気性アンモニア酸化槽13へ返送することが可能である。この濃縮汚泥を嫌気性アンモニア酸化槽13に返送することで、培養した嫌気性アンモニア酸化菌を嫌気性アンモニア酸化槽13に維持できるという利点が得られる。濃縮汚泥の返送流量としては、汚泥沈降性や必要汚泥濃度に応じて適宜選定すればよいが、被処理液の流入流量に対する比率として一般的に0.25〜3.0倍とすることができる。
【0067】
(再曝気槽)
第2従属脱窒槽14の後段には再曝気槽15を設置することができ、第2従属脱窒槽14からの流出液に含まれる有機物を活性汚泥存在下または流動担体または固定担体または接触酸化などで好気処理することができる。再曝気槽15内においては、活性汚泥の沈降と滞留を妨げ、微生物を活性させるという理由により液を流動させること及び酸素を供給することが好ましい。液を流動させる方法としては、機械撹拌、散気筒等による曝気装置が挙げられ、撹拌と酸素供給を同時に行うことができるという理由により散気筒等による曝気装置が好ましい。図3に示す再曝気槽15においては、ブロア及び散気筒を備えた曝気装置21cが設置されている。酸素供給用のガスとしては、空気、酸素等が用いられるが、装置が容易になるという理由により空気が好ましい。
【0068】
(濃縮分離槽)
再曝気槽15の後段には、再曝気槽15からの流出液に含まれる活性汚泥を、固液分離するための装置(例示的には図中の、濃縮分離槽16a)を設置することができる。活性汚泥を固液分離する装置としては、限定的ではないが、重力濃縮分離装置以外に、膜分離装置、遠心濃縮分離装置、加圧浮上分離装置、多重円板濃縮分離装置等が挙げられる。濃縮分離槽16aから流出する清澄な上澄み液は処理液として得られる。一方、濃縮分離槽16aにて濃縮分離された濃縮汚泥は、図1に示す第1従属脱窒槽11へ返送するための機構18a、例えば濃縮分離槽16aの底部出口側と第1従属脱窒槽11の入口側とを繋ぐ配管等により第1従属脱窒槽11へ返送することが可能である。濃縮汚泥を第1従属脱窒槽11へ返送することにより、処理液のT−Nの更なる低減が可能となる。また、濃縮汚泥の返送先は第1従属脱窒槽11に限られるものではなく、図4に示すように、第2従属脱窒槽14へ返送するための機構18c、例えば濃縮分離槽16aの底部出口側と第2従属脱窒槽14の入口側とを繋ぐ配管等により第2従属脱窒槽14へ返送することも可能である。濃縮汚泥の返送流量としては、汚泥沈降性や必要汚泥濃度に応じて適宜選定すればよいが、被処理液の流入流量に対する比率として一般的に0.25〜3.0倍とすることができる。
【0069】
(第2の変形例)
本発明の第2の変形例に係る水処理装置は、図4に示すように、亜硝酸化槽12と嫌気性アンモニア酸化槽13との間に濃縮分離槽16bを更に備え、濃縮分離槽16bで得られた濃縮汚泥を機構18bを介して第1従属脱窒槽11へ返送し、濃縮分離槽16aで得られた濃縮汚泥を機構18cを介して第2従属脱窒槽14へ返送する点が、図3に示す水処理装置と異なる。
【0070】
嫌気性アンモニア酸化槽13には、亜硝酸化槽12からの流出液に随伴されて浮遊活性汚泥が混入しやすい。この場合、嫌気性アンモニア酸化槽13では独立栄養性脱窒反応に加えて活性汚泥中の従属栄養性細菌によるNO2−Nの従属脱窒が同時に進行する。このため、亜硝酸化処理液のNO2−N/NH4−N比が理想的な1.32に制御されたとしても、独立栄養性脱窒反応に必要なNO2−Nが不足することがある。また、嫌気性アンモニア酸化槽13に活性汚泥が持ち込まれると、嫌気性アンモニア酸化槽13内の処理が安定しない場合がある。
【0071】
そこで、図4に示すように、亜硝酸化槽12と嫌気性アンモニア酸化槽13との間に、亜硝酸化処理液に含まれる活性汚泥を固液分離するための装置(例示的には図中の、濃縮分離槽16b)を設置し、嫌気性アンモニア酸化槽13に浮遊活性汚泥が持ち込まれないようにすることで、水処理を安定的に進めることができる。
【0072】
活性汚泥を固液分離する装置としては、限定的ではないが、重力濃縮分離装置以外に、膜分離装置、遠心濃縮分離装置、加圧浮上分離装置、多重円板濃縮分離装置等が挙げられる。濃縮分離槽16bにて濃縮分離された濃縮汚泥は、図4に示す第1従属脱窒槽11へ返送するための機構18b、例えば濃縮分離槽16bの底部出口側と第1従属脱窒槽11の入口側とを繋ぐ配管及びポンプ等により第1従属脱窒槽11へ返送することが可能である。濃縮分離槽16bからの濃縮汚泥を第1従属脱窒槽11に返送することで、第1従属脱窒槽と亜硝酸化槽の活性汚泥濃度を維持することができる。濃縮汚泥の返送流量としては、汚泥沈降性や必要汚泥濃度に応じて適宜選定すればよいが、被処理液の流入流量に対する比率として一般的に0.25〜3.0倍とすることができる。
【0073】
濃縮分離槽16aは省略することもできる。例えば、亜硝酸化槽12と嫌気性アンモニア酸化槽13との間に濃縮分離槽16bを配置し、嫌気性アンモニア酸化槽13内に活性汚泥を持ち込まれないようにした場合、第2従属脱窒槽14及び再曝気槽15へ流入する液中の活性汚泥濃度(MLSS)が十分に維持できない場合がある。その場合は、第2従属脱窒槽14及び再曝気槽15では、担体を用いた処理が行われるため、濃縮分離槽16aの設置は不要となる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の実施例について説明するが、下記の実施例は本発明及びその利点をより良く理解するための例示であって、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0075】
(実施例1)
実施例1では、図1に示す構成の水処理装置を使用し、表1に記載の各槽の仕様として表2の設定値において、アンモニア性窒素含有廃水を被処理液とする窒素除去処理を実施した。この際、亜硝酸化槽にアルカリを供給することによって、被処理液及び亜硝酸化処理液のアンモニア性窒素濃度の濃度比を下記の実験(1)〜(4)のように変化させ、処理水質の変化を調査した。表3に結果を示す。
【0076】
実験(1)では、亜硝酸化槽流入液と亜硝酸化処理液のNH4−N濃度比を0.43に調整したところ、亜硝酸化処理液のNO2−N/NH4−N比は1.32となった。NO2−Nの一部は嫌気性アンモニア酸化槽で従属脱窒菌により脱窒が先行し、嫌気性アンモニア酸化処理水ではNO2−Nは0.5mg/L以下となり、NH4−Nが18mg/L残留した。
実験(2)では、亜硝酸化槽流入液と亜硝酸化処理液のNH4−N濃度比を0.35に調整したところ、亜硝酸化処理液のNO2−N/NH4−N比は1.86となった。嫌気性アンモニア酸化槽に混在する従属脱窒菌によるNO2−Nの従属脱窒分を考慮しても嫌気性アンモニア酸化処理分が多く残留したため、嫌気性アンモニア酸化処理水ではNO2−Nは110mg/L残留し、NH4−Nが5mg/L以下となった。
実験(3)では、亜硝酸化槽流入液と亜硝酸化処理液のNH4−N濃度比を0.40に調整したところ、亜硝酸化処理液のNO2−N/NH4−N比は1.50となった。嫌気性アンモニア酸化処理水ではNO2−Nは40mg/L、NH4−Nは5mg/L残留した。
実験(4)では、亜硝酸化槽流入液と亜硝酸化処理液のNH4−N濃度比を0.45に調整したところ、亜硝酸化処理液のNO2−N/NH4−N比は1.22となった。NO2−Nが不足し、嫌気性アンモニア酸化処理水ではNO2−Nは0.5mg/L以下となり、NH4−Nが38mg/L残留した。
【0077】
実験(1)〜(4)において、嫌気性アンモニア酸化処理水で残留したNOX−Nは、後段に従属脱窒槽を設けて脱窒処理することが可能であるが、NH4−N残留分は処理水に残留した。また、後段の従属脱窒槽で脱窒するNOX−Nが増加すると、添加するメタノール量も増加するため、維持管理コストを低減するためにも、亜硝酸化処理液のNO2−N/NH4−N比が1.4〜1.8、好ましくは1.45〜1.65となるように、被処理液と亜硝酸化処理液のNH4−N濃度比を調整することが望ましいことが分かった。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
*NH4−N、NO2−N、及びNO3−NはすべてJIS K0102:2013により測定した(以下の実験も同様)。
【0081】
(比較例)
比較例では、亜硝酸化槽流入液と亜硝酸化処理液のNH4−N濃度比を望ましい数値範囲外としたときの影響を調査した。亜硝酸化槽流入液と亜硝酸化処理液のNH4−N濃度比以外の実験条件は実施例1と同様とした。
【0082】
比較実験(1)では、亜硝酸化槽流入液と亜硝酸化処理液のNH4−N濃度比を0.25に調整したところ、亜硝酸化処理液のNO2−N/NH4−N比は3.00となった。NO2−N過多のため嫌気性アンモニア酸化処理が進行せず、嫌気性アンモニア酸化処理水ではNO2−Nが250mg/L残留した。
比較実験(2)では、亜硝酸化槽流入液と亜硝酸化処理液のNH4−N濃度比を0.55に調整したところ、亜硝酸化処理液のNO2−N/NH4−N比は0.82となった。NH4−Nが過分に残留したため、嫌気性アンモニア酸化処理水ではNH4−Nが165mg/L残留した。
【0083】
比較実験(1)、比較実験(2)とも、嫌気性アンモニア酸化処理での窒素残留が過分であった。
【0084】
【表4】
【符号の説明】
【0085】
11…第1従属脱窒槽
12…亜硝酸化槽
13…嫌気性アンモニア酸化槽
14…第2従属脱窒槽
15…再曝気槽
16a、16b…濃縮分離槽
17、18a、18b、18c…(返送)機構
25…第1の測定器
26…第2の測定器
27…制御装置
28…注入装置
31…DO計
32…pH計
図1
図2
図3
図4