(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の高周波電源装置および粒子線治療装置ならびに真空管寿命予測方法の実施例を、
図1乃至
図4を用いて説明する。最初に、高周波電源装置を備え、真空管寿命予測方法を実施する一例である粒子線治療装置について
図1を用いて説明する。
【0014】
図1は高周波電源装置を有する粒子線治療装置を示す図である。
【0015】
図1において、粒子線治療装置100は、シンクロトロン型加速器50、ライナック58、イオン源59、ビーム輸送系52、照射装置54、治療台40、制御装置56、および高周波電源装置57A,57Bを備える。
【0016】
イオン源59は、治療に用いられるイオンを発生させる機器である。ライナック58は、イオン源59で発生させたイオンをシンクロトロン型加速器50に入射するのに適した速度まで加速する機器である。
【0017】
シンクロトロン型加速器50は、ライナック58で所定の速度まで加速されたイオンをさらに加速し、イオンビームとする加速器である。シンクロトロン型加速器50は、偏向電磁石や、高周波加速空胴、出射装置50aなどから構成される。なお、シンクロトロン型加速器50を用いる場合について説明したが、加速器は高周波電源装置を備えていればよく、例えばサイクロトロン型加速器等とすることができる。
【0018】
ビーム輸送系52はシンクロトロン型加速器50に接続されており、シンクロトロン型加速器50から出射されたイオンビームを照射装置54に導く。
【0019】
照射装置54は治療室に設けられており、イオンビームを照射するための機器であり、ビームの軌道に対して垂直な平面内の直交する二方向(以下、まとめて横方向と定義する)に独立にビームが走査させる二台の走査電磁石、ビームモニタ等を備えている。
【0020】
治療第40は、患者45をのせるベッドである。
【0021】
制御装置56は、これらシンクロトロン型加速器50をはじめとした粒子線治療装置100内の各装置,機器の動作、警報を制御する。
【0022】
高周波電源装置57Aは、ライナック58に供給する高周波を生成する装置であり、高周波増幅回路1Aおよび比較演算器2Aを有している。高周波電源装置57Bは、シンクロトロン型加速器50中の出射装置50aに供給する高周波を生成する装置であり、高周波増幅回路1Bおよび比較演算器2Bを有している。これら高周波電源装置57A,57Bの詳細な構成については後述する。
【0023】
粒子線治療装置100では、イオン源59で発生させたイオンをライナック58、およびシンクロトロン型加速器50で加速してイオンビームとする。加速されたイオンビームはシンクロトロン型加速器50から出射され、ビーム輸送系52により照射装置54まで輸送される。輸送されたイオンビームは照射装置54で患部形状に合致するように整形され、治療台40に横になった患者45の標的に対して所定量照射される。
【0024】
ライナック58への高周波は、高周波増幅回路1Aを含む高周波電源装置57Aから供給され、比較演算器2Aで真空管3(
図2参照)の寿命を算出して警報を制御装置56へ送る。シンクロトロン型加速器50の出射装置50aへの高周波は、高周波増幅回路1Bを含む高周波電源装置57Bから供給され、比較演算器2Bで真空管3の寿命を算出して警報を制御装置56へ送る。なお、寿命を算出して警報を出力する部分は高周波電源装置57A,57Bとは別に設けてもかまわない。
【0025】
次に、高周波電源装置57A,57Bの詳細について
図2乃至
図4を用いて説明する。なお以下ではライナック58に供給する高周波を生成する高周波電源装置57Aについて説明するが、高周波電源装置57Bの構成も同じである。
図2は、三極管の真空管を複数使用し、並列接続した場合の高周波増幅回路の概略図であり、
図3は寿命予測方法を示すフローチャートで、
図4は実際に計測した真空管のカソード電圧とグリッド電流の平均値からの変化率を示した図である。
【0026】
図2において、高周波電源装置57Aは、高周波増幅回路1Aと比較演算器2Aとで構成される。
【0027】
高周波増幅回路1Aは、真空管3のグリッド21を接地したグリッド接地方式の増幅回路の概略を示すもので、真空管3、カソード用加熱電源4、カソード電源9、プレート電源8、高周波フィルタ15、結合コンデンサー6,7、グリッド電流検出器10、カソード電圧検出器11で構成される。
【0028】
真空管3は高周波増幅に用いられるもので、並列に複数個接続されている。真空管3は、カソード20とグリッド21、プレート22を有する三極管であるが、例えば四極や五極等の構成の真空管であっても構わない。
図2では三極管の例を示す。
【0029】
また、
図2では真空管3を3個並列接続した形態を示したが、必要とする出力電力に応じて真空管3は複数個接続することができ、並列接続であれば個数を制限するものではない。また、
図2はグリッド接地であるが、カソード接地その他の回路方式であっても、並列に接続されていれば同様に本発明の真空管3の寿命予測方法は実施可能である。
【0030】
カソード用加熱電源4は交流を用いており、その場合は高周波フィルタ15を併用する。なお、直流電源でもかまわない。
【0031】
カソード電源9は直流電源で、正極接地でカソード20とグリッド21間に接続され、この値を変えることでプレート電流Ipを調整する。
【0032】
プレート電源8は直流電源で、負極接地で高周波フィルタ15を通してプレート22に接続する。本実施例のプレート電源8は、その内部で各々の真空管3のプレート22に流れるプレート電流Ip(Ip
n)を検出することができるものとする。なお、プレート電流Ipはプレート電源8で計測する形態に限られず、電流計を各々のプレート22とプレート電源8との間に配置して、その電流計で計測してもよい。
【0033】
カソード電源9、プレート電源8とも、値は使用する真空管に依存する。
図2において、プレート電源8は1台で共用しているが、別々の電源を用いてもかまわない。
【0034】
グリッド電流検出器10は例えばシャント抵抗や電流変換器(CT)などがあり、各々の真空管3のグリッド電流Igを検出する。
【0035】
カソード電圧検出器11はカソード電源9のモニター出力を検出することでカソード電圧Vkを検出する。なお、直接カソード電圧Vkを計測してもかまわない。
【0036】
カソード電源9に流れるカソード電流Ikは、カソード電源9の電流から計算で求める。なお、
図2からもわかるように、カソード電流Ikはグリッド電流Igとプレート電流Ipの和であることから、プレート電源8によって計測されるプレート電流Ipとグリッド電流検出器10によって計測されるグリッド電流Igとから計算して求めることができる。
【0037】
比較演算器2Aは、演算部12、比較部13、警報信号出力部(警報部)14で構成される。
【0038】
演算部12は、電圧演算部12aおよび電流演算部12bで構成される。
【0039】
電圧演算部12aは、カソード電圧検出器11で検出された並列に接続されたそれぞれの真空管3のカソード電圧Vkの平均値Vk
aveを演算する。また、演算した平均値Vk
aveに対する電圧変化率Vk’を各真空管3毎に演算する(電圧演算工程)。
【0040】
電流演算部12bは、グリッド電流検出器10で検出された並列に接続されたそれぞれの真空管3のグリッド電流Igの平均値Ig
aveを演算する。また、各真空管3のグリッド電流Igの平均値Ig
aveに対する電流変化率Ig’を各真空管3毎に演算する(電流演算工程)。
【0041】
比較部13は、電圧演算部12aで演算されたそれぞれの真空管3の電圧変化率Vk’を寿命設定値Vk
sとそれぞれ比較するとともに、電流演算部12bで演算されたそれぞれの真空管3の電流変化率Ig’を寿命設定値Ig
sとそれぞれ比較するものである。また、比較部13は、電圧変化率Vk’が電圧寿命設定値Vk
s以下であり、且つ電流変化率Ig’が電流寿命設定値Ig
s以下と判定されたときは該当する真空管3が寿命を迎えたと判定し、警報信号出力部14に対して警報出力要求信号を出力する(比較工程)。カソード電圧Vk、グリッド電流Igの寿命設定値Vk
s,Ig
sは真空管3の仕様にもよるが、例えばともに−0.2〜−0.6の範囲である。
【0042】
演算部12の電圧演算部12aおよび電流演算部12b、比較部13の処理の詳細は
図3を用いて後述する。
【0043】
警報信号出力部14は比較部13で寿命設定値以下と判定されて警報出力要求信号が入力された場合に、どの真空管3が寿命を迎えたと判定されたかを外部に警報として知らせるもので、制御画面などへ表示するよう動作する。
【0044】
次いで、検出した各真空管3のカソード電圧Vkとグリッド電流Igを用いて各真空管3の寿命を予測する方法について
図3を用いて以下説明する。
【0045】
はじめに、比較演算器2A,2Bは、初期値として寿命と判定するカソード電圧Vkの寿命設定値Vk
s、およびグリッド電流の寿命設定値Ig
sを設定する(ステップS201)。
【0046】
その後、比較演算器2A,2Bの電圧演算部12aは、カソード電圧Vkの平均値Vk
ave、を求める(ステップS202)。また、比較演算器2A,2Bの電流演算部12bは、グリッド電流Igの平均値Ig
aveを求める(ステップS203)。
【0047】
次いで、比較演算器2A,2Bの電圧演算部12aは、各真空管3のカソード電圧Vk
nに対するカソード電圧Vkの平均値Vk
aveからの変化率Vk
n’を、次式Vk
n’=(Vk
n−Vk
ave)/Vk
aveに基づいて各真空管3毎に計算する(ステップS204)。ここで、Vk
nはある真空管3のカソード電圧を示す。
【0048】
次いで、比較演算器2A,2Bの電流演算部12bは、各真空管3のグリッド電流Ig
nに対するグリッド電流Igの平均値Ig
aveからの変化率Ig
n’を、次式Ig
n’=(Ig
n−Ig
ave)/Ig
aveに基づいて各真空管3毎に計算する(ステップS205)。ここで、Ig
nはある真空管3のグリッド電流を示す。
【0049】
なお、ステップS204における電圧変化率Vk’やステップS205における電流変化率Ig’のうち、分子となる(Vk
n−Vk
ave)および(Ig
n−Ig
ave)は、得られるVk
n’およびIg
n’の符号が反転するのみである。このため、分子を(Vk
ave−Vk
n)および(Ig
ave−Ig
n)、すなわち、Vk’=(Vk
ave−Vk)/Vk
ave、Ig’=(Ig
ave−Ig)/Ig
aveによって求めることができる。
【0050】
次いで、比較演算器2A,2Bの比較部13は、計算された電圧変化率Vk
n’と寿命設定値Vk
sとを比較して、Vk
n’≦Vk
sであるか否かを判定する(ステップS206)。電圧変化率Vk
n’が寿命設定値Vk
s以下であると判定されたときは処理をステップS208に進める。これに対し、電圧変化率Vk
n’が寿命設定値Vk
sより大きいと判定されたときは処理をステップS207に進める。
【0051】
ステップS206において電圧変化率Vk
n’が寿命設定値Vk
sより大きいと判定されたときは、データを保存(ステップS207)した後、処理をステップS202に戻して、真空管3の使用を継続する。
【0052】
これに対し、ステップS206において電圧変化率Vk
n’が寿命設定値Vk
s以下であると判定されたときは、比較演算器2A,2Bの比較部13は、計算された電流変化率Ig
n’と寿命設定値Ig
sとを比較して、Ig
n’≦Ig
sであるか否かを判定する(ステップS208)。電流変化率Ig
n’が寿命設定値Ig
s以下であると判定されたときは処理をステップS209に進める。これに対し、電流変化率Ig
n’が寿命設定値Ig
sより大きいと判定されたときは処理をステップS207に進める。
【0053】
ステップS208において電流変化率Ig
n’が寿命設定値Ig
sより大きいと判定されたカソード電圧の低下だけ生じているときは、データを保存(ステップS207)した後、処理をステップS202に戻して、真空管3の使用を継続する。
【0054】
これに対し、ステップS208において電流変化率Ig
n’が寿命設定値Ig
s以下であると判定されたときは、データを保存(ステップS209)した後に処理をステップS210に進め、比較演算器2A,2Bの警報信号出力部14は警報を出力するよう処理を行う(ステップS210)。
【0055】
上記のような処理を行う高周波電源装置57A,57Bは以下のように動作する。
【0056】
高周波電源装置57A,57Bに入力された高周波は、各真空管3のカソード20とグリッド21との間の電圧を変調し、その結果グリッド21とプレート22との間の電圧も変調されて、プレート出力が得られる。複数の真空管3から出力された高周波出力をあわせて一つの出力とする。
【0057】
さらに加速器では安定した加速を行うために一定した出力が必要であり、そのためにはそれぞれのカソード電圧Vkを調整して出力の調整を行う。カソード電圧Vkを大きくすることでプレート電流Ipは減少し、逆にカソード電圧Vkを小さくすることでプレート電流Ipは増大する。
【0058】
本実施例の高周波電源装置57A,57Bでは、計測したカソード電圧Vkとグリッド電流Igからそれぞれ平均値Vk
ave,Ig
aveを計算し、さらにそれぞれの真空管3についてのカソード電圧Vkおよびグリッド電流Igの平均値Vk
ave,Ig
aveからの電圧変化率Vk
n’,電流変化率Ig
n’を計算して、寿命設定値Vk
s,Ig
sと比較する。その後、計算した電圧変化率Vk
n’,電流変化率Ig
n’が寿命設定値Vk
s,Ig
sより低下した場合は警報を出力し、真空管3の交換を促す。
【0059】
次いで、ある真空管3のカソード電圧Vkの平均値Vk
aveからの変化率Vk’とグリッド電流Igの平均値Ig
aveからの変化率Ig’について
図4に示す実測値を用いて説明する。
【0060】
図4において、A部ではカソード電圧Vkの変化率Vk’が約−0.4、すなわち平均値Vk
aveよりも低い値となり、プレート電流Ipを増加させようとしている状態である。本結果では、変化率Vk’は−0.4で一定となっていることからこの値が閾値となる寿命設定値Vk
sとなる。
【0061】
その後、
図4に示すように、カソード電圧Vkではプレート電流Ipが調整できなくなったために、グリッド電流Igの変化率Ig’も低下し始め、最終的にはカソード電圧Vkの変化率Vk’と同じ−0.4になったところで出力が不安定になり、実際に真空管3の交換を実施した。
【0062】
交換後は、
図4中のB部に示すように、両者の値とも正常である0付近に戻っている。
【0063】
なお、このようにカソード電圧Vkの変化率Vk’やグリッド電圧Igの変化率Ig’が低下した場合、比較演算器2A,2Bの比較部13において、各真空管3のカソード電圧Vkの電圧変化率Vk
n’同士や、グリッド電流Igの電流変化率Ig
n’同士の比較を行い、変化率が負の値をとっているか否かを判定することができる。なお、低下した場合から比較を始める必要はなく、常に比較を行ってもよい。
【0064】
そのほかの真空管3がカソード電圧Vkおよびグリッド電流Igの平均値Vk
ave,Ig
aveからの変化率Vk’,Ig’が正の値を示している場合は、その真空管3での出力が全体に比べ小さいことを示し、全体の出力としても余裕があると判定でき、まだ使用が可能である。しかし、そのほかの真空管も0あるいは負の値をとった場合は、劣化が進んでおり真空管3の寿命が早くなると判定できることから、増幅率だけで判定する場合に比べてより詳細な寿命予測が可能となる。
【0065】
以上、電流演算部12bが、グリッド電流Igの平均値Ig
aveおよび電流変化率Ig’を各真空管3毎に演算する場合について説明した。グリッド電流Igは、プレート22に流れる電流の一部がグリッド21に流入することで得られる電流であるから、グリッド電流Igの増減がプレート電流Ipの増減に対応する。また、グリッド電流Igは、プレート電流Ipやカソード電流Ikに比べて変化が大きく現れるため、グリッド電流Igが最も好適である。
【0066】
また、本発明の高周波電源装置57A,57Bや真空管3の寿命予測方法では、グリッド電流Igの代わりに、プレート電流Ipの平均値Ip
aveや電流変化率Ip’、またはプレート電流Ipとグリッド電流Igの和となるカソード電流Ikの平均値Ik
aveや電流変化率Ik’を各真空管3毎に演算する形態とすることができる。この場合、並列に接続された全真空管3のカソード電流Ikまたはプレート電流Ipの平均値Ik
ave,Ip
aveおよび電流変化率Ik’,Ip’を演算して寿命設定値Ik
s,Ip
sと比較する。
【0067】
プレート電流Ipを用いる場合は、プレート電流Ipの電流変化率Ip’は、Ip’=(Ip−Ip
ave)/Ip
ave、もしくはIp’=(Ip
ave−Ip)/Ip
aveから求めることができる。Ip
nは対象とする真空管3のプレート電流である。
【0068】
カソード電流Ikを用いる場合は、カソード電流Ikの電流変化率Ik’はIk’=(Ik−Ik
ave)/Ik
ave、もしくはIk’=(Ik
ave−Ik)/Ik
aveから求めることができる。Ik
nは対象とする真空管3のカソード電流である。
【0069】
比較部13は、電流変化率Ik’,Ip’が電流寿命設定値Ik
s,Ip
s以下と判定されたときは該当する真空管3が寿命を迎えたと判定する。
【0070】
また、カソード電流Ik,グリッド電流Igまたはプレート電流Ipのうち一つを用いる場合について説明したが、それら3つのうち、2つを用いて比較を行ってもよいし、3つ全てを用いて比較を行ってもよい。
【0071】
例えば、電流演算部12bでは、並列接続された全真空管3のグリッド電流Igの平均値Ig
aveおよびプレート電流Ipの平均値Ip
aveと、各真空管3のグリッド電流Igの平均値Ig
aveに対する電流変化率Ig’およびプレート電流Ipの平均値Ip
aveに対する電流変化率Ip’とを各真空管3毎に演算することができる。
【0072】
この場合は、比較部13は、電流演算部12bで演算されたグリッド電流Igの電流変化率Ig’およびプレート電流Ipの電流変化率Ip’を予め設定された電流寿命設定値Ig
s,Ip
sと比較し、グリッド電流Igの電流変化率Ig’とプレート電流Ipの電流変化率Ip’のうちいずれか一方が電流寿命設定値Ig
s,Ip
s以下と判定されたときに該当する真空管3が寿命を迎えたと判定することができるし、グリッド電流Igの電流変化率Ig’とプレート電流Ipの電流変化率Ip’のうちいずれもが電流寿命設定値Ig
s,Ip
s以下と判定されたときに該当する真空管3が寿命を迎えたと判定することができる。
【0073】
3つを用いる場合も、いずれか一つの電流変化率Ik’,Ig’,Ip’が電流寿命設定値Ik
s,Ig
s,Ip
s以下と判定されたときに該当する真空管3が寿命を迎えたと判定してもよいし、3つのうち2つが電流寿命設定値Ik
s,Ig
s,Ip
s以下と判定されたときに該当する真空管3が寿命を迎えたと判定してもよい。更には、いずれもが電流寿命設定値Ik
s,Ig
s,Ip
s以下と判定されたときに該当する真空管3が寿命を迎えたと判定してもよい。
【0074】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0075】
上述した本実施例の粒子線治療装置100の高周波電源装置57A,57Bは、並列に複数個接続された真空管3と、並列接続された全真空管3のカソード電圧Vkの平均値Vk
ave、および各真空管3のカソード電圧Vkの平均値Vk
aveに対する電圧変化率Vk’を各真空管3毎に演算する(電圧演算工程)電圧演算部12aと、並列接続された全真空管3のカソード電流Ik,グリッド電流Igまたはプレート電流Ipのうち少なくともいずれか一つ以上の平均値Ik
ave,Ig
ave,Ip
ave、および各真空管3のカソード電流Ik,グリッド電流Igまたはプレート電流Ipのうち少なくともいずれか一つ以上の平均値Ik
ave,Ig
ave,Ip
aveに対する電流変化率Ik’,Ig’,Ip’を各真空管3毎に演算する(電流演算工程)電流演算部12bと、電圧演算部12aで演算された電圧変化率Vk’を予め設定された電圧寿命設定値Vk
sと比較するとともに、電流演算部12bで演算された電流変化率Ik’,Ig’,Ip’を予め設定された電流寿命設定値Ik
s,Ig
s,Ip
sと比較し、電圧変化率Vk’が電圧寿命設定値Vk
s以下、且つ電流変化率Ik’,Ig’,Ip’が電流寿命設定値Ik
s,Ig
s,Ip
s以下と判定されたときは該当する真空管3が寿命を迎えたと判定する(比較工程)比較部13と、を備えたものである。
【0076】
本発明によれば、並列に接続された複数の真空管3のカソード電圧Vkやグリッド電流Ig、プレート電流Ipあるいはカソード電流Ikの平均値Vk
ave,Ig
ave,Ip
ave,Ik
aveからの変化率Vk’,Ig’,Ip’ ,Ik’により、アンバランスを考慮した真空管3の寿命を予測することができるため、真空管3の劣化による粒子線治療装置100等の計画外停止を従来に比べて高確率で抑制することができ、装置の安定動作と稼働率向上が可能である。また、各々の真空管3の寿命限界まで使用することが可能となるため、高い経済性が得られるという効果がある。
【0077】
また、比較部13で真空管3が寿命を迎えたと判定されたときに、寿命を迎えたことを通知する警報信号出力部14を更に備えたため、寿命を迎えた真空管3を速やかに交換することができ、装置の稼働率の更なる向上を図ることができる。
【0078】
更に、比較部13は、電圧演算部12aで演算された各真空管3の電圧変化率Vk’の時間経過を追い、各真空管3の電圧変化率Vk’同士を比較して変化率が負の値をとっているか否かを判定するとともに、電流演算部12bで演算された各真空管3の電流変化率Ik’,Ig’,Ip’の時間経過を追い、各真空管3の電流変化率Ik’,Ig’,Ip’同士を比較して変化率が負の値をとっているか否かを判定することで、真空管3の劣化が進んでおり、寿命が近いか否かをより正確に判定することができ、より正確な真空管3の寿命予測が可能となる。
【0079】
また、カソード電圧Vkの平均値をVk
ave、カソード電流Ikの平均値をIk
ave、グリッド電流Igの平均値をIg
ave、プレート電流Ipの平均値をIp
aveとし、寿命予測対象の真空管3のカソード電圧の計測値をVk、カソード電流Ikの計測値をIk、グリッド電流の計測値をIg、プレート電流の計測値をIpとしたときに、電圧変化率Vk’をVk’=(Vk−Vk
ave)/Vk
aveまたはVk’=(Vk
ave−Vk)/Vk
ave、カソード電流Ikの電流変化率Ik’をIk’=(Ik−Ik
ave)/Ik
aveまたはIk’=(Ik
ave−Ik)/Ik
ave、グリッド電流Igの電流変化率Ig’をIg’=(Ig−Ig
ave)/Ig
aveまたはIg’=(Ig
ave−Ig)/Ig
ave、プレート電流Ipの電流変化率Ip’をIp’=(Ip−Ip
ave)/Ip
aveまたはIp’=(Ip
ave−Ip)/Ip
aveとすることにより、簡易かつ速やかに電圧変化率Vk’や電流変化率Ik’,Ig’,Ip’を演算することができる。
【0080】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。