(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720104
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】取水方法及び取水装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/24 20060101AFI20200629BHJP
E02B 1/00 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
C02F1/24 B
C02F1/24 A
E02B1/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-51726(P2017-51726)
(22)【出願日】2017年3月16日
(65)【公開番号】特開2018-153742(P2018-153742A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】秦 良介
(72)【発明者】
【氏名】島村 和彰
【審査官】
山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−535104(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/181583(WO,A1)
【文献】
特開2016−087564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20−1/26
1/30−1/38
E02B 1/00−3/02
3/16−3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水対象とする水中に水の導入口を備える取水升を配置し、前記導入口から前記取水升内に前記水を下向流で取り入れるとともに前記取水升の下部から気体を送り込んで気泡を発生させて前記気泡を上向流で流し、前記気泡と前記水とを対向流で接触させることにより前記水に含まれる汚染物質を前記気泡に吸着させて分離し、前記水中の前記汚染物質を吸着した前記気泡を浮力によって前記導入口から前記取水対象とする水中へ放出するとともに、前記気泡を分離した後の水を採取することを特徴とする取水方法。
【請求項2】
前記気泡と接触した後に気泡と分離した水を採取することが、前記取水升内において前記気泡が前記水と接触する領域よりも下方から前記取水升内の水を汲み上げることを含む請求項1に記載の取水方法。
【請求項3】
前記取水升内へ流入する水の下向流の流速が、前記取水升内を上昇する気泡の上昇速度よりも小さくなるように、前記取水升内から水を引き抜くことを含む請求項1又は2に記載の取水方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の取水方法によって取水された水を陸上で前処理することを含む水処理方法。
【請求項5】
取水対象とする水中に配置され、水の導入口を備える取水升と、
前記取水升内の水と対向流で接触することにより前記水に含まれる汚染物質を吸着させるための気泡を発生させる気泡発生手段と、
前記水中の前記汚染物質を吸着した前記気泡を浮力によって前記導入口から前記取水対象とする水中へ放出させて前記気泡を分離した後の水を採取する取水手段と
を備えることを特徴とする取水装置。
【請求項6】
前記取水手段の取水口が、前記取水升内において前記気泡発生手段よりも下方に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の取水装置。
【請求項7】
前記取水升が、
前記導入口から前記水を下向流で導入するとともに前記取水升の下部から前記導入口へと前記気泡を上向流で流すことにより、前記気泡と前記水とを対向流で接触させる吸着分離部と、
前記取水升の下部において前記吸着分離部と連通し、前記気泡と前記水がお互いの流れによって分離する脱気部と、
前記脱気部内に配置された取水配管と
を備えることを特徴とする請求項5または6に記載の取水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取水方法、取水装置及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水を利用する上で何らかの水源から取水する操作は基本的に必須であり、海水、汽水又は淡水などを取水し、取水した水の水質に応じて且つ使用目的に応じて水処理をする必要がある。取水する水には様々な物質が存在しており、水処理をする上で障害となる物質も少なくない。
【0003】
非特許文献1には、ろ過膜及び逆浸透膜の閉塞(ファウリング)の原因(ファウラント)として、全ての自然水域に含まれる透明で粘着性の高いゼリー状の有機物であるTEP(生体外分泌高分子粒子)の存在が認識されてきている。
【0004】
特許文献1には、RO膜(逆浸透膜)を用いた海水淡水化装置において、海水取水設備から海水を取水した後、海水をRO膜に透過させる前に、膜の閉塞の原因となるTEPを除去するための種々の前処理を施すことが記載されている。
【0005】
非特許文献2には、福岡都市圏の海水淡水化設備が記載されている。この海水淡水化設備では、取水方法として「浸透取水」方式が採用されており、海底の砂によってろ過した海水を陸上にくみ上げる仕組みになっている。これにより、陸上ではきれいな海水を安定して取水できるほか、取水管内に付着するフジツボやイガイの卵も海底の砂でろ過されるため、管内の清掃作業などの維持管理が簡略化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/181583号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Transparent exopolymer particles: Potential agents for organic fouling and biofilm formation in desalination and water treatment plants,Edo Bar-Zeev et al., Desalination and Water Treatment 3 (2009) 136-142
【非特許文献2】守田幸雄,「福岡地区における海水淡水化プラントの運転事例」,学会誌「EICA」,2011年,第15巻第4号,P.48-51
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、海水、汽水、淡水には、目的とする処理水を得る上で不要となる様々な成分が含まれていることから、不要成分を前処理によって予め取り除くことは、その後の水処理技術の負担を小さくする上で重要な処理であるといえる。
【0009】
特許文献1に記載された発明では、海から取水した海水を陸上において除濁処理することが記載されているが、特許文献1のように逆浸透膜を用いて海水を脱塩する場合には、高度な水質を維持するために、陸上において砂ろ過の他、加圧浮上法や膜ろ過など高度な手法を組み合わせる複雑な前処理が必要となる。その結果、陸上で行う前処理の負担が大きくなるとともに前処理設備が大型化するという問題がある。
【0010】
非特許文献1に記載された技術は、全ての自然水に含まれるTEPと膜の閉塞の因果関係についての知見があるに留まり、効率の良い取水方法や前処理技術については何ら触れられていない。
【0011】
一方、非特許文献2に記載された発明のような海底で砂ろ過処理を施す取水方法は、陸上での前処理の負担を軽減できる点で有利である。しかしながら、非特許文献2に記載される手法は、取水箇所に広く安定した海底面が必要であるため、処理設備が大型化し、工事費や維持費も膨大になるという問題がある。
【0012】
上記課題を鑑み、本発明は、水中に含まれる濁質やTEPなどの界面活性物質を取水前に簡易且つ小型の設備で低減でき、陸上での前処理操作を軽減することが可能な取水方法及び取水装置及び水処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討したところ、取水前に、取水対象とする水中に直接気体を送り込んで気泡を発生させ、水に含まれる汚染物質を気泡に吸着させて分離することが有効であるとの知見を得た。
【0014】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、取水対象とする水中に気体を送り込んで気泡を発生させ、気泡と水とを接触させることにより水に含まれる汚染物質を気泡に吸着させて分離し、気泡を分離した後の水を採取することを含む取水方法が提供される。
【0015】
本発明に係る取水方法は一実施態様において、取水対象とする水中に水の導入口を備える取水升を配置し、導入口から取水升内に水を下向流で取り入れるとともに取水升の下部から気泡を発生させて気泡を上向流で流すことにより、気泡と水とを対向流で接触させることを含む。
【0016】
本発明に係る取水方法は別の一実施態様において、気泡と接触した後に気泡と分離した水を採取することが、取水升内において気泡が水と接触する領域よりも下方から取水升内の水を汲み上げることを含む。
【0017】
本発明に係る取水方法は別の一実施態様において、取水升内へ流入する水の下向流の流速が、取水升内を上昇する気泡の上昇速度よりも小さくなるように、取水升内から水を引き抜くことを含む。
【0018】
本発明は別の一側面において、取水方法によって取水された水を陸上で前処理することを含む水処理方法が提供される。
【0019】
本発明は更に別の一側面において、取水対象とする水中に配置され、水の導入口を備える取水升と、取水升内の水と接触することにより水に含まれる汚染物質を吸着させるための気泡を発生させる気泡発生手段と、気泡を分離した後の水を採取する取水手段とを備える取水装置が提供される。
【0020】
本発明に係る取水装置は一実施態様において、取水手段の取水口が、取水升内において気泡発生手段よりも下方に配置されている。
【0021】
本発明に係る取水装置は別の一実施態様において、取水升が、導入口から水を下向流で導入するとともに取水升の下部から導入口へと気泡を上向流で流すことにより、気泡と水とを対向流で接触させる吸着分離部と、取水升の下部において吸着分離部と連通し、気泡と水がお互いの流れによって分離される脱気部と、脱気部内に配置された取水配管とを備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、水中に含まれる濁質やTEPなどの界面活性物質を取水前に簡易且つ小型の設備で低減でき、陸上での前処理操作を軽減することが可能な取水方法及び取水装置及び水処理方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態に係る取水装置の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態の変形例に係る取水装置の一例を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態の別の変形例に係る取水装置の一例を表す概略図である。
【
図4】気泡の上昇速度と気泡径との関係を表すグラフである。
【
図5】実施例1及び比較例1の試験条件と取水した水中の汚染物質の濃度の推移を表すグラフであり、
図5(a)は試験時間と散気時間との関係、
図5(b)は試験時間と濁度との関係、
図5(c)は試験時間と全有機炭素濃度(TOC)との関係、
図5(d)は試験時間と溶存有機炭素濃度(DOC)との関係、
図5(e)は試験時間とTEP濃度との関係をそれぞれ示す。
【
図6】実施例2及び比較例2の試験条件と取水した水中の汚染物質の濃度の推移を表すグラフであり、
図6(a)は試験時間と散気時間との関係、
図6(b)は試験時間と濁度との関係、
図6(c)は試験時間と全有機炭素濃度(TOC)との関係、
図6(d)は試験時間と溶存有機炭素濃度(DOC)との関係、
図6(e)は試験時間と陰イオン界面活性剤濃度との関係、
図6(f)は試験時間とTEP濃度との関係をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0025】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る取水装置は、水の導入口2を備える取水升1と、取水升1内の水と接触することによりその水に含まれる汚染物質を吸着させるための気泡6を発生させる気泡発生手段3と、気泡6を分離した後の水を取水する取水手段4とを備える。
【0026】
取水升1は、取水対象とする水を内部へ導入するための導入口2を有し、この導入口2から取水升1内に流入水を下向流で流すような構造になっている。取水升1の具体的形状は特に制限されないが、例えば、取水対象とする海水、淡水又は汽水中にほぼ全面を浸漬させることが可能な細長い筒状の反応槽が利用可能である。
図1の例においては、取水升1は水底から水面まで延在し、取水升1の一部が水底に埋設された例を示しているが、本発明の目的を達成できるような配置であればこの配置に限定されないことは勿論である。
【0027】
気泡発生手段3は、取水升1中に水中に気体を送り込んで取水升1内に気泡6を発生させるための装置である。取水升1の下部に設けられた気泡発生手段3から気泡6を上向流で流し、気泡6を水面へ向けて上昇させることにより、導入口2から取水升1内に導入された水と気泡6とを対向流で接触させることができる。
【0028】
気泡6の表面は、OH
-、Cl
-、COO
-が濃縮して負電荷に帯電しているため、取水升1に導入される濁質成分、有機物及び油などの汚染成分で疎水基を持つ物質が、電気的に中和あるいは反発し、若しくはイオン交換されることにより、気泡6の表面に吸着されやくなる。このような性質を利用して水に含まれる汚染物質を気泡6に吸着させて分離することができる。
【0029】
気泡発生手段3としては、メンブレン式散気装置やセラミック製散気装置でブロワなどの送風機により散気するか、又はエジェクタ等で空気を吸引させて散気することが好適である。使用する気体としては一般的に空気が用いられるが、窒素や他のガスを供給してもよい。即ち、気泡とするガスは空気を用いるのが安価であるが、窒素ガスや酸素ガス、オゾンガスなどのあらゆるガスに限定されない。
【0030】
気泡発生手段3が発生させる気泡6の直径(気泡径)としては、取水対象とする水の性状及びその水に含まれる汚染物質の濃度や種類に応じて異なるが、気泡径10μm〜5mmとすることが好ましい。気泡径が10μm未満であると、気泡の上昇速度が遅く、気泡6を用いた固液分離がうまく進まない場合がある。一方、気泡径が5mmを越えると、気泡による固液分離に十分な気泡表面積を確保することができず、固液分離の効率が低下する場合がある。
【0031】
更に、取水対象とする水の性状に応じて、予備気泡発生手段(図示せず)を併用し、予備気泡発生手段によって取水升1内に対流を生じさせたり気泡発生手段3とは異なる気泡径の気泡を発生させたりしてもよい。これにより、水中の汚染物質の吸着効率を更に向上させることが可能となる。
【0032】
取水手段4としては、例えば取水升1の長手方向に沿って延在する取水配管などが用いられる。
図3に示すように、取水手段4の取水口41は、気泡発生手段3よりも下方に設けられており、取水口41を介して、取水升1内において気泡6が水と接触する領域よりも下方(気泡発生手段3よりも下方)から、取水升1内の水を汲み上げることが好ましい。
【0033】
図3に示す取水装置によれば、気泡を取水升1内の水から分離するために特別の装置を利用することなく、簡便かつ小型の装置で気泡と接触した後の水を取水することができる。
【0034】
取水升1内での気泡6の上昇速度は、例えば、水温20℃の時、ストークス定理により
図4に示すような関係を有する。例えば気泡径が1mm(1000μm)のときは、気泡6の上昇速度は32m/minとなる。取水升1内の下部で流入水と気泡6とを効率良く分離するには、流入水の下向流の流速が、気泡6の上昇速度よりも小さくなるように、取水手段4から水を引き抜くことが好ましい。
【0035】
取水手段4へ気泡6を巻き込まないようにするために、
図1に示すように、取水升1内に仕切板5を配置し、仕切板5で気泡6が多数存在する領域から分離された領域内に取水手段4を配置してもよい。
図2に示すように、取水升1を、仕切板5を介して吸着分離部10と脱気部11とに分け、脱気部11内に取水手段4を配置するようにしてもよい。仕切板5の最下端を気泡発生手段3よりも下に配置することで、気泡6の脱気部11への混入を抑制することができる。また、吸着分離部10の容積を脱気部11の容積よりも大きくとることで、気泡6による吸着分離処理の効率をより高めることができる。
【0036】
吸着分離部10においては、導入口2から水を下向流で導入するとともに取水升1の下部にある気泡発生手段3から気泡を発生させて、気泡6を上向流で流すことにより、気泡6と水とを対向流で接触させる。これにより、流入水中の汚染物質を気泡6に吸着させる。
【0037】
脱気部11は、吸着分離部10と取水升1の下部において連通している。脱気部11においては、汚染物質が気泡6に吸着除去された後の処理水を受け入れて、この処理水を上向流で流し、処理水に随伴する気泡を上昇させて水面へと送る。即ち、気泡6と処理水がお互いの流れによって分離されることにより、水中から気泡6をより完全に除去するための領域として機能する。
【0038】
脱気部11では、気泡6の浮上速度を下回るように脱気部11内の水の流速が調整されており、気泡6は水面へ浮上することで分離される。このような構成を採用することにより、気泡6の分離効率が高まり、取水手段4から水を汲み上げる際に極力気泡6を巻き込まないようにすることができる。気泡6の巻き込みを防ぐために、取水手段4の取水口41周辺には、気泡の侵入を防ぐための気泡侵入抑制部12が形成されていてもよい。気泡侵入抑制部12の構成は特に制限されない。気泡侵入抑制部12が気泡6を消泡するような機能を有していても構わない。
【0039】
本発明が処理対象とする水は、海水、淡水、汽水などが好適に利用されるが、汚染物質を含む液体で気泡分離によりその汚染物質が除去できるような液体であればこれに限定されるものではない。
【0040】
例えば、随伴水などの含油排水、藻類を含む湖沼水、工場排水なども処理対象として利用することが可能である。取水対象とする水に含まれる汚染物質としては、例えば、膜分離における膜の閉塞の原因となる濁質、TEPなどの有機成分などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明の実施の形態に係る取水装置及び取水方法によれば、取水対象とする水中に取水升1を浸漬させ、取水升1内で気泡6を用いた汚染物質の分離を行った後、気泡6を分離した後の処理水を取水する。このように、取水対象とする水を、陸上へ汲み上げる前に本実施形態に係る処理を行うことにより、その後の陸上で行う水処理のための前処理の負担を小さくできる。
【0042】
例えば、TEPなどの低減目的のために泡沫分離処理を陸上で採用する場合には、泡沫分離処理により発生した泡沫を分離して処理しなければならない。本発明によれば、水中の汚染物質を吸着した気泡6を浮力によって、導入口2から取水対象とする水自体へそのまま戻すことができるため、汚染物質を吸着した気泡6を別途処理するための手段を設ける必要がなく、より効率良く処理を行うことができる。また、取水升1は、非特許文献2に記載されるような水中でろ過を行う場合のように、広く安定した海底面を必要としないため、設置の簡便性と汚染物質の除去に優れた取水装置を提供することができる。
【0043】
膜のファウリング物質として、溶存有機物や取水箇所の水質が影響を及ぼし、高濁度の原水が膜の閉塞の原因になる場合がある。本実施形態に係る取水装置及び取水方法によれば、取水前に膜のファウリング物質となる汚染物質を予め除去することができるため、取水して陸上で前処理を行う場合においても前処理の負担を小さくすることができる。
【0044】
よって、取水された水を前処理し、前処理を行った処理水を膜分離等を用いて水処理するような水処理設備へ導入することにより、特に安定的に水処理を進めることができる。また、本実施形態に係る取水装置及び取水方法は、海水淡水化、製塩事業、養殖、水族館などの魚類など市域事業分野、浄水場などの各種取水を必要とする施設に好適に用いられるものである。
【実施例】
【0045】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0046】
(実施例1)
図3に示す取水装置を海水中に浸漬して取水操作を行った。
図3に示すように、基準面(A.P:荒川工事基準面)から4.0mの深さまで開口部を設け、これを導入口2として、海水を取水升1内へ流入させた。基準面から7.0mの深さに底面がくるように取水升1を配置し、基準面6.0mの深さに気泡発生手段3を配置した。取水手段4の取水口41が、気泡発生手段3よりも0.5mほど下(基準面から6.5mの深さ)になるように配置した。気泡発生手段3として気泡径100μm(製品仕様)の気泡を発生させるセラミック製散気管を使用し、取水手段4からの取水量を20L/分とし、気泡発生手段3からの散気量を10L/分とした。取水配管径は50mm、取水升1の断面積は1m
2とした。
【0047】
図5(a)に示すように、散気を1時間毎に繰り返し、散気した場合としない場合の濁度、全炭素濃度(TOC)、溶存有機炭素濃度(DOC)、生体外分泌高分子粒子(TEP)濃度の時間毎の変化を観察した。結果を
図5(b)〜
図5(e)に示す。なお、本実施例においては、取水した水中のTOCは燃焼酸化方式によるTOC分析法によって、DOCは孔径1μmのガラスフィルターにてろ過したろ過液を上述のTOC分析法で分析した。TEPは、海水試料を孔径0.4μmのポリカーボネート製の濾紙で濾過し、濾紙表面に捕捉された試料をアルシアンブルーにて染色し、分光光度計によりキサンタンガム(XG)を標準として測定し、単位はμg−XG/Lで示した。本分析方法によって定量したTEPは、酸性ムコ多糖類である。散気を行った場合を実施例1とし、散気を行わなかった場合を比較例1として、実施例1と比較例1の水質平均値を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、実施例1によって、海水中の濁度が低減するともに有機物量であるTOC、DOCも低下するという結果が得られた。また、実施例1では平均値で濁度が51%、TEPが37%に低減された。
【0050】
(実施例2)
図3に示す取水装置を浄水用の取水に適用した。実施例2では、
図6(a)に示すように、散気を24時間毎に繰り返し、散気した場合としない場合の濁度、全炭素濃度(TOC)、溶存有機炭素濃度(DOC)、陰イオン界面活性剤濃度、生体外分泌高分子粒子(TEP)濃度の時間毎の変化を観察した。結果を
図6(b)〜
図6(f)に示す。実施例2においては、取水量を10L/分とし、気泡発生手段3からの散気量を5L/分とした。取水配管径は25mm、取水升1の断面積は0.5m
2とした。他の条件は実施例1と同様である。
【0051】
散気を行った場合を実施例2とし、散気を行わなかった場合を比較例2として、実施例2と比較例2の水質平均値を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
表2に示すように、実施例2によって、濁度、TOC、DOC、陰イオン界面活性剤、TEPのいずれも低減した。また、実施例2では、平均値で濁度が45%、TOCが58%、DOCが41%、TEPが40%に低減された。陰イオン界面活性剤は、比較例2においては期間中6日間検出されたが、実施例2では一度も検出されなかった。
【符号の説明】
【0054】
1…取水升
2…導入口
3…気泡発生手段
4…取水手段
5…仕切板
6…気泡
10…吸着分離部
11…脱気部
12…気泡侵入抑制部
41…取水口