特許第6720106号(P6720106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720106
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】溶接構造体
(51)【国際特許分類】
   B23K 31/00 20060101AFI20200629BHJP
   B23K 9/02 20060101ALI20200629BHJP
   B63B 73/40 20200101ALI20200629BHJP
   B23K 9/00 20060101ALN20200629BHJP
【FI】
   B23K31/00 F
   B23K9/02 D
   B23K9/02 S
   B63B73/40
   !B23K9/00 501A
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-55633(P2017-55633)
(22)【出願日】2017年3月22日
(65)【公開番号】特開2018-158345(P2018-158345A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2018年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502116922
【氏名又は名称】ジャパンマリンユナイテッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】半田 恒久
(72)【発明者】
【氏名】伊木 聡
(72)【発明者】
【氏名】池田 倫正
(72)【発明者】
【氏名】豊田 昌信
(72)【発明者】
【氏名】木治 昇
(72)【発明者】
【氏名】山内 暁彦
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−223818(JP,A)
【文献】 特開2007−327137(JP,A)
【文献】 実開昭57−116392(JP,U)
【文献】 特開2007−326147(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/038685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/00
B23K 9/02
B63B 73/40
B23K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合部材と被接合部材との突合せ部分に板継ダブラー部材を備えてなる溶接構造体であって、
前記板継ダブラー部材は、該板継ダブラー部材の一方の端面を前記接合部材の端面に、前記板継ダブラー部材の板厚方向と前記接合部材の板厚方向とが一致するように突き合せ、溶接接合してなり、かつ前記板継ダブラー部材の他方の端面を前記被接合部材の表面に重ね合わせ隅肉溶接によって接合されてなる隅肉溶接継手を備え、かつ
前記隅肉溶接継手の断面で、前記重ね合わせた面に、非溶着幅Bと前記板継ダブラー部材の板厚tdとの比、B/td、で定義される非溶着比率Yが95%以上である非溶着部を有し、さらに、前記板継ダブラー部材の高さWhと板厚tdの比、Wh/tdが、下記(1a)式を満足し、さらに、前記隅肉溶接継手の隅肉溶接金属を、該隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs(℃)が、平均隅肉脚長もしくは溶着長さLに対応して、前記被接合部材の板厚tfと前記隅肉脚長もしくは溶着長さLとの関係で、下記(1b)式または下記(1c)式を満足する隅肉溶接金属とする、
ことを特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れる溶接構造体。

Wh/td≧2 …(1a)
ここで、Wh:板継ダブラー部材の高さ(mm)、
td:板継ダブラー部材の板厚(mm)
L≧20の場合、vTrs≦−5L+65−1.5(tf−75)…(1b)
L<20の場合、vTrs≦−35−1.5(tf−75) …(1c)
ここで、vTrs:隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度(℃)、
tf:被接合部材の板厚(mm)、
L:隅肉脚長(もしくは溶着幅)(mm)
【請求項2】
接合部材と被接合部材との突合せ部分に板継ダブラー部材を備えてなる溶接構造体であって、
前記板継ダブラー部材は、該板継ダブラー部材の一方の端面を前記接合部材の端面に、前記板継ダブラー部材の板厚方向と前記接合部材の板厚方向とが一致するように突き合せ、溶接接合してなり、かつ前記板継ダブラー部材の他方の端面を前記被接合部材の表面に重ね合わせ隅肉溶接によって接合されてなる隅肉溶接継手を備え、かつ
前記隅肉溶接継手の断面で、前記重ね合わせた面に、下記(2)式で定義される非溶着比率X(%)(0%を含む)が、前記被接合部材の供用温度T(℃)における脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)Fとの関係で下記(3a)式を、前記板継ダブラー部材の供用温度T(℃)における脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)Dとの関係で下記(3b)式を、それぞれ満足する、幅Bの非溶着部を有すること
を特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れる溶接構造体。

X(%)={(隅肉溶接継手の断面で、重ね合わせた面に形成された非溶着部の幅B)/(板継ダブラー部材の板厚tdと左右の隅肉溶接部の脚長2Lとの和)}×100 …(2)
X(%)≧{9900−(Kca)F}/85 …(3a)
X(%)≧{9900−(Kca)D}/85 …(3b)
ここで、X:非溶着比率(%)、
(Kca)F:被接合部材の供用温度T(℃)における脆性亀裂伝播停止靭性(N/mm3/2)、
(Kca)D:板継ダブラー部材の供用温度T(℃)における脆性亀裂伝播停止靭性(N/mm3/2
【請求項3】
接合部材と被接合部材との突合せ部分に板継ダブラー部材を備えてなる溶接構造体であって、
前記板継ダブラー部材は、該板継ダブラー部材の一方の端面を前記接合部材の端面に、前記板継ダブラー部材の板厚方向と前記接合部材の板厚方向とが一致するように突き合せ、溶接接合してなり、かつ前記板継ダブラー部材の他方の端面を前記被接合部材の表面に重ね合わせ隅肉溶接によって接合されてなる隅肉溶接継手を備え、かつ
前記被接合部材または前記接合部材が、前記接合部材または被接合部材に交差するように、突合せ溶接継手部を有すること
を特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れる溶接構造体
【請求項4】
接合部材と被接合部材との突合せ部分に板継ダブラー部材を備えてなる溶接構造体であって、
前記板継ダブラー部材は、該板継ダブラー部材の一方の端面を前記接合部材の端面に、前記板継ダブラー部材の板厚方向と前記接合部材の板厚方向とが一致するように突き合せ、溶接接合してなり、かつ前記板継ダブラー部材の他方の端面を前記被接合部材の表面に重ね合わせ隅肉溶接によって接合されてなる隅肉溶接継手を備え、かつ
前記接合部材および前記被接合部材がそれぞれ突合せ溶接継手部を有し、該突合せ溶接継手部同士が交差するように配設されてなること
を特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れる溶接構造体。
【請求項5】
前記接合部材の板厚、前記被接合部材の板厚および前記板継ダブラー部材の板厚がいずれも50mm以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の溶接構造体。
【請求項6】
前記板継ダブラー部材の脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)Dが10000N/mm3/2以上であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の溶接構造体。
【請求項7】
前記被接合部材または前記接合部材が、前記接合部材または被接合部材に交差するように、突合せ溶接継手部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の溶接構造体。
【請求項8】
前記接合部材および前記被接合部材がそれぞれ突合せ溶接継手部を有し、該突合せ溶接継手部同士が交差するように配設されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、大型コンテナ船やバルクキャリアーなどの、厚鋼板を用いて溶接施工された溶接鋼構造物に係り、とくに厚鋼板母材あるいは溶接継手部から発生した脆性亀裂の伝播を、構造物の大規模破壊に至る前に停止させることができる、脆性亀裂伝播停止特性に優れる溶接構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナ船やバルクキャリアーは、積載能力の向上や荷役効率の向上等のため、例えば、タンカー等とは異なり船倉内に仕切り壁が少なく、船上部の開口部を大きくとった構造を有している。そのため、コンテナ船やバルクキャリアーでは、とくに船体外板を、高強度化または厚肉化する必要がある。
【0003】
また、コンテナ船は、近年、大型化し、6000〜22000TEUといった大型船が建造されるようになってきている。TEU(Twenty feet Equivalent Unit)は、長さ20フィートのコンテナに換算した個数を表し、コンテナ船の積載能力の指標を示している。このような船の大型化に伴い、船体外板は、板厚:50mm以上で、降伏強さ:390N/mm級以上の厚鋼板が使用される傾向となっている。
【0004】
船体外板となる鋼板は、近年、施工期間の短縮という観点から、例えばエレクトロガスアーク溶接等の大入熱溶接により突合せ溶接されることが多く、溶接熱影響部での大幅な靭性低下に繋がりやすく、溶接継手部からの脆性亀裂が発生する危険があった。
【0005】
一方で、船体構造においては、従来から安全性という観点から、万一、脆性破壊が発生した場合でも、脆性亀裂の伝播を大規模破壊に至る前に停止させ、船体分離を防止することが必要であると考えられている。
【0006】
このような考え方を受けて、非特許文献1に、板厚50mm未満の造船用鋼板における溶接部の脆性亀裂伝播挙動についての実験的な検討結果が報告されている。
【0007】
非特許文献1には、溶接部で強制的に発生させた脆性亀裂の伝播経路、伝播挙動を実験的に調査し、溶接部の破壊靱性がある程度確保されていれば、溶接残留応力の影響により脆性亀裂は溶接部から母材側に逸れてしまうことが多いという結果が記載されているが、溶接部に沿って脆性亀裂が伝播した例も複数例確認されている。このことは、脆性破壊が溶接部に沿って直進伝播する可能性が無いとは言い切れないことを示唆していることになる。
【0008】
しかしながら、非特許文献1で適用した溶接と同等の溶接を板厚50mm未満の鋼板に適用して建造された船舶が問題なく就航しているという多くの実績があることに加え、靱性が良好な鋼板母材(造船E級鋼など)は脆性亀裂を停止する能力を十分に保持しているとの認識から、とくに、造船用鋼材の溶接部の脆性亀裂伝播停止特性は船級規則等には要求されてこなかった。
【0009】
しかし、近年の6000TEUを超える大型コンテナ船では、使用する鋼板の板厚は50mmを超え、板厚増大による破壊靱性の低下に加え、溶接入熱がより大きな大入熱溶接が採用され、溶接部の破壊靭性が一層低下する傾向にある。このような厚肉大入熱溶接継手では、溶接部から発生した脆性亀裂が、母材側に反れずに直進し、また骨材等の鋼板母材部でも停止しない可能性があることが示されており(例えば非特許文献2)、板厚50mm以上の厚肉高強度鋼板を適用した船体構造の安全性確保の観点から大きな問題となっている。また、非特許文献2には、とくに発生した脆性亀裂の伝播停止のために、特別な脆性亀裂伝播停止特性を有する厚鋼板を必要とするとの指摘もある。
【0010】
このような問題に対し、例えば特許文献1には、好ましくは板厚50mm以上の船殻外板である溶接構造体において、突合せ溶接部に交差するように骨材を配置し、隅肉溶接で接合した溶接構造体が記載されている。特許文献1に記載された技術では、骨材を、表層部および裏層部で3mm以上の厚みにわたり0.5〜5μmの平均円相当粒径を有しさらに板厚面に平行な面で(100)結晶面のX線面強度比が1.5以上である、ミクロ組織を有する鋼板を用いるとしている。このようなミクロ組織を有する鋼板を補強材として隅肉溶接した構造とすることにより、突合せ溶接継手部に脆性亀裂が発生しても、補強材である骨材で脆性破壊を停止させることができ、溶接構造体が破壊するような致命的な損傷を防止できるとしている。
【0011】
また、特許文献2には、接合部材(ウェブ)を被接合部材(フランジ)に隅肉溶接してなる隅肉溶接継手を備え、脆性亀裂伝播停止特性に優れた溶接構造体が記載されている。特許文献2に記載された溶接構造体では、隅肉溶接継手断面におけるウェブの、フランジとの突合せ面に非溶着部を残存させ、その非溶着部の幅と、隅肉溶接部の左右の脚長とウェブ板厚との和との比、Xが、被接合部材(フランジ)の脆性亀裂伝播停止性能Kcaと特別な関係式を満足するように、非溶着部の幅を調整する。これにより、被接合部材(フランジ)を板厚:50mm以上の厚物材としても、接合部材(ウェブ)で発生した脆性亀裂の伝播を、隅肉溶接部のウェブとフランジの突合せ面で停止させ、被接合部材(フランジ)への脆性亀裂の伝播を阻止することができるとしている。
【0012】
また、特許文献3〜5にも、接合部材(ウェブ)を被接合部材(フランジ)に隅肉溶接してなる隅肉溶接継手を備え、脆性亀裂伝播停止特性に優れた溶接構造体が記載されている。
【0013】
特許文献3には、接合部材の端面を板厚50mm以上の被接合部材の表面に突合わせ、前記接合部材と前記被接合部材とを隅肉溶接により接合してなる溶接脚長もしくは溶着幅の少なくとも一方が16mm以下の隅肉溶接継手を備えた溶接構造体であって、隅肉溶接継手における接合部材の端面と被接合部材の表面とを突合わせた面に、隅肉溶接継手の断面で該接合部材の板厚twの95%以上の非溶着部を有し、さらに隅肉溶接継手における隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrsが、被接合部材の板厚tfとの関係で、vTrs≦−1.5tf+70を、および/または、隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験の試験温度:−20℃における吸収エネルギーvE−20(J)が、被接合部材の板厚tfとの関係で、vE−20≧2.75tf−105を満足する、隅肉溶接金属を有する溶接構造体が記載されている。このような溶接構造体であれば、被接合部材で発生した脆性亀裂を隅肉溶接金属で伝播阻止することができるとしている。
【0014】
また、特許文献4には、接合部材の端面を板厚50mm以上の被接合部材の表面に突合わせ、前記接合部材と前記被接合部材とを隅肉溶接により接合してなる溶接脚長もしくは溶着幅の少なくとも一方が16mm以下の隅肉溶接継手を備えた溶接構造体であって、隅肉溶接継手における接合部材の端面と被接合部材の表面とを突合わせた面に、隅肉溶接継手の断面で該接合部材の板厚twの95%以上の非溶着部を有し、さらに隅肉溶接継手における隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrsが、被接合部材の板厚tfとの関係で、vTrs≦−1.5tf+90を、および/または、隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験の試験温度:−20℃における吸収エネルギーvE−20(J)が、被接合部材の板厚tfとの関係で、50≦tf≦53の場合には、vE−20≧5.75、tf>53の場合には、vE−20≧2.75tf−140を満足する、隅肉溶接金属を有し、加えて接合部材を、脆性亀裂伝播停止靭性Kcaが共用温度で2500N/mm2/3以上である鋼板で構成する、溶接構造体が記載されている。このような溶接構造体とすることにより、脆性亀裂は、隅肉溶接部または接合部材の母材で停止できるとしている。
【0015】
また、特許文献5には、接合部材の端面を板厚50mm以上の被接合部材の表面に突合わせ、前記接合部材と前記被接合部材とを隅肉溶接により接合してなる溶接脚長もしくは溶着幅の少なくとも一方が16mm以下の隅肉溶接継手を備えた溶接構造体であって、接合部材および被接合部材をともに突合せ溶接継手部を有する部材とし、突合せ溶接継手部の溶接金属が、vTrsで−65℃以下、および/または、vE−20で140J以上の靭性を有し、隅肉溶接継手における接合部材の突合せ溶接継手部の溶接部端面を、被接合部材の突合せ溶接継手部の溶接部表面に突合わせ、突合わせた面に、隅肉溶接継手の突合せ溶接継手断面で該接合部材の板厚twの95%以上の非溶着部を有し、さらに隅肉溶接継手における隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrsが、被接合部材の板厚tfとの関係で、vTrs≦−1.5tf+90を、および/または、隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験の試験温度:−20℃における吸収エネルギーvE−20(J)が、被接合部材の板厚tfとの関係で、50≦tf≦53の場合には、vE−20≧5.75、tf>53の場合には、vE−20≧2.75tf−140を満足する、隅肉溶接金属を有する、溶接構造体が記載されている。このような溶接構造体とすることにより、脆性亀裂は、隅肉溶接部または接合部材の母材で停止できるとしている。このような溶接構造体とすることにより、被接合部材溶接部から発生した脆性亀裂、または接合部材溶接部から発生した脆性亀裂、を隅肉溶接部あるいは接合部材の溶接部または被接合部材の溶接部で伝播阻止することができるとしている。
【0016】
特許文献3〜5に記載された溶接構造体では、隅肉溶接脚長(溶着幅)を16mm以下とし、隅肉溶接金属の靭性を被接合部材(フランジ)の板厚に応じて確保することにより、被接合部材(フランジ)で発生した脆性亀裂の伝播を、隅肉溶接部のウェブとフランジの突合せ面で停止させ、接合部材(ウェブ)への脆性亀裂の伝播を、特許文献3では隅肉溶接金属部で阻止、特許文献4では接合部材(ウェブ)母材部で阻止、特許文献5では接合部材(ウェブ)溶接部で阻止することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004−232052号公報
【特許文献2】特開2007−326147号公報
【特許文献3】特許5395985号公報
【特許文献4】特許5365761号公報
【特許文献5】特許5408396号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】日本造船研究協会第147研究部会:「船体用高張力鋼板大入熱継手の脆性破壊強度評価に関する研究」、第87号(1978年2月)、p.35〜53、日本造船研究協会
【非特許文献2】山口欣弥ら:「超大型コンテナ船の開発―新しい高強度極厚鋼板の実用―」、日本船舶海洋工学会誌、第3号(2005)、p.70〜76、平成17年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、特許文献1に記載された技術で使用する、補強材である骨材は、所望の組織を形成させた鋼板とするために、複雑な工程を必要とし、生産性が低下し、安定して所望の組織を有する鋼板を確保することが難しいという問題があった。
【0020】
また、特許文献2に記載された技術は、接合部材(以下、ウェブともいう)で発生した脆性亀裂を、構造の不連続性と、被接合部材(以下、フランジともいう)の脆性亀裂伝播停止性能との組合せで、阻止しようとする技術である。しかし、日本造船研究協会第169委員会報告(「船体構造の破壊管理制御設計に関する研究―報告書―」、(1979)、p.118〜136、日本造船研究協会第169委員会)に示されるように、一般に、隅肉溶接継手の被接合部材(フランジ)で発生した脆性亀裂を接合部材(ウェブ)で伝播停止させることは、接合部材(ウェブ)で発生した脆性亀裂を被接合部材(フランジ)で伝播停止させることに比べて、難しいことが実験的に確認されている。この理由は明確には記載されていないが、一因としてT継手部に亀裂が突入するときの破壊駆動力(応力拡大係数)が被接合部材(フランジ)に突入する場合よりも接合部材(ウェブ)に突入する場合のほうが大きくなることが考えられる。
【0021】
このようなことから、被接合部材(フランジ)で発生した脆性亀裂を接合部材(ウェブ)で伝播停止させるには、特許文献2に記載された技術では、接合部材(ウェブ)の脆性亀裂伝播停止特性等が不十分であるため、十分な技術であるとは言えない。というのは、特許文献2には、接合部材(ウェブ)の脆性亀裂伝播停止特性については何の配慮もなされていないからである。すなわち、特許文献2に記載された技術は、例えば、NK船級の「脆性亀裂アレスト設計指針」(2009年9月制定)で想定されている、大型コンテナ船の強力甲板(フランジに相当)で発生した脆性亀裂がハッチサイドコーミング(ウェブに相当)に伝播するようなケースに対して、十分な亀裂伝播停止特性を有しているとはいえない。
【0022】
また、特許文献3〜5に記載された技術では、被接合部材(フランジ)に発生した脆性亀裂の接合部材(ウェブ)への伝播を、大規模破壊に至る前に、停止(阻止)できるとしているが、隅肉溶接脚長(もしくは溶着幅)を16mm以下に制限する必要があり、そのため、隅肉溶接部強度確保の観点から接合部材(ウェブ)および被接合部材(フランジ)の適用最大板厚は80mmが限界であった。しかし、最近の大型コンテナ船では、部材の極厚化がさらに進み、板厚100mmの鋼材が適用されつつある。このような部材厚が80mmを超える部材を使用する溶接構造体に対しては、特許文献3〜5に記載された技術を適用することができないことになる。
【0023】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、被接合部材(フランジ)に発生した脆性亀裂の接合部材(ウェブ)への伝播と、接合部材(ウェブ)に発生した脆性亀裂の被接合部材(フランジ)への伝播を、大規模破壊に至る前に、停止(阻止)できる、脆性亀裂伝播停止特性に優れた溶接構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは、上記した目的を達成するために、まず、隅肉溶接構造体の施工において、隅肉溶接脚長(もしくは溶着幅)のばらつきを少なくする方策について鋭意検討した。その結果、まず、接合部材と被接合部材との基本溶接構造を従来の隅肉溶接構造から、接合部材と被接合部材との間に、ダブラー部材を配設したダブラー部材付き隅肉溶接構造に変更することに想到した。これにより、脆性亀裂を停止させる隅肉溶接部の施工を工場内で実施でき、隅肉溶接部の脚長のばらつきを所定の範囲内に調整することが容易になり、しかも施工管理の厳しくなる現場では、ダブラー部材の一方の端面と接合部材(ウェブ)の端面を突合せて、施工管理の容易な溶接条件(部分溶込み、完全溶込み等)により施工できるようになることに思い至った。
【0025】
しかし、更なる検討の結果、実構造物において周りの部材との関係から、接合部材(ウェブ)の端面に突合せるダブラー部材として、厚さ:150mmを超えるような厚肉のダブラー部材が必要になる場合が想定された。厚さ:150mmを超えるような厚肉鋼板では、熱間加工時に圧下等の製造条件で、とくに安定した高靭性を保持する観点から十分、満足できる製造条件を確保できにくいという問題があった。
【0026】
そこで、本発明者らは、高靭性を比較的安定して確保できると云われている板厚:150mm程度までの厚鋼板をダブラー部材用素材とし、ダブラー部材10の端面を、接合部材(ウェブ)1の端面に突き合わせて、溶接接合することに思い至った。すなわち、図1(a)に示すように、ダブラー部材10の板厚方向と接合部材(ウェブ)1の板厚方向とが一致するように、接合部材(ウェブ)1とダブラー部材10とを突き合わせ、完全溶込みもしくは部分溶込み溶接接合してなる溶接構造体とする。これにより、素材(厚鋼板)の幅方向または長さ方向をダブラー部材10の高さWhとすることができ、ダブラー部材の著しい靭性低下を伴うことなく、ダブラー部材の高さWhが任意に選定可能となる。このように配設されるダブラー部材を、本発明では「板継ダブラー部材」と称する。
【0027】
なお、本発明にかかる板継ダブラー部材付き隅肉溶接構造体では、図1(a)に示すように、さらに板継ダブラー部材10の他方の端部を被接合部材(フランジ)の表面に重ね合わせ、隅肉溶接した溶接構造体である。
【0028】
そして、次に、上記した構成を有する板継ダブラー部材付き隅肉溶接構造体における脆性亀裂伝播停止特性に及ぼす各種要因について鋭意検討した。その結果、上記した構成を有する板継ダブラー部材付き隅肉溶接構造体において、被接合部材(フランジ)から発生した脆性亀裂の伝播を阻止(停止)するには、被接合部材(フランジ)と板継ダブラー部材との重ね合わせ面に所定幅以上の非溶着部(不連続部)を確保すると共に、被接合部材(フランジ)の板厚tf(mm)が大きくなると脆性亀裂先端のエネルギー解放率(亀裂進展駆動力)が増加し、脆性亀裂が停止しにくくなることに鑑みて、被接合部材(フランジ)の板厚tf(mm)に関連した、隅肉溶接部の靭性向上が必須となることに想到した。そしてさらに、隅肉溶接部の平均脚長もしくは溶着幅が長くなると、脆性亀裂の伝播がより容易となるため、被接合部材(フランジ)の板厚tf(mm)に加えて、さらに隅肉溶接の平均脚長(もしくは溶着幅)Lに応じて、隅肉溶接金属の靭性を確保する必要があることも知見した。これにより、被接合部材(フランジ)から発生した脆性亀裂の伝播を隅肉溶接部で阻止(停止)できることを知見した。
【0029】
また、上記した構成を有する板継ダブラー部材付き隅肉溶接構造体において、接合部材(ウェブ)から発生し、溶接部を介して板継ダブラー部材に突入する脆性亀裂の伝播を阻止(停止)するには、板継ダブラー部材を脆性亀裂伝播停止靭性Kcaが10000N/mm3/2以上を有する材料とする必要があることを知見した。
【0030】
また、板継ダブラー部材に突入した脆性亀裂が停止するまでに、板継ダブラー部材の材質に応じて適正な距離を必要とするため、および突入する脆性亀裂の幅を狭くするため、板継ダブラー部材の高さWhと板厚tdの比、Wh/td、を2以上とする必要があることも知見した。
【0031】
また、板継ダブラー部材が上記した条件を満足しない場合であっても、板継ダブラー部材と被接合部材(フランジ)との隅肉溶接金属部が、上記した被接合部材(フランジ)から発生した脆性亀裂の伝播を阻止(停止)する靭性を保持していれば、接合部材(ウェブ)から発生し板継ダブラー部材を伝播して被接合部材(フランジ)に突入する脆性亀裂の伝播をも阻止できることも知見した。
【0032】
さらに、板継ダブラー部材が上記した条件を満足せず、さらに、板継ダブラー部材と被接合部材(フランジ)との隅肉溶接金属部が、上記した被接合部材(フランジ)から発生した脆性亀裂の伝播を阻止(停止)する靭性を保持していない場合であっても、板継ダブラー部材と被接合部材(フランジ)との重ね合わせ面に所定幅以上の非溶着部(不連続部)を確保したうえで、被接合部材(フランジ)を、その非溶着部の幅Bに応じた、脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)を有する材料とすることにより、接合部材(ウェブ)から発生し板継ダブラー部材を伝播して被接合部材(フランジ)に突入する脆性亀裂の伝播を阻止でき、板継ダブラー部材を、その非溶着部の幅Bに応じた、脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)を有する材料とすることにより、被接合部材(フランジ)から発生し伝播して板継ダブラー部材に突入する脆性亀裂の伝播を阻止できることを知見した。
【0033】
本発明は、かかる知見に基づいて、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)接合部材と被接合部材との突合せ部分に板継ダブラー部材を備えてなる溶接構造体であって、前記板継ダブラー部材は、該板継ダブラー部材の一方の端面を前記接合部材の端面に、前記板継ダブラー部材の板厚方向と前記接合部材の板厚方向とが一致するように突き合せ、溶接接合してなり、かつ前記板継ダブラー部材の他方の端面を前記被接合部材の表面に重ね合わせ隅肉溶接によって接合されてなる隅肉溶接継手を備えたことを特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れる溶接構造体。
(2)(1)において、前記接合部材の板厚、前記被接合部材の板厚および前記板継ダブラー部材の板厚がいずれも50mm以上であることを特徴とする溶接構造体。
(3)(1)または(2)において、前記板継ダブラー部材の脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)が10000N/mm3/2以上であることを特徴とする溶接構造体。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記隅肉溶接継手の断面で、前記重ね合わせた面に、非溶着幅Bと前記板継ダブラー部材の板厚tdとの比、B/td、で定義される非溶着比率Yが95%以上である非溶着部を有し、さらに、前記板継ダブラー部材の高さWhと板厚tdの比、Wh/tdが、次(1a)式
Wh/td≧2 …(1a)
ここで、Wh:板継ダブラー部材の高さ(mm)、
td:板継ダブラー部材の板厚(mm)
を満足し、さらに、前記隅肉溶接継手の隅肉溶接金属を、該隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度vTrs(℃)が、平均隅肉脚長もしくは溶着長さLに対応して、前記被接合部材の板厚tfと前記隅肉脚長もしくは溶着長さLとの関係で、次(1b)式または次(1c)式
L≧20の場合、vTrs≦−5L+65−1.5(tf−75)…(1b)
L<20の場合、vTrs≦−35−1.5(tf−75) …(1c)
ここで、vTrs:隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度(℃)、
tf:被接合部材の板厚(mm)、
L:隅肉脚長(もしくは溶着幅)(mm)
を満足する隅肉溶接金属とする、ことを特徴とする溶接構造体。
(5)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記隅肉溶接継手の断面で、前記重ね合わせた面に、次(2)式
X(%)={(隅肉溶接継手の断面で、重ね合わせた面に形成された非溶着部の幅B)/(板継ダブラー部材の板厚tdと左右の隅肉溶接部の脚長2Lとの和)}×100 …(2)
で定義される非溶着比率X(%)(0%を含む)が、前記被接合部材の供用温度T(℃)における脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)との関係で、次(3a)式
X(%)≧{9900−(Kca)}/85 …(3a)
ここで、X:非溶着比率(%)、
(Kca):被接合部材の供用温度T(℃)における脆性亀裂伝播停止靭性(N/mm3/2)、
を、前記板継ダブラー部材の供用温度T(℃)における脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)との関係で次(3b)式
X(%)≧{9900−(Kca)}/85 …(3b)
ここで、X:非溶着比率(%)、
(Kca):板継ダブラー部材の供用温度T(℃)における脆性亀裂伝播停止靭性(N/mm3/2
を、それぞれ満足する、幅Bの非溶着部を有することを特徴とする溶接構造体。
(6)(1)ないし(5)のいずれかにおいて、前記被接合部材または前記接合部材が、前記接合部材または被接合部材に交差するように、突合せ溶接継手部を有することを特徴とする溶接構造体。
(7)(1)ないし(5)のいずれかにおいて、前記接合部材および前記被接合部材がそれぞれ突合せ溶接継手部を有し、該突合せ溶接継手部同士が交差するように配設されてなることを特徴とする溶接構造体。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、従来困難であった板厚50mm以上、さらには板厚80mmを超える厚鋼板からなる被接合部材(フランジ)に発生した脆性亀裂の接合部材(ウェブ)への伝播と接合部材(ウェブ)に発生した脆性亀裂の被接合部材(フランジ)への伝播の両方を、大規模破壊に至る前に、停止(阻止)でき、鋼構造物、とくに、大型コンテナ船やバルクキャリアーなどの船体分離などの大規模な脆性破壊の危険性を回避でき、船体構造の安全性を確保するうえで大きな効果をもたらし、産業上格段の効果を奏する。
【0035】
また、板継ダブラー部材に脆性亀裂伝播停止靭性の高い材料を適用すること、および、溶接施工時に、板継ダブラー部材の隅肉脚長および隅肉溶接金属靭性を調整すること、等により、脆性亀裂の伝播停止が複数箇所(2箇所)で可能になり、脆性亀裂の伝播停止特性が格段に向上するという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】隅肉溶接継手の断面構成を模式的に説明する説明図である。(a)は接合部材(ウェブ)1と板継ダブラー部材10および被接合部材(フランジ)2が直交している場合、(b)は接合部材(ウェブ)1と、板継ダブラー部材10および被接合部材(フランジ)2が斜めに交差している場合を示す。
図2】隅肉溶接継手の構成の他の一例を模式的に示す説明図である。(a)は外観図、(b)は断面図である。
図3】隅肉溶接継手の構成の他の一例を模式的に示す説明図である。(a)は外観図、(b)は断面図である。
図4】実施例で使用した、被接合部材(フランジ)から発生・伝播する脆性亀裂を対象とした超大型構造モデル試験体の形状を模式的に示す説明図である。(a)は被接合部材(フランジ)2が鋼板母材のみからなる場合、(b)は被接合部材(フランジ)2が突合せ溶接継手部を有する場合、(c)は接合部材(ウェブ)1および被接合部材(フランジ)2が突合せ溶接継手部を有する場合である。
図5】実施例で使用した、接合部材(ウェブ)から発生・伝播する脆性亀裂を対象とした超大型構造モデル試験体の形状を模式的に示す説明図である。(a)は接合部材(ウェブ)1が鋼板母材のみからなる場合、(b)は接合部材(ウェブ)1が突合せ溶接継手部を有する場合、(c)は接合部材(ウェブ)1および被接合部材(フランジ)2が突合せ溶接継手部を有する場合である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明溶接構造体は、接合部材と被接合部材との突合せ部分に板継ダブラー部材を備えてなる溶接構造体である。本発明溶接構造体は、接合部材(ウェブ)1の端面を、板継ダブラー部材10の一方の端面に突き合わせ、接合部材(ウェブ)1と板継ダブラー部材10とを溶接接合し、かつ板継ダブラー部材10の他方の端面を被接合部材(フランジ)2の表面に重ね合わせ、隅肉溶接により接合してなる隅肉溶接継手を備えた溶接構造体である。本発明溶接構造体では、接合部材(ウェブ)1、被接合部材(フランジ)2および板継ダブラー部材10がいずれも板厚50mm以上の厚鋼材である場合にとくに有効である。板厚50mm未満の場合には、本発明溶接構造体を用いなくても、通常のT継手と靭性に配慮した通常の厚鋼板(造船E級鋼など)の組み合わせで、脆性亀裂の伝播を阻止することができる。
【0038】
本発明溶接構造体における板継ダブラー部材10は、好ましくは板厚:100mm程度までの厚鋼板を素材として、該素材から、素材の板厚をそのまま、部材板厚tdとし、板幅方向または板長さ方向に、所望の部材高さWhを有する部材(断面:td×Wh)としたものを用いることが好ましい。このような板継ダブラー部材10は、素材から、素材の板幅方向または板長さ方向に、所望の部材高さWhを有する部材として加工でき、所望の部材高さWhが変化しても、特段の靭性変化を伴うことがない板継ダブラー部材とすることができる、という利点がある。
【0039】
そして、本発明溶接構造体では、接合部材1と板継ダブラー部材10との板厚方向が一致するように、採取した板継ダブラー部材10の一方の端面を、接合部材(ウェブ)1の端面に突き合わせて、溶接接合する。なお、本発明溶接構造体では、接合部材(ウェブ)1と板継ダブラー部材10との突合せ面の非溶着部の有無は問わない。
【0040】
本発明溶接構造体では、一方の端面を接合部材(ウェブ)1に溶接接合した板継ダブラー部材10の他方の端面を被接合部材(フランジ)2の表面に重ね合わせ、隅肉溶接により接合して、脚長3がLmm、溶着幅13がLmmの隅肉溶接金属5を有する隅肉溶接継手を構成する。さらに、本発明溶接構造体では、板継ダブラー部材10と被接合部材(フランジ)2の重ね合わせ面に、構造の不連続部となる、幅Bの非溶着部4を有する。
【0041】
この状態を、継手断面で図1に示す。図1(a)は、接合部材(ウェブ)1を被接合部材(フランジ)2に対して直立して取り付けた場合を示すが、本発明ではこれに限定されることはない。例えば、図1(b)に示すように、接合部材(ウェブ)1を被接合部材(フランジ)2に対して角度θだけ傾けて取り付けてもよい。
【0042】
本発明溶接構造体では、接合部材1と被接合部材2との間に配設された板継ダブラー部材10を、亀裂伝播方向で所定以上のアレスト性能を保持する部材とすれば、脆性亀裂は板継ダブラー部材10で停止することになる。所定以上のアレスト性能としては、供用温度T(℃)での脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)で10000N/mm3/2以上とすることが好ましい。(Kca)が10000N/mm3/2以上であれば、接合部材または被接合部材から伝播してきた脆性亀裂を板継ダブラー部材10内で確実に停止させることができる。このことから、板継ダブラー部材10の脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)は10000N/mm3/2以上とすることが好ましい。なお、より好ましくは12000N/mm3/2である。
【0043】
なお、上記した板継ダブラー部材の条件が満足されない場合でも、別の条件を満足すれば、本発明溶接構造体により、接合部材1、被接合部材2から発生した脆性亀裂の伝播を阻止することができる。
【0044】
本発明溶接構造体は、上記したように、板継ダブラー部材10の端面と被接合部材(フランジ)2の表面とを重ね合わせた(突き合わせた)面で、構造が不連続となる、非溶着部4を有する。板継ダブラー部材10の端面と被接合部材(フランジ)2の表面とを重ね合わせた面は、脆性亀裂の伝播面となる。このため、本発明では、この重ね合わせた面に非溶着部4を存在させる。非溶着部4が存在することにより、接合部材(ウェブ)1あるいは被接合部材(フランジ)2を伝播してきた脆性亀裂先端のエネルギー解放率(亀裂進展駆動力)が低下し、重ね合わせた面において、脆性亀裂は停止しやすくなる。そこで、本発明では、所定以上の靭性を保持する隅肉溶接金属5を形成し、脆性亀裂を隅肉溶接金属5で停止させる。
【0045】
なお、脆性亀裂は、欠陥の少ない鋼板母材部で発生することは極めて稀である。過去の脆性破壊事故の多くは、溶接部で発生している。そのため、例えば、図2に示すように、被接合部材(フランジ)2を突合せ溶接継手22で接合された鋼板とし、接合部材(ウェブ)1を、被接合部材(フランジ)2の突合せ溶接継手の溶接部(突合せ溶接継手部)22と交差するように隅肉溶接した隅肉溶接継手、あるいは図3に示すように、接合部材(ウェブ)1および被接合部材(フランジ)2がともに、突合せ溶接継手部12、22を有する鋼板とし、被接合部材(フランジ)2の突合せ溶接継手部22と接合部材(ウェブ)1の突合せ溶接継手部12とが交差する隅肉溶接継手では、いずれも、突合せ溶接継手部12あるいは22から発生する脆性亀裂の伝播を阻止するためには、まず、構造の不連続を存在させることが重要となる。そのため、本発明では、隅肉溶接部における被接合部材2表面と板継ダブラー部材10端部との重ね合わせ面に非溶着部4を存在させる。
【0046】
なお、図2(a)は、隅肉溶接継手の外観を示し、図2(b)は突合せ溶接継手部22における断面形状を示す。また、図3(a)は隅肉溶接継手の外観を、図3(b)は突合せ溶接継手部12、22における継手断面形状を示す。
【0047】
図2図3では、突合せ溶接継手部22と接合部材1とが直交する場合を示したが、本発明ではこれに限定されない。斜めに交差させてもよいことは言うまでもない。また、溶接構造体の製造方法はとくに限定する必要はなく、常用の製造方法がいずれも適用できる。例えば、被接合部材(フランジ)用鋼板同士、接合部材(ウェブ)用鋼板同士を突合せ溶接し、得られた突合せ溶接継手を板継ダブラー部材を介して隅肉溶接して溶接構造体を製造してもよい。また、突合せ溶接前の一組の接合部材(ウェブ)用鋼板を被接合部材(フランジ)表面の板継ダブラー部材に仮付溶接しついで接合部材(ウェブ)用鋼板同士を突合せ溶接し、得られた突合せ溶接継手を被接合部材(フランジ)に溶接して溶接構造体を製造してもよい。
【0048】
本発明では、隅肉溶接継手断面における非溶着部4の寸法(幅B)は、脆性亀裂の伝播抑制のため、板継ダブラー部材板厚tdの95%以上とする。非溶着部4の寸法(幅B)が、板継ダブラー部材板厚tdの95%未満では、隅肉溶接金属における塑性変形が抑制され、隅肉溶接金属に突入した脆性亀裂の亀裂先端近傍が高応力となり、脆性亀裂を停止(阻止)することができない。このため、非溶着部4の寸法(幅B)は、脆性亀裂の伝播抑制のため、板継ダブラー部材板厚tdの95%以上に限定した。なお、好ましくは96%以上100%以下である。
【0049】
そして、本発明では、板継ダブラー部材10の高さWhと板厚tdの比、Wh/tdが、次(1a)式
Wh/td≧ 2 …(1a)
を満足するように、板継ダブラー部材10の寸法形状を調整する。板継ダブラー部材10の高さWhと板厚tdが、(1a)式を満足しない場合には、高アレスト板継ダブラー部材内での脆性亀裂の破壊駆動力の低下が不十分となり、脆性亀裂を板継ダブラー部材10内で、ある程度伝播させ、停止させることができず、また突入する脆性亀裂の幅が大きくなりすぎても破壊駆動力の低下が不十分となり、脆性亀裂を停止することができなくなる。
【0050】
そしてさらに、本発明では、隅肉脚長もしくは溶着幅Lに対応して、被接合部材の板厚tfと隅肉脚長もしくは溶着幅Lとの関係で次(1b)式または次(1c)式
L≧20の場合、vTrs≦−5L+65−1.5(tf−75)…(1b)
L<20の場合、vTrs≦−35−1.5(tf−75) …(1c)
ここで、vTrs:隅肉溶接金属のシャルピー衝撃試験破面遷移温度(℃)、
tf:被接合部材の板厚(mm)、
L:隅肉脚長(もしくは溶着幅)(mm)
を満足するように隅肉溶接金属の靭性を調整する。なお、Lは隅肉脚長もしくは溶着幅のうち小さい方を用いる。
【0051】
隅肉溶接金属の靭性が、被接合部材(フランジ)の板厚tf、隅肉脚長(または溶着幅)Lと関連して、上記した(1b)式または(1c)式を満足することにより、被接合部材(フランジ)および接合部材(ウェブ)の板厚が50mm以上の溶接構造体を、所望の脆性亀裂伝播阻止性能を確保した溶接構造体とすることができる。隅肉溶接金属の靭性が、上記した(1b)式または(1c)式を満足しない場合には、隅肉溶接金属の靭性が不足し、被接合部材あるいは接合部材で発生し伝播してきた脆性亀裂を隅肉溶接金属部で伝播阻止することができない。
【0052】
なお、本発明では、被接合部材(フランジ)の脆性亀裂伝播停止靭性Kcaが所定値以上である場合には、隅肉溶接継手断面における非溶着部4の寸法(幅B)は、被接合部材(フランジ)および板継ダブラー部材の脆性亀裂伝播停止靭性Kca値に応じて、板継ダブラー部材板厚tdの95%未満とすることができる。
【0053】
すなわち、本発明溶接構造体では、板継ダブラー部材10と被接合部材(フランジ)2との隅肉溶接継手における継手断面で、板継ダブラー部材10の他方の端面と被接合部材(フランジ)2表面との重ね合わせた面に、非溶着部4を有する。本発明では、次(2)式
X(%)={(隅肉溶接継手の断面で、重ね合わせた面に形成された非溶着部の幅B)/(板継ダブラー部材の板厚tdと左右の隅肉溶接部の脚長2Lとの和)}×100 …(2)
で定義されるX(%)(0%を含む)が、供用温度T(℃)における被接合部材の脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)(N/mm3/2)との関係で、下記(3a)式
X(%)≧{9900−(Kca)}/85 …(3a)
(ここで、(Kca):被接合材(フランジ)の供用温度T(℃)における脆性亀裂伝播停止靭性(N/mm3/2))
を満足するように、被接合部材の脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)と関係して非溶着部の幅Bを調整した溶接構造体とすれば、接合部材(ウェブ)から発生した脆性亀裂を被接合部材(フランジ)で伝播阻止することができる。(2)式で定義されるX(%)が、供用温度T(℃)における被接合部材の脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)(N/mm3/2)との関係で(3a)式を満足しない場合には、接合部材で発生した脆性亀裂を被接合部材で伝播阻止することができない。
【0054】
また、(2)式で定義されるX(%)が、供用温度T(℃)における板継ダブラー部材の脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)(N/mm3/2)との関係で、下記(3b)式
X(%)≧{9900−(Kca)}/85 …(3b)
(ここで、X:非溶着比率(%)、
(Kca):板継ダブラー部材の脆性亀裂伝播停止靭性(N/mm3/2))
を満足するように、板継ダブラー部材の脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)と関係して非溶着部の幅Bを調整した溶接構造体とすれば、被接合部材(フランジ)から発生した脆性亀裂を板継ダブラー部材で伝播阻止することができる。
【0055】
なお、本発明溶接構造体は、上記した隅肉溶接継手を備えるものであり、例えば、船舶の船体外板をフランジとし、隔壁をウェブとする船体構造、あるいはデッキをフランジとし、ハッチをウェブとする船体構造などに適用可能である。
【0056】
以下、実施例に基づき、さらに、本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
表1に示す板厚の厚鋼板を、接合部材(ウェブ)1および被接合部材(フランジ)2とし、接合部材(ウェブ)1と被接合部材(フランジ)2との突合せ部分に、表1に示す板厚td、高さWhを有する板継ダブラー部材10を備え、図4(a)、(b)、(c)および図5(a)、(b)、(c)に示す形状の、実構造サイズの大型溶接構造継手9を作製した。
【0058】
図4(a)、(b)、(c)は、被接合部材(フランジ)2から脆性亀裂が発生・伝播するケースを、図5(a)、(b)、(c)は、接合部材(ウェブ)1から脆性亀裂が発生・伝播するケースを想定している。
【0059】
なお、図4では、被接合部材(フランジ)2は、厚鋼板(母材のみ)(図4(a))、突合せ溶接継手22を有する厚鋼板(図4(b)、(c))とし、接合部材(ウェブ)1は、厚鋼板(母材のみ)(図4(a)、(b))、突合せ溶接継手12を有する厚鋼板(図4(c))とした。図5では、接合部材(ウェブ)1は、厚鋼板(母材のみ)(図5(a))、突合せ溶接継手12を有する厚鋼板(図5(b)、(c))とし、被接合部材(フランジ)2は、厚鋼板(母材のみ)(図5(a)、(b))、または突合せ溶接継手22を有する厚鋼板(図5(c))とした。
【0060】
なお、作製した大型溶接構造継手9における隅肉溶接継手では、板継ダブラー部材10と被接合部材2との重ね合わせ面に、図1(a)に示すような非溶着部4を形成した。なお、非溶着部4では、表1に示すように、板継ダブラー部材10の板厚td、隅肉溶接部の脚長または溶着幅Lを変化させて、非溶着部比率Y:B/td×100(%)が、95%以上になるように調整した。また、板継ダブラー部材10では、表1に示すように板厚tdおよび高さWhを変化させ、Wh/tdを変化させた。なお、板継ダブラー部材10は、供用温度である−10℃での、圧延方向(亀裂伝播方向に垂直)における脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)−10が6000〜15000N/mm3/2である厚鋼板(板厚:60〜150mm)を素材として、該素材から、素材板厚を部材板厚tdとし、幅方向に種々の部材高さWhとなるように、加工したものを使用した。
【0061】
また、板継ダブラー部材10と接合部材1とは、板厚方向が一致するように、端部同士を突き合わせ溶接接合した。また、板継ダブラー部材10と接合部材(ウェブ)1との突合せ溶接接合は、炭酸ガス溶接により、非溶着部を生成しない完全溶込み溶接または部分溶込み溶接とした。
【0062】
なお、被接合部材(フランジ)2における突合せ溶接継手22は、表1に示すように1パス大入熱エレクトロガスアーク溶接(1電極および2電極EGW)または多層CO溶接(多層CO)により作製した。接合部材(ウェブ)1における突合せ溶接継手12は、表1に示すようにエレクトロガスアーク溶接(1電極および2電極EGW)または多層CO溶接(多層CO)により作製した。また、板継ダブラー部材10と被接合部材2との隅肉溶接継手は、炭酸ガスアーク溶接により、溶接材料および溶接入熱、シールドガス等の溶接条件を変化させて、表1に示すように、種々の靭性、種々の脚長もしくは溶着幅の隅肉溶接金属を有する隅肉溶接継手とした。なお、表1に示す溶接金属の脚長、溶着幅は、左右両側の平均値である。
【0063】
なお、隅肉溶接金属の靭性は、隅肉溶接金属もしくは隅肉溶接と同じ条件で作製した突合せ溶接継手からシャルピー衝撃試験片(10mm厚)を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠して破面遷移温度vTrs(℃)を求めた。
【0064】
得られた大型隅肉溶接継手9を用いて、図4および図5に示す超大型構造モデル試験体を作製し、脆性亀裂伝播停止試験を実施した。なお、図4図5の超大型構造モデル試験体は、大型隅肉溶接継手9の被接合部材(フランジ)2または接合部材(ウェブ)1の下方に仮付け溶接8で、被接合部材(フランジ)2または接合部材(ウェブ)1と同じ板厚の鋼板を溶接した。そして、機械ノッチ7の先端を突合せ溶接継手部22または突合せ溶接継手部12のBOND部、または溶接金属WMとなるように加工した。
【0065】
また、脆性亀裂伝播停止試験では、機械ノッチ7に打撃を与え脆性亀裂を発生させ、伝播した脆性亀裂が、停止するか伝播するかを調査した。いずれの試験も、応力100〜283N/mm、温度:−10℃の条件で実施した。応力100N/mmは、船体に定常的に作用する応力の平均的な値であり、応力257N/mmは、船体に適用されている降伏強度390N/mm級鋼板の最大許容応力相当の値、応力283N/mmは、船体に適用されている降伏強度460N/mm級鋼板の最大許容応力相当の値である。温度−10℃は船舶の設計温度である。
【0066】
得られた結果を表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
本発明例はいずれも、脆性亀裂が被接合部材(フランジ)もしくは接合部材(フランジ)から伝播し、板継ダブラー部材あるいは隅肉溶接部の隅肉溶接金属に突入して停止した。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、脆性亀裂が、板継ダブラー部材あるいは隅肉溶接部の隅肉溶接金属で停止することなく伝播し、脆性亀裂の伝播を阻止することができなかった。
(実施例2)
表3に示す板厚の厚鋼板を、接合部材(ウェブ)1および被接合部材(フランジ)2とし、接合部材(ウェブ)1と被接合部材(フランジ)2との突合せ部分に、表3に示す板厚td、高さWhを有する板継ダブラー部材10を備え、実施例1と同様に、図4(a)、(b)、(c)および図5(a)、(b)、(c)に示す形状の、実構造サイズの大型溶接構造継手9を作製した。被接合部材として、供用温度である−10℃での、圧延方向(亀裂伝播方向に垂直)における脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)が、表3に示すように、2000〜9000N/mm3/2である厚鋼板(板厚:50〜70mm)を用いた。
【0072】
なお、作製した大型溶接構造継手9における隅肉溶接継手では、板継ダブラー部材10と被接合部材2との重ね合わせ面に、図1(a)に示すような非溶着部4を形成した。なお、非溶着部4では、表3に示すように、板継ダブラー部材10の板厚td、隅肉溶接部の脚長または溶着幅Lを変化させて、非溶着部比率Y(%)(=(非溶着幅B)/(板継ダブラー部材の板厚td)×100)を95%未満になるように調整した。なお、板継ダブラー部材10は、供用温度である−10℃での、圧延方向(亀裂伝播方向に垂直)における脆性亀裂伝播停止靭性(Kca)が6000〜18000N/mm3/2である厚鋼板(板厚:60〜150mm)を素材として、該素材から、素材板厚を部材板厚tdとし、幅方向に種々の部材高さWhとなるように、加工したものを使用した。
【0073】
また、板継ダブラー部材10と接合部材1とは、板厚方向が一致するように、端部同士を突き合わせて溶接接合した。また、板継ダブラー部材10と接合部材(ウェブ)1との突合せ溶接接合は、炭酸ガス溶接により、非溶着部を生成しない完全溶込み溶接または部分溶込み溶接とした。
【0074】
なお、被接合部材(フランジ)2における突合せ溶接継手22は、表3に示すように1パス大入熱エレクトロガスアーク溶接(1電極および2電極EGW)または多層CO溶接(多層CO)により作製した。また、接合部材(ウェブ)1における突合せ溶接継手12は、表3に示すようにエレクトロガスアーク溶接(1電極および2電極EGW)または多層CO溶接(多層CO)により作製した。板継ダブラー部材10と被接合部材2との隅肉溶接継手は、炭酸ガスアーク溶接により、溶接材料および溶接入熱、シールドガス等の溶接条件を変化させて、表3に示すように、種々の靭性、種々の脚長もしくは溶着幅の隅肉溶接金属を有する隅肉溶接継手とした。なお、表3に示す溶接金属の脚長、溶着幅は、左右両側の平均値である。
【0075】
なお、隅肉溶接金属の靭性は、隅肉溶接金属もしくは隅肉溶接と同じ条件で作製した突合せ溶接継手からシャルピー衝撃試験片(10mm厚)を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠して破面遷移温度vTrs(℃)を求めた。
【0076】
得られた大型隅肉溶接継手9を用いて、実施例1と同様に、図4および図5に示す超大型構造モデル試験体を作製し、脆性亀裂伝播停止試験を実施した。なお、図4図5の超大型構造モデル試験体は、大型隅肉溶接継手9の被接合部材(フランジ)2または接合部材(ウェブ)1の下方に仮付け溶接8で、被接合部材(フランジ)2または接合部材と同じ板厚の鋼板を溶接した。そして、機械ノッチ7の先端を突合せ溶接継手部22または12のBOND部、または溶接金属WMとなるように加工した。
【0077】
また、脆性亀裂伝播停止試験では、機械ノッチ7に打撃を与え脆性亀裂を発生させ、伝播した脆性亀裂が、停止するかあるいは伝播するかを調査した。いずれの試験も、応力100〜283N/mm、温度:−10℃の条件で実施した。
【0078】
得られた結果を表4に示す。
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
【表7】
【0082】
【表8】
【0083】
本発明例はいずれも、脆性亀裂が被接合部材(フランジ)もしくは接合部材(フランジ)から伝播し、板継ダブラー部材あるいは被接合部材に突入して停止した。一方、本発明の範囲を外れる比較例では、脆性亀裂が、停止することなく伝播し、脆性亀裂の伝播を阻止することができなかった。
【符号の説明】
【0084】
1 接合部材(ウェブ)
2 被接合部材(フランジ)
3 脚長
4 非溶着部
5 隅肉溶接金属
7 機械ノッチ
8 仮付け溶接
9 大型隅肉溶接継手
10 板継ダブラー部材
12 接合部材(ウェブ)の突合せ溶接継手部
13 溶着幅
22 被接合部材(フランジ)の突合せ溶接継手部
θ 交差角
図1
図2
図3
図4
図5