特許第6720134号(P6720134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720134
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】浚渫用機械のための歯およびアダプタ
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/28 20060101AFI20200629BHJP
【FI】
   E02F9/28 A
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-501207(P2017-501207)
(86)(22)【出願日】2015年7月10日
(65)【公表番号】特表2017-523327(P2017-523327A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】EP2015065875
(87)【国際公開番号】WO2016005581
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2018年5月23日
(31)【優先権主張番号】14382271.6
(32)【優先日】2014年7月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516325039
【氏名又は名称】メタロヘニア リサーチ アンド テクノロジーズ エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】トリヒナー ボイケセダ,ホルへ
(72)【発明者】
【氏名】チュート,ホアン
(72)【発明者】
【氏名】アルヴァレス ポーテラ,エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】ブルファウ ギノバルト,ジョルディ
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−501760(JP,A)
【文献】 特表2007−521429(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/149344(WO,A1)
【文献】 米国特許第03349508(US,A)
【文献】 特開昭55−002154(JP,A)
【文献】 米国特許第02689419(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浚渫用機械におけるカッターヘッドのアームにアダプタ(20)によって取り付けられるための、前損耗部(11)と後結合部(12)とを備える歯(10)であり、
前記後結合部(12)はさらに、後自由端(16)と前方端(19)と側突出部(14)と上セグメント(1230)と下セグメント(1220)とを備える主体を備え、
前記主体は、第1上面(123)と、第1下面(122)と、前記第1上面(123)と前記第1下面(122)との間を接続する2つの側面(121)と、を備え、
前記第1上面(123)と前記第1下面(122)との間の距離は、前記後自由端(16)に向って減少し、
前記主体の各側面(121)は、第2下面(142)に平行な第2上面(141)を備える側突出部(14)を備え、
各側突出部(14)の前記第2上面(141)は、前記第1下面(122)上の前記後自由端に隣り合う下セグメント(1220)に略平行であり、
前記側突出部(14)の前記第2下面(142)は、前記第1上面(123)上の前記後自由端に隣り合う上セグメント(1230)に略平行であり、
前記側突出部の前記第2上面と前記第2下面との間の距離は、前記主体の前記上セグメントと前記下セグメントとの間の距離よりも、小さいことを特徴とする歯。
【請求項2】
前記第2上面は、前記第1上面の延長であることを特徴とする請求項1に記載の歯。
【請求項3】
さらに、前記前損耗部と前記後結合部との間で、両部を拘束する位置を決める、前記主体を囲むストッパーを備え、
前記ストッパーは、2つのV形状側面を備え、
前記V形状側面の間の距離は、前記側突出部の間の距離よりも、大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の歯。
【請求項4】
記主体は、中心に、前記後結合部の断面を増やす上リブを備え、
前記上リブは、前記第1上面の前記上セグメントと前記前損耗部との間に延設されていることを特徴とする請求項1に記載の歯。
【請求項5】
浚渫用機械におけるカッターヘッドのアームに歯を取り付けられるための、後結合端(200)と前結合端(210)とを備えるアダプタ(20)であり、
前記前結合端(210)はさらに、底端(26)と開放端(210)と側溝(24)と上セグメント(2230)と下セグメント(2220)とを備える主空洞(29)を備え、
前記主空洞(29)は、第1上面(223)と、第1下面(222)と、前記第1上面(223)と前記第1下面(222)との間を接続する2つの側面(221)と、を備え、
前記第1上面(223)と前記第1下面(222)との間の距離は、前記底端(26)に向って減少し、
前記主空洞(29)の各側面(221)は、第2下面(241)に平行な第2上面(242)を備える側溝(24)を備え、
各側溝(24)の前記第2上面(242)は、前記第1下面(222)上の前記底端に隣り合う下セグメント(2220)に略平行であり、
前記側溝(24)の前記第2下面(241)は、前記第1上面(223)上の前記底端に隣り合う上セグメント(2230)に略平行であり、
前記側溝の前記第2上面と前記第2下面との間の距離は、前記主空洞の前記上セグメントと前記下セグメントとの間の距離よりも、小さいことを特徴とするアダプタと、
請求項1〜4の何れか1項に記載の歯と、
前記歯と前記アダプタとの間の結合を確保する保持システムと、を備えることを特徴とする浚渫機に接続されるための歯とアダプタとのアセンブリ
【請求項6】
前記アダプタは、前記第2上面、前記主空洞の前記第1上面よりも、同一レベルであることを特徴とする請求項5に記載のアセンブリ
【請求項7】
前記アダプタは、前記主空洞の側壁、V形状の側面を備えることを特徴とする請求項5または6に記載のアセンブリ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔発明の目的〕
本発明は、浚渫用機械のための歯およびアダプタに関し、歯、すなわちアダプタに取り付けられる摩耗部材に関する。本発明は、歯の先に影響を与える全ての力に対して安定化されたアセンブリを創出する。本発明の歯およびアダプタの目的は、海底を浚渫したり、港湾や河川や水路などの底を深くしたり、底を掃除したり、底から泥や石や砂などを除去したりすることであり、該アダプタは、浚渫用機械のカッターヘッドの腕に取り付けられる。
【0002】
浚渫用機械、すなわち浚渫機は、様々な地形でカット部材(歯またはアダプタ)を用いて、水面下にある物質を掘削、移送、および堆積することができる。
【0003】
本発明に係る歯およびアダプタは、好ましくは、水面下の地形を掘削すると同時に、バラバラにした物質をポンプで吸引し、パイプを通じて別の処へ移送するタイプの吸引カッターヘッドを有する浚渫用機械に用いられることを目的とする。
【背景技術】
【0004】
〔本技術分野の現況〕
歯およびアダプタのシステムは、浚渫作業における応用に関して本技術分野の現況(the state of the art)で知られている。この作業の主たる目的は、マリーナまたは河川の底から物質を除去することであり、除去には通常、アダプタを介して様々な歯が配置されているカッターヘッドを備えるカッター吸引浚渫機が用いられる。
【0005】
前述のように、水面下の土を浚渫するために、カッター吸引浚渫機は用いられる。カッター吸引浚渫機は、カッターヘッドが装備された固定浚渫機であり、カッターヘッドが土を掘削し、その後、その土は浚渫ポンプによって吸い上げられる。
【0006】
このようなカッター吸引浚渫機は、スパッドポール(spud pole)と呼ばれる手段によって、地盤にしっかりと固定(anchor)される。浚渫中に発生する反作用の強い力は、スパッドポールを通じて、地盤に吸収および伝達される。カッターヘッドは、梯子(ladder)を通じてカッター吸引浚渫機に搭載されている。周知の吸引浚渫機において、梯子は、カッターヘッドとカッター吸引浚渫機との間に多少の固定接続を形成する。水面下の土の浚渫のために、梯子があるカッターヘッドと吸引パイプとは、カッターヘッドが水底または最大深度に達するまで、通常斜め方向の水面下に下げられている。スパッドポールの周りの浚渫機の運動は、多少の土の円経路を形成するように、右舷アンカーケーブルを緩めて左舷側にアンカーケーブルを引っ張るか、またはその逆をすることによって、開始される。これらアンカーケーブルは、カッターヘッドの近くの滑車を介して、甲板上の巻揚機(浚渫側巻揚機)に接続されている。巻揚機を繰り出すことによって、両ケーブルの張力を確実に是正することができ、これは、硬岩の浚渫時に殊更重要である。
【0007】
カッターヘッドは、比較的遅く(一般的な回転速度の毎分20〜40回転)回転するので、その結果、土は、大きな力で浚渫用歯によって、断片に砕かれる。毎回、吸引浚渫機を所与の距離に動かし、上述の梯子運動を繰り返すことによって、全区域の土を浚渫することができる。
【0008】
カッター吸引浚渫機は、もちろん組み込まれているカッター動力次第ではあるが、ほぼ全タイプの土に対処できる。重カッター吸引浚渫機の限界は、約80MPaの圧縮強度の岩であろうが、もしも岩が風化されて多くのクロックが入っていれば、それよりも少し行ける可能性がある。
【0009】
カッターヘッドは、地盤を突き刺し引き裂く摩耗要素と共に設けられる。これら摩耗要素は、カッターヘッドのアームに固定されたアダプタに接続された歯である。この歯は、前記アダプタに、取り外し可能なように接続されている。
【0010】
カッターヘッドは、回転運動で作業するので、歯は、地盤を引き裂いて弓なりの経路を形成する。歯が地盤を突き刺し始める方向次第で、様々なカットが得られる。歯が地盤の表面区域を突き刺し始め、地盤の下方を引き裂く場合、オーバカッティング(over-cutting)が得られる。対して、歯が地盤の内側から引き裂き始め、地盤の表面区域まで上方に引き裂く場合、アンダーカッティング(under-cutting)が得られる。
【0011】
歯がオバーカッティングやアンダーカッティングで地盤を引き裂くとき、反作用の力が、歯の先に発生する。カッターヘッドからの反作用の力は全て、何らの方法で周囲に伝達されなければならず、側巻揚機またはスパッドポールによって土へ伝達されるか、あるいは、梯子ワイヤおよび平底船を介して水へ伝達される。その上、これらのカットの力は、浚渫機の重量を左右し、水を通じて浚渫機を動かす力は、浚渫用パーツの設計に影響することがある。
【0012】
カッターヘッドは、円筒形状を有することはめったになく、放物線形状の輪郭を有することが多い。この輪郭は、刃先によって形成される旋回表面を通る平面によって決められる。カッターヘッドは、歯が取り付けられているアームによって構成される。歯は通常、歯の中心線の投影が輪郭の法線になるように、位置付けられる。カッターヘッドの中心線から歯の先への仮想線が創出され、前記輪郭の法線である。
【0013】
活動的な歯の先には、地盤に直接接触する表面である作業表面と、作業表面の反対側にある反対表面と、作業表面と反対表面とを分離している法表面と、の3つの表面が設けられている。
【0014】
このため、3つの反作用の力が、以下のように歯の先に発生する。
・法線方向の力、すなわち、半径方向の力(F):カッターヘッドの中心線と歯の先との間の仮想線と同じ方向に、歯の法表面に加わる。
・接線方向の力(F):法線方向の力と直交し、歯の作業表面に加わる。この接線方向の力は、地盤に平行な方向である。
・側方向の力:主に、隣接カットの相互作用により生じる。
【0015】
オバーカッティング中、地盤の表面区域に突き刺し始めるときに、地盤の表面区画に歯が衝突すると、梯子は上向きに動こうとする。この衝突は、土が硬いときに大きく、厚い地層も硬くなる。
【0016】
水の状況も、浚渫の進展および製造割合の低下に影響する。波の種類によっては、船が動き始める。このため、波の鉛直運動のせいで、カッターヘッドが上下運動することがある。これは、地盤の方々で、カッターヘッドおよび全ての歯の望ましくない衝突(深すぎたり浅すぎたりするカットを引き起こす)を誘発する。
【0017】
さらに、硬い土の中で、カッティングの力は決定的要因であるので、梯子の構造およびスパッドに対する重負荷は、特に、浚渫作業を促進するために、追加される。
【0018】
オバーカッティングと水の状況と硬い土のためのカッターの過負荷によって、梯子の該望ましくない鉛直運動が発生するとき、カッター歯は、歯に重大な損傷を引き起こす悪い方向に、反対表面を超えてアダプタへとピンシステムへと負荷される。ある状況において、浚渫プロセスは、停止されなければならい。予期せぬ逆の力(F)は、カッター歯の反対表面に発生する。
【0019】
これら予期せぬ逆の力が作業中に発生するとき、最悪、硬い土壌での作業時、歯は、該力の歯の先での作用によって運動/回転する。また、結合が正確に安定化されておらず、歯とアダプタとの間の結合が不安定なとき、歯とアダプタとの接触表面の間で不釣り合いな運動が引き起こされる。この状況によって、システムの安定性が悪化するので、ピンが破損されることもある。システムが正確に安定化されていないという事は、歯からアダプタへの作用、したがって、アダプタからカッターヘッドへの作用は、不正確なように伝達されるということである。作用は、通常、歯とアダプタとの間の接触表面によって持ちこたえられるが、しかし、結合が安定化されておらず、表面の間の安定かつ一様な接触が得られていないとき、作用はピンにも伝達される。不安定性の帰結として、歯とアダプタとの間の運動は、増大し、したがって、その間の隙間も増大する。同時に、歯とアダプタとの間の接触表面での望ましくない摩耗も、悪化する。これは、歯とアダプタとの接触表面の間の反作用によって、逆の力が相殺されるからである。
【0020】
歯が逆の力の方向に運動しようとするとき、該運動を妨げるアダプタと歯とには接触表面が無いので、作用は、同歯を支持するピンに達することになる。ピンは、該作用を支持するようには設計されていないので、同歯は、通常、変形または破損する。もしも、同歯が変形するならば、交換しなければならないときに、ハウジングからピンを引き抜くのが難しいであろう。また、もしも、歯が破損するならば、歯が脱落することがあり、アダプタが衝撃と摩耗とによって傷つく。
【0021】
このため、歯とアダプタとの間の可能な接触の全てが釣り合うように、歯の損耗パーツの様々な箇所で影響する力の全てを相殺する接触表面を、歯とアダプタとが有することは重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本技術分野の現況には、浚渫用機械のための様々な歯があるが、しかし、実際には、ピンや歯やアダプタでさえ破損なしに、歯の先に影響する逆の力に効果的に、耐えることができるように構成されたものはない。
【0023】
最近接先行技術であるEP2058440は、後部結合パーツすなわちノーズとアダプタとを貫通する横断ピンの助けによって、アダプタに咬み合わせるためのノーズを有する歯を、記載している。歯とアダプタとの間の接触表面は、法線方向および接線方向の力に対して働いている間、安定化に寄与するが、しかし、接触表面の欠如によってアダプタの空洞の内側の歯の運動を引き起こすと上述で説明した逆の力に対しては寄与しない。これらの運動は、ピンへ作用を伝達し、その機能を保持機能から抵抗機能へと突如変更する。ピンは、過剰な力に耐えるようには設計されていないので、同ピンは、変形するか、または、受けた力次第では破損さえする。結果的に、上述の問題、主に、水面下での歯の喪失と、変形に起因するピンの苦心しない(hammerless)引き抜きの妨害と、の問題になる。図18中に、被引用先行技術文献に係る歯が逆の力を受けているときの、反作用の力を示す。図中で、反作用の力は、ノーズの上側表面の自由端に示し、別の反作用は、傾斜表面の下側に示す。襟の傾斜表面の下側での水平反作用(R)は、他の反作用によって相殺されず、歯がシステムから(排出されるように)外に行くようにするので、接触区画を作り、中でも、ピンは、前述のように過剰な力を受ける。ノーズの自由端の上側表面と歯の襟の傾斜表面の下側表面とは、アダプタと接触し、上述の反作用を引き起こすので、歯の先に加わる力(F)は、アダプタに対して歯を回転させる。前記反作用Rは、結合から歯を排出しようとするものであり、本発明が相殺するものである。
US3349508は、地面掘削用機材のための交換式歯に言及している。個の発明の特徴は、歯ホルダーが受け入れる歯の近位端の形状と、相補的な歯ホルダーの陥凹すなわち受け口の協調的形状と、である。断面において、ホルダーに受け入れられる歯の部分は、上面および下面と、ホルダーに受け入れられる歯の部分の後自由端に隣り合う下セグメントと、を備えるT形状である。
【0024】
US7694443B2およびWO2011149344には、浚渫作業のための、保持システムを通じてアダプタに固定された歯が記載されている。保持スステムは、歯およびアダプタを貫通せず、弾性手段を用いてアダプタに対して引っ張ることによって、ノーズの端を通じて歯を保持している。これらのシステムは、歯のノーズの自由端に、歯に牽引力を及ぼすために用いられる鉤を備える。この鉤は、歯の最も脆弱なパーツになるので、牽引の反作用は、歯とアダプタとの間で対峙されるので、この鉤は、破損される。牽引力を及ぼすことによって、歯とアダプタとが接触するように維持する保持システムにおける弾性手段は、接触表面の間に隙間が発生する弧をと防止できない。これらの隙間が発生したとき、システムはあまり安定化せず、歯およびアダプタは、その間の接触が良好でないので、互いに対して動くことができる。本出願に係る発明は、接触表面の間の安定化によって、隙間の形成を妨げる。
【0025】
スペイン特許文献番号ES−2077412−Aに記載されている非対称な歯およびアダプタのアセンブリは、2つの固定システムを用いる必要がある3パーツから成る。3パーツから成ることは、多数の予備パーツと3つの固定システムとを必要とするので、全体システムを複雑にする。3つの固定システムのうち、1つは、ハンマーを使う必要があるのに対して、残り2つは溶接によって形作られるので、交換作業が長く複雑になる。さらに、ピンは、歯のノーズの一方側でスロットに入れられるので、システムが非対称になり、そのため、システムは、歯の先に印加される力に対して、安定性が悪化し、具体的には、一方側のみに安定になる。歯のノーズの溝も、溝が在る位置でノーズの断面が小さくなるので、歯の抵抗性を悪化させる。
【0026】
本発明は、浚渫用機械に関する本技術分野の現況における既存の解決法の欠点を、特に以下のように、解決する。
・アダプタと歯との間の結合の安定性を向上して、逆の力の作用を防止する。歯とアダプタとの間の接触表面に沿った反作用の力の最適分布に寄与して、歯がアダプタに対して動かないように防止する。
・歯をアダプタから引き抜こうとするアセンブリに対する反作用の力を最小化、または除去する。
・アダプタとピンとを接続するピンを、前述の安定化によって、変形および破断から保護する。
・ピンが抵抗する作動力を減少させて、ピンに必要な材料を低減する。この材料の低減はピンの直径を低減するので、歯およびアダプタにおける該ピンを収納するための孔の直径も低減する。本解決法の歯およびアダプタにおける結合パーツは、本技術分野の現況のものよりも頑丈である。
【課題を解決するための手段】
【0027】
〔発明の説明〕
本発明に記載される歯は、前損耗部と、(i)鉛直なZY平面について対称であり(ii)本発明に係るアダプタの本体に設けられた空洞内に収納されるための後結合部と、を備える。アセンブリは、浚渫用機械のために、両部材から構成される。好ましくはハンマーレス手段によって、好ましくは鉛直型ロッキングシステムによって、両部は互いに取り付けられる。アダプタは、このような目的に適合する結合手段によって、空洞の反対側の端で、浚渫用機械のカッターヘッドのアームに取り付けられる。
【0028】
上述について、鉛直なZY平面は、Z軸とY軸とによって規定される。z軸は、歯の後結合部の本体とアダプタの空洞に沿う長手方向に延伸する。y軸は、z軸に直交し、鉛直方向に延伸する。x軸は、前述のz軸およびy軸に直交する。
【0029】
本発明の主たる目的は、浚渫作業中に歯先に発生する前述の逆の力を、(i)法線方向および接線方向の力に起因するその他の反作用の力と(ii)側方向のすなわち側方の力とに同時に、歯が最小化される位置で、支持するすなわち抵抗することである。
【0030】
本発明の第1目的は、カッター吸引浚渫機のカッターヘッドにアダプタによって結合可能な歯を設けることであり、これによって、完全に安定化された結合(逆の力に対する安定性を含む)が提供される。前記第1の目的は、請求項1に係る歯によって実現される。
【0031】
本発明の第2目的は、カッター吸引浚渫機のカッターヘッドに歯を結合可能なアダプタを設けることであり、これによって、完全に安定化された結合(逆の力に対する安定性を含む)が提供される。前記第2の目的は、請求項6に係るアダプタによって実現される。
【0032】
本発明の第3目的は、請求項1〜9に係る歯とアダプタとによって構成される、請求項10に係る結合システム、すなわち歯とアダプタとのアセンブリである。
【0033】
第1態様において、本発明は、カッター吸引浚渫機のカッターヘッドにアダプタによって結合されるための、(i)前損耗部と(ii)鉛直なZY平面について対称である後結合部とを備える歯に関する。前記後結合部は、(i)後自由端と(ii)前記前損耗部に拘束される前方端とを備える主体を備える。前記主体は、2つの側面によって接続されている第1上面と第1下面とを備える。前記第1上面の前記後自由端の近くに、前記後自由端から前記前方端に向ってある距離に延設されている上セグメントがある。前記上セグメントに略平行な下セグメントも、前記第1下面に設けられている。
【0034】
前記主体の各側面は、第2下面に平行な第2上面を備える側突出部を規定する。前記第2上面は、前記主体の第1下面上の前記下セグメントに略平行であり、前記第2下面は、第1上面上の前記上セグメントに略平行である。前記表面間の平行度は、前記歯の前記損耗部の先に影響する力を相殺するために、重要である。前記突出部が幅広であるほど、前記接触表面での前記反作用はより拮抗するが、しかし、この度合いは、前記歯と前記アダプタとの間の幾何学的結合次第である。
【0035】
前記突出部の前記第2上面と前記第2下面との間の距離は、前記主体の前記第1上面上の前記上セグメントと前記第1下面の前記下セグメントとの間の距離よりも、小さい。前記突出部の前記第2上面は、好ましくは、前記第1上面の延長であり、両表面は、同一レベルで1つの接触表面を構成する。あるいは、前記第1上面と前記第2表面は、異なる2つの接触表面に、したがって、異なるレベルで、合致してもよい。
【0036】
前記歯は、前記第1上面の中心に、前記後結合部の断面を増やす上リブを備える。前記上リブは、前記第1上面の前記上セグメントと前記前損耗部の端部との間に延設されている。具体的には、前記リブの始点は、前記ノーズの前記前方端の方向における前記上セグメントの端部であり、終点は、前記前損耗部を拘束する前記後結合部である。
【0037】
前記歯は、さらに、前記前損耗部と前記後結合部すなわちノーズとの間に配設され、両部を拘束する位置を決める前記第1主体を囲むストッパーを備える。前記ストッパーは、カラー(collar)または周突出部またはフランジとして、前記第1主体を囲み、2つのV形状側面を備える。前記V形状側面の間の距離は、前記側突出部の間の距離よりも、大きい。前記ストッパーの目的は、以下である。
・上側および下側のデフレクタ(deflector)によって、前記アダプタを損耗から保護する。前記逸らせ板は、バラバラにされた材料の流れの向きを変えるように設計されており、このような材料がアダプタに対して摩擦や衝突をしないように防止する、すなわち、その損耗を防止する。
・長期に亘る損耗後に、アダプタと接触する。前記アダプタは、厚いほど、前記アダプタと接触しているときにうけるより大きな圧力に抵抗できる。前記アダプタは、前記歯と前記アダプタとの間のさらなる接触区域を決める。
【0038】
前記ストッパーの長さに沿った厚みは、結合作業中に受ける圧力次第で、様々である。具体的には、前記ストッパーは、上側と下側とに最厚区域を備える。前記歯の前記結合部の前記突出部の前記第2上面と前記第2下面とは、前記ストッパーの前記V形状側面にであるまで、延設されている。
前記第2表面と前記V形状側面との間の前記ユニオン(union)は、前記上リブ区域の増加を規定する。さらに、前記ユニオンは、前記異なる表面の間の前記ユニオン補強するための曲面によって、成される。
【0039】
第2態様において、本発明は、カッターヘッドのアームにアダプタに歯を結合するすなわち取り付けるためのアダプタに関する。前記アダプタは、(i)前記カッターヘッドのアームに前記アダプタを取り付けるための後結合端と、(ii)鉛直なZY平面について対称であり、前記歯と結合する前結合端と、を備える。前記前結合端は、底端と開口端とを備える主空洞を備える。前記底端は、前記後結合端に拘束される。前記空洞は、2つの側壁を決める2つの側面によって接続されている第1上面と第1下面とを備える。前記アダプタの前記空洞の幾何学的構成は、両面の間の結合が可能なように、前記歯の前記ノーズの幾何学的構成に、相補的である。
【0040】
前記主空洞の各側面すなわち各側壁は、第2下面に略平行な第2上面を備える側溝を備える。前記第2上面は、前記主空洞の第1下面上の前記底端に隣り合う下セグメントに略平行であり、前記第2下面は、第1上面上の前記底端に隣り合う上セグメントに略平行である。前記上セグメントは、前記空洞の前記第1上面の一部であり、前記下セグメントは、前記空洞の前記第1下面の一部である。前記面の間の平行度は、前記歯の前記損耗部の先に影響する力を相殺するのと同時に発生する反作用の力のために、重要である。前記溝は、好ましくは、連続しており、このため、その表面に沿って中断されないので、前記第2面に沿う前記反作用の力の一様分布を得ることができる。
【0041】
前記溝の前記第2上面と前記第2下面との間の距離は、前記空洞の前記第1上面と前記第1下面との前記セグメントの間の距離よりも、小さい。前記溝の前記第2上面は、好ましくは、前記第1上面と同一レベルであるが、しかし、異なるレベルにあってもよい。
【0042】
前記空想の2つの前記側壁、具体的には、前記側壁の自由端は、前記歯の形状に連動して、V形状を備える。
【0043】
上述によれば、前記歯は、(i)前損耗部と(ii)アダプタに設けられた空洞内に収納されるための後結合部すなわちノーズとを規定する。前記歯と前記アダプタとは、結合されたとき、浚渫用機械のためのアセンブリすなわち結合システムを構成する。両部材は、好ましくはハンマーレスな、鉛直型保持システムによって、互いに取り付けられる。前記アダプタは、このような目的に適合する結合手段によって、前記空洞の反対側の端で、前記カット吸引浚渫機のカッターヘッドのアームに取り付けられる。
【0044】
したがって、上述のように、本発明の主たる目的である(好ましくは浚渫用機械に適用される)歯、アダプタ、および両部材から構成されるアセンブリは、歯とアダプタとの間の接触表面の安定性を高め最適化した結果、歯先に影響する力が、力の方向に無関係に、アダプタに伝達され、同時に、カッターヘッドのアームに伝達されることが可能になる。このため、作動力は、歯とアダプタとの間にあるアセンブリの接触表面から離れるように移動して、接触表面を作動力から解放すると共に、任意の部材の破断および緩和を可能な限り防止する。
【0045】
本発明のこの目的は、両部材の間の接触表面の特有の構造によって実現される。前記特有の構造の接触表面は、全ての力のうち、歯の先端すなわち歯先に発生する全ての力に抵抗するので、前述の逆の力に対して安定化される。
【0046】
前記安定性は、保持システムおよび歯が受ける圧力に抵抗および低減するのに好ましい圧力分布を可能にする接触表面の構成によって、実現される。安定性を向上するために、歯の後結合部とアダプタの前結合端とは、作動力の平衡分布を得るために、対称である。
【0047】
本発明に係るカット歯とアダプタとが備える接触表面と構造的特徴とによって、両部材の間の結合が性能(具体的には、各歯の能率)を増すことができ、このため、浚渫用機械の能率が向上される。
【0048】
よく安定化されたアセンブリによって、歯とアダプタとの間の接触表面の過度の損耗が防止されるので、アセンブリ使用中に、両部材の間の隙間が増えることも防止される。
【0049】
歯は、前損耗部と後結合部すなわちノーズとの2つの異なる部分から構成されている。前損耗部は、地盤に作用する部分であり、地形によって浸食を受ける。後結合部すなわちノーズは、このような目的のためにアダプタに設けられた空洞に挿入される部分であり、地形に対する歯の作業によって生じる反作用および圧力を受ける。後結合部すなわちノーズを構成する第1主体は、1つの自由端と、自由端の反対側にあると共に前損耗部に拘束される前方端と、を備える。主体が備える2つの側面は、各々、逆の力に抵抗する機能を備える側突出部を備える。
【0050】
アダプタも、後結合端と前結合端との2つの部分から構成されている。機械にアダプタを取り付けるための後結合端は、接続される浚渫用機械のカッターヘッドのアームの機種次第で様々な構成を備える。一方、反対側の端、前結合端は、歯の後結合部すなわちノーズを受けるための空洞を備える。歯を受けるためのアダプタの空洞の表面の内部構成は、歯のノーズの表面に相補的である。空洞の各側面も、歯の側突出部のための側溝を備える。このため、両部材の間の完璧な結合が確保される。歯とアダプタとの結合のために、両部は好ましくは、アダプタの上部から下部へ、歯のノーズを突っ切る孔すなわち貫通口を備える。
【0051】
用いられるピンは、好ましくは、回転面を備え、好ましくは、ハンマーレス保持システム(挿入したり取り出したりするために、木槌又は金槌で、打たなくてよいシステム)を備える。
【0052】
アダプタの空洞内に歯の後結合部すなわちノーズがあるアセンブリは、前述の接触表面を規定する平面の結合によって、可能である。歯とアダプタとの間の作動力に抵抗または鎮圧することは、カッター吸引浚渫機のカッターヘッドでの歯の作業状況において、力が歯の損耗先に印加されるときに、接触表面によって実現される。
【0053】
歯とアダプタとの表面の間の接触のこの安定化に起因して、ピンが受ける圧力は、従来のインターロッキングシステムにおけるよりも、小さい。なぜならば、対向表面に予期せぬ力を受けて、保持システムおよび歯/アダプタ接触表面に圧力が放出されるようなとき、歯‐アダプタシステムは、大きな圧力を吸収するからである。このため、このため、より小さい寸法および断面を備える保持システムのピンを設計することが、より小さい圧力を受けるので、できる。ピンの寸法、具体的には直径を小さくすることによって、ピンの収納部に連絡するより小さい孔(より小さい直径)を備える歯およびアダプタの設計が可能になる。このため、歯のノーズとアダプタとは、より頑丈になることができる。
【0054】
上述によれば、重要なことに、歯およびアダプタにおける第1および第2の上面および下面が、接触表面を代表する安定化平面であることは、重視される。安定化平面は、歯先に発生する引き裂く力(具体的には、法線方向、接線方向、および逆の力)を安定化する機能を果たす。上記表面の目的は、アダプタから歯を離そうとする反作用を無効にすることである。(i)歯とアダプタとの間の接触表面に印加される(ii)アダプタから歯を引き抜こうとする逆の力の水平方向の反作用を無効化することは、必要である。引き抜く反作用を防止するために、接触表面における反作用の力は、該力と同じ方向でなければならず、この目的を実現する多ために、略平行な第1および第2の上面および下面が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
〔図面の詳細な説明〕
本明細書を補完するために、ならびに、本発明の特徴の理解を深める一助とするために、本明細書の不可欠な要素として、好ましい実施形態に係る、特徴を非限定的に図示する下記図面一式が添えられる。
図1図1は、結合前の、歯およびアダプタの斜視図である。
図2図2は、結合前の、歯およびアダプタの側面図である。
図3図3は、歯の斜視図である。
図4図4は、歯の平面図である。
図5図5は、歯の側面図である。
図6図6は、歯の前面図である。
図7図7は、歯の別の側面図である。
図8a図8aは、図7の歯のA−A矢視断面図である。
図8b図8bは、図7の歯のB−B矢視断面図である。
図8c図8cは、図7の歯のC−C矢視断面図である。
図9図9は、アダプタの斜視図である。
図10図10は、アダプタの平面図である。
図11図11は、図10のアダプタのB−B矢視断面図である。
図12図12は、結合後の、歯およびアダプタの側面図である。
図13a図13aは、図12のアセンブリのA−A矢視断面図である。
図13b図13bは、図12のアセンブリのB−B矢視断面図である。
図13c図13cは、図12のアセンブリのC−C矢視断面図である。
図14図14は、結合後の、歯およびアダプタの平面図である。
図15図15は、図14のアセンブリのA−A矢視断面図である。
図16図16は、図14のアセンブリのB−B矢視断面図である。
図17図17は、所定のカッター回転方向の歯の動作中にアセンブリが受けるかもしれない力(法線方向の力FN,正の接線方向の力FT)を示す、結合後の歯およびアダプタの図である。
図18図18は、負の接線方向の力(−FT)および該力の歯に対する反作用を受ける従来技術の歯を示す。正の接線方向の力(FT)の歯に対する反作用も示される。
図19図19は、負の接線方向の力(−FT)および該力の歯に対する反作用を受ける歯を示す。正の接線方向の力(FT)の歯に対する反作用も示される。
【発明を実施するための形態】
【0056】
〔好ましい実施形態の説明〕
図1および図2に示されるように、本出願に係る浚渫用の歯およびアダプタは、交換歯10、浚渫用機械のカッターヘッド(不図示)のアームに結合されるアダプタ20、および歯とアダプタとの間の接続を確実にすることを担う保持部材30から構成される。該保持部材すなわちピン30は、孔23を通ってアダプタ20内に入り、孔13を通って歯内に入る。ピン30は、歯10およびアダプタ20を貫通し、収納部に配置される。
【0057】
図3から図8に示されるように、歯10は、(i)地盤および石と接触して、地形を引き裂く作業を担う前損耗部11すなわち歯先と、(ii)アダプタ12の空洞29内に収納されるための後結合部すなわちノーズ12と、を備える。
【0058】
歯10の後結合部12は、後自由端16と前方端とを備え、前方端19は、歯10の前損耗部11に拘束されている。後結合部12は、第1上面123、第1下面122、および上面123および下面122を結合する2つの側面121を備える。第1上面123は、第1上面123上にセグメント1230を備え、第1下面122は、第1下面122上にセグメント1220を備え、セグメント1230とセグメント1220とは、互いに略平行である。略平行なセグメント1230,1220は、第1上面123上の上セグメント1230および第1下面122上の下セグメント1220は、後結合部12の自由端16に隣り合う配置が好ましい。
【0059】
歯10のノーズすなわち後結合部12は、主体と、該主体の上面123の中心にある上リブ15と、から構成される。上リブ15は、ピン30のための孔13が貫通するノーズ12すなわち後結合部12の断面積を増やすと共に、より多くの作動力が抵抗しなければならない歯の一部である。上リブ15は、(i)後結合部12の主体の上面123からの先と(ii)前損耗部11を後結合部12が拘束する箇所との間に延設されている。前損耗部11と後結合部12との間の分離は、2つの傾斜面U,Dによって決められている。2つの傾斜面U,Dは、両面間に90°未満の角度を成すので、V形状を決める。Vの角は、歯10の前損耗部11の先を向くように、後結合部すなわちノーズ12の自由端16の反対側を向くように、配置されている。
【0060】
なお、x,yおよびz軸の前述の定義によれば、傾斜面UおよびDは、x軸上で互いに交差している。
【0061】
前述したように、歯10のノーズ12の上リブ15が有する形状は、前方端19に向って、ノーズ12の断面積を増やすので、好ましくは、上リブ15の長さ方向の断面は、三角形状または台形状になる。リブ15は、歯10のノーズ12の全長に沿って伸びなくてもよく、短めでもよい。リブ15は、ノーズ12の第1主体の第1上面123よりも、細くても、幅が小さかったり同じであったりしてもよく、該主体12に対して中心にあってもよい。リブ15の高さは、ノーズ12の自由端16の近くで、好ましくは、自由端に隣り合う上セグメント1230が始まるときで、0であり、その高さは、歯の損耗部11に達するまで徐々に増える。
【0062】
主体12の両側面121に、連続側突出部14が配設されている。突出部14は、互いに略平行である第2上面141と第2下面142とを有する。これら突出部14の目的は、逆の力を受けているときの結合後の歯とアダプタとの間の結合の完全な安定性を最適化の補助である。これら突出部14が有する第2上面141は、主体12の第1下面122の下セグメント1220に略平行であり、第2下面142は、主体12の第1上面の上セグメント1230に略平行である。突出部14の第2上面141と第2下面142との間の厚さすなわち距離は、主体12の第1上面123の上セグメント1230と主体12の第1下面122の下セグメント1220との間の距離よりも、小さい。
【0063】
突出部14の第2上面141は、好ましくは、主体12の第1上面123の延長として配設される。すなわち、突出部14の第2上面141と主体12の第1上面123とは、同一レベルに配設される。あるいは、突出部14の上面141が主体12の上面123と一致する代わりに、第2下面142が主体12の下面122と一致してもよく、下面も上面も一致しなくてもよい。下面も上面も一致しない場合、側突出部14は、主体12の第1上面123と第1下面122との間に配設される。
【0064】
本明細書において、略平行という用語が用いられるとき、言及される線,平面または表面は、正確に平行と理解されるべきではなく、その間に0°から8°のずれがあると理解されるべきである。このずれは、線,平面または表面の間を正確に平行にすることを妨げる構成上または製造上の制限に主に起因するものである。
【0065】
歯は、好ましくは、(i)カラー(collar)形状,フランジ(flange)形状または周突出形状を有すると共に、(ii)前損耗部11と後結合部12とが拘束する歯10の周に配設されるストッパーを備える。ストッパーが歯10の両側に有する2つのV形状側面は、それぞれ、前述の平面UおよびDの傾斜に一致する上部17および下部18を有する。ストッパーのV型側面17,18の間の幅は、好ましくは、突出部14の側面の間の距離よりも大きい。また、ストッパーの上側面と下側面との間の高さすなわち距離は、主体12の上リブ15の上面と主体12の下面122との間の最大距離と一致する。カラーの厚さまたは幅は、カラーが囲む歯の箇所次第で、該箇所が受ける応力次第で、様々である。
【0066】
図8aは、ノーズ12のセグメント(1220o1230)における歯10の断面図であり、図8bは、ピン30のための孔13における歯10の断面図であり、図8cは、ノーズ12の側面121上の側突出部12を示す歯10の断面図である。
【0067】
アダプタ20は、図9から図11に示されるように、後結合端200を有する体から構成されている。後結合端200は、一端で、浚渫用機械のカッターヘッドのアームに取り付けられ、反対の他端に、挿入される歯10の後結合部すなわちノーズ12を受け入れるための空洞29を有する開口端210を備える。アダプタ20の空洞29の内面は、歯10の後結合部すなわちノーズ12の表面に相補的である。換言すると、空洞29は、開口端210、後結合端200に拘束されると共に開口端210の反対側である底端26、第1下面222、第1上面223、および上面と下面22とを接続する2つの側面221から構成されている。空洞29の開放端210の形状は、アダプタ20の側方壁すなわち側壁に属する2つの側面221の形状によって、規定される。アダプタ20は、上部27と下部28とを有するV形状を有する。このV形状は、2つの傾斜平面UおよびDと一致する。
【0068】
前述のように、空洞29の内面は、歯10の後結合部すなわちノーズ12の表面に相補的である。
【0069】
空洞29の側面221はそれぞれ、空洞29の開放端210から空洞29の第1セグメント2220,2230の近くへ延設されている溝24を備える。溝24の第2上面242は、空洞29の第1下面222の第1セグメント2220と平行であり、溝24の第2下面241は、空洞29の第1上面223の第1セグメント2230と平行である。溝24の第2上面242と第2下面との間の距離は、空洞29の第1上セグメント2230と第1下セグメント2220との間の距離よりも、小さい。溝24の第2上面242は、好ましくは、空洞29の第1上面223の延長である。あるいは、溝24は、側面221の何れのレベルに配設されてもよい。
【0070】
図12から図16に示されるように、歯10の後結合部すなわちノーズ12をアダプタ20の空洞29に挿入することによって、歯10およびアダプタ20は、一体に結合される。ノーズ12と空洞29との異なる相補的表面は、互いに接触する。
【0071】
図13aから図13cは、歯10の後結合部すなわちノーズ12とアダプタ20の空洞29とに沿う異なる接触表面の釣り合いを示す。図13aは、上面141および下面142を有する突出部14と、上面242および下面241を有する溝24との間の結合を見ることができる断面を示す。
【0072】
図13bは、ピンが両部材を貫通するアセンブリの断面を示す。
【0073】
図13cは、歯10のノーズ12の第1上面123および第1下面123の第1セグメント1230,1220が、アダプタ20の空洞29の第1上面223および第1下面222の第1セグメント2230,2220と平行であるノーズ12の自由端16近くの断面を示す。ノーズ12の側面121は、空洞29の側面221に平行である。
【0074】
図15および図16は、本発明に係る歯10およびアダプタ20の間の結合の長さ方向の異なる断面を示す。具体的には、両部材の間の異なる接触面が見られ、図16に示されるように、突出部14の第2上面141は、歯のノーズ12の第1上面123の第1セグメント1230と同一レベルにある。同じことは、溝の相補的表面および空洞29の上面223のセグメント2230でも起こる。
【0075】
アダプタ20が、一旦、吸引カット浚渫機のカッターヘッドのアームに、その後結合端200によって取り付けられると、歯10は、上記目的のために好ましくはハンマーレス保持部材30を用いて、アダプタに結合されている。ハンマーレス保持部材30は、すなわち、ハウジング(この目的では、歯およびアダプタを意味する)から取り出したりハウジングに挿入したりするために、木槌や金槌の動作が不要な部材である。保持システムは、好ましくは、(i)歯およびアダプタの上部を通って挿入されたり取り出されたりするときや、(ii)孔13,23をそれぞれ通って、歯10の後結合部すなわちノーズ12およびアダプタ20を貫通するとき、鉛直である。
【0076】
アセンブリが、一旦、前述のように結合すると、作業運転中、歯10は歯先に異なる力を受ける。該力によって、直交成分を有する反作用の力が、以下のように歯先に発生する。
・法線方向の力、すなわち、半径方向の力:カッターヘッドの中心線と歯の先との間の仮想線と同じ方向に、法表面に加わる。
・接線方向の力:法線方向の力と直交し、歯の作業表面に加わる。地盤に平行。
・側方向の力:主に、隣接カットの相互作用により生じる。
【0077】
後述するように、歯およびアダプタは、法線方向および接線方向の力に抵抗可能に安定化されるように用意される。先行技術の解決法における予期せぬ逆の力によって、アセンブリの構成要素の一部は、運動か、または破断さえする。このため、アセンブリが、可能な反作用の力の全てに対して完全に安定的ではないことが示される。
【0078】
歯およびアダプタが、一旦、結合されると、アセンブリは、カッターヘッド上で作業のために用意される。歯先が接線方向の力を受けるとき、反作用が発生する表面は、歯の下面およびノーズの主体の上面の(主体の前方端19近くの)第1セグメントである。歯とアダプタとの間のこれら接触表面によって、接線方向の力は、(i)作動力に抵抗するため、および(ii)アセンブリの要点における歪みおよびピンにおける歪みを低減するために相殺される。
【0079】
しかしながら、予期せぬ逆の力が発生するとき、通常、硬い土壌での作業のとき、該力を相殺することは必要であり、反作用は、歯のノーズの上面および突出部の下面の第1セグメントに伝達される(図19)。
【0080】
両部材の中央付近に配設された歯の突出部(およびアダプタの溝)に起因して、結合が抵抗すべき最大作動力は、該結合の中性点に位置する。
図1-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9-10】
図11
図12
図13a
図13b
図13c
図14
図15
図16
図17
図18
図19