【文献】
ARYAN, Z. et al.,Int Arch Allergy Immunol,2014年 5月21日,Vol.164,p.46-63
【文献】
FLUGEL, A. et al.,Eur J Immunol,2001年,Vol.31,p.11-22
【文献】
O'BRIEN, K. et al.,J Neuroimmunol,2010年,Vol.221,p.107-11
【文献】
GNJATIC, S. et al.,Cancer J,2010年,Vol.16,p.382-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書における用語「p75
NTR」は、低親和性神経成長因子受容体(LNGFR、p75ニューロトロフィン受容体、TNFRSF16(TNFRスーパーファミリー、メンバー16)、Gp80-LNGFR、p75、p75ICD、メンバー16、CD271、又はNGF受容体とも呼ばれる)を指す。「p75
NTR」はニューロトロフィン、すなわち神経細胞の生存及び分化を刺激するタンパク質成長因子のファミリーの2つの受容体型のうちの1つである。本明細書で使用される「p75
NTR」は、哺乳類細胞で通常に発現されるp75
NTRタンパク質を包含するが、その全てのスプライスバリアントも含むものとする。p75
NTRのスプライスバリアントは、「選択的スプライシング」、すなわち複数のタンパク質をコードする単一の遺伝子をもたらす遺伝子発現の間の調節されたプロセスによって形成することができる。この選択的スプライシングのプロセスの間に、遺伝子の特定のエキソンがその遺伝子から生産される最終的にプロセシングされたメッセンジャーRNA(mRNA)に含まれ得るか、又は該mRNAから除外され得る。その結果、選択的スプライシングを受けたmRNAから翻訳されたタンパク質は、それらのアミノ酸配列、及びしばしば、それらの構造において差異を含むこととなる。好ましくは、本発明に従って、p75
NTRタンパク質は配列番号4の核酸配列(遺伝子ID 4804; NCBI参照配列NM_002507.3)を有する遺伝子によりコードされる。最も好ましくは、本明細書で使用されるp75
NTRタンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列(Swiss-Prot受託番号P08138.1)を有する。
【0028】
「活性化」、「刺激」、及び「処理」は、細胞又は受容体に適用する場合、そうでないことが文脈により、又は明らかに示されない限り、例えば、リガンド、アゴニスト、又はアンタゴニストによる細胞又は受容体の活性化、刺激、又は処理と同じ意味を有し得る。
【0029】
「活性化」とは、内部機構により、並びに外部因子又は環境因子により調節されるような細胞の活性化を指すことができる。
【0030】
「リガンド」は、天然及び合成の(人工の)リガンド、例えばサイトカイン、サイトカインバリアント、類似体、変異タンパク質、及び抗体に由来する結合組成物を包含する。また、「リガンド」は低分子、例えばサイトカインのペプチド模倣物、抗体のペプチド模倣物、核酸、及び核酸模倣物を包含する。
【0031】
「アゴニスト」は、受容体に結合し、該受容体を活性化させて生物学的反応を引き起こす化学薬剤又はリガンドである。アゴニストが作用を引き起こすのに対し、アンタゴニストは該アゴニストの作用を遮断し、かつインバースアゴニストは該アゴニストの作用と逆の作用を引き起こす。
【0032】
「p75
NTRアゴニスト」はp75
NTRと結合し、これを活性化させる化学薬剤又はリガンドである。
【0033】
「TLR7アゴニスト」は、Toll様受容体7と結合し、これを活性化させる化学薬剤又はリガンドである。
【0034】
「TLR9アゴニスト」は、Toll様受容体9と結合し、これを活性化させる化学薬剤又はリガンドである。
【0035】
「アンタゴニスト」は、受容体への結合に際してアゴニストが仲介する反応を遮断するリガンドである。「アンタゴニスト」の結合は相互作用を途絶させ、受容体における「アゴニスト」の機能を阻害する。「アンタゴニスト」は受容体上の活性部位、若しくはアロステリック部位に結合することにより、その作用を仲介し、又は「アンタゴニスト」は、受容体の活動の生物学的調節に通常は関与しない特有の結合部位で、相互作用し得る。「アンタゴニスト活性」は、可逆的でも不可逆的でもあり得る。薬物アンタゴニストの大部分は、構造的に定義された受容体の結合部位で、内因のリガンド又は基質と競合することにより、その効力を達成する。
【0036】
「p75
NTRアンタゴニスト」はp75NTRアゴニストとの相互作用を途絶させ、p75
NTRアゴニストの機能を阻害し、又はp75NTRが仲介するシグナル伝達を阻害する化学薬剤又はリガンドである。
【0037】
例えば、細胞、組織、器官、又は生物の「反応」は、生化学的又は生理的挙動、例えば、生物学的区画内での濃度、密度、接着、若しくは遊走、遺伝子発現の速度、タンパク質翻訳、活性化若しくは阻害(例えば、リン酸化)、又は分化状況の変化を包含し、ここで、該変化は活性化、刺激、若しくは処理と、又は遺伝的プログラミングのような内部機構と相関する。
【0038】
分子の「活性」は、該分子のリガンド若しくは受容体への結合、触媒活性;遺伝子発現又は細胞のシグナル伝達、分化、若しくは成熟を刺激する能力;抗原性活性、他の分子の活性の調節などを説明し、又はこれらを指すことができる。また、分子の「活性」は、細胞間相互作用、例えば接着を調節し、若しくは維持する活性、又は細胞の構造、例えば細胞膜若しくは細胞骨格を維持する活性をも指すことができる。
【0039】
「増殖活性」は、例えば正常な細胞分裂、並びに癌、腫瘍、形成異常、細胞癌化、転移、及び血管新生を促進し、これらに必要とされ、又はこれらと具体的に関連付けられる活性を包含する。
【0040】
「投与」及び「処置」は、ヒト対象、研究対象、獣医学的対象、動物、又は細胞の処置に適用する場合、医薬上、治療上、診断上の薬剤若しくは組成物、又は偽薬を、ヒト対象、動物、又は細胞と接触させることを指す。細胞の処置は、試薬の該細胞への接触、並びに試薬の該細胞と接触する流体への接触を包含する。
【0041】
また、「投与」及び「処置」は、エクスビボ処置、例えば細胞、組織、又は器官をエクスビボで処置し、続いて該細胞、組織、又は器官を対象又は動物と接触させることをも包含する。ここで、薬剤又は組成物は、該エクスビボ処置の間又は後に代謝され、変化し、分解され、又は除去されている。
【0042】
「候補化合物」又は「試験化合物」は、例えば分子、分子の複合体、又は分子の混合物を指し、ここで該候補化合物は、治療薬剤又は診断薬剤の開発又は特定において使用される。候補化合物の試験又はスクリーニングを使用して、該化合物が治療薬又は診断薬として有用となり得るかどうか決定される。「候補化合物」は、第二の治療薬若しくは診断薬、又は担体、希釈剤、安定化剤、若しくは賦形剤とともに、例えばポリペプチド、抗体、天然生産物、合成化学物質、有機化合物、無機化合物、核酸、及びこれらの組合わせを包含する。
【0043】
「障害」又は「疾患」は、病理的状態、又は病理的状態と相関する、若しくは病理的状態の素因になる状態を指す。特に、「障害」又は「疾患」は、生きている動物又はヒトの体又はその一部の正常な状態における、その生命機能の遂行能力を中断させ、又は変化させる障害であり、それは、典型的に徴候及び症状がはっきりと区別されることにより顕出し、また環境因子(栄養不良、公害、又は気候)、特定の感染性病原体(蠕虫、細菌、又はウイルス)、生物の固有の欠陥(遺伝的異常、又は免疫系の機能性の悪化)、又はこれらの因子の組合わせへの反応である。
【0044】
「感染性障害」又は「感染症」は、例えば微生物、細菌、寄生生物、病原性真菌、ウイルスなどに起因する障害、並びに該障害への不適切な、無効な、又は病理的な免疫反応を指す。
【0045】
「腫瘍形成性障害」は、癌、癌化細胞、腫瘍、形成異常、血管新生、腫瘍転移など、並びに該障害への不適切な、無効な、又は病理的な免疫反応を包含する。
【0046】
「有効量」は、例えば障害、状態、若しくは病理的状態の症状若しくは徴候を改善するのに十分なp75
NTRアゴニスト、アンタゴニスト、又は結合化合物若しくは組成物の量を意味する。
【0047】
「発現」は、特定の遺伝子にコードされたmRNA又はポリペプチドの規準を指す。発現の単位は、例えば細胞若しくは組織、又は細胞抽出物若しくは組織抽出物中のタンパク質1 mg当たりのmRNA又はポリペプチド分子の数の規準とすることができる。発現の単位は相対的なものとすることができ、例えば対照及び実験哺乳動物からのシグナルの比較、又はmRNA又はポリペプチドに特異的な試薬によるシグナルと、非特異的な試薬によるシグナルの比較とすることができる。
【0048】
「炎症性障害」又は「炎症性疾患」は、病理が全体的に、又は部分的に、免疫系の細胞、例えばT細胞、B細胞、単球若しくはマクロファージ、肺胞マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、NKT細胞、好中球、好酸球、又はマスト細胞の数の増加及び/又は活性化の増加に起因する、障害又は病理的状態を意味する。
【0049】
「免疫障害」又は「免疫疾患」は、免疫系の機能不全である。これらの障害は、免疫系の構成要素が冒されるために、又は免疫系が過剰に活動し、又は活動低下するために発症する。さらに、これらの障害は先天的でも後天的でもあり得る。
【0050】
「免疫療法」は、免疫反応を誘導し、増強し、抑制することによる疾患の治療を意味する。免疫反応を引き出し、又は増幅させるように設計された免疫療法は、活性化免疫療法として分類され、一方免疫反応を低下させ、又は抑制する免疫療法は、抑制免疫療法として分類される。
【0051】
「ノックアウト(KO)」は、遺伝子、例えばp75
NTR遺伝子によりコードされたポリペプチドの少なくとも一部分の発現を部分的に、又は完全に低下させることを指し、ここで、該遺伝子は哺乳動物のような動物の単一の細胞、選択された細胞、又は全ての細胞において内因性である。また、KOは生物学的機能が低下する実施態様を包含するが、発現が必ずしも低下しない実施態様、例えば挿入された不活性化するペプチド、オリゴペプチド、又はポリペプチドを含む、発現されたp75
NTRポリペプチドを含む、p75
NTRポリペプチドも包含する。コード配列又は調節配列における途絶は、ノックアウト技術に包含される。細胞又は哺乳動物を「ヘテロ接合ノックアウト」とすることができ、ここでは内因の遺伝子の一方の対立遺伝子が途絶されている。あるいは、細胞又は哺乳動物を「ホモ接合ノックアウト」とすることができ、ここでは内因の遺伝子の両方の対立遺伝子が途絶されている。「ホモ接合ノックアウト」は、両方の対立遺伝子の途絶を同一の技術又はゲノム上での同一の結果に制限することを意図するものではない。本発明の範囲に含まれるのは、一方又は両方のp75
NTR対立遺伝子がノックアウトされた哺乳動物である。好適には、一方又は両方のp75
NTR対立遺伝子がノックアウトされた前記哺乳動物は、マウス又はラットである。
【0052】
「ノックダウン(KD)」は、遺伝子、例えばp75
NTR遺伝子によってコードされたポリペプチドの少なくとも一部分の部分的な低下を指し、ここで該遺伝子は哺乳動物のような動物の細胞株、単一の細胞、選択された細胞、又は全ての細胞において内因性である。KDは、例えばsiRNA/shRNAの発現により達成される。
【0053】
「トランスジェニック」は、安定に遺伝される遺伝子操作技術によって生産される遺伝的変化を指す。トランスジェニック法、トランスジェニック細胞、及びトランスジェニック動物は、ノックアウト技術、ノックイン技術、又はトランスジェニックを生産するための任意の他の従来技術の使用に起因する遺伝的変化を含む。
【0054】
「マーカー」は、細胞、組織、器官、動物の表現形、例えば、マウス又はヒト対象の表現形に関する。細胞表面マーカーは、特定の細胞種、又はさらに限られた数の細胞種の細胞膜上に位置する分子を指す。細胞内マーカーは特定の細胞種、又はさらに限られた数の細胞種の細胞の内部に位置する分子を指す。マーカーは、細胞種の特定において通常に使用される。マーカーは、例えば細胞の精製、定量、遊走、活性化、成熟、又は発達の間に細胞を検出するために使用され、かつインビトロ及びインビボの研究の両方に対して使用することができる。活性化マーカーは、細胞の活性化に関連するマーカーである。
【0055】
「非ヒト動物」は、ヒト以外の全ての他の動物を指す。本発明による非ヒト動物は、好適には哺乳動物又はげっ歯類である。より好適には、本発明による非ヒト動物は、ラット、マウス、ウサギ、サル、モルモット、ネコ、又はイヌから選択される。最も好適には、本発明による非ヒト動物は、ラット又はマウスである。
【0056】
「感度」、例えば受容体のリガンドへの感度とは、該受容体へのリガンドの結合が、該受容体、又は該受容体と特異的に結合する事象若しくは分子の検出可能な変化、例えば立体構造変化、リン酸化、該受容体と結合するタンパク質の性質若しくは量をもたらし、あるいは該受容体により仲介され、又は該受容体と結合する遺伝子若しくはタンパク質の発現の変化をもたらすことを意味する。
【0057】
「可溶性受容体」は、水溶性であり、かつ例えば細胞外流体、細胞内流体中に存在し、又は膜と弱く結合する受容体を指す。可溶性受容体はさらに、水溶性となるように操作された受容体を指す。
【0058】
「結合の特異性」、「結合の選択性」などは、所定のリガンドと他のリガンドとを、又は所定の受容体と他の受容体とを、識別することを可能とする所定のリガンド及び所定の受容体の間の結合相互作用を指す。「特異的に」又は「選択的に」結合することとは、リガンド/受容体、抗体/抗原、又は他の結合対に言及する場合、不均質なタンパク質集団中でそのタンパク質の存在を決定づける結合反応を示唆する。従って、指定された条件下で、特定のリガンドは特定の受容体に結合し、試料中に存在する他のタンパク質とはほとんど結合しない。
【0059】
「初代細胞」は、ヒト又は動物体に直接的に由来する細胞である。
【0060】
「CpGオリゴデオキシヌクレオチド」(又はCpG ODN、短縮して「CpG」)は、シトシン三リン酸デオキシヌクレオチドとそれに続くグアニン三リン酸デオキシヌクレオチドを含む、短い一本鎖合成DNA分子である。
【0061】
「遺伝子」は、ポリペプチドのコード領域及び任意の調節配列、例えばプロモーター、オペレーター、エンハンサー、イントロン、スプライスアクセプター部位及びスプライスドナー部位、翻訳の開始シグナル及び終結シグナル、並びに転写の開始シグナル及び終結シグナルを包含する。コード領域は1つの連続したエキソンを含むことができ、又は2以上のエキソンを含むことができる。すなわち、コード領域は1以上のイントロンにより中断され得る。「遺伝子」は1以上のオープンリーディングフレーム(ORF)を包含することができる。
【0062】
「ワクチン」は、特定の疾患に対する免疫を向上させる生物学的調製物である。ワクチンは典型的には疾患を引き起こす微生物に類似した成分を含み、多くの場合該微生物、その毒素、又はその表面タンパク質の1つの不活性化形態から作製される。該成分は生体の免疫系を刺激して、該成分を異物として認識させ、それを破壊させ、将来の感染に向けそれを記憶させる。ワクチンは予防的(例えば、病原性微生物による将来の感染の作用を予防し、又は改善すること)にも治療的(例えば、癌に対するワクチン)にもすることができる。
【0063】
「アジュバント」は、他の薬剤の作用を修正する医薬上の及び/又は免疫学的な薬剤である。アジュバントは抗原に対する免疫反応を増強する、無機又は有機化学物質、高分子、又は特定の不活性化された病原性微生物の細胞全体である。アジュバントは対象において供給される抗原への免疫反応を増強するためにワクチンに含めることができ、それにより注入される異物の量を最小限にする。アジュバントは様々な方法で、例えばToll様受容体(TLR)シグナル伝達を活性化することにより、血液循環中の抗原の存在を延長することにより、抗原提示細胞による抗原の吸収を向上させることにより、マクロファージ及びリンパ球を活性化することにより、及び/又はサイトカインの生産を増強することにより、抗原に対する免疫反応を増強することができる。
【0064】
(本発明の好ましい実施態様)
(1. 医薬組成物)
本発明はp75
NTRシグナル伝達のアゴニスト、又はp75
NTRシグナル伝達のアンタゴニスト、及び樹状細胞、好ましくはPDCの活性化因子から選択される、少なくとも1つの化合物の組合わせを提供する。
【0065】
本発明は、p75
NTRシグナル伝達のアゴニスト、又はp75
NTRシグナル伝達のアンタゴニスト、及び樹状細胞、好ましくはPDCの活性化因子、及び少なくとも1つの医薬として許容し得る担体又は賦形剤から選択される、前記少なくとも1つの化合物の組合わせを含む医薬組成物を、さらに提供する。
【0066】
前記組合わせを含む医薬組成物は、好ましくはワクチン組成物である。
【0067】
前記樹状細胞、好ましくはPDCの活性化因子は、好ましくはTLR受容体アゴニストであり、最も好ましくはTLR7又はTLR9について選択されるアゴニストである。
【0068】
p75
NTRシグナル伝達のアゴニスト、又はp75
NTRシグナル伝達のアンタゴニスト、及び樹状細胞、好ましくはPDCの活性化因子から選択される少なくとも1つの化合物の組合わせ、並びに前記組合わせを含む医薬組成物は、免疫療法、例えば癌及び感染症の治療における使用に特に適している。より好ましくは、前記組合わせ又は前記組合わせを含む医薬組成物は、アレルギー性疾患又はアレルギー脱感作の治療における使用に適する。さらに好ましくは、前記組合わせ又は前記組合わせを含む医薬組成物は、自己免疫性疾患、慢性炎症性疾患、GvHDの治療における使用、又は移植片の機能不全を回避するための移植後の使用に適当である。
【0069】
さらに好ましい実施態様において、p75
NTRシグナル伝達のアンタゴニスト又はアゴニストを使用して、これに限定はされないが、移植片対白血病効果(GvL)を含む状態を誘導することができる。GvL又は移植片対腫瘍効果(GvT)は、移植片対宿主病の有益な態様である。GvLは主にゆっくりと進行する疾患、例えば慢性白血病、低悪性度リンパ腫、及び一部の事例では多発性骨髄腫において有益である。
【0070】
本発明のこの態様における使用に適当な医薬組成物には、疾患の1つに関する意図された目的を達成するのに有効な量の活性成分を含む組成物がある。治療上有効な用量の決定は、当業者の能力の範囲内で十分になされ、最初は細胞培養アッセイ、例えば新生物細胞のアッセイ、又は動物モデル、通常はマウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル、又はブタにおいて評価することができる。また、動物モデルは適当な濃度範囲及び投与経路を決定するために使用することができる。続いて、一般にこの情報を使用して、人における有用な用量及び投与経路が決定される。
【0071】
治療上有効な用量とは、疾患の特定の症状又は状態を改善する活性成分、例えばp75
NTRに対する抗体、又はp75
NTRのアゴニスト、アンタゴニスト若しくは阻害剤の量を指す。例えば、投与される量は、p75
NTRの活性を阻害するのに有効となり得る。治療効果及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準的な医薬上の手順により、例えばED50統計量(集団の50%において治療上有効となる用量)又はLD50統計量(集団の50%が死に致る用量)の計算により、同様に決定することができる。毒性の治療効果に対する用量比は治療指数であり、この比はLD50/ED50比として表すことができる。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイ及び動物試験から取得されるデータを、ヒトに使用する投薬量範囲の処方において使用する。そのような組成物に含まれる投薬量は、毒性がほとんどないか全くないED50を含む循環濃度の範囲内であるのが好ましい。投薬量は、利用される投薬形態、患者の感受性、及び投与経路に応じてこの範囲内で変化する。
【0072】
正確な投与方法は通常、治療を要求する対象に関する因子に照らして医療従事者により決定されるものとし、投薬方法及び投与は十分なレベルの活性部分を提供し、又は所望の効果を維持するように調整される。考慮されるべき因子には、疾患状況の重篤度、全般的な対象の健康状態、対象の年齢、体重、及び性別、食事、投与の時間と頻度、薬物の組合わせ(複数可)、反応の感受性、及び治療への忍容性/奏効がある。長く作用する医薬組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス速度に応じて3〜4日ごとに、毎週、又は2週間ごとに1回の頻度ですら、投与され得る。
【0073】
好ましい実施態様において、本発明はp75
NTRシグナル伝達に関する、好ましくは免疫疾患の疾患又は病理的状態を治療するための方法であって、それを必要とする対象に、医薬として有効な量のp75
NTRアゴニスト又はp75
NTRアンタゴニスト、又はこれらを含む医薬組成物を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0074】
同様に、本発明はそのような治療方法における、p75
NTRアゴニスト又はp75
NTRアンタゴニストの使用、又はこれらを含む医薬組成物の使用を提供する。
【0075】
さらに、p75
NTRアゴニスト若しくはp75
NTRアンタゴニスト、又はこれらを含む医薬組成物は、p75
NTRシグナル伝達に関する疾患又は病理的状態の治療における使用のために提供される。
【0076】
さらなる好ましい実施態様において、p75
NTRシグナル伝達に関する疾患又は病理的状態は、中枢性及び末梢性神経変性疾患、老人性認知症、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、ダウン症候群、プリオン病、健忘症、統合失調症、鬱、双極性障害、筋委縮性側索硬化症、多発性硬化症、心血管病態、虚血後心損傷、心筋症、心筋梗塞、心不全、心虚血、脳梗塞、末梢神経障害、視神経及び/又は網膜の損傷、網膜色素変性、緑内症、網膜虚血、黄斑変性症、脊髄外傷、頭部外傷、アテローム性動脈硬化、狭窄、創傷治癒の障害、脱毛症、あらゆる種類の癌、あらゆる種類の腫瘍、あらゆる種類の腫瘍転移、あらゆる種類の白血病、呼吸障害、肺炎症、アレルギー、アナフィラキシー、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患、皮膚の疼痛、体性痛、内臓痛、神経痛、慢性神経障害性疼痛、炎症痛、自己免疫性疾患、リウマチ性関節炎(多発性関節炎、少関節炎)、強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis)、膠原病、全身性エリテマトーデス(SLE)、シャープ症候群、シェーグレン症候群、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、進行性全身性硬化症、脊椎関節炎(強直性脊椎炎(Morbus Bechterew)、反応性関節炎、腸炎性関節炎、乾癬性関節炎、未分化型脊椎関節炎)、リウマチ熱、アイカルディ・グティエール症候群、脈管炎、ウェゲナー肉芽腫症、腎炎、卒中、潰瘍性大腸炎、クローン病、ウィップル病、強皮症、スティル病(Stills disease)、気管支肺異形成症(BPD)、細気管支炎、RSV関連細気管支炎、糖尿病、線維筋痛症候群、セリアック病、橋本病、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、アジソン病、移植片対宿主病 (GVHD)、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性溶血性貧血、ロフグレン症候群、ベーチェット病、ネフローゼ症候群、ブドウ膜炎、乾癬性関節炎、乾癬(尋常性乾癬、濃疱性乾癬)、骨折、骨疾患、骨粗鬆症、及び全ての細菌、真菌、ウイルス感染性疾患、さらに真核寄生生物による感染からなる群から選択される。
【0077】
さらに好ましい実施態様において、本発明は対象におけるp75
NTRシグナル伝達に関する疾患又は病理的状態に対する治療の有効性をモニタリングする方法であって:
・該対象から2以上の機会に採取される試料中のT細胞の活性化、例えばT細胞のサイトカイン発現、T細胞の増殖、抗原特異的T細胞クローンの誘導、細胞傷害性T細胞の誘導、及び/又は制御性T細胞の誘導を測定する工程;並びに
・該対象から採取された試料中のT細胞サイトカイン、増殖したT細胞、抗原特異的T細胞クローン、細胞傷害性T細胞及び/又は制御性T細胞の誘導のレベルを、治療の開始前に該対象から採取された試料中に存在するレベル、及び/又は治療のより早期段階で該対象から採取された試料中に存在するレベルと比較する工程、を含む、前記方法を提供する。
【0078】
試料は、対象の余命にわたって、又はその一部にわたって、間隔を置いて採取することができる。すなわち、治療の有効性をモニタリングするための生物学的試料は、2以上の機会に採取することができる。好適には、診断又はモニタリングを受ける対象からの試料の採取の間に経過する時間は、3日、5日、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6又は12ヶ月とする。試料は、抗増殖性疾患治療、例えば化学療法の前、及び/又は間、及び/又は後に採取することができる。好ましい実施態様において、モニタリング法は、2以上の機会に採取された試料におけるT細胞サイトカインの量、増殖したT細胞、抗原特異的T細胞クローン、細胞傷害性T細胞及び/又は制御性T細胞の誘導の変化を検出することを含む。
【0079】
DC、最も好ましくはPDC上のp75
NTRは、免疫反応の調節におけるマスタースイッチとして機能するようである。免疫反応の調節は、ワクチン用アジュバントの主要な機能である。従って、p75
NTRのアゴニスト及びアンタゴニストは、新規アジュバントのための手段を提供する。
【0080】
PDC、最も好ましくはTLR7又はTLR9が活性化されたPDC上のp75
NTRの活性化は、Th2免疫反応を強く誘導する。従って、アゴニストはTh2依存的なワクチンにおける免疫反応をブーストさせ得る。対象となる免疫反応はアルミニウム塩と同様であるが、局所的炎症を誘導することなく働く。p75
NTRアゴニストを使用して、現在のワクチン用アジュバントと置き換えることができ、又は組合わせて使用することでさらにワクチン反応をブーストすることができる。
【0081】
このように、さらなる実施態様において、本発明はp75
NTRシグナル伝達の調節因子、すなわちp75
NTRシグナル伝達のアゴニスト又はアンタゴニストを含むワクチン組成物に関する。好ましくは、p75
NTRシグナル伝達はp75
NTRを発現する樹状細胞、最も好ましくはp75
NTRを発現するPDCにおいて調節される。
【0082】
好ましい実施態様において、本発明は免疫反応を調節するためのp75
NTRアゴニストを含むワクチン組成物の使用であって、これらに限定はされないが、Th2免疫反応の刺激、Th1免疫反応の抑制、Th17免疫反応の抑制、制御性T細胞により誘導される寛容性の抑制などを含む、前記使用を提供する。
【0083】
本発明のワクチン組成物における使用に好ましいp75
NTRアゴニストはNGF、BDNF、NT-3、NT-4、NT-5などを含む群から選択される。
【0084】
本発明のワクチン組成物における使用に適当な、さらに好ましいp75
NTRアゴニストは、活性化抗体、例えば抗p75
NTR抗体MC192(Kimpinskiらの文献、Neurosci 1999, 93:253-263)、活性化ペプチド、及び活性化低分子(例えば、LM11A-24カフェイン又はLM11A-31イソロイシン、LM11A-36を含むがこれらに限定されないLM11A及び誘導体化合物)から選択されるか、又は核酸によりコードされる。
【0085】
さらに好ましい実施態様において、本発明はワクチン組成物の使用であって、Th2免疫反応の抑制、Th1免疫反応の刺激、Th17免疫反応の刺激、制御性T細胞により誘導される寛容性の抑制などを含むがこれらに限定はされない、免疫反応の調節のためのp75
NTRアンタゴニストを含む、前記使用を提供する。
【0086】
本発明のワクチン組成物における使用のための好ましいp75
NTRアンタゴニストは、プロNGF、プロBDNF、プロNT-3、プロNT-4、プロNT-5などを含む群から選択される。
【0087】
本発明のワクチン組成物における使用に適当なさらに好ましいp75
NTRアンタゴニストは、遮断抗体(抗ヒトp75
NTRモノクローナル抗体クローン:ME20.4、ME24.1、MLR-1、MLR2、MLR3、HB-8737、NGFR5、並びにこれらの誘導体及びヒト化型;抗マウスp75
NTRモノクローナル抗体:REX、AB1554;ニューロトロフィンのp75
NTRへの結合を妨げる抗体:MAb 911、MAb 912、及びMAb 938、並びにMAb 911のヒト化型であるタネズマブ、PG110、REGN475、フルラヌマブ、MEDI-578を含むこれらの誘導体及びヒト化型)、遮断ペプチド(PEP5、tat-PEP5、C30-35;)、遮断タンパク質(ニューロトロフィンのp75
NTRへの結合を妨げるタンパク質:p75
NTRの細胞外ドメイン)、並びに低分子阻害剤(2-オキソ-アルキル-1-ピペラジン-2-オンの誘導体;ニューロトロフィンのp75
NTRへの結合を妨げる低分子:PD 90780、ALE-0540、Ro 08-2750、Y1036)から選択されるか、又は核酸、例えばshRNA、siRNA、若しくはRNAiによりコードされる。
【0088】
好ましい遮断ペプチドは、TRAF6のp75
NTRの細胞内ドメインへの結合を特異的に阻害する(p75
NTRの細胞内ドメインに由来するタンパク質モチーフ
【化1】
へのペプチドの結合を含むTRAF6と、p75
NTRとの相互作用を遮断するペプチド、及び
【化2】
を含む、TRAF6デコイペプチド。)。
【0089】
本発明のワクチン組成物は、例えばモノホスホリル脂質A(MPL)及びその合成誘導体、ムラミルジペプチド(MDP)及びその誘導体、オリゴデオキシヌクレオチド(例えばCpGなど)、二本鎖RNA(dsRNA)、別の病原体関連分子パターン(PAMP、例えば大腸菌(E. coli)熱不安定性エンテロトキシン(LT);フラジェリン)、サポニン(Quil、QS-21)、低分子免疫増強剤(SMIP、例えばレシキモド[R848])、サイトカイン、ケモカイン、及び結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来の抗原から選択される免疫刺激剤と組合わせた、p75
NTRシグナル伝達の調節因子をさらに含むことができる。
【0090】
本発明のワクチン組成物は、不溶性アルミニウム化合物、リン酸カルシウム、リポソーム、Virosomes(登録商標)、ISCOMS(登録商標)、ミクロ粒子(例えば、PLGA)、乳剤(例えば、MF59、モンタニド)、ウイルス様粒子、及びウイルスベクターと組合わせた、p75
NTRシグナル伝達の調節因子をさらに含むことができる。
【0091】
本発明のワクチン組成物は、単離樹状細胞、好ましくは単離PDC、最も好ましくはp75
NTRを発現する単離樹状細胞又はPDCをさらに含むことができる。好ましい実施態様において、単離樹状細胞は、対象へのワクチン組成物の投与の前に、少なくとも1つのp75
NTRシグナル伝達調節因子と共にエクスビボでインキュベートされる。
【0092】
本発明の好ましい実施態様において、少なくとも1つのp75
NTRアゴニストを使用して、前記単離樹状細胞、好ましくは単離PDCを前処理し、Th2免疫反応の刺激、Th1免疫反応の抑制、Th17免疫反応の抑制、及び制御性T細胞により誘導される寛容性の抑制を含むがこれらに限定はされない、免疫反応を調節する。
【0093】
本発明のさらに好ましい実施態様において、少なくとも1つのp75
NTRアンタゴニストを使用して前記単離樹状細胞、好ましくは単離PDCを前処理し、Th2免疫反応の抑制、Th1免疫反応の刺激、Th17免疫反応の刺激、及び制御性T細胞により誘導される寛容性の抑制を含むがこれらに限定はされない、免疫反応を調節する。
【0094】
アゴニスト又はアンタゴニストがshRNA又はsiRNAのような核酸によりコードされている場合、前記核酸は好ましくは樹状細胞に、好ましくはPDCに形質移入され、該樹状細胞における該アゴニスト又はアンタゴニストの過剰発現をもたらす。
【0095】
さらに好ましい実施態様において、ワクチン組成物はNGF、BDNF、NT-3、NT-4、NT-5を含む群から選択されるp75
NTRシグナル伝達のアゴニスト、又はプロNGF、プロBDNF、プロNT-3、プロNT-4、プロNT-5を含む群から選択されるp75
NTRシグナル伝達のアンタゴニストを含む。
【0096】
本発明のワクチンにおける使用、及び/又は本発明による治療法、好ましくは免疫療法における使用に適当なp75
NTRシグナル伝達のアンタゴニストの例は:
○抗ヒトp75
NTRモノクローナル抗体、例えばクローンME20.4、ME24.1、MLR-1、MLR2、MLR3、HB-8737、NGFR5、上記抗体の誘導体及びヒト化型;
○抗マウスp75
NTRモノクローナル抗体、例えばREX、AB1554;
○ペプチド又はペプチド誘導体、例えばPEP5、tat-PEP5、C30-35、p75
NTRの細胞内ドメインに由来するタンパク質モチーフ
【化3】
へのペプチドの結合を含むTRAF6と、p75
NTRとの相互作用を遮断するペプチド、及び
【化4】
を含む、TRAF6デコイペプチド;
○低分子、例えば2-オキソ-アルキル-l-ピペラジン-2-オンの誘導体、ナフタルイミドの誘導体;
○p75
NTRの発現又は下流のシグナル伝達を遮断するsiRNA、shRNA、モルホリノ;
○p75
NTRシグナル伝達を阻害するペプチド又はタンパク質をコードする核酸;
○NGF又はBDNFのp75
NTRへの結合を妨げるニューロトロフィンアンタゴニスト、例えば:
・抗体:MAb 911、MAb 912、及びMAb 938、並びにタネズマブ (MAb 911のヒト化型)、PG110、REGN475、フルラヌマブ、及びMEDI-578を含む上記抗体の誘導体及びヒト化型;
・タンパク質又はペプチド、例えばp75
NTR細胞外ドメイン;
・低分子、例えばPD 90780、ALE-0540、Ro 08-2750、及びY1036、
を含む群から選択される。
【0097】
本発明のワクチンにおける使用、及び/又は本発明による治療法、好ましくは免疫療法における使用に適当なTLR7及び/又はTLR9のアゴニストの例は:
○ ・TLR7アゴニスト、例えば一本鎖RNA、CL075、CL097、CL264、CL307、ガーディキモド、イミキモド、ロキソリビン、ポリ(dT)、及びR848;
・TLR9アゴニスト、例えば:
・CPG-ODNクラスA、例えばODN 1585、ODN 2216、ODN 2336;
・CPG-ODNクラスB、例えばODN BW006、ODN D-SL01 ODN 1668; ODN 1826、ODN 2006、ODN 2007;
・CPG-ODNクラスC、例えばODN D-SL03、ODN 2395、ODN M362;
を含むToll様受容体の特異的活性化因子;
○生又は弱毒ウイルス、細菌、寄生生物;
○ウイルス、細菌、又は寄生生物の抽出物、
を含む群から選択される。
【0098】
本発明のワクチンにおける使用、及び/又は本発明による治療法、好ましくは免疫療法における使用に適当なp75
NTRシグナル伝達のアゴニストの例は:
○ニューロトロフィン、例えばNGF、NGF-δ 9/13変異体、BDNF、NT-3、NT-4、NT-5、プロNGF、プロBDNF、プロNT-3、プロNT-4、プロNT-5;
○ニューロトロフィンに由来するペプチド、ペプチド模倣物、ペプトイド;
○低分子、例えばLM11A及びLM11A-24カフェイン又はLM11A-31イソロイシンを含むがこれらに限定はされない、誘導体化合物;
○p75
NTR、構成的に活性化したp75
NTR、又はそれらの断片をコードする核酸、
を含む群から選択される。
【0099】
(2. 細胞ベースのアッセイ)
本発明は神経成長因子受容体p75
NTRを発現する非ヒト動物、又はヒト又は動物初代細胞又は細胞株を含む細胞ベースのアッセイであって、前記細胞又は細胞株へのp75
NTRシグナル伝達の作動性又は拮抗性の作用が測定されることを特徴とする、前記アッセイを提供する。
【0100】
好ましい実施態様において、本発明は神経成長因子受容体p75
NTR、及び/又はTLR9、TLR7、TRAF3、及びTRAF6からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質、並びにMyD88、IRAK1〜4、IRF3、IRF7を含むがこれらに限定はされない、Toll様受容体経路のシグナル伝達分子を発現する非ヒト動物、又はヒト又は動物初代細胞又は細胞株を含む細胞ベースのアッセイであって、前記細胞又は細胞株へのp75
NTRシグナル伝達の作動性又は拮抗性の作用が測定される、前記アッセイを提供する。
【0101】
好適には、本発明のアッセイで使用される初代細胞は、PDCである。さらに好適には、本発明のアッセイに使用される細胞株はPDCに由来し、又はPDCの特性と類似している。好ましい実施態様において、本発明のアッセイにおいては非ヒト動物、トランスジェニックの細胞又は細胞株が存在し、これらはp75
NTR及び/又はToll様受容体TLR7及び/若しくはTLR9を過剰発現するように遺伝子操作され、又はsiRNA、shRNA、モルホリノ、若しくは改変されたゲノムDNAを用いてこれらの低下した発現を引き出すように操作されている。
【0102】
PDCはそれ自体の細胞集団を表し、特定の機能を有する。PDCは異なる細胞表面マーカー及びTLRファミリーの受容体により、従来の樹状細胞及び単球又はGM-CSFで処理された骨髄から分化した樹状細胞と、明白に、かつ間違えようがなく区別できる。ヒトPDCはBDCA-2、BDCA-4、CD45RA、及びCD123を発現する。マウスPDCはm-PDCA-1、CD45RA、Ly-6C、及びSiglec-Hを発現する。さらに、両種のPDCはToll様受容体TLR7及びTLR9を発現する。対照的に、従来のヒト樹状細胞(CDC)はBDCA-1及びBDCA-3を発現するが、BDCA-2及びBDCA-4を発現しない。さらに、CDCはTLR 2及びTLR4を発現するが、TLR7及びTLR9を発現しない。単球から分化した樹状細胞(moDC)はCD16、CD11c、CD11b、及びCD209(マウス)の発現を示すが、このことはPDCとは区別できる。さらに、moDCはTLR3及びTLR4を発現するが、TLR7及びTLR9を発現しない。
【0103】
PDCにおけるp75
NTRの発現及び活動は、疾患表現形の原因となる一方、他の種類の樹状細胞、例えばCDC及びmoDCは、該疾患表現形に関与しないことが、様々な炎症性疾患の動物モデルにおいて、示されている。
【0104】
さらに、p75
NTRのリガンドによって引き起こされる反応は、CDC及びmoDCと比較して、PDCにおいて異なっている。CDC及びmoDCは、Th1型のT細胞の活性化及び分極化を誘導するのに対し、PDCはTh2型のT細胞の活性化及び分極化を誘導する。後者は本明細書で初めて記述される。
【0105】
本発明は、p75
NTRシグナル伝達に作動性又は拮抗性作用を及ぼす物質のスクリーニング方法における細胞ベースのアッセイの使用をさらに提供する。
【0106】
さらなる実施態様において、本発明はp75
NTRシグナル伝達のアゴニスト及びアンタゴニストのスクリーニング方法を提供する。
【0107】
好ましい実施態様において、本発明はp75
NTRシグナル伝達のアゴニスト及びアンタゴニストをスクリーニングする方法であって:
・神経成長因子受容体p75
NTRを発現する、ヒト又は動物初代細胞又は細胞株を、試験物質と接触させる工程;
・接触させた前記ヒト又は動物初代細胞又は細胞株を、p75
NTRシグナル伝達をもたらすのに十分な期間にわたりインキュベートする工程;
・該初代細胞又は細胞株に対する、該試験物質の作用を決定する工程;
・接触させた該初代細胞又は細胞株における該試験物質の作用を、対照細胞における作用と比較する工程;及び
・p75
NTRシグナル伝達を作動させ、又は該シグナル伝達と拮抗する試験物質を選択する工程、
を含む、前記方法を提供する。
【0108】
好適には、該対照細胞又は細胞株は、初代細胞、最も好適にはPDCである。
【0109】
神経成長因子受容体p75
NTRを発現するヒト又は動物初代細胞又は細胞株を試験物質と接触させる工程は、好ましくは該試験物質とp75
NTRタンパク質との相互作用を可能とする条件下で実施される。さらに好ましくは、神経成長因子受容体p75
NTRを発現するヒト又は動物初代細胞又は細胞株を試験物質と接触させる工程は、該試験物質とp75
NTRタンパク質との相互作用、及び/又は該試験物質とp75
NTRシグナル伝達経路の上流又は下流の因子との相互作用を可能とする条件下で実施することができる。
【0110】
対照細胞は、好ましくは試験薬剤と接触させていない細胞又は細胞株である。
【0111】
より好ましくは、対照細胞はp75
NTRを発現しない、又は低下した量のp75
NTRを発現する細胞又は細胞株である。p75
NTRを発現しない、又は低下した量のp75
NTRを発現する前記対照細胞又は細胞株は、任意に該試験物質と接触させることができる。
【0112】
さらなる実施態様において、該初代細胞又は細胞株は、本発明のアッセイ及びスクリーニング方法におけるそれらの使用の前又は間に、前もって活性化される。該初代細胞及び細胞株の事前の活性化における使用に適当なのは、TLR7又はTLR9シグナル伝達のアゴニストである。TLR7又はTLR9シグナル伝達の好ましいアゴニストは、例えば一本鎖RNA、CPGオリゴデオキシヌクレオチド、イミキモド、レシキモド、ガーディキモド、ヌクレオシド類似体、ウイルス又は細菌調製物などである。TLR7のアゴニストのさらに適当な例は、TLR7アゴニスト:一本鎖RNA、CL075、CL097、CL264、CL307、ガーディキモド、イミキモド、ロキソリビン、ポリ(dT)、及びR848を含む。TLR9のアゴニストのさらに適当な例は、TLR9アゴニストであるCpG-ODNクラスA、例えばODN 1585、ODN 2216、ODN 2336; CpG-ODNクラスB、例えばODN BW006、ODN D-SL01 ODN 1668、ODN 1826、ODN 2006、ODN 2007、及びCpG-ODNクラスC、例えばODN D-SL03、ODN 2395、ODN M362を含む。
【0113】
本発明のアッセイ及び/又はスクリーニング方法において使用される試験物質は、天然のp75
NTRアゴニスト、例えば神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4(NT-4)、又はニューロトロフィン-5(NT-5)、又はこれらの組合わせとすることができる。
【0114】
また、本発明のアッセイ及び/又はスクリーニング方法において使用される試験物質は、天然のp75
NTRアゴニストの前駆物質、例えばプロNGF、プロBDNF、プロNT-3、プロNT-4、プロNT5、又はこれらの組合わせとすることができる。
【0115】
該方法は、天然のp75
NTRのリガンド、例えばp75
NTRアゴニスト又はp75
NTRアンタゴニストの存在下でも非存在下でも、実施することができる。該方法が天然のp75
NTRのリガンドの存在下で実施される場合、該方法は、好適には、該物質とp75
NTRタンパク質との相互作用、又は該試験物質と前記天然のp75
NTRのリガンドとの相互作用を可能とする条件下で実施される。
【0116】
本発明のアッセイ及び/又はスクリーニング方法におけるp75
NTRシグナル伝達に対する該試験物質の拮抗性又は作動性作用は、サイトカインの発現分析に基づいて測定することができる。本発明のアッセイ及び/又はスクリーニング方法における発現分析に適当なサイトカインは、例えばインターフェロンα(IFNα)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-13(IL-13)、及び他のサイトカインを含む。観察されるNGFの作用と同様に、アゴニストはTh1サイトカインIFNαの発現を阻害することが期待され、一方Th2サイトカインIL-4、IL-5、IL-6、IL-13、及びTNFαの発現は増加する。アンタゴニストはニューロトロフィンの記述された作動性作用を阻害することが期待され、ここで、該ニューロトロフィンは試験細胞による自己分泌生産に由来のものとすることもできるし、又は外部から補充されたものとすることもできる。アンタゴニストはIFNαの強い誘導及び炎症性Th2サイトカイン、例えばIL-4、IL-5、IL-6、IL-13、及びTNFαの抑制された、又は低下した発現によりサイトカイン生産をTh1プロファイルへと転じることが期待される。
【0117】
本発明のアッセイ及び/又はスクリーニング方法におけるp75
NTRシグナル伝達に対する該試験物質の拮抗性又は作動性作用は、細胞内シグナル伝達カスケード、例えばそのタンパク質を発現レベル、及びその活性化、例えばリン酸化について分析することに基づいてさらに測定することができる。本発明のアッセイ及び/又はスクリーニング方法における分析のための適当な細胞内シグナル伝達カスケードは、例えばこれらに限定はされないが、TNF受容体関連因子(TRAF)3及び6の活性化、NF-κB必須調節因子(NEMO)の活性化、IκBキナーゼ(IKK)の活性化、インターフェロン調節因子(IRF)3及び7の活性化、NF-κB(活性化B細胞の核因子「κ-軽鎖エンハンサー」)の活性化などを含む。観察されるNGFの作用と同様に、アゴニストはIRF3及びIRF7の活性化を阻害することが期待され、一方IKK及びNFκ(古典的及び非古典的経路)は活性化される。アンタゴニストはニューロトロフィンの記述された作動性作用を阻害するであろう。ここで、該ニューロトロフィンは試験細胞による自己分泌生産に由来のものとすることもできるし、又は外部から補充されたものとすることもできる。
【0118】
本発明のアッセイ及び/又はスクリーニング方法におけるp75
NTRシグナル伝達に対する該試験物質の拮抗性又は作動性作用は、表面マーカー及び細胞内マーカーの発現に基づいてさらに決定することができる。本発明のアッセイ及び/又はスクリーニング方法におけるヒト又はマウス細胞の発現分析に適当な表面マーカーは、例えば主要組織適合性複合体タンパク質クラスI(MHC-I)及び/又はクラスII(MHC-II)、CD80、CD83、CD86、血液樹状細胞抗原(BDCA)2及び4、インターロイキン-3受容体α(CD 123)、TLR7、TLR9などを含む。NGFについて観察された作用に基づけば、Th1反応を促進する環境において、アゴニストは細胞表面上のMHC分子の上方調節を阻害することが期待され、Th2反応を促進する環境においては、アゴニストはMHC分子の表面発現を増加させることが期待される。アンタゴニストはニューロトロフィンの記述された作動性作用を阻害するであろう。ここで、該ニューロトロフィンは試験細胞による自己分泌生産に由来のものとすることもできるし、又は外部から補充されたものとすることもできる。
【0119】
本発明のアッセイ及び/又はスクリーニング方法におけるp75
NTRシグナル伝達に対する該試験物質の拮抗性又は作動性作用は、外来抗原の取り込み、細胞内プロセシング、及び提示の測定に基づいてさらに決定することができる。本発明のアッセイ及び/又はスクリーニング方法における分析のために適当な外来抗原は、例えばCpGオリゴデオキシヌクレオチド、イミクオド(Imiquod)、オボアルブミン、ウイルス調製物、細菌調製物、人工ペプチド又はタンパク質精製物などを含む。アゴニストはPDCによる外来抗原の増加した取り込み、並びにMHC-I及び-II分子上でのエフェクター細胞への増加した抗原エピトープ提示をもたらし、その結果エフェクター細胞反応が強化される。アンタゴニストは低下した抗原取り込み及び抗原提示をもたらし、従ってエフェクター細胞反応を制限する。
【0120】
(3. T細胞とのコインキュベーション)
また、p75
NTRを発現し、本発明のアッセイ及び/又はスクリーニング方法において使用される初代細胞又は細胞株は、細胞性免疫反応において中心的役割を果たす他の細胞とコインキュベートすることができる。前記コインキュベーションにおける使用に好ましいのは、T細胞である。
【0121】
好ましい実施態様において、本発明はp75
NTRシグナル伝達のアゴニスト及びアンタゴニストのスクリーニング方法であって:
・T細胞とコインキュベートされた、神経成長因子受容体p75
NTRを発現する、ヒト又は動物初代細胞又は細胞株を、試験物質と接触させる工程;
・前記ヒト又は動物初代細胞又は細胞株、及び前記T細胞の前記接触させた共培養物を、p75
NTRシグナル伝達をもたらすのに十分な期間にわたりインキュベートする工程;
・該初代細胞又は細胞株、及び/又はT細胞に対する、該試験物質の作用を決定する工程;
・接触させた該初代細胞又は細胞株、及び/又はT細胞における該試験物質の作用を、対照細胞における作用と比較する工程;並びに
・p75
NTRシグナル伝達を作動させ、又は該シグナル伝達と拮抗する試験物質を選択する工程、を含む、前記方法を提供する。
【0122】
該方法は天然のp75
NTRのリガンド、例えばp75
NTRアゴニスト又はp75
NTRアンタゴニストの存在下、又は非存在下で実施することができる。該方法が天然のp75
NTRのリガンドの存在下で実施される場合、該方法は、好適には、該物質とp75
NTRタンパク質との相互作用、又は該試験物質と前記天然のp75
NTRのリガンドとの相互作用を可能とする条件下で実施される。
【0123】
神経成長因子受容体p75
NTRを発現するヒト又は動物初代細胞又は細胞株を試験物質と接触させる工程は、好ましくは該試験物質とp75
NTRタンパク質との相互作用を可能とする条件下で実施される。さらに好ましくは、神経成長因子受容体p75
NTRを発現するヒト又は動物初代細胞又は細胞株を試験物質と接触させる工程は、該試験物質とp75
NTRタンパク質との相互作用、及び/又は該試験物質とp75
NTRシグナル伝達経路の上流又は下流の因子との相互作用を可能とする条件下で実施することができる。
【0124】
対照細胞は、好ましくは試験薬剤と接触させていない細胞又は細胞株である。
【0125】
好ましい実施態様において、天然にはp75
NTRを発現しない対照細胞が使用される。これにより、p75
NTRシグナル伝達に対する該試験物質の作用を、直接的かつ明白に標的p75
NTRに帰することが可能となる。さらに、該試験物質の他の標的に対して可能性のある副作用を認識することができる。従って、特異性が高く、望ましくない副作用のないp75
NTRシグナル伝達の作動性又は拮抗性作用を示す試験薬剤を、スクリーニングし、さらなる開発のために選択することができる。
【0126】
さらなる実施態様において、p75
NTRがノックアウト又はノックダウンされたPDCは、対照細胞として使用される。同様に、対照細胞におけるp75
NTRのレベルは別途低下させることができる。本発明によるさらに適当なものは、p75
NTRの発現が低下した、又は阻害されたPDCの対照細胞としての使用である。
【0127】
天然にはp75
NTRを発現しないか、p75
NTRがノックアウト又はノックダウンされている前記対照細胞又は細胞株は、任意に該試験物質と接触させることができる。
【0128】
本発明のアッセイ及び/又はスクリーニング方法におけるp75
NTRシグナル伝達に対する該試験物質の拮抗性又は作動性作用は、単独で、又は先に記載のパラメータに追加してコインキュベートされたT細胞の刺激に基づいてさらに決定できる。T細胞の活性化は、好適にはT細胞サイトカイン、例えば例として、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、及び腫瘍壊死因子の発現; T細胞の増殖; 抗原特異的T細胞クローンの誘導、及び/又は制御性T細胞の誘導の決定によって検出できる。
【0129】
T細胞の増殖は、実施例4において本明細書に記載した通りに測定することができる。
【0130】
抗原特異的T細胞クローンの誘導は、その特定のサイトカイン分泌又はその増殖により測定することができる。抗原との接触、すなわち抗原提示細胞(すなわち、DC)との共培養に際し、T細胞クローンはあるパターンのサイトカインを分泌する。具体的なサイトカインは、Th1反応についてはIFNγ及びIL-2、Th2反応についてはIL-4、IL-5、及びIL-13、Th17反応についてはIL-17、IL-21、及びIL-22、並びに制御性T細胞についてはIL-9、IL-10、及びTGFβである。T細胞のサイトカイン分泌は、ELISA、サイトメトリックビーズアレイ(CBA)、又はELISPOT分析により測定することができる。T細胞の増殖は、T細胞に組み込まれた蛍光色素(すなわち、CFSE)の強度の定量化及びフローサイトメトリーを用いたT細胞の増殖の間のその強度の消失により測定することができる。
【0131】
制御性T細胞の誘導は、PDCとの共培養アッセイにより決定することができる(Gehrieらの文献、Methods Mol Biol, 2011)。簡潔に説明すると、ナイーブT細胞を、マウス脾臓又はヒト末梢血液から、磁気ビーズ分離により単離した(CD4+CD25-)。T細胞を抗CD3 mAb (150 ng/mL)、10 ng/mL IL-2、及び10 ng/mL TGFβの存在下、PDCと共培養した。96時間後、T細胞をCD4、CD25、及びFoxP3(細胞内)に対する抗体で染色し、活性化した制御性T細胞の数を決定した。並行して、制御性T細胞のサイトカイン分泌(すなわち、IL-10)を上清におけるELISAにより測定することができる。
【0132】
インビボでのp75
NTRシグナル伝達に対する該試験物質の拮抗性又は作動性作用を調べるため、p75
NTR及び/又はTLR7及び/又はTLR9の少なくとも1つを発現する初代細胞又は細胞株を、動物モデルに投与することができる。該試験物質を、該初代細胞又は細胞株の投与の前に、一緒に、又は後に、同じ動物に投与することができる。またさらに、該初代細胞又は細胞株を、動物モデルへの投与の前にインビトロで該試験物質とプレインキュベートすることができる。
【0133】
(4. 動物モデル)
本発明のさらなる実施態様において、p75
NTR及び/又はTLR7及び/又はTLR9の少なくとも1つを発現する初代細胞又は細胞株をインビボで使用することができ、すなわち免疫、炎症性、又は増殖性疾患に特異的な動物モデルに投与することができる。適当な動物モデルは、例えばOVAに誘導されるアレルギー性喘息モデル、アレルギー性疾患の他のモデル、マウス又はラットにおけるEAEモデル、糖尿病モデル、SLEモデル、移植モデル、GvHDモデル、腫瘍モデルなどから選択される。
【0134】
適当なアレルギー性喘息モデルは、例えばBALB/c及びC57BL/6マウスである。BALB/cマウスは典型的にはTh2優勢免疫反応を組織し、アレルギー反応のパラメータ、例えばアレルゲン特異的IgE、気道過敏症(AHR)、及び好酸球性気道炎症の誘導が堅調である。反対に、C57BL/6マウスはTh1優勢免疫反応を示し、BALB/cマウスと比較して、特にアレルゲン特異的IgE反応及び吸入したメタコリンへの気道反応性の発達において、アレルギー性気道反応の発達が制限される。驚くべきことに、アレルゲン、例えばオボアルブミン(OVA)への曝露に反応し、C57BL/6マウスは堅調なBAL好酸球性反応を発達させ、組織においては、気道の周囲よりも実質組織においてより多くの好酸球が蓄積する傾向を示す。このことは、BALB/cマウスにおいて好酸球が気道の周囲に蓄積することと対照的である。
【0135】
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、ヒト炎症性脱髄性疾患、多発性硬化症(MS)について最も一般的に使用される実験モデルである。EAEは様々な免疫病理的及び神経病理的機構間の相互作用によりMSの重要な病理特徴:炎症、脱髄、軸索消失、及び神経膠症への接近をもたらす複雑な状態である。また、EAEにおいては炎症及び再ミエリン化を解決する反調節機構も発生し、従ってこれらのプロセスのモデルとしても機能することができる。周知のインビボEAEモデルは、例えば完全フロイントアジュバント(CFA)中でのMOG35-55による免疫により、単相又は慢性の持続形態のEAEを誘導することができる、C57BL/6マウスである。前者は、単核炎症性浸潤の多病巣性の融合性領域及び脊髄の周辺白質の脱髄を特徴とする。マクロファージ及びCD4+ T細胞は、炎症性浸潤の主要な細胞種である。他のEAEモデルは、SJL/Jマウス(PLP139-151での免疫)、ルイスラット(ミエリン塩基性タンパク質(MBP)により誘導される能動的及び受動的EAE又はMBP特異的T細胞の移転)、及びダーク・アゴウチ(Dark Agouti)(DA)ラット(同一遺伝子型の脊髄組織又は組換えラットMOGを使用して、EAEを誘導することができる)である。
【0136】
本発明の特別な関心対象は、免疫仲介性糖尿病(1A型)の動物モデルである。自然発症1型糖尿病感受性モデルには、非肥満型糖尿病(NOD)マウス、生体繁殖糖尿病易発性(BB-DP)ラット、ロングエバンストクシマやせ型ラット(Long-Evans Tokushima Lean rat)Lew.1.WR1のコメダ糖尿病易発性(Komeda Diabetes-Prone)(KDP)亜系統、及びLew.1AR1/Ztmラットがある。1) 天然に存在する糖尿病誘発性クローンのT細胞受容体(TCR)を有するT細胞受容体トランスジェニック(Tg)マウス及びレトロジェニックマウス、2) 自己免疫の標的とすることができるneo自己抗原の膵臓発現を確立するための、ラットインスリンプロモーター(RIP)制御下のneo抗原(Ag)の発現、並びに3) β細胞上でのRIPにより駆動される共刺激性分子の発現を含む、複数の実験的に誘発された1型糖尿病のモデルが、利用可能である。推定島自己抗原のノックアウトを有するマウスにより、特定の標的分子の病理的意義を直接試験することが可能となった。ヒトにおける1型糖尿病と関連する遺伝子(FoxP3及びAIRE)の変異(常染色体優性の「ヒト」AIRE変異を含む)を有するマウス系統が、研究下にある。
【0137】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、複数の器官系を冒す自己免疫性疾患である。SLEはB細胞及びT細胞の1以上の自己抗原に対する寛容性の消失を特徴とし、多体系的炎症をもたらす。自然発症する疾患を発症する、最も一般的に使用されるマウス系統には、ニュージーランドブラック及びニュージーランドホワイトの間のF1交雑(NZB/W)マウス、MRL/lprマウス、及びBXSB/Yaaマウスがある。これら3系統におけるSLEの一般的な免疫学的及び臨床徴候には、活動亢進性B細胞及びT細胞(その存在及び相互間の相互作用が疾患に要求される)、核抗原を標的化するいくつかの自己抗体の高力価、免疫複合体の除去の欠陥、並びに致死的な免疫糸球体腎炎がある。
【0138】
成功裏の造血幹細胞移植(HSCT)を制限する因子は、移植片対宿主病(GvHD)、移植体に含まれるドナーT細胞による、レシピエント組織の免疫仲介性攻撃に起因する移植後障害である。GvHDの発症をもたらす一連の事象は、主としてマウスモデルを用いて定義されている。早期の研究により、T細胞の同種異系反応性が、疾患の根底にある原因であることが確立された(Korngold及びSprentの文献、1978; Sprentらの文献、1986)。GvHDの急性及び慢性マウスモデルの両方の病理がT細胞の同種異系反応性に依存するが、各形態は細胞傷害性(CD8+)又はヘルパー(CD4+)T細胞サブセットの異なる関与に起因する異なる表現形を有する。ドナーCD8+ T細胞は、そのT細胞受容体(TCR)がレシピエントのクラスI主要組織適合性複合体(MHC)分子の状況下で存在するレシピエントのペプチドと結合すると、活性化される。適当なインビボマウスモデルは、Schroeder M.A.及びDiPersio J.F.の文献、「移植片対宿主病のマウスモデル:進歩と限界(Mouse models of graft-versus-host disease: advances and limitations)」; Dis Model Mech. 2011 May;4(3):318-33で概説されている。
【0139】
適当な腫瘍モデルは、皮膚癌モデル(B16メラノーマ)又は線維肉腫癌モデル(細胞株MCA-102又はMCA-207)である。癌細胞株又は初代腫瘍細胞を注入した後、C57BL/6又はBALB/cマウスは癌を発症する。T細胞及びDC、好ましくはPDCを、インビトロで腫瘍細胞溶解物と共にインキュベートする。その後、T細胞を単独で、又はDCと組合わせて、癌細胞を有するマウスに注入する。PDC免疫の有効性を、転移発達び細胞傷害性T細胞の発達及び活性の定量化により測定する。他の腫瘍マウスモデルは、例えばB16-F10により誘導される転移性肺癌モデル(Liuらの文献、JCI, 2008)、又はE.G7 T細胞リンパ腫モデル(Louらの文献、J Immunol, 2007)である。両モデルにおいて、活性化されたPDCを、腫瘍を有する(腫瘍細胞が事前に注入された)マウスに注入し、腫瘍細胞が適用される前に注入し、又は両方を並行して注入した。数日後/数週間後、腫瘍の大きさを測定することができる。
【0140】
適当な移植モデルは、マウスにおける同種異系器官移植、例えばDC、好ましくはPDCの共移植を伴う皮膚及び心移植、骨髄移植である。例えば、レシピエントB10.BR又はBA.B10マウスに、5.5 Gyの3時間の間隔を挟んだ2回の線量を第-2日に照射した。第0日に、レシピエントマウスに3〜5×10
3個のFACSで選別したHSC、5×10
4個のFACSで選別したドナープレPDC、及び3×10
5個又は1×10
6個のMACSで精製したB6 CD45.1ドナー由来のT細胞の組合わせを移植した。マウスを週に2回計量し、過去に記載された通りにGVHDの徴候を毎日調べた。開始時の体重から25%超低下した瀕死の動物、及び実験終了時まで生存したマウスを安楽死させ、肝臓、小腸、及び大腸を含む組織を腫瘍親和性(tumour-tropic)部位の組織病理的分析のために処理した。フローサイトメトリーのキメラ現象分析を、移植後40(±1)、60(±2)、及び90(±5)日に血液白血球に対し実施した(Lu Yらの文献、Blood. 2012 Jan 26;119(4): 1075-85)。さらに、BALB/cの心臓を完全に血管を形成させた異所的移植片として、記載された通りにC57BL/6マウスに移植した。BALB/cの心臓移植片を、ドナーの大動脈をC57BL/6レシピエントの下腹部大動脈に、ドナーの肺動脈をC57BL/6レシピエントの下大静脈に、それぞれ末端-側面接合で縫合することにより移植した。レシピエントマウスに、様々な時間で0.5 ml PBSの静脈内注入を行った。寛容性のため、マウスを第-7日にDST(1_107個のドナー脾臓細胞を、静脈内に)で、及び(移植に対する時間で)第-7、-4、0、及び+4日に250 mgのCD40Lに対するmAbで、処置した。寛容後30日に100 mgのCD40Lに対するmAbを1つの群に与え、マウスは第37〜40日に拒絶反応を示した。移植片の機能を、1日おきに、腹部触診によりモニタリングした。寛容性を示したマウスを移植後第1、5、及び10週に試験した。10週以上の移植片の生存を有したマウスを、「寛容性を示す」ものとみなした(本明細書では「10週の寛容性を示す」と呼ぶ)。未処置の対照マウスには、PBS中のハムスターIgGを与えたところ、拒絶反応が、移植から1週後に発生した。この拒絶反応は、触診可能な鼓動の完全な中止として定義し、開腹による直接の視認により確認した(Qian Sらの文献、Hepatology. 1994 19:916-924.)。
【0141】
さらなる好ましい実施態様において、p75
NTR及び/又はTLR7及び/又はTLR9の少なくとも1つを発現する初代細胞又は細胞株を、試験物質又はp75
NTRアンタゴニスト及び/又はアゴニストと、天然のp75
NTRのアゴニスト又はその前駆物質の存在下又は非存在下でプレインキュベートする。天然のp75
NTRのアゴニストは、例えば神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4(NT-4)、及びニューロトロフィン-5(NT-5)、又はこれらの組合わせである。天然のp75
NTRのアゴニストの前駆物質は、例えば、プロNGF、プロBDNF、プロNT-3、プロNT-4、プロNT-5、又はこれらの組合わせである。
【0142】
該試験物質は、任意の適当な経路で動物モデルに投与することができる。典型的な投与は、経口的に、又は静脈内に実施される。
【0143】
p75
NTR及び/又はTLR7及び/又はTLR9の少なくとも1つを発現する初代細胞又は細胞株は、典型的に動物モデルの血流内へ注入され、又は所望の器官若しくは組織に特異的に注入される。
【0144】
試験物質のインビボでの拮抗性又は作動性作用を決定するため、T細胞の活性化は、処置された動物から取得された試料中のT細胞サイトカイン、例えば例として、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、及び腫瘍壊死因子の発現;T細胞の増殖;抗原特異的T細胞クローンの誘導、及び/又は制御性T細胞の誘導の決定によって検出できる。該試料は、好ましくは血液試料又は組織試料である。
【0145】
好ましくは、前記試料及び/又は対照試料は、該動物モデルにおける該試験物質の作用の決定の前に処置動物及び/又は該対照動物から既に取得されている。
【0146】
試験物質の拮抗性又は作動性作用のインビボでの決定は、好ましくは対照動物の存在下で実施される。より好ましくは、同じ種及び/又は同じ系統の動物を、対照動物として使用する。最も好ましくは、少なくともPDCを含むが、該PDCではp75
NTRが発現していないか、又はより低いレベルで発現している動物を、対照動物として使用する。これにより、p75
NTRシグナル伝達に対する該試験物質のインビボでの作用を、直接的かつ明白に標的p75
NTRに帰することが可能となる。さらに、該試験物質の他の標的に対して可能性のある副作用を認識することができる。従って、特異性が高く、望ましくない副作用のないp75
NTRシグナル伝達への作動性又は拮抗性作用を示す試験薬剤を、スクリーニングし、さらなる開発のために選択することができる。
【0147】
一実施態様において、少なくともPDCを含むが、該PDCではp75
NTRがノックアウトされている動物を、対照動物として使用する。
【0148】
同様に、p75
NTRのレベルも別途低下させることができる。本発明によりさらに適当なのは、少なくともPDCを含むが、該PDCではp75
NTRの発現が低下又は阻害されている動物の、対照動物としての使用である。
【0149】
適当な対照動物を提供するために、本発明の一実施態様において、天然にはp75
NTRを発現しない、又はp75
NTR遺伝子がノックアウトされている、又はp75
NTR遺伝子の発現が低下若しくは阻害されている、PDCを該対照動物に投与する。別の実施態様において、投与されるPDCにおいてのみでなく、該対照動物の内在の細胞においても、p75
NTR遺伝子をノックアウトしてもよく、又はp75
NTR遺伝子の発現を低下若しくは阻害してもよい。
【0150】
p75
NTRの低下又は阻害は、例えばshRNA、siRNA、アンチセンスヌクレオチドなどを用いて達成することができる。
【0151】
低分子ヘアピンRNA又は短鎖ヘアピンRNA(shRNA)は、RNA干渉(RNAi)を通じて標的遺伝子の発現をサイレンシングするために使用することができる堅く結ばれたヘアピンターンを形成するRNA配列である。細胞におけるshRNAの発現は、典型的にはプラスミドの送達により、又はウイルス若しくは細菌のベクターを通じて達成される。低分子干渉RNA(siRNA)は、時に短鎖干渉RNA又はサイレンシングRNAとして知られ、約20〜25塩基対の長さの二本鎖RNA分子のクラスである。siRNAは相補的なヌクレオチド配列を有する特定の遺伝子の発現を干渉する。siRNAはmRNAの転写後の分解を引き起こし、結果として翻訳されないようにすることにより機能を果たす。
【0152】
好ましい実施態様において、本発明は先に記載の動物モデルにPDC及び試験物質を与えた後に、先に記載の動物モデル及び対照動物から取得された試料における該試験物質の拮抗性又は作動性作用をエクスビボで決定するための方法を提供する。
【0153】
本発明はさらに、本発明のアッセイ及び/又はスクリーニング方法で特定されたp75
NTRシグナル伝達のアンタゴニスト及びアゴニストに関する。本発明で開示される方法で特定されるアゴニスト及びアンタゴニストは、タンパク質、核酸、炭水化物、抗体、又は任意の他の分子を含み得る;例えば、該アゴニスト及びアンタゴニストは、競合型又は非競合型機構によりp75
NTRに結合する低分子及び有機化合物を含み得る。好ましいものは、p75
NTRの低分子アンタゴニスト及びアゴニストである。
【0154】
本明細書で使用されるp75
NTRの特異的アゴニスト又はアンタゴニスト、並びにTLR7及び/又はTLR9のアゴニストを、表2に記載する。
【0155】
表2:p75
NTRの特異的アゴニスト又はアンタゴニスト、及びTLR7又はTLR9のアゴニスト
【表2】
【0156】
2-オキソ-アルキル-1-ピペラジン-2-オンの適当な誘導体は、例えば
4-{2-[4-(4-クロロ-3-トリフルオロメチルフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-オキソエチル}-1-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)ピペラジン-2-オン;
4-{2-[4-(4-クロロ-3-トリフルオロメチルフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-オキソエチル}-1-(5-メチルピリジン-2-イル)ピペラジン-2-オン;
4-{2-[4-(4-クロロフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-オキソエチル}-1-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)ピペラジン-2-オン;
4-{2-オキソ-2-[4-(3-トリフルオロメチルフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]エチル}-1-ピリジン-2-イルピペラジン-2-オン;
4-{2-[4-(4-クロロ-3-トリフルオロメチルフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-オキソエチル}-1-ピリジン-2-イルピペラジン-2-オン;
4-{2-[4-(4-クロロフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-オキソエチル}-1-ピリジン-2-イル-ピペラジン-2-オン;
4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-オキソエチル}-1-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)ピペラジン-2-オン;
4-{2-[4-(4-クロロフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-オキソエチル}-1-(6-クロロピリジン-2-イル)ピペラジン-2-オン;
4-{2-[4-(3-クロロフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-オキソエチル}-1-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)ピペラジン-2-オン;
4-{2-[4-(4-トリフルオロメチルフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-オキソエチル}-1-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)ピペラジン-2-オン;
4-{2-[4-(3-トリフルオロメチルフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-オキソエチル}-1-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)ピペラジン-2-オン;
4-{2-[4-(4-クロロ-3-トリフルオロメチルフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-オキソエチル}-1-ピリジン-3-イル-ピペラジン-2-オン;
1-(6-クロロピリジン-3-イル)-4-{2-[4-(4-クロロ-3-トリフルオロメチルフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-オキソエチル}ピペラジン-2-オン;
4-{2-オキソ-2-[5-(3-トリフルオロメチルフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]エチル}-1-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)ピペラジン-2-オン;
4-{2-オキソ-2-[4-(3-トリフルオロメトキシルフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]エチル}-1-ピリジン-2-イルピペラジン-2-オン;
4-{2-[4-(4-クロロ-3-トリフルオロメチルフェニル)-2,5-ジヒドロピロール-1-イル]-2-オキソエチル}-1-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)ピペラジン-2-オン;
4-{2-[4-(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-オキソエチル}-1-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)ピペラジン-2-オン;
4-{2-[4-(3-メチルフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-オキソエチル}-1-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)ピペラジン-2-オン;
4-{2-[4-フェニル-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-オキソエチル}-1-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)ピペラジン-2-オン;
4-{2-オキソ-2-[5-(2,3-ジクロロフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]エチル}-1-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)ピペラジン-2-オン
4-{2-オキソ-2-[5-(3-メトキシフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]エチル}-1-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)ピペラジン-2-オン;
からなる群から選択される、好適には塩基付加塩又は酸付加塩の形態である、化合物である。
【0157】
これらの化合物及びそれらの合成は、US2011144122 Al及びUS 8247404 B2に開示されている。
【0158】
ここで、本発明は以下の実施例においてさらに説明される。
【実施例】
【0159】
(本発明の実施例)
(実施例1:ニューロトロフィンNGFは、マウスにおいてPDCが仲介するアレルギー性喘息をp75
NTR依存的に強く増強する)
(方法)
(マウス系統)
ヘテロ接合p75
NTRノックアウトマウス(p75
NTR+/-)をJackson Laboratory社(Bar Harbor, Maine, USA)から購入し、TU Dresdenの動物施設において無病原体条件下で交配させた。オス及びメスのp75
NTR+/+及びp75
NTR-/-マウスを10〜12週齢で実験に使用した。
【0160】
(PDCの生成)
マウスPDCは以下のようにインビトロで生成した:骨髄細胞を、マウスの大腿骨及び脛骨を洗い流すことにより単離した。赤血球をACK緩衝液を用いて溶解した。残りの細胞を洗浄し、10% FCS、1 mMピルビン酸ナトリウム、2 mM L-グルタミン、1 ml当たり100 IUのペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシン、10 mM HEPES緩衝液、及び0.1 mM β-メルカプトエタノールを補充したRPMI 1640培地中、1 ml当たり2×l0
6細胞の密度で培養した。骨髄細胞をPDCへと分化させるため、100 ng/ml Flt3-L(fms様チロシンキナーゼ3リガンド)を細胞に加えた。8日間の培養の後、CD11b
+画分をCD11bマイクロビーズ(Miltenyi Biotec社)を用いて、製造業者の説明書の通りに除去することによりPDCを濃縮した。死細胞を死細胞除去キット(Miltenyi Biotec社)を用いて排除した。PDCの純度をフローサイトメトリーにより評価した(CD11b
- CD11c
+ B220
+ Siglec-H
+)。
【0161】
(マウスにおけるアレルギー性喘息の誘導)
アレルギー性喘息を誘導するため、インビトロで生成したPDCを100 μg/mlオボアルブミン(OVA; 等級V; Sigma-Aldrich社)で24時間インキュベートした。マウスを感作させるため、24GA i.v.カニューレ(i.v. cannula)(BD Neoflon(商標))を用いて麻酔下マウスの肺に1×1O
6個のOVAを負荷したPDCを気管内注入した。対照動物には、OVAを負荷していない同量のPDC又はPBSのいずれかを与えた。10日後、アレルギー反応を誘導するため、マウスを3日間連続で30分にわたり1% w/v OVA-エアロゾルに曝露した。最後の誘発から24時間後、動物を安楽死させ、気管支肺胞洗浄液(BALF)の細胞組成(好酸球、リンパ球、マクロファージ)、及び炎症誘発性サイトカインスペクトル、肺組織学、及び血液血清中のOVA特異的IgEレベルに基づいて免疫反応を調べた。
【0162】
(BALF細胞分析)
BALF細胞をフローサイトメトリーにより定量化した。非特異的結合を回避するため、FcRブロッキング試薬で細胞をプレインキュベートした。以下の抗体:CD3-V500、CD4-V450、CD8-PE Cy7、CD11c-APC Cy7、B220-PE、F4/80-PerCP、SiglecF-AF647、Ly6G-FITCを染色に使用した。リンパ球(FSC
低/SSC
低)の中で、CD4
+ヘルパーT細胞をCD3
陽CD4
陽と呼び;CD8
+ヘルパーT細胞をCD3
陽CD8
陽と呼び;B細胞をCD3
陰B220
陽と呼び;顆粒球(FSC
低/SSC
高, Ly6G
陽)の中で、好酸球をSiglecF
陽CD11c
陰として割り当て、かつ好中球をSiglecF
陰として割り当てた。マクロファージをFSC
高である自家蛍光の高いCD11c
陽F4/80
陽細胞として割り当てた。さらに、収集された細胞のサイトスピンを調製し、パッペンハイム法で染色した。
【0163】
(BALFサイトカインの定量化)
BALF上清を、製造業者の説明書に従って、ELISA(eBioscience社)によるIL-4、IL-5、及びIL-13の定量化のために使用した。
【0164】
(組織学的分析)
肺をPBSで潅流し、4% v/vホルムアルデヒドで固定した。パラフィンで包埋した肺の4 μmの切片を炎症及び杯細胞肥厚化を定量化するためにPAS染色で染色した。
【0165】
(実施例)
NGFは肺中に存在し、アレルギー性喘息のような炎症性プロセスの間に増加する。アレルゲン仲介性免疫反応の間のPDCに対するNGFの影響を調べるため、p75
NTR+/+ PDCを、p75
NTR+/+マウスへの気管内点滴注入の前にNGF(100 ng/ml)の存在下又は非存在下で、オボアルブミン(OVA)と共にインキュベートした。BALFにおいて、OVA単独と共にインキュベートしたPDCと比較して、PDCによるOVAの取り込みがNGFの存在下で実施された場合に、好酸球及びリンパ球の数が有意に増加した(
図1a、b)。さらに、OVAを負荷したPDCをNGFで処理すると、NGFの非存在下でOVAにより短時間処理したPDCと比較して、肺におけるTh2サイトカイン(IL-4、IL-5、及びIL-13)の生産が増加した(
図1c)。OVAを負荷したPDCを与えられたマウス由来の組織学的肺切片は、血管周囲の増加した炎症及び増強された粘液生産を示した(
図1d)。OVA取り込みの間のNGFによるPDCの処理は、肺における炎症性表現形を増強させた(
図1d)。対照的に、NGFの存在下又は非存在下でOVAを負荷されたp75
NTR-/-のPDCは、気道の炎症を誘導することができなかった(データは示さない)。本発明者らのデータは、NGFがp75
NTRを発現するPDCの炎症誘発性表現形への誘因となり、喘息モデルにおいてずっと重篤な気道炎症をもたらすことを示唆している。
【0166】
アレルゲン仲介性の免疫反応の間のPDCに対するNGFのp75
NTR依存的な影響を立証するため、p75
NTR+/+マウスへの気管内点滴注入の前に、p75
NTR+/+ のPDCを、p75
NTR特異的阻害ペプチドPEP5の存在下又は非存在下で、オボアルブミン(OVA)及びNGF(100 ng/ml)と共にインキュベートした。BALFにおいて、PEP5を加えずにインキュベートしたPDCと比較して、NGFで刺激されたPDCによるOVAの取り込みがPEP5の存在下で実施された場合に、好酸球及びマクロファージの数が有意に低下した(
図12a、b)。さらに、OVAを負荷し、NGFで刺激したPDCをPEP5で処理すると、PEP5の非存在下で短時間処理したPDCと比較して、肺におけるTh2サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13)の生産が低下した(
図12c、d)。
【0167】
(実施例2:p75
NTRノックアウトはTh2免疫反応を阻害し、寛容性の発達を遮断する)
(方法)
先に記載の通りである。
【0168】
(実施例)
疾患誘因のプロセスにおけるPDC上に発現するp75
NTRの役割を調べるため、本発明者らはOVA仲介性のアレルギー性喘息のマウスモデルを使用した。マウス由来のOVAで短時間処理したPDCを、p75
NTR+/+又はp75
NTR-/-マウスの肺に気管内適用した。OVAエアロゾルによる誘発後、重度好酸球増多症、肺炎症、及び激しい粘膜生産など喘息の特徴的な症状を分析した。OVAを負荷したp75
NTR-/-のPDCで処置されたp75
NTR+/+ マウスは、p75
NTR+/+のPDCを与えられたマウスと比較して、BALFにおける有意に低下した数の免疫細胞(リンパ球及び好酸球)を示した(
図2a、b)。OVA仲介性の免疫反応はさらにp75
NTR+/+のPDCで処置されたマウスのBALFにおいて増加したTh2サイトカイン分泌(IL-4、IL-5、及びIL-13)をもたらしたが、p75
NTR-/-のPDCを与えられたマウスではこれをもたらさなかった(
図2c)。肺における血管周囲の炎症及び杯細胞肥厚化は、p75
NTR+/+のPDCで処置されたマウスと比較して、p75
NTR-/-のPDCで処置されたマウスにおいて縮小した(
図2d、e)。要約すると、p75
NTRを欠くPDCを与えられたマウスは有意に低いアレルギー性喘息を発症した。
【0169】
当該技術分野では、マウスにおけるp75
NTRの遮断又は欠損は、肺炎症及び気道反応性亢進の発症を妨げることが公知である。しかしながら、本研究においては、アレルギー性喘息がp75
NTR-/-マウスにおいて、OVAを負荷したp75
NTR+/+のPDCの気管内への適用により誘導され得ることを初めて示すことができた。対照的に、OVAを負荷したp75
NTR-/-のPDCの適用は、喘息を誘導しなかった。詳細には、免疫細胞はp75
NTR+/+のPDCを与えられたp75
NTR-/-マウスのBALFにおいて有意に増加する(
図2a、b)。さらに、Th2サイトカインプロファイル(IL-4、IL-5、及びIL-13)はp75
NTR-/-のPDCを与えられたマウスと比較して、有意に増強される(
図2c)。肺組織の組織学試験により、p75
NTR+/+のPDCで処置されたマウスは、p75
NTR-/-のPDCを与えられたマウスと比較して、重度の血管周囲の炎症及び杯細胞肥厚化を発症することが明らかとなった(
図2d、e)。
【0170】
(実施例3:NGFはODN(オリゴデオキシヌクレオチド)で刺激されたヒトPDCによるインターフェロンα(IFNα;Th1反応)及びIL-6生産(Th2反応)を調節する)
(方法)
(リンパ球分離)
細胞の精製に使用する血液試料は、2つの異なる供給源:オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)及び抗FcεRIα刺激実験において使用されるPDCの供給源として機能する、8時間経過していない新鮮なバフィーコート試料から取得した。
【0171】
血液試料を50 mlチューブに移し、遠心分離した(470 g、室温(RT)で30分間)。沈殿した赤血球及び上相の血小板の間の、中間白血球層を、数ミリリットルの赤血球と共に取り出した。新しい50 mlチューブ中で白血球を、2 mM EDTA及び0.5% BSA(PBS E/B)を含む3体積の1×PBSで希釈した。混合物を慎重にフィコール分離溶液(パーコール分離溶液、密度1.074 g/ml, Biochrom AG社)上に積層し、遠心分離した(1000 g、RTで20分間止めることなく)。赤血球及び顆粒球はチューブの底に沈殿し、単核球(白血球)及び血小板を、上相の血漿層及び沈殿した赤血球/顆粒球の間の界面から新しいチューブに収集した。収集した細胞を50 ml PBS E/Bで一度洗浄し、遠心分離した(300 g、RTで10分間)。上清を完全に除いた。血小板を減少させるため、1回目の洗浄に続き、単核球のペレットに50 ml PBS E/Bを加え、遠心分離する(200 g、RTで15分間)ことにより、2回洗浄した。200 gでの遠心分離の際に、ほとんどの血小板は上清中に残る。上清を捨てた。リンパ球のペレットを20 ml PBS E/B中で再懸濁した。細胞精製の間にMACS細胞分離カラムを詰まらせるおそれのある細胞凝集塊及び血餅を除くため、細胞に40 μmの孔径を有するナイロンメッシュ(セルストレーナー, BD Biosciences社)を通過させた。
【0172】
(形質細胞様樹状細胞(PDC)/BDCA4
+細胞の精製)
末梢血液単核球からのCD4
+ヘルパーT細胞の単離と同様に、PDCの精製前に細胞の総数を決定した。CD304(BDCA-4/ニューロピリン-1)マイクロビーズキット(Miltenyi Biotech社)を用い、製造業者の説明書に従いながら部分的に改変を加えて、ポジティブ選択によりPDCを精製した。簡潔に説明すると、細胞懸濁液を遠心分離し(450 gで6分間)、ペレットを300 μlのPBS E/B中に再懸濁した。続いて総数10
8個の細胞当たり、各々100 μlのFcRブロッキング試薬及びCD304(BDCA-4/ニューラオフィリン(Neuraophilin)-1)マイクロビーズを加えた。細胞懸濁液を4℃で20分間インキュベートした。細胞を10 ml PBS E/Bで洗浄し、遠心分離した(470 gで6分間)。細胞ペレットを500 μlのPBS E/Bに再懸濁し、すすいだMACS LS細胞分離カラム(Miltenyi Biotech社)に装加した。標識した細胞を分離カラムに付着させた。分離カラムは1 ml PBS E/Bで3回洗浄した。PDCの純度を増加させるため、溶出画分を第二のMACS MS細胞分離カラム上で濃縮させた。MSカラムの洗浄が500 μlのPBS E/Bで実施されたことを除き、第一のLSカラムについて記載された通りの磁気細胞分離手順を、第二のMSカラムについて繰り返した。精製したPDCを計数し、モノクローナルマウス抗ヒトBDCA2-PE(Miltenyi Biotech社)及びモノクローナルマウス抗ヒトCD271-APC(Miltenyi Biotech社)で細胞を染色した後、フローサイトメトリー分析で純度を評価した。言及した試薬及び緩衝液の容量は、最大総数10
8個の細胞に対するものである。所与の総細胞数より多くの数を使用した場合は、試薬及び緩衝液の容量もそれに応じてスケールアップした。
【0173】
(オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)で刺激されたPDCによって生産されるIFN-α)
末梢血液から単離されたPDCを、ペニシリンG(100 U/ml)、ストレプトマイシン(100 mg/ml)、L-グルタミン(2 mM)、10 %熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)、及び10 ng/mlインターロイキン-3(1L-3、R&D Systems社)を含むRPMI 1640培地(PAA)中に取った。U字形底96ウェルプレート中の200 μl培地にウェル当たり5×l0
4細胞を播種し、5% C0
2、37℃でインキュベートした。IFNα誘導のため、刺激性ODN 2216及び対照のODN 2243(Alexis Biochemicals社)を0.33 μg/ウェルで指定されたウェルに加えた。p75
NTR遮断ペプチドTAT-Pep5(Calbiochem社)を100 nMで指定されたウェルに利用した。NGF(R&D Systems社)を200 ng/mlで割り当てられたウェルに加えた。全ての成分を言及された通りに一連の順序で加えた。12〜14時間の刺激後、プレートを遠心分離した(270 g、5分間)。上清を収集し、ELISA(Bender MedSystems社)によるIFNαの定量化について分析した。
【0174】
(IFNα ELISA)
IFNα ELISAを、製造業者の説明書に従い、これに小さな改変を加えて実施した。端的に説明すると、PBS中の100 μlの10 μg/mlコーティング抗体を、平底96ウェルEIA/RIAストリップウェルプレート(Corning社)上の割り当てられた各々のウェルに加えた。プレートをパラフィルムM(Pechiney Plastic Packaging Company)で覆い、4℃で一晩インキュベートした。ウェルを吸引し、洗浄緩衝液(0.05 % Tween 20を含むPBS)で3回洗浄した。プレートを各々のウェルに250 μlのアッセイ緩衝液(1リットル洗浄緩衝液に5 gのBSAを加えたもの)を加えることによりブロッキングし、室温で2時間インキュベートした。試料を加える前に、ウェルを空にし、プレートを300 μlの洗浄緩衝液で2回洗浄した。100 μlのアッセイ緩衝液をブランクウェル及び標準に割り当てられたウェルに二連で加え、第一のウェル(500 pg/ml)を空のままとした。90 μlのアッセイ緩衝液を試料用に指定された全てのウェルに二連で加えた。IFN-αタンパク質標準(50 ng/ml)を500 μlアッセイ緩衝液中で希釈し、最終濃度500 pg/mlを得た。500〜8 pg/mlの範囲のIFN-αの希釈系列は、標準としての役割を果たした。10 μlの上清を、割り当てられたウェルに加え、混合した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)をコンジュゲートした検出抗体をアッセイ緩衝液で1:1000に希釈し、50 μlをブランクウェルを含む全てのウェルに加えた。プレートを室温で2時間インキュベートした。ウェルの中身を除き、ウェルをウェル当たり300 μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。100 μlの3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液(Sigma社)を全てのウェルに加え、プレートを室温で10分間インキュベートした。タンパク質標準濃度が最も高いウェル中で暗青色が発色したら、酵素基質反応を100 μlの4 N硫酸溶液を各ウェルに加えることにより停止した。プレート全体の吸光度を、450 nmを主波長とし、630 nmを参照波長として、分光光度計(TECAN社, Infinite 200)で読み取った。
【0175】
(抗FcεRIαで活性化されたPDCによって生産されたIL-6)
末梢血液から単離されたPDCを、ペニシリンG(100 U/ml)、ストレプトマイシン(100 mg/ml)、L-グルタミン(2 mM)、10%熱不活性化FBS、及び10 ng/mlのIL-3(R&D system社)を有するRPMI 1640培地(PAA)中に取った。U字形底96ウェルプレート中の200 μl培地にウェル当たり2×l0
5細胞を播種し、5% C0
2、37℃でインキュベートした。IL-6を生成させるため、マウス抗ヒトFcεRIα-FITC(eBioscience社)を250 ng/mlで指定されたウェルに加えた。p75
NTR遮断ぺプチドTAT-Pep5(Calbiochem社)を指定されたウェルに100 nMで利用した。NGF(R&D Systems社)を指定されたウェルに25 ng/mlの濃度で加えた。全ての成分を、言及された順序に従って加えた。14時間の刺激の後、プレートを遠心分離した(270 g、5分間)。上清をELISA(Bender MedSystems社)により、IL-6について分析した。
【0176】
(IL-6 ELISA)
IL-6 ELISAを製造業者の仕様書に従って、一部改変を加えて実施した。端的に説明すると、PBS中の100 μlの2.5 μg/mlコーティング抗体を平底96ウェルEIA/RIAストリップウェルプレート(Corning社)上の各々の割り当てられたウェルに加えた。プレートをパラフィルムM(Pechiney Plastic Packaging Company)で覆い、4℃で一晩インキュベートした。ウェルを吸引し、ウェル当たり300 μlの洗浄緩衝液(0.0005% Tween 20を含むPBS)で3回洗浄した。プレートを各ウェルに250 μlのアッセイ緩衝液(0.005% BSAを含む洗浄緩衝液)を加えることによりブロッキングし、プレートを2時間にわたって室温でインキュベートした。試料を加える前にウェルを空にし、プレートを300 μlの洗浄緩衝液で2回洗浄した。100 μlのアッセイ緩衝液をブランクウェル及び標準に割り当てられたウェルに二連で加えた。60 μlのアッセイ緩衝液を、試料について指定された全てのウェルに二連で加えた。2 ng/ml IL-6標準タンパク質を、250 μlのアッセイ緩衝液で希釈し、200 pg/mlの最終濃度を得た。100〜1.6 pg/mlの範囲のIL-6タンパク質の段階希釈は、標準としての役割を果たした。40 μlの上清を試料について割り当てられたウェルに加え、これを混合した。ビオチンをコンジュゲートした検出抗体をアッセイ緩衝液で1:1000に希釈し、50 μlを全てのウェルに加えた。プレートを室温で2時間インキュベートした。ウェルの中身を除き、ウェル当たり300 μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。アッセイ緩衝液で1:5000に希釈した100 μlのストレプトアビジン-HRPを全てのウェルに加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。ウェルを吸引し、ウェル当たり300 μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。100 μl TMB基質溶液(Sigma社)をブランクウェルを含む全てのウェルに加え、プレートを暗所、室温で10分間インキュベートした。陽性ウェルがもはや適切に記録可能でなくなる前に、酵素基質反応を、100 μlの4 N硫酸を各ウェルに加えることにより停止させた。プレート全体の吸光度を、450 nmを主波長とし、620 nmを参照波長として、分光光度計で読み取った。
【0177】
(実施例)
ヒトPDCはToll様受容体9(TLR9)を発現する。刺激性ODN 2216(AクラスCpG ODN)は、PDCに発現するTLR9により認識される。TLR9によるODN 2216の認識は、PDCを活性化させ、抗ウイルス性IFNαの分泌を誘導する(Th1反応)。本発明者らはヒト末梢血液精製PDCをODN 2216±200 ng/ml NGFで刺激した。14時間の刺激後、上清を収集し、ELISAによりIFNαの分泌を分析した。本発明者らは20個の試料を使用した。その結果、ODN 2216+NGF 200で活性化されたPDCによるIFNαの分泌は、NGFを加えないでODN 2216により活性化されたPDCと比較して、有意に低下する(p=0.0031)ことが明らかとなった(
図6a)。対照のODN 2243はPDCを全く刺激せず、従って上清中にはIFN-αは検出されなかった(データは示さない)。ODN 2216で活性化されたPDCにおける、NGFによるIFNα分泌の調節が、TrkAではなくCD271を介していることを証明するため、本発明者らはTAT-Pep 5(p75
NTRシグナル伝達阻害剤)を使用して、ODN 2216で活性化されたPDCによるNGFを仲介とした低下したIFNα生産をレスキューした。全部で23個のバフィーコート試料を分析した。NGF依存的なIFNα生産の減少は、TAT-Pep5(100 nM)を加えることにより有意にレスキューされた(p=0.0168)。TAT-Pep5それ自体及び/又はDMSO(TAT-Pep5の溶媒)は、NGFを加えずにODN 2216で活性化されたPDCと比較して、ODN 2216で活性化されたPDCにおけるIFNαの分泌を変化させなかった(
図6b)。
【0178】
さらに、PDCは、IgEに対する高親和性受容体であるFcεRIαを発現することが報告されている。本発明者らは、IgE高親和性受容体の架橋剤である抗FcεRIα-FITCを使用して、PDCを刺激した。IgE受容体の架橋形成に際し、PDCが活性化し、そのため炎症誘発性サイトカインIL-6の分泌によりTh2反応が誘発される。
【0179】
本発明者らは、インビトロで25 ng/mlのNGFの存在下及び非存在下で、抗FcεRIα-FITCによりFcεRIαを架橋させることにより、末梢血液精製PDCを活性化させた。上清を活性化から12時間後に回収し、IL-6の分泌量をELISAにより決定した。本発明者らは18個のバフィーコート試料を分析した。その結果、25 ng/ml NGFを加えることにより、IgEの高親和性受容体の架橋により活性化されたPDCからのIL-6の生産は、NGFを加えずにIgE架橋剤で活性化させたPDCと比較して、有意に増加した(p=0.0066)ことが示された(
図11)。NGF依存的なIL-6生産の増加は、TAT-Pep5(100 nM)を加えることにより有意に低下した(
図11)。
【0180】
(実施例4:NGFは抗原が仲介するヒトCD4
+ T細胞の増殖を促進する)
(方法)
(CD4+ヘルパーT細胞の精製)
抗原が仲介する自己CD4
+ T細胞増殖アッセイにおいて使用するCD4
+ヘルパーT細胞及びPDCを、特定のアレルゲンに対するアレルギーを有することが分かっている指定されたドナーから取得した末梢血液(80 ml)から精製した。末梢血液を抗凝固剤としてLi-ヘパリン(S-Monovette Li-ヘパリン 7.5 ml, Sarstedt社)を含むチューブに採取した。CD4
+ヘルパーT細胞を、CD4
+ T細胞単離キットII(Miltenyi Biotec社)を使用し、製造業者の説明書に従い、これに小さな改変を加えてネガティブ選択により末梢血液単核球から精製した。簡潔に説明すると、細胞ペレットを50 μlのPBS E/Bに再懸濁した。続いて、細胞総数10
7個当たり12 μlのビオチン標識抗体カクテルを加え、細胞懸濁液を4℃で15分間インキュベートした。50 μlのPBS E/Bを加え、続いて細胞総数10
7個当たり25 μlの抗ビオチンマイクロビーズを加えた。細胞を4℃でさらに20分インキュベートし、続いて10 ml PBS E/B で洗浄し、遠心分離した(470 gで6分間)。上清を完全に取り去り、ペレットを500 μlのPBS E/Bで再懸濁した。細胞懸濁液を平衡化MACS MS分離カラムに適用し、濃縮されたCD4
+ ヘルパーT細胞の画分をフロースルー中に取得した。単離されたCD4
+ ヘルパーT細胞の純度は、モノクローナルマウス抗ヒトCD3-PE(BD Biosciences社)及びモノクローナルマウス抗ヒトCD4-FITC(BD Biosciences社)による共染色後のフローサイトメトリー分析により評価したところ、95%超であった。10
7個よりも多くの細胞を使用した場合、試薬及び緩衝液の容量は、それに応じてスケールアップした。
【0181】
(CD4
+ヘルパーT細胞のカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)による標識)
精製したCD4
+ヘルパーT細胞(先の記載を参照されたい)を、PBSで1回洗浄した。3〜8×10
6個の細胞を5% BSAを含む1 ml PBSに再懸濁した。CFSE粉末(Molecular Probes, Invitrogen Technologies)のアリコートの1つを、18 μl DMSOに溶解させ、最終濃度5 mMを得た。CD4
+ T細胞を、細胞懸濁液+1 μM CFSEを37℃で8分間インキュベートすることにより、1 μMの最終濃度のCFSEで染色した。1 mlの事前に温めたFCSを懸濁液に加え、細胞をRPMI培地で2回洗浄した。細胞数を決定した。
【0182】
(自己PDC及びCFSE標識されたCD4
+ヘルパーT細胞の共培養)
抗原により仲介されるCD4
+ ヘルパーT細胞の増殖反応を、精製PDC/BDAC4
+細胞との共培養における精製し、CFSEで標識されたCD4
+ヘルパーT細胞を使用してアッセイした。PDC及びT細胞を、ペニシリンG(100 U/ml)、ストレプトマイシン(100 mg/ml)、L-グルタミン(2 mM)、及び10%ヒトAB血清を補充したRPMI-1640培地中で別々に再懸濁した。共培養物中でのT細胞に対するPDCの比を、1:6に維持した。抗原を50 SBE U/mlで共培養物に追加した。NGFを5、25、及び50 ng/mlの濃度で加えた。アッセイをU字底96ウェルプレート中で37℃、5%CO
2で構築した。5日間の共培養の後、上清をBDサイトカインビーズアレイ(CBA)ヒトTh1/Th2サイトカインキット(BD Biosciences社)を使用することにより、Th1/Th2サイトカインを分析し、増殖しているCFSE-低CD4
+ T細胞の割合をフローサイトメトリーにより分析した。
【0183】
(サイトカインビーズアレイ(CBA)によるサイトカインの測定)
上清中のIL-2、IL-4、IL-5、IL-10、IFNγ、及びTNFαの濃度を、CBAキットを用いることにより、製造業者の説明書に従い、これにMicrosoft Excelを用いるデータ分析の改変を加えて決定した。簡潔に説明すると、CBAはフローサイトメーターのFL3チャネルで弁別される一連の離散的な蛍光強度を示すビーズを含む。一連のビーズの各々は、単一のサイトカインに特異的なモノクローナル抗体でコーティングされており、6つのビーズの混合物は6つの異なるサイトカインを単一の試料中で検出することができる。PEをコンジュゲートした検出抗体は、サイトカインの結合量に比例してビーズを染色する。蛍光強度の較正及び色調補正手順の後、標準及び試験試料(上清)を、DIVAソフトウェアを備えたFACS LSRII フローサイトメーター(BD Biosciences社)で分析した。各サイトカインに対して作成した標準曲線を、サイトカイン濃度の計算に使用した。IL-2、IL-4、IL-5、IL-10、TNFα、及びIFNγに対する検出下限は、それぞれ2.6 pg/ml、2.6 pg/ml、2.4 pg/ml、2.8 pg/ml、2.8 pg/ml、及び7.1 pg/mlであった。
【0184】
(実施例)
PDCは専門化した抗原提示細胞である。PDCは、イネ科抗原及びモルモット抗原のような特定の既知のアレルゲンに対するアレルギーを有する患者の末梢血液から、BDCA4
+マイクロビーズ及びCD4
+ T細胞を用いたネガティブ選択により、精製した。精製し、CFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)で標識したCD4
+ T細胞を、5、25、及び100 ng/mlのNGFを加えて、又は加えずに、最適濃度のアレルギー特異的アレルゲン/抗原の存在下、二連で自己PDCと共培養した。5日間の培養後、CD4
+ T細胞の増殖を、CFSE蛍光の減少により決定した。
図7aに示すように、25 ng/mlのNGFは、NGFを加えずに共培養した自己CD4
+ T細胞/PDCと比較して、有意に増加した抗原(アレルゲン)仲介性の、CD4
+ T細胞の増殖を示した。対照的に、対照抗原では、ごくわずかな増殖しか観察されなかった。T細胞単独(PDCと共培養しない)では、抗原(アレルゲン)±NGFを加えてインキュベートしても加えずにインキュベートしても、又はNGF単独を加えてインキュベートしても、全く増殖を示さなかった。さらに、NGFは、NGFを加えずに共培養した自己CD4
+ T細胞/PDCと比較して、炎症誘発性Th2サイトカインIL-2及びIL-5の用量依存的に増加した分泌を誘導した(
図7b)。
【0185】
(実施例5:NGFはp75
NTR依存的にマウスPDCのサイトカイン分泌及びTLRシグナル伝達を制御する)
(方法)
先に記載の通りである。
【0186】
(実施例)
マウスPDCは低親和性ニューロトロフィン受容体p75
NTRを発現するが、高親和性ニューロトロフィン受容体を発現しない(
図3a、b)。増加したNGFレベルの存在下では、CPG-ODNクラスAで刺激されたPDCは、減少したレベルのIFNαを分泌し(
図3c)、低下したTLR9の発現を示す(
図3e、8a)。p75
NTRノックアウトマウスのPDC(p75
NTR-/-)は、CPG-ODNクラスA又はクラスBでの刺激に際するNGFによって誘導されるTLR9の発現の変化を示さない(
図8b、c)。さらに、p75
NTRを発現するPDC(p75
NTR+/+)のみが、NGFの存在下でサイトカインIL-6及びTNFαを誘導するTh2反応の、CPG-ODNクラスBによって誘導される分泌を増加させた(
図3d)。
【0187】
これらの作用の根底にある機構を調べるため、本発明者らはCPG-ODNクラスA(
図3f)又はクラスB(
図3g)で処理されたPDCを、ウェスタンブロットを用いて分析した。p75
NTR+/+及びp75
NTR-/-のPDCは、同等のレベルのMyD88、TRAF3、及びTRAF6を発現した。これらはCpG A及びCpG Bによって活性化されるシグナル伝達経路に関与する。NGFは、p75
NTR+/+のPDCにおいてCpG Aにより誘導される転写調節因子IRF3及びIRF7のリン酸化を弱め、一方CpG Bは、IRF3及びIRF7のリン酸化を増加させた。NGFは、p75
NTR-/-のpDCによって発現されるIRF3及びIRF7の、CpGにより誘導されるリン酸化のレベルを変化させなかった。
【0188】
(実施例6:NGFはp75
NTR依存的にマウスPDCによる共刺激性分子及び抗原提示分子、並びにサイトカインの発現を制御する)
(方法)
先に記載の通りである。
【0189】
(実施例)
Th1の発端となるCPG-ODNクラスAによる刺激に際し、マウスp75
NTR+/+のPDCは、NGFの存在下で、CD4 T細胞特異的抗原提示分子MHC-IIの低下した発現を示し(
図4a)、一方Th2の発端となるCPG-ODNクラスBにより刺激されたp75
NTR+/+のPDCは、NGFの存在下で抗原提示分子MHC-II(
図4b)及びCTL特異的MHC I(
図4c)の増加した発現を示した。
【0190】
オボアルブミンを含むTLR7及びTLR9のリガンドでマウスPDCを刺激すると、p75
NTR+/+のPDCは、抗原提示分子及び共刺激性分子(ICOS-L、MHC-II)の有意に増加した発現を示したが、該発現はp75
NTR+/+のPDCにNGFを加えることによってのみさらに増加し、p75
NTR-/-のPDCでは増加しなかった(
図9a、b)。さらに、NGFの追加はp75
NTR+/+のPDCでのMHC-I、PD-L1、及びMHC-II分子(MHC-II)を駆動するOx40-Landの発現を変化させたが、p75
NTR-/-のPDCでは変化させなかった(
図9c〜e)。
【0191】
(実施例7:NGFはマウスT細胞によるTh1サイトカインIL-2及びIFNγのPDC依存的な分泌を低下させる)
(方法)
先に記載の通りである。
【0192】
(マウスT細胞の単離)
マウスT細胞をニワトリオボアルブミン323-339に特異的なマウスα鎖及びβ鎖T細胞受容体を発現するOTIIマウス系統から、CD+ T細胞単離キット(Miltenyi Biotec社)を用いて単離した。
【0193】
(実施例)
マウスPDC及びT細胞の両方を、ニワトリオボアルブミンペプチド323-339を加えて又は加えずに、NGFの存在下(100 ng/ml)又は非存在下で一晩培養した。上清中のT細胞が分泌したTh1サイトカインIL-2及びIFNγの濃度を、CBAキット(BD Bioscience社)を用いることにより、製造業者の説明書に従い、これにMicrosoft Excelを用いるデータ分析の改変を加えて決定した。
図5は、共培養物におけるTh1サイトカインIFNγ及びIL-2の分泌に対するNGFの影響を示す。オボアルブミンペプチド(OVA)をT細胞に提示するp75
NTR+/+のPDCの存在下、T細胞はTh1サイトカインIFNγ(
図5a)及びIL-2(
図5b)を分泌する。p75
NTR-/-のPDCとの共培養物と比較して、p75
NTR+/+系統に由来するPDCと共培養したT細胞は、NGFを加えるときに両方のTh1サイトカインの低下した分泌により反応する。
【0194】
(実施例8:NGFはp75
NTR依存的にPDCにより誘導されるマウスT細胞の増殖及びサイトカイン分泌を制御する)
(方法)
先に記載の通りである。
【0195】
(マウスT細胞の単離)
マウスT細胞は、CD4+ T細胞上にオボアルブミンペプチド特異的T細胞受容体を発現するOT-IIマウス系統、又はCD8+ CTL上にオボアルブミンペプチド特異的T細胞受容体を発現するOT-Iマウス系統のいずれかから、CD8+ T細胞単離キット(Miltenyi Biotec社)を用いて単離した。
【0196】
(実施例)
p75
NTR-/-のPDCとの共培養物と比較して、p75
NTR+/+系統由来のPDCと共培養したOT-II系統由来のCD4+ T細胞は、NGFを加えた時に、増加したTh2サイトカインの分泌及び増殖により反応し(
図10a)、一方OT-I系統由来のCD8+ CTLは、共培養物中にNGFが存在する時に、より少ないサイトカインを分泌し、低下した増殖を示した(
図10b)。
【0197】
(実施例8:NGFは異種移植モデルにおけるTh2傾向GvHDを悪化させる)
(方法)
先に記載の通りである。
【0198】
(マウス系統)
NSGマウス系統由来のレシピエントマウスを、ヒト細胞の移植前に3 Gyの放射線で24時間事前調整(pre-condition)した。
【0199】
(GvHDのスコア化及び生存率)
GvHD発生率及び生存率をスコア化するため、移植マウスを体重、行動、皮膚、活動性、毛並、及び他のパラメータについて毎日モニタリングした。
【0200】
(実施例)
ヒトの自己T細胞及びPDCをCpG Bで刺激したか、又は刺激しなかった。NGFの非存在下又は存在下で一晩の共培養を行った。1日後、ヒト細胞を静脈内注入により、放射線照射を受けたNSGマウスに移植した。PDCをNGFの存在下で共培養した場合、移植後12週の期間にわたり、GvHDの増加した重症度(累積GvHD発生率、
図13a)を観察することができ、このことからTh2 T細胞反応の過剰刺激(superstimulation)が強調される。さらに、これらのマウスの有意に増加した死亡率が観察された(
図13b)。PDCがTLRを刺激するCpG Bなしで培養された場合、累積GvHD発生率又は生存率に対するNGF依存的な作用は観察できなかった(データは示さない)。
【0201】
(実施例9:NGFはマウスにおけるTh1傾向I型糖尿病を軽減する)
(方法)
先に記載の通りである。
【0202】
(マウス系統)
適用されたI型糖尿病マウスモデルについて、RIP-CD80×RIP-LMV-GPマウス系統を使用した。この系統では、共刺激性分子CD80が過剰発現され、T細胞反応が増強される。さらに、LCMVウイルスの糖タンパク質が発現され、膵臓β細胞を人為的に標的化してI型糖尿病を発症させることが可能とされている。
【0203】
(I型糖尿病の発症及び評価)
マウスPDCをNGFの非存在下又は存在下でLCMV糖タンパク質と共に1時間培養した。続いて、PDCをレシピエントマウスへ静脈内注入した。移植から2週間後、マウスを血中グルコースレベルについて週に3回観察した。連続して250 mg/lを超える血中グルコースレベルを伴う場合、マウスを糖尿病であると判断した。
【0204】
(実施例)
マウスPDCをCpG Bで刺激し、LCMV糖タンパク質と共にコインキュベートした。培養物中にNGFが存在すると、PDCにより誘導されたI型糖尿病は、NGFの非存在下で培養されたPDCを移植されたマウスにおけるよりも有意に遅れた段階で発生した。PDCをTLRを刺激するCpG Bを加えずに培養した場合、I型糖尿病発生に対するNGF依存的な作用は観察できなかった(データは示さない)。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
p75NTRアンタゴニスト又はp75NTRアゴニストから選択される、p75NTRシグナル伝達の少なくとも1つの調節因子、並びにTLR7及び/又はTLR9の少なくとも1つのアゴニストを含む、組合わせ。
(構成2)
構成1記載の組合わせを含む、医薬組成物。
(構成3)
ワクチン組成物である、構成2記載の医薬組成物。
(構成4)
前記p75NTRシグナル伝達のアゴニストが、
i) NGF、BDNF、NT-3、NT-4、NT-5などを含む群;
ii) 抗p75NTR抗体MC192のような活性化抗体;
iii) 活性化ペプチド及び活性化低分子(例えば、LM11A、及びLM11A-24カフェイン又はLM11A-31イソロイシン、LM11A-36を含むがこれらに限定はされない誘導体化合物);
vi) 活性化タンパク質;又は
vii) 核酸によりコードされているもの、から選択される、構成1〜3のいずれか1項記載の組合わせ又は医薬組成物又はワクチン組成物。
(構成5)
前記p75NTRシグナル伝達のアンタゴニストが、
i) プロNGF、プロBDNF、プロNT-3、プロNT-4、プロNT-5などを含む群;
ii) 遮断抗体、例えば抗ヒトp75NTRモノクローナル抗体クローン、例えばME20.4、ME24.1、MLR-1、MLR2、MLR3、HB-8737、NGFR5、並びにそれらの誘導体及びヒト化型;抗マウスp75NTRモノクローナル抗体、例えばREX、AB1554;
iii) ニューロトロフィンのp75NTRへの結合を妨げる抗体、例えばMAb 911、MAb 912、及びMAb 938、ヒト化型MAb 911であるタネズマブ、PG110、REGN475、フルラヌマブ、MEDI-578を含む、それらの誘導体及びヒト化型;
iii) 遮断ペプチド(PEP5、tat-PEP5、C30-35);
vi) p75NTRの細胞内ドメインに由来するタンパク質モチーフ
(化1)
へのペプチドの結合を含むTRAF6と、p75NTRとの相互作用を遮断するペプチド、
(化2)
を含む、TRAF6デコイペプチド;
v) ニューロトロフィンのp75NTRへの結合を妨げる遮断タンパク質;例えば、p75NTRの細胞外ドメイン;
vi) 低分子阻害剤、例えば2-オキソ-アルキル-1-ピペラジン-2-オンの誘導体;ニューロトロフィンのp75NTRへの結合を妨げる低分子、例えばPD 90780、ALE-0540、Ro 08-2750、Y1036;
vii) p75NTRの発現を遮断するモルホリノ;或いは
viii)核酸によりコードされているもの、例えばp75NTRの発現又は下流のシグナル伝達を遮断するshRNA又はRNAi、から選択される、構成1〜3のいずれか1項記載の組合わせ又は医薬組成物又はワクチン組成物。
(構成6)
前記TLR7及び/又はTLR9のアゴニストが:
i. 特異的TLR7アゴニスト、例えば一本鎖RNA、CL075、CL097、CL264、CL307、ガーディキモド、イミキモド、ロキソリビン、ポリ(dU)、ポリ(dT)、及びR848、及びIMO-4200;
ii. 特異的TLR9アゴニスト、例えば細菌DNA、CPG-ODNクラスA、例えばODN 1585、ODN 2216、ODN 2336; CPG-ODNクラスB、例えばODN BW006、ODN D-SL01 ODN 1668;ODN 1826、ODN 2006、ODN 2007、及びCPG-ODNクラスC、例えばODN D-SL03、ODN 2395、ODN M362、C792;
iii. TLR7及びTLR9の二重アゴニスト;
iv. 生又は弱毒のウイルス、細菌、寄生生物;
v. ウイルス、細菌又は寄生生物抽出物、から選択される、構成1〜5のいずれか1項記載の組合わせ又は医薬組成物又はワクチン組成物。
(構成7)
例えば、モノホスホリル脂質A(MPL)及びその合成誘導体、ムラミルジペプチド(MDP)及びその誘導体、オリゴデオキシヌクレオチド(例えばCPGなど)、二本鎖RNA(dsRNA)、別の病原体関連分子パターン(PAMP、例えば大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(LT); フラジェリン)、サポニン(Quil、QS-21)、低分子免疫増強剤(SMIP、例えば、レシキモド[R848])、サイトカイン、ケモカイン、並びに結核菌由来の抗原から選択される、少なくとも1つの免疫刺激剤をさらに含む、構成3〜6のいずれか1項記載のワクチン組成物。
(構成8)
不溶性アルミニウム化合物、リン酸カルシウム、リポソーム、Virosomes(登録商標)、ISCOMS(登録商標)、ミクロ粒子(例えば、PLGA)、乳剤(例えば、MF59、モンタニド)、ウイルス様粒子、及びウイルスベクターから選択される少なくとも1つの薬剤をさらに含む、構成3〜6のいずれか1項記載のワクチン組成物。
(構成9)
p75NTRを発現する単離PDC、p75NTRを発現するインビトロで生成させたPDC、又はp75NTRを発現するPDC細胞株をさらに含む、構成3〜8のいずれか1項記載のワクチン組成物。
(構成10)
ワクチン用アジュバントとしての使用のための、構成1及び3〜6のいずれか1項記載の組合わせ。
(構成11)
中枢性及び末梢性神経変性疾患、老人性認知症、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、ダウン症候群、プリオン病、健忘症、統合失調症、鬱、双極性障害、筋委縮性側索硬化症、多発性硬化症、心血管病態、虚血後心損傷、心筋症、心筋梗塞、心不全、心虚血、脳梗塞、末梢神経障害、視神経及び/又は網膜の損傷、網膜色素変性、緑内症、網膜虚血、黄斑変性症、脊髄外傷、頭部外傷、アテローム性動脈硬化、狭窄、創傷治癒の障害、脱毛症、あらゆる種類の癌、あらゆる種類の腫瘍、あらゆる種類の腫瘍転移、あらゆる種類の白血病、呼吸障害、肺炎症、アレルギー、アナフィラキシー、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患、皮膚の疼痛、体性痛、内臓痛、神経痛、慢性神経障害性疼痛、炎症痛、自己免疫性疾患、リウマチ性関節炎(多発性関節炎、少関節炎)、強直性脊椎炎、膠原病、全身性エリテマトーデス(SLE)、シャープ症候群、シェーグレン症候群、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、進行性全身性硬化症、脊椎関節炎(強直性脊椎炎、反応性関節炎、腸炎性関節炎、乾癬性関節炎、未分化型脊椎関節炎)、リウマチ熱、アイカルディ・グティエール症候群、脈管炎、ウェゲナー肉芽腫症、腎炎、卒中、潰瘍性大腸炎、クローン病、ウィップル病、強皮症、スティル病、気管支肺異形成症(BPD)、細気管支炎、RSV関連細気管支炎、糖尿病、線維筋痛症候群、セリアック病、橋本病、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、アジソン病、移植片対宿主病(GVHD)、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性溶血性貧血、ロフグレン症候群、ベーチェット病、ネフローゼ症候群、ブドウ膜炎、乾癬性関節炎、乾癬(尋常性乾癬、濃疱性乾癬)、骨折、骨疾患、骨粗鬆症、及び全ての細菌、真菌、ウイルス感染性疾患、並びに真核寄生生物による感染からなる群から選択される疾患の予防及び/又は治療における使用のための、構成1〜6のいずれか1項記載の組合わせ。
(構成12)
中枢性及び末梢性神経変性疾患、老人性認知症、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、ダウン症候群、プリオン病、健忘症、統合失調症、鬱、双極性障害、筋委縮性側索硬化症、多発性硬化症、心血管病態、虚血後心損傷、心筋症、心筋梗塞、心不全、心虚血、脳梗塞、末梢神経障害、視神経及び/又は網膜の損傷、網膜色素変性、緑内症、網膜虚血、黄斑変性症、脊髄外傷、頭部外傷、アテローム性動脈硬化、狭窄、創傷治癒の障害、脱毛症、あらゆる種類の癌、あらゆる種類の腫瘍、あらゆる種類の腫瘍転移、あらゆる種類の白血病、呼吸障害、肺炎症、アレルギー、アナフィラキシー、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患、皮膚の疼痛、体性痛、内臓痛、神経痛、慢性神経障害性疼痛、炎症痛、自己免疫性疾患、リウマチ性関節炎(多発性関節炎、少関節炎)、強直性脊椎炎、膠原病、全身性エリテマトーデス(SLE)、シャープ症候群、シェーグレン症候群、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、進行性全身性硬化症、脊椎関節炎(強直性脊椎炎、反応性関節炎、腸炎性関節炎、乾癬性関節炎、未分化型脊椎関節炎)、リウマチ熱、アイカルディ・グティエール症候群、脈管炎、ウェゲナー肉芽腫症、腎炎、卒中、潰瘍性大腸炎、クローン病、ウィップル病、強皮症、スティル病、気管支肺異形成症(BPD)、細気管支炎、RSV関連細気管支炎、糖尿病、線維筋痛症候群、セリアック病、橋本病、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、アジソン病、移植片対宿主病(GVHD)、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性溶血性貧血、ロフグレン症候群、ベーチェット病、ネフローゼ症候群、ブドウ膜炎、乾癬性関節炎、乾癬(尋常性乾癬、濃疱性乾癬)、骨折、骨疾患、骨粗鬆症、及び全ての細菌、真菌、ウイルス感染性疾患、並びに真核寄生生物による感染からなる群から選択される疾患の予防及び/又は治療における使用のための構成2〜9のいずれか1項記載の医薬組成物又はワクチン組成物であって、該医薬組成物がp75NTRシグナル伝達のアンタゴニスト又はp75NTRシグナル伝達のアゴニストから選択される少なくとも1つの化合物を含む、前記医薬組成物又はワクチン組成物。
(構成13)
p75NTRシグナル伝達のアゴニスト及びアンタゴニストをスクリーニングする方法であって:
・神経成長因子受容体p75NTRを発現する、初代又はインビトロで生成させたヒト又は動物形質細胞様樹状細胞(PDC)又はPDC細胞株を、試験物質と接触させる工程;
・接触させた該ヒト又は動物初代PDC又はPDC細胞株を、p75NTRシグナル伝達をもたらすのに十分な期間にわたりインキュベートする工程;
・該初代又はインビトロで生成させたヒト又は動物PDC又はPDC細胞株に対する、該試験物質の作用を決定する工程;
・接触させた該初代又はインビトロで生成させたヒト又は動物PDC又はPDC細胞株における該試験物質の作用を、対照細胞又は対照細胞株と比較する工程;及び
・該初代又はインビトロで生成させたヒト又は動物PDC又はPDC細胞株におけるp75NTRシグナル伝達を作動させる、又は該シグナル伝達と拮抗する試験物質を選択する工程、を含む、前記スクリーニング方法。
(構成14)
前記ヒト又は動物PDC又はPDC細胞株が、前記神経成長因子受容体p75NTR及び/又はToll様受容体の群から選択される少なくとも1つのタンパク質、好ましくはTLR7又はTLR9を発現する、構成13記載のスクリーニング方法。
(構成15)
前記ヒト又は動物PDCが、p75NTR、及び/又はTLR9、TLR7、TRAF3、及びTRAF6からなる群から選択される、少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子操作されたトランスジェニック細胞又はトランスジェニック細胞株である、構成13又は14記載のスクリーニング方法。
(構成16)
前記対照細胞又は対照細胞株が、ヒト又は動物初代細胞、最も好適にはPDCであるか;又はp75NTRを天然には発現しない細胞、又はp75NTRがノックアウトされた細胞、又はp75NTRの発現が低下するか、若しくは阻害された細胞、又はp75NTRシグナル伝達が遮断され、阻害され、若しくは低下した細胞である、構成13〜15のいずれか1項記載のスクリーニング方法。
(構成17)
p75NTRを発現するPDC又はPDC細胞株を、T細胞とコインキュベートする、構成13〜16のいずれか1項記載の方法であって:
・前記神経成長因子受容体p75NTRを発現するヒト又は動物PDC、又はPDC細胞、又はPDC細胞株をT細胞とコインキュベートし、試験物質と接触させる工程;
・該ヒト又は動物PDC又はPDC細胞株と、該T細胞とを接触させた共培養物を、p75NTRシグナル伝達をもたらすのに十分な期間にわたりインキュベートする工程;
・該PDC若しくはPDC細胞株、及び/又は該T細胞への該試験物質の作用を決定する工程;
・接触させたPDC若しくはPDC細胞株、及び/又はT細胞における該試験物質の作用を、対照細胞若しくは対照細胞株、及び/又はT細胞と比較する工程;並びに
・p75NTRシグナル伝達を作動させる、又は該シグナル伝達と拮抗する試験物質を選択する工程、を含む、前記方法。
(構成18)
前記神経成長因子受容体p75NTRを発現するヒト又は動物PDC又はPDC細胞株を、前記試験物質と接触させる工程が、天然又は人工のp75NTRのリガンドの存在下、該試験物質及びp75NTRタンパク質の相互作用、並びに/又は該試験物質のp75NTRの天然のリガンドとの相互作用を可能とする条件下で実施される、構成13〜17のいずれか1項記載のスクリーニング方法。
(構成19)
前記PDC又は細胞又はPDC細胞株を、それらを前記スクリーニング方法において使用する前又は間に、好適には少なくとも1つのToll様受容体シグナル伝達のアゴニスト、好ましくはTLR7及び/又はTLR9のアゴニストにより前もって活性化させる、構成13〜18のいずれか1項記載のスクリーニング方法。
(構成20)
アッセイにおける前記p75NTRシグナル伝達への前記試験物質の拮抗性又は作動性の作用が、サイトカインの発現分析、並びに/又は細胞内シグナル伝達カスケードの分析、並びに/又は表面マーカーの発現分析、並びに/又は外来抗原の取り込み、細胞内プロセシング、及び提示の測定、並びに/又はT細胞の分析、例えば表面マーカー及び転写調節因子の発現、分化、サイトカイン分泌、抗原特異性、増殖、並びに転写調節因子及びシグナル伝達カスケードの構成要素の活性化に基づいて測定される、構成13〜19のいずれか1項記載のスクリーニング方法。
(構成21)
前記方法がインビボで実施され、p75NTR及び/又は少なくとも1つのToll様受容体、好ましくはTLR7及び/又はTLR9を発現する前記PDC又はPDC細胞株が、動物モデル、例えばOVAにより誘発されたアレルギー性喘息のモデル、アレルギー性疾患の別のモデル、EAEモデル、糖尿病モデル、SLEモデル、移植モデル、GvHDモデル、及び腫瘍モデルのような、免疫性、炎症性、又は増殖性の疾患に特異的な動物モデルに投与された点において特徴づけられる、構成13〜20のいずれか1項記載のスクリーニング方法。
(構成22)
試験物質の前記動物モデルにおける前記拮抗性又は作動性の作用が、対照動物、好ましくは少なくともPDCを含むが、該PDCにはp75NTRが発現していないか、より低いレベルで発現している対照動物、或いは適用されるPDC若しくはPDC細胞株が、p75NTRの低下した若しくは阻害された発現を示すか、又は遮断された、阻害された、若しくは低下したp75NTRシグナル伝達を示す対照動物の存在下で決定される、構成21記載のスクリーニング方法。