特許第6720172号(P6720172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720172
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】軟質及び可撓性ポリオレフィン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/20 20060101AFI20200629BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20200629BHJP
   B65D 53/00 20060101ALI20200629BHJP
   B29C 43/02 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   C08L23/20
   C08L23/10
   B65D53/00 200
   B29C43/02
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-530666(P2017-530666)
(86)(22)【出願日】2015年11月17日
(65)【公表番号】特表2018-501350(P2018-501350A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2015076770
(87)【国際公開番号】WO2016096281
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2017年6月8日
(31)【優先権主張番号】14199203.2
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ロベルタ・マーチニ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・スパタロ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・パスクァーリ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルカ・ムサッキ
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−265709(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02631271(EP,A1)
【文献】 特表2012−512919(JP,A)
【文献】 特開平08−269258(JP,A)
【文献】 特開昭63−072733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン組成物を含むライナー形態の成形物品であって、
前記ポリオレフィン組成物が、2回目の加熱走査にてDSCで測定した溶融エンタルピーΔHfusが7〜30J/gであるポリオレフィン組成物であり、
A)最大18モル%の共重合エチレン含量を有し、2回目の加熱走査にてDSCで検出可能な溶融ピークを有さないエチレンとブテン−1の共重合体63〜78重量%、及
B)2回目の加熱走査にてDSCで測定した溶融温度Tが130℃〜165℃である、(i)プロピレン単独重合体、又は(ii)プロピレン共重合体、又は(iii)、(i)と(ii)中二つ以上の混合物22〜37重量%を含み、
ここで、A)とB)の量は、A)+B)の総量を基準とし、DSCの2回目の加熱走査は、10℃/分に相応する走査速度で200℃まで1回目の加熱をし、200℃で5分間維持し、10℃/分に相応する走査速度で−20℃に冷却し、−20℃で5分放置した後、分当り10℃の加熱速度で200℃に加熱することによって行われるポリオレフィン組成物である、成形物品。
【請求項2】
0.5〜3g/10分のMIEを有し、ここで、MIEがISO 1133によって測定された2.16kgの荷重下で190℃でのメルトフローインデックスである、請求項1に記載の成形物品。
【請求項3】
150MPa以下の屈曲弾性率を有する、請求項1又は2に記載の成形物品。
【請求項4】
前記ブテン−1共重合体成分A)が80以下のショアAを有する、請求項1又は2に記載の成形物品。
【請求項5】
63〜69重量%のA)及び31〜37重量%のB)を含む、請求項1又は2に記載の成形物品。
【請求項6】
前記ブテン−1共重合体成分A)が下記の付加的な特徴中、少なくとも一つを有する、請求項1に記載の成形物品。
−MIEが0.5〜3g/10分であり、ここで、MIEがISO 1133によって測定された2.16kgの荷重下で190℃でのメルトフローインデックスであり、
−共重合エチレン含量の下限が12モル%であり、
−ショアA値が80以下であり、
−ショアD値が20以下であり、
−Mw/Mn値(ここで、Mwは、重量平均モル質量であり、Mnは数平均分子量であり、いずれもGPCによって測定される)が3以下であり、
−23℃(ISO 2285)の100%変形で引張永久歪みが30%未満であり、
−アイソタクチックペンタド形態のブテン−1単位のパーセント(mmmm%)が80%超えであり、
−ISO 527によって測定された引張破断応力が3MPa〜20MPaであり、
−ISO 527によって測定された引張破断伸度が550%〜1000%であり、
−固有粘度(I.V.)が1dl/g以上であり、ここで、上限は3dl/gであり、
−X−線によって測定された結晶化度が30%未満であり、
−密度が0.895g/cm下であり、
−0℃でキシレン不溶性分画の含量が15重量%未満である。
【請求項7】
プロピレン単独重合体又は共重合体成分B)が0.5〜9g/10分のMIL値を有し、MILがISO 1133によって測定された2.16kgの荷重下で230℃でのメルトフローインデックスである、請求項1に記載の成形物品。
【請求項8】
請求項1に記載のライナーを含む、ツイスト閉鎖体。
【請求項9】
食品容器で使用するための、請求項8に記載のツイスト閉鎖体。
【請求項10】
プレス−オン/プレス−オフのキャップ形態である、請求項8又は9に記載のツイスト閉鎖体。
【請求項11】
a)溶融状態のポリオレフィン組成物を閉鎖体の内部表面上に配置する段階、及び
b)前記配置されたポリオレフィン組成物を成形する段階を含む請求項1に記載のライナーを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は良好な引張及び弾性特性と共に、低いショア硬度値を有する可撓性及び熱可塑性ポリオレフィン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
良好な熱可塑性挙動を維持しつつ高い可撓性を有するポリオレフィン組成物が当該記述分野において開示されている。これらは、ポリオレフィンの代表的な重要な特性(化学的慣性、機械的性質及無毒性等)によって多くの分野で使用されている。
【0003】
これらは、一般的に多様な相対的量で結晶質及び非結晶質部分を含む。
【0004】
このような結晶質及び非結晶質部分は、同様の重合体鎖中に及び/又は別個の相中に存在することができる。
【0005】
このような部分の化学的組成、これらの相対的量及びこれらがポリオレフィン組成物の中で組合される方法によって異なる特性のセットが得られる。
【0006】
しかし、可撓性、柔軟性及び熱可塑性挙動の良好なバランスを達成することは常に難しい。
【0007】
可撓性及び熱可塑性組成物の例がPCT公開公報WO2009/080485において提示されており、ここには、プロピレン及びヘキセン−1の結晶性共重合体を高溶解性で、高度に非結晶のエチレン共重合体と組み合わせることによって低い屈曲弾性率及びショア硬度が得られる。
【0008】
特定のブテン−1重合体を少量のプロピレン重合体と組み合わせることで、優秀で特異な特性のセットを有する可撓性ポリオレフィン組成物が得られることが明らかになった。
【0009】
このような特性によって閉鎖体用ライナーを製造するための組成物を使用して堅固で耐久性のあるシール(seal)を提供することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、2回目の加熱走査にてDSC(示差走査熱量計)で測定した溶融エンタルピーΔHfusが7〜30J/g、好ましくは8〜28J/gであるポリオレフィン組成物であり、
A)最大18モル%の共重合エチレン含量を有し、2回目の加熱走査にてDSCで検出可能な溶融ピークを有さないエチレンとブテン−1の共重合体63〜78重量%、好ましくは64〜76重量%、及び
B)2回目の加熱走査にてDSCで測定した溶融温度Tが130℃〜165℃、好ましくは、131〜165℃、より好ましくは131〜160℃である、(i)プロピレン単独重合体、又は(ii)プロピレン共重合体、又は(iii)、(i)と(ii)のうち一つ以上の混合物22〜37重量%、好ましくは24〜36重量%を含み、
ここで、A)とB)の量は、A)+B)の総量を基準とし、DSCの2回目の加熱走査は、分当り10℃の加熱速度で行われるポリオレフィン組成物を提供する。
【0011】
本明細書で提供される組成物は、溶融エンタルピー値によって明らかなように、結晶質分画の存在によって依然として熱可塑性挙動を維持しつつ高い柔軟性(ショアAが90未満)、良好な引張特性(破断伸度900〜1000%)及び弾性特性(22℃で圧縮永久歪み50未満)を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で提供されるポリオレフィン組成物は、低い屈曲弾性率値、好ましくは150MPa以下、より好ましくは100MPa以下、特に150又は100〜20MPaを有する。
【0013】
予め定義された重合体成分A)及びB)の特に好ましい相対的量は、達成される低い圧縮永久歪み値によってA)+B)の総量基準で、A)が69重量%以下及びB)が31重量%以上、従って、A)が63〜69重量%及びB)が31〜37重量%、又はA)が64〜69重量%及びB)が31〜36重量%、さらにより好ましくは、A)+B)の総量基準で、A)が63〜68重量%及びB)が32〜37重量%、又はA)が64〜68重量%及びB)が32〜36重量%である。
【0014】
このような好ましい量を組み合わせて、成分B)はプロピレン重合体(i)又はプロピレン単独重合体とプロピレン共重合体の混合物(iii)が最も好ましい。
【0015】
A)+B)の総量基準で、70〜78重量%、好ましくは70〜76重量%のA)及び22〜30重量%、好ましくは24〜30重量%のB)を含むポリオレフィン組成物は押出物品及び特に閉鎖体用ライナーの製造で依然として特に価値がある。
【0016】
また、本明細書で提供されるポリオレフィン組成物は、プロピレン単独共重合体又は共重合体成分B)の溶融温度Tと同様であるか、近似した溶融温度T、つまり、130℃〜165℃、好ましくは132℃〜165℃、より好ましくは132〜160℃の溶融温度Tを有する。
【0017】
一般的に、プロピレン単独重合体又は共重合体成分B)の2回目のDSC走査及び前記温度範囲においてポリオレフィン組成物の2回目のDSC走査で単一溶融ピークが検出される。
【0018】
一つ以上のピークが検出される場合、前記温度範囲で最も強い溶融ピークの温度は、成分B)及びA)及びB)を含むポリオレフィン組成物の全てに対するT値として取られる。
【0019】
従って、本明細書において提供されるポリオレフィン組成物のΔHfus値は、130℃〜160℃のDSC温度範囲で溶融ピークの面積又は溶融ピークの総面積(二つ以上である場合)によって付与されることが好ましい。
【0020】
前記組成物に対するMIEの好ましい値は、0.5〜8g/10分であり、MIEは、ISO 1133によって測定された2.16kgの荷重下で190℃でのメルトフローインデックスである。
【0021】
前記組成物に対する好ましいショアA値は、90未満、特に88以下であり、下限は70である。
【0022】
相応して、ショアD値は、20以下、特に20〜5、より好ましくは20未満、特に20〜5未満である。
【0023】
溶融及び冷却直後のブテン−1共重合体成分A)は、2回目の加熱走査で溶融ピークを示さないが、結晶化可能である。つまり、溶融された約10日後に前記重合体は測定可能な溶融点及びDSCで測定した溶融エンタルピーを示す。言い換えれば、ブテン−1共重合体は、実験部分において以下に記述されるDSC方法によって試料の熱履歴を除去した後に測定されたポリブテン−1の結晶化度(TmII)DSCに起因する溶融温度を示さない。
【0024】
また、前記ブテン−1共重合体成分A)は、下記の付加的な特性のうち少なくとも一つを有し得る。
−MIEが0.5〜3g/10分であり、
−共重合エチレン含量の下限が12モル%であり、
−ショアA値が80以下、より好ましくは70以下、特に80〜40又は70〜40であり、
−ショアD値が20以下、特に20〜5、より好ましくは20未満、特に20〜5未満であり、
−Mw/Mn値(ここで、Mwは、重量平均モル質量であり、Mnは数平均分子量であり、いずれもGPCによって測定される)が3以下、特に3〜1.5であり、
−23℃(ISO 2285)の100%変形で引張永久歪みが30%未満、より好ましくは20%以下であり、ここで、下限は5であり、
−アイソタクチックペンタド形態のブテン−1単位のパーセント(mmmm%)が80%超え、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上であり、ここで、上限は99%であり、
−ISO 527によって測定された引張破断応力が3MPa〜20MPa、より好ましくは4MPa〜13MPaであり、
−ISO 527によって測定された引張破断伸度が550%〜1000%、より好ましくは700%〜1000%であり、
−固有粘度(I.V.)が1dl/g以上、より好ましくは1.5dl/g以上、ここで、上限は3dl/gであり、
−X-線によって測定された結晶化度が30%未満、より好ましくは20%未満であり、
−密度が0.895g/cm以下、より好ましくは0.875g/cm以下であり、ここで、下限は0.86g/cmであり、
−0℃でキシレン不溶性分画の含量が15重量%未満であり、ここで、下限は0%である。
【0025】
ブテン−1共重合体成分A)は、
−立体規則性メタロセン化合物、
−アルキルメタロセン陽イオンを形成できるアルモキサン又は化合物、及び任意に有機アルミニウム化合物を接触させて得られるメタロセン触媒系の存在下で単量体を重合させることで得ることができる。
【0026】
好ましくは、立体剛性メタロセン化合物は下記化学式(I)に属する。
【0027】
【化1】
【0028】
前記式中で、
Mは、第4族に属するものから選択された転移金属の原子であり、好ましくはMはジルコニウムであり、
Xは、お互い同一であるか異なり、水素原子、ハロゲン原子、R、OR、OR’O、OSOCF、OCOR、SR、NR又はPR基であり、ここで、Rは直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和のC−C20−アルキル、C−C20−シクロアルキル、C−C20−アリール、C−C20−アルキルアリール又はC−C20−アリールアルキルラジカルであり、これらは、周期率表第13〜17族に属するヘテロ原子を任意に含み、R’はC−C20−アルキルリデン、C−C20−アリーリデン、C−C20−アルキルアリーリデン、又はC−C20−アリールアルキリデンラジカルであり、好ましくはXは水素原子、ハロゲン原子、OR’O又はR基であり、より好ましくはXは塩素又はメチルラジカルであり、
1、R2、R5、R6、R7、R8及びR9はお互い同一であるか異なり、水素原子又は直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和のC−C20−アルキル、C−C20−シクロアルキル、C−C20−アリール、C−C20−アルキルアリール又はC−C20−アリールであり、これらは、元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を任意に含有し、又はR及びR及び/又はR8及びRは、任意に飽和又は不飽和5員又は6員環を形成することができ、前記環は置換基でC1−C20−アルキルラジカルを有し得、但し、R及びR中少なくとも一つは、元素周期律表の第3〜17族に属するヘテロ原子を任意に含有する、直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和C−C20−アルキルラジカルであり、好ましくはC−C10−アルキルラジカルであり、
及びRは、お互い同一であるか異なり、元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を任意に含有する直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和C−C20−アルキルラジカルであり、好ましくはR及びRはお互いに同一であるか異なり、C−C10−アルキルラジカルであり、より好ましくはRはメチル又はエチルラジカルであり、Rはメチル、エチル又はイソプロピルラジカルである。
【0029】
好ましくは、化学式(I)の化合物は下記化学式(Ia)を有する。
【0030】
【化2】
【0031】
前記式中で、
M、X、R、R、R、R、R及びRは前記に定義したとおりであり、
は、元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を任意に含有する直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和C−C20−アルキルラジカルであり、好ましくはRはC−C10−アルキルラジカルであり、より好ましくはRはメチル、又はエチルラジカルである。
【0032】
メタロセン化合物の具体例としては、ジメチルシランジイル{(1−(2,4,7−トリメチルインデニル)−7−(2,5−ジメチル−シクロペンタ[1,2−b:4,3−b’]ジチオフェン)}ジルコニウムジクロライド及びジメチルシランジイル{(1−(2,4,7−トリメチルインデニル)−7−(2,5−ジメチル−シクロペンタ[1,2−b:4,3−b’]ジチオフェン)}ジルコニウムジメチルがある。
【0033】
アルモキサンの例としては、メチルアルモキサン(MAO)、テトラ−(イソブチル)アルモキサン(TIBAO)、テトラ−(2,4,4−トリメチル−ペンチル)アルモキサン(TIOAO)、テトラ−(2,3−ジメチル)アルモキサン(TDMBAO)及びテトラ−(2,3,3−トリメチルブチル)アルモキサン(TTMBAO)がある。
【0034】
アルキルメタロセン陽イオンを形成することのできる化合物の例は、Dの化合物であり、ここで、Dは陽性子を提供して化学式(I)のメタロセンの置換体Xと非可塑的に反応できるブレンステッド酸であり、また、Eは二つの化合物の反応に起因する活性触媒種を安定化させ、オレフィン単量体によって除去できるように十分に不安定な常用性陰イオンである。好ましくは、陰イオンEは一つ以上のホウ素原子を含む。
【0035】
有機アルミニウム化合物の例としては、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)、トリス(2,4,4−トリメチル−ペンチル)アルミニウム(TIOA)、トリス(2,3−ジメチルブチル)アルミニウム(TDMBA)、及びトリス(2,3,3−トリメチルブチル)アルミニウム(TTMBA)である。
【0036】
前記触媒系及びこのような触媒系を使用する重合工程の例は、WO2004/099269及びWO2009/000637で探すことができる。
【0037】
一般的に、ブテン−1共重合体成分A)の製造のための重合工程は、公知の技術、例えば、希釈剤として、液体不活性炭化水素を使用するスラリー重合又は例えば、反応媒体に液体ブテン−1を使用する溶液重合によって行うことができる。また、一つ以上の流動層又は機械的に攪拌された反応器で作動する、気相で重合工程を行うことが可能になり得る。反応媒体として液体ブテン−1で行われる重合が好ましい。
【0038】
従って、重合温度は、一般的に−100℃〜200℃、好ましくは20℃〜120℃、より好ましくは40℃〜90℃、最も好ましくは50℃〜80℃である。
【0039】
重合圧力は、一般的に0.5〜100barを含む。重合は、分子量調節剤の濃度、共単量体の濃度、温度、圧力等の同一であるか異なる反応条件下で作用できる一つ以上の反応器で行うことができる。
【0040】
プロピレン単独の重合体又は共重合体成分B)は、前記融点値によって立証されるような半結晶質重合体であり、アイソタクチック類型の立体規則性を有する。
【0041】
好ましくは、室温(約25℃)でキシレンに対する溶解度が25重量%以下であり、下限は0.5重量%である。
【0042】
また、好ましくは0.5〜9g/10分、より好ましくは1〜8g/10分のMIL値を有し、ここで、MILは、ISO 1133によって測定される2.16kgの荷重下で230℃でのメルトフローインデックスである。
【0043】
共重合体B)の好ましい例は、エチレン、C−C10アルファ−オレフィン及びこれらの組合物から選択された一つ以上の共単量体とプロピレンの共重合体である。
【0044】
前記定義から「共重合体」という用語は、一つ以上の種類の共単量体を含有する重合体を含むことが明らかである。
【0045】
B)で共単量体の好ましい量は、関連の共重合体の重量を基準に1〜15重量%、特に2〜10重量%である。
【0046】
前記C−C10アルファ−オレフィンは、化学式CH=CHR(ここで、Rは2〜8個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状、アルキルラジカル又はアリールラジカルである)を有するオレフィンから選択される。
【0047】
−C10アルファ−オレフィンの具体例として、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1及びオクテン−1である。
【0048】
プロピレン共重合体B)で好ましい共単量体は、エチレン、ブテン−1及びヘキセン−1である。
【0049】
プロピレン単独重合体又は共重合体成分B)は、重合工程でチーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン系触媒系を使用して製造することができる。
【0050】
典型的に、チーグラー・ナッタ触媒は、元素周期律表の第1族、第2族、又は第13族の有機金属化合物と元素周期律表の第4族〜第10族の転移金属化合物(新規表記法)の反応生成物を含む。特に、転移金属化合物は、Ti、V、Zr、Cr及びHfの化合物の中から選択され、好ましくは MgCl2上に担持される。
【0051】
特に好ましい触媒は、元素周期律表の第1族、第2族又は第13族の前記有機金属化合物とTi化合物及びMgCl2上に担持された電子供与体化合物を含む固体触媒成分の反応生成物を含む。
【0052】
好ましい有機金属化合物は、アルミニウムアルキル化合物である。
【0053】
従って、好ましいチーグラー・ナッタ触媒は以下の反応生成物を含むものである、
1)Ti化合物及びMgCl2上に担持された電子供与体(内部電子供与体)を含む固体触媒成分、
2)アルミニウムアルキル化合物(共触媒)、及び任意に、
3)電子供与体化合物(外部電子供与体)。
【0054】
固体触媒成分(1)はエーテル、ケトン、ラクトン、N、P及び/又はS原子を含有する化合物、及びモノ−及びジカルボン酸エステルの中で一般的に選択された化合物を電子供与体として含有する。
【0055】
前述した特性を有する触媒は特許文献によく知られており、米国特許第4,399,054及び欧州特許第45977号に記載された触媒が特に有利である。
【0056】
前記電子供与体化合物中でも特にフタル酸エステル、好ましくはジイソブチルプタレート及びコハク酸エステルが適合する。
【0057】
他の電子供与体は、公開された欧州特許出願EP−A−361 493及び728769に例示されたように1,3−ジエーテルが特に適合する。
【0058】
共触媒(2)として、好ましくはAl−トリエチル、Al−トリイソブチル及びAl−トリ−n−ブチルのようなトリアルキルアルミニウム化合物を使用する。
【0059】
外部電子供与体(Al−アルキル化合物に添加される)として使用され得る電子供与体化合物(3)は、芳香族酸エステル(例えば、アルキルベンゾエート)、ヘテロサイクリック化合物(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及び2,6−ジイソプロピルピペリジン)、及び特に一つ以上のSi−OR結合(ここで、Rは炭化水素ラジカルである)を含有するケイ素化合物を含む。
【0060】
前記ケイ素化合物の例は、化学式RSi(OR、ここで、a及びbは0〜2の定数であり、cは1〜3の定数であり、合計(a+b+c)は4であり、R、R及びRは任意にヘテロ原子を含有する1〜18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル又はアリールラジカルである。
【0061】
ケイ素化合物の有用な例は、(tert−ブチル)Si(OCH、(シクロヘキシル)(メチル)Si(OCH、(フェニル)Si(OCH及び(シクロペンチル)Si(OCHである。
【0062】
前で言及さえた1,3−ジエーテルはまた他の供与体として使用するのに適合する。内部供与体が前記1,3−ジエーテルの一つである場合に、外部供与体は省略することができる。
【0063】
触媒は、少量のオレフィン(予備の重合)で予備接触させて、触媒を炭化水素溶媒中に懸濁し、室温〜60℃の温度で重合させることで、触媒重量の0.5〜3倍量の重合体を製造することができる。
【0064】
操作はまた、液状モノマーで起こり得、この場合に触媒の重量の最高1000倍量のポリマーを生成する。
【0065】
連続又は配置式であり得る重合工程は、公知の技術によって前記触媒の存在下で行い、液状で、不活性の希釈剤の存在又は不在下で、又は気相で、又は混合液−ガス技術によって操作される。
【0066】
重合反応時間、圧力及び温度は重要ではないが、温度が20〜100℃であることが好ましい。圧力は大気圧以上であってもよい。
【0067】
前記MFR値に起因する分子量の調節は、公知の調節剤、特に水素を使用して行う。
【0068】
メタロセン系触媒システムの好ましい例は、US2006/0020096及びWO98/040419に記載されている。
【0069】
単独重合体又は共重合体成分B)をメタロセン系触媒系で製造するための重合条件は、一般的にチーグラー・ナッタ触媒で使用されるものと異なる必要はない。
【0070】
本発明のポリオレフィン組成物は、当分野において通常的に使用される添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、着色剤及び充填剤を含有することができる。
【0071】
これらはまた、追加のポリオレフィン、特に結晶質エチレン単独重合体及びプロピレン及び/又はC−C10α−オレフィン、例えば、HDPE、LLDPE又はLDPEとエチレンの共重合体を含有することができる。
【0072】
存在することのできる他の追加のポリオレフィンはプロフィレン及び/又は高級アルファーオレフィン、特にブテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1とエチレンの共重合体のようなエラストマー共重合体である。このような共重合体材料は、一般的にEPR又はEPDM共重合体として知られている。
【0073】
前記追加のポリオレフィンの好ましい量は、ポリオレフィン組成物の総重量に対して1〜10重量%、より好ましくは3〜7重量%である。
【0074】
ポリオレフィン組成物は成分を共に混合し、混合物を押出し、生成された組成物を公知の技術及び装置を使用してペレット化することによって製造することができる。
【0075】
本発明はまた前記ポリオレフィン組成物で製造されるか又は前記ポリオレフィン組成物を含む最終物品を提供する。
【0076】
このような物品は、軟質であり可撓性である。
【0077】
一般的に、本発明のポリオレフィン組成物は当業界でよく知られた装置及び工程を使用して押出によって最終物品を製造するのに適合する。
【0078】
前記最終物品の具体例としては、ライナー、特に閉鎖体用ライナー、好ましくはプラスチック及び/又は金属閉鎖体である。
【0079】
閉鎖体用ライナーは、一般的にガラス又はプラスチック材料で製造された坪及びビンのような容器のツイスト閉鎖体(twist closure)に広く使用される。
【0080】
ツイスト閉鎖体は、一般的に金属又はプラスチックで製造された円形形態のキャップ形態であり、容器のネジ型、円形ネック部の開口部に向かう内面上にライナーを受容する。
【0081】
ライナーは開口部のリム(rim)に硬いシールを実施するのに使用される。
【0082】
閉鎖体をツイスト(回転)させることによって容器を閉め開けできる。
【0083】
しかし、プレース−オン/ツイスト−オフ(登録商標)キャップは、容器のネック部のネジ山要素に対してライナーの弾性変形によって容器を閉めるためにまず容器に加圧し、続いてツイストして開くようにする。
【0084】
従って、閉鎖体形態によって、ライナーは様々な種類の形状及び機能を有し得る。
【0085】
特に、一般的に密封機能を有するが、プレース−オン/ツイスト−オフ(登録商標)キャップでは密封機能と保持機能を全て有する。
【0086】
他の種類の閉鎖体で、保持機能は閉鎖体の本体の糸又はラグによって行われる。
【0087】
さらに、容器の使用によって、閉鎖体は他のたまに厳格な要求条件が適用され、その達成においてガスケットが重要な役割をする。
【0088】
前記閉鎖体は特に食品及び薬剤包装に使用するためのものである。
【0089】
本発明のポリオレフィン組成物を使用することにより、空気及び液体密封ライナーが得られる。
【0090】
このようなライナーは、結晶性重合体の含量によって、高温処理(殺菌)にも耐えられる。
【0091】
一般的に、ライナーは本発明のポリオレフィン組成物から以下の段階を含む方法によって製造される。
a)溶融状態のポリオレフィン組成物を閉鎖体の内部表面上に配置する段階、及び
b)前記配置されたポリオレフィン組成物を成形する段階。
【0092】
前記定義された段階a)は、一般的に当業界に公知の押出機及び計量装置を使用して行い、ポリオレフィン組成物の配置制御を達成する。「制御」とは、配置された材料の量と模様が制御されることを意味する。
【0093】
一般的に段階a)に適用される押出温度は160〜220℃である。
【0094】
段階a)を行う前に、閉鎖体の内面はワニス又はラッカー(lacquer)の保護膜でコーティングされ得る。
【0095】
前記定義された段階b)は溶融ポリオレフィン組成物を閉鎖体の内面に対して圧縮成形することによって行われる。
【0096】
前記記述された工程及び装置は例えばUS5,451,360に開示されたように当業界によく知られている。
【0097】
得られたライナーは、閉鎖体の最終用途によって可変的な厚さの特に「O−リング」又は平たいフィルムのような相違な形状を有し得る。
【0098】
ガスケットが得られる本発明のポリオレフィン組成物の前述した特性から、このようなライナーは軟質で弾力性があるということが直ちに明白であり、従って、長時間の使用後にも堅固で耐久性のあるシールを提供する。
【0099】
他の重要な利点は、前記特性が軟化剤を添加せずに得られるということである。前記軟化剤は、一般的に鉱油のような低分子量の物質に製造され、例えば、食品の遊離脂肪/オイル成分との接触によって容易に抽出可能である。
【0100】
このようなライナーは、結晶性重合体の含量によって、一般的に110〜125℃の温度で発生する高温処理(殺菌)にも耐えられる。
【実施例】
【0101】
本明細書で提供される様々な実施形態、組成物及び方法の実施及び利点は以下の実施例で開施される。これら実施例は単なる例示的なものであり、いかなる方式にも本発明の範囲を限定しよとするものではない。
【0102】
下記分析方法は、重合体組成物を特性化するために使用される。
【0103】
熱的性質(溶融温度及びエンタルピー)
パーキンエルマー(Perkin Elmer)DSC−7装置社で示差走査熱量計(DSC)によって測定される。
ブテン−1共重合体A)の溶融温度は下記方法によって測定した。
TmII(2回目の加熱走査で測定):重合から得られた計量したサンプル(5〜10mg)をアルミニウムパンに密封し、200℃まで10℃/分に相応する走査速度で加熱した。サンプルを200℃で5分間維持して全ての結晶体を完全に溶融させ、サンプルの熱履歴を除去した。続いて、10℃/分に相応する走査速度で−20℃まで冷却した後、ピーク温度を結晶化温度(Tc)に取った。−20℃で5分間放置した後、サンプルを200℃まで10℃/分に相応する走査速度で2回目の加熱をした。このような2回目の加熱操作で、ピーク温度はポリブテン−1(PB)結晶形態II(TmII)の溶融温度及び全体の溶融エンタルピー(ΔHfII)としての面積にした。
【0104】
本発明のポリオレフィン組成物のブテン−1共重合体成分A)はTmIIピークを有しない。
−TmIを測定するためにサンプルを溶かし、200℃で5分間保持した後、10℃/分の冷却速度で20℃まで冷却した。
【0105】
続いて、サンプルを室温で10日間貯蔵した。10日後、サンプルをDSCで処理し、−20℃に冷却した後、200℃で10℃/分に相応する走査速度で加熱した。この加熱操作で、サーモグラフィーの低音側から来る第1のピーク温度を溶融温度(TmI)とした。
【0106】
プロピレン単独重合体又は共重合体成分B)及び重合体成分A)及びB)を含む全体組成物の溶融温度をブテン−1共重合体成分A)のTmIIの測定に対して報告したような同様の条件下で2回目の加熱走査で測定した。
【0107】
成分B)及び実施例の全体組成は全て溶融温度Tmに相応する130〜165℃の単一溶融ピークを示す。
【0108】
全体組成物のこのような溶融ピークの面積は、ポリオレフィン組成物の溶融エンタルピーΔHfusとした。
【0109】
屈曲弾性率
標準ISO 178によって成形10日後に測定した。
【0110】
ショアA及びD
標準ISO 868によって成形10日後に測定した。
【0111】
引張応力及び破断伸度
圧縮成形プラークに対する標準ISO 527によって成形10日後に測定した。
【0112】
引張永久歪み(tension set
標準ISO 2285によって成形10日後に測定した。
【0113】
圧縮永久歪み(compression set
ISO 815によって成形10日後に測定した。
【0114】
MIE
190℃で2.16kgの荷重で標準ISO 1133によって測定した。
【0115】
MIL
標準ISO 1133によって230℃で2.16kgの荷重で測定した。
【0116】
固有粘度
135℃のテトラヒドロナフタレンの中で標準ASTM D 2857によって測定した。
【0117】
密度
23℃で標準ISO 1183によって測定した。
【0118】
共単量体の含量
IR分光法又はNMRによって測定した。
【0119】
特に、ブテン−1共重合体の場合、共重合体の13C−NMRスペクトルから共単量体の量を計算した。測定は、120℃で重水素化(dideuterated)1,1,2,2−テトラクロロエタン中の重合体溶液(8〜12重量%)で行った。13C NMRスペクトルは、H−13C−カップリングを除去するためのパルスとCPD(WALTZ16)間の15秒遅延、90°パルスを使用して120℃でフーリエ変換モードにて150.91MHzで作動するBrukerAV−600分光計で獲得した。約1500個のトランジェント(transient)は60ppm(0〜60ppm)のスペクトル窓を使用して32Kデータポイントとして貯蔵した。
【0120】
共重合体組成物
ダイアド(DIAD)分布は、下記関係式を使用して13C NMRスペクトルから計算した。
・PP=100 I/Σ
・PB=100 I/Σ
・BB=100(I−I19)/Σ
・PE=100(I+I)/Σ
・BE=100(I+I10)/Σ
・EE=100(0.5(I15+I+I10)+0.25(I14))/Σ
・ここで、Σ=I+I+I−I19+I+I+I+I10+0.5(I15+I+I10)+0.25(I14
・モル含量は、以下の関係式を使用して得られた。
・P(m%)=PP+0.5(PE+PB)
・B(m%)=BB+0.5(BE+PB)
・E(m%)=EE+0.5(PE+BE)
【0121】
、I、I、I、I、I、I、I10、I14、I15、I1913C NMRスペクトルにおけるピークの積分(基準として29.9ppmでEEEシークエンスのピーク)。これらピークは J.C.Randal Macromol.Chem Phys.,C29、201(1989)、M.Kakugo、Y.Naito、K.Mizunuma and T.Miyatake、Macromolecules、15、1150(1982)、及びH.N.Cheng、Journal of Polymer Science、Polymer Physics Edition、21、57(1983)によって割り当てた。これらは、表A(C.J.Carman、R.A.Harrington及びC.E.Wilkes、Macromolecules、10、536(1977)による命名法)に収録されている。
【0122】
【表A】
【0123】
プロピレン共重合体の場合、共単量体の含量は、フーリエ変換赤外線分光計(FTIR)で空気バックグラウンドに対するサンプルのIRスペクトルを収集することにより赤外線分光法によって測定する。機器データ収集媒介変数は次のようである。
−パージ時間:最小30秒、
−収集時間:最小3分、
−アポディゼーション:Happ−Genzel、
−解像度:2cm−1
【0124】
サンプルの準備
油圧プレスを使用して、二つのアルミニウムホイルの間に約1gのサンプルをプレスすることによって厚いシートが得られる。均質性が問題になる場合は、最小二度のプレス作業を進める。このシートから小さい部分を切断してフィルムを成形する。勧奨フィルムの厚さは0.02〜0.05cm(8〜20ミール)である。
【0125】
プレス温度は約1分間、180±10℃(356°F)及び約10kg/cm(142.2PSI)である。次に、圧力を解除してサンプルをプレスから出して室温まで冷却する。
【0126】
重合体の圧縮フィルムのスペクトルを吸光度対波数(cm−1)で記録する。以下の測定値を使用してエチレン及びブテン−1の含量を計算する。
−4482〜3950cm−1の間の組合吸収バンドの面積(At)。これは、膜厚の分光標準化に使用される。
−エチレンが存在する場合、アイソタクチック非活性化ポリプロピレンスペクトル及び続いてブテン−1が存在する場合、1,4−ブテン−1−プロピレンランダム共重合体の基準スペクトルの二つの適切な連続分光的減算後、750〜700cm−1の間の吸収バンドの面積(AC2)が800〜690cm−1の範囲である。
−ブテン−1が存在する場合、アイソタクチック非活性化ポリプロピレンスペクトル及び続いてエチレンが存在する場合、エチレン−プロピレンランダム共重合体の基準スペクトルの二つの適切な連続分光的減算後、769cm−1で吸収バンドの面積(AC2)が800〜690cm−1の範囲である。
【0127】
エチレン及びブテン−1の含量を計算するために、既知量のエチレン及びブテン−1のサンプルを使用して得られたエチレン及びブテン−1の較正直線が必要である。
【0128】
GPCによるMw/Mnの測定
平均Mw及びMn及びそこから誘導されたMw/Mnの測定は、4つのPLgel Olexis混合−ゲル(Polymer Laboratories)のカラムセット及びIR4赤外線検出器 (PolymerChar)が装着されたWaters GPCV2000装置を使用して行った。カラム寸法は、300×7.5mmであり、粒子の大きさは13μmであった。使用された移動相は1−2−4−トリクロロベンゼン(TCB)であり、その流速は、1.0mL/分を維持した。全ての測定は150℃で行った。溶液濃度は、TCBで0.1g/dlであり、分解を防止するために0.1g/lの2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した。GPC計算のために、ポリマーラボラトリーズによって供給された10個のポリスチレン(PS)標準サンプル(580〜8500000範囲のピーク分子量)を使用してユニバーサル検量線を得た。三次多項式フィットを使用して実験データを補間し関連検量線を得た。Empower(Waters)を使用してデータの獲得及び処理を行った。Mark−Houwink関係を利用して分子量の分布及び関連する平均分子量を決定した。K値は、PS及びPBに対してそれぞれKps=1.21×10−4dL/g及びKPB=1.78×10−4dL/gであり、Mark−Houwink指数は、PSの場合、α=0.706、そしてPBの場合、α=0.725を使用した。
【0129】
ブテン−1/エチレン共重合体の場合、データ評価に関する限り、分子量の全体範囲で組成が一定であり、Mark−Houwink関係のK値は、以下に方法されたように線形結合を使用して計算することに仮定される。
【0130】
【数1】
【0131】
ここでKEBは共重合体の常数であり、KPE(4.06×10−4dL/g)及びKPB(1.78×10−4dl/g)は、ポリエチレン及びポリブテンの常数であり、xE及びxBは、エチレン/ブテン−1重量%の含量である。Mark−Houwink指数α=0.725は組成と関係なく全てのブテン−1/エチレン共重合体に対して使用される。
【0132】
0℃(XS−0℃)でキシレンに可溶性及び不溶性の分画
2.5gの重合体サンプルを攪拌しながら135℃で250mLのキシレンに溶解させた。30分後、溶液を依然として攪拌しながら100℃に冷却した後、水及び氷浴に入れて0℃に冷却する。次に、溶液を水及び氷浴で1時間静置する。沈殿物をろ過紙でろ過した。ろ過する間、フラスコは、フラスコの内部温度を可能な限り0℃付近を維持するように水と氷浴に放置した。ろ過が完了すると、ろ液の温度を25℃で均衡とさせ、容積フラスコを水洗浴槽に約30分間沈漬した後、二つの50mLの一定分量で分割する。溶液の一定分量を窒素の流れ中で蒸発させ、残留物を一定の重量に到達するまで80℃にて真空下で乾燥した。二つの残留物間の重量を差は、3%未満でなければならない。そうでなければ、試験を繰り返す必要がある。従って、残留物の平均重量から重合体の可溶成分(0℃でキシレン可溶成分=XS 0℃)の重量%を計算する。0℃でO−キシレン不溶性分(0℃でキシレン不溶性分XI%0℃)は以下のとおりである。
XI%0℃=100−XS%0℃
【0133】
250℃(XS−250℃)でのキシレン中の可溶分画及び不溶分画
2.5gの重合体を135℃で250mLのキシレンに攪拌しながら溶解した。20分後、溶液を依然として攪拌しながら25℃に冷却した後、30分間静置させた。沈殿物をろ過紙でろ過し、溶液を窒素の流れ中で蒸発させて、残留物を一定の重量に到達するまで80℃にて真空下で乾燥した。従って、可溶性重合体(キシレン可溶成分−XS)と室温(25℃)で不溶性分の重量%を計算する。
【0134】
室温(25℃)でキシレンに不溶性の重合体の重量%は、重合体のアイソタクチック指数に考慮される。この値は、実質的にポリプロピレン重合体のアイソタクチック指数を定義する沸騰n−ヘプタンを使用した抽出によって決定されたアイソタクチック指数に実質的に相応する。
【0135】
アイソタクチックペンタド含量の測定
50mgの各サンプルを0.5mLのCClに溶解させた。
【0136】
13C NMRスペクトルはブルカー(Bruker)DPX−400(100.61MHz、90°パルス、パルス間の12秒遅延)から獲得した。各スペクトルに対して約3000号のトランジェントが貯蔵された。mmmmペンタドピーク(27.73ppm)を基準として使用した。
【0137】
微細構造分析は、文献(Macromolecules1991、24、2334−2340、by Asakura T.et Al.及びPolymer、1994、35、339、by Chujo R.et Al.)で記述されたとおり行った。
【0138】
ブテン−1共重合体に対するペンタド立体規則性(pentad tacticity)の百分率値(mmmm%)は、分枝状メチレン炭素のNMR領域で関連ペンタドシグナル(ピーク領域)から計算された立体規則性ペンタド(アイソタクチックペンタド)の百分率であり(BBBBBアイソタクチック配列に割当てられた27.73ppm)、同一領域に属する立体規則性ペンタドとこれらシグナルとの重畳を考慮する。
【0139】
X−線結晶化度の測定
X−線結晶化度は、固定スリットを有するCu−Kα1放射線を使用し、6秒毎に0.1°の段階で回折角2θ=5°及び2θ=35°間のスペクトルを収集するX−線回折粉末回折計で測定した。
【0140】
測定は、約1.5〜2.5mmの厚さ及び直径2.5〜4.0cmの直径を有するディスクの形態の圧縮成形された試片に対して行った。この試験片は、200℃±5℃の温度で10分間認知可能な圧力を加えずに圧縮成形プレスから得た後、約10kg/cmの圧力を約数秒間加えて、この最後の作業を約3秒間繰り返す。
【0141】
回折パターンを使用してスペクトル全体に対する適切な線形ベースラインを定義し、スペクトルプロファイルとベースライン間のカウント/秒・2θで表現される総面積(Ta)を計算することで結晶化度に必要な全ての成分を誘導した。次に、適した非晶質プロファイルは、二相モデルによって非晶質領域を結晶質領域と分離する全体のスペクトルによって定義される。従って、非晶質プロファイルとベースライン間の面積でカウント/秒・2θで示される非晶質領域(Aa)、及びCa=Ta−Aaとしてカウント/秒・2θで示される結晶質領域(Ca)を計算することができる。
【0142】
次に、サンプルの結晶化度は次の式によって計算した。
%Cr=100×Ca/Ta
【0143】
実施例1−4及び比較例1
実施例で使用した材料
PB−1:WO2009/000637に記載された方法によって製造され、ブテン−1/エチレン共重合体及びプロピレン共重合体組成物(I)の総重量に対して7重量%の量で添加されたプロピレン共重合体組成物(I)でインライン混合される16モル%共重合体エチレンを含有するブテン−1/エチレン共重合体。
【0144】
このようなプロピレン共重合体組成物(I)は、MFRLが5.5g/10分、総重合体エチレンの含量が3重量%、総重合ブテン−1の含量が6重量%、XS−25℃が19重量%及びTmが133℃であり、次の二つの成分ならなる。
【0145】
I’)35重量%のプロピレンとエチレンの共重合体(共重合体中に3.2重量%)及び
I”)65重量%のプロピレンとエチレンの共重合体(共重合体中に3.2重量%)及びブテン−1(共重合体中に6重量%)、ここで、I’)及びI”)の量は、I’)+I”)の総重量を表す、
PP−1:Tが158℃、MFRLが約7g/10分、XS−25℃が3重量%であるプロピレン単独重合体、
PP−2:Tが133℃、MFRLが約7g/10分及びXS−25℃が20重量%である6重量%のエチレンを含有するプロピレンとエチレンの共重合体、
安定化剤:0.05重量%のペンタエリトリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Irganox(登録商標)1010、BASFによって市販される)及び0.05重量%のトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスフェイト(Iragafos(登録商標)168、BASFによって市販される)の混合物、前記パーセント量は、ポリオレフィン組成物の総重量を基準とする、
潤滑剤:1重量%のエルカミド(erucamide)(Crodamide(登録商標)ER、Crodaによって市販される)、1重量%のオレアミド(Oleamide)(Crodamide(登録商標)OR、Crodaによって市販される)及び1重量%のステアリン酸グリセリル(Atmer(登録商標)129、Crodaによって市販される)の混合物、前記パーセント量は、前記ポリオレフィン組成物の総重量を基準とする、
顔料:二酸化チタニウムTi−Pure(登録商標)R−104、DuPontによって市販される。
【0146】
前記プロピレン重合体の含有量が少ないため、前記PB−1のDSC分析(2回目の走査)では溶融ピークが検出されなかった。
【0147】
前記材料を、下記条件下で、スクリュー直径が40mm及びスクリュー長さ/直径比が43:1である同時回転式2軸押出機Coperion ZSK40SCで溶融ブレンドする。
−180〜200℃の押出温度、
−220rpmのスクリュー回転速度、
−60kg/時間の生産速度
【0148】
このようにして得られた最終組成物の特性を表1で報告する。
【0149】
また、表1に前記比較のために前記PB−1(比較例1)の特性が報告されている。
【0150】
【表1】