特許第6720177号(P6720177)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720177
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】反対の極性の高分子電解質を含む懸濁液
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20200629BHJP
   C08F 2/18 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   C08L101/12
   C08F2/18
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-531717(P2017-531717)
(86)(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公表番号】特表2017-538017(P2017-538017A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】US2015065653
(87)【国際公開番号】WO2016106005
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2018年11月26日
(31)【優先権主張番号】62/095,378
(32)【優先日】2014年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・レイチャート
(72)【発明者】
【氏名】アルフレッド・ケイ・シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・エム・サヴォ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ローゼンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・シー・エヴェン
(72)【発明者】
【氏名】レスター・エイチ・マッキントッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・デイヴィッド・フィンチ
(72)【発明者】
【氏名】デカイ・ユー
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−509430(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/188221(WO,A1)
【文献】 特開2009−161737(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/129936(WO,A1)
【文献】 特開平10−152508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08F 2/00− 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に分散されている液滴を含む懸濁液であって、前記液滴が、
(a)1つ以上の水不溶性化合物と、
(b)極性を有するビニル高分子電解質(PED)と、を含み、
前記水性媒体が、前記高分子電解質(PED)の極性とは反対である極性を有する高分子電解質(PEW)を含む、懸濁液。
【請求項2】
前記懸濁液が、5〜10のpHを有する、請求項1に記載の懸濁液。
【請求項3】
前記高分子電解質(PED)が、負極性を有し、前記高分子電解質(PEW)が、正極性を有する、請求項1に記載の懸濁液。
【請求項4】
前記高分子電解質(PED)が、3モル%〜12モル%の量のイオン性モノマーの重合単位を含む、請求項1に記載の懸濁液。
【請求項5】
前記高分子電解質(PEW)が、40モル%〜100モル%の量のイオン性モノマーの重合単位を含む、請求項1に記載の懸濁液。
【請求項6】
懸濁液を作製する方法であって、
(A)
(a)1つ以上の水不溶性化合物(A)(a)、及び
(b)極性を有するビニル高分子電解質(PED)、を含む、非水溶液を提供することと、
(B)水性媒体中に溶解されている高分子電解質(PEW)を含む水溶液を提供することであって、前記高分子電解質(PEW)が、高分子電解質(PED)の極性とは反対の極性を有することと、
(C)前記非水溶液(A)を前記水溶液(B)と接触させることによって、混合物を形成することと、
(D)水性媒体中に液滴の懸濁液を生成するために混合物を撹拌することであって、液滴が、水不溶性化合物(A)(a)を含むこと、
を含む、懸濁液を作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水不溶性化合物の液滴の水性媒体中の懸濁液は、様々な目的に対して有用である。例えば、かかる液滴が、ビニルモノマー及び開始剤を含有するとき、モノマーは、重合を受けて、懸濁重合のプロセスにおいてポリマー粒子を形成し得る。かかるポリマー粒子は、例えば、吸着性である、またはイオン交換機能性を有する、またはこれらの両方である、樹脂としての目的を含む、様々な目的に対して有用である。かかる樹脂は、例えば、食料及び/または飲料の精製を含む、多様な目的に対して使用される。
【0002】
過去には、水不溶性ビニルモノマーの液滴の水性媒体中の懸濁液は、1つ以上の安定化化合物の添加によって安定化されており、一般的な安定化化合物は、ゼラチンである。ゼラチンは動物性生成物であるため、多くの消費者は、ゼラチンを使用して作製された樹脂との接触を通じて精製された食料または飲料の購入または消費を望まない。
【0003】
過去には、水不溶性化合物の液滴の一部の分散液は、非ポリマー表面活性剤を使用していた。非ポリマー表面活性剤(ヘキサデシルアミン等)の使用は、かかる表面活性剤が、非常に移動性であり、かかる表面活性剤を使用して作製された樹脂を汚染する可能性があり、かつ同様に、かかる樹脂で精製されたいかなる食料または飲料も、望ましくないほど高いレベルの表面活性剤を含有する可能性があることから、望ましくない。さらに、本発明を作製する過程において、非ポリマー表面活性剤の使用は、所望される機械的強度を有する液滴表面をもたらさないと判断されている。
【0004】
H.Monteillet等の(“Charge−driven co−assembly of polyelectrolytes across oil−water interfaces,”Soft Matter,2013,vol.9,p.11270−11275)は、エマルションを作製する際のポリ(フルオレン−コ−ベンゾチアジアゾン−コ−安息香酸)及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの使用を説明している。Monteilletらは、ポリ(フルオレン−コ−ベンゾチアジアゾン−コ−安息香酸)及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドから形成されるコアセルベートが、ポリ(フルオレン−コ−ベンゾチアジアゾン−コ−安息香酸)とポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとの間のアミド結合形成を介して架橋されない限り、彼らの方法が、高度に濃縮されたエマルションを安定化させるために十分ではないということを教示している。液滴中のビニル高分子電解質を使用する、水性媒体中の水不溶性化合物の液滴の分散液を提供することが所望される。良好な安定性を有する、水性媒体中の水不溶性化合物の液滴の分散液を提供することもまた、所望される。上昇した温度への曝露後に安定性を維持する、水性媒体中の水不溶性化合物の液滴の安定した分散液を提供することもまた、所望される。
【0005】
ゼラチンまたは非ポリマー表面活性剤のいずれかの存在を必要としない、水性媒体中の水不溶性化合物の液滴の分散液を提供することが所望される。
【0006】
以下は、本発明の記載である。
【0007】
本発明の第1の態様は、水性媒体中に分散されている液滴を含む懸濁液であって、前記液滴が、
(a)1つ以上の水不溶性化合物と、
(b)極性を有するビニル高分子電解質(PED)と、を含み、
前記水性媒体が、前記高分子電解質(PED)の極性とは反対である極性を有する高分子電解質(PEW)を含む。
本発明のさらなる態様を以下に記載する:
(2)前記懸濁液が、5〜10のpHを有する、前記第1の態様の懸濁液;
(3)前記高分子電解質(PED)が、負極性を有し、前記高分子電解質(PEW)が、正極性を有する、前記第1の態様の懸濁液;
(4)前記高分子電解質(PED)が、3モル%〜12モル%の量のイオン性モノマーの重合単位を含む、前記第1の態様の懸濁液;
(5)前記高分子電解質(PEW)が、40モル%〜100モル%の量のイオン性モノマーの重合単位を含む、前記第1の態様の懸濁液。
【0008】
本発明の第2の態様は、懸濁液を作製する方法であり、
(A)
(a)1つ以上の水不溶性化合物(A)(a)、及び
(b)極性を有するビニル高分子電解質(PED)、を含む、非水溶液を提供することと、
(B)水性媒体中に溶解されている高分子電解質(PEW)を含む水溶液を提供することであって、前記高分子電解質(PEW)が、高分子電解質(PED)の極性とは反対の極性を有することと、
(C)非水溶液(A)を水溶液(B)と接触させることによって、混合物を形成することと、
(D)水性媒体中に液滴の懸濁液を生成するために混合物を撹拌することであって、液滴が、水不溶性化合物(A)(a)を含むこと、
を含む。
【0009】
以下は、本発明の詳細な説明である。
【0010】
本明細書において使用される際、以下の用語は、別途文脈が明確に示さない限り、指定された定義を有する。
【0011】
本明細書において使用される際、組成物は、それが、範囲15℃〜30℃を含む温度の範囲にわたって、液体状態にある場合、液体である。水性媒体は、水性媒体の重量に基づいて、50重量%以上の量の水を含有する、液体組成物である。水性媒体中に溶解されている化合物は、本明細書において、水性媒体の一部であると見なされる。水性媒体中に分散されている液滴は、50nm〜1mmの体積平均粒径を有する。
【0012】
水性媒体中の液滴の懸濁液は、液滴が水性媒体全体に分配されている組成物である。懸濁液は、安定していても、いなくてもよく、つまり、容器の底部に沈殿すること、または上部に向かって上昇することのいずれも伴わずに、液滴を水性媒体全体に分配した状態に保つために、撹拌が必要とされても、されなくてもよい。
【0013】
化合物は、本明細書において、25℃の100gの水中に溶解させることができるその化合物の量が1g以下である場合、水不溶性であると見なされる。化合物は、本明細書において、25℃の100gの水中に溶解させることができるその化合物の量が5g以上である場合、水に高度に可溶性であると見なされる。
【0014】
「樹脂」は、本明細書において使用される際、「ポリマー」と同義語である。「ポリマー」は、本明細書において使用される際、より小さい化学的繰り返し単位の反応生成物から構成される比較的大きい分子である。ポリマーは、直鎖、分岐、星形状、ループ、超分岐、架橋、またはこれらの組み合わせである構造を有し得、ポリマーは、単一のタイプの繰り返し単位(「ホモポリマー」)を有し得るか、または、1つを超えるタイプの繰り返し単位(「コポリマー」)を有し得る。コポリマーは、ランダムに、連続して、ブロック単位で、他の配置で、またはこれらの任意の混合若しくは組み合わせで配置される、種々のタイプの繰り返し単位を有し得る。ポリマーは、2,000以上の重量平均分子量を有する。
【0015】
互いと反応して、ポリマーの繰り返し単位を形成することができる分子は、本明細書において、「モノマー」として知られる。そのように形成された繰り返し単位は、本明細書において、モノマーの「重合単位」として知られる。
【0016】
ビニルモノマーは、以下の構造を有する。
【0017】
【化1】
【0018】
式中、各R、R、R、及びRは、互いに独立して、水素、ハロゲン、脂肪族基(例えば、アルキル基等)、置換脂肪族基、アリール基、置換アリール基、別の置換、若しくは非置換有機基、またはこれらの任意の組み合わせである。ビニルモノマーは、2,000未満の分子量を有する。ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、置換スチレン、ジエン、エチレン、エチレン誘導体、及びこれらの混合物が挙げられる。エチレン誘導体としては、例えば、以下のものの非置換及び置換型が挙げられる:酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のアミド、塩化ビニル、ハロゲン化アルケン、及びこれらの混合物が挙げられる。本明細書において使用される際、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。「置換」は、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、他の官能基、及びこれらの組み合わせ等の少なくとも1つの付着した化学基を有することを意味する。本明細書において使用される際、ビニル芳香族モノマーは、R、R、R、及びRのうちの1つ以上が、1つ以上の芳香族環を含有する、モノマーである。モノビニルモノマーは、1分子あたり正確に1つの非芳香族炭素−炭素二重結合を有する、ビニルモノマーである。マルチビニルモノマーは、1分子あたり2つ以上の非芳香族炭素−炭素二重結合を有する、ビニルモノマーである。
【0019】
重合単位の90モル%以上が1つ以上のビニルモノマーの重合単位であるポリマーは、ビニルポリマーである。ポリマーは、それが自然において見出されない場合、かつポリマー骨格鎖を破壊しない、自然において見出されるポリマー上で行われる1つ以上の化学反応の結果ではない場合、合成である。
【0020】
本明細書において使用される際、エチレンイミンタイプポリマーは、エチレンイミン、置換エチレンイミン、またはこれらの混合物の重合単位を含有するポリマーである。
【0021】
イオン基は、溶解されたとき、またはある範囲のpH値(その基の「イオン性範囲」)にわたる水性媒体と接触されるときに、正または負電荷のいずれかを有する、化学基である。イオン性範囲は、少なくとも1.5pH単位のサイズを有し、イオン性範囲は、pH=5〜pH=11の範囲内に入るか、またはそうでなければ、イオン性範囲は、pH=5〜pH=11の範囲の重複を有し、重複のサイズは、1.5pH単位以上である。そのイオン性範囲で負電荷を有する化学基は、本明細書において、アニオン性基として知られる。そのイオン性範囲で正電荷を有する化学基は、本明細書において、カチオン性基として知られる。あるpH値の水性媒体に接触するもしくは溶解され、水性媒体に接触するまたは溶解されるイオン基のうちの50モル%以上がイオン状態である場合、イオン基はそのpH値において電荷を有するとみなされる。
【0022】
重合性基と、重合反応を通じて損なわれていないアニオン性基とを有するモノマーは、アニオン性モノマーである。重合性基と、重合反応を通じて損なわれていないカチオン性基とを有するモノマーは、カチオン性モノマーである。アニオン性基もカチオン性基も有しないモノマーは、非イオン性モノマーである。
【0023】
開始剤は、少なくとも1つのフリーラジカルを、そのフリーラジカルがモノマーと相互作用することができる条件下で生成することが可能である化合物である。一部の開始剤に少なくとも1つのフリーラジカルを生成させる条件としては、例えば、上昇した温度、光子への曝露、イオン化放射への曝露、ある化合物(例えば、化合物の酸化還元対等)の反応、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
ポロゲンは、以下の特徴を有する化合物である:それは、モノマーではない;それは、1大気圧で200℃以下の沸点を有する;それは、25℃の100gの水中に0〜10グラムの溶解性を有する。
【0025】
高分子電解質は、イオン基を含有する1つ以上のモノマーの3モル%以上の重合単位を含有するポリマーである。単極高分子電解質は、イオン基が、全てアニオン性基または全てカチオン性基のいずれかである、高分子電解質である。全てのイオン基がアニオン性基である単極高分子電解質は、本明細書において、アニオン性高分子電解質として知られ、本明細書において、負極性を有する。全てのイオン基がカチオン性基である単極高分子電解質は、本明細書において、カチオン性高分子電解質として知られ、本明細書において、正極性を有する。カチオン性高分子電解質及びアニオン性高分子電解質は、本明細書において、互いとは反対の極性を有する。双性イオン高分子電解質は、いくつかのカチオン性基及びいくつかのアニオン性基を含有する。ビニルポリマーである高分子電解質は、ビニル高分子電解質である。
【0026】
非ポリマー表面活性剤は、その分子が、1つ以上の脂肪基、及びもう1つのイオン基を含有する、化合物である。脂肪基は、互いに直線形式に結合される8個以上の炭素原子を有する化学基である。非ポリマー表面活性剤は、2,000未満の分子量を有する。
【0027】
本発明は、水性媒体中に分散されている液滴(D)の懸濁液を含む。好ましくは、水性媒体の重量に基づく重量による、水性媒体中の水の量は、60%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。
【0028】
液滴(D)は、1つ以上の水不溶性化合物を含有する。好ましくは、水不溶性化合物(複数を含む)は、1つ以上の水不溶性ビニルモノマー;より好ましくはスチレン、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリロニトリル、1つ以上の水不溶性置換スチレン、(メタ)アクリル酸の1つ以上の水不溶性アルキルエステル、またはこれらの混合物;より好ましくはスチレン、ジビニルベンゼン、またはこれらの混合物を含有する。
【0029】
液滴(D)はまた、好ましくは、1つ以上の開始剤を含有する。好ましくは、開始剤(複数を含む)は、1つ以上の水不溶性開始剤を含有する。好ましい水不溶性開始剤は、水不溶性ペルオキシド開始剤及び水不溶性アゾ開始剤である。水不溶性ペルオキシド開始剤の中でも、好ましいのは、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキシケタール、ケトンペルオキシド、及びこれらの混合物であり、より好ましいのは、ペルオキシエステル、ジアシルペルオキシド、及びこれらの混合物であり、より好ましいのは、t−ブチルペルオクトエート及びベンゾイルペルオキシドである。
【0030】
一部の実施形態において、液滴(D)は、1つ以上のポロゲンを含有する。好ましいポロゲンは、液滴(D)の残存成分において可溶性である。好ましくは、液滴(D)の残存成分から成る100グラムの溶媒中に25℃で溶解され得るポロゲンの量は、10グラム以上、より好ましくは20グラム以上、より好ましくは50グラム以上である。1つの好適なポロゲンは、メチルイソブチルカルビノールである。
【0031】
ビニルモノマー、開始剤、ポロゲン、及び高分子電解質(PED)以外の全ての化合物のカテゴリである、「D−X」というカテゴリを定義することによって、液滴(D)の内容物を特徴付けることが有用である。好ましくは、液滴(D)中のD−Xの量は、液滴(D)の重量に基づく重量で、0〜20%、より好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜2%、より好ましくは0〜1%である。
【0032】
水及び高分子電解質(PEW)以外の全ての化合物のカテゴリである、AQ−Xというカテゴリを定義することによって、水性媒体の内容物を特徴付けることが有用である。好ましくは、水性媒体中のAQ−Xの量は、水性媒体の重量に基づく重量で、0〜20%、より好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜2%、より好ましくは0〜1%である。
【0033】
好ましくは、液滴(D)は、1μm以上、より好ましくは3μm以上、より好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上の体積平均粒径を有する。好ましくは、液滴(D)は、500μm以下の体積平均粒径を有する。
【0034】
本発明は、本明細書において高分子電解質(PED)及び高分子電解質(PEW)と指定される、2つの高分子電解質を含む。液滴(D)が、高分子電解質(PED)を含有し、水相が、高分子電解質(PEW)を含有する。高分子電解質(PEW)及び高分子電解質(PED)は、両方とも単極高分子電解質であり、それらは、互いとは反対の極性を有する。つまり、高分子電解質(PED)がアニオン性高分子電解質であり、高分子電解質(PEW)がカチオン性高分子電解質であるか、またはそうでなければ、高分子電解質(PED)がカチオン性高分子電解質であり、高分子電解質(PEW)がアニオン性高分子電解質であるかのいずれかである。好ましくは、高分子電解質(PED)がアニオン性高分子電解質であり、高分子電解質(PEW)がカチオン性高分子電解質である。
【0035】
好ましくは、高分子電解質(PED)は、液滴(D)中に溶解される。好ましくは、高分子電解質(PEW)は、水性媒体中に溶解される。
【0036】
高分子電解質(PED)の一部の量は、水性媒体中に存在し得ることが考えられる。高分子電解質(PEW)一部の量は、液滴(D)中に存在し得ることが考えられる。
【0037】
高分子電解質(PED)または高分子電解質(PEW)のいずれかは、アニオン性高分子電解質であり得る。好ましいアニオン性高分子電解質は、ビニルポリマーである。好ましくは、アニオン性高分子電解質は、1つ以上のアニオン性ビニルモノマーの重合単位を含有する。好ましいアニオン性ビニルモノマーは、カルボン酸基、または無水物基、またはスルホン酸基を有する。好ましいアニオン性ビニルモノマーは、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及びスチレンスルホン酸である。好ましくは、アニオン性高分子電解質中のアニオン性ビニルモノマーの重合単位の量は、モル%で、3.5%以上、より好ましくは4%以上である。
【0038】
高分子電解質(PED)または高分子電解質(PEW)のいずれかは、カチオン性高分子電解質であり得る。好ましいカチオン性高分子電解質は、合成ポリマーであり、より好ましいのは、合成ビニルポリマーまたは合成ポリエネイミン(polyeneimine)タイプポリマー、より好ましいのは、合成ビニルポリマーである。好ましくは、カチオン性高分子電解質は、1つ以上のカチオン性ビニルモノマーの重合単位を含有する。好ましいカチオン性ビニルモノマーは、アミン基を含有し、これは、第1級、第2級、第3級、または第4級であり、好ましくは第4級であり得る。好ましい第4級アンモニウムビニルモノマーは、(メタ)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニム(ammonim)第4級化合物、ジアリルジアルキルアンモニウム第4級モノマー、及びこれらの混合物であり、より好ましいのは、ジアリルジアルキルアンモニウム第4級モノマーであり、より好ましいのは、ジアリルジメチルアンモニウムハライドである。多くの一般的な重合条件下で、ジアリルジアルキ(dialky)アンモニウム第4級モノマーは、5員環である重合単位を形成する。好ましくは、カチオン性ビニルモノマーの重合単位の量は、4モル%以上である。
【0039】
好ましくは、高分子電解質(PED)は、1つ以上のイオン性モノマーの重合単位に加えて、1つ以上の非イオン性モノマーの重合単位を含有する。好ましくは、高分子電解質(PED)は、水不溶性である1つ以上の非イオン性モノマーの重合単位を含有する。より好ましくは、高分子電解質(PED)は、25℃の100gの水において、0.1グラム以下、より好ましくは0.05g以下の可溶性を有する、1つ以上の非イオン性モノマーの重合単位を含有する。水不溶性であるモノマーの中で、好ましいのは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、スチレン、及びスチレンの誘導体である。(メタ)アクリル酸の水不溶性アルキルエステルの中で、好ましいのは、アルキル基が6個以上の炭素原子、より好ましくは8個以上の炭素原子を有するものである。(メタ)アクリル酸の水不溶性アルキルエステルの中で、好ましいのは、アルキル基が22個以下の炭素原子、より好ましくは20個以下を有するものである。スチレンの水不溶性誘導体の中で、好ましいのは、アルファ−アルキルスチレン、及びオルソ−、メタ−、またはパラ−アルキルスチレンである。
【0040】
好ましくは、高分子電解質(PED)中の非イオン性モノマーの重合単位の量は、50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上である。
【0041】
好ましくは、高分子電解質(PED)中のイオン性モノマーの重合単位の量は、3.5モル%以上、より好ましくは4.5モル%以上である。好ましくは、高分子電解質(PED)中のイオン性モノマーの重合単位の量は、20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、より好ましくは12モル%以下である。
【0042】
非イオン性水不溶性モノマーでもイオン性モノマーでもないモノマーのカテゴリである、「PED−X」というカテゴリを定義することによって、高分子電解質(PED)の重合単位を説明することが有用である。好ましくは、高分子電解質(PED)中のPED−Xモノマーの重合単位の量は、0〜10モル%、より好ましくは0〜3モル%、より好ましくは0〜1モル%、より好ましくは0である。
【0043】
好ましくは、高分子電解質(PED)は、ホモポリマーであるか、またはランダムコポリマーであるかのいずれかである。
【0044】
好ましくは、高分子電解質(PED)は、3,000以上、より好ましくは5,000以上の重量平均分子量を有する。好ましくは、高分子電解質(PED)は、300,000以下、より好ましくは100,000以下、より好ましくは75,000以下、より好ましくは50,000以下、より好ましくは25,000以下の重量平均分子量を有する。
【0045】
好ましくは、高分子電解質(PEW)は、1つ以上のイオン性モノマーの重合単位に加えて、1つ以上の非イオン性モノマーの重合単位を含有する。好ましくは、高分子電解質(PEW)は、水中に高度に可溶性である、1つ以上の非イオン性モノマーの重合単位を含有する。より好ましくは、高分子電解質(PEW)は、25℃の100gの水において、10グラム以上、より好ましくは50グラム以上の可溶性を有する、1つ以上の非イオン性モノマーの重合単位を含有する。水中に高度に可溶性である非イオン性モノマーの中で、好ましいのは、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、及びこれらの混合物であり、より好ましいのは、(メタ)アクリルアミドであり、より好ましいのは、アクリルアミドである。(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルのカテゴリは、(メタ)アクリル酸のポリ(エチレンオキシド)エステルであるモノマー化合物を含む。
【0046】
1つの好適な高分子電解質(PEW)は、ポリ(エチレンイミン)である。
【0047】
好ましくは、高分子電解質(PEW)は、ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれかである。
【0048】
好ましくは、高分子電解質(PEW)は、3,000以上、より好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上、より好ましくは40,000以上の重量平均分子量を有する。好ましくは、高分子電解質(PED)は、300,000以下、より好ましくは100,000以下の重量平均分子量を有する。
【0049】
好ましくは、高分子電解質(PEW)中の非イオン性モノマーの重合単位の量は、10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上である。好ましくは、高分子電解質(PEW)中の非イオン性モノマーの重合単位の量は、90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下である。
【0050】
好ましくは、高分子電解質(PEW)中のイオン性モノマーの重合単位の量は、10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上である。好ましくは、高分子電解質(PEW)中のイオン性モノマーの重合単位の量は、90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下である。
【0051】
水中に高度に可溶性である非イオン性モノマーでもイオン性モノマーでもないモノマーのカテゴリである、「PEW−X」というカテゴリを定義することによって、高分子電解質(PEW)の重合単位を説明することが有用である。好ましくは、高分子電解質(PEW)中のPEW−Xモノマーの重合単位の量は、0〜10モル%、より好ましくは0〜3モル%、より好ましくは0〜1モル%、より好ましくは0である。
【0052】
好ましくは、高分子電解質(PEW)は、いずれの他の高分子電解質または表面活性剤の不在下においても、水性媒体と液滴(D)との間の界面の界面張力を低減することが可能である。好ましくは、高分子電解質(PED)は、いずれの他の高分子電解質または表面活性剤の不在下においても、水性媒体と液滴(D)との間の界面の界面張力を低減することが可能である。水性媒体と液滴(D)との間の界面の界面張力の低減は、たった1つの高分子電解質のみが存在する(例えば、実施例4−2を参照されたい)、以下で説明されるような振盪試験を行うことによって観察することができる。混濁または不透明のいかなる証拠が観察された場合にも、何らかの液滴が、たとえそれらが大きいまたは安定していない場合であっても、形成されたと見なされ、いかなるかかる液滴形成も、界面張力の低減の証拠である。
【0053】
水性媒体は、5〜11のpH値を有する。好ましくは、水性媒体のpH値は、高分子電解質(PEW)のイオン性範囲内である。好ましくは、水性媒体のpH値は、高分子電解質(PED)のイオン性範囲内である。好ましくは、水性媒体のpH値は、6以上、より好ましくは7以上である。好ましくは、水性媒体のpH値は、10以下、より好ましくは9以下である。
【0054】
好ましくは、組成物中の高分子電解質(PED)の総量は、液滴(D)の総重量に基づく重量で、0.02%以上、より好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.08%以上である。好ましくは、組成物中の高分子電解質(PED)の総量は、液滴(D)の総重量に基づく重量で、12%以下、より好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下である。
【0055】
好ましくは、組成物中の高分子電解質(PEW)の総量は、水性媒体の総重量に基づく重量で、0.02%以上、より好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.08%以上である。好ましくは、組成物中の高分子電解質(PEW)の総量は、水性媒体の総重量に基づく重量で、12%以下、より好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下である。
【0056】
好ましくは、本発明の組成物中の非ポリマー表面活性剤量は、組成物の重量に基づく重量で、0〜1%、より好ましくは0〜0.3%、より好ましくは0〜0.1%である。
【0057】
好ましくは、高分子電解質ではない水溶性ポリマーの量は、懸濁液の総重量に基づく重量で、0〜0.1%、より好ましくは0〜0.05%、より好ましくは0〜0.02%、より好ましくは0〜0.01%、より好ましくは0〜0.005%である。
【0058】
液滴(D)の濃度は、懸濁液の総重量のパーセンテージとしての全ての液滴(D)の総重量によって特徴付けられ得る。好ましくは、液滴(D)の濃度は、5%以上、より好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上である。好ましくは、液滴(D)の濃度は、90%以下、より好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。
【0059】
好ましくは、高分子電解質(PED)と高分子電解質(PEW)との間に、共有結合は形成されない。
【0060】
液滴(D)の組成に関して、考えられる実施形態の中で、2つの実施形態が、本明細書において、液滴(DA)及び液滴(DB)と標識される。液滴(DA)において、液滴中の非ポリマー化合物の総重量に基づく重量で、液滴の非ポリマー含有量の98%以上は、水不溶性化合物である。液滴(DB)において、液滴中の非ポリマー化合物の総重量に基づく重量で、液滴の非ポリマー含有量の2%超は、水不溶性ではない化合物である。一部の高分子電解質(PED)は、極性モノマーの重合単位を有すること、及びかかる高分子電解質(PED)は、全ての液滴(DA)において可溶性であるわけではないが、一部の液滴(DB)において可溶性であることが考えられる。
【0061】
いかなる理論にも本発明を限定することなく、高分子電解質(PED)及び高分子電解質(PEW)の両方の一部または全ては、液滴(D)と水性媒体との間の界面に位置することが考えられる。高分子電解質(PED)と高分子電解質(PEW)との間の相互作用は、その界面に機械的強度を与え、かつ液滴を安定化させて、他の液滴との合体を阻害することがさらに考えられる。
【0062】
本発明の懸濁液は、好ましくは、以下のように作製される。水不溶性化合物及び高分子電解質(PED)を一緒にし、混合して、非水溶液(NAS)を作製する。好ましくは、液滴内に位置することが予想される水不溶性化合物の全てを、この非水溶液(NAS)の中へ混合する。水溶液(AS)は、水性媒体に位置することが予想される高分子電解質(PEW)及び任意の他の化合物を、水中へ溶解することによって作製する。非水溶液(NAS)及び水溶液(AS)は、別個の組成物である。好ましくは、高分子電解質(PED)は、水溶液(AS)中には存在しない。好ましくは、高分子電解質(PEW)は、非水溶液(NAS)中に位置しない。高分子電解質(PED)以外のいずれかの追加の高分子電解質が非水溶液(NAS)中に位置する場合、その追加の高分子電解質は、好ましくは、高分子電解質(PED)と同じ極性を有する。高分子電解質(PEW)以外のいずれかの追加の高分子電解質が水溶液(AS)中に位置する場合、その追加の高分子電解質は、好ましくは、高分子電解質(PEW)と同じ極性を有する。
【0063】
好ましくは、非水溶液(NAS)及び水溶液(AS)は、接触させられ、十分に撹拌されて、非水溶液を液滴に分解し、それらを水溶液全体に分布させる。
【0064】
本発明の懸濁液は、任意の目的に対して使用され得る。例えば、液滴(D)は、例えば、石鹸、洗剤、コンディショナー、染料、またはこれらの混合物等の、洗浄またはパーソナルケアのために有用な化合物を含有し得る。懸濁液は、パーソナル洗浄組成物、ローション、または洗濯用若しくは表面用の洗浄組成物として有用な組成物の全てまたは一部であり得る。
【0065】
好ましくは、懸濁液は、懸濁重合のプロセスにおいて使用される。好ましくは、液滴(D)は、高分子電解質(PED)に加えて、1つ以上のビニルモノマー、1つ以上の開始剤、及び任意に、1つ以上のポロゲンを含有する。好ましくは、機械的撹拌が維持される間、懸濁液は、開始剤が十分なフリーラジアル(free radial)種を生成して、ビニル重合プロセスを開始する温度まで加熱され、懸濁液は、その温度以上で、モノマーの90%以上(重合前に存在するモノマーに基づく重量で)を重合するために十分な時間、保たれる。好ましくは、温度は、80℃以上にされる。好ましくは、温度は、1時間以上、80℃以上で維持される。好ましくは、液滴(D)中のモノマーは、重合プロセス中、液滴中にとどまり、そのため、液滴は、ポリマービーズになる。
【0066】
好ましくは、懸濁重合は、懸濁が、高分子電解質(PED)及び高分子電解質(PEW)の両方のイオン性範囲内で選択されるpH値を有する間に行われる。
【0067】
懸濁重合によって生成されるポリマービーズに対する好ましい使用は、吸着剤であるか、またはイオン交換能力を有するか、またはその両方であるかのいずれかである樹脂としてである。
【0068】
イオン交換能力を有する好ましい樹脂(本明細書において、イオン交換樹脂として知られる)は、ポリマーに共有結合された官能基を有し、官能基は、好ましくはスルホン酸基、カルボン酸基、第4級アミン基、または第3級アミン基である。好ましいイオン交換樹脂は、スチレンを含むビニルモノマーの重合によって作製される。好ましくは、重合後、樹脂は、化学反応を受けて、官能基に付着する。
【0069】
以下は、本発明の実施例である。「C」で終わる実施例番号は、比較実施例を示す。
【0070】
以下の材料及び略称を使用した。
【0071】
【表1】
【0072】
界面圧縮試験:
非水溶液を、5mlの気密ガラス注射器に入れた。注射器を使用して、非水溶液を、水溶液を含有する容器の中へ下方に伸びる管の中へ強制的に入れた;管は上方に曲がっており、水溶液の表面下の水平開口において終端する。注射器プランジャを押圧することによって、十分な非水溶液を管の中へ強制的に入れて、開口において液滴を形成させ、液滴は、管の端部に付着し、水溶液の中へ上方に伸びる。10〜1000秒の中断後、次いで、注射器をゆっくりと後退させ、液滴を縮小させた。液滴の外観を視覚的に観察し、撮影した。縮小の間、観察されたいかなる不均一性も、液滴の表面上の構造化された膜の証拠として見なされる。典型的に、不均一性は、液滴の表面上のしわとして現れる。
【0073】
振盪試験
20mLのバイアルに、質量で3:2の比の水溶液対非水溶液を充填した。バイアルを手によって振盪させて、非水溶液を水溶液の中へ分散させた。混合物は、以下の条件が満たされた場合、本明細書において、振盪試験に「及第する」と言われる:形成された液滴が、長期間、少なくとも2時間にわたって、安定していた;液滴が、顕微鏡下で明確に観察されるのに十分に大きかった(典型的に、50〜1000μmの範囲内)。振盪試験に及第する混合物の中で、分散された液滴の比較的大きいサイズにより、液滴は、極めて浮揚性であり、そのため、振盪試験容器の上部まで素早く浮揚するが、しかしながら、分散された液滴は、モノマー/水性界面の機械的強度により、連続的な水性相内で安定したままである。つまり、振盪試験に及第する混合物の中では、振盪後、混合物は、水中に分散された非水溶液の液滴を含有する上部白色相、ならびに水及び溶解された成分を含有する比較的澄んだ底部相の外観を有する。別個の層もまた、所望される上部白色層の上に現れる場合、混合物は、振盪試験に落第すると言われる。また、上部白色層が混濁しているだけで、不透明ではない場合、大きい、安定した液滴は形成されないと見なされ、試料は、振盪試験に落第すると言われる。振盪試験に及第する混合物は、液滴がモノマー含有する場合、懸濁重合に好適な懸濁液を生成すると見なされる。
【0074】
混合物のうちのいくつかは、混合物を、振盪後、50℃のオーブンに5時間配置することによって、熱安定性に対して試験された。上の振盪試験に対する「及第」基準を継続して満たした試料は、熱安定性試験に「及第する」と言われた。
【0075】
調製1:pH=7.5のトリス緩衝液は、以下のとおりに調製した。トリス緩衝液は、900グラムの脱イオン水を、1.211グラムのトリス及び0.379グラムのNaNOと混合することによって、調製した。次いで、1N塩酸を使用して、pHを監視するためにpHメーターを使用して、トリス溶液を7.5のpHまで滴定した。
【0076】
調製2:水溶液
調製1で作製したpH=7.5の49.5gのトリス緩衝液を、5.5gの溶液PE2(10%濃度)と混合した。
【0077】
調製3:非水溶液
以下を、共に混合した。5.55gのDVB(65%濃度)、0.15gのBPO(75%濃度)、0.38のPE1、及び31.52gのSty。
【0078】
調製4:pH=8.5のトリス緩衝液は、以下のとおりに調製した。トリス緩衝液は、900グラムの脱イオン水を、1.211グラムのトリス及び0.379グラムのNaNOと混合することによって、調製した。次いで、1N塩酸を使用して、pHを監視するためにpHメーターを使用して、トリス溶液を8.5のpHまで滴定した。
【0079】
実施例1:懸濁液の調製
調製2の水溶液を、90mLの反応器に入れた。次いで、調製3の非水溶液を、同じ反応器に入れた。混合物を、30分間、傾斜翼インペラを用いて500rpmで撹拌した。水性媒体中に分散されたスチレン、DVB、及びBPOを含有する液滴を含有した懸濁液が生成された。
【0080】
実施例2:ポリマーの調製
実施例1からの混合物懸濁液を、1分あたり1℃で80℃まで加熱し、次いで、80℃で5時間保持した。次いで、混合物を、45分にわたって92℃まで加熱し、次いで、92℃で60分間保持した。液滴の懸濁重合によって、ポリマービーズが生成された。
【0081】
実施例3:界面圧縮試験:
3つの試料を、界面圧縮試験において試験した。結果は、以下のとおりであった。
【0082】
【表2】
【0083】
実施例4:振盪試験:
振盪試験の結果は、以下のとおりであった。各水溶液は、上の調製1に説明されるように、pH=7.5のトリス緩衝溶液中に溶解された、示される量のPE2(ポリ(AM−コ−DADMAC))であった。各非水溶液は、溶媒中に溶解された、示される量のPE3(ポリ(2−EHA−コ−AA))であり、ここでは、溶媒は、溶媒の重量に基づく重量で90%スチレンと10%DVBとの混合物であった。
【0084】
【表3】
【0085】
追加の振盪試験の結果は、以下のとおりであった。
【0086】
【表4】
【0087】
実施例5:追加の懸濁重合
各反応器容器に、30グラムの水溶液及び20グラムの非水溶液を充填し、傾斜翼インペラを用いて700rpmで撹拌した。混合物を、1分あたり1℃で80℃まで加熱し、80℃で5時間保持した。次いで、混合物を、45分にわたって92℃まで徐々に加熱し、92℃で60分間保持した。生成物を25℃まで冷却し、分析した。
【0088】
各水溶液は、pH=7.5のトリス緩衝液、またはpH=8.5のトリス緩衝液のいずれかに溶解された、水溶液の重量に基づき1重量%のPE2(ポリ(AM−コ−DADMAC))であった。各非水溶液は、溶媒の重量に基づく重量で90%スチレン及び10%DVBの溶媒中に溶解された、開始剤及びPE1(ポリ(2−EHA−コ−AA))であった。開始剤は、t−BP(非水溶液の重量に基づき、0.4重量%のt−BPストック溶液)、またはBPO(非水溶液の重量に基づき、0.3重量%)のいずれかであった。PE2の量は、非水溶液の重量に基づき、1重量%であった。得られるポリマービーズのサイズは、Beckman−Coulter粒子サイズ分析器を使用した光散乱によって測定し、体積基準の中央径として報告した。結果は、以下のとおりであった。
【0089】
【表5】
【0090】
実施例6及び7:MIBCを含む振盪試験
最初に、バイアル中で0.2グラムの高分子電解質(PED)及び18.8グラムの溶媒を使用して、以下の混合物を作製した。各溶媒は、示されるMIBCの量を有し、溶媒の残りは、9:1のスチレン対DVBの重量比のスチレン及びDVBであった。一部の例において、バイアルの底部において、いくらかの沈降が観察され、高分子電解質(PED)が完全に溶解しなかったことを示した。全ての例において、澄んだ溶液が、バイアルの上部分において形成された。
【0091】
6グラムの溶液の試料を、各バイアルの上部から除去し、上のとおりに行われた振盪試験において、9グラムの水溶液と混合した。水溶液は、1重量%(水溶液の重量に基づく)のPEEIと混合した、pH=7.5のトリス緩衝液であった。
【0092】
【表6】
【0093】
特定の高分子電解質(PED)がPTBEAMであるとき、PTBEAMを液滴において可溶性にするためのMIBCの正確な量は、7〜30重量%である。
【0094】
【表7】
【0095】
特定の高分子電解質(PED)がPSMであるとき、PTBEAMを液滴において可溶性にするためのMIBCの正確な量は、重量で7以上である。
【0096】
実施例8:振盪試験からの熱時効処理された試料
試料を、上で説明されるように振盪試験に供し、次いで、50℃で5時間加熱した。加熱後、試料を、振盪試験にあるような同じ基準に従って、「及第」または「落第」として判断した。結果は、以下のとおりであった。
【0097】
【表8】
【0098】
本発明の実施例のうちの多くはまた、熱安定性の追加の望ましい特性を有する。