特許第6720181号(P6720181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6720181「液体樹脂注入に適した製造方法及び硬化性組成物」
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720181
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】「液体樹脂注入に適した製造方法及び硬化性組成物」
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/02 20060101AFI20200629BHJP
   B29C 39/02 20060101ALI20200629BHJP
   B29C 70/04 20060101ALI20200629BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20200629BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20200629BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20200629BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20200629BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   B29C45/02
   B29C39/02
   B29C70/04
   C08L63/00 A
   C08L51/04
   C08K3/00
   C08K5/17
   C08G59/50
【請求項の数】40
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-532728(P2017-532728)
(86)(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公表番号】特表2017-538830(P2017-538830A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】US2015065859
(87)【国際公開番号】WO2016100365
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年9月13日
(31)【優先権主張番号】1422564.3
(32)【優先日】2014年12月18日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516100285
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ミーガン, ジョナサン イー.
(72)【発明者】
【氏名】デンマン, オリヴィア
(72)【発明者】
【氏名】オーリリア, マルコ
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−515806(JP,A)
【文献】 国際公開第1997/028210(WO,A1)
【文献】 特開2003−171483(JP,A)
【文献】 特開2014−218675(JP,A)
【文献】 特開2013−151642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/00−39/44
B29C 45/00−45/84
B29C 70/00−70/88
C08K 3/00
C08K 5/17
C08L 51/04
C08L 63/00
C08G 59/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品を生産するための液体樹脂注入(LRI)製造方法であって、硬化性組成物を提供する工程、前記硬化性組成物を型に注入する工程、及び前記硬化性組成物を硬化させる工程を含み、硬化性組成物が:
a)5.0wt%以下の熱可塑性ポリマー;
b)5.0wt%以下の、50nmから800nmの範囲の粒子サイズを有するコアシェル粒子;
c)5.0wt%以下の、2.0nmから800nmの範囲の粒子サイズを有する無機粒子;
d)一又は複数のエポキシ樹脂前駆体であるか又はそのような前駆体を含むエポキシ樹脂成分;及び
e)一又は複数のアミン硬化剤
を含み、前記硬化性組成物の初期粘度が、80℃から130℃の温度範囲内の温度において5ポアズ以下であ
前記コアシェル粒子が、内側コア部分と、内側コア部分を実質的に包む外側シェル部分とを備え、内側コア部分が弾性ポリマー材料であり、外側シェル部分が周囲温度より高いガラス遷移温度を有するポリマー材料である、方法。
【請求項2】
熱可塑性ポリマーとエポキシ樹脂成分が、硬化性組成物中に連続相を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記成形品が、相分離した熱可塑性ポリマードメインの周りに無機粒子の自己集合したシェル形態を呈し、相分離した熱可塑性ポリマードメインの周りの前記無機粒子の自己集合したシェル形態は硬化中にin situで生成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
相分離した熱可塑性ポリマードメインの周りの、前記無機粒子の自己集合したシェル形態が、三つの直交方向に定量化可能な寸法を有し、三方向すべてのその寸法が1000nmより大きい、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記成形品が、少なくとも220MPaの衝撃後圧縮強度(CSAI)を呈する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
硬化性組成物の前記粘度が、2ポアズ以下である及び前記粘度が120℃の温度で測定される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
80℃から130℃の温度範囲内の温度前記硬化性組成物の粘度が、5ポアズ以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
成形品が、さらに強化繊維材を含む複合材料である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(i)強化繊維材を含むプリフォームを調製する工程;
(ii)型の中にプリフォームを置く工程;
(iii)型を所定の温度に加熱する任意選択的工程;
(iv)前記硬化性組成物を提供する工程;
(v)硬化性組成物を型の中に注入する工程、及び
(vi)前記硬化性組成物を硬化させる工程
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
樹脂トランスファ成形(RTM)及び真空補助樹脂トランスファ成形(VARTM)より選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
プリフォームが、強化繊維材を含むファブリックの一又は複数の層を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記(iii)において、型が、90℃から120℃の範囲内の所定の温度に加熱される、請求項に記載の方法。
【請求項13】
硬化が、160℃から200℃の範囲内の硬化温度(T)で実施され及び硬化温度が、90分から180分の範囲内の期間にわたり維持される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
硬化性組成物を提供する工程が、樹脂前駆体成分を前記熱可塑性成分及び前記コアシェル粒子と前記無機粒子と混合する最初の工程と、それに続く任意選択的冷却工程と、それに続く硬化剤を付加する工程とを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
硬化性組成物が複数の樹脂前駆体成分を含み、前記複数の樹脂前駆体成分の二以上が、前記熱可塑性成分と前記コアシェル粒子及び前記無機粒子の付加に先立ち事前に混合される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
コアシェル粒子がマスターバッチとして樹脂前駆体成分に付加される、及び/又は無機粒子がマスターバッチとして樹脂前駆体成分に付加される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
熱可塑性ポリマーが、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルフィド及びポリアリールスルホン、並びにポリアリールエーテル−スルホン、及びポリアリールスルフィド−スルホンを含むこれらのコポリマーより選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
熱可塑性ポリマーが、エーテル結合の繰り返し単位を含み、任意選択的にさらにチオエーテル結合の繰り返し単位を含むポリアリールエーテルスルホン熱可塑性ポリマーより選択され、前記単位が:
−[ArSOAr]
より選択され、任意選択的に:
−[Ar]
より選択され、
式中:
Arはフェニレンであり;
n=1から2であって、分数でもよく;
a=1から3であって、1を超えるときは分数でもよく、前記フェニレン基は、単一の化学結合又は−SO−以外の二価の基を通して線状に結合する、又は互いに融合され、
但し、繰り返し単位−[ArSOAr]−は、平均で前記−[ArSOAr]−単位のうちの少なくとも二が存在する各ポリマー鎖中に連続するような割合で、ポリアリールエーテルスルホン中に常に存在することを条件とし、
ポリアリールエーテルスルホンが一又は複数の反応性ペンダント基及び/又は末端基を有する、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
樹脂前駆体成分が、一の分子につき少なくとも二のエポキシド基を有する一又は複数のエポキシ樹脂前駆体であるか、又はそのような前駆体を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
樹脂前駆体成分が、同じ又は異なる機能性を有するエポキシ樹脂前駆体のブレンドであり、前記ブレンドが、一の分子につき二のエポキシド基を有する一又は複数のエポキシ樹脂前駆体(P2)、及び/又は一の分子につき三のエポキシド基を有する一又は複数のエポキシ樹脂前駆体(P3)、及び/又は一の分子につき四のエポキシド基を有する一又は複数のエポキシ樹脂前駆体(P4)を含み、前記ブレンドが:
(i)wt%から60wt%の(一又は複数の)エポキシ樹脂前駆体(P2);
(ii)wt%から55wt%の(一又は複数の)エポキシ樹脂前駆体(P3);及び
(iii)wt%から80wt%の(一又は複数の)エポキシ樹脂前駆体(P4)を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
樹脂前駆体成分が、二官能性、三官能性及び四官能性のエポキシ樹脂前駆体を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
樹脂前駆体成分が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA);ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(DGEBF);O,N,N−トリグリシジル−パラ−アミノフェノール(TGPAP);O,N,N−トリグリシジル−メタ−アミノフェノール(TGMAP);及びN,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、並びにこれらのブレンドより選択される、一又は複数のエポキシ樹脂前駆体であるか、又はそのような前駆体を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記硬化性組成物が熱硬化性である、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記アミン硬化剤が、一の分子につき少なくとも二のアミノ基を有する芳香族アミン硬化剤より選択され、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
エポキシ樹脂成分及びアミン硬化剤が、硬化剤中に存在するアミン基:エポキシ成分中に存在するエポキシ基のモル比が0.75:1から1:0.75となるために十分な量で組成物中に存在する、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
硬化性組成物が、0.5wt%から4.0wt%の前記熱可塑性ポリマーを含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
硬化性組成物が、0.3wt%から4.0wt%のコアシェル粒子を含む、及び前記コアシェル粒子が、100nmから200nmの範囲の粒子サイズを有する、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記コアシェル粒子内側コア部分が、℃未満のガラス遷移温度を有する弾性ポリマー材料であり、外側シェル部分が、50℃より高いガラス遷移温度を有するポリマー材料である、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
コアシェル粒子が、イソプレン又はブタジエンのホモポリマーから選択される最大30mol%のビニルコモノマーを有するイソプレン又はブタジエンのコポリマーより選択されるポリマー材料である内側コア部分を備える、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
コアシェル粒子が、スチレン、アルキルスチレン及びメチルメタクリレートのホモポリマーから、及びスチレン、アルキルスチレン及びメチルメタクリレートより選択される少なくとも70mol%のモノマーを含み、さらにスチレン、アルキルスチレン、メチルメタクリレート、酢酸ビニル及びアクリロニトリルより選択される少なくとも一の異なるコモノマーを含むコポリマーより選択されるポリマー材料である外側シェル部分を備え、外側シェル部分の前記ポリマー材料は、一又は複数の不飽和官能性モノマーをその中に導入することにより任意選択的に官能化される、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
内側コア部分のポリマー材料が、ポリブタジエン−スチレンコポリマー及びポリブタジエン、並びにこれらのブレンドより選択される、及び外側シェル部分のポリマー材料が、メチルメタクリレートのホモポリマー又はコポリマーであり、任意選択的に官能化及び/又は架橋される、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記無機粒子が、炭酸カルシウム、SiO、TiO及びAlから選択される、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
硬化性組成物が0.1wt%から4.0wt%の無機粒子を含む、及び前記無機粒子が2.0nmから100nmの範囲の粒子サイズを有する、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
a)5.0wt%以下の熱可塑性ポリマー;
b)5.0wt%以下の、50nmから800nmの範囲の粒子サイズを有するコアシェル粒子;
c)5.0wt%以下の、2.0nmから800nmの範囲の粒子サイズを有する無機粒子;
d)一又は複数のエポキシ樹脂前駆体であるか又はそのような前駆体を含むエポキシ樹脂成分;及び
e)一又は複数のアミン硬化剤
を含み、粘度が、80℃から130℃の温度範囲内の温度において5ポアズ以下であ
前記コアシェル粒子が、内側コア部分と、内側コア部分を実質的に包む外側シェル部分とを備え、内側コア部分が弾性ポリマー材料であり、外側シェル部分が周囲温度より高いガラス遷移温度を有するポリマー材料である、硬化性組成物。
【請求項35】
請求項34に記載の硬化性組成物から得られる硬化成形品。
【請求項36】
相分離した熱可塑性ポリマードメインの周りの、無機粒子の自己集合したシェル形態を呈し、相分離した熱可塑性ポリマードメインの周りの、無機粒子の自己集合したシェル形態は、三つの直交方向に定量化可能な寸法を有し、三方向すべてのその寸法が1000nmより大きい、請求項35に記載の硬化成形品。
【請求項37】
さらに強化繊維材を含む複合材料である、請求項35又は36に記載の硬化成形品。
【請求項38】
前記成形品が、少なくとも220MPaの衝撃後圧縮強度(CSAI)を呈する、請求項35から37のいずれか一項に記載の硬化成形品。
【請求項39】
請求項34に記載の硬化性組成物であって、前記硬化性組成物が請求項2、6、7又は17から33のうちのいずれか一項に定義されたものである、硬化性組成物。
【請求項40】
請求項35から38のいずれか一項に記載の硬化成形品であって、前記硬化性組成物が請求項2、6、7又は17から33のうちのいずれか一項に定義されたものである、硬化成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年12月18日出願の英国特許出願第1422564.3号の利益を主張し、その内容全体を本明細書に包含する。
【0002】
本発明は、液体樹脂注入の用途に適した変性樹脂系に関する。本発明はさらに、変性樹脂から得られた複合材料の調製方法とその用途に関する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】無機粒子(4)が、相分離した熱可塑性ドメイン(2)の外表面を囲んでいる、硬化樹脂の形態を示している。
図2図1に類似であるが、ナノシリカ粒子を含まない硬化樹脂の形態を示している。
図3】四つの異なる樹脂配合組成について、温度の関数としての粘度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0004】
液体樹脂注入(LRI)は、航空宇宙、輸送、電子、建設及びレジャー産業を含む様々な産業において使用される繊維強化複合構造及び構成部品を製造するために用いられる方法である。LRI技術の一般概念は、材料又はプリフォームを型(二部品式型又は片面型)の中に配置し、次いで高圧下(又は大気圧下)で型の空洞又は真空バッグでシールされた片面型に樹脂を注入することにより、繊維強化材、ファブリック又は予め成形した線維状強化材(「プリフォーム」)中に樹脂を注入することを伴う。樹脂が材料又はプリフォーム中に浸出する結果、繊維強化複合構造が得られる。LRI技術は、従来技術を用いて製造することが困難な、複雑な形状の構造を製造するうえで特に有用である。液体樹脂注入方法の変形例には、限定されないが、柔軟性ツーリングによる樹脂注入(RIFT)、定圧注入(CPI)、ブル樹脂(Bull−Resin)注入(BRI)、制御された大気圧樹脂注入(CAPRI)、樹脂トランスファ成形(RTM)、Seemann複合材料樹脂注入成形法(SCRIMP)、真空補助樹脂注入(VARI)及び真空補助樹脂トランスファ成形(VARTM)が含まれる。
【0005】
プリプレグ樹脂配合組成において、高レベルの靱性は、通常、約10から30wt%の熱可塑性強靭化剤を、ベースとなる樹脂に付加することにより達成される。しかしながら、このような強靭化剤のLRI系への付加は、通常樹脂の粘度に許容不能な上昇を招く。粒子性強靭化剤の特定の場合、さらにテクスタイルの濾過という問題も生じうる。これら制限のため、プリプレグ配合組成に従来付加される強靭化剤の追加は通常、最終部品の靱性とLRI配合組成のプロセス粘度とのバランスが重要な技術要因である従来のLRI用途には適さない。
【0006】
LRI技術により製造される繊維強化複合構造を靱性化するための一の技術は、強靭化剤をプリフォーム自体に導入することである。例えば、可溶性の靱性化繊維をプリフォーム中に直接織り込むことにより、樹脂の粘度を上昇させるであろう(樹脂注入に適さない)強靭化剤を樹脂中に付加する必要を排除することができる。別の例は、プリフォームの強化材とのインタリーフとして使用される強靭化剤を含む可溶性又は不溶性のベールの使用である。しかしながら、これら方法のいずれにおいても、ホット/ウェット性能ノックダウン及びポリマーベースの不溶性インタリーフに対する溶媒感受性のリスクが増加することに加え、製造方法が複雑且つコスト高である。
【0007】
別の技術は、樹脂に対する粒子の付加である。しかしながら、適切な靱性閾値に到達させるために必要な粒子の量は多量であることが多く、そのため、通常LRIには適さない極めて狭いプロセスウィンドウを要する粘性の樹脂が得られる。国際公開第2011/077094号は、硬化すると粒子が樹脂全体に均一に分散するように、担体樹脂にコアシェルゴム粒子又は中空粒子を含み、さらに熱可塑性強靭化剤を含む、硬化性変性樹脂配合組成を提供することによりこの問題に対処する。
【0008】
しかしながら、複合材料の損傷に耐える能力の指標である衝撃後圧縮強度(CSAI)をさらに改善するとともに、長時間水分に曝された後の高温におけるオープンホール圧縮(OHC)強度の低下の指標であるホットウェット圧縮性能(ホットウェットオープンホール圧縮(H/W−OHC)強度)を良好に維持することが、依然として望ましい。従来の複合材のOHC強度は、典型的には室温未満で概ね一定である(例えば室温(21℃)から約−55℃)が、水分で飽和すると高温(例えば 70℃)で大きく低下しうる。また、LRI法においては、依然として硬化性組成物の加工性、即ち注入成分の初期粘度が低くなければならないこと、及び好ましくはさらに粘度が高い処理温度で長時間にわたり安定でなければならないことをさらに改善し、それにより、「ポットライフ」を確実に維持又は延長する必要がある。
【0009】
したがって、本発明の目的は、好ましくは加工性を損なわず且つ好ましくは加工性を改善する、改善されたCSAIを提供し、且つ良好なH/W OHCを呈する樹脂系を提供することである。本発明のさらなる目的は、好ましくは加工性を損なわず且つ好ましくは加工性を改善する、改善されたCSAIを提供し、且つ良好なH/W OHCを呈する樹脂系を提供することである。本発明のさらなる目的は、CSAI及び/又はH/W−OHCを損なうことなく改善された加工性を有し、好ましくは改善されたCSAIを有するとともに良好なH/W−OHCを保持する樹脂系を提供することである。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、硬化性組成物を提供する工程、前記硬化性組成物を型に注入する工程、及び前記硬化性組成物を硬化させる工程を含む、成形品を生産するための液体樹脂注入(LRI)製造方法が提供され、この硬化性組成物は:
a)5.0wt%以下の熱可塑性ポリマー;
b)5.0wt%以下の、約50nmから約800nmの範囲の粒子サイズを有するコアシェル粒子;
c)5.0wt%以下の、約2.0nmから約800nmの範囲の粒子サイズを有する無機粒子;
d)一又は複数のエポキシ樹脂前駆体であるか又はそのような前駆体を含むエポキシ樹脂成分;及び
e)一又は複数のアミン硬化剤
を含むか、実質的にこれらからなるか、又はこれらからなり、前記硬化性組成物の初期粘度は、約80℃から約130℃の温度範囲内の温度において5ポアズ以下である。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、
a)5.0wt%以下の熱可塑性ポリマー;
b)5.0wt%以下の、約50nmから約800nmの範囲の粒子サイズを有するコアシェル粒子;
c)5.0wt%以下の、約2.0nmから約800nmの範囲の粒子サイズを有する無機粒子;
d)一又は複数のエポキシ樹脂前駆体であるか又はそのような前駆体を含むエポキシ樹脂成分;及び
e)一又は複数のアミン硬化剤
を含むか、実質的にこれらかなるか、又はこれらからなる硬化性組成物が提供され、前記硬化性組成物の粘度は、約80℃から約130℃の温度範囲内の温度において5ポアズ以下である。
【0012】
本発明の第2の態様の硬化性組成物では、熱可塑性ポリマー及びエポキシ樹脂成分は、好ましくは連続相を形成する。
【0013】
好ましくは、硬化性組成物の粘度は、約80℃から約130℃の温度範囲内のある温度において(及び好ましくは前記温度範囲内のすべての温度において)、約2ポアズ以下、好ましくは約0.5ポアズ以下、好ましくは約0.2ポアズ以下であって、典型的には少なくとも約0.1ポアズである。好ましくは、硬化性組成物の粘度は、120℃の温度で、5ポアズ以下、好ましくは約2ポアズ以下、好ましくは約0.5ポアズ以下、好ましくは約0.2ポアズ以下であって、典型的には少なくとも約0.1ポアズである。
【0014】
本発明の第1の態様による液体樹脂注入方法に使用されるときの硬化性組成物のこれら粘度値は、組成物の初期粘度、即ち硬化サイクルの開始時の粘度を指していると理解されたい。約80℃から約130℃の温度範囲内のある温度において(好ましくは前記範囲内のすべての温度において、及び好ましくは120℃の温度において)約3時間後、硬化性組成物の粘度は、好ましくは5ポアズ以下、好ましくは2ポアズ以下、好ましくは1ポアズ以下、好ましくは0.5ポアズ以下であって、典型的には少なくとも0.3ポアズ、さらに典型的には少なくとも約0.4ポアズである。したがって、ポットライフを確実に維持するために、初期粘度が低くなければならないだけでなく、粘度は高い処理温度において長時間にわたり安定でなければならない。本明細書において使用される「高い処理温度」とは、周囲温度を上回る温度を意味し、約80℃から約130℃の温度範囲を包含する。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、本明細書に定義される硬化性組成物より得られる硬化された成形品が提供される。好ましくは、この成形品は、強化繊維状物質をさらに含む複合材料である。
【0016】
硬化すると、熱可塑性ポリマーは典型的に、エポキシ樹脂成分から、各々がエポキシ樹脂の「海」に浮かぶ「島のような」形態を有する複数の凝集体ドメインに相分離する。硬化物質の形態は、硬化サイクルの間に進化する。硬化した熱可塑性プラスチック含有エポキシ樹脂材料のこのような海に浮かぶ島の形態は、当技術分野において周知である。しかしながら、今や、本発明の硬化性組成物が、エポキシ樹脂の硬化の間の無機粒子及び熱可塑性ポリマーの組み合わせの自己集合により新規の形態を生成することが判明した。本発明によれば、硬化組成物は、相分離した熱可塑性ポリマードメインの周囲に、無機粒子の自己集合したシェル形態を呈する。換言すれば、硬化した組成物は、相分離した熱可塑性ポリマードメインの中ではなく周囲に、無機粒子の自己集合したシェル形態を呈する。したがって、硬化した組成物は、相分離した熱可塑性ポリマードメインの中ではなく周囲に、密に結合した無機粒子の自己集合したシェル形態を呈する。特に、無機粒子の一部は、前記無機粒子が実質的に前記ドメインを囲んで無機富化ゾーンを形成するように、熱可塑性ポリマーの相分離した(即ち凝集体)ドメインの周囲に位置する。断面において、自己集合したシェル形態の無機粒子は、熱可塑性ポリマードメインを実質的に取り囲み、一般的なコアシェル粒子形態に似たリング様構造を呈する。本明細書において使用される「実質的に取り囲む」とは、無機粒子による熱可塑性ポリマードメインの連続的なコーティングを示すことを意図しているのではなく、好ましくは熱可塑性ポリマードメインの外表面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%が一又は複数の無機粒子に近接するような、ドメインの周りの無機粒子の半連続的又は不連続的構成を指す。本明細書において使用される「近接」とは、熱可塑性ポリマードメインの外表面上の任意の点が、一又は複数の無機粒子の100nm以内、好ましくは50nm以内にあることを意味する。当業者であれば、「相分離した熱可塑性ポリマードメイン」という文言が、硬化した熱可塑性プラスチック含有エポキシ樹脂材料の海に浮かぶ島の形態を指すことを理解するであろう。
【0017】
したがって、本発明の成形品において、無機粒子は硬化樹脂に均一に分散していない。対照的に、コアシェル粒子は、本発明の成形品中の硬化樹脂に実質的に均一に分散している。
【0018】
本発明の成形品(特に複合材料)では、相分離した熱可塑性ポリマードメインの周りの、無機粒子の前記自己集合したシェル形態は、直交する三つの方向に定量化可能な寸法を有し、少なくとも一方向のその寸法が1000nmより大きく、好ましくは少なくとも二方向のその寸法が1000nmより大きく、好ましくは三方向すべてのその寸法が1000nmより大きい。寸法は、当業者がよく知る技術、例えば透過電子顕微鏡法(TEM)により評価することができる。相分離した熱可塑性ポリマードメインの周りの、無機粒子の自己集合したシェル形態は、LRI法に使用されるプリフォームのサイズ制限及び濾過効果のために、既製エンティティとして硬化性組成物には存在しないか又は導入されず、代わりに硬化サイクルの間に自己集合して生じる。換言すれば、相分離した熱可塑性ポリマードメインの周りの、前記無機粒子の自己集合したシェル形態は、硬化サイクルの間にin situで生成される。
【0019】
本発明者らは、本発明の硬化性組成物が、例えば国際公開第2011/077094号に開示された材料に対し、驚くほど改善された加工性を呈し、硬化性組成物から得られる硬化樹脂材料が、驚くほど改善された衝撃後圧縮強度(CSAI)と、ホットウェットオープンホール圧縮(H/W−OHC)強度の少なくとも保持を呈することを見出した。特に、無機粒子及び新規の自己集合シェル形態の導入により、CSAI試験において性能が有意に改善され、損傷面積及びデント深さが有意に減少する。
【0020】
本発明の硬化性組成物は、液体樹脂注入製造方法において特に使用される。
【0021】
熱可塑性ポリマー
熱可塑性ポリマーは、本明細書に記載される組成物において強靭化剤として機能する。
【0022】
硬化性組成物は、硬化性組成物の重量で5.0wt%以下の前記熱可塑性ポリマーを含み、好ましくは約4.0wt%以下、好ましくは約3.0wt%以下、好ましくは約2.0wt%以下であって、好ましくは少なくとも約0.05wt%、好ましくは少なくとも約0.1wt%、好ましくは少なくとも約0.3wt%であり、典型的には約0.3wt%から約4.0wt%、さらに典型的には約0.5wt%から約4.0wt%の同ポリマーを含む。
【0023】
熱可塑性ポリマーは、好ましくは、少なくとも約150℃、好ましくは少なくとも約160℃、好ましくは少なくとも約170℃、好ましくは少なくとも約180℃であって、適切には少なくとも約190℃のガラス遷移温度(Tg)を呈する。
【0024】
熱可塑性ポリマーは、好ましくは熱可塑性の芳香族ポリマーであり、好ましくは、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルフィド及びポリアリールスルホン及びそのコポリマーより選択され、ポリアリールエーテルスルホン(PES)、ポリアリールエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリアリールスルフィド−スルホン及びポリフェニレンオキシド(PPO)を含む。前記熱可塑性ポリマーは、単独で又は組み合わせて使用することができる。熱可塑性芳香族ポリマーの基本的特徴が、芳香族がポリマーの骨格に懸垂するのではなく骨格内部に位置するという要件であることが理解されよう。ポリマー骨格が芳香族基を含む限りにおいて、ポリマー骨格に懸垂する芳香族基も熱可塑性芳香族ポリマー内に存在してよい。以下にさらに説明するように、ポリマー骨格内部の芳香族基は、一又は反応性のペンダント基及び/又は末端基を担持することができる。本明細書において使用される「芳香族ポリマー」は、ポリマー内で互いに結合する芳香族基の質量分率が少なくとも51%、好ましくは少なくとも60%であるポリマーである。
【0025】
熱可塑性芳香族ポリマーの芳香族は、好ましくは1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−又は2,6−ナフチレン、及びフタルイミド−N−4−イレンである。特に有用なのは、フェニレン基、典型的には1,4−フェニレンである。
【0026】
好ましい熱可塑性芳香族ポリマーは、ポリアリールエーテルスルホン、例えばポリ−1,4−フェニレン−オキシ−1,4−フェニレン−スルホン;ジクロロジフェニルスルホン及びビスフェノールAから作製されるポリエーテルスルホン;並びにポリ−ビス(1,4−フェニレン)−オキシ−1,4−フェニレン−スルホンである。さらなる好ましい熱可塑性芳香族ポリマーは、ポリ(p−フェニレンスルフィド)である。さらなる好ましい熱可塑性芳香族ポリマーは、ポリ(p−フェニレンオキシド)である。
【0027】
ポリアリールエーテルスルホン熱可塑性ポリマーは、エーテル結合繰り返し単位を含み、任意選択的にチオエーテル結合繰り返し単位をさらに含み、前記単位は:
−[ArSOAr]
より、及び任意選択的に:
−[Ar]
より選択され、
上式中:
Arはフェニレンであり;
n=1から2であって、分数でもよく;
a=1から3であって、分数でもよく、aが1を超えるとき、前記フェニレン基は、単一の化学結合又は−SO−以外の二価の基を通して線状に結合するか(好ましくは二価の基は基−C(R−であり、ここで各Rは同じでも又は異なってもよく、H及びC1−8アルキル(特にメチル)より選択される)、又は互いに融合され、
但し、繰り返し単位−[ArSOAr]−は、平均で前記−[ArSOAr]−単位のうちの少なくとも二が存在する各ポリマー鎖中に連続するような割合で、ポリアリールエーテルスルホン中に常に存在することを条件とし、
ポリアリールエーテルスルホンは、一又は複数の反応性ペンダント基及び/又は末端基を有する。
【0028】
「分数」との言及は、n又はaの様々な値を有する所与のポリマー鎖含有単位の平均値に対して行われる。
【0029】
ポリアリールエーテルスルホン中のフェニレン基は、単一の結合を通して結合しうる。
【0030】
ポリアリールエーテルスルホン中のフェニレン基は、一又は複数の置換基によって置換することができ、これら置換基の各々は、O、S、N、又はハロ(例えばCl又はF)より選択される一又は複数のヘテロ原子を任意選択的に含む、C1−8分岐若しくは直鎖脂肪族の飽和若しくは不飽和脂肪族基又は部分;並びに/或いは、活性水素を提供する基、特にOH、NH、NHR若しくは−SH(ここでRは最大8の炭素原子を含有する炭化水素基である)、又はビニル、アリル若しくはマレイミド、無水物、オキサゾリン及び不飽和を含有するモノマーにおけるような、他の架橋作用を提供する基、特にベンズオキサジン、エポキシ,(メタ)アクリレート、シアナート、イソシアナート、アセチレン若しくはエチレン、より独立して選択される。
【0031】
好ましくは、フェニレン基はメタ−又はパラ−(好ましくはパラ)である。コンホメーション(特にメタ−及びパラ−コンホメーション)の混合物が、ポリマーの骨格に沿って存在しうる。
【0032】
好ましくは、ポリアリールエーテルスルホンは、エーテル結合及び/又はチオエーテル結合、好ましくはエーテル結合によって結合された、−[ArSOAr]−繰り返し単位と−[Ar]−繰り返し単位の組み合わせを含む。したがって、好ましくは、ポリアリールエーテルスルホンは、ポリエーテルスルホン(PES)エーテルとポリエーテルエーテルスルホン(PEES)の、エーテル結合繰り返し単位の組み合わせを含む。
【0033】
−[ArSOAr]−と−[Ar]−の繰り返し単位の相対的割合は、平均で少なくとも二の−[ArSOAr]−繰り返し単位が、存在する各ポリマー鎖中において直接相互に連続するような割合であり、−[ArSOAr]−単位:−[Ar]−単位の比は、好ましくは1:99から99:1、さらに好ましくは10:90から90:10の範囲内である。典型的には、比[ArSOAr]:[Ar]は75:25から50:50の範囲内である。
【0034】
ポリアリールエーテルスルホン中の好ましい繰り返し単位は:
(I): −X−Ar−SO−Ar−X−Ar−SO−Ar− (本明細書で「PES単位」と呼ぶ)
及び
(II): −X−(Ar)−X−Ar−SO−Ar− (本明細書で「PEES単位」と呼ぶ)
であり、上式中:
Xは、O又はS(好ましくはO)であって、単位によって異なってよく;
単位I:IIの比は、好ましくは10:90から80:20の範囲内、さらに好ましくは10:90から55:45の範囲内、さらに好ましくは25:75から50:50の範囲内であり、好ましくは比I:IIは、20:80から70:30の範囲内、さらに好ましくは30:70から70:30の範囲内、最も好ましくは35:65から65:35の範囲内である。
【0035】
ポリアリールエーテルスルホンの繰り返し単位の好ましい相対的割合は、重量%でのSO含有量で表現され、100×(SOの重量)/(平均繰り返し単位の重量)として定義される。好ましいSO含有量は、少なくとも22、好ましくは23〜25%である。a=1であるとき、これは少なくとも20:80であり、好ましくは35:65から65:35の範囲内のPES/PEES比に相当する。
【0036】
ポリエーテルエーテルスルホンの流れ温度は、通常対応するMnポリエーテルスルホンの流れ温度より低いが、どちらも同様の機械特性を有している。したがって、比は、上記a及びnの値を決定することにより決定することができる。
【0037】
米国特許第6437080号は、必要に応じて選択された分子量のモノマー前駆体を単離する方式で、このような組成物をそれらのモノマー前駆体から得るための方法を開示している。
【0038】
上記の割合は、前述の単位のみに言及している。このような単位に加えて、ポリアリールエーテルスルホンは、最大50%モル、好ましくは最大25%モルの他の繰り返し単位を含有することができ:このとき好ましいSO含有量はポリマー全体に当てはまる。このような単位は、例えば以下の式のものである。
上式中、Lは、直接リンク、酸素、硫黄、−CO−又は二価の基(好ましくは二価の炭化水素ラジカル)であり、好ましくは二価の基は、基−C(R12−(各R12は同じでも異なってもよく、H及びC1−8アルキル(特にメチル)より選択される)である。
【0039】
ポリアリールエーテルスルホンが求核合成の産物であるとき、その単位は、例えば一又は複数のビスフェノール及び/又はヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン(2,6及び他のアイソマー)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及び−メタンより選択される対応するフェノール−チオール又はビス−チオールから得られたものでありうる。ビス−チオールが使用される場合、それはin situで形成することができ、即ちジハライドがアルカリスルフィド又はポリスルフィド又はチオ硫酸塩と反応しうる。
【0040】
このような追加単位の他の例は以下の式のものである。
上式中、同じでも異なってもよいQ及びQ’は、CO又はSOであり;Ar’は二価の芳香族ラジカルであり;pは0、1、2、又は3であり、但しQがSOである場合pはゼロでない。Ar’は、好ましくは、フェニレン、ビフェニレン又はテルフェニレンより選択される少なくとも一の二価の芳香族ラジカルである。特定の単位は以下の式を有する。
上式中、qは1、2又は3である。ポリマーが求核合成の産物であるとき、このような単位は、例えば4,4’−ジハロベンゾフェノン、4,4’ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ビフェニル、1,4,ビス(4−ハロベンゾイル)ベンゼン及び4,4’−ビス(4−ハロベンゾイル)ビフェニルより選択される、一又は複数のジハライドから得られたものでありうる。言うまでもなく、これらは部分的には対応するビスフェノールから得られたものである。
【0041】
ポリアリールエーテルスルホンは、ハロフェノール及び/又はハロチオフェノールからの求核合成の産物でありうる。任意の求核合成において、ハロゲンは、塩素又は臭素である場合、銅触媒の存在により活性化されうる。このような活性化は、ハロゲンが電子求引基によって活性化される場合、不要であることが多い。いずれにしろ、フッ化物は通常塩化物より活性である。ポリアリールエーテルスルホンの任意の求核合成は、化学量論を最大10%モル超過する、好ましくは一又は複数のアルカリ金属塩、例えばKOH、NaOH又はKCOの存在下において実行される。
【0042】
上述のように、ポリアリールエーテルスルホンは、一又は複数の反応性ペンダント基及び/又は末端基を含み、好ましい実施態様では、ポリアリールエーテルスルホンは、二のそのような反応性ペンダント基及び/又は末端基を含む。別の構成では、ポリアリールエーテルスルホンは、一のそのような反応性ペンダント基及び/又は末端基を含む。好ましくは、反応性ペンダント基及び/又は末端基は、活性水素、特にOH、NH、NHR又は−SH(Rは、最大8の炭素原子を含む炭化水素基である)を提供する基であるか、或いは、ビニル、アリル又はマレイミド、無水物、オキサザリン(oxazaline)及び飽和を含むモノマーにおけるような、他の架橋作用、特にベンズオキサジン、エポキシ,(メタ)アクリレート、シアナート、イソシアナート、アセチレン又はエチレンを提供する基である。一実施態様では、反応性ペンダント基及び/又は末端基は、式−A’−Y(A’は結合又は二価の炭化水素基、好ましくは芳香族、好ましくはフェニルである)のものである。Yの例は、活性水素、特にOH、NH、NHR又は−SH(Rは、最大8の炭素原子を含む炭化水素基である)を提供する基であるか、或いは、ビニル、アリル又はマレイミド、無水物、オキサザリン(oxazaline)及び飽和を含むモノマーにおけるような、他の架橋作用、特にベンズオキサジン、エポキシ,(メタ)アクリレート、シアナート、イソシアナート、アセチレン又はエチレンを提供する基である。他の架橋作用を提供する基は、ポリアリールエーテルスルホンのAr基に、直接結合を介して、又は本明細書に上述したようにエーテル、チオエーテル,スルホン、−CO−又は二価の炭化水素ラジカル結合を介して、最も典型的にはエーテル、チオエーテル又はスルホン結合を介して、結合することができる。さらなる実施態様では、末端基、但し好ましくはその比較的小さな割合を超えない末端基は、ハロ基(特にクロロ)より選択することができる。反応性末端基は、モノマーの反応、又はそれに続く、単離の前若しくは後の、生成ポリマーの変換により得られる。例えばポリマーの出発物質として活性化された芳香族ハロゲン化物(例えばジクロロジフェニルスルホン)を用いる、反応性ペンダント基及び/又は末端基の導入のための一方法では、合成方法において、活性化された芳香族ハロゲン化物の化学量論量を少し上回る量を利用し、次いで結果として得られた、末端ハロゲン化物基を有するポリマーを、アミノフェノール(例えばm−アミノフェノール)と反応させてアミノ末端基をつくり出す。
【0043】
反応性ペンダント基及び/又は末端基は、好ましくは活性水素、特にOH及びNH、特にNHを提供する基より選択される。好ましくは、ポリマーは二のそのような基を含む。
【0044】
ポリアリールエーテルスルホンの数平均モル質量Mは、適切には約2000から約30000、好ましくは約2000から約25000、好ましくは約2000から約15000であって、適切には約3000から約10000g/molの範囲内である。
【0045】
ポリアリールエーテルスルホンの合成については、米国特許出願公開第2004/0044141号及び米国特許第6437080号にさらに記載がある。
【0046】
樹脂及び硬化剤
硬化性組成物は、一又は複数のエポキシ樹脂前駆体のエポキシ樹脂成分を含む。エポキシ樹脂成分は、熱硬化性エポキシ樹脂成分である。エポキシ樹脂前駆体は、好ましくは一の分子につき少なくとも二のエポキシド基を有し、一の分子につき三、四、又は五以上のエポキシド基を有する多機能性エポキシドでありうる。エポキシ樹脂前駆体は、適切には周囲温度で液体である。適切なエポキシ樹脂前駆体には、芳香族ジアミン、芳香族モノ一次アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、ポリカルボン酸類など又はこれらの混合物からなる化合物の群のうちの一又は複数の、モノ−又はポリ−グリシジル誘導体が含まれる。
【0047】
好ましいエポキシ樹脂前駆体は:
(i)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジヒドロキシベンゾフェノン、及びジヒドロキシジフェニルのグリシジルエーテル;
(ii)Novolacsに基づくエポキシ樹脂;及び
(iii)m−又はp−アミノフェノール、m−又はp−フェニレンジアミン、2,4−、2,6−又は3,4−トルイレンジアミン、3,3’−又は4,4’−ジアミノジフェニルメタンのグリシジル機能性反応生成物
より選択され、
特にエポキシ樹脂前駆体は、一の分子につき少なくとも二のエポキシド基を有する。
【0048】
特に好ましいエポキシ樹脂前駆体は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA);ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(DGEBF);O,N,N−トリグリシジル−パラ−アミノフェノール(TGPAP);O,N,N−トリグリシジル−メタ−アミノフェノール(TGMAP);及びN,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)より選択される。例えば、エポキシ樹脂前駆体は、DGEBA及びDGEBF、並びにそのブレンドより選択される。好ましい一実施態様では、エポキシ樹脂前駆体は、DGEBF及びTGPAP、並びにそのブレンドより選択される。
【0049】
アミノ水素等価物に対するエポキシ基の比は、好ましくは1.0から2.0の範囲内である。過剰なエポキシを示す配合組成が、正確な化学量より好ましい。
【0050】
本発明における使用のために適切な市販のエポキシ樹脂前駆体には、N,N,N’,N’−テトラグリシジル ジアミノ ジフェニルメタン(例えば等級MY 9663、MY 720又はMY 721;Huntsman);N,N,N’,N’−テトラグリシジル−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソ−プロピルベンゼン(例えばEPON 1071;Momentive);N,N,N’,N’−tetraclycidyl−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン,(例えばEPON 1072;Momentive);p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えばMY 0510;Hunstman);m−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えばMY 0610;Hunstman);2,2−ビス(4,4’−ジヒドロキシ フェニル)プロパン(例えばDER 661(Dow)、又はEPON 828(Momentive)及び好ましくは25℃で粘度8〜20PaのNovolac樹脂といった、ビスフェノールAベースの材料のジグリシジルエーテル;フェノールNovolac樹脂のグリシジルエーテル(例えばDEN 431又はDEN 438;Dow);ジ−シクロペンタジエンベースのフェノールNovolac(例えばTactix 556、Huntsman);ジグリシジル 1,2−フタレート(例えばGLY CEL A−100);ジヒドロキシジフェニルメタンのジグリシジル誘導体(ビスフェノールF)(例えばPY 306;Huntsman)が含まれる。他のエポキシ樹脂前駆体には、3’,4’−エポキシシクロヘキシル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートといった環状脂肪族が含まれる(例えばCY 179;Huntsman)。
【0051】
好ましくは、エポキシ樹脂成分は、同じ又は異なる機能性を有するエポキシ樹脂前駆体のブレンドである(この文脈における用語「機能性」は、機能性エポキシド基の数を意味する)。エポキシ樹脂前駆体のブレンドは、一の分子につき二のエポキシド基を有する一又は複数のエポキシ樹脂前駆体(以降、前駆体P2と呼ぶ)、及び/又は一の分子につき三のエポキシド基を有する一又は複数のエポキシ樹脂前駆体(以降、前駆体P3と呼ぶ)、及び/又は一の分子につき四のエポキシド基を有する一又は複数のエポキシ樹脂前駆体(以降、前駆体P4と呼ぶ)を含みうる。ブレンドは、一の分子につき五以上のエポキシド基を有する一又は複数のエポキシ樹脂前駆体(以降、前駆体PPと呼ぶ)も含みうる。例えば,(一又は複数の)P3前駆体のみが存在する。別の構成では、(一又は複数の)P4前駆体のみが存在する。適切には、エポキシ樹脂前駆体のブレンドは:
(i)約0wt%から約60wt%の(一又は複数の)エポキシ樹脂前駆体(P2);
(ii)約0wt%から約55wt%の(一又は複数の)エポキシ樹脂前駆体(P3);及び
(iii)約0wt%から約80wt%の(一又は複数の)エポキシ樹脂前駆体(P4)
を含む。
【0052】
一実施態様では、ブレンドは、所与の機能性のエポキシ樹脂前駆体を一つだけ、上記の割合で含む。
【0053】
本発明の硬化性組成物は、熱的に硬化可能である。
【0054】
組成物は、一又は複数のアミン硬化剤を含む。このような硬化剤は、当技術分野において既知であり、一のアミノ基につき最大500の分子量を有する化合物、例えば芳香族アミン又はグアニジン誘導体を含む。芳香族アミン硬化剤、好ましくは一の分子につき少なくとも二のアミノ基を有する芳香族アミンが好ましい。例には、ジアミノジフェニルスルホン、例えばアミノ基がスルホン基に対してメタ−ポジション又はパラ−ポジションにあるものが含まれる。本発明における使用に適したアミン硬化剤の特定の例は、3,3’−及び4−,4’−ジアミノジフェニルスルホン(DDS);4,4’−メチレンジアニリン(MDA);ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン;ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン;4,4’−メチレンビス−(2,6−ジエチル)−アニリン(MDEA;Lonza);4,4’−メチレンビス−(3−クロロ,2,6−ジエチル)−アニリン(MCDEA;Lonza);4,4’メチレンビス−(2,6−ジイソプロピル)−アニリン(M−ジPA;Lonza);3,5−ジエチルトルエン−2,4/2,6−ジアミン(D−ETDA 80;Lonza);4,4’メチレンビス−(2−イソプロピル−6−メチル)−アニリン(M−MIPA;Lonza);4−クロロフェニル−N,N−ジメチル−ウレア(例えばMonuron);3,4−ジクロロフェニル−N,N−ジメチル−ウレア(例えばDiuronTM);ジシアノジアミド(AmicureTM CG 1200;Pacific Anchor Chemical);及び9,9 ビス(アミノフェニル)フルオレン、例えば9,9 ビス(3−クロロ−4−アミノフェニル)フルオレン(CAF)、9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)フルオレン(OTBAF)及び9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンである。好ましくは、硬化剤は、MCDEA、MDEA、MDA、3,3’−DDS及び4,4−DDSより選択され、好ましくはMCDEA、MDEA及びMDAより選択される。
【0055】
エポキシ樹脂成分及びアミン硬化剤は、好ましくは、硬化剤中に存在するアミン基:エポキシ成分中に存在するエポキシ基のモル比が、約0.5:1.0から約1.0:0.5、好ましくは約0.75:1から約1:0.75、好ましくは約0.9:1.0から約1.0:0.9となるために十分な量で組成物中に存在し、典型的には前記比は約1:1である。
【0056】
エポキシ樹脂成分と(一又は複数の)硬化剤は、硬化性組成物のバルクを構成し、好ましくは、熱可塑性ポリマー、コアシェル粒子及び無機粒子を含む硬化性組成物の残部を構成する。好ましくは、硬化性組成物は、硬化性組成物の重量で、少なくとも約40wt%、好ましくは少なくとも約45wt%、好ましくは約60wt%以下、及び好ましくは約55wt%以下であって、典型的には約50wt%以下のエポキシ樹脂成分を含む。好ましくは、硬化性組成物は、硬化性組成物の重量で、少なくとも約30wt%、好ましくは少なくとも約35wt%、典型的には少なくとも約40wt%、好ましくは約60wt%以下、好ましくは約55wt%以下であって、典型的には約50wt%以下の前記一又は複数のアミン硬化剤を含む。
【0057】
コアシェル粒子
硬化性組成物は、強靭化剤として機能する複数のコアシェル粒子を含む。コアシェル粒子は、内側コア部分と、内側コア部分を実質的に包む外側シェル部分とを含む。コア部分は、好ましくはエラストマー又はゴム特性を有するポリマー材料であり、即ち比較的低いガラス遷移温度(特に外側シェル部分の材料に対して)、好ましくは約0℃未満、例えば約−30℃を有する。外側シェル部分は、好ましくはガラス様ポリマー材料、即ち周囲温度(20℃)より高い、好ましくは約50℃より高いガラス遷移温度を有する熱可塑性ポリマー又は架橋した熱硬化ポリマーである。
【0058】
コア部分はシリコーンゴムを含んでもよい。コアモノマーは、好ましくはイソプレン、ブタジエン、スチレン及びシロキサンより選択される。コア部分のポリマー材料は、イソプレン又はブタジエンのホモポリマーより選択されうる。最大約30mol%(典型的には20mol%以下、典型的には10mol%以下)のビニルコモノマーを含むイソプレン又はブタジエンのコポリマーも使用することができ、特にビニルモノマーはスチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル及びアルキルメタクリレート(特にブチルメタクリレート)より選択される。好ましくは、コア材料は、ポリブタジエン−スチレンコポリマー及びポリブタジエン、並びにこれらのブレンドより選択される。好ましくは、ポリブタジエン−スチレンコポリマーは、最大約30mol%(典型的には20mol%以下、典型的には10mol%以下)のスチレンを含む。
【0059】
外側シェルのポリマー材料は、好ましくは、スチレン、アルキルスチレン及びアルキルメタクリレート(好ましくはメチルメタクリレート)のホモポリマー、及びスチレン、アルキルスチレン及びアルキルメタクリレート(好ましくはメチルメタクリレート)より選択される少なくとも70mol%のモノマーを含み、さらに前記他のコモノマー、酢酸ビニル及びアクリロニトリルより選択される少なくとも一のコモノマーを含むコポリマーより選択される。外側シェルのポリマー材料は、その中に(例えば重合の間にグラフティングにより又はコモノマーとして)不飽和官能性モノマー、例えば不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸、及び不飽和エポキシド(例えば、無水マレイン酸,(メタ)アクリル酸及びグリシジルメタクリレートを導入することにより、官能化されてもよい。外側シェルのポリマー材料は、架橋していてもよく、任意選択的に、従来技術に既知であるように、メタクリルアミド(MA)、アクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド及びN−メチロールアクリルアミドといった一又は複数の架橋性モノマーをさらに含む。好ましい外側シェルのポリマー材料は、メチルメタクリレートのホモポリマー又はコポリマーであり、上記のように任意選択的に官能化及び/又は架橋していてもよい。
【0060】
好ましいコアシェル粒子は、上記のように、ポリブタジエン−スチレンコポリマーのコア材料と、任意選択的に官能化及び/又は架橋したメチルメタクリレートのホモポリマー又はコポリマーである外側シェルとを含む。
【0061】
コアシェル粒子のコア部分は、有利には、コアシェル粒子の約70から90wt%を構成し、シェル部分は約10から約30wt%を構成する。
【0062】
本発明における使用に適切な市販のコアシェル粒子には、Kaneka、Corp.によって製造されるMX660及びMX411が含まれる。
【0063】
硬化性組成物は、硬化性組成物の重量で、5.0wt%以下、好ましくは約4.0wt%以下、好ましくは約3.0wt%以下、好ましくは約2.0wt%以下、好ましくは少なくとも約0.05wt%、好ましくは少なくとも約0.1wt%、好ましくは少なくとも約0.5wt%であって、典型的には約0.3wt%から約4.0wt%のコアシェル粒子を含む。
【0064】
コアシェル粒子は、約50nmから約800nmの範囲、好ましくは約100nmから約200nmの範囲の粒子サイズを有する。
【0065】
コアシェル粒子は、乾燥粉末の形態でもよい。別の構成では、コアシェル粒子は、コアシェル粒子と担体成分とを含む組成物の形態(典型的には濃縮物又はマスターバッチ)でもよく、好ましくは担体成分は、本明細書に記載される熱可塑性ポリマー又はエポキシ樹脂成分より選択され、好ましくは担体成分は、成分(a)又は(d)として硬化性組成物中に既存の熱可塑性ポリマー又はエポキシ樹脂成分と同じである。
【0066】
無機粒子
硬化性組成物は、硬化性組成物の重量で、5.0wt%以下、好ましくは約4.0wt%以下、好ましくは約3.0wt%以下、好ましくは約2.0wt%以下、好ましくは少なくとも約0.05wt%、好ましくは少なくとも約0.1wt%、好ましくは少なくとも約1.0wt%、及び典型的には約0.1から約約4.0wt%の範囲の無機粒子を含む。
【0067】
無機粒子は、約2.0nmから約800nmの範囲内、好ましくは少なくとも約10nm、好ましくは500nm以下、好ましくは200nm以下、好ましくは100nm以下であって、典型的には約50nm以下の粒子サイズを有する。
【0068】
無機粒子は、乾燥粉末の形態でもよい。別の構成では、無機粒子は、無機粒子と担体成分とを含む組成物の形態(典型的には濃縮物又はマスターバッチ)でもよく、好ましくは担体成分は、本明細書に記載される熱可塑性ポリマー又はエポキシ樹脂成分より選択され、好ましくは担体成分は、成分(a)又は(d)として硬化性組成物中に既存の熱可塑性ポリマー又はエポキシ樹脂成分と同じである。無機粒子を含む組成物中に存在する任意の担体成分は、コアシェル粒子を含む組成物中に存在する任意の担体成分と同じでも異なってもよい。
【0069】
無機粒子は、好ましくは、金属塩(例えば炭酸カルシウム)の粒子、及び金属酸化物から、さらに好ましくは金属酸化物から、好ましくはSiO、TiO及びAlから、最も好ましくはシリカより選択される。粒子は、ナノ粒子と呼んでもよい。
【0070】
無機粒子は、当技術分野において既知及び一般的な、任意の適切な等級のこのような粒子より選択することができる。例えば、複数の等級のナノシリカが市販されている。ナノシリカ粒子は、好ましくは実質的に球状である。ナノシリカ粒子は、ケイ酸ナトリウム水溶液から化学的に合成することができる。
【0071】
硬化性ポリマー組成物及び硬化した熱硬化性樹脂組成物の用途
本明細書に記載される硬化性組成物は、成形構造材の作製に適しており、特に耐荷重性又は耐衝撃性構造を含む構造の作製に適している。組成物は、そのまま使用されてもよいが、典型的には、強化繊維状材料をさらに含む複合材料を調製するために使用される。
【0072】
繊維強化材、ファブリック又は事前成形線維状強化材(即ちプリフォーム)は、当技術分野において一般的な任意の適切な強化繊維状材料を含むことができる。繊維は短ファイバ又はチョップトファイバとすることができ、典型的には平均繊維長は2cm以下、例えば約6mmである。大が家的に及び好ましくは、繊維は連続している。短ファイバ及び/又はチョップトファイバの両方と連続性繊維の組み合わせも利用可能である。繊維は、例えば、一方向に配置された繊維、織布、又は網状の、編まれた、(マルチワープ編地及び完全に編まれたニット生地を含む)、ノンクリンプ織物、不織布、又はテープの形態とすることができる。繊維材は、プリフォームの形態でもよい。繊維は、樹脂系及び強化剤を含む組成物の総体積に対して、典型的には最低20%、特に30%から70%、具体的には50から70体積%の濃度で使用される。繊維は、特にポリパラフェニレンテレフタルアミドのような硬質ポリマーの有機物、又は無機物とすることができる。無機繊維の中で、ガラス繊維、例えば「E」又は「S」が使用可能であるか、又はアルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、他の化合物のセラミック又は金属が使用可能である。極めて適切な強化繊維は、特にグラファイトとしての炭素である。繊維は、好ましくは、有害反応なしで液体前駆体組成物に可溶性である又は繊維と熱硬化性/熱可塑性組成物の両方に結合するという意味で、樹脂系と適合性の材料で塗布されているか、又は塗布されていない。
【0073】
したがって、上述のように、本発明は、本明細書に定義される硬化性組成物を含むか、又はそのような組成物から得られる成形品を提供する。好ましくは、この成形品は、本明細書に定義される硬化性組成物を含むか、又はそのような組成物から得られた、強化繊維材をさらに含む複合材料である。
【0074】
本発明の硬化性組成物は、輸送の分野(航空宇宙、航空、航海及び陸上ビークルを含み、自動車、鉄道及び座席車産業を含む)、建築/建設の分野又は他の商業用分野における使用に適した構成部品の製造に特定の有用性を見出す。航空宇宙及び航空産業において、複合材は、航空機の一次及び二次部品を製造するために、特に一次部品(例えば翼、胴体、圧力隔壁など)のために使用されうる。
【0075】
したがって、本発明は、本明細書に定義される本発明の第2の態様による硬化性組成物からこのような成形品又は硬化した熱硬化性樹脂を製造する方法を提供し、この方法は、前記硬化性組成物を提供する工程と硬化性組成物を硬化させる工程を含む、
【0076】
硬化性組成物の提供は、通常、(一又は複数の)樹脂前駆体成分と強靭化剤を混合する最初の工程を含み、任意選択的にこれに続いて冷却工程が行われる。硬化性組成物が複数の樹脂前駆体成分を含む場合、前記複数の樹脂前駆体成分の二以上は、典型的には強靭化剤の付加に先立ち事前に混合され、典型的には前記事前混合に続いて加熱工程(適切には室温を上回る温度から約80℃で)が行われた後で強靭化剤が付加される。強靭化剤は、好ましくは、まず熱可塑性成分を加え、続いてコアシェル粒子と無機粒子を加えることにより導入される。熱可塑性成分の付加は、典型的には、熱可塑性プラスチックが溶解し終えるまで、室温を上回る温度(適切には最高約120℃の温度で)で達成される。任意選択的な冷却工程(典型的には混合物が約70から約90℃の範囲の温度となるような)の後、コアシェル及び無機粒子を、連続的に又は同時に付加する。各成分の追加には撹拌又は他の混合技術が伴うことが分かるであろう。コアシェル粒子は、好ましくはマスターバッチとして樹脂前駆体成分に付加される。同様に、無機粒子は、好ましくはマスターバッチとして樹脂前駆体成分に付加される。コアシェル粒子を含むマスターバッチの樹脂前駆体成分は、無機粒子を含むマスターバッチの樹脂前駆体成分と同じでも異なってもよい。マスターバッチは、一又は複数の樹脂前駆体成分を含み、好ましくは単一の樹脂前駆体成分だけを含む。代替的に、コアシェル粒子及び/又は無機粒子は、乾燥粉末として組成物に付加されてもよい。さらなる代替例では、コアシェル粒子及び/又は無機粒子は、樹脂前駆体成分と混合される前に、熱可塑性成分と混合されてもよい。硬化性組成物が複数の樹脂前駆体成分を含む場合、樹脂前駆体成分のうちの一又は複数を、硬化性組成物の調製の間の任意の工程で組成物に加えることができ;したがって例えば、硬化性組成物が少なくとも3(例えば3又は4)の樹脂前駆体成分を含む場合、前記樹脂前駆体成分のうちの複数を、好ましくは上述のように事前に混合し、樹脂前駆体成分の少なくとも一(典型的には一つだけ)を、その後で、例えば前記強靭化剤の少なくとも一を付加した後で、特に前記強靭化剤のすべてを付加した後で導入する。次いで硬化剤を加え、混合物を、硬化剤が完全に溶解するまで撹拌する。
【0077】
次いで硬化性組成物を、典型的にはその中に強化繊維材が配置された型に注入し、次いで硬化性組成物を高温で硬化させ、硬化成形品を形成する。
【0078】
したがって、本発明は、好ましくは、液体樹脂注入(LRI)製造方法、好ましくは樹脂トランスファ成形(RTM)、さらに好ましくは真空補助樹脂トランスファ成形(VARTM)を提供し、この方法は:
(i)強化繊維材を含むプリフォームを調製する工程;
(ii)型の中にプリフォームを置く工程;
(iii)型を所定の温度に加熱する工程;
(iv)本明細書に定義される硬化性組成物を提供する工程;
(v)硬化性組成物を型の中に注入する工程、及び
(vi)前記硬化性組成物を硬化させる工程
を含む。
【0079】
この方法は、複合品を製造するために使用される、当技術分野において柔軟性ツーリングによる樹脂注入(RIFT)、定圧注入(CPI)、バルク樹脂注入(BRI)、制御された大気圧樹脂注入(CAPRI)、Seemann複合材樹脂注入成形法(SCRIMP)、真空補助樹脂注入(VARI)又は樹脂トランスファ注入(RTI)と呼ばれる方法より選択される、液体樹脂注入法でもよい。
【0080】
プリフォームは、本明細書に記載のように、強化繊維材を含むファブリックの一又は複数の層を含みうる。
【0081】
型の所定の温度は、典型的には約90℃から約120℃の範囲、典型的には約100℃から110℃の範囲である。
【0082】
硬化は、適切には、最大200℃、好ましくは少なくとも140℃、好ましくは少なくとも160℃、好ましくは160から195℃、さらに好ましくは170から190℃、さらに好ましくは175から185℃の範囲の硬化温度(T)を用いる高温で実施される。硬化温度(T)は、好ましくは少なくとも約0.05℃/分、好ましくは少なくとも約0.1℃/分、好ましくは少なくとも約0.5℃/分、典型的には最大約5.0℃/分、典型的には最大約3.0℃/分、さらに典型的には最大約2.5℃/分であって、好ましくは約0.5℃/分から約2.5℃/分の範囲である硬化傾斜率(RCR)で加熱することにより到達される。硬化温度は、典型的には少なくとも約60分、典型的には約500分以下、好ましくは少なくとも約90分、好ましくは約180分以下であって、典型的には約120分である、必要な期間にわたって維持される。典型的には、硬化される樹脂は、典型的には周囲温度まで、制御された速度(好ましくは約0.5℃/分から約2.5℃/分の範囲、典型的には2℃/分の速度)で冷却される。
【0083】
プリフォームは、少なくとも真空バッグにより型内にシールされうる。
【0084】
例えば組成物が本明細書に記載される好ましい粘度特性を呈する、硬化性組成物の改善された加工性のために、場合、硬化性組成物は:
(i)硬化性組成物の重量で、約3.0wt%以下、好ましくは約2.0wt%以下の前記熱可塑性ポリマー;及び/又は
(ii)硬化性組成物の重量で、約3.0wt%以下、好ましくは約2.0wt%以下のコアシェル粒子;及び/又は
(iii)硬化性組成物の重量で、約3.0wt%以下、好ましくは約2.0wt%以下の無機粒子
を含むことが好ましく、好ましくは硬化性組成物が少なくとも上記基準(i)を満たし、好ましくは硬化性組成物が上記基準(i)から(iii)のうちの少なくとも二(好ましくは少なくとも基準(i))を満たし、好ましくは上記基準(i)から(iii)の三つすべてが満たされる。
【0085】
本発明の第4の態様によれば、LRI法において前記硬化性組成物から生成される硬化樹脂(特に複合材料)のCSAIを改善するため、特に硬化性組成物の加工性を損なうことなくCSAIを改善するため、好ましくはCSAIを改善すると同時に硬化性組成物の加工性を改善するための、LRI法における本明細書に定義される硬化性組成物の使用が提供される。好ましくは、前記使用は、CSAIを改善すると同時に、前記硬化性組成物から生成された硬化樹脂(特に複合材料)の良好な圧縮性能(特にホットウェットオープンホール圧縮(H/W−OHC)強度)を維持するためであり、特に前記硬化性組成物の加工性が少なくとも維持され、好ましくは改善される。好ましくは、前記特性の改善又は保持への言及は、熱可塑性成分、コアシェル粒子及び無機粒子の組み合わせを含まない材料に対する特性の改善又は保持に対するものである。
【0086】
したがって、本発明の第4の態様による使用において、改善とは、前記硬化樹脂(特に前記複合材料)のCSAIが少なくとも220、好ましくは少なくとも230、さらに好ましくは少なくとも240MPaとなり、好ましくは前記硬化樹脂(特に前記複合材料)のH/W−OHC強度が少なくとも190、好ましくは少なくとも195、好ましくは少なくとも200、好ましくは少なくとも205、好ましくは少なくとも210MPaとなり、及び/又は好ましくは前記硬化性組成物の初期粘度が、約80℃から約130℃の温度範囲内の温度で(好ましくは120℃で)5ポアズ以下となり、80℃から130℃の温度範囲内の温度で(好ましくは120℃で)3時間後の前記硬化性組成物の粘度が5ポアズ以下となるようなものである。
【0087】
本明細書において使用される用語「良好なホットウェット圧縮性能」又は「良好なホットウェットオープンホール圧縮(H/W−OHC)強度」は、本明細書に記載の試験方法において、少なくとも190、好ましくは少なくとも195、好ましくは少なくとも200、好ましくは少なくとも205、好ましくは少なくとも210MPaのH/W−OHC強度を指す。
【0088】
好ましくは、本明細書に定義される成形品(好ましくは複合材料)は、本明細書に記載の試験方法において、少なくとも210、さらに好ましくは少なくとも220、さらに好ましくは少なくとも230、さらに好ましくは少なくとも240MPaのCSAIを呈する。
【0089】
ここで、開示内容を、以下の実施例を参照して非限定的に説明する。
【0090】
実験
本明細書に記載される樹脂系の物理的特性及び挙動は、以下の技術に従って測定される。
【0091】
ガラス遷移温度
ガラス遷移温度は、試料が振動変位を受けたとき、温度の上昇により機械的及び減衰挙動に劇的な変化を呈する温度として定義される。Tg開始は、ガラス遷移事象の開始の前と後の貯蔵弾性率曲線上の点から引いた補外接線の温度交点と定義される。試験は、約50℃から300℃の温度の範囲内において、5±0.2℃/分の加熱速度及び1Hzの周波数により、単一カンチレバー屈曲モードで、TA Q800を用いて実施された。
【0092】
粒子サイズ
粒子サイズは、Malvern Zetasizer 2000を用いて動的光散乱法により測定された。ここでの粒子サイズへの言及は、粒度分布のメジアン(d50)、即ち、粒子の50%がこの値以下の粒子サイズを有する分布上の値に対するものである。粒子サイズは、適切には、体積に基づく粒子サイズ、即ちd(v,50)である。
【0093】
粘度
樹脂配合組成の動的温度傾斜粘度は、ASTM D4440の方法に従って測定された。樹脂配合組成の定常温度粘度は、ASTM D4287の方法に従って測定された。
【0094】
モル質量
主に熱可塑性成分のモル質量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによってポリスチレン標準に対して測定される。
【0095】
機械的試験
機械的性能は、圧縮性能(オープンホール圧縮(OHC)強度)及び耐衝撃性(衝撃後圧縮強度(CSAI)の観点から測定された。
【0096】
衝撃後圧縮強度(CSAI)を測定するために、複合材料に、所与のエネルギー(30ジュールの衝撃)の衝撃を与え、次いで複合材を圧縮状態で抗座屈治具にローディングし、残存圧縮強度を測定した。損傷面積及びデント深さは、衝撃の後で圧縮試験に先立ち測定される。この試験の間、複合材料は、弾性不安定が確実に生じないように拘束され、複合材料の強度が記録される。この作業において、CSAI(MPa)はASTM D7136−7137試験法に従って測定された。
【0097】
オープンホール圧縮強度(MPa)はASTM D6484試験法に従って測定された。OHC測定値は室温(約20℃;RT−OHC)で取られた。ホットウェット圧縮性能(H/W−OHC強度)は、試料を14日間華氏160度(約71.1℃)の水に浸した後で、華氏160度(約71.1℃)でOHC強度を測定することにより評価された。
【0098】
樹脂系は、上述の試験手順に従って調製及び分析された。
【実施例】
【0099】
一連の樹脂系を、以下の表1に示す成分を用いて配合した。比較実施例1は、国際公開第2011/077094号による樹脂の配合組成である。
【0100】
表1
【0101】
以下の材料を使用した:
− Araldite(登録商標)PY306:Huntsman Advanced Materials社の、5.99mol/kgから6.41mol/kgのエポキシド基(156g/molから167 g/molの「エポキシ当量」)の特定含有量を有するビスフェノールFのジグリシジルエーテル(DGEBF)
− Araldite(登録商標)MY0510:Huntsman Advanced Materials社の、9.35mol/kgから10.53mol/kgのエポキシド基(95g/molから107g/molの「エポキシ当量」)の特定含有量を有するO,N,N−トリグリシジル パラ−アミノフェノール(TGPAP)
− Araldite(登録商標)MY721:Huntsman Advanced Materials社の、8.70mol/kgから9.17mol/kgのエポキシド基(109g/molから115g/molの「エポキシ当量」)の特定含有量を有するN,N,N’,N’−テトラグリシジル ジアミノジフェニルメタン(TGDDM)
− Araldite(登録商標)MY0610:Huntsman Advanced Materials社の、O,N,N−トリグリシジル メタ−アミノフェノール(TGMAP)(94g/molから102g/molのエポキシ当量)
− Sumikaexel(登録商標)5003P:住友社の官能化ポリエーテルスルホン(PES)熱可塑性ポリマー
− Kaneka(登録商標)MX411:Araldite(登録商標)MY721中のコアシェルゴム粒子(粒子サイズ100nm)(15wt%)のマスターバッチ
− Nanopox(登録商標)F520:Araldite(登録商標)PY306中のナノシリカ粒子(40wt%)のマスターバッチ
【0102】
複合材を、以下のように調製した。PY306、MY0510及びMY0610エポキシの前駆体成分を、室温で混合し、撹拌しながら60℃に加熱した。5003P PES熱可塑性成分を加え、さらに撹拌しながら温度を115℃に上げた。温度が115℃に達したとき、PES熱可塑プラスチックが溶解するまで混合物を30分保持した。混合物を撹拌しながら80℃に冷却した時点でコアシェルゴム及びナノシリカのマスターバッチをMY721エポキシ前駆体成分と一緒に撹拌しながら加えた。次いでMCDEAを加え、混合物を、MCDEAが完全に溶解するまで撹拌した。
【0103】
樹脂配合組成の粘度を、上記試験法に従って試験した。結果を以下の表2に示す。
【0104】
次いで複合材料を、以下のように、上記樹脂配合組成の各々を、炭素繊維ファブリック(T300 3k Plain Weave強化(196gsm)ファブリック)を含有する型の中に注入することにより、VARTM法において調製した。80gの樹脂を6”×4”の型に入れ、約90から110℃に温め、真空オーブンを用いて脱気した。次いで型とその内容物をファンオーブンに移し、そこで開始温度(約90から110℃)から最大180℃まで2℃/分の速度で加熱し、2時間にわたり等温で保持した後、2℃/分の速度で室温に冷却可能となった。
【0105】
硬化した積層体を、上記試験方法に従って分析した。その結果を以下の表2に示す。
【0106】
表2
*3時間の等温時間が完了する前に4ポアズを超過した。
【0107】
結果は、本発明の改善された樹脂配合組成により驚くほど改善されたCSAIを呈する複合材料が得られることを示すものである。本発明の樹脂配合組成から作製される複合材は、より小さい損傷面積とデント深さを呈する。加えて、この複合材は、良好なH/W OHC強度を示し、これは維持又は改善されている。
【0108】
さらに、樹脂配合組成1及び2はより低い粘度を呈し、これはより長い期間にわたってより安定であり、したがって優れた加工性を有する。実施例3の樹脂配合組成は、比較的高い粘度を呈し、比較実施例1の方に近い。これは、改善されたCSAI及び少なくとも同等のH/W OHC強度に加えて改善された加工性が必要である場合、実施例1又は2の方に近い配合組成がより望ましいことを示している。図3は、四つの実施例について温度の関数として粘度を示している。実施例1及び2は、この範囲内では低温においても好ましい低い粘度を呈し、したがってポットライフが維持又は延長されている。
【0109】
樹脂積層体を、上述のように透過電子顕微鏡法により分析した。実施例1の形態を図1に示す。これは、コアシェル粒子(3)をさらに含む硬化樹脂(1)の、相分離した熱可塑性ドメイン(2)の外表面の周りに、無機粒子(4)が自己集合している様子を示している。
【0110】
図2は、ナノシリカ粒子を含まない、比較実施例1に類似の試料の形態を示している。図2は、コアシェル粒子(3)をさらに含む硬化樹脂(1)の、相分離した熱可塑性ドメイン(2)を示す。図2は、樹脂配合組成からナノシリカを除去すると、新規形態が失われることを示しており、これに伴いCSAI性能の改善が失われる。
図1
図2
図3