特許第6720189号(P6720189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6720189ロック可能な針シールドを備えた針ユニットおよびこのような針ユニットを備えた注射装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720189
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】ロック可能な針シールドを備えた針ユニットおよびこのような針ユニットを備えた注射装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20200629BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   A61M5/32 500
   A61M5/32 510K
   A61M5/24
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-536254(P2017-536254)
(86)(22)【出願日】2016年1月8日
(65)【公表番号】特表2018-501028(P2018-501028A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2016050302
(87)【国際公開番号】WO2016110580
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2018年12月14日
(31)【優先権主張番号】15150509.6
(32)【優先日】2015年1月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ベンディクス, クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ケレロプ ハンスン, ソーレン
(72)【発明者】
【氏名】ガアーズビグ ケルスン, バスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シェンストレーム スティーファンスン, マス
【審査官】 杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−512884(JP,A)
【文献】 特表2005−516691(JP,A)
【文献】 米国特許第04921491(US,A)
【文献】 特表2003−525088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 3/00−9/00
A61M 31/00
A61M 39/00−39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(30)およびロック解除要素(31)を備えた注射装置(1)と協働するための針ユニット(20)であって、
− 針ハブ(21)、ならびに前記針ハブにより把持され、近位端部(23a)、遠位端部(23b)、および前記近位端部と前記遠位端部の間に延びる長手軸を有する針(23)を備えた注射針アセンブリ(21、23)と、
− 近位端部(22a)および遠位端部(22b)を有する針シールド(22)と
を備え、
− 前記注射針アセンブリ(21、23)および前記針シールド(22)は、前記注射針アセンブリが、前記針シールド(22)の前記遠位端部(22b)が前記針(23)の前記遠位端部(23b)を越えて遠位方向に延び、前記針シールド(22)の前記近位端部(22a)および/または前記針ハブ(21)が前記針(23)の前記近位端部(23a)を越えて近位方向に伸びる遮蔽位置と前記針(23)の前記遠位端部(23b)が前記針シールド(22)の前記遠位端部(22b)を越えて遠位方向に延びる露出位置との間で前記針(23)の前記長手軸に平行な軸に沿って変位可能であるように、前記注射針アセンブリが前記針シールド内に変位可能に配置された針ユニット(20)を形成するように構成される、針ユニット(20)において、
− 前記針ハブ(21)は、第1のハブロック要素(24)および第2のハブロック要素(26)を備え、前記針シールド(22)は、第1のシールドロック要素(25)および第2のシールドロック要素(27)をさらに備え、
− 前記針ハブ(21)と前記針シールド(22)との間に、ロックされると前記針(23)の前記遠位端部(23b)が前記針シールド(22)に対して遠位方向に変位することを防ぐ解除可能な第1のロック機構(24、25)を形成するために、前記遮蔽位置で前記第1のハブロック要素(24)と前記第1のシールドロック要素(25)とが互いに係合し、
− 前記針ハブ(21)と前記針シールド(22)との間に、前記針(23)の前記近位端部(23a)が前記針シールド(22)に対して近位方向に変位することを防ぐ第2のロック機構(26、27)を形成するために、前記遮蔽位置で前記第2のハブロック要素(26)と前記第2のシールドロック要素(27)とが互いに係合し、
− 前記第1および第2のロック機構(24、25、26、27)は両方共、耐衝撃性ロックとして構成され、
除可能な前記第1のロック機構(24、25)は、前記針ユニット(20)が前記注射装置(1)に結合されたときに前記注射装置の前記ロック解除要素(31)と係合するように構成され、前記係合により、解除可能な前記第1のロック機構(24、25)がロック解除されることを可能にし、
前記第1のロック機構(24、25)は、前記針シールド(22)の外側からロック解除され、
前記針シールド(22)は、前記第1のロック機構(24、25)がロック解除可能な前記針シールド(22)の側に開口部(25)を備えることを特徴とする、針ユニット(20)。
【請求項2】
前記針ユニットは、前記針(23)の端部(23a、23b)の各々に対して、前記針ハブ(21)から前記針端部(23a、23b)まで前記針(23)を密封する滅菌シールを形成する貫通可能なカバー要素(8a、8b)をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の針ユニット(20)。
【請求項3】
前記針ユニットは、複数の類似の針ユニットが大量に配置されている場合、針ユニットのいかなる部分も、その相対的配向にかかわらず、大量に配置された他の針ユニットの前記貫通可能なカバー要素(8a、8b)に接触することができないように形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の針ユニット(20)。
【請求項4】
除可能な前記第1のロック機構(24、25)および前記第2のロック機構(26、27)は、2つの独立したロック機構として構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の針ユニット(20)。
【請求項5】
前記針ハブ(21)および前記針シールド(22)は、前記針ハブ(21)および前記針シールド(22)が前記針(23)の前記長手軸の周りで互いに対して回転することを防止する回転防止要素(32、33)を備えることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の針ユニット(20)。
【請求項6】
除可能な前記第1のロック機構(24、25)および/または前記第2のロック機構(26、27)は、前記針(23)の前記近位端部(23a)の近位に配置されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の針ユニット(20)。
【請求項7】
除可能な前記第1のロック機構(24、25)は、前記針ユニット(20)が前記注射装置の前記ハウジング(30)に結合されたときに自動的にロック解除するように構成されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の針ユニット(20)。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の針ユニット(20)、ハウジング(30)、およびロック解除要素(31)を備える注射装置(1)であって、前記注射装置の前記ロック解除要素(31)が前記注射装置の前記ハウジング(30)の固定部分(31)として構成され、前記第1のロック機構(24、25)は、前記針ユニット(20)が前記ハウジング(30)に結合されたときに自動的にロック解除されるように構成されることを特徴とする、注射装置(1)。
【請求項9】
前記ロック解除要素(31)は傾斜要素(31)であり、前記第1のハブロック要素(24)および/または前記第1のシールドロック要素は、前記針ユニット(20)が前記注射装置に結合されたときに前記傾斜要素(31)によって変位され、前記第1のロック機構(24、25)をロック解除するように構成されることを特徴とする、請求項に記載の注射装置(1)。
【請求項10】
針ユニット(20)、ハウジング(30)、およびロック解除要素(31)を備える注射装置(1)であって、前記針ユニット(20)は、
− 針ハブ(21)、ならびに前記針ハブにより把持され、近位端部(23a)、遠位端部(23b)、および前記近位端部と前記遠位端部の間に延びる長手軸を有する針(23)を備えた注射針アセンブリ(21、23)と、
− 近位端部(22a)および遠位端部(22b)を有する針シールド(22)と
を備え、
− 前記注射針アセンブリ(21、23)および前記針シールド(22)は、前記注射針アセンブリが、前記針シールド(22)の前記遠位端部(22b)が前記針(23)の前記遠位端部(23b)を越えて遠位方向に延び、前記針シールド(22)の前記近位端部(22a)および/または前記針ハブ(21)が前記針(23)の前記近位端部(23a)を越えて近位方向に伸びる遮蔽位置と前記針(23)の前記遠位端部(23b)が前記針シールド(22)の前記遠位端部(22b)を越えて遠位方向に延びる露出位置との間で前記針(23)の前記長手軸に平行な軸に沿って変位可能であるように、前記注射針アセンブリが前記針シールド内に変位可能に配置された針ユニット(20)を形成するように構成される、針ユニット(20)において、
− 前記針ハブ(21)は、第1のハブロック要素(24)および第2のハブロック要素(26)を備え、前記針シールド(22)は、第1のシールドロック要素(25)および第2のシールドロック要素(27)をさらに備え、
− 前記針ハブ(21)と前記針シールド(22)との間に、ロックされると前記針(23)の前記遠位端部(23b)が前記針シールド(22)に対して遠位方向に変位することを防ぐ解除可能な第1のロック機構(24、25)を形成するために、前記遮蔽位置で前記第1のハブロック要素(24)と前記第1のシールドロック要素(25)とが互いに係合し、
− 前記針ハブ(21)と前記針シールド(22)との間に、前記針(23)の前記近位端部(23a)が前記針シールド(22)に対して近位方向に変位することを防ぐ第2のロック機構(26、27)を形成するために、前記遮蔽位置で前記第2のハブロック要素(26)と前記第2のシールドロック要素(27)とが互いに係合し、
− 前記第1および第2のロック機構(24、25、26、27)は両方共、耐衝撃性ロックとして構成され、
− 解除可能な前記第1のロック機構(24、25)は、前記針ユニット(20)が前記注射装置(1)に結合されたときに前記注射装置の前記ロック解除要素(31)と係合するように構成され、前記係合により、解除可能な前記第1のロック機構(24、25)がロック解除されることを可能にし、
前記注射装置の前記ロック解除要素(31)が前記注射装置の前記ハウジング(30)の固定部分(31)として構成され、前記第1のロック機構(24、25)は、前記針ユニット(20)が前記ハウジング(30)に結合されたときに自動的にロック解除されるように構成され、
前記ロック解除要素(31)は傾斜要素(31)であり、前記第1のハブロック要素(24)および/または前記第1のシールドロック要素は、前記針ユニット(20)が前記注射装置に結合されたときに前記傾斜要素(31)によって変位され、前記第1のロック機構(24、25)をロック解除するように構成される、注射装置(1)。
【請求項11】
注射装置(1)の製造方法であって、製造される注射装置(1)は、近位端部(22a)および遠位端部(22b)を有する針シールド(22)と、針ハブ(21)と、ハウジング(30)とを備え、前記針ハブ(21)は、遠位端部(23b)、近位端部(23a)、および前記遠位端部から前記近位端部まで延びる長手軸を有する針(23)を備え、前記針ハブ(21)および前記針シールド(22)は、遮蔽状態から露出状態まで前記針(23)を転位させるために互いに対して軸方向に移動可能であり、前記針シールド(22)は、前記遮蔽状態において、前記針シールド(22)の前記近位端部(22a)が前記針(23)の前記近位端部(23a)を越えて近位方向に延び、前記針シールド(22)の前記遠位端部(22b)が前記針(23)の前記遠位端部(23b)を越えて遠位方向に延び、前記露出状態において、前記針(23)の前記遠位端部(23b)が前記針シールド(22)の前記遠位端部(22b)を越えて遠位方向に延びるように構成され、前記方法は、
a)第1のハブロック要素(24)を備えた針ハブ(21)を提供するステップと、
b)前記第1のハブロック要素(24)と協働するように構成された第1のシールドロック要素(25)を備えた針シールド(22)を提供するステップと、
c)前記針ハブ(21)および前記針シールド(22)を互いに対して固定して、前記針(23)が前記遮蔽状態にある針ユニット(20)を形成するステップと、
d)前記針ハブ(21)と、前記針(23)が前記針シールド(22)に対して遠位方向に変位することによって前記露出状態に転位するのを防止する前記針シールド(22)との間に耐衝撃性ロックとして構成される解除可能な第1のロック機構(24、25)を形成するために、前記第1のハブロック要素(24)と前記第1のシールドロック要素(25)を互いに対して移動させるステップと、
e)ハウジング(30)を提供するステップと、
f)前記針ユニット(20)を前記ハウジング(30)に組み合わせ、前記第1のハブロック要素(24)および前記第1のシールドロック要素(25)を互いに対して移動させて解除可能な前記第1のロック機構(24、25)を解除し、前記針シールド(22)および前記針ハブ(21)の間での軸方向移動を可能にし、前記針(23)の前記遠位端部(23b)を露出させることを可能にするステップと
を含
前記第1のロック機構(24、25)は、前記針シールド(22)の外側からロック解除され、
前記針シールド(22)は、前記第1のロック機構(24、25)がロック解除可能な前記針シールド(22)の側に開口部(25)を備える、方法。
【請求項12】
前記針ユニット(20)を前記ハウジング(30)に組み合わせる前記ステップf)は、前記針ユニット(20)を前記ハウジング(30)に対して位置決めすることによって解除可能な前記第1のロック機構(24、25)を解除するステップを含み、それにより、前記ハウジング(30)上の解除形状(31)が、解除可能な前記第1のロック機構(24、25)を解除することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
除可能な前記第1のロック機構(24、25)は、解除可能な前記第1のロック機構(24、25)の解除が、前記針(23)の前記長手軸と平行でない方向における前記第1のハブロック要素(24)および前記第1のシールドロック要素(25)のうちの少なくとも1つの相対移動を必要とするように構成される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
ステップd)の後に、前記針ユニット(20)を滅菌するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック可能な針シールドを備えた針ユニットおよびこのような針ユニットを備えた薬剤を注射するための注射装置に関する。
【0002】
本明細書で使用する場合、用語「薬剤」は、制御された方法で中空針またはカニューレ等の送達手段を通過可能な任意の流動性薬物を包含することを意味する。流動性薬物の例は、液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液である。また、投与前に液体形態へと溶解される凍結乾燥薬物が上記定義に含まれる。代表的な薬剤としては、例えば、医薬品、ペプチド、タンパク質(例えば、インスリン、インスリン類似体、およびC−ペプチド)、ホルモン、生物学的に誘導された作用物質または活性物質、ホルモン剤および遺伝子に基づく作用物質、栄養フォーミュラ、ならびに固体(分配される)または液体の両方の形態の他の物質が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
いくつかの疾患に関して、患者は週1回、1日1回、または毎日複数回等、定期的に薬剤を注射しなければならない。患者が針の恐怖を克服するのを助けるために、注射装置の使用を可能な限り簡単かつ安全にする目的で、全自動注射装置が開発されている。このような装置は、典型的には、使用者が注射装置を注射部位に配置し、装置を作動させるように設計される。このような作動により、装置は針を皮膚に挿入し、薬剤の投与量を排出し、その後針を遮蔽位置に移動させる。
【0004】
最終使用者による装置の実際の使用に先立って、針は注射装置と組み立てなければならない。使用者は、針を注射装置に予め取り付けることを必要とする針をまったく取り扱う必要がないことが望ましい。針を注射装置に取り付ける前に、例えば針自体の滅菌のような複数の追加の処理ステップが典型的には必要とされる。したがって、針ユニットを取り扱う人に傷害を与えたり、針に損傷を与えたりするリスクを伴わずに、注射装置に取り付ける前の取り扱いが容易な針ユニットを提供することが望ましい。
【0005】
いくつかの注射装置では、針は、貫通可能なカバー要素、例えば、針自体の周りに滅菌バリアを維持するカバー要素のようなシリコーン箔によって保護される。この可撓性カバー要素は、典型的にはそれほど強くなく、容易に損傷される可能性がある。したがって、カバーの滅菌バリア効果を破壊する可能性のあるカバーの損傷を避けるために、取り扱い中に可撓性カバー要素を保護することが望ましい。
【0006】
したがって、針および針の滅菌性を保証する任意のカバー要素を包むために針シールドが配置されることが多い。針シールドは、多くの場合、針と共に組み立てられて針ユニットを形成する。針ユニットの取り扱い中、シールド要素は、針に対して適所にロックされる。針を注射装置に取り付ける際には、シールド要素を針から取り外す必要があるか、または針シールドが針を露出させるように針シールドを針に対して変位させることができるようにロック解除する必要がある。このような従来技術の装置の一例が、WO08/077706に開示されている。しかしながら、この針ユニットは、ばねを含む複数の要素を含む複合ユニットである。針ユニットは、保管および取り扱い中の滅菌性を維持するために、剛性の滅菌容器に挿入することが意図されている。典型的には、このような容器は、注射装置に針ユニットを取り付ける前に手で剥がす必要がある平面シールによって密封される。このような針ユニットは、製造時に注射装置に容易に組み込むことができない。
【発明の概要】
【0007】
上述した従来技術の装置を考慮して、本発明の目的は、針ユニットの注射装置への取り付けに先立つ針シールドのロックおよび注射装置への針ユニットの取り付け中/後の針シールドのロック解除に関して改良された針ユニットおよび針ユニットを備えた注射装置を提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、優れた性能を有すると同時に低コストでの製造を可能にする針ユニットおよび注射装置を得るための手段を提供することである。
【0009】
本発明の第1の態様は、ハウジングおよびロック解除要素を備えた注射装置と協働するための針ユニットであって、
− 近位端部、遠位端部、および近位端部と遠位端部の間に延びる長手軸を有する針を含む針ハブと、
− 近位端部および遠位端部を有する針シールドと
を備え、
− 針ハブおよび針シールドは、針ハブが、針シールドの遠位端部が針の遠位端部を越えて遠位方向に延び、針シールドの近位端部が針の近位端部を越えて近位方向に伸びる遮蔽位置と針の遠位端部が針シールドの遠位端部を越えて遠位方向に延びる露出位置との間で針の長手軸に平行な軸に沿って変位可能であるように、針ハブが針シールド内に変位可能に配置された針ユニットを形成するように構成される、針ユニットにおいて、
− 針ハブは、第1のハブロック要素および第2のハブロック要素をさらに備え、針シールドは、第1のシールドロック要素および第2のシールドロック要素をさらに備え、
− 針ハブと針シールドとの間に、ロックされると針の遠位端部が針シールドに対して遠位方向に変位することを防ぐ第1の解除可能なロック機構を形成するために、遮蔽位置で前記第1のハブロック要素と前記第1のシールドロック要素とが互いに係合し、
− 針ハブと針シールドとの間に、針の近位端部が針シールドに対して近位方向に変位することを防ぐ第2のロック機構を形成するために、遮蔽位置で前記第2のハブロック要素と前記第2のシールドロック要素とが互いに係合し、
− 第1および第2のロック機構は両方共、耐衝撃性ロックとして構成され、
− 第1の解除可能なロック機構は、針ユニットが注射装置に結合されたときに注射装置のロック解除要素と係合するように構成され、前記係合により、第1の解除可能なロック機構がロック解除されることを可能にすることを特徴とする針ユニットに関する。
【0010】
本明細書によれば、遠位および近位という用語は、互いに異なる要素の配置を記述するために使用される。遠位端部という用語は、注射中に使用者の皮膚に最も近い端部であると理解されるべきであり、近位端部という用語は、注射中に使用者の皮膚から最も遠い端部として理解されるべきである。一般に、使用者は、注射中に皮膚の上に装置の遠位端部を置いたままで装置の近位端部を保持する。
【0011】
「遠位方向における変位」という用語は、装置の近位端部から遠位端部を指すベクトルによって画定される方向で構成される運動を指す。同様に、「近位方向における変位」という用語は、装置の遠位端部から近位端部を指すベクトルによって画定される方向に構成される運動を指す。
【0012】
さらに、「耐衝撃性ロック」という用語は、ロック機構が衝撃負荷を受けることによって偶然に開き得ないロック機構として理解されるべきである。例えば、摩擦圧入ロックは耐衝撃性ロック機構ではないが、これは、右方向への衝撃が要素同士を互いに係合解除させる可能性があるからである。
【0013】
いくつかの実施形態では、針ユニットは、針ハブに対して遠位の部分で針を密封する滅菌シールを形成する穿孔可能な遠位カバー要素をさらに備える。あるいはまたは加えて、針ユニットは、針ハブの近位の部分で針を密封する滅菌シールを形成する穿孔可能な近位カバー要素をさらに備えていてもよい。カバー要素は、湿式滅菌等の組み立てられた状態での針ユニット全体の湿式滅菌を可能にする材料で製造することができる。
【0014】
遠位カバー要素および近位カバー要素の各々は、軸方向の圧縮力がカバー要素に作用するとき、軸方向に折り畳まれて針がカバー要素に穿孔して貫通する、折り畳み式の貫通可能なブーツとして構成することができる。
【0015】
針ユニットは、複数の類似の針ユニットが大量に配置されている場合、針ユニットのいかなる部分も、その相対的配向にかかわらず、大量に配置された他の針ユニットの近位カバー要素に接触することができないように形成できる。同様に、針ユニットは、複数の類似の針ユニットが大量に配置されている場合、針ユニットのいかなる部分も、その相対的配向に関係なく、大量に配置された他の針ユニットの遠位カバー要素に接触することができないように形成できる。
【0016】
一実施形態において、針ハブおよび針シールドは射出成形部品として製造され、第1のハブロック要素および第1のシールドロック要素は射出成形部品の一体化要素である。同様に、第2のハブおよび第2のシールドロック要素も、射出成形部品に一体化することができる。
【0017】
一実施形態において、第1の解除可能なロック機構および第2のロック機構は、2つの独立したロック機構として構成されている。このようにして、2つのロック機構の動作を2つの別個の機能に分離することができる。しかしながら、別の実施形態では、第1の解除可能なロック機構および第2のロック機構は、1つの機構に一体化することができる。例えば、本実施形態に示されるように、スロットの端部面と係合する自由端部を有するアームの代わりに、可撓性アームの端部は、フックとして形成され得、フックは、シールド要素に対して遠位方向および近位方向の両方における針ハブの動きを防止するために、シールド要素内のスロット側の対応する溝と係合する。
【0018】
別の実施形態では、針ハブおよび針シールドは、針の長手軸の周りで互いに対して回転することが防止される。このようにして、針シールドおよび針ハブの、針の長手軸に沿ったそれぞれの動きは、針シールド/針ハブの要素をこれら2つの要素を同時に回転させることなく、横方向に変位させるために使用することができる。
【0019】
一実施形態において、第1の解除可能なロック機構および/または第2のロック機構は、針の近位端部の近位に配置される。このようにして、針が配置されている装置の前端部をより単純なものにすることができ、一方、より多くの空間がある針の後方にロック機構が配置される。
【0020】
針シールドは、針ハブと同軸に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、針シールドは、針ハブのすべての部分を取り囲んでいる。その他の実施形態において、針ハブは、針シールドに対して半径方向外側に延びる要素を有する一方で、針シールドに対して半径方向内側に配置される他の要素を備えることができる。
【0021】
ロック解除された後、第1の解除可能なロック機構は、針ユニットがロック解除状態にある状態をとる。ロック解除状態では、針ハブの移動は、針シールドに対して遠位方向への変位が可能である。針ユニットがロック解除される前に、針ユニットは、針シールドと針ハブとの間に相対的な軸方向の変位がまったくまたは実質的に起こり得ないロック状態を規定する。
【0022】
第1の実施形態の関連において、非実質的な相対的な軸方向の変位は、類似の針ユニットが大量に取り扱われるとき、カバー要素が他の針ユニットの接触圧力によって貫通され得ない軸方向の変位として定義される。
【0023】
針ユニットのロック状態では、各カバー要素が存在する場合、針の滅菌性が保証された非貫通状態を画定することができる。
【0024】
針ユニットがそのロック状態になると、第1のハブロック要素と第1のシールドロック要素との間の係合面は、針ハブが針シールドに対して遠位方向に移動するのを防止する。第1のハブロック要素および/または第1のシールドロック要素の少なくとも1つの変位された要素または要素の変位された部分は、針ユニットが注射装置に結合されるとき、注射装置のロック解除要素と係合するときに移動されるように構成される。前記変位された要素または要素の変位された部分が移動されてロック解除されると、この動きはロック解除方向に生じ得る。
【0025】
第1のハブロック要素と第1のシールドロック要素との間の係合面は、針ハブに対して針シールドを近位方向に変位させるために加えられる力が増加すると、変位した要素が、次第にロック解除方向と反対方向に付勢されるように形成されてもよい。
【0026】
一実施形態において、第1の解除可能なロック機構は、針シールドの外側からロック解除される。「外側から」という語句は、本明細書では、シールド要素の外側で行われる動作を必要とするものとして理解されるべきである。従来技術では、ロック機構は針ユニットの内側からロック解除される。針シールドの外側から開くことができるようにロック機構を配置することによって、より柔軟なロック解除手順を提供することができる。
【0027】
一実施形態において、これは、第1のロック機構がロック解除可能な針シールドの側に開口部を設けることによって提供され得る。開口部は、穴または細長いスロットとして設けられてもよい。別の実施形態では、第1の解除可能なロック機構をロック解除させるために、針シールドの外側から窪むことができる針シールドの可撓性部分を想像することができる。針シールドの外側からロック解除可能な針ユニットを提供することは、現在特許請求の範囲で定義されている針の遠位端部および近位端部の両方を越えて延びる変位可能なシールド要素の存在を必要とすることなく、分割出願の主題となり得ることに留意すべきである。
【0028】
有利な一実施形態では、第1の解除可能なロック機構は、針ユニットが注射装置のハウジングに結合されたときに自動的にロック解除するように構成される。このようにして、ロック解除は、注射装置の組み立て中に複雑な動作を一切必要とせずに構成されている。
【0029】
本発明の第2の態様は、上述した針ユニットと、ハウジングと、ロック解除要素とを備えた注射装置であって、注射装置のロック解除要素が注射装置のハウジングの固定部分として構成され、第1のロック機構は、針ユニットがハウジングに結合されたときに自動的にロック解除されるように構成される、注射装置に関する。
【0030】
針ユニットが注射装置のハウジングに結合されることによって第1の解除可能なロック機構が自動的にロック解除されるいくつかの実施形態では、ハウジングと針ユニットとの結合が行われても後部カバーは非貫通状態を維持する。
【0031】
一実施形態において、注射装置は、薬剤および吐出アセンブリを含む容器をさらに備える。
【0032】
一実施形態において、ロック解除要素は傾斜要素であり、第1のハブロック要素および/または第1のシールドロック要素は、針ユニットが注射装置に結合されたときに傾斜要素によって変位され、第1のロック機構をロック解除するように構成される。図示された実施形態では、第1のハブロック要素は、第1の解除可能なロック機構をロック解除するように変位するように構成されていることに留意されたい。しかしながら、別の実施形態では、第1のシールドロック要素は、第1の解除可能なロック機構をロック解除するように変位されるように構成され得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、傾斜要素と第1のハブロック要素および/または第1のシールドロック要素の一方または両方の協働面は、針ユニットが注射装置のハウジングに結合する間に変位するときに変位した要素に横方向の力を付与するように、長手軸に対して勾配を有した表面要素を備える。ハウジングの傾斜要素によって作用されたとき、変位した要素の自由端部は、ロック解除方向に移動する。
【0034】
第1のハブロック要素および第1のシールドロック要素は、長手軸に対して25度未満の角度を成す等、長手軸に対して勾配を有した法線を有する係合面要素を備えることができる。前記係合面要素は、針ユニットがそのロック状態になるときに、針ハブに対して針シールドを近位方向に変位させるために加えられる力が増大すると、変位した要素の自由端部が次第にロック解除方向と反対方向に付勢されるように形成できる。
【0035】
一実施形態において、第1のハブロック要素または第1のシールドロック要素は、針の長手軸に垂直であり、かつ/または針ハブの外面に垂直な軸の周りに曲がることができる可撓性アームであり、ロック解除要素は、ハウジングの内面に配置された傾斜面を備え、針の長手軸に対して10〜65度、好ましくは10〜45度、さらにより好ましくは10〜35度の角度を成すように配置されている傾斜要素である。
【0036】
別のタイプの実施形態では、ロック解除要素は、ハウジングの外面上の変位可能要素に接続され、前記変位可能要素は、注射装置の使用者によって変位可能であり、第1のロック機構は、変位可能要素の変位が、第1の解除可能なロック機構を解除するロック解除要素を変位させるように構成される。このようにして、使用者がロック解除動作を手動で行う必要があり、その後に針が露出可能となる。これにより、さらなるセキュリティ層が提供される。このような実施形態では、後部カバーが存在する場合、後部カバーは、第1の解除可能なロック機構を解除した後でさえ、非貫通状態を維持する。
【0037】
本発明の第3の態様は、注射装置の製造方法であって、製造される注射装置は、近位端部および遠位端部を有する針シールドと、針ハブと、ハウジングとを備え、前記針ハブは、遠位端部、近位端部、および遠位端部から近位端部まで延びる長手軸を有する針を備え、針ハブおよび針シールドは、遮蔽状態から露出状態まで針を転位させるために互いに軸方向に移動可能であり、前記針シールドは、遮蔽状態において、針シールドの近位端部は針の近位端部を越えて近位方向に延び、針シールドの遠位端部は、針の遠位端部を越えて遠位方向に延び、露出状態では、針の遠位端部は針シールドの遠位端部を越えて遠位方向に延びるように構成され、方法は、
a)第1のハブロック要素を備えた針ハブを提供するステップと、
b)第1のハブロック要素と協働するように構成された第1のシールドロック要素を備えた針シールドを提供するステップと、
c)針ハブおよび針シールドを互いに対して固定して、針が遮蔽状態にある針ユニットを形成するステップと、
d)針ハブと、針が針シールドに対して針の近位端部から針の遠位端部を指すベクトルにより規定される方向に変位することによって針が露出状態に転位するのを防止する針シールドとの間に耐衝撃性ロックとして構成される第1の解除可能なロック機構を形成するために、第1のハブロック要素と第1のシールドロック要素を互いに対して移動させるステップと、
e)ハウジングを提供するステップと、
f)針ユニットをハウジングに組み合わせ、第1のハブロック要素および第1のシールドロック要素を互いに対して移動させて第1の解除可能なロック機構を解除し、針シールドと針ハブの間での軸方向移動を可能にし、針を露出させることを可能にするステップと
を含む、注射装置の製造方法に関する。
【0038】
別の実施形態では、本方法は、針ハブの第2のハブロック要素を針シールドの第2のシールドロック要素に対して移動させて、針ハブと針シールドとの間に第2のロック機構を形成し、針ハブが針シールドに対して近位方向に針シールドに対して変位するのを防止するステップをさらに含む。
【0039】
一実施形態では、針ユニットをハウジングに組み合わせるステップf)は、針ユニットをハウジングセクションに対して位置決めすることによって第1の解除可能なロック機構を解除するステップを含み、それにより、ハウジング上の解除形状またはロック解除要素が、第1の解除可能なロック機構を解除する。
【0040】
さらなる一実施形態では、本方法は、
g)第1の解除可能なロック機構を操作して解除するように構成された解除形状を備えた針シールド解除ボタンを提供するステップと、
h)針シールド解除ボタンをハウジングセクションおよび針ユニットに組み合わせるステップと
をさらに含む。
【0041】
別の実施形態では、第1の解除可能なロック機構は、第1の解除可能なロック機構の解除が、針の長手軸と平行でない方向における第1のハブロック要素および第1のシールドロック要素のうちの少なくとも1つの相対移動を必要とするように構成される。いくつかの実施形態では、第1のハブロック要素および第1のシールドロック要素のうちの少なくとも1つの前記相対移動は、針の長手軸に略垂直な方向における移動、例えば、長手軸周りの接線方向における移動をするように構成される。
【0042】
本方法のさらなる実施形態では、本方法は、ステップd)の後に、針ユニットを滅菌するステップをさらに含む。このようにして、針シールドは、滅菌手順およびその後の針ユニットの取り扱いおよび組み立て中に針を完全に保護する。
【0043】
本明細書中で使用されるときの用語「備える(comprises/comprising)」、「〜から構成される」は、述べられた特徴、整数、ステップまたは部品の存在を明示するために用いられるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、部品またはこれらの群の存在または追加を排除するものではないことを強調すべきである。
【0044】
以下、本発明は、開示される図面により示される実施形態に関してより詳細に説明される。示される実施形態は、例示のみの目的で使用され、本発明の範囲を限定するために使用されるべきではないことを強調すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明で使用するのに適した注射装置の一例の側断面図であり、針は初期遮蔽状態にある。
図2】針の遠位端部が針シールドから完全に突出した状態の図1の注射装置の側断面図を示す。
図3】流体送達のためにカートリッジが針の近位端部に接続され、吐出が開始された状態の図1の注射装置の側断面図を示す。
図4】針シールドがその元の位置に戻り、再び針を遮蔽状態にする状態の図1の注射装置の側断面図を示す。
図5】針がロックおよび遮蔽状態にある本発明に係る針ユニットの第1の実施形態の第1の斜視図を示す。
図6】同じロックおよび遮蔽状態にある図5の針ユニットの第2の斜視図を示す。
図7図5の針ユニットの針シールドの斜視図を示す。
図8図5の針ユニットの針ハブの斜視図を示すが、針を含まない。
図9】注射装置のハウジングの部分断面斜視図を示す。
図10】ロック位置で図9のハウジングに挿入された図8の針ハブの部分断面斜視図を示すが、針シールドまたは針は示されていない。
図11】ロック解除位置で図9のハウジングに挿入された図8の針ハブの部分断面斜視図を示すが、ここでも針シールドまたは針は示されていない。
図12図11の図の部分断面斜視図を示すが、針シールドも針も示されている。
図13図12の図の部分断面斜視図を示すが、針シールドが後退し、針を露出させている。
図14】本発明に係る針ユニットの第2の実施形態の断面図を示しており、この図は、遮蔽状態にあり、ハウジングに挿入された容器と共にある針ユニットの遠位部分を示す。
図15図14の針ユニットの針ハブの斜視図を示すが、針は含まない。
図16】注射装置のハウジングの部分断面斜視図を示す。
図17図16のハウジング内にロック位置で挿入されている図15の針ハブの部分断面斜視図であるが、針シールド、針、またはカバー要素は示されていない。
図18図16のハウジング内にロック解除位置で挿入されている図15の針ハブの部分断面斜視図であるが、ここでも針シールド、針、またはカバー要素は示されていない。
図19図18の構成部品の第2の部分断面斜視図を示すが、針シールドおよび針も示されている。
図20図19の図の部分断面斜視図を示しているが、針シールドが後退され針を露出させている。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1図4は、装置の基本的機能を説明するために、4つの異なる動作状態にある注射装置の例を示す。本発明の針ユニットは、このような注射装置と共に使用することができるが、本発明の針ユニットは、他の形態の注射装置と共に使用することもできる。注射装置の詳細はすべて、これらの詳細が、本出願人の他の特許明細書、すなわち、WO2015/150578、WO2015/197866、およびWO2015/197867に既に記述されているため、詳細に記述しない。さらなる詳細についてはこれらその他の明細書を参照されたい。
【0047】
図1図4は、薬剤含有カートリッジ2、近位端部3aおよび遠位端部3bを有する針3、針ハブ4、近位端部5aおよび遠位端部5bを有する針シールド5、ハウジング6、ならびに作動機構7を有する注射装置1を示す。作動機構の詳細は、本明細書では網羅されないが、これは、本発明の針ユニットは、多くの異なるタイプの作動機構で動作するためである。
【0048】
本実施形態では、図1に示す遮蔽状態において、針シールドの近位端部5aは、針の近位端部3aの近位に配置される。同様に、針シールドの遠位端部5bは、針の遠位端部3bに遠位に配置される。このようにして、針は針シールドによって完全に遮蔽される。本実施形態では、針シールドは、針を完全に包む単一の要素であることも分かる。針シールドが針に対して変位すると、針シールドの遠位端部および近位端部の両方が針に対して変位する。これは本発明の特許請求の範囲にも特許請求されているが、分割出願の主題となり得る別の実施形態では、針シールドは2つの構成部品要素として構成され得るため、針シールドの遠位端部のみが針シールドに対して変位するのに対し、針シールドの近位端部は針に対して適所に固定されたままである。
【0049】
図1から分かるように、針3は、2つの尖った端部を有する針チューブとして構成され、一方は針チューブの近位端部に配置され、他方は遠位端部に配置される。針ハブ4は、針の遠位端部および近位端部の両方が自由になるように、針チューブの中間部分を把持する。使用中、針の近位端部は、注射される薬物を収容した容器2と係合するように構成され、遠位端部は、使用者の皮膚を穿孔して薬剤を使用者の体内に注入するように構成される。しかしながら、本発明は、針ユニットが尖った端部1つのみを持つように構成され、この図に示されているように穿孔可能な容器を使用せずに別の方法で薬剤供給源に接続されている注射装置の実施形態においても使用できることに留意すべきである。
【0050】
また図1から分かるように、針の近位端部3aは、シリコンカバー要素のような箔等の薄い可撓性のある貫通可能な材料から作られた滅菌シースを形成する近位カバー要素8aによって覆われている。針の遠位端部はまた、これもシリコンカバー要素のような箔等の薄い可撓性のある貫通可能な材料から作られた滅菌シースを形成する遠位カバー要素8bによって覆われている。カバー要素は、蒸気滅菌等によって針を滅菌することができ、その後針ユニットのさらなる取り扱いによって針自体が汚染されないことを保証するように構成される。薬物投与のための注射装置の使用時に、遠位および近位の尖った針の端部は、それぞれのカバー要素を穿孔し貫通するように構成される。図示される実施形態では、遠位および近位のカバー要素のそれぞれは、針ハブから尖った針端部まで針を包囲して包み込む、略円筒形のシースまたはブーツとして形成される。非貫通状態の滅菌シースは、注射装置を使用するまで針を滅菌状態で維持するのに役立つ。
【0051】
図2では、針シールド5が針ハブに対して後退しているため、ここで針の遠位端部3bは針シールドの遠位端部5bを越えて遠位方向に延びている。このようにして、ここで針の遠位端部が露出され、薬剤を使用者に注射する準備が整う。また図2に見られるように、針シールドを後退させる動作により、遠位カバー要素8bが引き戻される。これにより、針の遠位端部がカバー要素を穿孔し、穿孔によって針の遠位端部が裸出される。カバー要素の可撓性のため、カバー要素は容易に後退される。
【0052】
図3では、作動機構が薬剤含有カートリッジ2を遠位方向へと前方に押して、カートリッジを針の近位端部に係合することが分かる。針の近位端部はカートリッジのキャップ/膜を穿刺し、これによりカートリッジから針を通って針の遠位端部までの流体経路を確立し、これにより薬剤を使用者に注入することができる。また図3に示されているように、近位カバー要素8aは、針の方へのカートリッジの動きによって圧縮もされている。これにより、針の近位端部3aが近位カバー要素8aを穿孔および貫通し、これにより針の近位端部を裸出させ、針がカートリッジに係合することを可能にする。
【0053】
図4において、作動機構は、カートリッジ内に配置されたピストン9を下方に押すことによって、カートリッジ内の薬剤を針を通して使用者に注入させる。薬剤が注入された後、針シールドは針ハブに対して再び前方に押されて、針の遠位端部を遮蔽する。
【0054】
図1図4に関する上記の説明は、注射装置の使用の背景を与えるために提供されたものである。記載された注射装置は、多くの異なる利用可能な注射装置の1つである。本発明の針ユニットは、図1図4に関して上述したものだけでなく、異なる注射装置と共に使用することができることに留意すべきである。以下の説明において論じられる特定のロック要素は、図1図4に開示されていないことにも留意されたいが、図1図4に示される針シールドおよび針ハブは、以下に記載される実施形態のロック要素およびロック機能を備えるように容易に変更され得ることが明らかであろう。
【0055】
図5図13は、本発明に係る針ユニット20およびその構成部品の第1の実施形態の異なる図を示す。針ユニットは、針ハブ21と、針23と、針シールド22とを備える。針ハブは、これらの構成部品が互いに固定されることにより、注射針アセンブリを形成するように針を把持する(図12および図13参照)。針23は、尖った近位端部23aおよび尖った遠位端部23bを有する針チューブとして形成される。他の実施形態は、流体連通のために接合された2つのカニューレ部分によって作られる針を含むことができる。
【0056】
図1図4に関して説明したように、針ユニット20は、針23の近位端部23aおよび遠位端部23bを密封する貫通可能な滅菌シールを形成するカバー要素を備えることができる。このようなカバー要素は、図14図20に示される針ユニットの第2の実施形態に関連してさらに記述される。しかし、図5図13では、このようなカバー要素は見えないか、または示されていない。
【0057】
本実施形態では、針シールドおよび針ハブの両方が、射出成形されたプラスチック構成部品として製造される。両方の要素は、さらに、近位端部が遠位端部よりも幅広である円筒形でわずかに先細の要素として配置される。
【0058】
針ハブは、組み立て中に針シールドの近位端部に挿入されるように配置される。針シールドおよび針ハブはさらに、針ハブが針ハブおよび針シールドの長手軸に平行な方向に針シールド内部で前後に摺動できるように配置される。
【0059】
しかしながら、前述したように、ユニットの取り扱い中に針シールドが誤って変位し、これにより誤ってカバー要素を貫通したり、かつ/または針を露出したりしないように保証することが望ましい。したがって、本発明の針ユニットは、針シールドに対する針ハブの位置をロックするためのロック機構を有する。本実施形態では、2つの別個のロック機構、すなわち、針ハブが針シールドに対して遠位方向に変位しないことを保証するための第1の解除可能なロック機構と、針ハブが針シールドに対して近位方向に変位しないことを保証するための第2の機構とが提供される。
【0060】
第1のロック機構は、針ハブに固定された第1のハブロック要素24と、針シールドに固定された第1のシールドロック要素25とを備えている。本実施形態では、第1のハブロック要素24は、針ハブの長手軸に垂直で針ハブの外面に直交する軸の周りに可撓性である可撓性アームとして構成される。第1のシールドロック要素25は、針シールド内に段付きスロットとして構成される。針ハブが針シールド内に挿入されると、可撓性アームの自由端部が段付きスロットの第1の段と係合し、これによって針ハブが針シールドに対して遠位方向にさらに変位するのを防止する。しかしながら、可撓性アームの端部は、第1の段で、すなわち、「ロック方向」と呼ばれる方向と反対側の方向である「ロック解除方向」と呼ばれる方向にアームの自由端部を係合解除するようにアームを曲げることによって変位させることができる。ロック機構がロック解除されると、針ハブを針シールドに対してさらに遠位方向に変位させることができ、これにより、図12および図13を比較することによって示されるように針を露出させる。
【0061】
第2のロック機構は、針ハブを針シールド内に挿入するときにわずかに押し下げられる針ハブ上の傾斜した可撓性フランジ26を備える。針ハブが針シールド内にある距離だけ挿入されると、傾斜したフランジは針シールド内の切欠き27を通り、外向きに折れ、それにより針ハブが針シールドに対して近位方向に変位するのを防止する。
【0062】
第1および第2のロック機構は、機構をロック解除するのに必要な動作と、針シールドに対して針ハブを変位させるために必要な動作が異なる方向にあるため、耐衝撃性構造として構成されていることが分かる。例えば、針ハブを針シールドから後退させるには、針ハブの両側の2つの傾斜フランジ26を同時に押し下げながら、針ハブを近位方向にも引っ張ることが必要となるであろう。これは衝撃のある状況では不可能であろう。
【0063】
この点において、針シールドは、針シールドの各側に配置された2つの第1のシールドロック要素を備えることに留意することもできる。第1のハブロック要素ならびに第2のハブおよびシールドロック要素についても同様である。このようにして、ロック機構が誤って開かないことが二重に保証される。
【0064】
さらに、図7および図8から、針シールドには、針ハブ上の細長い突起29と係合する、針シールドの長手軸に平行に配置された溝28が設けられていることが分かる。このようにして、針ハブは、針シールドの長手軸の周りで針シールドに対して回転することが防止される。ここでもまた、針シールドおよび針ハブの両側にそれぞれ溝および細長い突起が設けられていることに留意すべきである。
【0065】
針シールドが針ハブに組み合わせられるとき、針シールドは針ユニットの取り扱い中に針ハブに対して変位できないことが望ましい。したがって、針ユニットはロック状態にある。図示された実施形態では、針ユニットがロック状態にあるとき、針シールドと針ハブとの間の相対的な軸方向の変位はまったくまたはほとんど起こり得ない。他の実施形態では、より多くの相対的な軸方向の変位が可能であるが、カバー要素のいずれかが意図せず貫通する危険性がない程度までである。
【0066】
しかしながら、針ユニットが注射装置に組み合わせられると、必要に応じて針が露出され得るように、針シールドが針ハブに対して変位可能であることが必要になる。したがって、第1のロック機構をロック解除する必要がある。本実施形態では、これは、針ユニットが注射装置のハウジング30内に挿入されるときに自動的に行われる。図9図11から分かるように、ハウジング30の前部もまた、近位端部が遠位端部よりわずかに大きいわずかに円錐形の形状をした円筒形である。針ユニットは、組み立て中にハウジングの近位端部に挿入される。ハウジング30の内面に設けられた傾斜要素31は、針ハブの可撓性アーム24の自由端部を横方向に自動的に変位させて、針シールドの段付きスロットと係合解除するように構成されている。このようにして、針ハブを針シールドに対して変位させることができる。針シールド上のリッジ32は、針シールドをハウジング内に挿入する間に針シールドがハウジングに対して回転しないように、傾斜要素31の両側にある溝33と係合する。
【0067】
図9は、傾斜要素31および溝33が容易に見えるハウジング30を示す。図10および図11は、シールド要素のない針ハブがどのようにハウジングに挿入されたかを示す。実際の組み立て手順での挿入中、針シールドおよび針ハブの両方を備えた組み立てられた針ユニットが挿入されることに留意されたい。しかし、説明のために、図10および図11は、可撓性アーム24と傾斜要素31との間の相互作用を見ることがより容易であるように、針ハブのみを示している。図10では、傾斜要素31の端部にちょうど係合している可撓性アーム24の自由端部を見ることができる。針ハブがハウジング内にさらに押し込まれると、傾斜要素は、アームが完全に側方に変位している図11に示すように、可撓性アームの自由端部をより側方に押す。
【0068】
ここで、図12および図13は、針シールドおよび針23を含む。図12において、アーム24の自由端部は、もはや段付きスロット25の第1の段の端部と係合しなくなるほど側方に押し込まれたことが分かる。これにより、針シールドは、装置の近位端部に向かってさらに変位することができる。これは、針シールドが近位端部に向かって押され、針23の遠位端部23bを露出させる図13に示されている。この位置では、可撓性アーム24の自由端部が段付きスロットの下部に達し、針シールドは、針ハブに対してさらに近位方向に変位することができないことが分かる。
【0069】
相互に作用する針ハブおよび針シールドの本体には、追加の機械的要素があることに留意されたい。しかしながら、これらの詳細は、本発明にとって本質的ではないので、ここではこれ以上説明しない。関心のある読者は、これらの特徴を説明する本出願人の他の特許明細書を参照されたい。
【0070】
図14は、本発明に係る針ユニットの第2の実施形態の断面図を示す。前の図に関連して、図14は、針カニューレの近位端部23aおよび遠位端部23bをそれぞれ覆うハブ21に取り付けられた2つのカバー要素8aおよび8bを有する針ユニット20を示している。
【0071】
図14は、針ユニット20が注射装置のハウジング30の下部ハウジングに組み合わせられ、カートリッジ2が針の近位端部23aに対して離間した構成で保持された後の針ユニット20を示す。この状態は、装置の保管状態に対応する。WO2015/197867に記載されているように、2つの弾性アーム(この開示では530で示す)は、カートリッジを保持し、カートリッジが使用位置まで遠位方向に移動するのを防止する。このような弾性アームは、添付の図面にも示されている(参照されていない)ので、カートリッジ膜2bと後部カバー要素8aとが互いに接するのを防止し、これらの穿孔可能要素の潜在的な早期貫通を防止するように機能する。
【0072】
針ユニット20の第2の実施形態は主に、要素24、25および傾斜要素31に関連するロック機能の堅牢性の増大を確実にし、許容範囲を考慮してより堅牢な設計を提供するために、第1の実施形態が変更されている。
【0073】
図15は、第2の実施形態の針ユニット20の針ハブの斜視図を示しているが、針およびカバー要素は示されていない。再び、第1のハブロック要素24が、長手軸と略平行に延びる可撓性アームとして構成されている。可撓性アーム24は、針ハブの長手軸に対して垂直で、針ハブの外面に直交する軸の周りで可撓性である。したがって、可撓性アームの遠位自由端部は、接線方向に横方向に曲がることができる。可撓性アームの遠位自由端部には、ハウジング30の傾斜要素31と協働するように構成された第1の表面24aが含まれる。さらに、可撓性アームは、針シールド22の第1のシールドロック要素25と協働するように構成された第2の表面24bを含む。可撓性アームの第2の表面24bは、実質的に遠位方向に面する、すなわち、長手軸と略平行な法線を有する表面を呈する。針シールド22の第1のシールドロック要素25の設計は、第1の実施形態に対して全体的に変更されないように維持されている。表面24bおよび段付きスロット25上に配置された協働面、すなわち段付きスロットの第1の段は、針ハブ21に対して針シールド22を近位方向に変位させるために加えられる力が増加して、針ユニットがロック状態になるときに、可撓性アームは、ロック方向、すなわち、ロック解除方向とは反対の方向にますます付勢されるように形成された。この位置では、可撓性アームは、長手軸と略平行に延びている。したがって、堅牢なロック機構が提供される。
【0074】
図16は、下部ハウジングセクション30の図を示しており、傾斜要素31の近位端部は、針ハブ21の可撓性アーム24の表面24aと整合するように角度が付けられた表面31aを呈する。表面24aおよび31aは、針ハブ21がハウジング30に対して遠位方向に挿入されると、可撓性アーム24の遠位端部に横方向の力を与えるように勾配を有して形成される。
【0075】
図17は、ロック位置において図15の針ハブを図16のハウジング内に挿入した針ハブの部分断面斜視図を示す。再び、針シールド、針、およびカバー要素は、図からは省略されている(図10参照)。図17では、傾斜要素31の端部にちょうど係合している可撓性アーム24の自由端部を見ることができ、すなわち、第1の表面24aが表面31aに係合している。針ハブがハウジング内にさらに押し込まれると、可撓性アームの第1の表面24aの勾配および傾斜要素31の表面31aの勾配により、可撓性アーム24の自由端部が、アームが完全に側方に変位している図18に示されているように、ロック解除方向の側方にさらに押し込まれる。
【0076】
ここで図19および図20は、針シールド22および針23を含む。図19において、アーム24の自由端部は、もはや段付きスロット25の第1の段の端部と係合しなくなるほど側方に押し込まれたことが分かる。これにより、針シールドは、装置の近位端部に向かってさらに変位することができる。これは、針シールドが近位端部に向かって押され、針23の遠位端部23bを露出させる図20に示されている。この位置において、針シールドは、針ハブに対して近位方向にさらに変位することができない。
【0077】
図面および上記の説明は、例示された実施形態を、図面に示された個々の特徴を説明することなく示し記載していることに留意されたい。さらに、詳細の多くは、当業者がこれらの詳細に精通しているはずであり、これらは単にこの説明を不必要に複雑にするため、詳細には記載されていない。
【0078】
さらに、いくつかの好ましい実施形態を上で示したが、本発明はこれらに限定されないが、以下の特許請求の範囲に規定される主題の範囲内における他の方法で具現化されてもよいことが強調されるべきである。
図1
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