【課題を解決するための手段】
【0007】
従来技術に係る問題の少なくとも一つは、本発明に係るマルチロータ航空機によって解決される。当該マルチロータ航空機は、
少なくとも三つの油圧モータと、
それぞれが前記少なくとも三つの油圧モータの一つにより回転可能な少なくとも三つのロータと、
少なくとも一つのパワーユニットと、
それぞれが前記少なくとも三つの油圧モータの一つに加圧流体を供給して駆動することにより前記少なくとも三つのロータの一つを回転させるための少なくとも三つの油圧ポンプと、
前記少なくとも三つの油圧モータへ分配される加圧流体の流れを変更することによって、前記マルチロータ航空機の動作制御を行なう制御ユニットと、
を備えており、
前記少なくとも三つの油圧ポンプから前記少なくとも三つの油圧モータへの加圧流体の流れのそれぞれを制御する少なくとも一つの制御弁によって、前記少なくとも三つの油圧モータへ分配される加圧流体の流れが個別に制御可能である。
【0008】
上記の構成の利点は、非常によく機能するマルチロータ航空機を得ることができる点である。また、圧力のブリーディングが生成する熱量が圧力を制限する場合よりも少ない点である。これにより、流体冷却器がより小型化されうる。また、流体の体積が削減されうる。さらに、流体冷却器が油圧回路のエクスパンジョンベッセルと組み合わせられうる。上記の航空機は、特に構造が簡潔であり、変更の少ない標準部品が使用されうる。また、電気モータを使用しないことにより、航続時間が延長されうる。
【0009】
上記のマルチロータ航空機は、マルチロータ航空機の遠隔制御コマンドを受信するための送受信ユニットをさらに備えうる。
【0010】
この構成の利点は、上記のマルチロータ航空機をUAVにできる点である。UAVは、遠隔制御されうる。よって、有人航空機にとっては危険な領域に進入可能である。
【0011】
前記パワーユニットは、可燃性の燃料を使用しうる。
【0012】
可燃性燃料は、近年のマルチロータ航空機に使用されているバッテリのような代替エネルギーよりも高いエネルギー密度を有している点で有利である。
【0013】
前記燃料は、前記マルチロータ航空機が備える燃料源から前記パワーユニットへ供給されうる。
【0014】
この構成の利点は、マルチロータ航空機を地上との物理的接続なしに操作できる点である。
【0015】
前記パワーユニットにより使用される前記燃料は、地上に位置している外部燃料源から燃料ラインを通じてポンプ供給されうる。
【0016】
この構成の利点は、航続時間が大幅に延長されうる点である。また、必要な内部燃料源が非常に小さいか皆無であるため、可積載量が増加されうる。さらに、外部燃料源が地上にあれば、複雑な空中補給機が不要である。
【0017】
前記パワーユニットは、ガスタービンでありうる。
【0018】
ガスタービンは、信頼性が非常に高い点で有利である。他の利点は、様々な燃料を使用できる点である。ガスタービンは、非常に高い出力重量比を有しており、低振動かつ軽量であるとともに、重質燃料で動作可能である。
【0019】
上記のマルチロータ航空機は、前記制御ユニットと関連付けられたジャイロユニットを備えうる。この場合、前記ジャイロユニットから入力を受け付けた前記制御ユニットは、前記マルチロータ航空機の制御を独立して適切に行なう。
【0020】
この構成の利点は、マルチロータ航空機を大幅に簡素化できる点である。また、熟練者でなくとも特別な訓練なしにマルチロータ航空機を操作できる。
【0021】
前記少なくとも三つの油圧ポンプの各々は、前記少なくとも三つの油圧モータのそれぞれへ向かうフィードラインを有しうる。前記フィードラインの各々に設けられた専用の制御弁の制御を通じて、前記少なくとも三つの油圧モータのそれぞれへ向かう流体の流れが制御されうる。前記制御弁は、前記制御ユニットに関連付けられており、前記フィードラインの各々から前記流体の流れをブリードするように構成されうる。
【0022】
各弁が独立して精密に制御されうるため、制御が特に簡素で有利である。また、他の制御モデルよりも、発熱に関して好適である。
【0023】
前記少なくとも三つのロータは、四つのロータでありうる。
【0024】
この構成の利点は、安定性が非常に高く、構成が容易なマルチロータ航空機を提供できる点である。
【0025】
前記少なくとも三つの油圧モータの各々と前記少なくとも三つのロータの各々は、独立したアームに配置されうる。
【0026】
アームの長さを調節することにより、またロータのレバーアームにかかるダウンフォースを変更することにより、マルチロータ航空機の異なる制御が実現されうる。当該アームは、容易に取り外し可能とされうる。この場合、マルチロータ航空機は、ロータと油圧モータを含むアームを取り外すことにより、輸送のために分解されうる。また、アーム、ロータ、および油圧モータを含むパッケージを交換することにより、ロータと油圧モータが容易に変更されうるので、損傷したアームのメンテナンスがより容易とされうる。
【0027】
前記四つのロータは、複数の対を形成するように関連付けられており、当該四つのロータのうち二つあるいは四つは、同じ大きさと構成を有している。
【0028】
マルチロータ航空機の設計時における部品の再使用が簡単とされうるので有利である。
【0029】
前記少なくとも三つのロータの各々の回転方向は、マルチロータ航空機の回転運動をゼロにできるように定められうる。
【0030】
この構成の利点は、いずれのロータも揚力を得るために用いる必要がない点である。この点は、ヘリコプタなどとは異なる。
【0031】
前記少なくとも三つのロータの各回転軸は、前記少なくとも三つの油圧モータの各回転軸と同軸でありうる。
【0032】
この構成の利点は、動作のために複雑なスワッシュプレートを必要とする従来のヘリコプタなどと比較して、マルチロータ航空機の機械的構成が非常に簡素な点である。また、構成の保守がより容易であるという利点もある。使用されるロータは、特別な優位性を必要としない標準構成とされうる。さらに、より複雑なシステムと比較して、マルチロータ航空機の重量が低減されうる。
【0033】
前記少なくとも三つのロータの少なくとも一つは、チルト可能とされうる。
【0034】
この構成は、マルチロータ航空機が特定の方向に速度を上げることが必要とされる場合に有利である。
【0035】
上記のマルチロータ航空機は、セルフシール型の燃料タンクを備えうる。
【0036】
この構成の利点は、燃料タンクが外部物体により損傷しても、燃料が大量に漏れ出すことがなく、火災被害が大幅に軽減されうる点である。
【0037】
上記のマルチロータ航空機は、流体媒質内を前進する際に揚力を加えるための固定翼を備えうる。
【0038】
この構成の利点は、マルチロータ航空機の航続時間と航続距離を大幅に延ばすことができる点である。
【0039】
前記少なくとも三つの油圧ポンプの全てが同じ回転入力を受ける構成とされうる。
【0040】
この構成の利点は、全ての油圧ポンプが正確に同じ量の回転入力をパワーユニットから受ける点である。これにより、各油圧モータへの流体の流れ制御が非常に容易となる。各油圧ポンプからの油圧流体の出力流が常に同じとなるからである。
【0041】
前記パワーユニットは、前記少なくとも三つの油圧ポンプの各々が同じ回転入力を受けるように、ギアを介して動力を伝達しうる。
【0042】
ギアを用いる利点は、パワーユニットからの回転出力が、油圧ポンプに必要とされる回転入力と一致するように変更されうる点である。これにより、マルチロータ航空機の効率が向上する。このギアは、余分な荷重を負担する必要があることを意味する。
【0043】
前記少なくとも三つの油圧ポンプは、前記パワーユニットにおける単一の出力シャフト上に配置されうる。
【0044】
これは、各油圧ポンプへ全く同じ回転出力を供給する上で非常に容易な手法である。油圧ポンプを同期するための機械的制御の負担が特に低く、油圧ポンプの同期に係るフェールセーフ制御を提供できる。
【0045】
前記少なくとも三つのロータは、少なくとも五つのロータでありうる。
【0046】
より多くのロータを設けることにより、一つのロータあるいは油圧モータが故障してもマルチロータ航空機の安定した飛行動作の継続が可能である。ロータの数は、五つに限定されるものではなく、さらに制御された飛行のために六つ以上のロータが設けられうる。
【0047】
上記のマルチロータ航空機は、前記少なくとも三つの油圧ポンプの各々に対して専用のパワーユニットを備えうる。この場合、前記専用のパワーユニットは、前記制御ユニットによって同期されることにより、前記少なくとも三つの油圧ポンプの各々は、同じ回転入力を受ける。
【0048】
これは、マルチロータ航空機の重量が増す変形例である。しかしながら、より小さなパワーユニットを使用して制御ユニットにより同期をとることにより、揚力やマルチロータ航空機のアンバランスに係る適合性が向上する。
【0049】
前記少なくとも三つのロータは、ピッチが固定されうる。
【0050】
この構成は、ロータが非常に簡素となり有利である。また、ロータの製造コストが低減されうる。さらに、ロータを堅牢にできる。
【0051】
上記のマルチロータ航空機の非稼働時において、前記少なくとも三つのロータのピッチは手動調節可能でありうる。
【0052】
この構成の利点は、動作条件を含む理由に応じてロータが調節されうる点である。当該条件の例としては、湿度、気温、動作高度の違いなどが挙げられる。
【0053】
前記少なくとも三つのロータのピッチは、飛行中に調節可能でありうる。
【0054】
この構成の利点は、ピッチの調節が非常に迅速とされうる点である。