(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1テーパ部は、前記一対の側壁の間隔が、前記下流側に向かうに従って漸次縮小するように形成されており、且つ、前記第2テーパ部は、前記一対の側壁の間隔が、前記下流側に向かうに従って漸次拡開するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバーナ。
前記第1テーパ部は、前記一対の側壁の間隔が、前記スロート部側に向かうに従って漸次縮小する断面扇形状とされ、かつ、第2テーパ部は、前記一対の側壁の間隔が、下流側の下流端部に向かうに従って漸次拡開する断面扇形状とされていることを特徴とする請求項2に記載のバーナ。
前記流体噴出流路における前記噴出拡開部は、前記一対の側壁の間隔が、下流側の前記中心流体噴出口に向かうに従って漸次拡開する断面扇形状とされていることを特徴とする請求項1〜請求項9の何れか一項に記載のバーナ。
さらに、平面視で前記中心流体噴出口の周囲を囲むように配置される周囲流体噴出口が備えられていることを特徴とする請求項1〜請求項10の何れか一項に記載のバーナ。
前記第1周囲流体噴出口は、前記中心流体噴出口の周囲を囲みながら連続して開口するように形成されているとともに、前記第2周囲流体噴出口は、複数の開口部が、前記中心流体噴出口の周囲を囲むように配置されてなることを特徴とする請求項12に記載のバーナ。
前記第1周囲流体噴出口は、保炎用酸素を噴出し、前記第2周囲流体噴出口は、燃料ガスを噴出することを特徴とする請求項12〜請求項15の何れか一項に記載のバーナ。
前記中心流体噴出口、前記第1周囲流体噴出口及び前記第2周囲流体噴出口は、それぞれ、支燃性ガス、保炎用酸素、又は燃料ガスの噴出量を個別に制御可能であることを特徴とする請求項16に記載のバーナ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1において、支燃性ガスの流速について詳細に言及すると、スロート部(細径部、直胴部(17))の入り口(上流端)において速度は音速となり、スロート部内ではその速度を維持しつつ流れの乱れが抑制され、その下流の拡開部(18)においては、断熱膨張により、理論的には超音速となる。
【0008】
一方、特許文献2では、上記のように、噴出後の断熱膨張によって超音速域に達することは可能ではあるものの、それには限界があり、ノズルから噴出後の支燃性ガスの速度はエネルギー損失によって減衰してしまうことから、遠方まで高速を保つことは困難であり、また、噴出後の超音速の速度を意図した速度に制御することも困難である。
【0009】
一般に、中心噴流の速度が大きいほど自励振動現象が不安定になりやすくなるが、上記のような特許文献2に記載のバーナの構造は、超音速域の噴流を自励振動させるために最適化された構造ではない。また、特許文献2に記載されたバーナにおける周囲流体噴出口の構造は、中央から超音速で流体が噴出するための構造である特許文献1に開示のスロート部(7)、テーパ部(2b)、及び直胴部(9)を設けても、ノズルから噴出後の支燃性ガスの速度減衰率が大きくなり、また、支燃性ガスを自励振動させた際に火炎を安定させることが困難であり、効率的に溶解・精錬を行うことができないという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、支燃性ガスの噴出後の速度の減衰を最低限に抑制し、超音速域を遠方まで減衰させずに保つことができるとともに、支燃性ガスを自励振動させた際の火炎を安定させることが可能なバーナ及びそれを用いた加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明者等が鋭意検討を重ねたところ、ノズルから噴出された後の支燃性ガスの速度が、エネルギー損失によって減衰することに関し、その減衰率は直胴部の断面形状に大きく依存することが明らかとなった。そして、自励振動構造を採用したバーナにおいて、直胴部の支燃性ガスの噴出方向に対する垂直断面形状を略正方形にすることにより、支燃性ガスの噴出後の速度の減衰を最低限に抑制し、超音速域を遠方まで減衰させずに保ち、支燃性ガスを自励振動させた際に火炎を安定させることが可能となることを見いだし、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明のバーナは、下流端に設けられた中心流体噴出口を有し、該中心流体噴出口から支燃性ガスを噴出するバーナであって、前記中心流体噴出口の上流側における流体噴出流路の側壁には、それぞれ対向する位置で一対の開口部が設けられているとともに、該一対の開口部同士が連通管で連通されており、前記流体噴出流路における前記一対の開口部よりも下流側は、前記一対の開口部が配置された一対の側壁の間隔が、下流側の前記中心流体噴出口に向かうに従って漸次拡開する噴出拡開部とされており、さらに、前記流体噴出流路における前記一対の開口部よりも上流側は、前記支燃性ガスの流入側から下流側に向けて流路面積が漸次縮小する第1テーパ部と、該第1テーパ部とスロート部を介して連通し、下流側に向けて前記流路面積が漸次拡大する第2テーパ部と、前記第2テーパ部と前記一対の開口部との間で、前記一対の側壁の間隔が一定とされた直胴部と、を有し、前記第1テーパ部、前記スロート部、及び前記第2テーパ部の前記支燃性ガスの噴出方向に対する垂直断面が矩形状であり、前記直胴部の前記支燃性ガスの噴出方向に対する垂直断面が略正方形であることを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記第1テーパ部は、前記一対の側壁の間隔が、前記下流側に向かうに従って漸次縮小するように形成されており、かつ、前記第2テーパ部は、前記一対の側壁の間隔が、前記下流側に向かうに従って漸次拡開するように形成されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明において、前記第1テーパ部は、前記一対の側壁の間隔が、前記スロート部側に向かうに従って漸次縮小する断面扇形状とされ、かつ、第2テーパ部は、前記一対の側壁の間隔が、下流側の下流端部に向かうに従って漸次拡開する断面扇形状とされた構成であってもよい。
【0015】
また、本発明において、前記スロート部は、前記一対の側壁の間隔が一定とされた直胴形状とされていることが好ましい。
【0016】
また、本発明において、前記流体噴出流路は、前記第2テーパ部の下流端部と、前記噴出拡開部の上流端部との間隔L
1と、前記第2テーパ部における前記一対の側壁の最大間隔Dとが、下記(1)式で表される関係を満たすことが好ましい。
1.5D≦L
1≦3D ・・・・・(1)
【0017】
また、本発明において、前記流体噴出流路は、前記噴出拡開部における流路長さL
2と、前記第2テーパ部における前記一対の側壁の最大間隔Dとが、下記(2)式で表される関係を満たすことが好ましい。
2D≦L
2≦15D ・・・・・(2)
【0018】
また、本発明において、前記流体噴出流路は、前記噴出拡開部の上流
端部における一対の側壁の間隔Wと、前記第2テーパ部における前記一対の側壁の最大間隔Dとが、下記(3)式で表される関係を満たすことが好ましい。
1.5D≦W≦3D ・・・・・(3)
【0019】
また、本発明においては、前記噴出拡開部における前記一対の側壁の開き角度αが0°超60°未満であることが好ましい。
【0020】
また、本発明においては、前記連通管の内径D
CTと、前記第2テーパ部における前記一対の側壁の最大間隔Dとが、下記(4)式で表される関係を満たすことが好ましい。
1D≦D
CT≦3D ・・・・・(4)
【0021】
また、本発明において、前記流体噴出流路における前記噴出拡開部は、前記一対の側壁の間隔が、下流側の前記中心流体噴出口に向かうに従って漸次拡開する断面扇形状とされた構成であってもよい。
【0022】
また、本発明においては、さらに、平面視で前記中心流体噴出口の周囲を囲むように配置される周囲流体噴出口が備えられていてもよい。
【0023】
また、本発明において、前記周囲流体噴出口は、前記中心流体噴出口の周囲にそれぞれ配置される、第1周囲流体噴出口と、第2周囲流体噴出口とからなり、前記第1周囲流体噴出口は、前記中心流体噴出口の周囲を囲むように配置され、前記第2周囲流体噴出口は、前記第1周囲流体噴出口の周囲を囲むように配置されることが好ましい。
【0024】
また、本発明において、前記第1周囲流体噴出口及び前記第2周囲流体噴出口は、平面視矩形状に連続して開口するように形成されていてもよい。
あるいは、前記第1周囲流体噴出口及び前記第2周囲流体噴出口は、平面視円形状に連続して開口するように形成されていてもよい。
あるいは、前記第1周囲流体噴出口は、前記中心流体噴出口の周囲を囲みながら連続して開口するように形成されているとともに、前記第2周囲流体噴出口は、複数の開口部が、前記中心流体噴出口の周囲を囲むように配置されていてもよい。
【0025】
また、本発明において、前記第1周囲流体噴出口は、保炎用酸素を噴出し、前記第2周囲流体噴出口は、燃料ガスを噴出する構成であってもよい。
【0026】
また、上記構成において、前記中心流体噴出口、前記第1周囲流体噴出口及び前記第2周囲流体噴出口は、それぞれ、支燃性ガス、保炎用酸素、又は燃料ガスの噴出量を個別に制御可能に構成されていてもよい。
【0027】
また、本発明のバーナを用いた加熱方法は、上述の特徴を備えたバーナを用いて被加熱物を加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るバーナ及びそれを用いた加熱方法によれば、支燃性ガスの噴出後の速度の減衰を最低限に抑制し、超音速域を遠方まで減衰させずに保つことができるとともに、支燃性ガスを自励振動させた際の火炎を安定させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を適用した一実施形態であるバーナ及びバーナを用いた加熱方法について、
図1A〜
図3Bを適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0031】
本発明に係るバーナ及びそれを用いた加熱方法は、例えば、転炉や電気炉等の金属の溶解・製錬炉において、金属を加熱用途等に適用することが可能なものである。
【0032】
<バーナ>
以下、本発明に係るバーナの構成について詳述する。
図1A〜
図3Bは、本発明の一実施形態であるバーナ1の構造を説明する図であり、
図1Aは中心軸を含む部分切断面の一例を示す断面図、
図1Bはバーナを正面側から示した平面図である。また、
図2は、
図1A中の要部を示す部分拡大断面図であり、
図3A及び
図3Bは、バーナを正面側から示した平面図である。なお、
図1A〜
図3Bにおいては、各流体噴出口及び開口部等の配置関係やサイズを示すための模式図であることから、ノズルとしての管壁等、詳細な部分の図示を一部省略している。また、以下の説明においては、バーナを構成する各部の位置関係を規定するにあたり、バーナ中を流れる流体の流れる方向を利用する。即ち、例えば、下流側といえば、バーナの先端側のことをいう。
【0033】
図1A及び
図1Bに示すように、本実施形態のバーナ1は、先端部に設けられた複数の流体噴出口の各々から酸素等の支燃性ガス、燃料ガス等を噴出し、燃焼させる。
具体的には、本実施形態のバーナ1は、下流端に設けられた中心流体噴出口7を有し、この中心流体噴出口7から支燃性ガス(
図1A中の符号G2を参照)を噴出させるものであり、中心流体噴出口7の上流側における流体噴出流路(
図1A中の符号3を参照)の側壁には、それぞれ対向する位置で一対の開口部5a,5bが設けられているとともに、これら一対の開口部5a,5b同士が連通管6で連通されている。また、流体噴出流路における一対の開口部5a,5bよりも下流側は、これら一対の開口部5a,5bが配置された一対の側壁4a,4bの間隔が、下流側の中心流体噴出口7に向かうに従って漸次拡開する噴出拡開部4とされている。さらに、流体噴出流路における一対の開口部5a,5bよりも上流側は、支燃性ガスの流入側から下流側に向けて流路面積が漸次縮小する第1テーパ部2aと、この第1テーパ部2aとスロート部2bを介して連通し、下流側に向けて流路面積が漸次拡大する第2テーパ部2cと、第2テーパ部2cと一対の開口部5a,5bとの間で、一対の側壁の間隔が一定とされた直胴部2dと、を有して概略構成されている(
図2の部分拡大断面図も参照)。
【0034】
そして、本実施形態のバーナ1は、
図2中に示す第1テーパ部2a、スロート部2b、及び第2テーパ部2cの支燃性ガスの噴出方向に対する垂直断面が矩形状であり、直胴部2dの支燃性ガス(酸素G2)の噴出方向に対する垂直断面が略正方形とされている。なお、本発明において、略正方形とは、各辺の長さの差が5%以内である矩形を意味する。
【0035】
図1A及び
図1Bは、例えば、バーナ1を電気炉用として使用する場合を示しており、支燃性ガスとして酸素G2が中心流体噴出口7から噴出すると同時に、それを包むように第1周囲流体としての保炎用酸素G3が噴出し、さらに、それらを包むように第2周囲流体としての燃料ガスG1が噴出することにより、火炎に包まれた酸素噴流が形成される。さらに、本実施形態においては、支燃性ガス(酸素G2)が流通する流路構造に伴い、噴出された酸素噴流は、所定条件下で自励振動状態となる。
【0036】
詳細には、本実施形態のバーナ1は、中心軸Aに沿って内部に支燃性流体供給管2を有しており、内部に支燃性流体流路(流体噴出流路)3が形成された筒状に構成されている。より詳細には、
図2の部分拡大断面図に示すように、支燃性流体供給管2は、上流側から、第1テーパ部2a、スロート部2b、第2テーパ部2c及び直胴部2dが形成されることにより、所謂ラバールノズル構造を有する支燃性流体流路3が形成されている。
【0037】
ここで、第1テーパ部2aの支燃性ガスの噴出方向に対する垂直断面(中心軸Aに直交する断面形状)、即ち、中心軸Aに対する垂直断面の形状は矩形状であり、
他の一対の側壁の間隔は下流に向かっても一定であるのに対して
、一対の側壁の間隔が、下流側に向かうに従って漸次縮小するように形成されていることから、上記の断面の面積は、下流側に向かって漸次縮小するように構成されている。換言すると、第1テーパ部2aは、
図2(
図1Aも参照)に示した断面においては、下流側に向かって漸次縮小する断面扇形状とされている。
なお、第1テーパ部2aの支燃性ガスの噴出方向に対する垂直断面としては、矩形状である。
矩形状としては、例えば、略正方形、長方形等が挙げられる。これらの中でも、長方形が好ましい。
【0038】
また、スロート部2bの支燃性ガスの噴出方向に対する垂直断面(中心軸Aに直交する断面形状)、即ち、中心軸Aに対する垂直断面の形状も矩形状であり、
他の一対の側面の間隔及
び一対の側壁の間隔の何れもが下流側に向かって一定とされていることから、上記の断面の面積も、下流側に向かって一定とされている。即ち、スロート部2bは直胴形状に構成されている。
スロート部2bの支燃性ガスの噴出方向に対する垂直断面としては、矩形状である。
矩形状としては、例えば、略正方形、長方形等が挙げられる。これらの中でも、長方形が好ましい。
【0039】
また、第2テーパ部2cの支燃性ガスの噴出方向に対する垂直断面(中心軸Aに直交する断面形状)、即ち、中心軸Aに対する垂直断面の形状も矩形状である。また、第2テーパ部2cの断面形状は、
他の一対の側壁の間隔は下流に向かって一定であるのに対して
、一対の側壁の間隔が下流側に向かうに従って漸次拡開するように形成されていることから、上記の断面の面積は、下流側に向かって漸次拡大するように構成されている。換言すると、第2テーパ部2cは、
図2(
図1Aも参照)に示した断面においては、下流側に向かって漸次拡開する断面扇形状とされている。
第2テーパ部2cの支燃性ガスの噴出方向に対する垂直断面としては、矩形状である。
矩形状としては、例えば、略正方形、長方形等が挙げられる。これらの中でも、長方形が好ましい。
【0040】
また、支燃性流体供給管2の最下流端に位置する直胴部2dの支燃性ガスの噴出方向に対する垂直断面(中心軸Aに直交する断面形状)は、略正方形であり、
他の一対の側面の間隔及
び一対の側壁の間隔の何れもが下流側に向かって一定とされていることから、上記の断面の面積も下流側に向かって一定とされている。ここで、本実施形態においては、直胴部2dにおける、上記
の一対の側壁の間隔をDと規定する。これは、第2テーパ部2cにおけ
る一対の側壁の間隔の最大間隔Dと等しい。
【0041】
このような寸法構成とすることにより、支燃性ガスたる酸素G2を超音速で噴出させることができるとともに、詳細を後述するように、酸素G2を自励振動させた場合においても、火炎をより安定させることができ、中心流体噴出口7からの噴出後の速度の減衰を最低限に抑えることができる。
直胴部2dの支燃性ガスの噴出方向に対する垂直断面が略正方形であることにより、噴流がノズルから噴出した後の速度減衰を抑えることができる。同じ断面積で比較すると、断面の周の長さが長いほど雰囲気と接触し、拡散しやすくなる。従って、四角形の中では略正方形が最も周が短く、雰囲気と拡散することによる速度減衰を小さく抑えることができる。
【0042】
支燃性流体供給管2の下流には、噴出拡開部4が支燃性流体供給管2と同軸で配設されている。ここで、本実施形態においては、支燃性流体供給管2の下流端部の端面と噴出拡開部4の上流端部の端面との間の距離をL
1と規定する。噴出拡開部4の孔(流路)における、中心軸Aに直交する断面形状は矩形状であり、
他の一対の側壁の間隔が下流側に向かって一定であるのに対して
、一対の側壁4a,4bの間隔は下流側に向かうに従って漸次拡開するように形成されていることから、上記の断面の面積は、下流側に向かって漸次拡大するように構成されている。換言すると、噴出拡開部4は、
図1A中に示した断面図においては、下流側に向かって漸次拡開する扇形状とされている。ここで、本実施形態においては
、一対の側壁4a,4bの間隔の拡開度合いで決まる当該側壁の開き角度をαと規定する。また
、一対の側壁4a,4bの最小間隔、すなわち上流端部における間隔をWと規定する。また、噴出拡開部4の上流端部の端面から、その下流端部の端面までの長さをL
2と規定する。なお、バーナ1においては、上記の下流端部における流路の開口部が中心流体噴出口7とされている。
【0043】
支燃性流体流路3と、噴出拡開部4の流路との間の側壁、即ち、上記の距離L
1に相当する部分の側壁であって、直胴部2d
の一対の側壁と、噴出拡開部4
の一対の側壁4a,4bとの間には、一対の開口部5a,5bが設けられている。つまり、これら一対の開口部5a,5bの互いに共通する中心軸は、直胴部2d等の上記一対の側壁と平行な方向である。さらに換言すれば、その中心軸は、
図1A中に示す断面と平行な方向である。また、一対の開口部5a,5bを始点とするそれぞれの通路は、他端で連通して構成されることで閉じた連通管6を形成している。ここで、本実施形態においては、連通管6の内径をD
CTと規定し、その長さをL
CTと規定する。
【0044】
一方、いわゆる保炎構造としては、中心流体噴出口7の周囲を囲むように第1周囲流体噴出口8が配置され、さらに、第1周囲流体噴出口8の周囲を囲むように第2周囲流体噴出口9が配置されている。また、特に、
図1Bに示すように、本実施形態で説明する例においては、第1周囲流体噴出口8及び第2周囲流体噴出口9は、平面視で円形状に連続して開口している。
【0045】
また、本実施形態においては、第1周囲流体噴出口8からは、第1周囲流体としての保炎用酸素G3が噴出し、第2周囲流体噴出口9からは、第2周囲流体としての燃料ガスG1が噴出するように構成されている。
【0046】
次に、本実施形態に係るバーナ1の機能(動作)と詳細な最適形状について説明する。
支燃性流体供給管2に導入された支燃性ガスとしての酸素G2は、第1テーパ部2aのテーパ形状に応じて高速化し、第1テーパ部2aの最後端、つまりスロート部2bの最前端において音速となる。音速となった酸素G2は、スロート部2bの部分で流れの乱れが抑えられ、安定化が図られる。スロート部2bの後段の第2テーパ部2cにおいては、狭くなるテーパ形状に応じて酸素G2の断熱膨張が生じることにより、この酸素G2の速度が超音速となる。なお、直胴部2dにおいては、超音速噴流の流れ方向が一様に整理される。
【0047】
直胴部2dの部分を通過し、超音速となった酸素G2の流れは、連通管6で連通された一対の開口部5a,5bの作用により、所定条件下で、噴出拡開部4の上
記一対の側壁のそれぞれに交互に付着する自励振動状態となる(図
1B及び
図3B中の矢印Rを参照)。即ち、直胴部2dから出た酸素G2の流れは、コアンダ効果により、まず、噴出拡開部4における上
記一対の側壁4a,4bのうちの何れかに沿う流れとなる。このとき、噴流が沿った側壁の側の開口部5a又は開口部5b近傍の連通管6内の圧力が低くなり、反対側の開口部5b又は開口部5a近傍の連通管6内の圧力との差が生ずる。この圧力差により、連通管6内では、反対側の開口部5b又は開口部5aから、噴流が沿った側壁の側の開口部5a又は開口部5bへの流れが発生し、この流れにより、沿っていた側壁から噴流が剥がされて、反対側の側壁に沿うように向きを変える。以降、これを交互に繰り返し、結果として、中心流体噴出口7から噴出される支燃性ガス(酸素G2)は、所謂フリップフロップノズルの自励振動状態となる。
【0048】
ここで、本実施形態においては、上記の自励振動状態が確実に発生し、且つ良好に維持し続けることが好ましいが、かかる安定した自励振動状態が得られる流速には上限が存在する。この上限値は高ければ高いほど好ましいが、それは上述した各種寸法に依存する。以下に、上記の各種寸法の好ましい範囲について詳述する。
【0049】
まず、第2テーパ部2cの下流端部と、噴出拡開部4の上流端部との間隔L
1は、第2テーパ部2cにおける一対の側壁の最大間隔Dとの関係で、長すぎても、あるいは短すぎても噴流の振動が発生しないが、下記(1)式を満たす間隔L
1が好ましい範囲である。
1.5D≦L
1≦3D ・・・・・(1)
【0050】
また、噴出拡開部4における流路長さL
2は、上記の間隔Dとの関係で、短すぎると噴流の振動が発生しないが、下記(2)式を満たす流路長さL
2が好ましい範囲であり、下記(2’)式を満たす流路長さL
2がより好ましい範囲であり、下記(2’’)式を満たす流路長さL
2が特に好ましい範囲である。
2D≦L
2≦15D ・・・・・(2)
4D≦L
2≦10D ・・・・・(2’)
4D≦L
2≦6D ・・・・・(2’’)
【0051】
また、噴出拡開部の上流側における一対の側壁の間隔Wは、長すぎても、あるいは短すぎても噴流の振動が発生しないが、下記(3)式を満たす間隔Wが好ましい範囲であり、下記(3’)式を満たす間隔Wがより好ましい範囲であり、下記(3’’)式を満たす間隔Wが特に好ましい範囲である。
1.5D≦W≦3D ・・・・・(3)
1.73D≦W≦2.4D ・・・・・(3’)
2.05D≦W≦2.27D ・・・・・(3’’)
【0052】
また、連通管6の内径D
CTは、上記の間隔Dとの関係で、短すぎると噴流の振動が発生しないが、下記(4)式を満たす内径D
CTが好ましい範囲である。
1D≦D
CT≦3D ・・・・・(4)
【0053】
また、連通管6の長さL
CTは、長いほど噴流の振動周期が長くなるが、長すぎると振動が発生しないことから、下記(5)式を満たす長さL
CTが好ましい範囲である。
0.5m≦L
CT≦50m ・・・・・(5)
【0054】
また、噴出拡開部4における一対の側壁4a,4bの開き角度αは、大きいほど振動しにくいことから、下記(6)式を満たす開き角度αが好ましい範囲である。
0°<α<60° ・・・・(6)
【0055】
<バーナを用いた加熱方法>
次に、本実施形態のバーナを用いた加熱方法(以下、単に加熱方法と略称することがある)について説明する。本実施形態の加熱方法は、上述した本実施形態のバーナ1を用いて被加熱物を加熱する方法である。
【0056】
本実施形態のバーナ1を、電気炉における金属の溶解・製錬に使用する場合には、上述のように、中心流体噴出口7から噴出された支燃性ガス(酸素G2)を火炎で覆う必要があるが、酸素G2を火炎で覆うことにより、中心流体噴出口7から噴出された酸素G2の超音速を維持できる区間を長くすることができる。このため、特に、自励振動状態で噴出された酸素G2に対して、安定した火炎を形成できることが求められる。
【0057】
そこで、本実施形態の加熱方法においては、
図1Bに示すように、平面視で中心流体噴出口7の周囲を囲むように円形状に配置された第2周囲流体噴出口9から燃料ガスG1を噴出させることにより、支燃性ガス(酸素G2)の自励振動に関わらず、常に酸素G2を覆う流れを形成することが可能となる。加えて、中心流体噴出口7と第2周囲流体噴出口9の間に円形状に配置された第1周囲流体噴出口8から保炎用酸素を噴出させることにより、酸素流体を覆う火炎の形成を助け、安定した燃焼状態を保つことが可能になる。
なお、中心流体噴出口7、第1周囲流体噴出口8、及び第2周囲流体噴出口9の各々から噴出される酸素G2、保炎用酸素G3、及び燃料ガスG1の噴出量は、個別に制御可能であることが好ましい。
【0058】
<他の実施形態>
上記の実施形態においては、
図1Bの平面図に示すように、第1周囲流体噴出口8及び第2周囲流体噴出口9が、平面視で円形状に連続して開口している構成を採用したが、これには限定されない。即ち、例えば、
図3Aの平面図に示すように、中心流体噴出口7の形状に合わせて、平面視で矩形状に連続して開口するように形成された第1周囲流体噴出口8a及び第2周囲流体噴出口9aを備えた構成を採用してもよい。あるいは、
図3Bに示すように、平面視で円形状に連続して開口するように形成された第1周囲流体噴出口8と、複数の開口部が中心流体噴出口7の周囲を囲むように配置されて形成された第2周囲流体噴出口9bを備えた構成を採用してもよい。
これらの他の実施形態においても、上記同様、自励振動状態の噴出酸素に対して、安定した火炎を形成できる。
【0059】
また、上記の実施形態においては、支燃性ガス、第1周囲流体、及び第2周囲流体として、それぞれ、酸素G2、保炎用酸素G3、及び燃料ガスG1を挙げたが、これらに限られることはなく、適宜、最適な流体を選択して用いることができる。
また、上記の実施形態においては、中心流体噴出口7が酸素G2を噴出し、第1周囲流体噴出口8が保炎用酸素G3を噴出し、さらに、第2周囲流体噴出口9が燃料ガスG1を噴出する例を説明しているが、これには限定されず、各流体が噴出される噴出口の位置等は、バーナの用途等に応じて適宜設定することが可能である。
【0060】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態のバーナ1及びそれを用いた加熱方法によれば、直胴部2dの酸素(支燃性ガス)G2の噴出方向に対する垂直断面が略正方形であることから、中心流体噴出口7から噴出された酸素G2の噴流速度の減衰を最低限に抑えることができる。これにより、超音速域を遠方まで減衰させずに保つことができ、また、酸素G2を自励振動させた場合でも、火炎を安定させながら、被加熱物を効率よく加熱することが可能になる。
【0061】
また、本実施形態のバーナ1及びそれを用いた加熱方法においては、特に、第2テーパ部2cの下流端部と噴出拡開部4の上流端部との間隔L
1、噴出拡開部4における流路長さL
2、噴出拡開部4の上流側における一対の側壁の間隔W、連通管6の内径D
CTと第2テーパ部2cにおける一対の側壁の最大間隔Dとの関係、並びに、噴出拡開部4における一対の側壁4a,4bの開き角度αを、それぞれ特定の範囲で最適化した場合には、上記のような、酸素G2を自励振動させた際の火炎を安定させながら、酸素G2の噴流速度の減衰を最低限に抑制する効果がより顕著に得られる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明のバーナ及びバーナを用いた加熱方法の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[実施例1−1]
図1に示すバーナ1の支燃性流体供給管2において、第1テーパ部2a、スロート部2b、第2テーパ部2cの支燃性ガスの噴出方向に対する垂直断面を長方形状とし、且つ直胴部2dの支燃性ガスの噴出方向に対する垂直断面を略正方形状とした。また、第1周囲流体噴出口、及び第2周囲流体噴出口は、
図1Bに示すように配置した。さらに、第2テーパ部における前記一対の側壁の最大間隔Dとの関係において、噴出拡開部の上流端部との間隔L
1を2Dとし、噴出拡開部における流路長さL
2の値を6Dとし、噴出拡開部の上流側における一対の側壁の間隔Wの値を1.73D(W/D=1.73)とし、連通管の内径D
CTの値を1.6Dとし、開き角度αを30°としてバーナを得た。支燃性ガスG2は酸素、燃焼ガスG1は天然ガス、保炎用酸素G3は酸素を用いた。
【0064】
[実施例1−2〜1−6]
第2テーパ部における、前記一対の側壁の最大間隔Dとの関係において、間隔Wを下記表1に示すように変更した点以外は、実施例1−1と同様にして、バーナを得た。
【0065】
次に、実施例1−1〜1−6のバーナを用いて、自励振動時の火炎の安定性を評価した。結果を
図4に示す。
図4は、間隔Dと間隔Wの比を変化させて安定した自励振動流が得られる流量(Nm
3/h)の範囲を具体的に計測した結果を示すグラフである。
図4中において、流量が大きい方が、噴流の速度が高いことを示す。
図4に示すように、1.73≦W/D≦2.40の範囲において自励振動流が得られていることから、間隔Dと間隔Wと関係は、1.73D≦W≦2.40Dの範囲が好ましいことが明らかである。さらに、
図4のグラフに示す結果より、2.05≦W/D≦2.27の範囲において流量範囲が最も広くなっていることから、間隔Dと間隔Wとの関係は、2.05D≦W≦2.27Dの範囲がより好ましいことが明らかである。
【0066】
【表1】
【0067】
[実施例2−1〜2−4]
第2テーパ部における、前記一対の側壁の最大間隔Dとの関係において、噴出拡開部における流路長さL
2を下記表2に示すように変更した点以外は、実施例1−1と同様にして、バーナを得た。
【0068】
次に、実施例2−1〜2−4のバーナを用いて、自励振動時の火炎の安定性を評価した。結果を
図5に示す。
図5は、間隔Dと長さL
2の比を変化させて安定した自励振動流が得られる流量範囲(Nm
3/h)を具体的に計測した結果を示すグラフである。
図5中において、流量が大きい方が、噴流の速度が高いことを示す。
図5に示すように、2≦L
2/D≦10の範囲において自励振動流が得られていることから、間隔Dと長さL
2の関係は、2D≦L
2≦10Dの範囲が好ましいことが明らかである。さらに、
図5のグラフに示す結果より、4≦L
2/D≦6の範囲において流量範囲が最も広くなっていることから、間隔Dと長さL
2の関係は、4D≦L
2≦6Dの範囲がより好ましいことが明らかである。
【0069】
【表2】
【0070】
[実施例3]
第2テーパ部における、前記一対の側壁の最大間隔Dとの関係において、各値(W、L
1、L
2、D
CT)を、W=2D、L
1=2D、L
2=6D、D
CT=2Dとし、一対の側壁4a,4bの開き角度α=30°とした点以外は、実施例1−1と同様にして、バーナを得た。
【0071】
[比較例1]
支燃性流体供給管2が、第1テーパ部、スロート部、及び第2テーパ部を有さず、直胴部のみを有する点以外は、実施例1−1と同様にして、バーナを得た。
【0072】
次に、実施例3、及び比較例1のバーナを用いて、中心流体噴出口からの距離に対する火炎の速度(マッハ数)を評価した。
図6のグラフに検討結果を示す。
ここで、本実施例においては、中心流体噴出口7からの距離をZとし、
図6のグラフにおいては、横軸を距離Zと間隔Dとの比とし、縦軸をマッハ数とした。
図6によれば、距離の遠近の全般に渡って、実施例3の方が比較例1よりも高速の噴出速度となっていることが分かる。例えば、Z/D=40において、実施例3ではマッハ数は約0.7であり、比較例では約0.55となった。また、別の観点からは、マッハ数0.42以上を得るためには、比較例1ではZ/Dが約67以下であることが必要であるのに対して、実施例3ではZ/Dが100まで延びることとなった。従って、本発明のバーナは、遠方まで火炎を高速に保つことが可能であることが分かる。
【0073】
次に、実施例3、及び比較例1のバーナを用いて、自励振動させた際の火炎の速度(マッハ数)を評価した。結果を
図7A〜
図7Dに示す。
図7A〜
図7Dは、中心流体噴出口からの各距離Z(Z=5D,10D,20D,40D:Dは第2テーパ部における一対の側壁の最大間隔)における、中心軸から離れる方向の位置での流速を比較した結果を示すグラフである。
図7A〜
図7Dに示すように、中心流体噴出口からの全距離に渡って、且つ、中心軸からの全距離に渡って、自励振動させた際に、中心軸から離れる方向の位置(X)に火炎を自励振動させることができており、且つ比較例1よりも実施例3の方が高速の噴出速度になっていることが分かる。例えば、Z/D=40において、実施例3では、X/D=6.7のときに、マッハ数が約0.6であるのに対して、比較例1では、マッハ数0.6を得るためには、X/D=4のような中心軸からより近い位置である必要があることが分かる。
【0074】
図6及び
図7A〜
図7Dのグラフに示す結果より、実施例3においては、中心軸方向に渡っての速度も、中心軸から離れる方向に渡っての速度についても、比較例1に対して優位性を有していた。換言すると、実施例3の方が、比較例1に比べて、より遠くまで、且つ横幅方向の広い範囲に渡って高速の噴流を噴出することができることが確認できた。
【0075】
以上説明した実施例のように、本発明に係るバーナによれば、支燃性流体供給管2の直胴部2dにおける一対の側壁の間隔と他の一対の側壁の間隔を概略等しくすることにより、換言すれば、支燃性流体供給管2の下流端部の形状を略正方形とすることにより、中心流体噴出口7から噴出された酸素噴流の速度の減衰を最低限に抑えることができ、且つ支燃性ガスを自励振動させた際に火炎を安定させることが可能になることが明らかである。
【0076】
[比較例2]
直胴部2dの支燃性ガスの噴出方向に対する垂直断面を長方形状とした以外は、実施例3と同様にして、バーナを得た。
【0077】
次に、得られた比較例1のバーナを用いて、実施例3と同様にして、中心流体噴出口からの距離に対する火炎の速度(マッハ数)、及び自励振動させた際の火炎の安定性を評価した。その結果、比較例2のバーナは、ノズルからの噴出後の火炎の速度の減衰が大きく、遠方まで高速を保つことができず、且つ支燃性ガスを自励振動させた際に火炎を安定させることができなかった。