(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る通信システムは、多数の端末装置への同時接続や低遅延化などに対応する第5世代又は第5世代以降の次々世代等の将来の移動通信の3次元化ネットワークの実現に適する。
【0010】
図1に示すように、本通信システムは、複数の飛行型(空中浮揚型)の通信中継装置として、高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」ともいう。)10,20を備えている。HAPS10,20は、当該通信中継装置を搭載した飛行体で構成され、所定高度の空域に位置して、所定高度のセル形成目標空域40に図中ハッチング領域で示すような3次元セル(3次元エリア)41,42を形成する。本実施形態のHAPS10,20は、自律制御又は外部から制御により地面又は海面から100[km]以下の高高度の浮揚空域50に浮遊(飛行)して位置するように制御される飛行体(ソーラープレーン、飛行船など)に、中継通信局が搭載されたものである。
【0011】
HAPS10,20の位置する空域50は、例えば、高度が11[km]以上及び50[km]以下の成層圏の空域である。この空域50は、気象条件が比較的安定している高度15[km]以上25[km]以下の空域であってもよく、特に高度がほぼ20[km]の空域であってもよい。図中のHrsl及びHrsuはそれぞれ、地面(GL)を基準にしたHAPS10,20の位置する空域50の下端及び上端の相対的な高度を示している。
【0012】
セル形成目標空域40は、本実施形態の通信システムにおける1又は2以上のHAPSで3次元セルを形成する目標の空域である。セル形成目標空域40は、HAPS10,20が位置する空域50と従来のマクロセル基地局等の基地局90がカバーする地面近傍のセル形成領域との間に位置する、所定高度範囲(例えば、50[m]以上1000[m]以下の高度範囲)の空域である。図中のHcl及びHcuはそれぞれ、地面(GL)を基準にしたセル形成目標空域40の下端及び上端の相対的な高度を示している。
【0013】
なお、本実施形態の3次元セルが形成されるセル形成目標空域40は、海、川又は湖の上空であってもよい。
【0014】
HAPS10,20の中継通信局はそれぞれ、移動局である端末装置と無線通信するためのビーム100,200を地面に向けて形成する。端末装置は、遠隔操縦可能な小型のヘリコプター等の航空機であるドローン60に組み込まれた通信端末モジュールでもよいし、飛行機65の中でユーザが使用するユーザ装置であってもよい。セル形成目標空域40においてビーム100,200が通過する領域が3次元セル41,42である。セル形成目標空域40において互いに隣り合う複数のビーム100,200は部分的に重なってもよい。
【0015】
HAPS10,20の中継通信局はそれぞれ、地上又は海上に設置された中継局であるフィーダ局(ゲートウェイ)70を介して、移動通信網80のコアネットワークに接続されている。HAPS10,20とフィーダ局70との間の通信は、マイクロ波などの電波による無線通信で行ってもよいし、レーザ光などを用いた光通信で行ってもよい。
【0016】
HAPS10,20はそれぞれ、内部に組み込まれたコンピュータ等で構成された制御部が制御プログラムを実行することにより、自身の飛行移動や中継通信局での処理を自律制御してもよい。例えば、HAPS10,20はそれぞれ、自身の現在位置情報(例えばGPS(グローバル・ポジショニング・システム)位置情報)、予め記憶した位置制御情報(例えば、飛行スケジュール情報)、周辺に位置する他のHAPSの位置情報などを取得し、それらの情報に基づいて飛行移動や中継通信局での処理を自律制御してもよい。
【0017】
また、HAPS10,20それぞれの飛行移動や中継通信局での処理は、移動通信網80の通信センター等に設けられた管理装置としての遠隔制御装置85によって制御できるようにしてもよい。HAPS10,20と遠隔制御装置85との間の通信は、地上又は海上の施設であるHAPS制御用通信局75によって行う。HAPS制御用通信局75は、複数のHAPS10,20に対応できるように無指向性アンテナを用いたものが好ましいが、指向性アンテナを用いてもよい。このようなHAPS制御用通信局75としては、GCS(Ground Control System)(地上制御局)を利用することができる。
【0018】
HAPS10,20とHAPS制御用通信局75との間の無線通信は、HAPS10,20の飛行移動やセル最適化などを制御するための通信を含むため、高い信頼性と低遅延性が求められる。したがって、HAPS10,20とHAPS制御用通信局75との間の無線通信には、HAPS10,20とフィーダ局70との間で行われる移動通信のフィーダリンクを介した無線通信で用いる周波数帯域よりも低い周波数帯域を用いるのが好ましい。例えば、HAPS10,20とフィーダ局70との間で行われる無線通信にギガヘルツ(GHz)帯の周波数帯域を用いる場合、HAPS10,20とHAPS制御用通信局75との間の無線通信にはメガヘルツ(MHz)帯の周波数帯域を用いる。
【0019】
また、遠隔制御装置85によって制御する場合、HAPS10,20は、遠隔制御装置85からの制御情報を受信できるように制御用通信端末装置(例えば、移動通信モジュール)が組み込まれ、遠隔制御装置85から識別できるように端末識別情報(例えば、IPアドレス、電話番号など)が割り当てられるようにしてもよい。制御用通信端末装置の識別には通信インターフェースのMACアドレスを用いてもよい。また、HAPS10,20はそれぞれ、自身又は周辺のHAPSの飛行移動や中継通信局での処理に関する情報や各種センサなどで取得した観測データなどの情報を、遠隔制御装置85等の所定の送信先に送信するようにしてもよい。
【0020】
セル形成目標空域40では、HAPS10,20のビーム100,200が通過していない領域(3次元セル41,42が形成されない領域)が発生するおそれがある。この領域を補完するため、
図1の構成例のように、地上側又は海上側から上方に向かって放射状のビーム300を形成して3次元セル43を形成してATG(Air To Ground)接続を行う基地局(以下「ATG局」という。)30を備えてもよい。
【0021】
また、ATG局30を用いずに、HAPS10,20の位置やビーム100,200の発散角(ビーム幅)等を調整することにより、HAPS10,20の中継通信局が、セル形成目標空域40に3次元セルがくまなく形成されるように、セル形成目標空域40の上端面の全体をカバーするビーム100,200を形成してもよい。
【0022】
なお、前記HAPS10,20で形成する3次元セルは、地上又は海上に位置する端末装置との間でも通信できるよう地面又は海面に達するように形成してもよい。
【0023】
図2は、他の実施形態に係る通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図である。
なお、
図2において、前述の
図1と共通する部分については同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0024】
図2の実施形態では、HAPS10と移動通信網80のコアネットワークとの間の通信を、フィーダ局70及び低軌道の人工衛星72を介して行っている。この場合、人工衛星72とフィーダ局70との間の通信は、マイクロ波などの電波による無線通信で行ってもよいし、レーザ光などを用いた光通信で行ってもよい。また、HAPS10と人工衛星72との間の通信については、マイクロ波などの電波による無線通信で行っているが、レーザ光などを用いた光通信で行ってもよい。
【0025】
図3は、実施形態の通信システムに用いられるHAPSの一例を示す斜視図である。
図3のHAPS10は、ソーラープレーンタイプのHAPSであり、主翼部101と、主翼部101の短手方向の一端縁部にバス動力系の推進装置としての複数のモータ駆動のプロペラ103とを備える。主翼部101の上面には、太陽光発電機能を有する発電装置としての太陽光発電パネル(以下「ソーラーパネル」という。)102が設けられている。また、主翼部101の下面の長手方向の2箇所には、板状の連結部104を介して、ミッション機器が収容される複数の機器収容部としてのポッド105が連結されている。このミッション機器は、主翼部101の下部へ内蔵したり、主翼部101の下部にポッド105を直接取り付けてその内部に格納されたりしてもよい。各ポッド105の内部には、ミッション機器としての中継通信局110と、蓄電装置としてのバッテリー106とが収容されている。バッテリー106は、主翼部101に内蔵してもよい。また、各ポッド105の下面側には離発着時に使用される車輪107が設けられている。ソーラーパネル102で発電された電力はバッテリー106に蓄電され、バッテリー106から供給される電力により、プロペラ103のモータが回転駆動され、中継通信局110による無線中継処理が実行される。
【0026】
ソーラープレーンタイプのHAPS10は、例えば旋回飛行を行ったり8の字飛行を行ったりすることにより揚力で浮揚し、所定の高度で水平方向の所定の範囲に滞在するように飛行することができる。なお、ソーラープレーンタイプのHAPS10は、プロペラ103が回転駆動されていないときは、グライダーのように飛ぶこともできる。例えば、昼間などのソーラーパネル102の発電によってバッテリー106の電力が余っているときに高い位置に上昇し、夜間などのソーラーパネル102で発電できないときにバッテリー106からモータへの給電を停止してグライダーのように飛ぶことができる。
【0027】
HAPS10は、無線送電装置としてのマイクロ波送電装置から送出される高出力の給電用マイクロ波ビームなどのエネルギービームを受けて電力を生じさせる無線受電装置を備えていてもよい。
【0028】
また、HAPS10は、例えば
図3に示すように、他のHAPSや人工衛星との間でマイクロ波などの電波による無線通信に用いられる通信部としての無線通信アンテナ装置140を備えてもよい。他のHAPSや人工衛星との無線通信に用いられる通信部は、マイクロ波などの電波による無線通信を行うものに限らず、光通信などの他の方式のものでもよい。
【0029】
図4は、実施形態の通信システムに用いられるHAPSの他の例を示す斜視図である。
図4のHAPS20は、無人飛行船タイプのHAPSであり、ペイロードが大きいため大容量のバッテリーを搭載することができる。HAPS20は、浮力で浮揚するためのヘリウムガス等の気体が充填された飛行船本体201と、バス動力系の推進装置としてのモータ駆動のプロペラ202と、ミッション機器が収容される機器収容部203とを備える。機器収容部203の内部には、中継通信局210とバッテリー204とが収容されている。バッテリー204から供給される電力により、プロペラ202のモータが回転駆動され、中継通信局210による無線中継処理が実行される。
【0030】
無人飛行船タイプのHAPS20にも、マイクロ波送電装置から送出される高出力の給電用マイクロ波ビームなどのエネルギービームを受けて電力を生じさせる無線受電装置が備わっていてもよい。
【0031】
なお、飛行船本体201の上面に、太陽光発電機能を有するソーラーパネルを設け、ソーラーパネルで発電された電力をバッテリー204に蓄電するようにしてもよい。
【0032】
また、無人飛行船タイプのHAPS20は、例えば
図4に示すように、他のHAPSや人工衛星との間のマイクロ波などの電波による無線通信に用いられる通信部としての3次元対応指向性の無線通信アンテナ装置140を備えてもよい。他のHAPSや人工衛星と無線通信に用いられる通信部は、マイクロ波などの電波による無線通信を行うものに限らず、光通信などの他の方式のものであってもよい。
【0033】
図5は、本実施形態のHAPS10,20の一構成例を示すブロック図である。なお、
図5では、本実施形態の中継通信局110,210が基地局タイプの無線中継局中継通信局の例を示しているが、中継通信局110,210はレピータタイプの中継通信局であってもよい。
【0034】
図5において、HAPS10,20はそれぞれ、3Dセル形成アンテナ部111と、送受信部112と、フィード用アンテナ部113と、送受信部114と、監視制御部116と、電源部117と、モデム部118と、基地局処理部119と、制御用アンテナ部120と、送受信部121と、中継通信局110,210を制御する制御部としての信号情報処理部122と、ビーム制御部123とを備える。更に、HAPS10,20はそれぞれ、HAPS間通信などに用いる外部通信部125と、ビーム制御部126とを備える。
【0035】
3Dセル形成アンテナ部111は、セル形成目標空域40に向けて放射状のビーム100,200を形成するアンテナを有し、端末装置と通信可能な3次元セル41,42を形成する。送受信部112は、3Dセル形成アンテナ部111とともに無線通信装置を構成し、送受共用器(DUP:DUPlexer)や増幅器などを有し、3Dセル形成アンテナ部111を介して、3次元セル41,42に在圏する端末装置に無線信号を送信したり端末装置から無線信号を受信したりする。
【0036】
フィード用アンテナ部113は、地上又は海上のフィーダ局70と無線通信するための指向性アンテナを有する。送受信部114は、フィード用アンテナ部113とともに他の無線通信装置を構成し、送受共用器(DUP:DUPlexer)や増幅器などを有し、フィード用アンテナ部113を介して、フィーダ局70に無線信号を送信したりフィーダ局70から無線信号を受信したりするフィーダリンクを構築する。
【0037】
監視制御部116は、例えばCPU及びメモリ等で構成され、予め組み込まれたプログラムを実行することにより、HAPS10,20内の主に飛行体部分の動作処理状況を監視したり制御したりする。例えば、監視制御部116は、制御プログラムを実行することにより、プロペラ103,202を駆動するモータ駆動部141を制御して、HAPS10,20を目標位置へ移動させ、また、目標位置近辺に留まるように制御する。
【0038】
電源部117は、バッテリー106,204から出力された電力をHAPS10,20内の各部に供給する。電源部117は、無線受電装置により給電用マイクロ波ビームを変換した電力を、バッテリー106,204に蓄電させる機能を有していてもよい。また、電源部117は、太陽光発電パネル等で発電した電力や、外部から有線等で給電される電力をバッテリー106,204に蓄電させる機能を有してもよい。
【0039】
モデム部118は、例えば、フィーダ局70からフィード用アンテナ部113及び送受信部114を介して受信した受信信号に対して復調処理及び復号処理を実行し、基地局処理部119側に出力するデータ信号を生成する。また、モデム部118は、基地局処理部119側から受けたデータ信号に対して符号化処理及び変調処理を実行し、フィード用アンテナ部113及び送受信部114を介してフィーダ局70に送信する送信信号を生成する。
【0040】
基地局処理部119は、例えば、LTE/LTE−Advancedの標準規格に準拠した方式に基づいてベースバンド処理を行う機能を有する。基地局処理部119は、第5世代又は第5世代以降の次々世代等の将来の移動通信の標準規格に準拠する方式で処理するものであってもよい。
【0041】
また、基地局処理部119は、例えば、3次元セル41,42に在圏する端末装置から3Dセル形成アンテナ部111及び送受信部112を介して受信した受信信号に対して復調処理及び復号処理を実行し、モデム部118側に出力するデータ信号を生成する。また、基地局処理部119は、モデム部118側から受けたデータ信号に対して符号化処理及び変調処理を実行し、3Dセル形成アンテナ部111及び送受信部112を介して3次元セル41,42の端末装置に送信する送信信号を生成する。
【0042】
中継通信局110、210を介した端末装置との無線通信の上りリンク及び下りリンクの複信方式は、特定の方式に限定されず、例えば、時分割複信(Time Division Duplex:TDD)方式でもよいし、周波数分割複信(Frequency Division Duplex:FDD)方式でもよい。また、中継通信局110、210を介した端末装置との無線通信のアクセス方式は、特定の方式に限定されず、例えば、FDMA(Frequency Division Multiple Access)方式、TDMA(Time Division Multiple Access)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、又は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)であってもよい。また、前記無線通信には、ダイバーシティ・コーディング、送信ビームフォーミング、空間分割多重化(SDM:Spatial Division Multiplexing)等の機能を有し、送受信両方で複数のアンテナを同時に利用することにより、単位周波数当たりの伝送容量を増やすことができるMIMO(多入力多出力:Multi−Input and Multi−Output)技術を用いてもよい。また、前記MIMO技術は、1つの基地局が1つの端末装置と同一時刻・同一周波数で複数の信号を送信するSU−MIMO(Single−User MIMO)技術でもよいし、1つの基地局が複数の異なる通信端末装置に同一時刻・同一周波数で信号を送信又は複数の異なる基地局が1つの端末装置に同一時刻・同一周波数で信号を送信するMU−MIMO(Multi−User MIMO)技術であってもよい。
【0043】
制御用アンテナ部120は、移動通信網80の通信センター等に設けられた遠隔制御装置85と通信するために、地上又は海上の施設であるHAPS制御用通信局75との間で無線通信を行うための指向性アンテナを有する。HAPS制御用通信局75との間の無線通信は、上述したとおり、HAPS10,20の飛行移動を制御するための通信を含むため、高い信頼性と低遅延性が求められる。したがって、制御用アンテナ部120は、端末装置のデータ通信をフィーダ局70との間で行うフィード用アンテナ部113が用いる周波数帯域よりも低い周波数帯域を用いて無線通信を行うものが好ましい。例えば、フィード用アンテナ部113がギガヘルツ帯(GHz)の周波数帯域を用いる場合、制御用アンテナ部120はメガヘルツ帯(MHz)の周波数帯域を用いる。
【0044】
送受信部121は、制御用アンテナ部120とともに無線通信部を構成し、送受共用器(DUP:DUPlexer)や増幅器などを有し、制御用アンテナ部120を介して、地上側又は海上側のHAPS制御用通信局75に無線信号を送信したりHAPS制御用通信局75から無線信号を受信したりする。
【0045】
信号情報処理部122は、遠隔制御装置85からHAPS制御用通信局75により制御用アンテナ部120及び送受信部121を介して受信した受信信号に対して復調処理及び復号処理を実行し、受信信号に係るデータ信号を生成する。また、信号情報処理部122は、監視制御部116、基地局処理部119などから受けたデータ信号に対して符号化処理及び変調処理を実行し、制御用アンテナ部120及び送受信部121を介してHAPS制御用通信局75に送信する送信信号を生成する。また、信号情報処理部122は、所定のプログラムを実行して、所定の目的に応じた情報処理も行う。具体的な情報処理の内容については後述する。
【0046】
ビーム制御部123は、信号情報処理部の指示に従って、3Dセル形成アンテナ部111の電波のビーム方向や強度を制御する。この制御により、3Dセル形成アンテナ部111によって形成される3次元セル41,42の位置やサイズを変化させることができる。
【0047】
外部通信部125は、マイクロ波等の電波により周辺の他のHAPS10,20や人工衛星72と通信する。この通信により、ドローン60等の端末装置と移動通信網80との間の無線通信を動的に中継するダイナミックルーティングが可能になるとともに、いずれかのHAPSが故障したときに他のHAPSがバックアップして無線中継することにより移動通信システムのロバスト性を高めることができる。
【0048】
ビーム制御部126は、HAPS間通信や人工衛星との通信に用いる電波のビーム方向や強度を制御したり、周辺の他のHAPS(中継通信局)との間の相対的な位置の変化に応じて無線通信を行う他のHAPS(中継通信局)を切り替えるように制御したりする。この制御は、例えば、HAPS自身の位置及び姿勢、周辺のHAPSの位置などに基づいて行ってもよい。HAPS自身の位置及び姿勢の情報は、そのHAPSに組み込んだGPS受信装置、ジャイロセンサ、加速度センサなどの出力に基づいて取得し、周辺のHAPSの位置の情報は、移動通信網80に設けた遠隔制御装置85又は他のHAPS管理サーバから取得してもよい。
【0049】
本実施形態のHAPS10,20は、マイクロ波受電部等の無線受電装置で受電した電力をバッテリー106,204で一時蓄電する構成を採用した場合、バッテリー106,204は必ずしも必要であるわけではない。例えば、給電用マイクロ波ビームをレクテナ部で常時受けることができるシステムであれば、無線受電装置で受電した電力をバス動力系やミッション系の電力消費機器へ直接的に供給する構成としてもよい。また、給電用マイクロ波ビームをレクテナ部で常時受けるシステムでなくとも、ソーラーパネル102等の発電装置との併用により、発電装置が発電しない期間の電力をマイクロ波受電部等の無線受電装置で受電した電力で賄うようにすれば、バッテリー106,204は必ずしも必要であるわけではない。なお、HAPS10のように揚力で浮揚するタイプの飛行体において、バス動力系へ一時的に電力を供給できない状況になっても、その間は位置エネルギーを利用したグライダーモードに移行するなどして、飛行を維持することができる。
【0050】
〔情報処理例1〕
次に、本実施形態の中継通信局110,210におけるセル最適化処理の制御の一例(以下、本例を「情報処理例1」という。)について説明する。
本情報処理例1は、中継通信局110,210によって形成される3次元セル41,42のトラヒックを分析し、当該3次元セル41,42を最適化するセル最適化処理を行うものである。本情報処理例1では、フィード用アンテナ部113からフィーダ局70を介して移動通信網80のコアネットワークへデータ送信をすることなく、セル最適化処理を行うことができる。したがって、移動通信網80のコアネットワークの通信負荷を高めずに、例えば、当該HAPS10,20によって形成される3次元セル41,42内の端末装置の通信品質を改善することができる。
【0051】
本情報処理例1に係るセル最適化処理の制御の具体例としては、当該HAPS10,20によって形成される3次元セル41,42内の端末装置の通信品質が改善されるように、3Dセル形成アンテナ部111を制御して、3次元セル41,42の位置及びサイズの少なくとも一方を調節するセル調節処理が挙げられる。なお、セル最適化処理は、3次元セル41,42内に在圏する端末装置との間のトラヒックを特定し、端末装置の通信品質を改善できる処理であれば、前記セル調整処理に限られない。
【0052】
図6は、本情報処理例1に係るセル最適化処理の制御の一例を示すシーケンス図である。
ドローン60に組み込まれた通信端末モジュールや、飛行機65の中でユーザが使用するユーザ装置あるいは地上でユーザが使用するユーザ装置などの端末装置は、
図6に示すように、基地局型のHAPS10,20を経由し、フィーダ局70を介して移動通信網80のコアネットワークに接続され、通信情報をやりとりすることができる。
【0053】
本情報処理例1において、HAPS10,20に搭載されている信号情報処理部122は、所定のトラヒック分析開始条件が満たされると、トラヒック分析処理を開始する(S1)。トラヒック分析開始条件は、例えば、あらかじめ設定された日時や所定の時間間隔等により分析開始タイミングが到来したという条件、HAPS10,20を通じて端末装置がやりとりするデータ量が規定量を超えたという条件、地上側又は海上側の遠隔制御装置85から分析開始指示を受けたという条件など、任意に設定することができる。
【0054】
トラヒック分析処理を開始すると(S1)、HAPS10,20の信号情報処理部122は、3次元セル41,42に在圏している端末装置に対し、3Dセル形成アンテナ部111からトラヒック分析用の情報取得要求を送信する。この情報取得要求を受信した各端末装置は、情報取得要求に係る所定のトラヒック分析用情報としてのフィードバック情報を送信し、これを3Dセル形成アンテナ部111で受信する。3Dセル形成アンテナ部111で受信された各端末装置のフィードバック情報は、送受信部112及び基地局処理部119を介して信号情報処理部122に取得される(S3)。
【0055】
信号情報処理部122は、取得した各端末装置のフィードバック情報を、送受信部121及び制御用アンテナ部120から、HAPS制御用通信局75へ送信する(S4)。そして、HAPS制御用通信局75へ送信されたフィードバック情報は、遠隔制御装置85に受信される。遠隔制御装置85は、受信したフィードバック情報に基づき、当該HAPS10,20の3次元セル41,42のトラヒックを分析するトラヒック分析処理を行う(S4)。
【0056】
トラヒック分析処理では、例えば、フィードバック情報として、対象となるHAPS10,20の現在位置情報及び移動方向情報、当該HAPS10,20の3次元セル41,42に在圏する各端末装置の位置情報及び使用帯域情報を取得し、3次元セル41,42内のどの位置で、どの使用帯域が、どのくらいの数の端末装置によって使用されているかを分析する。そして、所定のセル最適化実行条件を満たすか否かを判断し、所定のセル最適化実行条件を満たす場合には、3次元セル41,42内に在圏する端末装置の通信品質を改善させるための制御情報を生成する。
【0057】
セル最適化実行条件は、トラヒック分析の結果に基づき、端末装置の通信品質を改善させる必要があるか否かを判断するための条件であり、任意に設定することができる。セル最適化実行条件としては、例えば、3次元セル41,42内における一部の限られた範囲内において所定周波数帯域で通信を行う端末装置の数が規定数を超えているという条件が挙げられる。
【0058】
遠隔制御装置85は、このようなセル最適化実行条件を満たしたら、セル最適化制御を実行する必要があると判断して、セル最適化制御のための制御情報を生成する。このセル最適化制御情報は、遠隔制御装置85からHAPS制御用通信局75によりHAPS10,20の制御用アンテナ部120及び送受信部121を介してHAPS10,20の信号情報処理部122へ送信される(S6)。
【0059】
なお、トラヒック分析処理及びその分析結果に基づくセル最適化制御のための制御情報の生成は、移動通信網80に設けられたEPC(Evolved Packet Core)装置が、遠隔制御装置85を介して受信したフィードバック情報に基づいて行ってもよい。EPC装置は、移動通信のコアネットワーク装置として機能するものであり、例えば、端末装置の接続や切断、端末装置の基地局間の移動制御、端末装置の位置管理と呼出しを行うMME(Mobile Management Entity)機能、加入者認証やセキュリティの管理を行うHSS(Home Subscriber Server)機能、IPアドレス管理と伝送品質制御を行うP−GW(Packet Data Network Gateway)機能、IPパケット転送を行うS−GW(Serving Gateway)機能などを提供する。EPC装置は、3GPPで規定されるLTEコアネットワークに必要な機能を単一のハードウェアプラットフォーム上で実行できる。
【0060】
HAPS10,20の信号情報処理部122は、受け取ったセル最適化制御情報に従って、セル最適化制御を実行する(S7)。具体的には、3次元セル41,42内に在圏する端末装置の通信品質が改善されるように、3次元セル41,42の位置及びサイズの少なくとも一方を変化させるべく、各種の通信パラメータを変更する。
【0061】
3次元セル41,42の位置を変化させることで、当該3次元セル41,42内に在圏していた端末装置の一部が圏外となったり、また当該3次元セル41,42の圏外にある端末装置の一部が圏内となったりする。圏外となる端末装置の数が圏内となる端末装置の数よりも多くなるように、3次元セル41,42の位置を変化させることで、当該3次元セル41,42内に在圏する端末装置の数を減らすことができ、端末装置の通信品質を改善することができる。
【0062】
また、3次元セル41,42のサイズを変化させる場合も、当該3次元セル41,42内に在圏していた端末装置の一部が圏外となったり、また当該3次元セル41,42の圏外にある端末装置の一部が圏内となったりする。したがって、圏外となる端末装置の数が圏内となる端末装置の数よりも多くなるように、3次元セル41,42のサイズを変化させることで、当該3次元セル41,42内に在圏する端末装置の数を減らすことができ、端末装置の通信品質を改善することができる。更に、3次元セル41,42のサイズを小さくする場合には、3次元セル41,42を形成する3Dセル形成アンテナ部111の電波強度が高まり、端末装置の通信品質が改善する。
【0063】
以下、3次元セル41,42内において所定周波数帯域で通信を行う端末装置の数が規定数を超えている一部の領域(以下「ターゲット領域」という。)に絞り込むように、3次元セル41,42の位置及びサイズを変更する例について説明する。
【0064】
本実施形態における3Dセル形成アンテナ部111には、指向性を有するビームを形成可能なアンテナが用いられている。例えば、複数の無指向性アンテナ(オムニアンテナ)からなるアンテナエレメントを配列したアレイアンテナを用い、各アンテナエレメントの信号位相を制御して指向性をもつビームを形成するようなものであってもよい。また、例えば、ホーンアンテナのような単体のアンテナで指向性をもつビームが形成される指向性アンテナであってもよい。また、例えば、複数の指向性アンテナからなるアンテナエレメントを配列したアレイアンテナを用い、各アンテナエレメントの信号位相を制御して指向性をもつビームを形成するようなものであってもよい。ここでは、3Dセル形成アンテナ部111として、複数の無指向性アンテナからなるアンテナエレメントが配列されたアレイアンテナを用いる例で説明する。
【0065】
本情報処理例1の信号情報処理部122は、ビーム制御部123により3Dセル形成アンテナ部111で形成されるビームを制御することで、3次元セル41,42の位置及びサイズを変化させる。具体例としては、ビーム制御部123は、信号情報処理部122の指示の下、3Dセル形成アンテナ部111を用いて予め定めた方向にビームを向けて送信及び受信を行うビームフォーミング機能を備えている。ビームフォーミング機能で用いることができる複数種類のプリコーディングの候補データは、HAPS10,20の記憶部に記憶されている。
【0066】
ここで、プリコーディングによるビームフォーミング機能とは、特定の方向へ送信されるビーム又は特定の方向からのビームを受信するように、3Dセル形成アンテナ部111(アレイアンテナ)の各アンテナエレメントの信号位相の組(プリコーディング)を複数種類(N個)用意しておき、その中から一つを選択してプリコーディング制御を行い、ビームを制御する機能である。本情報処理例1では、遠隔制御装置85が、トラヒック分析処理において、トラヒック分析の結果に基づき、HAPS10,20の3Dセル形成アンテナ部111に対するターゲット領域の相対位置(3Dセル形成アンテナ部111に対するターゲット領域の相対方向や相対距離など)を特定する。遠隔制御装置85は、特定したターゲット領域の相対位置を含むセル最適化制御信号を、HAPS制御用通信局75からHAPS10,20の制御用アンテナ部120及び送受信部121を介してHAPS10,20の信号情報処理部122へ送信する。HAPS10,20の信号情報処理部122は、受け取ったセル最適化制御情報に従ってセル最適化制御を実行し、そのターゲット領域の相対位置に対して最適となるプリコーディングを選択して、選択したプリコーディングをビーム制御部123へ指示し、ビーム制御部123は、ターゲット領域にビームが向くようにビームを制御する。
【0067】
図7は、本情報処理例1における3Dセル形成アンテナ部111で形成される3次元セル41,42の位置及びサイズを変更するためのビーム制御を含む一連のセル最適化処理の制御の流れを示すフローチャートである。
本情報処理例1では、上述したとおり、まず、遠隔制御装置85は、HAPS10,20からHAPS10,20の現在位置情報を取得し、HAPS10,20の現在位置を特定する(S11)。また、遠隔制御装置85は、HAPS10,20からHAPS10,20の移動方向(姿勢)の情報を取得し、HAPS10,20の移動方向を特定する(S12)。HAPS10,20の位置及び姿勢の情報は、そのHAPSに組み込んだGPS受信装置、ジャイロセンサ、加速度センサなどの出力に基づいて取得され、制御用アンテナ部120及び送受信部121からHAPS制御用通信局75を介して遠隔制御装置85へ送信される。
【0068】
続いて、遠隔制御装置85は、特定したHAPS10,20の位置及び移動方向(姿勢)と上述したトラヒック分析の結果に基づき、HAPS10,20の3Dセル形成アンテナ部111に対するターゲット領域の相対位置(HAPS10,20の3Dセル形成アンテナ部111に対するターゲット領域の相対方向や相対距離など)を特定する(S13)。3Dセル形成アンテナ部111とターゲット領域との距離については、HAPS10,20の現在位置と、ターゲット領域の相対位置とから算出することができる。また、3Dセル形成アンテナ部111から見たターゲット領域の方向については、HAPS10,20の移動方向から3Dセル形成アンテナ部111が向いている方向(方角)を特定したうえで、HAPS10,20の現在位置とターゲット領域の相対位置とから算出することができる。
【0069】
このようにしてHAPS10,20から見たターゲット領域の方向と距離を特定したら、3Dセル形成アンテナ部111に対するターゲット領域の相対位置が特定されるので、遠隔制御装置85は、特定したターゲット領域の相対位置を含むセル最適化制御信号を、HAPS制御用通信局75からHAPS10,20の制御用アンテナ部120及び送受信部121を介してHAPS10,20の信号情報処理部122へ送信する(S14)。
【0070】
HAPS10,20の信号情報処理部122は、セル最適化制御信号を受信したら(S15)、受信したセル最適化制御情報に従ってセル最適化制御を実行し、記憶部に記憶されている複数種類のプリコーディング候補の中から、3Dセル形成アンテナ部111とターゲット領域との間の電波のやりとりに最適なプリコーディング候補を選択する(S16)。具体的には、3Dセル形成アンテナ部111に対するターゲット領域の相対位置に基づき、3Dセル形成アンテナ部111のビームをターゲット領域に向かせるプリコーディング候補を選択する。
【0071】
本情報処理例1におけるプリコーディング候補には、方向と幅が異なるビームを形成するもので構成されている。そのため、HAPS10,20から見たターゲット領域の方向に応じてビーム方向を特定し、ターゲット領域の距離に応じてビーム幅を特定し、特定したビーム方向及びビーム幅に適合するプリコーディング候補を選択する。なお、ターゲット領域の距離が長いほど広いビーム幅を選択するようにしてもよい。ターゲット領域の距離が長いほど、HAPS10,20の移動方向の僅かな変化(3Dセル形成アンテナ部111の向きの僅かな変化)で、ターゲット領域がビーム範囲から外れやすいので、ターゲット領域の距離が長いほど広いビーム幅を選択することで、より安定した無線通信を実現しやすい。逆に、ターゲット領域の距離が長いほど狭いビーム幅を選択するようにしてもよい。ビーム幅を狭くすることで、より遠いターゲット領域との間の無線通信が可能となる。
【0072】
HAPS10,20の信号情報処理部122によりプリコーディング候補が選択されたら、そのプリコーディング候補データはビーム制御部123へ送られる。ビーム制御部123は、そのプリコーディング候補データに従って3Dセル形成アンテナ部111を制御し、3Dセル形成アンテナ部111は、そのプリコーディング候補データに応じて3Dセル形成アンテナ部111を構成するアレイアンテナの各アンテナエレメントの信号位相を制御するプリコーディング制御を実施する(S17)。これにより、3Dセル形成アンテナ部111のビームはターゲット領域に向けられ、3Dセル形成アンテナ部111とターゲット領域とを介して高利得で安定した無線通信が実現され、その結果、通信トラヒックの減少を実現できる。
【0073】
その後、信号情報処理部122及びビーム制御部123は、処理が終了するまで(S23のYes)、ターゲット領域の方向及び距離の変化に応じて、3Dセル形成アンテナ部111のビームをターゲット領域に向かせるプリコーディング制御を実行する(S18〜S22)。
【0074】
具体的には、所定のタイミングで、自己のHAPS10,20の現在位置情報を取得し、これによりHAPS10,20の現在位置を特定する(S18)。また、自己のHAPS10,20の移動方向の情報を取得し、これによりHAPS10,20の移動方向を特定する(S19)。その後、信号情報処理部122は、現在のHAPS10,20の位置及び移動方向と、遠隔制御装置から受信したセル最適化情報から得られるターゲット領域の位置情報とを用いて、HAPS10,20から見たターゲット領域の方向と距離を特定する処理を行う(S20)。そして、信号情報処理部122は、これにより特定される3Dセル形成アンテナ部111に対するターゲット領域の相対位置に応じて、プリコーディング候補を選択し(S21)、そのプリコーディング候補データをビーム制御部123へ送る。ビーム制御部123は、そのプリコーディング候補データに従ってプリコーディング制御を実施する(S22)。
【0075】
これにより、HAPS10,20の移動に伴ってターゲット領域の相対位置(方向と距離)が変化しても、これに追従して3Dセル形成アンテナ部111のビームをターゲット領域に向かせるようにすることができる。この制御を行うタイミングは、任意に設定することができるが、ターゲット領域の相対位置の変化に応じて3Dセル形成アンテナ部111のビームを精度良く追従させるには、より高い頻度に設定するのが好ましい。
【0076】
本情報処理例1において、3Dセル形成アンテナ部111のビームの方向の変化は、例えば、3Dセル形成アンテナ部111を支持する支持台を駆動させ、3Dセル形成アンテナ部111が向く方向を変化させることにより、実現してもよい。
【0077】
また、本情報処理例1では、次のトラヒック分析開始条件が満たされるまでの間は、ターゲット領域の絶対位置が固定され、HAPS10,20の移動に伴ってHAPS10,20に対するターゲット領域の相対位置(方向と距離)が変化するが、ターゲット領域の相対位置の変化に応じてビームが追従するように制御される。この制御は、例えば、端末装置が特定の地域に一時的に集中するような場合に有効である。
【0078】
一方で、3Dセル形成アンテナ部111のビームを追従させず、HAPS10,20の移動に伴って3次元セル41,42の領域が刻々と移動するようにしてもよい。この場合、HAPS10,20の移動に伴って3次元セル41,42に在圏する端末装置が刻々と入れ替わることになるので、3次元セル41,42のトラヒックが刻々と変化する。よって、トラヒック分析開始条件を満たす時間間隔を短くし、トラヒック分析処理及びセル最適化処理を短い時間間隔で繰り返し実施することが好ましい。
【0079】
また、本情報処理例1では、3Dセル形成アンテナ部111で単一のビームを形成する例であるが、3Dセル形成アンテナ部111で複数のビームを形成し、複数の3次元セル41,42を形成することも可能である。この場合には、複数の3次元セル41,42の位置及びサイズの少なくとも一方を変更することにより、複数の3次元セル41,42の全体的な端末装置の通信品質を改善するようにしてもよい。例えば、3Dセル形成アンテナ部111の複数ビームによって形成される複数の3次元セル41,42間で、接続される端末装置の数の差が少なくなるように、3次元セル41,42の位置及びサイズの少なくとも一方を変更する。
【0080】
具体的には、遠隔制御装置85は、上述したトラヒック分析処理において、3Dセル形成アンテナ部111によって形成される複数の3次元セル41,42の全体において、どの位置で、どの使用帯域が、どのくらいの数の端末装置によって使用されているかを分析する。そして、遠隔制御装置85は、このトラヒック分析の結果に基づき、各3次元セル41,42の端末装置の接続数が均一化するように、各3次元セル41,42を形成する領域(ターゲット領域)を特定する。すなわち、HAPS10,20の3Dセル形成アンテナ部111に対する各ターゲット領域の相対位置を特定する。このようにして各ターゲット領域の相対位置を特定したら、遠隔制御装置85は、特定した各ターゲット領域の相対位置を含むセル最適化制御信号を、HAPS制御用通信局75からHAPS10,20の制御用アンテナ部120及び送受信部121を介してHAPS10,20へ送信する。HAPS10,20の信号情報処理部122は、受け取ったセル最適化制御情報に従ってセル最適化制御を実行し、各ターゲット領域の相対位置に対して最適となるプリコーディングを選択して、これらのターゲット領域にビームが向くようにビームを制御する。
【0081】
〔情報処理例2〕
次に、本実施形態におけるセル最適化処理の制御の他の例(以下、本例を「情報処理例2」という。)について説明する。
本情報処理例2も、中継通信局110,210によって形成される3次元セル41,42のトラヒックを分析し、当該3次元セル41,42を最適化するセル最適化処理を行うものである。ただし、上述した情報処理例1では、一のHAPS10,20に搭載されている3Dセル形成アンテナ部111によって形成される3次元セル41,42を最適化する例について説明したが、本情報処理例2は、複数のHAPS10,20が互いに連携して、複数のHAPS10,20によって形成される複数の3次元セル41,42を全体的に最適化する例である。
【0082】
具体的には、本情報処理例2では、複数のHAPS10,20に搭載されている3Dセル形成アンテナ部111によって形成される複数の3次元セル41,42間で、接続される端末装置の数の差が少なくなるように、3次元セル41,42の位置及びサイズの少なくとも一方を変更する。このとき、複数のHAPS10,20による連携制御は、遠隔制御装置85によって管理される。
【0083】
図8は、本情報処理例2において、複数のHAPS10,20で複数の3次元セル41,42を形成する場合におけるセル最適化処理の制御の一例を示すシーケンス図である。なお、
図8のシーケンス図では、
図6に示されていたような各HAPS10,20とフィーダ局70及び端末装置との通信については省略されている。
【0084】
本情報処理例2においては、地上側又は海上側の遠隔制御装置85において所定のトラヒック分析開始条件が満たされたか否かを判断する。遠隔制御装置85は、所定のトラヒック分析開始条件が満たされてトラヒック分析処理を開始すると(S31)、対応する複数のHAPS10,20それぞれに対し、HAPS制御用通信局75を介して情報取得要求を送信する。この情報取得要求を受信した各HAPS10,20の信号情報処理部122は、上述の情報処理例1と同様、それぞれの3次元セル41,42に在圏している端末装置に対し、3Dセル形成アンテナ部111からトラヒック分析用の情報取得要求を送信し、各端末装置からトラヒック分析用のフィードバック情報を取得する(S32)。
【0085】
各端末装置からトラヒック分析用のフィードバック情報を取得した各HAPS10,20の信号情報処理部122は、更に、自己のHAPS10,20の現在位置情報及び移動方向情報を取得する。そして、自己のHAPS10,20の現在位置情報及び移動方向情報、自己のHAPS10,20の3次元セル41,42に在圏する各端末装置の位置情報及び使用帯域情報を、フィードバック情報として、制御用アンテナ部120及び送受信部121からHAPS制御用通信局75を介して遠隔制御装置85へ送信する(S33)。
【0086】
このようにして、遠隔制御装置85は、複数のHAPS10,20の現在位置情報及び移動方向情報や、当該複数のHAPS10,20によって形成される複数の3次元セル41,42の全体にわたる各端末装置のフィードバック情報を取得する。その後、遠隔制御装置85は、これらの3次元セル41,42のトラヒックを分析するトラヒック分析処理を行う(S34)。本情報処理例2のトラヒック分析処理では、複数の3次元セル41,42内の全体におけるどの位置で、どの使用帯域が、どのくらいの数の端末装置によって使用されているかを分析する。そして、所定のセル最適化実行条件を満たすか否かを判断し、所定のセル最適化実行条件を満たす場合には、複数の3次元セル41,42において端末装置の通信品質が全体的に改善されるようにするセル最適化制御情報を生成する。
【0087】
セル最適化実行条件は、トラヒック分析の結果に基づき、複数の3次元セル41,42において端末装置の通信品質が全体的に改善させる必要があるか否かを判断するための条件であり、任意に設定することができる。
【0088】
本情報処理例2におけるセル最適化制御情報は、トラヒック分析の結果に基づき、各3次元セル41,42の端末装置の接続数が均一化するように、各3次元セル41,42を形成する領域(ターゲット領域)を特定する情報を含む。すなわち、それぞれのHAPS10,20の3Dセル形成アンテナ部111に対する各ターゲット領域の相対位置を特定する情報を含む。このようにして各ターゲット領域の相対位置を特定したら、それぞれのHAPS10,20に対して、それぞれのターゲット領域の相対位置を含むセル最適化制御情報を、HAPS制御用通信局75を介して送信する(S35)。
【0089】
各HAPS10,20の信号情報処理部122は、受け取ったセル最適化制御情報に従って、セル最適化制御を実行する(S36)。具体的には、各HAPS10,20の信号情報処理部122は、対応するターゲット領域の相対位置に対して最適となるプリコーディングを選択して、このターゲット領域にビームが向くようにビーム制御部123を制御する。
【0090】
なお、本明細書で説明された処理工程、並びに、HAPS10,20等の飛行体に搭載される各種機器等、フィーダ局、遠隔制御装置、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、基地局装置などの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0091】
ハードウェア実装については、実体(例えば、中継通信局、フィーダ局、基地局装置、無線中継局装置、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、遠隔制御装置、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0092】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0093】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。