(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720258
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】電気的なアルミニウム線路をアルミニウム管に接続する方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/02 20060101AFI20200629BHJP
B23K 11/00 20060101ALI20200629BHJP
B21F 15/00 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
H01R43/02 B
B23K11/00 560
B21F15/00 A
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-168515(P2018-168515)
(22)【出願日】2018年9月10日
(65)【公開番号】特開2019-50202(P2019-50202A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2018年11月2日
(31)【優先権主張番号】10 2017 215 970.7
(32)【優先日】2017年9月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518322573
【氏名又は名称】シュトルンク コネクト オートメイテッド ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Strunk Connect automated solutions GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オーラフ シュトルンク
(72)【発明者】
【氏名】ニコ ラングベアク
【審査官】
高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−338330(JP,A)
【文献】
特開2006−190662(JP,A)
【文献】
特開2004−071372(JP,A)
【文献】
特開2003−338349(JP,A)
【文献】
特開2016−162756(JP,A)
【文献】
特開2013−20761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R43/00−43/02
B21F15/00
B23K11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金から成る少なくとも1本のワイヤを有する電気的な線路(1)を、アルミニウムまたは同様のアルミニウム合金から成る接続要素(7)であって、管(4)を有する接続要素(7)に接続する方法であって、
a)前記電気的な線路(1)の、好ましくは絶縁部が取り除かれた領域を前記管(4)内へ挿入する、ステップと、
b)該管(4)を、前記電気的な線路(1)の端部領域(8)が配置された第1の圧搾領域(9)において圧搾し、前記少なくとも1本のワイヤが前記管(4)内で保持されて、該管(4)と前記少なくとも1本のワイヤとの間の相対運動が阻止されるようにする、ステップと、
c)前記管(4)を、前記第1の圧搾領域(9)よりも前記電気的な線路の端部(8)から離間して位置する、前記電気的な線路(1)の第2の圧搾領域(10)において圧搾し、その際前記少なくとも1本のワイヤの横断面の変形と同時に該ワイヤが延伸される、ステップと、
d)前記管(4)を前記少なくとも1本のワイヤに前記第2の圧搾領域(10)において抵抗溶接する、ステップと、
を備える、方法。
【請求項2】
第2の圧搾プロセスを少なくとも2つの溶接電極によって実行することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2の圧搾プロセスと、前記溶接とを同時に行うことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
第1の圧搾プロセスをスウェージング工具によって行うことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2つの部分から成る前記スウェージング工具は、圧搾される前記管(4)を取り囲むことを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記スウェージング工具は、前記第2の圧搾プロセスの間、閉鎖されたままであり、溶接プロセスの終了後にようやく開放されることを特徴とする、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
半径方向で作用する前記第2の圧搾プロセスに、前記第1の圧搾領域(9)から離反する方向の、前記少なくとも1本のワイヤの軸方向の作用を重畳させることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から成る少なくとも1本のワイヤを有する電気的な線路を、アルミニウムまたは同様のアルミニウム合金から成り、管またはスリーブを有する接続要素に接続する方法に関する。
【0002】
特に自動車において電気的な線路を使用するために、銅または銅合金を用いることが公知である。しかし、これらは高い重量を有する。重量ひいては燃料コストを節減するために、たとえば欧州特許第2362491号明細書(EP 2 362 491 B1)から、別の材料から成る接続要素を備えたアルミニウム線路を使用することが公知である。
【0003】
接続要素がたとえば圧着および/またはろう付けによって導体に接続された、自動車における電気接続部が公知である。ある程度の抵抗を有するこの接続部は、基本的に多くの用途にとって十分である。しかし、たとえば電気自動車に用いられるようなたとえば自動車の高電圧領域において、高電流用の電気接続部または大きな横断面を有する接続部を形成しようとする場合、接続部を通って常にまたは負荷変動して高電流が流れると、前述の抵抗によって既に接続要素と線路との間の接続部の許容されない加熱が生じる。
【0004】
したがって、上述の欧州特許第2362491号明細書(EP 2 362 491 B1)において、圧着ステップの他に、これに続く溶接ステップが提案される。
【0005】
しかし、アルミニウム導体を別の材料から成る接続要素と圧着させるとき、これらの材料の熱膨張係数がそれぞれ異なることに伴う問題が生じる。その問題は、欧州特許第2362491号明細書(EP 2 362 491 B1)によれば、内側に位置している凹部を接続要素の圧着区分内へ手間をかけて導入することによって、解消される。
【0006】
アルミニウムは通常、酸化皮膜によって取り囲まれているので、アルミニウムを処理するときに別の問題が生じる。アルミニウムを溶接しようとする場合、酸化皮膜を溶解するために、1500℃を超える温度を提供しなければならない。しかし、アルミニウム自体は既に約660℃で溶解するので、酸化皮膜を溶解するこのような高温により、酸化皮膜の溶解後にアルミニウム芯が蒸発するはずであり、したがって、使用可能な溶接接続部が生じることはない。
【0007】
こうした理由から、欧州特許第2362491号明細書(EP 2 362 491 B1)において、まず、アルミニウムワイヤを圧搾することによりアルミニウムワイヤの酸化皮膜が少なくとも部分的に破壊される圧着プロセスが提案される。
【0008】
まだワイヤが少ない場合、またはリッツ線が少ないワイヤから成る場合には、この破壊は機能することができ、自動車において給電に必要なより太い電気的な線路では、この酸化皮膜の少なくとも部分的な破壊は、ある程度許容可能な溶接接続部を形成可能にするには、もはや十分ではない。
【0009】
したがって、本発明の根底を成す課題は、電気的な線路の可能な限り全ての領域を接続要素に溶接することができる方法を提供することである。
【0010】
この課題を解決するために、まず、電気的な線路の終端部材から絶縁部を取り除き、電気的な線路の、絶縁部が取り除かれた領域を接続要素の管内へ挿入し、この管を、線路の、絶縁部が取り除かれた尖端部の領域に配置された領域において圧搾し、少なくとも1本のワイヤが管内で保持されて、管と少なくとも1本のワイヤとの間の相対運動が阻止されるようにし、これに続いて、管を、第1の圧搾領域よりも電気的な線路の端部から離間して位置する、絶縁部が取り除かれた電気的な線路の第2の領域において再び圧搾し、次いで、管を少なくとも1本のワイヤに第2の圧搾領域において抵抗溶接することが提案される。
【0011】
さらに、絶縁されたワイヤ、たとえば被覆絶縁されたワイヤを使用することも可能である。この場合、絶縁部の除去は必須ではない。なぜならば、絶縁部は、その後の溶接プロセスのときに蒸発するからである。
【0012】
第1の圧搾プロセスによって、任意の横断面を有する少なくとも1本のワイヤ(通常は複数のリッツ線)が、次いでリッツ線の全てのワイヤが固定され、管と個々のワイヤとの間においても、個々のワイヤ自体の間においても、相対運動が不可能となることが実現される。リッツ線は電気的な線路の別の端部では依然として絶縁部内に差し込まれているので、この絶縁部においてもワイヤ同士の相対運動は予期されない。さらに、もちろん2つの圧搾プロセスを好ましくは同時に実行することもでき、第2の圧搾プロセスを2つの第1の圧搾位置の間に設けることもできる。これによって、少なくとも1本のワイヤ(通常はリッツ線の複数のワイヤ)は、第2の圧搾プロセスのために両側から固定されており、基本的にもはやワイヤを互いに対して動かすことができない。
【0013】
そこで、第2の圧搾プロセスを実行するとき、任意の横断面を有する少なくとも1本のワイヤまたは電気的な線路のリッツ線の個々のワイヤには、圧縮自体の他に、個々のワイヤのそれぞれの延伸しか残されていない。この延伸は、リッツ線の全てのワイヤに対して行われる。その際、酸化皮膜がワイヤから破れるので、延伸によってリッツ線の全てのワイヤからも酸化皮膜が取り除かれる。そこで、次に続く溶接プロセスは、アルミニウムにとって一般的な温度で行うことができる。全てのアルミニウムワイヤおよび管からも酸化皮膜が取り除かれているので、極めて良好に完全な融解が行われ、場合によっては存在する絶縁部をこの温度において蒸発させる。
【0014】
第2の圧搾プロセスをたとえば圧搾工具によって実行することができ、そこで初めてこれに続いて溶接電極を第2の圧搾プロセスの箇所に取り付けることが可能ではあるが、第2の圧搾プロセスを少なくとも2つの溶接電極によって実行することが有利であると判明した。これにより、低コストに、第2の圧搾プロセス用のスウェージング工具を省くことができ、スウェージングプロセスを溶接電極によって実行することができる。
【0015】
1本のワイヤのみ、たとえば電気巻線の1本の細い接続ワイヤのみを管またはスリーブに溶接しようとする場合、この管またはスリーブにおいても、ワイヤの端部が第1の圧搾部の領域において固く保持されているとき、最適な延伸、ひいては酸化皮膜の最適な除去が可能である。
【0016】
第2の圧搾プロセスおよび溶接を同時に行うと有利である。その際、第2の圧搾プロセスの終了時に初めて溶接を実行することが確実に有意義である。
【0017】
合目的には、第1の圧搾プロセスがスウェージング工具によって行われる。この場合、このスウェージング工具は少なくとも2つの部分から構成されるべきであり、この2つの部分またはより多くの部分から成るスウェージング工具は、圧搾プロセス後に管を完全に取り囲む。
【0018】
もちろん、第1の圧搾プロセスを実行し、これに続いて電気的な線路の一部をさらに動かし、その後第2の圧搾プロセスを実行することが可能であるにもかかわらず、スウェージング工具が第2の圧搾プロセスの間、閉鎖されたままで、すなわち線路が動かされずに第2の箇所で圧搾され、溶接プロセスの終了後にようやくスウェージング工具が開放されることが実証された。これにより確かに、相応のスウェージング装置および溶接装置の場合には、電気導体を動かす装置が省かれるが、第2の圧搾工具用の第2の駆動装置は必要になる。しかし、圧搾工具が溶接機械において相並んで配置された2箇所に配置されているとき、2つの圧搾プロセスをさらに著しく迅速に続けて実行することができる。
【0019】
略半径方向で作用する第2の圧搾プロセスに、第1の圧搾領域から離反する、少なくとも1本のワイヤの軸方向の成分(作用)を重畳させることが実証された。
【0020】
軸方向の運動が極めて小さくても、少なくとも1本のワイヤの延伸がさらに改善され、ひいては酸化皮膜の除去がさらに改善される。
【0021】
本発明を、図面に基づき詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】圧搾ステップおよび溶接ステップ前の、対応して配置された接続要素を備える、本発明に係る電気導体を示す図である。
【
図2】圧搾ステップおよび溶接ステップ後の、対応して配置された接続要素を備える、本発明に係る電気導体を示す図である。
【0023】
図1には、電気的な線路1が示されている。この電気的な線路1は、アルミニウムリッツ線2から成っていて、アルミニウムリッツ線2は、絶縁部3によって取り囲まれている。アルミニウムリッツ線2の個々のワイヤが概略的に示されている。さらに、管4が示されている。この管4の開いた第1の端部5内へ、電気的な線路1の、アルミニウムリッツ線2の絶縁部が取り除かれた端部が挿入されており、管4の第2の端部6には接続要素7が一体成形されている。
【0024】
図2には、圧搾プロセスおよび溶接プロセス後の、接続要素7を備えた電気的な線路1が示されている。アルミニウムリッツ線2の端部8の領域には、第1の圧搾領域9が看取可能である。この領域では、アルミニウムリッツ線2が管4によって圧搾されていて、アルミニウムリッツ線2の個々のワイヤはもはや互いに対して動くことができない。絶縁部3に向かう方向で見て、第1の圧搾領域9の隣には、第2の圧搾領域10が看取可能である。第2の圧搾領域10では、圧搾プロセスによって、かつアルミニウムリッツ線2同士が圧搾領域9においても絶縁部3の領域においても相対運動を行うことができなかったことにより、アルミニウムリッツ線2は延伸され、加圧された。これにより、アルミニウムリッツ線2のほぼ全てのワイヤ上の酸化皮膜が破壊されている。管4の圧搾によって、この管4の内側に位置する酸化皮膜も破壊されている。
【0025】
これに続く溶接プロセスによって、アルミニウムリッツ線2は、広面積にわたって管4に溶接される。このことは、概略的に示された溶接ナゲット11によって看取可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 電気的な線路
2 アルミニウムリッツ線
3 絶縁部
4 管
5 開いた第1の端部
6 第2の端部
7 接続要素
8 アルミニウムリッツ線の端部
9 第1の圧搾領域
10 第2の圧搾領域
11 溶接ナゲット