特許第6720279号(P6720279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720279
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】変性コラーゲン
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/78 20060101AFI20200629BHJP
   C07K 1/02 20060101ALI20200629BHJP
   C07K 1/113 20060101ALI20200629BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20200629BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20200629BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20200629BHJP
   A61K 31/7036 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20200629BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20200629BHJP
   A61P 41/00 20060101ALN20200629BHJP
   A61P 23/02 20060101ALN20200629BHJP
【FI】
   C07K14/78
   C07K1/02
   C07K1/113
   A61L31/04 120
   A61L31/16
   A61L31/14 400
   A61K9/70
   A61K47/42
   A61K31/7036
   A61K31/445
   A61P31/04
   !A61P41/00
   !A61P23/02
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-223061(P2018-223061)
(22)【出願日】2018年11月29日
(62)【分割の表示】特願2014-550739(P2014-550739)の分割
【原出願日】2013年1月9日
(65)【公開番号】特開2019-65017(P2019-65017A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2018年11月29日
(31)【優先権主張番号】12150527.5
(32)【優先日】2012年1月9日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】1220868.2
(32)【優先日】2012年11月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516011198
【氏名又は名称】イノコール ファーマシューティカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ディートリッヒ,アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ,マイケル
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6494285(JP,B2)
【文献】 特開2011−225462(JP,A)
【文献】 特表2006−522601(JP,A)
【文献】 特開2004−099513(JP,A)
【文献】 特開昭56−095195(JP,A)
【文献】 特開昭49−071120(JP,A)
【文献】 特表2001−508689(JP,A)
【文献】 特表2010−522738(JP,A)
【文献】 特開2009−119257(JP,A)
【文献】 Journal of Biomedical Materials Research,1990年,Vol.24,p.749-760
【文献】 Journal of Biomedical Materials Research,2001年,Vol.58,p.352-357
【文献】 BURNS,2008年,Vol.34,p.1011-1014
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/78
C07K 1/00−1/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)単離されたコラーゲンを用意するステップと、
(b)前記単離されたコラーゲンを凍結させるステップと、
(c)前記凍結されたコラーゲンを脱水するステップと、
(d)前記脱水されたコラーゲンを熟成させるステップと
を含み、前記熟成させるステップが、前記脱水されたコラーゲンを40℃の温度で2週間〜6ヶ月間貯蔵することを含む、変性コラーゲンを調製する方法によって得られた変性コラーゲン
【請求項2】
前記熟成させるステップが、前記脱水されたコラーゲンを40℃の温度で2週間〜6週間貯蔵することを含む、請求項1に記載の変性コラーゲン
【請求項3】
前記熟成させるステップが、前記脱水されたコラーゲンを40℃の温度で2ヶ月間〜6ヶ月間貯蔵することを含む、請求項1に記載の変性コラーゲン
【請求項4】
前記熟成させるステップが、前記脱水されたコラーゲンを40℃の温度で6週間〜2ヶ月間貯蔵することを含む、請求項1に記載の変性コラーゲン
【請求項5】
前記用意するステップが、前記用意するステップの前に、流体を除去して、3〜30%(w/w)のコラーゲン粒子濃度を有する分散体を提供するステップを含む、請求項1に記載の変性コラーゲン
【請求項6】
前記凍結ステップが、−33℃〜−42℃の温度に凍結させることを含むか、前記脱水ステップが、圧力を0.05〜0.5ミリバールに低下させることにより水相を除去することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の変性コラーゲン
【請求項7】
前記脱水ステップが、前記コラーゲンの温度を+30℃まで上昇させることを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の変性コラーゲン
【請求項8】
前記熟成ステップが、70%〜80%の相対湿度で実施される、請求項1に記載の変性コラーゲン
【請求項9】
前記熟成ステップが、75%の相対湿度で実施される、請求項8に記載の変性コラーゲン
【請求項10】
前記熟成ステップが、前記脱水されたコラーゲンを40℃の温度かつ70%〜80%の相対湿度で、2〜6週間貯蔵することを含む、請求項1に記載の変性コラーゲン
【請求項11】
(a)単離されたコラーゲンを用意するステップと、
(b)前記単離されたコラーゲンを凍結させるステップと、
(c)前記凍結されたコラーゲンを脱水するステップと、
(d)前記脱水されたコラーゲンを熟成させるステップと
を含み、前記熟成させるステップが、前記脱水されたコラーゲンを40℃の温度で2週間〜6ヶ月間貯蔵することを含み、前記方法は、薬物を準備し、それに前記熟成されたコラーゲンを添加するステップ、または前記薬物を前記熟成されたコラーゲンに添加するステップを更に含む、薬物の持続放出のための薬物送達組成物を調製する方法によって得られた薬物の持続放出のための薬物送達組成物
【請求項12】
前記熟成させるステップが、前記脱水されたコラーゲンを40℃の温度で2週間〜6週間貯蔵することを含む、請求項11に記載の薬物送達組成物
【請求項13】
前記熟成させるステップが、前記脱水されたコラーゲンを40℃の温度で2ヶ月間〜6ヶ月間貯蔵することを含む、請求項11に記載の薬物送達組成物
【請求項14】
前記熟成ステップが、70%〜80%の相対湿度で実施される、請求項11、12、または13に記載の薬物送達組成物
【請求項15】
前記薬物が、ゲンタマイシン((3R,4R,5R)−2−{[(1S,2S,3R,4S,6R)−4,6−ジアミノ−3−{[(2R,3R,6S)−3−アミノ−6−[(1R)−1−(メチルアミノ)エチル]オキサン−2−イル]オキシ}−2−ヒドロキシシクロヘキシル]オキシ}−5−メチル−4−(メチルアミノ)オキサン−3,5−ジオール)またはそれらの塩もしくはプロドラッグ、およびブピバカイン((RS)−1−ブチル−N−(2,6−ジメチルフェニル)ピペリジン−2−カルボキサミド)またはそれらの塩から選択される、請求項11に記載の薬物送達組成物
【請求項16】
前記薬物を含有する薬物送達組成物を凍結乾燥および/または脱水するステップを更に含む、請求項11、12、または13に記載の薬物送達組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、単離されたコラーゲンを用意すること;単離されたコラーゲンを凍結させること;凍結されたコラーゲンを脱水すること;および脱水されたコラーゲンを熟成させること、により得ることができる変性コラーゲンに関する。同じく、変性コラーゲンを製造する方法およびその使用が、開示される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
水性コラーゲン分散体を乾燥または凍結乾燥して、膜またはスポンジを作製することにより、ヒトおよび獣医学において使用するためのコラーゲンを基剤とする材料の調製方法は、当該技術分野で周知である。術後癒着の形成を予防または低減するために、術後に接近した外傷組織表面を分離するための一時的な生分解性バリアとして、コラーゲンを基剤とするフィルムまたは膜を使用することも、公知である。
【0003】
典型的には、コラーゲンを基剤とする材料の次なる製造に用いられるコラーゲンは、最初、精製されて酵素処理された哺乳動物の皮革または腱から抽出され、非らせん型テロペプチドを除去して酸で部分溶解し、最後にpHを上昇させることにより沈殿させて、精製された線維性コラーゲンの水性分散体を提供することにより単離される。コラーゲン分散体は、単離されると、直ちにコラーゲンを基剤とする材料の製造のために更に加工されてもよく、さもなければ更なる加工を待って貯蔵される。商業的規模での貯蔵簡便性のために、コラーゲン分散体は通常、遠心分離を利用して水を除去して嵩を減らすことにより濃縮され、それにより湿塊を生成する。湿塊は、コラーゲンを保存してバクテリアの生育を予防するために凍結させて貯蔵されなければならない。コラーゲンを基剤とする材料の製造に必要になれば、凍結されたコラーゲンの湿塊が、典型的には解凍して再分散される。単離されたコラーゲンが直ちに使用される場合でも、凍結させて湿塊として解凍される場合でも、コラーゲン分散体は一般に、粘性があり、商業的規模でコラーゲンを基剤とする膜または凍結乾燥されたスポンジに加工することは、困難である。分散体中のコラーゲン濃度を減少させれば、次の乾燥または凍結乾燥で除去されるべき水の量が単に増加し、商業規模では非効率的でコストもかかるため、更に希釈せずにコラーゲン分散体の粘性を低下させる方法が、必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それゆえ本発明の目的は、該分散体の粘性を低下させながら生成されたコラーゲンを基剤とする材料の特性を損なわないような方法で、単離されたコラーゲンを変性させることである。好ましくは本発明の更なる目的は、術後癒着バリアとしての使用に向けて、該分散体の粘度を低下させ、生成されたコラーゲンの特性も改善するような方法で、コラーゲンを変性させることである。
【0005】
これらの目的は、本発明により、商業的規模でのコラーゲンを基剤とする材料の効率的製造を促進して、ヒトおよび獣医学の分野におけるそれらの材料の潜在的有効性を改善する、変性コラーゲンを提供することにより解決される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明の第一の態様によれば、単離されたコラーゲン、場合により単離されたコラーゲン分散体を用意すること;単離されたコラーゲンを凍結させること;および凍結されたコラーゲンを脱水すること、により得ることができる変性コラーゲンが提供される。
【0007】
本発明の第二の態様によれば、単離されたコラーゲン、場合により単離されたコラーゲン分散体を用意すること;単離されたコラーゲンを凍結させること;凍結されたコラーゲンを脱水すること;および脱水されたコラーゲンを熟成させること、により得ることができる変性コラーゲンが提供される。
【0008】
用語「分散体」は、コラーゲン粒子が流体、場合により液体、更に場合により水性の媒体中に分散された混合物を意味する。コラーゲン粒子は、コラーゲン分子またはその凝集物を含む場合があり、流体、場合により液体、更に場合により水性の媒体中に分散されている。場合により、流体、場合により液体、更に場合により水性の媒体中に分散されたコラーゲン粒子は、少なくとも1マイクロメートルの長さ(または最大寸法)を有する。
【0009】
「熟成」は、実質的な分解または混入を受けることなく、脱水されたコラーゲンを老化させるのに適した条件下で、脱水されたコラーゲンを加工することを意味する。
【0010】
本発明の第三の態様によれば、
(a)単離されたコラーゲン、場合により単離されたコラーゲン分散体を用意するステップと;
(b)単離されたコラーゲンを凍結させるステップと、
(c)凍結されたコラーゲンを脱水するステップと
を含む、変性コラーゲンを調製する方法が提供される。
【0011】
本発明の第四の態様によれば、
(a)単離されたコラーゲン、場合により単離されたコラーゲン分散体を用意するステップと;
(b)単離されたコラーゲンを凍結させるステップと、
(c)凍結されたコラーゲンを脱水するステップと、
(d)脱水されたコラーゲンを熟成させるステップと
を含む、変性コラーゲンを調製する方法が提供される。
【0012】
場合により、用意するステップは、用意するステップの前に、流体、場合により液体、更に場合により水性の媒体を除去するステップを含む。更に場合により、用意するステップは、用意するステップの前に、流体、場合により液体、更に場合により水性の媒体の少なくとも一部を除去するステップを含む。更に場合により、用意するステップは、用意するステップの前に、流体、場合により液体、更に場合により水性の媒体の少なくとも一部を除去して、単離されたコラーゲン分散体を提供するステップを含む。
【0013】
場合により、用意するステップは、用意するステップの前に、流体、場合により液体、更に場合により水性の媒体を除去して、約3〜30%(w/w)、場合により3〜4%(w/w)のコラーゲン粒子濃度を有する分散体を提供するステップを含む。
【0014】
場合により凍結ステップは、約−33℃〜約−42℃の温度に凍結させることを含む。更に場合により凍結ステップは、約−38℃の温度に凍結させることを含む。更に場合により凍結ステップは、約0.3℃〜約1.5℃/分の速度、場合により約0.5℃/分の速度で凍結させることを含む。
【0015】
場合により脱水ステップは、水相を除去することを含む。更に場合により脱水ステップは、圧力を低下させることにより水相を除去することを含む。更に場合により、脱水ステップは、圧力を約0.05〜約0.5ミリバールに低下させることにより水相を除去することを含む。更に場合により脱水ステップは、真空を加えることにより、水相を除去することを含む。
【0016】
場合により、または追加として、脱水ステップは、凍結コラーゲンの温度を上昇させることを含む。更に場合により、または追加として、脱水ステップは、凍結コラーゲンの温度を真空下で上昇させることを含む。更に場合により、または追加として、脱水ステップは、コラーゲンの温度を約+30℃に上昇させることを含む。更に場合により、または追加として、脱水ステップは、コラーゲンの温度を真空下で約+30℃に上昇させることを含む。
【0017】
場合により、または追加として、脱水ステップは、コラーゲンの温度を、約0.3℃〜約1.5℃/分の速度、更に場合により約0.5℃/分の速度で約+30℃に上昇させることを含む。更に場合により、または追加として、脱水ステップは、コラーゲンの温度を、真空下で、約0.3℃〜約1.5℃/分の速度、更に場合により約0.5℃/分の速度で約+30℃に上昇させることを含む。
【0018】
場合により脱水ステップは、少なくとも1回の平衡ステップを含む。
【0019】
場合により少なくとも1回の平衡ステップは、温度を、凍結コラーゲンを所望の温度に到達させるのに十分な一定の温度で維持することを含む。更に場合により、少なくとも1回の平衡ステップは、凍結コラーゲンを所望の温度に到達させるために、温度を一定の温度で十分な時間、維持することを含む。更に場合により、少なくとも1回の平衡ステップは、凍結コラーゲンを所望の温度に到達させるために、温度を一定の温度で少なくとも10分間、場合により少なくとも20分間、更に場合により少なくとも30分間、更に場合により少なくとも45分間、更に場合により少なくとも60分間維持することを含む。
【0020】
場合により少なくとも1回の平衡ステップは、温度が少なくとも−20℃に上昇された時に実施される。場合により、または追加として、少なくとも1回の平衡ステップは、温度が少なくとも−10℃に上昇された時に実施される。場合により、または追加として、少なくとも1回の平衡ステップは、温度が少なくとも0℃に上昇された時に実施される。場合により、または追加として、少なくとも1回の平衡ステップは、温度が少なくとも+10℃に上昇された時に実施される。場合により、または追加として、少なくとも1回の平衡ステップは、温度が少なくとも+20℃に上昇された時に実施される。場合により、または追加として、少なくとも1回の平衡ステップは、温度が少なくとも+30℃に上昇された時に実施される。
【0021】
場合により脱水ステップは、6回の平衡ステップを含み、各平衡ステップは、温度が約10℃上昇された時に実施される。更に場合により脱水ステップは、6回の平衡ステップを含み、各平衡ステップは、温度が約−20℃、約−10℃、約0℃、約+10℃、約+20℃および約+30℃に上昇された時に実施される。
【0022】
場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも2℃の温度で貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも10℃の温度で貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも20℃の温度で貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも30℃の温度で貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも40℃の温度で貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも50℃の温度で貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも60℃の温度で貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも70℃の温度で貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも80℃の温度で貯蔵することを含む。
【0023】
場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも30℃の温度で貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも40℃の温度で貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも65℃の温度で貯蔵することを含む。
【0024】
場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを30℃の温度で貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを40℃の温度で貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを65℃の温度で貯蔵することを含む。
【0025】
場合により熟成ステップは、少なくとも1週間、場合により少なくとも2週間、更に場合により少なくとも3週間、更に場合により少なくとも4週間、更に場合により少なくとも5週間、更に場合により少なくとも6週間実施される。
【0026】
場合により熟成ステップは、少なくとも2ヶ月、場合により少なくとも4ヶ月、更に場合により少なくとも6ヶ月、更に場合により少なくとも12ヶ月実施される。
【0027】
場合により熟成ステップは、1週間、場合により2週間、更に場合により3週間、更に場合により4週間実施される。
【0028】
場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも2℃の温度で少なくとも6ヶ月間貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを2℃の温度で6ヶ月間貯蔵することを含む。
【0029】
場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも30℃の温度で少なくとも2ヶ月間貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを30℃の温度で2ヶ月間貯蔵することを含む。
【0030】
場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも40℃の温度で少なくとも6週間貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを40℃の温度で6週間貯蔵することを含む。
【0031】
場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも65℃の温度で少なくとも1週間貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを65℃の温度で1週間間貯蔵することを含む。
【0032】
場合により熟成ステップは、100%未満、場合により90%未満、更に場合により80%未満、更に場合により70%未満、更に場合により60%未満、更に場合により50%未満、更に場合により40%未満、更に場合により30%未満の相対湿度で実施される。
【0033】
「相対湿度」は、場合により所定の気体温度および大気圧での、場合により一定の大気圧での、気体と水蒸気との混合物中での水の最大量の指標を意味し、場合により所定の気体温度および大気圧での気体中の水蒸気の最大量の%率として表される。本明細書の目的として、用語「相対湿度」は、一定の大気圧での、熟成ステップが実施される環境空気と水蒸気との混合物中の水蒸気量の指標を意味し、%率として表される。本明細書の目的として、大気圧は、約980〜約1040ミリバールであると理解される。
【0034】
熟成ステップを実施する上で、温度、時間、圧力、および相対湿度のパラメーターが、必ずしも相互に排他的ではないことは理解されており、当業者は、1つのパラメータが変動すると、他のパラメータの1つまたは全てが相応に変動し得ることを認識している。
【0035】
場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを少なくとも40℃の温度および相対湿度80%未満で少なくとも6週間貯蔵することを含む。更に場合により熟成ステップは、脱水されたコラーゲンを40℃の温度および相対湿度75%で6週間貯蔵することを含む。
【0036】
場合により単離されたコラーゲンは、線維性コラーゲンである。更に場合により単離されたコラーゲンは、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、およびそれらの混合物から選択される。更に場合により単離されたコラーゲンは、I型コラーゲンである。
【0037】
場合により該方法は、熟成ステップの前に、変性されたコラーゲンを機械的に分解するステップを更に含む。場合により機械的分解ステップは、粉砕(milling)を含む。更に場合により機械的分解ステップは、粉砕、切断、研削(grinding)、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0038】
本発明の第五の態様によれば、
(a)コラーゲンの供給源を用意するステップと;
(b)コラーゲンの供給源のpHを約6.5〜約7.5に上昇させるステップと、
を含む、コラーゲンを単離する方法が提供される。
【0039】
場合によりコラーゲンの供給源は、コラーゲン分散体である。
【0040】
場合により、用意するステップは、用意するステップの前に、流体、場合により液体、更に場合により水性の媒体を除去するステップを含む。更に場合により、用意するステップは、用意するステップの前に、流体、場合により液体、更に場合により水性の媒体の少なくとも一部を除去するステップを含む。更に場合により、用意するステップは、用意するステップの前に、流体、場合により液体、更に場合により水性の媒体の少なくとも一部を除去して、単離されたコラーゲン分散体を提供するステップを含む。
【0041】
場合によりコラーゲンの供給源、場合によりコラーゲン分散体のpHは、約7.5に上昇される。
【0042】
場合によりコラーゲンの供給源は、線維性組織、場合により結合組織である。更に場合によりコラーゲンの供給源は、腱、場合により動物の腱、更に場合によりウマまたはウシの腱、好ましくはウマの腱である。
【0043】
場合により該方法は、pHを上昇させるステップの前に、コラーゲンの供給源を分解するステップを含む。更に場合により分解ステップは、pHを上昇させるステップの前に、コラーゲンの供給源を機械的に分解するステップを含む。場合により、または追加として、分解ステップは、pHを上昇させるステップの前に、コラーゲンの供給源を化学的に分解するステップを含む。場合により機械的分解ステップは、粉砕を含む。更に場合により機械的分解ステップは、粉砕、切断、研削、およびそれらの組み合わせから選択される。場合により、または追加として、化学的分解ステップは、コラーゲンの供給源を酵素、場合によりタンパク質分解酵素と接触させることを含む。場合によりタンパク質分解酵素は、キモシン、カテプシンE、およびペプシンから選択され、好ましくはペプシンである。
【0044】
場合により化学的分解ステップは、約2.5のpHで実施される。
【0045】
場合により該方法は、コラーゲンの供給源から混入物を除去するステップを更に含む。場合により除去ステップは、コラーゲンの供給源を塩基、場合により強塩基、更に場合により水酸化ナトリウム、更に場合により水酸化ナトリウムの水性溶液と接触させることを含む。
【0046】
場合により該方法は、pHを上昇させるステップの前に、分解されたコラーゲンの供給源、場合により分解されたコラーゲンの供給源をろ過するステップを含む。
【0047】
場合により該方法は、コラーゲンを濃縮するステップを含む。場合により濃縮ステップは、コラーゲンを単離することを含む。更に場合により濃縮ステップは、コラーゲンを遠心分離により単離することを含む。
【0048】
場合により濃縮ステップは、流体、場合により液体、更に場合により水性の媒体を除去して、3〜30%(w/w)、場合により3〜4%(w/w)のコラーゲン粒子濃度を有する分散体を提供するステップを含む。
【0049】
場合により単離されたコラーゲンは、凍結される。更に場合により単離されたコラーゲンは、−20℃未満で凍結される。場合により、単離されて凍結されたコラーゲンは、変性されたコラーゲンを調製する前に解凍される。
【0050】
本発明の第六の態様によれば、手術による癒着を処置または予防する際の使用のために、本発明の第一の態様による変性コラーゲン、または本発明の第二の態様により調製された変性コラーゲンを含む組成物が提供される。
【0051】
場合により使用は、生体膜、場合により生体組織への該組成物の投与を含む。更に場合により使用は、体腔内の生体膜、場合により生体組織への該組成物の投与を含む。更に場合により使用は、腹腔、心膜腔、子宮腔、または滑液腔などの体腔内の生体膜、場合により生体組織への該組成物の投与を含む。
【0052】
場合により使用は、生体膜、場合により生体組織への該組成物の局所投与を含む。更に場合により使用は、体腔内の生体膜、場合により生体組織への該組成物の局所投与を含む。更に場合により使用は、腹腔、心膜腔、子宮腔、または滑液腔などの体腔内の生体膜、場合により生体組織への該組成物の局所投与を含む。
【0053】
本発明の第七の態様によれば、
(a)変性コラーゲンを用意するステップと;
(b)変性コラーゲンの水性分散体を調製するステップと;
(c)水性分散体を分解するステップと;
(d)水性分散体を脱水するステップと、
を含む、本発明の第一の態様による変性コラーゲン、または本発明の第二の態様により調製された変性コラーゲンを含む組成物の製造方法が提供される。
【0054】
場合により調製ステップは、加熱された水、場合により加熱された精製水を変性コラーゲンに添加するステップを含む。場合により水、場合により精製水は、変性コラーゲンに添加される前に、約35〜約42℃に加熱される。
【0055】
場合により調製ステップは、約4.0のpHで実施される。
【0056】
場合により分解ステップは、水性分散体を機械的に分解することを含む。場合により機械的分解ステップは、せん断混合を含む。
【0057】
場合により該組成物は、約0.4%(w/w)〜1.5%(w/w)の量の変性コラーゲンを含む。
【0058】
場合により該組成物は、約4.0のpHを有する。
【0059】
場合により脱水ステップは、水性分散体から液体を除去することを含み、それにより該組成物は、該組成物の30%(w/w)未満、場合により20%(w/w)未満、更に場合により15%(w/w)未満の液体を含む。更に場合により脱水ステップは、水性分散体から液体を除去することを含み、それにより該組成物は、該組成物の13%(w/w)未満、好ましくは12%(w/w)未満の液体を含む。
【0060】
場合により脱水ステップは、対流式乾燥キャビネットを用いて水性分散体から液体を除去することを含む。
【0061】
本発明の第八の態様によれば、単離されたコラーゲン、場合により単離されたコラーゲン分散体を用意すること;単離されたコラーゲンを凍結させること;および凍結されたコラーゲンを脱水すること、により得ることができる薬物送達組成物が提供される。
【0062】
本発明の第九の態様によれば、単離されたコラーゲン、場合により単離されたコラーゲン分散体を用意すること;単離されたコラーゲンを凍結させること;凍結されたコラーゲンを脱水すること;および脱水されたコラーゲンを熟成すること、により得ることができる薬物送達組成物が提供される。
【0063】
本発明の第十の態様によれば、
(a)単離されたコラーゲン、場合により単離されたコラーゲン分散体を用意するステップと;
(b)単離されたコラーゲンを凍結させるステップと;
(c)凍結されたコラーゲンを脱水するステップと、
を含む、薬物の持続放出のための薬物送達組成物を調製する方法が提供される。
【0064】
本発明の第十一の態様によれば、
(a)単離されたコラーゲン、場合により単離されたコラーゲン分散体を用意するステップと;
(b)単離されたコラーゲンを凍結させるステップと;
(c)凍結されたコラーゲンを脱水するステップと;
(d)脱水されたコラーゲンを熟成させるステップと、
を含む、薬物の持続放出のための薬物送達組成物を調製する方法が提供される。
【0065】
場合により該方法は、薬物、場合により薬物溶液を用意し、それに熟成されたコラーゲンを添加するステップ、またはその薬物溶液を熟成されたコラーゲンに添加するステップを更に含む。
【0066】
場合により薬物は、アミノグリコシド系抗生物質、またはそれらの塩もしくはプロドラッグ、および麻酔剤、またはそれらの塩もしくはプロドラッグから選択される。
【0067】
更に場合により、該薬物は、ゲンタマイシン((3R,4R,5R)−2−{[(1S,2S,3R,4S,6R)−4,6−ジアミノ−3−{[(2R,3R,6S)−3−アミノ−6−[(1R)−1−(メチルアミノ)エチル]オキサン−2−イル]オキシ}−2−ヒドロキシシクロヘキシル]オキシ}−5−メチル−4−(メチルアミノ)オキサン−3,5−ジオール)またはそれらの塩もしくはプロドラッグ、およびブピバカイン((RS)−1−ブチル−N−(2,6−ジメチルフェニル)ピペリジン−2−カルボキサミド)またはそれらの塩もしくはプロドラッグから選択される。
【0068】
場合により該薬物は、水性薬物溶液である。更に場合により該薬物は、酸、場合により酢酸を含む水性薬物溶液である。
【0069】
場合により該方法は、薬物−、場合により薬物溶液−含有薬物送達組成物を混合、場合によりホモジナイズするステップを更に含む。
【0070】
場合により該方法は、薬物−、場合により薬物溶液−含有薬物送達組成物を凍結乾燥および/または脱水するステップを更に含む。
【0071】
図面の簡単な説明
本発明の実施形態を、ここに、以下の非限定的実施例および添付の図面を参照しながら説明し、図中のエラーバーは標準偏差を表す。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】新鮮なコラーゲン、凍結コラーゲン、および周囲条件下で3年間老化させた脱水凍結コラーゲン(古い凍結乾燥粉砕コラーゲン)から調製された組成物の粘度特性を示すグラフである。
図2A】新鮮なコラーゲン、凍結コラーゲン、および周囲条件下で3年間老化させた脱水凍結コラーゲン(古い凍結乾燥粉砕コラーゲン)から調製された組成物の水取込み特性を示すグラフである。
図2B】新鮮なコラーゲン、凍結コラーゲン、および周囲条件下で3年間老化させた脱水凍結コラーゲン(古い凍結乾燥粉砕コラーゲン)を含む組成物の膨潤特性を示すグラフである。
図3A】凍結コラーゲン、および周囲条件下で3年間老化させた脱水凍結コラーゲン(古い凍結乾燥粉砕コラーゲン)から調製されたゲンタマイシン含有組成物の溶解特性を示すグラフである。
図3B】凍結コラーゲン、および周囲条件下で3年間老化させた脱水凍結コラーゲン(古い凍結乾燥粉砕コラーゲン)から調製されたブピバカイン含有組成物の溶解特性を示すグラフである。
図4】新鮮なコラーゲン、凍結コラーゲン、周囲条件下で3年間老化させた脱水凍結コラーゲン(古い凍結乾燥粉砕コラーゲン)、脱水凍結コラーゲン(非熟成LMC)、ならびに2、4および6週間熟成された本発明の第一の態様による変性コラーゲン(熟成LMC)から調製された組成物の粘度特性を示すグラフである。
図5】脱水凍結コラーゲン(非熟成凍結乾燥粉砕コラーゲン)、および本発明の第一の態様による変性コラーゲン(熟成LMC)から調製された組成物の粘度特性を示すグラフである。
図6】凍結コラーゲン(FWC)および周囲条件下で3年間老化させた脱水凍結コラーゲン(古いLMC);凍結コラーゲン(FWC)および本発明の第一の態様による変性コラーゲン(熟成LMC);ならびに脱水凍結コラーゲン(非熟成LMC)および本発明の第一の態様による変性コラーゲン(熟成LMC)から調製された組成物の相対膨潤能力を示すグラフである。
図7】脱水凍結コラーゲン(非熟成LMC)および本発明の第一の態様による変性コラーゲン(熟成LMC)から調製された組成物の分解特性を示すグラフである。
図8A】凍結コラーゲン(FWC)、脱水凍結コラーゲン(非熟成LMC)、および本発明の第一の態様による変性コラーゲン(熟成LMC)から調製されたゲンタマイシン含有組成物の溶解特性を示すグラフである。
図8B】周囲条件下で3年間老化させた脱水凍結コラーゲン(古いLMC)、および脱水凍結コラーゲン(非熟成LMC)から調製されたブピバカイン含有組成物の溶解特性を示すグラフである。
図9】最長で4週間熟成された本発明の第一の態様による変性コラーゲン(熟成LMC)の粘度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
実施例
実施例1−コラーゲンの単離
コラーゲンは、複数の供給源、例えば動物の皮革および動物の腱から単離することができる。好ましい実施形態において、コラーゲンは、動物の腱、例えばウマまたはウシの腱から単離されるが、線維性組織、場合により結合組織をはじめとする任意の公知コラーゲン供給源が当業者により使用および選択されてもよい。好ましくはコラーゲンは、ウマの腱から単離される。単離の方法において、ウマの腱を粉砕してコラーゲンの供給源を分解した。工程の開始時に、粉砕されたウマの腱を1N水酸化ナトリウム(NaOH)をはじめとする複数の試薬で処理して、プリオンなどの微生物混入物を除去した。過酸化水素での処理ステップおよび異なるpH値での洗浄ステップを実施した後、次の処理ステップのために表面を増加させるのに利用される粉砕ステップを実施した。コラーゲンの供給源の分子量を、追加的に、およそpH2.5でタンパク質分解酵素ペプシンでの処理により低下させた。pHを、1N HClの水性溶液で調整した。ペプシンを用いて、ウマ血清アルブミン(ESA)などの混入した血清成分を分解して、コラーゲン分子の非らせん部分(テロペプチド)を脱離させた。この工程の間、コラーゲン材料も一部、酸媒体に可溶化された。ろ過の後、1N水酸化ナトリウム(NaOH)の添加により、pHレベルを2.5から7.5に上昇させた。このpH調整により、溶液から線維性コラーゲンが沈殿し、その後、遠心分離により濃縮されて、約3〜30%(w/w)の濃度を有するコラーゲン分散体をもたらした。得られた材料は、新鮮なコラーゲンと呼称した。新鮮なコラーゲンは、複数の方法で加工することができる。
【0074】
新鮮なコラーゲンを、適切に分割して包装し、使用が必要となるまで、フリーザーで−20℃に凍結させて貯蔵することができる。得られた材料を、凍結コラーゲン(FWC)と呼称した。凍結コラーゲンは、使用する前に、新鮮なコラーゲンと同様の手法で解凍される。
【0075】
あるいは凍結コラーゲンを、フリーズドライ(凍結乾燥)して、場合により引き続き粉砕することができる。この目的のために、凍結コラーゲンを平坦な表面、例えばポリスチレンモールド上に、約5mm〜約10mmの層厚を有するように手で分配させた。コラーゲンを充填したモールドを、市販のフリーズドライヤー(Christ Epsilon)の棚に移して、0.3℃〜1.5℃のランプレートで約−38℃の温度に凍結させた。およそ30分間の平衡期間の後、真空を開始して、棚の温度を約0.5℃/分の速度で約−38℃から約+30℃にひき続い上昇させた。真空と、棚の温度を約−38℃から+30℃に上昇させることを組み合わせることで、コラーゲンが0℃の温度に達するまでずっと、凍結コラーゲンから氷の昇華が促進された。コラーゲン温度の均一な上昇を確実にするために、棚の温度を一定の所望の温度でおよそ30分間維持しながら、またはコラーゲンが所望の温度に達するまで、少なくとも1つの平衡ステップを実施した。例えば平衡ステップは、−20℃〜+30℃の温度で10℃毎に実施して、コラーゲン温度の均一な上昇を確実にした。例えば−20℃での平衡ステップには、棚の温度を−20℃の一定温度で約30分間維持することが含まれた。氷が昇華により除去されて、コラーゲンが0℃の温度に達したら、棚の温度を約0.5℃/分の速度で約+30℃まで引き続き上昇させ続けることにより、残留する水の含量を更に減少させた。その後、凍結乾燥コラーゲンを、市販のカッティングミル(Rotoplex,ホソカワアルピネ)を用いて粉砕した。得られた材料は、非熟成凍結乾燥粉砕コラーゲン(非熟成LMC)と呼称した。
【0076】
場合により非熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンは、使用が必要になるまで、大気圧で約2〜8℃の周囲条件下、約1〜3年の期間、ポリエチレン容器(袋)に貯蔵することにより熟成させた。得られた材料は、古い凍結乾燥粉砕コラーゲン(古いLMC)と呼称した。
【0077】
あるいは非熟成凍結乾燥粉砕コラーゲン(非熟成LMC)を、使用が必要になるまで、本明細書に記載された通り、ポリエチレン容器(袋)に貯蔵することにより熟成させ、例えば40℃で2〜6週間貯蔵した。得られた材料は、熟成凍結乾燥粉砕コラーゲン(熟成LMC)と呼称した。
【0078】
実施例2−配合の工程および設備
水性変性コラーゲン分散体を、予備加熱された(35〜42℃)精製水を用いてステンレス鋼容器で調製して、pH4.0±0.2に調整した。変性コラーゲン塊を破壊してコラーゲン線維を酸性媒体に暴露するためには、高せん断混合が必要であった。高せん断ミキサー(ホモジナイザー)には、回転ホモジナイザーヘッドを通して変性コラーゲンを引出し、近位の静止した固定子ヘッドに対して変性コラーゲンを付勢することにより、高いせん断力を生成するように設計された回転子/固定子ヘッドが含まれた。この設計により、水性分散体調製の開始時に線維性コラーゲン塊を分離するのに必要となる高いせん断力が提供される。しかし他の同等の混合機器を用いてもよく、それは当業者が選択することができる。例えばIKA Ultra−Turraxミキサーを、高速で約2〜約5分間使用してもよい。
【0079】
不可欠ではないが必要ならば、得られた水性分散体を、例えば250ミクロンフィルターおよび適切な脱気手段、例えば超音波処理を利用することにより、ろ過および脱気することができる。
【0080】
最終的な水性分散体中のコラーゲン濃度は、0.4%〜1.5%の範囲内であってもよく、pHは、4.0±0.2の範囲内であってもよい。最終的な水性分散体を、次に閉鎖型のジャケット付ステンレス鋼容器に移し、場合によりジャケット温度を37℃に維持して、水性分散体を低せん断設定を利用して緩やかに撹拌することができる。
【0081】
分散体を、例えば容積移送式真空ポンプを利用して、例えば10×10cmの、ブリスタートレイまたは凍結乾燥モールドに充填した。ポンプは、場合によりセラミックピストンを有する、バルブレスポンプであってもよい。あるいはペリスタポンプを用いることもできる。充填重量を水性分散体のコラーゲン含量に基づいて調整し、面積あたりの目的コラーゲン含量、例えば約0.1〜約10.0mg/cm、場合により約4mg/cmを達成した。充填工程の完了時に、充填されたブリスターまたはモールドを対流式乾燥キャビネットに配置させた。31℃の市販の乾燥キャビネット(LabAir;Bleymehl)を、この乾燥工程で使用した。乾燥ステップは、典型的には過剰な水を除去して、ブリスターまたはモールド内に保持される最終的な組成物、例えば膜を得るのに1〜3日間が必要となる可能性がある。
【0082】
乾燥工程の完了後に、ブリスターまたはモールドを、乾燥キャビネットから取り出した。得られた組成物、例えば膜を、例えば含気染料(pneumatic dye)を用いて、所望のサイズに切断した。包装工程は、内部および外部パウチ包装(エチレンオキシド;EOタイプ;PMS MEDICAL LTD)への導入、およびその後の空気加熱密閉を含む二段階工程であった。外部パウチの一方の側には、高密度ポリエチレン(HDPE)ストリップシールを有する透明ポリエステルまたは低密度ポリエチレン(LDPE)ホイルラミネートが含まれた。もう一方の側は、不透明ポリエステルまたはLDPEラミネートであった。酸化アルミニウムでコーティングされたポリエチレン材料をはじめとする他の外部パウチ包装材料を用いることができ、または電子ビーム照射を滅菌に用いる場合には、アルミニウム外部パウチを用いることができる。空気式加熱密閉装置により、パウチの開口端部での連続シールの形成が促進された。パウチの最上部分には、高密度ポリエチレン(HDPE)ストリップシールが裏打ちされた2つの穴またはストリップが含まれた。これらの開口部/窓は、EOガス滅菌工程のために専用に設計されており、気体のみが透過可能であった。窓の透過性により、最終的なEO滅菌工程の間にEOガスの透過が促進された。滅菌および換気に続いて、外部パウチを気体透過性開口部/窓の下で再度密閉し、このガス透過性(最上)の部分を、その後、パウチから除去した。これにより、最後に滅菌された最終的な組成物、例えば膜を含有する完全に密閉された外部パウチが得られた。
【0083】
エチレンオキシド(EO:CO)は、適切な操作温度で、強力なアルキル化剤としての作用を介して滅菌するガスである。正しい条件下では、核酸複合体、機能的蛋白質、および酵素など、生物体の細胞内構成成分は、エチレンオキシドと反応して、アルキル基を付加させる。アルキル化の結果、細胞の再生が妨害されて、 結果として細胞死を招く。本明細書の実施例で用いられた滅菌装置は、DMB 15009 VD(DMB Apparatebau GmbH,ドイツ所在)であった。15:85の比率のEO/CO混合物を、圧力4バールで6時間にわたり滅菌ガスとして用いた。この工程をうまく完了させるために、生成物は、9%以上の水分量を含む必要があり、それは制御された環境条件下で、生成物を1つの領域に保持することにより実現され得る。EO滅菌工程に続いて、生成物を最短で3〜4週間換気して、残留するエチレンオキシドガスおよび任意の残渣のレベルを組成物、例えば膜および包装材料から減少させた。
【0084】
実施例3−特徴づけ
組成物(膜)は全て、本明細書の先に記載された方法を用いて0.6%分散体から調製した。コラーゲン分散体に関する試験は全て、配合後1日以内に実施し;膜を用いた特徴づけ実験は全て、非滅菌膜を用いて膜製造後1ヶ月以内に実施した。
【0085】
分散体の粘度
新鮮なコラーゲン、凍結コラーゲン、非熟成凍結乾燥粉砕コラーゲン、および実施例2による熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンのそれぞれから調製された0.9%コラーゲン分散体の粘度を、ブルックフィールド粘度計(TC−501 Circulating Bathを伴うDigital Rheometer DV−III+)を用いて測定した。粘度値は一定のせん断速度(15s−1)で、25〜40℃の温度範囲にわたり5℃の増分で測定した。温度あたり60回の測定値を平均して、信頼性のある値を得た。
【0086】
分散体の粘度は、温度に依存し、分散体を昇温させると低下する。新鮮なコラーゲンおよび凍結コラーゲンの粘度プロファイルは、検査された温度範囲では同等である。配合の前に2〜8℃の温度で3年間貯蔵された凍結乾燥粉砕コラーゲン(古いLMC)は、新鮮なコラーゲンおよび凍結コラーゲンに比較して、全ての検査温度で有意に低い粘度を示した(図1参照)。貯蔵せずに配合された凍結乾燥粉砕コラーゲン(非熟成LMC)は、新鮮なコラーゲンおよび凍結コラーゲンに比較して全ての検査温度で低い粘度を示した(図4参照)。熟成された凍結乾燥粉砕コラーゲン(配合の前に40℃の温度で貯蔵;熟成LMC)は、非熟成LMCに比較して低い粘度を示し(図4参照)、古い凍結乾燥粉砕コラーゲンと同等であった。
【0087】
図5から理解される通り、本明細書に記載された凍結乾燥粉砕コラーゲンを熟成させることで、本明細書に記載された熟成ステップを受けていない非熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンに比較して、全ての検査温度で改善された粘度が得られる。
【0088】
粘度の差は、膜の加工にとって利点となる。低粘度のコラーゲンは、より容易に脱気して、充填またはキャスティングすることができ;より高濃度を有するコラーゲンを加工することができるため、乾燥時間も短縮される。本発明の変性コラーゲンは、新鮮なコラーゲンおよび凍結コラーゲンに比較して、改善された粘度特性を提供し;熟成ステップは、配合の前に2〜8℃の温度で3年間貯蔵された凍結乾燥粉砕コラーゲン(古いLMC)に比較して、同等の粘度特性を提供し、それにより長期の老化期間をおかずに老化コラーゲン(古いLMC)の改善された粘度特性を提供する。
【0089】
水取込みおよび膨潤
3つの長方形試料(1.5×4cmサイズ)を、新鮮なコラーゲン、凍結コラーゲン、古い凍結乾燥粉砕コラーゲンおよび熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンのそれぞれから調製された5つの膜から切断した。これらの試料それぞれを、WFI(注射用水)中に10分間浸漬し、水取込み(湿重量−乾重量)および膨潤(湿潤厚さ−乾燥厚さ)に関して分析した。試料の厚さは、ミツトヨマイクロメータIP54を用いて測定した。
【0090】
配合の前に2〜8℃の温度で3年間貯蔵された凍結乾燥粉砕コラーゲン(古いLMC)から調製された膜は、新鮮なコラーゲンおよび凍結コラーゲンから調製された膜よりも低い水取込みおよび膨潤を示した(図2aおよび2b参照)。結果の変動性は、新鮮なコラーゲンおよび凍結コラーゲンから調製された膜よりも、配合の前に2〜8℃の温度で3年間貯蔵された凍結乾燥粉砕コラーゲン(古いLMC)から調製された膜で実質的に低かった。
【0091】
図6から理解される通り、検査された各コラーゲン膜の厚さ変動から、配合の前に2〜8℃の温度で3年間貯蔵された凍結乾燥粉砕コラーゲン(古いLMC)から調製された膜を上回る、熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンから調製された膜の改善された水取込みおよび膨潤特性が、凍結コラーゲンから調製された膜を上回る、熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンから調製された膜の水取込みおよび膨潤特性と同等であることが実証される。
【0092】
熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンから調製された膜の低い膨潤特性は、重要な臓器を圧迫して潜在的に損傷を与えるリスクが低い、限定された解剖学的空間にその膜を埋込むことができるため、有利である。つまり手術による癒着を処置または予防する際の使用では、変性コラーゲンから調製された膜を、非常に様々な解剖学的配置および手術手順において使用することができる。
【0093】
コラゲナーゼでの分解
分解試験を、新鮮なコラーゲン、凍結コラーゲン、古い凍結乾燥粉砕コラーゲン、および熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンのそれぞれのバッチあたり4〜5枚の膜を用いて実施した。1枚の膜(4.5×4.5cmサイズ)を、ビーカーに入れて、0.2Nリン酸緩衝液(CaClでpH7.4)15mLで覆った。コラゲナーゼ(コラゲナーゼIA−S型、滅菌済、50mg、SIGMA, REF C5894)を、WFI 5mLで再構成して、得られた溶液0.5mLを混合物に添加した。ビーカー内の溶液を、37℃の振とう水浴(Julabo SW22)(120rpm)を用いて60分間撹拌した。試料の写真を5分毎に撮影することにより、分解を記録した。結果を表1に示す。凍結乾燥粉砕コラーゲンから調製された膜は、最も急速に分解して残渣を含まなかったが、新鮮なコラーゲンおよび凍結コラーゲンから調製された膜は、かなり緩やかに分解して、小さな線維性凝結物が残留した。
【表1】
【0094】
更なる試験において、3.1×3.1cm膜試料を、先に記載された緩衝液15mLに浸し、それに再構成されたコラゲナーゼ溶液100μLを添加した。試料1mLを、5、10、15、25、40、60、および90分後に取り出し;試料を0.45μmシリンジフィルターでろ過して、アリコット100μLを1:30希釈した。210〜230nm(2nm増分)のUV吸収スペクトルを、UV−VIS Photometer Specord 205(Analytic Jena)を用いてブランク溶液に対して測定した。各時点の分解率を、90分の時点(100%として定義)に比較した最大吸収から計算した。結果は、図7から理解され、熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンから調製された膜が、凍結乾燥粉砕コラーゲンから調製された膜よりも急速に分解することを示している。
【0095】
手術による癒着を処置または予防する際に使用するための組成物、例えば癒着バリアとして使用される膜は、癒着を効果的に阻害するために特定の時間、未処置のまま静置する必要がある。コラーゲンがバクテリアの増殖媒体であることが公知であるとの前提から、膜が長期間存在すると、感染リスクが上昇知る可能性がある。これらのインビトロ実験から、熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンから調製された膜が、古い凍結乾燥粉砕コラーゲンから調製された膜よりも急速に、そして尚、新鮮なコラーゲンおよび凍結コラーゲンよりも急速に分解することが実証され、これらの効果がインビボでの挙動にも当てはまることが示唆される。したがって、手術による癒着を処置する際に使用するための、本発明の第一の態様による変性コラーゲンを、または本発明の第二の態様により調製された変性コラーゲンを含む組成物は、癒着バリアの使用の有害作用である感染の確率を低下させることができる。
【0096】
総括すると、本明細書に示された実施例から、本発明の第一の態様による変性コラーゲンを、または本発明の第二の態様により調製された変性コラーゲンを含む組成物、例えば熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンから調製された膜は、新鮮なコラーゲン、凍結コラーゲン、または非熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンから生成された膜に比較して、有意に変化した特性を示すことが実証される。長期の老化期間などをおかずに、老化コラーゲンの変化した特性を提供する熟成ステップは、手術による癒着を予防または処置する際に使用するための組成物の製造に特に有用となり得る。
【0097】
実施例4−溶解
ゲンタマイシンを含む組成物の調製
ゲンタマイシン硫酸塩(Fujian Fukang Pharmaceutical Co. Ltd,中国所在)を含有する組成物(スポンジ)を、溶解試験のために、本明細書に記載された方法の改良法を利用して、1.6%w/wコラーゲン分散体から調製した。各スポンジは、2.5×2.5×0.5cmと測定され、コラーゲン50mgおよびゲンタマイシン硫酸塩50mgを含んだ。手短に述べると、ゲンタマイシン硫酸塩(1.6%w/w)および1N酢酸を、注射用水(WFI)に添加して、透明の溶液が得られるまで撹拌した。コラーゲン(1.6%w/w)を、凍結コラーゲン(製造前に直接解凍)として、非熟成凍結乾燥粉砕コラーゲン(非熟成LMC;製造前に直接凍結乾燥)として、または本発明による変性コラーゲン(熟成LMC)として、その溶液に添加した。混合物を、均質な粘性分散体が得られるまで、市販の高せん断ミキサー(Ultraturrax, IKA,ドイツ所在)を用いて38〜42℃の温度で1〜5分間ホモジナイズした。分散体を250μmメッシュでろ過して、およそ30分間撹拌した。分散体のアリコットをブリスターに充填して、適切なフリーズドライヤーの棚に配置させて、凍結乾燥した。分散体を充填されたブリスターを、分散体を充填されたブリスターを、市販のフリーズドライヤーの棚に移して、0.3℃〜1.5℃のランプレートで約−38℃の温度に凍結させた。およそ30〜60分の平衡期間の後、真空を開始して、棚の温度を約0.5℃/分の速度で約−38℃から約+30℃に引き続き上昇させた。真空と、棚の温度を約−38℃から+30℃に引き続き上昇させることを組み合わせることで、生成物が0℃の温度に達するまでずっと、凍結分散体からの氷の昇華が促進された。コラーゲン温度の均一な上昇を確実にするために、棚の温度を、一定の所望の温度で少なくとも30分間維持しながら、またはコラーゲンが所望の温度に達するまで、少なくとも1つの平衡ステップを実施した。スポンジ状の多孔質組成物を、ブリスターの空洞から取り出し、本明細書の先の実施例2に記載されたパウチに包装した。
【0098】
ブピバカインを含む組成物の調製
ブピバカインHClを含有する組成物(スポンジ)を、溶解試験のために、先に記載されたものと同様の方法に従って製造した。スポンジを、凍結コラーゲン(FWC)および周囲条件下で3年間老化させた脱水凍結コラーゲン(古いLMC)から製造した。各スポンジは、5×5×0.5cmと測定され、コラーゲン75mgおよびブピバカインHCl 100mgを含んだ(図3参照)。同じくスポンジを、周囲条件下で3年間老化させた脱水凍結コラーゲン(古いLMC)、および脱水凍結コラーゲン(非成熟LMC)から製造し、10×10×0.5cmと測定され、ブピバカインHCl 100mgおよびコラーゲン300mgを含んだ(図8B参照)。手短に述べると、1N酢酸をWFIに添加して、簡単に混合した。コラーゲン(0.6%w/w;凍結コラーゲン、凍結乾燥粉砕コラーゲン、または熟成LMCのいずれか)を溶液に添加した。混合物を、均質な粘性分散体が得られるまで、市販の高せん断ミキサー(Ultraturrax, IKA,ドイツ所在)を用いて38〜42℃の温度で1〜5分間ホモジナイズした。分散体を250μmメッシュでろ過した。ブピバカインHCl(0.8%w/w)を少量のWFIに溶解して、コラーゲン分散体に添加した。混合物をおよそ30分間撹拌した。分散体のアリコットをモールドに充填して、市販のフリーズドライヤーの棚に移し、0.3℃〜1.5℃のランプレートで約−38℃の温度に凍結させた。およそ30〜60分の平衡期間の後、真空を開始して、棚の温度を約0.5℃/分の速度で約−38℃から約+30℃に引き続き上昇させた。真空と、棚の温度を約−38℃から+30℃に引き続き上昇させることを組み合わせることで、生成物が0℃の温度に達するまでずっと、凍結分散体からの氷の昇華が促進された。コラーゲン温度の均一な上昇を確実にするために、棚の温度を、一定の所望の温度で少なくとも30分間維持しながら、またはコラーゲンが所望の温度に達するまで、少なくとも1つの平衡ステップを実施した。スポンジ状の多孔質組成物を、モールドから取り出し、本明細書の先の実施例2に記載されたパウチに包装した。
【0099】
ゲンタマイシン溶解試験
ゲンタマイシン硫酸塩を含有する組成物(スポンジ)の溶解特性を、Dissolution Apparatus Type II(Distek Inc.,米国所在)を用い、製造業者の使用説明書に従って二重測定で分析した。スポンジが浮遊するのを防ぐために、スポンジを特注のステンレス鋼シンカーに配置させた。重量測定されたスポンジをPBS緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4、浴槽温度37℃)500mLに浸し、50rpmで24時間撹拌した。試料4.0mLを5、10、30、45、60、120、180、240および1440分後に取り出した。試料を、フタルアルデヒド(試料4mL+1%フタルアルデヒドを含む溶液1.6mL+メタノール4.4mL)での化学的誘導体化反応に、60℃で15分間供した(4/10希釈)。得られた溶液をろ過して、HPLCシステム(島津製作所、日本所在)において、製造業者の使用説明書に従って分析した。RP−18 HPLCカラム、ならびにWFI、メタノール、酢酸および1−ヘプタンスルホン酸ナトリウムを含む移動相を、0.5mL/分の流速で使用した。330nmでのゲンタマイシンのピークC1、C2およびC2aを統合して、試料および同一の試料調製に供された参照標準の曲線下面積から、ゲンタマイシン濃度を算出した。
【0100】
ブピバカイン溶解試験
ブピバカインHClを含有する組成物(スポンジ)の溶解特性を、先に記載された通り、Dissolution Apparatus Type II(Distek Inc.,米国所在)を用いて二重測定で分析した。スポンジが浮遊するのを防ぐために、スポンジを特注のステンレス鋼シンカーに配置させた。手短に述べると、重量測定されたスポンジをPBS緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水、pH6.8、浴槽温度37℃)500mLに浸し、50rpmで24時間撹拌した。試料4.0mLを5、10、30、45、60、120、180、240および1440分後に取り出した。試料をPBS緩衝液で1:1希釈してろ過し、HPLCシステム(島津製作所、日本所在)において分析した。RP−18 HPLCカラム、ならびにリン酸緩衝液pH4.5およびアセトニトリルを含む移動相を、0.5mL/分の流速で使用した。230nmでのブピバカインのピークを統合して、試料および参照標準の曲線下面積から、ブピバカイン濃度を算出した。
【0101】
溶解試験の結果を、図3A、3B、ならびに8Aおよび8Bに示す。
【0102】
これらの溶解試験の結果から、本発明による変性コラーゲンが、コラーゲンを基剤とする組成物からの生物学的活性物質の放出速度を、変性を加えていない単離されたコラーゲンから生成されたそれらの組成物に対して低下させ、それにより薬物放出のより持続的な作用を有する薬物送達組成物を提供する、薬物送達組成物を提供することが、実証される(図3Aおよび3B参照)。
【0103】
その上、図8Aおよび8Bから理解される通り、熟成LMCは、非熟成凍結乾燥LMCまたは凍結コラーゲンから調製された組成物に比較して、生物学的活性物質の有意に低い放出速度を示し、それにより薬物放出のより持続的な作用をもたらす、薬物送達組成物を提供する。
【0104】
この長期間の放出は、水溶性が良好な医薬的有効成分(API)を含有するコラーゲンを基剤とする生成物にとって有益となり得る。この組み合わせでの放出速度の遅延は、その他の方法で薬物送達組成物の化学的架橋を利用せずに実現することは、困難である。局所および埋込み投与の両方において、薬物送達組成物の成分の長期放出は、より長期の治療作用および局所有効性の改善をもたらすことができる。
【0105】
実施例5−貯蔵
非熟成凍結乾燥粉砕コラーゲン(非熟成LMC)を、実施例1に記載された通り調製し、本明細書に記載された通りポリエチレン容器(袋)に最長で4週間貯蔵することにより熟成させた。得られた材料は、熟成凍結乾燥粉砕コラーゲン(熟成LMC)と呼称した。
【0106】
粘度の値を、実施例3に記載された通り、記録された時間(1、2、3、および4週間の貯蔵)それぞれで測定した。手短に述べると、粘度値をブルックフィールド粘度計(TC−501 Circulating Bathを伴うDigital Rheometer DV−III+)を用いて、一定のせん断速度(15s−1)で、30〜65℃の温度範囲にわたり測定した。1〜2%の低水分量および13〜15%の高水分量を有する熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンの粘度値を測定した。
【0107】
図9から理解される通り、一般に熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンの粘度は、熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンの水分量による影響を受けない。その上、貯蔵温度の上昇により、熟成凍結乾燥粉砕コラーゲンの粘度低下が促進される。間違いなく、本明細書に記載された凍結乾燥粉砕コラーゲンの熟成は、検査された貯蔵時間全てで粘度の改善をもたらす。低い貯蔵温度では、目的粘度に達するのに必要な時間が、長期化される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9