特許第6720332号(P6720332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6720332石油生成物を製造するための方法、装置、コントローラ及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720332
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】石油生成物を製造するための方法、装置、コントローラ及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20200629BHJP
【FI】
   C10G1/10
【請求項の数】16
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-551940(P2018-551940)
(86)(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公表番号】特表2019-513180(P2019-513180A)
(43)【公表日】2019年5月23日
(86)【国際出願番号】US2017024872
(87)【国際公開番号】WO2017173006
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2018年12月26日
(31)【優先権主張番号】62/315,639
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/473,569
(32)【優先日】2017年3月29日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518344265
【氏名又は名称】レス・ポリフロー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャベル、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ、リチャード・エー
(72)【発明者】
【氏名】グリスピン、チャールズ、ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ジェンサー、メーメット、エー
(72)【発明者】
【氏名】ヘンセル、ジョセフ、ディー
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−089742(JP,A)
【文献】 特開2015−057500(JP,A)
【文献】 特表2015−512965(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02457977(EP,A1)
【文献】 国際公開第2016/042213(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/10
C08J 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー又は混合ポリマー物質を含む原料を、パイロリシス反応容器に装入する工程であって、
前記反応容器は前記反応容器を通って前記原料を前進させるスクリューを有し、
前記反応容器は前記反応容器中のポリマー原料の量に基づいて、少なくとも60%の自由体積を有する;
嫌気性操作で、前記反応容器を通って溶融物質を前進させながら、前記反応容器に熱エネルギーを加え、前記原料を溶融物質及びガスに変換する工程;
前記反応容器を取り囲む外側シュラウド;及び前記外側シュラウドと前記反応容器との間に延在し、複数の熱交換媒体用流体加熱チャネルを規定する内壁又は複数の内壁を含み、添加された触媒を含んでいない、
前記反応容器において前記溶融物質及びガスをクラッキング及び改質し、石油ガス生成物を生成する工程;
を含み、
前記反応容器は回転しない
石油ガス生成物を製造する方法。
【請求項2】
前記方法は半連続又は連続処理であり、前記原料の組成は処理中に変化する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応容器は、前記反応容器の水平軸に沿った複数の連続する反応器領域と、パイロリシスにより前記溶融ポリマー物質をガス状分子に熱分解しながら、前記反応容器の前記自由体積内の垂直方向及び軸方向の両方で熱エネルギーと温度勾配を制御することとを含み、前記温度勾配は、前記反応容器の底部表面の温度と、前記反応容器の頂部に沿う前記石油ガス生成物の温度との間の温度差であり、50℃から450℃までにわたる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の反応器領域の各々のエネルギー分布は、前記複数の反応器領域の各々内の温度勾配を制御することによって制御され、ガス出口ポートで反応容器を出る前記石油ガス生成物の温度は、315℃から510℃までにわたり、前記反応容器を出る前記石油ガス生成物の圧力は、0psigから50psigまでにわたる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法から得られる代替可能なガス生成物は、前記原料の50重量%から98重量%にわたる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の反応器領域は、第1の反応器領域及び第2の反応器領域を含み、熱エネルギーは、第1の熱源によって前記反応容器の前記第1の反応器領域に加えられ、熱エネルギーは、第2の熱源によって前記第2の反応器領域に加えられる請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の反応器領域の各々内の温度勾配は、反応装置の第1の反応器領域に沿って第1の流体チャネル内の排出ガスを運び、かつ前記反応装置の第2の反応器領域に沿って第2の流体チャネル内の排出ガスを運ぶことによって制御される請求項3に記載の方法。
【請求項8】
ガス状生成物を回収することを含み、回収された前記ガス状生成物は、ガス状生成物の重量に基づいて、少なくとも50重量%の凝縮性炭化水素を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
生成された凝縮性炭化水素は、ガス状生成物の重量に基づいて、それぞれ10重量%から60重量%までのナフサ、留分及び燃料オイルを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
炭化水素質原料物質の組成は、10から70%までのポリエチレン、10%から70%までのポリプロピレン、10%から30%までのポリスチレン及び0%から30%までのポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ナイロンなどの他の一般用途のポリマー物質に及ぶ請求項1に記載の方法。
【請求項11】
反応容器であって、前記反応容器はポリマー原料を受け入れ、前記反応容器は前記反応容器中の前記ポリマー原料の量に基づいて、少なくとも60%の自由体積を有し、前記反応容器は前記反応容器を通って前記原料を前進させるスクリューを有する該反応容器;
前記反応容器を取り囲む外側シュラウド;
前記外側シュラウドと前記反応容器との間に延在し、複数の熱交換媒体用外部流体チャネルを規定する内壁又は複数の内壁;
を含み、
前記反応容器は前記シュラウドの外部流体チャネルを通して加熱され、それによって前記原料は溶融材料に変換され;
前記反応容器は、クラッキング及び改質により前記ポリマー原料の溶融物質をパイロリシスし、石油ガス生成物を生成し;
前記反応容器は前記反応容器と前記シュラウドを通って石油ガス生成物流が出るための少なくとも1つの生成物導管を有し、
前記反応装置は非回転式である反応装置。
【請求項12】
前記外側シュラウドと前記反応容器との間に延在する複数の前記内壁を含む請求項11に記載の反応装置。
【請求項13】
少なくとも1つの前記加熱された流体チャネルは、チャネル通気孔を含有し、
前記ポリマー原料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合体、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリ(オキシド)、ポリ(スルフィド)、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、及びジエン、オレフィン、スチレン、アクリレート、アクリロニトリル、メタクリレート、メタクリロニトリルを含むモノマーの重合によって生成されるポリマー、及び二塩基酸とジアミン、ラクトン、ハロゲン化ビニル、又はビニルエステルのポリマー、及びそれらのブロック共重合体、及びそれらのいずれかの組み合わせを含む請求項12に記載の反応装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの加熱された流体チャネル通気孔は流量制御バルブを含み、前記反応容器の前記自由体積は少なくとも80%である請求項13に記載の反応装置。
【請求項15】
複数の熱源を含み、少なくとも1つの熱源は前記流体チャネルに配置されている請求項11に記載の反応装置。
【請求項16】
前記生成物導管内に温度センサを含む請求項11に記載の反応装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月29日に出願された「Process, Apparatus, Controller and System for Producing Petroleum Products」と題する米国特許出願第15/473,569号、及び2016年3月30日に出願された「Pyrolysis Process, Apparatus, and System for Producing Petroleum Product」と題する米国仮出願第62/315,639号の利益を主張し、その全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、一般に、ポリマーを含有する原料から石油生成物を製造するための方法、装置、及びシステム、並びにその方法を実施するための装置及びシステムに関する。本発明はまた、石油生成物の製造方法を管理するためのコントローラに関する。
【0003】
発明の背景
石油産業では、商業的に実現可能な液体生成物が、様々な原材料から製造される。これらの材料は、市場価格及び品質要求を満たすために、効率的かつ均一な品質で変換されなければならない。プラスチック廃棄物は、ポリマーの種類を経済的に仕分けることが困難であり、また廃棄物を代替可能な液体生成物に一貫して変換することが困難であるために、伝統的に、埋め立て地に処分されているか、発熱量のために焼却されている。埋め立て及び焼却の両方は、環境上の不利益と、このエネルギーの豊富な原料について低い価値及び/又は高コストの解決策とをもたらす。
【0004】
パイロリシスプロセスは、熱分解プロセスの一例であり、これはプラスチック廃棄物流をガスに効率的に変換し、続いて石油生成物及び石油化学生成物へのさらなる処理のために液体に凝縮することができるという点で有望性を示している。パイロリシス技術は、廃棄物流中のプラスチックの全範囲を変換することができず、そのため、原料の調製において、ある程度の仕分けを実施する必要があり、経済的実行可能性を低下させている。さらに、プラスチック廃棄物流の変化により、多くのパイロリシス技術は、要求される業界の仕様を一貫して満たすことができる石油生成物にアップグレード可能な一貫した最終製品を製造することができない。そのような仕様外の製品は、大量のエネルギーを消費するさらなる処理を必要とし、したがって経済的実行可能性をさらに低下させる。
【0005】
現在、石油生成物を製造するために利用可能ないくつかの方法があるが、エネルギー消費、生成物収率及び製造される生成物の品質の点でこのような方法には欠点がある。
【0006】
発明の概要
本発明の1つの態様において、石油生成物を製造する方法は、混合ポリマー物質を含む原料を、反応装置の反応容器に装入すること;嫌気性操作で反応装置を通って原料を前進させながら、反応容器に熱エネルギーを加えること;及び凝縮性石油ガス生成物を生成するために、反応容器へのエネルギー入力を制御し、反応容器内の温度勾配を制御することを含む。凝縮性石油ガス生成物を製造する方法は、原料を反応容器内の固体不活性残渣、溶融流体及びガスに変換し、反応容器から出る凝縮性石油ガス生成物を生成するために管理される現場化学反応を含む。
【0007】
本発明の別の態様において、石油生成物を製造する方法は、混合ポリマー物質を含む原料を、複数の連続する反応器領域を有する反応装置に装入すること;反応装置を通って原料及び原料から生成された生成物を前進させながら、反応容器に熱エネルギーを加えること;複数の連続する反応器領域の各々への熱エネルギー入力を独立に制御し、反応装置の複数の連続する反応器領域のそれぞれの中の温度勾配を制御することを含む。
【0008】
本発明の別の態様において、混合ポリマー物質の熱クラッキングを実施するための反応装置は、反応容器と、反応容器を取り囲む外側シュラウドを含み、反応装置の反応容器と外側シュラウドとの間に排出ガスを運ぶチャネル又はプレナムを規定している。別の例示的な実施形態において、反応装置は、反応容器と外側シュラウドとの間に延在し、反応装置の反応容器と外側シュラウドとの間に排出ガスを別々に運ぶための第1の反応器領域の第1のチャネル及び第2の反応器領域の第2のチャネル又はプレナムを規定する内壁を含む。
【0009】
本発明の別の態様は、各反応器領域における質量流量及び温度プロファイルの手動又は自動制御を含む、反応装置における熱クラッキング及び再結合反応を制御するための手段を提供する。
【0010】
本発明の別の態様において、石油生成物を製造するためのシステムは、反応装置と、石油生成物を製造する方法を制御するための、反応装置と通信するコントローラとを含む。コントローラは、反応装置への信号を送受信して反応装置のいくつかの操作パラメータを制御し、操作パラメータは少なくとも2つの軸に沿った反応容器内の温度プロファイルを含む。
【0011】
本発明の別の態様において、石油生成物の製造方法を制御するためのコントローラは、第1の反応器領域からデータを受信する第1の制御ポートと、反応装置の第1の反応器領域にデータを送信する第1の通信ポートとを含む。コンピュータ装置は、第1の制御ポート及び第1の通信ポートと通信する処理ユニットを含み、処理ユニットは制御論理を含む。制御論理は、第1の反応器領域におけるガス生成物の温度測定値を含む第1の制御ポートのデータ信号を受信すること、及び第1の反応器領域における入熱流量と、第1の反応器領域において反応装置から出る排出ガス及び生成ガスのうちの少なくとも一方の質量流量との少なくとも1つを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示の前述の及び他の特徴は、添付の図面を参照して以下の説明を読むことにより、本開示が関連する当業者には明らかになるであろう。
【0013】
図1図1は、本発明の例による、石油生成物を製造するための方法の概略流れ図である。
図2図2は、本発明の例による、石油生成物を製造するためのシステムの概略断面図である。
図3図3は、本発明の別の例による、石油生成物を製造するためのシステムの概略断面図である。
図4a図4aは、本発明の例による、石油生成物を製造するためのシステムのコントローラを実施する方法を示す流れ図である。
図4b図4bは、本発明の例による、石油生成物を製造するためのシステムのコントローラを実施する方法を示す流れ図である。
図5図5は、本発明の例示的な実施形態による、71%の自由体積を有する反応器における混合ポリマーの3種の異なる供給組成物を使用して製造された凝縮性石油ガス生成物の重量損失パーセント対温度を示すグラフである。
図6図6は、本発明の例示的な実施形態による、88%の自由体積を有する反応器における混合ポリマーの2種の異なる供給組成物を使用して製造された凝縮性石油ガス生成物の重量損失パーセント対温度を示すグラフである。
図7図7は、本発明の例示的な実施形態による、97%の自由体積を有する反応器における混合ポリマーの供給組成物を使用して製造された凝縮性石油ガス生成物の重量損失パーセント対温度を示すグラフである。
図8図8は、本発明の実施形態による、71%の自由体積と88%の自由体積を有する反応器において製造された凝縮性石油ガス生成物の変化率及び平均変化率パーセントを示すグラフである。
図9図9は、本発明の例示的な実施形態による、71%、88%、97%及び99%の自由体積を有する反応器で製造された凝縮性石油ガス生成物の重量損失パーセント対温度のプロットを示すグラフである。
図10図10は、本発明の例による、石油生成物の製造方法から製造されたガス流の凝縮性部分の液体石油クロマトグラフトレースのグラフを示す。
【0014】
詳細な説明
本発明の石油生成物の製造方法、反応装置及びシステムの様々な例は、一般に、混合ポリマー廃棄物を含むがこれに限定されない混合ポリマー物質を、一貫した品質の出力の代替可能な生成物に変換する方法及び設備に関する。これら代替可能な生成物は、ナフサ、留分(例えばディーゼル)、及びガスオイル(例えば重油及びワックス)を含むが、これらに限定されない。本明細書における石油生成物の製造方法は、少なくとも約50%、別の例では約50%から約90%まで、別の例では約60から約90%まで、そして別の例では約70%から約90%までの代替可能な生成物を産出することができる。本明細書における方法の例示的な実施形態は、該方法によって生成されたガス生成物に基づいて、少なくとも約55%、約60%から約90%まで、別の例では約70%から約92%までの凝縮性ガスを生成することができる。
【0015】
石油生成物の製造方法は、混合ポリマーを含む原料のパイロリシスと、反応容器内で固体不活性残渣、溶融流体、及びガスを生成する現場反応とを含む。固体不活性残渣流及びガス生成物流は反応器を出る。凝縮性及び非凝縮性ガス生成物への原料の質量変換は、反応容器内で起こる。凝縮性ガス生成物の約100重量%までが使用可能な燃料生成物に変換され、非凝縮性ガスの100%までが燃料として使用され得る。
【0016】
本明細書で使用される用語「原料」は、石油生成物の製造方法中に使用される少なくとも2種の異なるポリマーの混合物を含む物質をいう。原料はポリマースクラップを含むが、これに限定されない。
【0017】
本明細書で使用される用語「ポリマースクラップ」は、その意図された目的のためにもはや必要とされない製造後及び使用後のプラスチックをいう。例えば、使用後のプラスチックは、典型的には、未使用のプラスチックの成形、押出等のような熱処理及び変形によって製造された三次元製品である。
【0018】
本明細書で使用される用語「炭化水素質物質」は、炭素及び水素原子を含む物質、例えば原料物質をいう。
【0019】
本明細書で使用される用語「溶融物質」は、いくらかの固体を有する液体に部分的に溶融した物質又は部分的にのみ溶融した物質をいう。
【0020】
本明細書で使用される用語「パイロリシス」は、高温での有機物質の熱分解をいい、低レベルの酸素ガス、例えば10%未満の酸素の存在下であり得る。
【0021】
本明細書で使用される用語「熱分解」は、より高分子量のポリマー物質が、より低分子量の物質に分解されるプロセスをいう。
【0022】
本明細書で使用される用語「熱クラッキング」は、より高分子量の有機物質、例えばオリゴマーが、より低分子量の有機物質にさらに分解される蒸気空間で起こるプロセスをいう。
【0023】
本明細書で使用される用語「再結合反応」は、より小さな分子断片が反応してより大きなより高分子量の物質を形成する蒸気空間で起こる化学プロセスをいう。
【0024】
用語「嫌気性」は、環境中のガスの容積に基づいて、低い、例えば3%未満、2%未満、1%未満又はほぼゼロの酸素ガスO、又は「遊離」若しくは「非結合」の酸素を有する環境をいう。
【0025】
本明細書で使用される用語「固体不活性残渣」は、原料の熱分解中に形成される、又は固体のままである固体物質をいう。
【0026】
本明細書で使用される用語「ガス」は、凝縮性ガス、非凝縮性ガス、及び過熱ガスを含む全ての気体をいう。
【0027】
本明細書における用語「流体」は、気体、液体、スラリー、又は溶融塊である物質をいう。
【0028】
本明細書で使用される用語「固体」は、形状がしっかりして安定しており、液体又は気体ではない物質をいう。固体の例は、原料物質及び固体不活性残渣を含む。
【0029】
本明細書における用語「バッチ処理」は、全ての反応物質がプロセスの開始時に反応器に入れられ、その後、所定の反応過程に従って処理されるが、その間材料が反応器に供給されないか又は反応器から除去されないプロセスである。
【0030】
本明細書における用語「連続処理」は、連続的に、反応物質が導入され、同時に生成物が取り出されるプロセスをいう。
【0031】
本明細書における用語「半連続処理」は、バッチ又は連続処理のどちらにも適合しないプロセスをいう。例えば、半連続処理は、反応物質の一部が最初に装入されるのに対して、残りは反応が進行するにつれて連続的に供給されるプロセスを含むことができる。別の例は、1つ以上の生成物が連続的に除去されることを除いてバッチ式反応器に類似している。別の例において、このプロセスは、反応が進行するにつれて反応物質が連続的に供給され、生成物が断続的に除去される連続処理に類似している。
【0032】
本明細書で使用される用語「触媒」は、反応の反応速度を速める物質をいう。
【0033】
本明細書で使用される用語「添加された触媒がない」は、プロセスに触媒物質を添加していない石油生成物を製造する方法、例えばプロセスを実施するために原料に添加される、又は反応容器に添加される触媒はないことをいう。
【0034】
本明細書で使用される用語「熱流量」は、反応容器内の時間当たりに加えられる熱をいう。
【0035】
本明細書で使用される用語「熱流束」は、材料が接触する加熱表面の単位面積当たりに加えられる熱流量をいう。
【0036】
本明細書で使用される用語「収率」は、原料の質量当たりの凝縮されたガス生成物の質量として定義される。
収率=(凝縮ガス生成物の質量/原料の質量)×100
例えば、凝縮ガス生成物の質量が50kgであり、原料の質量が75kgである場合、収率は66.7%である。
【0037】
本明細書で使用される用語「制御された一貫性」は、原料組成に変化があるとして、凝縮性燃料生成物、例えばナフサ、留分及びガスオイルの組成の制御を維持する能力をいう。
【0038】
図1は、本発明の態様による石油生成物の製造方法のプロセス流れ図1である。供給ユニット2は、原料流3に沿って反応装置4に流れる原料物質を含む。熱分解プロセス、例えばパイロリシスプロセスは、反応装置4内で生じるが、原料を、石油ガス生成物流5に変換し、これは反応装置を出てガス回収ユニット6に回収される。回収されたガスは凝縮されて生成物貯蔵タンク(図示せず)に貯蔵することができる。固体不活性残渣流7もまた、反応装置を出て固体回収ユニット8に回収される。回収されたガス及び回収された固体の両方は、さらに後処理を受けることができる。供給ユニット2は、例えば、原料物質を所定の供給速度で反応装置に向けて前進させるオーガー(auger)であり得、供給ユニットは、任意に原料に熱を供給することができる。本明細書では、石油生成物を製造するためのプロセスは、反応中に供給速度が変化する場合、バッチ、半連続、及び連続処理で一貫した品質の生成物を得ることができるということが分かる。このプロセスは、処理中に原料組成が変化する場合でも、一貫した品質の生成物を得ることもできる。
【0039】
プロセスは、反応装置から出る所望のガス生成物組成を達成するために、縮合及び再結合反応と組み合わされた一連のガスクラッキング反応を提供する。本明細書のいずれの例においても、プロセスは、バッチ処理、連続処理又は半連続処理で実行することができる。本明細書のいずれの例においても、石油生成物を製造するためのプロセスは、反応化学の管理が反応装置の1つの反応領域において、又は単一の反応容器内に包含される複数の反応領域において行われるかにかかわらず、反応容器における反応化学の管理を含む。本明細書の例示的な実施形態のいずれにおいても、石油生成物を製造するためのプロセスは、処理を実施するために添加された触媒を使用しない。
【0040】
本発明の1つの例示的な実施形態において、連続処理は、混合廃プラスチックを、ナフサ、留分、ワックス及びガスオイルなどの代替可能な石油生成物に、パイロリシス及び同時気相クラッキング及び再結合反応により変換する。本明細書では、反応容器内で生じる様々なクラッキング及び再結合反応に影響を及ぼすために、エネルギー分布を制御することができ、このエネルギー分布は様々な方法で制御することができることが見出された。例えば、エネルギー分布は、反応容器への入熱を制御することによって、及び反応容器内の温度勾配を制御することによって制御することができる。温度勾配は、入熱を制御することによって、及び反応容器の熱の取り出しを制御することによって制御することができる。熱の取り出しは、例えば、反応装置の反応容器の外表面を通過する及び/又は接触するガスの流量及び/又は温度を制御することによって制御することができる。別の例において、エネルギー分布は、入熱を制御することによって、及び反応装置容器の複数の反応器領域内の温度勾配を独立に制御することによって制御することができる。反応装置及びプロセスの設計は、一連の制御されたパイロリシス及び制御された気相クラッキング及び再結合反応が、組成が変化し得る混合原料を利用して、制御された一貫性を有する石油生成物を製造することを可能にする。
【0041】
熱エネルギーは、単一の反応容器又は複数の連続する反応器領域を含む反応容器に、独立に加えられ及びそこから取り出すことができる。反応装置内及び/又は反応容器の底部表面と反応器の上部の反応器出口ポートとの間の連続する反応器領域のそれぞれ内の温度勾配。本明細書に開示されたプロセスは、混合ポリマースクラップを含む多種多様な混合ポリマーから所望の組成分布の石油生成物を製造することが見出された。一貫性のない組成混合物の原料は、同じ生成物組成の実質的に同じ標的とされた分布、すなわち、所望の「組成分布」を生成することができる。例えば、本明細書の方法によって製造された生成物は、それぞれ目標組成、所望の百分率範囲のナフサ、留分、ワックス、ガスオイルを含み得る。以下の例は、石油生成物の制御された一貫性を示す。例えば、炭化水素質原料物質の組成は、約10%から約70%までのポリエチレン、約10%から70%までのポリプロピレン、約10%から約30%までのポリスチレン及び約0%から30%までの、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ナイロン等を含むが、これらに限定されない他の一般用途のポリマー物質にわたり得る。別の例において、原料は、少なくとも65重量%の炭化水素質物質を含有する少なくとも60重量%の混合ポリマースクラップを含む。
【0042】
図2は、本発明の一態様による、混合ポリマーのパイロリシスを実施するためのシステム10の概略図である。1つの例において、システム10は、非回転式の反応容器14と、反応容器14を実質的に取り囲む外側シュラウド16とを含む二重壁装置である反応装置12を含む。実施形態において、反応装置12は非回転式装置である。外側シュラウド16は、反応容器14から離間され、例えば約2〜20センチメートルにわたる距離だけ離間され、内壁18は、反応容器14と外側シュラウド16との間に延在して、流体チャネル又はプレナム20及び22を規定する任意の分離壁である。内壁が存在するとき、流体チャネル20及び22は、熱交換媒体、例えば、ガス流体が、反応容器14と外側シュラウド16との間の反応容器14の外部に沿って別々に循環する又は運ばれることを可能にする。反応装置12は、プロセスの熱損失を低減し、熱効率を改善するために、外側シュラウドの外部に沿って断熱材を任意に含む。
【0043】
図2に示すように、反応装置12は、複数の反応器領域、例えば、第1の反応器領域Z、及び第2の反応器領域Zを有し、これらは反応装置の水平軸、軸Xに沿って、例えば入口ポートから出口ポートまでの連続かつ隣接する反応器領域である。別々の反応器領域Z及びZは、反応容器14の外表面の周囲に沿って延在し、反応容器14と外側シュラウド16の両方に接触する内壁18の位置によって規定される。反応容器14は、反応器の水平軸に沿った流れを示す矢印19の方向での原料の流れを受け入れているが、反応容器14の反応器領域Z及びZは、流体チャネル20及び流体チャネル22を分離する内壁18の位置によって規定される。図示するように、例えば、反応器領域Zは、反応装置12の上流部23(すなわち、内壁18間の点線24の上流に示される)として示され、流体チャネル20によって取り囲まれる反応容器14の容積と、流体チャネル20の環状の容積も含む。反応器領域Zは、反応装置12の下流部25(すなわち、内壁18間の点線24の下流に示される)として示され、流体チャネル22によって取り囲まれる反応容器14の容積と、流体チャネル22の環状の容積も含む。
【0044】
したがって、本発明の例において、混合ポリマー物質のパイロリシスを実施するための反応装置は、反応容器14と、反応容器を取り囲む外側シュラウド16とを含む。内壁18は、外側シュラウドと反応容器との間に延在し、反応容器と外側シュラウドとの間に流体、例えばガス流体を別々に運ぶための第1の流体チャネル20及び第2の流体チャネル22を規定する。流体チャネル20は、第1の反応器領域Zにおいて反応容器14の周りに配置され、流体チャネル22は、反応装置12の第2の反応器領域Zにおいて反応容器14の周りに配置される。反応装置12は、それぞれ第1の領域Z及び第2の領域Zに熱エネルギーQ及びQを独立して供給する複数の熱源、例えばH1及びH2をさらに含む。例えば、熱源H及びHは、導管26を通って流れるガス燃料によって燃料供給されるガスバーナーを含むことができ、その流れはバルブ28、30によって制御することができる。本発明の一例によれば、熱源H及びHは、反応装置12の水平長さに沿って、すなわち水平軸に沿って、反応容器14と反応器領域Z及びZそれぞれの外側シュラウド16との間で反応装置12内に配置される。別の例において、熱源H及びHは、反応装置12の外側又は外部へ配置される。熱エネルギー入力は、熱源H及びHを介して各反応器領域Z及びZで独立に制御され、温度勾配は、連続する反応器領域のそれぞれ内において第2の軸に沿って、例えば縦軸に沿って生み出される。反応容器に装入された原料の単位質量当たりの熱エネルギーは、約0.5MJ/kg/hrから約5MJ/kg/hrまでにわたり得る。
【0045】
本明細書に開示された例示的なプロセスは、独立に制御される複数の連続する反応器領域に沿って混合ポリマー物質を運ぶ。すなわち、熱エネルギーは、連続する反応器領域の各々内で温度勾配を、例えば、軸Yとして示される縦軸に沿った温度勾配を生み出しながら、複数の連続する反応器領域のそれぞれに独立に加えられ、そこから取り出される。原料と接触するパイロリシス容器の底部表面60から反応容器の出口ポート54における反応容器25の頂部までの温度勾配又は温度差は、広範囲、例えば約50℃から約450℃まで、別の例では約90℃から約350℃まで、別の例では約100℃から約300℃までに及び得る。
【0046】
高温ガスは、流体チャネル20及び22を通って流れる。この例において、このガスは、熱源Hによって生成され、チャネル20を通って流れる排出ガスであり、チャネル22を通って流れる熱源Hによって生成された排出ガスから分離されて流れ、すなわち混合されない。反応装置は、プロセスの固体残渣を排出するための開口部39を有する出口ポート38に熱エネルギーQを供給するための任意の熱源Hを含むことができる。熱源Hが反応装置の外側シュラウド16の内部又は外部、又はその両方に配置することができる。熱源H3は、反応容器14と外側シュラウド16との間に位置するガスバーナーである場合、排出ガスは、例えば反応器領域Zの流体チャネル22内を循環することができる。熱エネルギーは、反応容器の底部における溶融ポリマー及び/又は残留固体から反応容器の上部のガスまで制御される温度勾配を生み出しながら、複数の連続する反応器領域の各々に、独立に加えられ、そこから取り出される。
【0047】
反応装置12は、各反応器領域Z及びZそれぞれにおいて、外側シュラウド16に沿ってチャネル通気孔40及び42を含む。通気孔40及び42は、それぞれチャネル20及び22からの排出ガスの排出を制御するために、流量制御装置44及び46、例えば、バルブ、ダンパー及びこれらの組み合わせをさらに含む。流量制御装置は、反応容器内のガスを凝縮させるために、及びクラッキング反応及び生成物を制御するために各反応器領域のエネルギー入力及び/又は取り出しを制御すべく、反応容器と外側シュラウドとの間のチャネルからの排出ガスの流れを独立に調節をするか、又は完全に遮断するために使用することができる。ダンパー以外の流量制御装置を、通気を制御するために使用することができることが理解されるべきであり、そのような装置は、例えばバルブを含むことができるが、これに限定されない。複数の連続する反応器領域のそれぞれから取り出される熱エネルギーは、独立に制御されて、ガスクラッキング及び再結合プロセス並びにプロセスから得られた生成物を制御することができる。
【0048】
蒸気生成物を含むガス流は、反応容器14の少なくとも1つの生成物導管、例えば50及び52を通って反応装置12を出る。各生成物導管50、52は、蒸気生成物の大量排出及びある程度のガス組成を、プロセスを通じて任意に制御するためのバルブ、例えばそれぞれバルブ54及びバルブ56を任意に含む。反応容器を出るガス生成物は、さらなる処理のために回収される。例えば、反応器を出る石油ガス生成物の平均質量流量は、約0.008kg/L・hrから約0.06kg/L・hrまで(0.5ポンド/立方フィート/時間〜約3.5ポンド/立方フィート/時間)にわたり得る。
【0049】
本発明の例によれば、プロセスは、混合ポリマー物質が反応装置を通って前進される際に、混合ポリマー物質に熱エネルギーを加えることを含む。プロセスは、連続する反応器領域Z及びZに加えられる熱エネルギーを独立に制御することと、連続する反応器領域Z及びZから取り出される熱エネルギーを独立に制御することを含む。熱エネルギーの制御は、各反応器領域内に、例えば、軸Yとして示される縦軸に沿って、反応容器14の底部60から頂部62までの温度勾配を生み出す。本明細書に開示された本発明の例示的なプロセスは、加えられる及び取り出される熱エネルギーを制御して、一連の縮合、ガスクラッキング及び再結合反応を提供する還流を促進し、したがって所望の組成品質を保証する。
【0050】
さらに図2を参照すると、少なくとも2種の異なるポリマーを含む混合ポリマー物質の原料70は、反応装置12の入口74の開口部72を通って供給される。原料70が加熱され、反応装置を通って運ばれると、原料70は溶融ポリマー76、固体残渣78及びガス80状態への物理的変換を受ける。本明細書に記載されたパイロリシスプロセスは、溶融ポリマー、残留固体及び気相間の明確で、相互作用する領域又は界面を制御する。本明細書に開示された本発明の例示的なプロセスは、ガス生成速度、濃縮速度、したがって気相中で生成される分子の種類を制御する。
【0051】
操作中、反応容器14内で生成した、流れるガス流80及び81として示されるガスの温度は、原料中の混合ポリマーの溶融温度又はガラス転移温度を実質的に超える。反応容器14内の温度は、ポリマー溶融物及び残留固体と接触する反応器の底部60から、ガス状生成物と接触する反応器の頂部62まで変化する。
【0052】
したがって、1つの例において、石油生成物の製造方法は、反応装置12に混合ポリマー物質を含む原料70を装入することと、反応装置12を通って、原料及び原料により生成された生成物を前進させながら原料を加熱することを含む。複数の連続する反応器領域のそれぞれに加えられる熱エネルギーは、独立に制御され、複数の連続する反応器領域のそれぞれから取り出される熱エネルギーは、独立に制御される。パイロリシスプロセスによって生成され、反応器から回収された生成物は、ガス状生成物及び残留固体を含む。ガス状生成物は、例えばディーゼル燃料及びナフサ等の石油生成物を製造するために、さらなる処理、例えば水素処理のために回収される。
【0053】
プロセスは、操作上、嫌気性である。用語「嫌気性」は、酸素ガス、O、又は「遊離」若しくは「非結合」の酸素の含有量が低い、又はゼロに近い環境をいう。すなわち、反応装置12に入る原料の初期加熱時及びパイロリシスプロセスの全体にわたって、反応容器14は、反応容器の内部容積に基づいて、約3容量%未満の酸素、別の実施形態では約2容量%未満の酸素、別の実施形態では約1容量%未満の酸素、及びさらなる別の実施形態では約0.01容量%から約1容量%までの酸素を含む。
【0054】
反応装置12の反応容器14への原料の装填は、反応容器のサイズ及び形状に適合するように制御される。材料が、反応容器に沿って及び連続する反応器領域を通って運ばれるにつれ、溶融ポリマーの質量が減少し、残留固体が残る。残留固体が乾燥して、例えば約5重量%未満の炭素を含むまで、残留固体に熱を加える。
【0055】
原料の平均装填面積は、反応器形状に依存する層厚みの変化を考慮に入れている。例えば、円筒形又は矩形、水平型の、すなわち高さの少なくとも2倍又は3倍の長さを有する反応器形状において高い容積対表面積を有する反応器が望ましい。本明細書に記載された例示的な実施形態において、反応器は、パイロリシスの間に残留固体の層を形成するのに十分な深さ又は直径を、及び制御された気相クラッキング及び再結合反応を可能にする、原料上の十分なヘッドスペースをも有する。反応器は、初期加熱時に少なくとも約30%の自由体積、いくつかの実施形態では加熱時に少なくとも約60%の自由体積、別の実施形態では加熱時に少なくとも約80%の自由体積、他の実施形態では加熱時に約60%から約99%までの自由体積を有する。
【0056】
ガス状生成物及び残留生成物の形態にある生成物は、反応装置から回収することができる。ガス状生成物は、少なくとも1つの生成物導管、例えば導管50から回収される。生成物組成プロファイルは、連続する反応器領域の各々におけるエネルギー入力及び取り出しを制御することによって制御することができる。反応装置12から製造された総ガス状生成物は、原料の重量に基づいて、少なくとも約50重量%、別の例では少なくとも約82重量%、別の例では少なくとも約93重量%、そして別の例では少なくとも約96重量%を構成する。凝縮性炭化水素は、生成される総ガス状生成物に基づいて、約50重量%から約98重量%まで、別の例では約60重量%から90重量%まで変化する。例えば、生成された凝縮性炭化水素は、生成されたガス状生成物の重量に基づいて、約10重量%から約60重量%までの、例えばナフサ、留分、又はガスオイルの3つの流れの少なくとも1つを含む。例えば、生成された凝縮性炭化水素は、ガス状生成物の重量に基づいて、約10重量%から約60重量%までの、別の例では約15重量%から約35重量%までのナフサ、約10重量%から約60重量%までの、別の例では約15重量%から約35重量%までの留分、約10重量%から約60重量%までの、別の例では約15重量%から約35重量%までの燃料オイルを含み得る。
【0057】
クラッキング及び改質によるガス生成速度及び気相中の分子の種類の制御は、いくつかの制御変数を含む。例えば、制御変数は、反応容器14への原料の速度、反応装置12又は反応容器14へのエネルギー入力、熱流束、反応容器14から出るガスの質量流量、反応容器の外側に沿ったガス、例えば排出ガスの流れ、残留固体層の厚さ、水平方向の温度勾配、放射方向の温度勾配、反応チャンバの形状、残留固体、液体、泡、ガス領域の比率、生成ガス除去の位置、垂直温度勾配、及びガス生成物の滞留時間を含むがこれらに限定されない。
【0058】
様々なパラメータの制御は、手動、電気及び空気圧制御、有線又は無線のいずれか、あるいは光ファイバのうちの少なくとも1つによって達成することができる。手動制御及び/又は制御論理は、それぞれ、縦軸及び横軸、例えば軸Y及び軸Xの両方における反応容器内の温度プロファイル、及び各反応器領域内の反応容器の弧に沿った温度プロファイルの制御機構を提供する。エネルギー入力及びエネルギー取り出しは、供給速度、混合速度、並びに反応容器14内の混合ポリマー溶融プール(すなわち、溶融ポリマー)の長さ及び深さプロファイルを含むがこれらに限定されないいくつかの変数に基づいて各反応器領域内で起こる。
【0059】
少なくとも1つの温度検出素子、例えば熱電対が反応装置12内に配置され、反応容器内の気体状態のいずれかの反応生成物の温度を表す出力信号を提供する。反応装置12は、それぞれ、生成物導管50及び52に又はその近くに温度センサ95及び96を含み、そして外側シュラウド16に沿ったチャネル通気孔40及び42に又はその近くにも含むことができる。温度信号は、以下に説明するように、コントローラへ通信する/コントローラに印加される電気信号であり得る。コントローラ86は、この測定温度を設定点の信号と比較し、流量制御装置44及び46、バルブ54及び56、並びにそれらの組み合わせを規制する出力信号を確立する。測定温度が所定の温度制御値より低くなければならない場合、熱源は第1の反応器領域の入熱流量を増加させるように調整される。反応器領域内の測定温度が所定の温度制御値よりも高い場合、ヒートダンパーを調整して、例えば、通気孔を通るプレナムガス又は排出ガスの質量流量を増加させる。
【0060】
図3は、本発明の別の例による、混合ポリマーの原料を使用して石油生成物を製造するプロセスを実施するためのシステム100の概略図である。システム100は、図2のシステム10と同様であり、5つの反応器領域Z、Z、Z、Z、及びZと、5つの反応器領域を有する反応装置102を有する。反応器領域の数は、達成すべき生成物の組成分布に応じて変化し得ること、反応装置は3〜10個の反応器領域、別の例では例えば5〜15個の反応器領域を含み得、それぞれが独立して制御可能であるということに留意すべきである。連続する反応器領域の各々は、反応容器14と外側シュラウド16との間の反応容器14の外部に沿って、熱交換媒体、例えば排出ガスを別々に循環又は流通させる5つのフローチャネル(例えば、プレナム)を規定する壁18を含む。反応装置102はまた、それぞれの反応器領域に熱を独立に供給する複数の熱源H1、H2、H3、H4、及びH5それぞれと、複数の温度センサ91、93、140、142、及び144とを含む。反応装置102はまた、流量制御装置44、46、130、132、及び134、例えばバルブ、ダンパー、及びそれらの組み合わせを含む通気孔40、42、120、122、及び124を含む。装置102は、バルブ、ダンパー及びそれらの組み合わせのような流量制御装置の電気的制御のためのセンサ92、94、150、152、及び154を任意に含む。
【0061】
例えば、図2及び図3に関して上述したプロセスを含む、本明細書に記載のプロセスのいずれかにおいて、原料と、原料によって生成された生成物を、例えば重力によって、又は別の攪拌手段によって、連続する反応器領域に沿って運ぶことができる。図2及び図3の反応装置12又は反応容器14、あるいはその両方は、水平軸Xに沿ってある角度、角度αをなすことができる。別の例において、反応容器は地面と平行であり、角度αはゼロである。水平軸Xに対する反応器の水平軸の角度、角度αは、例えば、約20度から約−20度まで、別の例では約10度から約−5度まで、別の例では約5度から約−5度まで変化し得る。
【0062】
反応容器14内の別の撹拌手段は、図3のヘリカルスクリュー112を含む、様々な機械的撹拌機を含み得る。ヘリカルスクリュー112は、例えば、水平軸線、垂直軸線及び放射状軸線に沿った位置で、反応容器14内の様々な位置に沿って温度を監視することができる、ヘリカルリッジ114に沿った、又はスクリュー根元118に沿った熱電対116を含むことができる。
【0063】
混合ポリマー物質である原料は、少なくとも2種の異なるポリマー、例えば2種以上の熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、及びそれらの混合物を含む。
【0064】
ポリマー物質は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリ(オキシド)、ポリ(スルフィド)、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリビニルアルコールのような熱可塑性ポリマー、及び例えばジエン、オレフィン、スチレン、アクリレート、アクリロニトリル、メタクリレート、メタクリロニトリルのようなモノマーの重合によって生成されるポリマー、二塩基酸とジオール、ラクトンのポリマー、二塩基酸とジアミン、ラクタム、ハロゲン化ビニル、ビニルエステルのポリマー、それらのブロック共重合体、及びそれらのアロイを含むことができる。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、及び他のハロゲン化ポリマーのような熱分解によりハロゲン化物質を生じるポリマーは、腐食性であり得るが許容され得る。
【0065】
ポリマー物質はまた、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、架橋ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン、エチレン・プロピレン・ジエンモノマーポリマー及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない架橋エラストマー等の熱硬化性ポリマーを含み得る。
【0066】
混合ポリマー物質はまた、バイオポリマーのような持続可能な生体物質を含むことができる。バイオポリマーは、無期限に栽培できる植物材料で作られているため、持続可能、カーボンニュートラル及び再生可能であり得る。これらの植物物質は、農業以外の作物から得られる。バイオポリマーの例は、例えば、食品包装用途の多層シートに使用されるポリ乳酸(PLA)及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を含むが、これらに限定されない。
【0067】
スクラップ物質に見出されるポリマー物質は、例えばタイヤ、塗料、接着剤、自動車シュレッダー廃棄物(フラッフ(fluff))などの熱可塑性及び熱硬化性ポリマーの組み合わせを有することができ、本明細書のパイロリシスプロセスの様々な例に従う原料として使用することができる。
【0068】
混合ポリマー供給物は、全て固体原料の平均重量に基づいて、平均して約2重量%〜約25重量%の範囲、別の例では約3重量%〜約20重量%の範囲、別の例では約3重量%〜約15重量%の範囲、さらに別の例では約7重量%未満の充填剤、汚染物質等を含み得る。
【0069】
上述のバッチ、半連続又は連続処理のいずれかの例において、原料組成物は、約40重量%から約90重量%までの、別の例では約50重量%から約85重量%までの、別の例では約70重量%から約80重量%までの、ポリエチレンとポリプロピレンとポリスチレンとを合わせたポリマーを含む。残りのポリマーは、ポリウレタン、ナイロン、PET、及びポリ塩化ビニルなどを含み得るが、これらに限定されない。
【0070】
上述の原料のいずれかは、実質的に細断されたポリマーとして反応器に導入され、別の例において、原料の少なくとも一部は、他の形態で存在し得る。例えば、原料は、成形又は押出されたポリマー、シート、フィルム又は多層フィルム、及び発泡シート又は成形品の形態で存在してもよい。
【0071】
図2及び3のシステム10及び100は、例えば排出ガスの温度、供給速度、質量流量、生成ガスの流量範囲、攪拌速度及び固体不活性残渣の抽出率のような、本明細書に記載の制御パラメータのいずれかを電気的に制御するためのコントローラ86を含む。コントローラ86は、プロセッサ88とメモリ89と含む。メモリ89は、例えばコントローラ86上で操作するコンピュータ実行可能命令(例えば、コンピュータ論理、制御論理等)に基づいて、本明細書に記載のシステム及び方法を実施するために使用することができる非一時的、機械読み取り可能な媒体である。コントローラ86は、反応装置と一体化して、反応装置の構成要素として実施することができる。別の例において、コントローラ86は、スタンドアローンコンピュータシステムとして実施することができ、及び/又はネットワーク環境で操作し、一つ以上の汎用ネットワークコンピュータシステム、埋込式コンピュータシステム、ルータ、スイッチ、サーバー装置、クライアント装置、様々な中間装置/節点と通信することができる。論理接続は、ローカルエリアネットワーク(LAN)及びワイドエリアネットワーク(WAN)を含むことができる。いくつかの例において、ユーザは、キーボード、ポインティングデバイス(例えば、マウス)、タッチスクリーン等のようなユーザ入力デバイス(図示せず)を介して、指令及び情報をコントローラ86に入力することができる。これら及び他の入力装置は、しばしば、システムに結合された対応するインターフェースを介して、プロセッサ88に接続される。コントローラ86は、コントローラ86による出力をレビューするためにディスプレイ90に任意に接続される。図2はまた、プロセスの適切な制御を決定するためのコンピュータ実行可能命令(すなわち、論理)を含むメモリ89を示す。
【0072】
本発明の態様による石油生成物の製造方法を制御する方法200を実施するための流れ図が、図4a及び4bに示されている。方法200は、ボックス202に示すように、第1の反応器領域(図2及び3)におけるガス温度を検出することによって開始する。この方法は、ボックス204に示すように、第1の反応器領域に存在するガスの温度測定値を含むデータ信号を受信することを含む。ガス温度は、第1の反応器領域のチャネル又は第1の反応器領域のガス出口ポートに近い反応容器の頂部に見出すことができる。204における論理が、第1の反応器領域内のガス温度が所定の最小温度よりも低いと判断した場合、コントローラは、ボックス206に示す熱源H1を調整して第1の加熱領域Z1への熱を増加させる。論理は、ボックス208において第2の加熱領域Z2内のガスの温度を受信するか、又は温度が高すぎるか214において最大である所定の温度を超えるかを判定するためにチェックすることができる。ボックス214における論理は、温度が高すぎると判断した場合、Z1のダンパーを216で調整して所望の範囲内の温度に制御する。コントローラはまた、第2の反応器領域内のガス温度をチェックして、第2の反応器領域Z2において熱源及び/又はダンパーをそれぞれ224及び228において調整する必要があるかどうかを判定する。図4bは、供給速度及び攪拌速度を制御するために、生成物ガスの熱流束及びガス流の流量を判定するための、後続のコントローラ論理ステップを示す。また、コントローラは、残留固体中の炭化水素の量を示すセンサデータを受信し、それに応じて固体の抽出率を制御する。
【0073】
本発明の別の態様において、反応装置における石油生成物の製造方法を制御するためのコントローラは、第1の反応器領域からデータを受信する第1の制御ポートと、反応装置の第1の反応器領域にデータを送信する第1の通信ポートとを含む。コンピュータ装置は、第1の制御ポート及び第1の通信ポートと通信する処理ユニットを含み、処理ユニットは制御論理を含む。制御論理は、第1の反応器領域におけるガス生成物の温度測定値を含む第1の制御ポートのデータ信号を受信すること、及び第1の反応器領域における入熱流量と、第1の反応器領域における反応装置から出る排出ガスの質量流量との少なくとも一方を決定することができる。
【0074】
したがって、本発明の例において、反応装置における石油生成物の製造方法を制御するためのコントローラは、第1の反応器領域からデータを受信する第1の制御ポートと、反応装置の第2の反応器領域からデータを受信する第2の制御ポートと、並びに第1の反応器領域にデータを送信する第1の通信ポートと、反応装置の第2の反応器領域にデータを送信する第2の通信ポートとを含む。コントローラは、第1及び第2の制御ポート、並びに第1及び第2の通信ポートと通信する処理ユニットを含み、処理ユニットは制御論理を含む。制御論理は、第1の反応器領域におけるガス生成物の温度測定値を含む第1の制御ポートのデータ信号と、第2の反応器領域におけるガス生成物の温度測定値を含む第2の制御ポートのデータ信号とを受信すること、及び第1の反応器領域における入熱流量と、第1の反応器領域における排出ガスの質量流量との少なくとも一方を決定することができる。
【0075】
クラッキング及び改質による気相中のガス生成速度及び分子の種類の制御は、いくつかの制御変数を含む。例えば、制御変数は、反応容器14への原料の速度、反応装置12又は反応容器14へのエネルギー入力、熱流束、反応容器14から出るガス生成物の質量流量、容器の外側に沿った熱の流れ、固体不活性残渣の厚さ、水平方向の温度勾配、放射方向の温度勾配、反応チャンバの形状、固体不活性残渣、液体、泡、ガス領域の比率、生成ガス除去の位置、垂直温度勾配、及びガス生成物の滞留時間を含むがこれらに限定されない。
【0076】
様々な制御パラメータの制御は、空気圧で、手動で、電気的制御及びそれらの組み合わせによって、有線又は無線のいずれか、あるいは光ファイバによって制御することができる。手動制御及び/又は制御論理は、それぞれ、縦軸及び横軸、例えば軸Y及び軸Xの両方における反応容器内の温度プロファイル、及び反応容器の各反応器領域内において反応容器の弧に沿った温度プロファイルの制御機構を提供する。エネルギーの制御、例えばエネルギー入力及びエネルギー取り出しは、供給速度、混合速度、並びに反応容器14内の混合ポリマー溶融プール(すなわち、溶融ポリマー)の長さ及び深さプロファイルを含むがこれらに限定されないいくつかの変数に基づいて各反応器領域内で起こる。
【0077】
温度検出素子、例えば熱電対は、反応容器14内に配置され、反応容器の気体状態の反応生成物のいずれかの温度を表す出力信号を提供する。この信号は、コントローラに通信される/印加される電気信号であり得る。コントローラ86は、この測定温度を設定点の信号と比較し、ダンパー44を規制する出力信号を確立する。測定温度が所定の温度制御値より低くなければならない場合、熱源は第1の反応器領域の入熱流量を増加させるように調整される。測定温度が所定の温度制御値よりも大きい場合、ヒートバルブ又はダンパー46は、通気孔40を通る排出ガスの質量流量を増加させるように調整される。
【0078】
例は、本発明の特定の実施形態及び関連する利点をより明確に説明するために含まれている。しかしながら、本発明の範囲内には、本明細書で提供される特定の例に限定されるべきではない多種多様な態様が存在する。
【0079】

以下の例は、本発明の様々な実施形態による燃料生成物の製造方法を例示する。以下の実験を、研究サイズの反応装置及び市販サイズの反応装置の両方を用いて行なった。以下の例で生成された石油生成物の結果は、図5〜10に示され、異なる装填量における異なる供給組成物のいくつかの実行から得られた生成物組成が、一貫した品質のナフサ、留分及び重油燃料を生成したということを示す。
【0080】
例1〜6
内側容器及び外側シュラウドを有する円筒形の水平な反応器(図2に示す)を、以下に記載するバッチ式パイロリシス実験に使用した。反応器の容積は、約19リットルの作業容積である。低速の速度(1−10RPM)で容器の壁を拭うパドル撹拌機によって、攪拌を行なった。容器を、その容器の下に配置されたリボンバーナーによって加熱し、熱は、燃焼オフガス温度を設定点に維持することによって制御した。液体生成物は、パイロリシス蒸気を凝縮器に通すことによって補足した。
【0081】
未使用の樹脂ペレットとリグラインド物質の2種の異なるポリマー混合組成物を使用し、その混合組成物を下記表1に示し、それはポリマー成分の分布を示す。
【0082】
【表1】
【0083】
個々の樹脂の溶融密度及び各樹脂の量を使用して、表2に示すように供給ポリマー混合物の溶融密度を算出した。
【0084】
【表2】
【0085】
様々な供給ポリマー混合物の溶融密度を算出して、表2に列挙した各組成物及び装填量のための反応器の自由体積を決定した。初期自由体積のレベルは、パイロリシスの開始前の反応器の自由体積を表す。
【0086】
供給物3は、市販の物質回収施設から得られたスクラッププラスチックの細断された♯3−♯7ベールから調製した。これらのベールは、残留♯1−ポリエステル;♯3−ポリ塩化ビニル、♯4−低密度及び鎖状低密度ポリエチレン、♯5−ポリプロピレン、♯6−ポリスチレン及び♯7−他のプラスチックと混合してリサイクルされたボトル及びジャグの回収後に残った♯2−高密度ポリエチレンを含んでいた。
【0087】
3種の異なる装填量レベルの供給物質を、異なるレベルの自由体積を提供する表3に示す例において使用した。
【0088】
【表3】
【0089】
各実行について、混合ポリマー物質をパイロリシス容器に装填し、次いで密閉し、アルゴンでパージして酸素レベルを1%未満に低下させた。容器を加熱して材料を熱分解(pyrolyze)した。液体の重量及び液体収率を記録した。供給混合組成物2のみを重複して実行した、1ポンドの装填量(すなわち97%の自由体積)の例外を除いて、各装填量及び各ポリマー混合組成物について重複実行を実施した。重複実行の結果を平均した。
【0090】
液体生成物の品質を、同じ供給混合組成物と同じ自由体積の重複実行からの複合サンプルの液体についてのASTM D6352(高温模擬蒸留)分析によって評価した。データを以下の表4に示し、凝縮性石油ガス生成物の温度対重量損失パーセントを示す図5、6及び7に表す。図5、6及び7のプロットは、それぞれ71%、88%及び97%の同じ自由体積における、異なる供給組成物(表1)の実行間で生じた生成物の変化率を示す。各グラフ上のプロットの近接は、本明細書の方法が、非常に異なる供給混合組成物を有する実行間において、高い一貫性の生成物を生成したということ示す。反応器中に10ポンドの供給物質(71%の自由体積)を有する実行を表す図5は、3種の供給組成物が異なっていても一貫した品質の石油生成物を示す。3種の異なる供給組成物のポリマー混合物を、表1及び以下に開示する。図6は、例2及び3の結果の比較を示し、反応器中の4ポンドの供給物質(88%の自由体積)は、一貫した品質の液体生成物をさらに示す。
【0091】
図8は、4ポンド(88%の自由体積)及び10ポンド(71%の自由体積)の装填量についての実行間の変化率パーセント対蒸留重量パーセントのプロットである。各装填量の平均変化率パーセント対蒸留重量パーセントもまた示される。グラフは、石油生成物の一貫性が、自由体積が88%であるときに、平均して約4%以内及び約2%未満であり、自由体積が71%であるときに、平均して約5%未満及び約3%未満であることを示す。組成物間のより大きい一貫性は、より大きな自由体積を有する実行で生じた。
【0092】
【表4】
【0093】
例7
連続的に供給されるプロセスにおける市販スケールの実行からの液体生成物の品質は、より小さいバッチユニットの実行との比較により決定した。市販スケールの反応器は、約104,775Lの円筒形の水平な撹拌反応器であり、細断されたプラスチックを炭化水素液体、非凝縮性ガス及び残留固体に変換するために使用した。細断されたプラスチックの混合ポリマー供給物の重量及び反応容器の容積を使用して、供給ポリマー混合物の溶融密度を算出した。供給ポリマー供給物の溶融密度を算出し、反応器の自由体積を決定して表5に列挙する。
【0094】
【表5】
【0095】
市販スケールの反応器に、約475kgの供給物3を充填した。内部圧力[10psig]517mmHgまでの加圧と排気を3回行ない、続いて容器を加熱する前に414mmHgにパージすることによって、容器を窒素でパージした。液体の生成が確立したら、追加のポリマー細断物を、押し出しフィーダを介して約500kg/時間の平均速度で容器に加えた。容器内の残りのプラスチックを、検出可能なガス又は液体の生成が無くなるまで処理した。その後、ユニットへ加える熱を停止した。合計5665kgを、液体炭化水素、非凝縮性炭化水素ガス及び固体、不活性残渣に変換した。
【0096】
図9は、例1〜7の凝縮性石油ガス生成物の温度対重量損失パーセントのプロットである。図9は、様々なポリマー装填量間の一貫した品質の生成物を示す。各グラフ上のプロットの近接は、本明細書の方法が、非常に異なる装填量を有する実行間において、高い一貫性の生成物を生成したということを示す。
【0097】
図10は、例7のガス石油生成物の凝縮性部分の液体石油クロマトグラフトレースのグラフである。
【0098】
例1〜7の全ての実行の液体収率を、以下表6に列挙する。
【0099】
【表6】
【0100】
前述の詳細な説明及び例は、理解を明確にするためにのみ示したものである。そこから不必要な制限が理解されるべきではない。本発明は、いくつかの特定の実施形態を参照して説明されているが、本発明は、示され、記載された正確な詳細に限定されず、当業者にとって明らかな変形が含まれる。この説明は、限定された意味で解釈されることを意味するものではない。開示された実施形態の様々な変更、並びに本発明の代替実施形態は、本発明の説明を参照して当業者には明らかになるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲内に入るそのような変更を包含することが意図されている。当業者の範囲内でのそのような改良、変更及び改変は、添付の特許請求の範囲に及ぶことが意図される。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]混合ポリマー物質を含む原料を、反応装置の反応容器に装入すること;嫌気性操作で前記反応装置を通って溶融物質を前進させながら、前記反応容器に熱エネルギーを加え、原料を溶融物質に変換すること;及び石油ガス生成物を生成するために、前記反応容器へのエネルギー入力を制御し、前記反応容器内の温度勾配を制御することを含む石油生成物を製造する方法。
[2]前記反応容器の自由体積は少なくとも約40%である[1]に記載の方法。
[3]前記方法は、添加された触媒を含んでいない[1]に記載の方法。
[4]前記方法は半連続又は連続処理であり、前記原料の組成は処理中に変化する[1]に記載の方法。
[5]前記方法は半連続又は連続処理であり、前記原料の供給速度は処理中に変化する[1]に記載の方法。
[6]前記温度勾配は、前記反応容器の底部表面の温度と、前記反応容器の頂部に沿う前記石油ガス生成物の温度との間の温度差であり、50℃から450℃までにわたる[1]に記載の方法。
[7]ガス出口ポートで反応器を出る前記石油ガス生成物の温度は、約315℃から約510℃までにわたる[1]に記載の方法。
[8]反応器を出る前記石油ガス生成物の圧力は、約0psigから約50psigまでにわたる[1]に記載の方法。
[9]前記反応容器は前記方法の間に回転しない[1]に記載の方法。
[10]前記温度勾配は、前記反応容器の外部表面に沿ってガスを運ぶことによって制御される[1]に記載の方法。
[11]前記方法は半連続的又は連続的であり、前記原料の質量入力速度が約100キログラム/時間から約5,000キログラム/時間までにわたる[1]に記載の方法。
[12]前記方法から得られる代替可能なガス生成物は、前記原料の50重量%から98重量%までにわたる[1]に記載の方法。
[13]前記反応容器の前記温度勾配は、前記反応装置の反応容器に沿って第1のチャネル内のガスを運ぶことによって制御される[1]に記載の方法。
[14]前記反応装置は、前記反応装置の水平軸に沿った複数の連続する反応器領域を含み、前記溶融物質は、前記反応装置の前記反応容器を通って前進するにつれ、前記複数の反応器領域を通って前進する[1]に記載の方法。
[15]前記反応装置へのエネルギー入力は、前記複数の反応器領域のそれぞれの中のエネルギー分布を制御して、前記原料のパイロリシスによって生じるクラッキング及び再結合反応を制御することによって制御される[14]に記載の方法。
[16]前記複数の反応器領域の各々のエネルギー分布は、前記複数の反応器領域の各々内の温度勾配を制御することによって制御される[14]に記載の方法。
[17]前記複数の反応器領域の各々内の温度勾配は、前記反応装置の第1の反応器領域に沿って第1のチャネル内の排出ガスを運び、かつ前記反応装置の第2の反応器領域に沿って第2のチャネル内の排出ガスを運ぶことによって制御される[14]に記載の方法。
[18]前記複数の反応器領域は、第1の反応器領域及び第2の反応器領域を含み、熱エネルギーは、第1の熱源によって前記反応容器の前記第1の反応器領域に加えられ、熱エネルギーは、第2の熱源によって前記第2の反応器領域に加えられる[14]に記載の方法。
[19]加熱中に溶融及び液体物質を撹拌することと、溶融及び液体物質を前記反応容器の複数の連続する反応器領域のそれぞれに前進させることを含む[14]に記載の方法。
[20]前記複数の反応器領域のそれぞれは、熱を加える手段と、前記反応装置から熱を取り出す手段のうちの少なくとも一方を含む[14]に記載の方法。
[21]前記溶融及び液体物質が通って前進する前記反応容器に沿った前記連続する反応器領域の数は、少なくとも3である[14]に記載の方法。
[22]ガス状生成物を回収することを含み、回収された前記ガス状生成物は、ガス状生成物の重量に基づいて、少なくとも約50重量%の凝縮性炭化水素を含む[1]に記載の方法。
[23]生成された凝縮性炭化水素は、ガス状生成物の重量に基づいて、それぞれ約10重量%から約60重量%までのナフサ、留分及び燃料オイルを含む[1]に記載の方法。
[24]前記反応容器に装入された原料の単位質量当たりの熱エネルギーは、約0.5MJ/kg/hrから約5MJ/kg/hrまでにわたる[1]に記載の方法。
[25]前記反応容器に加えられる熱エネルギーは、前記反応装置の複数の連続する反応器領域のそれぞれで制御される[14]に記載の方法。
[26]前記原料は、少なくとも65重量%の炭化水素質物質を含む少なくとも60重量%の混合ポリマースクラップを含む、[1]に記載の方法。
[27]炭化水素質原料物質の組成は、約10から約70%までのポリエチレン、約10%から約70%までのポリプロピレン、約10%から約30%までのポリスチレン及び約0%から約30%までのポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ナイロンなどの他の一般用途のポリマー物質に及ぶ[1]に記載の方法。
[28]反応装置であって、反応容器;前記反応容器を取り囲むシュラウド;外側シュラウドと反応容器との間に延在し、前記反応装置の前記反応容器と前記外側シュラウドとの間に流体を別々に運ぶための第1の反応器領域の第1のチャネル及び第2の反応器領域の第2のチャネルを規定する内壁を含む該反応装置。
[29]反応装置は非回転式である[28]に記載の反応装置。
[30]外側シュラウドと前記反応容器との間に延在し、かつ第3の反応器領域の第3のチャネルを規定する第2の内壁を含む[28]に記載の反応装置。
[31]前記第1のチャネルはチャネル通気孔を含み、かつ前記第2のチャネルは第2のチャネル通気孔を含む[28]に記載の反応装置。
[32]第1のチャネル通気孔は流量制御バルブを含み、かつ第2のチャネル通気孔は流量制御装置を含む[28]に記載の反応装置。
[33]前記反応容器がガス生成物を補足するための生成物導管を含む[28]に記載の反応装置。
[34]それぞれの複数の熱源上の流量制御バルブと、供給物上及び残留物抽出器上の質量流量制御とを含む[28]に記載の反応装置。
[35]物質供給ポート、排出ガスポート、生成物出口ポート、残留物抽出器及び加熱ユニット内に温度センサを含む[28]に記載の反応装置。
[36]パイロリシスプロセスを制御するためのコンピュータ装置であって、第1の反応器領域からデータを受信する第1の制御ポートと、反応装置の第2の反応器領域からデータを受信する第2の制御ポート;前記第1の反応器領域にデータを送信する第1の通信ポートと、前記反応装置の前記第2の反応器領域にデータを送信する第2の通信ポート;前記第1、第2の制御ポート及び前記第1、第2の通信ポートと通信する処理ユニット;及び前記第1の反応器領域におけるガス生成物の温度測定値を含む前記第1の制御ポートのデータ信号と、前記第2の反応器領域におけるガス生成物の温度測定値を含む前記第2の制御ポートのデータ信号とを受信可能、かつ前記第1の反応器領域における入熱流量と、前記第1の反応器領域における排出ガスの質量流量との少なくとも一方を決定可能な制御論理を含む該コンピュータ装置。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10