特許第6720352号(P6720352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6720352車両用の電流分配器及びヒューズシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720352
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】車両用の電流分配器及びヒューズシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20200629BHJP
   H01L 21/82 20060101ALI20200629BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20200629BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20200629BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20200629BHJP
   H02H 3/08 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   H02J1/00 304E
   H01L21/82 F
   H01L27/04 T
   H01L27/04 H
   H01L21/82 R
   H02J1/00 309Q
   B60R16/02 635
   H02H3/08 D
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-564316(P2018-564316)
(86)(22)【出願日】2017年5月23日
(65)【公表番号】特表2019-526217(P2019-526217A)
(43)【公表日】2019年9月12日
(86)【国際出願番号】EP2017062429
(87)【国際公開番号】WO2017211586
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2018年12月7日
(31)【優先権主張番号】102016210058.0
(32)【優先日】2016年6月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ラング
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−212146(JP,A)
【文献】 特開2012−023905(JP,A)
【文献】 特開2003−100197(JP,A)
【文献】 特開2011−069720(JP,A)
【文献】 特開2010−146773(JP,A)
【文献】 特開2004−026010(JP,A)
【文献】 特開2001−150773(JP,A)
【文献】 実開昭56−072454(JP,U)
【文献】 特開平03−112329(JP,A)
【文献】 特開2004−187381(JP,A)
【文献】 実開昭59−149437(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第00739075(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00 − 1/16
H02J 13/00
B60R 16/02
H01L 21/82
H01L 21/822
H01L 27/04
H02H 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの入力端(E)と、前記入力端(E)を、それぞれ溶断ヒューズ(F1,F2,F3,Fn)及び線路(W1,W2,W3,Wn)を介して、付属の負荷(L1,L2,L3,Ln)に接続する、複数の負荷チャネル(LK1,LK2,LK3,LKn)と、を備えた、車両用の電流分配器(3,3A)において、
代替チャネル(EK1)が、前記入力端(E)を、電子ヒューズ(EF1)を介して、前記付属の負荷(L1,L2,L3,Ln)に接続しており、
評価及び制御ユニット(10)が、前記溶断ヒューズ(F1,F2,F3,Fn)を機能性について検査し、前記溶断ヒューズ(F1,F2,F3,Fn)のうちの少なくとも1つが作動したと識別された場合には、前記電子ヒューズ(EF1)の半導体スイッチ(T)を導通状態に切り替え、前記代替チャネル(EK1)を介して、前記入力端(E)と前記付属の負荷(L1,L2,L3,Ln)との間の冗長的な電流経路を形成し、
前記評価及び制御ユニット(10)は、前記溶断ヒューズ(F1,F2,F3,Fn)のうちの少なくとも1つが作動したと識別された場合には、過電流の発生時に関して、前記代替チャネル(EK1)における電流の流れ(iT)を検査し、
前記評価及び制御ユニット(10)は、過電流が発生している場合には、前記少なくとも1つの作動した溶断ヒューズ(F1,F2,F3,Fn)を、作動したものとして評価し、又は、過電流が発生していない場合には、前記少なくとも1つの作動した溶断ヒューズ(F1,F2,F3,Fn)を、欠陥があると評価する
ことを特徴とする、電流分配器。
【請求項2】
前記評価及び制御ユニット(10)は、前記作動した溶断ヒューズ(F1,F2,F3,Fn)が欠陥のあるものとして評価された場合には、前記半導体スイッチ(T)を導通状態のままにし、前記代替チャネル(EK1)を介する前記冗長的な電流経路を維持し、又は、前記作動した溶断ヒューズ(F1,F2,F3,Fn)が作動したものとして評価された場合には、前記半導体スイッチ(T)を阻止状態に切り替え、前記代替チャネル(EK1)を介する前記冗長的な電流経路を分断することを特徴とする、請求項に記載の電流分配器。
【請求項3】
所定数の負荷チャネル(LK1,LK2,LK3,LKn)の各々に対して、1つの代替チャネル(EK1)が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電流分配器。
【請求項4】
前記評価及び制御ユニット(10)は、各溶断ヒューズ(F1,F2,F3,Fn)の上流側における第1の電圧(Uref)及び各溶断ヒューズ(F1,F2,F3,Fn)の下流側における第2の電圧(UB1,UB2,UB3,UBn)を特定して、相互に比較することを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の電流分配器。
【請求項5】
前記評価及び制御ユニット(10)は、前記第1の電圧(Uref)が前記第2の電圧(UB1,UB2,UB3,UBn)とは異なる場合には、作動した溶断ヒューズ(F1,F2,F3,Fn)を識別することを特徴とする、請求項に記載の電流分配器。
【請求項6】
主線路(A)を介して搭載電源電圧(UG)を供給する電圧源(5)と、前記搭載電源電圧を付属の複数の負荷(L1,L2,L3,Ln)に印加する電流分配器(3,3A)と、を備えた、車両用のヒューズシステム(1,1A)において、
前記電流分配器(3,3A)は、請求項1乃至のいずれか一項に記載の電流分配器であることを特徴とする、ヒューズシステム。
【請求項7】
少なくとも1つのセーフティ機能(7)が、前記評価及び制御ユニット(10)を、周期的に、及び/又は、少なくとも1つの所定の判定基準が満たされている場合に、検査モードに切り替え、前記検査モードにおいて、前記評価及び制御ユニット(10)は、前記電流分配器(3,3A)の前記溶断ヒューズ(F1,F2,F3,Fn)及び前記電子ヒューズ(EF1)を機能性について検査することを特徴とする、請求項に記載のヒューズシステム。
【請求項8】
前記評価及び制御ユニット(10)は、欠陥のある溶断ヒューズ(F1,F2,F3,Fnを、前記少なくとも1つのセーフティ機能(7)に通知し、前記セーフティ機能(7)は、溶断ヒューズ(F1,F2,F3,Fn)のうちの少なくとも1つに欠陥があると評価された場合には、前記評価及び制御ユニット(10)を動作モードに切り替え、前記動作モードにおいては、前記評価及び制御ユニット(10)は、前記代替チャネル(EK1)におけ電流の流れ(iT)を監視し、前記代替チャネル(EK1)を介する前記冗長的な電流経路を維持し、又は、過電流が発生している場合には前記電流経路を分断することを特徴とする、請求項に記載のヒューズシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の上位概念に記載されている、車両用の電流分配器、及び、独立請求項7の上位概念に記載されている、車両用のヒューズシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、溶断ヒューズ及びリレーの代わりに電子ヒューズ機能を表す集積半導体回路を使用する、それぞれがヒューズによって保護されている複数の負荷チャネルを備えた車両用の電流分配器と、その種の電流分配器を備えた車両用のヒューズシステムと、が公知である。
【0003】
その種の電子ヒューズは、通常の場合、付属の電気的な負荷をオン・オフするための電子的な遮断器を含んでおり、また、過電流、過剰温度などが発生した際の保護機能を表す素子も含んでいる。通常の場合、その種の電流分配器においては、すべての溶断ヒューズが、電子ヒューズに置換されている。何故ならば、電子ヒューズは、溶断ヒューズに比較して有利な特性、例えば、電流・時間チャートにおけるプログラミング可能なヒューズ特性曲線、正確で非常に高速な作動、負荷の選択的な切り替え、例えば自己診断のような診断機能、チャネルの電流・電圧測定、拡張された短絡識別(例えば、アーク診断)などを有しているからである。電子ヒューズを提供する技術的な可能性についての競争においては、複数の電子ヒューズに関するコストが生じ、これは、単純な溶断ヒューズに比較して、車両におけるヒューズあたり20倍から100倍の実質的なコストの上昇を意味している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の開示
独立請求項1の特徴を備えた、車両用の電流分配器、及び、独立請求項7の特徴を備えた、車両用のヒューズシステムは、各負荷チャネルには、従前通りのハードワイヤードによる接続によって、慣例の廉価な溶断ヒューズが装備されており、冗長的な電流経路を形成するために、電子ヒューズによって保護されている代替チャネルを、検査モード又は障害時に、溶断ヒューズによって保護されている負荷チャネルに並行して接続することができるという利点を有している。
【0005】
本発明の実施の形態は、期待される数よりも少数の電子ヒューズでの拡張された保護を表すことを可能にする解決手段を提供する。さらに、搭載電源の動作をより安全なものにし、又は、搭載電源の可用性を障害時においても高めるために、別の一連の監視機能も得られる。これまでは、慣例のヒューズ又は電子ヒューズが、従来の電流分配器において固定的に、特定の負荷チャネルに割り当てられており、従って、その負荷チャネルと電気的に固定的に接続されていた。電流分配器が例えばn個の負荷チャネルを有している場合には、n個の負荷チャネルを保護するために、少なくともn個のヒューズ素子が使用される。この場合、n個のヒューズ素子を、n個の慣例のヒューズから構成することができるか、n個の電子ヒューズから構成することができるか、又は、n個のヒューズ素子の総数に合致する個数となるように、2つのヒューズ素子を組み合わせたものから構成することができる。本発明の実施の形態においては、フレキシブルに使用可能な電子ヒューズの数が、溶断ヒューズの数よりもはるかに少ない。即ち、例えば4つの負荷チャネルに対して、4つの廉価な溶断ヒューズと1つの付加的な電子ヒューズを使用することができる。付加的な電子ヒューズ並びに所属の評価及び制御ユニットを用いる本発明の実施の形態は、4つの電子ヒューズの代わりにただ1つの電子ヒューズが使用されるので、コストの上昇をより少ないものにしつつ、拡張されたヒューズ機能を提供する。しかしながら、技術的な観点からは、希有な障害時における保護の拡張された機能性が達成される。この機能性を、特に、溶断ヒューズの作動をもたらした障害が既に存在している又は存在していた場合に、冗長的な電流経路を監視するために利用することができる。
【0006】
本発明の実施の形態は、1つの入力端と、その入力端を、それぞれ溶断ヒューズ及び線路を介して、付属の負荷に接続する、複数の負荷チャネルと、を有している、車両用の電流分配器を提供する。この場合、代替チャネルが、入力端を、電子ヒューズを介して、付属の負荷に接続しており、評価及び制御ユニットが、溶断ヒューズを機能性について検査し、溶断ヒューズのうちの少なくとも1つが作動したと識別された場合には、電子ヒューズの半導体スイッチを導通状態に切り替え、代替チャネルを介して、入力端と付属の負荷との間の冗長的な電流経路を形成する。
【0007】
さらに、主線路を介して搭載電源電圧を供給する電圧源と、搭載電源電圧を付属の複数の負荷に印加するその種の電流分配器と、を備えた、車両用のヒューズシステムが提案される。
【0008】
本発明は、負荷チャネルの分離が不可避である障害(例えば過電流、短絡)が車両搭載電源において生じる確率は極めて低いという考察を基礎としている。従って、コストの掛かる電子ヒューズによって各負荷チャネルを永続的に保護する必要はない。さらに、車両搭載電源における電圧は一定でなく、電気的な負荷に起因して、所定の帯域幅内で変動するという事実を利用することができる。この作用を利用して、溶断ヒューズ及び電子ヒューズの機能性の反復的で選択的な検査を実施することができる。即ち、例えば、搭載電源電圧が所定の閾値を超えた場合には、常にそのような検査モードをトリガすることができる。
【0009】
ヒューズに欠陥がある場合には、電子ヒューズの半導体スイッチが永続的に導通状態に切り替えられ、その結果、欠陥のある溶断ヒューズがブリッジされ、それにより生じた代替的な電流経路を、拡張された診断機能によって、欠陥のあるヒューズが交換されるまで「厳密に」監視することができる。評価及び制御ユニットは、さらに、検査モードにおいて、半導体スイッチを周期的にスイッチオンし、その機能性について監視する。このために、本発明の実施の形態は、マルチチャネル式の電流分配器において慣例の溶断ヒューズを維持し、それらの慣例の溶断ヒューズを、すべての負荷チャネルに対して又は少なくとも所定数の負荷チャネルに対して1つだけ設けられている電子ヒューズと組み合わせる。即ち、各負荷チャネルを個別に電子ヒューズによって保護する必要はない。電子ヒューズは、障害時にのみ、また、ヒューズが交換されるまで、ヒューズ機能を担う。さらに、電子ヒューズは、電流分配器における溶断ヒューズのうちの1つが故障した際には、付属の電気的な負荷に電流を供給し、診断によってその電流を監視することができる。評価及び制御ユニットは、各負荷チャネルを所定の順序及び頻度で検査し、どの負荷チャネルにおいて溶断ヒューズが作動したか又は溶断されているかを識別することができる。半導体スイッチのショートの危険は低減される。何故ならば、それらの半導体スイッチには検査モードにおいて、電流が常に供給されるわけではないからである。これによって、FIT(failure-in-time)率を低減することができ、また、車両における安全性(冗長性)及び搭載電源可用性を高めることができる。電子ヒューズは通常動作時にはスイッチオフされており、また、希な場合にのみ完全な動作電流を供給すればよいので、比較的高い損失電力が許容される。半導体スイッチのスイッチオン抵抗を、これによって高抵抗に選択することができ、これによって半導体スイッチに関するコストが低減される。
【0010】
本明細書において、評価及び制御ユニットとは、電気機器、例えば検出されたセンサ信号を処理乃至評価する制御装置であると解することができる。評価及び制御ユニットは、ハードウェア及び/又はソフトウェアにより形成することができる、少なくとも1つのインタフェースを有することができる。ハードウェアにより形成される場合には、インタフェースは、例えば、評価及び制御ユニットの種々の機能を含んでいる、いわゆるシステムASICの一部であってよい。しかしながら、インタフェースが固有の集積回路であるか、又は、少なくとも部分的に離散的な構成要素から成ることも考えられる。ソフトウェアにより形成される場合には、インタフェースは、例えばマイクロコントローラにおいて別のソフトウェアモジュールの他に設けられているソフトウェアモジュールであってよい。また、機械読み取り可能担体、例えば半導体メモリ、ハードディスクメモリ又は光学メモリに記憶されており、プログラムが評価及び制御ユニットによって実行されると評価を実施するために使用されるプログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品も有利である。
【0011】
従属請求項に記載されている措置及び発展形態によって、独立請求項1に記載されている車両用の電流分配器、及び、独立請求項7に記載されている車両用のヒューズシステムの有利な改善が実現される。
【0012】
特に有利には、評価及び制御ユニットが、過電流の発生時に関して、代替チャネルにおける電流の流れを、例えば電流測定器を用いて検査することができる。溶断ヒューズは、所属の負荷チャネルにおける電流の流れを、2つの理由から遮断すると考えられる。第1の場合には、過電流が発生していないが、溶断ヒューズに欠陥があることによって、溶断ヒューズが溶断されていると考えられる。第2の場合には、溶断ヒューズが、許容できない過電流に起因して、適切に作動して溶断されていると考えられる。従って、評価及び制御ユニットは、過電流が発生している場合には、少なくとも1つの作動した溶断ヒューズを、作動したものとして評価することができ、又は、過電流が発生していない場合には、少なくとも1つの作動した溶断ヒューズを、欠陥があると評価することができる。さらに、評価及び制御ユニットは、作動した溶断ヒューズが欠陥のあるものとして評価された場合には、半導体スイッチを導通状態のままにし、代替チャネルを介する冗長的な電流経路を維持する。このことは、過電流が発生しているのではなく、欠陥のある溶断ヒューズが存在していることを意味している。代替的に、評価及び制御ユニットは、作動した溶断ヒューズが作動したものとして評価された場合には、半導体スイッチを阻止状態に切り替え、代替チャネルを介する冗長的な電流経路を分断することができる。このことは、過電流が発生しており、溶断ヒューズが適正に作動したことを意味している。
【0013】
電流分配器の有利な構成においては、所定数の負荷チャネルの各々に対して、1つの代替チャネルを設けることができる。最も不利な場合には、負荷チャネルのすべての溶断ヒューズに欠陥があり、また、電子ヒューズの半導体スイッチを介して、付属の負荷への給電を行うために必要とされる電流を流さなければならないので、これによって、電子ヒューズを介して流れる代替チャネルにおける最大負荷電流を、有利には事前に評価することができ、また、対応する半導体スイッチを選別することができる。
【0014】
電流分配器の別の有利な構成においては、評価及び制御ユニットが、溶断ヒューズの機能性を検査するために、各溶断ヒューズの上流側における第1の電圧及び各溶断ヒューズの下流側における第2の電圧を特定して、相互に比較することができる。この場合、評価及び制御回路は、第1の電圧が第2の電圧とは異なる場合には、作動した溶断ヒューズを識別することができる。
【0015】
ヒューズシステムの有利な構成においては、少なくとも1つのセーフティ機能が、評価及び制御ユニットを、周期的に、及び/又は、少なくとも1つの所定の判定基準が満たされている場合に、検査モードに切り替え、この検査モードにおいては、評価及び制御ユニットが、電流分配器の溶断ヒューズ及び電子ヒューズを機能性について検査することができる。
【0016】
ヒューズシステムの別の有利な構成においては、評価及び制御ユニットが、すべての溶断ヒューズは使用可能であると評価された場合には、半導体スイッチを溶断ヒューズの検査後に導通状態に切り替え、代替チャネルにおける対応する電流の流れを検出して評価する。この場合、代替チャネルにおける、識別された電流の流れは、障害のない半導体スイッチを表すと考えられる。
【0017】
ヒューズシステムの別の有利な構成においては、評価及び制御ユニットが、欠陥のある溶断ヒューズ及び/又は欠陥のある半導体スイッチを、少なくとも1つのセーフティ機能に通知することができる。この場合、セーフティ機能は、溶断ヒューズのうちの少なくとも1つに欠陥があると評価された場合には、評価及び制御ユニットを動作モードに切り替え、この動作モードにおいては、評価及び制御ユニットは、代替チャネルにおける電流の流れを監視し、代替チャネルを介する冗長的な電流経路を維持することができ、又は、過電流が発生している場合には電流経路を分断することができる。これによって、上位のセーフティ機能は、後続の動作モードは許容されるか、又は、車両を可及的速やかに停車させる必要があるかを判断することができる。
【0018】
本発明の実施例を図面に示し、また、下記において詳細に説明する。図中において、同一の参照符号は、同一の機能又は類似の機能を実施するコンポーネント乃至素子を表している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】n個の負荷チャネルを有する本発明に係る電流分配器の1つの実施例を備えた、車両用の本発明に係るヒューズシステムの1つの実施例の概略的なブロック図を示す。
図2】3個の負荷チャネルを有する本発明に係る電流分配器の1つの実施例を備えた、車両用の本発明に係るヒューズシステムの1つの実施例の概略的なブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の実施の形態
図1及び図2から見て取れるように、車両用の本発明に係るヒューズシステム1,1Aの図示されている実施例は、それぞれ、主線路Aを介して搭載電源電圧UGを供給する電圧源5と、搭載電源電圧UGを付属の複数の負荷L1,L2,L3,Lnに印加する電流分配器3,3Aと、を含んでいる。
【0021】
図1及び図2からさらに見て取れるように、車両用の本発明に係る電流分配器3,3Aの図示されている実施例は、それぞれ、1つの入力端Eと、その入力端Eを、それぞれ溶断ヒューズF1,F2,F3,Fn及び線路W1,W2,W3,Wnを介して、付属の負荷L1,L2,L3,Lnに接続する、複数の負荷チャネルLK1,LK2,LK3,LKnと、を含んでいる。ここでは、代替チャネルEK1が、入力端Eを、電子ヒューズEF1を介して、付属の負荷L1,L2,L3,Lnに接続している。評価及び制御ユニット10は、溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnを機能性について検査し、溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnのうちの少なくとも1つが作動したと識別された場合には、電子ヒューズEF1の半導体スイッチTを導通状態に切り替え、代替チャネルEK1を介して、入力端Eと付属の負荷L1,L2,L3,Lnとの間の冗長的な電流経路を形成する。
【0022】
図1及び図2からさらに見て取れるように、少なくとも1つのセーフティ機能7は、評価及び制御ユニット10を、周期的に、及び/又は、少なくとも1つの所定の判定基準が満たされている場合に、検査モードに切り替え、この検査モードにおいては、評価及び制御ユニット10が、電流分配器3,3Aの溶断ヒューズF1,F2,F3,Fn及び電子ヒューズEF1を機能性について検査する。すべての溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnが使用可能であると評価された場合には、評価及び制御ユニット10が、図示されている実施例においては、半導体スイッチTを溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnの検査後に導通状態に切り替え、代替チャネルEK1における対応する電流の流れiTを検出して、その電流の流れiTを評価する。この場合、代替チャネルEK1における、識別された電流の流れiTは、障害のない半導体スイッチTを表す。さらに、評価及び制御ユニット10は、欠陥のある溶断ヒューズF1,F2,F3,Fn及び/又は欠陥のある半導体スイッチTを、少なくとも1つのセーフティ機能7に通知する。セーフティ機能7は、溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnのうちの少なくとも1つに欠陥があると評価された場合には、評価及び制御ユニット10を動作モードに切り替え、この動作モードにおいては、評価及び制御ユニット10が代替チャネルEK1における電流の流れiTを監視し、代替チャネルEK1を介する冗長的な電流経路を維持し、又は、過電流が発生している場合には電流経路を分断させる。
【0023】
図1及び図2からさらに見て取れるように、代替チャネルEK1は、入力ノード点E1において分岐しており、半導体スイッチT及び電流測定ユニット20を含んでいる電子ヒューズEF1を介して、個々の負荷チャネルLK1,LK2,LK3,LKnの線路W1,W2,W3,Wnの出力ノード点A1,A2,A3,Anに案内されている。これによって、代替チャネルEK1は、入力ノードE3において分岐している種々の負荷チャネルLK1,LK2,LK3,LKnにおける各溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnをブリッジすることができる。
【0024】
図1及び図2からさらに見て取れるように、評価及び制御ユニット10は、過電流の発生時に関して、代替チャネルEK1における電流の流れiTを検査する。評価及び制御ユニット10は、過電流が発生している場合には、少なくとも1つの作動した溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnを、作動したものとして評価する。代替的に、評価及び制御ユニット10は、過電流が発生していない場合には、少なくとも1つの作動した溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnを、欠陥があるものとして評価する。作動した溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnが欠陥のあるものとして評価された場合には、評価及び制御ユニット10は、半導体スイッチTを導通状態のままにし、代替チャネルEK1を介する電流経路を維持する。代替的に、作動した溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnが作動したものとして評価された場合には、評価及び制御ユニット10は、半導体スイッチTを阻止状態に切り替え、代替チャネルEK1を介する電流経路を分断する。
【0025】
溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnを検査するために、評価及び制御ユニット10は、各溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnの上流側における第1の電圧Urefと、各溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnの下流側における第2の電圧UB1,UB2,UB3,UBnを特定して、それらの電圧を相互に比較する。この際、第1の電圧Urefは、入力ノードE2において取り出される。評価及び制御ユニット10は、第1の電圧Urefが第2の電圧UB1,UB2,UB3,UBnとは異なる場合には、作動した溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnを識別する。
【0026】
図2からさらに見て取れるように、図示されている実施例においては、所定数の3個の負荷チャネルLK1,LK2,LK3に対して、1つの代替チャネルEK1が設けられている。少なくとも1つのセーフティ機能7による起動の他に、評価及び制御ユニット10は、図示されている実施例において、第1の電圧Urefが所定の閾値Uminを超えた場合に、検査モードに切り替わる。図2からさらに見て取れるように、評価及び制御ユニット10は、第2の電圧UB1,UB2,UB3及び閾値Uminを第1の電圧Urefと比較する比較ユニット14と、比較プロセスを評価し、評価結果を、データチャネルDATを介して少なくとも1つのセーフティ機能7に出力する評価回路12と、を含んでいる。さらに、評価及び制御ユニット10乃至評価回路12は、データチャネルDATを介して、制御命令を少なくとも1つのセーフティ機能7から受信することができる。さらに、評価回路12は、半導体スイッチTを、出力ドライバ16を介して導通状態又は阻止状態に切り替えることができる。図2からさらに見て取れるように、半導体スイッチTのソース端子Sは、入力ノードE1と接続されており、半導体スイッチTのゲート端子Gは、出力ドライバ16と接続されており、また、半導体スイッチTのドレイン端子Dは、電流測定ユニット20と接続されている。電流測定ユニット20は、電流測定器Mを含んでおり、この電流測定器Mの出力端は、評価回路12と接続されている。さらに、電流測定ユニット20は、3つのダイオードD1,D2,D3を含んでいる。ここでは、第1のダイオードD1によって、代替チャネルEK1が、第1の負荷チャネルLK1の第1の線路W1の第1の出力ノードA1に繋げられ、第2のダイオードD2によって、代替チャネルEK1が、第2の負荷チャネルLK2の第2の線路W2の第2の出力ノードA2に繋げられ、また、第3のダイオードD3によって、代替チャネルEK1が、第3の負荷チャネルLK3の第3の線路W3の第3の出力ノードA3に繋げられる。
【0027】
本発明の実施の形態においては、評価及び制御ユニット10の検査モードが周期的に起動される。これによって、溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnが周期的に監視され、さらには、電子ヒューズEF1の半導体スイッチTの状態が監視される。溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnのうちの少なくとも1つに障害がある(ヒューズが溶断されている)場合には、評価及び制御ユニット10は、動作モードに切り替わる。さらに、評価及び制御ユニット10は、溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnが具体的に故障しているという相応の通知を、データチャネルDATを介して、少なくとも1つのセーフティ機能7に出力する。
【0028】
半導体スイッチTにおいて障害が発見された場合には、その障害が同様に少なくとも1つのセーフティ機能7に出力される。少なくとも1つのセーフティ機能7は、後続の動作サイクルが許容されるか、又は、車両を可及的速やかに停車させる必要があるかを判断する。即ち、溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnに欠陥があっても、代替チャネルEK1及び半導体スイッチTを介する代替的な電流経路をもはや提供することができないので、例えば、半導体スイッチTが交換されるまで、車両を休止させることができる。
【0029】
動作モードにおいては、電子ヒューズEF1が、少なくとも1つの作動した溶断ヒューズF1,F2,F3,Fnの代わりにその機能を担って、電流を電気的な負荷L1,L2,L3,Lnに供給し、また、評価及び制御ユニット10が、代替チャネルEK1における電流の流れiTを監視する。許容されない高さの電流又は過剰温度が発生した場合には、評価及び制御ユニット10は、代替チャネルEK1における電流の流れiTを、半導体スイッチTを介して遮断する。さらに、評価及び制御ユニット10は、相応の通知を、データチャネルDATを介して少なくとも1つのセーフティ機能7に出力する。少なくとも1つのセーフティ機能7は、車両が1つ又は複数の障害に起因してさらに運転することができるか否か、又は、さらにどの程度まで運転を継続することができるかを確認する。半導体スイッチTは、有利には、電流を所定の時間にわたりすべての負荷チャネルLK1,LK2,LK3,LKnに供給することができるように構成されている。
【0030】
本発明の実施の形態は、インテリジェンスな電流分配に使用することができる。何故ならば、本発明による実施の形態は、搭載電源における冗長的なエネルギ供給に関する、溶断ヒューズ及び電子ヒューズを含んでいるハイブリッド電流分配器の廉価なヴァリエーションを表すからである。
図1
図2