(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位相シフト膜は、前記透光性基板から最も離れた位置に、ケイ素、窒素および酸素からなる材料、または半金属元素、非金属元素および希ガスから選ばれる1以上の元素、ケイ素、窒素および酸素からなる材料で形成された最上層を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
前記位相シフト膜は、前記透光性基板から最も離れた位置に、ケイ素および酸素からなる材料で形成された最上層を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1におけるMoSi系膜で形成されたパターンの表面に不動態膜を形成するArF耐光性を向上させる方法は、MoSi系膜の内部構造までは変わらない。つまり、MoSi系膜の内部については、ArF耐光性が従来と同等であるといえる。このため、MoSi系膜のパターンの上面の表層だけでなく側壁の表層にも不動態膜を形成する必要がある。特許文献1では、MoSi系膜にパターンを形成した後に、プラズマ処理、UV照射処理、または加熱処理を行うことで不動態膜を形成している。しかし、MoSi系膜に形成されるパターンは、面内での粗密差が大きく、隣り合うパターン同士の側壁間における距離も大きく異なることが多い。このため、全てのパターンの側壁で同じ厚さの不動態膜を形成することは容易ではないという問題があった。
【0007】
特許文献2における遷移金属ケイ素系材料膜は、膜中の酸素含有量を3原子%以上とし、ケイ素の含有量と遷移金属の含有量について所定の関係式を満たす範囲内とし、さらにこの遷移金属ケイ素系材料膜の表層に表面酸化層を設けた構成とすることで、ArF耐光性を向上させることができるとされている。従来の遷移金属ケイ素系材料膜よりもArF耐光性は向上することは望める。ArFエキシマレーザーの照射に伴う遷移金属ケイ素系材料膜からなるパターンにおける線幅の変化(太り)は、膜中の遷移金属がArFエキシマレーザーの照射による光励起で不安定化することが原因という仮説が有力である。このため、特許文献2の遷移金属ケイ素系材料膜であっても、遷移金属を含有している以上、ArF耐光性の問題を十分に解決することは難しいという問題があった。
【0008】
また、この特許文献2における遷移金属ケイ素系材料膜は、酸素を含有させることが必須となっている。膜中に酸素を含有させることに伴うArF露光光に対する透過率の上昇度合いは、窒素に比べて大幅に大きい。このため、酸素を含有しない遷移金属ケイ素系材料膜(たとえば、MoSiN等)に比べて、膜の厚さが厚くなることが避けられないという問題もある。
【0009】
一方、特許文献3に記載されているような遷移金属を含有していないSiNxからなる膜であるが、このSiNx膜にパターンを形成したものに対してArFエキシマレーザーを長時間照射してみたところ、パターンの幅の変化(太り)は遷移金属ケイ素系材料膜に比べて非常に少なく、ArF耐光性が高い膜であるということが本発明者の検証によって確認できた。しかし、このSiNx膜をArF露光光に適したハーフトーン型位相シフト膜に適用することは容易ではない。
【0010】
ハーフトーン位相シフト膜(以下、単に「位相シフト膜」という。)は、ArF露光光を所定の透過率で透過し、かつ位相シフト膜を透過するArF露光光に対し、その位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した光との間で所定の位相差を生じさせる機能を有する必要がある。位相シフト膜を単層で形成する場合、ArF露光光に対する屈折率nがある程度大きく、かつ消衰係数kがある程度小さい材料を用いる必要がある。ケイ素は、ArF露光光に対する消衰係数kはある程度大きいが、屈折率nは大幅に小さい傾向を有する材料である。遷移金属は、ArF露光光に対する消衰係数k、屈折率nともに大きい傾向を有する材料である。また、膜材料中に酸素を含有させた場合、ArF露光光に対する消衰係数kは大きく低下し、屈折率nも低下する傾向を示す。膜材料中に窒素を含有させた場合、ArF露光光に対する消衰係数kは低下させるが、屈折率nは上昇する傾向を示す。
【0011】
以上のような各元素の光学特性であるため、位相シフト膜を従来の遷移金属ケイ素系材料で形成する場合、屈折率nおよび消衰係数kがともに大きい材料である遷移金属を含有するため、酸素をある程度含有させることや、窒素の含有量をある程度少なくすることを行っても、所定の透過率および位相差を確保することができる。これに対し、位相シフト膜を、遷移金属を含有しないケイ素系材料で形成する場合、ケイ素は屈折率nが大幅に小さい材料であるため、屈折率を上昇させる元素である窒素を従来の遷移金属ケイ素系材料よりも多く含有させなければならない。また、窒素を多く含有させることは位相シフト膜の透過率が上昇する方向になるため、位相シフト膜中の酸素の含有量は極力少なくする必要がある。このように、SiNxのような遷移金属を含有しないケイ素系材料で単層構造の位相シフト膜を形成しようとすると従来よりも制約が多くなる。
【0012】
一般に、位相シフト膜に限らず、マスクブランクのパターン形成用の薄膜はスパッタリング法を用いて形成する。透光性基板上に薄膜をスパッタリング法で形成する場合、比較的安定して成膜できる条件を選定することが通常行われている。たとえば、SiNx膜をスパッタリング法で成膜する場合、成膜室内にSiターゲットを配置し、Ar等の希ガスと窒素の混合ガスを絶えず循環させつつ、プラズマ化した希ガスがSiターゲットに衝突することで飛び出したSi粒子が途中窒素を取りこんで透光性基板に堆積するプロセスで行われる(このようなスパッタリングを一般に「反応性スパッタリング」という。)。SiNx膜の窒素含有量は、おもに混合ガス中の窒素の混合比率を増減させることで調節され、これによって、さまざまな窒素含有量のSiNx膜を透光性基板上に成膜することが可能となっている。
【0013】
しかし、混合ガス中の窒素の混合比率によって、安定した成膜が可能な場合と安定した成膜が困難になる場合がある。たとえば、SiNx膜を反応性スパッタリングで成膜する場合、化学量論的に安定なSi
3N
4やそれに近い窒素含有量の膜が形成されるような混合ガス中の窒素ガス混合比率の場合(このような成膜条件の領域を、「ポイズンモード」あるいは「反応モード」という。
図4参照。)、比較的安定して成膜することができる。また、窒素含有量の少ない膜が形成されるような混合ガス中の窒素ガス混合比率の場合(このような成膜条件の領域を、「メタルモード」という。
図4参照。)も、比較的安定して成膜することができる。一方、このポイズンモードとメタルモードとの間にある混合ガス中の窒素ガス混合比率の場合(このような成膜条件の領域を「遷移モード」という。
図4参照。)、成膜が不安定になりやすく、SiNx膜の面内や膜厚方向での組成や光学特性の均一性が低かったり、形成された膜の欠陥が多発したりする。また、複数の透光性基板に対して、SiNx膜をそれぞれ成膜した場合における基板間でのSiNx膜の組成や光学特性の均一性が低くなる傾向もある。ArF露光光が適用される位相シフト膜をSiNxの単層構造で形成する場合、成膜が不安定になりやすい遷移モードの領域での反応性スパッタリングで成膜しなければならないことが多く、問題となっていた。
【0014】
そこで、本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、透光性基板上に位相シフト膜を備えたマスクブランクにおいて、位相シフト膜を形成する材料にArF耐光性が低下する要因となる遷移金属を含有しないケイ素系材料を適用した場合でも、その位相シフト膜の面内や膜厚方向における組成や光学特性の均一性が高く、複数の基板間における位相シフト膜の組成や光学特性の均一性も高く、さらに低欠陥であるマスクブランクを提供することを目的としている。また、本発明は、このマスクブランクを用いて製造される位相シフトマスクを提供することを目的としている。さらに、本発明は、このようなマスクブランクや位相シフトマスクを製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
本発明の構成1は、透光性基板上に、ArF露光光を所定の透過率で透過し、かつ透過するArF露光光に対して所定量の位相シフトを生じさせる機能を有する位相シフト膜が設けられたマスクブランクであって、
前記位相シフト膜は、低透過層および高透過層が積層した構造を含み、
前記低透過層および前記高透過層は、ケイ素および窒素からなる材料、または当該材料に半金属元素、非金属元素および希ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成され、
前記低透過層は、前記高透過層に比べて窒素含有量が相対的に少ない
ことを特徴とするマスクブランクである。
【0016】
本発明の構成2は、次の通りである。すなわち、前記低透過層および前記高透過層は、同じ構成元素からなることを特徴とする構成1記載のマスクブランクである。
【0017】
本発明の構成3は、次の通りである。すなわち、前記位相シフト膜は、1層の前記低透過層と1層の前記高透過層とからなる1組の積層構造を2組以上有することを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランクである。
【0018】
本発明の構成4は、次の通りである。すなわち、前記低透過層および前記高透過層は、ケイ素および窒素からなる材料で形成されることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランクである。
【0019】
本発明の構成5は、次の通りである。すなわち、前記低透過層は、ArF露光光に対する屈折率nが2.5未満であり、かつ消衰係数kが1.0以上である材料で形成され、
前記高透過層は、ArF露光光に対する屈折率nが2.5以上であり、消衰係数kが1.0未満である材料で形成されていることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランクである。
【0020】
本発明の構成6は、次の通りである。すなわち、前記低透過層および前記高透過層は、いずれの1層の厚さが20nm以下であることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランクである。
【0021】
本発明の構成7は、次の通りである。すなわち、前記位相シフト膜は、前記透光性基板から最も離れた位置に、ケイ素、窒素および酸素からなる材料、または当該材料に半金属元素、非金属元素および希ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成された最上層を備えることを特徴とする構成1から6のいずれかに記載のマスクブランクである。
【0022】
本発明の構成8は、次の通りである。すなわち、前記最上層は、ケイ素、窒素および酸素からなる材料で形成されることを特徴とする構成7記載のマスクブランクである。
【0023】
本発明の構成9は、構成1から8のいずれかに記載のマスクブランクの前記位相シフト膜に転写パターンが形成されていることを特徴とする位相シフトマスクである。
【0024】
本発明の構成10は、透光性基板上に、ArF露光光を所定の透過率で透過し、かつ透過するArF露光光に対して所定量の位相シフトを生じさせる機能を有する位相シフト膜が設けられたマスクブランクの製造方法であって、
前記位相シフト膜は、低透過層および高透過層が積層した構造を含み、
ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素系ガスと希ガスを含むスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって、前記透光性基板上に前記低透過層を形成する低透過層形成工程と、
ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素系ガスと希ガスを含むスパッタリングガスであって、前記低透過層形成工程のときよりも窒素系ガスの混合比率が高いスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって、前記透光性基板上に前記高透過層を形成する高透過層形成工程と
を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法である。
【0025】
本発明の構成11は、次の通りである。すなわち、前記低透過層形成工程で使用されるスパッタリングガスは、成膜が不安定になる傾向を有する遷移モードとなる窒素系ガスの混合比率の範囲よりも少ない窒素系ガスの混合比率が選定され、
前記高透過層形成工程で使用されるスパッタリングガスは、前記遷移モードとなる窒素系ガスの混合比率の範囲よりも多い窒素系ガスの混合比率が選定される
ことを特徴とする構成10記載のマスクブランクの製造方法である。
【0026】
本発明の構成12は、次の通りである。すなわち、前記低透過層形成工程は、ケイ素ターゲットを用い、窒素ガスと希ガスからなるスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって前記低透過層を形成するものであり、前記高透過層形成工程は、ケイ素ターゲットを用い、窒素ガスと希ガスからなるスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって前記高透過層を形成するものであることを特徴とする構成10または11に記載のマスクブランクの製造方法である。
【0027】
本発明の構成13は、次の通りである。すなわち、前記低透過層は、ArF露光光に対する屈折率nが2.5未満であり、かつ消衰係数kが1.0以上である材料で形成され、
前記高透過層は、ArF露光光に対する屈折率nが2.5以上であり、消衰係数kが1.0未満である材料で形成されていることを特徴とする構成10から12のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法である。
【0028】
本発明の構成14は、ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、希ガスを含むスパッタリングガス中でのスパッタリングによって、前記位相シフト膜の前記透光性基板から最も離れた位置に最上層を形成する最上層形成工程を有することを特徴とする構成10から13のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法である。
【0029】
本発明の構成15は、ケイ素ターゲットを用い、窒素ガスと希ガスからなるスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって、前記位相シフト膜の前記透光性基板から最も離れた位置に最上層を形成し、前記最上層の少なくとも表層を酸化させる処理を行う最上層形成工程を有することを特徴とする構成12記載のマスクブランクの製造方法である。
【0030】
本発明の構成16は、構成10から15のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法によって製造されたマスクブランクの前記位相シフト膜に転写パターンを形成する工程を有することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法である。
【発明の効果】
【0031】
本発明のマスクブランクは、透光性基板上に、ArF露光光を所定の透過率で透過し、かつ透過するArF露光光に対して所定量の位相シフトを生じさせる機能を有する位相シフト膜が設けられたマスクブランクであって、位相シフト膜は、低透過層および高透過層が積層した構造を含み、低透過層および高透過層は、ケイ素および窒素からなる材料、または当該材料に半金属元素、非金属元素および希ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成され、低透過層は、前記高透過層に比べて窒素含有量が相対的に少ないことを特徴としている。このような構造のマスクブランクとすることにより、窒素含有量が少ない材料からなる低透過層を、反応性スパッタリングで、スパッタリングガスに窒素ガスの混合比率が少ない混合ガスを用い、安定した成膜が可能な成膜条件で成膜し、窒素含有量が多い材料からなる高透過層を、反応性スパッタリングで、スパッタリングガスに窒素ガスの混合比率が多い混合ガスを用い、安定した成膜が可能な成膜条件で成膜することが可能となる。これにより、位相シフト膜の面内や膜厚方向における組成や光学特性の均一性を高くすることができ、複数の基板間における位相シフト膜の組成や光学特性の均一性も高くすることができ、さらに低欠陥のマスクブランクを実現できる。
【0032】
また、本発明のマスクブランクの製造方法は、透光性基板上に、ArF露光光を所定の透過率で透過し、かつ透過するArF露光光に対して所定量の位相シフトを生じさせる機能を有する位相シフト膜が設けられたマスクブランクの製造方法であって、位相シフト膜は、低透過層および高透過層が積層した構造を含み、ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素系ガスと希ガスを含むスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって、透光性基板上に低透過層を形成する低透過層形成工程と、ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素系ガスと希ガスを含むスパッタリングガスであって、低透過層形成工程のときよりも窒素系ガスの混合比率が高いスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって、透光性基板上に高透過層を形成する高透過層形成工程とを有することを特徴とする。このようなマスクブランクの製造方法とすることにより、窒素含有量が少ない材料からなる低透過層を、反応性スパッタリングで、スパッタリングガスに窒素系ガスの混合比率が少ない混合ガスを用い、安定した成膜が可能な成膜条件で成膜し、窒素含有量が多い材料からなる高透過層を、反応性スパッタリングで、スパッタリングガスに窒素系ガスの混合比率が多い混合ガスを用い、安定した成膜が可能な成膜条件で成膜することが可能となる。これにより、位相シフト膜の面内や膜厚方向における組成や光学特性の均一性を高くすることができ、複数の基板間における位相シフト膜の組成や光学特性の均一性も高くすることができ、さらに低欠陥のマスクブランクを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の各実施の形態について説明する。
本発明者らは、ケイ素および窒素を含有し、かつ遷移金属を含有しないケイ素系材料膜で位相シフト膜を形成する場合において、膜の厚さ方向における組成や光学特性の均一性が高く、かつ低欠陥である膜を実現する手段について、鋭意研究を行った。現状の成膜技術において、ケイ素および窒素を含有し、かつ遷移金属を含有しないケイ素系材料膜を組成および光学特性の均一性が高い状態となるように基板上に形成するには、反応性スパッタリングによる成膜技術を適用する必要がある。しかし、一般に、反応性スパッタリングによる薄膜の成膜では、成膜室内における反応性ガスの混合比率によって、薄膜の成膜レートや電圧が変動する現象が少なからず発生する。
【0035】
図4は、反応性スパッタリングによって薄膜を成膜する場合において、成膜室内における希ガスと反応性ガスからなる混合ガス中の反応性ガスの混合比率(または、混合ガス中の反応性ガスの流量比)を変化させたときに生じる成膜速度の変化について、一般的な傾向を模式的にグラフで示したものである。
図4では、混合ガス中の反応性ガスの混合比率を徐々に増加させた場合(増加モード)における成膜速度の変化の曲線Iと、混合ガス中の反応性ガスの混合比率を徐々に減少させた場合(減少モード)における成膜速度の変化の曲線Dが示されている。一般に、混合ガス中の反応性ガスの混合比率が低い領域(
図4中のメタルモードMの領域)と、混合ガス中の反応性ガスの混合比率が高い領域(
図4中の反応モードRの領域)では、増加モードおよび減少モードともに混合ガス中の反応性ガス混合比率の変化に伴う成膜速度の変動幅は小さい。また、同じ混合ガス中の反応性ガスの混合比率における増加モードと減少モードとの間における成膜速度の差も小さい。このため、メタルモードMの領域と反応モードRの領域では、薄膜を安定的に成膜することができる。すなわち、メタルモードMの領域と反応モードRの領域は、組成および光学特性の均一性が高く、かつ低欠陥の薄膜を形成することが可能な領域であるといえる。
【0036】
一方、
図4におけるメタルモードMの領域と反応モードRの領域とに挟まれた遷移モードTの領域では、増加モードおよび減少モードともに混合ガス中の反応性ガス混合比率の変化に伴う成膜速度の変動幅は大きい。また、同じ混合ガス中の反応性ガスの混合比率における増加モードと減少モードとの間での成膜速度の差も大きい。遷移モードTの領域では、成膜室中における混合ガス中の反応性ガス混合比率の微小な変化による成膜速度の変動が大きく、その混合比率の微小な変化によって増加モードから減少モードへのシフトによる成膜速度の変動も生じる。このため、成膜速度が不安定な状態の中で薄膜が形成されることになる。成膜速度の変動は薄膜に含有される反応性ガスの成分量に影響する。すなわち、遷移モードTの領域は、組成および光学特性の均一性が高く、かつ低欠陥の薄膜を形成することが難しい領域であるといえる。
【0037】
遷移金属を含有しないケイ素系材料膜からなる単層構造の位相シフト膜を反応性スパッタリングで形成する場合、求められる光学特性の制約から遷移モードTの領域で成膜する必要性が高い。同じ混合ガス中の反応性ガスの混合比率における遷移モードTにおける増加モードと減少モードとの間での成膜速度の差が小さい反応性ガスの組み合わせを模索する方法もある。しかし、仮にそのような反応性ガスの組み合わせを見つけ出したとしても、遷移モードT内における混合ガス中の反応性ガス混合比率の変化に伴う成膜速度の変動幅は大きいという問題は解決されない。
【0038】
ケイ素および窒素を含有し、かつ遷移金属を含有しないケイ素系材料膜をメタルモードの領域による反応性スパッタリングで形成する場合、位相シフト膜として求められる位相差を得るための膜の厚さを確保しようとすると、この形成された膜材料の消衰係数kが高いため、求められるArF露光光に対する透過率よりも低くなってしまう。このような膜は、位相シフト効果が生じにくく、位相シフト膜には適していない。一方、ケイ素および窒素を含有し、かつ遷移金属を含有しないケイ素系材料膜を反応モードの領域による反応性スパッタリングで形成する場合、位相シフト膜として求められる位相差を得るための膜の厚さを確保しようとすると、この形成された膜材料の消衰係数kが低いため、求められるArF露光光に対する透過率よりも高くなってしまう。このような膜は、位相シフト効果は得られるが、位相シフト効果が生じる領域以外のパターン部分からの透過光で半導体ウェハ上のレジスト膜が感光してしまう恐れがあり、これも位相シフト膜には適していない。
【0039】
ケイ素および窒素を含有し、かつ遷移金属を含有しないケイ素系材料膜でArF露光光に適した位相シフト膜を実現するに当たって生じる多くの技術的課題を解決する手段を鋭意研究した結果、メタルモードの領域による反応性スパッタリングで形成するケイ素系材料膜である低透過層と、反応モードの領域による反応性スパッタリングで形成するケイ素系材料膜である高透過層とを積層した構造の位相シフト膜とすることで、前記の技術的課題を解決できるという結論に至った。
【0040】
すなわち、本発明は、透光性基板上に、ArF露光光を所定の透過率で透過し、かつ透過するArF露光光に対して所定量の位相シフトを生じさせる機能を有する位相シフト膜が設けられたマスクブランクであって、前記位相シフト膜は、低透過層および高透過層が積層した構造を含み、前記低透過層および前記高透過層は、ケイ素および窒素からなる材料、または当該材料に半金属元素、非金属元素および希ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成され、前記低透過層は、前記高透過層に比べて窒素含有量が相対的に少ないことを特徴とするマスクブランクである。
【0041】
また、本発明は、透光性基板上に、ArF露光光を所定の透過率で透過し、かつ透過するArF露光光に対して所定量の位相シフトを生じさせる機能を有する位相シフト膜が設けられたマスクブランクの製造方法であって、前記位相シフト膜は、低透過層および高透過層が積層した構造を含み、ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素系ガスと希ガスを含むスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって、前記透光性基板上に前記低透過層を形成する低透過層形成工程と、ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素系ガスと希ガスを含むスパッタリングガスであり、前記低透過層形成工程のときよりも窒素系ガスの混合比率が高いスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって、前記透光性基板上に前記高透過層を形成する高透過層形成工程とを有することを特徴とするマスクブランクの製造方法である。
【0042】
また、このマスクブランクの製造方法は、低透過層形成工程で使用されるスパッタリングガスは、成膜が不安定になる傾向を有する遷移モードとなる窒素系ガスの混合比率の範囲よりも少ない窒素系ガスの混合比率が選定され、高透過層形成工程で使用されるスパッタリングガスは、遷移モードとなる窒素ガスの混合比率の範囲よりも多い窒素ガスの混合比率が選定されることが好ましい。
【0043】
本発明のマスクブランクやマスクブランクの製造方法は、位相シフト膜を単層構造ではなく、低透過層および高透過層の積層構造としている。このような積層構造にすることで、低透過層は、窒素含有量の少ない膜が形成される傾向があるメタルモードの領域による反応性スパッタリングで成膜し、高透過層は、窒素含有量の多い膜が形成される傾向がある反応モードの領域による反応性スパッタリングで成膜できる。これにより、低透過層および高透過層ともに、成膜時の成膜レートや電圧の変動が小さい成膜条件による反応性スパッタリングで成膜することが可能となり、その結果、組成および光学特性の均一性が高く、かつ低欠陥の位相シフト膜を形成することができる。
【0044】
低透過層および高透過層は、ケイ素および窒素からなる材料、または当該材料に半金属元素、非金属元素および希ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成される。低透過層および高透過層には、ArF露光光に対する耐光性が低下する要因となり得る遷移金属は含有しない。また、低透過層および高透過層には、遷移金属を除く金属元素についても、ArF露光光に対する耐光性が低下する要因となり得る可能性は否定できないため、含有させないことが望ましい。低透過層および高透過層は、ケイ素に加え、いずれの半金属元素を含有してもよい。この半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルから選ばれる一以上の元素を含有させると、スパッタリングターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。
【0045】
低透過層および高透過層は、窒素に加え、いずれの非金属元素を含有してもよい。この非金属元素の中でも、炭素、フッ素および水素から選ばれる一以上の元素を含有させると好ましい。低透過層および高透過層は、酸素の含有量を10原子%以下に抑えることが好ましく、5原子%以下とすることがより好ましく、積極的に酸素を含有させることをしない(RBS、XPS等の組成分析の結果が検出下限値以下)ことがとさらに好ましい。ケイ素系材料膜に酸素を含有させると、消衰係数kが大きく低下する傾向があり、位相ソフト膜全体の厚さが厚くなってしまう。透光性基板は合成石英ガラス等のSiO
2を主成分とする材料で形成されていることが一般的である。低透過層および高透過層のいずれかが透光性基板の表面に接して形成される場合、ケイ素系材料膜が酸素を含むと、酸素を含むケイ素系材料膜の組成とガラスの組成との差が小さくなり、位相シフト膜にパターンを形成するときに行われるドライエッチングにおいて、ケイ素系材料膜と透光性基板との間でエッチング選択性が得られにくくなるという問題が生じることがある。
【0046】
ケイ素に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットにおいて、半金属元素として、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルから選ばれる一以上の元素を含有させると好ましい。これらの半金属元素は、ターゲットの導電性を高めることが期待できるので、特にDCスパッタリング法で低透過層および高透過層を形成する場合には、ターゲットにこれらの半金属元素を含有させることが望ましい。
【0047】
低透過層および高透過層は、希ガスを含有してもよい。希ガスは、反応性スパッタリングで薄膜を成膜する際に成膜室内に存在することによって成膜速度を大きくし、生産性を向上させることができる元素である。この希ガスがプラズマ化し、ターゲットに衝突することでターゲットからターゲット構成元素が飛び出し、途中、反応性ガスを取りこみつつ、透光性基板上に積層されて薄膜が形成される。このターゲット構成元素がターゲットから飛び出し、透光性基板に付着するまでの間に成膜室中の希ガスがわずかに取り込まれる。この反応性スパッタリングで必要とされる希ガスとして好ましいものとしては、アルゴン、クリプトン、キセノンが挙げられる。また、薄膜の応力を緩和するために、原子量の小さいヘリウム、ネオンを薄膜に積極的に取りこませることができる。
【0048】
位相シフト膜の低透過層を形成する低透過層形成工程および高透過層を形成する高透過層形成工程では、スパッタリングガスに窒素系ガスを含有させている。この窒素系ガスは、窒素を含有するガスであればいずれのガスも適用可能である。前記の通り、低透過層や高透過層は、酸素含有量を低く抑えることが好ましいため、酸素を含有しない窒素系ガスを適用することが好ましく、窒素ガス(N
2ガス)を適用することがより好ましい。
【0049】
本発明は、透光性基板上に、ArF露光光を所定の透過率で透過し、かつ透過するArF露光光に対して所定量の位相シフトを生じさせる機能を有する位相シフト膜が設けられたマスクブランクの製造方法であって、前記位相シフト膜は、低透過層および高透過層が積層した構造を含み、ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素系ガスと希ガスを含むスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって、前記透光性基板上に前記低透過層を形成する低透過層形成工程と、ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素系ガスと希ガスを含むスパッタリングガスであり、前記低透過層形成工程のときよりも窒素系ガスの混合比率が高いスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって、前記透光性基板上に前記高透過層を形成する高透過層形成工程とを有することを特徴とするマスクブランクの製造方法である。
【0050】
位相シフト膜における低透過層および高透過層は、他の膜を介さずに、直接互いに接して積層する構造であることが好ましい。また、本発明のマスクブランクは、低透過層および高透過層のいずれにも金属元素を含有する材料からなる膜が接しない膜構造であることが好ましい。ケイ素を含有する膜に金属元素を含有する膜が接した状態で加熱処理やArF露光光の照射が行われると、金属元素がケイ素を含有する膜中に拡散しやすい傾向があるためである。
【0051】
低透過層および高透過層は、同じ構成元素からなることが好ましい。低透過層および高透過層のいずれかが異なる構成元素を含んでおり、これらが接して積層している状態で加熱処理やArF露光光の照射が行われた場合、その異なる構成元素が、その構成元素を含んでいない側の層に移動して拡散するおそれがある。そして、低透過層および高透過層の光学特性が、成膜当初から大きく変わってしまうおそれがある。また、特にその異なる構成元素が半金属元素である場合、低透過層および高透過層を異なるターゲットを用いて成膜しなければならなくなる。
【0052】
本発明のマスクブランクにおいて、透光性基板の材料としては、合成石英ガラスのほか、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO
2−TiO
2ガラス等)などが挙げられる。合成石英ガラスは、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)に対する透過率が高く、マスクブランクの透光性基板を形成する材料として特に好ましい。
【0053】
位相シフト膜における低透過層および高透過層の透光性基板側からの積層順は、いずれの順であってもよい。透光性基板に接して、低透過層、高透過層の順に積層した位相シフト膜の構造の場合、低透過層は窒素含有量が少ないケイ素含有膜であり、SiO
2を主成分とする材料で形成されている透光性基板との間でエッチング選択性がより得られやすいという効果がある。また、ケイ素系含有膜にパターンを形成するときのドライエッチングで使用するエッチングガスはフッ素系ガスが一般的であるが、窒素含有量が少ないケイ素系含有膜であれば、エッチングガスとして塩素系ガスも適用できる。低透過層のドライエッチングに塩素系ガスを用いることで、透光性基板との間のエッチング選択性を大幅に高めることができる。
【0054】
一方、透光性基板に接して、高透過層低、透過層の順に積層した位相シフト膜の構造の場合、高透過層は窒素含有量が多いケイ素含有膜である。そのため、SiO
2を主成分とする材料で形成されている透光性基板に接して高透過層が形成される場合、透光性基板の表面と高透過層との間で高い密着性が得られやすいという効果がある。
【0055】
位相シフト膜における低透過層および高透過層は、他の膜を介さずに、直接、互いに接して積層する構造であることが好ましい。前記の理由から、ケイ素含有膜は、金属元素を含有する材料からなる膜と接した状態にしないことが望ましいためである。
【0056】
位相シフト膜は、1層の低透過層と1層の高透過層とからなる1組の積層構造を2組以上有することが好ましい。また、低透過層および高透過層は、いずれの1層の厚さが20nm以下であることが好ましい。低透過層および高透過層は、求められる光学特性が大きく異なるため、両者間における膜中の窒素含有量の差が大きい。このため、低透過層および高透過層との間で、フッ素系ガスによるドライエッチングでのエッチングレート差が大きくなっている。位相シフト膜が、1層の低透過層と1層の高透過層とからなる2層構造とした場合、フッ素系ガスによるドライエッチングでパターンを形成する際、エッチング後における位相シフト膜のパターンの断面で段差が生じやすくなる。位相シフト膜を、1層の低透過層と1層の高透過層とからなる1組の積層構造を2組以上有する構造とすることで、低透過層および高透過層の各層(1層)の厚さが前記の2層構造(1組の積層構造)の場合に比べて薄くなるため、エッチング後における位相シフト膜のパターンの断面で生じる段差を小さくすることができる。また、低透過層および高透過層における各層(1層)の厚さを20nm以下に制限することで、エッチング後における位相シフト膜のパターンの断面で生じる段差をより抑制することができる。
【0057】
近年、マスクブランクの薄膜(位相シフト膜)にドライエッチングによって転写パターンを形成して転写用マスク(位相シフトマスク)を作製する際に生じた黒欠陥部分の修正を、電子線照射を用いた欠陥修正(EB欠陥修正)で行うことが多くなっている。このEB欠陥修正は、XeF
2等の非励起状態の物質をガス化して黒欠陥部分に供給しつつ、黒欠陥部分に電子線を照射することで、黒欠陥部分の薄膜を揮発性のフッ化物に変化させて除去する技術である。従来、このEB欠陥修正で用いられるXeF
2等のフッ素系ガスは、非励起状態で供給されるため、電子線が照射されていない部分の薄膜は影響を受けにくいと考えられていた。しかし、このマスクブランクの薄膜がケイ素系化合物で形成されている場合、酸素や窒素の含有量が少ないと、XeF
2等の非励起状態のフッ素系ガスによってエッチングされてしまうことが判明している。
【0058】
本発明における位相シフト膜の低透過層は、窒素含有量が少なく、酸素を積極的に含有させないケイ素系材料膜であるため、このEB欠陥修正時のXeF
2等の非励起状態のフッ素系ガスによってエッチングされやすい傾向がある。このため、低透過層は、XeF
2等の非励起状態のフッ素系ガスが接触しづらい状態に置くことが望まれる。一方、高透過層は、窒素含有量が多いケイ素系材料膜であるため、XeF
2等の非励起状態のフッ素系ガスによる影響は受けにくい傾向がある。前記のように、位相シフト膜を、低透過層および高透過層の積層構造の組み合わせを2組以上有する構造とすることで、低透過層は、2つの高透過層の間に挟まれる構造か、透光性基板と高透過層との間に挟まれる状態に置かれるようにすることができる。これにより、XeF
2等の非励起状態のフッ素系ガスは、初期は接触して低透過層をエッチングする可能性はあるが、その後は低透過層に接触しづらい状態になる(低透過層の側壁の表面が高透過層の側壁の表面よりも入り組んだ状態になるため、ガスが入り込みにくくなる。)。よって、このような積層構造とすることで、低透過層がXeF
2等の非励起状態のフッ素系ガスによってエッチングされることを抑制することができる。また、低透過層および高透過層における各層の厚さを20nm以下に制限することで、低透過層がXeF
2等の非励起状態のフッ素系ガスによってエッチングされることをより抑制することができる。
【0059】
低透過層および高透過層は、ケイ素および窒素からなる材料で形成することが好ましい。また、このマスクブランクの製造方法において、低透過層形成工程では、ケイ素ターゲットを用い、窒素ガスと希ガスからなるスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって低透過層を形成するものであり、高透過層形成工程では、ケイ素ターゲットを用い、窒素ガスと希ガスからなるスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって高透過層を形成するものであることが好ましい。
【0060】
前記の通り、低透過層および高透過層に遷移金属を含有させることはArF露光光に対する耐光性が低下する要因となり得る。低透過層および高透過層に遷移金属以外の金属やケイ素以外の半金属元素を含有させた場合には、含有させた金属や半金属元素が低透過層と高透過層との間で移動することに伴って光学特性が変化する可能性がある。また、非金属元素においても、低透過層および高透過層に酸素を含有させるとArF露光光に対する透過率が大きく低下してしまう。これらのことを考慮すると、低透過層および高透過層は、ケイ素および窒素からなる材料で形成することがより好ましいことになる。希ガスは、薄膜に対してRBSやXPSのような組成分析を行っても検出することが困難な元素である。このため、前記のケイ素および窒素からなる材料には、希ガスを含有する材料も包含しているとみなすことができる。
【0061】
低透過層は、ArF露光光に対する屈折率nが2.5未満(好ましくは2.4以下、より好ましくは2.2以下、さらに好ましくは2.0以下)であり、かつ消衰係数kが1.0以上(好ましくは1.1以上、より好ましくは1.4以上、さらに好ましくは1.6以上)である材料で形成され、高透過層は、ArF露光光に対する屈折率nが2.5以上(好ましくは2.6以上)であり、消衰係数kが1.0未満(好ましく0.9以下は、より好ましく0.7以下は、さらに好ましくは0.4以下)である材料で形成されていることが好ましい。2層以上の積層構造で位相シフト膜を構成した場合に、位相シフト膜として求められる特性であるArF露光光に対する所定の位相差と所定の透過率を満たすには、低透過層および高透過層は、それぞれ上記の屈折率nと消衰係数kの範囲になければ実現できないためである。
【0062】
薄膜の屈折率nおよび消衰係数kは、その薄膜の組成だけで決まるものではない。その薄膜の膜密度および結晶状態なども、屈折率nおよび消衰係数kを左右する要素である。このため、反応性スパッタリングで薄膜を成膜するときの諸条件を調整して、その薄膜が所望の屈折率nおよび消衰係数kとなるように成膜する。低透過層および高透過層を、上記の屈折率nおよび消衰係数kの範囲にするには、反応性スパッタリングで成膜する際に、希ガスと反応性ガスの混合ガスの比率を調整することだけに限られない。反応性スパッタリングで成膜する際における成膜室内の圧力、ターゲットに印加する電力、ターゲットと透光性基板との間の距離等の位置関係など多岐にわたる。また、これらの成膜条件は成膜装置に固有のものであり、形成される薄膜が所望の屈折率nおよび消衰係数kになるように適宜調整されるものであある。
【0063】
位相シフト膜は、透光性基板から最も離れた位置に、ケイ素、窒素および酸素からなる材料、または当該材料に半金属元素、非金属元素および希ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成された最上層を備えることが好ましい。また、このマスクブランクの製造方法では、ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、希ガスを含むスパッタリングガス中でのスパッタリングによって、位相シフト膜の透光性基板から最も離れた位置に最上層を形成する最上層形成工程を有することが好ましい。さらに、このマスクブランクの製造方法では、ケイ素ターゲットを用い、窒素ガスと希ガスからなるスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって、前記位相シフト膜の透光性基板から最も離れた位置に最上層を形成し、前記最上層の少なくとも表層を酸化させる処理を行う最上層形成工程を有することがより好ましい。
【0064】
酸素を積極的に含有させず、かつ窒素を含有させたケイ素系材料膜は、ArF露光光に対する耐光性は高いが、酸素を積極的に含有させたケイ素系材料膜に比べて耐薬性が低い傾向がある。また、位相シフト膜の透光性基板側とは反対側の最上層として、酸素を積極的に含有させず、かつ窒素を含有させた高透過層または低透過層を配置した構成としたマスクブランクの場合、そのマスクブランクから作製した位相シフトマスクに対してマスク洗浄を行うことや大気中での保管を行うことによって、位相シフト膜の表層が酸化していくことを回避することは難しい。位相シフト膜の表層が酸化すると、薄膜の成膜時の光学特性から大きく変わってしまう。特に、位相シフト膜の最上層として低透過層を設けた構成の場合には、低透過層が酸化することによる透過率の上昇幅は大きくなってしまう。位相シフト膜を、低透過層および高透過層の積層構造の上に、さらに、ケイ素、窒素および酸素からなる材料、または当該材料に半金属元素、非金属元素および希ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成された最上層を設けることで、低透過層および高透過層の表面酸化を抑制することができる。
【0065】
ケイ素、窒素および酸素からなる材料、または当該材料に半金属元素、非金属元素および希ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成された最上層は、層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成のほか、層の厚さ方向で組成傾斜した構成(最上層が透光性基板から遠ざかっていくに従い層中の酸素含有量が増加していく組成傾斜を有する構成)も含まれる。層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成の最上層に好適な材料としては、SiO
2やSiONが挙げられる。層の厚さ方向で組成傾斜した構成の最上層としては、透光性基板側がSiNであり、透光性基板から遠ざかっていくに従って酸素含有量が増加して表層がSiO
2あるいはSiONである構成であることが好ましい。
【0066】
最上層の形成には、ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素ガスと酸素ガスと希ガスとを含むスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって形成する最上層形成工程を適用することができる。この最上層形成工程は、層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成の最上層、および組成傾斜した構成の最上層のいずれの最上層の形成にも適用できる。また、最上層の形成には、二酸化ケイ素(SiO
2)ターゲットまたは二酸化ケイ素(SiO
2)に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、希ガスを含むスパッタリングガス中でのスパッタリングによって形成する最上層形成工程を適用することができる。この最上層形成工程も、層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成の最上層と、組成傾斜した構成の最上層のいずれの最上層の形成にも適用できる。
【0067】
最上層の形成には、ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素ガスと希ガスを含むスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって形成され、さらにこの最上層の少なくとも表層を酸化させる処理を行われる最上層形成工程を適用することができる。この最上層形成工程は、基本的に、層の厚さ方向で組成傾斜した最上層の形成に適用できる。この場合における最上層の表層を酸化させる処理としては、大気中などの酸素を含有する気体中における加熱処理、オゾンや酸素プラズマを最上層に接触させる処理などがあげられる。
【0068】
位相シフト膜における低透過層、高透過層および最上層は、スパッタリングによって形成されるが、DCスパッタリング、RFスパッタリングおよびイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。導電性が低いターゲット(ケイ素ターゲット、半金属元素を含有しないあるいは含有量の少ないケイ素化合物ターゲットなど)を用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましいが、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用することがより好ましい。
【0069】
位相ソフト膜における低透過層および高透過層をスパッタリングでそれぞれ形成する工程においては、低透過層および高透過層を同じ成膜室で形成する場合と、異なる成膜室で形成する場合のいずれも適用できる。また、低透過層および高透過層を同じ成膜室で形成する場合には、低透過層および高透過層を同じターゲットで形成する場合と、異なるターゲットで形成する場合があるが、これらのいずれも適用できる。なお、低透過層および高透過層を異なる成膜室で形成する場合においては、各成膜室同士をたとえば別の真空室を介して連結する構成とすることが好ましい。この場合、大気中の透光性基板を真空室内に導入する際に経由させるロードロック室を真空室に連結することが好ましい。また、ロードロック室、真空室および各成膜室の間で透光性基板を搬送するための搬送装置(ロボットハンド)を設けることが好ましい。
【0070】
本発明のマスクブランクにおける位相シフト膜は、位相シフト効果を有効に機能させるためには、ArF露光光に対する透過率が1%以上であることが好ましく、2%以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜は、ArF露光光に対する透過率が30%以下になるように調整されていることが好ましく、20%以下であるとより好ましく、18%以下であるとさらに好ましい。また、位相シフト膜は、透過するArF露光光に対し、この位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した光との間で生じる位相差が170〜190度の範囲になるように調整されていることが好ましい。
【0071】
本発明のマスクブランクにおいて、位相シフト膜上に遮光膜を積層することが好ましい。一般に、転写用マスクでは、転写パターンが形成される領域(転写パターン形成領域)の外周領域は、露光装置を用いて半導体ウェハ上のレジスト膜に露光転写した際に外周領域を透過した露光光による影響をレジスト膜が受けないように、所定値以上の光学濃度(OD)を確保することが求められている。この点については、位相シフトマスクの場合も同じである。通常、位相シフトマスクを含む転写用マスクの外周領域では、ODが3.0以上あることが望ましいとされており、少なくとも2.8以上のODは必要とされている。前記の通り、位相シフト膜は所定の透過率で露光光を透過する機能を有しており、位相シフト膜だけでは所定値の光学濃度を確保することは困難である。このため、マスクブランクを製造する段階で位相シフト膜の上に、不足する光学濃度を確保するために遮光膜を積層しておくことが望まれる。このようなマスクブランクの構成とすることで、位相シフト膜を製造する途上で、位相シフト効果を使用する領域(基本的に転写パターン形成領域)の遮光膜を除去すれば、外周領域に所定値の光学濃度が確保された位相シフトマスクを製造することができる。
【0072】
遮光膜は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。また、単層構造の遮光膜および2層以上の積層構造の遮光膜の各層は、膜または層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成であってもよく、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。
【0073】
遮光膜は、位相シフト膜との間に別の膜を介さない場合においては、位相シフト膜にパターンを形成する際に用いられるエッチングガスに対して十分なエッチング選択性を有する材料を適用する必要がある。この場合、遮光膜は、クロムを含有する材料で形成することが好ましい。この遮光膜を形成するクロムを含有する材料としては、クロム金属のほか、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる一以上の元素を含有する材料が挙げられる。一般に、クロム系材料は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスでエッチングされるが、クロム金属はこのエッチングガスに対するエッチングレートがあまり高くない。塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスのエッチングガスに対するエッチングレートを高める点を考慮すると、遮光膜を形成する材料としては、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる一以上の元素を含有する材料を用いることが好ましい。また、遮光膜を形成するクロムを含有する材料に、モリブデンおよびスズのうち一以上の元素を含有させてもよい。モリブデンおよびスズのうち一以上の元素を含有させることで、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスに対するエッチングレートをより高くすることができる。
【0074】
一方、本発明のマスクブランクにおいて、遮光膜と位相シフト膜との間に別の膜を介する構成とする場合においては、前記のクロムを含有する材料でその別の膜(エッチングストッパ兼エッチングマスク膜)を形成し、ケイ素を含有する材料で遮光膜を形成する構成とすることが好ましい。クロムを含有する材料は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスによってエッチングされるが、有機系材料で形成されるレジスト膜は、この混合ガスでエッチングされやすい。ケイ素を含有する材料は、一般にフッ素系ガスや塩素系ガスでエッチングされる。これらのエッチングガスは基本的に酸素を含有しないため、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスによってエッチングする場合よりも、有機系材料で形成されるレジスト膜の減膜量が低減できる。このため、レジスト膜の膜厚を低減することができる。
【0075】
遮光膜を形成するケイ素を含有する材料には、遷移金属を含有させてもよく、遷移金属以外の金属元素を含有させてもよい。これは、このマスクブランクから位相シフトマスクを作製した場合、遮光膜で形成されるパターンは、基本的に外周領域の遮光帯パターンであり、転写パターン形成領域に比べてArF露光光が照射される積算量が少ないことや、この遮光膜が微細パターンで残っていることは稀であり、ArF耐光性が低くても実質的な問題は生じにくいためである。また、遮光膜に遷移金属を含有させると、含有させない場合に比べて遮光性能が大きく向上し、遮光膜の厚さを薄くすることが可能となるためである。遮光膜に含有させる遷移金属としては、遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つの金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。
【0076】
前記の位相シフト膜に積層して遮光膜を備えるマスクブランクにおいて、遮光膜の上に遮光膜をエッチングするときに用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で形成されたエッチングマスク膜をさらに積層させた構成とすることがより好ましい。遮光膜は、所定の光学濃度を確保する機能が必須であるため、その厚さを低減するには限界がある。エッチングマスク膜は、その直下の遮光膜にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能することができるだけの膜の厚さがあれば十分であり、基本的に光学の制限を受けない。このため、エッチングマスク膜の厚さは遮光膜の厚さに比べて大幅に薄くすることができる。そして、有機系材料のレジスト膜は、このエッチングマスク膜にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能するだけの膜の厚さがあれば十分であるので、従来よりも大幅にレジスト膜の厚さを薄くすることができる。
【0077】
このエッチングマスク膜は、遮光膜がクロムを含有する材料で形成されている場合は、前記のケイ素を含有する材料で形成されることが好ましい。なお、この場合のエッチングマスク膜は、有機系材料のレジスト膜との密着性が低い傾向があるため、エッチングマスク膜の表面をHMDS(Hexamethyldisilazane)処理を施し、表面の密着性を向上させることが好ましい。なお、この場合のエッチングマスク膜は、SiO
2、SiN、SiON等で形成されることがより好ましい。また、遮光膜がクロムを含有する材料で形成されている場合におけるエッチングマスク膜の材料として、前記のほか、タンタルを含有する材料も適用可能である。この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属のほか、タンタルに窒素、酸素、ホウ素および炭素から選ばれる一以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。その材料として、たとえば、Ta、TaN、TaON、TaBN、TaBON、TaCN、TaCON、TaBCN、TaBOCNなどが挙げられる。一方、このエッチングマスク膜は、遮光膜がケイ素を含有する材料で形成されている場合は、前記のクロムを含有する材料で形成されることが好ましい。
【0078】
本発明のマスクブランクにおいて、透光性基板と位相シフト膜との間に、透光性基板および位相シフト膜ともにエッチング選択性を有する材料(前記のクロムを含有する材料、たとえば、Cr、CrN、CrC、CrO、CrON、CrC等)からなるエッチングストッパ膜を形成してよい。
【0079】
本発明のマスクブランクにおいて、前記エッチングマスク膜の表面に接して、有機系材料のレジスト膜が100nm以下の膜厚で形成されていることが好ましい。DRAM hp32nm世代に対応する微細パターンの場合、エッチングマスク膜に形成すべき転写パターン(位相シフトパターン)に、線幅が40nmのSRAF(Sub-Resolution Assist Feature)が設けられることがある。しかし、この場合でも、レジストパターンの断面アスペクト比が1:2.5と低くすることができるので、レジスト膜の現像時、リンス時等にレジストパターンが倒壊や脱離することを抑制することができる。なお、レジスト膜は、膜厚が80nm以下であることがより好ましい。
【0080】
本発明の位相シフトマスクは、前記のマスクブランクの位相シフト膜に転写パターンが形成されていることを特徴としている。また、本発明の位相シフトマスクの製造方法は、前記の製造方法で製造されたマスクブランクの位相シフト膜に転写パターンを形成する工程を有することを特徴としている。本発明の位相シフトマスクは、位相シフト膜を構成する材料自体がArF露光光に対する耐光性が高い材料であるため、位相シフト膜にパターンを形成した後にArF耐光性を向上させるための処理を行うことを省略できる。
【0081】
図1は、本発明の一実施形態であるマスクブランク100の構成を示す断面図である。このマスクブランク100は、透光性基板1上に、低透過層21、高透過層22および最上層23がこの順に積層した位相シフト膜2と、遮光膜3と、エッチングマスク膜4が積層した構成となっている。一方、
図2は、本発明の別の実施形態であるマスクブランク101の構成を示す断面図である。このマスクブランク101は、透光性基板1上に、高透過層22、低透過層21、高透過層22、低透過層21および最上層23がこの順に積層した位相シフト膜2と、遮光膜3と、エッチングマスク膜4が積層した構成となっている。マスクブランク100,101の各構成の詳細については、前記の通りである。以下、
図3に示す製造工程にしたがって、本発明の位相シフトマスクの製造方法の一例を説明する。なお、この例では、遮光膜にはクロムを含有する材料を適用し、エッチングマスク膜にはケイ素を含有する材料を適用している。
【0082】
まず、マスクブランク100におけるエッチングマスク膜4に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成した。次に、レジスト膜に対して、位相シフト膜に形成すべき転写パターン(位相シフトパターン)である第1のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、位相シフトパターンを有する第1のレジストパターン5aを形成した(
図3(a)参照)。続いて、第1のレジストパターン5aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、エッチングマスク膜4に第1のパターンを形成(エッチングマスクパターン4a)した(
図3(b)参照)。
【0083】
次に、レジストパターン5aを除去してから、エッチングマスクパターン4aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第1のパターンを形成(遮光膜パターン3a)する(
図3(c)参照)。続いて、遮光パターン3aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜2に第1のパターンを形成(位相シフトパターン2a)し、かつ同時にエッチングマスクパターン4aも除去した(
図3(d)参照)。
【0084】
次に、マスクブランク100上にレジスト膜をスピン塗布法によって形成した。次に、レジスト膜に対して、遮光膜に形成すべきパターン(遮光パターン)である第2のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成した。続いて、第2のレジストパターン6bをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第2のパターンを形成(遮光パターン3b)した(
図3(e)参照)。さらに、第2のレジストパターン6bを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク200を得た(
図3(f)参照)。
【0085】
前記のドライエッチングで使用される塩素系ガスとしては、Clが含まれていれば特に制限はない。たとえば、塩素系ガスとして、Cl
2、SiCl
2、CHCl
3、CH
2Cl
2、CCl
4、BCl
3等があげられる。また、前記のドライエッチングで使用されるフッ素系ガスとしては、Fが含まれていれば特に制限はない。たとえば、フッ素系ガスとして、CHF
3、CF
4、C
2F
6、C
4F
8、SF
6等があげられる。特に、Cを含まないフッ素系ガスは、ガラス基板に対するエッチングレートが比較的低いため、ガラス基板へのダメージをより小さくすることができる。
【0086】
本発明の位相シフトマスクは、ArFエキシマレーザーの露光光を積算照射された後のものであっても、位相シフトパターンのCD変化(太り)を小さい範囲に抑制できる。このため、ArFエキシマレーザーを露光光とする露光装置のマスクステージに、この積算照射後の位相シフトマスクをセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に位相シフトパターンを露光転写しても、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを転写することができる。
【0087】
さらに、本発明の半導体デバイスの製造方法は、前記の位相シフトマスクまたは前記のマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクを用い、半導体基板上のレジスト膜にパターンを露光転写することを特徴としている。本発明の位相シフトマスクやマスクブランクは、前記の通りの効果を有するため、ArFエキシマレーザーを露光光とする露光装置のマスクステージに、ArFエキシマレーザーの露光光を積算照射された後の本発明の位相シフトマスクをセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に位相シフトパターンを露光転写しても、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを転写することができる。このため、このレジスト膜のパターンをマスクとして、下層膜をドライエッチングして回路パターンを形成した場合、精度不足に起因する配線短絡や断線のない高精度の回路パターンを形成することができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
[マスクブランクの製造]
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.25mmの合成石英ガラスからなる透光性基板1を準備した。この透光性基板1は、端面及び主表面が所定の表面粗さに研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理を施されたものであった。
【0089】
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N
2)の混合ガス(流量比 Ar:N
2=2:3,圧力=0.035Pa)をスパッタリングガスとし、RF電源の電力を2.8kWとし、反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、透光性基板1上に、ケイ素および窒素からなる低透過層21(Si:N=59at%:41at%)を12nmの厚さで形成した。別の透光性基板の主表面に対して、同条件で低透過層21のみを形成し、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いてこの低透過層21の光学特性を測定したところ、波長193nmにおける屈折率nが1.85、消衰係数kが1.70であった。なお、この低透過層21を成膜する際に用いた条件は、その使用した枚葉式RFスパッタ装置で事前に、スパッタリングガスにおけるArガスとN
2ガスとの混合ガス中のN
2ガスの流量比と、成膜速度との関係を検証し、メタルモードの領域で安定的に成膜できる流量比等の成膜条件を選定している。なお、低透過層21の組成は、X線光電子分光法(XPS)による測定によって得られた結果である。以下、他の膜に関しても同様である。
【0090】
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に、低透過層21が積層された透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N
2)の混合ガス(流量比 Ar:N
2=1:3,圧力=0.09Pa)をスパッタリングガスとし、RF電源の電力を2.8kWとし、反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、低透過層21上に、ケイ素および窒素からなる高透過層22(Si:N=46at%:54at%)を55nmの厚さで形成した。別の透光性基板の主表面に対して、同条件で高透過層22のみを形成し、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いてこの高透過層22の光学特性を測定したところ、波長193nmにおける屈折率nが2.52、消衰係数kが0.39であった。なお、この高透過層22を成膜する際に用いた条件は、その使用した枚葉式RFスパッタ装置で事前に、スパッタリングガスにおけるArガスとN
2ガスとの混合ガス中のN
2ガスの流量比と、成膜速度との関係を検証し、反応モード(ポイズンモード)の領域で安定的に成膜できる流量比等の成膜条件を選定している。
【0091】
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に、低透過層21および高透過層22が積層された透光性基板1を設置し、二酸化ケイ素(SiO
2)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガス(圧力=0.03Pa)をスパッタリングガスとし、RF電源の電力を1.5kWとし、RFスパッタリングにより、高透過層22上に、ケイ素および酸素からなる最上層23を4nmの厚さで形成した。なお、別の透光性基板の主表面に対して、同条件で最上層23のみを形成し、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いてこの最上層23の光学特性を測定したところ、波長193nmにおける屈折率nが1.56、消衰係数kが0.00であった。
【0092】
以上の手順により、透光性基板1上に、低透過層21、高透過層22および最上層23からなる位相シフト膜2を形成した。この位相シフト膜2に対し、位相シフト量測定装置でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率および位相差を測定したところ、透過率は5.97%、位相差が177.7度であった。
【0093】
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に位相シフト膜2が形成された透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO
2)、窒素(N
2)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:CO
2:N
2:He=22:39:6:33,圧力=0.2Pa)をスパッタリングガスとし、DC電源の電力を1.9kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、位相シフト膜2上に、CrOCNからなる遮光膜3の最下層を30nmの厚さで形成した。
【0094】
次に、同じクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N
2)の混合ガス(流量比 Ar:N
2=83:17,圧力=0.1Pa)をスパッタリングガスとし、DC電源の電力を1.4kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、位相シフト膜2上に、CrOCNからなる遮光膜3の下層を4nmの厚さで形成した。
【0095】
次に、同じクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO
2)、窒素(N
2)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:CO
2:N
2:He=21:37:11:31,圧力=0.2Pa)をスパッタリングガスとし、DC電源の電力を1.9kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、位相シフト膜2上に、CrOCNからなる遮光膜3の上層を14nmの厚さで形成した。以上の手順により、位相シフト膜2側からCrOCNからなる最下層、CrNからなる下層、CrOCNからなる上層の3層構造からなるクロム系材料の遮光膜3を合計膜厚48nmで形成した。
【0096】
さらに、枚葉式RFスパッタ装置内に、位相シフト膜2および遮光膜3が積層された透光性基板1を設置し、二酸化ケイ素(SiO
2)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガス(圧力=0.03Pa)をスパッタリングガスとし、RF電源の電力を1.5kWとし、RFスパッタリングにより高透過層22上に、ケイ素および酸素からなるエッチングマスク膜4を5nmの厚さで形成した。以上の手順により、透光性基板1上に、3層構造の位相シフト膜2、遮光膜3およびエッチングマスク膜4が積層した構造を備えるマスクブランク100を製造した。
【0097】
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例1のマスクブランク100を用い、以下の手順で実施例1の位相シフトマスク200を作製した。最初に、エッチングマスク膜4の表面にHMDS処理を施した。続いて、スピン塗布法によって、エッチングマスク膜4の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚80nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、位相シフト膜に形成すべき位相シフトパターンである第1のパターンを電子線描画し、所定の現像処理および洗浄処理を行い、第1のパターンを有する第1のレジストパターン5a)を形成した(
図3(a)参照)。
【0098】
次に、第1のレジストパターン5aをマスクとし、CF
4ガスを用いたドライエッチングを行い、エッチングマスク膜4に第1のパターン(エッチングマスクパターン4a)を形成した(
図3(b)参照)。
【0099】
次に、第1のレジストパターン5aを除去した。続いて、エッチングマスクパターン4aをマスクとし、塩素と酸素との混合ガス(ガス流量比 Cl
2:O
2=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第1のパターンを形成(遮光パターン3a)した(
図3(c)参照)。
【0100】
次に、遮光パターン3aをマスクとし、フッ素系ガス(SF
6+He)を用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜2に第1のパターンを形成(位相シフトパターン2a)し、かつ同時にエッチングマスクパターン4aを除去した(
図3(d)参照)。
【0101】
次に、遮光膜パターン3a上に、スピン塗布法によって、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚150nmで形成した。次に、レジスト膜に対して、遮光膜に形成すべきパターン(遮光パターン)である第2のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成した。続いて、第2のレジストパターン6bをマスクとして、塩素と酸素との混合ガス(ガス流量比 Cl
2:O
2=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第2のパターンを形成(遮光パターン3b)した(
図3(e)参照)。さらに、第2のレジストパターン6bを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク200を得た(
図3(f)参照)。
【0102】
作製した実施例1のハーフトーン型の位相シフトマスク200に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、設計値から許容範囲内で微細パターンが形成されていることが確認された。次に、この実施例1のハーフトーン型位相シフトマスク200の位相シフトパターンに対して、ArFエキシマレーザー光を積算照射量20kJ/cm
2で照射する処理を行った。この照射処理の前後における位相シフトパターンのCD変化量は、2nm程度であり、位相シフトマスクとして使用可能な範囲のCD変化量であった。
【0103】
ArFエキシマレーザー光の照射処理を行った後の実施例1のハーフトーン型位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、ArFエキシマレーザーが積算照射量20kJ/cm
2で照射された後の実施例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
【0104】
(実施例2)
[マスクブランクの製造]
実施例1と同様の手順で透光性基板1を準備した。次に、枚葉式RFスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、実施例1の高透過層22と同様の成膜条件であるが、厚さは18nmに変えて高透過層22を形成した。この高透過層22の光学特性は、実施例1の高透過層22と同じく、波長193nmにおける屈折率nが2.52、消衰係数kが0.39であった。
【0105】
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に、高透過層22が積層された透光性基板1を設置し、実施例1の低透過層21と同様の成膜条件であるが、厚さは7nmに変えて低透過層21を形成した。この低透過層21の光学特性は、実施例1の低透過層21と同じく、波長193nmにおける屈折率nが1.85、消衰係数kが1.70であった。
【0106】
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に、高透過層22および低透過層21が積層された透光性基板1を設置し、実施例1の高透過層22と同様の成膜条件であるが、厚さは18nmに変えて高透過層22を形成した。この高透過層22の光学特性は、1層目の高透過層22と同様である。
【0107】
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に、高透過層22、低透過層21および高透過層22が順に積層された透光性基板1を設置し、実施例1の低透過層21と同様の成膜条件であるが、厚さは7nmに変えて低透過層21を形成した。この低透過層21の光学特性は、2層目の低透過層21と同様である。
【0108】
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に、高透過層22、低透過層21、高透過層22および低透過層21が順に積層された透光性基板1を設置し、実施例1の高透過層22と同様の成膜条件であるが、厚さは18nmに変えて最上層23を形成した。この時点では最上層23の光学特性は、1層目の高透過層22と同様である。次に、透光性基板上の最上層23に対し、オゾンを用いた酸化処理を行い、最上層23の表層に酸化層を形成した。これにより、最上層は、透光性基板側から遠ざかるに従って酸素含有量が増加する傾向を有する組成傾斜膜となった。
【0109】
以上の手順により、透光性基板1上に、高透過層22、低透過層21、高透過層22、低透過層21および最上層23からなる5層構造の位相シフト膜2を形成した。この位相シフト膜2に対し、位相シフト量測定装置でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率および位相差を測定したところ、透過率は5.91%、位相差が181.2度であった。
【0110】
次に、実施例1と同様の手順で、位相シフト膜2上に3層構造からなるクロム系材料の遮光膜3を48nmの合計膜厚で形成した。続いて、実施例1と同様の手順で、遮光膜3上に、ケイ素および酸素からなるエッチングマスク膜4を5nmの厚さで形成した。以上の手順により、透光性基板1上に、5層構造の位相シフト膜2、遮光膜3およびエッチングマスク膜4が積層した構造を備える実施例2のマスクブランク101を製造した。
【0111】
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例2のマスクブランク101を用い、実施例1と同様の手順で、実施例2の位相シフトマスク200を作製した。作製した実施例2のハーフトーン型の位相シフトマスク200に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、設計値から許容範囲内で微細パターンが形成されていることが確認された。次に、この実施例2のハーフトーン型位相シフトマスク200の位相シフトパターンに対して、ArFエキシマレーザー光を積算照射量20kJ/cm
2で照射する処理を行った。この照射処理の前後における位相シフトパターンのCD変化量は、2nm程度であり、位相シフトマスクとして使用可能な範囲のCD変化量であった。
【0112】
ArFエキシマレーザー光の照射処理を行った後の実施例2のハーフトーン型位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、ArFエキシマレーザーが積算照射量20kJ/cm
2で照射された後の実施例2の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
【0113】
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
実施例1の場合と同様の手順で、主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.25mmの合成石英ガラスからなる透光性基板を準備した。次に、枚葉式DCスパッタ装置内に透光性基板を設置し、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)との混合焼結ターゲット(Mo:Si=12at%:88at%)を用い、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:N
2:He=8:72:100,圧力=0.2Pa)をスパッタリングガスとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、透光性基板1上に、モリブデン、ケイ素および窒素からなる位相シフト膜を69nmの厚さで形成した。
【0114】
次に、透光性基板上の位相シフト膜に対し、大気中での加熱処理を行った。この加熱処理は、450℃で1時間行われた。この加熱処理が行われた後の比較例1の位相シフト膜に対し、位相シフト量測定装置でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率および位相差を測定したところ、透過率は6.02%、位相差が177.9度であった。
【0115】
次に、実施例1と同様の手順で、位相シフト膜上に3層構造からなるクロム系材料の遮光膜を48nmの合計膜厚で形成した。続いて、実施例1と同様の手順で、遮光膜上に、ケイ素および酸素からなるエッチングマスク膜を5nmの厚さで形成した。以上の手順により、透光性基板上に、MoSiNからなる位相シフト膜、遮光膜およびエッチングマスク膜が積層した構造を備える比較例1のマスクブランクを製造した。
【0116】
[位相シフトマスクの製造]
次に、この比較例1のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で、比較例1の位相シフトマスクを作製した。作製した比較例1のハーフトーン型の位相シフトマスクに対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、設計値から許容範囲内で微細パターンが形成されていることが確認された。次に、この比較例1のハーフトーン型位相シフトマスクの位相シフトパターンに対して、ArFエキシマレーザー光を積算照射量20kJ/cm
2で照射する処理を行った。この照射処理の前後における位相シフトパターンのCD変化量は、20nm以上であり、位相シフトマスクとして使用可能な範囲を大きく超えるCD変化量であった。
【0117】
ArFエキシマレーザー光の照射処理を行った後の比較例1のハーフトーン型位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、位相シフトパターンのCD変化による影響で設計仕様を満たすことはできていなかった。この結果から、ArFエキシマレーザーが積算照射量20kJ/cm
2で照射された後の比較例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンには、回路パターンの断線や短絡が発生することが予想される。