特許第6720406号(P6720406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 江▲蘇▼省▲農▼▲業▼科学院の特許一覧

特許6720406耐熱保護剤、室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法及びその使用
<>
  • 特許6720406-耐熱保護剤、室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法及びその使用 図000005
  • 特許6720406-耐熱保護剤、室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法及びその使用 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720406
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】耐熱保護剤、室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/187 20060101AFI20200629BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20200629BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20200629BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20200629BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20200629BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   A61K39/187
   A61K47/26
   A61P31/14
   A61K47/10
   A61K47/18
   A61K47/42
   A61P37/04
   A61K39/00 E
   A61K39/00 G
   A61P43/00 105
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-517082(P2019-517082)
(86)(22)【出願日】2017年9月21日
(65)【公表番号】特表2019-532949(P2019-532949A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(86)【国際出願番号】CN2017102667
(87)【国際公開番号】WO2019028976
(87)【国際公開日】20190214
【審査請求日】2019年3月28日
(31)【優先権主張番号】201710670177.6
(32)【優先日】2017年8月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516158068
【氏名又は名称】江▲蘇▼省▲農▼▲業▼科学院
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU ACADEMY OF AGRICULTURAL SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】呂 芳
(72)【発明者】
【氏名】盧 宇
(72)【発明者】
【氏名】侯 継波
(72)【発明者】
【氏名】趙 艶紅
(72)【発明者】
【氏名】▲ドン▼ 碧華
(72)【発明者】
【氏名】張 金秋
(72)【発明者】
【氏名】張 暁燕
(72)【発明者】
【氏名】左 暁▲シン▼
【審査官】 渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−523127(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105999284(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104225606(CN,A)
【文献】 国際公開第2016/157208(WO,A1)
【文献】 特公昭48−1484(JP,B1)
【文献】 特開平02−242673(JP,A)
【文献】 Vaccine,2016年,34,p.3746-3750
【文献】 Journal of Agricultural Science and Technology,2016年,18(4),p.168-173
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00
A61K 39/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
豚コレラウィルスに耐熱性を付与し、保存安定性を向上させるための耐熱保護剤であって、
質量パーセンテージでラフィノース1%〜5%、麦芽糖5%〜10%、蔗糖15%〜30%、ラクトース1%〜5%、ブドウ糖1%〜5%、ポリソルベート80 0.1%〜1.5%、ポリエチレングリコール8000 0.1%〜0.5%、チロシン0.5%〜3%、フィブロイン3%〜6%、残りは注射用水である、
ことを特徴とする耐熱保護剤。
【請求項2】
質量パーセンテージでラフィノース1.5%〜4%、麦芽糖6%〜9%、蔗糖20%〜25%、ラクトース2%〜4%、ブドウ糖2%〜4%、ポリソルベート80 0.5%〜1%、ポリエチレングリコール8000 0.2%〜0.4%、チロシン1%〜2%、フィブロイン4%〜5%、残りは注射用水である、
ことを特徴とする請求項1に記載の耐熱保護剤。
【請求項3】
ラフィノース、麦芽糖、蔗糖、ラクトース、ブドウ糖、ポリソルベート80を水に溶かし、高圧蒸気滅菌法で滅菌して溶液1を得るステップ1)と、
ポリエチレングリコール8000、チロシン、フィブロインを水に溶かし、濾過法で除菌して溶液2を得るステップ2)と、
溶液1と溶液2を混合し、水を補足し、耐熱保護剤を得るステップ3)とを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の耐熱保護剤の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の耐熱保護剤の豚コレラ生ワクチン製造への使用。
【請求項5】
請求項1に記載の耐熱保護剤の室温で保存可能な豚コレラ生ワクチン製造への使用。
【請求項6】
豚コレラウィルスを含む溶液と請求項1または2に記載の耐熱保護剤を体積比1〜3:1の割合で均一に混合して得た豚コレラ生ワクチン溶液を用い、
前記豚コレラ生ワクチン溶液を常温常圧で0.5〜2時間放置した後、真空度500mBar〜800mBar、温度5℃〜30℃の条件で0.5〜1時間、真空度80mBar〜500mBar、温度10℃〜35℃の条件で0.5〜2時間、真空度30mBar〜80mBar、温度10℃〜40℃の条件で0.5〜2時間、真空度0.01mBar〜0.05mBar、温度20℃〜40℃で8〜12時間、真空度0.001mBar〜0.01mBar、温度20℃〜40℃の条件で12〜24時間保持する乾燥方法を用いて乾燥した後、豚コレラ生ワクチンを得る、
ことを特徴とする室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法。
【請求項7】
前記乾燥した豚コレラ生ワクチンを走査電子顕微鏡で観察するとガラス様のラメラ構造を呈し、そのガラス転移温度は50℃以上に達する、
ことを特徴とする請求項6に記載の室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法。
【請求項8】
前記ガラス転移温度は65〜70℃に達する、
ことを特徴とする請求項7に記載の室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法。
【請求項9】
前記豚コレラウィルスは細胞毒性である、
ことを特徴とする請求項6に記載の室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワクチンの製造保存の分野に属し、具体的には耐熱保護剤、室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法及びその使用、特に室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
豚コレラ(classical swine fever,CSF)はフラビウィルス科ペスチウィルス属豚コレラウィルス(Classical Swine Fever Virus,CSFV)によって引き起こされる急性、熱性、高度接触性伝染病で、流行性が広く、病死率が高く、養豚業に大きな安全的脅威と経済的損失をもたらしている。現在豚コレラを予防する効果があるのは豚コレラ生ワクチンと家兎化ワクチンで、いずれもC株を基礎にしたものである。
【0003】
豚コレラウィルスは熱に非常に敏感で、文献によると、豚コレラウィルスは37℃での半減期はわずか3時間しかない。現在よく使われている豚コレラ生ワクチンは主に冷凍乾燥技術で製造されたもので、よく使われている冷凍乾燥保護剤の配合が単純で、その多くは蔗糖、ゼラチン、チオ尿素、牛血清アルブミン、ラクトアルブミン水解物、燐酸塩などの成分が多く含まれており、ワクチンの耐熱性が限られており、37℃でわずか7−10日間しか保存できず、−15℃で長期保存するか、あるいは2〜8℃で1−2年間保存することが可能であるが、コールドチェーンが一旦切れると、常温においてわずか数時間で製品の力価が50%以上失われてしまい、場合によっては完全に失効してしまうこともある。同時に冷凍過程で形成した氷結晶はウィルスの嚢膜あるいは細胞壁に機械的損傷を与え、ウィルスの活性が大きく低下してしまう。そのため、ワクチンの乾燥損失を減らし、ワクチンの耐熱性を高めることによってワクチンの品質を保障することは、免疫効力を充分に発揮させるための重要なカギとなっている。近年、多くの研究者は耐熱技術の改良、例えばスプレー乾燥、バイオミネラリゼーションなどの研究を行っているが、いずれも実験室レベルに留まっている。
【0004】
糖ガラス化保存技術はワクチンをガラスの状態にする方法で、当該技術は主に真空勾配乾燥プロセスを通じて実現されるもので、真空勾配降下の過程において、ワクチンを含む高粘度の糖液を沸騰、泡立ちさせ、水分を揮発させることによって、次第にガラス体に固まる技術である。非還元糖が非常に安定しているため、ワクチンを包んでいる糖ガラスはタンパク質と反応しない。この技術は冷凍する必要がなく、常温で行うことができるため、伝統的な冷凍乾燥の「冷凍」によって形成される氷結晶によるウィルスの機械的損傷を避けることができる。また、ワクチンの糖質含有量が高く、粘度が高いため、形成されたガラス状のワクチンはより高いガラス転移温度を持ち、室温など「コールドチェーン」以外の環境でも長期保存することができる。
【0005】
ガラス転移温度Tg(Glass transition temperature)とは物質の重要かつ特徴的な熱パラメーターで、物質がガラスの状態から高弾性状態に変化する温度を指す。Tg以下では重合度の高い物質がガラスの状態にあるため、分子鎖やセグメントが運動できず、分子を構成する原子(またはラジカル)のみ平衡位置で振動する。Tgの時点で分子鎖が移動できないが、セグメントは運動し始め、高弾性が現れ、温度がさらに上昇すると、分子鎖全体が運動し始め、粘性流の性質が現れる。乾燥したワクチンにとって、Tgが高ければ、またTgと貯蔵温度の差が大きくなるほど、ワクチンの長期貯蔵にとって好都合である。
【0006】
以上の原理に基づいて、ワクチンに対する真空勾配乾燥を行う前に増粘剤を加えてワクチンの粘度を高めると同時に、乾燥過程で泡を立ててかつサンプルを噴き出さないようにするために真空度の降下速度があまり速すぎるといけない。そのため、配合を設計する時に多価アルコール、ポリマー、表面活性剤、アミノ酸およびタンパク質安定剤が含まれるように留意する必要がある。多価アルコールは乾燥過程において水合作用によって失われた水に代わって、生物活性物質の変性を防ぎ、増粘剤の役割を果たし、その靭性で泡の形成と安定を支えることができるため、乾燥した後の泡構造を保つことができる。一般的によく使われている発泡成分として蔗糖、トレハロース、ソルボース、メレチトース、ソルビトール、スタキオース、ラフィノース、果糖、マンノース、麦芽糖、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、ブドウ糖、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、トレイトール、グリセリン、L−スチボグルコン酸ナトリウムなどがある。大部分の多価アルコールは生物活性物質と配合して混合溶液を作り、その濃度は1−35%、または1.5−9%、または10−25%である。
【0007】
ポリマーは処方の中で主に保護の役割を果たし、多価アルコールと併用することによって、配合の粘度を高め、線状あるいは分枝重合体は本発明の乾燥した後の泡構造の強度を増加させることができる。多くのポリマーの水溶性が非常に高いため、それらが乾燥後の泡の再構築に著しい阻害を与える心配はない。表面活性剤は主に泡形成の過程に表面張力を保って生物活性成分の変性を防ぎ、泡の安定性、迅速な再構築に役立つ。表面活性剤は適当なイオン/非イオン洗浄剤、Tween表面活性剤、Pluronic表面活性剤などでよい。タンパク質やアミノ酸の添加は乾燥製品の長期保存中に抗酸化作用の働きをし、一般的なタンパク質としてはウシ血清アルブミン、フィブロインなどがある。アミノ酸としてはチロシン、アルギニン、ヒスチジン、システインなどがある。
【0008】
また、ワクチンを良好なガラス状態に保つために、糖ガラスワクチンの残留水分を1〜3%に抑え、あまり高くならないように留意する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする技術的問題は耐熱保護剤を提供することである。
【0010】
また、本発明が解決しようとする技術的問題は耐熱保護剤の製造方法を提供することである。
【0011】
また、本発明が解決しようとする技術的問題は耐熱保護剤のワクチンの製造への使用である。
【0012】
更に、本発明が解決しようとする技術的問題は耐熱保護剤の室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造への使用である。
【0013】
本発明が最後に解決しようとする技術的問題は室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は次の技術手段によって実現される。
【0015】
耐熱保護剤であって、前記耐熱保護剤は質量パーセンテージ含有量として次の組成を含むが、それらに限るものではなく、ラフィノース1%〜5%、麦芽糖5%〜10%、蔗糖15%〜30%、ラクトース1%〜5%、ブドウ糖1%〜5%、ポリソルベート80 0.1%〜1.5%、ポリエチレングリコール8000 0.1%〜0.5%、チロシン0.5%〜3%、フィブロイン3%〜6%で、残りは注射用水である。
【0016】
ここで、前記耐熱保護剤は質量パーセンテージ含有量として次の組成を含むが、それらに限るものではなく、ラフィノース1.5%〜4%、麦芽糖6%〜9%、蔗糖20%〜25%、ラクトース2%〜4%、ブドウ糖2%〜4%、ポリソルベート80 0.5%〜1%、ポリエチレングリコール8000 0.2%〜0.4%、チロシン1%〜2%、フィブロイン4%〜5%、残りは注射用水である。
【0017】
また、本発明は耐熱保護剤の製造方法を含み、前記方法は、
ラフィノース、麦芽糖、蔗糖、ラクトース、ブドウ糖、ポリソルベート80を水に溶かし、高圧蒸気滅菌法で滅菌して溶液1を得るステップ1)と、
ポリエチレングリコール8000、チロシン、フィブロインを水に溶かし、濾過法で除菌して溶液2を得るステップ2)と、
溶液1と溶液2を混合し、水を補足して、耐熱保護剤を得るステップ3)とを備える。
【0018】
また、本発明は前記耐熱保護剤のワクチンの製造への使用を含む。
【0019】
また、本発明は前記耐熱保護剤の室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造への使用を含む。
【0020】
また、本発明は室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法を含み、前記方法では、豚コレラウィルス溶液と前記耐熱保護剤を体積比1〜3:1の割合で均一に混合して豚コレラ生ワクチンの溶液を作り、真空勾配乾燥した後前記豚コレラワクチンを得る。乾燥過程において、真空度を段階的に降下させ、温度を室温に維持し、水分を揮発させて、液体が粘稠になり、沸点が低下し、真空度と溶液の粘稠度が一定の閾値に達した場合、溶液は泡立ち始め、水分揮発の表面積が増大するため、ワクチンの乾燥が加速する。当該方法は冷凍プロセスを経ていないため、氷結晶によるウィルスの損傷を免れることができる。
【0021】
具体的には、真空勾配乾燥方法は次の通りであり、
豚コレラ生ワクチン溶液を常温常圧で0.5〜2時間放置した後、真空度500mBar〜800mBar、温度5℃〜30℃の条件で0.5〜1時間、真空度80mBar〜500mBar、温度10℃〜35℃の条件で0.5〜2時間、真空度30mBar〜80mBar、温度10℃〜40℃の条件で0.5〜2時間、真空度0.01mBar〜0.05mBar、温度20℃〜40℃の条件で8〜12時間、真空度0.001mBar〜0.01mBar、温度20℃〜40℃の条件で12〜24時間保持して、乾燥した豚コレラ生ワクチンを得る。
【0022】
ここで、本発明で製造した豚コレラ生ワクチンは37℃で3ヶ月、25℃で1年間保存することができる。
【0023】
本発明によると、前記乾燥した豚コレラ生ワクチンは走査型電子顕微鏡で観察するとガラス様のラメラ構造を示し、そのガラス転移温度は50℃以上に達し、前記ガラス転移温度は65〜70℃にのぼる。
【0024】
ここで、前記豚コレラウィルス溶液は細胞毒性(C株)である。
【発明の効果】
【0025】
従来の技術と比較して、本発明は次の利点がある。
【0026】
1、本発明の耐熱保護剤は、成分の配合が合理的で、豚コレラ生ワクチンに耐熱性、耐貯蔵性を持たせているため、ウィルスを休眠状態にして、乾燥や保存期間中におけるウィルスの生命活動を低下させることができる。
【0027】
2、本発明の真空勾配乾燥技術は、氷結晶による損傷を避けることができるため、豚コレラ生ワクチンの製造過程での損失を最低限に抑え、豚コレラウィルスの活性を保つことができる。
【0028】
3、本発明で製造した豚コレラ生ワクチンは37℃で3ヶ月、25℃で1年間保存することができる。
【0029】
4、本発明で製造したワクチンの外観は緻密な乾燥した泡状で、走査型電子顕微鏡で観察するとガラス様のラメラ構造を呈し、そのガラス転移温度は50℃以上に達し、通常の冷凍乾燥ワクチンより30℃以上も高い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】豚コレラ生ワクチンの外観(緻密な乾燥した泡状)を示す図である。
図2】豚コレラ生ワクチンの電子顕微鏡写真(ガラス様ラメラ構造)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の実施例は本発明を詳細に説明するものであるが、本発明にいかなる制限を与えるものではない。
【0032】
実施例1:耐熱保護剤1および豚コレラ生ワクチン1の調製
特に説明がない限り、本実施例のパーセンテージは重量パーセントである。
【0033】
耐熱保護剤1の処方
ラフィノース 1.0%
麦芽糖 10.0%
蔗糖 15.0%
ラクトース 5.0%
ブドウ糖 1.0%
ポリソルベート80 0.1%
ポリエチレングリコール8000 0.5%
チロシン 3.0%
フィブロイン 3.0%
注射用水 61.4%
【0034】
耐熱保護剤1の具体的な調製プロセスは次の通りである。ラフィノース、麦芽糖、蔗糖、ラクトース、ブドウ糖、ポリソルベート80を水に溶かし、高圧蒸気滅菌法(110℃、20min)で滅菌し、ポリエチレングリコール8000、チロシン、フィブロインを水に溶かし、0.22μmのフィルタで濾過して除菌し、高圧滅菌したものと濾過除菌したものを同容量で混合し、注射用水を補足し、前記耐熱保護剤1を得た。
【0035】
豚コレラ生ワクチン1の調製:耐熱保護剤1と豚コレラウィルス溶液(C株、ウィルス含有量50×10RID/ml)を体積比3:1の割合で混合し、7mlのペニシリンボトルにそれぞれ1mlずつ入れて、ブチルゴム栓で半栓した後、凍結乾燥機に入れて真空勾配乾燥を行って、豚コレラ生ワクチン1を得た。
【0036】
当該真空勾配乾燥の具体的なステップとして、豚コレラ生ワクチン溶液を常温常圧で0.5時間放置した後、真空度500mBar、温度20℃の条件で0.5時間、真空度500mBar、温度20℃の条件で1時間、真空度80mBar、温度25℃の条件で0.5時間、真空度0.05mBar、温度40℃の条件で12時間、真空度0.01mBar、温度40℃の条件で24時間保持して、乾燥した豚コレラ生ワクチン1を得た。
【0037】
実施例2:耐熱保護剤2および豚コレラ生ワクチン2の調製
特に説明がない限り、本実施例のパーセンテージは重量パーセントである。
【0038】
耐熱保護剤2の処方:
ラフィノース 5.0%
麦芽糖 5.0%
蔗糖 30.0%
ラクトース 1.0%
ブドウ糖 5.0%
ポリソルベート80 1.5%
ポリエチレングリコール8000 0.1%
チロシン 0.5%
フィブロイン 6.0%
注射用水 45.9%
【0039】
耐熱保護剤2の具体的な調製プロセスは次の通りである。ラフィノース、麦芽糖、蔗糖、ラクトース、ブドウ糖、ポリソルベート80を水に溶かし、高圧蒸気滅菌法で滅菌し、ポリエチレングリコール8000、チロシン、フィブロインを水に溶かして、濾過法で除菌し、高圧滅菌したものと濾過除菌したものを同容量で混合し、注射用水を補足し、耐熱保護剤2を得た。
【0040】
豚コレラ生ワクチン2の調製:耐熱保護剤2と豚コレラウィルス溶液(C株、ウィルス含有量50×10RID/ml)を体積比1:1の割合で混合し、7mlのペニシリンボトルにそれぞれ1mlずつ入れて、ブチルゴム栓で半栓した後、凍結乾燥機に入れて真空勾配乾燥を行って、豚コレラ生ワクチン2を得た。
【0041】
真空勾配乾燥の具体的なステップとして、豚コレラ生ワクチン溶液を常温常圧で1時間放置した後、真空度800mBar、温度10℃の条件で1時間、真空度80mBar、温度10℃の条件で0.5時間、真空度50mBar、温度15℃の条件で2時間、真空度0.02mBar、温度20℃の条件で12時間、真空度0.001mBar、温度20℃の条件で24時間保持して、乾燥した豚コレラ生ワクチン2を得た。
【0042】
実施例3:耐熱保護剤3および豚コレラ生ワクチン3の調製
特に説明がない限り、本実施例のパーセンテージは重量パーセントである。
【0043】
耐熱保護剤3の処方
ラフィノース 2.5%
麦芽糖 7.5%
蔗糖 22.5%
ラクトース 2.5%
ブドウ糖 2.5%
ポリソルベート80 0.75%
ポリエチレングリコール8000 0.25%
チロシン 1.5%
フィブロイン 4.5%
注射用水 55.5%
【0044】
耐熱保護剤3の具体的な調製プロセスは次の通りである。ラフィノース、麦芽糖、蔗糖、ラクトース、ブドウ糖、ポリソルベート80を水に溶かし、高圧蒸気滅菌法で滅菌し、ポリエチレングリコール8000、チロシン、フィブロインを水に溶かして、濾過法で除菌し、高圧滅菌したものと濾過除菌したものを同容量で混合し、注射用水を補足し、耐熱保護剤3を得た。
【0045】
豚コレラ生ワクチン3の調製:耐熱保護剤3と豚コレラウィルス溶液(C株、ウィルス含有量50×10RID/ml)を体積比3:1の割合で混合し、7mlのペニシリンボトルにそれぞれ1mlずつ入れて、ブチルゴム栓で半栓した後、凍結乾燥機に入れて真空勾配乾燥を行って、豚コレラ生ワクチン3を得た。
【0046】
真空勾配乾燥の具体的なステップとして、豚コレラ生ワクチン溶液を常温常圧で2時間放置した後、真空度700mBar、温度5℃の条件で0.7時間、真空度300mBar、温度10℃の条件で0.5時間、真空度30mBar、温度25℃の条件で2時間、真空度0.01mBar、温度25℃の条件で12時間、真空度0.001mBar、温度25℃の条件で12時間保持して、乾燥した豚コレラ生ワクチン3を得た。
【0047】
実施例4:耐熱保護剤4および豚コレラ生ワクチン4の調製
特に説明がない限り、本実施例のパーセンテージは重量パーセントである。
【0048】
耐熱保護剤4の処方
ラフィノース 1.5%
麦芽糖 6.0%
蔗糖 25.0%
ラクトース 4.0%
ブドウ糖 4.0%
ポリソルベート80 0.5%
ポリエチレングリコール8000 0.4%
チロシン 2.0%
フィブロイン 5.0%
注射用水 51.6%
【0049】
耐熱保護剤4の具体的な調製プロセスは次の通りである。ラフィノース、麦芽糖、蔗糖、ラクトース、ブドウ糖、ポリソルベート80を水に溶かし、高圧蒸気滅菌法で滅菌し、ポリエチレングリコール8000、チロシン、フィブロインを水に溶かして、濾過法で除菌し、高圧滅菌したものと濾過除菌したものを同容量で混合し、注射用水を補足し、耐熱保護剤3を得た。
【0050】
豚コレラ生ワクチン4の調製:耐熱保護剤4と豚コレラウィルス溶液(C株、ウィルス含有量50×10RID/ml)を体積比3:1の割合で混合し、7mlのペニシリンボトルにそれぞれ1mlずつ入れて、ブチルゴム栓で半栓した後、凍結乾燥機に入れて真空勾配乾燥を行って、豚コレラ生ワクチン4を得た。
【0051】
真空勾配乾燥の具体的なステップとして、豚コレラ生ワクチン溶液を常温常圧で0.5時間放置した後、真空度500mBar、温度15℃の条件で0.5時間、真空度80mBar、温度15℃の条件で2時間、真空度50mBar、温度20℃の条件で1時間、真空度0.05mBar、温度20℃の条件で12時間、真空度0.01mBar、温度25℃の条件で18時間保持して、乾燥した豚コレラ生ワクチン4を得た。
【0052】
実施例5:耐熱保護剤5および豚コレラ生ワクチン5の調製
特に説明がない限り、本実施例のパーセンテージは重量パーセントである。
【0053】
耐熱保護剤5の処方:
ラフィノース 4.0%
麦芽糖 9.0%
蔗糖 20.0%
ラクトース 2.0%
ブドウ糖 2.0%
ポリソルベート80 1.0%
ポリエチレングリコール8000 0.2%
チロシン 1.0%
フィブロイン 4.0%
注射用水 56.8%
【0054】
耐熱保護剤5の具体的な調製プロセスは次の通りである。ラフィノース、麦芽糖、蔗糖、ラクトース、ブドウ糖、ポリソルベート80を水に溶かし、高圧蒸気滅菌法で滅菌し、ポリエチレングリコール8000、チロシン、フィブロインを水に溶かして、濾過法で除菌し、高圧滅菌したものと濾過除菌したものを同容量で混合し、注射用水を補足し、耐熱保護剤5を得た。
【0055】
豚コレラ生ワクチン5の調製:耐熱保護剤5と豚コレラウィルス溶液(C株、ウィルス含有量50×10RID/ml)を体積比2:1の割合で混合し、7mlのペニシリンボトルにそれぞれ1mlずつ入れて、ブチルゴム栓で半栓した後、凍結乾燥機に入れて真空勾配乾燥を行って、豚コレラ生ワクチン5を得た。
【0056】
真空勾配乾燥の具体的なステップとして、豚コレラ生ワクチン溶液を常温常圧で0.5時間放置した後、真空度800mBar、温度30℃の条件で0.5時間、真空度80mBar、温度35℃の条件で2時間、真空度50mBar、温度40℃の条件で1時間、真空度0.05mBar、温度30℃の条件で12時間、真空度0.01mBar、温度30℃の条件で18時間保持して、乾燥した豚コレラ生ワクチン5を得た。
【0057】
実施例6:耐熱保護剤6および豚コレラ生ワクチン6の調製
特に説明がない限り、本実施例のパーセンテージは重量パーセントである。
【0058】
耐熱保護剤6の処方
ラフィノース 3.0%
麦芽糖 8.0%
蔗糖 28.0%
ラクトース 3.0%
ブドウ糖 1.0%
ポリソルベート80 0.6%
ポリエチレングリコール8000 0.2%
チロシン 1.0%
フィブロイン 3.0%
注射用水 52.2%
【0059】
耐熱保護剤6の具体的な調製プロセスは次の通りである。ラフィノース、麦芽糖、蔗糖、ラクトース、ブドウ糖、ポリソルベート80を水に溶かし、高圧蒸気滅菌法で滅菌し、ポリエチレングリコール8000、チロシン、フィブロインを水に溶かして、濾過法で除菌し、高圧滅菌したものと濾過除菌したものを同容量で混合し、注射用水を補足し、耐熱保護剤6を得た。
【0060】
豚コレラ生ワクチン6の調製:耐熱保護剤6と豚コレラウィルス溶液(C株、ウィルス含有量50×10RID/ml)を体積比1:1の割合で混合し、7mlのペニシリンボトルにそれぞれ1mlずつ入れて、ブチルゴム栓で半栓した後、凍結乾燥機に入れて真空勾配乾燥を行って、豚コレラ生ワクチン6を得た。
【0061】
真空勾配乾燥の具体的なステップとして、豚コレラ生ワクチン溶液を常温常圧で0.5時間放置した後、真空度500mBar、温度25℃の条件で1時間、真空度80mBar、温度25℃の条件で2時間、真空度50mBar、温度30℃の条件で1時間、真空度0.05mBar、温度30℃の条件で8時間、真空度0.01mBar、温度35℃の条件で24時間保持して、乾燥した豚コレラ生ワクチン6を得た。
【0062】
実施例7:対照耐熱保護剤1
対照耐熱凍乾燥保護剤1(CN103341176Aにて開示)の具体的な調製プロセスは次の通りである。
【0063】
(1)A液の調製:NZ−アミン(NZ amine [商] NZアミン[カゼインの酵素分解物])3g、グルタミン酸カリウム(CAS:6382−01−0)0.375g、蔗糖25g、ラクトアルブミン水解物1.875gを順次に100mlの注射用水に溶かし、充分に溶解した後均一に振り混ぜて、0.22μmのフィルタで除菌濾過した後2〜8℃に保存した。
【0064】
(2)B液の調製:ゼラチン加水分解物20gを取り、70〜80℃の注射用水100mlで充分に溶解した後、121℃、15ポンドの高圧で30分滅菌し、滅菌した後37℃に保存した。
【0065】
(3)A液とB液を4:1の割合で配合し、均一に混合して耐熱冷凍乾燥保護剤を得た。ここで各成分の質量体積パーセンテージ濃度は次の通りである。NZ−アミン2.4%、グルタミン酸カリウム0.3%、蔗糖20%、ラクトアルブミン水解物1.5%、ゼラチン加水分解物4%。
【0066】
対照豚コレラ生ワクチン1:対照耐熱冷凍乾燥保護剤1と豚コレラウィルス抗原液(C株、ウィルス含有量50×10RID/ml)を体積比1:4の割合で混合して、7mlのペニシリンボトルに1mlずつ入れて、ブチルゴム栓で半栓した後、凍結乾燥機に入れる。
【0067】
具体的な凍結乾燥ステップとして、混合液を冷凍乾燥機に入れて、予備冷凍温度を−50℃に設定し、予備冷凍保持時間を2h、予備冷凍前半の温度を−15℃に制御し、製品から解析熱を放出した後急速に冷凍し、昇華段階の製品温度は−33℃、ラメラ温度は−8℃、昇華時間は11h、解析温度は26℃、解析時間は4h、冷凍乾燥全行程は24hで、蓋をした後取り出し、対照豚コレラ生ワクチン1を得た。
【0068】
実施例8:対照耐熱保護剤2
対照耐熱凍乾燥保護剤2(CN103041399Aにて開示)の具体的な調製プロセスは次の通りである。
【0069】
トレハロース 68%
グリシン 6%
ゼラチン 3%
カゼイン加水分解物 6%
ポリビニルピロリドン 6%
グリセリン 5%
プルロニック68 6%
【0070】
各耐熱保護剤の処方に基づいて、各成分を秤量し、対照耐熱保護剤2を得た。
【0071】
対照豚コレラ生ワクチン2:対照耐熱保護剤2と豚コレラウィルスの抗原液(C株、ウィルス含有量50×10RID/ml)を体積比1:1の割合で混合し、7mlのペニシリンボトルにそれぞれ1mlずつ入れて、ブチルゴム栓で半栓した後、凍結乾燥機に入れた。
【0072】
具体的な凍結乾燥ステップとして、対照豚コレラ生ワクチン2を常圧、温度−52℃の条件で4時間、真空度5.0mBar、温度−3℃の条件で18時間、真空度2.5mBar、温度20℃の条件で5時間保持して、対照豚コレラ生ワクチン2を得た。
【0073】
実施例9:豚コレラ生ワクチンの物理化学的特性の分析
実施例1〜8の各豚コレラ生ワクチンの物理的性状、残留水分、ガラス転移温度と真空度を測定した。乾燥ワクチンの残留水分と真空度の測定は現行の「中華人民共和国獣薬典」付録の方法と基準に基づいて行い、ガラス転移温度は示差走査熱量計を用いて測定した。結果は表1に示した通りである。表1からわかるように、すべて「中華人民共和国獣薬典」付録の規定に合致し、かつ豚コレラ生ワクチン1−6の残留水分と真空度などもすべて規定を満たしていて、残留水分は対照豚コレラ生ワクチン1と2より若干低かった。ガラス転移温度において、豚コレラ生ワクチン1−6はすべて対照豚コレラ生ワクチン1(伝統的な冷凍乾燥ワクチン)より30℃以上高かった。ここで、豚コレラ生ワクチン5のガラス転移温度Tgはもっとも高く、69±1.68℃であった。
【0074】
表1:豚コレラ生ワクチンの物理的性状、残留水分の測定結果
【表1】
【0075】
実施例10:豚コレラ生ワクチン耐熱性能の測定
実施例1〜8の豚コレラ生ワクチンの乾燥前後、37℃で10日、30日、60日、90日と120日間貯蔵した後のウィルス含有量、ならびに25℃で1月、3月、6月、9月、12月と15月間貯蔵した後のウィルス含有量を測定した。豚コレラ生ワクチンのウィルス含有量の測定は現行の『中華人民共和国獣用生物製品規程』に基づいて行った。表2は豚コレラ生ワクチンを37℃で長期保存した後のウィルス含有量の測定結果で、表3は豚コレラ生ワクチンを25℃で長期保存した後のウィルス含有量の測定結果である。
【0076】
表2において、乾燥損失とは乾燥前と乾燥後0dにおけるワクチンウィルス含有量の差を指す。耐熱損失とはワクチン乾燥0日後と37℃で保存した後のワクチンウィルス含有量の差を指す。
【0077】
表2からわかるように、豚コレラ生ワクチン1〜6の乾燥過程におけるウィルス含有量の損失は0.4〜0.52Lg RID/mLで、37℃で10日間貯蔵した後、ウィルス含有量の損失はすべて≦0.3Lg RID/mLで、37℃で90日間貯蔵した後、ウィルス含有量の損失は0.88〜1.0Lg RID /mlであった。豚コレラ生ワクチン1〜6の耐熱過程におけるウィルス含有量の損失はいずれも対照豚コレラ生ワクチンより低かった。ここで、豚コレラ生ワクチン4と豚コレラ生ワクチン5の耐熱性は最も高く、37℃で120日間貯蔵した場合、耐熱損失はすべて1.22Lgであった。
【0078】
表2
【表2】
【0079】
表3において、乾燥損失とは乾燥前と乾燥後0dのワクチンウィルス含有量の差を指す。耐熱損失とはワクチン乾燥0日後と25℃で保存した後のワクチンウィルス含有量の差を指す。
【0080】
表3
【表3】
【0081】
表3からわかるように、豚コレラ生ワクチン1〜6の乾燥過程におけるウィルス含有量の損失は0.4〜0.52Lg RID/mlであった。25℃で6ヶ月間貯蔵した後、ウィルス含有量の損失は平均≦0.6Lg RID/mlで、25℃で12ヶ月間貯蔵した後、ウィルス含有量の損失は0.82〜1.0Lg RID/mlであった。対照豚コレラ生ワクチン1と2を25℃で1ヶ月間貯蔵した場合のウィルス含有量の損失は1.0〜1.48LgRID/mlで、豚コレラ生ワクチン1〜6の耐熱過程におけるウィルス含有量の損失はいずれも対照豚コレラ生ワクチンより低かった。ここで、豚コレラ生ワクチン5の耐熱性が最も高く、25℃で12ヶ月貯蔵した後のウィルス含有量の損失はわずか0.82LgRID/mlであり、この結果からTgが最も高く、37℃で90−120日間貯蔵した後の耐熱性能が最も高かった結果との関連性が認められた。
【0082】
[付記]
[付記1]
質量パーセンテージでラフィノース1%〜5%、麦芽糖5%〜10%、蔗糖15%〜30%、ラクトース1%〜5%、ブドウ糖1%〜5%、ポリソルベート80 0.1%〜1.5%、ポリエチレングリコール8000 0.1%〜0.5%、チロシン0.5%〜3%、フィブロイン3%〜6%、残りは注射用水である、
ことを特徴とする耐熱保護剤。
【0083】
[付記2]
質量パーセンテージでラフィノース1.5%〜4%、麦芽糖6%〜9%、蔗糖20%〜25%、ラクトース2%〜4%、ブドウ糖2%〜4%、ポリソルベート80 0.5%〜1%、ポリエチレングリコール8000 0.2%〜0.4%、チロシン1%〜2%、フィブロイン4%〜5%、残りは注射用水である、
ことを特徴とする付記1に記載の耐熱保護剤。
【0084】
[付記3]
ラフィノース、麦芽糖、蔗糖、ラクトース、ブドウ糖、ポリソルベート80を水に溶かし、高圧蒸気滅菌法で滅菌して溶液1を得るステップ1)と、
ポリエチレングリコール8000、チロシン、フィブロインを水に溶かし、濾過法で除菌して溶液2を得るステップ2)と、
溶液1と溶液2を混合し、水を補足し、耐熱保護剤を得るステップ3)とを含む、
ことを特徴とする付記1に記載の耐熱保護剤の製造方法。
【0085】
[付記4]
付記1に記載の耐熱保護剤のワクチン製造への使用。
【0086】
[付記5]
付記1に記載の耐熱保護剤の室温で保存可能な豚コレラ生ワクチン製造への使用。
【0087】
[付記6]
豚コレラウィルスを含む溶液と付記1または2に記載の耐熱保護剤を体積比1〜3:1の割合で均一に混合して得た豚コレラ生ワクチン溶液を、真空勾配乾燥した後、豚コレラ生ワクチンを得る、
ことを特徴とする室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法。
【0088】
[付記7]
豚コレラ生ワクチン溶液を常温常圧で0.5〜2時間放置した後、真空度500mBar〜800mBar、温度5℃〜30℃の条件で0.5〜1時間、真空度80mBar〜500mBar、温度10℃〜35℃の条件で0.5〜2時間、真空度30mBar〜80mBar、温度10℃〜40℃の条件で0.5〜2時間、真空度0.01mBar〜0.05mBar、温度20℃〜40℃で8〜12時間、真空度0.001mBar〜0.01mBar、温度20℃〜40℃の条件で12〜24時間保持して、乾燥した豚コレラ生ワクチンを得る真空勾配乾燥方法を用いる、
ことを特徴とする付記6に記載の室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法。
【0089】
[付記8]
前記乾燥した豚コレラ生ワクチンを走査電子顕微鏡で観察するとガラス様のラメラ構造を呈し、そのガラス転移温度は50℃以上に達する、
ことを特徴とする付記6または7に記載の室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法。
【0090】
[付記9]
前記ガラス転移温度は65〜70℃に達する、
ことを特徴とする付記6または7に記載の室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法。
【0091】
[付記10]
前記豚コレラウィルスは細胞毒性である、
ことを特徴とする付記6に記載の室温で保存可能な豚コレラ生ワクチンの製造方法。
図1
図2