特許第6720455号(P6720455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6720455医療用超音波システム及び医療用超音波装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720455
(24)【登録日】2020年6月22日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】医療用超音波システム及び医療用超音波装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20200629BHJP
【FI】
   A61M25/10 540
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-126601(P2016-126601)
(22)【出願日】2016年6月27日
(65)【公開番号】特開2018-241(P2018-241A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】513004353
【氏名又は名称】株式会社MU研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100185650
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和男
(73)【特許権者】
【識別番号】501115759
【氏名又は名称】千葉 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】千葉 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】山下 紘正
(72)【発明者】
【氏名】望月 剛
(72)【発明者】
【氏名】丸山 一雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−202263(JP,A)
【文献】 特表2011−517288(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0184808(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセルを含む充填液と、
前記充填液が充填されて管状器官を閉塞するバルーンと、
超音波振動子を含むプローブと、
前記超音波振動子を制御することによって、前記充填液が充填されて前記管状器官を閉塞した状態の前記バルーンに照射すると前記マイクロカプセルを破壊する超音波ビームを前記プローブから送出させる超音波制御ユニットとを備え、
前記マイクロカプセルは、前記バルーンを溶解する物質が封入されている
ことを特徴とする医療用超音波システム。
【請求項2】
前記充填液を送出する送出手段と、
前記送出手段から送出された充填液を前記バルーンへ案内するカテーテルとをさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の医療用超音波システム。
【請求項3】
前記バルーンの材料は、ラテックスであり、
前記バルーンを溶解させる物質は、天然由来の精油である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医療用超音波システム。
【請求項4】
超音波振動子を含むプローブと、
前記超音波振動子を制御することによって、充填液が充填されて管状器官を閉塞した状態のバルーンに照射すると当該充填液に含まれるマイクロカプセルを破壊する超音波ビームを前記プローブから送出させる超音波制御ユニットとを備え、
前記マイクロカプセルは、前記バルーンを溶解する物質が封入されている
ことを特徴とする医療用超音波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用超音波システム及び医療用超音波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先天性横隔膜ヘルニアの治療方法として、バルーンによって胎児の気管をある程度の期間にわたって閉塞する気管閉塞術が提案されている。
【0003】
先天性横隔膜ヘルニアは、子宮内での成長過程において胎児の横隔膜に孔が開いてしまい、小腸、大腸、胃などの腹腔内臓器が横隔膜の孔を通じて胸腔内に入り込んで胎児の肺の成長を阻害する病気である。気管閉塞術では、例えば、バルーンが、胎児の気管に配置された後、生理食塩水などの液体を注入することで膨らませられ、それによって、胎児の気管が閉塞される。ある程度の期間にわたって胎児の気管を閉塞した状態を維持すると、その間に、肺水の圧力によって、胎児の肺の成長が促されるとともに、胸腔内に入り込んだ腹腔内臓器が本来の位置である腹腔内に押し戻される。その後、分娩後の肺呼吸に備えるため、バルーンを萎ませることによって、気管の閉塞が解除される。
【0004】
バルーンによる気管の閉塞を解除する方法として、内視鏡を子宮内に挿入し、ガイドワイヤーなどでバルーンを割る方法が知られている。この方法では、内視鏡手術に伴って、人体への侵襲による負担が患者に掛かる。また、内視鏡手術は、専門医等によって施術されるものであり、そのような体制を整えることが困難なこともある。
【0005】
そこで、バルーンによる気管の閉塞を低侵襲で容易に解除する方法として、超音波を利用する方法が提案されている。例えば特許文献1に記載の超音波医用システムは、超音波振動子を備えたプローブと、超音波の送信ビームを形成するようにプローブを制御する送信部とを有する。送信部は、管状気管内に配置されたバルーンに向けて送信ビームを形成するようにプローブを制御する。プローブは、送信ビームに沿って超音波を送信することにより、バルーン内に充填された液状の充填剤を超音波で気化させる。これによってバルーン内の圧力が上昇する。
【0006】
特許文献1に記載のバルーンは、バルーン内に注入された充填剤がバルーン外へ流出することを抑制する逆流防止弁を備えており、この逆流防止弁は、バルーン内の圧力が上昇すると、充填剤の流出の抑制を解除する。そのため、超音波でバルーン内の圧力が上昇すると、逆流防止弁を通じて、充填剤がバルーン内から排出される。これによりバルーンが萎むので、バルーンによる気管の閉塞を解除できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−202263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の超音波医用システムでは、逆流防止弁による充填剤の流出の抑制を解除できず、その結果、バルーンによる気管の閉塞を解除できないことがある。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、バルーンによる管状器官の閉塞を、低侵襲で容易かつ確実に解除することが可能な医療用超音波システム及び医療用超音波装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る医療用超音波システムは、
マイクロカプセルを含む充填液と、
前記充填液が充填されて管状器官を閉塞するバルーンと、
超音波振動子を含むプローブと、
前記超音波振動子を制御することによって、前記充填液が充填されて前記管状器官を閉塞した状態の前記バルーンに照射すると前記マイクロカプセルを破壊する超音波ビームを前記プローブから送出させる超音波制御ユニットとを備え、
前記マイクロカプセルは、前記バルーンを溶解する物質が封入されている。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る医療用超音波装置は、
超音波振動子を含むプローブと、
前記超音波振動子を制御することによって、充填液が充填されて管状器官を閉塞した状態のバルーンに照射すると当該充填液に含まれるマイクロカプセルを破壊する超音波ビームを前記プローブから送出させる超音波制御ユニットとを備え、
前記マイクロカプセルは、前記バルーンを溶解する物質が封入されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、超音波制御ユニットは、充填液が充填されて管状器官を閉塞した状態のバルーンに照射すると当該充填液に含まれるマイクロカプセルを破壊する超音波ビームをプローブから送出させる。また、マイクロカプセルにはバルーンを溶解する物質が封入されている。これにより、充填液が充填されて管状器官を閉塞した状態のバルーンに超音波を照射することで充填液に含まれるマイクロカプセルを破壊し、破壊されたマイクロカプセルから流出する物質によってバルーンを溶解して割ることができる。従って、バルーンによる管状器官の閉塞を、低侵襲で容易かつ確実に解除することが可能な医療用超音波システム及び医療用超音波装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係る医療用超音波システムの構成を示す図である。
図2】一実施の形態に係る内視鏡制御ユニットの機能的な構成を示す図である。
図3】一実施の形態に係る超音波制御ユニットの機能的な構成を示す図である。
図4】先天性横隔膜ヘルニアに罹患した胎児の胸腔近傍を拡大して示す図である。
図5】内視鏡装置により胎児の気管にバルーンが配置された状態を示す図である。
図6】充填液を充填することによりバルーンを膨張させて気管を閉塞した状態を示す図である。
図7】内視鏡装置から取り外されたバルーンが気管を閉塞する状態を示す図である。
図8】胎児の胸腔近傍の拡大図であって、気管閉塞術により腹腔内臓器が胸腔外へ押し戻された状態を示す図である。
図9】第1超音波ビームがバルーンに照射される様子を示す図である。
図10】バルーンによる気管の閉塞が解除される過程を説明するための、バルーン及び胎児の気管の拡大図であって、(a)は、第1超音波ビームの照射を開始した時の状態を示す図であり、(b)は、マイクロカプセルが破壊されてリモネンが充填液中へ流れ出した状態を示す図であり、(c)は、リモネンの働きによりバルーンが割れ、充填液がバルーンの外へ流れ出る様子を示す図であり、(d)は、バルーンが萎んで気管の閉塞が解除された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。全図を通じて同一の要素には同一の符号を付す。
【0015】
本発明の一実施の形態に係る医療用超音波システム1は、その構成を図1に示すように、バルーン170によって生体の管状器官を閉塞し、その閉塞を解除するためのシステムである。医療用超音波システム1は、内視鏡装置100と、超音波装置200とを備える。なお、図1では、分かり易くするため、各部の大きさの比率は適宜変更している。
【0016】
(内視鏡装置100の構成)
内視鏡装置100は、バルーン170によって生体の管状器官を閉塞するための装置である。内視鏡装置100は、シース110と、内視鏡120と、内視鏡制御ユニット130と、第1注射器150と、第1カテーテル155と、第2注射器160と、第2カテーテル165と、バルーン170とを有する。
【0017】
シース110は、内視鏡120の挿入部121、第1カテーテル155、第2カテーテル165の体内への挿入を容易にするために用いられる部材である。シース110は、シース本体部111と、接続部112とを有する。
【0018】
シース本体部111は、その長さ方向に沿って内視鏡120の挿入部121、第1カテーテル155、第2カテーテル165が挿通可能な貫通内孔が形成された長尺な筒状の部位である。シース本体部111は、金属または硬質樹脂などの剛性を有する材料から作られている。シース本体部111の基端部111aは、略直線状に形成されている。一方、シース本体部111の先端部111bは、生体内への挿入を容易にするために、略円弧形状にゆるやかに湾曲されている。なお、シース本体部111には、内視鏡120の挿入部121、第1カテーテル155、第2カテーテル165の各々が挿通可能な内径を有する貫通内孔が個々に設けられていてもよい。
【0019】
接続部112は、シース本体部111の基端に連結され、内視鏡120とシース110とを脱着可能に接続する部位である。接続部112は、シース本体部111の貫通内孔に連通する挿入孔を有し、この挿入孔を通じてシース本体部111内に内視鏡120の挿入部121が挿入された状態で嵌合または螺合により内視鏡120の操作部122とシース本体部111とを接続する。また、接続部112は、第1カテーテル155を挿入可能な挿入孔を有する挿入口部113と、第2カテーテル165を挿入可能な挿入孔を有する挿入口部114とを有する。第1カテーテル155と第2カテーテル165は、それぞれ挿入口部113、114を介してシース本体部111の貫通内孔に挿入される。
【0020】
内視鏡120は、生体内を観察するための機器である。内視鏡120は、挿入部121と、操作部122と、配線123とを有する。
【0021】
挿入部121は、生体内に挿入される概ね円筒状の部位である。挿入部121は、例えば、内視鏡120にシース110が装着された状態で生体内に挿入される。挿入部121は可撓性を有しており、シース110を内視鏡120に装着する際には、シース本体部111の形状に沿って挿入部121を挿入させることができる。また、挿入部121の長さはシース本体部111の長さと同程度であり、シース110が内視鏡120に装着されたときには、挿入部121の先端は、シース本体部111の先端から突出せずにシース本体部111内にわずかに隠れた状態となる。また、挿入部121の先端部には、生体内を撮像するための撮像ユニット125が設けられている。
【0022】
撮像ユニット125は、被写体からの光を集光する対物レンズ、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどから構成されるカメラ、LED(Light Emitting Diode)などから構成される照明部などを含む。
【0023】
操作部122は、挿入部121の基端に連設され、ユーザが把持して内視鏡120を操作するための部位である。操作部122には、内視鏡120が備える各種機能を操作するためのスイッチやノブなど(不図示)が設けられている。ここで、ユーザは、典型的には医師である。
【0024】
なお、挿入部121の内部に、撮像ユニット125の向きを変えるためのケーブルワイヤなどを設け、ユーザが操作部122に設けられたノブなどを操作することでケーブルワイヤの長さを調整し、挿入部121の先端部に設けられた撮像ユニット125が所望の方向を向くようにして撮像方向を変えられるようにしてもよい。
【0025】
配線123は、挿入部121の内部を通って、撮像ユニット125と内視鏡制御ユニット130とを電気的に接続する。撮像ユニット125と内視鏡制御ユニット130とは、配線123を介して、各種の信号を送受信する。
【0026】
内視鏡制御ユニット130は、内視鏡120を制御するユニットである。内視鏡制御ユニット130は、機能的な構成を図2に示すように、入力部131と、制御部132と、撮像制御部133と、表示画像作成部134と、表示部135とを有する。
【0027】
入力部131は、撮像ユニット125などの動作を開始する指示及び終了する指示、各種の設定値などを入力するためにユーザによって操作される。入力部131は物理的には、例えばボタン、スイッチなどから構成される。なお、入力部131は、表示部135とともにタッチパネルを構成してもよい。
【0028】
制御部132は、入力部131への操作、図示しない各種のセンサからの信号などに従って、撮像制御部133、表示画像作成部134などを制御する。
【0029】
撮像制御部133は、制御部132の制御の下で、撮像ユニット125を制御する。例えば、撮像制御部133は、入力部131への操作に応じた指示を制御部132から取得すると、取得した指示の内容に従って撮像ユニット125の動作を開始させたり終了させたりする。また、例えば、撮像制御部133は、入力部131への操作に基づいて制御部132を介して設定される設定値などに従って撮像ユニット125の動作を制御する。撮像ユニット125の動作としては、例えば、カメラによる撮影、照明部の発光などがある。
【0030】
表示画像作成部134は、制御部132の制御の下で、撮像ユニット125のカメラによって撮像された画像を示す画像データを撮像ユニット125から取得し、その画像を表示部135に表示させるための表示データに変換することによって表示データを作成する。このような変換処理としては、例えば、撮像ユニット125のカメラから取得する画像データを表示部135の各画素値を示す画素データに変換する処理、ノイズを除去する処理などがある。
【0031】
制御部132と撮像制御部133と表示画像作成部134とは物理的には、例えば、1つ又は複数のプロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、専用の電気回路などを適宜組み合わせて構成される。
【0032】
表示部135は、表示画像作成部134から表示データを取得し、取得した表示データが示す画像を表示する。表示部135は物理的には、例えば、液晶パネル、液晶駆動回路、バックパネルなどから構成される。
【0033】
第1注射器150は、フラッシュ液151を送出する送出手段として用いられる器具である。第1注射器150は、そのシリンダにフラッシュ液151が封入され、第1カテーテル155の基端に取り付けられる。フラッシュ液151には、例えば、生理食塩水が用いられる。内視鏡120が体内に挿入される際、体液(羊水など)の混濁などによって内視鏡120の視野が悪くなることがある。このような場合に、ユーザは、第1注射器150のピストンを手動操作して透明なフラッシュ液151を送出し、第1カテーテル155の先端から噴射させることにより、内視鏡120の適切な視野を確保する。
【0034】
第1カテーテル155は、フラッシュ液151を生体内に注入するために生体内に挿入されるチューブ状部材である。第1カテーテル155は、接続部112に設けられた挿入口部113からシース本体部111の長さ方向に沿って貫通する貫通内孔に挿設され、シース110を介して生体内に挿入される。第1カテーテル155の基端に取り付けられた第1注射器150に封入されたフラッシュ液151は、この第1カテーテル155を経由して、第1カテーテル155の先端に設けられた噴射口156から噴射される。
【0035】
第2注射器160は、充填液161を送出する送出手段として用いられる器具である。第2注射器160は、そのシリンダに充填液161が封入され、第2カテーテル165の基端に取り付けられる。ユーザは、第2注射器160のピストンを手動操作して充填液161を送出し、第2カテーテル165の先端に取り付けられたバルーン170に注入することにより、バルーン170を膨張させる。
【0036】
充填液161は、管状器官の中でバルーン170を膨張させて管状器官を閉塞するためにバルーン170に充填される液体である。充填液161は、バルーン170を溶解させる物質が封入されたマイクロカプセル162を含む。このような充填液161の一例として、リモネンが封入された多数のマイクロカプセル162が生理用食塩水に混入された液体を挙げることができる。ここで、マイクロカプセルとは、液体等の内包物を薄膜で封入した微粒子をいい、例えば、高分子ミセル、リポソーム、エマルション等を含むものとする。1〜100μm程度の粒径を有するマイクロカプセル162が好適に採用されるが、マイクロカプセル162の粒径は、この範囲に限られなくてもよい。なお、マイクロカプセル162を含む充填液161の粘度および密度は、第2カテーテル165を介してバルーン170に容易に注入可能な程度であることが望ましい。
【0037】
例えば、マイクロカプセル162としてリポソームを用いる場合、リモネンを封入したリポソームはバンガム法等によって容易に作成することができる。具体的には、リポソーム膜の構成成分であるリン脂質を有機溶媒(例えば、メタノールとクロロホルムとの混合溶媒)に溶解し、エバポレータを用いて有機溶媒を蒸発除去して薄膜を形成する。次いで、封入すべきリモネンと、生理食塩水とを加え、薄膜を膨潤させた後、さらに超音波処理を施して粒子径を微細化および均一化することにより、リモネンを封入したリポソーム(マイクロカプセル162)は作成される。
【0038】
第2カテーテル165は、バルーン170に充填液161を注入するために用いられるチューブ状部材である。第2カテーテル165は、その先端にバルーン170が取り付けられた状態で、接続部112に設けられた挿入口部114からシース本体部111の長さ方向に沿って貫通する貫通内孔に挿設され、シース110を介して生体内に挿入される。第2カテーテル165の基端に取り付けられた第2注射器160に封入された充填液161は、この第2カテーテル165を経由して、第2カテーテル165の先端に取り付けられたバルーン170に注入される。
【0039】
バルーン170は、管状器官を閉塞するための袋状部材であって、例えば、ラテックスを主たる材料として作られている。バルーン170は、第2カテーテル165の先端に着脱可能に取り付けられる。具体的には、バルーン170は、充填液161が内部へ流れ込むことを許容しつつ、内部に注入された充填液161が外部に流出することを防止する逆流防止弁(不図示)を備え、この逆流防止弁に第2カテーテル165の先端に設けられた針(不図示)を穿刺することにより、第2カテーテル165に取り付けられる。
【0040】
(超音波装置200の構成)
超音波装置200は、超音波を利用してバルーン170による管状器官の閉塞を解除する装置である。超音波装置200は、第1プローブ211と、第1超音波制御ユニット221と、第2プローブ212と、第2超音波制御ユニット222と、第1プローブ211と第1超音波制御ユニット221とを電気的に接続する配線231と、第2プローブ212と第2超音波制御ユニット222とを電気的に接続する配線232を有する。
【0041】
第1プローブ211は、生体に接する先端部を介してバルーン170内のマイクロカプセル162を破壊する第1超音波ビーム251aを送信する機器である。第1プローブ211は、図1に示すように、複数の第1超音波振動子250aを含む。
【0042】
第1プローブ211は、概ね中央に円形貫通孔が形成された円環状の部材である。第1プローブ211の先端部には、円形貫通孔に向けて凹んだすり鉢状の傾斜面が形成されている。複数の第1超音波振動子250aは、傾斜面の内側に並べて配置されている。このように複数の第1超音波振動子250aを配置することにより、第1プローブ211は、円形貫通孔の中心軸(プローブの中心軸)上に位置するターゲットに向けて第1超音波ビーム251aを送信することができる。
【0043】
第2プローブ212は、生体に接する先端部を介して生体の内部の画像である超音波画像を得るための第2超音波ビーム251bを送受信する機器である。第2プローブ212は、図1に示すように、複数の第2超音波振動子250bを含む。
【0044】
第2プローブ212は、円柱状の部材であり、第1プローブ211に設けられた円形貫通孔に挿入され、第1プローブ211に着脱可能に装着される。第1プローブ211および第2プローブ212は、通常、第2プローブ212が第1プローブ211に装着された状態で使用される。複数の第2超音波振動子250bは、第2プローブ212の先端部の内側に並べて配置されている。
【0045】
なお、第1プローブ211および第2プローブ212の形状や超音波振動子250a,250bの配置は、これに限られず、適宜変更されてもよい。また、第1プローブ211および第2プローブ212は、図示しないダンパ、音響整合層及び音響レンズなどを含んでもよい。ダンパは、超音波振動子250a,250bが生成する超音波が後方へ伝搬することを抑制する部材である。音響整合層は、超音波振動子250a,250bと生体間の音響インピーダンスの差を低減するための部材である。音響レンズは、後述する超音波ビーム251a,251bを収束するレンズである。
【0046】
超音波振動子250a,250bの各々は、例えば、ジルコン酸チタン酸塩、ポリフッ化ビニルデン、水晶などのピアゾ効果を有する素子であり、本実施の形態では、配線231、232を介して印加される電気信号に応じて振動することで超音波を生成する。
【0047】
詳細には、複数の第1超音波振動子250aは、充填液161が充填されて管状器官を閉塞した状態のバルーン170に照射すると充填液161の中のマイクロカプセル162を破壊する第1超音波ビーム251aを送出するための素子である。複数の第1超音波振動子250aは、配線231を介して印加される電気信号に応じて振動することで超音波を発生し、この超音波は、第1超音波ビーム251aとして第1プローブ211の先端部から送出される。
【0048】
なお、第1超音波ビーム251aには、マイクロカプセル162を確実に破壊するため、後述する第2超音波ビーム251bよりも高いエネルギの超音波ビームが望ましく、例えば、直線状の超音波ビームが採用されるとよい。
【0049】
複数の第2超音波振動子250bは、生体の内部の画像である超音波画像を得るための第2超音波ビーム251bを送受信するための素子である。
【0050】
複数の第2超音波振動子250bは、電気信号に応じて振動することで超音波を発生させ、この超音波は、第2超音波ビーム251bとして第2プローブ212の先端部から送出される。また、複数の第2超音波振動子250bは、生体内部で反射した第2超音波ビーム251bを受信すると、受信した第2超音波ビーム251bに応じた電気的な信号を受信信号として出力する。
【0051】
第1超音波制御ユニット221は、第1プローブ211を制御するユニットであって、機能的な構成を図3に示すように、入力部261と、制御部262と、送信部263とを有する。
【0052】
入力部261は、第1超音波ビーム251aの送出を開始する指示及び終了する指示、各種の設定値などを入力するためにユーザによって操作される。入力部261は物理的には、例えばボタン、スイッチなどから構成される。
【0053】
制御部262は、入力部261への操作、図示しない各種のセンサからの信号などに従って、送信部263を制御する。
【0054】
送信部263は、制御部262の制御の下で、複数の第1超音波振動子250aを制御することによって、第1超音波ビーム251aを第1プローブ211から送出させる。
【0055】
詳細には、送信部263は、複数の第1超音波振動子250aを制御するために、配線231を介して電気的な信号である送信信号を複数の第1超音波振動子250aの各々へ出力する。これによって、複数の第1超音波振動子250aの各々は、送信部263から送信信号を取得し、取得した送信信号に従った超音波を生成する。複数の第1超音波振動子250aの各々で生成された超音波は、第1超音波ビーム251aとして第1プローブ211から送出される。
【0056】
第2超音波制御ユニット222は、第2プローブ212を制御するユニットであって、入力部271と、制御部272と、送信部273と、受信部274と、超音波画像作成部275と、表示部276とを有する。
【0057】
入力部271は、第2超音波ビーム251bの送出を開始する指示及び終了する指示、超音波画像の表示を開始する指示及び終了する指示、各種の設定値などを入力するためにユーザによって操作される。入力部271は物理的には、例えばボタン、スイッチなどから構成される。なお、入力部271は、表示部276とともにタッチパネルを構成してもよい。
【0058】
制御部272は、入力部271への操作、図示しない各種のセンサからの信号などに従って、送信部273、受信部274などを制御する。
【0059】
送信部273は、制御部272の制御の下で、複数の第2超音波振動子250bを制御することによって、第2超音波ビーム251bを第2プローブ212から送出させる。
【0060】
詳細には、送信部273は、複数の第2超音波振動子250bを制御するために、配線232を介して電気的な信号である送信信号を複数の第2超音波振動子250bの各々へ出力する。これによって、複数の第2超音波振動子250bの各々は、送信部273から送信信号を取得し、取得した送信信号に従った超音波を生成する。複数の第2超音波振動子250bの各々で生成された超音波は、第2超音波ビーム251bとして第2プローブ212から送出される。
【0061】
受信部274は、制御部272の制御の下で、複数の第2超音波振動子250bから出力された受信信号に基づいて、生体の内部で反射した第2超音波ビーム251bに応じたエコーデータを作成する。詳細には、受信部274は、複数の第2超音波振動子250bから出力された受信信号を配線232を介して取得し、取得した受信信号に整相加算処理などを施すことによって、エコーデータを作成する。
【0062】
超音波画像作成部275は、受信部274により作成されたエコーデータに基づいて、超音波画像を表示部276に表示させるための表示データを作成する。詳細には、超音波画像作成部275は、受信部274により作成されたエコーデータを受信部274から取得し、取得したエコーデータに適宜の画像処理を施すことによって、表示データを作成する。ここでの画像処理は、例えば、Bモード画像、2次元画像などの予め定められた方式の画像を表示部276に表示させるための処理である。
【0063】
制御部272と送信部273と受信部274と超音波画像作成部275とは物理的には、例えば、1つ又は複数のプロセッサ、RAM、ROM、フラッシュメモリ、専用の電気回路などを適宜組み合わせて構成される。
【0064】
表示部276は、超音波画像作成部275により作成された表示データが示す超音波画像を表示する。詳細には、表示部276は、超音波画像作成部275から表示データを取得し、取得した表示データが示す超音波画像を表示する。表示部276は物理的には、例えば、液晶パネル、液晶駆動回路、バックパネルなどから構成される。
【0065】
これまで、一実施の形態に係る医療用超音波システム1の構成について説明した。ここから、本実施の形態に係る医療用超音波システム1の動作について説明する。
【0066】
本実施の形態では、先天性横隔膜ヘルニアの治療に適用する例により医療用超音波システム1の動作を説明する。先天性横隔膜ヘルニアは、胎児の胸腔411近傍を拡大した図4に示すように、胎児の横隔膜412に孔450が開いてしまい、小腸、大腸、胃などの腹腔内臓器413が孔450を通じて胸腔411の中に入り込んで胎児の肺414a,414bの成長を阻害する病気である。図4では、斜線を施した左側の肺414aの成長が阻害されている例を示す。
【0067】
なお、医療用超音波システム1は、先天性横隔膜ヘルニアの治療に限らず、生体の管状器官をバルーン170により閉塞してその閉塞を解除することが有効な種々の病気の治療に好適に採用される。また、生体は、生きている人の体に限られず、生きている動物の体であってもよい。
【0068】
<管状器官の閉塞>
ユーザが、内視鏡制御ユニット130の入力部131を操作することで、撮像ユニット125の動作を開始させる。これにより、撮像ユニット125のカメラによって撮像された画像が、表示部135に表示される。
【0069】
詳細には、撮像制御部133は、入力部131の操作に基づいて、撮像ユニット125の動作を開始する指示を制御部132から受ける。この指示に応じて、撮像制御部133は、撮像ユニット125の照明を発光させるとともに、撮像ユニット125のカメラに撮像させる。撮像ユニット125のカメラは、撮像した画像を示す画像データを出力する。表示画像作成部134は、撮像ユニット125から画像データを取得し、取得した画像データに基づいて、表示データを作成する。表示部135は、表示画像作成部134から表示データを取得し、取得した表示データが示す画像を表示する。
【0070】
ユーザが、操作部122を把持しつつ、図5に示すように、母体の腹部310に設けられた挿入孔を通じて、挿入部121、第1カテーテル155、第2カテーテル165があらかじめ挿入された状態(図1参照)で配置されたシース本体部111を子宮320の中へ挿入する。このとき、ユーザは、第2カテーテル165の先端に取り付けられたバルーン170がシース本体部111の先端から露出せずにシース本体部111内に収納された状態でシース本体部111を子宮320の中へ挿入する。
【0071】
ユーザが、表示部135に表示された画像を見つつ操作部122を操作することで、閉塞の対象となる管状器官である胎児の気管410の中にシース本体部111の先端部111bを挿入する。シース本体部111の挿入の過程において、内視鏡120の視野が悪いときには、ユーザは、適宜、第1注射器150を操作してシース本体部111の先端からフラッシュ液151を噴射させる。シース本体部111の先端部111bが胎児の気管410まで到達すると、第2カテーテル165を挿入方向に押してバルーン170をシース本体部111の先端から露出させて配置する(図5参照)。
【0072】
ユーザは、表示部135に表示された内視鏡120による撮像画像でバルーン170の膨張状態を確認しながら第2注射器160を手動で操作(ピストンを押圧)してバルーン170に充填液161を注入する。
【0073】
充填液161が充填されることでバルーン170が膨張して気管410を閉塞すると(図6参照)、ユーザは、第2注射器160の操作を止めてバルーン170への充填液161の注入を停止する。
【0074】
ユーザは、操作部122を把持しつつ第2カテーテル165を引っ張り、シース本体部111を母体内に維持した状態で第2カテーテル165のみをシース110から引き抜く。このとき、バルーン170は、気管410を閉塞しているので、気管410にある程度の力を加えた状態で密着している。そのため、第2カテーテル165を引き抜くだけで、バルーン170は、第2カテーテル165の先端から外れる。
【0075】
なお、バルーン170が有する逆流防止弁の働きにより、第2カテーテル165を抜き取っても、充填液161はバルーン170の外部に流出することなく、バルーン170の内部で保持される。
【0076】
ユーザは、表示部135に表示された内視鏡120による撮像画像でバルーン170の膨張状態および胎児の気管410の閉塞が維持されていること確認した後、操作部122を引いて内視鏡120の挿入部121および第1カテーテル155が挿入された状態のシース本体部111を母体から抜去する(図7参照)。
【0077】
ユーザが、内視鏡制御ユニット130の入力部131を操作することで、撮像ユニット125の動作を停止させる。詳細には、撮像制御部133は、入力部131の操作に基づいて、撮像ユニット125の動作を終了させる指示を制御部132から受ける。この指示に応じて、撮像制御部133は、撮像ユニット125の照明の発光及びカメラの撮像を停止させる。これにより、胎児の気管410を閉塞するための外科的処置が終了する。
【0078】
その後、ある程度の期間にわたって胎児の気管410を閉塞した状態が維持される。気管410が閉塞されている間に、肺水の圧力によって、胎児の肺414aの成長が促されるとともに、胸腔411の中に入り込んだ腹腔内臓器413が本来の位置である腹腔へ押し戻される(図8参照)。
【0079】
気管を閉塞する期間は、一般的に34週程度とされる。この程度の期間が経過すると、分娩後の肺呼吸に備えるため、気管の閉塞を解除する必要がある。
【0080】
<管状器官の閉塞の解除>
ユーザが、第2超音波制御ユニット222の入力部271を操作することで、超音波装置200に超音波画像の表示を開始させる。これにより、ユーザが第2プローブ212を母体の腹部310の適切な箇所に当てることで、胎児の気管410を閉塞するバルーン170を含む超音波画像が、表示部276に表示される。
【0081】
詳細には、送信部273及び受信部274は、入力部271の操作に基づいて、超音波画像の表示を開始する指示を制御部272から受ける。
【0082】
この指示に応じて、送信部273は、複数の第2超音波振動子250bを制御することによって、第2超音波ビーム251bを第2プローブ212から送出させる。複数の第2超音波振動子250bは、例えば母体の内部で反射した第2超音波ビーム251bを受信し、受信した第2超音波ビーム251bに応じた受信信号を出力する。
【0083】
受信部274は、複数の第2超音波振動子250bから受信信号を取得し、取得した受信信号に基づいて、エコーデータを作成する。超音波画像作成部275は、エコーデータを受信部274から取得し、取得したエコーデータに基づいて、表示データを作成する。表示部276は、超音波画像作成部275から表示データを取得し、取得した表示データが示す超音波画像を表示する。
【0084】
これにより、第2プローブ212を母体の腹部310に当てることで、母体の内部の超音波画像が表示部276に表示される。この超音波画像を見ながら、ユーザが、第2プローブ212の位置を調整して、母体の腹部310の適切な箇所に第2プローブ212を当てることで、胎児の気管410を閉塞するバルーン170を含む超音波画像が、表示部276に表示される。
【0085】
なお、ここで説明したような超音波画像を表示するための処理には、従来の種々の処理が適宜採用されてよい。
【0086】
バルーン170が超音波画像の概ね中央に表示されると、ユーザは、第1超音波制御ユニット221の入力部261を操作することで、図9に示すように、第1プローブ211に第1超音波ビーム251aの送出を開始させる。なお、図9では、図を簡明にするため、第2超音波ビーム251bの図示を省略している。
【0087】
詳細には、送信部263は、入力部261の操作に基づいて、第1超音波ビーム251aの送出を開始する指示を制御部262から受ける。この指示に応じて、送信部263は、複数の第1超音波振動子250aを制御することによって、第1超音波ビーム251aを第1プローブ211から送出させる。
【0088】
複数の第1超音波振動子250aは、上述のように、第2プローブ212の外周を取り囲む第1プローブ211の先端部の傾斜面の内側に設けられている。そのため、バルーン170が超音波画像の中央に表示された状態の第1プローブ211から第1超音波ビーム251aを送出することで、バルーン170及び胎児の気管410の拡大図である図10(a)に示すように、第1超音波ビーム251aをバルーン170に照射させることができる。
【0089】
このとき、第1超音波ビーム251aは、送信部263の制御の下で複数の第1超音波振動子250aが動作することによって、例えば、印加電圧値200Vpp,周期2.5msの第1超音波ビーム251aの照射を50msごとに繰り返す。このような第1超音波ビーム251aの照射態様は、予め設定されてもよく、ユーザが入力部261を操作することにより設定されてもよい。
【0090】
第1超音波ビーム251aがバルーン170に照射されると、図10(b)に示すように、バルーン170の中の充填液161に含まれるマイクロカプセル162が次第に破壊されてリモネンが充填液161の中へ流れ出す。図10(b)では、破壊されたマイクロカプセル162を点線で示しており、充填液161の中にリモネンが流れ出た状態を斜線で示している。
【0091】
充填液161の中に流れ出たリモネンはバルーン170に接触し、その接触した箇所でバルーン170が溶解する。その結果、バルーン170は、図10(c)に示すように割れる。図10(c)では、バルーン170の先端(胎児の肺414a,414bに近い端部)から割れた例を示している。
【0092】
充填液161は、割れた箇所からバルーン170の外部へ流出するので、バルーン170は萎む。これによって、バルーン170による気管410の閉塞が解除される(図10(d)参照)。萎んだバルーン170は、これまで閉塞していたことで胎児の肺414a,414bに溜まった肺水とともに、胎児の口から子宮320へ排出される。
【0093】
ユーザは、バルーン170が割れたことを超音波画像にて確認すると、第1超音波制御ユニット221の入力部261を操作することで、第1プローブ211に、第1超音波ビーム251aの送出を終了させる。また、ユーザは、第2超音波制御ユニット222の入力部271を操作することで、第2プローブ212に、第2超音波ビーム251bの送出を終了させ、超音波画像の表示を終了させる。
【0094】
詳細には、第1超音波制御ユニット221の送信部263は、入力部261の操作に基づいて、第1超音波ビーム251aの送出を終了する指示を制御部262から受ける。この指示に応じて、送信部263は、複数の第1超音波振動子250aを制御することによって、第1超音波ビーム251aの送出を第1プローブ211に停止させる。
【0095】
また、第2超音波制御ユニット222の送信部273及び受信部274は、入力部271の操作に基づいて、超音波画像の表示を停止する指示を制御部272から受ける。この指示に応じて、送信部273は、複数の第2超音波振動子250bを制御することによって、第2超音波ビーム251bの送出を第2プローブ212に停止させ、受信部274は、受信信号の取得などの処理を停止する。
【0096】
なお、バルーン170が割れるまでに、第1プローブ211からバルーン170へ向けて第1超音波ビーム251aを送出する時間は、例えば1〜数秒程度である。
【0097】
これまで説明したように、本実施の形態によれば、第1超音波制御ユニット221の送信部263は、充填液161が充填されて胎児の気管410を閉塞した状態のバルーン170に照射すると充填液161に含まれるマイクロカプセル162を破壊する第1超音波ビーム251aを第1プローブ211から送出させる。また、マイクロカプセル162にはバルーン170を溶解する物質が封入されている。
【0098】
これにより、充填液161が充填されて胎児の気管410を閉塞した状態のバルーン170に超音波を照射することで充填液161に含まれるマイクロカプセル162を破壊し、破壊されたマイクロカプセル162から流出するリモネンによってバルーン170を溶解することができる。
【0099】
このように、バルーン170による胎児の気管410の閉塞を解除するために、外科的な手術が必要ないので、低侵襲である。また、内視鏡手術のように専門医等の体制を整える必要がないので、比較的容易に行うことができる。さらに、リモネンによってバルーン170を確実に割ることができる。従って、バルーン170による胎児の気管410の閉塞を、低侵襲で容易かつ確実に解除することが可能になる。
【0100】
本実施の形態によれば、ユーザが第2注射器160を操作することによって充填液161を送出し、その充填液161は、第2カテーテル165を通じてバルーン170へ案内される。これにより、充填液161をバルーン170に充填してバルーン170を膨張させ、それによって、胎児の気管410を閉塞することが可能になる。
【0101】
本実施の形態によれば、バルーン170の材料はラテックスである。また、バルーン170を溶解する物質として、ラテックス等のゴムを溶かす性質を有するリモネンが採用される。リモネンは、天然由来の物質であるため、人体に悪影響を与える可能性は極めて少ない。
【0102】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されず、例えば、以下のように変形されてもよい。
【0103】
例えば、実施の形態では、医療用超音波システム1が、図1に示すように物理的に分離した内視鏡装置100と超音波装置200とから構成される例により説明した。しかし、医療用超音波システムは、実施の形態に係る医療用超音波システム1が備える構成を全般的に備えていればよい。例えば、第1超音波制御ユニット221および第2超音波制御ユニット222と内視鏡制御ユニット130とが、医療用超音波システムの全体を制御する物理的に1つの制御装置に統合されてもよい。この変形例によっても、実施の形態と同様の効果を奏する。
【0104】
例えば、リモネンは、ラテックス製のバルーン170を溶解させる物質の一例である。また、バルーン170の材料は、適宜選定されてよく、マイクロカプセル162には、適宜選定された材料で作られたバルーン170を溶解させる物質が封入されるとよい。バルーン170を溶解させる物質には、ラテックス等のゴムを溶かす性質を有する天然由来の精油が適宜採用される。このような天然由来の精油としては、リモネンの他に、例えば、メントール、ゲラニオール、カロテノイド(植物色素)、脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,E,K)、コエンザイムQなどのテルペノイドと呼ばれるイソプレンを構成単位とする天然物化合物が挙げられる。この変形例によっても、実施の形態と同様の効果を奏する。
【0105】
例えば、超音波ビームを送出するプローブは、第1超音波ビーム251aと第2超音波ビーム251bとをそれぞれ別個に送出などする第1プローブ211と第2プローブ212から構成される例により説明した。しかし、第1超音波ビーム251aと第2超音波ビーム251bの送出などを総合的に処理できるプローブを用いてもよい。この場合、第1超音波制御ユニット221と第2超音波制御ユニット222は、1つの超音波制御ユニットに統合されてもよい。また、第1超音波振動子250aと第2超音波振動子250bとの各々は、1つであってもよい。また、1つ又は複数の第1超音波振動子250aと1つ又は複数の第2超音波振動子250bとの全部、或いは、複数の第1超音波振動子250aと複数の第2超音波振動子250bとの少なくとも一部が、第1超音波ビーム251aを送出するための超音波を生成する機能と、第2超音波ビーム251bを送出するための超音波を生成する機能と、第2超音波ビーム251bを受信する機能とのうちの複数の機能を兼ね備えてもよい。この変形例によっても、実施の形態と同様の効果を奏する。
【0106】
例えば、実施の形態では、バルーン170が超音波画像の中央に表示された状態において第1プローブ211から第1超音波ビーム251aを送出させる例により説明したが、バルーン170の位置を設定することで、第1超音波ビーム251aがバルーン170に向けて送出されてもよい。詳細には、ユーザが、第2超音波制御ユニット222の表示部276に表示されたバルーン170の画像に基づいてバルーン170の位置を特定し、第1超音波制御ユニット221の入力部261を操作することによって制御部262を介して、特定したバルーン170の位置を送信部263に設定してもよい。そして、送信部263が、設定された位置へ向けて第1超音波ビーム251aを送出するように、複数の第1超音波振動子250aを制御してもよい。この変形例によっても、実施の形態と同様の効果を奏する。また、第1超音波ビーム251aを確実にバルーン170に照射することができるので、バルーン170による管状器官の閉塞を、より確実に解除することが可能になる。
【0107】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0108】
1 医療用超音波システム
100 内視鏡装置
110 シース
111 シース本体部
111a 基端部
111b 先端部
112 接続部
113,114 挿入口部
120 内視鏡
121 挿入部
122 操作部
123 配線
125 撮像ユニット
130 内視鏡制御ユニット
131 入力部
132 制御部
133 撮像制御部
134 表示画像作成部
135 表示部
150 第1注射器
151 フラッシュ液
155 第1カテーテル
156 噴射口
160 第2注射器
161 充填液
162 マイクロカプセル
165 第2カテーテル
170 バルーン
200 超音波装置
211 第1プローブ
221 第1超音波制御ユニット
212 第2プローブ
222 第2超音波制御ユニット
231,232 配線
250a 第1超音波振動子
250b 第2超音波振動子
251a 第1超音波ビーム
251b 第2超音波ビーム
261 入力部
262 制御部
263 送信部
271 入力部
272 制御部
273 送信部
274 受信部
275 超音波画像作成部
276 表示部
310 腹部
320 子宮
410 気管
411 胸腔
412 横隔膜
413 腹腔内臓器
414a,414b 肺
450 孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10