(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原子力発電プラントの過渡事象時や事故時に発報される警報を監視しつつ、警報発報時に、前記過渡事象又は事故の原因及びその結果としてその後に想定される波及事象を、原子力発電所の運転員が判断するために支援する原子力発電プラント警報監視支援システムであって、
前記原子力発電プラントに設置される機器から運転状態に関するデータを取得して監視する運転状態監視部と、
この運転状態監視部で取得された前記運転状態に関するデータが予め定められた設定範囲を超える過渡事象時又は事故時に前記警報を発報する警報発報部と、
この警報発報部から発報された前記警報を画面情報として表示する出力部と、
前記警報から(1)前記警報の原因に関連する運転パラメータ、(2)前記警報の結果として関連する運転パラメータ(以下、第2運転パラメータという)、及び(3)前記警報の結果として関連する警報(以下、第2警報という)を画面情報として前記出力部に表示する関連パラメータ・警報展開部と、
(1)前記警報の原因に関連する前記運転パラメータ、(2)前記警報の結果として関連する前記第2運転パラメータ、及び(3)前記警報の結果として関連する前記第2警報を、前記警報を中心に関連付けて階層構造に格納する警報・パラメータデータベースと、を有することを特徴とする原子力発電プラント警報監視支援システム。
前記原子力発電プラントのシステムに関する配管計装線図(以下、P&IDという)、システムの運転マニュアル及び保安規定の少なくとも1つを格納するデータベースと、
前記運転員からの求めに応じて、前記P&ID、運転マニュアル及び保安規定の少なくとも1つを前記データベースから読み出して前記出力部に表示する出力指示部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の原子力発電プラント警報監視支援システム。
前記画面情報は、予め定められた必須情報に関する縮小表示とその他の付帯情報を含めた詳細表示を選択可能に前記出力部に表示することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の原子力発電プラント警報監視支援システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、警報に関する起因事象と警報や機器の運転状態やプロセス信号との関係に関する知識(情報)を提供し、さらに実際のプロセス信号と照合する技術の開示があるものの、その照合の判定はシステム内で実行され、運転員に対しては結果のみが伝達されるので、運転員自身がプラントの運転状態を把握した上で経験に基づく警報の原因の特定や波及事象に関する推論を行うためには情報が不足するという課題があった。
特許文献2にはプラントに発生した異常に対し、異常時運転手順書、系統図面、プラントのトレンドグラフを示す技術が開示されていたり、特許文献3では、警報データを警報間につながり(因果関係)を持たせて、警報の原因となる原因警報、警報の結果生じる結果警報に関する警報データベースを構築しているものの、それらの警報を発生する基礎となる運転パラメータ(運転プロセス量)に関する情報が欠けているため、過渡事象時や事故時に運転員が計器の数値を把握しながら、警報の原因やその後の波及事象を想定しながら迅速に対応することが難しいという課題があった。
また、特許文献4では、警報の発報に対し、保安規定情報を表示し、さらに、保安規定で定められる許容待機除外時間(AOT)をタイマー表示と共に表示する技術、特許文献5では、事故時支援情報、警報の処置手順、系統図、通常時を逸脱したパラメータ(運転情報)を表示する手段を備えた技術が開示されているものの、警報の発報時に参照すべき警報の原因やその後の処置を判断するために必要な運転パラメータ(運転プロセス量)に関する情報の提供手段については開示されておらず、運転員が短時間で迅速にプラント運転状態を正しく把握しながら、適切な処置を実行することが困難であるという課題があった。
【0010】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、原子力発電プラントの過渡事象時や事故時に発報される警報を端緒として、その警報の原因に関連する運転パラメータ、警報の結果として関連する運転パラメータ、及び警報の結果として関連する運転パラメータに関連する警報を、階層構造を形成させてデータベース化して、各階層毎に一覧表示することで、運転員がプラントの運転状況を把握しながら、過渡事象時や事故時の警報の原因の特定及びその後の波及事象についての予測、対応策について運転員自身が判断することが可能な原子力発電プラント警報監視支援システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である原子力発電プラント警報監視支援システムは、原子力発電プラントの過渡事象時や事故時に発報される警報を監視しつつ、警報発報時に、前記過渡事象又は事故の原因及びその結果としてその後に想定される波及事象を、原子力発電所の運転員が判断するために支援する原子力発電プラント警報監視支援システムであって、前記原子力発電プラントに設置される機器から運転状態に関するデータを取得して監視する運転状態監視部と、この運転状態監視部で取得された前記運転状態に関するデータが予め定められた設定範囲を超える過渡事象時又は事故時に前記警報を発報する警報発報部と、この警報発報部から発報された前記警報を画面情報として表示する出力部と、前記警報から(1)前記警報の原因に関連する運転パラメータ、(2)前記警報の結果として関連する運転パラメータ(第2運転パラメータ)、及び(3)前記警報の結果として関連する警報(第2警報)を画面情報として前記出力部に表示する関連パラメータ・警報展開部と、(1)前記警報の原因に関連する運転パラメータ、(2)前記警報の結果として関連する運転パラメータ(第2運転パラメータ)、及び(3)前記警報の結果として関連する警報(第2警報)を、前記警報を挟んで階層構造に格納する警報・パラメータデータベースと、を有することを特徴とするものである。
【0012】
上記構成の原子力発電プラント警報監視支援システムでは、警報・パラメータデータベースに(1)警報の原因に関連する運転パラメータ、(2)警報の結果として関連する運転パラメータ(第2運転パラメータ)、及び(3)警報の結果として関連する警報(第2警報)を格納しておくことで、関連パラメータ・警報展開部が、発生した警報を端緒として、警報の原因を特定するために警報の原因に関連する運転パラメータの一覧を表示させるように作用する。
また、当初の警報(原因警報)の結果としての波及事象の進展を把握したり波及事象の結果としての警報を予測するためには、関連パラメータ・警報展開部が、当初の警報の結果として関連する運転パラメータの一覧を表示させるように作用し、さらに、その警報の結果として関連する運転パラメータの一覧の中から特定された運転パラメータに関連する警報の一覧を表示させるように作用する。
なお、本願において、運転パラメータとは、原子力発電プラントの運転によって発生する物理量の変数であり、具体的には、配管、容器あるいは機器における流量や温度、圧力、差圧、放射線量等の変動しつつ、計測可能なプロセス量を意味している。
なお、本願明細書の実施の形態では、(1)警報の原因に関連する運転パラメータを警報関連パラメータ(原因)、(2)警報の結果として関連する運転パラメータ(第2運転パラメータ)を警報関連パラメータ(結果)、(3)警報の結果として関連する警報(第2警報)を警報関連警報(結果)等と表現することがある。
【0013】
また、請求項2に記載の発明である原子力発電プラント警報監視支援システムは、請求項1に記載の原子力発電プラント警報監視支援システムにおいて、前記運転状態に関するデータを用いて演算処理を行うパラメータ演算処理部を有し、このパラメータ演算処理部は、前記機器の運転パラメータの実績に基づく過去及び未来の時系列トレンド演算を行い、前記画面情報は、前記時系列トレンド演算結果を含むことを特徴とするものである。
【0014】
上記構成の原子力発電プラント警報監視支援システムでは、パラメータ演算処理部が、機器の運転パラメータの実績に基づく過去及び未来の時系列トレンド演算を行い画面情報に時系列トレンド演算結果を含ませるように作用する。
【0015】
そして、請求項3に記載の発明である原子力発電プラント警報監視支援システムは、請求項2に記載の原子力発電プラント警報監視支援システムにおいて、前記パラメータ演算処理部は、前記時系列トレンド演算結果を用いて、前記機器に関係するインターロックの作動又は警報の発報までの時間演算を可能とし、前記画面情報は、前記時間演算結果を含むことを特徴とするものである。
【0016】
上記構成の原子力発電プラント警報監視支援システムでは、請求項2に記載の発明の作用に加えて、パラメータ演算処理部は、時系列トレンド演算結果を用いて機器に関係するインターロックの作動又は警報の発報までの時間演算を行い画面情報に時間演算結果を含ませるように作用する。
【0017】
さらに、請求項4に記載の発明である原子力発電プラント警報監視支援システムは、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の原子力発電プラント警報監視支援システムにおいて、前記原子力発電プラントのシステムに関する配管計装線図(以下、P&IDという)、システムの運転マニュアル及び保安規定の少なくとも1つを格納するデータベースと、前記運転員からの求めに応じて、前記P&ID、運転マニュアル及び保安規定の少なくとも1つを前記データベースから読み出して前記出力部に表示する出力指示部を有することを特徴とするものである。
【0018】
上記構成の原子力発電プラント警報監視支援システムでは、請求項1乃至請求項3に記載の発明の作用に加えて、出力指示部が、原子力発電プラントのシステムに関するP&ID、運転マニュアル、保安規定を運転員の求めに応じて表示するようにするように作用する。
【0019】
請求項5に記載の発明である原子力発電プラント警報監視支援システムは、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の原子力発電プラント警報監視支援システムにおいて、前記画面情報は、予め定められた必須情報に関する縮小表示とその他の付帯情報を含めた詳細表示を選択可能に前記出力部に表示されることを特徴とするものである。
上記構成の原子力発電プラント警報監視支援システムでは、画面情報が縮小表示と詳細表示の2通りに選択可能に出力部に表示されるように作用する。
【0020】
請求項6記載の発明である原子力発電プラント警報監視支援システムは、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の原子力発電プラント警報監視支援システムにおいて、前記警報及び前記警報の結果として関連する警報(第2警報)に関する前記画面情報は、発報時、発報後継続時、発報後解消時又は未発報時に分類されて色分け表示されることを特徴とするものである。
上記構成の原子力発電プラント警報監視支援システムでは、画面情報が分類され色分けされて表示されるように作用する。
【0021】
そして、請求項7に記載の発明である原子力発電プラント警報監視支援システムは、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の原子力発電プラント警報監視支援システムにおいて、前記警報、(1)前記警報の原因に関連する運転パラメータ、(2)前記警報の結果として関連する運転パラメータ(第2運転パラメータ)、及び(3)前記警報の結果として関連する警報(第2警報)に関する前記画面情報は、色分けされて表示されることを特徴とするものである。
上記構成の原子力発電プラント警報監視支援システムでは、当初の警報(原因警報)、当初の警報の原因に関連する運転パラメータ、当初の警報の結果として関連する運転パラメータ(第2運転パラメータ)と警報(第2警報)に関する画面情報が分類され色分けされて表示されるように作用する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1に記載の原子力発電プラント警報監視支援システムでは、関連パラメータ・警報展開部が、発生した警報を端緒として、警報の原因を特定するために警報の原因に関連する運転パラメータの一覧を表示させたり、警報の結果としての波及事象の進展を把握したり波及事象の結果としての警報を予測するために警報の結果として関連する運転パラメータの一覧を表示させ、さらに関連する警報の一覧を表示させることで、原子力発電プラントの運転員が、当初発生した警報の原因の特定や、その後に波及すると考えられる事象の進展による運転パラメータの推移の予測やその波及事象の進展によって発報される可能性のある警報を予測することが可能である。
【0023】
本発明の請求項2に記載の原子力発電プラント警報監視支援システムでは、請求項1に記載の発明の効果に加えて、画面情報に機器の運転パラメータの実績に基づく時系列トレンド演算結果が含まれるので、運転員は警報に関連する運転パラメータの変化を読み取ることができ、原因の特定や波及事象に関する予測の精度の向上を図ることができる。
【0024】
本発明の請求項3記載の原子力発電プラント警報監視支援システムでは、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加えて、機器に関係するインターロックの作動又は警報の発報までの時間演算結果を運転員が把握参照することができるので、いずれの波及事象に係る警報が近いかの判断が容易となり、その波及事象に対する対応策を早期に実行することが可能である。
【0025】
本発明の請求項4に記載の原子力発電プラント警報監視支援システムでは、請求項1乃至請求項3に記載の発明の効果に加えて、原子力発電プラントのシステムに関するP&ID、運転マニュアル、保安規定を表示することが可能であるため、運転員はシステム配管上の機器や計測器の配置や計装、運転方法、保安上の規定について参照することができ、警報を発生させている過渡事象や事故事象の原因の特定やその後に波及すると考えられる事象の進展による運転パラメータの推移の予測やその波及事象の進展によって発報される可能性のある警報の予測をより精度高く実行することが可能である。
【0026】
本発明の請求項5に記載の原子力発電プラント警報監視支援システムでは、画面表示が縮小表示と詳細表示の2通りに選択可能に出力部に表示されるので、運転員は重要視しなければならない警報や運転パラメータについては詳細表示とし、それ以外は縮小表示とすることで限られた画面のスペースを有効に活用することができる。従って、警報の原因究明やその後の波及事象に関する予測等も効率的に迅速に行うことができる。
【0027】
本発明の請求項6及び請求項7に記載の原子力発電プラント警報監視支援システムでは、画面情報が分類され色分けされることで運転員による視認性が高まり、勘違いや判断ミスを予防して、より精度の高い判断を行うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の実施の形態に係る原子力発電プラント警報監視支援システムについて
図1乃至
図32を参照しながら説明する。
まず、実施の形態に係る原子力発電プラント警報監視支援システムについて
図1乃至
図5を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る原子力発電プラント警報監視支援システムの構成を表す概念図である。
図2乃至
図5は、それぞれ本発明の実施の形態に係る原子力発電プラント警報監視支援システムの運転状態データベース、警報・パラメータデータベース、画面情報データベース、P&IDデータベース、マニュアルデータベース、及び保安規定データベースを示す概念図である。
図1において、原子力発電プラント警報監視支援システム1は、入力部2、演算部3、出力部4及びデータベース群として、運転状態データベース5、警報・パラメータデータベース6、画面情報データベース7、P&IDデータベース8、マニュアルデータベース9及び保安規定データベース10から構成されている。
【0030】
入力部2は、原子力発電プラント警報監視支援システム1の各データベースに読み出し可能に格納されるデータ20が入力されるものである。
入力部2の具体例としては、キーボード、マウス、ペンタブレット、光学式の読取装置あるいはコンピュータ等の解析装置や原子力発電プラント内の計測機器や制御盤等から通信回線を介してデータを受信する受信装置など単独あるいは複数種類の装置からなり目的に応じた使い分けが可能な装置が考えられる。また、原子力発電プラント警報監視支援システム1への入力に対するインタフェースのようなものであってもよい。
また、出力部4は、演算部3に含まれる運転状態監視部11、警報発報部12、パラメータ演算処理部13、出力指示部14、関連パラメータ・警報展開部15、事故イベント選択部16、警報画面選択部17及びシステム管理部18で実行されたそれぞれの処理内容の結果を出力表示したり、演算部3内で実行されるそれぞれの処理に必要なデータ入力を促すための入力画面(インタフェース画面)等の情報や入力部2を介して入力されたデータ20の内容について各データベース5〜10から読み出して外部へ出力するものである。
具体的には原子力発電プラント内に設置されるCRT、液晶、プラズマあるいは有機ELなどによるディスプレイ装置、あるいはプリンタ装置などの出力装置、さらには外部装置への伝送を行うためのトランスミッタなどの発信装置などが考えられる。もちろん、外部装置への伝送のための出力に対するインタフェースのようなものであってもよい。
【0031】
演算部3は、前述のとおり、運転状態監視部11、警報発報部12、パラメータ演算処理部13、出力指示部14、関連パラメータ・警報展開部15、事故イベント選択部16、警報画面選択部17及びシステム管理部18から構成されている。
【0032】
運転状態データベース5は、原子力発電プラントを構成している機器や設備の運転状態を定量的に表現することができる運転パラメータ(運転プロセス量)に関するデータを格納するものである。
具体的な形状データ15の内容としては、例えば、
図2に示される配管内を流れる流体に関する流量データ21、流体に関する温度データ22、システムを構成するポンプの吸い込み圧や吐出圧などの圧力データ23、フィルタ・ストレーナ等の圧力損失差等の差圧データ24、タンク内の貯留液体の液位データ25、原子炉の炉心における中性子束や管理区域内の放射線モニタ等によって測定される放射線データ26、システム上の機器の作動状況を示す機器オン・オフデータ27等がある。
【0033】
警報・パラメータデータベース6は、まず、A警報データベース30、B警報データベース31、C警報データベース32及びD警報データベース33の4つのデータベースに分類されている。A乃至Dは便宜上付したものであり、特に特別な意味を持った記号ではない。
A警報とはパラメータタイプの警報であり、B警報とは現場制御盤タイプの警報であり、C警報とは電動弁や電動機等の電動機器のトリップタイプの警報であり、D警報とはイベント(事象)発生タイプの警報である。これらの警報についての詳細は後述する。
【0034】
A警報データベース30には、A警報として分類されたA1警報データ34が格納されており、そのA1警報データ34に対して、A1警報関連パラメータ(原因)36、A1警報関連パラメータ(結果)37及びA1警報関連警報(結果)38が関連付けられて格納されている。A1警報データ34は、原子力発電プラントにおいて発生する可能性がある警報であり、その警報が発報された原因となり得るパラメータをA1警報関連パラメータ(原因)36として格納している。
そして、A1警報データ34に関する警報が発報された後に影響を受け得るパラメータをA1警報関連パラメータ(結果)37として格納している。さらに、このA1警報データ34に関する警報が発報された後に影響を受けて発報される可能性のある警報をA1警報関連警報(結果)38として格納している。
すなわち、原子力発電プラントを運転中に発報された警報(A1警報データ34)を中心に、言わば上流側に原因となるA1警報関連パラメータ(原因)36、下流側に結果として関連するA1警報関連パラメータ(結果)37、さらに、運転中に発報された警報に関連して発報される可能性のあるA1警報関連警報(結果)38を関連付けて同時に引き出せるように、階層構造を形成させて格納している。
ここでいう階層構造とは、当初発報された警報(A1警報データ34)を中心層として、その上層にA1警報関連パラメータ(原因)36、下層にA1警報関連
パラメータ(結果)3
7及びA1警報関連警報(結果)38が配置される構造を意味している。
【0035】
従って、当初発生する警報(原因警報)を端緒として、原因を特定するためには、A1警報関連パラメータ(原因)36について展開して表示させ、その後発生し得る波及事象を予測するような場合には、A1警報関連パラメータ(結果)37について展開して表示させる。さらに、その後に発報される警報について予測する場合には、A1警報関連パラメータ(結果)37の状態を把握した上で、A1警報関連警報(結果)38について展開して表示させることができるので、当初警報を起点として、上流側として考えられる警報の原因を判断することができ、また、ほぼ同時に当初警報から下流側の今後想定される事象についても可能性を判断することができる。
A警報データベース30には、A1警報データ34のほかにもA2警報データ35等複数のA警報データが格納されており、そのA2警報データ35に対しても、それを起点としてA2警報関連パラメータ(原因)39、A2警報関連パラメータ(結果)40及びA2警報関連警報(結果)41が階層構造を形成しながら警報・パラメータデータベース6内に格納されている。従って、これらの複数の警報データや運転関連パラメータを階層毎に一覧で表示させることも可能であり視認性が高いので、警報が発報された際に、運転員は上流側の原因の追及と下流側に存在する可能性のある事象に関する予測を短時間で容易に行うことが可能である。
【0036】
画面情報データベース7は、出力部4に出力される画面表示に必要なフォームを格納したものであり、このフォームに関するデータにはA乃至Dに分類される警報毎にA警報画面情報データ45、B警報画面情報データ46、C警報画面情報データ47及びD警報画面情報データ48が存在しており、それぞれが読み出し可能に格納されている。
【0037】
P&IDデータベース8には、原子力発電プラントを構成する複数のシステム(系統)に関する配管計装線図(P&ID)が系統毎に格納されている。具体的には、制御棒駆動系(CRD系)P&ID50、原子炉浄化系(CUW系)P&ID51及びホウ酸注入系(SLC系)P&ID52等がある。もちろん、これらのP&IDも関連する警報や運転パラメータに対応させて、運転員の求めに応じて読み出されるようにしておく。以下のマニュアルや保安規定も同様である。但し、保安規定に関しては、抵触する場合には運転員の求めによらず自動的に表示されるようにしておくことも望ましい。原子力発電プラントの系統は上述の例に留まらず、さらに多数存在しており、それらについてもP&IDデータベース8内に格納されている。
【0038】
マニュアルデータベース9には、原子力発電プラントを構成する複数のシステム(系統)に関する事故発生時マニュアルが系統毎に格納されている。具体的には、CRD系マニュアル53、CUW系マニュアル54及びSLC系マニュアル55等があるが、P&IDデータベース8と同様に他の系統についても格納されている。
【0039】
保安規定データベース10には、原子力発電プラントを構成する複数のシステム(系統)に関する保安規定が系統毎に格納されている。具体的には、CRD系保安規定56、CUW系保安規定57及びSLC系保安規定58等があるが、同様に他の系統についても格納されている。
【0040】
以下、
図6乃至
図32も参照しながら、本実施の形態に係る原子力発電プラント警報監視支援システム1によって実行される処理内容について演算部3に含まれる個々の構成要素の作用や効果も含めて説明する。
図6は、本発明の実施の形態に係る原子力発電プラント警報監視支援システムによって実行される警報及び関連パラメータの表示処理に関するフロー図である。
図6において、原子力発電プラント内に設置される機器や設備における運転パラメータの測定値や運転パラメータ以外の例えば機器のオンオフ等の信号あるいはトリップ事象、その他発生事象に関する信号は、中央制御室に設置されるプラント制御盤(中央制御室)61に直接およびその設置場所近傍に存在しているプラント制御盤(現場盤)60から中央制御室に設置されるプラント制御盤(中央制御室)61を経て原子力発電プラント警報監視支援システム1の運転状態監視部11に入力される。運転状態監視部11は、原子力発電プラントの運転状態を監視するために、運転パラメータの測定値等を随時入力している。また、運転状態監視部11は、運転パラメータの測定値等について読み出し可能とするため運転状態データベース5に格納している。
原子力発電プラントにおいて、過渡事象や事故等が発生した場合には、運転状態監視部11に入力される測定値や信号が変化することで、設定値や設定条件を超え、その超えたことに関する信号が運転状態監視部11から警報発報部12に発信され、その超えた条件や対象によって予めA乃至Dに分類された警報が警報発報部12によって発報される(ステップS1−1、S2−1、S3−1、S4−1)。
その際には、警報発報部12はそれぞれの警報の分類によって画面情報データベース7からそれぞれの警報の分類に従った画面情報データ45〜48を読み出して、その画面情報データを基に画面表示の処理を行い(ステップS1−2、S2−2、S3−2、S4−2)、出力部4に出力する(ステップS1−3、S2−3、S3−3、S4−3)。
【0041】
ここで、A警報の発報を例にとって、さらに説明を加える。A警報は前述のとおりパラメータタイプの警報である。パラメータタイプの警報は、運転中に運転パラメータの数値が設定値を超えることで発報されるものであり、このA警報が出力部4に出力された場合の画面表示の例を
図7に示す。(a)はA警報に関する画面表示の詳細表示例の概念図であり、(b)は同じく縮小表示例の概念図である。
図7(a)において、詳細表示例70に示される表示のうち、入力部2を介して手動入力されるものは、
図8に示すとおりである。具体的には、特定可能なように予め定められた警報発報ナンバー表示72、運転パラメータが測定対象となっている現場の制御盤に付された記号についての制御盤表示73、警報設定値表示74、設定値を超える運転パラメータが検出された検出器に関する検出器表示75、運転パラメータに関連するインターロックに関するインターロック表示76、検出器の設置場所に関する場所表示77、関連する保安規定に関する保安規定表示78、警報発報の記録の対象となっているか否かに関する警報発報記録表示79、対象となっている運転パラメータに関する制限値(上限)表示80及び制限値(下限)表示81等がある。
図7(b)における縮小表示例71は、詳細表示アイコン90を選択してクリックすることで
図7(a)の詳細表示例70に切り替えることが可能である。この作用も警報発報部12によるものである。
【0042】
詳細表示例70には、この他、パラメータ演算処理部13が、運転状態監視部11あるいは運転状態データベース5から入力される運転パラメータの測定値を用いて処理する数値についても表示されている。
これらの数値に関しては、
図9に示されるとおり、具体的には、運転パラメータの現在値表示82、過去1ヶ月間から1日前データを抽出して平均処理を施した通常値表示83、同じくその中から最大値を抽出処理した最大値表示84、同じく最小値を抽出処理した最小値表示85、また、運転状態データベース5に格納される過去発報履歴データを用いて検索処理して得られる発報履歴表示86がある。
また、詳細表示例70では、
図10に示されるとおり、パラメータ演算処理部13が、制限値(上限)表示80や最大値表示84あるいは別途入力部2から入力した上限値を比較処理して上限値を生成したり、逆に、制限値(下限)表示81や最小値表示85あるいは入力部2を介して入力した下限値や0値表示を比較処理して下限値を生成して、これをバーチャートの上限値、下限値として採用し、警報設定値や現在値と共にバーチャート表示87している。
【0043】
加えて、詳細表示例70では、
図11に示されるとおり、パラメータ演算処理部13が、過去の運転パラメータの測定値を任意に遅延させてサンプリング処理しつつ、現在値をリアルタイムサンプリング処理して、偏差を演算し、その偏差に基づいて、過去の測定値から現在の測定値まで減少傾向にあるか(−1、−2)、維持傾向にあるか(0)あるいは増加傾向にあるか(+1、+2)に分岐処理して、それを傾向表示88している。
さらに、詳細表示例70では、
図12に示されるように、パラメータ演算処理部13が、インターロック作動設定値を運転状態データベース5から読み出して、運転パラメータの現在値をリアルタイムサンプリング処理して比較しながら、インターロック作動までの推定時間を演算し、インターロック作動までの推定時間表示89している。
なお、パラメータ演算処理部13によって処理されたこれらの数値については、運転状態データベース5に読み出し可能に格納され、パラメータ演算処理部13は、運転状態データベース5から読み出して、出力部4に出力して表示させている。
【0044】
運転員は、出力部4に出力された画面表示の詳細表示例70を確認しつつ、その中に示された情報を把握することができる。
また、
図6に戻って説明を続ける。
ステップS1−3の後には、ステップS1−4で示されるとおり、トレンド表示のリクエストをパラメータ演算処理部13に対して行うと、パラメータ演算処理部13は運転パラメータを処理して(ステップS1−5)、出力部4に運転パラメータの測定値を時系列で示すトレンド表示を実行する(ステップS1−6)。
なお、このトレンド表示のリクエストは
図13の詳細表示例70中の右側に示されるトレンド表示アイコン92をクリックして選択することで実行される。トレンド表示は、
図13に記載されるとおり、別画面が開き、1時間、1日、1週間、1か月データを選択し、その期間のグラフ表示としてトレンドが表示される。
なお、
図13中のハードコピーアイコン93をクリックすると出力指示部14に指令が届き、詳細表示例70の画面を印刷することができる。この場合、出力部4としてはプリンター等が相当する。
また、
図6にステップS1−7として示されるマニュアル、P&IDあるいは保安規定のリクエストを出力指示部14に対して行うと、出力指示部14はマニュアルデータベース9、P&IDデータベース8あるいは保安規定データベース10からそれぞれマニュアル、P&ID、保安規定を読み出して、出力部4に表示する(ステップS1−8、1−9、1−10)。
これらの書面の表示のリクエストは、
図7の詳細表示例70の右側に表示されるアラーム(アラーム時の運転マニュアル)、事故時(事故時の運転マニュアル)、系統図(P&ID)及び保安規定については、保安規定表示78がある場合には、その部分のアイコンをクリックして選択することで実行される。もちろん、運転員からのリクエストがなくとも、抵触する保安規定を自動的に表示させることが望ましい。
なお、本願における出力部4においては、タッチパネル式でもよく、従って、入力部2と兼ねる機能を有する場合もある。出力部4におけるアイコンのクリックは、入力部2から出力指示部14やパラメータ演算処理部13あるいは関連パラメータ・警報展開部15に対する選択や要求と同等の意味を持つこともある。また、アイコンのクリック等の選択や要求はマウス等を用いてもよいことは言うまでもない。
【0045】
さらに、ステップS1−11では、関連パラメータのリクエストを関連パラメータ・警報展開部15に対して行うと、関連パラメータ・警報展開部15は、ステップS1−1で発報された警報に関連するパラメータあるいは警報について出力部4に表示する処理を実行する。
この関連パラメータのリクエストは
図13の詳細表示例70中の右側に示される関連パラメータ展開アイコン91をクリックして選択することで実行される。この関連パラメータ展開アイコン91をクリックすると、詳細表示例70の警報(CRDポンプ入口温度高)という警報に関連した関連パラメータ及び警報が下段に表示される。表示された状態を示したのが、
図14である。
図14に示される詳細表示例70では、下段に機器オンオフタイプ関連パラメータ表示94及びアラームなしタイプ関連パラメータ詳細表示95が表示されている。なお、これらの警報に関連した関連パラメータ、警報に関連する警報を表示する場合は、それぞれ画面表示の色分けを行うと運転員による視認性が高まり、より短時間における判断もより正確かつ容易に実行することができる。もちろん、警報に関連した関連パラメータには関連パラメータ(原因)と関連パラメータ(結果)の両方が考えられるので、これらも色分けすることが望ましい。あるいは、当初の警報の上流側の関連パラメータ(原因)の色に対して、下流側の関連パラメータ(結果)と関連警報(結果)を同色として当初の警報を挟んで上流側と下流側で色分けしてもよい。
【0046】
ここで、
図6に戻って、機器オンオフタイプ関連パラメータ及びアラームなしタイプ関連パラメータについて説明を加える。
ステップS1−1等で発報される警報に関連するパラメータには、
図3を用いて説明したとおり、警報関連パラメータ(原因)と警報関連パラメータ(結果)があり、さらに、警報関連警報(結果)があるが、関連パラメータ・警報展開部15は展開すべき関連パラメータ(原因と結果の両方を含む)と関連警報(結果)を、(1)アラームなしタイプ関連パラメータ、(2)機器オンオフタイプ関連パラメータ、(3)関連警報タイプとして分類している。
なお、これらの警報タイプ別に色分け表示することで、より視認性の向上に繋がり、運転員の判断の精度向上にも寄与すると考えられる。
【0047】
そこで、関連パラメータ・警報展開部15はステップS1−11で関連パラメータのリクエストを受けた場合にステップS1−12として関連パラメータ及び関連警報をこれら3種類に分類する分岐処理を実行する。その分岐処理後には、それぞれの分類毎に、ステップS1−13では、(1)アラームなしタイプ関連パラメータに該当するパラメータを
図15のようなフォームに沿って処理し、出力部4に画面表示する(ステップS1−16)。
図15において、(a)はアラームなしタイプ関連パラメータ詳細表示95であり、(b)はアラームなしタイプ関連パラメータ縮小表示96である。
【0048】
また、ステップS1−14では、(2)機器オンオフタイプ関連パラメータに該当するパラメータを
図16のようなフォームに沿って処理し、出力部4に画面表示する(ステップS1−16)。
図16は原子力発電プラントの原子炉隔離時冷却系(RCIC)のポンプに関する機器オンオフタイプ関連パラメータ表示94を示している。この
図16では見え難いが、このポンプは通常時では停止していることから、起動時には赤色のマーク表示、停止時には緑色のマーク表示がされることになっている。このように機器の起動、停止の状態で色分け表示を行うことによって、機器の作動状況の判断が容易となり、過渡事象時や事故時における運転員の判断の精度を向上させることができる。
【0049】
さらに、ステップS1−15では、(3)関連警報タイプに該当する警報を
図17のようなフォームに沿って処理し、出力部4に画面表示する(ステップS1−16)。
図17において、(a)は関連警報タイプの詳細表示100であり、(b)は関連警報タイプの縮小表示例101である。いずれも水素密封油装置に関する警報を示しており、詳細表示100ではわかり難いが、「機内ガス圧力低」の警報表示の左側が赤色表示となっており、この警報が発報されていることが示されている。これらの警報表示の左側には赤色、黄色、緑色の信号色でマーク表示されることになっており、それぞれ発報時(赤色)、発報後継続時(黄色)、発報後解消時又は未発報時(緑色)に分類されている。
このように色分け表示されることで、出力部4に示される画面表示に対する運転員の視認性が高まり、勘違いや判断ミスを防止することができる。従って、過渡時や事故時という時間的、精神的な余裕がない状態でもより精度の高い判断を行うことが可能である。
図17に示される詳細表示100の警報詳細アイコン102をクリックすると警報の内容に関する詳細な情報が別画面で表示される。
なお、
図15乃至
図17で示した画面表示のフォームは画面情報データベース7に予め格納されており、関連パラメータ・警報展開部15は、まず当初の警報に関連するパラメータや警報を警報・パラメータデータベース6から読み出し、さらに、その関連パラメータや関連警報に従って、画面情報データベース7からフォームを読み出して表示する。
警報・パラメータデータベース6は前述のとおり警報データとパラメータデータが階層構造を形成しているので、当初の警報に関連する原因パラメータ、結果パラメータ及び当初の警報に関連する警報について階層毎に検索や抽出ができるので、検索及び抽出が容易となっている。
【0050】
ここで、
図18を参照しながら、原子力発電プラントにおける警報とその上流側の関連パラメータ、下流側の関連パラメータと警報の関係について詳細に説明を加える。
図18は原子力発電プラントの制御棒駆動系(CRD系)の警報及び関連パラメータ同士の因果関係を示す概念図である。制御棒駆動系は、原子力発電プラントにおいて装荷される核燃料の反応を制御するための制御棒を駆動させるためのシステムであり、CRDポンプはその制御棒を駆動させるための水圧を発生させるためのポンプである。
図18において、符号aで示されるのが当初の警報(原因警報)である。例えば、「CRDポンプ入口圧力低」という警報が考えられる。この当初の警報(原因警報)が発報された原因として考えられるのが、符号bで示されている関連パラメータ(原因)に関する数値の変動である。具体的には、「復水貯蔵タンク水位」の低下、「復水器スピルオーバー流量」の低下、「CRDポンプ入口ストレーナ差圧」の増加、「復水ポンプ電源状態(M/C(メタクラ)電圧)」の低下または停電、「復水ポンプ出口圧力」の低下等の関連パラメータの変動が挙げられる。
当初の警報aが原因となって生じるインターロックとしては、符号cで示されるCRDポンプトリップがある。このCRDポンプの作動状態、すなわち機器のオンオフ状態を示すものとしては、符号dで示される「A−CRDポンプ起動 ON/OFF」と「B−CRDポンプ起動 ON/OFF」がある。CRDポンプは単一故障を想定してAとBの2台が設置されているので、それぞれについて起動か停止かの状態を把握する必要がある。
さらに、このCRDポンプトリップが生じることに起因して生じる関連パラメータ(結果)の変動としては、符号eで示されるとおり、「アキュムレータ水位・圧力」の低下、「原子炉熱出力」の変化があり、関連警報(結果)としては、「スクラム供給水圧低」、「CRD冷却水差圧低」、「CRD機構温度高」等が存在している。CRDポンプトリップとはCRDポンプの停止を意味しているので、その結果としてCRD(制御棒駆動機構)に対する冷却水流量の低下やスクラム(緊急原子炉停止)のためのアキュムレータ水位や圧力の低下、さらにスクラム用の供給される水圧の低下を生じることになる。
【0051】
このように原子力発電プラントの制御棒駆動系(CRD系)に生じた当初の警報(原因警報)の上流側となる関連パラメータ(原因)とその下流側となる関連パラメータ(結果)及び関連警報(結果)は、それぞれ密接な関係を有している。従って、これらの関係を維持したままで警報・パラメータデータベース6に格納させることで、当初警報の発報を端緒として、その警報の原因の一覧を出力部4に画面表示させることが可能であり、あるいは、その後に生じる可能性のある波及事象に関連するパラメータや警報についての一覧を出力部4に画面表示させることが可能である。
しかも、結果として関連するパラメータの個々について関連する警報は異なるので、当初警報に関連するパラメータ表示と警報を一覧表示させるのとは別に、その関連パラメータ(結果)の個々に対応させて関連警報(結果)を表示させることによれば、より階層構造の優位性を発揮させることが可能である。
例えば、
図18の符号eに示されるとおり、CRDポンプトリップというインターロックがかかった時に、CRD機構温度高という関連警報(結果)が発生する可能性ももちろんあるが、アキュムレータ水位・圧力という関連パラメータ(結果)の変動によって発報される可能性のある警報も当然存在するため、関連パラメータ(結果)の下流側に関連警報(結果)を備えた階層構造とすることには重要な意味がある。
しかしながら、既に
図3、
図15乃至
図17を参照しながら説明したとおり、当初警報に関連するのは、運転パラメータ(結果)の他に警報(結果)もあるので、常に関連警報(結果)が関連パラメータ(結果)の下流側に備わっているというわけではなく、当初警報(原因警報)の下流側に関連警報(結果)が表示される場合も含まれているのである。
いずれにしても警報と運転パラメータをその因果関係に沿って予め階層構造に構成しておき、これを当初警報(原因警報)を端緒として出力部4に一覧表に展開させることで、運転員は警報と運転パラメータの階層間を短時間で移動可能となり、過渡事象時や事故時に時間的、精神的余裕がない状態であっても的確な判断を下すことが可能となる。
【0052】
次に、
図6に再度戻って、A警報以外の警報が警報発報部12から発報された場合について説明する。
図6において、ステップS2−1としてB警報が発報されると、A警報と同様に、警報発報部12はB警報の分類によって画面情報データベース7からB警報の分類に従ったB警報画面情報データ46を読み出して、そのB警報画面情報データ46を基に画面表示の処理を行い(ステップS2−2)、出力部4に出力する(ステップS2−3)。
B警報は前述のとおり現場制御盤タイプの警報である。現場制御盤タイプの警報は、現場に設置された制御盤の計測器の数値が設定値を超えることで発報されるものであり、B警報自体はON/OFFで示される。このB警報が出力部4に出力された場合の画面表示の例は既に説明した
図17と同じである。
B警報が発報した当初では、
図17(b)に示される縮小表示例101が表示されるが、
図19に示されるとおり、例えばB1警報(現場盤)に関し、警報詳細についてリクエストされると、出力部4に対して
図17で示されるような詳細表示100が出力される。
【0053】
次に、
図6において、ステップS3−1としてC警報が発報されると、A、B警報と同様に、警報発報部12はC警報の分類によって画面情報データベース7からC警報の分類に従ったC警報画面情報データ47を読み出して、そのC警報画面情報データ47を基に画面表示の処理を行い(ステップS3−2)、出力部4に出力する(ステップS3−3)。
C警報は前述のとおり電動弁や電動機等の電動機器のトリップタイプの警報である。トリップタイプの警報は、運転パラメータの変動ではなく、現場に設置された機器のトリップによって発報されるものであり、C警報自体もON/OFFで示される。このC警報が出力部4に出力された場合の画面表示の例を
図20に示す。
図20は、原子炉が停止した際に炉心で発生した残留熱を除去するためのシステムである残留熱除去系の電動弁が過負荷となってトリップした場合の警報に関する表示例であり、(a)が詳細表示例であり、(b)が縮小表示例である。
C警報が発報した当初では、
図20(b)に示される縮小表示例104が表示されるが、
図21に示されるとおり、例えばC1電動機(コントロールセンタ)故障表示に関する警報に関し、警報詳細についてリクエストされると、出力部4に対して
図20で示される詳細表示例103が出力される。
さらに、
図21に示されるとおり、マニュアル、P&IDあるいは保安規定に関するリクエストが出力指示部14に対してなされると、出力指示部14は、マニュアルデータベース9、P&IDデータベース8あるいは保安規定データベース10からそれぞれの書類に関するデータを読み出して、出力部4に画面表示させる。
さらに、関連パラメータ・警報展開部15に対して関連パラメータ・警報に関するリクエストを実行すると、関連パラメータ・警報展開部15は、
図6を参照意しながら説明した分岐処理を実行し、(1)アラームなしタイプ関連パラメータに該当するパラメータ、(2)機器オンオフタイプ関連パラメータに該当するパラメータあるいは(3)関連警報タイプに該当する警報に分類し、それぞれ
図15乃至
図17で示したフォームに従って出力部4に画面表示する。
なお、これらのフォームは画面情報データベース7に格納しておき、関連パラメータ・警報展開部15が画面情報データベース7から読み出して出力部4に表示させるとよい。
【0054】
次に、
図6に再度戻って、ステップS4−1としてD警報が発報される場合について説明する。A−C警報と同様に、警報発報部12はD警報の分類によって画面情報データベース7からD警報の分類に従ったD警報画面情報データ48を読み出して、そのD警報画面情報データ48を基に画面表示の処理を行い(ステップS4−2)、出力部4に出力する(ステップS4−3)。
D警報は前述のとおりイベント(事象)発生タイプの警報である。イベント発生タイプの警報は、運転パラメータの変動ではなく、過渡事象や事故事象等が実際に発生した場合に発報されるものであり、D警報自体もイベント(事象)の発生、非発生で表現されることからON/OFFで示される。このD警報が出力部4に出力された場合の画面表示の例を
図22に示す。
図22は、原子炉が自動スクラムによって停止した際に発生した場合の警報に関する表示例105である。
D警報が発報した当初では、表示例105よりも縮小した表示がされるが、
図23に示されるとおり、例えばD1警報に関する警報に関し、警報詳細についてリクエストされると、出力部4に対して
図22で示されるような詳細な表示例105が出力される。また、
図23には示されていないものの、
図21と同様に、出力指示部14に対してマニュアルやP&ID、あるいは保安規定に関する書類の表示をリクエストすると出力部4に表示され、関連パラメータ・警報展開部15に対して、関連パラメータあるいは関連警報の展開に関するリクエストを行うと、関連パラメータ・警報展開部15は分岐処理を行ってそれぞれに分類された関連パラメータ・警報を出力部4に表示する。
【0055】
次に、
図24乃至
図26を参照しながら、事故発生時の原子力発電プラント警報監視支援システム1の利用について説明する。
図24は本発明の実施の形態に係る原子力発電プラント警報監視支援システムの事故イベント選択のための画面表示例を示す概念図であり、
図25は同じく事故イベントの種別選択のための画面表示例、
図26は同じく選択された事故イベントに関連するパラメータ及び警報の画面表示例を示す概念図である。
図27は本発明の実施の形態に係る原子力発電プラント警報監視支援システムの事故時発報警報処理のフロー図である。
図27において、
図1や
図6に記載される構成要素と同一のものについては同一の符号を付す。
図24において、原子力発電プラント警報監視支援システム1を利用する運転員は、出力部4に表示された初期表示の画面において、事故イベント選択アイコン110を選択することで(
図27のステップS5−1)、入力部2から演算部3の事故イベント選択部16への指令が入力される。指令を受けた事故イベント選択部16は、出力部4に事故毎に分類された表示例111を表示させる。
次に、例えば原子炉スクラム事故アイコン112を同様に選択して
図25に示される表示例113を表示させて、さらに事故の種別について、主蒸気隔離弁が開の場合と閉の場合の選択を行う。
その後は、
図26の表示例114及び
図27の事故時発報警報処理のフロー図に示されるように、事故イベント選択部16は、予め入力部2を介して設定された主要な警報(当初の警報)、関連警報及び関連パラメータを含めた警報・パラメータデータベース6から該当する事故イベント予測警報データ62を読み出し、その内容を出力部4に表示する。この警報の表示については、既に
図6を参照しながら説明したとおり、警報の種類によってA警報、B警報、C警報及びD警報として、事故イベントに対応してそれぞれのフォームで出力部4に出力されてもよいが、事故イベントに対応させるもののA−D警報の区別なく出力されるようにしてもよい。
なお、
図3に示される警報・パラメータデータベース6の内部では、警報の種類毎に、A警報データベース30、B警報データベース31、C警報データベース32及びD警報データベース33のデータベースを構成させて、その中にそれぞれの警報の種類に基づいたA1警報データ34やA2警報データ35等を格納しているが、これらの警報データ個々に事故イベントあるいは過渡イベント等の事象に関するタグを付しておき、ステップS5−1で事故イベント選択に関してリクエストされた場合には、事故イベント選択部16が、その選択されたイベントに関連する事故イベント予測警報データ62を検索・収集可能にしておくとよい。
さらに、表示例114のように表示された警報に関して、その後の処理については、
図27で示される事故時発報警報処理のフロー図に示すとおり、事故イベント選択部16は、中央制御室に発報した警報と事故イベント選択部16で選択した事故に関する警報との突合せおよび振り分け処理(
図27のステップS5−2)を行う。あらかじめ予想された警報の場合は出力部としての表示器画面4a、相違する場合は表示器画面4bに振り分け後、表示する。突合せ処理で合致したものや相違した警報は、事故イベント選択部16が、そのシステム内で重複表示を阻止する処理を行う。処理した結果は、事故イベント選択部16によって、出力部としての表示器画面4a・4b(CRT、液晶、プラズマあるいは有機ELなどのディスプレイ装置)に仕分けられて表示される。
警報発報部12によって発報された警報は、警報発報部12によって時系列に沿って記録され、事故時警報発報リストデータ63として事故実績警報データベース64内に格納される。その際には運転員は入力部2を介してコメントを入力することが可能である。事故時警報発報リストデータ63は原子力発電プラント警報監視支援システム1の出力部4を介して表示されたり、またはプリンターで印刷され、運転員が確認できるものとする。事故実績警報データベース64は、
図1には示されていないものの、他のデータベースと同様に演算部3から読み出し可能に接続されるものである。
図27で示される事故時発報警報処理のフローは、運転員が想定する事故シーケンスの進展中に、機器の故障等の要因で予定外の警報が発報する場合、仕分けすることによって事故後の検証をしやすくするための事故イベント選択部16の機能である。また、警報が重複して発報された場合、重複表示阻止処理を行うことにより、表示器画面4a,4bの表示スペースが埋め尽され、視認性を悪くすることを防止するものである。
なお、出力部4に表示された初期表示の画面(
図24の上部分参照)において、警報画面任意選択アイコン115を選択することで、入力部2から演算部3の警報画面選択部17への指令入力となる。この警報画面選択部17は、事故イベントとは全く無関係に任意に事故イベント予測警報データ62を検索可能な機能を備えるものである。
【0056】
最後に原子力発電プラント警報監視支援システム1のシステム管理について
図28乃至
図32を参照しながら説明する。これから説明するシステム管理に関する機能は、原子力発電プラント警報監視支援システム1のシステム管理部18によって発揮される。
図28において、原子力発電プラント警報監視支援システム1を利用する運転員は、出力部4に表示された初期表示の画面において、システム管理アイコン120を選択することで、演算部3のシステム管理部18は、警報グループ設定アイコン122、事故イベントグループ設定アイコン123及び警報追加・削除アイコン124が表示される表示例121のような画面を出力部4に表示させる。
この中でまず警報グループ設定アイコン122を選択すると、
図29に示すような表示例125が出力部4に表示される。
図29において、まず、原子力発電プラントにおいて想定される警報から、設定したい警報を選択し、その警報を当初の警報として、この警報の上流側(原因側)で関連する警報関連パラメータ(原因)、下流側(結果側)で関連する警報関連パラメータ(結果)及び関連警報(結果)を選択する。
図29では、制御盤や系統選択によって選択してチェックボックスにチェックを入れ、遷移ボタンを押すようになっているが、選択の方法としては特に限定しない。
選択されたこれらの関連パラメータ及び関連警報はいずれも
図3に示す警報・パラメータデータベース6に因果関係を基準として階層構造を形成させて格納される。
【0057】
次に、
図28において、警報グループ設定アイコン122を選択した場合に出力部4に表示される
図30の表示例126を参照しながら、警報が発生する事故イベント(事象)の設定について説明する。
図30において、まず、原子力発電プラントにおいて想定される事故イベントから、設定したい事故イベントを選択し、その事故イベントに関連する警報(当初警報)、さらにその警報の流側(原因側)で関連する警報関連パラメータ(原因)、下流側(結果側)で関連する警報関連パラメータ(結果)及び関連警報(結果)を選択する。この
図30でも
図29と同様に選択した関連パラメータや関連警報のチェックボックスにチェックを入れ、遷移ボタンを押すことで設定が完了する。これらの関連パラメータや関連警報も
図3に示される警報・パラメータデータベース6に因果関係を基準として階層構造を形成させて格納される。
【0058】
図31及び
図32を参照しながら、警報に関する登録と削除について説明する。
図31は原子力発電プラント警報監視支援システム1のシステム管理時の個々の警報追加設定に関する画面表示例を示す概念図であり、
図32は同じく削除設定に関する画面表示例を示す概念図である。
図28に示される表示例121の警報追加・削除アイコン124を押すと、
図31の表示例127が出力部4に表示される。この表示例127において、個々の警報を追加する場合には、登録ボタンを押して、警報に付帯するタイプ、警報番号、警報の名称の他、関連する各パラメータを入力し、その後に入力内容を確認するために仮表示ボタンを押して警報に関する画面表示を行う。確認を終了した後には、保存ボタンを押して保存する。その際にはパスワードの設定を行うことで、管理者以外による設定を防止するようにしておくことが望ましい。この警報に関するデータは警報・パラメータデータベース6に格納される。
次に、
図32に示される表示例128の削除ボタンを押すことで、警報・パラメータデータベース6に格納されている個々の警報を削除することが可能である。
削除を希望する警報を選択し、その後に削除実行のボタンを押すことで削除される。その際に、設定時で使用したパスワードで削除が実行されるようにしておくことが望ましい。
なお、本願明細書では、「ボタン」「アイコン」等という語を用いたが、いずれも画面上で運転員やシステム管理者による選択の際の手段であり、特に区別して用いているものではない。また、「ボタン」や「アイコン」以外の手段であっても、運転員やシステム管理者による選択の要求(リクエスト)が実行されるのであれば、いかなる手段であってもよい。