(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0022】
<実施の形態1>
図1は、遺伝子解析装置1の外観を示す図である。
図2は、遺伝子解析装置1の機能的な構成を示すブロック図である。
図3は、核酸増幅検査装置200の機能的な構成を示すブロック図である。
図4は、反応促進部290の正面断面図を示す。
【0023】
図1に示すように、遺伝子解析装置1は、試料から核酸を抽出するための核酸抽出装置100と、抽出された核酸を増幅して検出するための核酸増幅検査装置200と、ユーザが情報の入出力を受けるためのタッチパネルディスプレイ400とを備える。
図1に示すように、遺伝子解析装置1の筐体に収容された核酸抽出装置100および核酸増幅検査装置200の扉をユーザが開くことにより核酸抽出装置100と核酸増幅検査装置200とをユーザが利用することができる。核酸抽出装置100と核酸増幅検査装置200は、それぞれ個別に使用することもできるし、核酸抽出装置100と核酸増幅検査装置200とを連動させることで、核酸抽出装置100により試料から核酸を抽出した後、核酸抽出装置100から核酸増幅検査装置200へ前記核酸を移送し、核酸増幅検査装置200により核酸を増幅して検出するまでの一連の遺伝子検査を全自動で行なうことも可能である。
【0024】
検査対象の試料から核酸を抽出する方法は、様々なものが知られている。核酸抽出装置100は、例えば、カオトロピック剤などの抽出液と、検査対象の試料とを混合する機構を有しており、カオトロピック剤の存在下で核酸がシリカに吸着する性質を利用して、核酸を抽出する(所謂、Boom法)。ここでカオトロピック剤とは、水溶液中でカオトロピックイオンを生成し、疎水性分子の水溶性を増加させる作用(カオトロピック効果)を有している物質のことである。具体的には、核酸抽出装置100は、少なくとも下記工程(A)〜(D)を全自動で行なうことが可能である。
工程(A):試料と抽出液(例えば、カオトロピック剤)とを混合する。
工程(B):前記混合液とシリカとを接触させ、シリカに核酸を吸着させる。
工程(C):洗浄液(例えば、アルコール類)とシリカとを接触させ、シリカから核酸以外の成分を洗浄する。
工程(D):溶出液(例えば、水)とシリカとを接触させ、シリカから核酸を脱着させる。
【0025】
核酸抽出装置100は、試料から核酸を抽出するため、タッチパネルディスプレイ400を介して、試料、抽出液、洗浄液、溶出液の液量などの設定を受け付ける。核酸抽出装置100は、設定に従って、試料から核酸を抽出することができる。
【0026】
核酸を増幅する方法は、様々なものが知られている。核酸増幅検査装置200は、例えばPCR法によって反応容器に収容された反応液に熱サイクルを与えることにより、反応液の核酸を増幅させる。PCR法では、DNAの一部分を選択的に増幅させるために、DNAポリメラーゼによる酵素反応を利用する。具体的には、(1)試料とDNAポリメラーゼを含むPCR試薬とを混合した反応液を、例えば約94℃〜98℃にして、所定の時間(例えば1秒から10秒程度)温度を保ち、熱変性させることで、二本鎖DNAが一本鎖DNAに変性する。(以下、変性工程とも呼称する。)(2)一本鎖DNAにDNAポリメラーゼを作用させるには、予めプライマーをDNAに結合させる必要があり、このアニーリングを、例えば約50℃〜70℃で行う。そのため、核酸増幅検査装置200は、反応液を60℃程度にまで急速に冷却し、一本鎖DNAとプライマーとをアニーリングさせる。(以下、アニーリング工程とも呼称する。)(3)次に、プライマーの分離がおきずDNAポリメラーゼの活性に適した温度帯にてDNAポリメラーゼを反応させることにより、DNAを伸長させる。DNAの伸長は、(2)と同じ温度で行ってもよいし、加熱して(2)より高い温度で行ってもよく、所要時間は例えば30秒から1分程度であればよい。(以下、伸長工程とも呼称する。)核酸増幅検査装置200で反応液に熱サイクルを与える方法は特に限定されないが、例えば、反応液を収容した反応容器に熱風または冷風を当てる、またはペルチェ素子を使用することにより、反応液の加熱および冷却を行う。中でも、PCRの高速化の観点から、熱風または冷風を用いることが好ましい。
【0027】
核酸増幅検査装置200は、反応液に対し、一定の温度で一定の時間、熱サイクルを与えるため、タッチパネルディスプレイ400を介して、熱サイクルで与える温度の設定、各温度を保つ時間の設定、および熱サイクルの回数(以下、サイクル数とも呼称する。)の設定を受け付ける。核酸増幅検査装置200は、設定に従って、反応液に熱サイクルを与えることにより、核酸を増幅させることができる。
【0028】
核酸を検出する方法は、定量法と定性法の2法に大別でき、それぞれ様々なものが知られている。核酸増幅検査装置200は、例えば融解曲線解析を行なうことで、対象となるDNA配列の試料中の有無を定性することができる。融解曲線解析について詳述する。蛍光物質を含む反応溶液に対して、PCRを行った後、反応液の温度を上昇(もしくは下降)させながら、同時に蛍光強度を測定することで得られる温度と蛍光強度とのデータから、温度に対する蛍光強度の微分数をプロットすると、特定の温度に特異的ピークを持つ融解曲線が得られる。このピークの温度は増幅産物の配列や長さによって異なるが、同一の増幅産物を同一条件で測定すれば、常に同じ曲線が得られる。このことから、得られた融解曲線の特異的ピークを比較することによって、対象となるDNA配列の有無を定性することができる。
【0029】
融解曲線解析に用いる蛍光物質としては、特に限定されないが、サイバーグリーン、エチジウムブロマイドなどのインターカレーターや、オリゴDNAの末端に蛍光色素を標識したプローブなどが用いられる。
【0030】
また、核酸増幅検査装置200は、例えばリアルタイムPCRを行なうことで、対象となるDNA配列の試料中の濃度を定量することができる。リアルタイムPCRについて詳述する。蛍光物質を含む反応溶液に対して、PCRを行ないながら同時に、アニーリング工程または伸長工程時の蛍光強度を測定することで得られるサイクル数と蛍光強度とのデータから、サイクル数に対する蛍光強度をプロットすると、増幅曲線が得られる。PCRを用いた増幅は鋳型となるDNAのコピー数が多いと短時間で一定の強度に達し、少ないと長い時間を要する。そのため、蛍光を用いて増幅の経時変化を測定し、一定強度まで達するサイクル数(Ct値)を濃度既知の核酸と濃度未知の核酸で比較することで、対象となるDNA配列の試料中の濃度を定量することができる。 なお、定量は定性に比べてより高感度で高精度な蛍光測定が必要となる。
【0031】
リアルタイムPCRに用いる蛍光物質としては、特に限定されないが、サイバーグリーン、エチジウムブロマイドなどのインターカレーターや、オリゴDNAの末端に蛍光色素を標識したプローブなどが用いられる。
【0032】
核酸増幅検査装置200は、蛍光光度法により、核酸を検出する。すなわち、核酸増幅検査装置200は、反応液に対して照射器から励起光を照射して、励起光により生じる蛍光を検出器によって核酸を検出する。
【0033】
核酸増幅検査装置200は、複数の励起光照射部を備える。実施の形態1では、核酸増幅検査装置200が、2つの励起光照射部を備える例を示している。この2つの励起光照射部は、それぞれ、異なる波長の励起光を照射するように構成されている。具体的には、励起光照射部は、それぞれが、LED等の発光部と、予め定められた波長の励起光をカットするための光学フィルタを備える。それぞれの励起光照射部の光学フィルタがカットする波長の範囲は、それぞれの励起光照射部のLED等の発光部によって異なるように構成されている。これにより、励起光照射部は、それぞれが異なる波長の励起光を照射する。複数の励起光照射部を備えることは、特に同一の反応容器中で複数の配列を同時に増幅検出する際(所謂、マルチプレックスPCR)の高感度検出に効果的である。詳述すると、マルチプレックスPCRを行なうには、通常同一の反応容器中に、波長の異なる複数の蛍光物質を加え、それぞれの蛍光物質が発する蛍光を、検出器によって検出する必要がある。その際、1つの励起光照射部しか備えていないと、前記複数の蛍光物質に対してそれぞれ最適な波長の励起光を照射することができず、どちらか一方の感度が著しく低下する恐れがある。つまり、1つの励起光照射部しか備えていない遺伝子増幅検出装置でマルチプレックスPCRを行なうと、定性はできるものの定量は困難となる。
【0034】
また、核酸増幅検査装置200は、複数の蛍光検出部を備えており、複数の蛍光検出部が、励起光により生じる蛍光を検出する。実施の形態1では、核酸増幅検査装置200が、2つの蛍光検出部を備える例を示している。この2つの蛍光検出部は、それぞれ、異なる波長の蛍光を検出するように構成されている。具体的には、蛍光検出部は、それぞれが、検出器および光学フィルタを備えている。それぞれの蛍光検出部の光学フィルタがカットする波長の範囲は、それぞれの蛍光検出部によって異なるように構成されている。これにより、蛍光検出部は、それぞれが異なる波長の蛍光を検出する。複数の蛍光検出部を備えることは、特に同一の反応容器中で複数の配列を同時に増幅検出する際(所謂、マルチプレックスPCR)に必須となる。1つの蛍光検出部しか備えていないと、当然ながら1種類の蛍光物質が発する蛍光しか検出することができない。つまり、1つの蛍光検出部しか備えていない遺伝子増幅検出装置でマルチプレックスPCRを行なうことはできない。
【0035】
核酸増幅検査装置200は、複数の励起光照射部のうちのいずれか1つを、反応液に対して励起光を照射するものとして選択し、選択対象となる励起光照射部を切り替えることにより、複数の励起波長の励起光を反応液に交互に照射する。複数の励起光照射部を切り替えることは、特に同一の反応容器中で複数の配列を同時に増幅検出する際(所謂、マルチプレックスPCR)の高感度検出に効果的である。複数の励起光照射部を切り替えず、複数の励起波長の励起光を同時に反応液に照射すると、反応容器中の複数の蛍光物質が同時に励起されることで、一方の蛍光が他方の蛍光に重なり、それぞれの蛍光を分離して検出することが困難となる。つまり、複数の励起光照射部を切り替えず、複数の励起波長の励起光を同時に反応液に照射する遺伝子増幅検出装置でマルチプレックスPCRを行なうと、定性はできるものの定量は困難となる。
【0036】
発光部としては、例えばLED(Light Emitting Diode)を使用することができる。LEDを使用することで、励起光照射部を切り替える際に発光部からの照射光の光量が安定するまでの時間が短くなり、使用可能なデータ数が向上し、データの信頼性が向上する。
【0037】
図3を参照して、核酸増幅検査装置200の構成を詳細に説明する。
図3に示すように、核酸増幅検査装置200は、記憶部210と、制御部220と、電源部230と、半導体リレー231と、反応促進部290とを含む。反応促進部290は、照射部250と、検出部260と、保持盤280と、駆動部291と、回転速度制御装置292と、空調部299とを含む。
【0038】
記憶部210は、RAM(Random Access Memory)等によって構成され、核酸増幅検査装置200が使用するプログラムを記憶し、核酸増幅検査装置200が使用する各種のデータを蓄積する。ある局面において、記憶部210は、動作設定211を記憶する。動作設定211は、核酸増幅検査装置200が、照射部250の複数の励起光照射部のいずれかを用いて励起光を反応液310に照射するために、照射に使用する励起光照射部を切り替えるタイミングの設定を示す。また、動作設定211は、反応促進部290が反応液310に与える熱サイクルの設定(温度の大きさの設定と、温度を反応液310に与える時間の設定)を示す情報である。
【0039】
制御部220は、記憶部210に記憶される制御プログラムを読み込んで実行することにより、核酸増幅検査装置200の動作を制御する。制御部220は、例えばプロセッサにより実現される。制御部220は、プログラムに従って動作することにより、駆動制御部221と、温度調節部222としての機能を発揮する。また、制御部220は、半導体リレー231の動作を制御する信号を出力することにより、空調部299のオンとオフとを制御する。制御部220は、空調部299を駆動して反応促進部290の内部の空気を排出等することにより、反応液310に与える温度を調整する。
【0040】
駆動制御部221は、反応液310に熱サイクルを加えるための核酸増幅検査装置200の駆動を制御する。具体的には、駆動制御部221は、駆動部291に制御信号を出力することにより回転速度制御装置292の回転速度(角速度)を制御することで、保持盤280に保持される反応容器300の移動を制御する。これにより、駆動制御部221は、反応容器300の反応液310に対し、照射部250からの励起光を照射させることができる。
【0041】
温度調節部222は、反応液310に与える熱サイクルにおいて、動作設定211の設定に従って、反応液310に対して与える温度を調節する。温度調節部222は、ヒーター281に対し、ヒーター281の温度を示す制御信号を出力する。
【0042】
半導体リレー231は、無接点のリレーであり、制御部220の制御に応じて空調部299への電力の供給を制御する。
【0043】
制御部220は、照射部250を駆動することにより反応液310に励起光を照射して、励起光の照射による蛍光を検出部260が検出した検出結果を検出部260から受け付けることで、核酸増幅の検査をする。
【0044】
電源部230は、核酸増幅検査装置200の外部から供給される交流電源を受けて、直流電圧に変換する。
【0045】
照射部250は、反応液310に対して励起光を照射するための励起光照射部として、第1励起光照射部251と、第2励起光照射部252とを含む。これら複数の励起光照射部が照射する励起光は、ダイクロイックミラー253を介して反応液310に照射される。
【0046】
検出部260は、励起光が反応液に照射されることにより生じる蛍光を検出する。励起光が反応液に照射されることにより生じる蛍光は、ダイクロイックミラー263を介して第1蛍光検出部261と、第2蛍光検出部262とに入力される。
【0047】
駆動部291は、制御部220からの制御信号に応じて、保持盤280の角速度を示す信号を回転速度制御装置292に出力することで回転速度制御装置292を回転させる。
【0048】
回転速度制御装置292は、駆動部291の駆動制御に従って回転し、歯車機構により保持盤280を回転させることで、反応液310を回転方向に移動させる。
【0049】
複数の励起光照射部がそれぞれ照射する励起光の波長差(以下、Δλexとも呼称する。)は、好ましくは、30nm(ナノメートル)〜300nm、より好ましくは、40nm〜200nm、さらに好ましくは、50〜150nmの範囲で構成されている。Δλexが30nm〜300nmであることは、特に同一の反応容器中で複数の配列を同時に増幅検出する際(所謂、マルチプレックスPCR)の高感度検出に効果的である。Δλexが30nmより小さいと、反応容器中の複数の蛍光物質が同時に励起されることで、一方の蛍光が他方の蛍光に重なり、それぞれの蛍光を分離して検出することが困難となる。つまり、Δλexが30nmより小さい遺伝子増幅検出装置でマルチプレックスPCRを行なうと、定性はできるものの定量は困難となる。一方、Δλexが300nmより大きいと、使用できる蛍光物質の種類が減り、感度が下がり、かつ高価になるため好ましくない。
【0050】
また、複数の蛍光検出部がそれぞれ検出する蛍光の波長差(以下、Δλemとも呼称する。)が、好ましくは、30nm〜300nm、より好ましくは、40nm〜200nm、さらに好ましくは、50〜150nmの範囲で構成されている。Δλemが30nm〜300nmであることは、特に同一の反応容器中で複数の配列を同時に増幅検出する際(所謂、マルチプレックスPCR)の高感度検出に効果的である。Δλemが30nmより小さいと、一方の蛍光が他方の蛍光に重なり、それぞれの蛍光を分離して検出することが困難となる。つまり、Δλemが30nmより小さい遺伝子増幅検出装置でマルチプレックスPCRを行なうと、定性はできるものの定量は困難となる。一方、Δλemが300nmより大きいと、使用できる蛍光物質の種類が減り、感度が下がり、かつ高価になるため好ましくない。
【0051】
実施の形態1の複数の励起光照射部は、核酸増幅検査装置200の筐体に固定されている。また、複数の蛍光検出部は、核酸増幅検査装置200の筐体に固定されている。保持盤280は、反応容器300を移動可能な機構を有している。制御部220が保持盤280を駆動させることにより、反応容器300を移動させるように構成されている。照射部250は、反応容器300の側面に対して励起光を照射可能に配置されている。また、検出部260は、反応容器300の側面に対して配置され、励起光が反応液310に照射されることにより生じる蛍光を検出する。
【0052】
実施の形態1の保持盤280は、円盤形状であり、回転軸を有している。保持盤280は、制御部220による駆動制御に従って、回転軸を中心に反応容器300が円周方向に移動可能に構成されている。
【0053】
制御部220は、例えば、保持盤280を一回転させるごとに、反応容器300に励起光を照射させる励起光照射部を切り替える。
【0054】
図4を参照して、反応促進部290を詳細に説明する。
図4に示すように、保持盤280は回転盤279と固定され、回転盤279の回転に従って保持盤280も回転される。保持盤280は、容器保持孔282の上部から反応容器300の挿入を受け付ける。反応容器300は、例えば、キャピラリー形状のものを使用することができる。キャピラリー形状の反応容器300を使用することで、反応液310への熱伝導性が向上し、昇温時間および/または降温時間が短縮し、トータルの反応時間の短縮が可能となる。反応容器300は、上部から検体と試薬とを投入可能に構成されており、上部から下部へ進むに従って径が小さくなっている。反応容器300の下部にある反応液310において検体と試薬とが混合される。反応容器300は、上部にテーパー状の構造を有しており、テーパー状の構造により反応容器300が保持盤280に保持される。反応容器300の反応液310はヒーター281と空調部299によって温度が与えられる。
【0055】
<励起光照射部と検出部との位置関係>
図5は、反応容器300に対する照射部250と検出部260の位置関係を示し、反応容器300が円周上に移動する態様を示す図である。
図5に示すように、照射部250は、反応容器300の側面に対して励起光を照射するよう配置される。反応容器300は、保持盤280の回転に伴い、円周に沿って移動する。検出部260は、例えば、照射部250が照射する励起光の直進光および反応容器300の容器表面で励起光が反射した反射光がなるべく検出器に入射しないよう配置される。具体的には、照射部250が照射する励起光の進行方向に対して直角となる位置に検出部260が配置される。
【0056】
<励起光照射部および検出部の構成>
図6は、複数の励起光照射部を含む照射部250および複数の蛍光検出部を含む検出部260の構成を示す図である。
【0057】
図6に示すように、照射部250の第1励起光照射部251は、発光ダイオード251Aと、凹レンズ251Bと、ショートパスフィルタ251Cと、バンドパスフィルタ251Dとを含む。第2励起光照射部252は、発光ダイオード252Aと、凹レンズ252Bと、ショートパスフィルタ252Cと、バンドパスフィルタ252Dとを含む。
【0058】
ショートパスフィルタ(SPF(Short Pass Filter))は、短波長側の光を透過させ、長波長側の透過を阻止するフィルタである。バンドパスフィルタ(BPF(Band Pass Filter))は、特定の波長の光を選択的に透過させる。ただし、バンドパスフィルタは、特定波長以外にも高波長側に透過帯が存在することがある。そのため、ショートパスフィルタとバンドパスフィルタとを組み合わせて、ノイズを低減させる。
【0059】
例えば、代表的な蛍光物質であるFAM(Carboxyfluorescein)またはBODIPY(登録商標)−FLと、VIC(登録商標)またはCR6G(Carboxyrhodamine 6G)を用いてマルチプレックスPCRを行なう場合、VIC(登録商標)またはCR6Gの励起に対応する、第1励起光照射部251は、550nmの波長の励起光源となるように発光ダイオード251Aとショートパスフィルタ251Cとバンドパスフィルタ251Dとを含んで構成されている。例えば、発光ダイオード251Aは、最大波長550nmのものを用いることができ、ショートパスフィルタ251Cは、「570nm」以上の光を阻止するものを用いることができ、バンドパスフィルタ251Dは、特定波長「550±10nm」の光を選択的に透過させるものを用いることができる。また、発光ダイオード251Aは、同種の複数の発光ダイオードを用いることで、励起光の強度を向上させることができる。なお、VIC(登録商標)の最適な励起波長である530nm、CR6Gの最適な励起波長である525nmより長波長である550nmで励起するのは、VIC(登録商標)またはCR6Gを励起し、かつFAMまたはBODIPY(登録商標)−FLを励起しにくい波長を選定すべく、最適な励起波長から長波長側にシフトさせたためである。
【0060】
また、例えば、代表的な蛍光物質であるFAMまたはBODIPY(登録商標)−FLと、VIC(登録商標)またはCR6Gを用いてマルチプレックスPCRを行なう場合、FAMまたはBODIPY(登録商標)−FLの励起に対応する、第2励起光照射部252は、470nmの波長の励起光源となるように発光ダイオード252Aとショートパスフィルタ252Cとバンドパスフィルタ252Dとを含んで構成されている。例えば、発光ダイオード252Aは、最大波長470nmのものを用いることができ、ショートパスフィルタ251Dは、「490nm」以上の光を阻止するものを用いることができ、バンドパスフィルタ252Dは、特定波長「470±10nm」の光を選択的に透過させるものを用いることができる。また、発光ダイオード252Aは、同種の複数の発光ダイオードを用いることで、励起光の強度を向上させることができる。なお、FAMの最適な励起波長である495nm、BODIPY(登録商標)−FLの最適な励起波長である500nmより短波長である470nmで励起するのは、FAMまたはBODIPY(登録商標)−FLを励起し、かつVIC(登録商標)またはCR6Gを励起しにくい波長を選定すべく、最適な励起波長から短波長側にシフトさせたためである。
【0061】
ダイクロイックミラー253は、特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を透過するミラーである。ダイクロイックミラー253は、第1励起光照射部251が光源となる励起光を透過させ、第2励起光照射部252が光源となる励起光を反射させる。ダイクロイックミラー253を透過または反射した光は、凸レンズ254およびシリンドリカルレンズ255を介して反応容器300の反応液310に照射される。
【0062】
検出部260は、第1蛍光検出部261と、第2蛍光検出部262と、ダイクロイックミラー263と、ミラー264と、レンズ265とを含む。第1蛍光検出部261は、検出器261Aと、凸レンズ261Bと、バンドパスフィルタ261Cとを含む。第2蛍光検出部262は、検出器262Aと、凸レンズ262Bと、バンドパスフィルタ262Cとを含む。
【0063】
検出部260において、反応容器300に励起光が照射されることにより生じる蛍光は、レンズ265を介して検出部260に入射し、ミラー264で反射される。ダイクロイックミラー263は、ミラー264で反射される反射光のうち、特定の波長の光を反射して第2蛍光検出部262に入射させ、その他の波長の光を透過して第1蛍光検出部261へ入射させるように配置される。
【0064】
例えば、代表的な蛍光物質であるFAMまたはBODIPY(登録商標)−FLと、VIC(登録商標)またはCR6Gを用いてマルチプレックスPCRを行なう場合、FAMまたはBODIPY(登録商標)−FLの検出に対応する、第1蛍光検出部261は、530nmの波長の蛍光を検出するようにバンドパスフィルタ261Cと凸レンズ261Bとを含んで構成されている。例えば、バンドパスフィルタ261Cは、特定波長「530±10nm」の光を選択的に透過させるものを用いることができる。検出器261Aは、例えばフォトダイオードにより構成されており、検出器261Aに入射される蛍光を受光して電気信号に変換する。なお、FAMの最適な蛍光波長である520nm、BODIPY(登録商標)−FLの最適な蛍光波長である510nmとほぼ一致する530nmで蛍光を検出する。
【0065】
また、例えば、代表的な蛍光物質であるFAMまたはBODIPY(登録商標)−FLと、VIC(登録商標)またはCR6Gを用いてマルチプレックスPCRを行なう場合、VIC(登録商標)またはCR6Gの検出に対応する、第2蛍光検出部262は、590nmの波長の蛍光を検出するようにバンドパスフィルタ262Cと凸レンズ262Bとを含んで構成されている。例えば、バンドパスフィルタ262Cは、特定波長「590±10nm」の光を選択的に透過させるものを用いることができる。検出器262Aは、例えばフォトダイオードにより構成されており、検出器262Aに入射される蛍光を受光して電気信号に変換する。なお、VIC(登録商標)の最適な蛍光波長である550nm、CR6Gの最適な蛍光波長である555nmより長波長である590nmで励起するのは、VIC(登録商標)またはCR6Gを検出し、かつFAMまたはBODIPY(登録商標)−FLの影響を受けにくい波長を選定すべく、最適な蛍光波長から長波長側にシフトさせたためである。
【0066】
<データ構造>
図7は、記憶部210に記憶される動作設定211のデータ構造を示す図である。
図7を参照して、動作設定211は、複数の励起光照射部(第1励起光照射部251および第2励起光照射部252)のうち反応液310に対して励起光を照射する励起光照射部を切り替えるタイミングの情報を含む。
図7の例では、保持盤280が一回転するたびに(容器保持孔282に保持される複数の反応容器300が一周するたびに)、励起光を照射する励起光照射部を切り替えることが動作設定211に設定されている。
【0067】
<実施の形態1のまとめ>
実施の形態1の遺伝子解析装置1について説明した。実施の形態1の核酸増幅検査装置200において、制御部220は、複数の励起光照射部(第1励起光照射部251および第2励起光照射部252)のうちいずれか1つを、反応容器300に励起光を照射する励起光照射部として選択する。制御部220は、選択対象の励起光照射部を、例えば保持盤280が1回転するごとなどの予め定められたタイミングで切り替えることにより、複数の励起波長の励起光を反応容器300に照射するように構成されている。これにより、励起光照射部が1つで1種類の波長の励起光を反応容器300に照射する場合と比較して、複数の励起波長の励起光を反応容器300に選択的に照射することができ、蛍光の検出の感度を高めることができる。
【0068】
関連技術として、複数の波長の励起光の強度を周波数的に変化させるものを想定する。この場合は、反応液に励起光が照射されることにより発生する蛍光に、検出したい波長の蛍光のみならず他波長の蛍光が含まれることがあり、感度の低下およびノイズの増加につながる。また、励起光の強度が常に変化しうるため、測定の安定性も低下する。これに対し、実施の形態1の核酸増幅検査装置200は、複数の波長の励起光を、例えば保持盤280が1回転するごとに切り替えて反応容器300に照射するため、測定の安定性が向上する。
【0069】
また、関連技術として、反応容器に対して励起光を照射する励起光照射部を移動させることにより、複数の波長の励起光を反応液に照射する技術を想定する。この場合は、励起光照射部自体が移動することで反応液に対して照射する励起光の波長を変更する技術であるため、励起光照射部を切り替えるための時間が長期化しやすく、蛍光の検出結果のデータ量が減るおそれがある。そのため、検査の再現性が低下し、また、異常値の影響が大きくなるおそれがある。また、関連技術において、励起光照射部を移動させるための機構を設けることで、装置の大型化および高価格化につながりうる。また、関連技術において、励起光照射部を移動させると、反応容器に対する励起光の照射の光軸がずれるなどの不具合が発生しやすくなるおそれもある。
【0070】
これに対し、実施の形態1の核酸増幅検査装置200は、照射部250および検出部260が核酸増幅検査装置200の筐体に固定されているため、装置の小型化、低価格化、高信頼性を図ることができる。
【0071】
<実施の形態2>
別の実施の形態の遺伝子解析装置1について説明する。実施の形態1において、反応容器300は、保持盤280によって保持されることにより円周方向に移動可能に構成される例を説明した。実施の形態2では、反応容器300は、線上を移動する。
図8は、実施の形態2の反応促進部290の構成の概略を示す図である。なお、核酸増幅検査装置200における他の構成は実施の形態1と同様であるため説明を繰り返さない。
図9は、反応容器300に対する照射部250と検出部260の位置関係を示し、反応容器300が線上に移動する態様を示す図である。
【0072】
図8に示すように、保持部297は、容器保持孔282により反応容器300を保持する。保持部297は、線上に移動する機構を有している。核酸増幅検査装置200の制御部220は、保持部297の移動を制御することにより、容器保持孔282に保持される反応容器300に照射部250からの励起光を照射する。制御部220は、例えば、保持部297を一往復させるごとに、反応容器300の反応液310に励起光を照射させる励起光照射部を切り替える。
【0073】
<実施の形態3>
図10は、核酸増幅検査装置200の他の一例を示すブロック図である。
図10の例では、核酸増幅検査装置200のうち、反応促進部290の構成の概略を示している。
【0074】
図11は、複数の励起光照射部を含む照射部250および複数の蛍光検出部を含む検出部260の構成の他の一例を示す図である。
【0075】
図10に示すように、実施の形態3の核酸増幅検査装置200は、照射部250により二波長の励起光を反応容器300に照射する。検出部260は、4つの蛍光検出部を含む。例えば、4つの蛍光検出部のそれぞれは、特定の波長の蛍光を検出するように構成されている。
【0076】
図11に示すように、検出部260は、第1蛍光検出部261と、第2蛍光検出部262と、第3蛍光検出部266と、第4蛍光検出部267と、ダイクロイックミラー263と、ダイクロイックミラー268と、ダイクロイックミラー269とを含む。第3蛍光検出部266は、検出器266Aと、凸レンズ266Bと、バンドパスフィルタ266Cとを含む。第4蛍光検出部267は、検出器267Aと、凸レンズ267Bと、バンドパスフィルタ267Cとを含む。
【0077】
検出部260において、反応容器300に励起光が照射されることにより生じる蛍光は、レンズ265を介して検出部260に入射する。検出部260に入射する蛍光は、ダイクロイックミラー268により、特定の波長の光が反射されてダイクロイックミラー269に向かい、その他の波長の光はダイクロイックミラー268を透過して第4蛍光検出部267に入射する。ダイクロイックミラー269は、特定の波長の光を反射して第3蛍光検出部266に入射させ、その他の波長の光を透過させてダイクロイックミラー263に向かわせる。ダイクロイックミラー263は、特定の波長の光を反射して第2蛍光検出部262に入射させ、その他の波長の光を第1蛍光検出部261に入射させる。
【0078】
このように、検出部260が4つの蛍光検出部を備えることにより、同一の反応容器中で4種のDNA配列を同時に増幅検出することが可能となる。
【0079】
例えば、代表的な蛍光物質であるBODIPY(登録商標)−FLと、CR6Gと、TAMRA(Carboxytetramethylrhodamine)と、ATTO665を用いてマルチプレックスPCRを行なう場合、TAMRAおよびATTO665の励起に対応する第1励起光照射部251は、590nmの波長の励起光源となるように発光ダイオード251Aとショートパスフィルタ251Cとバンドパスフィルタ251Dとを含んで構成されている。例えば、発光ダイオード251Aは、最大波長590nmのものを用いることができ、ショートパスフィルタ251Cは、「610nm」以上の光を阻止するものを用いることができ、バンドパスフィルタ251Dは、特定波長「590±10nm」の光を選択的に透過させるものを用いることができる。また、BODIPY(登録商標)−FLおよびCR6Gの励起に対応する第2励起光照射部252は、470nmの波長の励起光源となるように発光ダイオード252Aとショートパスフィルタ252Cとバンドパスフィルタ252Dとを含んで構成されている。例えば、発光ダイオード252Aは、最大波長470nmのものを用いることができ、ショートパスフィルタ251Dは、「490nm」以上の光を阻止するものを用いることができ、バンドパスフィルタ252Dは、特定波長「470±10nm」の光を選択的に透過させるものを用いることができる。
【0080】
例えば、代表的な蛍光物質であるBODIPY(登録商標)−FLと、CR6Gと、TAMRAと、ATTO665を用いてマルチプレックスPCRを行なう場合、BODIPY(登録商標)−FLの検出に対応する、第1蛍光検出部261は、530nmの波長の蛍光を検出するようにバンドパスフィルタ261Cと凸レンズ261Bとを含んで構成されている。例えば、バンドパスフィルタ261Cは、特定波長「530±10nm」の光を選択的に透過させるものを用いることができる。また、CR6Gの検出に対応する、第2蛍光検出部262は、580nmの波長の蛍光を検出するようにバンドパスフィルタ262Cと凸レンズ262Bとを含んで構成されている。例えば、バンドパスフィルタ262Cは、特定波長「580±10nm」の光を選択的に透過させるものを用いることができる。また、TAMRAの検出に対応する、第3蛍光検出部266は、630nmの波長の蛍光を検出するようにバンドパスフィルタ266Cと凸レンズ266Bとを含んで構成されている。例えば、バンドパスフィルタ266Cは、特定波長「630±10nm」の光を選択的に透過させるものを用いることができる。また、ATTO665の検出に対応する、第4蛍光検出部267は、680nmの波長の蛍光を検出するようにバンドパスフィルタ267Cと凸レンズ267Bとを含んで構成されている。例えば、バンドパスフィルタ267Cは、特定波長「680±10nm」の光を選択的に透過させるものを用いることができる。
【0081】
実施の形態1および2では、核酸増幅検査装置200が、2つの励起光照射部および2つの蛍光検出部を備える例を、実施の形態3では、核酸増幅検査装置200が、2つの励起光照射部および4つの蛍光検出部を備える例をそれぞれ示したが、励起光照射部および蛍光検出部の個数は複数つまり2つ以上であれば特に限定されず、例えば(1)2つの励起光照射部および2つの蛍光検出部、(2)2つの励起光照射部および3つの蛍光検出部、(3)2つの励起光照射部および4つの蛍光検出部、(4)3つの励起光照射部および3つの蛍光検出部、(5)3つの励起光照射部および4つの蛍光検出部、(6)3つの励起光照射部および5つの蛍光検出部、(7)3つの励起光照射部および6つの蛍光検出部、(8)4つの励起光照射部および4つの蛍光検出部、(9)4つの励起光照射部および5つの蛍光検出部、(10)4つの励起光照射部および6つの蛍光検出部、(11)4つの励起光照射部および7つの蛍光検出部、(12)4つの励起光照射部および8つの蛍光検出部が挙げられる。
【0082】
1つの励起光照射部および1つの蛍光検出部、または2つの励起光照射部および1つの蛍光検出部の場合、同一の反応容器中で複数の配列を同時に増幅検出すること(所謂、マルチプレックスPCR)が不可能である。また、1つの励起光照射部および2つの蛍光検出部の場合、前記複数の蛍光物質に対してそれぞれ最適な波長の励起光を照射することができず、どちらか一方の感度が著しく低下する恐れがある。
【0083】
なお、励起光照射部の個数がマルチプレックスPCRにより同時に定量可能なDNA配列の種類に相当し、蛍光検出部の個数がマルチプレックスPCRにより同時に定性可能なDNA配列の種類に相当する。例えば、実施の形態1および2では、核酸増幅検査装置200が、2つの励起光照射部および2つの蛍光検出部を備えるため、2種のDNAの同時定量および/または2種のDNAの同時定性が可能であり、実施の形態3では、核酸増幅検査装置200が、2つの励起光照射部および4つの蛍光検出部を備えるため、2種のDNAの同時定量および/または4種のDNAの同時定性が可能であり、例えば、核酸増幅検査装置200が、4つの励起光照射部および4つの蛍光検出部を備える場合は、4種のDNAの同時定量および/または4種のDNAの同時定性が可能である。
【0084】
励起光照射部の個数と蛍光検出部の個数の比は1:1〜1:2が好ましい。励起光照射部の個数と蛍光検出部の個数の比が、1:1より小さい(例えば4つの励起光照射部および2つの蛍光検出部の場合)と、反応液中に4種の蛍光物質があり、その蛍光物質に最適な4波長の励起光を当てることで、4波長の蛍光を発したとしても、検出は2波長分しかできないため、4種の蛍光物質の内、2種の蛍光物質は測定不能となってしまい好ましくない。一方、励起光照射部の個数と蛍光検出部の個数の比が、1:2より大きい(例えば2つの励起光照射部および6つの蛍光検出部の場合)と、反応液中に6種の蛍光物質があり、前記6種の蛍光色素を2波長の励起光で全て励起しなければならず、感度が著しく低下する恐れがある。
【0085】
<変形例>
複数の励起光照射部の具体的な配置、および、複数の蛍光検出部の具体的な配置は、実施の形態で説明したものに限られない。また、反応液310に対する加熱および冷却方法も、実施の形態で説明したものに限られない。
【0086】
本実施の形態に係る遺伝子解析装置、および遺伝子解析装置を構成する核酸増幅検査装置は、プロセッサと、その上で実行されるプログラムにより実現される。本実施の形態を実現するプログラムは、通信インタフェースを介してネットワークを利用した送受信等により提供されることもある。
【0087】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。