特許第6720628号(P6720628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720628
(24)【登録日】2020年6月22日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20200629BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20200629BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20200629BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   B41M5/00 100
   B41M5/00 120
   C09D11/40
   B41J2/01 129
   B41J2/21
   B41J2/01 501
【請求項の数】10
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-63673(P2016-63673)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-177353(P2017-177353A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】亀山 雄司
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真由子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 睦子
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−083267(JP,A)
【文献】 特開2004−314352(JP,A)
【文献】 特開2005−059306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00 − 5/52
B41J 2/01 − 2/215
C09D 11/00 − 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に、以上のインクジェットヘッドから、それぞれ色相の異なるインクジェットインキを吐出する工程と、
記録媒体上に吐出された前記インキに活性エネルギー線を照射することにより硬化する工程と、をこの順で含む、ワンパス方式で画像記録を行うインクジェット印刷物の製造方法であって、
色相の異なるインクジェットインキが、マゼンタインキ、イエローインキ、シアンインキ、および、特色インキを含み、
各インクジェットインキはそれぞれ、重合性モノマーと、着色剤とを含有し、
重合性モノマーが、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含み、
特色インキが、バイオレットインキ、または、ブルーインキである特色インキ(B)を含み、
インクジェットヘッドが、特色インキ(B)、シアンインキ、マゼンタインキ、および、イエローインキの順に構成されることを特徴とするインクジェット印刷物の製造方法。
【請求項2】
さらに特色インキが、オレンジインキ、または、レッドインキである特色インキ(A)を含み、
インクジェットヘッドが、特色インキ(B)、シアンインキ、マゼンタインキ、特色インキ(A)、および、イエローインキの順に構成されることを特徴とする、請求項1記載のインクジェット印刷物の製造方法。
【請求項3】
特色インキ(A)の着色剤が、C.I.ピグメントオレンジ13、34、38、61、64、C.I.ピグメントレッド166、および、242からなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、請求項に記載のインクジェット印刷物の製造方法。
【請求項4】
特色インキ(A)の着色剤が、C.I.ピグメントオレンジ64を含むことを特徴とする、請求項2または3に記載のインクジェット印刷物の製造方法。
【請求項5】
特色インキ(B)の着色剤が、C.I.ピグメントバイオレット23、および、C.I.ピグメントブルー15:6からなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、請求項1〜4いずれかに記載のインクジェット印刷物の製造方法。
【請求項6】
イエローインキの着色剤が、C.I.ピグメントイエロー83、150、180、および、185から選ばれる1つ以上を含むことを特徴とする、請求項1〜5いずれかに記載のインクジェット印刷物の製造方法。
【請求項7】
シアンインキの着色剤が、C.I.ピグメントブルー15:3、および、15:4からなる群より選ばれる1つ以上を含むことを特徴とする、請求項1〜6いずれかに記載のインクジェット印刷物の製造方法。
【請求項8】
マゼンタインキの着色剤が、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、146、147、150、266、およびローダミン系染料の金属レーキ化合物からなる群より選ばれる1つ以上を含むことを特徴とする、請求項1〜7いずれかに記載のインクジェット印刷物の製造方法。
【請求項9】
特色インキが、さらに、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、および、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−
1,2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノンからなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、請求項1〜8いずれかに記載のインクジェット印刷物の製造方法。
【請求項10】
特色インキが、記録媒体に付着した後、0.03秒から3秒後に活性エネルギー線を照射することを特徴とする、請求項1〜9いずれかに記載のインクジェット印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットインキによる印刷物の製造方法に関し、詳しくは、マゼンタインキ、イエローインキ、シアンインキの3色インキと、特色インキを用いた印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットヘッドの性能向上に伴い、オフセット印刷等を使用する既存印刷市場へのインクジェット印刷方式への応用が期待されている。既存印刷市場では、生産性が非常に重要である。既存印刷市場において、インクジェット印刷方式を用いて、生産性を実現するためには、高速印刷が可能なワンパス印刷方式を用いることが望ましい。
【0003】
オフセット印刷に代表される既存印刷市場の印刷物は、多くの特色を用いて印刷されるため、色再現性が非常に優れている特長がある。従って、既存印刷市場へのインクジェット印刷方式の応用を実現するには、優れた色再現性を持つことが重要である。
【0004】
一方で、ワンパス方式を用いた高速印刷の課題としては、特に非吸水性記録媒体上に印刷する場合、記録媒体上で隣接したインキが会合し、線幅の不均一や混色が発生して画像不良となることが挙げられる。混色は、色相の異なるインキが接触することによって起こる。混色したインキが紫外線等によって硬化すると、画像の滲みによる色再現性の低下だけでなく、グロスの低下を引き起こす。混色は、インキの種類が増えるほど多く発生する傾向があるため、特色インキを使用したワンパス方式での印刷方法では、優れた色再現性を得ることは困難だった。
【0005】
このような課題を解決するための手段として、記録媒体上に下塗り液を付与し、下塗り液上にカラーインキを吐出して画像形成を行う方法が提案されている(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−083267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、下塗り液を必須とし、更には半硬化工程を含むため、使用することができるインクジェットプリンターに制限がある。
更に、下塗り層上にカラーインキ画像を形成することにより、記録媒体上でインク液滴が会合する課題は解決できるが、独立したインク液滴は、画像の粒状感やカラー画像のグロスの低下を引き起こす。更に、下塗り層とカラーインキとの適合性を考慮する必要があり、色再現性とグロスが共に優れた画像を得ることは容易ではない。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、特に本発明では、下塗り液等がなくても色再現性、画質、グロスに優れた印刷物を得ることができるインクジェット印刷物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、記録媒体上に、以上のインクジェットヘッドから、それぞれ色相の異なるインクジェットインキを吐出する工程と、
記録媒体上に吐出された前記インキに活性エネルギー線を照射することにより硬化する工程と、をこの順で含む、ワンパス方式で画像記録を行うインクジェット印刷物の製造方法であって、
色相の異なるインクジェットインキが、マゼンタインキ、イエローインキ、シアンインキ、および、特色インキを含み、
各インクジェットインキはそれぞれ、重合性モノマーと、着色剤とを含有し、
重合性モノマーが、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含み、
特色インキが、バイオレットインキ、または、ブルーインキである特色インキ(B)を含み、
インクジェットヘッドが、特色インキ(B)、シアンインキ、マゼンタインキ、および、イエローインキの順に構成されることを特徴とするインクジェット印刷物の製造方法。
【0010】
さらに特色インキが、オレンジインキ、または、レッドインキである特色インキ(A)を含み、
インクジェットヘッドが、特色インキ(B)、シアンインキ、マゼンタインキ、特色インキ(A)、および、イエローインキの順に構成されることを特徴とする上記インクジェット印刷物の製造方法に関する。
【0011】
また、特色インキ(A)の着色剤が、C.I.ピグメントオレンジ13、34、38、61、64、C.I.ピグメントレッド166、および、242からなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、上記インクジェット印刷物の製造方法に関する。
【0012】
また、特色インキ(A)の着色剤が、C.I.ピグメントオレンジ64を含むことを特徴とする、上記インクジェット印刷物の製造方法に関する。
【0013】
また、特色インキ(B)の着色剤が、C.I.ピグメントバイオレット23、および、C.I.ピグメントブルー15:6からなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、上記インクジェット印刷物の製造方法に関する。
【0014】
また、イエローインキの着色剤が、C.I.ピグメントイエロー83、150、180、および、185から選ばれる1つ以上を含むことを特徴とする、上記インクジェット印刷物の製造方法に関する。
【0015】
また、シアンインキの着色剤が、C.I.ピグメントブルー15:3、および、15:4からなる群より選ばれる1つ以上を含むことを特徴とする、上記インクジェット印刷物の製造方法に関する。

【0016】
また、マゼンタインキの着色剤が、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、146、147、150、266、およびローダミン系染料の金属レーキ化合物からなる群より選ばれる1つ以上を含むことを特徴とする、上記インクジェット印刷物の製造方法に関する。
【0017】
また、特色インキが、さらに、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、および、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノンからなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、上記インクジェット印刷物の製造方法に関する。
【0018】
また、特色インキが、記録媒体に付着した後、0.03秒から3秒後に活性エネルギー線を照射することを特徴とする、上記インクジェット印刷物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、色再現性、画質、グロスに優れた印刷物を得ることができるインクジェット印刷物の製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、マゼンタインキ、イエローインキ、シアンインキの3色インキと、特色インキを含むカラーインキを用いて印刷物を製造する方法において、
各カラーインキが充填されたインクジェットヘッドの並び順によって、従来のインクジェットインキ印刷方法に比べて、色再現性が優れる印刷物を製造することが出来る。
【0021】
特色インキは、オレンジインキ、レッドインキ、バイオレットインキまたはブルーインキであることが好ましい。
以下、オレンジインキ及び/またはレッドインキを特色インキ(A)ということがある。また、バイオレットインキ及び/またはブルーインキを特色インキ(B)ということがある。
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0023】
<インクジェット印刷物の製造方法>
本発明のインクジェット印刷物の製造方法において、(1)2以上のインクジェットヘッドから、それぞれ色相の異なるカラーインキを吐出する工程と、及び、(2)記録媒体上に吐出された前記インキに活性エネルギー線を照射することにより硬化する工程と、をこの順で含み、ワンパス方式で画像記録を行うことを特徴とする。
【0024】
<ワンパス方式>
本発明におけるワンパス方式(シングルパス方式、ライン方式ともいう)とは、1個または複数のインクジェットヘッドを固定し、記録媒体を動かして印刷する方法であり、記録媒体が1個または複数のインクジェットヘッドを一度通過した際に、目的とする解像度の画像を形成する方式である。そのために生産性が高く、マルチパス方式では得られない高い生産性を得ることができる。
【0025】
一方、マルチパス方式(シャトル方式ともいう)とは、1個または複数のインクジェットヘッドを記録媒体上で複数回通過させることによって、目的とする解像度の画像を形成する方法である。マルチパス方式では、記録媒体の上をシャトルの様に往復して印刷する。ポスターなどの大判サイズの印刷する際、画像1枚を印刷するためにかなりの時間がかかり、生産性が低い。さらに、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキでは、記録媒体上のインキを複数回硬化させるために画像がマットになり、良好な画質を得ることができない。
【0026】
ワンパス方式において、印刷速度(記録媒体である基材の搬送速度)は35m/分以上が好ましく、50m/分以上がより好ましく、75m/分以上が更に好ましい。
【0027】
<吐出工程>
インクジェットノズルによる吐出の方式として、例えば、静電力を利用してインク液を吐出させる静電誘引方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインク液に照射して放射圧を利用してインク液を吐出させる音響インクジェット方式、インク液を加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式、等の方式が挙げられる。本発明において、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)が好ましい。
【0028】
本発明において、インクジェットノズルから吐出されるインキ液滴は、0.1〜100pL(ピコリットル;以下同様)が好ましく、0.5〜50pLがより好ましく、1〜20pLが更に好ましい。液滴量が前記範囲内であると、高精細な画像を形成出来る点で有効である。
【0029】
インクジェットヘッドノズルの解像度は90,00dot/inch2(150×600dpi)以上が好ましく、180,000dot/inch2(300×600dpi)以上がより好ましく、360,000dot/inch2(600×600dpi)以上が更に好ましい。なお、dpiとは、2.54cm(1inch)当たりのドット数を表す。
【0030】
特色インキが、オレンジインキ、または、レッドインキである特色インキ(A)である場合は、特色インキ(A)のインクジェットヘッドは、マゼンタインキのインクジェットヘッドと、イエローインキのインクジェットヘッドとの間にあることが好ましく、記録媒体搬送方向上流から順に、マゼンタインキ、特色インキ(A)、イエローインキのインクジェットヘッドが固定されていることがより好ましい。
【0031】
特色インキが、バイオレットインキ、または、ブルーインキである特色インキ(B)である場合は、シアンインキのインクジェットヘッドは、特色インキ(B)のインクジェットヘッドと、マゼンタインキのインクジェットヘッドとの間にあることが好ましく、記録媒体搬送方向上流から順に、特色インキ(B)、シアンインキ、マゼンタインキのインクジェットヘッドが固定されていることがより好ましい。
【0032】
特色インキが、特色インキ(A)および特色インキ(B)を含む場合は、記録媒体搬送方向上流から順に、特色インキ(B)、シアンインキ、マゼンタインキ、オレンジインキ、イエローインキのインクジェットヘッドが固定されていることがより好ましい。
この順でインクジェットヘッドが固定されていることにより、色再現性が優れるだけでなく、インキの粒状感が緩和されるとともに、インクジェット特有のバインディングが目立たなくなり、グロスも優れる。
【0033】
ブラックインキを使用する場合は、ブラックインキのインクジェットヘッドは、記録媒体搬送方向の最下流にあることが好ましい。つまり、記録媒体搬送方向上流から順に、特色インキ(B)、シアンインキ、マゼンタインキ、オレンジインキ、イエローインキ、ブラックインキのインクジェットヘッドが固定されていることがより好ましい一例である。これにより文字の表現やコントラスト表現が優れ、より高精細な画像を得ることができる。
【0034】
ホワイトインキを使用する場合は、ホワイトインキのインクジェットヘッドは、記録媒体搬送方向の最上流にあることが好ましい。つまり、記録媒体搬送方向上流から順に、ホワイトインキ、特色インキ(B)、シアンインキ、マゼンタインキ、オレンジインキ、イエローインキ、ブラックインキのインクジェットヘッドが固定されていることがより好ましい一例である。これにより、透明な記録媒体や、明度が低い記録媒体に対して良好な視認性を有し、鮮明で高精細なフルカラー画像を提供することができる。
【0035】
<活性エネルギー線照射工程>
活性エネルギー線として、電子線、紫外線、赤外線などの被照射体の電子軌道に影響を与え、ラジカル、カチオン、アニオンなどの重合反応を誘発させるエネルギー線であれば、これに限定しない。本発明では、電子線、紫外線、可視光線が好ましく、紫外線がより好ましく用いられる。
【0036】
紫外線の光源としては、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザー、LED、および太陽光を使用することができる。利便性や価格などの面から、発光極大波長が260nm〜450nmの、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、LED等を使用することが好ましい。
【0037】
活性エネルギー線の照射によりエネルギーを付与する場合に、硬化反応に必要なエネルギー量は、重合性モノマーや光重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、100mJ/cm2以上が好ましく、150mJ/cm2以上がより好ましく、200mJ/cm2以上が更に好ましい。
【0038】
本発明の印刷物の製造方法において、特色インキが記録媒体に付着した後活性エネルギー線で照射開始されるまでの時間が、0.03秒〜3秒が好ましく、0.04〜2.5秒がより好ましく、0.6〜2秒が更に好ましい。これにより、特色インキのドット形成が良好になり、他のカラーインキと混色することなく、ガマットが広く、グロスの良好な画像を得ることができる。2色以上の特色インキを用いる場合は、それぞれのインキについて適用することが好ましい。
なお、ここでいう照射は、最初にインキの少なくとも一部を硬化させるための照射であり、後述する仮硬化のための活性エネルギー線照射も含まれる。
【0039】
特色インキが記録媒体に付着した後、LEDなどにより仮硬化することが好ましい。特色インキを仮硬化することで、良好なガマットとグロスを得ることができる。
ここで言う「仮硬化」とは、部分的な硬化を意味し、インキが部分的に硬化しているが完全に硬化していない状態をいい、半硬化ともいう。記録媒体上のインキが仮硬化している場合、硬化の程度は不均一であってもよい。
【0040】
仮硬化におけるエネルギー量は、光重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、
UV−AおよびUV−Vの波長で照射される量が5〜100mJ/cm2程度が好ましい。前記UV−AおよびUV−Vの波長は、310〜450nmであることが好ましい。
【0041】
仮硬化を行う場合、特色インキが記録媒体に付着した後にUV−AおよびUV−V等の活性エネルギー線で照射されるまでの時間が、0.01秒〜3秒が好ましく、0.03〜2.5秒がより好ましく、0.04〜2秒が更に好ましい。
【0042】
本発明は、仮硬化の後に、前述した硬化を行うことで、インキが十分に硬化し、記録媒体への良好な密着性、良好なグロスを得ることができる。
【0043】
本硬化の場合、特色インキが記録媒体に付着した後に活性エネルギー線が照射されるまでの時間は、0.03秒〜3秒が好ましく、0.04〜2.5秒がより好ましく、0.06〜2秒が更に好ましい。
【0044】
従来は、2次色にじみによる色再現性の低減を回避するために、記録媒体に下塗り層等のインキ定着層を形成して色再現性を向上させていたが、本発明では、下塗り層が無い場合においても、色再現性が優れる。
ここで、2次色にじみとは、異なる2色のカラーインキが重なり合った場合に、インキ同士が交じり合い、混色して色がにじむことを言う。
【0045】
なお、本実施形態では、マゼンタインキ、イエローインキ、シアンインキ、特色インキ、ブラックインキ、ホワイトインキの構成を例示したが、必要に応じて、グリーン等のその他特色インキ、ライトシアン、ライトマゼンタ等の淡インキ、濃インキ、透明インキ等を追加してもよい。
【0046】
<カラーインキ>
以下、本発明のインクジェット印刷物の製造方法に用いるカラーインキについて詳細に説明する。カラーインキは、異なる色相を有する複数のインキであり、マゼンタインキ、イエローインキ、シアンインキの3色インキと、特色インキを含む。
【0047】
各インクジェットインキのカラーは、記録媒体上でのCIELAB色空間において定義される色相角H°で表すことができる。
マゼンタインキの色相角H°は、330〜360°、0〜80°が好ましく、0〜80°がより好ましい。
シアンインキの色相角H°は、200〜260°が好ましく、220〜260°がより好ましい。
イエローインキの色相角H°は、80〜110°が好ましく、90〜110がより好ましい。
特色インキ(A)の色相角H°は、0°〜80°が好ましく、0°〜60°がより好ましい。
特色インキ(B)の色相角H°は、260°〜330°であるインキであることが好ましい。
【0048】
色相角∠H°は、∠H°=tan-1(b*/a*)+180(a*<0のとき)、又は、∠H°=tan-1(b*/a*)+360(a*>0かつb*<0のとき)
又は、∠H°=tan-1(b*/a*)(a*>0かつb*≧0の場合)により算出される。a*及びb*は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表し、グレタグ社製SPM100−IIを用いて測定することができる。
【0049】
<インキ組成>
本発明に使用されるインキは重合性モノマー、着色剤を含み、求められる性能に応じて、他の成分を含む。更に光重合開始剤、分散剤、添加剤等を含むことが好ましい。
【0050】
<重合性モノマー>
本発明における重合性モノマーは、後述する光重合開始剤などから発生するラジカルなどの開始種により重合又は架橋反応を生起し、これらを含有する組成物を硬化させる機能を有するものである。
【0051】
重合性モノマー(単に、「モノマー」とも言う。)としては、何らかのエネルギー付与により重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができる。特に、所望により添加される重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起する、ラジカル重合性モノマーとして知られる各種公知の重合性モノマーが好ましい。例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物が好ましい。
【0052】
重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、(メタ)アクリレート基とビニルエーテル基を持つ化合物、アリル化合物、N−ビニル化合物、不飽和カルボン酸類等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリレート基とビニルエーテル基を持つ化合物、N−ビニル化合物のいずれかを含むことが好ましい。
【0053】
ここで、本明細書において、「(メタ)アクリレート」及び、「(メタ)アクリル」、といった記載は、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」及び「アクリロイルおよび/またはメタクリロイル」を意味する。
【0054】
重合性モノマーは、反応速度、硬化膜の物性、インキの物性等を調整する目的で、1種又は複数を混合して用いることができる。また、重合性モノマーは、単官能モノマーであっても、二官能以上の多官能モノマーであってもよい。単官能モノマーの割合が大きいと硬化膜は柔軟なものになりやすく、多官能モノマーの割合が大きいと硬化性に優れる傾向がある。したがって、単官能モノマーと多官能モノマーとの割合は用途に応じて任意に決定されるものである。
【0055】
本発明のインキは、硬化性、硬化膜物性の点から、単官能モノマー及び/または二官能モノマーを含むことが好ましい。単官能モノマー及び/または二官能モノマーは、インキ全重量を基準として30〜99重量%含むことが好ましく、50〜95重量%含むことがより好ましく、60〜90重量%が更に好ましい。
【0056】
重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、(メタ)アクリレート基とビニルエーテル基を持つ化合物、アリル化合物、N−ビニル化合物、不飽和カルボン酸類等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリレート基とビニルエーテル基を持つ化合物、N−ビニル化合物を含むことが好ましい。
【0057】
単官能の(メタ)アクリレート化合物として、
ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールPO変性アクリレート、o−フェニルフェノールEO変性アクリレート、2−エチルヘキシルEO変性アクリレート、β−カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。
低粘度かつ高反応性の点から、2−フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、ラウリルアクリレートが好ましい。
【0058】
単官能のN−ビニル化合物としては、例えば、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド等が挙げられる。低粘度かつ高反応性の点から、N−ビニルカプロラクタムが好ましい。
【0059】
本発明のインキに単官能モノマーを含む場合は、インキ中の重合性モノマー全重量を基準として、1〜90重量%が好ましく、3〜50重量%がより好ましく、5〜40重量%が更に好ましく、5〜20重量%が特に好ましい。この範囲において、硬化シワが抑制され、高い発色性を示す。一方、単官能モノマーが重合性モノマー全重量を基準として、20重量%以下であると、硬化性が良好となり、基材への密着性が良くなる。
【0060】
単官能モノマーを含む場合、環状構造を持たない脂肪族エチレン性重合性化合物を含む場合が好ましい。単官能の環状構造を持たない脂肪族エチレン性重合性化合物は、モノマー全重量を基準として、1〜50重量%が好ましく、5〜40重量%が更に好ましく、5〜20重量%が特に好ましい。
【0061】
単官能の環状構造を持たない脂肪族エチレン性重合性化合物としては、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、イソノニルアクリレート、ステアリルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレートが好ましく、中でも、ラウリルアクリレートを含むことがより好ましい。
【0062】
二官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ(またはプロポキシ)化1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
低粘度かつ高反応性の点から、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレートが好ましく、中でも1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレートが低臭気のためより好ましい。
【0063】
三官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート(例えば、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート等)、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。硬化性の点から、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレートが好ましい。
【0064】
四官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもペンタエリスリトールテトラアクリレートが好ましい。
【0065】
五官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0066】
六官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキシド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
【0067】
(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を持つ化合物(二官能の重合性モノマー)として、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、メタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。低粘度かつ硬化性の点からアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0068】
二官能以上の多官能モノマーを含む場合、インキ中のモノマー全重量を基準として、10〜100重量%が好ましく、50〜95重量%がより好ましく、60〜95重量%がさらに好ましい。
【0069】
三官能以上の多官能モノマーを含む場合、インキ中のモノマー全重量を基準として、1〜20重量%が好ましく、2〜15重量%がより好ましく、5〜10重量%がさらに好ましい。
【0070】
本発明のインキは、EO/PO骨格を有する重合性モノマーを含むことが好ましい。
EO/PO骨格を有する重合性モノマーとして、具体的には、2−フェノキシエチルアクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ネオペンチルグリコール変性)トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、及びアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。硬化性、吐出安定性の点から、2−フェノキシエチルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0071】
EO/PO骨格を有する重合性モノマーは、重合性モノマー中60〜100重量%含有することが、高反応性による印刷速度向上のために好ましい。より好ましくは70〜100重量%、さらに好ましくは80〜98重量%である。この配合量において、反応性が高くなり、塗膜の上下の硬化性を均一にすることができる。これにより、塗膜表面のみが硬化することにより発生する塗膜表面の硬化シワが発生しにくくなるため、好ましい。特に5μm以上の膜厚になるインクジェットインキ塗膜においては、EO/PO骨格を有する重合性モノマーを重合性モノマー中70〜100重量%含有することでシワが抑制され、高い発色性を示すことができる。
【0072】
中でも、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含むことが好ましい。アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルは、粘度が低く、かつ反応性が高い重合性モノマーである。そのため、吐出安定性が良好で、硬化性に優れたマゼンタインキを提供することができる。アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルの含有量は、インキ全重量を基準として、5〜70重量%であることが好ましく、7〜50重量%であることがより好ましく、10〜40重量%が更に好ましい。上記含有量が上記範囲内であれば、インキ組成物の粘度が好適な範囲になる。また、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル以外の重合性モノマーとの重合反応性が向上し、印刷速度が早い場合であっても吐出が安定し、十分な硬化性が得られる。
【0073】
特に、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルと、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートを含む場合は、低粘度、低臭気、高反応性の点から好ましく、硬化シワの低減された発色性の良い印刷物を得ることができる。
アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルと、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートの合計含有量は、インキ全重量を基準として、30〜99重量%が好ましく、40〜95重量%がより好ましく、50〜80重量%が更に好ましい。
【0074】
<光重合開始剤>
本発明のインクジェットインキを活性エネルギー線硬化型で用いる場合には、インキに光重合開始剤を配合することが好ましい。本発明で用いることができる光重合開始剤は、公知の光重合開始剤であってよい。例えば、分子開裂型や水素引き抜き型でラジカルを発生させる光重合開始剤を使用することが好ましい。本発明において、光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ラジカルを発生させる光重合開始剤とカチオンを発生させる光重合開始剤とを併用してもよい。
【0075】
光重合開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製「IRGACURE651」)等のベンジルジメチルケタール系光重合開始剤;
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF社製「IRGACURE184」)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製「DAROCURE1173」)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASF社製「IRGACURE2959」)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(BASF社製「IRGACURE127」)、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)(Lamberti社製、「ESACURE ONE」「ESACURE KIP150」)等のα−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤;
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社製「IRGACURE907」)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(BASF社製「IRGACURE369」)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(BASF社製「IRGACURE379」)等のα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤;
等のアルキルフェノン系光重合開始剤;
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「IRGACURE819」)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社製「IRGACURE TPO」)等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤;
フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(BASF社製「DAROCURE MBF」)等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤;
1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](BASF社製「IRGACUREOXE 01」)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9
H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)(BASF社製「IRGACURE OXE 02」)等のオキシムエステル系光重合開始剤;
ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィド(日本化薬社製「KAYACURE BMS」)、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン(Lamberti社製「ESACURE1001M」)等のベンゾフェノン系光重合開始剤などが挙げられる。
【0076】
中でも、硬化性、保存安定性の点から、
α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤が好ましく、具体的には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、及び2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0077】
硬化性の点から、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とベンゾフェノン系光重合開始剤を含有することが好ましく、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とベンゾフェノン系光重合開始剤とアルキルフェノン系光重合開始剤を含有することがより好ましい。
【0078】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィドを含むことが好ましい。
【0079】
上記光重合開始剤に対する感度を向上させる目的で増感剤を使用してもよい。増感剤の一例として、重合性モノマーと付加反応を起こさないアミン類及びチオキサントン類等が挙げられる。
アミン類の一例として、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、および4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。
チオキサントン類の一例として、例えば、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0080】
硬化性、シワの抑制の点から、上記光重合開始剤に加えて、アミン類を含むことが好ましい。アミン類の中でも、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、及び4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましく、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエートがより好ましい。
【0081】
アミン類として、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン及び、チオキサントン類として、2−イソプロピルチオキサントンが好ましく用いられ、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−イソプロピルチオキサントンがより好ましく用いられる。上記光重合開始剤や増感剤は、インキ組成物中での溶解性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0082】
更には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、及び2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノンからなる群から選択される少なくとも1種の光重合開始剤に加え、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、及び/又は4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種の増感剤を併用することで、紫外線を効率的に吸収し高反応率でラジカルを発生し、塗膜内部まで均一に硬化させることができる。これにより、硬化ムラによる塗膜表面のシワ発生による、発色性劣化を抑制することができる。特に5μm以上の膜厚になるインクジェットインキ塗膜においては、高い発色性を示すことができる。
【0083】
上記光重合開始剤及び増感剤の含有量は、重合性モノマーの全重量に対し、2〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましく、10〜20重量%が更に好ましい。上記光重合開始剤の含有量を2重量%以上とした場合、良好な硬化性を得ることが容易である。一方、上記含有量を20重量%以下にした場合、効率的に硬化速度を早くすることができ、低温度においても光重合開始剤の未溶解成分が発生せず、インクジェットの良好な吐出性を得ることが容易である。
【0084】
<着色剤>
本発明に用いることができる着色剤は特に制限はなく、公知の水溶性染料、油溶性染料及び顔料等から適宜選択して用いることができる。中でも、非水溶性媒体に均一に分散、溶解しやすい油溶性染料、顔料が好ましく、顔料がより好ましい。
【0085】
特色インキ(A)に使用される顔料としては、オレンジ色を呈する顔料又はレッド色を呈する顔料が挙げられる。
例えば、C.I.ピグメントオレンジ5、13、34、38、43、61、62及び64並びにC.I.ピグメントレッド17、49:2、112、149、166、177、178、188、242、255及び264からなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0086】
中でも、C.I.ピグメントオレンジ13、34、38、61、64が好ましい。これら顔料は、黄−赤領域におけるPantoneカラーを広く再現し、優れたガマット(Gamut)を得ることが出来る。
更に、インキの保存安定性やインクジェット吐出安定性、色再現性の点から、C.I.ピグメントオレンジ64を含むことが好ましい。C.I.ピグメントオレンジ64を含む特色インキ(A)は、シアンインキ、イエローインキ、マゼンタインキと共に使用した際に、Pantone Red領域の主要カラーであるRobin RED、RED32、Warm RED、Orange21を全てカバーするとともに、硬化膜にグロスが出やすく、良好な画質を得ることが出来る。
【0087】
特色インキ(A)に含まれる顔料のうち、C.I.ピグメントオレンジ64は、全オレンジ顔料の50重量%以上含むことが好ましく、60重量%以上がより好ましく、70重量%以上含むことが特に好ましい。
【0088】
特色インキ(A)に含まれる顔料は、インキ中0.1〜10重量%含むことが好ましく、2重量%〜10重量%であることがより好ましく、3〜7重量%が更に好ましい。
【0089】
特色インキ(A)は、前記オレンジ色を呈する顔料又はレッド色を呈する顔料に加えて、マゼンタ色を呈するキナクリドン顔料を含むことが好ましい。具体的にはC.I.ピグメントレッド122,202,209及びC.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。これらのうち、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19が好ましい。これにより、活性エネルギー線の透過効率が良くなり、前記オレンジ色を呈する顔料又はレッド色を呈する顔料単体のときに比べ、硬化性が高まる。
【0090】
特色インキ(A)にマゼンタ色を呈するキナクリドン顔料を含む場合は、特色インキ(A)に含まれる全顔料100重量%に対して、マゼンタ色を呈するキナクリドン顔料を1〜50重量%含むことが好ましく、10〜45重量%であることがより好ましく、15〜40重量%であることが更に好ましい。これにより、レッド領域の色再現性が高くなる。
【0091】
特色インキ(B)に含まれる顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット1、3、23、27、32、37、C.I.ピグメントブルー15:6からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0092】
これらのうち、インキ安定性やインクジェット吐出安定性、色再現性の点から、C.I.ピグメントバイオレット23又はC.I.ピグメントブルー15:6を含むことが好ましい。中でもC.I.ピグメントバイオレット23を含む場合、青―紫領域におけるPantoneカラーを広く再現するため、より好ましい。
【0093】
特色インキ(B)に含まれる顔料は、インキ中0.1〜10重量%であることが好ましく、2〜10重量%であることがより好ましい。
【0094】
特色インキ(B)に含まれる顔料のうち、C.I.ピグメントバイオレット23又はC.I.ピグメントブルー15:6は、特色インキ(B)に含まれる全顔料に対して50重量%以上含むことが好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上含むことが特に好ましい。
【0095】
マゼンタインキに含まれるマゼンタ色を呈する顔料としては、たとえば、C.I.ピグメントレッド5,7,12,48(Ca),48(Mn),57(Ca),57:1,112,122,123,168,147、150、176、184,202,209、266、269;C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。
【0096】
ブルー領域またはレッド領域の色再現性、インキ保存安定性の点から、C.I.ピグメントレッド122,202,209及びC.I.ピグメントバイオレット19から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。一方、発色性、耐光性の点から、C.I.ピグメントレッド147、150、176、266、および、269から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。特にC.I.ピグメントレッド266を含む場合、紫外線の透過効率が良くなり、硬化性が高まり、基材への密着性も良い。
【0097】
マゼンタインキに含まれる顔料の含有量は、インキ全重量を基準として、0.1〜10重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましく、2〜7重量%が更に好ましい。
【0098】
イエローインキに含まれる顔料としては、イエロー色を呈するアゾ顔料、アゾメチン顔料もしくはイソインドリン顔料が好ましく、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、128、129、138、139、147、150、151、154、155、180、185等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。
【0099】
アゾ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、73、74、97、98等のモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、16、17、55、83、87、114等のジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー93、95、128等のポリアゾ(縮合アゾ)顔料、C.I.ピグメントイエロー150、153等のニッケルアゾイエロー顔料、C.I.ピグメントイエロー151、154、180等のベンズイミダゾロン骨格を有するアゾ顔料;
アゾメチン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー129及び、C.I.ピグメントイエロー109、110等のイソインドリノン顔料;
イソインドリン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー139、185等が挙げられる。
【0100】
発色性、耐光性の点から、ベンズイミダゾロン顔料もしくはイソインドリン顔料が更に好ましく、ベンズイミダゾロン顔料としてC.I.ピグメントイエロー150、151、180、イソインドリン顔料としてC.I.ピグメントイエロー185が好ましい。特に、C.I.ピグメントイエロー150、151、180及び185を含むイエローインキは、本発明の印刷方法によって、赤色領域の色再現性に優れるため好ましい。
【0101】
イエローインキに含まれる顔料は、インキ中0.1〜10重量%含むことが好ましく、1重量%〜10重量%であることがより好ましく、2重量%〜10重量%であることが更に好ましい。
【0102】
イエローインキに含まれる顔料のうち、C.I.ピグメントイエロー150、151、180及び185は、全顔料の50重量%以上含むことが好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上含むことが特に好ましい。特に、C.I.ピグメントイエロー180又は185は、全顔料の50重量%以上含むことが好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上含むことが特に好ましい。
【0103】
求められる耐候性や発色性など必要に応じて一般的に使用されるイエロー顔料を混合して使用することができる。
【0104】
シアンインキに含まれる顔料としては、青色又はシアン色を呈する顔料が好ましく、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60、C.I.バットブルー4、60等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。これらのうち、フタロシアニン顔料が好ましく、特にC.I.ピグメントブルー15:3及び/又は15:4を含むことが好ましい。
【0105】
シアンインキに含まれる青色又はシアン色を呈する顔料は、インキ中0.1〜10重量%含むことが好ましく、1重量%〜10重量%であることがより好ましく、2重量%〜10重量%であることが更に好ましい。シアンインキに含まれる全顔料中、C.I.ピグメントブルー15:3及び/又は15:4は、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、99重量%が特に好ましい。
【0106】
シアンインキには、前記青色又はシアン色を呈する顔料に加えて、イエロー色またはグリーン色を呈する顔料を含んで色相を調整しても良い。シアンインキに含まれるイエロー色またはグリーン色を呈する顔料としては、たとえば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、128、129、138、139、147、150、151、154、155、180、185、C.I.ピグメントグリーン7、36、58等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。これらのうち、C.I.ピグメントイエロー150、180、185、C.I.ピグメントグリーン7が好ましい。
【0107】
シアンインキに含まれるイエロー色またはグリーン色を呈する顔料の含有量は、シアンインキに含まれる全顔料中0.01〜10重量%であることが好ましく、0.01〜1重量%であることがより好ましい。シアンインキに、イエロー色またはグリーン色を呈する顔料を含むことにより、グリーン領域の色再現性が高くなる。
【0108】
カラーインキに含まれる顔料の粒径は、レーザー回折法で測定したD50が、50〜500nmであることが好ましく、100〜400nmであることがより好ましい。(ただし、d50は、この粒子径以下の粒子数が全粒子数の50%であることを意味する粒子径を表わす。)この粒径分布であると、発色性、インキの保存安定性、吐出性が優れる。粒径は、インキを酢酸エチルで200〜1000倍に希釈し、動的光散乱式粒度分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックUPA150」)にて測定した値である。
【0109】
本発明は、上記カラーインキに加え、更に、ブラックインキを使用することが好ましい。ラックインキを使用することで、文字の表現やコントラスト表現が優れ、より高精細な画像を得ることができる。
【0110】
ブラックインキに含まれる顔料としては、カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)、チタンブラック、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等が挙げられ、インキ安定性、発色性の点から、カーボンブラックが好ましい。
【0111】
ブラックインキに含まれる顔料の含有量は、インキ全重量を基準として、0.1〜10重量%であることが好ましく、2〜10重量%であることがより好ましい。
【0112】
本発明は、上記カラーインキに加え、ホワイトインキを使用することが好ましい。ホワイトインキを使用することで、透明な記録媒体や、明度が低い記録媒体に対して良好な視認性を有し、特にカラーインキと併用することで、白色媒体に記録する時と同様な鮮明で高精細なフルカラー画像を提供することができる。
【0113】
ホワイトインキに含まれる顔料としては、無機または有機の白色顔料を用いることができる。無機の白色顔料としては、例えば、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等があげられる。隠蔽性や着色力の点から酸化チタンが好ましい。
【0114】
ホワイト顔料の平均粒径は、50〜500nmであることが好ましく、100〜300nmであることがより好ましい。50nm以上では十分な隠蔽性が得られ、500nm以下では、インキ保存性や吐出性を保つことが出来る。なお、ホワイト顔料の平均粒径はD50であり、インキを酢酸エチルで200〜1000倍に希釈し、動的光散乱式粒度分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックUPA150」)にて測定した値である。
【0115】
ホワイトインキに含まれる顔料の含有量は、ホワイトインキ全重量を基準として、3〜50質量%であることが好ましく、5〜20質量%でありことがより好ましい。
【0116】
本発明は、求められる用途や画質に応じて、インキ中の顔料濃度が低いライトイエロー、ライトマゼンタ、ライトシアンなどの淡色インキ等も使用することができる。このとき、淡色インキに使用する原料は、前記顔料を使用することが出来る。
【0117】
<分散剤>
着色剤の分散性およびインキの保存安定性を向上させるために、分散剤(顔料分散樹脂とも言う)を添加することが好ましい。分散剤としては、顔料分散樹脂として従来既知のものを使用することできる。中でも、塩基性官能基を有する塩基性分散剤が好ましく、ウレタン骨格をもつ樹脂型分散剤または、アクリルブロック共重合体の塩基性分散剤がより好ましい。これら分散剤を使用した場合、保存安定性に優れ、インクジェット吐出の高周波数特性に優れるため好ましい。
【0118】
塩基性分散剤の具体例として、ルーブリゾール社製のソルスパース32000、76400、76500、J100、J180;ビックケミー社性製のDisperbyk−161、162、163、164、165、166、167、168、2001、2008、2009、2022、2025、2050等;BASF社製のEFKAPX4701、エボニックデグサ社製のTEGO Disper685等が挙げられる。
【0119】
分散剤の重量平均分子量(以下Mw)は、5,000〜100,000が好ましく、10,000〜50,000がより好ましく、15,000〜30,000が更に好ましい。前記範囲であれば、分散剤の相溶性が良好のため着色剤の分散安定性が向上する。また、分散剤によるインキ塗膜のグロス低下が抑制され、発色性が良好になる。
【0120】
「Mw」は、一般的なゲルパーミッションクロマトグラフィー(以下GPC)によりスチレン換算分子量として求めることができる。例えば、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC−8320GPC)で、展開溶媒にDMFを用いたときのポリスチレン換算分子量で示すことができる。なお、高分子分散剤の重量平均分子量としてカタログ値がある場合は、カタログ値を採用することもできる。
【0121】
分散剤のアミン価は5〜50mgKOH/gが好ましく、10〜50がより好ましく、20〜45が更に好ましい。分散剤の酸価は5〜25mgKOH/gが好ましく、5〜20がより好ましい。分散剤の酸価、アミン価が上記の範囲内である場合、インキの保存安定性が良好になり、印刷時のインキ混色部分の彩度が優れ、色再現性にも優れる。
【0122】
「アミン価」とは、分散剤固形1gあたりのアミン価を表し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法によって求めた後、水酸化カリウムの当量に換算した値をいう。
「酸価」とは、分散剤固形分1gあたりの酸価を表し、JIS K 0070に準じ、電位差滴定法によって求めることが出来る。
【0123】
本発明で用いられる分散剤は、保存安定性、インクジェット吐出安定性の点から、Mwが10,000〜50,000で、かつ、アミン価が5〜50mgKOH/gである顔料分散剤がより好ましい。
【0124】
分散剤の添加量は、インキの長期保存安定性、吐出性の点から、着色剤100重量%に対して分散剤を25〜150重量%が好ましく、30〜140重量%がより好ましく、40〜100重量%が更に好ましい。酸化チタン等のホワイト顔料を分散する場合は、ホワイト顔料100重量%に対して分散剤を1〜100重量%が好ましく、2〜60重量%がより好ましく、3〜50重量%が更に好ましい。
【0125】
<その他の成分>
本発明に用いるインクジェットインキには、上記の成分以外に、重合禁止剤、溶剤、表面調整剤、及びその他の添加剤を目的に応じて併用することができる。
【0126】
<重合禁止剤>
インキの経時での粘度安定性、経時後の吐出安定性、インクジェット記録装置内での粘度安定性を高めるため、重合禁止剤を使用することができる。重合禁止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、フェノチアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物が特に好適に使用される。具体的には、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、フェノチアジン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩などが挙げられる。硬化性を維持しつつ経時安定性を高める点から、インキ組成物全体に対して0.01〜2重量%が好ましく、0.1〜1重量%がより好ましい。
【0127】
<溶剤>
溶剤は、インキの低粘度化、基材への濡れ広がり性を向上させるために、有機溶剤を含有させてもよい。有機溶剤を含む場合、インキ全重中0.01〜30重量%が好ましく、0.1〜20重量%がより好ましく、0.2〜10重量%が更に好ましい。
【0128】
溶剤は、重合性モノマーとの相溶性の点から、非水溶性の液体であって水性溶媒を含有しないことが好ましい。乾燥性及び基材への濡れ広がり性の点から、沸点が140〜300℃の有機溶剤が好ましい。
【0129】
有機溶剤として、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート類、アルキレングリコールジアセテート類、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルカンジオール類、アルキレングリコールジアルキルエーテル類、ラクタム類、ラクトン類、その他含窒素系溶剤、含酸素系溶剤が挙げられる。
【0130】
中でも、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なかでも、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましく、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルがより好ましい。
【0131】
<表面調整剤>
本発明において、インキには、記録媒体に対する濡れ性の向上及びハジキの防止を目的として表面調整剤を添加することが好ましい。表面調整剤として、例えば、シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、アセチレングリコール系表面調整剤等が挙げられる。表面張力低下の能力、重合性モノマーとの相溶性との観点から、シリコーン系表面調製剤を使用することが好ましい。
【0132】
シリコーン系表面調整剤として、例えば、ジメチルシロキサン骨格の変性体が挙げられ、中でも、ポリエーテル変性シロキサン系表面調整剤が好ましい。ポリエーテルとは例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドをいう。一般的な製品としては、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤として販売されているものが挙げられ、例えば、ビックケミー社より代表品としてBYK(登録商標)−378、348、349等のポリエーテル変性シロキサン; BYK―UV3500、UV3510等のポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン; エボニックデグサ社より、TEGO(登録商標) GLIDE 450、440、435、432、410、406、130、110、100等のポリエーテル変性シロキサンコポリマー;
を好ましく使用できる。これらの中でも、良好な画質形成の観点から、BYK−378、348、UV3510、TEGO GLIDE 450、440、432、410等のポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤が好ましい。
【0133】
シリコーン系表面調整剤の含有量は、インキ中0.1〜5.0重量%が好ましい。含有量を0.1重量%以上にすることにより、インキの基材への濡れ性を容易に向上できる。一方、含有量を5.0重量%以下にすることより、インキの保存安定性、吐出安定性を確保することが容易となる。
【0134】
<インキの物性>
各インキは、25℃での粘度が5〜25mPa・sであることが好ましく、10〜20mPa・sであることがより好ましい。5mPa・s以上では、吐出が良好である。20mPa・s以下だと、吐出精度が低下することがなく、画質の低下が少ない。さらに高速印刷に対応するための高周波数適性を持たせるためには8〜14mPa・sが好ましい。粘度の測定は、東機産業社製 TVE25L型粘度計を用いて、25℃環境下で、50rpm時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
【0135】
吐出安定性、着弾後のドット形成の信頼性とのバランスの観点から、25℃における表面張力が20mN/m以上50mN/m以下であることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。表面張力の測定は、協和界面科学社製の自動表面張力計CBVP−Zを用いて、25℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0136】
<インキの製造方法>
本発明のインキは公知の方法によって製造することができるが、具体的には、以下のように行われる。まず始めに、単一もしくは複数の重合性モノマー、着色剤、分散剤等を混合した後、ペイントシェーカー、サンドミル、ロールミル、メディアレス分散機等によって着色剤を分散することで分散体を調整する。得られた分散体に、所望のインキ特性を有するように、重合性モノマーの残部、光重合開始剤、その他添加剤(たとえば表面調整剤、重合禁止剤、バインダー樹脂等)を添加することで得られる。
【0137】
着色剤分散体には、着色剤を分散体全体に対して3〜50重量%含むことが好ましく、5〜40重量%がより好ましく、10〜30重量%が特に好ましい。
【0138】
着色剤分散体の製造において、分散溶媒として、単官能(メタ)アクリレートモノマー及び/又は2官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
着色剤分散体の安定性、粘度の点から、EO/PO骨格を有する重合性モノマーを含むことが好ましい。中でも、保存安定性の点から、2−フェノキシエチルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、2−フェノキシエチルアクリレートまたはジプロピレングリコールジアクリレートを含むことがより好ましい。
【0139】
<記録媒体>
本発明において、記録媒体は、任意に選択可能であり、公知の記録媒体を使用することが出来る。本発明の効果が顕著に奏される点から、非吸収性または難吸収性の記録媒体が好ましい。
非吸収性または難吸収性の記録媒体としては、例えば、OPP(Oriented Polypropylene Film)、CPP(Casted Polypropylene Film)、PE(polyethylene)、PET(Polyethylene terephthalate)、PP(Polypropylene)、PVC(polyvinyl chloride)、ポリカーボネート等からなるプラスチック基材、コート紙、アート紙、ラミネート紙等の紙基材、ガラス、金属等が挙げられる。特に本発明では前記プラスチック基材、紙基材が好ましい。また本発明においては、機能付加の目的で、これら材質を複数組み合わせて複合化した被記録媒体も使用できる。
【実施例】
【0140】
以下に、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。特に断らない限り、部は重量部を、%は重量%を表す。
【0141】
1.インキの作製
インキ作製に先立ち、顔料分散体を作製した。顔料15部、顔料分散剤7.5部、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)77.5部をハイスピードミキサーで均一になるまで撹拌した後、得られたミルベースを横型サンドミルで約1時間分散することによって、表1〜3に記載したように、各色の顔料分散体を作製した。
表1〜4に記載した配合となるように、先に調整した顔料分散体に、重合性モノマー、光重合開始剤、重合禁止剤、表面調整剤、及び有機溶剤を順次撹拌しながらゆっくり加え、光重合開始剤が溶解するまで穏やかに混合させた。次いで、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行い、粗大粒子を除去することで、評価用のインクジェットインキを得た。なお、上記混合液を得るための原料の添加及び混合は順不同であってよい。
【0142】
【表1】
【0143】
【表2】
【0144】
【表3】
【0145】
【表4】
【0146】
各実験例において使用した材料の詳細は以下のとおりである。
<顔料>
・特色(A)顔料:
PO64(C.I.ピグメントオレンジ64)、 PO34(C.I.ピグメント オレンジ34)、 PO38(C.I.ピグメントオレンジ38)、 PO61( C.I.ピグメントオレンジ61)、 PO13(C.I.ピグメントオレンジ1 3)、 PR166(C.I.ピグメントレッド166)、 PR242(C.I .ピグメントレッド242)、 PO16(C.I.ピグメントオレンジ16)
・特色(B)顔料:
PV23(C.I.ピグメントバイオレット23)、 PB15:6(C.I.ピ グメントブルー15:6)、 PV32(C.I.ピグメントバイオレット32)
・マゼンタ顔料:
PR266(C.I.ピグメントレッド266)、 PR122(C.I.ピグメ ントレッド122)、 PR146(C.I.ピグメントレッド146)、 PR 147(C.I.ピグメントレッド147)、PR150(C.I.ピグメントレ ッド150)、 PV19(C.I.ピグメントバイオレット19)、 PR81 :1(C.I.ピグメントレッド81:1)、 PR169(C.I.ピグメント レッド169)、 PR48:1(C.I.ピグメントレッド48:1)
・イエロー顔料:
PY185(C.I.ピグメントイエロー185)、 PY150(C.I.ピグ メントイエロー150)、 PY180(C.I.ピグメントイエロー180)、 PY83(C.I.ピグメントイエロー83)、 PY74(C.I.ピグメン トイエロー74)
・シアン顔料: PB15:3(C.I.ピグメントブルー15:3)、 PB1 5:4(C.I.ピグメントブルー15:4)
・ブラック顔料: PB7(C.I.ピグメントブラック7)
・グリーン顔料: PG7(C.I.ピグメントグリーン7)
<顔料分散剤>
・SP32000(ルーブリゾール社製、塩基性顔料分散樹脂「ソルスパース320 00」)
<重合性モノマー>
・DPGDA: ジプロピレングリコールジアクリレート
・VEEA: アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒社製)
・TPO: 2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイ ド(BASF社製「Darocur TPO」)
・IRG369: 2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェ ニル)−ブタノン−1(BASF社製「イルガキュア369」)
・IRG379: 2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4− モルホリノフェニル)−1−ブタノン(BASF社製「IRGACURE379」 )
・IRG819: ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフ ィンオキサイド(BASF社製「IRGACURE 819」)
・BMS: 4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド(日本化薬社製 、「KAYACURE BMS」)
・EDB: エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート(Lambson社製「 SPEEDCURE EDB」)
・IRG184: 1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「 Irgacure 184」)
<重合禁止剤>
・BHT: 2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(精工化学社製 「BHTスワノックス」)
・フェノチアジン: 精工化学社製「フェノチアジン」
<その他添加剤>
・UV3510: BYK Chemie社製シリコーン系表面張力調整剤「BYK −UV3510」
【0147】
2.印刷物の作製
作製した評価インキを使用し、以下のように印刷物を製造した。
京セラヘッド(解像度600dpi×600dpi)を搭載したインクジェット吐出装置(トライテック社製 OnePassJET)により、インキ液滴量14plの印字条件で、リンテック社製基材PET K2411上へ、各色のグラデーション画像の掛け合わせ(カラーパッチ)を印刷した。本硬化の光源として、GEW社製240W/cmメタルハライドランプを用い、積算光量200mJ/cm2の条件でサンプルを作成した。また、仮硬化を行う場合は、LEDランプ(Phoseon Fire Power 395nm)を持いた。なお、印刷速度は50m/minを用いた。
表5〜表7にカラーインキのセットを示す。表の左から順に、記録媒体搬送方向上流からヘッドが固定されていることを示している。例えば実施例1は、記録媒体搬送方向上流から順に、シアンインキ、マゼンタインキ、特色インキ(A)、イエローインキ、ブラックインキの順でヘッドが固定されていることを示している。
得られた印刷物の色再現性(ガマット評価)、画質、グロスを評価した。
【0148】
【表5】
【0149】
【表6】
【0150】
【表7】
【0151】
3.印刷物の評価
<色再現性>
得られた印刷物の色度(a*、b*)を測定し、Pantone色見本帳のデータ(PANTONE FORMULA GUIDE SOLID COATED)と比較し、下記基準に従い評価した。印刷画像データは、均等に割り付けた全950色のカラーパッチデータである。ここで、色度(a*、b*)は、X−Rite,Inc.製のX−Rite Eye Oneで測定した。なお測定条件は、視野角2°、光源D50、CIE表色系を用いた。
Pantoneの色相に対して、ΔE≦5を満たす確率を計算して以下のとおりに
評価した。○以上を色再現性良好とする。
◎: 90%以上
〇: 85%以上、90%未満
△: 80%以上、85%未満
×: 80%未満
表5では色相角0〜90°のPantoneの再現率を評価し、表6では色相角270〜360°のPantoneの再現率を評価し、表7では全域での再現率を評価した。
【0152】
<画質>
評価インキのISO標準の人物画像を印刷し、印刷物の全体の粒状感やにじみ、バンディングの程度から、印刷物の画質を評価した。評価基準は以下の通りであり、○以上を画質良好とする。
◎: 印刷物の粒状感やにじみ、バンディングがほとんどない
〇: わずかに粒状感やにじみ、バンディングがある
△: やや粒状感やにじみ、バンディングがある
×: 粒状感やにじみ、バンディングがある
【0153】
<グロス>
評価インキの全色掛け合わせたグラデーション画像のうち、OD値が2.3になる部分の60°グロスをBYK Gardner社製グロスメータ(Micro−TRI−Gloss)で測定した。ここで、OD値の評価には、X−Rite,Inc.製のX−Rite Eye Oneで測定した。評価基準は以下の通りであり、○以上を良好とする。
◎: 60°グロスが70以上
〇: 60°グロスが60以上70未満
△: 60°グロスが50以上60未満
×: 60°グロスが50未満