(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粘度平均分子量10,000〜30,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、少なくとも1種類の安定剤(B)を0.01〜0.5質量部及び色相改良剤(C)を0.05〜2質量部含むポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、射出シリンダーの少なくとも1箇所にベントが設けられている射出成形機で成形して芳香族ポリカーボネート樹脂成形品を製造する方法であって、
該ペレットの水分量が200ppm以上であり、
該ペレットを、該射出成形機に飢餓状態で供給すると共に、
該ベント及び該射出成形機へのペレット供給部の一方に不活性ガスを供給し、かつ他方に不活性ガスを供給するか或いは減圧しながら射出成形することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂成形品の製造方法。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が13,000〜25,000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂成形品の製造方法。
前記安定剤(B)が、スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤と、スピロ環骨格を有さないホスファイト系安定剤とを含み、前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の該スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤の含有量が、該スピロ環骨格を有さないホスファイト系安定剤の含有量よりも少ないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂成形品の製造方法。
前記色相改良剤(C)が、脂肪酸エステル及び/又はポリアルキレングリコール化合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂成形品の製造方法。
前記分岐型ポリアルキレングリコール化合物がポリプロピレングリコール(ポリ(2−メチル)エチレングリコール)および/又はポリブチレングリコール(ポリ(2−エチル)エチレングリコール)であることを特徴とする請求項6に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂成形品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0025】
[芳香族ポリカーボネート樹脂組成物]
まず、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂成形品の製造方法において、成形材料として用いる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(以下「本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物」と称す場合がある。)について説明する。
【0026】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、粘度平均分子量10,000〜30,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、少なくとも1種類の安定剤(B)を0.01〜0.5質量部、及び色相改良剤(C)を0.05〜2重量部含むものである。
【0027】
<芳香族ポリカーボネート樹脂(A)>
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、芳香族ヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸のジエステルとを反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート重合体である。上記芳香族ポリカーボネート重合体は分岐を有していてもよい。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等の従来法によることができる。
【0028】
芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的なものとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。
【0029】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物の中では、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0030】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を製造する際に、上記芳香族ジヒドロキシ化合物に加えてさらに分子中に3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール等を少量添加してもよい。この場合、上記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は分岐を有するものになる。
【0031】
上記3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノールとしては、例えばフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等が挙げられる。この中でも、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシルフェニル)エタン又は1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンが好ましい。上記多価フェノールの使用量は、上記芳香族ジヒドロキシ化合物を基準(100モル%)として好ましくは0.01〜10モル%となる量であり、より好ましくは0.1〜2モル%となる量である。
【0032】
エステル交換法による重合においては、ホスゲンの代わりに炭酸ジエステルがモノマーとして使用される。炭酸ジエステルの代表的な例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等に代表される置換ジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種類を単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、ジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。
【0033】
また上記の炭酸ジエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル及びイソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで炭酸ジエステルの一部を置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
【0034】
エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、触媒が使用される。触媒種に制限はないが、一般的にはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が使用される。中でもアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が特に好ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。エステル交換法では、上記触媒をp−トルエンスルホン酸エステル等で失活させることが一般的である。
【0035】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)には、難燃性等を付与する目的で、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーを共重合させることができる。
【0036】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、10,000〜30,000である。芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が10,000未満である場合、得られる成形品の機械的強度が不足し、十分な機械的強度を有するものを得ることができない場合がある。また、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が30,000を超える場合、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度が大きくなるため、例えば芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形して導光部材等の長尺状の成形品を製造する際に優れた流動性を得ることができず、また、樹脂の剪断による発熱量が大きくなり、熱分解により樹脂が劣化する結果、優れた色相を有する成形品を得ることができない場合がある。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、好ましくは12,000〜30,000であり、より好ましくは13,000〜25,000、特に好ましくは13,000〜20,000である。
【0037】
ここで粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、20℃の温度で測定した溶液粘度より換算して求めたものである。
【0038】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量の異なる2種以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合したものであってもよく、また粘度平均分子量が上記範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して上記粘度平均分子量の範囲内としたものであってもよい。
【0039】
<安定剤(B)>
安定剤(B)としては、リン系安定剤が好ましく、特に本発明においては、スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(以下「第1ホスファイト系安定剤」と称す場合がある。)と、スピロ環骨格を有さないホスファイト系安定剤(以下「第2ホスファイト系安定剤」と称す場合がある。)とを併用することが、黄変抑制の観点から好ましい。
【0040】
第1ホスファイト系安定剤としては、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
【0042】
(上記一般式(1)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル基、又は炭素数6〜30のアリール基を表す。)
【0043】
上記一般式(1)中、炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。炭素数6〜30のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0044】
上記スピロ環骨格を有する第1ホスファイト系安定剤としては、例えばジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。この中ではジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが特に好ましく用いられる。
これらの第1ホスファイト系安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
第2ホスファイト系安定剤は、スピロ環骨格を有さないホスファイト系安定剤であればよく、特に制限はないが、例えばトリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等のトリアリールフォスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス (4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト等の二価フェノール類を含み環状構造を有するトリアリールフォスファイト等が挙げられる。
これらの第2ホスファイト系安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
上記スピロ環骨格を有さない第2ホスファイト系安定剤の中でも、下記一般式(2)で表されるホスファイト系安定剤が好ましい。
【0048】
(上記一般式(2)中、R
13〜R
17はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0049】
上記の一般式(2)中、R
13〜R
17で表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。R
13〜R
17で表されるアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0050】
安定剤(B)として、上記のスピロ環骨格を有する第1ホスファイト系安定剤と、スピロ環骨格を有さない第2ホスファイト系安定剤とを併用する場合、第1ホスファイト系安定剤を第2ホスファイト系安定剤より少なく用いることが、特に熱エージング時の黄変抑制の観点から好ましく、第1ホスファイト系安定剤及び第2ホスファイト系安定剤の合計に占める第1ホスファイト系安定剤の配合率は、好ましくは3〜30質量%であり、より好ましくは5〜25質量%である。
【0051】
また、安定剤(B)100質量%における第1ホスファイト系安定剤及び第2ホスファイト系安定剤の合計の含有率は、50〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0052】
なお、安定剤(B)100質量%における第1ホスファイト系安定剤及び第2ホスファイト系安定剤の合計の含有率が100質量%未満である場合、安定剤(B)は、上記ホスファイト系安定剤のほかに、ホスホナイト系安定剤、ホスフェート系安定剤等の他のリン系安定剤を含有していてもよい。
【0053】
ホスホナイト系安定剤としては、例えばテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。
【0054】
ホスフェート系安定剤としては、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
これらの他のリン系安定剤についても、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、安定剤(B)の配合割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜0.5質量部である。安定剤(B)の配合割合が0.01質量部未満である場合、黄変を十分に抑制することができず、良好な色相を得ることができない。一方、安定剤(B)の配合割合が0.5質量部を超える場合は、成形時のガスが多くなったり、モールドデポジットによる転写不良が起こったりするため、得られる成形品の透明性が低下する。安定剤(B)の配合割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.03〜0.4質量部であり、より好ましくは0.05〜0.3質量部である。
【0056】
<色相改良剤(C)>
色相改良剤(C)としては、これを配合することにより、得られる成形品の色相を良好なものとすることができるものであればよく、特に制限されるものではないが、代表的な色相改良剤(C)として、脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール化合物が挙げられる。なお、色相改良剤(C)としては、脂肪酸エステルの1種又は2種以上を用いてもよく、ポリアルキレングリコール化合物の1種又は2種以上を用いてもよく、脂肪酸エステルの1種又は2種以上と、ポリアルキレングリコール化合物の1種又は2種以上とを併用してもよい。
【0057】
<脂肪酸エステル>
脂肪酸エステルは脂肪族カルボン酸とアルコールとの縮合化合物である。
【0058】
脂肪酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の、脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸及びトリカルボン酸が挙げられる。ここで、脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。脂肪族カルボン酸としては、炭素数6〜36のモノカルボン酸又はジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸及びアゼライン酸などが挙げられる。
【0059】
一方、上記アルコールとしては、飽和又は不飽和の、一価アルコール及び多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらのアルコールの中でも、炭素数30以下の一価又は多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコール又は多価アルコールがさらに好ましい。ここで、脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
【0060】
上記アルコールとしては、例えばオクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0061】
上記脂肪酸エステルとしては、例えば蜜ロウ(ミリスチルパルミテートを主成分とする混合物)、硬化油、ブチルステアレート、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、ステアリルステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0062】
中でも、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート等の脂肪酸モノグリセリドを用いることが好ましい。この場合、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造する際、押出機内のバレル及びスクリュー表面と樹脂との摩擦を低下させ、加工時のポリカーボネート樹脂の温度上昇を防ぐことができるため、得られる成形品の色相を特に優れたものとするとともに黄変をより高度に抑制することができるようになる。
【0063】
<ポリアルキレングリコール化合物>
ポリアルキレングリコール化合物としては、下記一般式(I)で表される直鎖アルキレンエーテル単位(P1)と下記一般式(II−1)〜(II−4)で表される単位から選ばれる分岐アルキレンエーテル単位(P2)を有するポリアルキレングリコール共重合体(CP)が好ましいものとして挙げられる。
【0065】
(式(I)中、nは3〜6の整数を示す。)
【0067】
(式(II−1)〜(II−4)中、R
1〜R
10は各々独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、それぞれの式(II−1)〜(II−4)においてR
1〜R
10の少なくとも1つは炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0068】
上記一般式(I)で示される直鎖アルキレンエーテル単位(P1)としては、それをグリコールとして記載すると、nが3であるトリメチレングリコール、nが4であるテトラメチレングリコール、nが5のペンタメチレングリコール、nが6のヘキサメチレングリコールが挙げられ、好ましくはトリメチレングリコール、テトラメチレングリコールであり、テトラメチレングリコールが特に好ましい。
【0069】
トリメチレングリコールは、工業的にはエチレンオキシドのヒドロホルミル化により3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを得、これを水添する方法、又はアクロレインを水和して得た3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドをNi触媒で水素化する方法で製造される。また、最近ではバイオ法により、グリセリン、グルコース、澱粉等を微生物に還元させてトリメチレングリコールを製造することが行われている。
【0070】
上記一般式(II−1)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2−メチル)エチレングリコール、(2−エチル)エチレングリコール、(2,2−ジメチル)エチレングリコールなどが挙げられ、好ましくは(2−メチル)エチレングリコールである。
【0071】
上記一般式(II−2)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2−メチル)トリメチレングリコール、(3−メチル)トリメチレングリコール、(2−エチル)トリメチレングリコール、(3−エチル)トリエチレングリコール、(2,2−ジメチル)トリメチレングリコール、(2,2−メチルエチル)トリメチレングリコール、(2,2−ジエチル)トリメチレングリコール(即ち、ネオペンチルグリコール)、(3,3−ジメチル)トリメチレングリコール、(3,3−メチルエチル)トリメチレングリコール、(3,3−ジエチル)トリメチレングリコールなどが挙げられる。
【0072】
上記一般式(II−3)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3−メチル)テトラメチレングリコール、(4−メチル)テトラメチレングリコール、(3−エチル)テトラメチレングリコール、(4−エチル)テトラメチレングリコール、(3,3−ジメチル)テトラメチレングリコール、(3,3−メチルエチル)テトラメチレングリコール、(3,3−ジエチル)テトラメチレングリコール、(4,4−ジメチル)テトラメチレングリコール、(4,4−メチルエチル)テトラメチレングリコール、(4,4−ジエチル)テトラメチレングリコールなどが挙げられ、(3−メチル)テトラメチレングリコールが好ましい。
【0073】
上記一般式(II−4)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3−メチル)ペンタメチレングリコール、(4−メチル)ペンタメチレングリコール、(5−メチル)ペンタメチレングリコール、(3−エチル)ペンタメチレングリコール、(4−エチル)ペンタメチレングリコール、(5−エチル)ペンタメチレングリコール、(3,3−ジメチル)ペンタメチレングリコール、(3,3−メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(3,3−ジエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4−ジメチル)ペンタメチレングリコール、(4,4−メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4−ジエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5−ジメチル)ペンタメチレングリコール、(5,5−メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5−ジエチル)ペンタメチレングリコールなどが挙げられる。
【0074】
以上、分岐アルキレンエーテル単位(P2)を構成する一般式(II−1)〜(II−4)で表される単位を便宜的にグリコールを例として記載したが、これらグリコールに限らず、これらのアルキレンオキシドや、これらのポリエーテル形成性誘導体であってもよい。
【0075】
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)として好ましいものを挙げると、テトラメチレンエーテル単位と前記一般式(II−3)で表される単位からなる共重合体が好ましく、特にテトラメチレンエーテル単位と3−メチルテトラメチレンエーテル単位からなる共重合体がより好ましい。また、テトラメチレンエーテル単位と前記一般式(II−1)で表される単位からなる共重合体も好ましく、特にテトラメチレンエーテル単位と2−メチルエチレンエーテル単位からなる共重合体がより好ましい。テトラメチレンエーテル単位と2,2−ジメチルトリメチレンエーテル単位、即ちネオペンチルグリコールエーテル単位からなる共重合体も好ましい。
【0076】
直鎖アルキレンエーテル単位(P1)と分岐アルキレンエーテル単位(P2)を有するポリアルキレングリコール共重合体(CP)を製造する方法は公知であり、上記したようなグリコール、アルキレンオキシドあるいはそのポリエーテル形成性誘導体を、通常、酸触媒を用いて重縮合させることによって製造することができる。
【0077】
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)は、ランダム共重合体やブロック共重合体であってもよい。
【0078】
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)の前記一般式(I)で表される直鎖アルキレンエーテル単位(P1)と前記一般式(II−1)〜(II−4)で表される分岐アルキレンエーテル単位(P2)の共重合比率は、(P1)/(P2)のモル比で、好ましくは95/5〜5/95であり、より好ましくは93/7〜40/60であり、更に好ましくは90/10〜65/35であり、直鎖アルキレンエーテル単位(P1)がリッチであることがより好ましい。
なお、モル分率は、
1H−NMR測定装置を用い、重水素化クロロホルムを溶媒として測定される。
【0079】
また、ポリアルキレングリコール共重合体(CP)において、その末端基はヒドロキシル基であることが好ましい。加えて、その片末端あるいは両末端がアルキルエーテル、アリールエーテル、アラルキルエーテル、脂肪酸エステル、アリールエステルなどで封鎖されていてもその性能発現に影響はなく、エーテル化物又はエステル化物が同様に使用できる。
【0080】
アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれも使用でき、炭素数1〜22のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基等であり、ポリアルキレングリコールのメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ラウリルエーテル、ステアリルエーテル等が好ましく例示できる。
【0081】
アリールエーテルを構成するアリール基としては、好ましくは炭素数6〜22、より好ましくは炭素数6〜12、さらに好ましくは炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基、トリル基等が好ましい。アラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜23、より好ましくは炭素数7〜13、さらに好ましくは炭素数7〜11のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられ、ベンジル基が特に好ましい。
【0082】
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、直鎖状又は分岐状のいずれも使用でき、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数1〜22の1価又は2価の脂肪酸、例えば、1価の飽和脂肪酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸や、1価の不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸、また炭素数10以上の二価の脂肪酸、例えば、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸およびデセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸である。
【0083】
アリールエステルを構成するアリール基としては、好ましくは炭素数6〜22、より好ましくは炭素数6〜12、さらに好ましくは炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基、トリル基等が好ましい。末端封止する基は、アラルキル基であっても芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と良好な相溶性を示すことから、アリール基と同様の作用を発現できる。アラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜23、より好ましくは炭素数7〜13、さらに好ましくは炭素数7〜11のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられ、ベンジル基が特に好ましい。
【0084】
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)としては、なかでもテトラメチレンエーテル単位と2−メチルエチレンエーテル単位からなる共重合体、テトラメチレンエーテル単位と3−メチルテトラメチレンエーテル単位からなる共重合体、テトラメチレンエーテル単位と2,2−ジメチルトリメチレンエーテル単位からなる共重合体が特に好ましい。このようなポリアルキレングリコール共重合体としては、具体的には例えば、日油社製商品名(以下同様)「ポリセリンDCB」、保土谷化学社製「PTG−L」、旭化成せんい社製「PTXG」などが挙げられる。また、テトラメチレンエーテル単位と2,2−ジメチルトリメチレンエーテル単位からなる共重合体は特願2015−2533に記載の方法で製造することも可能である。
【0085】
ポリアルキレングリコール化合物としては、下記一般式(III−1)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物又は下記一般式(III−2)で表される直鎖型ポリアルキレングリコール化合物も好ましいものとして挙げられる。なお、下記一般式(III−1)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物又は下記一般式(III−2)で表される直鎖型ポリアルキレングリコール化合物は、他の共重合成分との共重合体であってもよいが、単独重合体が好ましい。
【0087】
(式(III−1)中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示し、XおよびYは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜23の脂肪族アシル基、又は炭素数1〜23のアルキル基を示し、nは10〜400の整数を示す。)
【0089】
(式(III−2)中、X及びYは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数2〜23の脂肪族アシル基又は炭素数1〜22のアルキル基を示し、mは2〜6の整数、pは6〜100の整数を示す。)
【0090】
上記の一般式(III−1)において、整数(重合度)nは、10〜400であるが、好ましくは15〜200、更に好ましくは20〜100である。重合度nが10未満の場合、成形時のガス発生量が多くなり、ガスによる成形不良、例えば、未充填、ガスやけ、転写不良を発生する可能性がある。一方、重合度nが400を超える場合、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の色相を向上させる効果が十分に得られないおそれがある。
【0091】
分岐型ポリアルキレングリコール化合物としては、一般式(III−1)中、X,Yが水素原子で、Rがメチル基であるポリプロピレングリコール(ポリ(2−メチル)エチレングリコール)やエチル基であるポリブチレングリコール(ポリ(2−エチル)エチレングリコール)が好ましく、特に好ましくはポリブチレングリコール(ポリ(2−エチル)エチレングリコール)である。
【0092】
上記の一般式(III−2)において、p(重合度)は、6〜100の整数であるが、好ましくは8〜90、より好ましくは10〜80である。重合度pが6未満の場合、成形時にガスが発生するので好ましくない。一方、重合度pが100を超える場合、相溶性が低下するので好ましくない。
【0093】
直鎖型ポリアルキレングリコール化合物としては、一般式(III−2)中のX及びYが水素原子で、mが2であるポリエチレングリコール、mが3であるポリトリメチレングリコール、mが4であるポリテトラメチレングリコール、mが5であるポリペンタメチレングリコール、mが6であるポリヘキサメチレングリコールが好ましく挙げられ、より好ましくはポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールあるいはそのエステル化物又はエーテル化物である。
【0094】
また、ポリアルキレングリコール化合物として、その片末端あるいは両末端が脂肪酸またはアルコールで封鎖されていてもその性能発現に影響はなく、脂肪酸エステル化物またはエーテル化物を同様に使用することができ、従って、一般式(III−1),(III−2)中のX及び/又はYは炭素数1〜23の脂肪族アシル基又はアルキル基であってもよい。
【0095】
脂肪酸エステル化物としては、直鎖状又は分岐状脂肪酸エステルのいずれも使用でき、脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。また、一部の水素原子がヒドロキシル基などの置換基で置換されたものも使用できる。
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数1〜23の1価又は2価の脂肪酸、例えば、1価の飽和脂肪酸、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸や、1価の不飽和脂肪酸、具体的には、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸、また炭素数10以上の二価の脂肪酸、具体的には、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸及びデセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸が挙げられる。
これらの脂肪酸は1種又は2種以上組み合せて使用できる。前記脂肪酸には、1つ又は複数のヒドロキシル基を分子内に有する脂肪酸も含まれる。
【0096】
分岐型ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、一般式(III−1)において、Rがメチル基、XおよびYが炭素数18の脂肪族アシル基であるポリプロピレングリコールステアレート、Rがメチル基、XおよびYが炭素数22の脂肪族アシル基であるポリプロピレングリコールベヘネートが挙げられる。直鎖型ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、ポリアルキレングリコールモノパルミチン酸エステル、ポリアルキレングリコールジパルミチン酸エステル、ポリアルキレングリコールモノステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコールジステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコール(モノパルミチン酸・モノステアリン酸)エステル、ポリアルキレングリコールベヘネート等が挙げられる。
【0097】
ポリアルキレングリコールのアルキルエーテルを構成するアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基等の炭素数1〜23のアルキル基が挙げられ、このようなポリアルキレングリコール化合物としては、ポリアルキレングリコールのアルキルメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ラウリルエーテル、ステアリルエーテル等が好ましく例示できる。
【0098】
一般式(III−1)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物としては、具体的には例えば、日油社製商品名(以下同様)「ユニオールD−1000」、「ユニオールPB−1000」などが挙げられる。
【0099】
前記ポリアルキレングリコール共重合体(CP)、前記一般式(III−1)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物、前記一般式(III−2)で表される直鎖型ポリアルキレングリコール化合物等のポリアルキレングリコール化合物の数平均分子量としては、200〜5,000であることが好ましく、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上であり、より好ましくは4,000以下、さらに好ましくは3,000以下、特に好ましくは2000以下、とりわけ好ましくは1000未満であり、800以下であることが最も好ましい。上記範囲の上限を超えると、相溶性が低下するので好ましくなく、又上記範囲の下限を下回ると成形時にガスが発生するので好ましくない。ここでいうポリアルキレングリコール化合物の数平均分子量はJIS K1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0100】
<色相改良剤(C)の含有量>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、色相改良剤(C)の含有量は、用いる色相改良剤(C)の種類によっても異なるが、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.05〜2質量部である。色相改良剤の含有量が0.05質量部未満であっても、2質量部を超えても、得られる成形品の色相が劣る傾向がある。
【0101】
色相改良剤(C)として脂肪酸エステルを用いる場合、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の脂肪酸エステルの含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.03〜0.3質量部であることが好ましく、0.04〜0.25質量部であることがより好ましく、0.05〜0.2質量部であることがさらに好ましい。
【0102】
色相改良剤(C)としてポリアルキレングリコール化合物を用いる場合、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中のポリアルキレングリコール化合物の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.1〜1.5質量部であることが好ましく、0.2〜1.2質量部であることがより好ましく、0.4〜1.0質量部であることがさらに好ましい。
【0103】
色相改良剤(C)として脂肪酸エステルとポリアルキレングリコール化合物を用いる場合、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の脂肪酸エステル及びポリアルキレングリコール化合物の含有量は、各々上記の好適含有量の範囲において、その合計の含有量が、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.1〜1.5質量部であることが好ましく、0.2〜1.2質量部であることがより好ましく、0.5〜1.0質量部であることがさらに好ましい。
【0104】
<その他の成分>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、任意成分としてさらに酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、染顔料、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、相溶化剤、充填剤等が配合されてもよい。
【0105】
<芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを製造するには、例えば、各成分を一括又は分割して配合し、溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。各成分の配合方法としては、例えばタンブラー、ヘンシェルミキサー等を使用する方法、フィーダーにより定量的に押出機のホッパーに供給して混合する方法などが挙げられる。溶融混練には、例えば単軸混練押出機、二軸混練押出機等を使用することが好ましく、押出機先端の吐出ノズルから押出された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のストランドを、引き取りローラーにより引き取り、水槽内を搬送して冷却した後、ペレタイザーで所定の大きさにカットして芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得ることができる。
【0106】
[射出成形方法]
次に、上記のような本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを用いて本発明に従って射出成形を行う方法について説明する。
【0107】
<メカニズム>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂成形品の製造方法において、射出シリンダーにベントを有する射出成形機を用いて、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを飢餓状態で供給する(以下、「飢餓フィード」と称す場合がある。)と共に、ベント及び射出成形機へのペレット供給部の一方に不活性ガスを供給し、かつ他方に不活性ガスを供給するか減圧しながら射出成形することにより、成形時の黄変を防止して色相が良好な芳香族ポリカーボネート樹脂成形品を得ることができるメカニズムは以下のように考えられる。
【0108】
即ち、射出シリンダーにベントを有する射出成形機であれば、射出シリンダーにおけるペレットの溶融可塑化でペレットから発生した残留モノマーや添加剤分解物等の揮発成分をベントから排出させることができ、これらの成分が成形品中に残留することによる黄変を防止することができる。この際、ベント及び射出成形機へのペレット供給部の一方に不活性ガスを供給し、かつ他方に不活性ガスを供給するか減圧することにより、射出シリンダー内の酸素濃度を下げると共に樹脂の溶融時に発生する樹脂の着色原因物質をパージして、樹脂の酸化劣化及による黄変、着色原因物質による樹脂の着色反応を抑制することができる。
【0109】
即ち、ベント及び射出成形機へのペレット供給部の双方に不活性ガスを供給した場合は、不活性ガスにより射出シリンダー内の酸素濃度を下げると共に、樹脂の着色原因となる物質をパージすることが可能となり、樹脂の着色反応を抑制することができる。
ベント及び射出成形機へのペレット供給部の一方に不活性ガスを供給し、他方を減圧した場合は、不活性ガス供給側において樹脂着色の原因物質をパージする効果と、減圧側において、樹脂着色の原因物質を排気する効果により、樹脂の着色を有効に防止することができる。
【0110】
これに対して、ベント及び射出成形機へのペレット供給部を共に減圧した場合は、スクリューシリンダーの空隙から酸素が侵入する場合があり、本発明の効果を得ることはできない。
【0111】
また、ペレットを飢餓フィードとすることにより、後述の通り、ペレットの供給部からも水蒸気や揮発成分を排出することが可能となり、より一層良好な色相の成形品を得ることができるようになる。
【0112】
また、射出成形機に供するペレットが所定量以上の水分を含むと、ペレットから発生した水蒸気が、揮発成分を巻き込んでベントから揮散することで、黄変の原因となる揮発成分を効率的に排出させることができるようになるため、得られる成形品は、より色相に優れたものとなる。
【0113】
<射出成形機>
図1〜3を参照して、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂成形品の製造方法で好適に用いられる射出成形機を説明する。
図1〜3は、本発明に好適に用いられる射出成形機の一例を示す構成図であり、同一機能を奏する部材に同一符号を付してある。
以下において、射出成形機の射出方向の上流側及び下流側を、それぞれ単に「上流」、「下流」と称す。
【0114】
1は、射出シリンダーであり、内部にスクリュー2が配置されている。射出シリンダー1の射出方向基端側の供給口1aの直上には、ペレット供給装置10が設けられている。このペレット供給装置10については後述する。
射出シリンダー1の射出方向先端側には、射出ノズル3が設けられており、このノズル3内にスクリュー2のヘッド部2aが挿入されている。また、射出シリンダー1の外周には加熱用ヒーター4が装着されている。
【0115】
図1の射出成形機では、ペレット供給装置10のホッパーの下部に、窒素(N
2)等の不活性ガス吹き込み用のノズル(以下「不活性ガスノズル」と称す。)7Bが挿入されており、ベント5Aに、減圧用の配管6Aが設けられている。Vは減圧バルブ、Pは真空ポンプである。
なお、ベント5Aは、密閉構造とされている。
【0116】
図2の射出成形機では、上部が開放されたベント5Bに、不活性ガスノズル6Bが挿入されており、ペレット供給装置10のホッパーの下部に減圧バルブVと真空ポンプPを有する減圧用の配管7Aが設けられている。
【0117】
図3の射出成形機では、ベント5Bに、不活性ガスノズル6Bが挿入されており、ペレット供給装置10のホッパーの下部にも不活性ガスノズル7Bが挿入されている。
【0118】
図1,3において、不活性ガスノズル7Bは、
図4(a)に示されるように、ペレット供給装置10のホッパー20下部のスクリューフィーダー11部分に挿入されている。
【0119】
図1〜3の射出成形機では、射出シリンダー1の射出方向の途中部分の1箇所にベント5A,5Bが設けられているため、このベント5A,5Bから、前述の通り、樹脂着色の原因物質を効率的に排出することができる。特にベント5Aを減圧する
図1の射出成形機では、樹脂着色の原因物質をより効率的に排出することができる。また、不活性ガスノズル6B,7Bより、窒素(N
2)等の不活性ガスを吹き込むことにより、前述の通り、射出シリンダー内の酸素濃度を下げ、樹脂の酸化劣化を防止すると共に、樹脂の溶融時に発生する樹脂の着色原因物質をパージして、樹脂の黄変を防止することができる。ペレット供給装置10のホッパーの下部を減圧する
図2の射出成形機では樹脂溶融時に発生する着色原因物質を排気することができる。
【0120】
ベント5A,5Bから、揮発成分を効率的に排出するために、ベント5A,5Bは、射出シリンダー1の可塑化ゾーンよりも下流に設けられていることが好ましい。
即ち、
図1〜3に示されるように、射出成形機の射出シリンダー1は、射出方向の基端側から先端の射出側に向けて、可塑化ゾーン、溶融圧縮ゾーン及び計量ゾーンで構成され、スクリュー2は各々の領域の目的に応じた設計とされている。
【0121】
可塑化ゾーンは、ペレット供給装置10により供給されたペレットを溶融、可塑化するための領域であり、この可塑化ゾーンにおいて、ペレットから揮発成分が発生する。
溶融圧縮ゾーンは、可塑化ゾーンからの溶融樹脂を更に溶融させると共に圧縮して揮発成分を脱気する領域であり、本発明に係るベント5A,5Bは、この領域に設けられていることが好ましい。
【0122】
計量ゾーンは、樹脂の吐出前に樹脂を安定化させ、吐出量のバラツキを抑えるための調整を行う領域である。
【0123】
通常、可塑化ゾーンは、その長さL
1が、射出シリンダー1の全長(ここで射出シリンダーの全長とは、射出シリンダーにペレットを供給するための供給口1aの中心からスクリュー2のヘッド部2aの基端部までの長さをいう。)Lに対して、1/2〜7/10程度の長さの領域である。また、溶融圧縮ゾーンの長さL
2は、射出シリンダー1の全長Lの1/10〜3/10程度であり、計量ゾーンの長さL
3は、射出シリンダー1の全長Lの1/10〜3/10程度である。
【0124】
本発明において、ベント5A,5Bは、射出シリンダー1の全長Lに対して、可塑化ゾーンの下流側であって、基端側から3/10〜1/2の部分、即ち、
図1において、L
4がLの1/2〜7/10となるような位置、好ましくは、L
4−L
2がLの1/5〜3/5である位置に設けられていることが、揮発成分の排出効率の面で好ましい。
なお、
図1において、長さL
4は、ペレット供給口の中心から、ベント5A,5Bの中心までの距離を示している。
【0125】
ベント5A,5Bは、
図1に示す通り、1箇所のみに設けられていてもよく、射出シリンダー1の射出方向の複数箇所に設けられていてもよいが、最も上流側のベントが上記の位置であることが好ましい。
【0126】
なお、ベント5A,5Bの口径は、通常10〜20cm程度である。
【0127】
<不活性ガス>
ベント及び/又は射出成形機へのペレット供給部から供給する不活性ガスとしては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム等を用いることができるが、これらのうち、取り扱い性等において窒素が好適に用いられる。
【0128】
不活性ガスノズルとしては、孔径2〜10mm程度の金属製ノズルを用いることができる。
【0129】
不活性ガスの供給量は所望の色相の成形品が得られる程度であればよく、特に制限はないが、例えば、不活性ガスの供給部に設けた酸素濃度計で測定される雰囲気中の酸素濃度が5%容積以下、特に0〜2容積%となる程度とすることが好ましい。ここで、酸素濃度計は、ベント5Bであればベント5B内に挿入された不活性ガスノズル6Bの不活性ガス吹き出し部近傍に設けることができる。
また、ペレット供給部の例えばホッパーの下部に不活性ガスノズル7Bを挿入した場合は、この不活性ガスノズル7Bと共に酸素濃度計を挿入して酸素濃度の測定を行なえばよい。
【0130】
本発明において、不活性ガスの供給は、ベントのみに行ってもよく、ペレットの供給部のみに行ってもよい。また、ベントとペレットの供給部の両方に行ってもよいが、ベント及びペレットの供給部のうち、不活性ガスの供給を行わない側は、減圧とする。また、複数のベントを有する場合、すべてのベントで不活性ガスの供給を行ってもよく、一部のベントのみで不活性ガスの供給を行ってもよいし、一部のベントで不活性ガスを供給し、他のベントを減圧としてもよい。
また、射出成形機へのペレット供給部に不活性ガスを供給する場合、
図4(a)のように、ホッパーの下部に不活性ガスノズルを挿入して不活性ガスを供給する他、射出シリンダーのペレット供給口1aに不活性ガスノズルを挿入して不活性ガスを供給してもよい。
【0131】
<減圧処理>
本発明においては、射出成形機のベント又はペレットの供給部を減圧する場合、
図1,2に示すように真空ポンプP及び真空バルブVを有する配管6A,7Aをベント或いはペレットの供給部に接続して真空引きすればよい。
この場合、ベントについては、
図1に示すように、開口部を密閉構造とすることにより、効率的に減圧することが可能となる。
ペレットの供給部を減圧する場合、
図4(a)に示す不活性ガスノズル7Bの代りに減圧用配管7Aを挿入してペレット供給装置10のホッパー20下部のスクリューフィーダー11部分を減圧してもよく、ペレット供給部1aに減圧用配管を挿入して減圧してもよい。
【0132】
減圧する方法として、下記の真空ポンプを用いて減圧することが可能である。
アンレット社製ドライルーツ式真空ポンプFT2−20(到達圧力8kPa(60Torr))
アンレット社製ドライルーツ式真空ポンプFT2−80(到達圧力5.3kPa(40Torr))。
【0133】
<飢餓フィード>
前述の通り、本発明では射出成形機への芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットの供給を飢餓フィードで行う。
以下に、この供給方法について、
図4を参照して説明する。
【0134】
通常、ペレットは、
図4(b)に示す通り、射出成形機の射出シリンダーの基端側のペレット供給口1aに取り付けられたペレット供給ホッパー20より、その自重で落下させて供給される。この場合、ホッパー20から射出シリンダーの供給口1aを経てスクリュー2に到る部分は、
図4(b)に示す通り、ペレット30で充満された状態となる(以下、
図4(b)に示す供給方法を「通常フィード」と称す。)。
【0135】
これに対して、飢餓フィードを行う場合は、
図4(a)に示すように、ホッパー20からのペレット30の供給量を調整可能なスクリューフィーダー11を有するペレット供給装置10を用い、ホッパー20からのペレット30が、自重による落下ではなく、スクリューフィーダー11の回転で所定量が射出シリンダー1の供給口1aに投入されるようにする。このように、ペレット30の投入量を制御することにより、供給口1aの直下のスクリュー2のスクリューベット(スクリューのねじ溝部分)はペレットで覆われることなく、その一部が露出した状態となる。このような状態でペレットを供給することを飢餓フィードという。
【0136】
このように、飢餓状態でペレットを供給した場合、射出シリンダー1の供給口1a部分にはペレットの存在しない空隙が形成され、この空隙を経て射出シリンダー1内で発生したガス成分等が系外へ排出されるようになる。即ち、ペレット供給口1aが、ベントと同様の機能を果たすようになり、揮発成分や水蒸気の排出効率がより一層向上し、得られる成形品の色相が更に改善される。
【0137】
本発明に従って、ペレットの供給部に不活性ガスを供給しつつ飢餓フィードを行うと、ペレットの供給部に供給された不活性ガスが射出シリンダー内に侵入し易くなり、樹脂着色の原因となる成分を効果的にパージすることができる。
また、ペレットの供給部を減圧した状態で飢餓フィードを行うと、射出シリンダー内のガス成分を、ペレットの供給部を経て効率的に排出することができ、減圧による樹脂の酸化防止効果を高めることができる。
【0138】
このような飢餓フィードを行うためのペレット供給装置は市販されており、例えば、後述の実施例で用いた日本油機製「HF−I型」等を用いることができる。
【0139】
<ペレットの水分量>
本発明において、射出成形機に供給する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットは、水分量200ppm以上であることが好ましい。
揮発成分の排出効率の面から、ペレットの水分量は多い程好ましく、この水分量は300ppm以上であることがより好ましく、500ppm以上であることが更に好ましい。ただし、計量安定性の観点から、水分量は3000ppm以下であることが好ましく、2500ppm以下であることがより好ましく、2000ppm以下であることが更に好ましい。
【0140】
上記の水分量のペレットは、射出成形機に供給するペレットの乾燥条件を調節することにより、或いは、前述の方法で得られたペレットを乾燥せずにそのまま用いることにより得ることができる。
通常、前述のように水槽で冷却し、ペレタイザーでペレット化して得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットの水分量は500〜2000ppm程度であり、本発明では、このようなペレットを乾燥を行うことなく射出成形機に供給することができる。この場合には、ペレットの乾燥工程を省略することができ、生産効率の向上を図ることもできる。
【0141】
<射出成形条件>
本発明においては、上記のように、ベントを有する射出成形機を用い、好ましくは所定の水分量のペレットを飢餓フィードすること以外は、射出成形条件については通常の条件を採用することができ、例えば、シリンダー温度260〜320℃、金型温度60〜120℃で行うことができる。
【0142】
〔成形品〕
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂成形品の製造方法は、特に導光部材のような長尺の成形品の製造に有効であり、例えば、L/D(長径/短径比)が30以上の長尺成形品の製造に適用した場合において、長さ方向においても良好な色相の成形品を得ることができる。
得られた成形品は、導光部材、特に自動車用照明装置の導光部材として有用である。
【0143】
本発明により製造される芳香族ポリカーボネート樹脂成形品よりなる導光部材の構成には特に制限はなく、例えば、長尺状の本体部と、この本体部に、その長さ方向に沿って突設された複数のプリズム部とで構成されたものが挙げられる。
このような導光部材と光源を有する照明装置では、光源から、導光部材の本体部の一方の端面又は両方の端面から入射された光が、プリズム部で導光され、本体部の光出射面から出射される。
【実施例】
【0144】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0145】
以下の実施例及び比較例において用いた材料は次のとおりである。
【0146】
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
(A−1)界面重合法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂
三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ユーピロン(登録商標)S−3000
粘度平均分子量22,000
(A−2)界面重合法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂
三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ユーピロン(登録商標)H−4000
粘度平均分子量16,000
(A−3)界面重合法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂
三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ユーピロン(登録商標)H−7000
粘度平均分子量14,000
【0147】
(B)リン系安定剤
(B−1)ADEKA社製、商品名「アデカスタブAS2112」(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、第2ホスファイト系安定剤)
(B−2)ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP−36」(ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、第1ホスファイト系安定剤)
(B−3)Properties&Characteristics社製、商品名「Doverphos S−9228」(ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、第1ホスファイト系安定剤)
【0148】
(C)色相改良剤
(C−1)理研ビタミン(株)製、商品名「リケマールS−100A」(グリセリンモノステアレート)
(C−2)日油社製、商品名「ユニオールPB−700」(ポリブチレングリコール(ポリ(2−エチル)エチレングリコール)、数平均分子量700)
【0149】
[実施例1〜8及び比較例1〜16]
<ペレットの製造>
表1〜5に示す割合となるように上記(A)〜(C)成分を配合し、タンブラーミキサーで均一に混合し、混合物を得た。その後、この混合物を、フルフライトスクリューとベントとを備えた単軸押出機(製品名:VS−40、いすず化工機社製)に供給し、スクリュー回転数70rpm、吐出量10kg/時間、バレル温度250℃の条件で混練し、押出ノズル先端から、ストランド状に押出した。そして、押出物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてカットしてペレット化し、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、表1〜5において、各成分の配合割合の単位は質量部である。また、PC分子量は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量である。
【0150】
<射出成形>
上記のようにして得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを用い、
図1〜3の通り、射出シリンダーにベント(口径15cm)を有し、またホッパー部にはペレット供給装置(日本油機製「HF−I型」)を備えた射出成形機(東芝機械社製「EC100」)を使用して、射出成形を行った。この射出成形機の射出シリンダーの全長Lは75cmで、可塑化ゾーンの長さL
1=45cm、溶融圧縮ゾーンの長さL
2=15cm、計量ゾーンの長さL
3=15cmで、ベントは、L
4=50mの位置に設けられている。
【0151】
ペレットのフィード方法は
図4(a)に示す飢餓フィード、又は
図4(b)に示す通常フィードとした。
また、ベント及びペレットの供給部(ホッパー)は、以下の通り減圧とするか、或いは不活性ガスを供給して射出成形を行った。
【0152】
(1) ベントを減圧する場合
ベントの開口を閉じ、ベントに減圧配管を挿入し、(株)アンレット製ドライルーツ式真空ポンプ「FT2−20」を接続して減圧した。
(2) ペレットの供給部を減圧する場合
ホッパー下部のスクリューフィーダー部に減圧配管を挿入し、(株)アンレット製ドライルーツ式真空ポンプ「FT2−80」を接続して減圧した。
(3) ベントに不活性ガスを供給する場合
ベントに不活性ガスノズル(口径5mm)を挿入し、窒素ガスを供給した。
(4) ペレットの供給部に不活性ガスを供給する場合
ホッパー下部のスクリューフィーダー部に不活性ガスノズル(口径5mm)を挿入し、窒素ガスを供給した。
上記(3),(4)の場合、窒素ガスは、不活性ガスノズルの近傍に設けた酸素濃度計で測定される酸素濃度が0ppm(測定限界以下)となるように、窒素ガスの流量を調整した。以下、(3),(4)の不活性ガス供給を「窒素パージ」と称す。
【0153】
なお、比較例1〜4及び比較例11〜14では、ベントについては、閉鎖して(ベントなし)減圧も不活性ガス供給も行わずに射出成形した。
また、比較例7,8では、ペレットを通常フィードとしてホッパー部を減圧して射出成形した。比較例9,10では、ペレットを飢餓フィードとし、ベントもホッパー部も減圧した。また、比較例5,6および比較例15,16では、ペレットを通常フィードとしてホッパー部に窒素パージして射出成形した。
【0154】
成形は、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で行い、300mmの長光路成形品(6mm×4mm×300mm、L/D=75)を製造した。なお、成形に先立ち、用いたペレットの水分量をカールフィッシャー水分計(三菱化学製水分計/VA−100)にて測定したところ、いずれも2000ppmであった。
【0155】
<色相評価>
得られた長光路成形品について、長光路分光透過色計(日本電色工業社製「ASA1」)を使用して300mm長光路のYI値を測定した。
結果を表1〜5に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
【表4】
【0160】
【表5】
【0161】
表1〜5より、ベントを備える射出成形機を用いて、ペレットを飢餓フィードとすると共に、ベント及びペレット供給部であるホッパーの一方に不活性ガスを供給し、かつ他方に不活性ガスを供給するか減圧しながら射出成形を行うことにより、300mm長光路において、色相が良好な芳香族ポリカーボネート樹脂成形品を得ることができ、特に、ホッパー部を減圧とし、ベント部を窒素パージすることにより、300mm長光路において著しく色相が良好な成形品を得ることができることが分かる。