特許第6720658号(P6720658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ 東洋インキ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720658
(24)【登録日】2020年6月22日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】非水性インクジェット用インキ
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20200629BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20200629BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   C09D11/36
   B41M5/00 120
   B41J2/01 501
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-79319(P2016-79319)
(22)【出願日】2016年4月12日
(65)【公開番号】特開2017-190373(P2017-190373A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 征寿
(72)【発明者】
【氏名】市村 泰孝
(72)【発明者】
【氏名】浅井 太郎
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−214255(JP,A)
【文献】 特開2015−150824(JP,A)
【文献】 特開2007−331181(JP,A)
【文献】 特開2009−300724(JP,A)
【文献】 特開2016−027162(JP,A)
【文献】 特開2013−209521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
B41J 2/01
B41M 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色剤と、バインダー樹脂と、有機溶剤と、シリコン系界面活性剤とを含有し、
バインダー樹脂が、ガラス転移温度が20℃〜100℃のアクリル系樹脂を含み、
前記有機溶剤が、下記溶剤Aと下記溶剤Bとを含むことを特徴とする非水性インクジェット用インキ。
溶剤A:ジエチレングリコールメチルエチルエーテルおよび/またはジエチレングリコールジエチルエーテル
溶剤B:(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテートおよび(ポリ)アルキレングリコールジアセテートからなる群より選ばれるいずれか1種
【請求項2】
溶剤Bが(ポリ)プロピレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテートおよび/または(ポリ)プロピレングリコールジアセテートであることを特徴とする請求項1記載の非水性インクジェット用インキ。
【請求項3】
インキ中の溶剤Aおよび溶剤Bが、以下の条件1または条件2を満たすことを特徴とする請求項1または2記載の非水性インクジェット用インキ。
条件1:インキ中に含まれる溶剤Aのうち最も沸点の高い溶剤の沸点が、インキ中に含まれる溶剤Bのうち最も沸点の高い溶剤の沸点よりも低い。
条件2:インキ中に含まれる最も沸点の高い溶剤Bよりも沸点の高い溶剤Aを含む場合、最も沸点の高い溶剤Bの含有量がより沸点の高い溶剤Aの含有量よりも多い。
【請求項4】
インキ中の溶剤Aの含有量とインキ中の溶剤Bの含有量との重量比が1:1〜50:1であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の非水性インクジェット用インキ。
【請求項5】
有機溶剤が、更に複素環系溶剤を含むことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の非水性インクジェット用インキ。
【請求項6】
塩化ビニル基材への印刷用であることを特徴とする請求項1〜いずれか記載の非水性インクジェット用インキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた印刷性能を有し、高光沢、高耐性の印刷物を得ることが可能な、主に塩化ビニル基材への印刷適した非水性インクジェット用インキに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式によれば、使用する装置の騒音が小さく、操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙を使用することができるという利点があるため、オフィスや家庭での出力機として広く用いられている。
【0003】
一方、産業用途においても、インクジェット技術の向上によりデジタル印刷の出力機として利用され、非水性(溶剤型、UV型)インクジェット用インキがPVC、PETなどのプラスチック基材に対して印刷が可能な印刷機が実際に市販されている。
【0004】
溶剤型の非水性インクジェット用インキでは従来は有機溶剤としてシクロヘキサノン、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートといったものが使用されていた(特許文献1、2)。しかし、これらの溶剤は臭気を有していたため、作業環境、安全衛生への配慮から、近年は低臭気の溶剤を使用したインキが主流となりつつある。特許文献3では低臭気の溶剤としてグリコールエーテル系の溶剤を使用している。しかし、グリコールエーテル系の溶剤は乾燥が速いため、印刷物の光沢低下、デキャップ性の低下といった問題が生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−056991号公報
【特許文献2】特開2005−200469号公報
【特許文献3】WO2004/007626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた印刷性能を有し、高光沢、高耐性の印刷物を得ることが可能な、主に塩化ビニル基材への印刷適した非水性インクジェット用インキを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、少なくとも着色剤と、バインダー樹脂と、有機溶剤と、シリコン系界面活性剤とを含有し、
バインダー樹脂が、ガラス転移温度が20℃〜100℃のアクリル系樹脂を含み、
前記有機溶剤が、下記溶剤Aと下記溶剤Bとを含むことを特徴とする非水性インクジェット用インキ。
溶剤A:ジエチレングリコールメチルエチルエーテルおよび/またはジエチレングリコールジエチルエーテル
溶剤B:(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテートおよび(ポリ)アルキレングリコールジアセテートからなる群より選ばれるいずれか1種
【0008】
さらに本発明は、溶剤Bが(ポリ)プロピレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテートおよび/または(ポリ)プロピレングリコールジアセテートであることを特徴とする上記非水性インクジェット用インキに関する。
【0009】
さらに本発明は、インキ中の溶剤Aおよび溶剤Bが、以下の条件1または条件2を満たすことを特徴とする上記非水性インクジェット用インキに関する。
条件1:インキ中に含まれる溶剤Aのうち最も沸点の高い溶剤の沸点が、インキ中に含まれる溶剤Bのうち最も沸点の高い溶剤の沸点よりも低い。
条件2:インキ中に含まれる最も沸点の高い溶剤Bよりも沸点の高い溶剤Aを含む場合、最も沸点の高い溶剤Bの含有量がより沸点の高い溶剤Aの含有量よりも多い。
【0010】
さらに本発明は、インキ中の溶剤Aの含有量とインキ中の溶剤Bの含有量との重量比が1:1〜50:1であることを特徴とする上記非水性インクジェット用インキに関する。
【0011】
さらに本発明は、有機溶剤が、更に複素環系溶剤を含むことを特徴とする上記非水性インクジェット用インキに関する。
【0013】
さらに本発明は、塩化ビニル基材への印刷用であることを特徴とする上記非水性インクジェット用インキに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、優れた印刷性能を有し、高光沢、高耐性の印刷物を得ることが可能な、主に塩化ビニル基材への印刷適した非水性インクジェット用インキを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明について説明する。
【0016】
本発明では着色剤と樹脂と有機溶剤とを含有する非水性インクジェット用インキにおいて、有機溶剤として(ポリ)エチレングリコールジアルキルエーテルと(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート及び/または(ポリ)アルキレングリコールジアセテートを使用することで、高い保存安定性を有し、優れた印刷性能を発揮し、高光沢、高耐性の印刷物を得ることを可能としている。以下に本発明の主要となる各成分について述べる。
【0017】
[有機溶剤]
本発明では有機溶剤として溶剤A:(ポリ)エチレングリコールジアルキルエーテルと溶剤B:(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテートおよび/または(ポリ)アルキレングリコールジアセテートとを併用することにより印刷時の乾燥速度を向上させ、さらに高光沢、高耐性の印刷物を得ることを可能としている。溶剤Aは蒸発が比較的速く非水性インクジェット用インキで一般的に使用されている。しかし、溶剤Aの配合量が多いインキでは乾燥時に溶剤蒸気により容易に飽和蒸気圧に達してしまい、乾燥速度が頭打ちとなる。本発明では非水性インクジェット用インキに使用される基材に対して浸透性の高い溶剤Bを併用することにより、大気への蒸発、基材内への浸透により溶剤を除去し非常に速い乾燥速度の実現を可能とした。また、溶剤Aと溶剤Bとの沸点に差をつけることにより基材上でのインキ滴のレベリングをコントロールし、非常に高い光沢を発揮することが可能である。
【0018】
溶剤Aは(ポリ)エチレングリコールジアルキルエーテルであり、一般式1で表されるものであることが好ましい。

1−(O−C24n−O−R2 [一般式1]

(R1およびR2は、炭素数1〜6のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数1または2であることが好ましい。
nは2〜6の整数を示し、2〜4であることが好ましく、2または3であることが特に好ましい)
【0019】
一般式1で示される(ポリ)エチレングリコールジアルキルエーテルとしては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。中でも乾燥性の観点からジエチレングリコールメチルエチルエーテル(沸点176℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点189℃)、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点212℃)が好ましく、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテルがより好ましい。また、印刷物の耐性、吐出性の点ではテトラエチレングリコールジメチルエーテル(沸点275℃)が好ましい。
【0020】
溶剤Aの含有量は、吐出性、インキの乾燥性の点から、インキ全重量を基準として20〜85重量%が好ましく、35〜75重量%がより好ましい。
【0021】
溶剤Bは(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテートおよび/または(ポリ)アルキレングリコールジアセテートであり、一般式2または一般式3で表されるものであることが好ましい。

4−CO−(O−R5m−OR6 [一般式2]

7−CO−(O−R8l−OCO−R9 [一般式3]

(R4、R7、R9は炭素数1〜6のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数1または2であることが好ましい。
6は炭素数1〜6のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数1〜4であることが好ましい。
5、R8は炭素数2〜6のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数2または3であることが好ましい。
m、lは1〜6の整数を示し、1〜4であることが好ましく、1または2であることが特に好ましい)
【0022】
一般式2で示される(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテートとしては、例えば、(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、(ポリ)プロレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等が挙げられる。具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネートなどが挙げられる。
中でも、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点192℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点247℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点145℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点209℃)は、インキの保存安定性、乾燥性、塗膜耐性の点から特に好ましい。
【0023】
一般式3で示される(ポリ)アルキレングリコールジアセテートとしては、例えば、(ポリ)エチレングリコールジアセテート、(ポリ)プロピレングリコールジアセテート等が挙げられる。具体的には、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、エチレングリコールプロピオネートブチレート、エチレングリコールジプロピオネート、エチレングリコールアセテートジブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールプロピオネートブチレート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートジブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールプロピオネートブチレート、プロピレングリコールジプロピオネート、プロピレングリコールアセテートジブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールプロピオネートブチレート、ジプロピレングリコールジプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートジブチレート、1,4−ブタンジオールジアセテート、及び1,3−ブチレングリコールジアセテートなどが挙げられる。
中でも、ジプロピレングリコールジアセテート(沸点190℃)は、インキの乾燥性、塗膜耐性の点から特に好ましい。
【0024】
溶剤Bは、インキの乾燥性、塗膜耐性、光沢の点から、(ポリ)プロピレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテートおよび/または(ポリ)プロピレングリコールジアセテートであること好ましい。
中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテートが特に好ましい。
【0025】
溶剤Bの含有量は、吐出性、インキの乾燥性の点から、インキ全重量を基準として5〜70重量%が好ましく、10〜55重量%がより好ましい。
【0026】
溶剤Aおよび溶剤Bの沸点は、吐出性、乾燥性の点から、130〜280℃のものを使用するのが好ましい。好ましくは150〜250℃であり、更に好ましくは180〜230℃である。
【0027】
インキ中の溶剤Aおよび溶剤Bが以下の条件1または条件2を満たすことが好ましい。以下の条件を満たすことによって、印刷時の溶剤の乾燥、浸透のバランスが取れることにより、塗膜の光沢が優れる。特に条件1を満たすときにより高い効果が得られ、更にデキャップも良化する。

条件1:インキ中に含まれる溶剤Aのうち最も沸点の高い溶剤の沸点がインキ中に含まれる溶剤Bのうち最も沸点の高い溶剤の沸点よりも低い。

条件2:インキ中に含まれる最も沸点の高い溶剤Bよりも沸点の高い溶剤Aを含む場合に、最も沸点の高い溶剤Bの含有量がより沸点の高い溶剤Aの含有量よりも多い。
【0028】
溶剤Aと溶剤Bとの配合量の比率は1:1〜50:1の範囲が好ましい。この範囲であれば、印刷時に良好な乾燥性を示し、高い光沢の印刷物を得ることが出来る。より好ましくは2.5:1〜20:1の範囲であり、更に好ましくは5:1〜10:1の範囲である。
【0029】
溶剤Aと溶剤Bとを合計した含有量は、インキ全重量を基準として、50重量%以上が好ましく、70〜95重量%がより好ましく、80〜90重量%が更に好ましい。
【0030】
溶剤Aと溶剤Bとの組み合わせとしてはジエチレングリコールメチルエチルエーテルとエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルとジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルとジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルブチルエーテルとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの組み合わせが好ましい。特に好ましくはジエチレングリコールメチルエチルエーテルとジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルとジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの組み合わせであり、最も好ましくはジエチレングリコールジエチルエーテルとジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの組み合わせである。
【0031】
本発明では更に複素環系溶剤を併用することが出来る。複素環系溶剤とは炭素以外の元素を含む環状構造を有する溶剤であり、これを使用することで基材へのインキの浸透性が増し、印刷時の乾燥性が高まる。本発明で使用できる複素環系溶剤として、例えば、
3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン構造を有する溶剤;
2−ピロリドン(γ−ブチロラクタム)、1−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、γ−バレロラクタム、γ−ヘキサラクタム、γ−ヘプタラクタム、γ−オクタラクタム、γ−ノナラクタム、γ−デカラクタム、γ−ウンデカラクタム、δ−バレロラクタム、δ−ヘキサラクタム、δ−ヘプタラクタム、δ−オクタラクタム、δ−ノナラクタム、δ−デカラクタム、δ−ウンデカラクタム、及びε−カプロラクタム等のラクタム構造を有する溶剤;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトン、γ−ラウロラクトン、γ−ラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−ヘプタラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、ε−カプロラクトン、及びε−ラクトン等のラクトン構造を有する溶剤
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及び1,2−ブチレンカーボネート等の含酸素系溶剤等が挙げられる。
【0032】
基材へのインキの浸透性、印刷時の乾燥性の点から、3−メチル−2−オキサゾリジノン(沸点266℃)、2−ピロリドン(γ−ブチロラクタム)(沸点245℃)、1−メチル−2−ピロリドン(沸点202℃)、ε−カプロラクタム(沸点267℃)、γ−ブチロラクトン(沸点204℃)、γ−バレロラクトン(沸点230℃)、及びε−カプロラクトン(沸点237℃)、プロピレンカーボネート(沸点240℃)等が好ましく、3−メチル−2−オキサゾリジノン(沸点266℃)、2−ピロリドン(γ−ブチロラクタム)(沸点245℃)、がより好ましい。また、インキの保存安定性の観点からは3−メチル−2−オキサゾリジノン(沸点266℃)が好ましい。
【0033】
使用する複素環系溶剤の沸点は200℃〜300℃が好ましい。この範囲では基材への浸透性と、溶剤の揮発性のバランスが取れ、印刷時の乾燥性が高く、高い耐性の印刷物を得ることが出来るインキとなる。更に使用する溶剤A及び溶剤Bの沸点よりも高い沸点であることが好ましい。複素環系溶剤の沸点をインキ中最も高くすることで、インキ乾燥時に複素環系溶剤が最後まで残留し、より高い浸透効果を得て、非常に高い耐性の印刷物が得られる。また、デキャップも良化する。
【0034】
複素環系溶剤の配合量はインキ全重量を基準として1〜25重量%であることが好ましい。この範囲であれば良好な乾燥性を示し、印刷物の耐性向上が見込める。より好ましくは2〜20重量%、更に好ましくは4〜15重量%、最も好ましくは6〜13重量%である。
【0035】
本発明ではインキの粘度や吐出性の調整を目的として、その他の溶剤も併用することが出来る。その他の溶剤としては、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、アルコキシアルキルアミド、アルカンジオール、環状エーテル、及び炭化水素系溶剤などが挙げられる。
具体的には、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点190℃)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)、乳酸メチル(沸点144℃)、乳酸エチル(沸点154℃)、乳酸プロピル(沸点170℃)、乳酸ブチル(沸点189℃)、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミド(沸点216℃)、N,N−ジブチル−β−ブトキシプロピオンアミド(沸点252℃)等が挙げられる。
【0036】
〔着色剤〕
本発明の非水性インクジェット用インキに使用される着色剤として、無機顔料、有機顔料及び染料等を用いることが出来る。これら着色剤は、印刷用途及び塗料用途のインキに一般的に使用される着色剤であってよく、発色性及び耐光性等の必要となる用途に応じて適切な着色剤を選択することができる。これら着色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いても良い。
【0037】
顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無彩色の顔料または有彩色の有機顔料が使用できる。
【0038】
本発明に好ましく用いられる有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、16、17、20、24、55、74、83、86、87、93、109、110、117、120、125、124、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、170、171、172、174、176、180、185、188、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、146、149、150、168、177、180、185、192、202、206、207、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、245、269、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26、C.I.ピグメントブラック1、6、7等が挙げられる。
【0039】
これら顔料の、インキ中の含有量は、着色力、保存安定性、インクジェット粘度適性の点から、1〜15重量%が好ましく、1〜8重量%がより好ましい。画像粒状感を低減するため淡色インクを用いる場合は、顔料の含有量を濃色インクの場合の1/10〜1/2とすることが好ましい。
【0040】
有機顔料の平均粒径は、D50が50〜300nmの微細顔料であることが好ましい。顔料の平均粒径が50nm以上では、耐光性と着色力が得られ、300nm以下では、インキ安定性や吐出性が安定になる。前記顔料の平均粒径は、例えば、インクジェットインキを酢酸エチルで200〜1000倍に希釈し、日機装社製 MICROTRAC UPA150で測定した際の、メジアン径(D50)の値を言う。
【0041】
〔顔料分散剤〕
本発明の一実施形態として顔料を含むインキを構成する場合、顔料の分散性及びインキの保存安定性を向上させるために、顔料分散剤を使用することが好ましい。顔料分散剤としては、従来既知の化合物を使用することできる。吐出特性、インキの保存安定性の点から、塩基性官能基を有する樹脂型分散剤が好ましい。
【0042】
顔料分散剤の市販例として、ルーブリゾール社製のソルスパース32000、76400、76500、J200、及びJ180等; ビックケミー社製のDisperbyk−161、162、163、164、165、166、167、及び168等; 味の素ファインテクノ社製のアジスパーPB821、PB822等が挙げられる。
【0043】
顔料分散剤の重量平均分子量(以下Mw)は、5,000〜20,000が好ましく、10,000〜20,000がより好ましい。Mwが5,000以上であれば、インキに使用される有機溶剤中での顔料分散剤自体の安定性が良好のため顔料分散体の安定性が向上する。20,000以下であると、バインダー樹脂との相溶性が良好となりインキ塗膜の白化現象が抑制され、発色性が良好になる。
【0044】
さらに、顔料分散剤は、GPCにより求めた数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比、Mw/Mnが2以下であることが好ましい。さらにはMw/Mnが1〜2であることが好ましく、1〜1.8がより好ましい。
Mw/Mnが2以下であることにより、顔料の粒径のばらつきの少ない顔料分散体を得ることができ、顔料分散体の低粘度化と保存安定性の両立が可能となる。
【0045】
顔料分散剤の酸価(mgKOH/g)は5〜20が好ましく、5〜15がより好ましい。アミン価(mgKOH/g)は5〜50が好ましく、20〜50がより好ましく、25〜40が特に好ましい。顔料分散剤の酸価、アミン価が上記の範囲内である場合、顔料分散工程において、顔料分散体の粘度がインクジェットインキに相応しい程度の低粘度になるまでの時間が短くなり、さらに、インキの保存安定性が良好になるため好ましい。
【0046】
ここで、「Mw」は、一般的なゲルパーミッションクロマトグラフィー(以下GPC)によりスチレン換算分子量として求めることができる。例えば、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC−8320GPC)で、展開溶媒にDMFを用いたときのポリスチレン換算分子量で示すことができる。
「酸価」とは、分散剤固形分1gあたりの酸価を表し、JIS K 0070に準じ、電位差滴定法によって求めることが出来る。「アミン価」とは、分散剤固形分1gあたりのアミン価を表し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法によって求めた後、水酸化カリウムの当量に換算した値をいう。
【0047】
本発明のインキには、顔料誘導体も使用することができる。顔料誘導体は、分散剤との吸着性を更に向上させ、保存安定性を良化させる目的で使用される。顔料誘導体としては、有機顔料残基に、スルホン酸基またはカルボキシル基等の酸性基を有する化合物が好ましく使用される。
【0048】
顔料誘導体の含有量は、顔料に対して0.1重量%以上20重量%以下が好ましく、1重量%以上15重量%以下が特に好ましい。ここで0.1重量%以上であると、安定性、発色性が良好になり、20重量%以下であるとインキの粘度が好適な範囲で仕上がり、保存安定性が良好となるため好ましい。
【0049】
〔添加剤〕
本発明のインキは、印刷適性や印刷物耐性を高めるため、表面調整剤、スリップ剤、可塑剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、防錆剤等の種々の添加剤を使用することができる。
【0050】
表面調整剤としては、シリコン系、フッ素系、アクリル系、アセチレングリコール系が挙げられ、中でもシリコン系が好ましい。シリコン系の表面調整剤として、例えば、ジメチルポリシロキサンのメチル基の一部に有機基を導入した変性ポリシロキサン化合物であることが好ましい。変性の例として、ポリエーテル変性、メチルスチレン変性、アルコール変性、アルキル変性、アラルキル変性、脂肪酸エステル変性、エポキシ変性、アミン変性、アミノ変性、メルカプト変性などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの変性の方法は組み合わせて用いることができる。
中でもポリエーテル変性ポリシロキサン化合物、アラルキル変性ポリシロキサン化合物が吐出安定性等の点で好ましく、アラルキル変性ポリシロキサン化合物が画像形成能、インキ塗膜の乾燥性の点でより好ましい。
【0051】
ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物の例としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKF−353A、KF−354L、KF6017、X−22−6551、AW−3、日信化学工業株式会社製のSAG001、SAG002、SAG003、SAG005、SAG503A、SAG008、SAG010、東レ・ダウコーニング株式会社製の8019ADDITIVE、8029ADDITIVE、8032ADDITIVE、8054ADDITIVE、8526ADDITIVE、8616ADDITIVE、57ADDITIVE、67ADDITIVE、L7001、L7002、L7604、FZ2105、FZ2110、FZ2123、FZ2191、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK−300、302、306、307、330、377、エボニックデグサ社製のTEGO Glide 100,110、130、406、410、415、420、432、435、440、450;
アラルキル変性ポリシロキサン化合物の例としては、例えば、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK−322、323、信越化学工業(株)社製のKF−410、東レダウコーニング(株)製のSM 7001EX、SM 7002EX等が挙げられる。
これらの中でも、アラルキル変性ポリシロキサン化合物であるBYK−322、323が好ましく用いられる。
【0052】
表面調整剤の含有量は、インキ全重量を基準として、0〜2重量%であることが好ましく、0.001〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.5重量%が更に好ましい。
【0053】
〔バインダー樹脂〕
本発明に使用されるバインダー樹脂としては、インキ塗膜の耐擦過性、耐アルコール性、延伸性、光沢性、基材汎用性などの機能を発揮するものを使用できる。例えば、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、塩酢ビ系樹脂、塩ビ系樹脂、ロジン変性樹脂、エチレン−酢ビ系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等一般的に使用される樹脂が使用できる。これらバインダー樹脂を単独で使用しても、2種類上を混合しても良い。
【0054】
バインダー樹脂の具体例としては、三菱レイヨン社製のダイヤナール(登録商標)BRシリーズのアクリル系樹脂として、BR−50、BR−52、MB−2539、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、MB−2389、BR−80、BR−82、BR−83、BR−84、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−95、BR−96、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−110、BR−113、MB−2660、MB−2952、MB−3012、MB−3015、MB−7033、BR−115、MB−2478、BR−116、BR−117、BR−118、BR−122、ER−502;
ウイルバー・エリス社製のパラロイド(登録商標)シリーズのアクリル系樹脂として、A−11、A−12、A−14、A−21、B−38、B−60、B−64、B−66、B−72、B−82、B−44、B−48N、B−67、B−99N、DM−55;
BASF社製のJONCRYL(登録商標)シリーズのスチレン−アクリル系樹脂として、JONCRYL67、678、586、611、680、682、683、690、819、JDX−C3000、JDXC3080;
日信化学工業製のソルバイン(登録商標)シリーズの塩酢ビ系樹脂として、ソルバインCL、CNL、C5R、TA3、TA5R(懸濁重合品)、 ワッカー社製のVINNOL(登録商標)シリーズの塩酢ビ系樹脂として、VINNOL E15/45、E15/45M、E15/40M、E15/48A(乳液重合法品)、H15/50、H15/42、H14/36、H40/43、H11/59、H15/45M(懸濁重合法品);
荒川化学社製のロジンエステル系樹脂として、スーパーエステル75、エステルガムHP、マルキッド33;
安原ケミカル社製のテルペンフェノール系樹脂として、YSポリスター T80;
サートマー社製のスチレン−マレイン酸系樹脂として、SMA2625P等が挙げられる。
【0055】
前記バインダー樹脂のうち、インキ塗膜の耐アルコール性、耐擦性、光沢性等の点から、塩酢ビ樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。これらをそれぞれ単独で使用しても2種類以上混合しても良い。
【0056】
塩酢ビ系樹脂は、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体である。この重合法として、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の重合方法が挙げられる。本発明は、溶液重合または乳化重合により製造された塩酢ビ樹脂を使用することが好ましい。
塩化ビニルと酢酸ビニルの重量比として95:5〜70:30が好ましく、90:10〜80:20がより好ましい。
【0057】
アクリル系樹脂は、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルを含む重合体であり、本発明では、メタクリル酸エステルを含む重合体が好ましく、メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル(MMA)とメタクリル酸ブチル(BMA)の共重合体が好ましく使用される。MMAとBMAの重量比としては、100:0〜60:40が好ましく、90:10〜70:30がより好ましい。
【0058】
バインダー樹脂は、重量平均分子量Mwが3,000〜70,000が好ましく、更に、5,000〜60,000が好ましく、さらに、20,000〜60,000がより好ましい。Mwが3,000以上であれば、インキ塗膜の耐性が十分に発揮され、70,000以下であれば、微小なインクジェットプリンターヘッドからの吐出に負荷がかからず好ましい。上記範囲においては、分散剤との相溶性に優れ、白化現象が抑制される。
【0059】
塩酢ビ系樹脂の重量平均分子量Mwは3,000〜70,000が好ましく、5,000〜60,000が好ましく、さらに、30,000〜60,000がより好ましい。
【0060】
アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwは、3,000〜100,000が好ましく、5,000〜70,000が好ましく、さらに、20,000〜50,000がより好ましい。
【0061】
アクリル系樹脂の酸価(mg/KOH)は、0〜20が好ましく、0〜10がより好ましい。
【0062】
アクリル系樹脂のガラス転移温度は、0℃〜150℃が好ましく、20℃〜100℃がより好ましい。
【0063】
バインダー樹脂は、インキ総量中に1〜20重量%含まれることが好ましく、3〜10重量%が更に好ましい。インキ中に1重量%以上含まれると、記録媒体表面へのインキの密着性が向上し、インキ塗膜の耐性が良化する。20重量%以下では、インキ粘度が低粘度となり、インクジェット吐出適性が向上するために好ましい。
【0064】
塩酢ビ系樹脂は、インキ中1〜10重量%含有されることが好ましく、1〜5重量%含有することがより好ましい。
【0065】
アクリル系樹脂としては、インキ中1〜20重量%含有されることが好ましく、1〜10重量%含有することがより好ましい。
【0066】
〔記録媒体〕
本発明で用いられる記録媒体については特に限定はないが、軟質塩化ビニル、硬質塩化ビニル、ポリスチレン、発泡スチロール、PMMA、ポリプロピレン、ポリエチレン、PET、ポリカーボネート等のプラスチック基材やこれらの混合品または変性品、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙等の紙基材、ガラス、ステンレス等の金属基材等が挙げられる。中でも、価格、加工性の点から、非吸収性基材である、軟質塩化ビニルシート、硬質塩化ビニルシートが好ましく用いられる。
【0067】
〔インキの製造方法〕
本発明のインキは公知の方法によって製造することができるが、具体的には、以下のように行われる。まず始めに、単一もしくは混合有機溶剤、顔料、配合する場合にはバインダー樹脂、分散剤等を混合した後、ペイントシェーカー、サンドミル、ロールミル、メディアレス分散機等によって顔料を分散することで顔料分散体を調整し、得られた顔料分散体に、所望のインキ特性を有するように、有機溶剤の残部、バインダー樹脂の残部、その他添加剤(たとえば表面調整剤)を添加することで得られる。
【0068】
〔インクジェットインキの物性〕
本発明のインキは、インクジェットプリントヘッドからの吐出性、着弾後のドット形成の信頼性とのバランスの観点から、25℃における表面張力は20mN/m以上50mN/m以下であることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。同様の観点から、25℃における粘度は、2mPa・s以上20mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上15mPa・s以下がより好ましい。
なお、表面張力の測定は、協和界面科学社製 自動表面張力計CBVP−Zを用いて、25℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。粘度の測定は、東機産業社製 TVE25L型粘度計を用いて、25℃環境下で、50rpm時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
【0069】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限りそれぞれ「重量部」、「重量%」を表す。
【0071】
(顔料分散液の製造例)
顔料としてピグメントブルー15:4を20部、顔料分散樹脂としてソルスパース32000を10部、ジエチレングリコールジエチルエーテル70部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散液(Cyan)を得た。ピグメントブルー15:3をピグメントレッド122に変更し、同様の操作にて顔料分散液(Magenta)を得た。ピグメントブルー15:3をピグメントイエロー150に変更し、同様の操作にて顔料分散液(Yellow)を得た。ピグメントブルー15:3をピグメントブラック7に変更し、同様の操作にて顔料分散液A(Black)を得た。
【0072】
(実施例1)
顔料分散液(Cyan)を20部、ダイヤナールBR−113を4部、ジエチレングリコールジエチルエーテル6部、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート70部をディスパーで撹拌を行いながら順次投入し、十分に均一になるまで攪拌した。その後、メンブランフィルターで濾過を行い、ヘッドつまりの原因となる粗大粒子を除去し本発明のインクジェット用シアンインキを作成した。同様にして、顔料分散液(Magenta、Yellow、Black)を用いてマゼンタインキ、イエローインキ、ブラックインキを作成した。作成したインクジェット用インキを、VersaCAMM VS−540(ローランドディー・ジー社製インクジェットプリンタ)に充填し、ポリ塩化ビニルシートを印刷媒体として印刷評価を行った。
【0073】
(乾燥性評価)
上記プリンタにて印刷パス数を変化させ、印字率100%のベタ印刷を行った。それぞれの印刷物のモットリングの発生を観察し、乾燥性の評価を行った。評価基準は以下のとおりとした。
A:10m2/hの印刷速度で印刷したときにモットリングが発生しない
B:8m2/hの印刷速度で印刷したときにモットリングが発生しない
C:6m2/hの印刷速度で印刷したときにモットリングが発生しない
D:4m2/hの印刷速度で印刷したときにモットリングが発生しない
E:4m2/hの印刷速度で印刷したときでもモットリングが発生する
【0074】
(デキャップ性評価)
ヘッドに評価インキを充填し、初期でノズル抜けがないことを印字、確認したのち、一定時間放置し、再度印字した。このときノズル抜けが発生するか否かを確認した。
A:一週間放置後もノズル抜けしない
B:一日放置後もノズル抜けしない
C:三時間放置後もノズル抜けしない
D:一時間放置後もノズル抜けしない
E:一時間放置でノズル抜けが発生する
【0075】
(光沢評価)
乾燥性評価にて4m2/hの速度で印刷を行った印刷物の60°光沢度を測定した。評価基準は以下のとおりとした。
A:光沢度70以上
B:光沢度50〜70
C:光沢度30〜50
D:光沢度30〜10
E:光沢度10未満
【0076】
(耐擦性評価)
乾燥性評価にて4m2/hの速度で印刷を行った印刷物を学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業製 AB−301)により、摩擦子として金巾3号を用いて耐擦性評価を行った。荷重、往復回数を変え試験を行い、印字面の剥がれを評価した。評価基準は以下のとおりとした。
A:1kg荷重、100往復で印字面が剥がれない
B:1kg荷重、50往復で印字面が剥がれない
C:500g荷重、100往復で印字面が剥がれない
D:500g荷重、50往復で印字面が剥がれない
E:200g荷重、50往復で印字面が剥がれない
【0077】
(保存安定性評価)
作成したインキの粘度をE型粘度計(東機産業社製TVE−20L)を用いて、25℃において回転数50rpmという条件で測定した。このインキを70℃の恒温機に保存し、経時促進させた後、経時前後でのインキの粘度変化を評価した。評価基準は下記のとおりとした。
A:六週間保存後の粘度変化率が±10%未満
B:四週間保存後の粘度変化率が±10%未満
C:二週間保存後の粘度変化率が±10%未満
【0078】
(評価結果)
以上の評価試験の結果について、表1、表2に記載した。
【0079】
表1
【表1】
【0080】
表2
【表2】
【0081】
なお、表1、表2中で使用した成分は以下の通りである。
・樹脂(「ダイヤナールBR−113」三菱レイヨン社製アクリル樹脂、重量平均分子量30,000、ガラス転移点75℃、酸価3.5)
・BYK−331(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)
・BYK−323(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン)
・MEDG(ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、沸点176℃)
・DEDG(ジエチレングリコールジエチルエーテル、沸点189℃)
・MBDG(ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、沸点212℃)
・DMTeG(テトラエチレングリコールジメチルエーテル、沸点275℃)
・PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、沸点145℃)
・PGDA(ジプロピレングリコールジアセテート、沸点190℃)
・BGAc(エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、沸点192℃)
・DPMA(ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、沸点209℃)
・BDGAc(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、沸点247℃)
・GBL(γ−ブチロラクトン、沸点204℃)
・MOZ(3−メチル−2−オキサゾリジノン、沸点266℃)
【0082】
表1、表2記載の通り、実施例では溶剤Aと溶剤Bを併用することにより、乾燥性、デキャップ性、印刷物の光沢を高い水準で満たすことができている。特に複素環系溶剤、シリコン系界面活性剤を使用した実施例22〜25では全ての評価項目で高い評価を得ている。一方、比較例では乾燥性、デキャップ性、印刷物の光沢を満足するインキは得られていない。