特許第6720761号(P6720761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720761
(24)【登録日】2020年6月22日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】ラーメン構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/20 20060101AFI20200629BHJP
【FI】
   E04B1/20 A
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-153778(P2016-153778)
(22)【出願日】2016年8月4日
(65)【公開番号】特開2018-21394(P2018-21394A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤生 直人
(72)【発明者】
【氏名】叶 健佑
(72)【発明者】
【氏名】喜多 直之
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−024016(JP,A)
【文献】 特開2010−138643(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0083652(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/20 − 1/21
E04G 21/14
E01D 21/00
E04C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高架橋のラーメン構造を構築する方法において、
複数本の柱を間隔を置いて立設する工程と、
複数のプレキャストコンクリート部材を前記柱の配列方向に配列するよう前記柱の上方に揚重し、前記プレキャストコンクリート部材を接続することによって、前記柱に対応する複数の仕口部とそれら仕口部を接続する横梁とを有する接続体を形成し、前記接続体の仕口部を前記柱の上方に配置し、前記接続体の横梁を前記柱の上方の前記柱間に配置する接続工程と、
前記接続工程を行った後に、前記接続体を下降させて、前記仕口部の下端部と前記柱の上端部のうち一方から突出した主筋を他方に設けられたスリーブ継手に挿入する下降工程と、を備えることを特徴とするラーメン構造の構築方法。
【請求項2】
前記接続工程では、前記柱の側面に設置された基台上に駒台を複数段に設置するとともに、架台を前記柱間に掛け渡すように前記駒台上に設置した上で、前記接続体を前記架台上に設置し、
前記下降工程では、前記基台上に設置したジャッキによって前記架台及び前記接続体を支持した状態で、前記駒台を一段ずつ取り外しながら前記ジャッキにより前記架台及び前記接続体を下降させることを特徴とする請求項1に記載のラーメン構造の構築方法。
【請求項3】
前記柱の数が2本であり、
前記プレキャストコンクリート部材のうち両側の第一プレキャストコンクリート部材は、前記仕口部と、前記仕口部から延出した梁部とを有し、
前記接続工程では、前記プレキャストコンクリート部材のうち前記第一プレキャストコンクリート部材の間の第二プレキャストコンクリート部材を前記梁部間に接続することを特徴とする請求項1又は2に記載のラーメン構造の構築方法。
【請求項4】
前記柱の数が2本であり、前記プレキャストコンクリート部材の数が2体であり、前記プレキャストコンクリート部材は、前記仕口部と、前記仕口部から延出した梁部とを有し、
前記接続工程では、前記プレキャストコンクリート部材の前記梁部同士を接続することを特徴とする請求項1又は2に記載のラーメン構造の構築方法。
【請求項5】
前記下降工程後に、前記スリーブ継手にグラウトを充填するとともに、前記仕口部の下端面と前記柱の上端面との間にグラウトを充填するグラウト充填工程を更に備える請求項1から4の何れか一項に記載のラーメン構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラーメン構造を構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、隣り合う柱の上端部間に梁をプレキャスト工法により構築する技術が開示されている。以下、特許文献1で用いられた符号を括弧書きで表記し、特許文献1に記載の技術について簡単に説明する。
特許文献1に記載の方法では、まず、PC柱(4−1)の上部に仕口パネル部材(3)を設置し、鉄筋(4a)を仕口パネル部材(3)の上から仕口パネル部材(3)に貫通させて、鉄筋(4a)の下部をPC柱(4−1)の上部の柱主筋用継手(4c)に定着する。これにより、PC柱(4−1)と仕口パネル部材(3)を接合する。
次に、PC梁(1)をその一端が仕口パネル部材(3)の側面に向くように横方向に移動させ、PC梁(1)の一端から突出する梁主筋(1a)を仕口パネル部材(3)の側面の梁主筋孔(3a)に挿入する。
次に、隣りの仕口パネル部材(3)の側面をPC梁(1)の他端に向けて横方向に移動させ、仕口パネル部材(3)を隣りのPC柱(4−2)の上部に設置する。そして、鉄筋(4a)を仕口パネル部材(3)の上方から下方へ貫通させて、鉄筋(4a)の下部をPC柱(4−2)の上部の柱主筋用継手(4c)に定着する。これにより、PC柱(4−2)と仕口パネル部材(3)を接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−278257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の技術を鉄道等の高架橋のラーメン構造の構築に適用することが考えられる。しかし、高架橋においては、地震時等に仕口パネル部材(3)の表層部分の被りコンクリートが脱落するのを防止するべく、仕口パネル部材(3)とPC柱(4)とを接続する鉄筋(4a)の上端部をU字型のフック状にする必要がある。このように鉄筋(4a)の上端部をU字型とすると、仕口パネル部材(3)の上に配筋される他の鉄筋(例えばスラブ筋、梁主筋等)に干渉して、仕口パネル部材(3)の上方から鉄筋(4a)を挿入することができない。従って、仕口パネル部材(3)の作製時に予め鉄筋(4a)を設けておく必要があり、特許文献1に記載の技術をそのまま高架橋のラーメン構造の構築に応用することができない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、高架橋のラーメン構造を構築するにあたり、鉄筋を仕口部にその上方から貫通させることなく、仕口部と柱とを接合できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための発明は、高架橋のラーメン構造を構築する方法において、複数本の柱を間隔を置いて立設する工程と、複数のプレキャストコンクリート部材を前記柱の配列方向に配列するよう前記柱の上方に揚重し、前記プレキャストコンクリート部材を接続することによって、前記柱に対応する複数の仕口部とそれら仕口部を接続する横梁とを有する接続体を形成し、前記接続体の仕口部を前記柱の上方に配置し、前記接続体の横梁を前記柱の上方の前記柱間に配置する接続工程と、前記接続工程を行った後に、前記接続体を下降させて、前記仕口部の下端部と前記柱の上端部のうち一方から突出した主筋を他方に設けられたスリーブ継手に挿入する下降工程と、を備えることを特徴とするラーメン構造の構築方法ある。
【0007】
以上の発明によれば、複数のプレキャストコンクリート部材を柱の上方に揚重するので、これらプレキャストコンクリート部材を接続する際に、仕口部の下端部と柱の上端部とのうち一方から延出した主筋が他方に干渉しないようにすることできる。つまり、その主筋が仕口部又は柱に予め設けられた状態でも、複数のプレキャストコンクリート部材を接続することができる。そして、その後の下降工程でプレキャストコンクリート部材の接続体を下降させて、主筋をスリーブ継手に挿入するので、柱の上への仕口部の設置後に鉄筋を仕口部の上から仕口部に貫通させる作業を必要としない。
【0008】
好ましくは、前記接続工程では、前記柱の側面に設置された基台上に駒台を複数段に設置するとともに、架台を前記柱間に掛け渡すように前記駒台上に設置した上で、前記接続体を前記架台上に設置し、前記下降工程では、前記基台上に設置したジャッキによって前記架台及び前記接続体を支持した状態で、前記駒台を一段ずつ取り外しながら前記ジャッキにより前記架台及び前記接続体を下降させる。
【0009】
以上によれば、架台を柱間に掛け渡すように駒台上に設置したので、複数のプレキャストコンクリート部材をクレーン等の揚重機によって順次揚重して、架台に設置することができる。また、プレキャストコンクリート部材を架台で支持しながら、プレキャストコンクリート部材を接続することができる。よって、揚重機の最大揚重能力が低くても済む。
駒台を一段ずつ取り外しながらジャッキにより架台及びプレキャストコンクリート部材の接続体を下降させるので、プレキャストコンクリート部材の接続体の姿勢が安定し、主筋をスリーブ継手にしやすい。
【0010】
好ましくは、前記柱の数が2本であり、前記プレキャストコンクリート部材のうち両側の第一プレキャストコンクリート部材は、前記仕口部と、前記仕口部から延出した梁部とを有し、前記接続工程では、前記プレキャストコンクリート部材のうち前記第一プレキャストコンクリート部材の間の第二プレキャストコンクリート部材を前記梁部間に接続する。
【0011】
好ましくは、前記柱の数が2本であり、前記プレキャストコンクリート部材の数が2体であり、前記プレキャストコンクリート部材は、前記仕口部と、前記仕口部から延出した梁部とを有し、前記接続工程では、前記プレキャストコンクリート部材の前記梁部同士を接続する。
【0012】
好ましくは、前記構築方法は、前記下降工程後に、前記スリーブ継手にグラウトを充填するとともに、前記仕口部の下端面と前記柱の上端面との間にグラウトを充填するグラウト充填工程を更に備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鉄筋を仕口部の上から仕口部に貫通させることなく、仕口部と柱を接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、高架橋のラーメン構造の斜視図である。
図2図2は、ラーメン構造の構築方法の一工程を示した斜視図である。
図3図3は、図2に示す工程の後の工程を説明するため斜視図である。
図4図4は、図3に示す工程の後の工程を説明するため斜視図である。
図5図5は、図3及び図4に示す工程の中の一工程を説明するための正面図である。
図6図6は、図5に示す矢印Aの方向に見て示した拡大側面図である。
図7図7は、図5に示す工程の後の工程を説明するための正面図である。
図8図8は、図7に示す矢印Aの方向に見て示した拡大側面図である。
図9図9は、図7に示す工程の後の工程を説明するための正面図である。
図10図10は、図4図9に示す工程の後の工程を説明するための斜視図である。
図11図11は、図10に示す工程の中の一工程を示した拡大側面図である。
図12図12は、図11に示す工程の後の工程を説明するための正面図である。
図13図13は、図12に示す矢印Aの方向に見て示した拡大側面図である。
図14図14は、図12に示す工程の後の工程を説明するための正面図である。
図15図15は、図14に示す矢印Aの方向に見て示した拡大側面図である。
図16図16は、図14に示す工程の後の工程を説明するための正面図である。
図17図17は、図16に示す矢印Aの方向に見て示した拡大側面図である。
図18図18は、図16に示す工程の後の工程を説明するための正面図である。
図19図19は、図18に示す矢印Aの方向に見て示した拡大側面図である。
図20図20は、図18に示す工程の後の工程を説明するための正面図である。
図21図21は、図10図20に示す工程の後の工程を説明するための斜視図である。
図22図22は、図21に示す工程の後の工程を説明するための斜視図である。
図23図23は、図22に示す工程の後の工程を説明するための斜視図である。
図24図24は、図23に示す工程の後の工程を説明するための斜視図である。
図25図25は、図24に示す工程の後の工程を説明するための斜視図である。
図26図26は、図25に示す工程の後の工程を説明するための斜視図である。
図27図27は、図26に示す工程の後の工程を説明するための斜視図である。
図28図28は、変形例に係るラーメン構造の構築方法の一工程における柱上部を示した正面拡大図である。
図29図29は、別の変形例に係るラーメン構造を示した正面図である。
図30図30は、図29に示すラーメン構造の構築方法の一工程を示した正面図である。
図31図31は、別の変形例に係るラーメン構造の構築方法の一工程を示した正面図である。
図32図32は、別の変形例に係るラーメン構造の構築方法の一工程を示した正面図である。
図33図33は、別の変形例に係るラーメン構造の構築方法の一工程を示した正面図である。
図34図34は、一対の仕口部及び横梁を有する接続体の構成要素となるプレキャストコンクリート部材の各種の形態を示した概略図正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0016】
1. 鉄道高架橋のラーメン構造の構成
図1は、鉄道高架橋のラーメン構造1の一部分を示した斜視図である。このラーメン構造は、プレキャスト工法により構築されたものである。
【0017】
図1に示すように、ラーメン構造1は、橋軸方向に所定間隔を置いて配列された複数の門形ラーメン構造5,5…と、最前列のラーメン構造5から橋軸方向に所定間隔を置いて配置された門形ラーメン構造2と、門形ラーメン構造2,5,5…の隣り同士の間に架設された縦梁8とを備える。門形ラーメン構造2は、ラーメン構造1の橋軸方向端部に設けられる門形ラーメン構造である。
【0018】
門形ラーメン構造2は、橋幅方向に間隔を置いた状態で地中の基礎上に立設された2本の柱20,20と、これら柱20,20の上端間に架設された横梁30と、を有する。門形ラーメン構造5も同様に、橋幅方向に間隔を置いた状態で地中の基礎上に立設された2本の柱50,50と、これら柱50,50の上端間に架設された横梁60と、を有する。
【0019】
門形ラーメン構造2とその隣りの門形ラーメン構造5との間には2本の縦梁8が設けられている。具体的には、これら縦梁8は、柱20と横梁30の仕口部40と、柱50と横梁60の仕口部70との間に架設されている。
隣合う門形ラーメン構造5,5の間にも2本の縦梁8が設けられている。具体的には、これら縦梁8は、隣り合う門形ラーメン構造5の仕口部70の間に架設されている。
従って、柱20,50,50…が橋軸方向に所定間隔を置いた状態で2列に配列され、縦梁8が柱20,50,50…の橋軸方向隣り同士の上端間に架設されていることになる。
仕口部40,70の上面には、複数の鉄筋が突出しており、これら鉄筋の突き出た部分は、U字型に折り返されてフック状に設けられている。
なお、縦梁8、横梁30及び横梁60によって囲まれた領域を塞ぐように、スラブが縦梁8、横梁30、横梁60、仕口部40及び仕口部70上に設けられる。
【0020】
2. 鉄道高架橋のラーメン構造の構築方法
以下に、ラーメン構造1の構築方法について説明する。
【0021】
(1)門形ラーメン構造2,5の柱20,50の施工工程
図2に示すように、門形ラーメン構造2の柱20,20を組み立てる。具体的には、柱用プレキャストコンクリート部材(以下、「プレキャストコンクリート」を「PC」と略記する。)21の下端を基礎に接合し、柱用PC部材21の上端に柱用PC部材22の下端を接合する。
ここで、柱用PC部材22の下端面から複数の主筋が突出している。一方、柱用PC部材21の上端部には、柱用PC部材21の主筋に接続された筒状のスリーブ継手が埋設されており、柱用PC部材22の下端面から突出する主筋を柱用PC部材21のスリーブ継手に挿入した上で、スリーブ継手の内部にグラウトを充填するとともに、柱用PC部材21の上端面と柱用PC部材22の下端面との間の隙間にグラウトを充填する。そして、柱用PC部材21のスリーブ継手に充填されたグラウトが硬化することによって、柱用PC部材21、22が接合される。
【0022】
門形ラーメン構造5の柱50,50も、門形ラーメン構造2の柱20と同様に、柱用PC部材51,52を接合することにより構築されている。
これら柱20,50,50…の施工は、例えば、橋軸方向の一端側から他端側に向かう順で行うことが好ましい。
【0023】
なお、上側の柱用PC部材22,52の上端部にも、柱用PC部材22,52の主筋に接続された筒状のスリーブ継手23,53が埋設されている。
【0024】
(2)門形ラーメン構造2の横梁30及び仕口部40の施工工程
図3に示すようにクレーン等によって第一PC部材31、第二PC部材32及び第一PC部材31をこれらの順に柱20の上端面よりも高い位置まで揚重し、図4に示すようにこれらPC部材31,32,31を橋幅方向に近接するように移動させることにより横梁30及び仕口部40を一体化して構築するが、その詳細は後述する。
【0025】
図3に示すように、PC部材31は、仕口部31aと、仕口部31aから橋幅方向に延出した梁部31bと、を有する。仕口部31aは完成後の仕口部40に相当し、梁部31bは完成後の横梁30の端部に相当する。仕口部31aの下面から複数の柱主筋31cが下向きに突出し、仕口部31aの橋軸方向に向いた面から縦梁主筋31eが橋軸方向に突出し、梁部31bの端面から複数の横梁主筋31dが橋幅方向に突出している。また、PC部材32は完成後の横梁30の中央部に相当し、PC部材32の両端部には、スリーブ継手32aが埋設されている。なお、図3に示す例では、一方のPC部材31の梁部31bと他方のPC部材31の梁部31bとは長さが等しいが、これに限らず、これらの長さが異なってもよい。
【0026】
このようなPC部材31,32,31を柱20の上端面よりも高い位置まで揚重するので、これらPC部材31,32,31を橋幅方向に接続する際に、PC部材31の仕口部31aの下面から突出した柱主筋31cが柱20に干渉しない。
【0027】
以下、第一PC部材31,第二PC部材32及び第一PC部材31から横梁30及び仕口部40を構築する工程について、図5図9を参照して詳細に説明する。図5図7及び図9は橋軸方向に向かって見た正面図であり、図6及び図8は矢印Aの方向に向かって見た柱20の上部の拡大側面図である。図5図7及び図9において、2点鎖線で示される作業足場29は、柱20の施工の際に柱20を取り囲むように設置されたものである。なお、以下において、横梁30の両端を構成する一対の第一PC部材31,31を区別する場合は、第一PC部材31A、第一PC部材31Bと称し、また、一対の柱20,20を区別する場合は、第一PC部材31A側の柱20を柱20Aと称し、第一PC部材31B側の柱20を柱20Bと称するものとする。
【0028】
(2−1)架台90の設置
図5及び図6に示すように、門形ラーメン構造2を構成する両側の柱20A,20Bの間隔より短いH形鋼からなる架台90を、柱20A,20Bの間にそれらの上端面よりも高い位置に設置する。具体的には、両側の柱20A,20Bの上部に基台91、駒台92及び下部架台93を取り付けた上で、架台90を両側の柱20の下部架台93間に架け渡すようにして下部架台93上に組み付ける。ここで、形鋼からなる基台91を柱20A,20Bの上部の側面(橋幅方向に互いに対向する面)にボルトによって固定し、H形鋼からなる駒台92を基台91の上に2列且つ複数段に積み上げるようにボルトによって固定し、H形鋼からなる下部架台93を最上段の駒台92間に掛け渡すようにして最上段の駒台92上にボルトによって固定する。
【0029】
(2−2)ジャッキ99の設置
図6に示すように、基台91上に駒台97を設置した上で、下部架台93及び架台90を下から支持するためのジャッキ99を駒台97上に設置する。ジャッキ99は例えば油圧式のジャッキである。
【0030】
(2−3)PC部材31A,32,31Bの揚重及び仮組
図7及び図8に示すように、一方のPC部材31Aをクレーン等によって一方の柱20Aの上方に揚重して、PC部材31Aの仕口部31aの下端面から突出する主筋31cが柱20Aと干渉しないように柱20Aの上端面から離間させた状態で、PC部材31Aを架台90上に上部架台94を介して仮設置する。この際、仕口部31aの下端面から突出した柱主筋31cを上側の柱用PC部材22の上端部のスリーブ継手23(図3参照)の真上に位置合わせするが、この時点では、スリーブ継手23に挿入せず、柱主筋31cの先端が柱20Aの上面から上方に離間した状態とする。これは、後述のように他方のPC部材31BをPC部材32に組み付けるべく移動させる際に、当該他方のPC部材31Bの柱主筋31cが他方の柱20Bに干渉するのを防止するためである。
【0031】
次に、柱20Aの上部の、他方の柱20Bとは反対側の側面に、ブラケット96を柱20Aの上端面よりも上方へ延出させるように取り付けて、そのブラケット96をPC部材31Aの仕口部31aの側面にも取り付けて、ブラケット96によりPC部材31Aを柱20Aに仮固定する。なお、上述のように架台90の上面に上部架台94を設置して、PC部材31Aを架台90上に上部架台94を介して仮設置したが、このように仮設置したPC部材31Aの仕口部31aから突出する柱主筋31cの先端が柱20の上端面から離間した状態であり、PC部材31Aの橋幅方向の位置決めがブラケット96によってなされる。
【0032】
次に、PC部材32を架台90上に揚重して、PC部材32の端面をPC部材31Aの梁部31bの端面に対向させる。そして、PC部材32を橋幅方向にPC部材31Aに近づけて、梁部31bから突出した横梁主筋31dをPC部材32の端部のスリーブ継手32aに挿入することにより、PC部材32をPC部材31Aに仮組みする。
【0033】
次に、他方のPC部材31Bを他方の柱20Bの上方に揚重して、そのPC部材31Bの梁部31bの端面をPC部材32の端面に対向させる。そして、そのPC部材31Bを橋幅方向にPC部材32に近づけて、梁部31bから突出した横梁主筋31dをPC部材32の端部のスリーブ継手32aに挿入する。これによりPC部材31BをPC部材32に仮組みする。
【0034】
そして、図9に示すように、PC部材31Bの仕口部31aから突出する柱主筋31cの先端が柱20の上端面から離間した状態で、PC部材31Bを架台90上に上部架台94を介して仮設置する。この際、PC部材31Bの仕口部31aの下端面から突出した柱主筋31cを柱20Bの柱用PC部材22の上端部のスリーブ継手23(図4参照)の真上に位置合わせする。
【0035】
以上のように、架台90を柱20の上端面よりも高い位置において柱20間に掛け渡すように駒台92及び下部架台93上に設置したので、PC部材31A,32,31Bをクレーンによって順次揚重した上で、これらPC部材31A,32,31Bを架台90上に仮設置することができる。つまり、PC部材31A,32,31Bを個別にクレーンによって揚重するので、クレーンの最大揚重能力が低くても済む。
【0036】
その後、柱20Bの上部の、他方の柱20Aとは反対側の側面に、ブラケット96を柱20Bの上端面よりも上方へ延出させるように取り付ける。次の下降工程をすぐに行えない場合には、このブラケット96をPC部材31Bの仕口部31aの側面にも取り付けて、PC部材31Bを柱20Bに仮固定する。なお、このブラケット96は、PC部材31Bの橋幅方向の位置決めに用いられる。
【0037】
(3)PC部材31A,32,31Bの接続体の下降工程
以上のように、柱20の上端面よりも高い位置でPC部材31A,32,31Bを接続したら、図10に示すようにこれらPC部材31A,32,31Bの接続体を下降させることにより、両側の仕口部31aの下面から突出する柱主筋31cを両側の柱用PC部材22の上端部のスリーブ継手23に挿入する。
以下、PC部材31A,32,31Bの下降工程について、図11図19を参照して詳細に説明する。図12図14図16及び図18は橋軸方向に向かって見た正面図であり、図11図13図15図17及び図19は矢印Aの方向に向かって見て示した柱20の上部の拡大側面図である。
【0038】
(3−1)ジャッキ99による支持
図11に示すように、ジャッキ99に油圧機器98を接続する。そして、油圧機器98によってジャッキ99に油圧を供給することにより、ジャッキ99を下部架台93の下面に当接するまで伸長させて、ジャッキ99により下部架台93、架台90、上部架台94を介してPC部材31A,32,31Bを支持する。すなわち、PC部材31A,32,31Bの荷重を駒台92からジャッキ99に受け替える。
【0039】
(3−2)駒台92の取り外し
この状態で、図12及び図13に示すように、一段分の駒台92を取り外す。更に、ブラケット96をPC部材31Aの仕口部31aから取り外す。また、PC部材31Bをブラケット96により仮止めした場合も、そのブラケット96をPC部材31Bから外す。
【0040】
(3−3)ジャッキ99による下降
次に、図14及び図15に示すように、ジャッキ99によって、取り外した駒台92の高さ分だけ、下部架台93、架台90、上部架台94及びPC部材31A,32,31Bを下降させる。この状態では、PC部材31A,32,31Bの荷重は、再び、残った駒台92によって支持される。また、PC部材31A,32,31Bの下降によって、仕口部31aの下側にある柱主筋31cの先端部が柱用PC部材22の上端部のスリーブ継手23に挿入される。
【0041】
(3−4)ジャッキ99による再支持
図16及び図17に示すように、ジャッキ99の下の駒台97を取り外して、ジャッキ99を基台91上に直接設置する。そして、油圧機器98によってジャッキ99を下部架台93にまで伸長させて、ジャッキ99により下部架台93、架台90、上部架台94を介してPC部材31A,32,31Bを支持する。すなわち、PC部材31A,32,31Bの荷重を再びジャッキ99に受け替える。
【0042】
(3−5)駒台92の取り外し
次に、図16及び図17に示すように、ジャッキ99によりPC部材31A,32,31Bの荷重を支持した状態で、一段分の駒台92を取り外す。
【0043】
(3−6)ジャッキ99による再下降
次に、図18及び図19に示すように、ジャッキ99によって、取り外した駒台92の高さ分だけ、下部架台93、架台90、上部架台94及びPC部材31A,32,31Bを下降させる。この状態では、PC部材31A,32,31Bの荷重は、再び、残った駒台92によって支持される。また、PC部材31A,32,31Bの下降によって、PC部材31A,31Bの仕口部31aの下面から突出する柱主筋31cのほぼ全体が柱20A,20Bの上端部のスリーブ継手23に挿入される。
なお、PC部材31A,32,31Bの下降後も、PC部材31A,31Bの仕口部31aの下端面と柱20A,20Bの上端面との間には、グラウトを注入できる程度の隙間が空いている。
【0044】
(3−7)仮固定
上記のように柱20Aに取り付けておいたブラケット96を、PC部材31Aの仕口部31aの側面に固定する。これにより、PC部材31Aの仕口部31aの下端面と柱20Aの上端面との間にグラウトを注入できる程度の隙間を空けた状態で、ブラケット96によってPC部材31Aと柱20Aを仮固定する。同様に、反対側のブラケット96によってPC部材31Bと柱20Bを仮固定する。
【0045】
以上のように、駒台92を一段ずつ取り外しながらジャッキ99によりPC部材31A,32,31Bの接続体及び架台90を下降させるので、PC部材31A,32,31Bの接続体の姿勢が安定し、柱主筋31cをスリーブ継手23に挿入しやすい。特に、ジャッキ99のストロークを短くすることができるので、ジャッキ99によってPC部材31A,32,31Bの接続体及び架台90を安定して支持することができる。
【0046】
(4)グラウトの充填工程
次に、図20に示すように、上側の柱用PC部材22の上端部のスリーブ継手23にグラウトを充填するとともに(モルタル充填工法)、仕口部31aの下端面と柱用PC部材22の上端面との間の隙間にグラウト38を充填する。柱用PC部材22の上端部のスリーブ継手23に充填されたグラウトが硬化することによって、柱主筋31cが柱用PC部材21の主筋に連結される。
また、PC部材32の端部のスリーブ継手32aにグラウトを充填するとともに(モルタル充填工法)、PC部材32の端面と梁部31bの端面との間にグラウトを充填する。PC部材32の端部のスリーブ継手32aに充填されたグラウトが硬化することによって、横梁主筋31dがPC部材32の主筋に連結される。
グラウトが硬化したら、ブラケット96、基台91、駒台92、下部架台93、架台90、上部架台94及びジャッキ99を撤去する。
以上により、門形ラーメン構造2が完成する。
なお、(4)の工程は、後述の「(5)縦梁8の設置工程」の後に行ってもよく、例えば後述の「(6)グラウトの充填工程」と並行して行ってもよい。
【0047】
(5)縦梁8の設置工程
以上のように門形ラーメン構造2を施工したら、図21に示すように縦梁用PC部材80をクレーン等によって揚重して、縦梁用PC部材80の長手方向を橋軸方向にして縦梁用PC部材80の端面を仕口部31aの側面に向ける。ここで、この縦梁用PC部材80は完成後の縦梁8に相当する。縦梁用PC部材80の両端面には、スリーブ継手81が埋設されている。なお、図21では、一方の端部に埋設されたスリーブ継手81が図示されているが、反対側の端部にもスリーブ継手81が埋設されている。
【0048】
その後、図22に示すように、縦梁用PC部材80を橋軸方向に仕口部31aに向けて移動させて、縦梁用PC部材80のスリーブ継手81に仕口部31aから突出する縦梁主筋31eを挿入する。そして、縦梁用PC部材80の端面と仕口部31aの側面との間に隙間を空けた状態で、縦梁用PC部材80を支保工等によって支持する。
【0049】
(6)グラウトの充填工程
次に、スリーブ継手81にグラウトを充填するとともに、縦梁用PC部材80と仕口部31aとの間の隙間にもグラウトを充填する。これらの充填されたグラウトが硬化することによって、仕口部31aに縦梁用PC部材80が接合される。
【0050】
(7)門形ラーメン構造5の横梁60及び仕口部70の施工工程
次に、図23に示すようにクレーン等によって2体のPC部材61,61を順に柱20の上方に揚重し、図24に示すようにこれらPC部材61,61を橋幅方向に近接するように移動させることにより接続する。これにより、横梁60及び仕口部70を一体化して構築するが、その詳細は後述する。なお、以下において、一対のPC部材61,61を区別する場合は、一方をPC部材61Aと、他方をPC部材61Bと称し、また、一対の柱50,50を区別する場合は、PC部材61A側の柱50を柱50Aと称し、PC部材61B側の柱50を柱50Bと称するものとする。
【0051】
図23に示すように、PC部材61Aは、仕口部61aと、仕口部61aから橋幅方向に延出した梁部61bと、を有し、PC部材61Bも同様に仕口部61a及び梁部61bを有する。PC部材61A,61Bの何れにおいても、仕口部61aは完成後の仕口部70に相当し、梁部61bは完成後の横梁60の半体に相当する。また、PC部材61A,61Bの何れにおいても、仕口部61aの下面から複数の柱主筋61cが下向きに突出し、仕口部61aには貫通孔61fが橋軸方向に貫通するように形成されている。一方のPC部材61Bの梁部61bの端面から複数の横梁主筋61dが橋幅方向に突出し、他方のPC部材61Aの梁部61bの端部には、スリーブ継手61eが埋設されている。
【0052】
また、門形ラーメン構造2を施工する場合と同様に(上記(2)参照)、架台90、基台91、駒台92、下部架台93、上部架台94、駒台97及びジャッキ99を柱20の上部に設置して、PC部材31、PC部材32及びPC部材31を組み付ける場合と同様にして(図5図9参照)、架台90、基台91、駒台92、下部架台93、上部架台94、駒台97及びジャッキ99を柱50の上部に設置して、PC部材61A,61Bを柱50A,50Bの上方で組み付けて、PC部材61A,61Bを架台90上に仮設置する。具体的には、まずPC部材61Aをクレーンによって柱50Aの上方に揚重して、PC部材61Aの仕口部61aの下面から突出する柱主筋61cを柱50Aの上端部のスリーブ継手53の真上に位置合わせし、PC部材61Aを架台90上に上部架台94を介して仮設置する。次に、PC部材61Bをクレーンによって柱50Bの上方に揚重して、PC部材61Bの梁部61bの端面をPC部材61Aの梁部61bの端面に対向させた状態で、PC部材61BをPC部材61Aに近づけて、横梁主筋61dをスリーブ継手61eに挿入する。そして、PC部材61Bの仕口部61aの下面から突出する柱主筋61cを柱50Bのスリーブ継手53の真上に位置合わせし、PC部材61Aを架台90上に上部架台94を介して仮設置する。
【0053】
(8)門形ラーメン構造5の横梁60及び仕口部70の下降工程
次に、上述の「(3)PC部材31A,32,31Bの下降工程」のようなPC部材31A,32,31Bの下降と同様にして、図25に示すようにPC部材61A,61Bをジャッキによって下降させることにより、PC部材61A,61Bの仕口部61aの下端面から突出した柱主筋61cを柱50A,50Bの上端部のスリーブ継手53に挿入する。ここで、縦梁用PC部材80のスリーブ継手(図21に図示のスリーブ継手81の反対側のスリーブ継手)に仕口部61aの貫通孔61f(図23参照)を対向させるよう、貫通孔61fの位置合わせをする。
【0054】
(9)グラウトの充填工程
次に、上述の「(4)グラウトの充填工程」と同様にして、上側の柱用PC部材52の上端面のスリーブ継手53にグラウトを充填するとともに、仕口部61aの下端面と柱用PC部材62の上端面との間の隙間にグラウトを充填する。以上により門形ラーメン構造2の隣りの門形ラーメン構造5が完成する。なお、(9)の工程は、例えば後述の「(11)グラウトの充填工程」と並行して行ってもよい。
【0055】
(10)縦梁8の設置工程
以上のように門形ラーメン構造5を施工したら、図26に示すように縦梁用PC部材83をクレーン等によって揚重して、縦梁用PC部材83の長手方向を橋軸方向にして縦梁用PC部材83の端面を仕口部61aに向ける。ここで、この縦梁用PC部材83は完成後の縦梁8に相当する。また、縦梁用PC部材83の一方の端面(仕口部61aに向けられた端面)から複数の縦梁主筋84が突出しており、他方の端部には複数のスリーブ継手(図示略)が設けられている。
【0056】
その後、図27に示すように、縦梁用PC部材83を橋軸方向に仕口部61aに近接させる。この際、縦梁主筋84を仕口部61aの貫通孔61f(図23参照)に貫通させて、更に縦梁用PC部材80のスリーブ継手(図21に図示のスリーブ継手81の反対側のスリーブ継手)に挿入する。
そして、縦梁用PC部材83の端面と仕口部61aとの間に隙間を空けた状態で、縦梁用PC部材83を支保工等によって支持する。
【0057】
(11)グラウトの充填工程
次に、縦梁用PC部材80のスリーブ継手(図21に図示のスリーブ継手81の反対側のスリーブ継手)及び仕口部61aの貫通孔61f(図23参照)にグラウトを充填するとともに、縦梁用PC部材83の端面と仕口部61aとの間の隙間にもグラウトを充填する。
【0058】
(12)
上記(7)〜(11)の工程と同様にして、門形ラーメン構造5の横梁60及び仕口部70の構築と縦梁8の設置を交互に実施する。
以上によりラーメン構造1が完成する。その後、縦梁8、横梁30及び横梁60によって囲われた領域をスラブによって塞ぐようにして、スラブを縦梁8、横梁30、横梁60、仕口部40及び仕口部70上に構築する。
【0059】
3. 効果
(a) 図3に示すようにPC部材31A,32,31Bを柱20A,20Bの上端面よりも高い位置まで揚重するので、PC部材31A,31Bの仕口部31aの下面から柱主筋31cが突出する状態でも、柱主筋31cが柱20A,20Bに干渉することなく、図4に示すようにPC部材31A,32,31Bを橋幅方向に接続することができる。その後、図10に示すように、PC部材31A,32,31Bの接続体を下降させて、PC部材31A,31Bの柱主筋31cを柱20A,20Bの上端面のスリーブ継手23に挿入するので、鉄筋を仕口部31aに上方から下方へ貫通させることなく、PC部材31A,31Bの仕口部31aと柱20A,20Bとを接合することができる。門形ラーメン構造5を構築する際にも、PC部材61A,61Bを柱50A,50Bの上端面よりも高い位置まで揚重するので、同様の効果を奏する。
【0060】
(b) 架台90を柱20間に掛け渡すように駒台92及び下部架台93上に設置し、架台90でPC部材31A,32,31Bを支持しながら、PC部材31A,32,31Bを橋幅方向に接続するので、クレーンの最大揚重能力が低くてすむ。門形ラーメン構造5を構築する際にも、架台90、基台91、駒台92、下部架台93及び上部架台94を柱50の上部に設置するので、同様の効果を奏する。
【0061】
(c) 駒台92を一段ずつ取り外しながらジャッキ99によりPC部材31A,32,31Bの接続体及び架台90を下降させるので、下降の際のPC部材31A,32,31Bの接続体の姿勢が安定して、柱主筋31cをスリーブ継手23に挿入しやすい。門形ラーメン構造5を構築する際にも、架台90、基台91、駒台92、下部架台93、上部架台94、駒台97及びジャッキ99を柱50A,50Bの上部に設置するので、同様の効果を奏する。
【0062】
4. 変形例
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。以下に、以上の実施形態からの変更点について説明する。以下に説明する変更点は、可能な限り組み合わせて適用してもよい。
【0063】
(a) 上記実施形態では、複数の柱主筋31cが仕口部31aの下面から突出し、複数のスリーブ継手23が柱用PC部材22の上端部に設けられていたが、これに限らず、図28に示すように、複数の柱主筋24が柱用PC部材22の上端面から突出し、複数のスリーブ継手31fが仕口部31aの下端部に埋設されていてもよい。この場合、上記(3)の工程において、PC部材31A,32,31Bの接合体を下降させると、柱主筋24がスリーブ継手31fに挿入される。
門形ラーメン構造5についても同様に、仕口部61aの下面から複数の柱主筋が突出し、柱用PC部材52の上端部にスリーブ継手が埋設されていてもよい。
【0064】
(b) 上記実施形態では、門形ラーメン構造2は両側の2本の柱20A,20Bを備えていたが、これに限らず、図29に示すように、例えば、両側の柱20A,20Bの間隔が大きい場合には、これら柱20A,20Bの間に1本又は複数本の柱を備えている(つまり、2スパン以上の門形ラーメン構造である)こととしてもよい(図29には中央部に一本の柱25を備える2スパンの場合を示す。)。ラーメン構造5についても同様である。
【0065】
この場合、図29に示すように、一方の横梁30が一方の柱20Aと柱25の上端間に架設され、他方の横梁30が他方の柱20Bと柱25の上端間に架設されている。
【0066】
図29に示すラーメン構造を構築する場合には、まず、図30に示すように両側の柱20A,20Bを上述の実施形態と同様に施工するとともに、それらの間に柱25を施工する(図30参照)。柱25の施工も、下側の柱用PC部材26と柱用PC部材27とを柱20と同様にして接合することにより。なお、柱用PC部材27についても柱用PC部材22と同様に、柱用PC部材27の上端部にスリーブ継手28が埋設されている。
【0067】
次に、上記(2)の工程と同様にして、クレーン等によってPC部材31A、PC部材32、PC部材33、PC部材32及びPC部材31Bをこれらの順に柱20A,25,20Bの上方に揚重し、図30に示すようにこれらPC部材31A、PC部材32、PC部材33、PC部材32及びPC部材31Bを橋幅方向に近接して接続する。これにより、柱20A,25,20Bの上方において、両側の仕口部40、中央の仕口部45及び横梁30を組み立てる。ここで、PC部材31A,32,32,31Bは上述の実施形態と同様のものである。また、PC部材33は、仕口部33aと、仕口部33aから橋幅方向の両側に延出した一対の梁部33bと、を有する。仕口部33aは完成後の仕口部45に相当し、梁部33bは完成後の横梁30の端部に相当する。仕口部33aの下端面から複数の柱主筋33cが突出している。また、梁部33bの端面から複数の横梁主筋33dが橋幅方向に突出しており、PC部材32とPC部材33を組み付ける際に、横梁主筋33dをPC部材32の端部のスリーブ継手32aに挿入する。
【0068】
次に、上記(3)の工程と同様にして、組まれたPC部材31A、PC部材32、PC部材33、PC部材32、PC部材31Bをジャッキによって下降させることにより、仕口部31a,33a,31の下側にある柱主筋31c,33c,31cを柱用PC部材22,27,22の上端部のスリーブ継手23,28,23に挿入する。
【0069】
次に、上記(4)の工程と同様にして、グラウトによりPC部材31A,31Bの仕口部31aと柱用PC部材22を接合するとともに、グラウトによりPC部材33の仕口部33aと柱用PC部材27を接合する。
【0070】
(c) 上記実施形態では、両側のPC部材31A,31Bが仕口部31aと梁部31bを一体成形したものであった(図9図34(a)参照)。それに対して、図31及び図34(c)に示すようにPC部材31A,31Bが梁部を有さない構成としてもよい。この場合、上記実施形態における横梁主筋31dに相当する横梁主筋31gが仕口部31aから橋幅方向に突出している。そして、上記(2)の工程において、PC部材32を両側のPC部材31A,31Bの仕口部31aの間に挟むようにPC部材31A,32,31Bを橋幅方向に接続するが、この際、横梁主筋31gをPC部材32の端部のスリーブ継手32aに挿入する。なお、PC部材32の両端面から突出した横梁主筋を、仕口部31aの側部に設けられたスリーブ継手に挿入するものとしてもよい。
【0071】
(d) 上記実施形態では、両側のPC部材31A,31Bが仕口部31aと梁部31bを一体成形したものであり、PC部材32をPC部材31A,31Bの間に挟み込んだ(図9図34(a)参照)。それに対して、図32及び図34(d)に示すように、一方のPC部材31Aがスパン全長に亘る梁部31bを有し、他方のPC部材31Bが梁部を有しない仕口部31aのみの構成とし、PC部材32を設けなくてもよい。この場合、横梁主筋31dに相当する横梁主筋31hがPC部材31Bの仕口部31aから橋幅方向に突出しており、スリーブ継手32aに相当するスリーブ継手31jがPC部材31Aの梁部31bの端部に埋設されている。そして、上記(2)の工程において、PC部材31BをPC部材31Aに近接させて、PC部材31A,31Bを橋幅方向に接続するが、この際、横梁主筋31hをPC部材31Aの梁部31bの端部のスリーブ継手31jに挿入する。なお、PC部材31Aの梁部31bの端面から突出した横梁主筋を、PC部材31Bの仕口部31aの側部に設けられたスリーブ継手に挿入するものとしてもよい。
【0072】
(e) 図33及び図34(e)に示すように、一方のPC部材31Aが上記実施形態のように仕口部31aと梁部31bを一体成形したものであり、他方のPC部材31Bが上記(c)の変形例のように梁部を有しない仕口部31aのみの構成としてもよい。
【0073】
(f) 上記実施形態及び変形例(c)〜(e)では、PC部材31A、PC部材32、PC部材31B、PC部材61A及びPC部材61Bが図34(a)〜(e)のような形態であった。図34(f)〜(h)に示すように、PC部材32に相当する中間梁部材39が複数のPC部材39aの接合体であってもよい。つまり、上記(2)の工程において、PC部材31Aを揚重した後、これらPC部材39aを順次揚重して橋幅方向に接続し、その後更にPC部材31Bを揚重して、そのPC部材31Bを端のPC部材39aに接続することにより横梁30を構築してもよい。ここで、図34(f)に示す中間梁部材39は図34(a)に示すPC部材32に相当するものであり、図34(g)に示す中間梁部材39は図34(c)に示すPC部材32に相当するものであり、図34(h)に示す中間梁部材39は図34(e)に示すPC部材32に相当するものである。
【0074】
(g) 上記実施形態では、門形ラーメン構造2,5を基礎上に構築したが、これに限らず、構築済みの門形ラーメン構造の上に構築してもよい。この場合、構築済みの下側の門形ラーメン構造は、上記実施形態で示した工法で施工されたものであってもよい。すなわち、本発明は、2層以上の門形ラーメン構造を構築する場合にも適用可能である。
【0075】
(h) 上記実施形態では、ラーメン構造1が鉄道高架橋用であった。それに対して、ラーメン構造1が道路その他の高架橋用であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…ラーメン構造, 2…門形ラーメン構造, 5…門形ラーメン構造, 20…柱, 23…スリーブ継手, 30…横梁, 31…PC部材(第一PC部材), 32…PC部材(第二PC部材)、 31a…仕口部, 31b…梁部, 31c…柱主筋, 40…仕口部, 50…柱, 53…スリーブ継手, 60…横梁, 61…PC部材, 61a…仕口部, 61b…梁部, 61c…柱主筋, 70…仕口部, 90…架台, 91…基台, 92…駒台, 99…ジャッキ
図1
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図5
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