特許第6720900号(P6720900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720900
(24)【登録日】2020年6月22日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】ガラスロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/188 20060101AFI20200629BHJP
   B65H 23/28 20060101ALI20200629BHJP
   B65H 18/08 20060101ALI20200629BHJP
   C03B 33/023 20060101ALI20200629BHJP
   C03B 35/00 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   B65H23/188
   B65H23/28
   B65H18/08
   C03B33/023
   C03B35/00
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-48486(P2017-48486)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-150154(P2018-150154A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】森 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】桐畑 洋平
(72)【発明者】
【氏名】石地 功治
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−174744(JP,A)
【文献】 特開2012−240883(JP,A)
【文献】 特表2014−501676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/18 − 23/198
B65H 26/00 − 26/08
B65H 18/00 − 18/28
C03B 33/023
C03B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスリボンを搬送しつつ搬送経路上の切断領域にて長手方向に沿って切断した後、切断後の前記ガラスリボンを前記搬送経路の下流端にて巻芯の周りに巻き取ってガラスロールを製造する方法であって、
張りを持たせた状態で前記ガラスリボンを搬送する第一搬送形態と、弛ませた状態で前記ガラスリボンを搬送する第二搬送形態とに、搬送形態の変更が可能な搬送形態可変区間を前記搬送経路上の前記切断領域と前記下流端との間に設け、
前記搬送形態を前記第一搬送形態にした状態で、前記ガラスリボンの先頭部を前記巻芯に巻き付かせた後、前記搬送形態を前記第一搬送形態から前記第二搬送形態に移行させることを特徴とするガラスロールの製造方法。
【請求項2】
前記ガラスリボンの先頭部から該ガラスリボンを前記巻芯の周りに一周以上巻き付かせた後、前記搬送形態を前記第一搬送形態から前記第二搬送形態に移行させることを特徴とする請求項1に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項3】
前記第一搬送形態では、前記搬送形態可変区間内の前記ガラスリボンを下方から支持しながら平置きで搬送すると共に、
前記第二搬送形態では、前記搬送形態可変区間内の前記ガラスリボンに対し、下方からの支持を解除して該ガラスリボンを下方に撓ませながら搬送することを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項4】
前記搬送形態可変区間に、
前記ガラスリボンの幅方向に沿って延び、且つ、前記搬送形態可変区間内での上流端に配置された回転軸を中心に旋回することで、前記ガラスリボンを下方から支持するための支持姿勢と、下方からの支持を解除するための解除姿勢との間で姿勢の変化が可能な支持部材を配置し、
前記ガラスリボンから一部の区間を切り出して廃棄部として廃棄する場合に、前記支持部材に解除姿勢を取らせた状態の下で、前記廃棄部を前記搬送形態可変区間の下方に落下させて廃棄することを特徴とする請求項3に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項5】
前記第二搬送形態下での前記ガラスリボンの下方への撓み量を一定に維持することを特徴とする請求項3又は4に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項6】
前記搬送経路のうち、前記搬送形態可変区間よりも上流側での前記ガラスリボンの搬送速度を一定にした状態で、前記搬送形態可変区間よりも下流側での前記ガラスリボンの搬送速度を調節することで、前記撓み量を一定に維持することを特徴とする請求項5に記載のガラスロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスリボンを搬送しつつ長手方向に沿って切断した後、切断後のガラスリボンを巻芯の周りに巻き取ってガラスロールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に普及しているスマートフォンやタブレット型PC等のモバイル端末は、薄型、軽量であることが求められるため、これらの端末に組み込まれるガラス基板にも薄板化に対する要請が高まっているのが現状である。このような現状の下、フィルム状にまで薄板化(例えば、厚みが300μm以下)されたガラス基板であるガラスフィルムが開発、製造されるに至っている。
【0003】
ガラスフィルムの製造工程には、これの元となるガラスリボンをロール状に巻き取ってガラスロールを製造する工程が含まれる場合がある。そして、この工程を実行するための具体的な手法の一例が特許文献1に開示されている。
【0004】
同文献に開示された手法においては、まず、オーバーフローダウンドロー法によりガラスリボンを連続的に成形する。次に、成形したガラスリボンを搬送しつつ長手方向に沿って切断する。この切断に伴って、ガラスリボンの幅方向両端に位置する非製品部(耳部を含んだ不要な部位)を幅方向中央に位置する製品部(後に製品となる部位)から分離させる。最後に、製品部のみでなるガラスリボンを巻芯の周りに巻き取ってガラスロールを製造する。
【0005】
ここで、上記の手法では、ガラスリボンを巻き取るに際し、ガラスリボンを弛ませた状態で巻芯の周りに引き込んでおり、巻き取り中の部位に作用する張力の大きさが略ゼロになっている。これにより、下記のような不具合の発生を回避することが可能となる。
【0006】
仮にガラスリボンに張りを持たせた状態、つまり、ガラスリボンに張力を作用させた状態で巻芯の周りに引き込んだ場合には、巻き取り中の部位に作用している張力が、切断中の部位まで伝播して作用する。このことに起因して、切断に伴って形成される切断端部の品位が悪化して、ガラスリボンが破断しやすくなってしまう。これに対し、上記の手法においては、ガラスリボンを弛ませた状態で巻芯の周りに引き込んでいるため、ガラスリボンの破断を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−174744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された手法には、上記のような利点がある一方で、下記のような難点が存在する。
【0009】
すなわち、ガラスリボンを弛ませた状態で巻芯の周りに引き込んでいるので、巻き取りを開始する際、つまり、ガラスリボンの先頭部を巻芯に巻き付かせる際に、先頭部の進行方向が本来進むべき方向に対して不当に傾きやすくなる。そして、進行方向が傾いた状態で先頭部が巻芯に巻き付いてしまうと、先頭部に後続する部位もまた進行方向が傾いた状態で巻芯に巻き付いてしまう。その結果、製造されるガラスロールに許容範囲を超える巻きズレが発生しやすくなる。このような現状から、ガラスリボンの破断を回避できるのみでなく、ガラスロールの巻きズレも防止することが可能な技術の確立が期待されていた。
【0010】
上記の事情に鑑みなされた本発明は、ガラスリボンを搬送しつつ長手方向に沿って切断した後、切断後のガラスリボンを巻芯の周りに巻き取ってガラスロールを製造するに際し、ガラスリボンの破断の回避とガラスロールの巻きズレの防止との双方を実現させることを技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ガラスリボンを搬送しつつ搬送経路上の切断領域にて長手方向に沿って切断した後、切断後のガラスリボンを搬送経路の下流端にて巻芯の周りに巻き取ってガラスロールを製造する方法であって、張りを持たせた状態でガラスリボンを搬送する第一搬送形態と、弛ませた状態でガラスリボンを搬送する第二搬送形態とに、搬送形態の変更が可能な搬送形態可変区間を搬送経路上の切断領域と下流端との間に設け、搬送形態を第一搬送形態にした状態で、ガラスリボンの先頭部を巻芯に巻き付かせた後、搬送形態を第一搬送形態から第二搬送形態に移行させることに特徴付けられる。
【0012】
本方法においては、搬送形態可変区間での搬送形態を第一搬送形態(張りを持たせた状態でガラスリボンを搬送する形態)にした状態で、ガラスリボンの先頭部を巻芯に巻き付かせる。このようにすることで、先頭部が巻き付く際には、ガラスリボンの搬送形態可変区間を通過中の部位のみでなく、当該部位と連なった先頭部もまた張りを持った状態となる。そして、この張りを持った状態の先頭部を巻き付かせることで、巻き付きに際し、先頭部の進行方向が本来進むべき方向に対して不当に傾いてしまうような事態の発生を回避できる。これにより、進行方向を傾かせることなく先頭部を巻芯に巻き付かせることが可能となる。ここで、本方法では、先頭部を巻き付かせた後、搬送形態可変区間での搬送形態を第一搬送形態から第二搬送形態(弛ませた状態でガラスリボンを搬送する形態)に移行させる。このように搬送形態を移行させると、搬送形態可変区間内の弛んだ部位の存在により、搬送形態可変区間よりも搬送経路の下流側に位置する巻き取り中の部位では、作用する張力の大きさが略ゼロとなり得る。しかしながら、上記のとおり、進行方向が傾くことなく先頭部が既に巻芯に巻き付いているため、たとえ作用している張力の大きさが略ゼロであっても、先頭部に後続する部位は、先頭部と同様にして進行方向が傾くことなく巻芯に巻き付いていく。その結果、ガラスロールの巻きズレを防止できる。さらに、上記のように搬送形態を移行させた後には、ガラスリボンにおける切断中の部位と巻き取り中の部位とが、搬送形態可変区間内の弛んだ部位を挟んで搬送経路の上流側と下流側とに分断された状態となる。これにより、搬送形態を移行させることなく第一搬送形態で引き続きガラスリボンの巻き取りを継続した場合のように、巻き取り中の部位に作用している張力が、切断中の部位まで伝播して作用するようなことが起こり得なくなる。なお、本方法では、先頭部を巻芯に巻き付かせる際には、張力が切断中の部位まで伝播して作用することになるが、この張力が作用した状態の継続は、その後に搬送形態を第二搬送形態に移行させるまでの間だけに止まる。このため、張力の作用による影響を可及的に抑制することができる。その結果、切断に伴って形成される切断端部の品位が悪化することを防止でき、ガラスリボンの破断を回避することが可能となる。以上のことから、本方法によれば、ガラスリボンの破断の回避とガラスロールの巻きズレの防止との双方を実現できる。
【0013】
上記の方法において、ガラスリボンの先頭部からガラスリボンを巻芯の周りに一周以上巻き付かせた後、搬送形態を第一搬送形態から第二搬送形態に移行させることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、ガラスリボンの先頭部を巻芯に巻き付かせた後、少なくとも、先頭部に後続する部位と巻芯との相互間に先頭部が挟まれるまでの間は、巻き取り中の部位の張りを持った状態が持続することになる。このため、先頭部に後続する部位の進行方向が本来進むべき方向に対して傾くような事態の発生を更に回避しやすくなる。その結果、ガラスロールの巻きズレをより確実に防止することが可能となる。
【0015】
上記の方法において、第一搬送形態では、搬送形態可変区間内のガラスリボンを下方から支持しながら平置きで搬送すると共に、第二搬送形態では、搬送形態可変区間内のガラスリボンに対し、下方からの支持を解除してガラスリボンを下方に撓ませながら搬送することが好ましい。
【0016】
このようにすれば、ガラスリボンの搬送形態可変区間を通過中の部位に対し、当該部位を下方から支持した状態と、下方からの支持を解除した状態とを切り換えるだけで、第一搬送形態と第二搬送形態とに搬送形態を変更し得る。そのため、本発明による効果を簡易な操作で得ることができる。
【0017】
上記の方法において、搬送形態可変区間に、ガラスリボンの幅方向に沿って延び、且つ、搬送形態可変区間内での上流端に配置された回転軸を中心に旋回することで、ガラスリボンを下方から支持するための支持姿勢と、下方からの支持を解除するための解除姿勢との間で姿勢の変化が可能な支持部材を配置し、ガラスリボンから一部の区間を切り出して廃棄部として廃棄する場合に、支持部材に解除姿勢を取らせた状態の下で、廃棄部を搬送形態可変区間の下方に落下させて廃棄することが好ましい。
【0018】
このようにすれば、搬送形態可変区間を利用して、ガラスリボンから切り出した廃棄部を搬送形態可変区間の下方に落下させて効率的に廃棄することが可能となる。さらに、支持部材が、ガラスリボンの幅方向に沿って延び、且つ、搬送形態可変区間内での上流端に配置された回転軸を中心に旋回することで、支持姿勢と解除姿勢との間で姿勢を変化させることが可能であることにより、下記のような利点も得られる。すなわち、廃棄部を廃棄するにあたり、支持部材の姿勢を解除姿勢に移行させる際において、支持部材は、回転軸を中心に旋回するのに伴い、搬送経路の上流側に向かいつつ下方に移動する。そして、このような移動を行った支持部材の上を廃棄部が通過した後、下方に落下して廃棄されていく。つまり、廃棄部を廃棄するに際して、廃棄部と支持部材との衝突が好適に防止される。その結果、廃棄部と支持部材との衝突によって発生したガラス粉が支持部材に付着し、このガラス粉によって支持姿勢に復帰させた支持部材の上を通過するガラスリボンが傷付いてしまうような不具合の発生を回避することが可能となる。
【0019】
上記の方法において、第二搬送形態下でのガラスリボンの下方への撓み量を一定に維持することが好ましい。
【0020】
このようにすれば、第二搬送形態の下で搬送形態可変区間を通過中のガラスリボンの部位について、当該部位が過度に下方に撓んでその曲率が大きくなり、当該部位が曲げ応力によって破損してしまうような事態の発生を回避しやすくなる。
【0021】
上記の方法において、搬送経路のうち、搬送形態可変区間よりも上流側でのガラスリボンの搬送速度を一定にした状態で、搬送形態可変区間よりも下流側でのガラスリボンの搬送速度を調節することで、撓み量を一定に維持することが好ましい。
【0022】
このようにすれば、搬送形態可変区間内の弛んだ部位よりも搬送経路の上流側に位置する切断中の部位が一定の速度で搬送されるようになり、ガラスリボンの切断を安定して実行することができる。これにより、切断に伴って形成される切断端部の品位を向上させることが可能となり、ひいては、切断後のガラスリボンの品質を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ガラスリボンを搬送しつつ長手方向に沿って切断した後、切断後のガラスリボンを巻芯の周りに巻き取ってガラスロールを製造するに際し、ガラスリボンの破断の回避とガラスロールの巻きズレの防止との双方を実現させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法に用いる製造装置を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法を示す側面図である。
図3】本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法を示す側面図である。
図4】本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法を示す側面図である。
図5】本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法を示す側面図である。
図6】本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法を示す側面図である。
図7】本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法について、添付の図面を参照しながら説明する。はじめに、本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法に用いる製造装置の構成を説明する。
【0026】
図1に示すように、製造装置1は、ガラスリボンGを搬送しつつ搬送経路上の切断領域P1にて長手方向に沿って切断することで、ガラスリボンGの製品部G1(後に製品となる部位)と非製品部G2(耳部を含んだ不要な部位)とを分離させる切断機構2と、切断後のガラスリボンG(非製品部G2と分離させた後の製品部G1)を搬送経路の下流端P2にて帯状保護シートS1と重ね合わせた状態で巻芯3の周りに巻き取ってガラスロールGR(後に参照する図6に図示)を作製する巻取機構4と、搬送経路上に設けた搬送形態可変区間T内でのガラスリボンGの搬送形態を、張りを持たせた状態(図1に実線で示す状態)で搬送する第一搬送形態と、弛ませた状態(図1に二点鎖線で示す状態)で搬送する第二搬送形態との間で、変更することが可能な搬送形態可変機構5とを備えている。
【0027】
ここで、切断の対象となるガラスリボンGは、ダウンドロー法(例えば、オーバーフローダウンドロー法)により連続的に成形した後、その搬送方向を鉛直下方から水平方向に転換させたガラスである。このガラスリボンGは、幅方向(図1では紙面に鉛直な方向)両端に位置する非製品部G2と、幅方向中央に位置する製品部G1とを含んでいる。ガラスリボンGは可撓性を付与できる程度の厚み(例えば、300μm以下)に成形されている。なお、ガラスリボンGの成形方法としては、上述のオーバーフローダウンドロー法に限らず、フロート法やスロットダウンドロー法、リドロー法等を使用してもよい。
【0028】
切断機構2は、切断領域P1にてガラスリボンGを搬送するための搬送装置6と、搬送中のガラスリボンGを切断するための切断装置7とを備えている。
【0029】
搬送装置6としては、ガラスリボンGを平置きで搬送するベルトコンベアを使用している。勿論、これに限定されるものではなく、ベルトコンベアの他、ローラーコンベア等を使用することも可能である。
【0030】
搬送装置6の搬送面に対しては、帯状保護シートS2が供給されている。この帯状保護シートS2は、ガラスリボンGと共に下流側に送った後、搬送装置6の下方に引き出してガラスリボンGの搬送経路から離脱させる。なお、帯状保護シートS2としては、例えば、発泡樹脂シートを使用することが可能である。この帯状保護シートS2により、搬送装置6上を搬送されるガラスリボンGの下面Gbが保護される。
【0031】
切断装置7としては、ガラスリボンGの搬送経路の上方に配置されたレーザー切断機を使用している。このレーザー切断機は、自身の下方を通過するガラスリボンGの製品部G1と非製品部G2との境界に沿ってレーザーLを照射することが可能となっている。
【0032】
上記の切断機構2により、レーザーLでガラスリボンGを連続的に切断して製品部G1と非製品部G2とを分離していく。なお、製品部G1と非製品部G2とを分離する具体的な方法としては、レーザー溶断法やレーザー割断法を挙げることができる。製品部G1と分離させた後の非製品部G2は、ガラスリボンG(製品部G1)の搬送経路から下方に離脱させると共に、廃棄に適した長さに切断して廃棄する。このような切断は、非製品部G2の上面Ga側を凸に湾曲させて曲げ応力を付与することで実行される。本実施形態では、非製品部G2の切断を容易にするため、廃棄に適した長さ毎に非製品部G2の幅方向端部に対して上面Ga側から加傷手段(図示省略)により傷を付けている。これにより、傷を起点として非製品部G2を切断(破断)しやすくなる。加傷手段としては、ダイヤモンド砥石やダイヤモンドチップ、サンドペーパー等を使用できる。
【0033】
巻取機構4は、ガラスリボンGを下方から支持しながら平置きで搬送する搬送装置8と、搬送装置8から搬出されたガラスリボンGを巻き取る巻芯3とを備えている。
【0034】
搬送装置8は、搬送経路に沿って並べられた複数(図1では五つ)の搬送ローラー9を備えている。これら複数の搬送ローラー9は、いずれもフリーローラーである。複数の搬送ローラー9のうち、最も下流側に配置された最下流側搬送ローラー9aと、これの上流側に隣接して配置された搬送ローラー9bとの二つは、搬送経路に沿って移動させることが可能となっている。詳述すると、両搬送ローラー9a,9bは、搬送経路に沿って基本位置(図1に実線で示す位置)と、基本位置から上流側に離間した離間位置(図1に二点鎖線で示す位置)との間を移動できる。両搬送ローラー9a,9bは、搬送装置8の移動可能搬送部を構成している。なお、両搬送ローラー9a,9bのそれぞれは、その移動中においてもガラスリボンGを支持することが可能となっている。
【0035】
ここで、両搬送ローラー9a,9bのうち、より搬送経路の下流側に配置された最下流側搬送ローラー9aの方が、基本位置から離間位置までの移動距離が長くなっている。この最下流側搬送ローラー9aの移動距離は50mm〜200mmの範囲内としている。
【0036】
本実施形態では、両搬送ローラー9a,9bの二つのみを移動可能搬送部としている。つまり、最下流側搬送ローラー9aを含む下流側の二つの搬送ローラー9のみを移動可能搬送部としているが、この限りではない。最下流側搬送ローラー9aを含む下流側の三つ、又は、四つ以上の搬送ローラー9を移動可能搬送部としてもよい。この場合、搬送経路の下流側に配置された搬送ローラー9ほど、基本位置から離間位置までの移動距離を長くする。
【0037】
最下流側搬送ローラー9aは、ガラスリボンGの先頭部Gfが搬送装置8から巻芯3上に移乗するのを補助するための移乗補助機10と連結されている。この移乗補助機10は、最下流側搬送ローラー9aの半径よりも厚みが小さい板状部材として形成されている。移乗補助機10は平面視で矩形をなし、矩形の四辺のうち、平行な二辺がガラスリボンGの幅方向(最下流側搬送ローラー9aの軸方向)に沿って延びている。
【0038】
移乗補助機10は、搬送装置8と巻芯3との相互間でガラスリボンGを下方から支持して移乗を補助するための補助位置と、補助位置よりも巻芯3から離反した退避位置との間を移動することが可能である。この移乗補助機10が補助位置に位置した際には、自身の上を通過するガラスリボンG(製品部G1)の全幅を支持することが可能である。また、移乗補助機10は、最下流側搬送ローラー9aを中心に旋回でき、旋回に伴って平置き姿勢と縦置き姿勢との間で姿勢を変化させることが可能となっている。なお、移乗補助機10は、最下流側搬送ローラー9aの回転とは独立して旋回することが可能である。つまり、最下流側搬送ローラー9aの回転中においても、この回転とは無関係に、平置き姿勢、或いは、縦置き姿勢を維持することが可能となっている。
【0039】
ここで、図1には、移乗補助機10が平置き姿勢を取って補助位置に位置した状態を実線で示すと共に、移乗補助機10が縦置き姿勢を取って補助位置から退避位置に移動する途中の状態を二点鎖線で示している。
【0040】
なお、本実施形態においては、移乗補助機10が最下流側搬送ローラー9aの半径よりも厚みが小さい板状部材として形成されているが、この限りではなく、半径よりも板状部材の厚みが大きくても構わない。ただし、この場合においても、直径よりは板状部材の厚みが小さくなるようにすることが好ましい。
【0041】
巻芯3は、ガラスリボンGの幅方向に沿って延びる軸心3aを中心として回転(図1において時計回りに回転)することが可能であると共に、その回転数を自在に変更できるようになっている。この巻芯3の径は、最下流側搬送ローラー9aの径と比較して大きくなっている。軸心3aは、ガラスリボンGの搬送経路の下流端P2よりも下方に位置しており、巻芯3は、搬送装置8から移乗してきたガラスリボンGの下面Gb側を内側にして巻き取る。また、巻芯3は、矢印Vで示すように、ガラスリボンGを巻き取りつつ漸次に下方に移動することが可能となっている。これにより、巻き取りの進行に伴ってガラスロールGRの径が次第に拡大していく際にも、ガラスリボンGにおける最下流側搬送ローラー9aと巻芯3との間に架け渡された部位が水平に維持されるようになっている。
【0042】
巻芯3に移乗させたガラスリボンGに対しては、その上面Ga側から帯状保護シートS1を供給している。帯状保護シートS1としては、例えば、樹脂製のシート(PETフィルム等)を使用することが可能である。この帯状保護シートS1は、ガラスリボンGが巻芯3に巻き付き始める前の段階から、既に一部が巻芯3に対して巻き付いており、巻芯3の回転に伴って上方に配置されたシートロールSRから連続的に引き出されてくる。なお、帯状保護シートS1は、張りを持った状態(張力が作用した状態)で巻芯3に巻き付いていく。
【0043】
搬送形態可変機構5は、搬送装置6と搬送装置8との間に位置する搬送形態可変区間T内のガラスリボンGについて、(1)下方から支持して平置きで搬送する状態と、(2)下方からの支持を解除して下方に撓ませながら搬送する状態とを、切り換え可能な支持部材11を備えている。そして、支持部材11によって(1)の状態にすることで、搬送形態を第一搬送形態にできると共に、(2)の状態とすることで、搬送形態を第二搬送形態にできる。
【0044】
支持部材11は、製品部G1の全幅と比較して幅寸法が小さい矩形の板状体として形成されており、矩形の四辺のうち、平行な二辺がガラスリボンGの幅方向に沿って延びている。この支持部材11は、ガラスリボンGの幅方向に沿って延び、且つ、搬送形態可変区間T内での上流端に配置された回転軸12を中心に旋回することが可能となっている。そして、回転軸12を中心に旋回することで、支持部材11は、ガラスリボンGを下方から支持するための支持姿勢と、下方からの支持を解除するための解除姿勢との間で姿勢を変化させることが可能である。なお、図1には、支持部材11が支持姿勢を取った状態を実線で示し、解除姿勢を取った状態を二点鎖線で示している。
【0045】
なお、本実施形態においては、搬送装置6と搬送装置8との間に搬送形態可変区間Tを位置させているが、これに限定されるものではない。ガラスリボンGの搬送経路上における切断領域P1と下流端P2との間であれば、いずれの区間に搬送形態可変区間Tを位置させてもよい。
【0046】
搬送形態可変区間Tにおいて、ガラスリボンGの搬送経路の上方には、自身とガラスリボンG(製品部G1)の上面Gaとの相互間距離Dを検出するための検出器13が配置されている。本実施形態では、検出器13として超音波センサーを使用している。この検出器13が検出した相互間距離Dは、信号として巻芯3の駆動源(図示省略)に送ることができ、駆動源は、受信した信号に基づいて巻芯3の回転数を調節することが可能である。
【0047】
次に、上記の製造装置1を用いた本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法を説明する。
【0048】
なお、ガラスロールの製造を開始する前の初期状態では、移乗補助機10は補助位置に位置し、最下流側搬送ローラー9aおよび搬送ローラー9bは基本位置に位置し、支持部材11は支持姿勢を取っている。
【0049】
ガラスロールの製造を開始して、ガラスリボンGの先頭部Gfが搬送経路上の切断領域P1まで搬送されてくると、ガラスリボンGにおける製品部G1と非製品部G2との分離を開始する。分離後の非製品部G2は廃棄する。非製品部G2を分離させた後のガラスリボンG(製品部G1)の先頭部Gfは、搬送装置6から支持姿勢を取った支持部材11に移乗させ、支持部材11上を移動させつつ搬送形態可変区間Tを通過させる。この時点において、搬送形態可変区間Tでの搬送形態は第一搬送形態である。なお、搬送装置6によるガラスリボンGの送り速度は、ガラスロールの製造の開始から完了まで常に一定の速度に維持する。
【0050】
その後、更に支持部材11から搬送装置8に移乗させたガラスリボンGの先頭部Gfについて、図2に示すように、補助位置に位置した移乗補助機10により下方から支持しつつ、搬送装置8(最下流側搬送ローラー9a)から巻芯3上に移乗させる。巻芯3上に移乗させたガラスリボンGの先頭部Gfは、巻芯3と帯状保護シートS1との相互間に挟んで巻芯3に巻き付ける。この時点においても、搬送形態可変区間Tでの搬送形態は第一搬送形態である。ここで、本実施形態では、先頭部Gfを巻芯3に巻き付けた後、先頭部Gfに巻芯3の周りを少なくとも一周、好ましくは、三周ほど周回させた後で、以下に説明する操作を行う。
【0051】
先頭部Gfに巻芯3の周りを周回させた後には、移乗補助機10を補助位置から退避位置に移動させるための準備を開始する。この準備として、図3に示すように、搬送装置8に備わった最下流側搬送ローラー9aおよび搬送ローラー9bを基本位置から離間位置に移動させる。これにより、最下流側搬送ローラー9aと連結された移乗補助機10は、平置き姿勢を維持しつつ最下流側搬送ローラー9aと隣接した状態の下、最下流側搬送ローラー9aの移動に伴って形成された空間を利用して、補助位置から上流側に移動する。このとき、移乗補助機10は、最下流側搬送ローラー9aの基本位置から離間位置への移動と同期して、補助位置から上流側に移動する。この時点においても、搬送形態可変区間Tでの搬送形態は第一搬送形態である。
【0052】
最下流側搬送ローラー9aおよび移乗補助機10を移動させた後は、図4に示すように、最下流側搬送ローラー9aを中心に移乗補助機10を旋回させ、平置き姿勢を取っていた移乗補助機10の姿勢を縦置き姿勢に変化させる。また、移乗補助機10の姿勢を変化させるのと同時に、回転軸12を中心に支持部材11を旋回させ、支持姿勢を取っていた支持部材11の姿勢を解除姿勢に変化させる。これにより、搬送形態可変区間T内において、ガラスリボンGに対する下方からの支持を解除し、第一搬送形態から第二搬送形態への搬送形態の移行を開始する。
【0053】
搬送形態を移行させるにあたっては、図5に示すように、巻芯3の回転数を減少させる。これにより、搬送形態可変区間Tを挟んで下流側でのガラスリボンGの搬送速度を、上流側でのガラスリボンGの搬送速度(搬送装置6による送り速度)よりも低速にする。このように速度差を生じさせることで、搬送形態可変区間T内のガラスリボンGを下方に撓ませ、搬送形態を第一搬送形態から第二搬送形態に移行させる。なお、搬送形態を移行させる際には、これと並行して、最下流側搬送ローラー9aおよび搬送ローラー9bを離間位置から基本位置に復帰させる。両搬送ローラー9a,9bの復帰に付随して、移乗補助機10は、縦置き姿勢を維持しつつ搬送経路の下流側に移動してから停止する。この移乗補助機10の停止した位置が、当該移乗補助機10の退避位置となる。
【0054】
搬送形態可変区間Tでの搬送形態を第二搬送形態に移行させた後においては、ガラスリボンGの下方への撓み量を一定に維持するように制御を行う。具体的には、検出器13により検出される相互間距離Dが、予め設定した基準値に維持されるように制御を行うことで、撓み量を一定に維持する。検出された相互間距離Dが基準値を超えている場合、つまり、撓み量が適切な量よりも多い場合には、検出器13からの信号に基づいて巻芯3の回転数を増加させる。これにより、搬送装置6による送り速度(一定速度)に対して巻芯3による巻取速度を高速にして、相互間距離Dを基準値に近づけるべく撓み量を減少させる。一方、検出された相互間距離Dが基準値を下回っている場合、つまり、撓み量が適切な量よりも少ない場合においては、検出器13からの信号に基づいて巻芯3の回転数を減少させる。これにより、搬送装置6による送り速度(一定速度)に対して巻芯3による巻取速度を低速にして、相互間距離Dを基準値に近づけるべく撓み量を増加させる。
【0055】
上述のようにして、搬送形態可変区間T内のガラスリボンGにおける撓み量を一定に維持しつつ、ガラスリボンGの巻き取りを継続する。そして、この状態の下で、図6に示すように、巻芯3の周りのガラスリボンGが所望の長さとなるまで、巻き取りを継続してガラスロールGRを完成させる。
【0056】
ここで、ガラスロールGRの製造中には、ガラスリボンGから一部の区間を切り出して廃棄部Gxとして廃棄する必要が生じる場合がある。例えば、切断装置7の保守、点検等を行うために、製品部G1と非製品部G2とを分離させることが一時的に不可能となった場合や、所望の長さのガラスリボンGを巻き取ったガラスロールGRが完成した後、新たにガラスリボンGの巻き取りを開始するべく巻芯3を交換する場合等が挙げられる。このような場合には、ガラスロールGRの製造を中断し、図7に示すように、支持部材11に解除姿勢を取らせた状態の下で、廃棄部Gxを搬送形態可変区間Tの下方に落下させて廃棄する。廃棄部Gxに対しては、廃棄に適した長さ毎にその幅方向端部に対して上面Ga側から加傷手段(図示省略)により傷を付けている。そして、この傷を起点として廃棄部Gxを切断する。加傷手段としては、ダイヤモンド砥石やダイヤモンドチップ、サンドペーパー等を使用できる。なお、この廃棄部Gxの先頭部および最後部も同様、それぞれガラスリボンGを幅方向に沿って加傷部材(図示省略)により傷付けた後、切断することで形成する。中断したガラスロールGRの製造を再開する場合には、移乗補助機10、最下流側搬送ローラー9a、搬送ローラー9b、及び、支持部材11を上述の初期状態における位置、或いは、姿勢に復帰させる。
【0057】
次に、上記のガラスロールの製造方法による主たる作用・効果について説明する。
【0058】
上記のガラスロールの製造方法では、搬送形態可変区間Tでの搬送形態を第一搬送形態にした状態で、ガラスリボンGの先頭部Gfを巻芯3に巻き付かせる。これにより、先頭部Gfが張りを持った状態で巻芯3に巻き付くことになり、巻き付きに際し、先頭部Gfの進行方向が本来進むべき方向に対して不当に傾くような事態の発生を回避できる。また、先頭部Gfの進行方向の傾きを回避できることから、先頭部Gfに後続する部位についても、進行方向を傾かせることなく巻芯3に巻き付けることが可能となる。その結果、ガラスロールGRの巻きズレを防止できる。さらに、搬送形態可変区間Tでの搬送形態を第一搬送形態から第二搬送形態に移行させた後には、ガラスリボンGにおける切断中の部位と巻き取り中の部位とが、搬送形態可変区間T内の弛んだ部位を挟んで上流側と下流側とに分断された状態となる。これにより、搬送形態を移行させることなく第一搬送形態で引き続きガラスリボンGの巻き取りを継続した場合のように、巻き取り中の部位に作用している張力が、切断中の部位まで伝播して作用するようなことが起こり得なくなる。その結果、切断に伴って形成される切断端部の品位が悪化することを防止でき、ガラスリボンGの破断を回避することが可能となる。
【0059】
ここで、本発明に係るガラスロールの製造方法は、上記の実施形態で説明した態様に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、巻芯3を搬送装置8の搬送面よりも下方に配置しているが、この限りではない。巻芯3を搬送装置8の搬送面よりも上方に設置すると共に、シートロールSRを搬送装置8の搬送面よりも下方に配置し、ガラスリボンGの上面Gaを内側にして巻き取ることにより、ガラスロールGRを作製してもよい。この場合、上記の実施形態とは異なり、両搬送ローラー9a、9bを移動させるための機構を排除し、両搬送ローラー9a,9bの位置を固定すると共に、移乗補助機10を取り除いてもよい。また、上記の実施形態では、ガラスロールGRへの巻き取り開始後に移乗補助機10と支持部材11とを同時に旋回させているが、これには限定されず、移乗補助機10の旋回が先でもよく、支持部材11の旋回が先でもよい。
【符号の説明】
【0060】
G ガラスリボン
Gf 先頭部
Gx 廃棄部
GR ガラスロール
P1 切断領域
P2 下流端
T 搬送形態可変区間
3 巻芯
11 支持部材
12 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7