【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、上述の課題は、次の船舶に関しては、次の第一ないし第九発明、そしてバラスト水処理方法に関しては第十発明ないし第十八発明によって解決される。
【0013】
[船舶]
<第一発明>
船外から取水したバラスト水を収容するバラストタンクと、バラストタンクへ向け又はバラストタンクからバラスト水を流通させるバラスト水配管と、バラスト水配管にバラスト水を流通させるバラストポンプと、該バラストタンクに収容される前にバラスト水を殺菌するバラスト水処理装置とを具備する船舶において、
上記バラストポンプは、船外から取水したバラスト水を上記バラストタンクに向かって流通させて該バラストタンクに収容又は漲水するバラスト水漲水運転モードと、上記バラストタンクから取水されたバラスト水を船外に排水するバラスト水排水運転モードに切替え可能となっており、
上記バラスト水処理装置は、上記バラスト水漲水運転モードのとき、上記バラストタンクに向かって流通するバラスト水に塩素系殺菌剤を供給する殺菌剤供給管を備える殺菌剤供給装置と、バラスト水配管内を流通するバラスト水に還元剤を供給する還元剤供給管を備える還元剤供給装置と、上記バラスト水漲水運転モードの終了後に殺菌剤供給装置内に残った上記塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部を上記還元剤供給装置の還元剤供給管に注入するように殺菌剤供給管を還元剤供給管へ連通させる残留物注入管とを備えることを特徴とする船舶。
【0014】
<第二発明>
船外から取水したバラスト水を収容するバラストタンクと、バラストタンクへ向け又はバラストタンクからバラスト水を流通させるバラスト水配管と、バラスト水配管にバラスト水を流通させるバラストポンプと、該バラストタンクに収容される前にバラスト水を殺菌するバラスト水処理装置とを具備する船舶において、
上記バラストポンプは、船外から取水したバラスト水を上記バラストタンクに向かって流通させて該バラストタンクに収容又は漲水するバラスト水漲水運転モードと、上記バラストタンクから取水されたバラスト水を船外に排水するバラスト水排水運転モードに切替え可能となっており、
上記バラスト水処理装置は、上記バラスト水漲水運転モードのとき、上記バラストタンクに向かって流通するバラスト水に塩素系殺菌剤を供給する殺菌剤供給管を備える殺菌剤供給装置と、バラスト水配管内を流通するバラスト水に還元剤を供給する還元剤供給管を備える還元剤供給装置と、殺菌剤供給管を還元剤供給管へ連通させる残留物注入管とを備え、
殺菌剤供給装置は、上記バラスト水漲水運転モードの終了後に殺菌剤供給装置内に残った上記塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部を残留物注入管を経て還元剤供給管に注入し、
還元剤供給装置は、上記バラスト水漲水運転モードの終了後で殺菌剤供給装置内に残った塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部が残留物注入管を経て還元剤供給管に注入されるとき、還元剤供給管に還元剤を供給し、バラスト水排水運転モードのときバラストタンクから取水され船外に排水されるバラスト水に還元剤を供給することを特徴とする船舶。
【0015】
<第三発明>
船外から取水したバラスト水を収容するバラストタンクと、バラストタンクへ向け又はバラストタンクからバラスト水を流通させるバラスト水配管と、バラスト水配管にバラスト水を流通させるバラストポンプと、該バラストタンクに収容される前にバラスト水を殺菌するバラスト水処理装置とを具備する船舶において、
上記バラストポンプは、船外から取水したバラスト水を上記バラストタンクに向かって流通させて該バラストタンクに収容又は漲水するバラスト水漲水運転モードと、上記バラストタンクから取水されたバラスト水を船外に排水するバラスト水排水運転モードに切替え可能となっており、
上記バラスト水処理装置は、上記バラスト水漲水運転モードのとき、上記バラストタンクに向かって流通するバラスト水に塩素系殺菌剤を供給する殺菌剤供給管を備える殺菌剤供給装置と、バラスト水配管内を流通するバラスト水に還元剤を供給する還元剤供給管と該還元剤供給管に設けられ還元剤を収容する混合槽とを備える還元剤供給装置と、上記バラスト水漲水運転モードの終了後に殺菌剤供給装置内に残った上記塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部を上記還元剤供給装置の混合槽に注入するように殺菌剤供給管を混合槽へ連通させる残留物注入管とを備えることを特徴とする船舶。
【0016】
<第四発明>
船外から取水したバラスト水を収容するバラストタンクと、バラストタンクへ向け又はバラストタンクからバラスト水を流通させるバラスト水配管と、バラスト水配管にバラスト水を流通させるバラストポンプと、該バラストタンクに収容される前にバラスト水を殺菌するバラスト水処理装置とを具備する船舶において、
上記バラストポンプは、船外から取水したバラスト水を上記バラストタンクに向かって流通させて該バラストタンクに収容又は漲水するバラスト水漲水運転モードと、上記バラストタンクから取水されたバラスト水を船外に排水するバラスト水排水運転モードに切替え可能となっており、
上記バラスト水処理装置は、上記バラスト水漲水運転モードのとき、上記バラストタンクに向かって流通するバラスト水に塩素系殺菌剤を供給する殺菌剤供給管を備える殺菌剤供給装置と、バラスト水配管内を流通するバラスト水に還元剤を供給する還元剤供給管と該還元剤供給管に設けられ還元剤を収容する混合槽とを備える還元剤供給装置と、殺菌剤供給管を混合槽へ連通させる残留物注入管とを備え、
殺菌剤供給装置は、上記バラスト水漲水運転モードの終了後に殺菌剤供給装置内に残った上記塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部を残留物注入管を経て混合槽に注入し、
還元剤供給装置は、上記バラスト水漲水運転モードの終了後に殺菌剤供給装置内に残った塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部が残留物注入管を経て混合槽に注入されるときには、混合槽に還元剤を収容しており、バラスト水排水運転モードのときバラストタンクから取水され船外に排水されるバラスト水に還元剤を供給することを特徴とする船舶。
【0017】
<第五発明>
第一発明又は第二発明において、残留物注入管と還元剤供給管の合流点と、バラスト水配管の間の配管に、殺菌剤の残留物と還元剤との混合液を受け、還元剤との反応により塩素系殺菌剤から生成して固形物として析出する析出物が細かい粒子状で混合液中に分散している分散液と、分散していない析出物、還元剤とまだ反応していない塩素系殺菌剤の残留物を含む未分散液とに分離する分離装置を設け、未分散液を上記分離装置の入口側に帰還させ、分散液をバラスト水配管に供給するようになっていることとする船舶。
【0018】
<第六発明>
第一発明又は第二発明において、さらに、残留物注入管と還元剤供給管との合流点で、還元剤供給管に注入された塩素系殺菌剤の残留物が還元剤供給管内の還元剤と合流して生成される混合液の酸化還元電位を測定する酸化還元電位計を、上記合流点よりバラスト水配管側となる下流側の位置に備え、該酸化還元電位計により測定された混合液の酸化還元電位測定値に基づき、残留物注入管に供給する塩素系殺菌剤の残留物の流量及び還元剤供給源から還元剤供給管に供給する還元剤供給量のうち少なくとも一つを制御する制御装置を備えることとする船舶。
【0019】
<第七発明>
第一発明又は第二発明において、さらに、残留物注入管と還元剤供給管との合流点で、還元剤供給管に注入された塩素系殺菌剤の残留物が還元剤供給管内の還元剤と合流して生成される混合液のpHを測定するpH計を、上記合流点よりバラスト水配管側となる下流側の位置に備え、該pH計により測定された混合液のpH測定値に基づき、残留物注入管に供給する塩素系殺菌剤の残留物の流量及び還元剤供給源から還元剤供給管に供給する還元剤供給量のうち少なくとも一つを制御する制御装置を備えることとする船舶。
【0020】
<第八発明>
第三又は第四発明において、さらに、還元剤供給装置は、塩素系殺菌剤の残留物が混合槽内の還元剤と反応して生成される混合液の酸化還元電位を測定する酸化還元電位計を混合槽又は混合槽よりバラスト水配管側となる下流側の位置に備え、該酸化還元電位計により測定された混合液の酸化還元電位測定値に基づき、混合槽に供給する塩素系殺菌剤の残留物の流量及び還元剤供給源から混合槽に供給する還元剤供給量のうち少なくとも一つを制御する制御装置を備えることとする船舶。
【0021】
<第九発明>
第三又は第四発明において、さらに、還元剤供給装置は、塩素系殺菌剤の残留物が混合槽内の還元剤と反応して生成される混合液のpHを測定するpH計を混合槽又は混合槽よりバラスト水配管側となる下流側の位置に備え、該pH計により測定された混合液のpH測定値に基づき、混合槽に供給する塩素系殺菌剤の残留物の流量及び還元剤供給源から混合槽に供給する還元剤供給量のうち少なくとも一つを制御する制御装置を備えることとする船舶。
【0022】
[バラスト水処理方法]
<第十発明>
船外から取水したバラスト水を収容するバラストタンクと、バラストタンクへ向け又はバラストタンクからバラスト水を流通させるバラスト水配管と、バラスト水配管にバラスト水を流通させるバラストポンプと、該バラストタンクに収容される前にバラスト水を殺菌するバラスト水処理装置とを具備する船舶でのバラスト水処理方法において、
上記バラストポンプを、船外から取水したバラスト水を上記バラストタンクに向かって流通させて該バラストタンクに収容又は漲水するバラスト水漲水運転モードと、上記バラストタンクから取水されたバラスト水を船外に排水するバラスト水排水運転モードとに切替え可能とし、
バラスト水配管内を流通するバラスト水に還元剤供給装置から還元剤供給管を経て還元剤を供給可能とし、
上記バラスト水漲水運転モードのとき、上記バラストタンクに向かって流通するバラスト水に殺菌剤供給装置から殺菌剤供給管を経て塩素系殺菌剤を供給し、上記バラスト水漲水運転モードの終了後に殺菌剤供給装置内に残った上記塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部を、殺菌剤供給管を還元剤供給管へ連通させる残留物注入管を経て上記還元剤供給装置の還元剤供給管に注入することを特徴とするバラスト水の処理方法。
【0023】
<第十一発明>
船外から取水したバラスト水を収容するバラストタンクと、バラストタンクへ向け又はバラストタンクからバラスト水を流通させるバラスト水配管と、バラスト水配管にバラスト水を流通させるバラストポンプと、該バラストタンクに収容される前にバラスト水を殺菌するバラスト水処理装置とを具備する船舶でのバラスト水処理方法において、
上記バラストポンプを、船外から取水したバラスト水を上記バラストタンクに向かって流通させて該バラストタンクに収容又は漲水するバラスト水漲水運転モードと、上記バラストタンクから取水されたバラスト水を船外に排水するバラスト水排水運転モードに切替え可能とし、
バラスト水配管内を流通するバラスト水に還元剤供給装置から還元剤供給管を経て還元剤を供給可能とし、
上記バラスト水漲水運転モードのとき、上記バラストタンクに向かって流通するバラスト水に殺菌剤供給装置から殺菌剤供給管を経て塩素系殺菌剤を供給し、
上記バラスト水漲水運転モードの終了後に殺菌剤供給装置内に残った上記塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部を、殺菌剤供給管を還元剤供給管へ連通させる残留物注入管を経て還元剤供給管に注入し、
上記バラスト水漲水運転モードの終了後に殺菌剤供給装置内に残った塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部が残留物注入管を経て還元剤供給管に注入されるとき、還元剤供給管に還元剤を供給し、バラスト水排水運転モードのとき、バラストタンクから取水され船外に排水されるバラスト水に還元剤を供給することを特徴とするバラスト水処理方法。
【0024】
<第十二発明>
船外から取水したバラスト水を収容するバラストタンクと、バラストタンクへ向け又はバラストタンクからバラスト水を流通させるバラスト水配管と、バラスト水配管にバラスト水を流通させるバラストポンプと、該バラストタンクに収容される前にバラスト水を殺菌するバラスト水処理装置とを具備する船舶でのバラスト水処理方法において、
上記バラストポンプを、船外から取水したバラスト水を上記バラストタンクに向かって流通させて該バラストタンクに収容又は漲水するバラスト水漲水運転モードと、上記バラストタンクから取水されたバラスト水を船外に排水するバラスト水排水運転モードに切替え可能とし、
上記バラスト水漲水運転モードのとき、上記バラストタンクに向かって流通するバラスト水に殺菌剤供給装置から殺菌剤供給管を経て塩素系殺菌剤を供給し、
上記バラスト水漲水運転モードの終了後に、バラスト水配管内を流通するバラスト水に還元剤供給装置から還元剤を供給する還元剤供給管に設けられ還元剤を収容する混合槽へ、殺菌剤供給装置内に残った上記塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部を、殺菌剤供給管を混合槽へ連通させる残留物注入管を経て注入することを特徴とするバラスト水処理方法。
【0025】
<第十三発明>
船外から取水したバラスト水を収容するバラストタンクと、バラストタンクへ向け又はバラストタンクからバラスト水を流通させるバラスト水配管と、バラスト水配管にバラスト水を流通させるバラストポンプと、該バラストタンクに収容される前にバラスト水を殺菌するバラスト水処理装置とを具備する船舶でのバラスト水処理方法において、
上記バラストポンプを、船外から取水したバラスト水を上記バラストタンクに向かって流通させて該バラストタンクに収容又は漲水するバラスト水漲水運転モードと、上記バラストタンクから取水されたバラスト水を船外に排水するバラスト水排水運転モードに切替え可能とし、
上記バラスト水漲水運転モードのとき、上記バラストタンクに向かって流通するバラスト水に殺菌剤供給装置から殺菌剤供給管を経て塩素系殺菌剤を供給し、
上記バラスト水漲水運転モードの終了後に、バラスト水配管内を流通するバラスト水に還元剤供給装置から還元剤を供給する還元剤供給管に設けられ還元剤を収容する混合槽へ、殺菌剤供給装置内に残った上記塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部を、殺菌剤供給管を混合槽へ連通させる残留物注入管を経て注入し、
上記バラスト水漲水運転モードの終了後に殺菌剤供給装置内に残った塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部が残留物注入管を経て混合槽に注入されるときには、混合槽に還元剤を収容していて、バラスト水排水運転モードのとき、バラストタンクから取水され船外に排水されるバラスト水に還元剤を供給することを特徴とするバラスト水処理方法。
【0026】
<第十四発明>
第十発明又は第十一発明において、残留物注入管と還元剤供給管の合流点とバラスト水配管との間の配管に設ける分離装置により、殺菌剤の残留物と還元剤との混合液を受け、還元剤との反応により塩素系殺菌剤から生成して固形物として析出する析出物が細かい粒子状で混合液中に分散している分散液と、分散していない析出物、還元剤とまだ反応していない塩素系殺菌剤の残留物を含む未分散液とに分離し、未分散液を上記分離装置の入口側に帰還させ、分散液をバラスト水配管に供給することとするバラスト水処理方法。
【0027】
<第十五発明>
第十又は第十一発明において、さらに、残留物注入管と還元剤供給管との合流点で、還元剤供給管に注入された塩素系殺菌剤の残留物が還元剤供給管内の還元剤と合流して生成される混合液の酸化還元電位を、上記合流点よりバラスト水配管側となる下流側の位置に設けられた酸化還元電位計により測定し、混合液の酸化還元電位測定値に基づき、残留物注入管に供給する塩素系殺菌剤の残留物の流量及び還元剤供給源から還元剤供給管に供給する還元剤供給量のうち少なくとも一つを制御装置により制御することとするバラスト水処理方法。
【0028】
<第十六発明>
第十又は第十一発明において、さらに、残留物注入管と還元剤供給管との合流点で、還元剤供給管に注入された塩素系殺菌剤の残留物が還元剤供給管内の還元剤と合流して生成される混合液のpHを、上記合流点よりバラスト水配管側となる下流側の位置に設けられたpH計により測定し、該混合液のpH測定値に基づき、残留物注入管に供給する塩素系殺菌剤の残留物の流量及び還元剤供給源から還元剤供給管に供給する還元剤供給量のうち少なくとも一つを制御装置により制御することとするバラスト水処理方法。
【0029】
<第十七発明>
第十二発明又は第十三発明において、さらに、塩素系殺菌剤の残留物が混合槽内の還元剤と反応して生成される混合液の酸化還元電位を、混合槽又は混合槽よりバラスト水配管側となる下流側の位置に設けられた酸化還元電位計により測定し、混合液の酸化還元電位測定値に基づき、混合槽に供給する塩素系殺菌剤の残留物の流量及び還元剤供給源から混合槽に供給する還元剤供給量のうち少なくとも一つを制御装置により制御することとするバラスト水処理方法。
【0030】
<第十八発明>
第十二発明又は第十三発明において、さらに、塩素系殺菌剤の残留物が混合槽内の還元剤と反応して生成される混合液のpHを、混合槽又は混合槽よりバラスト水配管側となる下流側の位置に設けられたpH計により測定し、混合液のpH測定値に基づき、混合槽に供給する塩素系殺菌剤の残留物の流量及び還元剤供給源から混合槽に供給する還元剤供給量のうち少なくとも一つを制御装置により制御することとするバラスト水処理方法。
【0031】
<本発明による作動原理>
このように構成される本発明による船舶そしてバラスト水処理方法にあっては、船外から取水されたバラスト水をバラストタンクへ収容又は漲水するとき、バラスト水は塩素系殺菌剤により殺菌される。そして、バラストタンクからバラスト水を船外へ排水するとき、バラスト水に含まれる殺菌剤が還元剤により還元される。しかしながら、バラスト水のバラストタンクへの収容又は漲水終了時には、塩素系殺菌剤がバラスト水の殺菌に供されることなく、塩素系殺菌剤を上記バラスト水へ供給するための殺菌剤供給装置内に残留物(以下「殺菌剤残留物」)として留まることになる。このままの状態で、殺菌剤供給装置内に殺菌剤残留物が残留すると、塩素系殺菌剤の成分が析出し析出物の発生、堆積、固化により殺菌剤残留物に起因する動作不具合が生じ、バラスト水処理の正常な実行の阻害要因となる。そこで、本発明の第一、二発明そして第十、十一発明では、バラスト水の漲水運転終了後に、上記殺菌剤供給装置内の殺菌剤残留物を還元剤供給管へ注入して殺菌剤残留物と還元剤とを合流させることで、塩素系殺菌剤を還元して殺菌剤残留物に起因する動作不具合の発生を防止する。
【0032】
第三、四発明そして第十二、十三発明では、上記殺菌剤残留物の少なくとも一部が還元剤を収容する混合槽へ注入され、該混合槽で還元剤により還元される。
【0033】
本発明における好ましい形態としての第五発明そして第十四発明では、殺菌剤残留物と還元剤との混合液が分離装置により、還元剤との反応により塩素系殺菌剤から生成して固形物として析出する析出物が細かい粒子状で混合液中に分散している分散液と、分散していない析出物、還元剤とまだ反応していない塩素系殺菌剤の残留物を含む未分散液とに分離されて、未分散液が分離装置の入口側に帰還されるので、未分散液がバラスト水配管に供給されるということはなく、確実に分散液のみがバラスト水配管に供給される。
【0034】
本発明の好ましい形態としての第六発明そして第十五発明では、還元剤供給管内の殺菌剤残留物と還元剤との混合液の酸化還元電位の測定を行い、酸化還元電位測定値に基づき還元剤供給管に供給する殺菌剤残留物の流量及び還元剤供給源から還元剤供給管に供給する還元剤供給量のうち少なくとも一つを制御する。このようにすれば、殺菌剤残留物と還元剤との適正な供給のもとで殺菌剤残留物の還元がなされる。
【0035】
さらには、本発明での好ましい形態としての第七発明そして第十六発明では、還元剤供給管内の殺菌剤残留物と還元剤との混合液のpHの測定を行い、pH測定値に基づき還元剤供給管に供給する殺菌剤残留物の流量及び還元剤供給源から還元剤供給管に供給する還元剤供給量のうち少なくとも一つを制御することが好ましい。このようにすれば、殺菌剤残留物と還元剤との適正な供給のもとで殺菌剤残留物の還元がなされる。
【0036】
さらに、本発明での好ましい形態としての第八発明そして第十七発明では、殺菌剤残留物と還元剤との混合液の酸化還元電位の測定が混合槽又は混合槽よりバラスト水配管側となる下流側の位置で行われ、そして第九発明そして第十八発明では、殺菌剤残留物と還元剤との混合液のpHの測定が混合槽又は混合槽よりバラスト水配管側となる下流側の位置で行われるので、殺菌剤残留物と還元剤とが十分に混合された状態で良好な測定がなされる。酸化還元電位測定値又はpH測定値に基づき還元剤供給管に供給する殺菌剤残留物の流量及び還元剤供給源から還元剤供給管に供給する還元剤供給量のうち少なくとも一つを制御することが好ましい。このようにすれば、殺菌剤残留物と還元剤との適正な供給のもとで殺菌剤残留物の還元がなされる。
【0037】
なお、本発明において、次に掲げる用語の意味又は解釈は、区別して別段の説明を行う場合を除き、以下のとおりとする。
【0038】
(1)「塩素系薬剤」とは、溶媒である水に溶解したとき、水溶液中での不均化により、殺菌作用を有する遊離有効塩素を放出する薬剤又はその遊離有効塩素を放出し得る物質を生成する薬剤であり、本発明において「固形」、「液状」の場合がある。「固形」とは、常温において粉末、顆粒又は錠剤の状態にあることであり、本発明では、「塩素系薬剤」は「固形」である必要はない。
【0039】
「固形の塩素系薬剤」の代表例は、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム及びその水和物、ジクロロイソシアヌル酸カリウム等である。「塩素系殺菌剤」とは、遊離有効塩素が有する殺菌作用を利用して殺菌を行う薬剤であり、その代表例は、塩素系薬剤の水溶液である。
【0040】
(2)「還元剤」とは、固形であると否と問わず、他の物質から電子を受け取るために用いる薬剤をいい、塩素系殺菌剤との関係では、塩素系殺菌剤に由来する遊離有効塩素を還元するために用いる物質である。還元剤の代表例は、亜硫酸ナトリウム又はその水和物、チオ硫酸ナトリウム又はその水和物、あるいは、それらの水溶液である。