特許第6720991号(P6720991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720991
(24)【登録日】2020年6月22日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20200629BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   B60C11/03 300B
   B60C11/03 300C
   B60C11/13 C
   B60C11/13 B
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-22231(P2018-22231)
(22)【出願日】2018年2月9日
(65)【公開番号】特開2019-137218(P2019-137218A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2019年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】坂本 洋佑
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−081076(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/115770(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/103643(WO,A1)
【文献】 特開2017−128217(JP,A)
【文献】 特開2005−153654(JP,A)
【文献】 特開2016−147656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記トレッド部に、タイヤ赤道の両側でタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に延在する一対の主溝と、前記一対の主溝によりタイヤ赤道上に区画されたセンター陸部と、前記一対の主溝のタイヤ幅方向外側に区画されたショルダー陸部とを有し、
前記ショルダー陸部にタイヤ幅方向に沿って延在するショルダーラグ溝が形成され、前記センター陸部に前記ショルダーラグ溝から前記主溝を跨いで連続的に延在してタイヤ幅方向に対して45°以上70°以下の角度で傾斜するセンターラグ溝が形成され、
前記センターラグ溝は、タイヤ赤道に到達して終端する第一センターラグ溝と、タイヤ赤道に到達せずに終端する第二センターラグ溝とを含み、前記第一センターラグ溝と前記第二センターラグ溝とはタイヤ周方向に交互に配置され、
前記センター陸部に、前記センターラグ溝よりも溝深さが小さく前記センターラグ溝の傾斜方向と逆方向に傾斜して前記センターラグ溝どうしを接続する接続溝が形成され、前記接続溝は、タイヤ赤道の両側に配置された前記第一センターラグ溝の終端部どうしを接続する第一接続溝と、タイヤ赤道の両側に配置された前記第一センターラグ溝と前記第二センターラグ溝とを接続する第二接続溝と、タイヤ赤道の両側に配置された前記第一センターラグ溝の中途部どうしを接続する第三接続溝とを含み、前記センターラグ溝の溝深さが前記ショルダーラグ溝の溝深さよりも小さいことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ショルダーラグ溝および前記センターラグ溝の溝幅が前記主溝の溝幅の50%〜100%であることを特徴とする請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記センターラグ溝の終端部が鋭角状であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第一センターラグ溝の溝底に前記第一センターラグ溝の溝底から隆起して前記第一センターラグ溝に沿って延在する凸部を備えたことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未舗装路走行用タイヤとして好適な空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、騒音性能と未舗装路での走行性能とを改善した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
不整地、泥濘地、雪道、砂地、岩場等の未舗装路の走行を意図した空気入りタイヤでは、一般的に、エッジ成分の多いラグ溝やブロックを主体とするトレッドパターンであって、溝面積が大きいものが採用される。このようなタイヤでは、路面上の泥、雪、砂、石、岩等(以下、これらを総称して「泥等」と言う)を噛み込んでトラクション性能を得ると共に、溝内に泥等が詰まることを防いで、未舗装路での走行性能を向上している(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0003】
これら特許文献1,2のタイヤを対比すると、特許文献1のタイヤは、溝面積が比較的小さく、舗装路における走行性能も考慮したタイプのタイヤであると言える。一方、特許文献2のタイヤは、溝面積が大きく、個々のブロックも大きく、未舗装路での走行性能に特化したタイプのタイヤであると言える。そのため、前者は後者に比べて未舗装路での走行性能が低く、後者は前者に比べて通常走行時の性能が低くなる傾向がある。近年、タイヤに対する要求性能の多様化が進み、これら2タイプのタイヤの中間レベルの性能を有する未舗装路走行用タイヤも求められており、適度な溝形状で未舗装路での走行性能を効率的に高めるための対策が求められている。また、上述のように、未舗装路走行用タイヤは、基本的にブロックを主体として溝面積が大きいため、騒音性能(例えばパターンノイズ)が低下し易い傾向があるため、騒音性能についても良好に維持または改善することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016‐007861号公報
【特許文献2】特開2013‐119277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、騒音性能と未舗装路での走行性能とを改善した空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部に、タイヤ赤道の両側でタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に延在する一対の主溝と、前記一対の主溝によりタイヤ赤道上に区画されたセンター陸部と、前記一対の主溝のタイヤ幅方向外側に区画されたショルダー陸部とを有し、前記ショルダー陸部にタイヤ幅方向に沿って延在するショルダーラグ溝が形成され、前記センター陸部に前記ショルダーラグ溝から前記主溝を跨いで連続的に延在してタイヤ幅方向に対して45°以上70°以下の角度で傾斜するセンターラグ溝が形成され、前記センターラグ溝は、タイヤ赤道に到達して終端する第一センターラグ溝と、タイヤ赤道に到達せずに終端する第二センターラグ溝とを含み、前記第一センターラグ溝と前記第二センターラグ溝とはタイヤ周方向に交互に配置され、前記センター陸部に、前記センターラグ溝よりも溝深さが小さく前記センターラグ溝の傾斜方向と逆方向に傾斜して前記センターラグ溝どうしを接続する接続溝が形成され、前記接続溝は、タイヤ赤道の両側に配置された前記第一センターラグ溝の終端部どうしを接続する第一接続溝と、タイヤ赤道の両側に配置された前記第一センターラグ溝と前記第二センターラグ溝とを接続する第二接続溝と、タイヤ赤道の両側に配置された前記第一センターラグ溝の中途部どうしを接続する第三接続溝とを含み、前記センターラグ溝の溝深さが前記ショルダーラグ溝の溝深さよりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、上述のようにショルダーラグ溝とセンターラグ溝(第一センターラグ溝および第二センターラグ溝)を設けているので、これら溝がジグザグ状に延在する主溝の両側に区画されたセンター陸部とショルダー陸部との間で陸部伝いに連続的に延在する一連の溝の集合体として機能し、更に、センターラグ溝と逆方向に傾斜した接続溝がセンターラグ溝どうしを連結してセンター陸部における溝の構成を複雑化しているので、未舗装路における優れたトラクション性能や排土性を発揮することができる。一方で、センターラグ溝が終端位置の異なる第一センターラグ溝および第二センターラグ溝の2種類で構成され、また前述のように接続溝がセンター陸部における溝の構成を複雑化しているので、パターンノイズピークが分散されて、それにより低騒音化を図ることができる。
【0008】
本発明では、センターラグ溝の溝深さがショルダーラグ溝の溝深さよりも小さいため、トレッド部全体における溝容積とブロック剛性とのバランスが良好になり、未舗装路における走行性能を向上するには有利になる。
【0009】
本発明では、接続溝の溝深さがセンターラグ溝の溝深さよりも小さいため、センター陸部における溝容積とブロック剛性とのバランスが良好になり、未舗装路における走行性能を向上するには有利になる。
【0010】
本発明では、ショルダーラグ溝およびセンターラグ溝の溝幅が主溝の溝幅の50%〜100%であることが好ましい。これにより、トレッド部全体における溝容積とブロック剛性とのバランスが良好になり、未舗装路における走行性能を向上するには有利になる。
【0011】
本発明では、センターラグ溝の終端部が鋭角状であることが好ましい。これにより、センターラグ溝の端部形状が良好になり低騒音化を図るには有利になる。また、センターラグ溝の終端部が先細ることでブロック剛性を確保することができるので、未舗装路における走行性能を向上するには有利になる。
【0012】
本発明では、第一センターラグ溝の溝底に第一センターラグ溝の溝底から隆起して第一センターラグ溝に沿って延在する凸部を備えることが好ましい。このように凸部を設けることで、センターラグ溝に対する石噛みを防止することができ、未舗装路における走行性能を向上するには有利になる。
【0013】
本発明において、「接地端」とは、タイヤを正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で平面上に垂直に置いて正規荷重を加えたときに形成される接地領域のタイヤ軸方向の両端部である。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”であるが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”であるが、タイヤが乗用車用である場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの子午線断面図である。
図2】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤのトレッド面を示す正面図である。
図3】本発明のショルダーラグ溝およびセンターラグ溝を拡大して示す説明図である。
図4図2のX−X矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。図1において、符号CLはタイヤ赤道を示し、符号Eは接地端を示す。尚、図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。以下、図1を用いた説明は基本的に図示の子午線断面形状に基づくが、各タイヤ構成部材はいずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
【0017】
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りに車両内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図1では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。更に、ベルト層7の外周側にはベルト補強層8が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含む。ベルト補強層8において、有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°〜5°に設定されている。
【0018】
本発明は、このような一般的な断面構造の空気入りタイヤに適用されるが、その基本構造は上述のものに限定されない。
【0019】
本発明の空気入りタイヤのトレッド部1の表面には、図2に示すように、タイヤ赤道CLの両側でタイヤ周方向にそってジグザグ状に延在する一対の主溝10が形成される。ジグザグ状に延在するとは、図示の例のように、所定の方向に直進する部分と、この部分と異なる方向に直進する部分とが交互に繰り返して、タイヤ周方向に沿って繰り返し折れ曲がった形状である。この主溝10は、溝幅が例えば12mm〜22mm、溝深さが12mm〜18mmである。尚、主溝10の溝幅および溝深さは、前述の直進する部分において測定した値とする。
【0020】
一対の主溝10によって、トレッド部1には、主溝10のタイヤ幅方向外側に区画されたショルダー陸部11と、一対の主溝10の間に区画されたセンター陸部12とが形成される。図2〜4に示すように、ショルダー陸部11にはタイヤ幅方向に沿って延在するショルダーラグ溝20が形成され、センター陸部12にはショルダーラグ溝20から主溝10を跨いで連続的に延在するセンターラグ溝30が形成される。
【0021】
ショルダーラグ溝20は、一端が主溝10に連通し、他端が接地端Eを超えて延在して、ショルダー陸部11をショルダーブロック11′に区画する。ショルダーラグ溝20の溝幅および溝深さは主溝10と同等以下にすることができる。具体的には、ショルダーラグ溝20の溝幅は主溝10の溝幅の好ましくは50%〜100%、ショルダーラグ溝20の溝深さd2は主溝10の溝深さd1の好ましくは80%〜100%に設定することができる。ショルダーラグ溝20の形状は特に限定されないが、接地端E位置におけるタイヤ幅方向に対する角度を例えば0°〜15°にする一方で、後述のセンターラグ溝20と滑らかに接続するために主溝10に連通する端部においてセンターラグ溝20に向かって湾曲するとよい。ショルダーブロック11′には、未舗装路での走行性能の更なる向上のために、図示の例のようにサイプSや、スタッドピン植込み用の穴Pを設けることもできる。
【0022】
センターラグ溝30は、一端が主溝10に連通し、他端がセンター陸部12内で終端する。センターラグ溝30は、センター陸部12内での終端位置の異なる第一センターラグ溝31および第二センターラグ溝32の2種類を含む。具体的には、第一センターラグ溝31は、タイヤ赤道CLに到達して終端し、第二センターラグ溝32はタイヤ赤道CLに到達せずに終端する。これら第一センターラグ溝31および第二センターラグ溝32は、タイヤ周方向に交互に配置される。いずれのセンターラグ溝30(第一センターラグ31,第二センターラグ溝32)も、タイヤ幅方向に対して45°以上70°以下の角度で傾斜している。即ち、第一センターラグ溝31のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ1および第二センターラグ溝32のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ2が共に45°以上70°以下である。センターラグ溝30の溝幅は主溝10の溝幅と同等以下にすることができ、センターラグ溝30の溝深さd3はショルダーラグ溝20の溝深さd2よりも小さくすることが好ましい。具体的には、センターラグ溝30の溝幅は主溝10の溝幅の好ましくは50%〜100%、センターラグ溝30の溝深さd3はショルダーラグ溝20の溝深さd2の好ましくは70%〜95%に設定するとよい。
【0023】
前述のように、ショルダーラグ溝20とセンターラグ溝30とは主溝10を跨いで連続的に延在する。そのため、第一センターラグ溝31と連続的に延在するショルダーラグ溝20を第一ショルダーラグ溝21とし、第二センターラグ溝32と連続的に延在するショルダーラグ溝20を第二ショルダーラグ溝22とすると、本発明のトレッド部1においては、図3の斜線部で示すように、第一ショルダーラグ溝21と第一センターラグ溝31とからなる一連の溝の集合体(以下、「第一ラグ溝群G1」という)と、第二ショルダーラグ溝22と第二センターラグ溝32とからなる一連の溝の集合体(以下、「第二ラグ溝群G2」という)とが形成されており、この第一ラグ溝群G1と第二ラグ溝群G2とがタイヤ周方向に交互に配置されていることになる。特に、図示の例では、ジグザグ状に延在する主溝10の一部がセンターラグ溝30と同方向に傾斜して直進しており、この部分が第一ショルダーラグ溝21と第一センターラグ溝31との間や第二ショルダーラグ溝22と第二センターラグ溝32との間を中継しており、第一ラグ溝群G1や第二ラグ溝群G2がより滑らかに連続した溝の集合体を構成している。
【0024】
センター陸部12には、前述のセンターラグ溝30の他に、接続溝40が設けられる。接続溝40は、センター陸部12においてセンターラグ溝30の傾斜方向と逆方向に傾斜して、センターラグ溝30どうしを接続している。図示の例では、第一センターラグ溝31の終端部どうしを接続する接続溝41、第一センターラグ溝31と第二センターラグ溝32とを接続する接続溝42、第一センターラグ溝31の中途部どうしを接続する接続溝43が設けられているが、いずれの接続溝40(接続溝41〜43)もセンターラグ溝30(第一センターラグ溝31,第二センターラグ溝32)と逆方向に傾斜している。接続溝40の傾斜角度は接続対象のセンターラグ溝30の組み合わせによって変化するので、具体的な角度は特に限定されない。接続溝40の溝幅はセンターラグ溝30の溝幅よりも小さいとよく、接続溝40の溝深さd4はセンターラグ溝30の溝深さd3よりも小さいとよい。具体的には、接続溝40の溝幅はセンターラグ溝30の溝幅の好ましくは40%〜65%、接続溝40の溝深さd4はセンターラグ溝30の溝深さd3の好ましくは40%〜70%に設定するとよい。センター陸部12には、未舗装路での走行性能の更なる向上のために、図示の例のようにサイプSを設けることもできる。
【0025】
本発明では、上述のようにショルダーラグ溝20とセンターラグ溝30(第一センターラグ溝31および第二センターラグ溝32)を設けているので、これら溝がジグザグ状に延在する主溝10の両側に区画されたショルダーラグ溝11とセンター陸部12との間で陸部伝いに連続的に延在する一連の溝の集合体(第一ラグ溝群G1、第二ラグ溝群G2)として機能し、更に、センターラグ溝30と逆方向に傾斜した接続溝40がセンターラグ溝30どうしを連結してセンター陸部12における溝の構成を複雑化しているので、未舗装路における優れたトラクション性能や排土性を発揮することができる。一方で、センターラグ溝30が終端位置の異なる第一センターラグ溝31および第二センターラグ溝32の2種類で構成されて、これら第一センターラグ溝31および第二センターラグ溝32がタイヤ周方向に交互に配置され、また前述のように接続溝40がセンター陸部12における溝の構成を複雑化しているので、パターンノイズピークが分散されて、それにより低騒音化を図ることができる。
【0026】
このとき、ショルダーラグ溝20とセンターラグ溝30とが不連続であると、未舗装路におけるトラクション性能や排土性を確保することが難しくなる。接続溝40が形成されないと、パターンノイズピークの分散効果が充分に得られず、騒音性能を高めることができない。センターラグ溝30の傾斜角度が上述の範囲から外れると、タイヤ周方向またはタイヤ幅方向に対するトラクション性のいずれかを充分に確保することができず、これらのバランスが低下して未舗装路における走行性能を充分に高めることが難しくなる。尚、センターラグ溝30の傾斜角度とは、センターラグ溝30の終端部における中心と主溝10に対する開口部における中心とを結んだ直線がタイヤ幅方向に対してなす角度である。
【0027】
センターラグ溝30の終端位置が変わらず、1種類のセンターラグ溝のみで構成されると、パターンノイズピークの分散効果が充分に得られず、騒音性能を高めることができない。尚、第一センターラグ溝31が、タイヤ赤道CLに到達して終端するにあたって、第一センターラグ溝31の終端位置はセンター陸部12の最大幅の3%〜20%の範囲内に存在するとよい。また、第二センターラグ溝32がタイヤ赤道CLに到達せずに終端するにあたって、第二センターラグ溝の終端位置がタイヤ赤道CLから5%〜25%の範囲内に存在するとよい。
【0028】
ショルダーラグ溝20およびセンターラグ溝30の溝幅が主溝10の溝幅が50%未満であると、ショルダーラグ溝20およびセンターラグ溝30の溝容積が充分に確保できず、未舗装路におけるトラクション性能や排土性を充分に確保することが難しくなる。ショルダーラグ溝20およびセンターラグ溝30の溝幅が主溝10の溝幅が100%を超えると、ショルダー陸部11やセンター陸部12の剛性を充分に確保することが難しくなり耐久性が低下する。尚、本発明において、ショルダーラグ溝20の溝幅は接地端Eの位置において測定した溝幅とし、センターラグ溝30(第一センターラグ溝31,第二センターラグ溝32)の溝幅は各溝の長手方向の中心位置において測定した溝幅とする。
【0029】
前述のように、センターラグ溝30の溝深さd3はショルダーラグ溝20の溝深さd2よりも小さいことが好ましい。即ち、センター陸部12に形成される溝は他の陸部(ショルダー陸部11)に形成される溝よりも浅いことが好ましい。センターラグ溝30の溝深さd3がショルダーラグ溝20の溝深さd2の50%未満であると、センターラグ溝30が浅すぎるため、センターラグ溝30による効果(トラクション性や排土性の向上)が充分に得られない。センターラグ溝30の溝深さd3がショルダーラグ溝20の溝深さd2の95%を超えると、センターラグ溝30が深すぎて、センター陸部12の剛性を充分に確保することが難しくなる。
【0030】
接続溝40がセンターラグ溝30と同方向に傾斜していると、パターンノイズピークの分散効果が充分に得られず、騒音性能を高めることが難しくなる。接続溝40の溝深さがセンターラグ溝30の溝深さよりも大きいと、センター陸部12の剛性を充分に確保することが難しくなる。
【0031】
センターラグ溝30がセンター陸部12内で終端するにあたって、その終端部は鋭角状に形成されていることが好ましい。言い換えるとセンターラグ溝30は終端部に向かって先細る形状であることが好ましい。例えば、図示の例では、センターラグ溝30の終端面が踏面において形成する辺がセンターラグ溝30の溝幅方向に対して傾斜することで、センターラグ溝30が終端部に向かって先細っている。これにより、センターラグ溝30の端部形状が良好になり低騒音化を図るには有利になる。また、センターラグ溝30の終端部が先細ることでブロック剛性を確保することができるので、未舗装路における走行性能を向上するには有利になる。特に、図示の例のようにセンターラグ溝30の終端部を構成する場合、センターラグ溝30の終端面が踏面において形成する辺によるエッジ効果を有効に確保するために、この辺のタイヤ回転方向に対してなす角度を35°±30°の範囲に設定することが好ましい。
【0032】
第一センターラグ溝31の溝底には、図示の例のように、第一センターラグ溝31の溝底から隆起して第一センターラグ溝31に沿って延在する凸部50を設けることが好ましい。この凸部50は、溝底から隆起するにあたって、当該部位の第一センターラグ溝31の全幅を占めるものではなく、図示のように第一センターラグ溝31の中央部に第一センターラグ溝31の溝壁から離間して設けられるものである。このように凸部50を設けることで、凸部50によるエッジ効果を得ると共に、第一センターラグ溝31に対する石噛みを防止する効果も期待でき、未舗装路における走行性能を高めるには有利になる。この凸部50の溝底からの隆起高さは、好ましくは1mm以上5mm以下にするとよい。凸部50の高さが1mm未満であると、実質的に溝底からの隆起がなくなるため、凸部50を設けることによる効果が得られない。凸部50の高さが5mmを超えると、凸部50が第一センターラグ溝31の溝容積を低下させる要因となる。
【0033】
このような凸部50は、図示の例のように、主溝10の溝底に設けてもよい。主溝10に設ける場合も、凸部50は、主溝10の溝底から隆起して主溝10に沿って延在し、当該部位の主溝10の全幅を占めるものではなく、主溝10の中央部に主溝10の溝壁から離間して設けるとよい。主溝10に凸部50を設けた場合にも、凸部50によるエッジ効果を得ることができ、更に、主溝10に対する石噛みを防止する効果も期待できる。凸部50を主溝10に設ける場合の隆起高さは、上述の第一センターラグ溝31に設ける場合と同様の範囲に設定することができる。
【0034】
タイヤサイズがLT265/70R17 121Qであり、図1に例示する基本構造を有し、図2のトレッドパターンを基調とし、センターラグ溝とショルダーラグ溝との関係(センター/ショルダーラグ溝の関係)、第一センターラグ溝の終端位置、第一センターラグ溝のタイヤ幅方向に対する角度、第二センターラグ溝の終端位置、第二センターラグ溝のタイヤ幅方向に対する角度、接続溝の有無、センターラグ溝の溝深さ、接続溝の溝深さ、センターラグ溝およびショルダーラグ溝の溝幅(センター/ショルダーラグ溝の溝幅)、センターラグ溝の端部形状、第一センターラグ溝の溝底の凸部の有無をそれぞれ表1〜2のように設定した比較例1〜7、実施例1〜7、参考例1〜2の16種類の空気入りタイヤを作製した。
【0035】
表1,2の「センター/ショルダーラグ溝の関係」は、センターラグ溝とショルダーラグ溝とが主溝を跨いで連続的に延在しているか否かを示す欄であり、連続的に延在している場合を「連続」、連続的に延在していない場合を「不連続」と表示した。表1,2の「第一センターラグ溝の終端位置」および「第二センターラグ溝の終端位置」は、各溝の終端部がタイヤ赤道に到達するか否か示す欄であり、各溝がタイヤ赤道に到達してから終端する場合を「到達」、各溝がタイヤ赤道に到達せずに終端する場合を「不到達」と表示した。尚、比較例3は、タイヤ赤道に到達せずに終端するセンターラグ溝(本発明における第二センターラグ溝)のみが形成された例であるが、便宜的に「第一センターラグ溝の終端位置」および「第二センターラグ溝の終端位置」が共に「不到達」であるものとして表示した。同様に、比較例4は、タイヤ赤道に到達してから終端するセンターラグ溝(本発明における第一センターラグ溝)のみが形成された例であるが、便宜的に「第一センターラグ溝の終端位置」および「第二センターラグ溝の終端位置」が共に「到達」であるものとして表示した。
【0036】
表1,2の「センターラグ溝の溝深さ」は、ショルダーラグ溝の溝深さに対するセンターラグ溝の溝深さの大小関係を示す欄であり、ショルダーラグ溝の溝深さよりもセンターラグ溝の溝深さが小さい場合を「小」、ショルダーラグ溝の溝深さよりもセンターラグ溝の溝深さが大きい場合を「大」と表示した。表1,2の「接続溝の溝深さ」は、センターラグ溝の溝深さに対する接続溝の溝深さの大小関係を示す欄であり、センターラグ溝の溝深さよりも接続溝の溝深さが小さい場合を「小」、センターラグ溝の溝深さよりも接続溝の溝深さが大きい場合を「大」と表示した。表1,2の「センター/ショルダーラグ溝の溝幅」は、主溝の溝幅に対するセンターラグ溝およびショルダーラグ溝の溝幅の割合(%)を示す欄である。表1,2の「センターラグ溝の端部形状」は、センターラグ溝の終端部が鋭角状であるか否かを示す欄であり、図示の例のようにセンターラグ溝の終端面が踏面において形成する辺がセンターラグ溝の溝幅方向に対して傾斜する(鋭角状である)場合を「鋭角」、センターラグ溝の終端面が踏面において形成する辺がセンターラグ溝の溝幅方向に対して傾斜しない(鋭角でない)場合を「垂直」と表示した。
【0037】
これら空気入りタイヤについて、下記の評価方法により、騒音性能と発進性能を評価し、その結果を表1〜2に併せて示した。
【0038】
騒音性能
各試験タイヤをリムサイズ17×8Jのホイールに組み付けて、空気圧を350kPaとして試験車両(四輪駆動のSUV)に装着し、舗装路面からなる周回路にてパターンノイズについてテストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、比較例1の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどパターンノイズが小さく、騒音性能に優れることを意味する。尚、指数値が「104」以下では、基準とした比較例1と実質的な差異はなく、騒音性能を向上する効果は充分に得られなかったことを意味する。
【0039】
発進性
各試験タイヤをリムサイズ17×8Jのホイールに組み付けて、空気圧を350kPaとして試験車両(四輪駆動のSUV)に装着し、未舗装路(グラベル路面)からなる試験路にて発進性についてテストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、比較例1の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど未舗装路における発進性が優れることを意味する。尚、指数値が「103」以下では、基準とした比較例1と実質的な差異はなく、発進性能を向上する効果は充分に得られなかったことを意味する。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
表1〜2から明らかなように、実施例1〜はいずれも、比較例1と比較して、騒音性能および発進性能を効果的に向上した。尚、グラベル路面における発進性のみを評価したが、他の未舗装路(泥濘路や岩場や雪道など)を走行した場合であっても、本発明のタイヤは、路面上の泥や岩や雪などに対して有効に作用するので、どのような未舗装路であっても優れた発進性能を発揮することができる。
【0043】
一方、比較例2はセンターラグ溝とショルダーラグ溝とが連続的に延在しないため、発進性を向上する効果が充分に得られなかった。比較例3はすべてのセンターラグ溝がタイヤ赤道に到達せずに終端するため溝容積が確保できず発進性を向上する効果が充分に得られなかった。また、センター陸部のパターンの変動が小さくなるので騒音性能を向上する効果も充分に得られなかった。比較例4はすべてのセンターラグ溝がタイヤ赤道に到達して終端するため陸部剛性が確保できず発進性を向上する効果が充分に得られなかった。また、センター陸部のパターンの変動が小さくなるので騒音性能を向上する効果も充分に得られなかった。比較例5,6はセンターラグ溝の傾斜角度が不適当であるため発進性を向上する効果が充分に得られなかった。比較例7は接続溝を有さないため溝容積が確保できず発進性を向上する効果が充分に得られなかった。また、センター陸部のパターンが単純になり騒音性能を向上する効果も充分に得られなかった。
【符号の説明】
【0044】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルト補強層
10 主溝
11 ショルダー陸部
11′ ショルダーブロック
12 センター陸部
20 ショルダーラグ溝
30 センターラグ溝
31 第一センターラグ溝
32 第二センターラグ溝
40,41,42,43 接続溝
50 凸部
CL タイヤ赤道
E 接地端
図1
図2
図3
図4