(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
板状の座金本体に、第1ボルトの軸部を挿通可能とする第1挿通部と、当該第1挿通部から離れた位置で第2ボルトの軸部を挿通可能とする第2挿通部と、前記第1挿通部に前記軸部を挿通した前記第1ボルトの頭部及び当該第1ボルトの先端部に螺合したナットのうち何れか一方における平面状の第1側面を当接可能とする第1当接部と、前記第2挿通部に前記軸部を挿通した前記第2ボルトの頭部及び当該第2ボルトの先端部に螺合したナットのうち何れか一方における平面状の第2側面を当接可能とする第2当接部と、を備え、
前記座金本体の一面側には、前記第1挿通部と前記第2挿通部との離間方向を長手方向とする溝幅が前記各ボルトの軸部の直径よりも大きい長溝が形成され、
前記第1挿通部及び前記第2挿通部は、前記長溝の底面部に前記第1挿通部と前記第2挿通部との離間方向を長手方向とするように形成された一つの長孔内における一箇所と他の一箇所とに各々設定され、
前記第1当接部及び前記第2当接部は、前記長溝における前記長孔の周縁部分と前記座金本体の一面との間に前記第1挿通部と前記第2挿通部との離間方向に沿って延びるように形成される段差における長さ方向の複数箇所に同一直線上に位置するように、且つ、前記第1挿通部と前記第2挿通部との離間方向と直交する方向において、前記第1挿通部及び前記第2挿通部を両側から挟んで位置するように、それぞれが対をなして形成されており、それら対をなす前記第1当接部及び前記第2当接部に対応して、前記第1側面及び前記第2側面も対をなしていることを特徴とする回り止め機能付き座金。
前記第1当接部及び前記第2当接部は、前記第1挿通部と前記第2挿通部との離間方向に前記第1挿通部と前記第2挿通部との離間距離よりも長く連続して延びるように繋がっていることを特徴とする請求項1に記載の回り止め機能付き座金。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の回り止め機能付き座金を用いた締結構造は、ナットと共に締結具を構成するボルトの一本ごとに座金を一つずつ必要とする構造であるため、例えば締結力を増強するべく、その締結構造において用いるボルトの本数を増やした場合には、同様に座金の個数も増えることになる。したがって、ボルトの本数を増やすことで締結力の増強を図った場合には、ボルト以外にも締結構造における部材点数が増大してしまうという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、ボルト及びナットの一方を回転させたときに他方の回り止めを行うことができると共に、締結構造における部材点数の増大を抑制しつつ締結力を増強することができる回り止め機能付き座金及びそのような座金を締結構造の一部に用いたアタッチメント付きチェーン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する回り止め機能付き座金は、板状の座金本体に、第1ボルトの軸部を挿通可能とする第1挿通部と、当該第1挿通部から離れた位置で第2ボルトの軸部を挿通可能とする第2挿通部と、前記第1挿通部に前記軸部を挿通した前記第1ボルトの頭部及び当該第1ボルトの先端部に螺合したナットのうち何れか一方における平面状の第1側面を当接可能とする第1当接部と、前記第2挿通部に前記軸部を挿通した前記第2ボルトの頭部及び当該第2ボルトの先端部に螺合したナットのうち何れか一方における平面状の第2側面を当接可能とする第2当接部と、を備え、前記第1当接部及び前記第2当接部は、前記第1挿通部と前記第2挿通部との離間方向に沿って延びる同一直線上に位置している。
【0009】
この構成によれば、ナットと共に締結具を構成するボルトを複数本にすることで締結力を増強できるにも関わらず、座金自体の数量が増えることはないので、締結構造における部材点数の増大が抑制される。そして、ボルト及びナットの一方を締結方向に回転させたときには、他方における第1側面が座金本体の第1当接部に当接すると共に同じく他方における第2側面が座金本体の第2当接部に当接するので、他方の回り止めを行うことができる。
【0010】
上記回り止め機能付き座金において、前記第1当接部及び前記第2当接部は、前記第1挿通部と前記第2挿通部との離間方向に前記第1挿通部と前記第2挿通部との離間距離よりも長く連続して延びるように繋がっていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、第1挿通部と第2挿通部との離間方向に第1挿通部と第2挿通部との離間距離よりも長く連続して延びるように繋がった単一の長い当接部を座金本体に形成するだけで、回り止め機能を有する利便性に優れた座金を容易に製造できる。
【0012】
上記回り止め機能付き座金において、前記第1当接部及び前記第2当接部は、前記第1挿通部と前記第2挿通部との離間方向と直交する方向において、前記第1挿通部及び前記第2挿通部を両側から挟んで位置するように、それぞれが対をなして形成されており、それら対をなす前記第1当接部及び前記第2当接部に対応して、前記第1側面及び前記第2側面も対をなしていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、対をなす第1当接部に対をなす第1側面が回転方向で各々当接すると共に、対をなす第2当接部に対をなす第2側面が回転方向で各々当接し、当接時の負荷を分散して低減できるので、例えば第1当接部及び第2当接部を座金本体の一面側に形成した凸条等で構成する場合に、そのような凸条の高さを低くすることが可能となる。
【0014】
上記回り止め機能付き座金において、前記第1挿通部及び前記第2挿通部は、前記第1挿通部と前記第2挿通部との離間方向を長手方向とする一つの長孔内における一箇所と他の一箇所とに各々設定されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、長孔内において第1挿通部の設定箇所と第2挿通部の設定箇所との間となる更に別の箇所に新たなボルトの軸部を挿通させることで、締結力の増強を容易に図ることができる。
【0016】
上記課題を解決するアタッチメント付きチェーン装置は、スプロケットの駆動に伴い周回移動する無端状のチェーン部材と、前記チェーン部材の長さ方向の少なくとも一箇所に取り付けられたアタッチメントと、前記アタッチメントに対して被締結部を締結するための締結構造をボルト及びナットと共に用いられて構成する上記の座金と、を備える。
【0017】
この構成によれば、アタッチメント付きチェーン装置において、上記回り止め機能付き座金の場合と同様の作用効果を享受できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ボルト及びナットの一方を回転させたときに他方の回り止めを行うことができると共に、締結構造における部材点数の増大を抑制しつつ締結力を増強することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、ボルト及びナットと共に締結構造の一部に用いられる回り止め機能付き座金及びそのような座金を用いた締結構造を有するアタッチメント付きチェーン装置の一実施形態について、同装置を備えた機械式立体駐車場を事例にして、図を参照しながら説明する。
【0021】
図1に示すように、機械式立体駐車場11は、複数の可動式の車庫12を垂直面内で長円形状をなす周回軌道に沿って連続的に循環移動させるアタッチメント付きチェーン装置(以下、単に「チェーン装置」と略称することもある。)13を有している。チェーン装置13は、上下で対をなすスプロケット14(
図1には下方の1つのみ図示)と、両スプロケット14の間に掛け渡された無端状のチェーン部材15と、チェーン部材15の長さ方向に所定間隔をおいた複数箇所に取り付けられた複数(
図1では3つ図示)のアタッチメント16と、を備えている。そして、ケージ状の車庫12の上部に設けられた被締結部17がアタッチメント16に対して締結されることにより、機械式立体駐車場11では、車両18を載置可能な重量のある車庫12が、チェーン装置13に吊り下げられた状態で周回軌道を循環移動するようにしている。
【0022】
図1及び
図2に示すように、スプロケット14は、不図示の駆動モーターの駆動により水平方向(
図1では紙面と直交する方向)に沿う軸19を中心にして駆動回転する構成とされ、その外周面において周方向に所定間隔をおいた複数箇所には、半円弧状をなす凹部20が切り欠き形成されている。チェーン部材15は、水平方向に所定間隔をおいて対をなすように平行に配置された内リンクプレート21と、内リンクプレート21よりも水平方向に広い間隔をおいて対をなすように平行に配置された外リンクプレート22と、を有している。内リンクプレート21と外リンクプレート22とは、チェーン部材15の長さ方向に交互に配置され、その長さ方向で隣り合う他のリンクプレート21,22と互いの端部同士を連結ピン23で回動自在に連結されている。そして、チェーン部材15は、水平方向で対をなす内リンクプレート21同士の間で連結ピン23に回動自在に支持されたローラ24(
図2参照)がスプロケット14の外周面の凹部20と噛合することにより、スプロケット14の駆動回転に伴い周回移動するように構成されている。
【0023】
アタッチメント16は、水平方向に所定間隔をおいて対をなすように平行に配置された長尺のアームプレート25同士が補強板26を介して連結されることで一体に形成された前後一対のアーム部材27を有している。アーム部材27は、チェーン部材15の長さ方向を前後方向とした場合、前後で一対となるように設けられている。すなわち、
図1及び
図2に示すように、前後一対のアーム部材27は、チェーン部材15の長さ方向で隣り合う2つの連結ピン23に対して各々の基端部が固定されると共に各々の先端部が互いに対向する側縁同士を当接させることで、正面から見た場合に全体形状がV字形状をなすようにしてチェーン部材15に取り付けられている。なお、各アタッチメント16において、アーム部材27の基端部が固定される連結ピン23の一端には、ガイドローラ28が回転自在に支持されている。ガイドローラ28は、チェーン部材15の周回移動に伴い各アタッチメント16が周回方向に移動するときに不図示のガイドレールに案内されることで、アタッチメント16に吊り下げられた各車庫12が揺動を抑制された状態で循環移動するようにしている。
【0024】
図1〜
図3に示すように、各アタッチメント16において前後で一対のアーム部材27の先端部同士は、水平方向で対をなす連結板29により連結されている。すなわち、一対のアーム部材27の先端部において各アームプレート25の外面となる箇所には、連結板29が両アーム部材27の先端部間に架設された状態で溶接30により固定されている。また、アーム部材27の先端部及び連結板29には図示しない同心の貫通孔が形成されており、これらの貫通孔に挿通されるボルト31及びボルト31の先端部に螺合するナット32等により、前述した車庫12側の被締結部17をアタッチメント16に締結する締結構造33が構成されている。
【0025】
図3に示すように、被締結部17は、車庫12の上部に水平方向に架設された軸体34を回動自在に挿通する段付きブシュ35と、段付きブシュ35の小径の両端が嵌合される嵌合孔36とボルト31の軸部37を挿通可能な貫通孔38が形成された一対の軸受け板39と、両軸受け板39の間に配置される円筒状のスペーサ部材40と、を備えている。両軸受け板39は、アーム部材27の先端部において連結板29が固定された外面側とは反対側となる内面側に各々の一端側の外側面(
図3では上端側の外側面)が面接触する。スペーサ部材40は、段付きブシュ35の大径部と軸方向の長さが同じであって、ボルト31の軸部37が挿通された状態で、両端面が軸受け板39の内面における貫通孔38の周縁に当接される。すなわち、スペーサ部材40は、両軸受け板39間の間隔保持部材として機能するものであり、締結構造33を構成するボルト31の先端部に螺合したナット32が締結方向へ過大に回転される等した場合において、軸受け板39やアームプレート25が変形などして被締結部17の締結具合に支障が生じることを抑制する。
【0026】
また、
図3に示すように、段付きブシュ35は、その両端が軸受け板39の嵌合孔36に対して先端が外側へ突出する状態に嵌合され、その突出した小径の先端部には、嵌合孔36と同径の嵌合孔41を有する当て板42が、段付きブシュ35の先端面と面一となるように固定されている。さらに、段付きブシュ35における大径部分の外周面の一部には補強板43が溶接44により固定されている。そして、段付きブシュ35の一方(
図3では左方)の端部から突出した軸体34の先端部には、外側からキャップ45が嵌合されている。
【0027】
前述したボルト31及びナット32を含んで構成される締結構造33は、更に、軸方向でナット32と連結板29との間に介装される平ワッシャ46と、軸方向でボルト31の頭部と連結板29との間に介装される回り止め機能付き座金(以下、単に「座金」と略称することもある。)47とを、構成要素に含んでいる。平ワッシャ46は、その先端部にナット32が螺合するボルト31の軸部37を挿通可能とする挿通孔(図示略)が1つだけ貫通形成された周知の部品である。その一方、本実施形態の座金47は、その軸部37を挿通させたボルト31の回り止め機能を有する特殊な座金である。
【0028】
図4及び
図5に示すように、回り止め機能付き座金47は、正面視した場合に矩形板状の座金本体48を有している。そして、座金本体48の一面側において、短手方向で対向する両長辺のうち一方(
図4では上方)の長辺の縁には、その長辺に沿って座金本体48の一端から他端まで延びる凸条49が形成されている。
図5に示すように、凸条49は、その一側面が座金本体48の一面に対して直角に交差する断面四角形状をなしており、こうした凸条49により、座金本体48の一面側には、座金本体48の一面と直交する帯状の平面が座金本体48の長手方向の一端から他端まで連続して延びた形状をなす段差50が形成される。
【0029】
図4に示すように、座金本体48において凸条49が形成された領域よりも短手方向で中央寄りとなる領域には、ボルト31の一種である第1ボルト131を挿通可能とする第1挿通部101と、同じくボルト31の一種である第2ボルト231を挿通可能とする第2挿通部201とが形成されている。すなわち、本実施形態では、締結構造33における締結力を増強するべく、座金47の個数は増やすことなく、ボルト31の本数を複数本に増やしている。本実施形態の場合、第1挿通部101は、第1ボルト131の軸部37を挿通可能な1つの円孔で構成され、第2挿通部201は、第1挿通部101を構成する1つの円孔から座金本体48の長手方向に所定距離だけ離れた位置で第2ボルト231の軸部37を挿通可能な1つの円孔で構成されている。
【0030】
第1ボルト131は、その頭部の周面の一部に平面状の第1側面102を有しており、同様に第2ボルト231も、その頭部の周面の一部に平面状の第2側面202を有する。
図4に示すように、第1側面102は、第1ボルト131の頭部の周面において、軸心を挟んで180度反対側となる2箇所に互いに平行となるように形成され、同様に第2側面202も、第2ボルト231の頭部の周面において、軸心を挟んで180度反対側となる2箇所に互いに平行となるように形成されている。
【0031】
そして、第1ボルト131と第2ボルト231が第1挿通部101と第2挿通部201に各軸部37を挿通させた状態では、第1ボルト131の第1側面102と第2ボルト231の第2側面202が、座金本体48の一面側において凸条49の段差50に対して、面接触状態で当接する。すなわち、座金本体48の一面側に凸条49が形成した段差50における座金本体48の一面と直交する帯状の平面部分に対し、第1ボルト131の第1側面102が第1挿通部101と対応する位置で当接すると共に第2ボルト231の第2側面202が第2挿通部201と対応する位置で当接する。
【0032】
この点で、座金本体48の一面側の凸条49の段差50において、
図4に示すように、第1ボルト131の第1側面102が面接触している箇所が、第1挿通部101に軸部37を挿通した第1ボルト131の頭部における平面状の第1側面102を当接可能とする第1当接部103を構成している。同様に、座金本体48の一面側の凸条49の段差50において、
図4に示すように、第2ボルト231の第2側面202が面接触している箇所が、第2挿通部201に軸部37を挿通した第2ボルト231の頭部における平面状の第2側面202を当接可能とする第2当接部203を構成している。
【0033】
図4に示すように、座金本体48の一面側に凸条49によって形成された段差50は、座金本体48の長手方向の一端から他端まで、座金本体48の長手方向に沿って直線的に延びた形状をしている。換言すると、凸条49は、第1挿通部101と第2挿通部201との離間方向に第1挿通部101と第2挿通部201との離間距離よりも長く連続して延びるように繋がった単一の長い当接部を座金本体48の一面側に形成しているといえる。この点で、座金本体48の一面側に凸条49によって形成された段差50において、第1ボルト131の第1側面102を当接可能とする第1当接部103及び第2ボルト231の第2側面202を当接可能とする第2当接部203は、第1挿通部101と第2挿通部201との離間方向に沿って延びる同一直線上に位置しているといえる。
【0034】
次に、上記のように構成された回り止め機能付き座金47及びチェーン装置13の作用について説明する。
さて、機械式立体駐車場11が備えるチェーン装置13において、座金47を含む締結構造33により車庫12側の被締結部17を締結する場合、
図4及び
図5に示すように、座金本体48の第1挿通部101に第1ボルト131の軸部37が挿通される一方、座金本体48の第2挿通部201に第2ボルト231の軸部37が挿通される。そして、凸条49による段差50の長さ方向において離間した2箇所、すなわち、第1当接部103と第2当接部203に対して、第1ボルト131の頭部の第1側面102と第2ボルト231の頭部の第2側面202とを、各々が面接触状態となるように当接させる。
【0035】
そして次に、
図3に示すように、第1ボルト131及び第2ボルト231(
図3では、ボルト31で図示)の先端部にナット32を螺合させ、その状態でスパナ等の工具を用いてナット32を締結方向に回転させる。このとき、ナット32の回転に伴い、ボルト31(第1ボルト131及び第2ボルト231)が連れ回りすると、被締結部17を締結することが困難となる。
【0036】
しかし、本実施形態においては、そのような連れ回りが生じそうになると、ボルト31の一種である第1ボルト131(又は第2ボルト231)における第1側面102(又は第2側面202)が凸条49の段差50の第1当接部103(又は第2当接部203)に回転を規制可能に当接しているため、そのようなボルト31の連れ回りが抑制される。
【0037】
上記の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ナット32と共に締結構造33を構成するボルト31を第1ボルト131と第2ボルト231を含む複数本にすることで締結力を増強できるにも関わらず、座金47自体の数量が増えることはないので、締結構造33における部材点数の増大を抑制できる。
【0038】
(2)第1ボルト131(又は第2ボルト231)に螺合するナット32を締結方向に回転させたときには、第1ボルト131(又は第2ボルト231)の第1側面102(又は第2側面202)が、座金本体48に凸条49が形成した段差50の第1当接部103(又は第2当接部203)に当接する。そのため、ナット32の締結方向への回転時に、第1ボルト131(又は第2ボルト231)が連れ回りすることを抑制できる。
【0039】
(3)一本の凸条49によって、第1挿通部101と第2挿通部201との離間方向に第1挿通部101と第2挿通部201との離間距離よりも長く連続して延びるように繋がった単一の長い当接部を座金本体48に形成するだけで、回り止め機能を有する利便性に優れた座金47を容易に製造できる。すなわち、第1当接部103を有する段差の凸条と第2当接部203を有する段差の凸条という複数の凸条を別々に座金本体48に形成する場合に比べて、回り止め機能付き座金47の製造工程を簡略にできる。
【0040】
(4)第1当接部103及び第2当接部203を有した段差50は予め座金本体48の一面側に凸条49をプレス加工等により形成しておけばよいため、締結作業を行う現場で作業員が座金本体48の一部を折り曲げて当接部を形成するという煩雑な作業を行うことをなくせる。
【0041】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。また、以下の変更例は、適宜組み合わせてもよい。
・
図6及び
図7に示す変形例1のように、回り止め機能付き座金47は、第1当接部103及び第2当接部203が第1挿通部101と第2挿通部201との離間方向と直交する座金本体48の短手方向において、第1挿通部101及び第2挿通部201を両側から挟んで位置するように、それぞれが対をなして形成されていてもよい。すなわち、座金本体48の一面側において対向する2つの長辺の各縁に沿って延びる一対の凸条49により帯状の平面が互いに対向する一対の段差50を形成し、各段差50に第1当接部103と第2当接部203を各々形成してもよい。そして、この場合、座金本体48の短手方向でそれぞれ対をなす第1当接部103及び第2当接部203に対応して、第1ボルト131及び第2ボルト231の第1側面102及び第2側面202も対をなしていることが好ましい。
【0042】
この変形例1の構成によれば、対をなす第1当接部103に対をなす第1側面102が回転方向で各々当接すると共に、対をなす第2当接部203に対をなす第2側面202が回転方向で各々当接し、当接時の負荷を分散して低減できる。そのため、例えば第1当接部103及び第2当接部203を座金本体48の一面側に凸条49による段差50で構成する場合に、そのような凸条49の高さを
図7に示すように低くすることが可能となり、その分、締結構造33での座金47の厚さ方向での占有スペースを小さくできる。
【0043】
・
図8及び
図9に示す変形例2のように、回り止め機能付き座金47は、第1挿通部101及び第2挿通部201が第1挿通部101と第2挿通部201との離間方向を長手方向とする一つの長孔51内における一箇所と他の一箇所とに各々設定されていてもよい。
【0044】
この構成によれば、
図8に2点鎖線で示すように、長孔51内において第1挿通部101と第2挿通部201との間となる箇所に設定した第3挿通部301に、更に第3ボルト331(31)の軸部37を挿通し、その頭部の平面状の第3側面302を凸条49の段差50の第3当接部303に当接させれば、締結力の増強を容易に図ることができる。また、長孔51内の任意の箇所に第1挿通部101と第2挿通部201を設定できるので、第1ボルト131と第2ボルト231の配置間隔を任意の間隔に調整でき、締結構造33の設計の自由度を向上できる。
【0045】
・
図10及び
図11に示す変形例3のように、回り止め機能付き座金47は、溝幅Wがボルト31の軸部37の直径よりも大きい長溝52を座金本体48の一面側に形成した上で、その長溝52の底面部に
図8に示した変形例2の座金47における長孔51と同様の長孔51を形成してもよい。この場合、長溝52における長孔51の周縁部分と座金本体48の一面との間に段差50が形成され、その段差50における長さ方向の複数箇所に、第1当接部103及び第2当接部203が形成される。
【0046】
この構成によれば、座金本体48に凸条49を形成することなく、第1側面102及び第2側面202を当接可能とする第1当接部103及び第2当接部203を締結構造33での座金47の厚さ方向の占有スペースを小さくしつつ容易に形成することができる。
【0047】
・
図12及び
図13に示す変形例のように、回り止め機能付き座金47及び同座金47を用いたチェーン装置13は、
図1に示した機械式立体駐車場11以外のコンベヤ装置等において適用してもよい。
【0048】
すなわち、この場合のチェーン装置13は、左右方向に一定の間隔をおいて平行に配置された左右一対のチェーン部材15を有し、両チェーン部材15間に複数のバケット61が組み付けられている。バケット61は、内側面62同士が対向する左右一対の側板63と、その一対の側板63に組み付けられた状態において両側板63と協同して一面側(
図12では上面側)が開口した収容凹部64を形成する凹部形成部材65と、側板63をチェーン部材15側の支持片状をなすアタッチメント16に固定する固定片部66とを備えている。
【0049】
すなわち、バケット61は、側板63の外側面67から水平方向へ突出するように側板63に取り付けられた固定片部66がチェーン部材15側のアタッチメント16上に各々の貫通孔66aと貫通孔16aを位置合わせした状態で載置される。そして、その状態において、アタッチメント16の下方から回り止め機能付き座金47が当接されると共に、その座金47の第1挿通部101と第2挿通部201に第1ボルト131と第2ボルト231の軸部37が挿通される。そして、第1ボルト131と第2ボルト231の先端部に螺合させたナット32を締結方向に回転させることによりバケット61において被締結部17を構成する固定片部66がチェーン部材15側のアタッチメント16に締結される。こうしたチェーン装置13を備えるコンベヤ装置においても、実施形態におけるチェーン装置13及び座金47が奏し得る作用効果を同様に享受できる。
【0050】
・
図8に2点鎖線で示すように、第1挿通部101及び第2挿通部201を長孔51内に設定する場合において、第1ボルト131及び第2ボルト231以外にボルト(例えば第3ボルト331)を追加して挿通する場合、その追加するボルトの本数は、2本以上の複数本であってもよい。この場合は、さらにボルトの本数が増えることで締結構造33の締結力が増強される。
【0051】
・
図8及び
図10に示すように、第1挿通部101及び第2挿通部201を長孔51内に設定する場合において、第1挿通部101と第2挿通部201の各設定箇所は長孔51内の両端以外の任意の箇所であってもよい。
【0052】
・第1ボルト131及び第2ボルト231の頭部の周面において平面状をなす第1側面102及び第2側面202は、1つ又は2以上の複数の平面状をなす側面で構成されていてもよい。
【0053】
・第1ボルト131及び第2ボルト231の頭部の形状は、軸方向からの平面視において、例えば三角形状、四角形状、六角形状などの多角形状をなしていてもよい。
・座金本体48の一面側において、第1ボルト131の第1側面102及び第2ボルト231の第2側面202を当接可能とする第1当接部103及び第2当接部203は、第1挿通部101と第2挿通部201との離間方向において繋がっていなくてもよい。すなわち、第1挿通部101と対応する位置に第1当接部103が存在し、第2挿通部201と対応する位置に第2当接部203が存在していればよい。
【0054】
・座金本体48の一面側に第1当接部103及び第2当接部203を有した段差50を形成する凸条49は、座金本体48の長手方向の一端から他端まで形成されていなくてもよい。すなわち、第1挿通部101と第2挿通部201との離間距離よりも長く延びているならば、座金本体48の長手方向の全長よりも短くてもよい。
【0055】
・
図3に示す締結構造33において平ワッシャ46の介在箇所と回り止め機能付き座金47の介在箇所を入れ替えてもよい。この場合、締結時にはボルト31の方がスパナ等の工具で回転させられる。そして、この場合には、第1ボルト131の先端部に螺合されたナット32の周面の平面状をなす側面が第1側面102を構成し、第2ボルト231の先端部に螺合されたナット32の周面の平面状をなす側面が第2側面202を構成することになる。