(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(1)ポリイミドフィルム表面にシランカップリング剤層を形成する工程が、ポリイミドフィルム表面に気化させたシランカップリング剤を暴露することにより行われる事を特徴とする請求項3記載のポリイミドフィルム積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<シランカップリング剤>
本発明におけるシランカップリング剤とは、分子内に珪素元素を有し、ポリイミドフィルム間を物理的および化学的に介在し、両者間の接着力を高める作用を有する化合物を云う。
シランカップリング剤の好ましい具体例としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネ-トプロピルトリエトキシシラン、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレ-ト、クロロメチルフェネチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。
【0014】
本発明で用いることのできるシランカップリング剤としては、上記のほかにn-プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ドデシルリクロロシラン、ドデシルトリメトキシラン、エチルトリクロロシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリクロロシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ペンチルトリクロロシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリクロロヘキシルシラン、トリクロロメチルシラン、トリクロロオクタデシルシラン、トリクロロプロピルシラン、トリクロロテトラデシルシラン、トリメトキシプロピルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、トリクロロ-2-シアノエチルシラン、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、などを使用することもできる。
【0015】
また、シランカップリング剤の中に他のアルコキシラン類、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどを適宜加えても良い。
【0016】
また、シランカップリング剤の中に他のアルコキシラン類、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシランなどを適宜加えた場合、あるいは、加えない場合も含めて、混合、加熱操作を加えて、反応を若干進めてから、使用しても良い。
【0017】
かかるシランカップリング剤の中で、本発明にて好ましく用いられるシランカップリング剤はカップリング剤の、一分子あたりに一個の珪素原子を有する化学構造のシランカップリング剤が好ましい。
本発明では、特に好ましいシランカップリング剤としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシランなどが挙げられる。プロセスで特に高い耐熱性が要求される場合、Siとアミノ基の間を芳香族基でつないだものが望ましい。
なお本発明では必要に応じて、リン系カップリング剤、チタネ-ト系カップリング剤等を併用しても良い。
【0018】
<シランカップリング剤処理>
一般にシランカップリング剤処理とは、対象物表面にシランカップリング剤、ないしシランカップリング剤の縮合物からなる薄膜層を形成する処理を云う。
シランカップリング剤処理は、一般に、シランカップリング剤をアルコールなどの溶液とし、対象物に塗布ないし、対象物をシランカップリング剤溶液に浸漬等の手段により塗布し、その後、乾燥、加熱によりシランカップリング剤を縮合させると同時に対象物表面に化学反応的に結合させることによる。
シランカップリング剤の塗布方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、ディップ法などが一般的である。
シランカップリング剤処理は、必要に応じてポリイミドフィルムの片面、ないし両面に行われる。
【0019】
本発明では、好ましくは、シランカップリング剤塗布工程を気相を介して行うことができる。気相を解するとは、気化させたシランカップリング剤にポリイミドフィルムを暴露させる方法である。気化とは、シランカップリング剤の蒸気、すなわち実質的に気体状態のシランカップリング剤あるいは、微粒子状態のシランカップリング剤が存在する状態を指す。そして、ここへの暴露とは、前記の気化したはシランカップリング剤を含んだ雰囲気にポリイミドフィルムを接触させることを云う。シランカップリング剤は一定の蒸気圧を有するため、常温雰囲気かであっても一定量の気体状態のシランカップリング剤は存在する。液体状態のシランカップリング剤を40℃〜シランカップリング剤の沸点までの温度に加温すれば、さらに高濃度のシランカップリング剤の蒸気を得ることができる。気化したシランカップリング剤は露点の関係からミスト化し気体中での微粒子状態で存在する場合もある。本発明ではこのような状態も利用できる。また、温度圧力の操作によって、蒸気密度を高める操作を付け加えることも行いうる。シランカップリング剤の沸点は、化学構造によって異なるが、概ね100〜250℃の範囲である。ただし200℃以上の加熱は、シランカップリング剤の有機基側の副反応を招く恐れがあるため好ましくない。
シランカップリング剤を加温する環境は、加圧下、略常圧下、減圧下のいずれでも構わないが、シランカップリング剤の気化を促進する場合には略常圧下ないし減圧下が好ましい。多くのシランカップリング剤は可燃性液体であるため、密閉容器内にて、好ましくは容器内を不活性ガスで置換した後に気化作業を行うことが好ましい。しかし、生産効率向上および生産設備価格低減の観点からは、真空を使わない環境でのシランカップリング剤塗布が望ましい。本発明における真空を使わないシランカップリング剤堆積法とは、堆積時のみに真空を使わないのではなく、通常大気雰囲気でポリイミドフィルムをセットしてから、キャリアガスに置換してシランカップリング剤を堆積してから、またシランカップリング剤の無い状態に戻す時まで、概略大気圧のままで行うことを指す。
ポリイミドフィルムをシランカップリング剤に暴露する時間は特に制限されないが、60分以内、好ましくは20分以内、さらに好ましくは10分以内である。暴露時間はシランカップリング剤の濃度と、必要なシランカップリング剤塗布量との関係によって定まる工程設計値である。暴露時間の下限は特に限定されないが、工業的に生じる塗布量の斑を低減するためには10秒以上、好ましくは30秒以上程度の時間を設けた方が良い。
【0020】
ポリイミドフィルムをシランカップリング剤に暴露する間のポリイミドフィルム温度は、シランカップリング剤の種類と、求めるシランカップリング剤層の厚さにより-50℃から200℃の間の適正な温度に制御することが好ましい。
シランカップリング剤に暴露されたポリイミドフィルムは、好ましくは、暴露後に、70℃〜200℃、さらに好ましくは75℃〜150℃に加熱される。かかる加熱によって、ポリイミドフィルム表面の水酸基などと、シランカップリング剤のアルコキシ基やシラザン基が反応し、シランカップリング剤処理が完了する。加熱に要する時間は10秒以上10分程度以内である。温度が高すぎたり、時間が長すぎる場合にはカップリング剤の劣化が生じる場合がある。また短すぎると処理効果が得られない。なお、シランカップリング剤に暴露中の基板温度が既に80℃以上である場合には、事後の加熱を省略することも出来る。
【0021】
本発明では、ポリイミドフィルムのシランカップリング剤塗布面を下向きに保持してシランカップリング剤蒸気に暴露することが好ましい。シランカップリング剤の溶液を塗布する従来法では、必然的に塗布中および塗布前後にポリイミドフィルムの塗布面が上を向くため、作業環境下の浮遊異物などが無機基板表面に沈着する可能性を否定できない。しかしながら本発明ではポリイミドフィルムを下向きに保持することが出来るため。環境中の異物付着を大幅に減ずることが可能となる。
また、気化したシランカップリング剤を含む気体を高分子基板に暴露させる部屋に導入する際に、一旦2つ以上に気体を分離して導入すること、2つ以上の気体を前記部屋内で衝突させることで乱流を生じさせ、シランカップリング剤分布を均一化させる操作なども有効である。
シランカップリング剤を気化させる方式としては、加熱による蒸発気化以外に、シランカップリング剤液中に気体を導入して気泡を発生させる方式もあり得る。これを以後バブリングと呼ぶ。バブリングについては、単純に気体の通る配管をシランカップリング剤液に入れること、配管の先に多孔質体を取り付けて、微細な気泡が数多く出るようにしたもの、超音波を重畳して、気化を促すものも有効である。
【0022】
また、気化したシランカップリング剤は帯電する場合がある。この効果を利用して暴露時にフィルムに電界を加えることにより多くのシランカップリング剤を短時間で堆積でき、かつシランカップリング剤が運動エネルギーを持つため、堆積膜が、島状膜になることを抑制できる。また、使用するキャリアガスについては、水分が含まれていると、この水分とシランカップリング剤の反応が始まることが知られている。このため、露点が低いことが有効である。望ましくは、露点15℃以下、さらに望ましくは10℃以下、さらに望ましくは、5℃以下である。
シランカップリング剤層積層ポリイミドフィルムのシランカップリング剤層に存在する長径10μm以上の珪素含有異物数は2000個/m2以下、好ましくは1000個/m2以下、更には500個/m2以下とすることが、本発明の好ましい形態である。また前記操作を組み合わせる事により珪素含有異物数は達成可能である。
【0023】
シランカップリング剤の塗布量は、シランカップリング剤縮合物層の厚さよる。カップリング剤層が厚すぎると、高温暴露時に発生する分解物量が増え、ポリイミドフィルム間の接着を阻害する場合がある。本発明のシランカップリング剤縮合物層の厚さは5nm以上1000nm以下である事が好ましく、5nm以上300nm以下がさらに好ましい。さらに、厚さの上限は200nm未満が好ましく、150nm以下が好ましく、さらに実用上は100nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。5nm以下の領域になるとカップリング剤が均一な塗膜としてではなく、クラスター状に存在するケースが想定され、好ましくはない。
シランカップリング剤縮合物層の膜厚は、ポリイミドフィルム積層体のフィルム面に垂直方向の断面を研磨した後にミクロトームで超薄切片とし、透過型電子顕微鏡にて断面写真を撮影し、実測値を拡大倍率から逆算して求めた。
【0024】
本発明のポリイミドフィルムの厚さは3μm以上が好ましく、11μm以上がなお好ましい。ポリイミドフィルムの厚さの上限は特に制限されないが、フレキシブル電子デバイスとしての要求より250μm以下であることが好ましく、さらに150μm以下、なおさらには90μm以下が好ましい。
本発明のポリイミドフィルムの面積は、積層体やフレキシブル電子デバイスの生産効率・コストの観点より、大面積であることが好ましい。1000cm2以上であることが好まし
く、1500cm2以上であることがより好ましく、2000cm2以上であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明では、ポリイミドフィルムとして芳香族ポリイミド、脂環族ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどを用いることが出来る。
【0026】
一般にポリイミドフィルムは、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液を、ポリイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥してグリーンフィルム(「前駆体フィルム」または「ポリアミド酸フィルム」ともいう)となし、さらにポリイミドフィルム作製用支持体上で、あるいは該支持体から剥がした状態でグリーンフィルムを高温熱処理して脱水閉環反応を行わせることによって得られる。
【0027】
ポリアミド酸を構成するジアミン類としては、特に制限はなく、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族ジアミン類、脂肪族ジアミン類、脂環式ジアミン類等を用いることができる。耐熱性の観点からは、芳香族ジアミン類が好ましく、芳香族ジアミン類の中では、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類がより好ましい。ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を用いると、高い耐熱性とともに、高弾性率、低熱収縮性、低線膨張係数を発現させることが可能になる。ジアミン類は、単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
【0028】
ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、特に限定はなく、例えば、5-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、5-アミノ-2-(m-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6-アミノ-2-(m-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’-p-フェニレンビス(5-アミノベンゾオキサゾール)、2,2’-p-フェニレンビス(6-アミノベンゾオキサゾール)、1-(5-アミノベンゾオキサゾロ)-4-(6-アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6-(4,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビスオキサゾール、2,6-(4,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:4,5-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:4,5-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,3’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,3’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:4,5-d’]ビスオキサゾール等が挙げられる。
【0029】
上述したベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類以外の芳香族ジアミン類としては、例えば、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスアニリン)、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-アミノベンジルアミン、p-アミノベンジルアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエ-テル、3,4’-ジアミノジフェニルエ-テル、4,4’-ジアミノジフェニルエ-テル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-2-[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-2-[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エ-テル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エ-テル、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’-ビス[(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエ-テル、4,4’-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエ-テル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4-{4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-トリフルオロメチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-フルオロフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-メチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-シアノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5,5’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4,5’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5-フェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-5’-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5,5’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4,5’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-5’-ビフェノキシベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-5-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-5-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、および上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てが、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0030】
前記脂肪族ジアミン類としては、例えば、1,2-ジアミノエタン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,8-ジアミノオクタン等が挙げられる。
前記脂環式ジアミン類としては、例えば、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
芳香族ジアミン類以外のジアミン(脂肪族ジアミン類および脂環式ジアミン類)の合計量は、全ジアミン類の20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。換言すれば、芳香族ジアミン類は全ジアミン類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0031】
ポリアミド酸を構成するテトラカルボン酸類としては、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂肪族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂環族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)を用いることができる。中でも、芳香族テトラカルボン酸無水物類、脂環族テトラカルボン酸無水物類が好ましく、耐熱性の観点からは芳香族テトラカルボン酸無水物類がより好ましく、光透過性の観点からは脂環族テトラカルボン酸類がより好ましい。これらが酸無水物である場合、分子内に無水物構造は1個であってもよいし2個であってもよいが、好ましくは2個の無水物構造を有するもの(二無水物)がよい。テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0032】
脂環族テトラカルボン酸類としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5ーシクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’ービシクロヘキシルテトラカルボン酸等の脂環族テトラカルボン酸、およびこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも、2個の無水物構造を有する二無水物(例えば、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5ーシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’ービシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物等)が好適である。なお、脂環族テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
脂環式テトラカルボン酸類は、透明性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0033】
芳香族テトラカルボン酸類としては、特に限定されないが、ピロメリット酸残基(すなわちピロメリット酸由来の構造を有するもの)であることが好ましく、その酸無水物であることがより好ましい。このような芳香族テトラカルボン酸類としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸無水物等が挙げられる。
芳香族テトラカルボン酸類は、耐熱性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0034】
本発明のポリイミドフィルムは、ガラス転移温度が250℃以上、好ましくは300℃以上、さらに好ましくは350℃以上であり、あるいは500℃以下の領域においてガラス転移点が観測されないことが好ましい。本発明におけるガラス転移温度は、示差熱分析(DSC)により求めるものである。
【0035】
本発明のポリイミドフィルムの線膨張係数(CTE)は、好ましくは、-5ppm/K〜+20ppm/Kであり、より好ましくは-5ppm/K〜+15ppm/Kであり、さらに好ましくは1ppm/K〜+10ppm/Kである。CTEが前記範囲であると、一般的な支持体との線膨張係数の差を小さく保つことができ、熱を加えるプロセスに供してもポリイミドフィルムと無機物からなる支持体とが剥がれることを回避できる。また、問題とする本発明におけるポリイミドフィルムの線膨張係数は30から200℃の間の平均の値を用いているが、用途によって、注目する温度範囲は変わり、高温でのプロセスを考慮して、30℃から400℃の範囲を調べる場合、100℃から400℃の範囲の場合もあり、リフロープロセスを念頭において、50℃から280℃の範囲を調べる場合、使用温度範囲として、-50℃から150℃の範囲を重視する場合もありえる。
【0036】
本発明におけるポリイミドフィルムの破断強度は、60MPa以上、好ましくは120MP以上、さらに好ましくは240MPa以上である。破断強度の上限に制限は無いが、事実上1000MPa程度未満である。なお、ここで前記ポリイミドフィルムの破断強度とは、ポリイミドフィルムの長さ方向と幅方向の平均値をさす。
【0037】
本発明におけるポリイミドフィルムの厚さ斑は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは12%以下、さらに好ましくは7%以下、特に好ましくは4%以下である。厚さ斑が20%を超えると、狭小部へ適用し難くなる傾向がある。なお、フィルムの厚さ斑は、例えば接触式の膜厚計にて被測定フィルムから無作為に10点程度の位置を抽出してフィルム厚を測定し、下記式に基づき求めることができる。
フィルムの厚さ斑(%)
=100×(最大フィルム厚ー最小フィルム厚)÷平均フィルム厚
【0038】
本発明におけるポリイミドフィルムは、その製造時において幅が300mm以上、長さが10m以上の長尺ポリイミドフィルムとして巻き取られた形態で得られるものが好ましく、巻取りコアに巻き取られたロール状ポリイミドフィルムの形態のものがより好ましい。
【0039】
ポリイミドフィルムにおいては、ハンドリング性および生産性を確保する為、フィルム中に滑材(粒子)を添加・含有させて、ポリイミドフィルム表面に微細な凹凸を付与して滑り性を確保することが好ましい。前記滑材(粒子)とは、好ましくは無機物からなる微粒子であり、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭素化物、金属酸塩、リン酸塩、炭酸塩、タルク、マイカ、クレイ、その他粘土鉱物、等からなる粒子を用いることができる。好ましくは、酸化珪素、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、ピロリン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、ガラスフィラーなどの金属酸化物、リン酸塩、炭酸塩を用いることができる。滑材は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0040】
前記滑材(粒子)の体積平均粒子径は、通常0.001〜10μmであり、好ましくは0.03〜2.5μm、より好ましくは0.05〜0.7μm、さらに好ましくは0.05〜0.3μmである。かかる体積平均粒子径は光散乱法で得られる測定値を基準とする。粒子径が下限より小さいとポリイミドフィルムの工業的生産が困難となり、また上限を超えると表面の凹凸が大きくなりすぎて貼り付け強度が弱くなり、実用上の支障が出る虞がある。
【0041】
前記滑材の添加量は、ポリイミドフィルム中の高分子成分に対する添加量として、0.02〜50質量%であり、好ましくは0.04〜3質量%、より好ましくは0.08〜1.2質量%である。滑材の添加量が少なすぎると滑材添加の効果が期待し難く、滑り性の確保がそれほどなくポリイミドフィルム製造に支障をきたす場合があり、多すぎると、フィルムの表面凹凸が大きくなり過ぎて、滑り性の確保が見られても平滑性の低下を招いたり、ポリイミドフィルムの破断強度や破断伸度の低下を招いたり、CTEの上昇を招くなどの課題を招く場合がある。
【0042】
ポリイミドフィルムに滑材(粒子)を添加・含有させる場合、滑材が均一に分散した単層のポリイミドフィルムとしてもよいが、例えば、一方の面が滑材を含有させたポリイミドフィルムで構成され、他方の面が滑材を含有しないか含有していても滑材含有量が少量であるポリイミドフィルムで構成された滑剤濃度傾斜型のポリイミドフィルムとしてもよい。このような滑剤濃度傾斜型のフィルムにおいては、一方の層(フィルム)表面に微細な凹凸が付与されて該層(フィルム)で滑り性を確保することができ、良好なハンドリング性や生産性を確保できる。
【0043】
滑剤濃度傾斜型ポリイミドフィルムは、溶融延伸製膜法に製造されるフィルムの場合、例えばまず、滑剤含有しないポリイミドフィルム原料を用いてフィルム化を行い、その工程途上に置いて少なくともフィルムの片面に、滑剤を含有する樹脂層を塗布することにより得ることが出来る。もちろん、この逆で、滑剤を含有するポリイミドフィルム原料を用いてフィルム化を行い、その工程途上、ないし、フィルム化が完了した後に、滑剤を含有しないポリイミドフィルム原料を塗布してフィルムを得ることも出来る。
ポリイミドフィルムのような溶液製膜法を用いて得られるポリイミドフィルムの場合にも同様で、例えば、ポリアミド酸溶液(ポリイミドの前駆体溶液)として、滑材(好ましくは平均粒子径0.05〜2.5μm程度)をポリアミド酸溶液中のポリマー固形分に対して0.02質量%〜50質量%(好ましくは0.04〜3質量%、より好ましくは0.08〜1。2質量%)含有したポリアミド酸溶液と、滑材を含有しないか又はその含有量が少量(好ましくはポリアミド酸溶液中のポリマー固形分に対して0.02質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満)である2種のポリアミド酸溶液を用いて製造することができる。
【0044】
滑剤濃度傾斜型ポリイミドフィルムの滑剤濃度傾斜型化(積層)方法は、両層の密着に問題が生じなければ、特に限定されるものではなく、かつ接着剤層などを介することなく密着するものであればよい。
ポリイミドフィルムの場合、例えば、i)一方のポリイミドフィルムを作製後、このポリイミドフィルム上に他方のポリアミド酸溶液を連続的に塗布してイミド化する方法、ii)一方のポリアミド酸溶液を流延しポリアミド酸フィルムを作製後このポリアミド酸フィルム上に他方のポリアミド酸溶液を連続的に塗布した後、イミド化する方法、iii)共押し出しによる方法、iv)滑材を含有しないか又はその含有量が少量であるポリアミド酸溶液で形成したフィルムの上に、滑材を多く含有するポリアミド酸溶液をスプレーコート、Tダイ塗工などで塗布してイミド化する方法などを例示できる。本発明では、上記i)ないし上記ii)の方法を用いることが好ましい。
【0045】
滑剤濃度傾斜型のポリイミドフィルムにおける各層の厚さの比率は、特に限定されないが、滑材を多く含有する高分子層を(a)層、滑材を含有しないか又はその含有量が少量である高分子層を(b)層とすると、(a)層/(b)層は0.05〜0.95が好ましい。(a)層/(b)層が0.95を超えると(b)層の平滑性が失われがちとなり、一方0.05未満の場合、表面特性の改良効果が不足し易滑性が失われることがある。
【0046】
<ポリイミドフィルムの表面活性化処理>
本発明において用いられるポリイミドフィルムには表面活性化処理を行うことが好ましい。該表面活性化処理によって、ポリイミドフィルム表面は官能基が存在する状態(いわゆる活性化した状態)に改質され、シランカップリング剤との親和性が向上する。
本発明における表面活性化処理とは、乾式、ないし湿式の表面処理である。本発明の乾式処理としては、紫外線、電子線、X線などの活性エネルギー線を表面に照射する処理、コロナ処理、真空プラズマ処理、常圧プラズマ処理、火炎処理、イトロ処理等を用いることが出来る。湿式処理としては、フィルム表面を酸ないしアルカリ溶液に接触させる処理を例示できる。本発明に置いて好ましく用いられる表面活性化処理は、プラズマ処理であり、プラズマ処理と湿式の酸処理の組み合わせである。
【0047】
プラズマ処理は、特に限定されるものではないが、真空中でのRFプラズマ処理、マイクロ波プラズマ処理、マイクロ波ECRプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理などがあり、フッ素を含むガス処理、イオン源を使ったイオン打ち込み処理、PBII法を使った処理、熱プラズマに暴露する火炎処理、イトロ処理なども含める。これらの中でも真空中でのRFプラズマ処理、マイクロ波プラズマ処理、大気圧プラズマ処理が好ましい。
【0048】
プラズマ処理の適当な条件としては、酸素プラズマ、CF4、C2F6などフッ素を含むプラズマなど化学的にエッチング効果が高いことが知られるプラズマ、或はNe,Ar、Kr,Xe、プラズマのように物理的なエネルギーを高分子表面に与えて物理的にエッチングする効果の高いプラズマによる処理が望ましい。また、CO
2、CO、H
2、N
2、NH
4、CH
4などプラズマ、およびこれらの混合気体や、さらに水蒸気を付加することも好ましい。これらに加えてOH、N
2, N, CO、CO
2, H、H
2、O
2、NH、NH
2、NH
3、COOH、NO、NO
2、 He, Ne, Ar, Kr, Xe, CH
2O, Si(OCH
3)
4、 Si(OC
2H
5)
4、C
3H
7Si(OCH
3)
3、 C
3H
7Si(OC
2H
5)
3 といったからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の成分を気体としてあるいはプラズマ中での分解物として含有したプラズマを作る必要がある。短時間での処理を目指す場合、プラズマのエネルギー密度が高く、プラズマ中のイオンの持つ運動エネルギーが高いもの、活性種の数密度が高いプラズマが望ましいが、表面平滑性を必要とするため、エネルギー密度を高める事には限界がある。酸素プラズマを使った時には、表面酸化が進み、OH基の生成という点ではよいのだが、既にフィルム自体との密着力に乏しい表面ができやすく、かつ表面のあれ(粗さ)が大きくなるため、密着性も悪くなる。
また、Arガスを使ったプラズマでは純粋に物理的な衝突の影響が表面ではおこり、この場合も表面のあれが大きくなる。これら総合的に考えると、マイクロ波プラズマ処理、マイクロ波ECRプラズマ処理、高いエネルギーのイオンを打ち込みやすいイオン源によるプラズマ照射、PBII法なども望ましい。
【0049】
かかる表面活性化処理は高分子表面を清浄化し、さらに活性な官能基を生成する。生成した官能基は、カップリング剤層と水素結合ないし化学反応により結びつき、ポリイミドフィルム層とカップリング剤層とを強固に接着することが可能となる。
プラズマ処理においてはポリイミドフィルム表面をエッチングする効果も得ることが出来る。特に滑剤粒子を比較的多く含むポリイミドフィルムにおいては、滑剤による突起が、フィルムと無機基板との接着を阻害する場合がある。この場合、プラズマ処理によってポリイミドフィルム表面を薄くエッチングし、滑剤粒子の一部を露出せしめた上で、フッ酸にて処理を行えば、フィルム表面近傍の滑剤粒子を除去することが可能である。
【0050】
表面活性化処理は、ポリイミドフィルムの片面のみに施してもよいし、両面に施してもよい。片面にプラズマ処理を行う場合、並行平板型電極でのプラズマ処理で片側の電極上にポリイミドフィルムを接して置くことにより、ポリイミドフィルムの電極と接していない側の面のみにプラズマ処理を施すことができる。また2枚の電極間の空間に電気的に浮かせる状態でポリイミドフィルムを置くようにすれば、両面にプラズマ処理が行える。また、ポリイミドフィルムの片面に保護フィルムを貼った状態でプラズマ処理を行うことで片面処理が可能となる。なお保護フィルムとしては粘着剤付のPETフィルムやオレフィンフィルムなどが使用できる。
【0051】
<フィルムラミネート方法>
本発明では、シランカップリング剤層を介してポリイミドフィルムを貼り合わせることにより、ポリイミドフィルム層とシランカップリング剤縮合物層が交互に積層されたポリイミドフィルム積層体を得る。
ポリイミドフィルムの積層は、シランカップリング剤処理を行った面が、ポリイミドフィルム層間に配置されるように、ポリイミドフィルムを重ね、加圧することによる。加圧と加熱をの組み合わせは有効である。
加圧処理は、例えば、大気圧雰囲気下あるいは真空中で、プレス、ラミネート、ロールラミネート等を、加熱しながら行えばよい。またフレキシブルなバッグに入れた状態で加圧加熱する方法も応用できる。生産性の向上や、高い生産性によりもたらされる低加工コスト化の観点からは、大気雰囲気下でのプレスまたはロールラミネートが好ましく、特にロールを用いて行う方法(ロールラミネート等)が好ましい。
【0052】
加圧処理の際の圧力としては、1MPa〜20MPaが好ましく、さらに好ましくは3MPa〜10MPaである。圧力が高すぎると、支持体を破損するおそれがあり、圧力が低すぎると、密着しない部分が生じ、接着が不充分になる場合がある。加圧処理の際の温度としては、用いるポリイミドフィルムの耐熱温度を超えない範囲にて行う。非熱可塑性のポリイミドフィルムの場合には10℃〜400℃、さらに好ましくは150℃〜350℃での処理が好ましい。
また加圧処理は、上述のように大気圧雰囲気中で行うこともできるが、全面の安定した接着強度を得る為には、真空下で行うことが好ましい。このとき真空度は、通常の油回転ポンプによる真空度で充分であり、10Torr以下程度あれば充分である。
加圧加熱処理に使用することができる装置としては、真空中でのプレスを行うには、例えば井元製作所製の「11FD」等を使用でき、真空中でのロール式のフィルムラミネーターあるいは真空にした後に薄いゴム膜によりガラス全面に一度に圧力を加えるフィルムラミネーター等の真空ラミネートを行うには、例えば名機製作所製の「MVLP」等を使用できる。
【0053】
前記加圧処理は加圧プロセスと加熱プロセスとに分離して行うことが可能である。
この場合、まず、比較的低温(例えば120℃未満、より好ましくは95℃以下の温度)でポリイミドフィルムと無機基板とを加圧(好ましくは0.2〜50MPa程度)して両者の密着確保し、その後、低圧(好ましくは0.2MPa未満、より好ましくは0.1MPa以下)もしくは常圧にて比較的高温(例えば120℃以上、より好ましくは120〜250℃、さらに好ましくは150〜230℃)で加熱することにより、密着界面の化学反応が促進されてポリイミドフィルムと仮支持用無機基板とを積層できる。
【0054】
本発明におけるポリイミドフィルム積層体の、ポリイミドフィルム層間の接着強度は、90度剥離法において、0.1N/cm以上、20N/cm以下であり、好ましくは0.1N/cm以上10N/cmであり、さらに好ましくは0.15N/cm以上6N/cmである。
また本発明の400℃15分の加熱後のポリイミドフィルム層間の接着強度は、初期接着強度の20%以上200%以下である。本発明に示した製法によれば、かかる性能を満たすポリイミドフィルム積層体を得ることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は下の通りである。
【0056】
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN-メチル-2-ピロリドン(又は、N,N-ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N-ジメチルアセトアミドの場合は、N,N-ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
2.ポリイミドフィルムなどの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
【0057】
3.ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
測定対象のポリイミドフィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(R) 機種名AG-5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。
【0058】
4.90度法接着強度
JISK6854ー1 の90度剥離法に従って、ポリイミドフィルム積層体のポリイミドフィルム層間の接着強度を求めた。
装置名 ; 島津製作所社製 オートグラフAG-IS
測定温度 ; 室温
剥離速度 ; 50mm/min
雰囲気 ; 大気
測定サンプル幅 ; 1cm
サンプルは一辺が100mの正方形のポリイミドフィルム積層体の表面に、最表層のポリイミドフィルム厚さの120%に相当する深さまで切り込みを入れ、積層体の端から最表層のポリイミドフィルムを剥がして測定した。
接着強度は、初期状態と、400℃15分間の加熱処理後について測定した。加熱処理は窒素ガスを流して窒素雰囲気として400℃に加熱したマッフル炉を用い、マッフル炉の扉の開放時間を5秒以内として試験資料をマッフル炉に入れ、所定時間後にマッフル炉の扉をあけて大気により自然冷却を行った後に、室温、大気圧のもとで、初期と同様の方法で測定した。
【0059】
5.線膨張係数(CTE)
測定対象のポリイミドフィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)において、下記条件にて伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、…と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。
機器名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
初荷重 ;34.5g/mm2
【0060】
6.無機粒子の平均粒子径
測定対象の無機粒子を後述のように溶媒に分散し、堀場製作所社製のレーザー散乱式粒度分布計LBー500により粒子径分布を求め、重量(体積)平均粒子径とCV値を算出した。
【0061】
7.カップリング剤縮合物層の厚さ
シランカップリング剤縮合物層の膜厚は、ポリイミドフィルム積層体のフィルム面に垂直方向の断面を研磨した後にミクロトームで超薄切片とし、透過型電子顕微鏡にて断面写真を撮影し、実測値を拡大倍率から逆算して求めた。
【0062】
8.曲げ弾性率
JIS K7171に準拠し、試験温度は23℃にて測定した。試験片サイズは10mm×80mm×厚さ4mm幅とした。
【0063】
9.アイゾット衝撃強度(ノッチ無し)
JIS K7110に規定された方法に従い、試験片の衝撃強度を評価した。測定温度は23℃で行った。試験片サイズは曲げ弾性率測定サンプルと同じとした。
【0064】
<ポリイミドフィルムの製造>
〔製造例1〕
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)398質量部と、パラフェニレンジアミン(PDA)147質量部とを、4600質量部のN、N-ジメチルアセトアミドに溶解させて加え、滑剤としてコロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC-ST30」)をシリカ(滑剤)がポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量に対して0.15質量%になるように加え、25℃の反応温度で24時間攪拌して、表1に示す還元粘度を有する褐色で粘調なポリアミド酸溶液V1を得た。
【0065】
(ポリイミドフィルムの作製)
上記で得られたポリアミド酸溶液V1を、スリットダイを用いて幅1050mmの長尺ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「A-4100」)の平滑面(無滑剤面)上に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が25μmとなるように塗布し、105℃にて20分間乾燥した後、ポリエステルフィルムから剥離して、幅920mmの自己支持性のポリアミド酸フィルムを得た。
次いで、得られた自己支持性ポリアミド酸フィルムをピンテンターによって、150℃〜420℃の温度領域で段階的に昇温させて(1段目180℃×5分、2段目270℃×10分、3段目420℃×5分間)熱処理を施してイミド化させ、両端のピン把持部分をスリットにて落とし、幅850mmの長尺ポリイミドフィルムF1(1000m巻き)を得た。得られたフィルムF1の特性を表1に示す。
【0066】
〔製造例2〕
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(DAMBO)223質量部と、N,N-ジメチルアセトアミド4416質量部とを加えて完全に溶解させ、次いで、ピロメリット酸二無水物(PMDA)217質量部とともに、滑剤としてコロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC-ST30」)とをシリカ(滑剤)がポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量にて0.12質量%)になるように加え、25℃の反応温度で24時間攪拌して、表1に示す還元粘度を有する褐色で粘調なポリアミド酸溶液V2を得た。
【0067】
(ポリイミドフィルムの作製)
ポリアミド酸溶液V1に代えて、上記で得られたポリアミド酸溶液V2を用い、同様の手法でポリアミド酸フィルムを得た後、ピンテンターによって、1段目150℃×5分、2段目220℃×5分、3段目485℃×10分間)熱処理を施してイミド化させ、両端のピン把持部分をスリットにて落とし、幅850mmの長尺ポリイミドフィルムF2(1000m巻き)を得た。得られたフィルムF2の特性を表1に示す。
【0068】
〔製造例3〕
(ポリアミド酸溶液の調製)
製造例2において、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC-ST30」)を添加しなかった以外は同様に操作し、ポリアミド酸溶液V3を得た。
【0069】
(ポリイミドフィルムの作製)
上記で得られたポリアミド酸溶液V2をコンマコーターを用いて幅1050mmの長尺ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「A-4100」)の平滑面(無滑剤面)上に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が5μm相当となるように塗布し、次いでポリアミド酸溶液V3をスリットダイを用いて最終膜厚がV2を含めて38μmとなるように塗布し、105℃にて25分間乾燥した後、ポリエステルフィルムから剥離して、幅920mmの自己支持性のポリアミド酸フィルムを得た。
次いで、得られた自己支持性ポリアミド酸フィルムをピンテンターによって、1段目180℃×5分、2段目220℃×5分、3段目495℃×10分間)熱処理を施してイミド化させ、両端のピン把持部分をスリットにて落とし、幅850mmの長尺ポリイミドフィルムF3(1000m巻き)を得た。得られたフィルムF3の特性を表1に示す。
【0070】
これらの他、市販されている耐熱性フィルムを用いて同様に実施例、比較例に用いた。
F4:カプトン100EN(東レ・デュポン株式会社製ポリイミドフィルム、厚さ25μm)
F5:ユーピレックス50S(宇部興産株式会社製ポリイミドフィルム、厚さ50μm)
F6:アピカルNPI(株式会社カネカ製ポリイミドフィルム、厚さ125μm)
F7:ポミランN(荒川化学株式会社製ポリイミドフィルム、厚さ38μm)
F8:ベクスターCTZ(株式会社クラレ製液晶ポリマーフィルム、厚さ75μm)
【0071】
【表1】
【0072】
<ポリイミドフィルムの真空プラズマ処理>
ポリイミドフィルムにシランカップリング剤処理を行う前工程として、ポリイミドフィルムに真空プラズマ処理を行った。真空プラズマ処理は枚葉ガラス用の装置を用い、ガラスのシランカップリング剤処理面にメタルマスクを重ねて装置にセットし、真空チャンバー内を1×10-3Pa以下になるまで真空排気し、真空チャンバー内にアルゴンガスを導入して、放電電力100W、周波数15kHzの条件で20秒間、ガラス板表面にアルゴンガスのプラズマ処理を行った。
【0073】
<シランカップリング剤処理例1>
図1に概略を示したシランカップリング剤蒸気を発生させる装置を用い、以下の条件にてポリイミドフィルムにシランカップリング剤処理を行った。
ポリイミドフィルムを370mm×470mmの開口部を有するステンレス枠に保持し、シランカップリング剤蒸気を導入するチャンバー内にて垂直に保持した。
シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製「KBM-903」:3-アミノプロピルトリメトキシシラン)100gを入れた容器を、40℃に温調した後に窒素ガスを流量10L/minでバブリングの要領でで送り、発生したシランカップリング剤蒸気含んだ窒素ガスを、配管を通じて前記チャンバー内に導入し、ポリイミドフィルムの両面を前記ガスに20分間暴露した。その後フィルムをチャンバーから取り出し、110℃のクリーンドライオーブンにて1分間加熱しシランカップリング剤処理とした。
【0074】
<シランカップリング剤処理2>
シランカップリング剤蒸気を含む窒素ガスへの暴露時間を10分間に変更した以外は処理例1と同様の作業を実施した。
【0075】
<シランカップリング剤処理例3>
シランカップリング剤蒸気を含む窒素ガスへの暴露時間を5分間に変更した以外は処理例1と同様の作業を実施した。
【0076】
<シランカップリング剤処理例4>
シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製「KBM-903」:3-アミノプロピルトリメトキシシラン)0.5質量部、イソプロピルアルコール99.5質量部を清浄なガラス容器内にて攪拌混合しシランカップリング剤溶液とした。
ポリイミドフィルムを、表面に微粘着シリコーン樹脂コートを行った300mm×300mm×0.7mmtのパイレックス(登録商標)ガラス仮支持基板に仮接着し、をジャパンクリエイト社製スピンコーターにセットし、まずイソプロピルアルコール50mlをフィルム中央に滴下し、500rpmにて振り切ることにより洗浄を行い、次いで、先に準備したシランカップリング剤溶液約30mlをフィルム中央に滴下し、500mlにて10秒、次いで回転数を1500rpmまで上げて20秒間回転させ、シランカップリング剤溶液を振り切った。次いで停止させたスピンコーターから仮支持基板ごとフィルムを取り出し、100℃のクリーンオーブンにて3分間加熱し、仮支持基板からポリイミドフィルムを剥がした。
以下シランカップリング剤を替えて、同様にシランカップリング時亜処理を行った。用いたシランカップリング剤を以下に示す。
SC1::KBM-903(信越化学工業株式会社製)3-アミノプロピルトリメトキシシラン
SC2:KBM-403(信越化学工業株式会社製)3-グリシドキシプロピルメトキシシラン
SC3:KBM-603(信越化学工業株式会社製)
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン
SC4:KBE-585(信越化学工業株式会社製)3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン
【0077】
<実施例1〜14、比較例1〜2>
得られたシランカップリング剤処理基板を5枚重ね、さらに離型シート挟み、真空プレスにて、減圧化に100Paの圧力を印加し、仮接着を行った。次いで得られた仮接着積層板をクリーンオーブンに入れ、窒素雰囲気下で200℃にて1時間加熱し、本発明のポリイミドフィルム積層体を得た。
得られた積層体を評価した結果を表2に示す。
以下同様に表2、表3に示す組み合わせにてポリイミドフィルム積層体を製作し、評価した。結果を表2に示す。
なお便宜上同じ表に掲載したが、比較例2で用いたフィルムはポリイミドフィルムでは無い。400℃の加熱試験により溶融したため、加熱試験後の接着強度は測定できなかった。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
<実施例15〜24>
得られたシランカップリング剤処理基板を25μmフィルムについては160枚、38μmフィルムについては100枚重ね、さらに離型シート挟み、真空プレスにて、減圧化に100Paの圧力を印加し、仮接着を行い、さらに仮接着積層板をクリーンオーブンに入れ、窒素雰囲気下で200℃にて1時間加熱し、厚さ4mmの本発明のポリイミドフィルム積層体を得た。得られた積層体を評価した結果を表4、表5に示す。
【0081】
<比較例3、4>
25μm厚のフィルム4にエポキシ系接着剤を厚さ5μmとなるようにコーティングし、135枚を重ねて150℃1時間加熱硬化し、比較例3の厚さ4mmの積層板を得た。得られた積層板の評価結果を表4に示す。同様にフィルム1を用いて比較例4の積層板を得た。評価結果を表4に示す。いずれも、実施例に比較して小さな曲げ弾性率と低い衝撃強度を示した。
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】