特許第6721164号(P6721164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6721164
(24)【登録日】2020年6月22日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】シートバックおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/40 20060101AFI20200629BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20200629BHJP
【FI】
   A47C7/40
   A47C27/14 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-162220(P2016-162220)
(22)【出願日】2016年8月22日
(65)【公開番号】特開2018-29670(P2018-29670A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】松本 真人
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−273963(JP,A)
【文献】 特開平09−234747(JP,A)
【文献】 特開2005−177198(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/008169(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/40−7/42
A47C 27/14−27/20
B60N 2/64−2/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂部材からなる背もたれ部と、前記発泡樹脂部材とは異なる硬度の発泡樹脂部材からなり、前記背もたれ部に接合される上方部とから構成されるシートバックにおいて、
前記背もたれ部と前記上方部とは、両面に起毛を有する不織布を介して接合されている
ことを特徴とするシートバック。
【請求項2】
前記不織布は、前記背もたれ部と上方部の発泡成形時に、発泡樹脂原料の透過を阻止する中間不織布層と、前記中間不織布層を両側から挟むと共に、発泡樹脂原料に入り込む前記起毛を有する外側不織布層とからなる3層構造になっている請求項1記載のシートバック。
【請求項3】
前記不織布は、ポリプロピレンまたはPET繊維からなる中間不織布層と、前記中間不織布層の両側を挟む起毛を有する外側不織布層とからなる3層で構成され、前記中間不織布層を構成するスパンボンド法からなる不織布シートの両側にPET繊維綿をニードルパンチ法により重ねることで積層化されている請求項1または2記載のシートバック。
【請求項4】
第1の発泡型の所定位置に両面に起毛を有する不織布をセットした後に、前記第1の発泡型に第1の発泡樹脂原料を供給し発泡させて前記不織布が端部に接合された所要形状の上方部を形成する工程と、
前記第1の発泡型から脱型されて前記不織布が接合されている前記上方部を、第2の発泡型の所定位置にセットすると共に、前記不織布の開放面を前記第2の発泡型における発泡樹脂原料の供給部位に指向させる工程と、
前記上方部を形成する前記第1の発泡樹脂原料が発現する硬度とは異なる硬度を発現する第2の発泡樹脂原料を前記第2の発泡型に供給して発泡させることで、前記上方部と背もたれ部とが前記不織布を介して接合されたシートバックを成形する工程とからなる
ことを特徴とするシートバックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発泡樹脂部材からなる背もたれ部と、発泡樹脂部材からなり前記背もたれ部の上方に位置する上方部とで構成されるシートバックおよび前記シートバックの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、図11に示すように、車両用の座席10は、乗員が腰掛ける座席シート12と、乗員が背中をもたせ掛けるシートバック14とからなる。なお、図11に示す座席10は、化粧用の表皮シートが装着される前の状態であるので、前記座席シート12およびシートバック14は、ウレタン等の発泡樹脂で形成されたパッド自体が露出している。本発明は、図11に示す座席10における前記シートバック14に関するものであるので、本明細書中では該シートバック14をシートバックのパッドと称することがある。また、図11は車両用の座席10に使用されるシートバックのパッド14を示しているが、本発明は車両用のシートバックに限定されるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5203691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記背もたれ部16は、図12に示す如く、その背もたれ中央部16aを形成する発泡樹脂の硬度は柔らかめに設定すると共に、該背もたれ中央部16aを挟んで隣接する左右のサイド部16b,16bを形成する発泡樹脂の硬度は硬めに設定することで、両部位16a,16bの硬度を異ならせている。また、前記シートバックのパッド14は、図11に示すように、本体部になる背もたれ部16と、該背もたれ部16の上方に位置して、着座中の乗員の首や肩を支える上方部18とに分かたれる。そして、前記背もたれ部16は乗員の背中を柔らかく支持するために、その基材となる発泡樹脂の硬度を低めに設定し、これに対し前記上方部18は、乗員の首や肩をしっかり支えて身体を安定に保持するために、その基材となる発泡樹脂の硬度を高めに設定することも行われている。
【0005】
前述したように、前記背もたれ部16および上方部18に使用される発泡樹脂の硬度を異ならせることがある。そこで図12に示すように、前記背もたれ部16と上方部18とを1つの発泡型(図示せず)で一体的に発泡成形して前記シートバック14を製造する場合には、図示しない発泡型に前記背もたれ部16の成形部位と前記上方部18の成形部位とを区画する仕切り(堰)を設け、発泡固化時に異なる硬度を発現する発泡樹脂原料を各対応の前記成形部位に供給して発泡させるようにしている。しかしこの場合は、図12から判明するように、発泡成形された前記シートバックのパッド14には、前記背もたれ部16と上方部18との境界に前記仕切り(堰)の抜き跡として、所定幅と深さの溝部20が形成されてしまう。この溝部20が前記シートバック14に存在すると、後工程で該シートバック14に表皮シートを被せた場合に、該溝部20が該表皮シートに対応する部位にハイライトライン等を生じさせ外観を損なう欠点がある。
【0006】
そこで図13に示すように、個別の発泡型で夫々発泡成形することで前記背もたれ部16および上方部18を別体として製造し、次いでこれら背もたれ部16と上方部18とを接合する提案がなされている。すなわち、前記背もたれ部16と上方部18との接合面の両方または何れかに接着剤22を塗布し、両部材16,18を接着することで、図14に示すシートバック14を得るものである。なお、接着剤22は、前記背もたれ部16を成形している発泡樹脂部材および前記上方部18を成形している発泡樹脂部材の何れとも反応しないタイプのものが選択される。この場合は、前記背もたれ部16と上方部18とは接着剤22により接着されていて、図12に示した前記溝部20は存在しないから、表皮シートを被せた後に外観を損なうような事態は生じない。しかし、接着剤22による接着のバラツキにより接合個所の仕上がりが悪くなることがある。また、発泡型からの脱型を容易にするため使用される離型剤の影響によって、図15に示す如く、例えば前記上方部18に強い力が加わると、前記背もたれ部16と上方部18とが接着面から剥がれて剥離開口17を生ずることもある。
【0007】
本発明は、従来技術に係る前記欠点を解決するため提案されたもので、別体として製造した上方部と不織布とを接合した後に、該上方部に不織布を介して背もたれ部を発泡成形して接合することにより、両部材の強固な接合を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため請求項1に記載の発明は、発泡樹脂部材からなる背もたれ部と、前記発泡樹脂部材とは異なる硬度の発泡樹脂部材からなり、前記背もたれ部に接合される上方部とから構成されるシートバックにおいて、
前記背もたれ部と前記上方部とは、両面に起毛を有する不織布を介して接合されていることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、別体として製造した上方部と、その後に発泡成形される背もたれ部とは不織布を介して強力に接合されており、容易に剥離することがない。
【0009】
請求項2に記載の発明では、前記不織布は、前記背もたれ部と上方部の発泡成形時に、発泡樹脂原料の透過を阻止する中間不織布層と、前記中間不織布層を両側から挟むと共に、発泡樹脂原料に入り込む前記起毛を有する外側不織布層とからなる3層構造になっていることを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明では、前記不織布は、ポリプロピレンまたはPET繊維からなる中間不織布層と、前記中間不織布層の両側を挟む起毛を有する外側不織布層とからなる3層で構成され、前記中間不織布層を構成するスパンボンド法からなる不織布シートの両側にPET繊維綿をニードルパンチ法により重ねることで積層化されていることを要旨とする。
【0011】
請求項2および3に係る発明によれば、前記不織布は中間不織布層とこれを両側から挟む起毛を有する外側不織布層とで構成されており、該不織布の両面に毛羽立っている起毛が前記背もたれ部および上方部の発泡樹脂に入り込むので、両部材が強固に接合される。
【0012】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため請求項4に記載の発明は、第1の発泡型の所定位置に両面に起毛を有する不織布をセットした後に、前記第1の発泡型に第1の発泡樹脂原料を供給し発泡させて前記不織布が端部に接合された所要形状の上方部を形成する工程と、
前記第1の発泡型から脱型されて前記不織布が接合されている前記上方部を、第2の発泡型の所定位置にセットすると共に、前記不織布の開放面を前記第2の発泡型における発泡樹脂原料の供給部位に指向させる工程と、
前記上方部を形成する前記第1の発泡樹脂原料が発現する硬度とは異なる硬度を発現する第2の発泡樹脂原料を前記第2の発泡型に供給して発泡させることで、前記上方部と背もたれ部とが前記不織布を介して接合されたシートバックを成形する工程とからなることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、請求項1に係るシートバックを効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、別体として製造した上方部を背もたれ部と不織布を介して接合することで、両部材の強固な接合が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例に係るシートバックを示す説明図であって、背もたれ部と上方部とは不織布を介して接合されている。
図2】上方部の端面に不織布を接合させた状態を示す端面図である。
図3図2に示す上方部において、不織布が特定の形状になっている状態を示す端面図である。
図4図1で使用する不織布が3層構造になっていることを示す説明斜視図である。
図5】上方部を発泡成形する第1の発泡型の断面図であって、下型に対し上型および中型を開放すると共に、該下型のキャビティの所要位置に不織布をセットした状態を示している。
図6図5に示す第1の発泡型において、下型を上型および中型で閉じてキャビティ内で第1の発泡樹脂原料を発泡させることで、不織布を一端面に接合させた上方部を成形している状態を示している。
図7図6に示す第1の発泡型の概略平面図である。
図8】背もたれ部を発泡させて上方部と接合したシートバックを製造する第2の発泡型の断面図であって、下型に対し上型および中型を開放し、該中型に成形済みの上方部をセットすると共に、下型のキャビティに第2の発泡樹脂原料を供給している状態を示している。
図9図8に示す第2の発泡型において、下型を上型および中型で閉じてキャビティ内で第2の発泡樹脂原料を発泡させることで、不織布により背もたれ部と上方部とが接合されたシートバックを成形した状態を示している。
図10図8に示す第2の発泡型において、シートバックの成形が終了して上型および中型を開放した状態を示す断面図であって、中型に保持されている上方部と共に、不織布で接合された背もたれ部も該中型に保持されている。
図11】座席シートとシートバックとを備える車両用座席の概略斜視図である。
図12】一般的なシートバックの平面図であって、背もたれ部と上方部とが一体的に発泡成形されている。
図13】シートバックを分離状態で示す平面図であって、上方部を背もたれ部に接着剤で接合する前の状態を示している。
図14図13に示すシートバックにおいて、上方部と背もたれ部とが接着されている状態を示している。
図15】背もたれ部に上方部を接合したシートバックの部分側面図であって、両部材の接合部が剥離している状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好適な実施例について、図面を参照しながら説明する。実施例に係るシートバックの基本的な構成は、図11図15で説明した通りであるので、既出の部材については同一の符号を付するだけで説明は省略する。また、先にも述べたように、車両用座席のシートバックを念頭に置いて説明するが、本発明に係るシートバックおよびその製造方法は車両向け用途に限られるものでなく、民生用(例えば事務用や家庭用)にも広く使用し得るものである。
【0016】
実施例に係るシートバック14は、図1(1)および(2)に示すように、ウレタン等の発泡樹脂部材からなる背もたれ部16と、前記発泡樹脂部材とは異なる硬度の発泡樹脂部材からなる上方部18とが、両面に起毛を有する不織布24を介して接合されている。すなわち、前記上方部18は、図5および図6に関して後述する如く、前記不織布24をセットした第1の発泡型26で発泡成形を行うことで、図1(1)に示すように、一端面に該不織布24が接合されている。図1(2)において、背もたれ部16および上方部18が不織布24を介して接合された場合に、該不織布24の起毛が該背もたれ部16および上方部18に入り込んでいる状態を、円で囲んだ拡大図で示す。ここで前記不織布24は、好ましくは図4に示す3層構造であって、発泡樹脂原料が透過するのを阻止する中間不織布層24aと、この中間不織布層24aを両側から挟む起毛を有する外側不織布層24b,24bとからなる。前記起毛を有する外側不織布層24bは、少なくとも前記中間不織布層24aに接しない側の全面を毛羽立てた起毛を有しており、発泡樹脂原料が発泡した際に、該起毛が入り込んだ後に発泡樹脂が固化するようになっている。また、外側不織布層24bは、発泡樹脂原料が発泡する際、該発泡樹脂原料が浸み込むようにもなっている。すなわち、前記3層構造の不織布24は、その両面に起毛を有しているので、前記第1の発泡型26で前記上方部18が独立して発泡成形された際は、該第1の発泡型26にセットしてあった前記不織布24の一方の面の起毛が発泡した発泡樹脂原料に入り込んだ結果、該不織布24は上方部18の一端面に強力に接合される。
【0017】
図4に示す前記不織布24の具体的な構成を説明すると、該不織布24における前記中間不織布層24aは、合成樹脂の繊維をベースとする不織布シートを用いる。この中間不織布層24aは、図6および図9に関して後述する如く、閉成した発泡型中で発泡樹脂原料を発泡させた際に、前記不織布24の一方の側から他方の側へ発泡した前記原料が浸透して、他方側に位置する外側不織布層24bの起毛を固めてしまうのを阻止する役割を果たす。そのため中間不織布層24aは、例えば、スパンボンド法により溶融したポリプロピレン原料をノズルから溶出させて連続した長繊維をウェブ化して繊維同士を圧着して形成した不織布シートを使用する。そして、この不織布シートの両面にPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維の綿を載せて、これらをニードルパンチ法により多数の針で刺通することにより、前記PET繊維を複雑に絡み合わせて前記3層の不織布24とすることが出来る。
【0018】
図2は、図1(1)に示す前記上方部18の開放端面に不織布24が接合された状態を示し、該不織布24は該上方部18の開放端面の全域に存在している。なお、図2に示す如く、前記不織布24を上方部18の開放端面の全域に位置させると、該上方部18と背もたれ部16とが極めて強固に接合される利点はあるが、得られた成形品である前記シートバック14における両部材18,16の接合領域の剛性感が大きくなり過ぎる場合がある。このような場合は、図3に示すように、前記不織布24を、例えば短冊状でかつ先端に湾曲部を有する形状とし、該不織布24を前記上方部18の開放端面に接合することで、発現される剛性を調整することが推奨される。
【0019】
(製造方法について)
次に、実施例に係るシートバックを製造する方法について説明する。この製造方法の概略は、(1)不織布24が一端面に接合された上方部18を第1の発泡型26で先に製造しておく工程と、(2)別途製造された前記上方部18を、第2の発泡型28にセットすると共に、該上方部18に接合している前記不織布24の開放面を、該第2の発泡型28のキャビティにおける発泡樹脂原料の供給側に指向させることで、前記上方部18と前記背もたれ部16とが前記不織布24を介して接合されたシートバック14を成形する工程とからなる。
【0020】
(第1の発泡型による工程)
図5および図6は、前記不織布24を一端部に接合させた前記上方部18を発泡成形するための第1の発泡型26を示している。前記第1の発泡型26は、下型30と、この下型30に対しヒンジ32(図7参照)で開閉自在に枢支された上型34と、図7の平面図に示すように、前記上型34の湾入部に位置して、ヒンジ36により前記下型30に対し開閉自在に枢支された中型38とからなる。そして、図6に示すように、前記下型30に対して前記上型34および中型38を閉じた際に、前記第1の発泡型26に形成されるキャビティ40は、前記上方部18の外部輪郭に倣った内部輪郭形状を呈している。なお、前記上型34と中型38は、同期して開閉するようにしてもよいが、開放時には該上型34が中型38に先行して開放し、逆に閉成する場合は前記中型38が上型34に先行して閉じるようにしてもよい。
【0021】
図5に示す如く、前記下型30に対し前記上型34および中型38を開放した状態において、該下型30の前記キャビティ40に前記不織布24を挿入し、該不織布24を該キャビティ40の所定位置に固定する。前記不織布24をキャビティ40に固定する手段としては、例えば該不織布24の要所に適宜数の磁石片(図示せず)を取り付け、この磁石片により該不織布24をキャビティ40の内面に磁気吸着させることが考えられる。このように、前記下型30のキャビティ40に前記不織布24をセットした後、前記上方部18を発泡成形するための第1の発泡樹脂原料Aをノズル52から前記キャビティ40に供給する。
【0022】
次いで、図6に示す如く、前記第1の発泡型26の上型34および中型38を前記下型30に対して閉成する。前記第1の発泡型26は所定の温度と圧力とに保持されているので、前記キャビティ40に供給されている前記第1の発泡樹脂原料Aは発泡を開始して、該キャビティ40の内部輪郭に合致した外部輪郭形状を有する前記上方部18を形成する。このとき、前記下型30に予めセットしてある前記不織布24が前記キャビティ40の側に指向している面には、前述した如く、毛羽立った起毛が存在しているため、発泡中の第1の発泡樹脂原料Aに前記起毛が入り込んだ形で固化するに到る。すなわち、第1の発泡樹脂原料Aが発泡して成形された前記上方部18は、前記不織布24に接触する部位において、発泡部に前記不織布24の起毛が入り込んでいる。また、不織布24の前記上方部18に接触する部位は、第1の発泡樹脂原料Aが浸み込んで硬化する。そのため、両部材18,24は、極めて強力に接合されている。
【0023】
第1の発泡樹脂原料Aに要求されるキュアリングタイムが経過すると、前記第1の発泡型26における上型34を先ず開放し、次いで前記中型38を開放する。この中型38の開放により、発泡成形された前記上方部18は、該中型38に保持された状態で前記下型30から脱型される。脱型された前記上方部18の一端部には、前述した如く、前記不織布24が接合されており、該不織布24の開放面には前記起毛が露出している。なお、図6に関して述べたように、前記第1の発泡樹脂原料Aは前記不織布24における一方の面に浸透しているが、この第1の発泡樹脂原料Aは該不織布24の他方の面には浸出していない。これは、前記不織布24には第1の発泡樹脂原料Aの浸透を阻止する前記中間不織布層24aが存在しているからである。
【0024】
(第2の発泡型による工程)
次に、前述した如く第1の発泡型26で成形した上方部18を、前記不織布24を介して前記背もたれ部16に接合することでシートバック14を製造する工程について、図8図10に示す第2の発泡型28を参照して説明する。すなわち第2の発泡型28は、図8図10に示すように、下型44と、該下型44に対してヒンジ(図示せず)を介して開閉自在に枢支した上型46と、該下型44に対してヒンジ48を介して開閉自在に枢支した中型50とから基本的に構成されている。そして、第2の発泡型28の基本構造は、前記第1の発泡型26と殆ど同じである。但し、型締めした際に形成される第2の発泡型28のキャビティ42の内部輪郭形状は、前記背もたれ部16と上方部18とを前記不織布24で接合した前記シートバック14の外部輪郭形状に合致させてある。
【0025】
図8に示すように、前記第2の発泡型28において、前記上型46および中型50は前記下型44に対し傾斜状態で開放している。このとき、前記上型46は前記中型50よりも大きな角度で開放している。この状態で、前記中型50の突出先端部50aに前工程で発泡成形した前記上方部18を挿入して保持させる。このとき、前記上方部18に接合した不織布24は、図8から判明する如く、前記中型50の突出先端部50aより下方に位置しており、図9に関して後述するように該中型50を閉成した際に、該不織布24は前記下型44のキャビティ42内側に指向する。また、図8に示す第2の発泡型28の開放状態において、前記キャビティ42に第2の発泡樹脂原料Bをノズル54から所定量供給する。
【0026】
次いで、図9に示すように、前記上方部18を保持した中型50を前記下型44に対して閉成し、その後に時間差を置いて前記上型46を該下型44に対して閉成する。このとき、前記上型46のキャビティ42の一部は、前記中型50に保持された前記上方部18の一部により占められている。前記第2の発泡型28を完全に閉成すると、所定の温度と圧力に保たれた前記キャビティ42中で前記第2の発泡樹脂原料Bが発泡を開始し、該キャビティ42において、前記上方部18が占有していない空間に前記背もたれ部16が形成される。このとき、前記上方部18に接合されている前記不織布24の開放面には、前述した毛羽立ちによる起毛が存在しているから、発泡中の第2の発泡樹脂原料Bに該不織布24の前記起毛が入り込む。また、不織布24の背もたれ部16に接触する部位にも第2の発泡樹脂原料Bが浸み込んで硬化する。このため、第2の発泡樹脂原料Bが発泡固化して前記背もたれ部16を形成した際に、該背もたれ部16は前記不織布24に強力に接合することになる。すなわち、前記キャビティ42で発泡成形された前記背もたれ部16と前記上方部18とは、前記不織布24を介して強力に接合されている。
【0027】
次に、第2の発泡樹脂原料Bに要求される所定のキュアリングタイムが経過したら、図10に示すように、第2の発泡型28の前記上型46および中型50を前記下型44に対して開放する。すると前記中型50の突出先端部50aには、一体的に発泡成形された前記背もたれ部16および上方部18からなる前記シートバック14が取り付いている。そこで、前記中型50から前記背もたれ部16および上方部18からなる成形品を脱型すれば、図1に示すパッドとしての前記シートバック14が得られる。
【符号の説明】
【0028】
14 シートバック(シートバックのパッド),16 背もたれ部,
16a 背もたれ中央部,16b サイド部 18 上方部,24 不織布,
24a 中間不織布層,24b 外側不織布層,26 第1の発泡型,
28 第2の発泡型
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