特許第6721173号(P6721173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6721173ピン固定位置表示プログラム及びピン固定位置表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6721173
(24)【登録日】2020年6月22日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】ピン固定位置表示プログラム及びピン固定位置表示装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/10 20060101AFI20200629BHJP
   B23K 26/70 20140101ALI20200629BHJP
【FI】
   B23K26/10
   B23K26/70
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-522887(P2020-522887)
(86)(22)【出願日】2019年6月17日
(86)【国際出願番号】JP2019023933
(87)【国際公開番号】WO2019244844
(87)【国際公開日】20191226
【審査請求日】2020年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2018-115989(P2018-115989)
(32)【優先日】2018年6月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517413742
【氏名又は名称】馬鞍山市明珠電子科技有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】512251345
【氏名又は名称】オーレーザー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100135356
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】繆 逸峰
(72)【発明者】
【氏名】西村 稔
(72)【発明者】
【氏名】小川 俊之
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−133591(JP,A)
【文献】 特開平7−299682(JP,A)
【文献】 実開昭57−3484(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3170896(JP,U)
【文献】 特開平9−271977(JP,A)
【文献】 特開平11−289148(JP,A)
【文献】 特開2017−54973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、前記装置本体の内部に収納され被加工物を支持するピンテーブルと、前記装置本体の内部において移動可能に収納されたレーザー発振器と、前記装置本体の内部において移動可能に収納されたレーザーポインタと、を備え、前記ピンテーブルは、複数のピン固定部を有するテーブル部と、前記ピン固定部に固定されるピンとを有するレーザー加工機を制御するコンピュータを、前記テーブル部において前記ピンを固定する所定の前記ピン固定部を表示するピン固定位置表示装置として機能させるためのピン固定位置表示プログラムであって、
前記コンピュータを、
前記ピン固定部の画像を含む前記テーブル部の画像と、前記レーザー発振器からのレーザー光によって切断される前記被加工物のカットラインの画像と、を重ね合わせて表示する表示部と、
前記テーブル部の画像において選択された前記ピン固定部の画像を、選択されていない前記ピン固定部の画像とは異なる表示とする被選択ピン表示部と、
前記レーザーポインタを駆動させて、前記テーブル部の画像において選択された前記ピン固定部の画像に相当する前記ピンテーブルの前記ピン固定部を、前記レーザーポインタにより指し示すピン固定部指示部と、
を備えるピン固定位置表示装置として機能させるピン固定位置表示プログラム。
【請求項2】
前記被選択ピン表示部は、前記カットラインにより取囲まれる領域の外側と内側とに、それぞれ少なくとも3つの前記ピン固定部を、3つ以上の角を有する多角形の頂点の位置となるように選択して表示する請求項1に記載のピン固定位置表示プログラム。
【請求項3】
前記コンピュータを、
前記カットラインを多角形に近似させた近似ラインを生成する近似ライン生成部と、
前記近似ラインにより取り囲まれる領域を複数の三角形に分解する分解部と、
分解された全ての三角形の重心を求めて多角形の近似ラインの重心を求める重心算出部と、
前記多角形の近似ラインの重心を含む3点以上の前記ピン固定部を選択するピン固定部選択部と、
を備えるピン固定位置表示装置として機能させる請求項2に記載のピン固定位置表示プログラム。
【請求項4】
装置本体と、前記装置本体の内部に収納され被加工物を支持するピンテーブルと、前記装置本体の内部において移動可能に収納されたレーザー発振器と、前記装置本体の内部において移動可能に収納されたレーザーポインタと、を備え、前記ピンテーブルは、複数のピン固定部を有するテーブル部と、前記ピン固定部に固定されるピンとを有するレーザー加工機と、
前記レーザー加工機を制御するコンピュータと、を備え、
前記テーブル部において前記ピンを固定する所定の前記ピン固定部を表示するピン固定位置表示装置であって、
前記ピン固定部の画像を含む前記テーブル部の画像と、前記レーザー発振器からのレーザー光によって切断される前記被加工物のカットラインの画像と、を重ね合わせて表示する表示部と、
前記テーブル部の画像において選択された前記ピン固定部の画像を、選択されていない前記ピン固定部の画像とは異なる表示とする被選択ピン表示部と、
前記レーザーポインタを駆動させて、前記テーブル部の画像において選択された前記ピン固定部の画像に相当する前記ピンテーブルの前記ピン固定部を、前記レーザーポインタにより指し示すピン固定部指示部と、
を備えるピン固定位置表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型レーザー加工機に用いられるピンテーブルのピンの位置を表示するためのピン固定位置表示プログラム及びピン固定位置表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザー照射することにより板金を切断等するレーザー加工機が知られている(例えば、特許文献1参照)。レーザー加工機の加工テーブルの上面にはワーク支持面が形成されている。ワーク支持面は、網板、及び、網板の目から突出する多数の針状の支持ピンを備えており、支持ピンは被加工物である素材を支持する。
【0003】
小型レーザー加工器においては、被加工物としては、例えば、アクリル板、MDF板、ベニア板などの非金属材料で、且つ、フラット形状の板材が用いられる。また、レーザー光としては、例えは、炭酸ガスレーザーで励起された炭酸ガスレーザー光が用いられる。炭酸ガスレーザーは、非金属材料にほぼ100%吸収されるが、金属材料にはほとんど反射される。このため、被加工物が載置される加工テーブルとしては、基本的に金属素材が採用されている。金属素材でない場合、加工テーブルがレーザー光を吸収してしまい、レーザー加工機において発火するリスクがあるためである。
【0004】
このため、レーザー光は、被加工物を貫通した際には、加工テーブルの金属素材に照射される。そして、金属素材はレーザー光を吸収しないため、レーザー光を乱反射して、被加工物の裏面に不規則形状のダメージを与えるという問題がある。
【0005】
そこで、金属素材の加工テーブルを使用してレーザーカットする場合には、例えばハニカムメッシュ状の加工テーブルが用いられる。ハニカムメッシュ状の加工テーブルは、支持力を維持し且つ被加工物としての板材の裏面と接触する面積が小さいため、板材の裏面にダメージを与える影響を軽減することができる。
【0006】
また、板材裏面のダメージを完全に回避するためには、板材を浮かして(板材を加工テーブルから離して)加工する方法もある。レーザー光は板材の表面を焦点として集光して加工するため、レーザーカットの時板材の表面に集光されたレーザー光の単位エネルギー密度は最大と考えられる。その際にほとんどのレーザーエネルギーは板材に吸収されるが、板材を貫通した際に一部のレーザーエネルギーは板材の下方から漏れてくる。板材の裏面から漏れてきたレーザー光は、上記の焦点スポットから離れるほど広がるので、それに伴い、加工テーブルの金属部分に照射される単位面積あたりのレーザーエネルギーが小さくなり、板材裏面がレーザー反射によるダメージを受けにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−246468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述したハニカムメッシュ状の加工テーブルにおいては、加工テーブルにより反射されるレーザー光による被加工物としての板材の裏面へのダメージを完全に回避することができない。ハニカムメッシュ状の加工テーブルが板材に接触して支持している場所においては、ダメージが生ずるからである。
【0009】
また、板材を浮かして加工する方法では、板材裏面と加工テーブルとを大きく離す必要があるため、レーザー加工機が大型化し、小型レーザー加工機にこの方法を採用することは適切ではない。
また、板材の外周を浮かして加工する方法はレーザー光の乱反射を回避することはできるが、板材を加工テーブルから高く浮かすと加工面全面を支持できなくなるため、この状態でレーザーカットすると、板材は「カットされた箇所が多くなり柔らかくなる」、及び、「レーザー光を吸収して熱くなる」ことにより板の強度が落ち、板材が加工中に反りやすくなる(平面でなくなる)。板材が反り始めると板材の表面が集光された焦点スポットから離れ、エネルギー密度が下がって切れ味が悪くなり、カットできなくなる。
【0010】
本発明は、加工テーブルにより反射されるレーザー光による被加工物へのダメージの発生を防止することが可能な、ピン固定位置表示プログラム及びピン固定位置表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、装置本体と、前記装置本体の内部に収納され被加工物を支持するピンテーブルと、前記装置本体の内部において移動可能に収納されたレーザー発振器と、前記装置本体の内部において移動可能に収納されたレーザーポインタと、を備え、前記ピンテーブルは、複数のピン固定部を有するテーブル部と、前記ピン固定部に固定されるピンとを有するレーザー加工機を制御するコンピュータを、前記テーブル部において前記ピンを固定する所定の前記ピン固定部を表示するピン固定位置表示装置として機能させるためのピン固定位置表示プログラムであって、前記コンピュータを、前記ピン固定部の画像を含む前記テーブル部の画像と、前記レーザー発振器からのレーザー光によって切断される前記被加工物のカットラインの画像と、を重ね合わせて表示する表示部と、前記テーブル部の画像において選択された前記ピン固定部の画像を、選択されていない前記ピン固定部の画像とは異なる表示とする被選択ピン表示部と、前記レーザーポインタを駆動させて、前記テーブル部の画像において選択された前記ピン固定部の画像に相当する前記ピンテーブルの前記ピン固定部を、前記レーザーポインタにより指し示すピン固定部指示部と、を備えるピン固定位置表示装置として機能させるピン固定位置表示プログラムに関する。
【0012】
ここで、前記被選択ピン表示部は、前記カットラインにより取囲まれる領域の外側と内側とに、それぞれ少なくとも3つの前記ピン固定部を、3つ以上の角を有する多角形の頂点の位置となるように選択して表示することが好ましい。
【0013】
また、前記コンピュータを、前記カットラインを多角形に近似させた近似ラインを生成する近似ライン生成部と、前記近似ラインにより取り囲まれる領域を複数の三角形に分解する分解部と、分解された全ての三角形の重心を求めて多角形の近似ラインの重心を求める重心算出部と、前記多角形の近似ラインの重心を含む3点以上の前記ピン固定部を選択するピン固定部選択部と、を備えるピン固定位置表示装置として機能させることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、装置本体と、前記装置本体の内部に収納され被加工物を支持するピンテーブルと、前記装置本体の内部において移動可能に収納されたレーザー発振器と、前記装置本体の内部において移動可能に収納されたレーザーポインタと、を備え、前記ピンテーブルは、複数のピン固定部を有するテーブル部と、前記ピン固定部に固定されるピンとを有するレーザー加工機と、前記レーザー加工機を制御するコンピュータと、を備え、前記テーブル部において前記ピンを固定する所定の前記ピン固定部を表示するピン固定位置表示装置であって、前記ピン固定部の画像を含む前記テーブル部の画像と、前記レーザー発振器からのレーザー光によって切断される前記被加工物のカットラインの画像と、を重ね合わせて表示する表示部と、前記テーブル部の画像において選択された前記ピン固定部の画像を、選択されていない前記ピン固定部の画像とは異なる表示とする被選択ピン表示部と、前記レーザーポインタを駆動させて、前記テーブル部の画像において選択された前記ピン固定部の画像に相当する前記ピンテーブルの前記ピン固定部を、前記レーザーポインタにより指し示すピン固定部指示部と、を備えるピン固定位置表示装置に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、加工テーブルにより反射されるレーザー光による被加工物へのダメージの発生を防止することが可能な、ピン固定位置表示プログラム及びピン固定位置表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態によるピン固定位置表示プログラムを実行するコンピュータ及びコンピュータに接続されたレーザー加工機を示す概略図である。
図2】本発明の第1実施形態によるピン固定位置表示プログラムが実行されてコンピュータに制御されるレーザー加工機を示す前方斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態によるピン固定位置表示プログラムが実行されてコンピュータに制御されるレーザー加工機のピンテーブルを示す斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態によるピン固定位置表示プログラムが実行されてコンピュータに制御されるレーザー加工機のピンテーブルのピンを示す断面図である。
図5】本発明の第1実施形態によるピン固定位置表示プログラムを実行しているコンピュータのモニターに、テーブル部の画像と被加工物のカットラインの画像と、が重ね合わされて表示されている様子を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態によるピン固定位置表示プログラムが実行されてピンを固定するテーブル部の固定穴の近傍をレーザーポインタが指し示している様子を示す斜視図である。
図7】本発明の第1実施形態によるピン固定位置表示プログラムの処理を示すフローチャートである。
図8】本発明の第2実施形態によるピン固定位置表示プログラムの処理によるコンピュータの構成を示すブロック図である。
図9】本発明の第2実施形態によるピン固定位置表示プログラムの処理を示すフローチャートである。
図10】本発明の第2実施形態によるピン固定位置表示プログラムの処理において曲線を折れ線で表される多角形に近似する様子を示す説明図である。
図11】本発明の第2実施形態によるピン固定位置表示プログラムの処理において多角形を複数の三角形に分解し各三角形の重心を求める様子を示す説明図である。
図12】本発明の第2実施形態によるピン固定位置表示プログラムの処理において被加工物を支持するピンの候補を探す様子を示す説明図である。
図13】本発明の第2実施形態によるピン固定位置表示プログラムの処理において被加工物を支持するピンの候補から重心を含むピンの組み合わせを求める様子を示す説明図である。
図14】本発明の第2実施形態によるピン固定位置表示プログラムの処理において曲線を折れ線で表される多角形に近似する例を示すグラフである。
図15】本発明の第2実施形態によるピン固定位置表示プログラムの処理において多角形の内側に多角形の重心が位置している例を示す説明図である。
図16】本発明の第2実施形態によるピン固定位置表示プログラムの処理において多角形の外側に多角形の重心が位置している例を示す説明図である。
図17】本発明の第2実施形態によるピン固定位置表示プログラムの処理において内角が全て180°より小さい多角形を複数の三角形に分解する前の状態を示す説明図である。
図18】本発明の第2実施形態によるピン固定位置表示プログラムの処理において内角が全て180°より小さい多角形を複数の三角形に分解した後の状態を示す説明図である。
図19】本発明の第2実施形態によるピン固定位置表示プログラムの処理において180°よりも大きい内角を有する多角形を複数の三角形に分解する前の状態を示す説明図である。
図20】本発明の第2実施形態によるピン固定位置表示プログラムの処理において180°よりも大きい内角を有する多角形を複数の三角形に分解した後の状態を示す説明図である。
図21】本発明の第1実施形態又は第2実施形態によるピン固定位置表示プログラムが実行されてコンピュータに制御されるレーザー加工機のピンテーブルのピンを示す図であり、(a)は、(b)のA−A線に沿った断面図であり、(b)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態におけるピン固定位置表示プログラムは、図1に示すように、レーザー加工機1を制御可能に接続されたコンピュータ2において実行され、レーザー加工機1を制御するコンピュータ2を、後述のピンテーブル50のテーブル部51においてピン52を固定する所定のピン固定穴511を表示するピン固定位置表示装置として機能させる。
【0018】
図2に示すように、レーザー加工機1は、紙やアクリル等の様々な素材に対してレーザー加工を施すことが可能な、小型で家庭においても使用することが可能なCOレーザーを用いたレーザー加工機1である。レーザー加工機1は、装置本体10と、図示しないレーザー発振器を収納する発振器ケースとを備えている。以下の説明においては、装置本体10の奥壁12から前壁11へと向かう方向を前方向として定義し、その反対の方向を後方向と定義し、これらを前後方向と定義する。また、図1における第2側壁16から第1側壁15へと向かう方向を左方向と定義し、その反対の方向を右方向と定義し、これらを左右方向と定義する。また、図1における下壁14から上壁13へと向かう方向を上方向と定義し、その反対の方向を下方向と定義し、これらを上下方向と定義する。
【0019】
装置本体10は、直方体形状に構成されており、図1に示すように、前壁11と奥壁12と上壁13と下壁14と第1側壁15と第2側壁16とを有する。奥壁12、上壁13、下壁14、第1側壁15、及び第2側壁16は、金属製の板金に塗装が施されて構成されている。
【0020】
第1側壁15と第2側壁16とは対向しており、上壁13と下壁14とは対向している。前壁11の下端、奥壁12の下端、第1側壁15の下端、及び第2側壁16の下端は、全て下壁14に接続されている。上壁13の前側寄りの部分には、前壁11の上部にわたって本体開口部101が形成されている。上壁13の後部には、一対の蝶番131を介して上蓋132が上壁13に対して回動可能に支持されている。上蓋132は、本体開口部と略同一形状を有しており、本体開口部を閉塞可能である。
【0021】
前壁11の内面、奥壁12の内面、上壁13及び上蓋132の内面、下壁14の内面、第1側壁15の内面、及び第2側壁16の内面は、これらによって取り囲まれた装置本体10の内部の加工空間102を形成している。加工空間102には、レーザー加工される被加工物が配置されてレーザー加工される。奥壁12には、図示しない排気口が形成されている。奥壁12における外側には、図示しないホースの一端部が接続されている。ホースの他端部には、図示しないブロワが接続されており、レーザー照射をしている最中にブロワが駆動され、ブロワによって加工空間102の内部に空気を吸引し、加工空間102の外部へ排出する。
【0022】
加工空間102には、案内レール30が設けられている。案内レール30は、図2に示すように、加工空間102の左右両端にそれぞれ配置された前後方向レール31と、左右方向に延びて一対の前後方向レール31を掛け渡すように配置された左右方向レール32とを有している。左右方向レール32は、左右方向に平行な位置関係を保ったまま、前後方向レール31に対して前後方向へ移動可能である。左右方向レール32には、左右方向レール32に沿って移動可能な被加工部対向部33が設けられている。被加工部対向部33にはミラーが設けられており、図示しないレーザー発振器、レーザーポインタから照射されたレーザー光を反射して、被加工物へ又はテーブル部51へレーザー光を照射させる。左右方向レール32及び被加工部対向部33は、被加工物の所定の位置にレーザーが照射されるように、図示せぬモータにより駆動されて移動する。
【0023】
加工空間102の内部であって、奥壁12の近傍には、図2に示すように、それぞれ金属製の直方体形状を有する下部ケース40と、放熱部60と、図示しない発振器ケースと、図示しないレーザーポインタとが、下壁14から上方向にこの順で奥壁12に沿って設けられている。
図示しない発振器ケースには、図示しないレーザー発振器が収納されている。レーザー発振器は、COレーザーを照射するガラス製高電圧励起レーザー発振器により構成されている。図示レーザー発振器は、図示しない一対の台座によって支持されて、金属製の直方体形状の発振器ケースの内部において支持されている。
【0024】
図示しないレーザーポインタは、半導体レーザー発振器を備えており、波長がおおよそ635nm〜690nmの赤色レーザー光の点331(図6参照)を、被加工部対向部33のミラーを介して後述のテーブル部51上に照射する。
【0025】
加工空間102の内部であって、下壁14上には、図3に示すように、ピンテーブル50が設けられている。ピンテーブル50は、複数のピン固定部としてのピン固定穴511を有するテーブル部51と、ピン固定穴511に固定されるピン52とを有している。テーブル部51は、下壁14に対して着脱可能に固定されている。ピン固定穴511は、左右方向及び前後方向において等間隔で多数形成されている。
【0026】
テーブル部51はアルミニウム製であり、テーブル部51の表面である上面512には、アルマイト「陽極酸化皮膜」加工が施されている。アルマイト加工が施されていることにより、アルミニウムの表面に酸化皮膜が形成されている。アルマイト加工による酸化皮膜の成分は、酸化アルミニウムA1203であり、酸化皮膜は非金属である。非金属の酸化皮膜は炭酸ガスレーザー光をほぼ100%吸収し、レーザー光を反射しない特性を有する。
【0027】
被加工物を貫通したレーザー光は、最初に酸化皮膜に照射される。酸化皮膜がレーザー光のエネルギーをほぼ100%吸収するため、熱が発生する。アルマイト加工による酸化皮膜から発生した熱は、瞬時に熱伝導性の良いアルミニウム母材に熱伝導するため、熱によるアルマイト酸化皮膜の剥離は発生せず、テーブル部51の上面512においては、安定した状態が維持される。
【0028】
テーブル部51の表面である上面512に施されているアルマイト「陽極酸化皮膜」加工は、「硬質アルマイト」加工である。この加工による硬質アルマイト皮膜は、本来のアルマイト皮膜より厚く硬い皮膜であり、400HV以上の硬度を有し、鉄よりも硬い表面を有する。硬質アルマイト皮膜を有するテーブル部51は、硬質アルマイト皮膜を有していないテーブル部51よりも磨耗に強く、レーザー照射に強く、高い耐久性を有している。
【0029】
ピン52は、図4に示すように、円錐形状を有する上部521と、円柱形状を有する基部522と、略円柱形状を有しテーブル部51のピン固定穴511に固定される被固定部523とが、アルミ合金が切削加工されて一体で構成されている。ピン52の材料は、アルミ合金に限定されない。ピン52の材料は、集光されたCOレーザー光の焦点ではなく、被加工物の加工中に被加工物を貫通してピン52に照射された残留COレーザー光により燃えにくい素材(例えばセラミックやアルマイト処理されたアルミニウム等)が用いられればよい。
より具体的には、ピン52の使用材料について、製品開発時に樹脂系のPOM(ポリアセタール)素材と金属系のアルマイト処理されたアルミニウム素材の2種類を検証した。その共通の特徴は両方ともCOレーザーを反射しない素材のためである。しかし、実際の加工でピン52の付近に40Wのハイパワーレーザーを使用して板材を加工する時、POM素材は発火した。
従来、POMもレーザーカットの被加工物としてよく使われているが、加工中に燃えたりする事が基本的にありえない。しかし、POM素材は被加工物として使われていなくて、被加工物である板材を支える素材として使われる場合には、レーザー光の焦点はPOM素材のピン52の表面ではなく、被加工物である板材の表面に合わせられる。
COレーザー光の特性として、同じレーザー出力で素材に照射する場合、焦点距離では被加工物が発火しにくいが、焦点距離から離れるほど発火しやすい傾向がある。それは焦点状態のレーザー光が細く、単位エネルギー密度が大きいため、素材が発火する前にすでに蒸発してしまうのである。一方、焦点距離から離れるほどレーザー光が太くなり、レーザー光の単位エネルギー密度が小さくなるため、レーザー照射する際に素材が蒸発せず発火してしまうのである。
ピン52を支持ピンとして被加工物の下に設置する場合、ピン52は焦点から離れている。レーザー光が板材を貫通してピン52の表面に到達した時点で太くなっているため発火したのである。従って、ピン52の素材はCOレーザー光を反射しない素材、かつCOレーザーで照射した際に発火しない素材(セラミックやアルマイト処理されたアルミニウム等)を使用する必要がある。
【0030】
上部521の下端部の直径と、基部522の直径とは同一である。また、上部521の軸心線に対する錐線の傾斜角度a(図4参照)は45°未満であることが好ましく、更に30°未満であればより好ましく、本実施形態では24°である。上部521の軸心線に対する錐線の傾斜角度aが45°未満であることにより、被加工物を貫通して上部521の錐線の部分、即ち、上部521の側面により反射されたレーザー光が、被加工物としてのアクリル板の裏面(下面)に照射されることを防ぐことが可能となる。更に、上部521の軸心線に対する錐線の傾斜角度aが30°以下であることにより、被加工物を貫通して上部521の側面により反射されたレーザー光が、被加工物としてのアクリル板の裏面(下面)に照射されることを、確実に防ぐことが可能となる。一方、傾斜角度aは20°以上であれば、基部522の直径を十分な寸法で確保でき、基部522の下面とテーブル部51の上面との対向する部分の面積を広く確保できるため、ピン52がテーブル部51のピン固定穴511において安定してテーブル部51に固定されることが可能となる。このため、傾斜角度aは、20°以上30°以下であることが好ましい。
【0031】
また、略円柱形状をした被固定部523の上側部分には、被固定部523の周方向へ一周するように形成された溝である被固定溝5231が形成されている。被固定溝5231には、Oリング5233が嵌められている。ピン52は金属製でテーブル部51も金属製である場合、ピン固定穴511が形成されているテーブル部51の部分とピン52との間に、隙間のないことと、手で差し抜きできる抵抗力を有する構造とすることとを両立させることは、金属同士の嵌め合いでは難しい。隙間を小さくし過ぎると、レーザー加工機1のユーザーは、ピン52を素手で抜けなくなる。隙間を大きくすると、ピン52がテーブル部51に対して揺れるようになる。これらの問題を解決するために、ゴムパッキンにより構成されるOリング5233が被固定溝5231に嵌められる。被固定溝5231に、Oリング5233を介してピン固定穴511が形成されているテーブル部51の部分が係合することにより、ピン52はテーブル部51に固定される。上部521及び基部522の軸方向における長さは、被固定部523の軸方向における長さの5倍程度である。
【0032】
このように被固定部523の軸方向における長さが短く構成されることにより、ピン52に支持された被加工物とテーブル部51との間の距離が短く構成されている。実際にアルマイト加工されていないピン52をテーブル部51のピン固定穴511に固定して、40Wの出力でCOレーザーのレーザー光を、厚さ2mmの被加工物としてのアクリル板に照射して加工を行い検証したところ、レーザー光をピン52の頂点に近い斜面(上部521の側面)に狙って照射しても、板材の裏面はダメージを受けないことが確認できている。ここで用いられた40Wの出力のCOレーザーのレーザー光は、最大10mmの厚さのアクリル板を貫通することができる程度の強力なレーザー光である。
【0033】
コンピュータ2は、モニター21と、キーボード22と、記憶部23と、図示しない演算処理部と、図示しないインターネット接続用のインターフェースと、図示しないレーザー加工機接続用のインターフェースと、を有しており、図示しない演算処理部はプログラムの制御により機能する情報処理装置により構成される。コンピュータ2としては、例えばパーソナルコンピュータ等により構成される。記憶部23は、HDD(ハードディスクドライブ)等により構成され、ピン固定位置表示プログラムが記憶されている。コンピュータ2は、ピン固定位置表示プログラムを実行することにより、モニター21により構成される表示部と、被選択ピン表示部と、ピン固定部指示部と、を備えるピン固定位置表示装置として機能する。
【0034】
以上のような構成のレーザー加工機1に接続されたコンピュータ2において、ピン固定位置表示プログラムが実行されて行われる制御については、以下のとおりである。
先ず、コンピュータ2における制御が行われる前に、ピンテーブル50をレーザー加工機1に設置する。次に、コンピュータ2において、コンピュータ2の記憶部23に予め記憶されている加工データ(カットラインCの画像)を開き、モニター21上においてプレビュー画面でカットラインCの位置(加工位置)を任意の位置に設定する。
【0035】
次に、図7に示すように、ステップS1において、コンピュータ2は、図5に示すように、ピン固定穴511の画像511aを含むテーブル部51の画像51aと、レーザー発振器からのレーザー光によって切断される被加工物のカットラインCの画像と、をモニター21に重ね合わせて表示する制御を行い、表示部として機能する。
【0036】
これに対して、レーザー加工機1のユーザーは、テーブル部51の画像51aとカットラインCの画像とを目視で確認しながら、テーブル部51の画像51aにおけるピン固定穴511の画像511aをモニター21上でタッチすることにより選択して決定してゆく。
【0037】
次に、ステップS2において、コンピュータ2は、図5に示すように、レーザー加工機1のユーザーによって、カットラインCを境界としてカットラインCの内側とカットラインCの外側とについてそれぞれ3点以上、一直線状にならずに3つ以上の角を有する多角形の頂点の位置となるようにモニター21上でタッチされ選択されたピン固定穴511の画像511bを、選択されていないピン固定穴511の画像511aとは異なる色で表示する制御を行い、被選択ピン表示部として機能する。
【0038】
次に、ピン固定穴511の選択が完了し、レーザー加工機1のユーザーが、モニター21上に表示されている図示しないピン位置再生機能開始ボタンをタッチすると、ステップS3において、コンピュータ2は、図6に示すように、被加工部対向部33を駆動させて、テーブル部51の画像51aにおいて選択されたピン固定穴511の画像に相当するピンテーブル50のピン固定穴511の近傍位置を、レーザーポインタにより赤い点331で指し示す制御を行い、ピン固定部指示部として機能する。また、このようにレーザー加工機1、コンピュータ2、及び、ピン固定位置表示プログラムは、ピンテーブル50のテーブル部51においてピン52を固定する位置を、レーザーポインタにより赤い点331で指し示すピン固定位置表示装置を構成する。
そしてレーザー加工機1のユーザーは、レーザーポインタにより指し示された位置に最も近いピン固定穴511に、ピン52の被固定部523を挿入してピン52をテーブル部51に固定する。
【0039】
レーザーポインタの赤い点331により同じ位置を指し示している時間が所定の時間、例えば、5秒を経過すると、被加工部対向部33が移動されて、テーブル部51の画像51aにおいて選択された複数のピン固定穴511の画像551aのうちの、未だレーザーポインタにより指し示していない画像551aであって、先ほどまで差し示していたピン固定穴511の画像551bに最も近いピン固定穴511の画像551aに相当するピンテーブル50のピン固定穴511の近傍位置を、レーザーポインタにより赤い点331で指し示す制御を行い、ピン固定部指示部として機能する。そして、先程と同様に、レーザー加工機1のユーザーは、レーザーポインタにより赤い点331で指し示された位置に最も近いピン固定穴511に、ピン52の被固定部523を挿入してピン52をテーブル部51に固定する。これを、テーブル部51の画像51aにおいて選択された複数のピン固定穴511の画像511bの全てについて行うことにより、レーザー加工機1のユーザーによる、ピン52をテーブル部51に固定する作業が完了する。
【0040】
全てのピン52のテーブル部51への固定が完了すると、レーザー加工機1のユーザーは、被加工物をピン52の上に乗せる。そして、レーザー加工機1のユーザーが、モニター21上に表示されている図示しないレーザー加工開始ボタンをタッチすると、コンピュータの制御により、被加工物としてのアクリル板においてカットラインCに沿ってレーザー加工が行われる。そして、レーザー加工が完了すると、レーザー加工機1のユーザーは、レーザー加工が完了した被加工物をピン52上から取り外す。
【0041】
上述の構成によるピン固定位置表示プログラムは、以下のような効果を発揮することができる。前述のようにピン固定位置表示プログラムは、コンピュータ2を、ピン固定部としてのピン固定穴511の画像511aを含むテーブル部51の画像51aと、レーザー発振器からのレーザー光によって切断される被加工物のカットラインCの画像と、を重ね合わせて表示する表示部と、テーブル部51の画像51aにおいて選択されたピン固定穴511の画像511bを、選択されていないピン固定穴511の画像511aとは異なる表示とする被選択ピン表示部と、レーザーポインタを駆動させて、テーブル部51の画像51aにおいて選択されたピン固定穴511の画像511bに相当するピンテーブル50のピン固定穴511を、レーザーポインタにより指し示すピン固定部指示部と、を備えるピン固定位置表示装置として機能させる。
【0042】
この構成により、ピン52で支持する被加工物の位置がカットラインCの位置に一致してしまうことや、極めて近い位置になってしまうことを防いだ位置関係として、ピン52をテーブル部51のピン固定穴511に、容易に固定することができる。この結果、被加工物を貫通しピン52に照射されて反射されたレーザー光により、被加工物としての板材の裏面へダメージを与えることを防止することができる。
更に、ピン52の上部521の軸心線に対する錐線の傾斜角度は45°未満であり、より具体的には、24°であることにより、万が一ピン52に、被加工物を貫通したレーザー光が照射されても、被加工物の裏面へ向かって反射されることを防止することができる。
更に、テーブル部51の表面である上面には、アルマイト「陽極酸化皮膜」加工が施されていることにより、被加工物を貫通しテーブル部51の表面である上面に照射されたレーザー光が、被加工物としての板材の裏面へ反射することを防止することができ、被加工物としての板材の裏面へダメージを与えることを、より確実に防止することができる。
【0043】
また、カットラインCを境界としてカットラインCの内側とカットラインCの外側とについてそれぞれ3点以上、一直線状にならずに3つ以上の角を有する多角形の頂点の位置となるようにピン52が配置されることにより、カットラインCの内側と外側とにおいてそれぞれピン52によって被加工物が支持されるため、レーザー光によりカットラインCにおいて被加工物をカットしているとき、及び、カットし終えたときに、被加工物を安定してピン52により支持することができる。このため、被加工物が加工中に熱により反ってしまうことを抑えることや、カットしているとき、及び、カットし終えたときに、被加工物の一部が支持していたピン52から落ちてしまうことを防止することが可能となり、レーザー光の焦点を常に被加工物の位置に高い精度で合わせた状態を維持することが可能となる。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態に係るピン固定位置表示プログラムについて説明する。本発明の第2実施形態に係るピン固定位置表示プログラムは、第1実施形態に係るピン固定位置表示プログラムと比べて、ピン固定穴511の選択が自動的に行われる点で異なる。これ以外の構成は、第1実施形態における構成と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
レーザー加工機1に接続されたコンピュータ2おいて、ピン固定位置表示プログラムが実行されて行われる制御のうちのステップS2においては、以下のとおりである。
コンピュータ2は、ピン固定位置表示プログラムを実行することにより、カットラインCにより取囲まれる領域の外側と内側とに、それぞれ少なくとも3つのピン固定穴511を、3つ以上の角を有する多角形の頂点の位置となるように選択する制御を行う。そして、コンピュータ2は、その選択したピン固定穴511の画像511bをモニター21上に、第1実施形態と同様に表示する制御を行う。
【0046】
具体的には、ピン固定位置表示プログラムは、第1実施形態と同様に、コンピュータ2を、表示部201と、被選択ピン表示部202と、ピン固定部指示部203と、を備えるピン固定位置表示装置として機能させると共に、コンピュータ2を、カットラインCを多角形に近似させた近似ラインSを生成する近似ライン生成部204と、近似ラインSにより取り囲まれる領域を複数の三角形Ttに分解する分解部205と、分解された全ての三角形Ttの重心Gtを求めて多角形の近似ラインSの重心Gを求める重心算出部206と、多角形の近似ラインSの重心Gを含む3点以上のピン固定部としてのピン固定穴511を選択するピン固定部選択部207と、を備えるピン固定位置表示装置として機能させる。
【0047】
近似ライン生成部204は、図9に示すステップS211において、図10に示すように、曲線で表されるカットラインCを、近似ラインSにより囲まれる多角形に近似する。具体的には、コンピュータ2において、曲線は以下のような式で表わされる関数X(t)、Y(t)の座標の軌跡として表現することができる。
【数1】
【数2】
X(t)、Y(t)は、[a、b]で実数を与える。
ここで、関数(t)、Y(t)としては、任意の関数を選ぶことができる。図10に示す曲線は複雑であるため、説明の便宜のため、例として下記の関数を用いて説明する。
【数3】
【数4】
【0048】
ここで例えば、tを0から1の間で変化させて、得られる値を直線で結ぶことにより任意の多角形を得ることができる。例えば、
t=0、0.25、0.5、0.75、1
と変化させて座標(X(t),Y(t))をプロットしてゆくと、図14に示すような複数の角を有する折れ線となる。このようにして、適切な関数をX(t)、Y(t)としてそれぞれ選択し、tの値を変化させてゆくことにより、曲線を多角形に近似する。
【0049】
分解部205は、図9に示すステップS212において、図11に示すように、近似ライン生成部204によって生成された近似ラインSの多角形を複数の三角形Ttに分解する。多角形としては、全ての内角が180°より小さい多角形と、180°よりも大きい内角を有する多角形との2種類があるが、先ず、前者について複数の三角形に分解する手順について説明する。
【0050】
先ず、多角形の全ての角の頂点を座標(X,Y)で表す。この頂点の中には、図17に示すように、最初の点としての、Y座標が増加する方向に2つの線分が分かれて現れる点(最も下側の点PB)と、最後の点としての、Y座標が減少する方向に2つの線分が分かれて現れる点(最も上側の点PT)と、が存在する。これらの分かれる2つの線分により、一方の系列としての左系列と、他方の系列としての右系列とが存在することになる。
【0051】
次に、図18に示すように、左系列の最初の点と右系列の最初の点とのを結ぶ線分を引く。次に、各系列の次の点(次にY座標の値が大きい点)のY座標の値同士を比較し、Y座標の値の小さい点から、当該Y座標を含む系列ではない他方の系列の点へ線分を引く。次に、各系列の次の点(次にY座標の値が大きい点)のY座標の値同士を比較し、Y座標の値の小さい点から一つ先の点(次にY座標の値が大きい点)に進む。以上を、左右いずれかの系列において、最後の点PTの一つ手前の点に至るまで繰り返すことにより、多角形が複数の三角形に分解される。
【0052】
次に、180°よりも大きい内角を有する多角形を、複数の三角形Ttに分解する手順について説明する。先ず、全ての内角が180°より小さい多角形と同様に、多角形の全ての角の頂点を座標(X,Y)で表す。次に、最初の点から最後の点の1つ前の点までについて、分解の要否を確認する。
【0053】
具体的には、図19に示すように、多角形の頂点を通る水平線(X軸に平行な直線)を引く。次に、水平線と接続点の位置を確認する。ここで接続点とは、水平線が通る頂点の一つ前の点と一つ次の点とのことであり、これらの接続点が、当該水平線を境界線として同じ側に位置しているか、異なる側に位置しているか、について確認する。そして、接続点が同じ側に位置することになる頂点PSを探し、当該頂点を基準に多角形を分解する。そして、当該頂点を含む水平線を境界線として反対側にある点(当該頂点とは異なる、多角形の他の頂点)と当該頂点とを結ぶ線分が分解線LDとなる。そして、この分解線LDにより、分解された後の、三角形となっていない多角形の部分については、未処理の多角形と認識され、このような未処理の多角形がなくなるまで、上述の分解の工程を繰り返す。以上により、多角形が複数の三角形に分解される。
【0054】
次に、重心算出部206は、図9に示すステップS213において、分解された各三角形Ttの座標から近似ラインSの多角形の重心Gの座標を求める。具体的には、各重心Gtの座標から、相加平均を求めることにより、近似ラインSの多角形の重心Gの座標が求められる。
【0055】
次に、ピン固定部選択部207は、近似ラインSの多角形の重心Gを含む3点以上のピン固定穴511を選択する。
具体的には、図9に示すステップS214において、図12に示すように、近似ラインSの多角形の各頂点を中心として所定の距離の円CRの範囲内に位置しているピン固定穴511を選択する。選択されるピン固定穴511は、いずれも、近似ラインSの多角形の内側に位置していることが要件となる。また、円CRの半径としては、予め定められた値が用いられる。
【0056】
ピン固定穴511が近似ラインSの多角形の内側に位置しているか、外側に位置しているかについては、具体的には、ステップS215において、以下のようにして判断を行う。なお、近似ラインSの多角形は複雑な形状を有しているため、説明の便宜のため、図15図16に示すような、形状の多角形を用いて説明する。
【0057】
先ず、多角形の内側にピン固定穴511(図中の×印)が位置している場合には、図15に示すように、多角形の各頂点とピン固定穴511とを結ぶ線分の間の角度θ0、θ1、θ2、θ3、θ4、θ5の総和は、360°になる。これに対して多角形の外側にピン固定穴511(図中の×印)が位置している場合には、図16に示すように、多角形の各頂点とピン固定穴511(図中の×印)とを結ぶ線分の間の角度の総和θ0、θ1、θ2、θ3、θ4、θ5は、360°にはならない。従って、線分の間の角度の総和θ0、θ1、θ2、θ3、θ4、θ5が360°になるピン固定穴511が、多角形の内側に位置しているピン固定穴511として選択される。
【0058】
次に、図9に示すステップS216において、ステップS215において選択されたピン固定穴511の中から、3つのピン固定穴511により囲まれる三角形Tの内側に近似ラインSの多角形の重心Gが位置していることになるような3つのピン固定穴511を選択する。三角形Tの内側に重心Gが位置しているか否かについての判断は、前述の近似ラインSの多角形の内側にピン固定穴511があるか否かの判断と同様に行う。このようにして選択された3つのピン固定穴511は、カットラインCにより取囲まれる領域の内側に、ピン52、52Bを配置させるピン固定穴511である。
【0059】
以上、カットラインCにより取囲まれる領域の内側に配置させるピン52、52Bのピン固定穴511を選択する制御について説明したが、これと同様にして、カットラインCにより取囲まれる領域の外側に配置させるピン52、52Bのピン固定穴511を選択する制御についても行うことで、当該領域の内側、外側における、ピン52、52Bを配置させるピン固定穴511の選択が完了する。
【0060】
この構成により、レーザー加工機1のユーザーが、目視でピン固定穴511を選択せずに、適切な位置にあるピン固定穴511を、自動的に選択することが可能となる。
【0061】
次に、本発明の第3実施形態に係るピン固定位置表示装置について説明する。本発明の第3実施形態に係るピン固定位置表示装置においては、ピン52Bの構成が第1実施形態に係るピン固定位置表示装置のピン52の構成とは異なる。これ以外の構成は、第1実施形態における構成と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
ピン52Bには、第1実施形態における被固定溝5231に代えて、被固定部523を直径方向に貫通する貫通孔5231Bが形成されている。貫通孔5231Bには、一対の金属製の球体5233Bが、貫通孔5231Bから外れないように且つ球体5233Bの一部が貫通孔5231Bの外側に突出した状態で設けられている。一対の球体5233Bの間には、圧縮ばね5234Bが設けられている。圧縮ばね5234Bは、一対の球体5233Bを互いに離間させるように付勢している。Oリング5233に代えて金属製の球体5233Bを用いたため、テーブル部51のピン固定穴511に対して繰り返し抜き差しした場合であっても、テーブル部51のピン固定穴511にピン52Bを確実に固定することが可能であるように、耐久性を高めることができる。
【0063】
本発明は、上述した実施形態に制限されることなく、請求の範囲に記載した範囲において、様々な形態で実施することができる。例えば、本実施形態においては、レーザー加工機1にパーソナルコンピュータ等により構成されるコンピュータ2が接続され、レーザー加工機1は、ピン固定位置表示プログラムを実行するコンピュータ2によって制御されてピン固定位置表示装置を構成していたが、この構成に限定されない。
【0064】
例えば、レーザー加工機1は、中央処理装置(CPU)等により構成されるコンピュータを内蔵していて、パーソナルコンピュータ等により構成されるコンピュータ2が接続されなくてもよい。この場合には、ピン固定位置表示プログラムは、レーザー加工機において内蔵する記憶部に記憶されていればよい。この場合には、ピン固定位置表示装置は、レーザー加工機により構成される。
【0065】
また、ピン等の各部の形状や構成等は、本実施形態における各部の形状や構成等に限定されない。
【符号の説明】
【0066】
1・・・レーザー加工機
2・・・コンピュータ
10・・・装置本体
21・・・モニター
50・・・ピンテーブル
51・・・テーブル部
51a・・・画像(テーブル部の画像)
52・・・ピン
204・・・近似ライン生成部
205・・・分解部
206・・・重心算出部
207・・・ピン固定部選択部
331・・・赤い点
511・・・ピン固定穴(ピン固定部)
511a、511b・・・ピン固定部の画像
C・・・カットライン
G、Gt・・・重心
S・・・近似ライン
T、Tt・・・三角形
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21