(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被酸化性金属、電解質、炭素成分、及び水を含む扁平状の発熱体を、第一の被覆シートと第二の被覆シートとにより被覆した、酸化反応によって発熱する発熱具本体を備えた発熱具であって、
前記第一の被覆シートは前記酸化反応を実質的に規制しない通気性を備えたシートであり、
前記第一の被覆シートはその通気度が0秒/(100ml・6.42cm2)以上1500秒/(100ml・6.42cm2)以下であり、且つ耐水圧が1500mmH2O以上であり、
前記発熱体に少なくとも一部が接するように保水材が備えられており、
前記酸化反応開始前の状態において、前記発熱体の含水率が9質量%以上25質量%以下であり、
前記酸化反応開始前の状態において、前記発熱体中の前記電解質濃度が1質量%以上10質量%以下であり、
以下の(A)ないし(C)の条件を満たす発熱具。
(A)前記発熱体の内部温度と、前記発熱具本体の表面での最高温度との差が10℃以下である。
(B)前記発熱具を人体の皮膚に適用したときの皮膚の最高温度が38℃以上42℃以下である。
(C)前記酸化反応開始から10分間に発生した水蒸気量(mg/cm2・10min)/発熱体の質量(g/cm2)の値が50以上250以下である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の発熱具をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の発熱具の第一実施形態を模式的に示した断面図である。同図に示す発熱具1は、扁平な形状を有する発熱体11の各面が、第一の被覆シート21及び第二の被覆シート22によって挟持されて被覆された構造を有している。第一及び第二の被覆シート21,22はそれぞれ、発熱具1の外面を構成している。なお、第一の被覆シート21と第2の被覆シートは、各々独立したものであってもよいし、一枚のシートを折り返したものであってもよい。
【0017】
発熱具1において、発熱体11と第一の被覆シート21との間には、該発熱体11と接するように保水材12が配置されている。また、発熱体11と第二の被覆シート22との間には、該発熱体11と接するように第二の基材シート13が配置されている。なお、本明細書では、発熱具1において、第一の被覆シート21と第二の被覆シート22との間に発熱体11が挟持された構造体を「発熱具本体」と言う。また該発熱具本体を備えており、且つ着用者に使用される形態となった構造体を「発熱具」という。本実施形態においては、「発熱具本体」と「発熱具」は同じ構造体を指すので、以下、特に区別する必要がない限り「発熱具」とだけ言う。
【0018】
第一及び第二の被覆シート21,22は、上述した発熱体11、保水材12及び第二の基材シート13の外縁から外方に延出した延出部21a,22aを有している。これら延出部21a,22aはそれらの対向面において互いに接合されている。これによって、発熱体11、保水材12及び第二の基材シート13は、両被覆シート21,22によって形成される閉じた空間内に封入された状態となる。このように構成されている発熱具1は、扁平な形状をしており、その平面視での形状が、該発熱具の具体的な用途に応じて、例えば矩形等の多角形や、円形、楕円形、亜鈴形等であり得る。
【0019】
発熱体11は、被酸化性金属、電解質、炭素成分、及び水を含んで構成されている。発熱体11は、上述のとおり、扁平な形状をしている層状の構造体である。発熱体11は、被酸化性金属の酸化反応によって発熱して、使用者に十分な温熱効果を付与するものである。
【0020】
本実施形態の発熱具1は、以下の条件を満たすものである。
(A)発熱体の内部温度と、発熱具1の表面での最高温度の差が10℃以下である。
(B)発熱具1を人体の皮膚に適用したときの皮膚の最高温度が38℃以上42℃以下である。
(C)酸化反応開始から10分間に発生した水蒸気量(mg/cm
2・10min)/発熱体の質量(g/cm
2)の値が50以上250以下である。
以下、これらの条件についてそれぞれ説明する。
【0021】
本実施形態の発熱具1は、(A)を満たすことにより、発熱体11と、発熱具1の外面をなす第一及び第二の被覆シート21,22との間に大きな空間を形成する必要がなくなる。その結果、発熱具1の厚みを薄くすることが容易になる。したがって、フィット性がよい発熱具1を得ることができる。なお、「発熱具1の表面での最高温度」とは、発熱具1における、肌と接触する側の表面での最高温度のことである。
【0022】
また発熱具1は、(B)を満たすことにより、該発熱具1を人体に適用したときに、人体に対して適度な温熱感を与えることができる。長時間にわたって人体に対して直接に又は間接的に発熱具1を適用する場合であっても、適用時間内にわたって、快適な温感を使用者に与えることができる上、低温火傷のリスクが低減されるという効果が得られる。なお、後述するとおり、発熱具1は、発熱具本体を直接人体の皮膚に接触させるように適用してもよく、あるいは発熱具本体を不織布等の材料を外装材として覆った状態の発熱具1として人体の皮膚に適用してもよい。発熱具本体が不織布等の材料で覆われて発熱具1が構成されている場合、(B)に規定される最高温度は、そのまま測定する。なお、外装材を備える発熱具1から外装材を除去し、第一及び第二の被覆シート21,22を露出させ、更に後述する不織布の袋を被せて覆った状態で行われるときにも、発熱具1は(B)の条件である最高温度範囲を満たすことが好ましい。
【0023】
更に発熱具1は、(C)を満たすことにより、該発熱具1を人体に適用したときに、多量の水蒸気が人体に供給されるので、人体の深い位置まで温熱感を与えうることから、人体と発熱具1の接触の具合に関わらず広く均一に温めることができる。しかも発熱具1は、発熱体11の単位質量当たり発生する水蒸気量が多いので、軽量又は薄型でありながら、多量の水蒸気による適度な温熱感を人体に与え得る。このため、熱に対してデリケートな部位である目の周囲への適用や、肘及び膝といった屈伸に対する追従性を要求される部位への適用が容易となる利点もある。なお、発熱具1から発生した蒸気を人体に付与する場合には、発熱具本体を直接人体の皮膚に接触させるように適用することが特に好ましいが、発熱具本体を外装材、特に、不織布製の外装材で覆って適用してもよい。発熱具1が、発熱具本体を不織布等の材料を外装材として覆って構成されている場合、(C)に規定される水蒸気量の測定は、外装材を有する発熱具1として測定されるが、該材料を除去し、第一及び第二の被覆シート21,22が最外面に露出した発熱具本体の状態で行われたときも、(C)に規定する水蒸気量範囲を満たすことが好ましい。
【0024】
発熱具1は、これら3つの条件(A)ないし(C)を備えていることによって、発熱体11の単位質量当たり発生する水蒸気を多量にすることができ、薄くてフィット性が良好になるとともに、適用対象部位の全体を均一に温めることができる。その結果、従来の発熱具に比べて皮膚温度の振れを抑えることができる。また発熱具1では、皮膚温度を適度な範囲にコントロールしているので、身体に安全で快適な温熱感を使用者に与えることができる。
【0025】
図2(a)及び(b)はそれぞれサーモグラフィであり、本発明に属する、前記条件(A)ないし(C)を満たす発熱具を人の手に適用した場合の温熱の伝わった状態(
図2(a))を、蒸気発生量が(C)を満たさない従来の発熱具(
図2(b))との対比において示している。同図から明確なように、本発明に属する発熱具は、従来の発熱具と比較して適温状態が皮膚の広い範囲にわたって均一にもたらされることが判る。
【0026】
前記の条件(A)ないし(C)について更に説明する。(A)については、発熱体11の内部温度と発熱具1の表面での最高温度の差は、発熱体11が放出する発熱効率及び安全性の観点、更には発熱体11の厚みと柔軟性の観点から、9℃以下が好ましく、8℃以下がより好ましい。発熱体11の内部温度と発熱具1の表面での最高温度の差とは、〔発熱体11の内部温度−発熱具1の表面での最高温度〕の式から算出される値である。発熱体11の内部温度が過度に高い場合、発熱体11から放出された熱をそのまま身体に伝えると火傷のリスクを伴うため、断熱材の挿入や身体との間に隙間を設けて発熱具1の表面温度を調節する必要がある。断熱材の挿入や身体との隙間を設けた構造にすると、発熱体11の厚みが増し柔軟性が低くなる。また、製造工程が複雑になることやコストアップ等のデメリットも考えられる。更には、必要以上の熱量を発生させて、身体に与える熱以外のエネルギーを無駄に消費させるため、発熱量に対して身体に与える熱効率が悪いということになる。発熱体11の内部温度T1と、発熱具1の表面での最高温度T2とは、T1>T2であってもよく、あるいはT1<T2であってもよいが、一般的にはT1>T2であるようにすることが制御しやすい。
【0027】
発熱具1において、発熱体11の内部とは、発熱体11と保水材12が接触する面における平面視での中心部分の位置での厚み方向中央のことを言う。また、発熱体11の内部温度は、K型熱電対を発熱体11の内部に挿入して測定される。また、発熱具1の表面での最高温度とは、発熱具1における第一の被覆シート21の外面における中心の位置での温度のことである。発熱具1の表面での最高温度は、第一の被覆シート21の外面における中心の位置にK型熱電対を接触させて測定される。測定の雰囲気は20℃、65%RHとする。この雰囲気下で測定された発熱体11の内部温度の最高温度と、発熱具1の表面での最高温度とから両温度の差を算出する。このようにして測定された前記発熱体11の内部温度と発熱具1の表面での最高温度の差は、上述のとおり9度以下であることが好ましく、8℃以下であることが更に好ましく、6℃以下であることが一層好ましい。前記の差の下限値は低いほど好ましく、0℃であることが最も好ましい。
【0028】
条件(B)に関して、発熱具を人体の皮膚に適用したときの皮膚の最高温度は、サーミスタ付きのデータロガー(日機装サーモ株式会社 LT−8)を用いて測定される。上瞼等の人体皮膚表面にサーミスタをサージカルテープで固定して測定される。なお、外装材の影響を排除して測定する場合には、外装材を除去した発熱体本体の上から発熱具本体に不織布の袋を被せたもので覆って測定される。この際使用する不織布としては、後述する実施例で用いられているエアスルー不織布とニードルパンチ不織布との組み合わせを用いる。このようにして測定された皮膚の最高温度は、上述のとおり38℃以上42℃以下であり、38.5℃以上41.5℃以下であることが更に好ましく、39℃以上41℃以下であることが一層好ましい。
【0029】
条件(C)に関して、酸化反応開始から10分間に発生した水蒸気量は、
図3に示す装置30を用いて次のように測定した。
図3に示す装置30はアルミニウム製の測定室(容積2.1L)31と、測定室31の下部に除湿空気(湿度2%未満、流量2.1L/分)を流入させる流入路32と、測定室31の上部から空気を流出させる流出路33とを備えている。流入路32には、入口温湿度計34と入口流量計35とが取り付けられている。一方、流出路33には、出口温湿度計36と出口流量計37とが取り付けられている。測定室31内には温度計(サーミスタ)38が取り付けられている。温度計38としては、温度分解能が0.01℃程度のものを使用した。測定環境温度30℃(30±1℃)において温熱具を包装材から取り出し、その水蒸気放出面を上にして測定室31に載置する。金属球(4.5g)をつけた温度計38をその上に載せる。この状態で測定室31の下部から除湿空気を流す。入口温湿度計34と出口温湿度計36で計測される温度及び湿度から測定室31に空気が流入する前後の絶対湿度の差を求める。更に入口流量計35と出口流量計37で計測される流量から温熱具が放出した水蒸気量を算出する。この装置の詳細は、本出願人の先の出願に係る特開2004−73688号公報に記載されている。水蒸気量の算出には以下の式を用いる。
【0031】
また、条件(C)に関して、発熱体11の質量は、被酸化性金属、電解質、炭素成分、及び水の合計質量のことである。水は、保水材12に含まれている分も含める。また発熱体11に、これら以外の成分が含まれている場合には、それの成分の質量も含める。発熱体11の質量は、発熱体11をシートに積層させる工程において、シート質量を測定し、発熱体11をシートに積層させた後に再度質量を測定し、両者の差分を算出して求める。このようにして測定された水蒸気量(mg/cm
2・10min)と発熱体11の質量(g/cm
2)とから算出される値は、上述のとおり50以上250以下であり、60以上240以下であることが好ましく、70以上230以下であることが更に好ましく、80以上220以下であることが更に一層好ましい。10分よりも早く水蒸気発生が終了した場合には終了時点までの水蒸気量を測定し、これを10分間発生した水蒸気量と見做して、発熱体11の質量当たりの水蒸気量を算出する。そのとき得られた値が前記範囲であればよい。尤も、発熱具1は、水蒸気発生時間が10分以上であって、その間の水蒸気発生量が前記範囲であることが、適度な皮膚温度を、皮膚の深い部分まで与えることが容易となるので好ましい。特に、水蒸気発生時間が15分以上であることが好ましく、20分以上であることが更に好ましい。水蒸気発生時間とは、反応が開始してから反応が終了するまでの時間である。
【0032】
本実施形態の発熱具1において前記3つの条件(A)ないし(C)を実現するには、(1)発熱体11に含まれる被酸化性金属の酸化反応を阻害しない量の酸素供給を行うこと、及び(2)発熱体11に含まれる水の量を適度に制御すること、が極めて有効であることを本発明者は見出した。以下、これら(1)及び(2)について説明する。
【0033】
まず(1)について説明する。一般に、発熱具の温度振れの要因の中で、(イ)原料の配合量や、(ロ)一つの発熱具1当たりの質量は、精度の高い計量器があることで、高精度に管理できる。しかし、(ハ)酸素供給量は、発熱具の外面をなす通気シートの通気量に依存するところ、通気シートの通気量を高精度に管理することは容易でないので、ある一定の振れを許容しなければならない。
【0034】
一般に通気シートとしては、炭酸カルシウムを樹脂に配合し、該樹脂を溶融状態で押し出して延伸することによって微細孔を形成したシート(以下、微細孔シートという)が知られている。これ以外にも、熱針による穿孔加工したシート、不織布を多数枚積層したシート、メルトブローン法で製造したシートなど、多種多様なシートが知られている。これらの中で、開孔密度を高く調整できる理由から、微細孔シートが市販の発熱具の被覆シートとして使用されていることが多い。しかし微細孔シートを用いた市販の発熱具では、同じ通気度として市販されているものであっても、実際には通気量のばらつきがある。この通気量のばらつきに起因して、従来の発熱具では発熱温度の精密な制御が困難になっている。そこで本発明においては、発熱体への酸素供給量のばらつきに起因する発熱温度の振れをなくすために、通気シートによる酸素の供給を規制せず、酸化反応に必要な酸素の量に対して過剰量の酸素を供給できる状態にすることとし、前記(1)の条件を採用している。本発明において「第一の被覆シートは酸化反応を実質的に規制しない通気性を備えたシートである」とは、第一の被覆シートが存在していない場合に測定された発熱具1の発熱特性と、第一の被覆シートが存在している場合に測定された発熱具1の発熱特性とが同じである程度に通気性が高いシートのことである。
【0035】
しかしながら、前記(1)のみを採用した場合には、発熱体の反応速度が大幅に上昇し短時間のうちに高温になることがあるため、そのような発熱具を身体に適用することは非常に危険である場合がある。発熱具を適用した皮膚の表面温度は、38℃以上42℃以下の範囲にコントロールすることが安全であり、且つその温度範囲が使用者に心地よい温熱感を与える。皮膚温度が38℃未満では温熱感を十分に知覚することができないことが多い。特に、短い時間適用を前提とする発熱具ではそれが顕著である。逆に、皮膚温度が42℃を超えた場合、装着者が熱過ぎると感じやすくなる。特に、皮膚温度を42℃以下にコントロールすることで、確実に低温火傷のリスクを低減することができる。すなわち、通気シートによる酸素の供給を規制しない状態において、身体に安全で且つ心地よい温度である、皮膚の表面温度が38℃から42℃の範囲となるように制御された発熱体が必要である。
【0036】
そこで本発明者は、(1)とともに(2)の条件を採用することとした。条件(2)によれば、条件(1)を適用した場合においても、発熱体11の昇温速度及び温度特性がコントロールされるため、発熱具1を人体に適用したときに素早く且つ適度な温熱感を与えることができる。(2)の基本的な原理は、酸化反応中において、発熱体11中に、熱容量の大きい物質である水を、酸化反応に必要な量に比べて、極端に過剰量含有させておくことで、発熱エネルギーを水の加熱に消費させ、発熱体11の温度の上昇を抑制させることに基づいている。すなわち、発熱体11への酸素供給量を規制して温度をコントロールする一般的な発熱体よりも、多くの水を発熱体11に含有させている。また、反応初期においては、発熱体11中の水の量を、反応中と比べて少なくなるように設計しておき、更に、多量の水を含んだ保水材12を発熱体に少なくとも一部が接触するように配置することによって、多量の水が保水材12から発熱体11に供給される構造としている。実際に酸化反応式を用いた計算、並びに発熱反応前後での発熱体11の質量及び水分率等の実験値から酸化反応で消費される水の量を見積り、更に保水材12の経時変化をマイクロスコープにより観察し、
図4に示すとおり、発熱体11の断面積から放水量を算出することで、
図5に示すような水の収支を本発明者は確認している。発熱体11に含有される水は、酸化反応とともに消費される分と、系内に水として残る分の2つに分類される。更に、消費される水は酸化反応で消費される分と、蒸気として系外へ排出される分に分けられ、系内に残る水は保水材12に保持されている分と発熱体11に保持されている分に分けられる。保水材12が発熱体11に少なくとも一部接触することにより、酸化反応に伴う発熱体12の温度変化や電解質濃度変化に追従して保水材12と発熱体11との間での水のやりとりが滞りなく進行する。この結果、
図5に示すように多量の水が保水材12から発熱体11に供給される。また、酸化反応初期では、発熱体11内の含水率が適度に低いため、反応初期は素早く温度が立ち上がり、温度の上昇とともに保水材12から多量の水が放出されて発熱体11に供給されることで、発熱体11の含水率が反応初期よりも上昇し、発熱による発熱体11の温度上昇を抑制することができる。過剰に配合しておいた水は効率良く反応に使われるため発熱の持続時間が長くなり、その結果として発生する水蒸気の量も多くなる。
【0037】
ところで、発熱体から身体へ付与される熱は、発熱体が皮膚に接触することに起因する伝熱と、水蒸気が発生する場合は水蒸気からの伝熱によるものであり、皮膚温度を前記の温度範囲内にコントロールするためには、これらの伝熱を厳密にコントロールする必要がある。しかし、発熱温度が安定した発熱体を製造するためには高度な生産技術のみならず、厳しい品質管理が必要不可欠であり、規格に適合しない製品は消費者に届けられることなく不良品として廃棄され、生産者にとっては少なからず損失になっていた。これに対して本実施形態の発熱具1によれば、上述の構成を採用していることで、発熱体11の発熱温度を厳密にコントロールすることができる。
【0038】
通常、通気シートの通気量を増やすことに起因する発熱体からの水蒸気の発生量の増加は、温度上昇を伴う。つまり、水蒸気量を増加させようとすると温度が上昇してしまい、温度上昇を抑制しようとすると水蒸気量が低下してしまう。これらのことから、従来、水蒸気の発生量の増加と、発熱温度の最適化とは、トレードオフの関係にあった。この理由で従来市販されている発熱具は、通気シートの通気量を制限することによって発熱反応を抑制していた。これに対して本発明では、通気シート、すなわち第一の被覆シート21の通気量を増やすとともに、発熱体11の初期水分量を適度に少なく設定しながらも、保水材12から過剰の水を供給し得る設計とすることによって、これまで相容れなかった水蒸気量の増加と発熱温度の最適化の両立に成功したものである。
【0039】
従来の発熱具は、該発熱具を身体に接触させることにより身体を温めていたので、接触対象部位の大きさや形状に依存して発熱具との接触の仕方が異なり、また使用者によって発熱具の取り付け方が異なるので、温熱感がまちまちであった。これに対して本実施形態の発熱具1は、主に多量の水蒸気を熱媒体として用い、該水蒸気による空間加熱で身体を温めるので、人の個体差による対象部位の大きさや形状違いで発熱具との接触の仕方が異なる場合であっても、対象部位の全体を均一に温めることができ、従来よりも皮膚温度の振れを抑えることができる。
【0040】
発熱具1の第一の被覆シート21の通気度は、酸素供給が発熱反応における律速段階にならないという観点から、0秒/(100ml・6.42cm
2)以上1500秒/(100ml・6.42cm
2)以下であることが好ましい。ここで言う通気度とは、ガーレ式(JIS P8117)測定方法を用いて数値化した指標であり、一定の圧力のもとで100mlの空気が6.42cm
2の面積を通過する時間で定義される。第一のシート21の通気度が1500秒/(100ml・6.42cm
2)以下である、とは100mlの通気に要する時間が1500秒以下ということであり、この値が大きいほど通気量が小さくなり、反対にこの値が小さいほど通気量が大きくなることを意味する。したがって、ガーレ式の測定方法と実際に発熱体が使用される状態が合致しているわけではなく、ガーレ式で数値が表れれば第一の被覆シート21が、発熱体11への酸素の供給を阻害していると言うわけではない。通気度の好ましい範囲は、発熱体11の組成や、初期水分量等によって異なるが、小さいほどよく、具体的には、1200秒/(100ml・6.42cm
2)以下、特に1000秒/(100ml・6.42cm
2)以下、殊更には500秒/(100ml・6.42cm
2)以下であると、発熱反応が外部環境に左右されにくくなって、水蒸気の発生量と温度制御とのバランスがとりやすくなるので好ましい。
【0041】
本発明者は実験によって酸素供給が酸化反応の律速段階にならない範囲を選定して、通気度の範囲を規定した。
図6は、後述する実施例1ないし5及び比較例2に対応するものであり、通気度の異なる微細孔シートで製作した袋に、扁平状に成形した同じ発熱組成物からなる発熱体を入れ、端部を封止した発熱体の最高温度に至るまでのプロファイルを示したものであり、比較として全く通気制限していない発熱体、すなわち通気度0秒/(100ml・6.42cm
2)の状態下の発熱体を用いた結果も載せている。この図から判るように、通気度が1500秒/(100ml・6.42cm
2)以下であれば、通気度0秒/(100ml・6.42cm
2)と同じ最高温度を示し、発熱に必要な酸素の供給は阻害されることなく発熱組成物内部へ供給されていることが判る。通気度が2500秒/(100ml・6.42cm
2)以上になると、プロファイルが遅延し最高温度が低くなり、通気阻害の影響を受けていることが判る。よって、微細孔シートの通気度が1500秒/(100ml・6.42cm
2)以下では、発熱体の酸化反応の観点から見れば、通気制限していない、いわゆる自由通気の状態と言える。
【0042】
本実施形態の第一の被覆シート21は、水蒸気を通過させることが可能な透湿性を備えていることが好ましい。第一の被覆シート21の透湿度は2000g/(m
2・24h)以上、特に2500g/(m
2・24h)、更に3000g/(m
2・24h)以上であることが好ましい。第一の被覆シート21の透湿度が2000g/(m
2・24h)以上であると、水蒸気を多量に発生することを特徴の一つとする本実施形態の発熱具1の内部に水が留まりにくくなり、発熱反応を阻害する要因を排除することができる。特に、透湿度が2500g/(m
2・24h)以上、殊更3000g/(m
2・24h)であると、発熱具1外への蒸気放出がスムーズに行われ、着用者の皮膚の深くまで温熱効果を及ぼしやすくなるので好ましい。透湿度は、JIS Z0208に準拠して測定される。
【0043】
発熱具1は、酸化反応を抑制するような通気制御を行わないことから、原理的には第一の被覆シート21を使用しないことが理想的のように思われるかもしれない。しかし、発熱体11の構成材料が外部へ漏れることを防止しなければならないため、現実的には第一の被覆シート21が必要となる。
【0044】
特に、発熱体11は水分を含むものであることから、蒸気以外の水分が漏れ出すことを防ぐ観点から、第一の被覆シート21の耐水圧は1500mmH
2O以上であることが好ましく、2000mmH
2O以上であることが更に好ましく、3000mmH
2O以上であることが殊更好ましい。水を通さないという観点からは、耐水圧の値に上限を設ける必要はない。このような耐水圧とすることによって、特に発熱具1を目の周囲に用いるような場合に、発熱体11内の成分とともに目に水分が侵入することを防ぐことができ、快適且つ安全に発熱具1を利用することができる。特に、酸化反応によってアルカリ性成分が水分中に溶出するような系である場合には、本構成は特に好ましいと言える。耐水圧は、JIS L1092に準じた測定方法を採用して測定され、例えばTEXTSET社の耐水圧試験機FX3000を用いることができる。
【0045】
以上のことから、第一の被覆シート21とは、水は通さないが酸素や水蒸気の通気を阻害しないようにするシートであることが好ましい。そのようなシートとしては、多孔質タイプの素材製のもの、無孔質タイプの素材製のもの、コーティングタイプの素材製のもの等から選択することが可能である。これらの中でも、コスト面から多孔質タイプの素材からなるシートが好ましく、例えば微多孔質フィルム製の透湿シートが発熱具1の薄型化と使用時の強度の両立の観点から好ましい。この微多孔質フィルム製の透湿シートは、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂に、炭酸カルシウム等の微粒子を練り込んだ溶融樹脂を、ダイを通じて押し出してシート化し、一軸又は二軸延伸を加えることで、炭酸カルシウムと樹脂の界面を剥離させて微細な連通部を形成し、気体は通すが水を通さない性能を発現させたものである。
【0046】
第一の被覆シート21は、水は通さないが酸素や水蒸気を通すシートであって、且つ防漏性が考慮されていれば上述した微多孔質フィルム製の透湿シート以外のものであってもよい。例えば、ポリアミド、ビニロン、ポリエステル、レーヨン、アセテート、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリ塩化ビニル等の人工繊維や、パルプ、綿、麻、絹及び獣毛等の天然繊維から選ばれた1種又は2種以上を混合した織布、不織布、紙、合成紙等を、第一の被覆シート21として用いることができる。あるいは、非透湿・非通気フィルム又はシート、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、天然ゴム、再生ゴム、合成ゴム等のフィルム又はシートに孔を設けたものも、第一の被覆シート21として使用できる。
【0047】
本実施形態の発熱具1における外面をなすもう一方のシートである第二の被覆シート22に関しては、その通気度や透湿度に特に制限はない。第二の被覆シート22は、通気性を有していてもよく、あるいは有していなくてもよい。第二の被覆シート22が通気性を有する場合、発熱具1は両面通気性のものとなる。第二の被覆シート22が通気性を有さない場合、発熱具1は、第一の被覆シート21のみが通気性を有する片面通気性のものとなる。なお本発明において非通気性とは、ガーレ式で測定された通気度が100000秒/(100ml・6.42cm
2)以上であることを言う。第二の被覆シート22が通気性を有する場合、該第二の被覆シート22としては、第一の被覆シート21と同種のものを用いることができる。この場合、第二の被覆シート22の通気度は、第一の被覆シート21の通気度と同じでもよく、あるいは第一の被覆シート21の通気度よりも大きいか又は小さくてもよい。一方、第二の被覆シート22が非通気性である場合には、該第二の被覆シート22は、例えば各種樹脂やゴム等の材料からなるフィルム又はシートから構成される。
【0048】
第一の被覆シート21と第二の被覆シート22との間に位置する発熱体11は、複数の成分を含む発熱組成物からなる。この発熱組成物を構成する成分としては、先に述べたとおり、被酸化性金属の粒子、電解質、炭素成分、及び水が用いられる。
【0049】
本実施形態の発熱具1では、発熱具本体を構成する第一の被覆シート21及び/又は第二の被覆シート22よりも外側に、外装材を設けてもよい。発熱具本体に各被覆シート21,22として耐水性を有するようにフィルムやシートを用いると、風合いの点では不利であることがある。特に、耐水性のフィルムを用いた場合には、柔らかさや使用感の点で改善の余地がある。そこで、少なくとも、着用者の皮膚に接触する側においては、風合いを向上するための外装材を設けることが好ましい。例えば、第一の被覆シート21が、第二の被覆シート22よりも着用者の肌当接面側に位置しており、第一の被覆シート21よりも肌当接面側に外装材が設けられていることが好ましい。ただし、外装材を第一の被覆シート21よりも肌当接面側に設ける場合には、外装材が通気性を阻害して、酸化反応を規制してしまうことは避けるべきである。このような観点から、第一の被覆シート21よりも肌当接面側に設けられる外装材としては、具体的には不織布を用いることが好ましい。また、第二の被覆シート22よりも非肌当接面側に設ける外装材としては、風合いの点からは不織布や織布が好ましく、一方では、デザイン性を考慮すれば、印刷を施したフィルム材を含むシート材等が挙げられ、両者をラミネートしたシート材であってもよい。なお、外装材が設けられている場合には、第一の被覆シート21と第二の被覆シート22を構成の最も外側の部分として配置し、その間に発熱体11を有する発熱具本体を、外装材で覆った構造体が発熱具1である。
【0050】
被酸化性金属としては、酸化反応熱を生ずる金属が用いられ、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、及びカルシウムから選ばれる1種又は2種以上の粉末や繊維が挙げられる。中でも、取扱い性、安全性、製造コスト、保存性及び安定性の点から鉄が好ましく、特に鉄粉が好ましい。鉄粉としては、例えば、還元鉄粉、及びアトマイズ鉄粉などが挙げられる。
【0051】
被酸化性金属が粉末である場合、酸化反応が効率的に行われるという観点から、その平均粒径が10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることが更に好ましい。また、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることが更に好ましい。具体的には、被酸化性金属の粒子の平均粒径は、10μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上150μm以下であることがより好ましい。被酸化性金属の粒径は、粉体の形態における最大長さをいい、例えば篩による分級、動的光散乱法、レーザー回折法等により測定される。
【0052】
発熱体11における被酸化性金属の含有量は、坪量で表して、100g/m
2以上が好ましく、特に200g/m
2以上が好ましく、また、3000g/m
2以下が好ましく、特に1500g/m
2以下が好ましい。また、具体的には、被酸化性金属の含有量は、坪量で表して、100g/m
2以上3000g/m
2以下であることが好ましく、200g/m
2以上1500g/m
2以下であることが更に好ましい。これにより、発熱体11の発熱温度の制御が容易となる。発熱体11中の鉄粉の含有量は、JIS P8128に準じる灰分試験や、熱重量測定器で求めることができる。他に外部磁場を印加すると磁化が生じる性質を利用して振動試料型磁化測定試験等により定量することができる。
【0053】
炭素成分は、保水能、酸素供給能、及び触媒能の少なくとも1つの機能を有するものであり、この3つを兼ね備えているものが好ましい。炭素成分として、例えば、活性炭、アセチレンブラック、及び黒鉛から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、湿潤時に酸素を吸着しやすいことや、発熱体11中の水分を一定に保てる観点から、活性炭が好ましく用いられる。より好ましくは、椰子殻炭、木粉炭及びピート炭から選ばれる1種又は2種以上の微細な粉末状物又は小粒状物が用いられる。中でも、発熱体11の水分量を所望の範囲に保ちやすいことから、木粉炭が好ましい。
【0054】
炭素成分は、被酸化性金属と均一に混合される観点に加え、保水材12に含まれる水の量を所望の範囲に維持する観点から、平均粒径が10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることが更に好ましく、また、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。具体的には、炭素成分の平均粒径は、10μm以上200μm以下であることが好ましく、12μm以上100μm以下であることがより好ましい。炭素成分の平均粒径は、粉体の形態における最大長さを言い、動的光散乱法、レーザー回折法等により測定される。炭素成分は粉体状の形態のものを用いることが好ましいが、粉体状以外の形態のものを用いることもでき、例えば、繊維状の形態のものを用いることもできる。
【0055】
発熱体11における炭素成分の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して、0.3質量部以上20質量部以下であることが好ましく、1質量部以上15質量部以下であることがより好ましく、3質量部以上13質量部以下であることが更に好ましい。こうすることで、得られる発熱体11中に、酸化反応を持続させるために必要な水分を蓄積できる。また、発熱体11への酸素供給が十分に得られて発熱効率が高い発熱体11が得られる。
【0056】
発熱体11における炭素成分の含有量を坪量で表すと、4g/m
2以上であることが好ましく、7g/m
2以上であることが更に好ましく、また、290g/m
2以下であることが好ましく、160g/m
2以下であることが更に好ましい。より具体的には、炭素成分の含有量は、坪量で表して、4g/m
2以上290g/m
2以下であることが好ましく、特に7g/m
2以上160g/m
2以下であることが更に好ましい。
【0057】
発熱体11中には、炭素成分以外に同様の機能、すなわち保水能等を有する他の成分を含有させてもよい。そのような成分としては、例えばバーミキュライト、おがくず及びシリカゲルから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これら他の成分が発熱体11中に含まれている場合、これら他の成分と炭素成分との合計量に対する炭素成分の割合は、90質量%以上であることが発熱体11中の水分を制御する点で好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、98質量%以上であることが一層好ましい。
【0058】
発熱体11中に含まれる電解質は、被酸化性金属の反応効率を上げ、酸化反応を持続させる反応促進が目的で用いられる。電解質を用いることにより、被酸化性金属の酸化被膜を破壊して、酸化反応を促進することができる。電解質としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属の硫酸塩、及び塩化物から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。中でも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点から、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、第1塩化鉄、第2塩化鉄等の各種塩化物、及び硫酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0059】
発熱体11における、酸化反応の開始前における電解質の濃度は、1質量%以上、特に3質量%以上、更には4質量%以上であることが好ましく、また、20質量%以下、特に15質量%以下、更には10質量%以下であることが好ましい。具体的には、1質量%以上20質量%以下、特に3質量%以上15質量%以下、更には4質量%以上10質量%以下であることが好ましい。当該範囲であると、発熱体11の酸化反応が開始されて発熱体11中の水分が消費された際に、保水材、特に吸水性ポリマーから発熱体11への過剰量の水分の供給が迅速に行われやすくなり、酸化反応中での発熱体11の温度と発生蒸気量とが極めて良好に維持されやすくなる。保水材として耐塩性の高い吸水性ポリマーを用いると、吸水性と放水性の観点より好ましい。特に電解質の当該含有量が3質量%以上であると、酸化反応前及び特定の塩濃度で高い吸水性を発揮しつつ、酸化反応により塩濃度が上昇すると放水し、酸化反応に適した水のコントロールが行われやすくなる。この理由は、発熱体11と吸水性ポリマーとの間に浸透圧差が生じやすくなり、酸化反応開始時は勿論、その後の酸化反応進行時においても吸水性ポリマーから発熱体11への水分供給がスムーズに行われやすくなるからである。
【0060】
また、酸化反応開始前の状態において、発熱体11の水分含有量と電解質含有量の合計に対する電解質の割合は、5質量%以上、更に10質量%以上が好ましく、吸水性ポリマーへの十分な水分保持という観点からは50%以下、更には40%以下であることが好ましい。より具体的には、発熱体11の水分含有量と電解質濃度の合計に対する電解質の含有率は、5質量%以上50質量%以下、特に10質量%以上40質量%以下であることが好ましい。当該範囲であると、発熱体11の発熱反応がスムーズに進行しやすく、且つ、保水材として吸水性ポリマーを使用した際の、発熱体11への水分供給が迅速に行われやすいことから好ましい。
【0061】
また、発熱体11における、酸化反応開始前における電解質の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、2質量部以上19質量部以下であることがより好ましく、3質量部以上18質量部以下であることが更に好ましい。こうすることで、被酸化性金属の酸化反応の促進を良好に維持させることができる。
【0062】
発熱体11における電解質の含有量を坪量で表すと、5g/m
2以上であることが好ましく、10g/m
2以上であることが更に好ましく、また、80g/m
2以下であることが好ましく、70g/m
2以下であることが更に好ましい。より具体的には、炭素成分の含有量は、坪量で表して、5g/m
2以上80g/m
2以下であることが好ましく、特に10g/m
2以上70g/m
2以下であることが更に好ましい。
【0063】
発熱体11中には水が含まれている。水は被酸化性金属の酸化反応に用いられるほか、被酸化性金属の酸化反応によって生じた熱で発生する水蒸気源、及び発生する熱を適温に冷却する冷媒としても用いられる。本実施形態の発熱具1においては、発熱体11に接するようにして保水材12が配置されており、反応前に発熱体11中に含まれる水の量が、発熱初期の温度特性を制御する観点で重要である。発熱具1中の水は発熱体11と保水材12とが保持している。反応開始前の発熱体11の水の含有量は、発熱体11を基準として9質量%以上であることが好ましい。こうすることで、被酸化性金属の酸化を十分に生じさせることができ、また多量の水蒸気を発生させることが容易となる。反応開始前の発熱体11の水の含有率は、下限値が10質量%以上、更に11質量%以上、殊更に12質量%以上であることが同様の理由から好ましく、上限値は、25質量%以下、特に23質量%以下、更に20質量%以下、殊更に19質量%以下であることが好ましい。具体的には、該水分率は、9質量%以上25質量%以下であることが好ましく、10質量%以上23質量%以下であることが特に好ましく、11質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、12質量%以上19質量%以下であることが更に好ましい。該水分量の上限値については、発熱具1の使用前に予期せぬ外力が加わった場合に、水が発熱具1外へ漏れ出すという不都合が生じる可能性を低くするのに有効である。更に、反応初期は素早く温度が立ち上がり、保水材12から発熱体11への水分供給が迅速に行われるようになり、その後の発熱による発熱体11の過剰な温度上昇を抑制することができる。発熱体11に含まれる水の量は、酸化反応が起こらないよう、窒素環境下で発熱具1を分解し、発熱体11を取り出して乾燥させ、その質量差分値(全体量−乾燥水分量)から測定することができる。なお、保水材12が発熱体11中に存在している場合には、発熱体11の乾燥重量を測定した後に保水材12を発熱体11から抜き出し、保水材12の全質量を測定してその質量を前述の乾燥重量から差し引くことで、発熱体11のネットの質量を測定できる。なお、本明細書において「酸化反応開始前の状態」とは、発熱具1が使用状態に置かれる前の状態を意味する。発熱具は通常、使用前は外界と遮断された密閉容器内に収容され、使用に際しては該密閉容器を解放して発熱具が取り出され、外界に曝される。密閉容器は外界と比べて低い酸素濃度となっていて、酸化反応が進行しないか、使用時と比べて酸化反応が極めて進行しにくい条件となっている。したがって、そのような形態で言えば、「酸化反応開始前の状態」とは密閉容器内に存在する状態、又は密閉容器内から取り出されて通常酸素濃度に暴露された直後の状態であり、全く酸化反応が起きない状態に限定されてはいない。
【0064】
以上の各成分を含む発熱組成物からなる発熱体11は、例えば第一のシート21上に扁平状に層状に塗工されて形成することができる。あるいは第二の基材シート13上に扁平状に層状に塗工されて形成することができる。発熱体11の全体の坪量は200g/m
2以上であることが好ましく、300g/m
2以上であることが更に好ましく、また、2500g/m
2以下であることが好ましく、2000g/m
2以下であることが更に好ましい。より具体的には、発熱体11の全体の坪量は、200g/m
2以上2500g/m
2以下であることが好ましく、特に300g/m
2以上2000g/m
2以下であることが更に好ましい。当該範囲であれば、発熱具1を薄型化でき、且つ十分な発熱時間を得ることが容易となる。
【0065】
図1に示すとおり、発熱体11と第一のシート21との間には、保水材12が層状に形成されている。つまり保水材12は、発熱体11の第一の被覆シート21側の面に配置されている。保水材12は、水の保持が可能な材料から構成されている。本発明において保水材とは、自重に対して5質量倍以上の純水を吸収・保持できるものを指す。そのような材料として特に好ましいものは、保水量が極めて高く、熱や塩濃度の変化で放水する性質を有する材料である吸水性ポリマーである。発熱具1においては、その発熱初期では、発熱体11の含水率をやや高く設定し発熱体11の熱容量を高くすることで、第一の被覆シート21の自由な通気による反応速度の上昇が抑えられる。また、発熱反応によって発生した熱量を発熱体11中の水に与えることで、当該熱量は水の温度上昇(顕熱)に消費される。この初期の発熱では発熱体11内の水が使われるため、発熱体11内の電解質濃度が急激に上昇する。このことに起因して吸水性ポリマー内部の浸透圧が低下し、該吸水性ポリマーが保持していた水が放出される。また吸水性ポリマーは、温度が高くなると水を離しやすくなる性質を持っており、この二つの効果が複合的に働くことで吸水性ポリマーから水が放出される。
【0066】
通常、発熱体11の含水率が上昇すると、発熱が抑制されるとともに電解質濃度が低下することで、吸水性ポリマーからの放水が減少するか、あるいは停止する。しかしながら、発熱具1においては第一の被覆シート21による酸化反応の抑制がされないため、被酸化性金属の酸化反応が十分に進むことから、反応水としての水の消費も早くなる。また、これに伴い、十分な発熱量が得られることから、発熱体11内の水分蒸発速度が速い。すなわち、吸水性ポリマーから発熱体11へと水分が大量に供給されるものの、上述した理由により発熱体11内の含水率が常に低下するため、電解質濃度が高い状態に維持される。その結果、浸透圧差により、吸水性ポリマーからの放水が継続され、発熱体11には過剰な水分量が供給されることになる。このように酸化反応が開始されると、酸化反応に用いられる反応水や蒸気となって発熱具から放出される水によって、発熱具1中の水の量が消費されることで発熱具1全体の塩濃度が上昇する。そして、発熱体1中の水の消費と吸水性ポリマーから発熱体11への水の供給が瞬間的に繰り返される。
【0067】
このように、本実施形態の発熱具1では、水の消費と供給が高頻度で繰り返し発現することで発熱体11内での含水率が維持され、温度が上がり過ぎることなく反応が持続し、過剰に配合した水が効率良く水蒸気に変換される。つまり、正に理想的な発熱状態が得られる。
【0068】
吸水性ポリマーとしては、自重の20倍以上の純水を吸収・保持でき、且つゲル化し得るヒドロゲル材料を用いることが好ましい。吸水性ポリマーとしては例えば粒子の形状のものを用いることができる。粒子の形状は、例えば球状、塊状、ブドウ房状、繊維状等であり得る。粒子の粒径は、1μm以上1000μm以下、特に10μm以上500μm以下であることが好ましい。吸水性ポリマーの具体例としては、デンプン、架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体などが挙げられる。
【0069】
また、吸水性ポリマーは、酸化反応開始前の状態における発熱体11に含まれる電解質の濃度と同じ電解質濃度の水溶液に対して、保持量が自重の3倍以上、特に5倍以上であることが好ましい。この理由は、発熱体11が酸化反応を開始する前において、吸水性ポリマーが十分な水分を保持することで、発熱体11の酸化反応前の水分量を少なく設定すること、及び酸化反応開始後十分な水分を発熱体11に供給することが容易となるからである。
【0070】
また、発熱具1は、酸化反応開始前の状態において、吸水性ポリマーの全水分保持量が、質量で、発熱体中の水分量の1倍以上、特に2倍以上であることが好ましい。
図5に示すように、当該範囲であると、保水材中の水分が発熱体中に十分量、継続的に供給され、酸化反応と過熱抑制の両立が達成しやすくなる。なお、当該値の上限値としては、15倍以下、特に10倍以下であることが、発熱体11中の水分量と電解質濃度を制御しやすい点から好ましい。特に、酸化反応開始前の状態において、吸水性ポリマーの全水分保持量が、質量で、発熱体11中の水分量の1倍以上15倍以下であることが好ましく、2倍以上10倍以下であることが更に好ましい。
【0071】
本実施形態の発熱具1においては、保水材12は発熱体11の外部に配置されていてもよく、あるいは後述する
図9に示すとおり内部に配置されていてもよい。発熱体11と保水材12との水のやりとりで温度をコントロールするという観点から、保水材12は発熱体11と一部以上が接していることが好ましい。発熱体11と保水材12の接触によって互いの間での水のやりとりの応答性が上がるため、保水材12はその一部以上が発熱体11と接していることが好ましい。両者の接触面積が多いほど、水のやりとりの応答性が上がり更に好ましい状態となる。具体的には、保水材12は、発熱体11と直接に接して配置されており、両者間の他の部材は一切介在していないことが好ましい。このような配置形態を採用することで、保水材12が保持している水を直接発熱体11に供給することができるので、水蒸気を多量に発生させることができるとともに、発熱体11の異常発熱を効果的に防止することができる。
【0072】
保水材12は選択する形態や材料により液の吸収特性が異なってくるため、特に含有量の規定はないが、発熱反応前に発熱体11中に含まれる水の量が、所定の範囲になるように保水材12の含有量を調整する。
【0073】
本実施形態の発熱具1において、発熱体11と第二の被覆シート22との間に配置されている第二の基材シート13は、発熱体11の形成時に、該発熱体11を支持するための基材として用いられるものである。第二の基材シート13は必須ではないが、第二の基材シート13を挿入して発熱体11を支持することにより、発熱体11と第二の被覆シート22が非固定状態になり、柔軟性が向上する利点がある。第二の基材シート13は、通気性を有するものであってもよく、あるいは非通気性のものであってもよい。第二の基材シート13としては、第二の被覆シート22と同様のものを用いることができる。具体的には、不織布、紙若しくはフィルム又はこれらの2種以上の積層体を用いることができる。
【0074】
本実施形態の発熱具1においては、保水材12の層は、第一の被覆シート21と直接に接しており、両者間に他の部材は一切介在していない。これに代えて、
図7に示す実施形態のとおり、保水材12の層と第一の被覆シート21との間に第一の基材シート14を配置してもよい。第一の基材シートを配置すると後述のように発熱具1を製造しやすくなる利点がある。
図7に示す実施形態の発熱具1は、保水材12の層と第一の被覆シート21との間に第一の基材シート14が配置されている以外は、
図1に示す実施形態の発熱具1と同様の構成となっている。
【0075】
図7に示す実施形態の発熱具1が備えている第一の基材シート14は、第二の基材シート13と異なり、通気性を有することが必要である。また、第一の基材シート14は、第一の被覆シート21と同様に、酸化反応を実質的に規制しないシートである。これらの観点から、第一の基材シート14は、不織布、紙、穿孔フィルム等の通気性のシートから構成されることが好ましい。なお、第一の基材シート14の通気度は、前述した第一の被覆シート21の通気度と同じ範囲であることが好ましく、特に、第一の被覆シート21と第一の基材シートを合わせて測定した場合の通気度が、前述した第一の被覆シート21の通気度と同じ範囲であることが更に好ましい。
【0076】
以上述べたことより、本発明の発熱具の好ましい実施形態として、以下の構成を有することが挙げられる。
被酸化性金属、電解質、炭素成分、及び水を含み、酸化反応によって発熱する発熱体11と、該発熱体11と少なくとも一部が接触する吸水性ポリマーを含有しており、該発熱体11と該吸水性ポリマーとが、該酸化反応を抑制しない通気性を備える第一の被覆シート21と、第二の被覆シート22との間に挟持された発熱具1であって、
前記酸化反応開始前の状態において、前記発熱体11の含水率が9質量%以上25質量%以下であり、且つ前記電解質の濃度が1質量%以上である、発熱具1。
【0077】
発熱具1は、その厚みが0.5mm以上8mm以下、特に1mm以上6mm以下であることが、薄型で、着用者が装着した際のフィット性が良好で違和感を少なくすることができ、十分な発熱時間となる設計が容易となる点から好ましい。発熱具1が発熱具本体と外装材を備える形態である場合には、発熱具本体の厚みが発熱具1の厚みの10%以上80%以下であることが好ましく、特に20%以上60%以下であることが好ましい。発熱具本体の厚みが当該範囲であって、且つ第一の被覆シート21の肌当接面側に設けられた外装材が不織布である場合には、十分な発熱時間と着用時の風合いとが両立しやすい。発熱具1の厚みは以下の方法で測定する。
【0078】
〔発熱具1の厚みの測定方法〕
発熱具1の測定部位に厚み3mmのアクリルプレートを置き、KEYENCE社製非接触式レーザー変位計(レーザーヘッドLK−G30、変位計LK−GD500)を用い、測定部位の厚みを測定する。厚み測定時に発熱具1に加える圧力は0.5g/cm
2とする。
【0079】
図1に示す実施形態の発熱具1は、次の方法で好適に製造される。まず、第二の基材シート13の一面に、電解質を固体状態にて添加する工程Aと、該電解質を含まず、且つ被酸化性金属、炭素成分、及び水を含む塗料を塗工する工程Bとを含む、発熱体を形成する発熱体形成工程が行われる。電解質を固体状態にて添加する工程は、該電解質を散布する等の手段によって行うことができる。被酸化性金属、炭素成分、及び水を含む塗料を塗工する工程は、例えばダイコータ等の塗布装置を用いて該塗料を塗布することによって行うことができる。工程A及び工程Bの順番は任意に決めることができ、どちらを先に行ってもよい。また、工程A及び工程Bを同時に行ってもよい。
【0080】
以上の工程によって発熱体11が形成された後に、又はその形成前に、又は発熱体成形の2つの工程A及び工程Bの間に、又は発熱体11の形成と同時に、第二の基材シート13における発熱体11の形成面側(又は形成予定面側)に保水材12を供給する保水材供給工程を行う。保水材12の供給は、該保水材12を散布する等の手段によって行うことができる。具体的な手順としては、例えば第二の基材シート13の一面に前記塗料を塗工する工程を行い、その後電解質を固体状態にて添加する工程を行い、その後保水材を供給する工程を行うことができる。
【0081】
然る後に、第二の基材シート13における発熱体11の非形成面側に第二の被覆シート22を配置するとともに、第二の基材シート13における発熱体11の形成面側に第一の被覆シート21を配置し、これらの被覆シート21,22のうち、第二の基材シート13の外縁から延出している延出部21a,22aを互いに接合することで、目的とする発熱具1が得られる。
【0082】
図7に示す実施形態の発熱具1を製造する場合には、上述の発熱体形成工程及び保水材供給工程を行った後に、第二の基材シート13における発熱体11の形成面側に、第二の基材シート13とは別のシートである第一の基材シート14を配置する。第一の基材シート14は、第二の基材シート13と同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。発熱体11を第一の基材シート14と第二の基材シート13で挟むことによって、シートのハンドリング性が向上し製造しやすくなる。然る後に、第二の基材シート13及び第一の基材シート14の外面側各々に、外包シートとなる第二の被覆シート22及び第一の被覆シート21を被覆する工程を行う。その後は、
図1に示す実施形態と同様の工程が行われる。
【0083】
図8には本発明の発熱具1の別の実施形態が示されている。同図に示す実施形態の発熱具1は、
図1に示す実施形態の発熱具1における第二の基材シート13を有していないものである。本実施形態においては、第二の被覆シート22上に、発熱体11が直接形成されており、その上に保水材12の層が直接形成されている。
【0084】
本実施形態の発熱具1を製造するときには、まず、第二の被覆シート22の一面に電解質を固体状態にて添加する工程と、該電解質を含まず、且つ被酸化性金属、炭素成分、及び水を含む塗料を塗工する工程とを、この順若しくは逆の順で行うか、又は両工程を同時に行って、発熱体を形成する発熱体形成工程を行う。この工程によって発熱体11が形成された後に、又は発熱体成形の2つの工程の間に、又はその形成前に、第二の被覆シート22における発熱体11の形成面側(又は形成予定面側)に保水材12を供給する保水材供給工程を行う。然る後に、第二の被覆シート22における発熱体11の形成面側に第一の被覆シート21を配置し、これらの被覆シート21,22のうち、第二の基材シート13の外縁から延出している延出部21a,22aを互いに接合することで、目的とする発熱具1が得られる。
【0085】
図9に示す実施形態の発熱具1は、
図8に示す実施形態において、発熱体11と保水材12とが混合した状態になっているものである。この混合状態においては、保水材12の少なくとも一部が、発熱体11と直接に接している。本実施形態の発熱具1は、例えば第二の基材シート13の一面に前記塗料を塗工する工程を行い、その後保水材を供給する工程を行い、その後電解質を固体状態にて添加する工程を行うことで得られる。
【0086】
別の方法で本実施形態の発熱具1を製造するときには、まず、第二の被覆シート22の一面に電解質を固体状態にて添加する工程と、該電解質を含まず、且つ被酸化性金属、炭素成分、及び水を含む塗料を塗工する工程とを、この順若しくは逆の順で行うか、又は両工程を同時に行って、発熱体を形成する発熱体形成工程を行う。そして、発熱体11の形成と同時に、第二の被覆シート22における発熱体11の形成予定面側に保水材12を供給する保水材供給工程を行う。これによって、発熱体11と保水材12とを混合状態とする。然る後に、第二の被覆シート22における発熱体11の形成面側に第一の被覆シート21を配置し、これらの被覆シート21,22のうち、第二の基材シート13の外縁から延出している延出部21a,22aを互いに接合することで、目的とする発熱具1が得られる。
【0087】
以上の各実施形態の発熱具1は、人の身体の加温に好適に用いられる。その場合、発熱具1における第一のシート21を身体に対向させてもよく、第二のシート22を身体に対向させてもよい。発熱具1から発生する多量の水蒸気による効率的な加温の観点からは、発熱具1における第一のシート21を身体に対向させることが好ましい。この場合、第一のシート21を身体に直接接触させることが効率的な加温の観点から好ましいが、第一のシート21と身体との間に介在物が存在していてもよい。
【0088】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば
図1及び
図8に示す実施形態においては、保水材12の層が、発熱体11における第一の被覆シート21側の面の表面に配置されていたが、これに代えて、保水材12の層を、発熱体11における第二の被覆シート22側の面の表面に配置してもよい。
【0089】
また、
図8及び
図9に示す実施形態においては、発熱体11が、第二の被覆シート22上に扁平状に塗工されて形成されていたが、これに代えて、発熱体11は、第一の被覆シート21上に扁平状に塗工されて形成されてもよい。
【0090】
また、上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、更に、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【0091】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の発熱具及びその製造方法を開示する。
<1>
被酸化性金属、電解質、炭素成分、及び水を含む扁平状の発熱体を、第一の被覆シートと第二の被覆シートとにより被覆した、酸化反応によって発熱する発熱具本体を備えた発熱具であって、
前記第一の被覆シートは前記酸化反応を実質的に規制しない通気性を備えたシートであり、
前記発熱体に少なくとも一部が接するように保水材が備えられており、
以下の(A)ないし(C)の条件を満たす発熱具。
(A)前記発熱体の内部温度と、前記発熱具本体の表面での最高温度との差が10℃以下である。
(B)前記発熱具を人体の皮膚に適用したときの皮膚の最高温度が38℃以上42℃以下である。
(C)前記酸化反応開始から10分間に発生した水蒸気量(mg/cm
2・10min)/発熱体の質量(g/cm
2)の値が50以上250以下である。
【0092】
<2>
前記酸化反応開始前の状態において、前記発熱体の含水率が9質量%以上25質量%以下である<1>に記載の発熱具。
<3>
前記発熱体が、前記第一の被覆シート上又は前記第二の被覆シート上に扁平状に塗工されて形成されている<1>又は<2>に記載の発熱具。
<4>
前記発熱体が基材シートの上に形成されており、前記保水材が、前記発熱体における前記基材シートとの対向面と反対側の面の表面に配置されている<1>ないし<3>のいずれか1つに記載の発熱具。
<5>
通気性のシートが前記保水材の、前記発熱体よりも遠い面側に設けられている、<4>に記載の発熱具。
<6>
前記保水材が吸水性ポリマーである<1>ないし<5>のいずれか1つに記載の発熱具。
<7>
前記第一の被覆シートはその通気度が0秒/(100ml・6.42cm
2)以上1500秒/(100ml・6.42cm
2)以下であり、且つ耐水圧が1500mmH
2O以上である<1>ないし<6>のいずれか1つに記載の発熱具。
【0093】
<8>
前記酸化反応開始前の状態において、前記発熱体の電解質濃度が1質量%以上である、<1>ないし<7>のいずれか1つに記載の発熱具。
<9>
前記酸化反応開始前の状態において、前記発熱体の電解質濃度が20質量%以下である、<1>ないし<8>のいずれか1つに記載の発熱具。
<10>
前記酸化反応開始前の状態において、前記発熱体の電解質濃度が3質量%以上15質量%以下である、<1>ないし<9>のいずれか1つに記載の発熱具。
<11>
前記酸化反応開始前の状態において、前記発熱体の電解質濃度が5質量%以上10質量%以下である、<1>ないし<10>のいずれか1つに記載の発熱具。
<12>
前記酸化反応前の状態において前記発熱体中の電解質量と水分量の合計に対する、該電解質の濃度が、5質量%以上50質量%以下である、前記<1>ないし<11>のいずれか1つに記載の発熱具。
【0094】
<13>
前記酸化反応前の状態において前記発熱体中の電解質量と水分量の合計に対する、該電解質の濃度が、10質量%以上40質量%以下である、前記<1>ないし<12>のいずれか1つに記載の発熱具。
<14>
前記吸水性ポリマーが、自重の20倍以上の純水を保持しうるものである、<6>ないし<13>のいずれ1つに記載の発熱具。
<15>
前記吸水性ポリマーが、酸化反応開始前の状態における前記発熱体に含まれる前記電解質の濃度と同じ電解質濃度の水溶液に対して、20℃で自重の3倍以上の水分を保持しうる、<6>ないし<14>のいずれか1つに記載の発熱具。
<16>
前記酸化反応開始前の状態において、前記吸水性ポリマーの全水分保持量が、質量で、前記発熱体中の水分量の1倍以上15倍以下である<6>ないし<15>のいずれか1つに記載の発熱具。
<17>
前記酸化反応開始前の状態において、前記吸水性ポリマーの全水分保持量が、質量で、前記発熱体中の水分量の2倍以上10倍以下である<6>ないし<16>のいずれか1つに記載の発熱具。
【0095】
<18>
前記発熱具の厚みが0.5mm以上8mm以下である、<1>ないし<17>のいずれか1つに記載の発熱具。
<19>
前記発熱具の厚みが1mm以上6mm以下である、<18>に記載の発熱具。
<20>
前記発熱具本体の、前記第一の被覆シート及び/又は前記第二の被覆シートよりも外側に外装材が設けられている、<1>ないし<19>のいずれか1つに記載の発熱具。
<21>
前記第一の被覆シートが、前記第二の被覆シートよりも着用者の肌当接面側に位置しており、該第一の被覆シートよりも肌当接面側に前記外装材が設けられている、<1>ないし<20>のいずれか1つに記載の発熱具。
<22>
前記外装材が不織布である<20>又は<21>に記載の発熱具。
<23>
前記発熱具における、前記外装材を除いた発熱具本体の厚みが、前記発熱具の厚みの10%以上80%以下である、<20>ないし<23>のいずれか1つに記載の発熱具。
<24>
前記発熱具における、前記外装材を除いた発熱具本体の厚みが、前記発熱具の厚みの20%以上60%以下である、<23>に記載の発熱具。
<25>
被酸化性金属、電解質、炭素成分、及び水を含み、酸化反応によって発熱する発熱体と、該発熱体と少なくとも一部が接触する吸水性ポリマーを含有しており、該発熱体と該吸水性ポリマーとが、該酸化反応を抑制しない通気性を備える第一の被覆シートと、第二の被覆シートとの間に挟持された発熱具であって、
前記酸化反応開始前の状態において、前記発熱体の含水率が9質量%以上25質量%以下であり、且つ前記電解質の濃度が1質量%以上である、発熱具。
<26>
前記吸水性ポリマーが、酸化反応開始前の状態における前記発熱体に含まれる前記電解質の濃度と同じ電解質濃度の水溶液に対して、20℃で自重の3倍以上の水分を保持しうる、<25>に記載の発熱具。
【0096】
<27>
前記発熱体における、前記酸化反応の開始前における電解質の含有量が3質量%以上である<25>又は<26>に記載の発熱具。
<28>
前記発熱体における、前記酸化反応の開始前における電解質の含有量が4質量%以上である<25>ないし<27>のいずれか1つに記載の発熱具。
<29>
前記酸化反応開始前の状態において、前記吸水性ポリマーの全水分保持量が、質量で、前記発熱体中の水分量の1倍以上15倍以下である<25>ないし<28>のいずれか1つに記載の発熱具。
<30>
前記酸化反応開始前の状態において、前記吸水性ポリマーの全水分保持量が、質量で、前記発熱体中の水分量の2倍以上10倍以下である<25>ないし<29>のいずれか1つに記載の発熱具。
<31>
前記発熱体が、前記第一の被覆シート上又は前記第二の被覆シート上に扁平状に塗工されて形成されている<25>ないし<30>のいずれか1つに記載の発熱具。
【0097】
<32>
前記発熱体が基材シートの上に形成されており、前記保水材が、前記発熱体における前記基材シートとの対向面と反対側の面の表面に配置されている<25>ないし<31>のいずれか1つに記載の発熱具。
<33>
通気性のシートが、前記吸水性ポリマーと前記第一の被覆シートとの間に配されている、前記<25>ないし<32>のいずれか1つに記載の発熱具。
<34>
前記第一の被覆シートはその通気度が0秒/(100ml・6.42cm
2)以上1500秒/(100ml・6.42cm
2)以下であり、且つ耐水圧が1500mmH
2O以上である<25>ないし<33>のいずれか1つに記載の発熱具。
<35>
前記吸水性ポリマーが、前記発熱体の前記第一の被覆シート側の面に配置されている、前記<25>ないし<34>のいずれか1つに記載の発熱具
<36>
前記発熱具の厚みが0.5mm以上8mm以下である、<25>ないし<35>のいずれか1つに記載の発熱具。
<37>
前記発熱具の厚みが1mm以上6mm以下である、<36>に記載の発熱具。
<38>
前記発熱具には、前記第一の被覆シート及び/又は前記第二の被覆シートよりも外側に外装材が設けられている、<25>ないし<37>のいずれか1つに記載の発熱具。
【0098】
<39>
前記第一の被覆シートが、前記第二の被覆シートよりも着用者の肌当接面側に位置しており、該第一の被覆シートよりも肌当接面側に前記外装材が設けられている、<25>ないし<38>のいずれか1つに記載の発熱具。
<40>
前記外装材が不織布である<37>又は<39>に記載の発熱具。
<41>
前記発熱具における、前記外装材を除いた発熱具本体の厚みが、前記発熱具の厚みの10%以上80%以下である、<38>ないし<40>のいずれか1つに記載の発熱具。
<42>
前記発熱具における、前記外装材を除いた発熱具本体の厚みが、前記発熱具の厚みの20%以上60%以下である、<41>に記載の発熱具。
<43>
被酸化性金属、電解質、炭素成分、及び水を含む発熱体が、シート上に設けられてなる発熱具の製造方法であって、前記シートの一面に、前記電解質を固体状態にて添加する工程と、該電解質を含まず、且つ前記被酸化性金属、炭素成分、及び水を含む塗料を塗工する工程とを、この順若しくは逆の順で行うか、又は両工程を同時に行って、発熱体を形成する発熱体形成工程を含み、前記発熱体形成工程の前後又は発熱体成形の2つの工程の間又は工程形成と同時に、前記シートにおける該発熱体の形成面側に保水材を供給する保水材供給工程を含み、該発熱体の水分量を9質量%以上25質量%以下とする発熱具の製造方法。
<44>
前記シートの一面に前記塗料を塗工する工程を行い、その後保水材を供給する工程を行い、その後電解質を固体状態にて添加する工程を行う前記<43>に記載の発熱具の製造方法。
<45>
前記シートの一面に前記塗料を塗工する工程を行い、その後電解質を固体状態にて添加する工程を行い、その後保水材を供給する工程を行う<43>又は<44>に記載の発熱具の製造方法。
【0099】
<46>
前記保水材供給工程の後に、前記シートと同一の又は異なる別のシートを前記発熱体の形成面側に重ねる工程を更に含む、<43>ないし<45>のいずれか1つに記載の発熱具の製造方法。
<47>
前記シート及び前記別のシートの外面側各々に、被覆シートとなるシートを被覆する工程を更に含む、<45>に記載の発熱具の製造方法。
【実施例】
【0100】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0101】
〔実施例1ないし5並びに比較例1及び2〕
以下に示す表1の組成の発熱組成物を以下の手順で配合した。増粘剤を水に溶解し、次いで食塩を溶解して水溶液を用意した。そこに、鉄粉を投入して攪拌し、更に活性炭を入れて均一分散するまで十分に攪拌してスラリー状の発熱組成物を得た。実施例1ないし5及び比較例2は発熱組成物の構成は同じであり、それぞれで第一の被覆シートの通気度を変更している。ポリエチレンをラミネートした薄葉紙(以下「PEラミ薄葉紙」とも言う。坪量31g/m
2)に発熱組成物を坪量700g/m
2で塗布して発熱体を形成し、次いで該発熱体の上に、吸水性ポリマーの粒子を坪量20g/m
2で層状に散布し、保水材の層を形成した。その上に、クレープ紙(坪量65g/m
2)を積層した。このようにして得られた積層発熱体を50mm×50mmの大きさにカットした。次いで、63mm×63mmにカットした第一及び第二の被覆シートで積層発熱体を挟み、該被覆シートの四方をヒートシールして発熱具を完成させた。実施例2ないし5及び比較例2においては、第一の被覆シートは、炭酸カルシウムをフィラーとして含むポリエチレンフィルムを二軸延伸して得た微多孔質フィルム製の透湿シートであり、クレープ紙側に配置した。第二の被覆シートは、紙にポリエチレンをラミネートした非通気性のシート(以下「PEラミ紙」とも言う。)であり、PEラミ薄葉紙側に配置した。実施例1並びに比較例1及び3においては、第一の被覆シートは、スパンボンド不織布であり、クレープ紙側に配置した。それぞれの第一の被覆シートの通気度及び透湿度は表2に記載のとおりである。なお、実施例1で使用した第一の被覆シート(ポリプロピレン製スパンボンド不織布:坪量13g/m
2)の耐水圧は87mmH
2O、実施例2ないし5で使用した第一の被覆シートの耐水圧はすべて3000mmH
2Oを超えるものである。
【0102】
【表1】
【0103】
発熱具を構成する材料の詳細は以下のとおりである
鉄:鉄粉RKH2、DOWA IP CREATION(株)製
活性炭:カルボラフィン、日本エンバイロケミカルズ(株)製
増粘剤(キサンタンガム):エコーガムBT、DSP五協フード&ケミカル(株)製
水:水道水
食塩:局方塩化ナトリウム、大塚化学(株)製
リン酸3K:リン酸3カリウム、米山化学工業(株)製
48%KOH:48%水酸化カリウム溶液、関東化学(株)製
吸水性ポリマー:アクアリック CAW−151、(株)日本触媒製
PEラミ薄葉紙:MEGC21、ニットク(株)製
クレープ紙:白クレープ、大昭和紙工産業(株)製
PEラミ紙:KIPE71、伊野紙(株)製
透湿シート:TSFシリーズ、興人フィルム&ケミカルズ(株)製
【0104】
発熱具を製造した後、酸化反応が進行しないようにするために、該発熱具をアルミニウム蒸着フィルムからなるピロー袋に入れて封をした。この状態で24時間経過させ、次いで窒素パージ環境下でピロー袋から発熱具を取り出して、これを分解し、発熱体の含水率を測定した結果(実施例1)、13%であった。なお、実施例1、実施例2及び比較例2は同じ含水率であった。実施例3は14.5%、実施例4及び実施例5は14.1%の含水率であった。比較例1での含水率は7.5%、比較例3では8.0%であった。水分率の測定には、コンパクト水分計(メトラー・トレド製HB43)を用い、100℃で30分加熱乾燥したときに、放出された水分量を測定して発熱体の水分率とした。
【0105】
実施例1ないし5の発熱具において、発熱体の内部温度の最高温度と発熱具の表面での最高温度を測定した。発熱体の内部温度はクレープ紙の内側にK型熱電対を挿入して測定した。発熱具本体の表面の温度は透湿シートの外面に熱電対を接触させて測定した。その結果、最高温度の差は6℃であった。
【0106】
次に、発熱具を人体の皮膚に適用したときの皮膚の温度を測定した。上述した工程で製造された積層発熱体の各面を、エアスルー不織布(PET/PE繊維製、坪量30g/m
2)とニードルパンチ不織布(PP/PE繊維製、坪量80g/m
2)とで挟み、これらの不織布の周縁部をホットメルト接着剤で貼り合わせて、アイマスク形状の発熱具を得た。前記エアスルー不織布は、クレープ紙側に配置した。前記ニードルパンチ不織布は、PEラミ薄葉紙側に配置した。得られた発熱具における前記エアスルー不織布の側を、被験者の目に適用するとともに、被験者の上瞼に熱電対を貼り付け、皮膚表面温度の測定を行った。
【0107】
実施例1ないし5及び比較例2の皮膚表面の温度プロファイルを
図6に、そのときの最高温度を表2に示す。実施例1ないし5では、ほぼ同じ温度プロファイルを描き、最高温度はそれぞれ39.9℃ないし40.9℃であった。また、使用時の温感も心地よかった。一方、比較例2は、通気度が2500秒/(100ml・6.42cm
2)の透湿シートを用いた発熱体であるが、温度プロファイルは遅延し、最高温度は36.4℃であった。比較例2では使用時に十分な温かさを感じられなかった。
【0108】
【表2】
【0109】
比較例1の発熱具は、発熱組成物の配合は実施例1ないし5及び比較例2と同様である。本比較例の発熱具の製造においては、PEラミ薄葉紙(坪量31g/m
2)に発熱組成物を塗布し発熱体を得た。発熱体上に、保水材12としてのポリマーシート(伊野紙(株)製)を積層した。このポリマーシートは、木材パルプ製の紙(20g/m
2)と、吸水性ポリマー(70g/m
2、アクアリックCAW−151)と、木材パルプ製の紙(30g/m
2)とをこの順で積層して一体化したシートである。透湿シートは実施例1と同じものを使用した。保水材12以外の発熱体の構成は実施例1と同様である。本比較例で得られた発熱具においては、発熱体と保水材である吸水性ポリマーとが直接に接していない。
【0110】
比較例1で得られた積層発熱体を用いて、上述した皮膚表面温度の測定に使用したアイマスク形状の発熱具を製造した。この発熱具を用いて皮膚表面温度を測定したところ、最高温度が43.7℃になり、長時間使用時には安全に使用できない可能性が高いものであった。この理由は、酸化反応中において、吸水性ポリマーから発熱体への水分供給が十分ではなかったことに起因すると推察される。
【0111】
〔比較例3〕
特開2007−319359号公報の実施例1を追試した。同公報に記載されている材料と同じ材料をすべて入手することはできず、できる限り同じ材料を使って発熱具を製造した。発熱体の構成は表3に示すとおりである。鉄粉、活性炭、食塩、カルボキシメチルセルロース(以下「CMC」とも言う。)を混合し、その後、水を加えて混練し、粘体状発熱組成物を得た。そして、発熱体を製造するにあたり、基材としての不織布(ニードルパンチ不織布、坪量80g/m
2、耐水圧88mmH
2O)上に、厚さ800μmの版を使用して、前記粘体状発熱組成物を矩形状に塗布し摺り切って積層し、発熱体を形成した。得られた発熱体は5gだった。その上に、保水材を、質量比で、粘体状発熱組成物の5%を散布、積層して保水材の層を形成した。次いで、その上に非通気性の被覆材(紙ラミ)を被覆して貼り合わせ、周縁をカットして発熱具を製造した。同公報の実施例1で用いられている基材2としては、通気度0.1秒/(100ml・6.42cm
2)の不織布を使用した。
【0112】
【表3】
【0113】
得られた発熱具の発熱特性を、次の方法で評価した。被験者の皮膚上に熱電対を貼り付け、その上に、得られた発熱具の基材2側を載置した。そのときの皮膚表面温度の温度プロファイルを
図10に示す。また、最高温度を表2に示す。3回測定を行ったがプロファイルにはばらつきがあり、3分前後で温度が40℃に達し、最高温度が45℃程度にまで上昇した。15分使用後には、皮膚に発赤が確認された。この原因としては、初期水分量が低過ぎて酸化反応初期の温度が高くなり過ぎ、しかも、吸水性ポリマーの性能及び発熱体中の塩濃度との関係から、酸化反応中に発熱体への十分な水分供給ができなかったため、温度上昇が抑制できなかったことが推察される。