(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記経路分岐部は、円環状の環状部と、前記環状部の内側に収納されるOリングと、前記環状部の内側に前記Oリングを介して組み入れられるチャックリングと、前記環状部を外側から覆い、前記第Oリングと前記チャックリングとを収納、かつ保持するように嵌合するナットとを備え、前記第1の垂直配管部を前記環状部に差し込み、前記ナットにより締め付けることで固定される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエア配管システム。
【背景技術】
【0002】
自動車工場、食品工場、半導体工場等の種々の工場では、コンプレッサで圧縮された圧縮エアが、配管を経由して作業現場のエアガン等のエア工具や、エアシリンダー等のエア駆動源を組み込まれたエア装置に供給される。このような圧縮エアの供給経路はエア配管システムと称され、またエア配管システムを形成する配管は、一般的にエア配管と称される。エア配管は、主に、鉄製の鋼管、樹脂製の樹脂管、樹脂層と金属層とを重ねた多層管(非特許文献1を参照)等に分類される。
【0003】
エア配管システムの圧縮エアの供給経路は、エア配管に加え、配管と配管とを接続する継手とから構成される。エア配管システムは、適用される工場の広さや他の設備等を考慮して敷設経路を設計され、エア配管を所望の長さ、形状に形成し、所望の経路を形成するように継手により配管と配管とを接続して敷設される。また、工場内に敷設されたエア配管システムは、エア工具やエア装置に圧縮エアを供給するために、経路の途中に圧縮エアを取り出すエア取出口が形成される。
【0004】
ところで、エア配管システムの経路を流れる圧縮エアには、結露等で生じた水分が含まれており、これが圧縮エアと共にエア工具やエア装置に流出すると、エア工具やエア装置が故障したり、エア工具を作用させるワークに悪影響を及ぼすといった、エア配管システム特有の課題があった。したがって、エア取出口は、エア配管内の水分がエア工具に流出しないように、種々の工夫がされている。
【0005】
水分を流出させない工夫として、例えば、鋼管による従来のエア配管システムでは、配管システムの水平方向に延びる主幹配管路から、上方に立ち上がるように経路を分岐させ、再び下方に立ち下がるように経路を形成した逆U字形状配管路を用いたエア取出口(
図8を参照)を設けられたエア配管システムがある。このエア取出口では、上方に立ち上がるように経路を分岐させることにより、水平方向に延びる主幹配管路の底側に溜まる水分をエア取出口に流出させることなく、エアのみを取り出すことができる。
【0006】
また、例えば、非特許文献1に記載の多層管によるエア配管システムでは、エア取出口として、特殊構造のエア取出用チーズが利用されている(
図9を参照)。このエア取出用チーズは、水平方向に延びる主幹配管路の途中に設けられ、水平方向の一次側と二次側とを連通する主要流路を形成され、さらに、当該主要流路の途中に流路を分岐して圧縮エアを分配する分岐流路を形成されている。
【0007】
このエア取出用チーズでは、分岐流路として、分岐側から主要流路の途中まで延びる分岐管が設けられている。これにより、分岐側を下にしてエア配管に取り付けた場合であっても、分岐管が主要流路内で主要流路の底部を超えて立ち上がるようになるので、水平方向に延びる主要流路の底部に溜まる水分をエア取出口に流出させることはなく、エアのみを取り出すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の鋼管によるエア配管システムは、
図8に示すように、経路分岐部および逆U字配管路の製作にT字形状の継手およびL字形状の継手が利用される。これら継手の接続口には、雌ねじが切られており、接続される配管の端部に雄ねじを切り、ねじ込み構造により配管を結合される。この結合では、封止用のシールテープを配管の雄ねじに巻き、継手に配管を適切な部分までねじ込むことでエア漏れが防止される。
【0010】
したがって、エア取出口の施工には、配管に対してねじ切り加工が施される。配管のねじ切り加工では、大型の装置または職人的な技能が必要となり、施工が煩雑となっていた。また、ねじ込み構造による結合では、配管を継手にどこまでねじ込むかのねじ込み量と、配管を継手にねじ込む角度とが、同時に確定されなければならない。
【0011】
仮に、配管をねじ込みすぎて、ねじ込みを戻すとシールテープが封止効果を失ってしまう。したがって、この場合は、シールテープの交換が必要となり、配管を継手から取り外して、再度、ねじ込み作業をやり直す必要があった。このように、ねじ込み構造による結合では、施工が煩雑となっていた。
【0012】
さらに、エア取出口からエア装置にエアを供給する場合は、エア装置のエア供給口に逆U字配管路の下端が接続されることになるため、分岐経路部から、位置を固定されているエア装置のエア供給口まで、正確な寸法、角度で逆U字配管路を製作し、逆U字配管路の端部をエア供給口まで正確に先導する必要があった。しかし、そのような逆U字配管路をねじ込み構造により製作することは、非常に困難な作業であった。
【0013】
よって、従来の鋼管によるエア配管システムでは、逆U字形状配管路の製作、および、逆U字配管路を経路分岐部に接続する位置決め、角度決めの点からエア取出口の施工が迂遠であった。
【0014】
また、多層管による配管システムは、エア取出用チーズにより容易にエア取出口を形成することができるが、エア取出口の専用品であるエア取出用チーズは、構造が複雑で、かつ高価であった。さらに、エア取出用チーズは継手内の経路に突出する分岐管を設けるため、分岐管の口径が配管の口径に対して小さくなり、所望の流量のエアが取り出せないことがあった。また、主要流路の底部を超えて突出する分岐管の開口に達するほど、水分量が多い場合には、分岐流路に水分が流出してしまうことがあった。
【0015】
本発明は、これら問題を解決すべくなされたもので、専用品を用いることなく、構造が簡易なエア取出口を備え、かつ施工が容易なエア配管システムを提供し、または施工することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明にかかる一のエア配管システムは、水平方向に延び、圧縮エアを供給するための主幹配管路と、前記主幹配管路から圧縮エアを取り出すためのエア取出口とを備える。前記エア取出口は、前記主幹配管路の途中経路に設けられ、水平方向から上方に経路を分岐する経路分岐部と、前記経路分岐部に一端を連結された逆U字形状配管路とを備える。前記逆U字配管路は、一本のエア配管を折り曲げ加工することによりU字形状に形成されており、前記経路分岐部は、はめ込み構造により前記逆U字形状配管路を連結されていることを特徴とする。
【0017】
このエア配管システムによれば、逆U字配管路が、経路分岐部に、はめ込み構造により連結されているため、エア取出口となる逆U字配管路を主幹配管路に容易に接続できる。これにより、従来の鋼管の接続に用いられていたねじ込み構造に比較して、配管のねじ切りが不要、かつ逆U字配管路の取り付け角度の調整が容易になり、複雑であった逆U字配管路を取り付ける作業が非常に容易になる。
【0018】
また、このエア配管システムによれば、逆U字配管路が折り曲げ加工により一本のエア配管から形成されているため、逆U字配管路の製作も容易で、従来の鋼管における逆U字配管路のねじ込み構造による製作に比較して、配管のねじ切りが不要、かつ逆U字配管路の各配管部の方向決めが容易になり、複雑であった逆U字配管路の製作が非常に容易になる。
【0019】
さらに、このエア配管システムによれば、逆U字配管路が折り曲げ加工により一本のエア配管から製作されているため、逆U字配管路の経路変更部をエルボ(L字形状の継手)で形成していた従来の鋼管の逆U字配管路に比較して、継手を用いる必要がなく、圧力損失およびエア漏れリスクが軽減される。
【0020】
前記一の配管システムの前記一本のエア配管は樹脂層と金属層とを含む多層管であることが望ましい。この配管によれば、樹脂層だけの樹脂管では、剛性が低いものは所望の形状で状態を保持できなかったり、また弾性が高過ぎるものは反発力により所望の形状で固定できなかったのに対し、金属層を含む多層管であれば、金属層の塑性変形により所望の形状で配管を固定でき、かつ樹脂層が配管の強度を補強する。これにより、所望の形状の逆U字配管路を容易に製作できる。
【0021】
また、前記一の配管システムの前記多層管は、内側から樹脂層、金属層、樹脂層からなる三層管であることが望ましい。この配管によれば、金属層の塑性変形により所望の形状で固定され、かつ内側および外側の樹脂層が配管の強度を補強する。さらに、内側層が樹脂層であるため、エア配管システムのエアに含まれる水分による腐食等も防止できる。
【0022】
本発明にかかる他の配管システムは、第1の水平方向に延び、圧縮エアを供給するための主幹配管路と、前記主幹配管路から圧縮エアを取り出すためのエア取出口とを備える。前記エア取出口は、前記主幹配管路の途中経路に設けられ、第1の水平方向から上方に経路を分岐する経路分岐部と、前記経路分岐部に連結され上方に延び、垂直方向に経路を形成する第1の垂直配管部と、前記第1の垂直配管部の終端から、第1の水平方向に交差する第2の水平方向に経路を変更する第1の経路変更部と、前記第1の経路変更部から第2の水平方向に延び、第2の水平方向に経路を形成する水平配管部と、前記水平配管部の終端から、下方に経路を変更する第2の経路変更部と、前記第2の経路変更部から下方に延び、垂直方向に経路を形成する第2の垂直配管部とを備える。前記経路分岐部は、はめ込み構造により第1垂直配管部が連結されている。
【0023】
このエア配管システムによれば、第1の垂直配管部、第1の経路変更部、水平配管部、第2の経路変更部、および第2の垂直配管部から形成される逆U字配管路が、主幹配管路の経路分岐部に、はめ込み構造により連結されている。はめ込み構造は連結が容易であるため、従来の鋼管で必要となっていた逆U字配管路のねじ込み構造による連結に比較して、配管のねじ切りが不要、かつ逆U字配管路の取り付け角度の調整が容易になり、複雑であった逆U字配管路を取り付ける作業が非常に容易になる。
【0024】
前記他のエア配管システムの前記第1の経路変更部は、はめ込み構造により第1の垂直配管部と水平配管部とに連結されていてもよい。このエア配管システムによれば、従来の鋼管で必要となっていたねじ込み構造によるエア取出口の接続に比較して、配管のねじ切りが不要になり、かつ逆U字配管路の配管部の連結における角度の調整が容易になり、複雑であった逆U字配管路の製作が容易になる。
【0025】
また、はめ込み構造により配管と配管とが接続されるため、ねじ切り加工のために第1の垂直配管部および水平配管部の長さ制限がなくなり、専用の配管を切り出すことなく、エア配管システムの他の部分を形成した配管の余りの配管を使用することができる。
【0026】
すなわち、従来の鋼管の逆U字配管路では、鋼管のねじ切りに大型の装置が必要で、大型装置に適応させるべく、ある程度の長さの第1の垂直配管部および水平配管部が必要であった。しかし、このエア配管システムでは、はめ込み構造で逆U字配管路の配管同士を連結するため、ねじ切りが必要なく、エア取出口の製作に余りの配管を使用でき、配管を無駄にすることなく、エア配管システムを効率よく製作できる。
【0027】
前記他のエア配管システムでは、はめ込み構造により、水平配管部と第2の垂直配管部とに連結されていてもよい。このエア配管システムによれば、従来の鋼管で必要となっていたねじ込み構造によるエア取出口の接続に比較して、配管のねじ切りが不要になり、かつ逆U字配管路の配管部の連結における角度の調整が容易になり、複雑であった逆U字配管路の製作が容易になる。
【0028】
また、はめ込み構造により配管と配管とが接続されるため、ねじ切り加工のために水平配管部および第2の垂直配管部の長さ制限がなくなり、専用の配管を切り出すことなく、エア配管システムの他の部分を形成した配管の余りの配管を使用することができる。
【0029】
すなわち、従来の鋼管の逆U字配管路では、鋼管のねじ切りに大型の装置が必要で、大型装置に適応させるべく、ある程度の長さの水平配管部および第2の垂直配管部が必要であった。しかし、このエア配管システムでは、はめ込み構造で逆U字配管路の配管同士を接続するため、ねじ切りが必要なく、エア取出口の製作に余りの配管を使用でき、配管を無駄にすることなく、エア配管システムを効率よく製作できる。
【0030】
前記他の配管システムの前記第1および第2の経路変更部の少なくともいずれか一方は、配管を曲げ加工することにより形成されていてもよい。これにより、継手を減らすことができるため、エア取出口の施工が容易になり、かつエア漏れのリスクも軽減される。
【0031】
本発明にかかる一または他のエア配管システムは、前記逆U字配管路の前記経路分岐部と反対側の端部を、位置を固定されたエア供給口に連結されていてもよい。固定されたエア供給口に逆U字配管路の端部を連結するためには、正確な逆U字配管路の製作および先導が必要になる。従来のねじ込み構造により正確な逆U字配管路を製作することは極めて困難であったが、はめ込み構造による連結であれば、正確な逆U字配管路を容易に製作でき、かつ端部をエア供給口まで正確に先導できる。
【0032】
本発明にかかるエア配管システムの施工方法は、圧縮空気を供給するべく、第1の水平方向に延び圧縮空気の経路を形成する主幹配管路に、上方に経路を分岐する経路分岐部を形成する第1の工程と、上方に延びる第1の垂直配管部、前記第1の垂直配管部の終端から第1の水平方向に直交する第2の水平方向に経路を変更する第1の経路変更部、前記第1の経路変更部から第2の水平方向に延びる水平配管部、前記水平配管部の終端から下方に経路を変更する第2の経路変更部、および前記第2の経路変更部から前記主幹配管路の水平位置を超えて下方に延びる第2の垂直配管部からなる逆U字配管経路を製作する第2の工程と、前記逆U字配管路の前記第1の垂直経路の始端を前記経路分岐部に連結する第3の工程とを含む。前記第1の垂直配管部は、前記経路分岐部にはめ込み構造により連結される。
【0033】
従来の鋼管によるエア配管システムでは、エア取出口を施工する際に、逆U字配管路を形成してから主幹配管路に接続するには、第2の水垂直配管部が主幹配管路の水平位置を超えて延びる場合に、ねじ込み構造により逆U字配管路を回転させることができず、経路分岐部への連結は不可能であった。また、エア配管システムは天井等に敷設される場合に、高所作業で多数の継手で順に逆U字配管路を製作することは困難であった。しかし、この施工方法では、エア取出口となる逆U字配管路を形成した後に、回転させることなく、主幹配管路の経路分岐部に逆U字配管を連結できるため、エア取出口の施工が非常に簡易になる。
【0034】
前記エア配管システムの施工方法の前記第1の工程は、前記主幹配管路を切断する第1のステップと、切断された前記主幹配管路の間に前記経路分岐部の第1の水平方向に連通する一次側および二次側のそれぞれの接続口に、前記主幹配管路の切断された端部をはめ込み構造により結合する第2のステップとを含んでいてもよい。このエア配管システムの施工方法によれば、配管システムを施工した後、追加でエア取出口を作成できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、専用品を用いることなく、簡易な構造のエア取出口を容易に取り付けることのできるエア配管システムを提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0038】
先ず、本発明の第1の実施の形態にかかる圧縮エアを供給するための配管システム(以下、「エア配管システム」という。)100について説明する。エア配管システム100は、
図1に示すように、複数の配管と、配管と配管とを接続するための直線形状、T字形状、L字形状等の各種継手とを備え、無限ループ状に形成されている。エア配管システム100に用いられる配管はエア配管101と称される。また、T字形状の継手はチーズ102、L字形状の継手はエルボ103と称される。
【0039】
エア配管システム100は、吊バンド104により天井に吊るされている。また、エア配管システム100は、概略、水平面を成すループ状に形成されているが、他の設備と交差するような場合は、折り曲げにより配管を湾曲させ、他の設備を避けるように敷設されている。エア配管システム100は、圧縮エアの供給源であるコンプレッサ(図示しない)にバルブ105を介して接続されている。したがって、バルブ105を開くことで、コンプレッサからエア配管システムに圧縮エアが供給される。
【0040】
エア配管システムに用いられるエア配管101は、内側から、第1の樹脂層101a、金属層101b、第2の樹脂層101cの3層からなる筒状に構成されている(
図5のエア配管101の一部拡大図を参照)。エア配管101は、折り曲げ加工が可能で、かつ、金属層101bが塑性変形することにより、曲げ状態を維持される。さらに、エア配管101は、第1および第2の樹脂層101a,101cが設けられていることにより、適切な剛性が確保される。
【0041】
エア配管101は、従来よく知られた折り曲げ装置(図示しない)により折り曲げ加工をすることができる。しかし、本実施の形態にかかるエア配管101は、樹脂層101a,101c、金属層101bの厚さを適正に選択されており、折り曲げ装置をもちいることなく、手作業でも折り曲げ加工できる。
【0042】
エア配管システム100は、エアガン、エアドリル、エアサンダー等のエア工具、または、エアシリンダー、エアポンプ等のエア駆動源を備えるエア装置に圧縮エアを供給することを目的としており、本実施の形態では、エア工具として、エアガン106が例示されている。エアガン106は、コイル型のエアホース107を介して、吊り下げられた状態でエア取出口120,920に接続されている。しかし、エア取出口は、エア装置の固定されたエア供給口に接続されていてもよい。
【0043】
これにより、圧縮エアが、コンプレッサからエア配管システム100を通してエアガン106に供給される。エア配管システム100は、水平方向に直線状に延びる複数の主幹配管路110を備え、各主幹配管路110の一部にエア取出口120(例えば、
図1のF2)またはエア取出口920(例えば、
図1のF9)が形成されている。
【0044】
エア取出口920は、多層管によるエア配管システムの専用品であるエア取出用チーズ(以下、「メスチーズ」という。)922から構成される。メスチーズ922は、
図9に示すように、主幹配管路110の途中に接続し、主幹配管路110に連通する主要流路部922aと、主要流路部922aの経路を下方に分岐し、かつ主要流路部922aの底部より上方に突出する分岐管922bとを備える。
【0045】
これにより、主要流路部922aの底部に水分が溜まっていても、水分が分岐管922bに流出することはなく、メスチーズ922に接続してエアを供給されるエア工具106に水分が流出することはない。しかし、メスチーズ922は、多層管の専用品であり、構造が複雑かつ高価であった。
【0046】
メスチーズ922から構成されるエア取出口920に対して、エア取出口120は、
図2に示すように、主幹配管路110の経路を分岐する経路分岐部121と、経路分岐部121に結合された逆U字配管路122とを備える。
【0047】
エア取出口120の経路分岐部121は、主幹配管路110の底部に溜まった水分をエア取出口120の下流側に設けられるエア工具に流出させないように、主幹配管路110の水平方向(
図2のX方向)の経路を上方(
図2のZ方向)に分岐するように取り付けられている。経路分岐部121は、チーズ102であり、水平方向に延びる主幹配管路110の途中経路に設けられている。
【0048】
チーズ102は、
図3に示すように、直線状に延びる主要流路102Aと、主要流路102Aを分岐した分岐流路102Bとを形成する(
図3(C)を参照)。チーズ102は、分岐流路102Bが水平方向(
図2のX方向)に対して上方(
図2のZ方向)に向くように、主幹配管路110に連結されている。
【0049】
チーズ102は、合成樹脂から形成され、主要流路102Aの一次側、二次側および分岐流路102Bの終端に、エア配管101を接続される接続口20を備える。チーズ102の各接続口20は、主幹配管路110と略同程度の口径で形成されている。
【0050】
チーズ102の各接続口20は、チーズ102本体に形成された円環状の環状部20aと、環状部20aの内側に収納されるOリング20bと、環状部20aの内側にOリング20bを介して組み入れられるチャックリング20cと、環状部20aを外側から覆い、Oリング20bとチャックリング20cを収納、かつ保持するように嵌合するナット20dとを備える(
図3(D)を参照)。
【0051】
Oリング20bとチャックリング20cは同径の円環状に形成されており、環状部20aは、Oリング20b、チャックリング20cと同径の第1の段部20fを内部に有する。これにより、接続口20の組立では、Oリング20bが環状部20aに収容され、第1の段部20fに係着し、外側からチャックリング20cが組み入れられて、ナット20dが嵌合する(
図3(C)を参照)。
【0052】
ナット20dは円環状に形成されており、内周側面に雌ねじが切られている。これに対応して、環状部20aは、外周側面に雄ねじが切られている。ナット20dは、ナット20dの雌ねじを環状部20aの雄ねじに螺合することにより、環状部20aに嵌合する。
【0053】
チャックリング20cは、ナット20dの内周面に当接するテーパー面を有する複数の爪部20eを有し、ナット20dが環状部20aに螺合して嵌合することにより、テーパー面がナット20dの内周面に当接しながら、複数爪部20eが内側に絞り込まれる(
図3(D)を参照)。したがって、ナット20dが環状部20aに螺合して嵌合することにより、チャックリング20cの複数の爪部20eが縮径する。
【0054】
チーズ102にエア配管101が結合される際には、ナット20dの螺合が緩められた状態で、エア配管101は、環状のナット20d、チャックリング20cおよびOリング20bを通され、環状部20aの内側に挿入される。第2の段部20gは、エア配管101と同一の内径となるように構成されており、挿入されたエア配管101の端部を当接される。すなわち、エア配管101は、第2の段部20gに当接するまで環状部20aに挿入される。
【0055】
エア配管101が環状部20aに挿入された状態で、ナット20dが環状部20aに螺合される。これにより、チャックリング20cは、爪部20eが縮径することにより、エア配管101を把持する。チャックリング20cが、エア配管101を把持した状態で、ナット20dと環状部20aの第1の段部20fとの間にOリングを介して固定されることにより、エア配管101が接続口20にはめ込み構造により結合される。
【0056】
このとき、ナット20dが環状部20aに螺合して嵌め込まれることにより、Oリング20bがチャックリング20cを介して第1の段部20fに向けて押圧される。これにより、Оリング111bは、圧潰されてエア配管110に密着し、接続口20が確実にシールされる。
【0057】
このようなはめ込み構造の接続口20として、例えば、特開2015−31342号公報に記載の継手の接続口がある。これにより、エア配管101は、はめ込み構造によりチーズ102に確実に連結される。はめ込み構造による、エア配管101の連結では、配管にねじ切り加工が不要となり、逆U字配管路122の接続が非常に容易になる。ただし、はめ込み構造は、他の構成により実現されてもよい。
【0058】
本実施の形態にかかるエア配管システム100に比較して、従来の鋼管を用いたエア配管システム800では、
図8に示すように、配管801の端部に設けられた雄ねじ部801aと、継手802に設けられた雌ねじ部802aとを螺合させることにより、配管と継手とが連結されていた。すなわち、配管と継手とは、配管に雄ねじを切るねじ切り加工を施し、継手に設けられた雌ねじに螺合させて連結されていた。また、この連結では、配管801の雄ねじ部801aにシールテープを巻くことで、封止がされていた。
【0059】
したがって、逆U字配管路822は、T字形状の継手であるチーズ802にねじ込み構造により連結されていた。よって、例えば、逆U字配管路を所望の角度(
図8のθ方向の角度)で取り付けられないことがあった。また、逆U字配管路822は、L字形状の継手であるエルボ803に配管801をねじ込み構造により連結して製作されていた。よって、例えば、逆U字配管路822の対向する配管801がねじれの関係(
図8のδ方向の角度がずれた関係)となることがあった。
【0060】
特に、ねじ込み構造による連結は、配管のねじ込み量と、挿入された配管と継手との角度を同時に決定する必要があり、継手の角度が行き過ぎた状態まで配管をねじ込んでしまった場合には、ねじ込みを戻す必要がある。しかし、ねじ込みを戻すとシールテープが封止効果を失ってしまい、配管から継手を取り外し、シールテープを交換しての作業のやり直しが発生する。すなわち、ねじ込みを戻すことでシールテープは封止効果を失うため、継手と配管との連結角度の微調整ができず、継手を一度取り外す必要がある。よって、ねじ込み作業による連結は極めて複雑な作業となっていた。
【0061】
これに対して、本実施の形態にかかるエア配管システム100では、配管のねじ切りが不要、かつ逆U字配管路122の方向決め(
図2のθ方向の位置決め)、逆U字配管822の製作が簡易になり、複雑であったエア取出口120の施工が非常に容易になる。
【0062】
再び
図2を参照するに、第1の実施の形態における逆U字配管路122は、経路分岐部121から上方に延び、垂直方向に経路を形成する第1の垂直配管部122aと、第1の垂直配管部122aの終端から水平方向に経路を変更する第1の経路変更部122bと、第1の経路変更部122bから水平方向に延び、水平方向に経路を形成する水平配管部122cと、水平配管部122cの終端から下方に経路を変更する第2の経路変更部122dと、第2の経路変更部122dから下方に延び、垂直方向に経路を形成する第2の垂直配管部122eとを備える。第2の垂直配管部122eは、第1の垂直配管部122aの下端を超える位置まで、その下端が延び、エアホース107に接続されている。エア取出口がエア装置にエアを取り出す場合、第2の垂直配管部122eの端部、すなわち逆U字配管路122の端部は、エア装置のエア供給口に連結できるところまで、下方に延びていてもよい。
【0063】
逆U字配管路122の第1および第2の経路変更部122b,122dは、はめ込み構造のエルボ103から構成され、略90度に流路を変更する。エルボ103は、
図4に示すように、1次側の流路の端部と2次側の流路の端部とに、先に説明したチーズ102と同様のはめ込み構造の接続口30を備える。
【0064】
接続口30は、接続口20と同様に、エルボ103本体に形成された円環状の環状部30aと、環状部30aの内側に収納されるOリング30bと、環状部30aの内側にOリング30bを介して組み入れられるチャックリング30cと、環状部30aを外側から覆い、Oリング30bとチャックリング30cを収納、かつ保持するように嵌合するナット30dとを備える(
図4(D)を参照)。接続口30は、接続口20と同様の構成であり、詳細な説明は省略する。エルボ103は、接続口30により、エア配管101をはめ込み構造により結合できる。
【0065】
従来の鋼管を用いたエア配管システムでは、逆U字配管路822は、ねじ込み構造によりエルボ803に連結されていた(
図8参照)。これに比較して、本実施の形態にかかるエア配管システム100の逆U字配管路122では、配管のねじ切りが不要、かつ逆U字配管路122の各配管部の方向決め(
図2のθ方向およびδ方向の角度決め)が容易になり、複雑であった逆U字配管路122の製作が非常に容易になる。
【0066】
[第1のエア配管システムの施工方法]
【0067】
次に、
図5を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるエア配管システム100の施工方法(ST1)について説明する。施工方法(ST1)は、主幹配管路110に経路分岐部121を形成する第1の工程(ST1−1)と、逆U字配管路122を製作する第2の工程(ST1−2)と、経路分岐部121に逆U字配管路122を連結する第3の工程(ST1−3)とを含む。
【0068】
第1の工程(ST1−1)では、主幹配管路110は一次側と二次側に分離されており、それぞれの端部がチーズ102の水平方向の接続口20にはめ込まれることにより、チーズ102が主幹配管路110に連結される。これにより、主幹配管路110の一次側と二次側とが、チーズ102の主要流路102Aにより連通する。また、チーズ102内部で主要流路102Aが分岐流路102Bに分岐されており(
図3(D)参照)、分岐流路102Bの端部の接続口20が上方を向くようにチーズ102が取り付けられる。これにより、経路が上方に向けて分岐される。
【0069】
チーズ102は、はめ込み構造により主幹配管路110に連結されるため、配管をねじ込むために回転させる必要がない。よって、チーズ102は、分岐流路102Bの向きが上方に向くように方向を固定したまま、エア配管101に連結することができる。これにより、チーズの方向決めが容易になる。
【0070】
第1の工程(ST1−1)は、エア配管システム100が敷設された後に主幹配管路110を切断する第1のステップと、切断された前記主幹配管路110の間に前記チーズ102の直線状に連通する一次側および二次側のそれぞれの接続口20に、前記主幹配管路110の切断された端部をはめ込み構造により結合する第2のステップとを含んでいてもよい。そのようにすれば、エア配管システム100が一度敷設された後に、エア取出口120を追加で取り付けることができる。
【0071】
第2の工程では、第1の垂直配管部122aと、第1の経路変更部122bと、水平配管部122cと、第2の経路変更部122dと、第2の垂直配管部122eとが連結されることにより、逆U字配管路122が製作される。第1および第2の経路変更部122b,122dは、エルボ103により構成されており、接続口30のはめ込み構造により配管が結合される。これにより、エルボ103の方向を固定したまま配管を結合することができるため、逆U字配管路122の製作が非常に容易になる。
【0072】
第3の工程では、第2の工程にて形成された逆U字配管路122の第1の垂直配管部122aの下端部が、第1の工程(ST1−1)にて形成された経路分岐部121のチーズ102に連結される。チーズ102の接続口20は、はめ込み構造により配管を結合できるため、逆U字配管路122を回転させる必要がない。これにより、逆U字配管路122の角度決めが非常に容易になる。
【0073】
本実施の形態において、主幹配管路110の水平位置、すなわち第1の垂直配管部122aの下端の位置を超えて第2の垂直配管部122eの下端が延びている。したがって、チーズ102に接続するために、逆U字配管路122を(
図2のθの方向に)回転させることはできず、ねじ込みによる接続では、逆U字配管路122を形成した後に、経路分岐部121へ連結できない。しかし、はめ込み構造により逆U字配管路122を分岐経路に接続する本実施の形態では、逆U字配管路122を形成した後でも、経路分岐部121に連結することができる。
【0075】
次に、第2の実施の形態にかかるエア配管システム200について説明する。第2の実施の形態にかかるエア配管システム200は、
図6に示すように、第1の実施の形態にかかるエア配管システム100と同様の主幹配管路110と、エア取出口220とを備え、エア取出口220の逆U字配管路222以外の構成は、第1の実施の形態と同様である。したがって、以下の説明では、逆U字配管路222についてのみ詳細に説明する。
【0076】
本発明の第2の実施の形態にかかるエア配管システム200の逆U字配管路222は、一本のエア配管101を折り曲げ加工することにより形成されている。エア配管101は、他のエア配管と同様に、内側から第1の樹脂層101a、金属層101b、第2の樹脂層101cからなる3層の筒状に構成されおり(
図7のエア配管101の拡大図を参照)、折り曲げ加工が可能となるように、各層の厚さを選択されている。
【0077】
逆U字配管路222は、経路分岐部121から上方に延び、垂直方向に経路を形成する第1の垂直配管部222aと、第1の垂直配管部222aの終端から水平方向に経路を変更する第1の経路変更部222bと、第1の経路変更部222bから略水平方向に延び、略水平方向に経路を形成する水平配管部222cと、水平配管部222cの終端から下方に経路を変更する第2の経路変更部222dと、第2の経路変更部222dから下方に延び、垂直方向に経路を形成する第2の垂直配管部222eとを備える。第2の垂直配管部222eは、第1の垂直配管部222aの下端を超える位置まで、その下端が延び、エアホース107に接続されている。
【0078】
本実施の形態にかかるエア配管システム200では、逆U字配管路222が、一本の配管を折り曲げ曲げ加工することにより形成されているため、逆U字配管路222の各部の境界は仮想的となる。しかし、逆U字配管路222は、全体として逆U字の経路が形成されていればよい。また、各配管部は、概ね直線状に延びていればよく、湾曲していてもよい。
【0079】
エア配管システム200では、逆U字配管路222が、一本の配管を折り曲げ曲げ加工することにより形成されているため、継手を用いて逆U字配管路を形成する場合に比較して、エア漏れのリスクおよび圧力損失を軽減することができる。
【0080】
[第2のエア配管システムの施工方法]
【0081】
次に、
図7を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるエア配管システム200の施工方法(ST2)について説明する。本実施の形態にかかるエア配管システム200の施工方法は、主幹配管路110に経路分岐部121を形成する第1の工程(ST2−1)と、逆U字配管路222を製作する第2の工程(ST2−2)と、経路分岐部121に逆U字配管路222を連結する第3の工程(ST2−3)とを含む。
【0082】
第1の工程(ST2−1)と第3の工程(ST2−3)は、第1の実施の形態にかかるエア配管システム100の施工方法の第1の工程(ST1−1)および第3の工程(ST1−3)と、それぞれ、同様の工程である。したがって、第2の実施の形態にかかるエア配管システム200の施工方法の説明では、第2の工程についてのみ詳細に説明する。
【0083】
第2の工程では、一本の配管を折り曲げ加工することにより形成されている。エア配管101は、従来よく知られた配管の折り曲げ装置(図示しない)により折り曲げられる。しかし、本実施の形態にかかるエア配管101は、装置を用いることなく、手作業で折り曲げることもできる。
【0084】
したがって、例えば、手作業で配管を折り曲げることにより、主幹配管路110に経路分岐部121を形成し、直線状の一本のエア配管101を経路分岐部121に連結した後に、一本の配管を折り曲げて逆U字配管路222を製作することもできる。逆U字配管路は、概U字形状に形成されていればよく、他の形状であってもよい。
【0085】
本発明の第1または第2の実施の形態にかかるエア取出口102,202は、エア装置のエア供給口に接続されていてもよい。この場合、逆U字配管路122,222は、主幹管路110に接続された経路分岐部121と反対側の端部をエア供給口に連結される。エア装置は、大型かつ重厚で容易に移動ができず、エア供給口は位置を固定されている。したがって、逆U字配管路の端部をエア供給口に接続するには、正確な逆U字配管路を製作し、かつ端部をエア供給口に正確に先導する必要がある。
【0086】
従来の鋼管によるねじ込み構造の逆U字配管路822は、ねじ込み量の調整、角度決めが難しく、高度な職人的な技能によらなければ、正確な逆U字配管路822の製作およびエア供給口への先導が困難であった。例えば、ねじ込み量の調整を誤って、数ミリの位置ずれがあった場合でも、逆U字配管路の製作または先導の作業をやり直す必要があった。しかし、はめ込み構造による逆U字配管路は、その製作が容易で、かつ端部の先導も容易となる。
【0087】
さらに、チーズ102、エルボ103を用いて製作された逆U字配管経路122,222によれば、チーズ102、エルボ103を連結する角度を容易に調整でき、逆U字配管路122の製作および逆U字配管路の端部をエア装置のエア供給口に先導する作業(例えば、
図2のθまたはδ方向の角度調整)が容易になる。