(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の自動変速機4を搭載した車両の構成を示す説明図である。
【0013】
車両は動力源としてエンジン1を備える。エンジン1の出力回転は、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータ2、前後進切換機構3、自動変速機4、終減速装置6を介して駆動輪へと伝達される。
【0014】
車両には、エンジン1の動力の一部を利用して駆動されるオイルポンプ10と、オイルポンプ10から供給される作動油の圧力を調圧して自動変速機4の各部位に油圧を供給する油圧制御回路11と、油圧制御回路11を制御するコントローラ12とが設けられている。
【0015】
前後進切換機構3は、車両を前進走行させるときに締結されるフォーワードクラッチ(FWD/C)32と、車両を後進走行させるときに締結されるリバースブレーキ(REV/B)34とを備える。FWD/C32とREV/B34とを共に解放した場合は、動力を伝達しないニュートラル状態となる。
【0016】
自動変速機4は、無段変速機構(以下、「バリエータ20」という。)を備える。
【0017】
バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、プーリ21、22の間に掛け回されるVベルト23とを備えるベルト式無段変速機構である。プーリ21、22は、それぞれ固定円錐板と、固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置され固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、可動円錐板の背面に設けられて可動円錐板を軸方向に変位させる油圧シリンダ23a、23bとを備える。油圧シリンダ23a、23bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト23と各プーリ21、22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比vRatioが無段階に変化する。
【0018】
コントローラ12は、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ41の出力信号、自動変速機4の入力回転速度を検出する回転速度センサ42の出力信号、車両速度を検出する車速センサ43の出力信号、セレクトレバー45のレンジ位置を検出するインヒビタスイッチ46の出力信号、ブレーキペダルが踏み込まれていることを検出するブレーキスイッチ47の出力信号などが入力される。セレクトレバー45は、例えば前進走行レンジ(Dレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、後進走行レンジ(Rレンジ)を備える。インヒビタスイッチ46は、これらレンジ位置に対応する信号を出力する。
【0019】
コントローラ12は、入力された信号に基づいて、目標変速比を決定し、目標変速比に自動変速機4の全体の変速比(スルー変速比)が追従するように、予め記録されている変速マップ等を参照して、バリエータ20の変速比を制御するための変速制御信号を生成し、生成した変速制御信号を油圧制御回路11に出力する。
【0020】
油圧制御回路11はコントローラ12からの変速制御信号に基づき、オイルポンプ10で発生した油圧から必要な油圧を調整し、調整した油圧を自動変速機4及びトルクコンバータ2のロックアップクラッチに供給する。これにより、バリエータ20の変速比が変更され、自動変速機4の変速が行われる。また、ロックアップクラッチの締結状態により、トルクコンバータ2がロックアップ状態(スリップロックアップも含む)又はコンバータ状態に制御される。
【0021】
図2は、本実施形態の油圧制御回路11の要部の説明図である。
【0022】
図2では、前後進切換機構3のFWD/C32、REV/B34及びトルクコンバータ2のロックアップクラッチに関わる油圧回路のみが示されている。
【0023】
油圧制御回路11は、オイルポンプ10から供給される作動油の圧力がライン圧として調圧され、ライン圧油路PLに供給される。
【0024】
ライン圧油路PLには第1パイロット弁101が備えられる。第1パイロット弁101は、FWD/C32又はREV/B34を締結状態にするために必要な油圧であるセレクト圧の元圧を供給する。
【0025】
第1パイロット弁101の出力は、油路121を介して、セレクト圧ソレノイド弁131及び第2パイロット弁102へと供給される。
【0026】
セレクト圧ソレノイド弁131は電磁弁131Aを備え、第1パイロット弁101から供給される油圧を調圧して、セレクト圧としてFWD/C32又はREV/B34側に出力する。
【0027】
セレクト圧ソレノイド弁131の出力は、運転者によるセレクトレバー45の動作と機械的又は電気的にリンクしてストロークするマニュアル弁90へと連通する。
【0028】
運転者によるセレクトレバー45の動作により前進走行レンジ(Dレンジ)が選択されると、マニュアル弁90は一方側にストロークし、セレクト圧をFWD/C32に供給する。
【0029】
運転者によるセレクトレバー45の動作により後進走行レンジ(Rレンジ)が選択されると、マニュアル弁90は他方側にストロークし、セレクト圧をスイッチ弁141を介してREV/B34側に供給する。
【0030】
運転者によるセレクトレバー45の動作により非走行レンジ(ニュートラルレンジ(Nレンジ)又はパーキングレンジ(Pレンジ))が選択されると、マニュアル弁90は前進走行レンジと後進走行レンジとの中間位置にストロークし、FWD/C32及びREV/B34に供給されていた油圧がドレンされる。これにより、前後進切換機構30は、トルクを伝達しないニュートラル状態となる。
【0031】
スイッチ弁141は、マニュアル弁90から供給されるセレクト圧を第1油路151を介してREV/B34に供給するか、第1油路151の油圧をリリーフ弁143により所定圧未満となるように制御するか、を切り換える。
【0032】
セレクトレバー45によりRレンジがセレクトされた場合は、マニュアル弁90からスイッチ弁141へとセレクト圧が供給される。セレクト圧がスイッチ弁の切換ポート141Aに供給されることにより、スイッチ弁141は
図2中の右方向に移動し、マニュアル弁90の出力が第1油路151へと連通する。これにより、第1油路151からREV/B34にセレクト圧が供給され、REV/B34が締結状態となる。
【0033】
セレクトレバー45によりDレンジ又は非走行レンジがセレクトされた場合は、マニュアル弁90が切り換えられ、スイッチ弁141にセレクト圧が供給されなくなる。この場合は、スイッチ弁141は、スプリングの作用により
図2中の左方向に移動し、第1油路151とリリーフ弁143とが連通する状態となる。この状態では、後述するように、REV/B34には、リリーフ弁143により設定された油圧(スタンバイ圧)が供給される、又は、REV/B34の油圧がドレンされる。
【0034】
第1パイロット弁101の出力は、油路121を介して、第2パイロット弁102にも供給される。第2パイロット弁102は、トルクコンバータ2のロックアップクラッチを動作させるために必要な油圧の元圧を供給する。
【0035】
第2パイロット弁102の出力は、油路122を介して、スタンバイ圧ソレノイド弁132及びL/Uソレノイド弁201に供給される。
【0036】
L/Uソレノイド弁201は電磁弁201Aを備え、第2パイロット弁102から供給される油圧を制御して、トルクコンバータ2のロックアップクラッチを締結させるT/Cレギュレータ弁202の切り替えポートに出力する。T/Cレギュレータ弁202は、L/Uソレノイド弁201から供給される油圧に基づいて、トルクコンバータ2のロックアップクラッチの締結状態を切り換える。
【0037】
第2パイロット弁102の出力は、油路122を介してスタンバイ圧ソレノイド弁132にも供給される。スタンバイ圧ソレノイド弁132は電磁弁132Aを備え、第2パイロット弁102から供給される油圧を調圧して、排出切換弁142に出力する。
【0038】
排出切換弁142は、スタンバイ圧ソレノイド弁132のから油圧が切換ポート142Aに供給されたときに
図2中の下側に移動して、スタンバイ圧ソレノイド弁132の出力ポートに連通するスタンバイ圧油路153から供給される油圧を、第2油路を介してREV/B34に供給する。スタンバイ圧油路153にはチェック弁144が備えられており、排出切換弁142からスタンバイ圧ソレノイド弁132側への油の流れが規制される。
【0039】
セレクト圧ソレノイド弁131、スタンバイ圧ソレノイド弁132及びL/Uソレノイド弁201の動作は、コントローラ12から伝達される指令信号により行なわれる。
【0040】
次に、以上のように構成された本実施形態の自動変速機4の動作を説明する。
【0041】
自動変速機4は、運転者によるセレクトレバー45のレンジ位置に対応して、Dレンジである場合はFWD/C32を締結すると共にREV/B34を解放して前進走行する。Rレンジである場合はFWD/C32を解放すると共にREV/B34を締結して後進走行する。非走行レンジ(Nレンジ、Pレンジ)である場合は、FWD/C32とREV/B34とを共に解放して、トルクが車輪に伝達されないようにする。
【0042】
このような構成において、後進走行にのみ用いられるREV/B34は、前進走行時における燃費向上のために、解放時にはピストンとクラッチプレートとの間のクリアランスを大きくしてフリクションを低減させることが望ましい。
【0043】
一方で、ピストンとクラッチプレートとの間のクリアランスが大きい場合は、締結状態になるまでのピストンのストロークが大きくなるために、Rレンジがセレクトされてから後進走行となるまでの時間が大きくなり、締結時のショックが大きくなる。これにより運転者に違和感を与える可能性がある。
【0044】
本実施形態では、運転者に違和感を与えることを防止するために、REV/B34を締結状態とするのに先立って、前述のようにスタンバイ圧を供給して、REV/B34のピストンとクラッチとの間のクリアランスを小さくするように構成した。
【0045】
図3は、本実施形態のREV/B34の状態を示す説明図である。
【0046】
REV/B34は、油圧室341、ピストン342、リターンスプリング343、クラッチプレート344、皿バネ345及びリテイナー346を備える。
【0047】
油圧室341は第1油路151及び第2油路152に連通する。油圧室341に油圧が供給されていない状態では、ピストン342はリターンスプリング343により解放側(
図3中左側)に付勢されている(
図3(A))。この状態では、ピストン342とクラッチプレート344とのクリアランスは、所定の間隔A+α[mm](クリアランス大)となる。
【0048】
所定の間隔Aは、後述するようにピストン342とクラッチプレート344とが接触せず、伝達容量を持たない状態(解放状態)、かつ、油圧をさらに上昇させた場合に迅速にトルク容量を持つ状態にできる間隔(クリアランス小)である。そして、REV/B34のクリアランスを大にする場合は、所定の間隔Aよりもさらに大きな間隔(A+α)とする。この間隔(A+α)は、ピストン342とクラッチプレート344との間隔を十分に保ち、ピストン342によるクラッチプレート344の引きずりを防止できるのに十分な間隔である。
【0049】
油圧室341に油圧が供給されると、ピストン342が締結側(
図3中右方向)に移動する。このときの油圧がスタンバイ圧である場合は、リターンスプリング343の付勢力に釣り合った状態で、ピストン342とクラッチプレート344とのクリアランスが所定の間隔A(クリアランス小)となる(
図3(B))。
【0050】
油圧室341に供給される油圧がスタンバイ圧よりも上昇すると、ピストン342が締結側にさらに移動し、ピストン342が皿バネ345を介してクラッチプレート344を押圧する。油圧室341に供給される油圧がスタンバイ圧を超えてセレクト圧となり、ピストン342が皿バネ345の付勢力に抗してクラッチプレート344を完全に押圧すると、REV/B34が締結状態となる(
図3(C))。
【0051】
図4は、本実施形態のコントローラ12が油圧制御回路11に対して実行する制御のフローチャートである。
【0052】
コントローラ12は、
図4に示すフローチャートを所定周期(例えば10ms)で実行する。
【0053】
ステップS10において、コントローラ12は、セレクトレバー45のレンジ位置がRレンジか否かを判定する。
【0054】
レンジ位置がRレンジと判定した場合はステップS20に移行して、コントローラ12は、油圧制御回路11にREV/B34にセレクト圧を供給するように制御して、REV/B34を締結させる。
【0055】
より具体的には、セレクトレバー45によりマニュアル弁90がREV/B34側にセレクトされている状態で、コントローラ12はセレクト圧ソレノイド弁131の電磁弁を制御してセレクト圧を供給する。
【0056】
セレクト圧がスイッチ弁141の切換ポート141Aに供給されると、スイッチ弁141がマニュアル弁90の出力と第1油路151とを連通し、REV/B34にセレクト圧が供給される。第1油路151は第2油路152に連通しており、第2油路152はセレクト圧が排出切換弁142を介してスタンバイ圧油路153に連通するが、チェック弁144により油圧の流れが規制される。このようにしてREV/B34にセレクト圧が供給され、REV/B34が締結される(
図3(C)参照)。
【0057】
レンジ位置がRレンジでない場合は、ステップS30に移行して、コントローラ12は、非走行レンジ(Pレンジ又はNレンジ)であるか否かを判定する。
【0058】
非走行レンジであると判定した場合は、ステップS40に移行して、コントローラ12は、油圧制御回路11に、REV/B34にスタンバイ圧を供給するように制御する。
【0059】
より具体的には、セレクトレバー45により非走行レンジが選択された場合は、マニュアル弁90はFWD/C32及びREV/B34共にドレンとなる。この状態で、スイッチ弁141は、バネの付勢力によりリリーフ弁143と第1油路151とが連通する。コントローラ12はスタンバイ圧ソレノイド弁132の電磁弁を制御して、排出切換弁142の切換ポート142Aに油圧を供給する。
【0060】
これにより、第2油路152とスタンバイ圧油路153とが連通するが、チェック弁144によりスタンバイ圧油路153への流れが規制される。このとき、第2油路152の油圧は第1油路151に連通するリリーフ弁143により所定圧力以下に保たれる。
【0061】
このような仕組みによって、非走行レンジである場合には、REV/B34にはスタンバイ圧ソレノイド弁132及びリリーフ弁143により規定されるスタンバイ圧が供給される。スタンバイ圧は、REV/B34のピストン342がクラッチディスクのリターンスプリングの反力と釣り合う荷重とする。これにより、REV/B34がスタンバイ状態となる(
図3(B)参照)。
【0062】
スタンバイ状態では、この後、セレクト圧が供給された場合に、REV/B34が締結状態となるまでの時間が短縮される。
【0063】
レンジ位置がRレンジでなく、かつ、非走行レンジでない場合、すなわち前進走行レンジ(例えば、Dレンジ)である場合は、ステップS50に移行して、コントローラ12は、車速センサ43の出力信号に基づいて、現在の車速が所定車速よりも低車速であるか否かを判定する。
【0064】
車速が所定車速よりも低車速である場合は、ステップS40に移行して、コントローラ12は、REV/B34にスタンバイ圧を供給する。
【0065】
より具体的には、セレクトレバー45によりDレンジが選択された場合は、マニュアル弁90はREV/B34がドレンとなる。このとき、前述のステップS40と同様に、スイッチ弁141は、バネの付勢力によりリリーフ弁143と第1油路とが連通する。コントローラ12はスタンバイ圧ソレノイド弁132の電磁弁を制御して、排出切換弁142の切り替えポートに油圧を供給する。
【0066】
これにより、REV/B34にはスタンバイ圧ソレノイド弁132及びリリーフ弁143により規定されるスタンバイ圧が供給される。なお、ステップS50における所定車速は、車両が低速で前進している状態でRレンジがセレクトされた場合にREV/B34を締結可能とする速度に設定され、例えば10km/hとする。
【0067】
現在の車速が所定車速以上であると判定した場合は、ステップS60に移行してコントローラ12は、REV/B34を解放状態に制御する。
【0068】
より具体的には、セレクトレバー45によりDレンジが選択された場合は、マニュアル弁90はREV/B34がドレンとなり、前述のステップS40と同様に、スイッチ弁141は、バネの付勢力によりリリーフ弁143と第1油路とが連通する。このとき、コントローラ12はスタンバイ圧ソレノイド弁132の電磁弁を制御して、排出切換弁142に油圧を供給しないように制御する。これにより、排出切換弁142は、バネの付勢力によりドレン側に切り換えられ、REV/B34の油圧がドレンされる。これにより、REV/B34のピストン342がリターンスプリングにより後退し、REV/B34のクラッチプレートが完全に解放される(
図3(A)参照)。
【0069】
この状態では、REV/B34のクラッチクリアランスが十分に確保されるので、引きずりによるフリクションが防止され、燃費が向上する。
【0070】
このように、本実施形態では、コントローラ12が
図3に示す制御を実行することで、Dレンジにおいて所定車速以上で車両が走行している場合は、REV/B34の油圧をドレンしてREV/B34を解放させ、REV/B34の引きずりを防止して燃費を向上させる。
【0071】
一方、非走行レンジ(Pレンジ、Nレンジ)や、Dレンジで低車速で走行している場合は、運転者によりRレンジがセレクトされる可能性があるので、REV/B34にスタンバイ圧を供給して、REV/B34をスタンバイ状態にしておくことで、Rレンジがセレクトされてから後進走行となるまでの時間を短縮でき、締結時のショックを抑制できる。その後Rレンジがセレクトされた場合は、REV/B34にセレクト圧を供給することで、迅速にREV/B34を締結状態とすることができる。
【0072】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0073】
図
5は、本実施形態の油圧制御回路11の要部の説明図である。
【0074】
図
5は、第2実施形態における前後進切換機構3のFWD/C32、REV/B34及びトルクコンバータ2のロックアップクラッチに関わる油圧回路を示す。なお、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0075】
第2実施形態では、排出切換弁142の切換ポート142Aに、L/Uソレノイド弁201から出力されるロックアップ圧が供給されるように構成した。
【0076】
トルクコンバータ2は、エンジン1の駆動力を効率よく伝えて燃費効率を向上させるために、所定車速以上の走行時にはロックアップクラッチを締結する。車両の発進時や停止時にはトルク増幅や振動の抑制を目的としてロックアップを解放する。L/Uソレノイド弁201は、ロックアップクラッチを締結するときに、ロックアップ圧を出力する。ロックアップクラッチの締結は車速により決定され、所定車速は例えば10km/hとする。
【0077】
そこで、第2実施形態では、ロックアップクラッチの締結/解放のタイミングを利用して、REB/V34をスタンバイ状態とするか解放状態とするかを切り換えるように構成した。
【0078】
Dレンジにおいて車速が所定車速以上である場合は、L/Uソレノイド弁201はロックアップ切換圧を出力する。L/Uソレノイド弁201の出力は、排出切換弁142の切換ポート142Aに入力される。切換ポート142Aにロックアップ切換圧が供給された場合は、排出切換弁142は、バネの付勢力に対抗してドレン側に切り換えられ、REV/B34の油圧がドレンされる。これにより、REV/B34のピストン342がリターンスプリングにより後退し、REV/B34のクラッチプレートが完全に解放される。
【0079】
Dレンジにおいて車速が所定車速未満である場合、又は、非走行レンジ(Pレンジ、Nレンジ)でる場合は、L/Uソレノイド弁201はロックアップ圧を出力しない。この場合、排出切換弁142は、バネの付勢力によりスタンバイ圧油路153と第2油路152とが連通する状態に切り換える。
【0080】
この状態では、第2パイロット弁102からの出力が、油路122及びスタンバイ圧油路153を介して第2油路へと供給される。このとき、Dレンジであるので、スイッチ弁141が、リリーフ弁143側に切り換えられ、第2油路に供給される油圧を所定圧力以下に規制する。このようにして、REV/B34には第2パイロット弁102及びリリーフ弁143により規定されるスタンバイ圧が供給される。
【0081】
Rレンジがセレクトされた場合は、セレクトレバー45によりマニュアル弁90がREV/B34側にセレクトされている状態で、コントローラ12はセレクト圧ソレノイド弁131の電磁弁を制御してセレクト圧を供給する。
【0082】
セレクト圧がスイッチ弁141の切換ポート141Aに供給されると、スイッチ弁141がマニュアル弁90の出力と第1油路151とを連通し、REV/B34にセレクト圧が供給される。第1油路151は第2油路152に連通しており、第2油路152はセレクト圧が排出切換弁142を介してスタンバイ圧油路153に連通するが、チェック弁144により油圧の流れが規制される。
【0083】
このように、第2実施形態においても、Dレンジにおいて所定車速以上で車両が走行し、ロックアップクラッチが締結状態である場合は、REV/B34の油圧をドレンしてREV/B34を解放させ、REV/B34の引きずりを防止して燃費を向上させる。
【0084】
一方、非走行レンジ(Pレンジ、Nレンジ)や、Dレンジにおいて低車速で走行している場合は、運転者によりRレンジがセレクトされる可能性があるので、REV/B34にスタンバイ圧を供給して、REV/B34をスタンバイ状態にしておく。これにより、Rレンジがセレクトされてから後進走行となるまでの時間を短縮でき、締結時のショックを抑制できる。
【0085】
以上説明したように、本発明の実施形態は、エンジン1からなる駆動力源からの駆動力を断接する摩擦要素(REV/B34)を有する自動変速機4であって、油圧源としてのオイルポンプ10からの油圧が供給される油圧室341と、油圧室341に供給された油圧を受けてREV/B34を断接するピストン342と、油圧室341に接続され、第1油圧(セレクト圧)を供給する第1油路151と、油圧室341と接続され、第2油圧(スタンバイ圧)を供給する第2油路152と、第1油路151を介して油圧室341に第1油圧を供給可能な第1油圧制御部(セレクト圧ソレノイド弁131、マニュアル弁90、スイッチ弁141)と、第2油路152を介して油圧室341に第1油圧よりも低い第2油圧を供給可能であると共に、第2油路152を介して油圧室341の油圧を排出可能な第2油圧制御部(排出切換弁142、スタンバイ圧ソレノイド弁132)と、を備える。
【0086】
このような構成により、本実施形態は、走行状態に応じて、REV/B34に第1油路151からセレクト圧が供給されるのに先立って、第2油路152からセレクト圧よりも低いスタンバイ圧を供給しておくことで、Rレンジがセレクトされてから後進走行となるまでの時間を短縮でき、締結時のショックを抑制できる。これにより、REV/B34の解放時にピストンとクラッチプレートとの間のクリアランスを大きくすることが可能となり、車両が前進走行するときのフリクションを低減できて燃費を向上することができる。
【0087】
またさらに、REV/B34の油圧室341に対して第1油路151及び第2油路152の二つの油路を設けることで、一つの油圧室341の一つのピストン342によりスタンバイ圧とセレクト圧との二つの状態を制御できるので、部品点数を増加させることがなく、サイズを増加させることがない。この効果は請求項1に対応する。
【0088】
また、本発明の実施形態では、第1油圧制御部は、第2油圧制御部から供給された油圧が第2油圧(スタンバイ圧)を超えた場合に油圧を第2油圧制御部の油圧を排出するリリーフ弁143を備えた。
【0089】
このような構成により、リリーフ弁143のみという簡易な構成によって、第2油路152から供給される油圧をスタンバイ圧に規制することができる。この効果は請求項2に対応する。
【0090】
また、本発明の実施形態では、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータ2が接続され、ロックアップクラッチを締結させる場合に供給されるロックアップ圧を出力するロックアップクラッチ圧制御部(L/Uソレノイド弁201、T/Cレギュレータ弁202)を備え、第2油圧制御部は、ロックアップ圧が供給された場合に、第2油路152を介して油圧室341の油圧を排出する。
【0091】
このような構成により、ロックアップクラッチを締結するとき(車速が所定車速以上)にREV/B34を解放できるので、部品点数を増加させることなく、REV/B34のスタンバイ圧とセレクト圧とを制御することができる。この効果は請求項3に対応する。
【0092】
また、本発明の実施形態では、第2油圧制御部は、油圧室341から第2油路152を介した油圧の流れを規制するチェック弁144を有するので、二つの油路を設けることで、一つの油圧室341の一つのピストン342によりスタンバイ圧とセレクト圧との二つの状態を制御できると共に、第1油路151から油圧が供給され多場合に、第2油路152から油圧が流出することを防止でき、簡易な構成でスタンバイ圧とセレクト圧との二つの状態を制御できる。この効果は請求項4に対応する。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0094】
また、上記実施形態では、バリエータ20としてベルト式無段変速機構を備えているが、バリエータ20は、Vベルト23の代わりにチェーンがプーリ21、22の間に掛け回される無段変速機構であってもよい。あるいは、バリエータ20は、入力ディスクと出力ディスクの間に傾転可能なパワーローラを配置するトロイダル式無段変速機構であってもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、トルクコンバータ2とバリエータ20との間に前後進切換機構3を備える構成としたが、バリエータ20の出力側と終減速装置6との間に前後進切換機構3を備えてもよい。また、前後進切換機構3は、前進用の変速段として1速と2速の2段を有する有段の変速機であってもよい。
【0096】
さらに、上記実施形態では、バリエータ20と副変速機構とを備える無段変速機を例に説明したが、これに限られず、有段の変速機においても同様に適用可能である。