(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂板材の一方側に成形用金型を配置し、前記樹脂板材の他方側から圧力を付与することで、前記成形用金型の形状に倣って前記樹脂板材を所定の製品形状に成形する圧空成形法を用いた樹脂成形品の製造方法であり、
前記樹脂板材を製品形状にする凹状面が形成された賦形部と、前記製品形状を構成する溝部に対応した形状となるように、前記賦形部の一部を壁状に突出させた立面部と、を具備し、前記立面部を前記賦形部の外周縁部まで延在させた成形用金型を用意する工程と、
前記成形用金型の上面に、前記樹脂板材を載置する工程と、
前記樹脂板材に前記圧力を付与することで、前記賦形部の形状に沿って前記樹脂板材を賦形し、前記樹脂板材と前記賦形部との間に存在する気体を、前記立面部を経由して外部に排出する工程と、を具備していることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した圧空成形法を用いて成形品を製造する場合、成形される成形品の形状によっては、意匠面の美観を保ちつつ所定形状に成形することが困難な場合があった。
【0009】
このような課題を、
図10を参照して説明する。
図10(A)は圧空成形に用いられる凸状金型110を示す断面図であり、
図10(B)は圧空成形に用いられる凹状金型120を示す断面図である。
【0010】
図10(A)を参照して、凸状金型110の上面は、成形される製品形状に即した賦形面111が形成されている。凸状金型110を用いて圧空成形を行う際は、凸状金型110の上面に樹脂シートを載置し、上記したように上方から圧力を加える。そのようにすることで、賦形面111の形状に即した成形品113が成形される。凸状金型110を用いて成形した場合は、成形品113の外側面である意匠面112は、凸状金型110の賦形面111に当接しない。従って、成形品113の意匠面112が、凸状金型110の賦形面111に接触しないため、成形品113の意匠面112に傷が付くことが避けられる。
【0011】
また、成形品に溝部114が形成される場合は、凸状金型110にも対応する形状の溝部115が形成される。更に、成形時に於いて、成形品113と賦形面111との間に存在する空気を外側に逃がすために、凸状金型110には、賦形面111から外側まで繋がる空気孔116が形成されている。
【0012】
上記した凸状金型110を用いた圧空成形法で成形品113を成形する場合、溝部114の横方向の幅が狭く且つ縦方向の長さが長くなると、その形状に対応した溝部115を凸状金型110に形成して賦形することが難しくなる場合があった。そのような場合、凹金型を用いた圧空成形法で賦形を行うことが考えられる。
【0013】
図10(B)を参照して、凹状金型120を用いた圧空成形法で成形品123を成形する場合、成形品123の溝部124に対応した形状の立面部125が形成される。これにより、横方向の幅が狭く且つ縦方向の長さが長い溝部124を、圧空成形法で成形することが可能となる。
【0014】
しかし、凹状金型120を使用した場合、その賦形面121は、成形品123の意匠面122に当接するようになる。従って、成形時に成形品123と賦形面121との間に存在する空気を外部に逃がすために、凹状金型120に空気孔126を生成すると、成形品123の意匠面122に空気孔126の跡が残ってしまい、成形品123の意匠面の外観が劣化してしまう恐れがあった。
【0015】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、溝形状を有する成形品を圧空成形法で成形できる成形用金型およびそれを用いた樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、樹脂板材に圧力を付与することで、前記樹脂板材を所定の製品形状に成形する圧空成形法に用いられる成形用金型であり、前記樹脂板材を製品形状に賦形する凹状面が形成された賦形部と、前記製品形状を構成する溝部に対応した形状となるように、前記賦形部の一部を壁状に突出させた立面部と、を具備し、前記立面部を前記賦形部の外周縁部まで延在させ、
更に、前記賦形部よりも外側に形成され、前記立面部と連続し、前記圧力が前記樹脂板材に付与された際に、前記樹脂板材と前記賦形部との間に存在する気体が通過する気体導出部と、を具備することを特徴とする。
【0018】
更に本発明の成形用金型は、前記気体導出部は、前記立面部と連続する連続立面部であることを特徴とする。
【0019】
更に本発明の成形用金型は、前記連続立面部の両側に溝状の導出溝を形成することを特徴とする。
【0020】
更に本発明の成形用金型は、前記気体導出部は、前記立面部と連続する導出溝であることを特徴とする。
【0021】
本発明は、樹脂板材に圧力を付与することで、前記樹脂板材を所定の製品形状に成形する圧空成形法に用いられる成形用金型であり、前記樹脂板材を製品形状に賦形する凹状面が形成された賦形部と、前記製品形状を構成する溝部に対応した形状となるように、前記賦形部の一部を壁状に突出させた立面部と、を具備し、前記立面部を前記賦形部の外周縁部まで延在させ、
前記立面部に、その厚み方向に気体を通過させる気体通過部位を設けることを特徴とする。
【0022】
更に本発明の成形用金型は、前記気体通過部位は、前記立面部を部分的に切り欠いたスリットであることを特徴とする。
【0023】
更に本発明の成形用金型は、前記気体通過部位は、前記立面部を貫通する横穴であることを特徴とする。
【0024】
更に本発明の成形用金型は、前記気体通過部位は、前記立面部の一部を形成する多孔質体であることを特徴とする。
【0025】
本発明は、樹脂板材に圧力を付与することで、前記樹脂板材を所定の製品形状に成形する圧空成形法に用いられる成形用金型であり、前記樹脂板材を製品形状に賦形する凹状面が形成された賦形部と、前記製品形状を構成する溝部に対応した形状となるように、前記賦形部の一部を壁状に突出させた立面部と、を具備し、前記立面部を前記賦形部の外周縁部まで延在させ、
前記賦形部が形成される賦形金型と、前記賦形金型が収納される内部金型と、を更に具備し、前記立面部に沿って流動する空気が外部に排出される経路が、前記賦形金型と前記内部金型との間に形成されることを特徴とする。
【0026】
本発明は、樹脂板材の一方側に成形用金型を配置し、前記樹脂板材の他方側から圧力を付与することで、前記成形用金型の形状に倣って前記樹脂板材を所定の製品形状に成形する圧空成形法を用いた樹脂成形品の製造方法であり、前記樹脂板材を製品形状にする凹状面が形成された賦形部と、前記製品形状を構成する溝部に対応した形状となるように、前記賦形部の一部を壁状に突出させた立面部と、を具備し、前記立面部を前記賦形部の外周縁部まで延在させた成形用金型を用意する工程と、前記成形用金型の上面に、前記樹脂板材を載置する工程と、前記樹脂板材に圧力を付与することで、前記賦形部の形状に沿って前記樹脂板材を賦形し、前記樹脂板材と前記賦形部との間に存在する気体を、前記立面部を経由して外部に排出する工程と、を具備していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、樹脂板材に圧力を付与することで、前記樹脂板材を所定の製品形状に成形する圧空成形法に用いられる成形用金型であり、前記樹脂板材を製品形状に賦形する凹状面が形成された賦形部と、前記製品形状を構成する溝部に対応した形状となるように、前記賦形部の一部を壁状に突出させた立面部と、を具備し、前記立面部を前記賦形部の外周縁部まで延在させ、
更に、前記賦形部よりも外側に形成され、前記立面部と連続し、前記圧力が前記樹脂板材に付与された際に、前記樹脂板材と前記賦形部との間に存在する気体が通過する気体導出部と、を具備することを特徴とする。
【0028】
従って、複雑な形状を呈する製品を圧空成形法で形成する際に、材料である樹脂板材と金型の賦形部の間に存在する気体を外部に逃がし、樹脂板材の賦形を容易にすることか出来る。具体的には、複数の意匠が一部品化された樹脂成形品の場合、各意匠部の間には深い溝を形成する場合が有り、このような成形品を雌金型を用いて圧空成形法で成形しようとすると、溝に対応した立面部を金型の賦形部に形成する必要がある。かかる立面部を形成した場合、樹脂板材と立面との間に存在する気体を外部に逃がすることは容易ではないが、本発明では、立面部を賦形部の端部まで延在させている。従って、この立面部に沿って、立面部付近に存在する気体を外部に逃し、樹脂板材を複雑な製品形状に成形することが可能となる。
【0029】
更にまた、上記したように、フィルムインサート成形は、賦形金型を用いて樹脂板材を賦形する賦形工程と、賦形された樹脂板材を射出金型にセットしてその裏面に樹脂を打つ射出工程を有する。本発明は、射出工程で用いる射出金型と同様の凹型の金型であるので、樹脂板材が複雑な3D形状を呈していても、射出工程で樹脂板材を射出金型にセットするのが容易となり、成形品質が安定する。
【0031】
更に本発明の成形用金型は、前記気体導出部は、前記立面部と連続する連続立面部であることを特徴とする。従って、賦形部の内部で立面部に沿って流動した空気は、連続立面部に沿って更に外側に向かって案内されるので、賦形時に空気を外部に逃がす効果が更に大きくなる。
【0032】
更に本発明の成形用金型は、前記連続立面部の両側に溝状の導出溝を形成することを特徴とする。従って、連続立面部に加えて、その両側に形成された導出溝も空気を流通させるための経路として作用するので、賦形時に空気を外部に逃がす効果が顕著となる。
【0033】
更に本発明の成形用金型は、前記気体導出部は、前記立面部と連続する導出溝であることを特徴とする。従って、賦形部の内部で立面部に沿って流動した空気は、導出溝に沿って更に外側に向かって案内されるので、賦形時に空気を外部に逃がす効果が更に大きくなる。
【0034】
本発明は、樹脂板材に圧力を付与することで、前記樹脂板材を所定の製品形状に成形する圧空成形法に用いられる成形用金型であり、前記樹脂板材を製品形状に賦形する凹状面が形成された賦形部と、前記製品形状を構成する溝部に対応した形状となるように、前記賦形部の一部を壁状に突出させた立面部と、を具備し、前記立面部を前記賦形部の外周縁部まで延在させ、
前記立面部に、その厚み方向に気体を通過させる気体通過部位を設けることを特徴とする。従って、立面部の厚み方向に空気が抜けるようになるので、立面部が複雑な形状を呈した場合でも、立面部付近の空気を外部に逃がすことができる。
【0035】
更に本発明の成形用金型は、前記気体通過部位は、前記立面部を部分的に切り欠いたスリットであることを特徴とする。従って、スリットを経由して空気が立面部の厚み方向に抜けるので、立面部付近の空気を外部に逃がすことができる。
【0036】
更に本発明の成形用金型は、前記気体通過部位は、前記立面部を貫通する横穴であることを特徴とする。従って、横穴を経由して空気が立面部の厚み方向に抜けるので、立面部付近の空気を外部に逃がすことができる。
【0037】
更に本発明の成形用金型は、前記気体通過部位は、前記立面部の一部を形成する多孔質体であることを特徴とする。従って、多孔質体を経由して空気が立面部の厚み方向に抜けるので、立面部付近の空気を外部に逃がすことができる。
【0038】
本発明は、樹脂板材に圧力を付与することで、前記樹脂板材を所定の製品形状に成形する圧空成形法に用いられる成形用金型であり、前記樹脂板材を製品形状に賦形する凹状面が形成された賦形部と、前記製品形状を構成する溝部に対応した形状となるように、前記賦形部の一部を壁状に突出させた立面部と、を具備し、前記立面部を前記賦形部の外周縁部まで延在させ、
更に、前記賦形部よりも外側に形成され、前記立面部と連続し、前記圧力が前記樹脂板材に付与された際に、前記樹脂板材と前記賦形部との間に存在する気体が通過する気体導出部と、を具備することを特徴とする。従って、賦形金型に形成された立面部を形有して流動した空気を、金型同士の間隙として形成された経路を経由して更に効率的に外部に排出することができる。
【0039】
本発明は、樹脂板材の一方側に成形用金型を配置し、前記樹脂板材の他方側から圧力を付与することで、前記成形用金型の形状に倣って前記樹脂板材を所定の製品形状に成形する圧空成形法を用いた樹脂成形品の製造方法であり、前記樹脂板材を製品形状にする凹状面が形成された賦形部と、前記製品形状を構成する溝部に対応した形状となるように、前記賦形部の一部を壁状に突出させた立面部と、を具備し、前記立面部を前記賦形部の外周縁部まで延在させた成形用金型を用意する工程と、前記成形用金型の上面に、前記樹脂板材を載置する工程と、前記樹脂板材に圧力を付与することで、前記賦形部の形状に沿って前記樹脂板材を賦形し、前記樹脂板材と前記賦形部との間に存在する気体を、前記立面部を経由して外部に排出する工程と、を具備していることを特徴とする。従って、上記と同様に、複雑な形状を呈する製品を圧空成形法で形成する際に、材料である樹脂板材と金型の賦形部の間に存在する気体を外部に逃がし、樹脂板材の正確な賦形を容易にすることか出来る。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に図面を参照して、本形態にかかる成形用金型およびそれを用いた樹脂成形品の製造方法を説明する。
【0042】
図1を参照して、本形態の成形用金型およびそれを用いた樹脂成形品の製造方法で製造される樹脂成形品10の形状等を説明する。
図1(A)は樹脂成形品10をその意匠面から見た平面図であり、
図1(B)は
図1(A)のB−B線に於ける断面斜視図である。
【0043】
図1(A)を参照して、樹脂成形品10は、後述する圧空成形法で成形された板状の樹脂から成り、例えば、自動車等の車両の内装部品や外装部品、家電部品の一部を構成するものである。
【0044】
ここで、本形態の圧空成形法とは、10気圧未満の空気圧で成形を行う圧空成形法と、50気圧〜235気圧の空気圧で成形を行う超高圧成形法を含む。
【0045】
樹脂成形品10は、例えば平板状の樹脂シートに多色印刷を施してから、後述する圧空成形法で賦形することで成型され、外側面である意匠面の高級感を増すために、色や模様が異なる複数の成形部から構成される。具体的には、樹脂成形品10は、第1成形部11、第2成形部12および第3成形部13から構成されている。第2成形部12は、第1成形部11と第3成形部13との間に配置され、X方向に沿って細長く延在している。
【0046】
第1成形部11、第2成形部12および第3成形部13は、その意匠面の色や模様が異なる。紙面上では、それぞれの成形部を異なるハッチングで示しているが、実際には、例えば、第1成形部11の意匠面は木目調であり、第2成形部12の意匠面はメタリック調であり、第3成形部13の意匠面は市松模様である。
【0047】
上記した各成形部同士の間には、意匠同士の境界部分が外観に現れないようにするために溝部が形成されている。具体的には、第1成形部11と第2成形部12との間には溝部15が形成される。これにより、第1成形部11の木目調の意匠面と、第2成形部12のメタリックの意匠面との境界が、溝部15に配置され、製品の外観に現れないようになる。同様に、第2成形部12と第3成形部13との間には溝部16が形成されることで、第2成形部12のメタリックの意匠面と、第3成形部13の市松模様の意匠面との境界が溝部16で隠される。更に同様に、第1成形部11と第3成形部13との間には溝部17が形成されることで、第1成形部11の木目調の意匠面と、第3成形部13の市松模様の意匠面との境界が溝部17で隠される。このようにすることで、樹脂成形品10を、意匠が異なる複数の部品の集合体として扱うことができ、樹脂成形品10の意匠的な組み合わせ表現を増加させると共に、部品点数を削減してコストを低減することができる。
【0048】
図1(B)を参照して、上記した各成形部同士の間に形成される溝部15、16、17は、下方(−Z側)に向かって窪むように形成されている。溝部15、16、17は、各成形部に形成される意匠の切替部が外観に現れないようにするために、そのY方向に於ける幅は狭く、且つそのZ方向に於ける深さは深く形成される。
【0049】
係る形状の溝部15、16、17を有する樹脂成形品10を、金型を用いた圧空成形法で成形する場合、深く細いY字の溝を作製するためには、フィルムの伸びが不足してフィルムが溝に入りにくく成るので、成形は容易ではない。
図2以降の図を参照して、係る形状を呈する樹脂成形品を製造する為の金型の形状を説明する。
【0050】
図2を参照して、上記した樹脂成形品10を成形するために用いられる成形用金型の構成を説明する。
図2(A)は、圧空成形法に用いられる賦形金型20および内側金型40を示す斜視図であり、
図2(B)は賦形金型20および内側金型40を示す上面図である。これらの図では、賦形金型20を実線で示し、内側金型40を点線で示している。
【0051】
図2(A)を参照して、賦形金型20の上面には、板状の樹脂板材を所定形状に賦形するための賦形部21が形成されている。賦形部21の大部分は、樹脂成形品10の表面形状に対応した滑らかな凹型曲面を呈している。本形態に於いて、「賦形」とは、樹脂板材に圧力をかけることで、賦形金型20の賦形部21の形状を樹脂板材に転写する行為を指す。賦形金型20は、凹型、凹金型または雌金型と称され、成形される樹脂成形品10の凸形状に対応した凹形状の賦形部21を有している。成形時に於いては、樹脂シートの模様等が付された意匠面が、賦形金型20の賦形部21に当接する。また、賦形部21の周囲には一定の幅で平坦部27が形成されている。ここでは、
図1に示した樹脂成形品10の外周縁部に対応する部分を一点鎖線で示している。
【0052】
上記形状の賦形金型20は、内側金型40に収納されている。即ち、内側金型40には、賦形金型20の外側形状に即した空洞が形成され、その空洞に賦形金型20が収納される。賦形金型20の上面と、内側金型40の上面とは、連続している。また、内側金型40の上面部28は、周囲に向かって徐々に低くなる傾斜形状を呈している。更に、上面部28の周囲には、一定の幅の周辺平坦部29が形成されている。後述するように、圧空成形にて樹脂成形品を成形する際には、賦形金型20および内側金型40は、外側金型に収納される。
【0053】
図2(B)を参照して、賦形部21には、
図1(A)を参照して説明した溝部15、16、17に対応して、立面部23、22、24が形成されている。立面部22等は、賦形部21を上方に向かって壁状に突出させた部位である。立面部22は、賦形部21の+X側の側辺から賦形部21の中間部分まで延在している。立面部23は、立面部22よりも+Y側で、賦形部21の+X側の側辺から賦形部21の中間部分まで延在している。立面部24は、賦形部21の中間部分で立面部22および立面部23と連続し、賦形部21の+Y側の側辺まで延在している。立面部22と立面部24とは、連続する立面として形成されている。
【0054】
上記のように立面部22等を形成すると、圧空成形法で樹脂板材を賦形する際に、立面部22等およびその周辺部分と樹脂板材との間に介在する空気を外に排出させることは容易ではない。また、この空気を外部に逃がすための空気孔を賦形部21に形成すると、賦形金型20の賦形部21は樹脂板材の意匠面に当接するため、樹脂板材の意匠面に空気孔の跡が残ってしまう恐れがある。
【0055】
本形態では、当該部分の空気を外側に逃がすために、立面部22等を賦形部21の外周端部まで延在させている。具体的には、立面部22、23の+X側の端部は、賦形部21の+X側の終端部まで到達している。従って、賦形時に於いては、樹脂板材と賦形部21との間に存在する空気は、立面部22、23に沿って+X側に進行し、賦形部21の外側に排出される。また、立面部24の+Y側の端部は、賦形部21の+Y側の終端部まで到達している。従って、賦形時に於いては、樹脂板材と賦形部21との間に存在する空気は、立面部22、23、24に沿って賦形部21の外周縁部まで流動し、賦形部21の外側に排出される。
【0056】
更に本形態では、気体導出部25、26を形成している。気体導出部25は、立面部22、23の+X側の終端部に連続して形成され、立面部22、23に沿って+X側に流れる空気を外側に導出させるための部位である。気体導出部26は、立面部24の+Y側の終端部に連続して形成され、立面部24に沿って+Y側に流れる空気を外側に導出させるための部位である。気体導出部25、26の形状は後述する。
【0057】
図3を参照して、上記した気体導出部25、26の形状を詳述する。
図3(A)は気体導出部26を示す平面図であり、
図3(B)は気体導出部25を示す斜視図である。
【0058】
図3(A)を参照して、気体導出部26として、立面部24の+Y側の端部と連続するように、平坦部27の上面を上方に向かって溝状に突出された連続立面部30が形成されている。連続立面部30を形成することで、圧空成形法で樹脂板材を賦形する際に、連続立面部30に沿って、空気を外部に逃がすことができる。具体的には、賦形時に立面部24と図示しない樹脂板材の間に存在する空気は、立面部24に沿って+Y方向に進行した後に、更に、連続立面部30に沿って+方向に向かって進行する。このようにすることで、立面部24と樹脂板材との間に存在する空気は、賦形部21から外部に確実に排出される。従って、立面部24の形状が樹脂板材に正確に転写され、
図1に示す溝部17の形状が所定の溝形状とされる。
【0059】
また、連続立面部30に沿って、平坦部27を溝状に窪ませることで導出溝31が形成されても良い。ここでは、連続立面部30の+X側および−X側に、導出溝31が形成されている。係る形状の導出溝31を賦形金型20の平坦部27に形成することで、賦形時に於いて、導出溝31を経由して空気が外部に排出されるので、上記した賦形をより正確に行うことが可能となる。
【0060】
更に、上記した気体導出部26を、内側金型40の上面部28に形成しても良い。即ち、賦形金型20の平坦部27に形成される連続立面部30の+Y側の端部と連続する連続立面部37を、内側金型40の上面部28に形成しても良い。連続立面部37の+Y側の端部は、内側金型40の上面部28の外周縁部まで延在している。このようにすることで、賦形時に立面部24と図示しない樹脂板材の間に存在する空気は、上記した連続立面部30に沿って流通した後に、更に連続立面部37に沿って外部に排出される。また、内側金型40の上面部に於いても、連続立面部37の両側を溝状に窪ませて導出溝38が形成されても良い。このようにすることで、賦形時に於いて賦形部から外部に逃げる空気が導出溝38を通過するので、上記した効果を顕著にすることができる。
【0061】
図3(B)を参照して、上記したように、立面部22の+X側の端部には気体導出部25が形成されるが、ここでは気体導出部25として、平坦部27の上面を溝状に窪ませた導出溝33が形成されている。図示するように、立面部22の断面形状は、+Z側に向かってその幅が広がる裾広がり形状とされている。導出溝33は、立面部22の+X側の終端部に於いて、−Y側の端部および+Y側の端部と連続するように、平坦部27の上面に形成されている。このように導出溝33を生成することで、賦形時に於いて樹脂板材と立面部22との間に存在する空気は、立面部22に沿って+X側に流動した後に、導出溝33を経由して外側に移動することが出来る。
【0062】
立面部23の+X側の終端部に関しても同様に、立面部23の−Y側の端部および+Y側の端部と連続するように、平坦部27の上面に導出溝33が形成されている。これにより、賦形時に於いて樹脂板材と立面部23との間に存在する空気は、立面部23に沿って+X側に流動した後に、導出溝33を経由して外側に移動することが出来る。
【0063】
更にまた、内側金型40の上面部28に、上記した各導出溝33のそれぞれと連続する導出溝46を形成しても良い。そのようにすることで、賦形時に於いて、立面部22、23に沿って流動した空気が、導出溝33および導出溝46を経由して外部に導出されるようになるので、気体を外部に放出させる効果を顕著にすることができる。
【0064】
図4を参照して、上記した各立面部に対して、その厚み方向に気体を通過させる気体通過部位を形成しても良い。
図4(A)では気体通過部位としてのスリット50を示し、
図4(B)では気体通過部位としての横穴51を示し、
図4(C)では気体通過部位としての多孔質部52を示している。
【0065】
図4(A)を参照して、ここでは、立面部22を部分的に切り欠いたスリット50を形成している。この図では、賦形時に於ける空気の流れを矢印で示している。
【0066】
スリット50は、立面部22の上端から下端に至るまで形成されても良いし、立面部22の上端からその中間部まで形成されても良い。スリット50は、上記した賦形を行う際に、立面部22と立面部23との間に存在する空気を外側に逃がす経路として機能する。具体的には、圧空成形法による賦形を行う際に、立面部22と立面部23との間の空気は、立面部22のスリット50を経由して−Y側に抜けた後に、立面部22の−Y側の側面に沿って−X方向に向かって移動し、その後、立面部24の−X側の側面に沿って+Y方向に向かって進行する。その後、その空気は、
図3(A)に示したように、立面部24の+Y側の端部まで移動した後に、気体導出部26を経由して外部に排出される。
【0067】
上記構成のスリット50は、立面部23にも形成されても良い。このようにすることで、賦形時に於いて樹脂板材と賦形部21との間に存在する空気は、立面部23のスリット50を経由して+Y側に抜ける。その後、その空気は、立面部23の+Y側の側面に沿って−X側に向かって進行する。更にその後、その空気は、立面部24の+X側の側面に沿って、+Y側に向かって進行し、上記したように
図3に示す気体導出部26を経由して外部に排出される。
【0068】
ここで、
図2(B)を参照すると、立面部22および立面部23で、賦形部21の一領域である領域45は囲まれている。即ち、領域45は閉じた領域である。従って、賦形時に於いてこの領域45の内部に存在している空気を外部に逃がすのは容易ではない。本形態では、上記のように、立面部22または立面部23にスリット50を形成することで、立面部22および立面部23で囲まれる領域45に存在する空気を、外部に良好に逃がしている。従って、賦形時に於いて、立面部22、23の形状を、樹脂板材に正確に転写させることができる。
【0069】
また、立面部22、立面部23および立面部24が連続する連続部44では、賦形部21の形状が複雑になるために、連続部44の近傍に於いて、賦形部21と樹脂板材との間に存在する空気を外部に逃がすのは容易ではない。本形態では、連続部44の近傍に於いて、立面部22、23にスリット50を形成しているため、上記したようにスリット50を経由して空気が外部まで導かれ、賦形時に於いて連続部44の近傍に空気が残留してしまうことが抑止されている。
【0070】
ここで、立面部22、23には、それぞれ1つのスリット50が形成されていたが、それぞれ複数のスリット50が形成されても良い。このようにすることで、スリット50を経由して賦形時に空気を外部に逃がす効果が顕著となる。
【0071】
このように、立面部22、23にスリット50を形成することで、
図1に示す樹脂成形品10には、スリット50の形状が転写される。しかしながら、立面部22、23のスリット50が転写される部分は、外観に現れにくい樹脂成形品10の溝部15、16である。従って、スリット50が転写される部分が、樹脂成形品10の外観に大きな悪影響を与えることは無い。
【0072】
図4(B)を参照して、ここでは、気体通過部位として横穴51が形成されている。具体的には、立面部22をその厚み方向に貫通する横穴51が形成され、立面部23にも同様な横穴51が形成されている。賦形時に於いて空気が流通する経路は、
図4(A)を参照して説明したスリット50の場合と同様である。
【0073】
図4(C)を参照して、ここでは、気体通過部位として多孔質部52が形成されている。上記した立面部22は、賦形金型20の他の部位と同様にアルミニウムなどの金属から構成されているが、ここでは、立面部22の一部または全部を多孔質部52から構成している。多孔質部52としては、例えばアルミニウム等の金属に微少な気孔が形成された多孔質金属が採用される。立面部23に関しても同様に、その一部または全部が多孔質部52とされている。多孔質部52は空気を透過させる。賦形時に於いて空気が流通する経路は、
図4(A)を参照して説明したスリット50の場合と同様である。
【0074】
図5を参照して次に、本形態の圧空成形法で用いられる金型を全体的に示す。
図5(A)は使用される金型の下方部分を示す斜視図であり、
図5(B)は金型をX−Z平面で切断した場合を示す断面視図であり、
図5(C)は金型をY−Z断面で切断した場合を示す断面斜視図である。
【0075】
図5(A)を参照して、上記したように、樹脂板材の賦形に用いられる賦形金型20は内側金型40に収納されており、更にその内側金型40は外側下金型42に収納されている。また、外側下金型42は、支持金型43に載置されている。
【0076】
図5(B)を参照して、外側下金型42の上面には、外側上金型41が載置されている。外側上金型41の下面中央部分にはキャビティ34が形成されており、外側上金型41を外側下金型42の上面に載置すると、キャビティ34の周辺部は、内側金型40の周辺部と略一致するようになる。換言すると、賦形金型20および内側金型40の上方に、キャビティ34が配置される。
【0077】
内側金型40の内部には、賦形時に空気が排出される排気経路36が形成されており、係る排気経路36の構成は後述する。
【0078】
図5(C)に示すように、外側上金型41には、キャビティ34の上端部と外部とを連通させる通気孔35が形成されている。本形態では、通気孔35を経由して外部から気体をキャビティ34に供給することで、ここでは図示しない樹脂板材に圧力を加え、賦形金型20の賦形部21の形状に樹脂板材を追従させている。
【0079】
図6を参照して、上記した金型に形成される空気の経路を説明する。ここでは、賦形時に於ける空気の経路を明示するために、各金型同士の間隙を実際よりも大きく示している。
【0080】
上記したように、圧空成形法で賦形する際に、通気孔35からキャビティ34に気体を注入すると、キャビティ34の内部圧力が高まり、賦形金型20の賦形部21に樹脂板材14が押しつけられる。この結果、賦形金型20の賦形部21の形状が樹脂板材14に転写される賦形が行われる。
【0081】
本形態では、賦形時に、樹脂板材14と賦形金型20との間に存在する空気を放出するための経路を、金型に形成している。具体的には、内側金型40は、上下方向に貫通すると共に、その底面に溝状に形成された排気経路36を備えている。また、外側下金型42は、その下面に溝状に形成された排気経路39を備えている。
【0082】
上記賦形に伴い、樹脂板材14と賦形金型20との間に存在する空気は、各金型の間隙を経由して、外部に放出される。具体的には、樹脂板材14と賦形金型20との間に存在する空気は、賦形金型20と内側金型40とのクリアランス47を経由して、排気経路36に流れ込み、その後、排気経路39を経由して外部に放出される。また、樹脂板材14と賦形金型20との間に存在する空気の一部は、内側金型40と外側下金型42とのクリアランス48を経由して下方に流通し、その後、排気経路39を経由して外部に放出される。
【0083】
次に
図7および
図8に基づいて、上記した各図も適宜参照しつつ、圧空成形法で樹脂成形品を製造する方法を説明する。
図7は本形態の賦形の方法を逐次的に示す断面図である。
図8は、ここでは図示しない樹脂板材と賦形金型20との間に存在する空気を外部に排出する状況を示す図である。
【0084】
図7(A)を参照して、先ず、賦形金型20および内側金型40の上面に樹脂板材14を載置する。樹脂板材14は、
図1に示した樹脂成形品10の材料であり、その主面には、
図1(A)に示したような複数の異なる意匠部分が形成されている。ここでは、樹脂板材14は、その意匠面が下方となるように配置されている。それにより、凹金型である賦形金型20の賦形部21に、樹脂板材14の意匠面が対向するようになる。
【0085】
また、樹脂板材14は、内側金型40よりも若干大きく形成され、その周辺縁部は外側下金型42の上面に配置されている。このようにすることで、後の工程にて、外側下金型42と外側上金型41とで、樹脂板材14の外周縁部を押圧することができる。ここで、樹脂板材14は、賦形を容易にするために、加熱された状態で賦形金型20の上面に配置されても良い。
【0086】
図7(B)を参照して、次に、外側上金型41を下降させ、外側上金型41と外側下金型42とで、樹脂板材14の周縁部分を押圧して固定する。このとき、樹脂板材14が配置された賦形金型20および内側金型40の上面に、外側上金型41のキャビティ34が配置される。この状態で、通気孔35を経由して空気をキャビティ34に圧入し、キャビティ34の内部を高圧状態とする。
【0087】
図7(C)を参照して、上記のようにキャビティ34の内部の圧力を高めると、その圧力により、樹脂板材14が賦形金型20の賦形部21に押しつけられ、賦形部21の形状が樹脂板材14に転写される賦形が実現される。この工程に伴い、賦形金型20と樹脂板材14との間に存在する空気は、
図2(B)等に示した気体導出部25、26を経由して外部に放出される。また、
図4の各図に示したスリット50等を経由して空気が流通することによっても、賦形金型20と樹脂板材14との間に存在する空気は、外部に放出される。従って、賦形部21の形状は正確に樹脂板材14に転写される。その後、外側上金型41を上昇させ、賦形金型20から樹脂板材14を離型し、樹脂板材14からその製品部分を切り出すことで、
図1(A)に示したような樹脂成形品が得られる。
【0088】
次に、
図8を参照して、上記した賦形の工程にて、樹脂板材14と賦形部21との間に存在する空気が外部に排出される経路を詳述する。
図8(A)は気体導出部25付近に於いて空気が流動する状況を示す断面斜視図であり、
図8(B)は気体導出部26付近に於いて空気が流動する状況を示す断面斜視である。図面では、賦形の前半段階に於いて空気が流通する経路をハッチング付の矢印で示し、賦形の後半段階で空気が流通する経路を白抜きの矢印で示している。
【0089】
図8(A)を参照して、気体導出部25付近の空気の流れについて説明する。圧空成形法による賦形を行うと、キャビティ34が加圧されることにより、図示しない樹脂板材14と賦形金型20との間に存在する空気は、外部に放出される。また、賦形の初期段階に於いては、図示しない樹脂板材14は、賦形金型20との接触面積が少ないので、両者の間に存在する空気は比較的自由に流動する。具体的には、その空気の一部は、賦形金型20と内側金型40とのクリアランス47に進入し、排気経路36を経由して、金型の外部に放出される。また、その空気の他の部分は、内側金型40と外側下金型42とのクリアランス48に進入した後に、金型の外部に放出される。
【0090】
一方、上記した賦形が進行すると、図示しない樹脂板材14が、賦形金型20および内側金型40の上面を覆うようになるので、上記した空気の経路は制限されることになる。この結果、この空気は、賦形部21に形成された立面部22、23に沿って+X方向に向かって流動し、気体導出部25を経由した後に、クリアランス47および排気経路36を経由して外部に放出される。また、この空気の一部分は、上記した気体導出部25を経由して、クリアランス48に進入した後に外部に放出される。
【0091】
図8(B)を参照して、賦形時に、気体導出部26付近に於いて空気が流動する状況を説明する。この図面では、賦形の後半段階に於ける空気の流動のみを、白抜きの矢印で示している。
【0092】
賦形の初期段階では、上記したように空気が自由に流通することができる。従って、気体導出部26付近に於いても、図示しない樹脂板材と賦形金型20との間に存在する空気は、クリアランス47、48に進入した後に、金型の外部に放出される。
【0093】
一方、上記した賦形が進行すると、前述したように、上記空気の経路は制限されることになる。この結果、この空気は、賦形部21に形成された立面部24に沿って+Y方向に向かって流動し、気体導出部26を経由した後に、クリアランス47および排気経路36を経由して外部に放出される。また、この空気の一部分は、上記した気体導出部26経由して、クリアランス48に進入した後に外部に放出される。
【0094】
このように、賦形の後半段階に於いては、両者の間に存在する空気の流通が制限されるが、本形態では、両者の間に存在する空気は立面部22、23、24を経由して、クリアランス47、48に進入して金型の外部に放出される。また、各立面部の端部に連続する気体導出部25、26を、上記した空気が流通することで、上記した空気を外部に逃がす効果が顕著となる。このことにより、樹脂板材と賦形部21との間の空気を逃がして賦形をすることで、賦形部21の形状を正確に樹脂板材に転写することができる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。