(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6721430
(24)【登録日】2020年6月22日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
B29C 70/04 20060101AFI20200706BHJP
B29C 70/40 20060101ALI20200706BHJP
B29C 43/20 20060101ALI20200706BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20200706BHJP
B32B 5/00 20060101ALI20200706BHJP
B29K 105/06 20060101ALN20200706BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20200706BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20200706BHJP
【FI】
B29C70/04
B29C70/40
B29C43/20
B32B3/30
B32B5/00 A
B29K105:06
B29K105:04
B29L9:00
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-125344(P2016-125344)
(22)【出願日】2016年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-226179(P2017-226179A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100195305
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 恵
(72)【発明者】
【氏名】中野 良憲
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅則
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 節男
(72)【発明者】
【氏名】角山 正和
(72)【発明者】
【氏名】中田 泰詩
【審査官】
一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−022600(JP,A)
【文献】
特開2016−032929(JP,A)
【文献】
特開平11−192428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00−70/88
B29C 43/00−43/58
B29C 59/00−59/18
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と、一の方向に沿って延びる複数の線状凸部を有する第2の主面とを有するシートであって、
前記第1の主面を構成している第1の樹脂含浸繊維シートと、
前記第2の主面を構成している第2の樹脂含浸繊維シートと、
前記第1の樹脂含浸繊維シートと前記第2の樹脂含浸繊維シートとの間に充填された樹脂組成物層と、
を備え、
前記複数の線状凸部は、前記一の方向とは異なる他の方向に沿って相互に間隔をおいて設けられており、
隣り合う前記線状凸部の間に位置する部分の厚みをtとしたときに、t≦0.6mmが満たされ、
前記線状凸部の高さをH、前記線状凸部の最大幅をWとしたときに、0.3≦H/W≦3.0が満たされる、シート。
【請求項2】
0.1mm≦tが満たされる、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
第1の主面と、一の方向に沿って延びる複数の線状凸部を有する第2の主面とを有するシートであって、
前記第1の主面を構成している第1の樹脂含浸繊維シートと、
前記第2の主面を構成している第2の樹脂含浸繊維シートと、
前記第1の樹脂含浸繊維シートと前記第2の樹脂含浸繊維シートとの間に充填された樹脂組成物層と、
を備え、
前記複数の線状凸部は、前記一の方向とは異なる他の方向に沿って相互に間隔をおいて設けられており、
隣り合う前記線状凸部の間に位置する部分の厚みが、隣り合う前記線状凸部の間に位置する部分が巻回できるような厚みであり、
前記線状凸部の高さをH、前記線状凸部の最大幅をWとしたときに、0.3≦H/W≦3.0が満たされる、シート。
【請求項4】
前記第2の樹脂含浸繊維シートが、前記一の方向に沿って延びる繊維を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート。
【請求項5】
前記第2の樹脂含浸繊維シートに含まれる繊維が、前記一の方向に沿って延びている、請求項4に記載のシート。
【請求項6】
前記第1の樹脂含浸繊維シートが、前記他の方向に沿って延びる繊維を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート。
【請求項7】
前記第1の樹脂含浸繊維シートが、相互に異なる方向に沿って延びる複数の繊維を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシート。
【請求項8】
前記他の方向が、前記一の方向に垂直である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシート。
【請求項9】
前記第1及び第2の樹脂含浸繊維シートに含まれる樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピ
レン、ポリプロピレン共重合体、ナイロン樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含み、
前記樹脂組成物層に含まれる樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン共重合体、ナイロン樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシート。
【請求項10】
前記第1及び第2の樹脂含浸繊維シート並びに前記樹脂組成物層は、それぞれ、透光性を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシート。
【請求項11】
前記樹脂組成物層が繊維を含んでいる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシート。
【請求項12】
前記第1及び第2の樹脂含浸繊維シートが熱可塑性樹脂を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート。
【請求項13】
前記樹脂組成物層の少なくとも前記線状凸部内に位置する部分が発泡体である、請求項1〜12のいずれか一項に記載のシート。
【請求項14】
止水板である、請求項1〜13のいずれか一項に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに関し、詳細には、一方の主面に凸部を有するシートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、風車翼に使用できるシートとして、両面が強化繊維樹脂シートで覆われた樹脂シートであって、一方の主面に、一の方向に沿って延びる複数の線状凸部を有する樹脂シートが記載されている。この複数の線状凸部を有する樹脂シートは、線状凸部の延びる方向に対して高い剛性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−32929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているようなシートには、用途によっては、巻回可能であることが求められることがある。例えば、シートが巻回可能であれば、シートを巻回した状態で使用したり、保存したり、収容したりすることができるためである。
【0005】
本発明の主な目的は、一の方向に沿って高い剛性を有しつつ、巻回可能なシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るシートは、第1の主面と、一の方向に沿って延びる複数の線状凸部を有する第2の主面とを有するシートである。シートは、第1の樹脂含浸繊維シートと、第2の樹脂含浸繊維シートと、樹脂組成物層とを備えている。第1の樹脂含浸繊維シートは、第1の主面を構成している。第2の樹脂含浸繊維シートは、第2の主面を構成している。樹脂組成物層は、第1の樹脂含浸繊維シートと第2の樹脂含浸繊維シートとの間に充填されている。複数の線状凸部は、一の方向とは異なる他の方向に沿って相互に間隔をおいて設けられている。隣り合う線状凸部の間に位置する部分の厚みをtとしたときに、t≦0.6mmが満たされる。
【0007】
なお、本発明において、「樹脂組成物」には、樹脂単体が含まれるものとする。
【0008】
本発明に係るシートでは、0.1≦tが満たされることが好ましい。
【0009】
本発明に係るシートは、第1の主面と、一の方向に沿って延びる複数の線状凸部を有する第2の主面とを有するシートである。シートは、第1の樹脂含浸繊維シートと、第2の樹脂含浸繊維シートと、樹脂組成物層とを備えている。第1の樹脂含浸繊維シートは、第1の主面を構成している。第2の樹脂含浸繊維シートは、第2の主面を構成している。樹脂組成物層は、第1の樹脂含浸繊維シートと第2の樹脂含浸繊維シートとの間に充填されている。複数の線状凸部は、一の方向とは異なる他の方向に沿って相互に間隔をおいて設けられている。隣り合う線状凸部の間に位置する部分の厚みが、隣り合う線状凸部の間に位置する部分が湾曲可能な厚みとされている。
【0010】
本発明に係るシートでは、平面視において、隣り合う線状凸部の間の距離をLとしたときに、5≦L≦30が満たされることが好ましい。
【0011】
本発明に係るシートでは、線状凸部の高さをH、線状凸部の最大幅をWとしたときに、0.3≦H/W≦3.0が満たされることが好ましい。
【0012】
本発明に係るシートでは、第2の樹脂含浸繊維シートが、一の方向に沿って延びる繊維を含むことが好ましい。
【0013】
本発明に係るシートでは、第2の樹脂含浸繊維シートに含まれる繊維が、一の方向に沿って延びていることが好ましい。
【0014】
本発明に係るシートでは、第1の樹脂含浸繊維シートが、他の方向に沿って延びる繊維を含むことが好ましい。
【0015】
本発明に係るシートでは、第1の樹脂含浸繊維シートが、相互に異なる方向に沿って延びる複数の繊維を含むことが好ましい。
【0016】
本発明に係るシートでは、他の方向が、一の方向に垂直であることが好ましい。
【0017】
本発明に係るシートでは、第1及び第2の樹脂含浸繊維シートに含まれる樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン共重合体、ナイロン樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含み、樹脂組成物層に含まれる樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン共重合体、ナイロン樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
【0018】
本発明に係るシートでは、第1及び第2の樹脂含浸繊維シート並びに樹脂組成物層は、それぞれ、透光性を有することがこのましい。
【0019】
なお、本発明において、「透光性を有する」とは、可視波長域(450nm〜650nm)における平均光透過率が30%以上であることをいう。
【0020】
本発明に係るシートでは、樹脂組成物層が繊維を含んでいることが好ましい。
【0021】
本発明に係るシートでは、第1及び第2の樹脂含浸繊維シートが熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0022】
本発明に係るシートでは、樹脂組成物層の少なくとも線状凸部内に位置する部分が発泡体であることが好ましい。
【0023】
本発明に係るシートでは、止水板であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、一の方向に沿って高い剛性を有しつつ、巻回可能なシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1の実施形態に係るシートの模式的斜視図である。
【
図2】
図1の線II−IIにおける模式的断面図である。
【
図3】第2の実施形態に係るシートの模式的斜視図である。
【
図4】
図3の線IV−IVにおける模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0027】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るシートの模式的斜視図である。
図2は、
図1の線II−IIにおける模式的断面図である。
【0029】
図1及び
図2に示すシート1は、例えば、止水板等として用いることができるシートである。
【0030】
シート1は、第1の主面1aと、第2の主面1bとを有する。第1の主面1aは平坦に設けられている一方、第2の主面1bは、y軸方向に沿って延びる複数の線状凸部2を有する。複数の線状凸部2のそれぞれは、y軸方向において、第2の主面1bの一方側端部から他方側端部に至るように設けられている。複数の線状凸部2は、y軸方向に傾斜した、具体的には垂直なx軸方向に沿って相互に間隔をおいて設けられている。
【0031】
図2に示すように、シート1は、第1の樹脂含浸繊維シート11と、第2の樹脂含浸繊維シート12と、樹脂組成物層13とを有する。シート1は、第1の樹脂含浸繊維シート11と、樹脂組成物層13と、第2の樹脂含浸繊維シート12との積層体である。
【0032】
第1の樹脂含浸繊維シート11は、第1の主面1aを構成している。第2の樹脂含浸繊維シート12は、第2の主面1bを構成している。樹脂組成物層13は、第1の樹脂含浸繊維シート11と第2の樹脂含浸繊維シート12との間に配されている。樹脂組成物層13は、第1の樹脂含浸繊維シート11と第2の樹脂含浸繊維シート12との間に充填されている。すなわち、本実施形態では、第1の樹脂含浸繊維シート11と第2の樹脂含浸繊維シート12との間に空隙が実質的に存在していない。
【0033】
(第1の樹脂含浸繊維シート11)
第1の樹脂含浸繊維シート11は、樹脂が含浸した繊維シートである。第1の樹脂含浸繊維シート11は、線状凸部2の延びる方向であるy軸方向に対して傾斜した、典型的には垂直な一の方向(x軸方向)に沿って延びる繊維を含むことが好ましい。第1の樹脂含浸繊維シート11は、一の方向に沿って延びる繊維と、その一の方向に対して傾斜した他の方向に沿って延びる繊維との両方を含むことが好ましい。第1の樹脂含浸繊維シート11は、x軸方向に沿って延びる繊維と、y軸方向に沿って延びる繊維とを含むことが好ましい。
【0034】
具体的には、第1の樹脂含浸繊維シート11は、例えば、織物(織布)であってもよいし、不織布等であってもよい。具体的には、第1の樹脂含浸繊維シート11が織物である場合は、第1の樹脂含浸繊維シート11は、例えば、平織、綾織、朱子織、ユニダイレクショナル織物等であってもよい。なかでも、第1の樹脂含浸繊維シート11は、平織、綾織、朱子織等であることが好ましい。
【0035】
第1の樹脂含浸繊維シート11に含まれる第1及び第2の繊維は、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維等であってもよい。
【0036】
第1の樹脂含浸繊維シート11に含浸されている樹脂は、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂の硬化物や熱可塑性樹脂であってもよい。なかでも、第1の樹脂含浸繊維シート11に含浸されている樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。第1の樹脂含浸繊維シート11に含浸されている樹脂を熱可塑性樹脂により構成することにより、耐衝撃性を向上し得る。
【0037】
第1の樹脂含浸繊維シート11に含浸されている樹脂が、熱硬化性樹脂の硬化物である場合は、第1の樹脂含浸繊維シート11に含浸されている樹脂は、例えば、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の樹脂が好ましく用いられる。第1の樹脂含浸繊維シート11に含浸されている樹脂が熱可塑性樹脂である場合は、第1の樹脂含浸繊維シート11に含浸されている樹脂は、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリメタクリル樹脂等の樹脂が好ましく用いられる。第1の樹脂含浸繊維シート11に含浸されている樹脂として、これらの樹脂の1種のみを用いても良いし、複数種類の樹脂を混合して用いてもよい。
【0038】
(第2の樹脂含浸繊維シート12)
第2の樹脂含浸繊維シート12は、樹脂が含浸した繊維シートである。第2の樹脂含浸繊維シート12の繊維シートは、繊維を含む繊維シートである限りにおいて、特に限定されない。第2の樹脂含浸繊維シート12の繊維シートは、例えば、織物(織布)であってもよいし、不織布等であってもよい。具体的には、第2の樹脂含浸繊維シート12の繊維シートが織物である場合は、第2の樹脂含浸繊維シート12の繊維シートは、例えば、平織、綾織、朱子織、ユニダイレクショナル織物等であってもよい。
【0039】
シート1の製造方法に関しては、後に詳述するが、例えば、プレス成形によりシート1を製造する場合には、第2の樹脂含浸繊維シート12が、線状凸部2の延びる方向であるy軸方向に沿って延びる繊維を有するユニダイレクショナル織物であることが好ましい。この場合、ユニダイレクショナル織物に少量用いる緯糸としては、熱可塑性樹脂からなる繊維、例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等の熱可塑性樹脂からなる繊維を用いることが好ましい。これらの樹脂を緯糸として用いたユニダイレクショナル織物を用いた場合、加熱プレス成形時にユニダイレクショナル織物が容易に変形する。従って、プレス成形を容易に行うことができる。例えば、押出成形によりシート1を製造する場合には、第2の樹脂含浸繊維シート12が、ユニダイレクショナル織物であってもよいし、x軸方向に延びる繊維を有する平織、綾織、朱子織等であってもよい。
【0040】
第2の樹脂含浸繊維シート12に含まれる繊維は、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維等であってもよい。
【0041】
第2の樹脂含浸繊維シート12に含浸されている樹脂は、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂の硬化物や熱可塑性樹脂であってもよい。なかでも、第2の樹脂含浸繊維シート12に含浸されている樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。第2の樹脂含浸繊維シート12に含浸されている樹脂を熱可塑性樹脂により構成することにより、シート1の耐衝撃性を向上させることができる。
【0042】
第2の樹脂含浸繊維シート12に含浸されている樹脂が、熱硬化性樹脂の硬化物である場合は、第2の樹脂含浸繊維シート12に含浸されている樹脂は、例えば、ポリウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が好ましく用いられる。第2の樹脂含浸繊維シート12に含浸されている樹脂が熱可塑性樹脂である場合は、第2の樹脂含浸繊維シート12に含浸されている樹脂は、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の樹脂が好ましく用いられる。第2の樹脂含浸繊維シート12に含浸されている樹脂として、これらの樹脂の1種のみを用いても良いし、複数種類の樹脂を混合して用いてもよい。
【0043】
(樹脂組成物層13)
樹脂組成物層13は、第1の樹脂含浸繊維シート11と第2の樹脂含浸繊維シート12との間に充填されている。樹脂組成物層13は、第1の樹脂含浸繊維シート11と第2の樹脂含浸繊維シート12とのそれぞれに接合されている。樹脂組成物層13は、樹脂のみからなるものであってもよいし、繊維やフィラー等を含む樹脂組成物からなるものであってもよい。樹脂組成物層13に繊維やフィラーを含有させることにより、樹脂組成物層13に種々の機能を付与することができる。例えば、樹脂組成物層13にチョップド繊維等を含ませることにより、樹脂組成物層13、ひいてはシート1の強度を向上することができる。
【0044】
なお、チョップド繊維は、例えば、第1及び第2の樹脂含浸繊維シート11,12の切れ端等を細かく粉砕した際に得られたものであってもよい。
【0045】
樹脂組成物層13に含まれる樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリメタクリル樹脂、及び、ポリ塩化ビニル樹脂等であってもよい。樹脂組成物層13に含まれる樹脂として、これらの樹脂のうちの1種のみを用いてもよいし、複数種類の樹脂を混合して用いてもよい。
【0046】
樹脂組成物層13は、線状凸部2の内部にのみ設けられていてもよいし、線状凸部2の内部に加えて、x軸方向において隣り合う線状凸部2の間において、第1の樹脂含浸繊維シート11と第2の樹脂含浸繊維シート12との間にも設けられていてもよい。換言すれば、x軸方向において隣り合う線状凸部2の間において、第1の樹脂含浸繊維シート11と第2の樹脂含浸繊維シート12とは、接触していてもよいし、第1の樹脂含浸繊維シート11と第2の樹脂含浸繊維シート12との間に樹脂組成物層13が介在していてもよい。
【0047】
上述した第1の樹脂含浸繊維シート11、第2の樹脂含浸繊維シート12及び樹脂組成物層13は、それぞれ、透光性を有していてもよい。この場合、透光性を有するシート1を得ることができる。透光性を有するシート1は、例えば、採光が必要な箇所等に好適に用いられる。
【0048】
(シート1の製造方法)
シート1は、種々の方法により製造することができる。例えば、シート1は、第1の樹脂含浸繊維シート11と、樹脂組成物層13を構成するための樹脂シートと、第2の樹脂含浸繊維シート12とを積層した状態で加熱プレスすることによりシート1を製造することができる。また、第1の樹脂含浸繊維シート11と、第2の樹脂含浸繊維シート12との間に、樹脂組成物層13を構成するための樹脂部材を介在させた状態で、押出機を用いてシート状に押出すことによってシート1を製造することができる。
【0049】
ところで、特許文献1に記載のシートのように、一の方向(y軸方向)に沿って延びる複数の線状凸部を有するシートは線状凸部の延びる方向に対して高い剛性を有している。このようなシートには、用途によっては、巻回可能であることが求められることがある。すなわち、一の方向において高い剛性を有しつつ、巻回可能なシートが求められる場合がある。
【0050】
ここで、シート1では、一の方向(y軸方向)に沿って延びる複数の線状凸部2が、一の方向(y軸方向)とは異なる他の方向(x軸方向)に沿って相互に間隔をおいて設けられている。このため、シート1は、一の方向(y軸方向)における高い剛性を有する。
【0051】
また、隣り合う線状凸部2の間に位置する部分の厚みをtとしたときに、t≦0.6が満たされ、好ましくは≦0.5が満たされる。このため、隣り合う線状凸部2の間に位置する部分が可撓性を有する。換言すれば、隣り合う線状凸部2の間に位置する部分が湾曲可能である。従って、シート1は、一の方向に延びる軸を中心軸として巻回可能である。
【0052】
ただし、隣り合う線状凸部2の間に位置する部分の厚みtが薄すぎると、隣り合う線状凸部2の間に位置する部分の剛性が弱くなり、シート1が破損する虞がある。このため、0.1≦tが満たされることが好ましく、0.2≦が満たされることがより好ましい。
【0053】
このように、シート1では、一の方向に沿って延びる線状凸部2によって一の方向における剛性が高くすることができると共に、t≦0.6が満たされることによりシート1が巻回することができる。
【0054】
なお、隣り合う線状凸部間が樹脂組成物層のみにより構成されている場合は、シートの、隣り合う線状凸部間に位置する部分の厚みを薄くすると、可撓性が向上するものの、繰り返しの可撓により損傷する虞がある。
【0055】
ここで、シート1では、隣り合う線状凸部2間に位置する部分が、第1及び第2の樹脂含浸繊維シート11,12により挟持されている。この第1及び第2の樹脂含浸繊維シート11,12により、隣り合う線状凸部2間に位置する部分の繰り返しの可撓に対する耐久性が向上されている。
【0056】
隣り合う線状凸部2間に位置する部分の繰り返しの可撓に対する耐久性をさらに向上する観点から、第1の樹脂含浸繊維シート11が可撓する方向であるx軸方向に沿って延びる繊維を含むことが好ましい。また、樹脂組成物層13にランダムな方向の沿って延びる複数の繊維を含ませることにより、シート1のx軸方向における耐久性が向上するため、隣り合う線状凸部2間に位置する部分の繰り返しの可撓に対する耐久性をさらに向上することができる。
【0057】
シート1では、平面視において、隣り合う線状凸部2の間の距離をLとしたときに、5≦L≦30であることが好ましく、10≦L≦25であることがより好ましい。また、線状凸部2の高さをH,線状凸部の最大幅をWとしたときに、0.3≦H/W≦3.0であることが好ましく、1.0≦H/W≦2.5であることがより好ましい。L及びH/Wの値をこのようにすることにより、一の方向における剛性を担保しつつ、シート1の巻回性をさらに向上することができる。
【0058】
シート1のy軸方向における強度をより高める観点からは、第1及び第2の樹脂含浸繊維シート11,12が、それぞれ、線状凸部2の延びる方向であるy軸方向に沿って延びる複数の繊維を含んでいることが好ましい。第1及び第2の樹脂含浸繊維シート11,12に含まれる繊維が線状凸部2の延びる方向であるy軸方向に沿って延びていることが好ましい。
【0059】
なお、本実施形態においては、線状凸部2の横断面形状が矩形状である例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。本発明において、線状凸部の横断面形状は、例えば、矩形状、台形状、平行四辺形状、角部が丸められた矩形状、角部が丸められた台形状、角部が丸められた平行四辺形状、ドーム状、半円形状等であってもよい。
【0060】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0061】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係るシートの模式的斜視図である。
図4は、
図3の線IV−IVにおける模式的断面図である。
【0062】
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係るシート1Aでは、樹脂組成物層13のうち、少なくとも線状凸部2内に位置している部分が発泡体である。このため、シート1Aは、低い密度を有する。
【0063】
具体的には、シート1Aでは、樹脂組成物層13の全体が発泡体である。このため、シート1Aは、より低い密度を有しており、軽量である。
【0064】
樹脂組成物層13の少なくとも一部が発泡体である場合、樹脂組成物層13は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン及びポリアクリル等の樹脂を含むことが好ましい。樹脂組成物層13は、これらの樹脂のうちの1種の樹脂のみを含んでいてもよいし、複数種類の樹脂を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1、1A シート
1a 第1の主面
1b 第2の主面
2 線状凸部
11 第1の樹脂含浸繊維シート
12 第2の樹脂含浸繊維シート
13 樹脂組成物層