特許第6721461号(P6721461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6721461
(24)【登録日】2020年6月22日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】バンパディフューザ
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/48 20060101AFI20200706BHJP
【FI】
   B60R19/48 L
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-169660(P2016-169660)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-34657(P2018-34657A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】北尾 浩
(72)【発明者】
【氏名】宮田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】菊澤 冬弥
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−025768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/00 − 19/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のリアバンパに取り付けられ、マフラから車外に放出される排気ガスが通過するバンパディフューザであり、
前記マフラの最後部に形成されるテールパイプの後方に形成され、前記マフラの前記テールパイプから排出される前記排気ガスが通過する筒状部と、
前記筒状部の内部に配設され、前記テールパイプから排出される前記排気ガスの流れに沿って配置され、前記車両の後方から前記筒状部を経由して地面へ向かう視線を遮る板状部材と、を具備し、
前記筒状部の後方上端部は、前記リアバンパの後方下端部よりも後方側に配置され、
前記筒状部の後方上端部と後方下端部とをつなぐ仮想線は、前記リアバンパの後方下端部よりも後方側に向かって伸び、且つ、前記仮想線は、上方に向かって後方に傾斜する傾斜線であり、
前記板状部材の前端部は、前記筒状部の後方上端部と、前記筒状部の前方下端部とをつなぐアイラインの前端よりも前方側に配置され、
前記板状部材の後端部は、前記アイラインの後端よりも後方側に配置され、
前記筒状部の前方下端部は、前記アイラインの前端よりも後方側に配置されることを特徴とするバンパディフューザ。
【請求項2】
前記筒状部と前記リアバンパとは離間することを特徴とする請求項1に記載のバンパディフューザ。
【請求項3】
前記板状部材は、前記テールパイプの後端中心部の後方に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバンパディフューザ。
【請求項4】
前記板状部材の後端部は、前記筒状部の後端部付近まで延在することを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のバンパディフューザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアバンパに配置されたバンパディフューザに関し、特に、車両の後方からの意匠性を向上させたバンパディフューザに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、バンパ一体型ディフューザ構造が記載されている。このバンパ一体型ディフューザ構造では、車体後部に配設されるバンパにディフューザが一体的に形成されており、エンジンから排出される排気ガスは、マフラーおよびディフューザを経由して、車体後方に向かって放出される。
【0003】
更に、特許文献1には、ディフューザを介して路面が見えることを防止する為の構成が記載されている。具体的には、ディフューザを構成する筒部の一部をマフラー本体側に延出させた延出面とし、この延出面をマフラー本体の下部に配置している。このようにすることで、ディフューザの開口部を後方から覗いた際に、ディフューザから路面が見えてしまうことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第477033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載されたバンパ一体型ディフューザ構造では、ディフューザの延出面がマフラー本体の下部に配置している。従って、マフラー本体とディフューザとが接近する場合や、マフラー本体の動き量が大きい場合に、両者が接触してしまう恐れが有るため、有効な延出面を設けられない恐れがあった。有効な延出面を設けられないと、ディフューザを介して後方から地面が見えてしまい、ディフューザひいては車両全体の外観品質が低下してしまう恐れがあった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成で意匠性を向上させたバンパディフューザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両のリアバンパに取り付けられ、マフラから車外に放出される排気ガスが通過するバンパディフューザであり、前記マフラの最後部に形成されるテールパイプの後方に形成され、前記マフラの前記テールパイプから排出される前記排気ガスが通過する筒状部と、前記筒状部の内部に配設され、前記テールパイプから排出される前記排気ガスの流れに沿って配置され、前記車両の後方から前記筒状部を経由して地面へ向かう視線を遮る板状部材と、を具備し、前記筒状部の後方上端部は、前記リアバンパの後方下端部よりも後方側に配置され、前記筒状部の後方上端部と後方下端部とをつなぐ仮想線は、前記リアバンパの後方下端部よりも後方側に向かって伸び、且つ、前記仮想線は、上方に向かって後方に傾斜する傾斜線であり、前記板状部材の前端部は、前記筒状部の後方上端部と、前記筒状部の前方下端部とをつなぐアイラインの前端よりも前方側に配置され、前記板状部材の後端部は、前記アイラインの後端よりも後方側に配置され、前記筒状部の前方下端部は、前記アイラインの前端よりも後方側に配置されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のバンパディフューザでは、前記筒状部と前記リアバンパとは離間することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のバンパディフューザでは、前記板状部材は、前記テールパイプの後端中心部の後方に配置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のバンパディフューザでは、前記板状部材の後端部は、前記筒状部の後端部付近まで延在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、車両のリアバンパに取り付けられ、マフラから車外に放出される排気ガスが通過するバンパディフューザであり、前記マフラの最後部に形成されるテールパイプの後方に形成され、前記マフラの前記テールパイプから排出される前記排気ガスが通過する筒状部と、前記筒状部の内部に配設され、前記テールパイプから排出される前記排気ガスの流れに沿って配置され、前記車両の後方から前記筒状部を経由して地面へ向かう視線を遮る板状部材と、を具備し、前記筒状部の後方上端部は、前記リアバンパの後方下端部よりも後方側に配置され、前記筒状部の後方上端部と後方下端部とをつなぐ仮想線は、前記リアバンパの後方下端部よりも後方側に向かって伸び、且つ、前記仮想線は、上方に向かって後方に傾斜する傾斜線であり、前記板状部材の前端部は、前記筒状部の後方上端部と、前記筒状部の前方下端部とをつなぐアイラインの前端よりも前方側に配置され、前記板状部材の後端部は、前記アイラインの後端よりも後方側に配置され、前記筒状部の前方下端部は、前記アイラインの前端よりも後方側に配置されることを特徴とする。従って、排気ガスを流通させる筒状部を有するバンパディフューザをリアバンパに形成した場合でも、筒状部を経由した地面への視線を板状部材で遮ることができるので、車両後方から筒状部を経由して地面が見えてしまうことによる意匠性の低下を抑止することができる。更に、板状部材が、テールパイプから排出される排気ガスの流れに沿って配置されることで、板状部材により排気ガスの流れが妨げられることを抑止することができる。
【0014】
また、本発明のバンパディフューザでは、前記筒状部と前記リアバンパとは離間することを特徴とする。従って、筒状部とリアバンパとを離間させることで、排気ガスが有する熱が筒状部を経由してリアバンパに伝導することを抑止することができる。
【0015】
また、本発明のバンパディフューザでは、前記板状部材は、前記テールパイプの後端中心部の後方に配置されることを特徴とする。従って、テールパイプから排出される排気ガスの約半分が板状部材の上方を通過し、残りの約半分が板状部材の下方を通過するようになるので、排気ガスの噴射音を小さくすることができる。
【0016】
また、本発明のバンパディフューザでは、前記板状部材の後端部は、前記筒状部の後端部付近まで延在することを特徴とする。従って、排気ガスの流れに沿う方向に板状部材を長くすることができるので、排気ガスの流れを整流化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態にかかるバンパディフューザが取り付けられた車両の後方部分を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態にかかるバンパディフューザおよびその周辺を示す断面側面図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるバンパディフューザを示す図であり、(A)はバンパディフューザ周辺を示す断面側面図であり、(B)はバンパディフューザを後方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るバンパディフューザ13を、図面に基づき詳細に説明する。以下の説明では、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。更に、以下では、上下前後左右の各方向を用いて説明するが、左右とは車両10の進行方向を向いた場合を示している。
【0019】
図1は、本形態のバンパディフューザ13が配設される車両10の後端部を示す斜視図である。この図1を参照して、車両10の後方下部には、リアバンパ11が備えられている。リアバンパ11は衝撃を緩和するための部材であり、板状に成形された合成樹脂等から成り、車両10の車幅方向に沿って長手方向を有する長尺部材である。
【0020】
リアバンパ11の左方下部を部分的に凹状とすることで凹状部18が形成されており、この凹状部18にバンパディフューザ13が配置されている。
【0021】
バンパディフューザ13は、ここでは図示しないマフラの後方に、リアバンパ11と一体的に配置される。後方から見た場合のバンパディフューザ13の形状は、円形、楕円形または略楕円形である。車両10に駆動力を与えるエンジンが稼働する際に発生する排気ガスは、図示しないマフラおよびバンパディフューザ13を経由して外部に放出される。
【0022】
バンパディフューザ13はリアバンパ11と一体的に形成されていることから、バンパディフューザ13とリアバンパ11との相対的位置が固定されることで、バンパディフューザ13周りの意匠性を向上させることができる。また、バンパディフューザ13の内部にはルーバ16が形成されている。ルーバ16は、バンパディフューザ13を経由して地面が視認されることを抑止するための板状部材であり、その具体的な形状等は図2等を参照して後述する。ここで、バンパディフューザ13は、マフラカッタと称される場合もある。
【0023】
図2および図3を参照して、バンパディフューザ13およびその周辺の構成を詳述する。
【0024】
図2はバンパディフューザ13およびその周辺の構成を示す断面側面図である。バンパディフューザ13は、前後方向に伸びる中心軸を有する筒状部15と、筒状部15の内部に配置されたルーバ16とから主に構成されている。バンパディフューザ13は、ここでは図示しないブラケット等を介して、車両10の車体側に取り付けられている。
【0025】
マフラ12は、バンパディフューザ13の前方に配置されている。マフラ12の後端に形成されるテールパイプ14は、バンパディフューザ13の前方直近に配置されている。
【0026】
筒状部15は、鋼板等の板状材料からなり、前方に向かって開口する前方開口23と、後方に向かって開口する後方開口24とを有する。筒状部15は、マフラ12から排出される排気ガスを集約して後方に排出するために、後方に向かって幅が狭くなる形状を呈している。
【0027】
筒状部15の前方下端部26は、前方上端部25よりも前方に延出している。本形態では、後述するようにルーバ16で後方からのアイライン20を遮るので、意匠性を確保するために前方下端部26を前方に過度に延出する必要はない。よって、バンパディフューザ13の前方下端部26とマフラ12との距離を十分に長く確保できる。よって、走行時におけるマフラ12の動き量が大きい場合でも、マフラ12が大口径のものであっても、マフラ12とバンパディフューザ13とが干渉してしまうことを抑止できる。
【0028】
バンパディフューザ13の後端部分は、前方に向かって180度に折り返し加工されている。また、バンパディフューザ13の後端部分は、リアバンパ11に密着するのではなく、バンパディフューザ13の後端部分とリアバンパ11との間には間隙17が形成されている。このことから、排気ガスが通過することでバンパディフューザ13の温度が上昇しても、バンパディフューザ13とリアバンパ11とは離間しているので、バンパディフューザ13からの熱の伝導によりリアバンパ11が過度に加熱されることがない。よって、加熱によりリアバンパ11が劣化してしまうことが抑止されている。更に、バンパディフューザ13の後端部分とリアバンパ11との間に間隙17を形成することで、バンパディフューザ13を、リアバンパ11から分離した構成要素のような外観とすることができる。
【0029】
バンパディフューザ13の後方部分は略円筒形状または略楕円筒形状であり、この部分にルーバ16が内蔵されている。ルーバ16は例えば金属板からなり、溶接、カシメ加工または嵌合等によりバンパディフューザ13の内部に固定されている。ルーバ16は、上下方向においてバンパディフューザ13の中央部に配置され、更に、その主面が水平面に対して並行となるように横置きされている。
【0030】
ルーバ16の前方端部は、バンパディフューザ13の前方下端部26と後方上端部33とをつなぐアイライン20よりも前方に延出している。ここで、アイライン20とは、車両10の後方からバンパディフューザ13の後方開口24を経由して地面に向かう視線の範囲のことであり、この図ではアイライン20を一点鎖線で挟まれる領域として示している。一方、ルーバ16の後方端部は、筒状部15の後方端部またはその近傍まで延出している。これにより車両10からバンパディフューザ13を通過して地面に向かう視線はルーバ16で遮られ、バンパディフューザ13を経由して地面が視認されることで、バンパディフューザ13の意匠性が低下することを抑止できる。更には、バンパディフューザ13の前後方向に沿う長さを長くすることができるので、バンパディフューザ13により排気ガスを整流し、排気ガスによる噴流音の発生を抑制することができる。
【0031】
テールパイプ14の直径が例えば10cm以上となる大口径の場合、バンパディフューザ13も大口径となり、車両10の後方からバンパディフューザ13を介して地面が見えやすくなる。このような大口径の場合であっても、本形態ではバンパディフューザ13の内部でルーバ16により視線を遮るので、バンパディフューザ13を経由して後方から地面が見えてしまうことが抑止されている。
【0032】
また、上記した視線を遮るために、バンパディフューザ13の前方下端部26を前方まで過度に延出せる必要が無いことから、テールパイプ14が大口径のものであった場合でも、テールパイプ14とバンパディフューザ13とを十分に離間させ、両者が接触してしまうとこを防止することができる。
【0033】
図3を参照して、バンパディフューザ13の構成を更に説明する。図3(A)はバンパディフューザ13およびその周辺部を示す側面断面図であり、図3(B)はバンパディフューザ13を後方から見た図である。
【0034】
図3(A)を参照して、バンパディフューザ13の後方上端部33と後方下端部34とをつなぐ仮想線31は、上方に向かって後方に傾斜する傾斜線となっている。このようにバンパディフューザ13の後方端部を傾斜形状とし、リアバンパ11の傾斜形状と調和させ、バンパディフューザ13の後端部分が後方に過度に突出することを抑制している。
【0035】
ルーバ16は、テールパイプ14の中心線30と重畳する箇所またはその近傍に配置されている。また、テールパイプ14の中心線30と、バンパディフューザ13の筒状部15の上下方向における中央とは、実質的に一致している。従って、テールパイプ14から後方に排出される排気ガスの約半分は、バンパディフューザ13の内部においてルーバ16よりも上方部分を通過する。また、排気ガスの残りの約半分は、バンパディフューザ13の内部においてルーバ16よりも下方部分を通過する。よって、ルーバ16の上方部分と下方部分で、排気ガスが流通する環境が略等しくなることから、排気ガスによる噴流音の発生を更に抑制することができる。
【0036】
更に本形態では、ルーバ16は、厚みが1.0mm以下の平坦板とされている。このようにルーバ16を薄い平板から構成することで、排気ガスがルーバ16に沿って良好に流れるようになり、排気ガスの流路にルーバ16が存在することによる圧力損失を小さくすることができる。
【0037】
また、ルーバ16の色は、その存在を強調して意匠的効果を発揮するために黄色や赤などの鮮やかな色でも良いし、その存在を隠すために黒や灰色などの暗色系の色であってもよい。
【0038】
以上、本発明の実施形態を示したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0039】
図1を参照して、上記した本形態ではバンパディフューザ13はリアバンパ11の左方端部に1つのみが形成されたが、バンパディフューザ13はリアバンパ11の中央部、右方端部、または左右両端部に複数が設けられてもよい。
【0040】
図2を参照して、上記した本形態ではバンパディフューザ13に1つのルーバ16を形成したが、上下方向に複数のルーバ16を形成し、視線を遮断する効果を大きくしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 車両
11 リアバンパ
12 マフラ
13 バンパディフューザ
14 テールパイプ
15 筒状部
16 ルーバ
17 間隙
18 凹状部
20 アイライン
23 前方開口
24 後方開口
25 前方上端部
26 前方下端部
30 中心線
31 仮想線
33 後方上端部
34 後方下端部
図1
図2
図3