【文献】
Histochem Cell Biol,2009年,Vol. 131,p. 267-282
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステップBの前記胚外組織前調製は、清浄、洗浄、組織の事前切断、磨砕、圧縮及び解離酵素を用いたマイルドな前処理のうちの1又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
ステップEの前記間葉系幹細胞を、前記組織断片から分離して、洗浄し、そして、70%から90%の半コンフルエント状態に達した後に取り除く、請求項1に記載のプロセス。
前記ステップEの後に分離され、前記ステップDに戻る前記胚外組織の前記断片は、ステップB及びCに従って得られた断片と混合することができる、請求項1に記載のプロセス。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
幹細胞群は、ヒトの体の特定の解剖学的な位置(即ち、天然ニッチ)に存在していることが知られている。天然ニッチは、適切な恒常性及び組織修復の関与並びにこれらの細胞の分裂を可能にするのに必要なこれらの維持管理及び細胞相互作用を保証するものである。従って、幹細胞ニッチは、細胞の未分化状態の維持管理に関する狭い範囲での細胞間シグナルを提供する微小環境において、その細胞外マトリクスと調和的に相互作用して存在している数種類の細胞を含む任意の組織の機能的ユニットである。
【0003】
本発明では、特定且つ非排他的様式において、適切な幹細胞ニッチは、一般的に、出産で女性の体が排出する胚外組織、特に胎盤、羊膜及び臍帯(その構成成分(例えば、静脈、動脈、上皮及び結合組織)、好ましくは、血液除去後のものを含む)に含まれるものを含んでいる。
【0004】
以下において、表現を容易にするためだけに、そして、本発明に適する天然幹細胞ニッチ(NSCN)の代表として、血液を除いた後の間葉結合組織(ウォートンジェリー)、動脈、静脈及び外側上皮を含む完全な臍帯組織(UCT)を具体的な参照としているが、いかなる形であれ、他のNSCN(例えば、これらに限定するわけではないが、神経、筋肉、脂肪、骨、皮膚及び臓器(例:肝臓、肺、心臓、脾臓、肝臓、膵臓、精巣、卵巣又は生検由来のもの)由来組織)と他の出生後の組織や成体の組織、更にはNSCNを有するがん組織の使用に関して、本発明を限定するものではない。
【0005】
ヒト組織又は基材から幹細胞を単離する様々な方法が知られている。しかしながら、今日まで、生理活性分子(ペプチド、成長因子、ホルモン等)の大量産生のために、そして、治療のために、幹細胞の生育要求及び周皮細胞の栄養特性を有し多くの治療においてSC(幹細胞)と置き換えることができるそれらの誘導体の生育要求に応答した大規模な細胞獲得を保証できる方法は存在しない。
【0006】
ヒトの体における様々な基材を酵素的プロセスにて幹細胞を取得及び/又は回収する手順に関する技術的記載は、数えきれないほど存在している。しかしながら、酵素的プロセスの使用に関するものでさえも、幹細胞を大量に生産する方法の開示は存在しない。
【0007】
とりわけ、組織の生産、臓器移植、組織及び/若しくは完全な臓器の印刷、患者における直接的な損傷治癒並びに多くの自己免疫疾患における免疫抑制のために、相当量の幹細胞が必要であるのは公知である。これらの治療には患者の体重1キログラム当たり2×10
6の細胞量が必要であるとする参考文献が存在する。これらの幹細胞は、ST特性及び細胞継代数に関して規格化される。
【0008】
以下の説明で分かるように、本発明は、本質的に非酵素的様式で、幹細胞及び前駆細胞を大量に取得する高収率で単純なプロセスを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の記述
本発明は、成人幹細胞、特に多能性間葉系/間質幹細胞及び血管周囲前駆体(例えば周皮細胞)を生産するための革新的なプロセスに関する。
【0011】
従来の方法と異なり、本発明のプロセスは、本質的に非酵素的であり、幹細胞ニッチにおいて、生物学的相乗様式で(即ち、それらの環境と平衡に)、能動的に増殖する幹細胞の集団の増殖及び分離に基づくものである。特定の組織が幹細胞ニッチであるかどうか照合する方法は、本発明の一部ではない。これは、当業者にとって公知である(例えば、免疫蛍光法及び免疫組織化学法)。
【0012】
本発明は、被処理組織に対して100%の成功率及び効率を有する有利且つ強力なプロセスを提供するものであり、大量の細胞取得を可能にし、分離プロセスに関する時間遅延を最小限にすることが可能になる。
【0013】
本発明のプロセスから大量に単離される間葉系幹細胞(MSC)は、薬を生産する医薬品産業又は治療において直接使用する医薬分子の生産に関する間葉系幹細胞及び周皮細胞タイプの全ての特徴を示す。本発明のプロセスによって得られるSCは、液体、固体若しくはゲル状の支持相、又は、天然の若しくは合成された多様な性質を有する細胞外マトリクス(巨大分子の複合体:繊維状要素、タンパク質及び多糖)における培養液及び薬剤並びに/又は基材(「足場材」)を使用することによって、大きな組織再生能力と共に、インビトロ及びインビボで、大きな(誘導又は自然発生的な)分化能力を示す。
【0014】
本発明のプロセスによって生産される幹細胞/前駆細胞の特徴は、培養された断片内で示される、インビボ細胞の未分化状態に関するマーカーの発現と同じパターンを有する。
【0015】
本発明のプロセスには、革新的な様式において、SCニッチ(NSCN)のインビトロ培養が含まれる。本発明の根拠とするものではないが、通常の幹細胞ニッチの外での幹細胞のインビトロ培養では、核型又は表現型安定性、分子署名及びゲノム安定性を変化させる可能性があることは公知である。加えて、(幹細胞及び前駆細胞を生産する)幹細胞の不等分裂に起因して、それらは、細胞継代と共に多能性(広範囲にわたる分化した細胞タイプを生産する能力)を失う。天然ニッチから誘導される間葉系幹細胞のこの混合集団は、血液だけは抜かれている血管の除去前又は任意の他の組織の除去前に実施する、本発明のプロセスに従って単離される細胞におけるより大きな生物学的相乗効果を提供することができる。
【0016】
本発明にかかるプロセスの特徴は、遺伝学的及び生物学的変化が実質的にない相当量の幹細胞及び前駆細胞を促進する、NSCNの組織断片の浮遊(又は、三次元)培養である。本発明によれば、組織断片が基礎培地中で浮遊することで、幹細胞/前駆幹細胞が生じる。SCの放出は、NSCN断片からプラスチック培養瓶への細胞の自然移動で発生する。これらの細胞によって、この自然分離後に、集団及び生存性の分子的プロファイルの均一性を不変に保つことが確実になる。
【0017】
本発明による浮遊組織断片の培養では、一般的に、SC生産において以下の動態を示すことが観察された:浮遊液中のNSCN断片の培養によって、断片全体にわたるガス及び栄養分の効果的な拡散が生じ、SCは、休止の状態を出て、刺激されたニッチにおいてそれらを増殖させ(即ち、対称分裂によって数を増やし)、そしてまた、それらの移動は、組織断片化に応答して、NSCN断片内部からその表面で生じる。それ故、断片はより濃くなり、培養瓶基材に一時的に接触/接着することで、SCは放出されて破片から移動し、基材に接着する。基材に対する破片の接着の後、栄養分/ガスの拡散の減少が明らかに強くなることを理由として、増殖しなくなるほど移動が増加する。そして、断片は、基材への広範囲なSCの移動に起因して、より軽くなる傾向があり、自動的又は培養瓶を単純に撹拌することによって、断片は、基材から分離して浮遊する。一旦再浮遊すると、組織の全体にわたるガス及び栄養分の拡散が回復し、ニッチにおけるSCの増殖が新しく増加し、そして、断片が再びより濃くなることから、SCの接着及び放出並びにその後の浮遊という新規なサイクルが確立される。この浮遊-増殖-沈降-接着-移動-放出システムは、天然SCニッチ由来の組織断片の培養の間、数回繰り返すことができる。これによって、幹細胞のコロニーが生じる。時間が経過するにつれて、本発明の細胞からなる多重コロニーが培養瓶の底で観察可能になる。
【0018】
好適な実施形態によれば、自然発生的な細胞分化を防止するために、培養瓶の底での細胞培養(幹細胞/前駆細胞特徴を有する幹細胞の比較的均一な培養)は、半コンフルエント、特に70%から90%のコンフルエントに維持される。「半コンフルエント」という用語は、高密度コンフルエント培養組織において確認されるほど濃くない、細胞同士の実質的な接触が可能な培養を意味する。
【0019】
本発明の具体的な実施形態には、更に、このプロセスから生じる細胞の特徴を変化させる可能性がある他の生理活性分子及び/又は成長因子の追加による基礎培地の改良も含まれる。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、培養するNSCN組織は、これらの組織を培地に浸漬する前に、解離酵素(例えば、トリプシン、コラゲナーゼ、TrypLE(登録商標)等)を用いたマイルドな初期前処理を行ってもよい。かかる前処理は、組織の広範囲な消化ではなく、組織凝集を少し緩和させて基礎培地に浸漬させている時にSCの移動を容易にすることを目的にするものである。
【0021】
本発明にかかるプロセスの終了後、得られた幹細胞/前駆細胞のインビトロ又はエキソビボ成長又は伸長のために他の容器に接着したSC及びそれらの各継代細胞の更なる酵素処理は、周皮細胞の分離に好適である。
【0022】
本発明のプロセスの特色は、例えば、デバイス(例:ピペット、クランプ、ニードル又は機器)を用いて、例えば、任意の適切な機械的様式によって、又は、単に容器から別の容器へと内容物を注ぐことによって、NSCNから断片を除去及び輸送することである。これらのNSCN組織断片(浮遊断片)を新規な容器に輸送した後、それらは、酵素処理が実行されなかったため、継代ゼロの(継代していない)SCの生産を続けることができる。
【0023】
本発明のプロセスでは、組織内で増殖する幹細胞を含み、言及したいくつかの機械的組織輸送の後であっても様々なタイプの幹細胞の発現マーカーを維持しているNSCN断片を使用する。
【0024】
本発明のプロセスは、出産で女性の体が放出する胚外組織(特に臍帯、羊膜及び胎盤)に含まれるニッチの使用に基づくことで、侵襲性が最小限となるものである。含まれている幹細胞の利点の他のものに関して、それらの若さに言及すべきである。哺乳類の老化は、組織再生の減少(変性疾患及びがんの発生増加)と関連している。幹細胞は、多くの成体組織を再生するため、これらが、変異の蓄積によって、がんの進行の一因となり得る場合、幹細胞の年齢関連改変は、おそらく年齢関連病的状態の一因になる。これに合わせて、様々な組織の幹細胞の役割は、経年的に減少することから、おそらく、腫瘍サプレッサーの発現消失、DNA損傷、細胞生理の変化及び組織環境の変化となる。老化中の幹細胞機能の低下が生体寿命に影響するかどうかは、わかっていない。しかしながら、寿命に影響するメカニズムによって、幹細胞に対する効果を通じて部分的に年齢関連病的状態が調節される。従って、出産に関連した胚外組織の幹細胞は、若い細胞(本発明のプロセスで得られた細胞は胎生期細胞でないという事実を強調させていただく)であるため、細胞療法に非常に重要である。
【0025】
必須ではないが、NSCN組織の初期洗浄は、本発明のプロセスに、特に、成長する組織の断片化前の血液除去のために適切である。
【0026】
特に、NSCN洗浄は、外部的且つ内部的になされる。それは、例えば、蒸留水又は無菌の緩衝生理食塩溶液(PBS又は生理溶液及び抗生物質(例えばペニシリン及びストレプトマイシン2%))によって外部的になされる。それは、例えば、蒸留又は無菌の緩衝生理食塩溶液(PBS又は生理溶液及び抗生物質(例えばペニシリン及びストレプトマイシン2%)を用いて血管(動脈及び静脈)の内部を洗浄することによって、内部的になされる。
【0027】
本発明のプロセスに従って培養されるNSCNの断片化は、例えば、鋭いブレードを用いて無菌条件下で手動又は機械的に切断することによって任意の適切な方法からなすことができる。好ましくは、必須ではないが、切断は、加熱することなく、圧力を用いた適切なウォータージェットカッターを用いて組織に対してほとんど圧力を加えずになされなければならない。
【0028】
具体的な実施形態において、本発明は、NSCNの組織断片の反復凍結保存/解凍にも関するものであり、これによって、特に単一の患者由来で細胞継代が少ない(一般的に5以下の)NSCN組織を伴う、新規な幹細胞/前駆細胞の連続した大規模生産を可能にする。しかしながら、この態様は、本発明のプロセスを限定するものではなく、単一の患者由来の、若しくは、二人以上の互いに異なる患者由来のNSCNを使用することができる、又は、1若しくは複数の患者由来の、若しくは、より多くのNSCN継代を有する、種々のNSCNを同時に使用することができる。
【0029】
本発明のプロセスに従って得られた細胞は、未分化状態において、周皮細胞マーカー(CD140b及びCD166)と同時に一群のMSCマーカー(CD29、CD73、CD90、CD105)を発現し、更には、造血系マーカー(CD34及びCD45)も組織適合性マーカー(HLA-DR)も発現しない。本発明のプロセスから得られる細胞は、多能性を有し、公知の条件(例えば、誘導薬剤(例えば、レチン酸、ジメチルスルホキシド等)、成長因子及びサイトカインの追加)を用いて、連続して増殖する自己複製及びインビトロ分化が可能である。これらの条件下では、本発明の幹細胞/前駆細胞は、互いに異なる細胞タイプ(例えば骨、軟骨及び脂肪)に分化する。本発明によって得られる幹細胞/前駆細胞は、内皮始原細胞の特徴であるCD31マーカーも発現するため、それらは、更に、筋肉、内皮及び神経細胞に分化することができる。
【0030】
本発明のプロセスによって得られる細胞及び/又は断片は、多くの可能性がある用途(例えば治療、非治療、生物工学的及び製薬用途)に適する。
【0031】
従って、本発明は、以下のステップを含むことによって特徴づけられる、幹細胞(特にNSCN組織の培養由来の多能性幹細胞/前駆細胞)を得るためのプロセスを目的とする:
A- 1又は複数のNSCNの取得ステップ;
B- 1又は複数のNSCNの前調製ステップ;
C- 1又は複数のNSCN組織断片の調製ステップ;
D- 基礎培地においてNSCN断片を培養することによるSC増殖の促進ステップ;
E- NSCN断片からのSCの分離ステップ;
F- 任意に、Eにおける分離されたNSCNをステップDに戻すステップ。
【0032】
プロセスのステップにおけるSCという記載には、幹細胞及び前駆細胞が含まれる。
【0033】
本発明のプロセスに対するステップAは、特に、特定のNSCN(例えば臍帯)の取得をもって実行される。従って、その他のいかなるものも除外するものではないが、本発明のプロセスで使用するNSCNは、女性の出産由来の組織、特に、動脈及び静脈、ウォートンジェリー及び上皮を有する臍帯、羊膜及び胎盤(更には、特に完全な臍帯)である。神経、筋肉、脂肪、骨、皮膚及び(例えば肝臓、肺、心臓、脾臓、肝臓、膵臓、精巣、卵巣又は更には生検由来組織の)臓器由来組織は、本発明に適しており、挙げたものだけでなく、NSCNを含む他の出産後組織及び成体組織並びに更にはがん組織にも限定されない。
【0034】
上記の項目(B)によれば、NSCNは、清浄、洗浄、組織の事前切断、磨砕、圧縮、解離酵素(特にコラゲナーゼ、ディスパーゼ、トリプシン、TrypLE(登録商標))を用いたマイルドな前処理等からなっていてもよい前調製がなされる。
【0035】
特に、NSCN組織は、例えば、分化の誘導、中毒、汚染等によって、培養中にSC増殖に悪影響を与える可能性がある血液及び他の基材の除去を目的とする清掃/洗浄がなされる。臍帯の特定のケースにおいて、適切な清掃は、例えば、蒸留水、生理食塩水溶液、生理溶液及び抗生物質(例えば、ペニシリン及びストレプトマイシン)の1又は複数を用いて、内部的且つ外部的に実施される。内部洗浄は、例えば、内側組織血管に基材を注入して、引きずりによって物質を取り除くことによって実施される。
【0036】
具体的な実施形態において、臍帯の洗浄及び清掃は、例えば、臍帯静脈から5〜10cmの予め切断されたパーツに実施することで、血塊が含まれるのを回避する。
【0037】
更に、ステップBに従って、前調製は、解離酵素(例えば、トリプシン、コラゲナーゼ、TrypLE(登録商標等)を用いた組織のマイルドな初期前処理を伴っていてもよい。かかる前処理は、組織の広範囲な消化ではなく、組織凝集を少し緩和させて基礎培地に浸漬させている時にSCの移動を容易にすることを目的にするものである。
【0038】
本発明のプロセスのステップCに関して、すでに述べたように、NSCN組織を断片化する様式は、いかなる形であれ、その目的に適したものである。臍帯の場合、例えば、0.5から1cmの寸法を有する立方体に達するまで横及び/又は長手方向に切断して得られる断片であれば、十分である。任意の他のサイズ又は断片フォーマットは、組織の磨砕により得られた粒子であっても、本発明の範囲に含まれる。
【0039】
更に、ステップCに関して、本発明の特定の実施形態において、NSCNの断片化は、次のステップDにおける生育のために完全な組織の特定のパーツだけの使用を意図する。例えば、臍帯の場合、静脈、動脈、上皮又はウォートンジェリーの断片だけを用いてもよい。それぞれは、特定の幹細胞/前駆細胞を発生させる。それらは、所望の目的に従って、分子署名、分化潜在性及び特異的活性分子の生産性をもつ細胞を生産するために、別々に用いることができる、又は、共に用いることができるNSCN構成要素(静脈、動脈、上皮等)由来の断片である。
【0040】
本発明のプロセスのステップDに関して、臍帯の断片及び/又はNSCN細胞を培養するための基礎培地は、同じ表現型及び分子的特徴を有する幹細胞及び前駆細胞の増殖/伸長及び分離を可能にするものであれはなんでもよい。例えば、アミノ酸、タンパク質、血清及び抗生物質を一般的には含む、当業者には公知のDMEM/F12(「ダルベッコ改変イーグル培地」/ハムF12(1:1)、インビトロゲン(米国))又は任意の等価な基材である。
【0041】
上記基礎培地には、例えば、±15wt%の血清が適切に含まれている。特に、上記血清は、例えば、ウシ由来のも(例:ウシ胎児血清)であり、ヒト血清も適切であり(例えば、血小板が豊富なもの又は血漿が少ないもの)、他の動物のもの(その組み合わせを含む)だけでなくSC分離を可能にする他の天然又は合成薬剤もそうである。
【0042】
ステップDの培地には、抗生及び/又はアミノ酸が適切に含まれている。使用する抗生物質には、熟練した技術者の技術的知識に基づくもの(例えば、ペニシリン及びストレプトマイシン又はゲンタマイシンの組み合わせ)が含まれる。とりわけ、本発明の実施に有効なアミノ酸は、グルタミン、非必須アミノ酸又はそれらの混合物である。
【0043】
培地の頻繁な交換/更新は、NSCN組織の断片の方が細胞よりも急速に培地を消費するため、特にステップDにおいて実施される。pHを塩基から酸に変える培地交換は、適切である。上記変えることは、例えば、生育培地の色の変化(一般的にはピンクから黄色)又は任意の他の適切な様式によって評価される。
【0044】
任意に、本発明のプロセスのステップDの後、(例えば、一部又は全ての基礎培地を取り除くことによって)得られるNSCN断片及び幹細胞を含む濃縮物を調製することができる。そのような濃縮物は、将来のために保存される。かかる濃縮物の保存は、当業者によって知られている方法、例えば、凍結保存を介する。この濃縮物の使用は、上記項目Eに従って、将来、解凍、基礎培地への新規な組入及びその後の断片からの細胞/前駆細胞の分離によって適切に実施される。
【0045】
具体的な実施形態において、培養によって得られる及び/又は条件付けられるNSCN及び/又は幹細胞の濃縮物は、本発明のプロセス(ステップD)における再利用以外の追加の使用に関して、凍結乾燥させることもできる。
【0046】
本発明のプロセスのステップEによると、1回目の培養サイクルの後、NSCN組織の断片を機械的に単離し、その直後又は保管(凍結保存)後に、ステップFによればステップ(D)の培養を再度行なうことができる。新規な培養における断片の再利用は、SC/前駆細胞を放出する能力が消耗するまでおこなうことができる。ステップEからのかかる断片は、ステップDの培養に未だ使用されていないステップA、B及びCの後を起源とする新しい断片と混合することができる。
【0047】
具体的な実施形態において、NSCN断片は、本発明のプロセスのステップFに従って、ステップEの後に、再利用の他に更なる使用を目的として、脱細胞化、消化及び/又は凍結乾燥してもよい。
【0048】
上記項目Eによる、断片の分離後にSC/前駆細胞に接着性を与えることができる処理は、当業者には公知である。細胞は、一般的に、例えば、抗生物質有り無しの無菌緩衝生理食塩溶液によって洗浄し、そして、機械的か酵素的手段かを問わずに(細胞が半コンフルエントとなった後に)それらを解離させて、それらを回収する。好ましくは、この解離は、酵素手段、特に、動物成分を含まず細胞に対して穏やかであり非常に純粋な組換え酵素であるTryple(登録商標)(インビトロゲン(米会社)が販売)を用いて実行される。約0.25-0.05%のトリプシン/エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の溶液を用いてもよい。これは、例えば、シグマアルドリッチによって売られている。その後、回収された細胞は、一般的に、当業者には公知のプロセスに従い、酵素手段によって細胞継代させる、又は、後の使用のために低温保存される。
【0049】
具体的な実施形態において、本発明のプロセスのステップEにより単離される、本発明のプロセスによって得られるSC/前駆細胞は、具体的な使用のために凍結乾燥することもできる。細胞及び/又は断片によって条件付けられる培地は、培養の基質、生理活性分子、栄養性サプリメントを生産するために、そして、美的用途のために、凍結乾燥することもできる。
【0050】
本発明のプロセスのステップEの後に可能な、NSCNの組織断片又はSC/前駆細胞又はそれらの混合物の凍結保存は、当業者の知識に従って、約-80℃の温度のフリーザー、そしてその後の約-196℃の液体窒素において適切に実施される。
【0051】
本発明のプロセスの項目Eの後、単離されたSC/前駆細胞は、一般的に、当業者に公知のプロセスに従って、意図する目的に適した回数、酵素的細胞継代を行なう。本発明のSCマーカーの大きな安定性は、多くの継代数(例えば、25又は26以上)の後にみられる。
【0052】
本発明のプロセスから生じるNSCN組織断片の培養及びSC/前駆細胞の細胞継代による増殖は、本技術分野では周知のように、マイクロキャリアにおいて、又は、大量に細胞を生産することを目的とする公知のバイオリアクターにおいて実施することができる。
【実施例】
【0053】
本発明の例示的な実施形態は、それらの具現化したものを示すために、添付の特許請求の範囲を越える任意の限定を与えることなく、以下に示されている。
【0054】
実施例1
臍帯の処理及び細胞培養
この実施例の記述は、同様に実行される無数の実施形態のうちの平均な数を表す。
【0055】
完全な臍帯から、5cmの断片を作成し、抗生物質[100ユニット/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシン]を含む無菌緩衝生理食塩溶液[0.01MのPBS、pH 7.4]を用いて内側と外側を(このケースではシリンジのニードルを用いて)二回洗浄し、最大限可能な限り、血液を有する汚染物を除去した。最初の内部洗浄において、洗浄液は、血液によってまだ汚染されており、赤みがかった色を呈していた。加えて、臍帯血管に注入する滅菌水を使用した。そして、洗浄液は無色となった。次に、外科用メスを使用して、臍帯を長軸方向及び横方向に切断して、約0.5×0.5cmの約35個の断片を取得し、次に、それらを、15%のウシ胎児血清(Hyclone(US社)が販売するFBS))、100μg/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、2mMのL-グルタミン及び2mMの非必須アミノ酸を補充したDMEM/F12培地(インビトロゲン(US社)が販売するダルベッコ改良イーグル培地/ハムF12、1:1)を含む75cm
2のフラスコ(コーニング、NY)に移した。ボトルを、湿潤環境下で37℃のCO
2温室に維持した。断片は、2-3日目又は5-7日目から細胞を放出し始めた。そして、個別のバリエーションが本発明のプロセスの他の実施形態において観察された。臍帯断片の細胞培養成長は、2週間、これらの条件に維持された。培地の色は、毎日の交換によって、バラ色(アルカリ性)のままであり、黄色(酸性)ではなかった。このことから、組織が培地を非常に急速に消費することが確かめられた。断片は、培地において浮遊又は浮動させ続けた。一旦ボトル底部が(5-7日目又は9-11日目に)細胞によって覆われ、独特の半コンフルエントのコロニーが形成すると、種々の断片によって観察されるバリエーションに従って、同一サイズの他のボトルに単に注ぐことによって断片を移した。
【0056】
ボトルに接着した細胞は、増殖率が高い線維芽細胞と類似した形態を有し、ほぼ4×10
6の細胞が、2週間で35個の断片から発生した、臍帯細胞は、個々のコロニーを形成する能力が高いことをを示した。そして、1回の継代で、細胞コロニーの形成の頻度は、90cm
2のプレートにおいて約100コロニー/平板播種した100細胞であった。臍帯細胞由来の単一コロニーの成長速度論は、1回の継代で測定した。16日間、毎日、細胞を回収して計数した。成長率の変化は観察されなかった。これらの幹細胞/前駆細胞の形態及び成長パターンの変化が25回後でも確認できなかった。
【0057】
これらの細胞は、得られた全ての株において正常の核型を示し、10回の継代後でも変化を観察することができなかった。
【0058】
実施例2
最新の酵素法と本発明の方法との比較
臍帯を単離して、3つの等しいパーツ(ほぼ5cm)に分けた。第一パーツは、実施例1に従って処理して、生育培地に直接移した。第二及び第三パーツを洗浄して、実施例1にて説明したように断片化処理し、そして、コラゲナーゼ(0.1%のコラゲナーゼ、2時間)及びTrypLE(登録商標)(30分間)でそれぞれ処理した。
図1の通り、細胞集団間の相違が、培養の72時間後(A、B及びC)及び5日後(A1、B1及びC1)に、これらの3つの方法によって観察された。A及びA1において、コロニーを形成し始めている接着された細胞の量だけでなく、より明確に紡錘状である、細胞形態の相違を観察することができる。これらの細胞の増殖は、等しい数の細胞(25cm
2に10
3)を平板播種することによって評価した。本発明にかかる細胞が5日目に10
6細胞量を有する90%コンフルエンスに達して凍結させた一方で、酵素法によって得られた細胞は70%コンフルエンスにしか達しなかったことが観察された(下記の表1を参照)。継代の数は、断片の移送の間、計数しなかった。それゆえに、それぞれの移送は、継代数0の細胞を生産する。従って、断片の複数回の移送を考慮すると、それらの治療的な使用上の限界継代として計算される低継代(最大P5又は継代5)にある細胞数は事実上無限である。
【0059】
[表1]
表1
図1の代替酵素法に対する本発明の態様の比較。
【0060】
実施例3
インビトロで培養された、本発明のプロセスによって得られた細胞のフローサイトメトリーによる特性評価。
フローサイトメトリーによる分析のために、細胞表面分子及びそれらの各コントロールアイソタイプに対する抗体(例えば、ヒト抗CD45モノクローナル(シグマ社、米国)CD90(BD-Pharmigen社(米国))及びCD105、CD73(Serotec社(英国)))を使用した。100万の細胞を、氷上で30分間、抗体と共にインキュベートし、2%のウシ胎児血清及び1μMのアジ化ナトリウムを含むPBSによって洗浄し、次に、FITC(フルオレセインイソチオシアネート(isotiocianate))又はPE(フィコエリトリン)を追加した。フローサイトメトリーによる分析を、CELLQuestソフトウェア(Becton、Dickson and Company(米国))を使用して、FACS(蛍光活性化細胞選別装置(Becton、Dickson and Company(米国))にて実行する。
【0061】
継代におけるフローサイトメトリーによる特性評価によって、本発明のプロセスにより得られた細胞は間葉系幹細胞マーカーがポジティブであることを開示する。
【0062】
インビトロ分化
神経分化のために、本発明にかかる細胞を、1週間、20%のノックアウト血清(インビトロゲン会社(米国))、100ユニット/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン及び2mMのL-グルタミンを補充したDMEM培地を含む25cm
2の培養瓶においてコンフルエンを維持する。従って、これらを、0.05%のトリプシン/EDTA溶液を用いて回収し、同じ培養タイプを含む35cm
2のシャーレに高密度で平板播種する。神経分化は、全トランスレチノイン酸(RA)(シグマ社、米国)の添加によっても誘導される。トリプシン処理によって得られた本発明にかかる細胞の懸濁液を、35cm
2のシャーレに移して、B27を補充した神経基礎培地(インビトロゲン社、米国)を含む0.1%のアガロース溶液(シグマ社、米国)で前処理する。24時間後、細胞は、球状構造を形成し、神経分化は、終濃度がそれぞれ10-7M及び0.05%のRA(レチノイン酸)及びDMSO(ジメチルスルホキシド)の追加によって誘導される。上記培地は毎日交換する。非接着条件下での4日間の培養の後、プレート上のSLS凝着を、適切な培地を含む0.1%のゼラチンで処理する。
【0063】
脂肪細胞分化のために、細胞を、10%のウシ胎児血清、0.25Mのイソブチルメチルキサンチン、10μMのインシュリン及び1%のペニシリンを有するDMEM培地で培養した。誘導培地の交換は、3日毎に実施して、20日間維持した。この期間後、細胞を、室温で60分間、4%のパラホルムアルデヒドを用いて固定し、70%のエタノールを用いて数回洗浄した。次のステップで、それらを、室温で5分間、オイルレッドOと共にインキュベートし、過剰な色素を、蒸留水を用いて数回洗浄して取り除いた。細胞は、フォンコッサ染色でポジティブを示す。
【0064】
軟骨形成分化のために、細胞を、1%のウシ胎児血清、6.25μmインシュリン、10ng/mLのTGF-μ1及び1%のペニシリンを有するDMEM培地で培養した。誘導培地の交換は、3日毎に実施して、21日間維持した。この期間後、細胞を、室温で、4%のパラホルムアルデヒドを用いて固定し、アルシアンブルーを用いて染色した。軟骨形成分化は、サフラニン及びトルイジン特異的染色によって確認することができる。
【0065】
本願明細書において提供される情報から、所定の実施例を用いて、当業者がこの書類において明確に記載されていない実施形態を達成することができ、それは類似の機能を実施して同じ性質の結果に達するものであることから、添付の特許請求の範囲によって実現される保護の範囲に含まれることが知られている。