(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
<1,3−ブタジエン合成用触媒>
本発明の1,3−ブタジエン合成用の触媒(以下、合成触媒ということがある。)は、エタノールに接触して1,3−ブタジエンを生成する触媒であって、その触媒成分として、酸化タングステンと、酸化マグネシウムと、を含有する。
【0011】
合成触媒は、後述する多孔質担体に担持された形態であってもよいし、或いは、合成触媒を構成する各酸化物が互いに保持する、接合する又は凝集する形態であってもよい。担体を使用しない合成触媒の形態をまとめて、非担持型の複合酸化物型触媒と呼ぶ。
【0012】
本実施形態において1,3−ブタジエンの合成効率の向上を図る観点から、酸化タングステンを使用している。酸化タングステンは、エタノールから1,3−ブタジエンを得る触媒反応における助触媒として作用すると考えられ、1,3−ブタジエンの選択率を向上させる。
本実施形態において1,3−ブタジエンの合成効率の向上を図る観点から、酸化マグネシウムを使用している。酸化マグネシウムは、エタノールから1,3−ブタジエンを得る触媒反応における活性種になると考えられる。
本実施形態において目的生成物である1,3−ブタジエンの合成効率のさらなる向上を図る観点から、酸化タングステンと酸化マグネシウムを組み合わせて使用する。
【0013】
合成触媒の比表面積は、特に限定されないが、目的生成物の合成効率のさらなる向上の観点から、例えば、1〜1000m
2/gが好ましく、300〜800m
2/gがより好ましく、400〜700m
2/gがさらに好ましい。
ここで、比表面積は、窒素を吸着ガスとし、BET式ガス吸着法により測定されるBET比表面積である。
【0014】
合成触媒において、酸化タングステンに対する酸化マグネシウムの質量比(酸化マグネシウム/酸化タングステン)は特に限定されないが、目的生成物の合成効率のさらなる向上の観点から、例えば、0.1〜200が好ましく、1〜100がより好ましく、5〜50がさらに好ましい。
上記下限値0.1以上であると、酸化マグネシウムを含有する上記効果がより一層得られる。上記上限値200以下であると、酸化タングステンを含有する上記効果がより一層得られる。
【0015】
合成触媒において、酸化マグネシウムが酸化タングステンよりも質量基準で5倍以上多く含まれることが好ましく、10倍以上多く含まれることがより好ましく、15倍以上多く含まれることがさらに好ましい。
加えて、酸化マグネシウムの含有量が、酸化タングステンの含有量よりも、質量基準で30倍未満が好ましく、25倍未満がより好ましく、20倍未満がさらに好ましい。
上記好適な範囲であると、目的生成物の合成効率をより一層向上することができる。
【0016】
合成触媒(100質量%)における各酸化物の含有量は、
酸化タングステンの含有量:0.1〜90質量%、且つ、酸化マグネシウムの含有量:10〜90質量%であることが好ましく、
酸化タングステンの含有量:1.0〜45質量%、且つ、酸化マグネシウムの含有量:30〜90質量%であることがより好ましく、
酸化タングステンの含有量:2.0〜20質量%、且つ、酸化マグネシウムの含有量:50〜90質量%であることがさらに好ましく、
酸化タングステンの含有量:3.0〜10質量%、且つ、酸化マグネシウムの含有量:70〜90質量%であることが特に好ましい。
上記好適な範囲であると、目的生成物の合成効率をより一層向上することができる。
【0017】
本発明の合成触媒を構成する酸化タングステン及び酸化マグネシウムの含有量は、触媒合成時のタングステン及びマグネシウムの配合比を反映している。合成触媒に含まれる酸化タングステンの含有量はWO
3に換算して算出され、酸化マグネシウムの含有量はMgOに換算して算出される。
【0018】
本発明の合成触媒を構成する元素の濃度の測定方法は特に限定されず、例えば、公知の複合酸化物触媒を試料とする一般的な元素分析方法が適用可能である。具体的には、例えば、蛍光エックス線分析(XRF)が好適である。また、触媒を適切な溶媒に溶解させた溶液を試料として、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析を適用してもよい。
【0019】
合成触媒を構成する酸素以外の元素のモル比としては、Wに対するMgのモル比(マグネシウム/タングステン)=500/1〜10/1が好ましく、300/1〜30/1がより好ましく、150/1〜60/1がさらに好ましい。
上記好適な範囲であると、目的生成物の合成効率をより一層向上することができる。
【0020】
合成触媒には、酸化タングステン及び酸化マグネシウム以外の無機酸化物1種以上、即ち、酸化タングステン及び酸化マグネシウムを除くその他の無機酸化物(以下、単に「無機酸化物ZO」ということがある。)の1種以上がさらに含まれることが好ましい。
ここで、上記の無機酸化物ZOは、酸化タングステンと酸化マグネシウムとを接合するバインダーとして機能することによって、触媒活性の上昇に直接的又は間接的に寄与する物質(即ち、触媒活性を有する物質)であることが好ましい。
上記の無機酸化物ZOが含まれることにより、目的生成物の合成効率をより一層向上することができる。
【0021】
以下、合成触媒における上記の無機酸化物ZOの含有量は、特に明記する場合を除いて、上記の無機酸化物ZO1種以上の合計の含有量を意味する。
【0022】
合成触媒において、上記の無機酸化物ZOが、酸化タングステンよりも、質量基準で1.5倍以上多く含まれることが好ましく、2.0倍以上多く含まれることがより好ましく、2.5倍以上多く含まれることがさらに好ましい。
加えて、上記無機酸化物ZOの含有量が、酸化タングステンの含有量よりも、質量基準で15倍未満が好ましく、10倍未満がより好ましく、5倍未満がさらに好ましい。
上記の好適な範囲で上記の無機酸化物ZOが含まれることにより、目的生成物の合成効率をより一層向上することができる。
【0023】
合成触媒において、上記の無機酸化物ZOが、質量基準で、酸化マグネシウムに対して、0.05倍以上含まれることが好ましく、0.1倍以上含まれることがより好ましく、0.15倍以上含まれることがさらに好ましい。
加えて、上記無機酸化物ZOの含有量が、酸化マグネシウムの含有量よりも、質量基準で0.6倍未満が好ましく、0.4倍未満がより好ましく、0.2倍未満がさらに好ましい。
上記の好適な範囲で上記の無機酸化物ZOが含まれることにより、目的生成物の合成効率をより一層向上することができる。
【0024】
触媒(100質量%)における上記の無機酸化物ZOの含有量は、0.1〜89.9質量%が好ましく、1.0〜50質量%がより好ましく、5.0〜30質量%がさらに好ましく、10〜20質量%が特に好ましい。上記の無機酸化物ZOが0.1質量%以上含まれる場合、酸化タングステンの含有量の上記好適な範囲の上限値は89.9質量%である。
上記の好適な範囲で上記の無機酸化物ZOが含まれることにより、目的生成物の合成効率をより一層向上することができる。
【0025】
合成触媒を構成する酸素以外の元素のモル比としては、Zに対するMgのモル比(マグネシウム/上記の無機酸化物ZOを構成する酸素以外の元素Z)=50/1〜1/1が好ましく、30/1〜3/1がより好ましく、15/1〜5/1がさらに好ましい。
上記好適な範囲であると、目的生成物の合成効率をより一層向上することができる。
【0026】
合成触媒を構成する酸素以外の元素のモル比としては、Wに対するZのモル比(上記の無機酸化物を構成する酸素以外の元素Z/タングステン)=50/1〜1/1が好ましく、30/1〜3/1がより好ましく、15/1〜5/1がさらに好ましい。
上記好適な範囲であると、目的生成物の合成効率をより一層向上することができる。
【0027】
合成触媒(100質量%)における各酸化物の含有量は、
酸化タングステンの含有量の含有量:0.1〜89.9質量%、且つ、酸化マグネシウムの含有量:10〜90質量%、且つ、上記無機酸化物ZOの含有量:0.1〜89.9質量%であることが好ましく、
酸化タングステンの含有量の含有量:1.0〜45質量%、且つ、酸化マグネシウムの含有量:30〜90質量%、且つ、上記無機酸化物ZOの含有量:1.0〜65質量%であることがより好ましく、
酸化タングステンの含有量の含有量:2.0〜20質量%、且つ、酸化マグネシウムの含有量:50〜90質量%、且つ、上記無機酸化物ZOの含有量:5.0〜40質量%であることがさらに好ましく、
酸化タングステンの含有量の含有量:3.0〜10質量%、且つ、酸化マグネシウムの含有量:70〜85質量%、且つ、上記無機酸化物ZOの含有量:10〜20質量%であることが特に好ましい。
上記好適な範囲であると、目的生成物の合成効率をより一層向上することができる。
【0028】
上記の無機酸化物ZOとしては、例えば、一酸化珪素(SiO)、二酸化珪素(SiO
2)、一般式SiOxで表される珪素と二酸化珪素との複合分散体(式中、xは0.5以上1.6未満の数)などの酸化珪素が挙げられる。また、珪藻土、雲母、ゼオライト、シリコアルミノリン酸等の無機酸化物も例示できる。これらのうち、目的生成物の合成効率のさらなる向上の観点から、上記の無機酸化物ZOは二酸化珪素であることが好ましい。二酸化珪素の具体例としては、例えば、コロイダルシリカ(シリカゾル)、フュームドシリカ、メソポーラスシリカ等が挙げられる。
【0029】
合成触媒(100質量%)における各酸化物の含有量は、
酸化タングステンの含有量の含有量:0.1〜89.9質量%、且つ、酸化マグネシウムの含有量:10〜90質量%、且つ、二酸化珪素の含有量:0.1〜89.9質量%であることが好ましく、
酸化タングステンの含有量の含有量:1.0〜45質量%、且つ、酸化マグネシウムの含有量:30〜90質量%、且つ、二酸化珪素の含有量:1.0〜65質量%であることがより好ましく、
酸化タングステンの含有量の含有量:2.0〜20質量%、且つ、酸化マグネシウムの含有量:50〜90質量%、且つ、二酸化珪素の含有量:5.0〜40質量%であることがさらに好ましく、
酸化タングステンの含有量の含有量:3.0〜10質量%、且つ、酸化マグネシウムの含有量:70〜85質量%、且つ、二酸化珪素の含有量:10〜20質量%であることが特に好ましい。
上記好適な範囲であると、目的生成物の合成効率をより一層向上することができる。
ここで、合成触媒に含まれる酸化タングステンの含有量はWO
3に換算して算出され、酸化マグネシウムの含有量はMgOに換算して算出され、二酸化珪素の含有量はSiO
2に換算して算出される。
【0030】
合成触媒における酸化タングステンの含有量が上記範囲内であると、1,3−ブタジエン選択性をより一層向上させる効果が得られる。一方、酸化タングステンの含有量が上記範囲内であると、触媒表面に偏在したり、酸化マグネシウムが構成する活性点を塞いだりして触媒活性を低下させることを防止できる。
【0031】
合成触媒における酸化マグネシウムの含有量が上記範囲内であると、活性点が減少することを防止し、1,3−ブタジエンの収率が大きく低下することを防止できる。一方、酸化マグネシウムの含有量が上記範囲内であると、触媒の塩基性度が増加することを防止し、n−ブタノール選択性が増加することを防止できる。
【0032】
合成触媒における二酸化珪素の含有量が上記範囲内であると、酸化タングステンや酸化マグネシウム結晶の凝集により表面積が低下することを防止し、エタノール転化率が低下することを防止できる。一方、二酸化珪素の含有量が上記範囲内であると、酸点が増加することを防止し、エタノールの脱水によるエチレンの生成量が増加することを防止できる。
【0033】
合成触媒を構成する上記の各無機酸化物は、合成触媒において互いが均一に分散していることが好ましい。均一に分散していることにより、上記の含有量及び含有比が触媒全体で均一になり、目的生成物の合成効率をより一層向上することができる。ここで「均一」とは、例えば合成触媒の粒子中で上記各無機酸化物の分布に偏りがないことをいう。
ここで、本実施形態の合成触媒においては、後述するような担体として用いられる無機酸化物は、合成触媒中で偏って存在しているため、合成触媒を構成する触媒成分の定義には含まれない。例えば合成触媒の体積に比べて格段に巨大な粒子状のシリカ(二酸化珪素)が担体として使用され、含浸法によって合成触媒が製造された場合、他の各酸化物がシリカ担体上で均一に分散していたとしても、シリカ同士は互いに凝集して担体を形成している前提があるため、当該シリカが合成触媒中で均一に分散しているとはいえない。したがって、含浸法の担体を構成するシリカは、上記の無機酸化物ZOとして合成触媒中に均一に分散した二酸化珪素には該当しない。
【0034】
本実施形態の合成触媒中における各無機酸化物の分布を調べる方法として、例えば、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)が挙げられる。一般に、EPMAによって分析試料の断面の組成を面分析し、当該断面における各元素の分布を調べることができる。合成触媒中に各無機酸化物が均一に分布している場合、例えば粒子状の合成触媒の任意の断面において、各元素の分布の均一性がEPMAの面分析によって確認される。
【0035】
担体としては、従来、触媒に用いられている担体を用いることができ、例えば、多孔質担体が好ましい。
多孔質担体の材料は、特に限定されず、例えば、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、アルミナ、活性炭、ゼオライト等が挙げられる。中でも、比表面積や細孔直径が異なる種々の製品が市場で調達できる観点からはシリカが好ましい。ただし、触媒活性に影響を与える前記無機酸化物としての二酸化珪素を含有する場合、当該二酸化珪素の含有量の調整を意義あるものとする観点から、担体としてはシリカ以外が好ましい。
【0036】
多孔質担体の大きさは、特に限定されないが、例えば、粒子径0.5〜5000μmが好ましい。上記下限値以上であると、飛散しやすくなることや、取り扱いが煩雑になることを防止できる。上記上限値以下であると、触媒成分を担持させる際に、触媒成分が担体内部に入りにくくなり、触媒成分の担持量が少なくなって、合成効率の向上の程度が小さくなることを防止できる。
多孔質担体の粒子径は、篩分けにより調節される。
加えて、多孔質担体は、粒子径分布ができるだけ狭いものが好ましい。
【0037】
多孔質担体における細孔容積の合計(全細孔容積)は、特に限定されないが、例えば、0.01〜1.0mL/gが好ましく、0.1〜0.8mL/gがより好ましく、0.3〜0.7mL/gがさらに好ましい。全細孔容積が上記下限値以上であると、多孔質担体の比表面積が小さくなりすぎて、触媒金属を担持させる際にその分散性が低下することを防止し、合成効率の向上の程度が低下することを防止できる。全細孔容積が上記上限値以下であると、細孔直径が小さくなりすぎて、触媒金属を担持させる際に、触媒金属が担体内部まで入りにくくなり、触媒金属の担持量が少なくなって、合成効率の向上の程度が小さくなることを防止できる。
全細孔容積は、水滴定法により測定される値である。水滴定法とは、多孔質担体の表面に水分子を吸着させ、分子の凝縮から細孔分布を測定する方法である。
【0038】
多孔質担体の平均細孔直径は、特に限定されないが、例えば、0.01〜20nmが好ましく、0.1〜8nmがより好ましい。平均細孔直径が上記下限値以上であると、触媒成分を担持させる際に、触媒成分が担体内部まで入りにくくなり、触媒成分の担持量が少なくなったり、触媒成分の分散性が低下したりして、合成効率が低下することを防止できる。平均細孔直径が上記上限値以下であると、担体の比表面積が小さくなりすぎて、触媒成分を担持させる際にその分散性が低下し、合成効率が低下することを防止できる。
平均細孔直径は、以下の手法で測定される値である。平均細孔直径が0.1nm以上10nm未満の場合、全細孔容積とBET比表面積とから算出される。平均細孔直径が10nm以上の場合、水銀圧入法ポロシメーターにより測定される。
ここで、全細孔容積は、水滴定法により測定される値であり、BET比表面積は、窒素を吸着ガスとし、その吸着量とその時の圧力から算出される値である。
水銀圧入法は、水銀を加圧して多孔質担体の細孔に圧入させ、その圧力と圧入された水銀量から平均細孔直径を算出するものである。
【0039】
多孔質担体の比表面積は、特に限定されないが、例えば、1〜1000m
2/gが好ましく、300〜800m
2/gがより好ましく、400〜700m
2/gがさらに好ましい。比表面積が上記下限値以上であると、担体の比表面積が小さくなりすぎて、触媒成分を担持させる際にその分散性が低下することを防止し、合成効率が低下することを防止できる。比表面積が上記上限値以下であると、細孔直径が小さくなりすぎて、触媒成分を担持させる際に、触媒成分が担体内部まで入りにくくなり、触媒成分の担持量が少なくなったり、触媒成分の分散性が低下したりして、合成効率が低下することを防止できる。
比表面積は、窒素を吸着ガスとし、BET式ガス吸着法により測定されるBET比表面積である。
【0040】
担体100質量部に対する触媒成分の担持量は、0.5質量部以上であることが好ましく、0.75質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。上記0.5質量部以上であると、目的物の合成効率をより一層高められる。
担体100質量部に対する触媒成分の担持量の上限値は、担体の比表面積等を勘案して決定され、例えば、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。上記上限値超としても、さらなる合成効率の向上を図れない場合がある。
【0041】
担体の有無に関わらず、合成触媒としては、下記(I)式で表される組成が好ましい。
aA・bB・cC ・・・・(I)
(I)式中、Aは酸化タングステンを表し、Bは酸化マグネシウムを表し、Cは上記の無機酸化物ZOを表し、a、b及びcはモル分率を表し、a+b+c=1である。
(I)式中のaは、c=0の場合には0.0001〜0.05であってもよいし、c>0の場合には0.0001〜0.05が好ましく、0.0005〜0.030がより好ましく、0.0010〜0.015がさらに好ましい。上記下限値以上であると酸化タングステンの含有量が少なすぎて、エタノール転化率を十分に高められなくなることを防止でき、上記上限値以下であると他の酸化物の含有量が少なくなりすぎて、エタノール転化率を十分に高められなくなることを防止できる。
(I)式中のbは、c=0の場合には0.95〜0.9999であってもよいし、c>0の場合には0.55〜0.98が好ましく、0.70〜0.97がより好ましく、0.80〜0.95がさらに好ましい。上記下限値以上であると酸化マグネシウムの含有量が少なすぎて、エタノール転化率を十分に高められないことを防止できる。上記上限値以下であると他の酸化物の含有量が少なくなりすぎて、エタノール転化率を十分に高められないことを防止できる。
(I)式中のcは、0(即ち、上記の無機酸化物ZOを含有しない)でもよいし、0超(即ち、上記の無機酸化物ZOを含有する)でもよい。上記の無機酸化物ZOを含有する場合、0.01〜0.40が好ましく、0.03〜0.30がより好ましく、0.05〜0.20がさらに好ましい。上記下限値以上であると上記の無機酸化物ZOの含有量が少なすぎて、エタノール転化率を十分に高められないことを防止でききる。上記上限値以下であると他の酸化物の含有量が少なくなりすぎて、エタノール転化率を十分に高められないことを防止できる。
【0042】
上記のモル分率の算出において、合成触媒中、例えば、酸化タングステンがWO
3、酸化マグネシウムがMgO、上記の無機酸化物ZOがSiO
2になっていると仮定して計算することができる。
【0043】
本実施形態の合成触媒として、例えば、下記組成式(2)で表される複合酸化物触媒が挙げられる。
組成式(2):W
αMg
βZ
γO
θ
[式中、Zは前記無機酸化物ZOを構成する酸素以外の元素1種以上をまとめて表し、0<α<1、0<β<1、0≦γ<1、0<θ<1、α+β+γ+θ≦1である。]
式(2)中、α<βであることが好ましく、
0.001≦α≦0.01、
0.3≦β<0.5、
0.001≦γ≦0.01、及び/又は
0.5≦θ<1であることがより好ましい。
なお、α、β、γ、θは原子比(モル比)である。
【0044】
合成触媒が担体を有さない場合、合成触媒自身が多孔質であることが好ましい。このような多孔質の非担持型の複合酸化物型触媒は、例えば後述する混練法により得ることができる。
【0045】
<合成触媒の製造方法>
本発明の合成触媒は、例えば、混練法、含浸法、気相蒸着法、担持錯体分解法等の公知方法により製造される。以下、合成触媒の製造方法について、一例を挙げて説明する。
【0046】
[混練法]
実施形態の一例として、例えば、合成触媒を構成する各酸化物又は各酸化物の前駆体を分散媒又は溶媒中で混合して、オートミル等で混練し、得られた分散液又は溶液を加熱して乾燥した後、さらに焼成する工程を有する製造方法が挙げられる。この方法により、各酸化物が均一に分散した状態で接合した合成触媒が得られる。
以下、特に明記しない限り、分散媒と溶媒とを区別せず、分散液と溶液とを区別しない。
【0047】
分散媒中で混合する際の各酸化物及び各酸化物の前駆体の配合割合を調整することにより、前述した各酸化物の含有量及び含有比を有する合成触媒を得ることができる。前記配合割合を、例えば、前述した各酸化物の含有量及び含有比と同じ割合にすることにより、その配合割合に従った各酸化物の含有量及び含有比を有する合成触媒を得ることができる。
【0048】
各酸化物の前駆体は、合成触媒を構成する各酸化物が容易に得られる観点から、酸素原子を含有する化合物(酸素含有前駆体)であることが好ましい。
酸化タングステンの好適な前駆体としては、例えば、タングステンのアルコキシドが挙げられる。アルコキシドとしてはメトキシド又はエトキシドが好ましい。
酸化マグネシウムの好適な前駆体としては、例えば、マグネシウムの水酸化物、硝酸塩、シュウ酸塩等が挙げられる。これらのうち、加熱によって容易に酸化物が得られることから、水酸化物が好ましい。
酸化タングステン及び酸化マグネシウムを除くその他の無機酸化物の好適な前駆体としては、例えば、コロイダルシリカが挙げられる。コロイダルシリカを使用することにより多孔質の複合酸化型触媒を容易に得られる。
【0049】
本実施形態においてコロイダルシリカの平均粒子径を調整することにより、担体を使用せずに所望の比表面積を有する多孔質の合成触媒を得ることができる。その平均の一次粒子径は特に限定されず、例えば、1nm〜200nm程度が好適な粒径として挙げられる。コロイダルシリカは、高い球形度を有し、単分散であることが好ましい。このようなコロイダルシリカは市販品として入手できる。
【0050】
コロイダルシリカを分散媒としての水に撹拌することにより、コロイダルシリカの表面が水酸基に覆われた状態になり、この水酸基を介して他の前駆体と相互作用したり反応したりする。例えば、マグネシウムの水酸化物と水中で混合すると、互いの水酸基同士の親和性により、コロイダルシリカの表面に均一にマグネシウムの水酸化物が分布する。また、例えば、タングステンのアルコキシドと混合すると、アルコキシ基が水中で加水分解して水酸基に変わるため、上記の水酸化物と同様にコロイダルシリカ表面の表面に均一に前記アルコキシドが分布すると考えられる。したがって、コロイダルシリカ、上記水酸化物及び上記アルコキシドの三元系を水中で混合すると、三元系が均一に混合したゾルが得られる。この「混合操作」の後、穏やかに加熱して乾燥する「乾燥操作」により、三元系が均一に混合した固体が得られる。この乾燥固体を焼成する「焼成操作」により、触媒活性に優れた多孔質の合成触媒が得られる。
【0051】
混合操作における混合方法は、均一に材料を混合できる方法であれば特に限定されず、例えば、各材料が含まれた分散媒をミル、ミキサー、ブレンダー等の公知の混合機で攪拌する公知方法が挙げられる。分散媒としては、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
混合操作における分散液の温度は、特に限定されず、意図しない縮合反応、重合反応などの余計な化学反応が起きないように、例えば4〜40℃程度の穏やかな温度で行うことができる。混合時間も特に限定されず、例えば0.5時間〜12時間程度で行うことができる。
【0053】
乾燥操作における乾燥方法は特に限定されず、例えば、充分に混合した分散液を任意の温度で加熱する方法が挙げられる。乾燥操作における加熱温度は、分散液の分散媒を蒸発できる温度であればよく、例えば分散媒が水であれば、80〜120℃が好ましい。例えば80℃程度の比較的低温で殆どの分散媒を蒸発させて、続いて110℃程度の比較的高温で残りの分散媒を蒸発させる二段階乾燥法により、穏やかに加熱して余計な化学反応を起こさないようにしてもよい。
【0054】
焼成操作における加熱温度は、例えば、300〜600℃が好ましい。焼成操作を行うことで、原料化合物に含まれていた成分の内の触媒反応に寄与しない成分を十分に揮散し、各酸化物の前駆体を各酸化物に変化させ、各酸化物同士を焼結させ、合成触媒の触媒活性をより高められる。
【0055】
以上では三元系の場合を説明したが、コロイダルシリカなどの前記無機酸化物を使用せず、酸化タングステン及び酸化マグネシウムからなる二元系の場合においても、上記と同様の混合操作、乾燥操作及び焼成操作により合成触媒を得ることができる。
【0056】
[含浸法]
また、別の実施形態として、例えば、合成触媒を構成する各酸化物又は各酸化物の前駆体を含む含浸液を多孔質担体に含浸し(含浸操作)、含浸液が含浸した担体を乾燥し(乾燥操作)、乾燥した担体を任意の温度で加熱して焼成する(焼成操作)方法が挙げられる。
【0057】
含浸操作における含浸方法としては、担体の種類を勘案して決定され、例えば、担体に含浸液を滴下したり噴霧したりして塗布し、次いで攪拌する方法、含浸液に担体を浸漬する方法等、従来公知の方法が挙げられる。
【0058】
含浸液は、合成触媒を構成する各酸化物又は各酸化物の前駆体が分散媒に分散されたものである。分散媒としては、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0059】
乾燥操作における乾燥方法は特に限定されず、例えば、含浸液が含浸された担体を任意の温度で加熱する方法が挙げられる。乾燥操作における加熱温度は、含浸液の分散媒を蒸発できる温度であればよく、例えば分散媒が水であれば、80〜120℃が好ましい。
【0060】
焼成操作における加熱温度は、例えば、300〜600℃が好ましい。焼成操作を行うことで、原料化合物に含まれていた成分の内の触媒反応に寄与しない成分を十分に揮散し、各酸化物の前駆体を各酸化物に変化させ、各酸化物同士を焼結させ、触媒活性をより高められる。
【0061】
<酸素化物の製造装置>
図1の製造装置10は、合成触媒が充填されて反応床2が形成された反応管1と、反応管1に接続された供給管3と、反応管1に接続された排出管4と、反応管1に接続された温度制御部5と、排出管4に設けられた圧力制御部6とを備える。
【0062】
反応床2は、合成触媒のみが充填されたものでもよいし、合成触媒と希釈材とが充填されたものでもよい。なお、エタノールから1,3−ブタジエンを合成する反応は吸熱反応であるため、合成触媒が過度に発熱することを防止する目的で使用される希釈剤は通常不要である。
希釈材としては、例えば、合成触媒の担体と同様のものや、石英砂、アルミナボール、アルミボール、アルミショット等が挙げられる。
反応床2に希釈材を充填する場合、希釈材/合成触媒で表される質量比は、それぞれの種類や比重等を勘案して決定され、例えば、0.5〜5が好ましい。
【0063】
反応管1は、材料ガス及び合成された生成物に対して不活性な材料で形成されていることが好ましく、100〜500℃程度の加熱、又は10MPa程度の加圧に耐え得る形状のものが好ましい。
反応管1としては、例えば、ステンレス製の略円筒形の部材が挙げられる。
供給管3は、材料ガスを反応管1内に供給する供給手段であり、例えば、ステンレス製等の配管が挙げられる。
排出管4は、反応床2で合成された生成物を含むガスを排出する排出手段であり、例えば、ステンレス製等の配管が挙げられる。
温度制御部5は、反応管1内の反応床2を任意の温度にできるものであればよく、例えば、電気炉等が挙げられる。
圧力制御部6は、反応管1内の圧力を任意の圧力にできるものであればよく、例えば、公知の圧力弁等が挙げられる。
また、製造装置10は、マスフロー等、ガスの流量を調整するガス流量制御部等の周知の機器を備えていてもよい。
【0064】
<1,3−ブタジエンの製造方法>
上述の合成触媒にエタノールを接触させることにより、1,3−ブタジエンを製造することができる。本実施形態の製造方法において、接触させるエタノールは気化された状態であることが好ましく、気化されたエタノールが加熱下で合成触媒と接触することがより好ましい。以下、
図1の製造装置を使用した1,3−ブタジエンの製造方法の一例を説明する。
【0065】
まず、反応管1内を任意の温度及び任意の圧力とし、気化されたエタノールを含む材料ガス20を供給管3から反応管1内に流入させる。
【0066】
材料ガス20は、エタノールガスのみで構成されていてもよいし、エタノール以外のガスを含む混合ガス20であってもよい。
混合ガス20は、不活性ガスを含有してもよい。混合ガス20が不活性ガスを含有していると、1,3−ブタジエンの合成効率のさらなる向上を図れる。
混合ガス20中の不活性ガスの含有量の下限値は、例えば、5体積%以上が好ましく、10体積%以上がより好ましく、15体積%以上がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、不活性ガスを混合ガス20に含有させた効果がより高まり、1,3−ブタジエンの合成効率のさらなる向上を図れる。
混合ガス20中の不活性ガスの含有量の上限値は、50体積%以下が好ましく、40体積%以下がより好ましく、30体積%以下がさらに好ましい。上記上限値以下であれば、混合ガス20中のエタノールの含有量が十分になり、1,3−ブタジエンの合成効率のさらなる向上を図れる。
【0067】
材料ガス20を構成するエタノールは、いわゆるバイオマス由来のバイオエタノールであってもよいし、化石燃料由来のエタノールであってもよい。
【0068】
混合ガス20は、エタノール、不活性ガスの他に、水素、一酸化炭素、メタン、エタン、エチレン、水等(以下、これらを総じて、ガス不純物ということがある)を含有してもよい。ただし、1,3−ブタジエンの合成効率のさらなる向上を図る観点からは、混合ガス20中にガス不純物を含有しないことが好ましい。
【0069】
材料ガス20と触媒とを接触させる際の温度(反応温度)、即ち反応管1内の温度は、例えば、150〜500℃が好ましく、250〜500℃がより好ましく、350〜450℃がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、触媒反応の速度を十分に高め、1,3−ブタジエンをより効率的に製造できる。上記上限値以下であれば、1,3−ブタジエンの合成反応を主反応とし、1,3−ブタジエンの選択率のさらなる向上を図れる。
【0070】
材料ガス20と触媒とを接触させる際の圧力(反応圧力)、即ち反応管1内の圧力は、大気圧(常圧)が好ましいが、加圧してもよい。加圧する場合は、例えば、0.1MPa〜10MPaが好ましく、0.5MPa〜5.0MPaがより好ましく、1.0MPa〜2.5MPaがさらに好ましい。上記下限値以上であれば、触媒反応の速度を十分に高め、1,3−ブタジエンの合成効率のさらなる向上を図れる。上記上限値以下であれば、1,3−ブタジエンの合成反応を主反応とし、合成効率のさらなる向上を図れる。
【0071】
流入した材料ガス20は、反応床2の触媒と接触しながら流通し、その一部が1,3−ブタジエンとなる。材料ガス20中のエタノールは、下記(α)式で表される触媒反応により1,3−ブタジエンになると考えられる。
2C
2H
5OH → H
2C=CH−CH=CH
2+2H
2O+H
2 ・・・(α)
【0072】
1,3−ブタジエンを含む生成ガス22は、排出管4から排出される。生成ガス22には、アセトアルデヒド、エチレン、ブテン、プロピレン、エタン等のC2〜C4化合物が含まれていてもよい。
【0073】
原料ガス20の供給速度は、例えば、反応床2における原料ガスの空間速度(単位時間当たりのガスの供給量を触媒量(体積換算)で除した値)が標準状態換算で10〜100000L/L−触媒/hとなるように調節されることが好ましい。空間速度は、反応圧力、反応温度、及び原料ガスの組成を勘案して、適宜調整される。
【0074】
原料ガス20と反応床2(合成触媒)との接触時間は、例えば、1〜50秒が好ましく、3〜20秒程度がより好ましく、5〜10秒程度がさらに好ましい。
接触時間が短すぎると、エタノールがブタジエンまで転化せず、他の生成物の収率が上昇する傾向がある。
一方、接触時間が長すぎると、アセトアルデヒドやブタジエンの縮合や重合が進行し、高沸点成分の生成量が増加する可能性がある。接触時間は、上記の空間速度を調整することにより制御できる。
【0075】
排出管4から排出された生成ガス22に含まれる反応生成物を、必要に応じて、気液分離器等で処理し、未反応の原料ガス20と反応生成物とを分離してもよい。また、反応生成物を、濾過、濃縮、蒸留、抽出等の分離手段により精製してもよい。
【0076】
本実施形態では、固定床の反応床2に混合ガスを接触させているが、例えば、触媒を流動床、移動床、懸濁床等の形態として、これに原料ガスを接触させてもよい。
【0077】
本発明の合成触媒は、触媒活性成分である酸化物が互いに接合された構造を有するため、触媒反応においても、触媒活性成分が反応溶液中に溶出したり、反応ガス中に拡散したりすることが少ない。このため、本実施形態の1,3−ブタジエンの製造方法は、気相法、液相法のいずれであってもよい。触媒の回収、再生処理が容易である観点から、合成触媒を反応管に充填して触媒層を形成し、原料ガスを流通させて反応させる気相法が好ましい。液相法を採用する場合、合成触媒の回収は、反応液からの濾過、遠心分離等の物理的な分離手法により行うことができる。また、未反応原料であるエタノールは回収し、再利用してもよい。
【0078】
上述した方法に加えて、本実施形態の1,3−ブタジエンの製造方法は、回分式、半回分式、連続式等の慣用方法を採用することができる。回分式又は半回分式を採用した場合、原料エタノールの使用率を高めることができる。また、前述の合成触媒は触媒活性に優れるため、連続式を採用した場合においても、従来に比べて高いエタノール転化率が得られ、未反応エタノールを反応系に再利用することにより原料エタノールの使用率を高めることができる。1,3−ブタジエンの分離、回収を簡便且つ効率的に行う観点からは、連続式を採用することが好ましい。
【0079】
本実施形態で使用した合成触媒は、反応器内において、例えば、0.1〜24時間、150〜500℃程度の加熱下で空気を流通させることにより、触媒活性を回復させて、再び1,3−ブタジエンの合成反応に供することができる。
【0080】
本実施形態の1,3−ブタジエンの製造方法は、1,3−ブタジエンを選択的に製造することができ、例えば反応温度420℃、反応圧力0.1MPa、空間速度500L/L−触媒/hの条件で反応させた際の反応開始後120分の1,3−ブタジエンの選択率は、例えば40%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上である。また、本実施形態の1,3−ブタジエンの製造方法は、エタノールの転化率に優れ、例えば反応温度420℃、反応圧力0.1MPa、空間速度500L/L−触媒/hの条件で反応させた際の反応開始後120分のエタノールの転化率は、例えば75%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは95%以上である。
【0081】
上述したように、本発明の合成触媒を用いることで、1,3−ブタジエンをより効率的に合成できる。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0083】
<触媒調製方法>
(実施例1)
水酸化マグネシウムMg(OH)
2 (関東化学社製)20.65g、コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスXS」日産化学工業社製、平均一次粒子4〜6nm、比表面積:800±200m
2/g)12.64g、及びタングステンエトキシド1.56gを水に懸濁し、オートミルにて3時間混練してゾルを得た。得られたゾルを、80℃で16時間、その後110℃で4時間加熱して乾燥した後に、1℃/minで500℃まで昇温し、500℃で2時間焼成してケークを得た。得られたケークを破砕し、分級して、粒径1.0〜2.0mmの多孔質粒子からなる触媒(1)(MgO/WO
3/SiO
2(質量比)= 80.7/5.0/14.3)を得た。
【0084】
(比較例1)
水酸化マグネシウムMg(OH)
2(関東化学社製)24.1g、コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスXS」日産化学工業社製、平均一次粒子4〜6nm、比表面積:800±200m
2/g)14.4g、及びタンタルエトキシド0.74gを水に懸濁し、オートミルにて3時間混練してゾルを得た。得られたゾルを、80℃で16時間、その後110℃で4時間加熱して乾燥した後に、1℃/minで500℃まで昇温し、500℃で2時間焼成してケークを得た。得られたケークを破砕し、分級して、粒径1.0〜2.0mmの多孔質粒子からなる触媒(2)(MgO/Ta
2O
5/SiO
2(質量比)= 83.0/2.0/15.0)を得た。
【0085】
<1,3−ブタジエン合成方法>
(実施例1)
得られた触媒(1)3.82gを直径1.5インチ(1.27cm)、長さ10インチ(25.4cm)のステンレス製の円筒型の反応管に充填して反応床を形成した。
次いで、反応床の温度及び反応温度を420℃として、空間速度500L/L−触媒/h、常圧で以下の混合ガスを反応床に流通させて、1,3−ブタジエンを含む生成ガスを得た。
混合ガス(エタノール:70体積%、窒素:30体積%)が反応床に7.2秒間接触する条件で混合ガスを反応管に流通させ、得られた生成ガスを回収し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。
得られたデータからエタノール転化率(モル%)、1,3−ブタジエンの選択率(モル%)、1,3−ブタジエンの収率(モル%)、アセトアルデヒドの選択率(モル%)、エチレンの選択率(モル%)、ブテンの選択率(モル%)、プロピレンの選択率(モル%)、エタンの選択率(モル%)、を算出した。これらの結果を表1に示す。
【0086】
(比較例1)
得られた触媒(2)3.87gを直径1.5インチ(1.27cm)、長さ10インチ(25.4cm)のステンレス製の円筒型の反応管に充填して反応床を形成した。
次いで、反応床の温度及び反応温度を420℃として、空間速度500L/L−触媒/h、常圧で以下の混合ガスを反応床に流通させて、1,3−ブタジエンを含む生成ガスを得た。
混合ガス(エタノール:70体積%、窒素:30体積%)が反応床に7.2秒間接触する条件で混合ガスを反応管に流通させ、得られた生成ガスを回収し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。実施例1と同様に算出した結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1中、実施例1の1,3−ブタジエンの収率(%)は、1,3−ブタジエンの選択率(%)×0.955(エタノール転化率)の積で算出される。比較例1についても同様に算出される。各生成物(各酸素化物)の選択率の合計は100%である。表1から、実施例1のエタノール転化率が格別顕著に高いことが明らかである。さらに、実施例1の1,3−ブタジエンの選択率及び収率も非常に優れている。
【0089】
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、公知の構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはない。