特許第6721568号(P6721568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6721568がん免疫療法のためのROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6721568
(24)【登録日】2020年6月22日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】がん免疫療法のためのROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20200706BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20200706BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20200706BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20200706BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20200706BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20200706BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200706BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   C12N15/62 ZZNA
   C07K14/705
   C07K19/00
   C12N5/10
   A61K39/395 T
   A61K39/395 U
   A61K35/17 A
   A61P35/00
   A61P37/04
【請求項の数】25
【全頁数】75
(21)【出願番号】特願2017-504173(P2017-504173)
(86)(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公表番号】特表2017-527275(P2017-527275A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】EP2015067444
(87)【国際公開番号】WO2016016344
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2018年7月4日
(31)【優先権主張番号】PA201470465
(32)【優先日】2014年7月29日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】512213549
【氏名又は名称】セレクティス
【氏名又は名称原語表記】CELLECTIS
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シファー−マニウイ,セシール
【審査官】 田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−507118(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/097313(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノクローナル抗ROR1抗体由来のVHおよびVLを含む細胞外リガンド結合ドメイン、CD8αヒンジ、CD8α膜貫通ドメイン、CD3ζ由来のシグナリングドメインおよび4−1BB由来の共刺激ドメインを含む細胞質ドメイン、を含むポリペプチド構造を有するROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)であって、
前記細胞外リガンド結合ドメインが、
− 配列番号54(CDR−H1)、配列番号55(CDR−H2)、および配列番号56(CDR−H3)のマウスモノクローナル抗体H10由来のCDRを含む可変重鎖VHと、
− 配列番号59(CDR−L1)、配列番号60(CDR−L2)、および配列番号61(CDR−L3)のマウスモノクローナル抗体H10由来のCDRを含む可変軽鎖VLとを含む;または、
前記細胞外リガンド結合ドメインが、
− 配列番号28(CDR−H1)、配列番号29(CDR−H2)、および配列番号30(CDR−H3)のマウスモノクローナル抗体D10由来のCDRを含む可変重鎖VHと、
− 配列番号33(CDR−L1)、配列番号34(CDR−L2)、および配列番号35(CDR−L3)のマウスモノクローナル抗体D10由来のCDRを含む可変軽鎖VLとを含む、ROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)。
【請求項2】
前記CD8α膜貫通ドメインが配列番号6に記載のアミノ酸と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1に記載のROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)。
【請求項3】
ヒンジが、配列番号4(CD8α)と、少なくとも90%の配列同一性を共有する、請求項1または2に記載のROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)。
【請求項4】
前記細胞外リガンド結合ドメインが、VH鎖およびVL鎖を含み、これらの鎖が、それぞれ配列番号53(H10−VH)および配列番号58(H10−VL)と、少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)。
【請求項5】
前記細胞外リガンド結合ドメインが、VH鎖およびVL鎖を含み、これらの鎖が、それぞれ配列番号27(D10−VH)および配列番号32(D10−VL)と、少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)。
【請求項6】
前記細胞外リガンド結合ドメインが、ヒト化されたH10抗体またはD10抗体由来のVH鎖およびVL鎖を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)。
【請求項7】
前記細胞外リガンド結合ドメインが、VH鎖およびVL鎖を含み、
− VH鎖が、配列番号57でコードされるポリペプチドを有し、
− VL鎖が、配列番号62でコードされるポリペプチドを有する、請求項6に記載のROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)。
【請求項8】
前記細胞外リガンド結合ドメインが、
− 配列番号31でコードされるポリペプチドを有するVH鎖を有し、
− 配列番号36でコードされるポリペプチドを有するVL鎖を有する、請求項6に記載のROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)。
【請求項9】
前記ROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)が、配列番号117(H10v3−CAR配列)と、少なくとも90%の配列同一性を共有する、請求項1に記載のROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)。
【請求項10】
前記ROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)が、配列番号93(D10v3−CAR配列)と、少なくとも90%の配列同一性を共有する、請求項1に記載のROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)。
【請求項11】
4−1BB由来の共刺激ドメインが、配列番号8と、少なくとも90%の同一性を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)。
【請求項12】
前記CD3ζ由来のシグナリングドメインが、配列番号9と、少なくとも90%の同一性を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)。
【請求項13】
シグナルペプチドをさらに含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載のROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)。
【請求項14】
前記ROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)が、配列番号117(H10v3−CAR配列)または配列番号93(D10v3−CAR配列)のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項15に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)を、細胞の表面膜に発現する、遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項18】
炎症性Tリンパ球、細胞障害性Tリンパ球、調節性Tリンパ球、またはヘルパーTリンパ球に由来する、請求項17に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項19】
前記免疫細胞において、TCRの発現が抑制されている、請求項17または18に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項20】
前記細胞が少なくとも1つの免疫抑制薬または化学療法薬に対する耐性を付与するよう変異されている、請求項17〜19のいずれか1項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項21】
癌の治療のための医薬の製造における、請求項17〜20のいずれか1項に記載の遺伝子操作された免疫細胞の使用。
【請求項22】
ROR1発現細胞によって特徴づけられる前悪性または悪性のがん状態の治療のための医薬の製造における、請求項17〜20のいずれか1項に記載の遺伝子操作された免疫細胞の使用。
【請求項23】
血液がんの状態の治療のための医薬の製造における、請求項17〜20のいずれか1項に記載の遺伝子操作された免疫細胞の使用。
【請求項24】
慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、マントル細胞リンパ腫(MCL)、t(1;19)染色体転座を伴う急性リンパ芽球性白血病(ALL)からなる群から選ばれる血液がんの状態の治療のための医薬の製造における、請求項17〜20のいずれか1項に記載の遺伝子操作された免疫細胞の使用。
【請求項25】
充実性腫瘍の治療のための医薬の製造における、請求項17〜20のいずれか1項に記載の遺伝子操作された免疫細胞の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫細胞の特異性および反応性をROR1に対して再方向付けできる組換えキメラタンパク質である、キメラ抗原レセプター(CAR)に関する。ROR1は、ほとんどの骨髄性細胞上に見られる細胞表面糖タンパク質であり、患者の慢性リンパ性白血病(CLL)、または乳房、結腸、肺、および腎臓腫瘍などの充実性腫瘍の診断に用いられる。本発明によるCARは、T細胞またはNK細胞で発現している場合、ROR1抗原を保持する悪性細胞の治療に特に有用である。得られる遺伝子操作された免疫細胞は、悪性細胞に対して高レベルの特異性を示し、免疫療法に安全性と有効性をもたらす。
【背景技術】
【0002】
養子免疫療法は、ウイルス感染およびがんの治療のための有望な方策であり、ex vivoで産生された自己抗原特異的T細胞の移植を含む。養子免疫療法に用いられるT細胞は、遺伝子操作を用いて、抗原特異的T細胞の増殖、またはT細胞の再方向付けのいずれかによって産生させることができる(Park、Rosenbergら.2011)。ウイルス抗原特異的T細胞の移植は、移植に関連するウイルス感染、およびまれなウイルスに関連する悪性腫瘍を治療するために使用される、十分に確立した手順である。同様に、腫瘍特異的T細胞の単離および移植は、メラノーマの治療において奏功することが示されている。
【0003】
T細胞の新規な特異性を、トランスジェニックT細胞レセプター、またはキメラ抗原レセプター(CAR)の遺伝的伝達によって生み出すことに成功している(Jena、Dottiら.2010)。3世代のCARについての概略図を図1に示す。CARは、1つまたは複数のシグナリングドメインと結合して1つの融合分子になっている標的化部分からなる合成レセプターである。一般に、CARの結合部分は、一本鎖抗体(scFV)の抗原結合ドメインからなり、可動性リンカーによって接合したモノクローナル抗体の軽鎖可変フラグメントを含む。レセプターまたはリガンドドメインに基づく結合部分も首尾よく使用されている。第1世代CARのシグナリングドメインは、CD3ζまたはFcレセプターγ鎖の細胞質領域に由来している。第1世代CARは、T細胞の細胞毒性の再方向付けに成功していることも示されている。しかしながら、第1世代CARは、in vivoで長期的な増殖および抗腫瘍活性を生じさせることはできない。共刺激分子由来のシグナリングドメイン、ならびに膜貫通およびヒンジドメインを追加して第2および第3世代のCARが作出されており、CD19を発現している悪性細胞に対してT細胞を再方向付けできる場合について、ヒトのいくつかの治療試験で成功に至っている(Juneら、2011)。しかしながら、CD19 ScFvに対して使用されるシグナリングドメイン、膜貫通および共刺激ドメインの特定の組み合わせは、かなり抗原特異的であり、いかなる抗原マーカーにも拡張することはできない。
【0004】
慢性リンパ性白血病(CLL)は、血液学者が扱う、最も一般的に診断される白血病の1つである。長年の間、CLLを患っている患者は、長い自然史を持ち、有効性がわずかで著効を示すことがほとんどない治療法しかない、同類の患者だと見られていた。近時、V変異状態およびそれに伴うZAP−70の過剰発現、p53機能不全、および染色体異常の生物学的な意義に関するいくつかの重要な知見により、早期の病状悪化および低い生存率のリスクが高い患者を特定することが可能となった。これらの研究と同時に、ヌクレオシドアナログ、ならびにモノクローナル抗体であるリツキシマブおよびアレムツズマブを含むいくつかの治療が導入された。臨床試験において、これらの療法の組み合わせにより、症候性CLLの初期治療に適用された場合の著効率および全奏効率が高くなった。よって、CLLおよび治療に関する初期のリスク層別化の複雑性が著しく増大した。さらに、これらの初期療法が効果を示さない場合、フルダラビン不応性疾患を伴うCLL患者への取り組みは、著しく困難なものになり得る(Byrd J.Cら、2014)。
【0005】
慢性リンパ性白血病(CLL)に対する免疫療法の候補となる抗原の1つは、チロシンタンパク質キナーゼ膜貫通レセプターROR1(NTRKR1、UniProtKB/TrEMBLとも呼ばれる)登録番号:Q01973)である。ROR1(レセプターチロシンキナーゼ様オーファンレセプター1)は、細胞外免疫グロブリン(Ig)様、Kringle、およびFrizzled様システインリッチドメインを含む、120kDaの糖タンパク質である(図2)。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、中枢神経系の神経突起伸長を調節するレセプター型チロシンキナーゼである。これはI型膜タンパク質であり、細胞表面レセプターのRORサブファミリーに属する(Reddyら、1997)。しかしながら、CLLを患っている患者における正常白血球に関するROR1タンパク質の発現、およびCLLの病理生物学におけるその役割は、さらに研究する価値がある。ROR1は、がん免疫療法の適切な標的であり得る(Daneshmaneshら;2008)。ROR1は、種々のB細胞悪性腫瘍上に発現していることは確かであるが、乳房、結腸、肺、および腎臓腫瘍を含む、いくつかの充実性腫瘍のサブセット上にも発現している。ROR1は、上皮性腫瘍中の腫瘍細胞の生存を促進するがん化シグナリングにおいて機能すると考えられる。重要なのは、ROR1は、脂肪および膵臓組織を除く重要臓器上には発現せず、そのことが正常細胞を死滅させる潜在的な毒性を減少させるということである(Hudecekら、2013)。ROR1は、胚発生中に発現するが、未成熟B細胞前駆体のサブセットを除く正常成体組織には存在せず、脂肪細胞上には低レベルで発現する(Hudecekら、2010;Matsudaら、2001)。ROR1は、最初にB細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)で発現していることが転写プロファイリングによって示され(Kleinら、2001;Rosenwaldら、2001)、次いでマントル細胞リンパ腫(MCL)、t(1;19)染色体転座を伴う急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ならびに肺、乳房、結腸、膵臓、腎臓、および卵巣がんのサブセットを含む多くのがんの表面上で確認された(Baskarら、2008;Bicoccaら、2012;Daneshmaneshら、2008;Daveら、2012;Fukudaら、2008;Yamaguchiら、2012;Zhangら、2012a、2012b)。肺腺がんとt(1;19)ALLいずれにおいても、ROR1はがん化シグナリングにおいて協働し、siRNAによるROR1のノックダウンによって、腫瘍細胞の生存の維持におけるROR1分子の決定的な役割が明らかになった(Bicoccaら、2012;Choudhuryら、2010;Gentileら、2011;Yamaguchiら、2012)。よって、腫瘍がROR1の喪失に耐えることは容易ではなく、そのことによってROR1は、幅広く適用され得る、CAR指向性T細胞療法の魅力的な候補となっている。このようにして、本発明者らは、ROR1が、CLLならびに乳房、結腸、肺、卵巣、および腎臓腫瘍などの充実性腫瘍の、CAR発現T細胞を用いた治療のための有用な標的抗原になり得ると考えた。
【0006】
以前に、Stanley Riddell博士の研究室とLaurence Cooper博士の研究室では、それぞれ4A5を含む抗ROR1scCARと2A2scFvを含む抗ROR1scCARを遺伝子操作し、検証した(Cooperら、2010;Hudecekら、2013)。特に、Hudecekらは、種々の長さのIgG4ヒンジおよびCD28膜貫通ドメインを含む抗ROR1scCARを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CAR構造を設計し、適切な構成部分を用いてCARの機能性を改善する必要性が依然として存在する。なぜなら、これらのパラメーターは、重要な役割を果たし、繊細な調整を必要とするからである。
【0008】
したがって、以前の方策の代わりとして、本発明は、ROR1特異的CARを提供し、このROR1特異的CARは免疫細胞内で発現し、ROR1悪性細胞を標的にすることができ、臨床的に著しい利点がある。本発明者らは、CAR構造を適切な構成部分の選択肢と組み合わせることによって、がん性標的細胞に対して高い細胞毒性を有するROR1特異的単鎖CARを得ることができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明者らは、種々の構造を有し、種々のROR1特異的抗体に由来する種々のscFVを含む、ROR1特異的CARを作成した。
【0010】
本発明によるROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)は、図4に記載のV1〜V6から選択されるポリペプチド構造の1つを有していてもよく、前記構造は、抗ROR1モノクローナル抗体由来のVHおよびVLを含む細胞外リガンド結合ドメイン、ヒンジ、膜貫通ドメイン、ならびに4−1BB由来のCD3ζシグナリングドメインおよび共刺激ドメインを含む細胞質ドメイン、を含む。
【0011】
とりわけ、本発明によるROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)は、図4に記載のV3、V5、およびV1から選択されるポリペプチド構造の1つ(one of the one of)を有していてもよく、前記構造は、モノクローナル抗ROR1抗体由来のVHおよびVLを含む細胞外リガンド結合ドメイン、ヒンジ、CD8α膜貫通ドメイン、ならびに4−1BB由来のCD3ζシグナリングドメインおよび共刺激ドメインを含む細胞質ドメイン、を含む。このようなROR1(NTRKR1)特異的抗原レセプターは、細胞毒性に関し、予期せぬ優れた効果を有することが見出された。
【0012】
1つの実施形態において、ROR1特異的CARは、FcγRIIIαヒンジおよびCD8α膜貫通ドメインを含む構造V1を有する。
【0013】
好ましい実施形態において、ROR1特異的CARは、CD8αヒンジおよびCD8α膜貫通ドメインを含む構造V3を有する。
【0014】
別の好ましい実施形態において、ROR1特異的CARは、IgG1ヒンジおよびCD8α膜貫通ドメインを含む構造V5を有する。
【0015】
特に、H10抗ROR1抗体およびD10抗ROR1抗体由来の前記抗原結合ドメイン(scFv)は、優れた抗がん特性を示す。
【0016】
さらに、マウスH10抗ROR1抗体およびマウスD10抗ROR1抗体から、ヒト化scFvを作成した。
【0017】
本発明の好ましいCARポリペプチドは、配列番号79〜138から選択されるアミノ酸配列を含む。in vitroでの(例えば、抗CD3/CD28コーティングビーズおよび組換えIL2を用いた)非特異的活性化に続いて、これらのCARを発現するポリヌクレオチドを用いて、ウイルス形質導入によってドナー由来のT細胞を形質転換した。ある特定の場合において、T細胞をさらに遺伝子操作して非アロ反応性T細胞を作製し、とりわけTCR(αβ−T細胞レセプター)の構成部分を破壊して移植片対宿主反応を防止する。本発明のCARは、同種異系のT細胞との関連において、特に効果的であることが見出された。
【0018】
得られた遺伝子操作T細胞は、in−vitroで、ROR1陽性細胞に対して種々の程度で反応性を示し、本発明のCARがT細胞の抗原依存的活性化に寄与し、また増殖にも寄与することが示され、このことから本発明のCARが免疫療法に有用になる。
【0019】
本発明のCARをコードするポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列は、本明細書に詳細に説明されている。
【0020】
本発明の遺伝子操作された免疫細胞は、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、t(1;19)染色体転座を伴う急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療などの治療への適用に特に有用である。本発明の遺伝子操作された免疫細胞は、乳房、結腸、肺、および腎臓腫瘍などの充実性腫瘍の治療にも使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】単鎖キメラ抗原レセプター(scCAR)は、最も一般的には、特異的抗原に結合するモノクローナル抗体(図1A)の重鎖および軽鎖可変領域を、T細胞シグナル分子の細胞内ポーション(TCR関連CD3複合体の構成部分(ζ鎖)(図1B)など)に接合することによって作製される。第1世代のsCARsは、活性化シグナルを伝達するT細胞シグナリングドメインのみを含む(図1C左側)。第2世代のscCARには、加えて、in vivoでT細胞残存率および抗腫瘍機能を高める単一の共刺激分子内部ドメイン(CD28または41BBの内部ドメイン(図1C中)など)が組み入れられている。第3世代のscCARには、少なくとも2つの共刺激分子内部ドメイン(CD28および41BBの内部ドメイン(図1C右)など)が組み入れられている。
図2】細胞外部位、膜貫通部位、および細胞内ドメインから構成されるROR1タンパク質の構造であり、上記細胞外部位および細胞内ドメインは、上に説明したように、複数の部位を含む。
図3A】(I)D10VHマウス配列と、免疫グロブリンの可変領域をコードするVおよびJ遺伝子によってコードされるヒト生殖系列配列との配列アライメントであり、これらの配列は、マウス配列との高い相同性を共有する。安定性の目的(特にCDRについて)に関し、上側の行に「最も重要な」AAの位置を矢印で示し(これはマウス起源であるべきAAに対応する)、下側の行の「あまり重要でない」AAは、ヒトまたはマウス起源のいずれかであり得るAAである。(II)MGT/DomainGapAlign(Lefrancら、Dev.Comp.Immunol.、29、185〜203(2005))によって、D10VHマウス配列の「IMGT−gap」ドメインアミノ酸配列をアラインすることが可能になる。入力配列が表示され、IMGTドメインディレクトリの最も類似した生殖系列V領域または最も類似したCドメインとアラインされ、ならびにV領域、Cドメイン、およびC様ドメインについて固有のナンバリングをしたIMGTに基づくギャップとアラインされる。
図3B】(I)D10VLマウス配列と、免疫グロブリンの可変領域をコードするVおよびJ遺伝子によってコードされるヒト生殖系列配列との配列アライメントであり、これらの配列は、マウス配列との高い相同性を共有する。安定性の目的(特にCDRについて)に関し、上側の行に「最も重要な」AAの位置を矢印で示し(これはマウス起源であるべきAAに対応する)、下側の行の「あまり重要でない」AAは、ヒトまたはマウス起源のいずれかであり得るAAである。(II)MGT/DomainGapAlign(Lefrancら、Dev.Comp.Immunol.、29、185〜203(2005))によって、D10VLマウス配列の「IMGT−gap」ドメインアミノ酸配列をアラインすることが可能になる。入力配列が表示され、IMGTドメインディレクトリの最も類似した生殖系列V領域または最も類似したCドメインとアラインされ、ならびにV領域、Cドメイン、およびC様ドメインについて固有のナンバリングをしたIMGTに基づくギャップとアラインされる。
図3C】(I)H10VHマウス配列と、免疫グロブリンの可変領域をコードするVおよびJ遺伝子によってコードされるヒト生殖系列配列との配列アライメントであり、これらの配列は、マウス配列との高い相同性を共有する。安定性の目的(特にCDRについて)に関し、上側の行に「最も重要な」AAの位置を矢印で示し(これはマウス起源であるべきAAに対応する)、下側の行の「あまり重要でない」AAは、ヒトまたはマウス起源のいずれかであり得るAAである。(II)MGT/DomainGapAlign(Lefrancら、Dev.Comp.Immunol.、29、185〜203(2005))によって、H10VHマウス配列の「IMGT−gap」ドメインアミノ酸配列をアラインすることが可能になる。入力配列が表示され、IMGTドメインディレクトリの最も類似した生殖系列V領域または最も類似したCドメインとアラインされ、ならびにV領域、Cドメイン、およびC様ドメインについて固有のナンバリングをしたIMGTに基づくギャップとアラインされる。
図3D】(I)H10VLマウス配列と、免疫グロブリンの可変領域をコードするVおよびJ遺伝子によってコードされるヒト生殖系列配列との配列アライメントであり、これらの配列は、マウス配列との高い相同性を共有する。安定性の目的(特にCDRについて)に関し、上側の行に「最も重要な」AAの位置を矢印で示し(これはマウス起源であるべきAAに対応する)、下側の行の「あまり重要でない」AAは、ヒトまたはマウス起源のいずれかであり得るAAである。(II)MGT/DomainGapAlign(Lefrancら、Dev.Comp.Immunol.、29、185〜203(2005))によって、H10VLマウス配列の「IMGT−gap」ドメインアミノ酸配列をアラインすることが可能になる。入力配列が表示され、IMGTドメインディレクトリの最も類似した生殖系列V領域または最も類似したCドメインとアラインされ、ならびにV領域、Cドメイン、およびC様ドメインについて固有のナンバリングをしたIMGTに基づくギャップとアラインされる。
図4】種々のCAR構造(V1〜V6)の概略図。
図5】種々のヒト細胞系上のROR1表面分子数。
図6】scCARスクリーニング手順。
図7A】ヒトT細胞におけるscCARの総発現量。(A)実験1。
図7B】ヒトT細胞におけるscCARの総発現量。(B)実験2。
図8A】ヒトT細胞上のscCARの細胞表面発現。(A)実験1。
図8B】ヒトT細胞上のscCARの細胞表面発現。(B)実験2。
図9A】標的細胞と共培養した際の、scCAR改変T細胞の脱顆粒。実験1。
図9B】実験2(細胞系および/または治療(左から右の順):MDA−MB−2301、PC−3、MCF−7、活性化なし、PMA+イオノマイシン)。
図10】ヒトT細胞上のscCARの細胞表面発現。データを、4つの独立した実験の平均±SDとして示す。
図11】標的細胞と共培養した際の、scCAR改変T細胞の脱顆粒。データを、4つの独立した実験の平均±SDとして示す。
図12】標的細胞と共培養した際の、scCAR改変T細胞によるIFNγ産生。データを、4つの独立した実験の平均±SDとして示す(細胞系および/または治療(左から右の順):Jeko−1、K562、MDA−MB−2301、PC−3、MCF−7、活性化なし)。
図13】付着性の標的細胞と共培養した際の、scCAR改変T細胞の細胞毒性活性。データを、4つの独立した実験の平均±SDとして示す。
図14】浮遊性の標的細胞と共培養した際の、scCAR改変T細胞の細胞毒性活性。データを、4つの独立した実験の平均±SDとして示す。
図15】本発明による遺伝子操作された免疫細胞の概略図。この図に示されている遺伝子操作された免疫細胞は、CARをコードするレトロウイルスポリペプチドで形質導入したT細胞である。このT細胞をさらに遺伝子操作することによって、患者への生着をより良好かつ安全にすることが可能になるが、この遺伝子操作は、本発明の範囲内において任意である。X遺伝子は、例えばTCR(TCRαまたはTCRβ)の構成部分を発現する遺伝子であってもよく、Y遺伝子は、免疫抑制剤(CD52(アレムツズマブについて)またはHPRT(6−チオグアニンについて)など)に対するT細胞の感受性に関係する遺伝子であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
【表1】
【0023】
【表2-1】
【0024】
【表2-2】
【0025】
【表2-3】
【0026】
【表2-4】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
【表5】
【0030】
【表6】
【0031】
【表7】
【0032】
【表8】
【0033】
本明細書において特に定義のない限り、用いられた全ての技術用語および科学用語は、遺伝子療法、生化学、遺伝学、および分子生物学分野の当業者が一般に理解している通りの意味を有する。
【0034】
本明細書において説明されているものと類似する、または同等の全ての方法および材料は、本発明の実施またはテストに使用することができ、適切な方法および材料は本明細書において説明されている。本明細書で言及した全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。不一致がある場合、定義を含めて本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は例示に過ぎず、別段の定めがない限り、限定を意図するものではない。
【0035】
本発明の実施には、別段の指定がない限り、本技術分野の技術の範囲である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来の手法が利用される。このような手法については、文献に十分に説明されている。例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Frederick M.AUSUBEL、2000、Wiley and son Inc、Library of Congress、USA);Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Third Edition、(Sambrookら、2001、Cold Spring Harbor、New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Mullisら、米国特許第4,683,195号明細書;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Harries、S.J.Higgins共編、1984);Transcription And Translation(B.D.Hames、S.J.Higgins共編、1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney、Alan R.Liss,Inc.、1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press、1986);B.Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the series、Methods In ENZYMOLOGY(J.Abelson、M.Simon主幹、Academic Press,Inc.、New York)、特に、Vol.154および155(Wuら、共編)、ならびにVol.185、「Gene Expression Technology」(D.Goeddel、編);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller、M.P.Calos共編、1987、Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer、Walker共編、Academic Press、London、1987);Handbook Of Experimental Immunology、Volumes I−IV(D.M.Weir、C.C.Blackwell共編、1986);ならびにManipulating the Mouse Embryo、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986)を参照のこと。
【0036】
ROR1特異的キメラ抗原レセプター
本発明は、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含む抗ROR1キメラ抗原レセプター(CAR)の新しい設計に関する。
【0037】
用語「細胞外リガンド結合ドメイン」は、本明細書で使用する場合、リガンドを結合できるオリゴペプチドまたはポリペプチドと定義される。好ましくは、上記ドメインは、細胞表面分子と相互作用できるであろう。例えば、細胞外リガンド結合ドメインは、特定の病状と関連する標的細胞上の細胞表面マーカーの働きをするリガンドを認識するように選択してもよい。好ましい実施形態において、前記細胞外リガンド結合ドメインは、可動性リンカーによって接合した標的抗原特異的モノクローナル抗CD−123抗体の軽鎖(V)可変フラグメントおよび重鎖(V)可変フラグメントを含む、単鎖抗体フラグメント(scFV)を含む。前記VおよびVは、好ましくは、表2に示すように、2A2、4A5、およびD10と呼ばれる抗体から選択される。
【0038】
さらに、表2は、G6、G3、H10、2A4および1C11のVおよびVも記載し、それらの各々の配列である配列番号37、41、45、49、53、58、63、67、71、および75、ならびにヒト化D10およびH10のVおよびVに関して各々の配列である配列番号31、36、57および62を開示している。
【0039】
図4は、本発明による6つのバージョンのCARの構造を示す。表1は、例として、さらなる実験において使用される構成部分を示す。
【0040】
本発明によるROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)は、図4に記載のV1〜V6から選択されるポリペプチド構造の1つを有していてもよく、前記構造は、抗ROR1モノクローナル抗体由来のVHおよびVLを含む細胞外リガンド結合ドメイン、ヒンジ、膜貫通ドメイン、ならびに4−1BB由来のCD3ζシグナリングドメインおよび共刺激ドメインを含む細胞質ドメイン、を含む。
【0041】
より具体的には、本発明は、図4に記載のV3、V5、およびV1から選択されるポリペプチド構造の1つを有するROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)に関し、前記構造は、抗ROR1モノクローナル抗体由来のVHおよびVLを含む細胞外リガンド結合ドメイン、ヒンジ、CD8α膜貫通ドメイン、ならびに4−1BB由来のCD3ζシグナリングドメインおよび共刺激ドメインを含む細胞質ドメイン、を含む。
【0042】
抗原結合ドメイン
本発明のROR1CARの抗原結合ドメインは、組織外(off−tissue)抗原に結合するいずれのドメインであってもよく、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、およびそれらの機能フラグメントが含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
好ましい実施形態において、前記細胞外リガンド結合ドメインは、可動性リンカーによって接合した標的抗原特異的モノクローナルROR1抗体の軽鎖(V)可変フラグメントおよび重鎖(V)可変フラグメントを含む、単鎖抗体フラグメント(scFV)を含む。前記VおよびVは、好ましくは、表2に示すように、H10、D10、4A5、G6、G3、2A2、2A4、および1C11と呼ばれる抗体から選択される。これらは、好ましくは、例えば配列番号10の配列を含む可動性リンカーによって互いに結合されている。言い換えれば、前記CARは、優先的には、バージョンV1〜V6についての表3から表8に示すように、VH鎖とVL鎖との組み合わせと、その間のリンカーとに由来する配列に対して、少なくとも90%、95%、97%、または99%の同一性を示すポリペプチド配列を含む、細胞外リガンド結合ドメインを含む。
【0044】
特に好ましい実施形態において、前記VおよびVは、抗体H10に由来する。
他の特定の実施形態において、前記VおよびVは、抗体D10に由来する。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「組換え抗体」は、組換えDNA技術を用いて作成した抗体または抗体フラグメント、例えば、バクテリオファージ、酵母発現系、または哺乳動物細胞発現系で発現させた抗体または抗体フラグメント、なかでも抗体のCDR領域をコードする核酸配列を含むウイルスベクターで形質導入したT細胞で発現させた抗体または抗体フラグメントを意味する。上記用語は、抗体または抗体フラグメントをコードするDNA分子の合成によって生成された抗体または抗体フラグメントを意味するものとも解釈されるべきであり、DNA分子は、抗体または抗体フラグメントタンパク質、または抗体もしくは抗体フラグメントを特定するアミノ酸配列を発現し、DNAまたはアミノ酸配列は、本技術分野で利用可能であり、よく知られている組換えもしくは合成DNA配列技術またはアミノ酸配列技術を用いて得られたものである。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「ヒト化抗体」は、ヒト化重鎖可変領域およびヒト化軽鎖可変領域を含むポリペプチドを意味する。例えば、ポリペプチドには、ヒト抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域のフレームワーク(FR)領域が含まれ得るが、ポリペプチドは、実質的に親モノクローナル抗体の抗原結合特性を保持している。ヒト化重鎖可変領域および/またはヒト化軽鎖可変領域は、相補性決定領域(CDR)を除き、少なくとも約87%ヒト化、少なくとも約90%ヒト化、少なくとも約95%ヒト化、少なくとも約98%ヒト化、または少なくとも約100%ヒト化されている。抗原結合ポリペプチド分子は、モノクローナル抗体ドナー(例えば、マウスモノクローナル抗体ドナー)に由来していてもよく、抗原結合ポリペプチド分子にはモノクローナル抗体由来のCDR(例えば、マウスモノクローナルCDR)が含まれ得る。
【0047】
本明細書で使用する場合、用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマかウイルス形質転換リンパ球かどちらかの、実験室で成長させた細胞クローンによって産生された抗体を意味し、モノクローナル抗体は、自然抗体よりも豊富で均一性が高く、かつROR1抗原上の単一のサイトに特異的に結合することができる。単一特異性抗体は、全てが特有の親細胞のクローンである同一の免疫細胞によって作られ、種々の異なる免疫細胞で作られるポリクローナル抗体とは対照的である。モノクローナル抗体は、同じエピトープに結合するという点で、単価の親和性を有する。
【0048】
本発明は、上記のようなROR1特異的キメラ抗原レセプター(ROR1CAR)を開示し、前記細胞外リガンド結合ドメインは、ヒト化されたVH鎖およびVL鎖を含む。
【0049】
表2は、D10抗ROR1抗体およびH10抗ROR1抗体に対応する、ヒト化scFV(VH鎖およびVL鎖)の配列を示す。
【0050】
図3A〜3Dは、マウスのD10scFvおよびH10scFvの、Lefranc MPら(Lefranc、MP、Ehrenmann F、Ginestoux C、Giudicelli V、Duroux P“Use of IMGT(登録商標) databases and tools for antibody engineering and humanization”、Methods Mol Biol.2012、907:3〜37)による方法を適用した後のD10scFvおよびH10scFvのヒト化形態に対するアライメントを示す。これらの4つのアライメントは、以下のように示されている。
【0051】
− CDR、
− アミノ酸(AA)がマウス起源のものとして保存されていることを意味する上向き矢印がついた、「最も重要な」AA;
− アミノ酸が、マウス起源またはヒト起源であってもよいことを意味する上向き矢印がついた「あまり重要でない」AA;本発明のヒト化配列は、実際に、ヒト起源またはマウス起源の、このような「あまり重要でない」AAの全ての組み合わせから作られ得る、全ての異なる配列のセットであることが理解され;そのような配列は、すぐ上に示したように、CDRおよび「最も重要な」AAを含む。
【0052】
ヒト化抗体は、以下のものを含むが、これらに限定されない、本技術分野で知られている種々の手法を用いて作成することができ、以下の文献の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。上記手法は、CDRグラフティング(例えば、欧州特許第239,400号明細書;国際公開第91/09967号パンフレット;ならびに米国特許第5,225,539号明細書、米国特許第5,530,101号明細書、および米国特許第5,585,089号明細書を参照のこと。これらの文献の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。)、ベニアリングまたはリサーフェシング(例えば、欧州特許第592,106号明細書および欧州特許第519,596号明細書;Padlan、1991、Molecular Immunology、28(4/5):489−498;Studnickaら、1994、Protein Engineering、7(6):805−814;ならびにRoguskaら、1994、PNAS、91:969〜973を参照のこと。これらの文献の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。)、チェインシャッフリング(例えば、米国特許第5,565,332号明細書を参照のこと。この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。)、および、例えば、米国特許出願公開第2005/0042664号明細書、米国特許出願公開第2005/0048617号明細書、米国特許第6,407,213号明細書、米国特許第5,766,886号明細書、国際公開第9317105号パンフレット、Tanら、J.Immunol.、169:1119〜25(2002)、Caldasら、Protein Eng.、13(5):353〜60(2000)、Moreaら、Methods、20(3):267〜79(2000)、Bacaら、J.Biol.Chem.、272(16):10678〜84(1997)、Roguskaら、Protein Eng.、9(10):895〜904(1996)、Coutoら、Cancer Res.、55(23Supp):5973s〜5977s(1995)、Coutoら、Cancer Res.、55(8):1717〜22(1995)、Sandhu J S、Gene、150(2):409〜10(1994)、およびPedersenら、J.Mol.Biol.、235(3):959〜73(1994)に開示された手法である。多くの場合、フレームワーク領域中のフレームワーク残基は、CDRドナー抗体由来の対応する残基で置換され、抗原結合を変化(例えば、改善)させるであろう。これらのフレームワーク置換は、本技術分野でよく知られた方法によって(例えば、CDRおよびフレームワーク残基の相互作用のモデリングによって)同定され、抗原結合および配列比較のために重要なフレームワーク残基を同定し、特定の位置の通常でないフレームワーク残基を同定する。(例えば、Queenら、米国特許第5,585,089号明細書;およびRiechmannら、1988、Nature、332:323を参照のこと。これらの文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。)。
【0053】
本発明の一態様は、特に、図4に記載のV3、V5、およびV1から選択されるポリペプチド構造の1つを有するROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)に関し、前記構造は、抗ROR1モノクローナル抗体由来のVHおよびVLを含む細胞外リガンド結合ドメイン、ヒンジ、CD8α膜貫通ドメイン(CD8α TM)、ならびに4−1BB由来のCD3ζシグナリングドメインおよび共刺激ドメインを含む細胞質ドメイン、を含む。
【0054】
好ましい実施形態によれば、前記膜貫通ドメインは、配列番号6(CD8α TM)と、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%の配列同一性を共有するポリペプチドによってコードされる。
【0055】
別の好ましい実施形態によれば、前記ヒンジは、それぞれ構造V3、V5、およびV1に関する配列番号4(CD8α)、配列番号5(IgG1)、および配列番号3(FcγRIIIα)と、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%の配列同一性を共有するポリペプチドによってコードされる。
【0056】
より好ましい実施形態によれば、本発明のROR1特異的CARは、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するCD8αヒンジと、配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するCD8α膜貫通ドメインとを含む、ポリペプチド構造V3を有する。
【0057】
別のより好ましい実施形態によれば、本発明のROR1特異的CARは、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するIgG1ヒンジと、番号6に記載のアミノ酸配列を有するCD8α膜貫通ドメインとを含む、ポリペプチド構造V5を有する。
【0058】
一実施形態によれば、前記ROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)は、図4に記載のV3、V5、およびV1から選択されるポリペプチド構造の1つを有し、細胞外リガンド結合ドメインは、
− 配列番号54(CDR−H1)、配列番号55(CDR−H2)、および配列番号56(CDR−H3)のマウスモノクローナル抗体H10由来のCDRを含む可変重鎖VH、ならびに
− 配列番号59(CDR−L1)、配列番号60(CDR−L2)、および配列番号61(CDR−L3)のマウスモノクローナル抗体H10由来のCDRを含む可変軽鎖VL、
または、
− 配列番号28(CDR−H1)、配列番号29(CDR−H2)、および配列番号30(CDR−H3)のマウスモノクローナル抗体D10由来のCDRを含む可変重鎖VH、ならびに
− 配列番号33(CDR−L1)、配列番号34(CDR−L2)、および配列番号35(CDR−L3)のマウスモノクローナル抗体D10由来のCDRを含む可変軽鎖VL、を含む。
【0059】
好ましい実施形態において、前記ROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)は、図4に記載のV3、V5、およびV1から選択されるポリペプチド構造の1つを有し、前記細胞外リガンド結合ドメインは、VH鎖およびVL鎖を含み、該VH鎖およびVL鎖は、それぞれ
− 配列番号53(H10−VH)および配列番号58(H10−VL)または
− 配列番号27(D10−VH)および配列番号32(D10−VL)または;
と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0060】
別の実施形態において、前記ROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)は、図4に記載のV3、V5、およびV1から選択されるポリペプチド構造の1つを有し、前記細胞外リガンド結合ドメインは、ヒト化されたH10またはD10抗体由来のVH鎖およびVL鎖を含む。
【0061】
特に、前記細胞リガンド結合ドメインは、ヒト化VH鎖およびVL鎖を含み、
− 可変重鎖HuH10VHは、配列番号57でコードされるポリペプチドを有し、
− 可変軽鎖HuH10VHは、配列番号62でコードされるポリペプチドを有し、
または、
− 可変重鎖HuD10VHは、配列番号31でコードされるポリペプチドを有し、
− 可変軽鎖HuD10は、配列番号36でコードされるポリペプチドを有する。
【0062】
別の実施形態によれば、前記ROR1(NTRKR1)特異的キメラ抗原レセプター(CAR)は、図4に記載のV3、V5、およびV1から選択されるポリペプチド構造の1つを有し、前記CARポリペプチドは、配列番号117(H10v3−CAR配列)と、または配列番号93(D10v3−CAR配列)と、または配列番号95(D10v5−CAR配列)と、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%の配列同一性を共有する。
【0063】
CAR構造
本発明によるCARのシグナル伝達ドメインまたは細胞内シグナリングドメインは、細胞外リガンド結合ドメインの標的への結合に続き、免疫細胞の活性化および免疫応答をもたらす細胞内シグナリングの要因である。言い換えれば、シグナル伝達ドメインは、CARを発現している免疫細胞における通常のエフェクター機能のうち、少なくとも1つの活性化の要因である。例えば、T細胞のエフェクター機能は、サイトカインの分泌を含む、細胞溶解活性またはヘルパー活性であり得る。次に、用語「シグナル伝達ドメイン」は、エフェクター信号を伝達し、細胞が特化した機能を果たすように方向付けるタンパク質の部分を指す。
【0064】
CARで用いられるシグナル伝達ドメインの好ましい例は、協調して働き、抗原レセプター連結に続くシグナル伝達を起こさせるT細胞レセプターおよびコレセプターの細胞質配列、ならびにこの配列のあらゆる派生物またはバリアント、および同じ機能的能力を有するあらゆる合成配列であり得る。シグナル伝達ドメインは、細胞質シグナル配列の2つの別個のクラス、すなわち抗原依存性の一次活性化を起こさせるもの、および抗原非依存的な様式で作用して二次刺激シグナルまたは共刺激シグナルを生じさせるもの、を含む。一次細胞質シグナル配列は、免疫レセプターチロシン活性化モチーフ、すなわちITAMとして知られるシグナリングモチーフを含んでもよい。ITAMは、syk/zap70クラスチロシンキナーゼの結合サイトとして働く種々のレセプターの細胞質内末端中に見出される、明確に画定されたシグナリングモチーフである。本発明で用いられるITAMの例としては、非限定的な例として、TCRζ、FcRγ、FcRβ、FcRε、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66d由来のものがあげられ得る。好ましい実施形態において、CARのシグナル伝達ドメインは、アミノ酸配列(配列番号9)と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%、または99%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有するCD3ζシグナリングドメインを含み得る。
【0065】
特定の実施形態において、本発明のCARのシグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル分子またはその一部を含む。共刺激分子は、効果的な免疫応答に必要とされる、抗原レセプターまたはそのリガンド以外の、細胞表面分子である。「共刺激リガンド」は、T細胞上の同族の共刺激分子と特異的に結合し、それによって、例えば、TCR/CD3複合体とペプチドが結合したMHC分子との結合によって生じる一次シグナルに加えて、T細胞応答(増殖活性化、分化などを含むが、これらに限定されない)を媒介するシグナルを生じさせる、抗原提示細胞上の分子を指す。共刺激リガンドとしては、CD7、B7−1(CD80)、B7−2(CD86)、PD−L1、PD−L2、4−1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(igand)(ICOS−L)、細胞間接着分子(ICAM、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA−G、MICA、M1CB、HVEM、リンホトキシンβレセプター、3/TR6、ILT3、ILT4、Tollリガンドレセプターに結合するアゴニストまたは抗体、およびB7−H3と特異的に結合するリガンド、があげられ得るが、これらに限定されない。共刺激リガンドは、なかでも、T細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体、例えば、限定されないが、CD27、CD28、4−1BB、OX40、CD30、CD40、PD−1、ICOS、白血球機能関連抗原1(LFA−1)、CD2、CD7、LTGHT、NKG2C、B7−H3、CD83と特異的に結合するリガンド、も包含する。
【0066】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それによって細胞による共刺激反応、例えば、限定されないが、増殖、を媒介するT細胞上の同族の結合パートナーを指す。共刺激分子としては、MHCクラスI分子、BTLA、およびTollリガンドレセプターがあげられるが、これらに限定されない。共刺激分子の例としては、CD27、CD28、CD8、4−1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD−1、ICOS、白血球機能関連抗原1(LFA−1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7−H3、およびCD83と特異的に結合するリガンドなどがあげられる。
【0067】
好ましい実施形態において、本発明のCARのシグナル伝達ドメインには、4−1BB(GenBank:AAA53133.)およびCD28(NP_006130.1)のフラグメントからなる群から選択される共刺激シグナル分子またはその一部が含まれる。特に、本発明のCARのシグナル伝達ドメインは、配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0068】
本発明によるCARは、細胞の表面膜上に発現する。よって、このようなCARは、さらに膜貫通ドメインを含む。適切な膜貫通ドメインの著しい特徴としては、細胞表面に、本発明において好ましくは免疫細胞表面に、特にリンパ球またはナチュラルキラー(NK)細胞表面に発現する能力、および免疫細胞の細胞応答を既定の標的細胞に対して方向付けるために互いに相互作用する能力があげられる。膜貫通ドメインは、天然起源または合成起源のいずれに由来してもよい。膜貫通ドメインは、いかなる膜結合または膜貫通タンパク質に由来してもよい。非限定的な例として、膜貫通ポリペプチドは、α、β、γ、もしくはδなどのT細胞レセプターのサブユニット、CD3複合体を構成するポリペプチド、IL2レセプターp55(α鎖)、p75(β鎖)、もしくはγ鎖、またはFcレセプターのサブユニット鎖であってもよく、特にFcγレセプターIIIまたはCDタンパク質であってもよい。あるいは、膜貫通ドメインは、合成物であってもよく、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主として含んでいてもよい。好ましい実施形態において、前記膜貫通ドメインは、ヒトCD8α鎖(例えば、NP_001139345.1)由来である。膜貫通ドメインは、前記細胞外リガンド結合ドメインと前記膜貫通ドメインとの間にヒンジ領域をさらに含んでいてもよい。本明細書で用いられる用語「ヒンジ領域」は、一般に、膜貫通ドメインを細胞外リガンド結合ドメインに結合させる機能を果たすあらゆるオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。特に、ヒンジ領域は、細胞外リガンド結合ドメインにさらなる柔軟性と接近性を与えるために用いられる。ヒンジ領域は、アミノ酸を、300アミノ酸まで、好ましくは10〜100アミノ酸、最も好ましくは25〜50アミノ酸含んでいてもよい。ヒンジ領域は、天然型分子の全体もしくは一部、例えば、CD8、CD4もしくはCD28の細胞外領域の全体もしくは一部、または抗体の定常領域の全体もしくは一部に由来していてもよい。あるいは、ヒンジ領域は、天然型ヒンジ配列に対応する合成配列であってもよく、完全な合成ヒンジ配列であってもよい。好ましい実施形態において、前記ヒンジドメインには、本明細書において、それぞれ配列番号3、配列番号4、および配列番号5、またはこれらのポリペプチドと好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%、もしくは99%の配列同一性を示すヒンジポリペプチドと呼ばれる、ヒトCD8α鎖、FcγRIIIαレセプター、またはIgG1の部分が含まれる。
【0069】
本発明によるCARには、一般に、膜貫通ドメイン(TM)、とりわけ配列番号6または7のポリペプチドに対して同一性を示す、CD8αおよび4−1BBから選択される膜貫通ドメイン(TM)がさらに含まれる。配列番号6のCD8αTMが好ましい。
【0070】
好ましい実施形態によれば、ROR1特異的CARは、図4に記載のV3、V5、およびV1から選択されるポリペプチド構造を有し、前記構造は、モノクローナル抗ROR1抗体由来のVHおよびVLを含む細胞外リガンド結合ドメイン、CD8αヒンジ、CD8α膜貫通ドメイン、ならびに4−1BB由来のCD3ζシグナリングドメインおよび共刺激ドメインを含む細胞質ドメイン、を含む。
【0071】
別の好ましい実施形態によれば、ROR1特異的CARは、図4に記載のV3、V5、およびV1から選択されるポリペプチド構造を有し、前記構造は、モノクローナル抗ROR1抗体由来のVHおよびVLを含む細胞外リガンド結合ドメイン、IgG1ヒンジ、CD8α膜貫通ドメイン、ならびに4−1BB由来のCD3ζシグナリングドメインおよび共刺激ドメインを含む細胞質ドメイン、を含む。
【0072】
好ましい実施形態によれば、ROR1特異的CARは、図4に記載のV3、V5、およびV1から選択されるポリペプチド構造を有し、前記構造は、モノクローナル抗ROR1抗体由来のVHおよびVLを含む細胞外リガンド結合ドメイン、FcγRIIIαヒンジ、CD8α膜貫通ドメイン、ならびに4−1BB由来のCD3ζシグナリングドメインおよび共刺激ドメインを含む細胞質ドメイン、を含む。
【0073】
表3〜8に、6つのバージョンであるV1〜V6の全てのCAR構造を示す。
標的抗原のダウンレギュレーションまたは変異は、がん細胞で一般的に観察され、抗原喪失エスケープバリアントを生じさせる。よって、腫瘍エスケープを相殺し、免疫細胞を標的に対してより特異的にさせるために、本発明によるROR1特異的CARは、別の細胞外リガンド結合ドメインを含み、標的中の異なる要素を同時に結合することによって、免疫細胞の活性および機能を増強してもよい。一実施形態において、細胞外リガンド結合ドメインは、同じ膜貫通ポリペプチドにタンデムに配置されていてもよく、場合により、リンカーで隔てられていてもよい。別の実施形態において、種々の前記細胞外リガンド結合ドメインは、CARを構成する種々の膜貫通ポリペプチドに配置されていてもよい。別の実施形態において、本発明は、それぞれが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCAR集団に関する。特に、本発明は、免疫細胞を準備することと、前記細胞の表面に、それぞれが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCAR集団を発現させることとを含む免疫細胞の遺伝子操作方法に関する。別の特定の実施形態において、本発明は、免疫細胞を準備することと、前記細胞内に、それぞれが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCAR集団を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入することと含む、免疫細胞の遺伝子操作方法に関する。CAR集団とは、それぞれが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含む、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、または6超のCARを指す。本発明による異なる細胞外リガンド結合ドメインは、好ましくは標的中の異なる要素を同時に結合することによって、免疫細胞の活性および機能を増強してもよい。本発明は、それぞれが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCAR集団を含む、単離された免疫細胞にも関する。
【0074】
ポリヌクレオチドおよびベクター
本発明は、上記の本発明によるCARをコードするポリヌクレオチドおよびベクターにも関する。
【0075】
ポリヌクレオチドは、発現カセットまたは発現ベクター(例えば、バクテリア宿主細胞への導入のためのプラスミド、または昆虫宿主細胞のトランスフェクションのためのバキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、またはプラスミドもしくは哺乳動物宿主細胞のトランスフェクションのためのレンチウイルスなどのウイルスベクター)中に存在してもよい。
【0076】
特定の実施形態において、種々の核酸配列は、2Aペプチドをコードする配列などのリボソームスキップ配列をコードする核酸配列を含む、1つのポリヌクレオチドまたはベクター中に含まれてもよい。ピコルナウイルスのサブグループであるアフトウイルスで同定された2Aペプチドは、あるコドンから次のコドンへのリボソーム「スキップ」を、それらのコドンによってコードされる2つのアミノ酸の間にペプチド結合を形成させることなく起こさせる((DonnellyおよびElliott、2001;Atkins,Willsら、2007;Doronina,Wuら、2008)を参照のこと)。「コドン」とは、リボソームによって1つのアミノ酸残基に翻訳されるmRNA上の(またはDNA分子のセンス鎖上の)3個のヌクレオチドを指す。よって、2つのポリペプチドは、それらのポリペプチドがインフレームの2Aオリゴペプチド配列によって分けられている場合、mRNA内にある単一の、連続したオープンリーディングフレームから合成され得る。このようなリボソームスキップのメカニズムは、本技術分野でよく知られており、単一のメッセンジャーRNAによってコードされるいくつかのタンパク質を発現させるためのいくつかのベクターで用いられることが知られている。
【0077】
膜貫通ポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に方向付けるために、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列、またはプレ配列としても知られる)が、ポリヌクレオチド配列またはベクター配列中に設けられる。分泌シグナル配列は、膜貫通核酸配列に作動可能に連結され、すなわち、2つの配列は、正しいリーディングフレーム中に接合され、新たに合成されたポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に方向付けるように配置される。分泌シグナル配列は、一般的に、対象となるポリペプチドをコードする核酸配列に対して5’側に位置するが、ある特定の分泌シグナル配列は、対象となる核酸配列中の他の場所に位置し得る(例えば、Welchら、米国特許第5,037,743号明細書;Hollandら、米国特許第5,143,830号明細書を参照のこと)。好ましい実施形態において、シグナルペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0078】
当業者は、遺伝暗号の縮重の観点から、これらのポリヌクレオチド分子間でかなりの配列変動が起こり得ることを認識するであろう。好ましくは、本発明の核酸配列は、哺乳動物細胞での発現に、好ましくはヒト細胞での発現にコドン最適化される。コドン最適化は、対象の配列において、所定の種で高発現している遺伝子において通常低頻度なコドンを、そのような種で高発現している遺伝子において通常高頻度なコドンと交換することを指し、そのようなコドンは、交換されるコドンと同じアミノ酸をコードしている。
【0079】
CARを有する免疫細胞の遺伝子操作方法
本発明は、免疫療法のための免疫細胞の調製方法であって、前記免疫細胞に、上記で説明したROR1CARの1つをコードするポリヌクレオチドまたはベクターをex−vivoで導入することを含む、方法を包含する。
【0080】
好ましい実施形態において、免疫細胞における安定的発現という観点から、前記ポリヌクレオチドはレンチウイルスベクター中に含まれる。
【0081】
さらなる実施形態によれば、前記方法は、前記細胞を遺伝子改変し、同種異系の移植により適切なものにするステップをさらに含む。
【0082】
第1の態様によれば、免疫細胞を、例えば、国際公開第2013/176915号パンフレットに記載されているように、T細胞レセプター(TCR)の1つまたは複数の構成部分を発現する、少なくとも1つの遺伝子を不活性化することによって、同種異系とすることができ、これをHLAもしくはβ2mタンパク質をコードするまたはHLAもしくはβ2mタンパク質の発現を調節する遺伝子の不活性化と組み合わせてもよい。これにより、移植片対宿主症候群および移植片拒絶反応のリスクは著しく減少する。
【0083】
別の態様によれば、免疫細胞は、ROR1陽性悪性細胞を治療するための標準ケアとして用いられる免疫抑制薬または化学療法治療に対する耐性を向上させるために、さらに遺伝子操作してもよい。例えば、Campath(アレムツズマブ)および糖質コルチコイド治療の薬物標的であるCD52および糖質コルチコイドレセプター(GR)を不活性化し、細胞をこれらの治療に対して耐性にし、特異的ROR1CARを有さない患者自身のT細胞に対する競争優位性を与えてもよい。CD3遺伝子の発現を抑制または減少させ、別の免疫抑制薬であるTeplizumabに対する耐性を付与してもよい。HPRTの発現を本発明によって抑制または減少させ、特に急性リンパ芽球性(lymphoblasic)白血病の治療のための化学療法に一般的に用いられる細胞分裂阻害剤である、6−チオグアニンに対する耐性を付与してもよい。
【0084】
本発明のさらなる態様によれば、免疫細胞をさらに操作し、T細胞活性化の調節因子として働く「免疫チェックポイント」として機能するタンパク質、例えばPDCD1またはCTLA−4、をコードする遺伝子を不活性化することによって、免疫細胞をさらに活性化し、または疲弊を限定することができる。発現が減少し、または抑制され得る遺伝子の例を表9に示す。
【0085】
【表9】
【0086】
好ましい実施形態において、免疫細胞をさらに遺伝子操作する前記方法は、前記T細胞内に、特異的レアカットエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド(特にmRNA)を導入して、DNA切断によって、上記したような遺伝子を選択的に不活性化することを含む。より好ましい実施形態において、前記レアカットエンドヌクレアーゼは、TALEヌクレアーゼまたはCas9エンドヌクレアーゼである。TALヌクレアーゼは、特異性および切断効率が、他の種類のレアカットエンドヌクレアーゼと比べてより高いことがこれまでに立証されており、よってTALヌクレアーゼは、ターンオーバーが一定なラージスケールでの、遺伝子操作された免疫細胞の産生のための一般的に好まれるエンドヌクレアーゼである。
【0087】
送達方法
上記の種々の方法は、細胞内へのCARの導入を含む。非限定的な例として、前記CARは、1個のプラスミドベクターにコードされた導入遺伝子として導入することができる。前記プラスミドベクターは、前記ベクターが導入された細胞の同定および/または選択を実現する選択マーカーも含み得る。
【0088】
ポリペプチドは、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞内に導入した結果として、細胞内でin situで合成し得る。あるいは、前記ポリペプチドは、細胞外で産生させ、細胞内に導入することができる。ポリヌクレオチド構築物を細胞内に導入する方法は本技術分野で知られており、非限定的な例として、ポリヌクレオチド構築物が細胞ゲノム中に組み込まれる安定的な形質転換方法、ポリヌクレオチド構築物が細胞ゲノム中に組み込まれない一過性の形質転換方法、およびウイルス媒介方法があげられる。前記ポリヌクレオチドは、例えば、組換えウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス)、リポソームなどによって細胞内に導入してもよい。例えば、一過性の形質転換方法としては、例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、またはパーティクル・ガン法があげられる。前記ポリヌクレオチドは、細胞内発現の観点から、ベクター、なかでも、プラスミドまたはウイルスに含まれてもよい。
【0089】
遺伝子操作された免疫細胞
本発明は、細胞の遺伝子操作方法によって得ることができる単離細胞または細胞系にも関する。特に、前記単離細胞は、上記で説明した少なくとも1つのCARを含む。別の実施形態において、前記単離細胞は、それぞれが異なる細胞外リガンド結合ドメインを含むCAR集団を含む。特に前記単離細胞は、CARをコードする外来性のポリヌクレオチド配列を含む。本発明の遺伝子改変免疫細胞は、抗原結合メカニズムとは無関係に、活性化され、増殖する。
【0090】
本発明の範囲には、単離された免疫細胞、好ましくは上記で説明した方法のいずれか1つによって得たT細胞も含まれる。前記免疫細胞は、機能として自然免疫応答および/または適応免疫応答の開始および/または実行にかかわる造血細胞起源の細胞を指す。本発明による前記免疫細胞は、幹細胞由来であってもよい。幹細胞は、成体幹細胞、非ヒト胚性幹細胞、なかでも、非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、誘導多能性幹細胞、全能性幹細胞または造血幹細胞であり得る。代表的なヒト細胞は、CD34+細胞である。前記単離細胞は、樹状細胞、キラー樹状細胞、マスト細胞、NK細胞、B細胞、または炎症性Tリンパ球、細胞障害性Tリンパ球、調節性Tリンパ球、もしくはヘルパーTリンパ球からなる群から選択されるT細胞でもあり得る。別の実施形態において、前記細胞は、CD4+Tリンパ球およびCD8+Tリンパ球からなる群に由来してもよい。本発明の細胞の増殖および遺伝子改変に先立って、細胞の起源は、種々の非限定的な方法によって対象から得ることができる。細胞は、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸膜滲出液、脾臓組織、および腫瘍を含む多くの非限定的な起源から得ることができる。本発明のある特定の実施形態において、利用可能でかつ当業者に知られている多くのT細胞系を使用することができる。別の実施形態において、前記細胞は、健康なドナー由来、がんと診断された患者由来、または感染症と診断された患者由来であり得る。別の実施形態において、前記細胞は、種々の表現型上の特徴を示す細胞の混合集団の一部である。本発明の範囲には、上記で説明した方法によって形質転換したT細胞から得た細胞系も含まれる。免疫抑制治療に耐性があり、上記の方法で得ることができる改変細胞は、本発明の範囲に含まれる。
【0091】
好ましい実施形態として、本発明は、患者への同種異系の移植のための、上記で説明したROR1CARを有するT細胞またはT細胞集団を提供し、該T細胞またはT細胞集団は、機能性TCRを発現せず、ROR1陽性細胞に対して反応性である。
【0092】
T細胞の活性化および増殖
T細胞の遺伝子改変の前または後のいずれかにおいて、本発明の遺伝子改変免疫細胞が抗原結合メカニズムとは無関係に活性化され、増殖するにしても、免疫細胞、特に本発明のT細胞は、一般に、例えば、米国特許第6,352,694号明細書;米国特許第6,534,055号明細書;米国特許6,905,680号明細書;米国特許6,692,964号明細書;米国特許5,858,358号明細書;米国特許6,887,466号明細書;米国特許6,905,681号明細書;米国特許7,144,575号明細書;米国特許7,067,318号明細書;米国特許7,172,869号明細書;米国特許7,232,566号明細書;米国特許7,175,843号明細書;米国特許5,883,223号明細書;米国特許6,905,874号明細書;米国特許6,797,514号明細書;米国特許6,867,041号明細書;および米国特許出願公開第20060121005号明細書、に記載された方法によって、さらに活性化され、増殖し得る。T細胞は、in vitroまたはin vivoで増殖し得る。
【0093】
一般に、本発明のT細胞は、T細胞表面のCD3TCR複合体および共刺激分子を刺激し、T細胞活性化シグナルを生じさせる薬剤との接触によって増殖する。例えば、カルシウムイオノフォアA23187、ホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)、またはフィトヘマグルチニン(PHA)のようなマイトジェンレクチンなどの化学物質を、T細胞活性化シグナルを生じさせるために使用し得る。
【0094】
非限定的な例として、T細胞集団は、例えば、抗CD3抗体、もしくはその抗原結合フラグメント、または表面に固定化された抗CD2抗体との接触により、またはカルシウムイオノフォアならびにプロテインキナーゼC活性化因子(例えば、ブリオスタチン)との接触により、in vitroで刺激され得る。T細胞表面上の補助分子の同時刺激ために、補助分子を結合するリガンドが用いられる。例えば、T細胞増殖を刺激するのに適切な条件下で、抗CD3抗体および抗CD28抗体と、T細胞集団とを接触させてもよい。T細胞の培養に適切な条件には、増殖および生存能に必要な因子を含有し得る適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI1640培地もしくはX−vivo5(Lonza社))が含まれ、該因子としては、血清(例えば、ウシ胎仔血清またはヒト血清)、インターロイキン−2(IL−2)、インシュリン、IFN−g、IL−4、IL−7、GM−CSF、IL−10、IL−2、IL−15、TGFp、およびTNF−、または当業者に知られている細胞成長のための他のあらゆる添加物があげられる。細胞成長のための他の添加物としては、界面活性剤、プラスマネート、ならびにN−アセチルシステインおよび2−メルカプトエタノール(mercaptoethanoi)などの還元剤があげられるが、これらに限定されない。培地としては、RPMI1640、A1M−V、DMEM、MEM、a−MEM、F−12、X−Vivo1、およびX−Vivo20があげられ、オプティマイザー、添加したアミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびビタミンを含み、無血清であるか、または適切な量の血清(または血漿)、もしくは定められたホルモン群、ならびに/またはT細胞の成長および増殖に十分な量のサイトカイン(単数または複数)が添加されているか、のいずれかであり得る。抗生物質、例えばペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験における培養物のみに含まれ、対象に注入する細胞の培養物には含まれない。標的細胞は、成長に必要な条件、例えば適切な温度(例えば37℃)および雰囲気(例えば空気+5%CO)に保持する。刺激にさらされた時間が異なるT細胞は、異なる特徴を示し得る。
【0095】
別の特定の実施形態において、前記細胞は、組織または細胞との共培養によって増殖させてもよい。前記細胞は、また、in vivoで、例えば前記細胞を対象に投与した後に対象の血液中で増殖させてもよい。
【0096】
治療への適用
別の実施形態において、種々の方法によって得られた単離細胞、または上記で説明した前記単離細胞に由来する細胞系を、医薬として使用することができる。別の実施形態において、前記医薬は、治療を必要とする患者のがんの治療、特にB細胞リンパ腫および白血病の治療に使用することができる。別の実施形態において、本発明による前記単離細胞または前記単離細胞由来の細胞系は、治療を必要とする患者のがんの治療ための医薬の製造に使用することができる。
【0097】
別の態様において、本発明は、治療を必要とする患者の治療方法に基づき、前記方法は、下記ステップの少なくとも1つを含む:
(a)上記で説明した方法のいずれか1つによって得ることができる免疫細胞を準備するステップ、
(b)前記患者に形質転換した前記免疫細胞を投与するステップ。
【0098】
一実施形態によれば、本発明の前記T細胞は、in vivoで盛んなT細胞増殖を起こし得、長時間にわたって生き続け得る。
【0099】
前記治療は、寛解的であり得、治癒的であり得、または予防的であり得る。前記治療は、自己免疫療法治療の一部、または同種異系免疫療法治療の一部のいずれかであり得る。自己とは、患者を治療するために使用される細胞、細胞系、または細胞集団が、前記患者またはヒト白血球抗原(HLA)適合ドナー由来であることを指す。同種異系とは、患者を治療するために使用される細胞、または細胞集団が、前記患者由来ではなく、ドナー由来であることを指す。
【0100】
開示された方法で使用し得る細胞については、上記のセクションで説明されている。前記治療は、ROR1発現細胞、特にROR1発現細胞が過剰であることによって特徴づけられる前悪性または悪性のがん状態と診断された患者を治療するために使用し得る。このような状態は、白血病または悪性リンパ増殖性障害などの血液がんで見られる。
【0101】
白血病は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成(melodysplastic)症候群、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、および骨髄異形成症候群であり得る。
【0102】
リンパ増殖性障害は、リンパ腫、特に慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、および濾胞性リンパ腫(小細胞性および大細胞性)であり得る。
【0103】
好ましい一実施形態によれば、前記遺伝子操作T細胞は、慢性リンパ性白血病(CLL)、または小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療のために提供される。
【0104】
別の好ましい実施形態によれば、CLLまたはSLLの前記治療は、ROR1−CAR−T細胞注入の前にリンパ球枯渇にされた患者に施される。前記リンパ球枯渇は、通常、化学療法によって、好ましくはフルダラビン(F)、シクロホスファミド(C)、ベンダムスチン(B)、もしくはリツキシマブ(R)、またはこれらの組み合わせなどの薬物を使用して実施される。典型的には、εRまたはFBRの組み合わせを、CAR−T細胞投与前のリンパ球枯渇のために使用し得る。
【0105】
別の好ましい実施形態によれば、前記遺伝子操作T細胞は、t(1;19)染色体転座を伴うマントル細胞リンパ腫(MCL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療のために提供される。
【0106】
治療され得るがんには、非充実性腫瘍が含まれ得る(例えば、血液系腫瘍であり、プレB ALL(pre−B ALL)(小児(pedriatic)適応症)、成人ALL、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫などがあげられるが、これらに限定されない。本発明のCARで治療されるがんの種類としては、白血病またはリンパ性悪性腫瘍があげられるが、これらに限定されない。成人腫瘍/がんおよび小児腫瘍/がんも含まれる)。
【0107】
また、乳房、結腸、肺、および腎臓腫瘍などの充実性腫瘍も、本発明のCARで治療できる。また、本発明の遺伝子操作T細胞も、膵臓、腎臓、または卵巣がんの治療剤として使用できる。
【0108】
本発明による遺伝子操作された免疫細胞を用いた治療剤は、抗体療法、化学療法、サイトカイン療法、樹状細胞療法、遺伝子療法、ホルモン療法、レーザー光線療法、放射線療法からなる群から選択される1種または複数のがん療法と組み合わせてもよい。
【0109】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記治療剤は、免疫抑制治療中の患者に投与してもよい。実際に、好ましくは本発明は、免疫抑制剤の少なくとも1つに対する耐性を、該免疫抑制剤のレセプターをコードする遺伝子を不活性化することによって獲得した細胞または細胞集団に依存している。この態様において、免疫抑制治療は、患者の体内における本発明によるT細胞の選択および増殖を促進すべきである。
【0110】
本発明による細胞または細胞集団は、エアゾール吸入、注射、摂取、輸液、インプラント、または移植を含む、あらゆる便宜な様式で投与し得る。本明細書に記載の組成物は、患者に、皮下経路、皮内経路、腫瘍内経路、リンパ節内経路、髄内経路、筋肉内経路、静脈内もしくはリンパ管内注射、または腹腔内経路で投与し得る。一実施形態において、本発明の細胞組成物は、好ましくは静脈注射で投与する。
【0111】
細胞または細胞集団の投与は、10〜10細胞/kg体重の投与、好ましくは10〜10細胞/kg体重の投与、この範囲に含まれるあらゆる整数値の細胞数を含む投与からなり得る。細胞または細胞集団は、単回投薬または複数回投薬で投与し得る。別の実施形態において、前記有効量の細胞は、単回投薬として投与する。別の実施形態において、前記有効量の細胞は、ある期間にわたって、複数回投薬として投与する。投与のタイミングは、管理する医師の判断内であり、かつ患者の臨床状態に依存する。細胞または細胞集団は、血液バンクまたはドナーなどのあらゆる供給源から得ることができる。個々に必要なものは異なるが、特定の疾患または状態のための、所定の細胞のタイプに関する有効量の最適範囲の決定は、本技術分野の技術の範囲である。有効量とは、治療的または予防的な利益を生じさせる量を意味する。投与する用量は、レシピエントの年齢、健康状態、および体重、もしあれば併用療法の種類、治療の頻度ならびに所望とされる効果の性質に依存するであろう。
【0112】
別の実施形態において、有効量の前記細胞またはその細胞を含む組成物は、非経口的に投与する。前記投与は、静脈内投与であってもよい。腫瘍中に注射することによって直接投与してもよい。
【0113】
本発明のある特定の実施形態において、細胞は、多くの関連する治療方法と組み合わせて(例えば、事前に、同時に、または事後に)患者に投与され、該関連する治療方法には、抗ウイルス療法、すなわちシドフォビルおよびインターロイキン−2、シタラビン(ARA−Cとしても知られている)、MS患者に対するナタリズマブ(nataliziimab)治療、乾癬患者に対するエファリズマブ(efaliztimab)治療、またはPML患者に対するその他の治療などの薬剤を用いた治療が含まれるが、これらに限定されない。さらなる実施形態において、本発明のT細胞は、化学療法、放射線照射、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、およびFK506などの免疫抑制剤、抗体、またはCAMPATHなどの免疫除去剤、抗CD3抗体もしくはその他の抗体療法、サイトキシン(Cytoxin)、フルダラビン(fludaribine)、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール(mycoplienolic)酸、ステロイド、FR901228、サイトカインならびに照射と組み合わせて使用し得る。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼであるカルシニューリン(シクロスポリンおよびFK506)、または成長因子誘発シグナル伝達に重要なp70S6キナーゼ(ラパマイシン)のいずれかを阻害する(Henderson,Nayaら、1991;Liu,Albersら、1992;Bierer,Hollanderら、1993)。さらなる実施形態において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植か、またはフルダラビンなどの化学療法剤、体外照射放射線療法(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3もしくはCAMPATHなどの抗体を用いたT細胞除去療法か、いずれかと組み合わせて(例えば、事前に、同時に、または事後に)患者に投与される。別の実施形態において、本発明の細胞組成物は、CD20と反応する薬剤、例えばリツキサンなどのB細胞除去療法に続いて投与される。例えば、一実施形態において、対象は、高用量化学療法による標準治療を受け、続いて末梢血幹細胞移植を受けてもよい。ある特定の実施形態において、移植に続いて、対象は、増殖させた本発明の免疫細胞を注入される。追加の実施形態において、増殖させた細胞は、手術の前、または後に投与される。
【0114】
その他の定義
− 別段の定めがない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、および「少なくとも1つ」は、互換的に用いられ、1または1超を意味する。ポリペプチド配列中のアミノ酸残基は、本明細書において1文字コードによって指定され、この1文字コードにおいて、例えば、Qは、Glnまたはグルタミン残基を意味し、Rは、Argまたはアルギニン残基を意味し、そしてDは、Aspまたはアスパラギン酸残基を意味する。
【0115】
− アミノ酸置換は、1アミノ酸残基の別のアミノ酸残基との交換を意味し、例えば、ペプチド配列中のアルギニン残基のグルタミン残基との交換は、アミノ酸置換である。
【0116】
− ヌクレオチドは、以下のように指定される。1文字コードが、ヌクレオチドの塩基を指定するために用いられる:aはアデニン、tはチミン、cはシトシン、およびgはグアニンである。縮重ヌクレオチドに関し、rは、gまたはa(プリンヌクレオチド)を表し、kは、gまたはtを表し、sは、gまたはcを表し、wは、aまたはtを表し、mは、aまたはcを表し、yは、tまたはc(ピリミジンヌクレオチド)を表し、dは、g、a、またはtを表し、vは、g、a、またはcを表し、bは、g、t、またはcを表し、hは、a、t、またはcを表し、そしてnは、g、a、t、またはcを表す。
【0117】
− 本明細書で使用する場合、「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドを指し、例えばデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生じた断片、ならびにライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼの作用、およびエキソヌクレアーゼの作用のいずれかによって生じた断片などである。核酸分子は、天然型ヌクレオチド(DNAおよびRNAなど)、もしくは天然型ヌクレオチドのアナログ(例えば、天然型ヌクレオチドのエナンチオマー形態)、または両者の組み合わせであるモノマーから構成され得る。改変ヌクレオチドは、糖部分に、および/またはピリミジンまたはプリン塩基部分に変化を有していてもよい。糖の改変としては、例えば、1つまたは複数のヒドロキシル基の、ハロゲン、アルキル基、アミンおよびアジド基による置換があげられ、または、糖は、エーテルもしくはエステルとして官能化されていてもよい。さらに、糖部分全体が、立体的および電気的に類似した構造、例えばアザ糖および炭素環式糖アナログで置換されていてもよい。塩基部分の改変の例としては、アルキル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンまたはピリミジン、またはその他のよく知られた複素環式置換基があげられる。核酸モノマーは、ホスホジエステル結合、またはホスホジエステル結合のアナログによって連結され得る。核酸は、一本鎖または二本鎖のいずれであってもよい。
【0118】
− キメラ抗原レセプター(CAR)とは、特異的抗標的細胞免疫活性を示すキメラタンパク質を生成させるための、標的細胞上に存在する構成部分に対する(例えば、所望の抗原(例えば、腫瘍抗原)に対する抗体由来の特異性)結合ドメインと、T細胞レセプター活性化細胞内ドメインとを合わせ持つ分子を指す。一般に、CARは、T細胞抗原レセプター複合体ζ鎖の細胞内シグナリングドメインと融合した細胞外一本鎖抗体(scFvFc)からなり(scFvFc:ζ)、T細胞内で発現させた場合、モノクローナル抗体の特異性に基づく抗原認識を再方向付けする能力を有する。本発明で用いられるCARの一例は、ROR1抗原に対するCARであり、非限定的な例として、配列番号79〜138のアミノ酸配列を含み得る。
【0119】
− 用語「エンドヌクレアーゼ」は、DNAまたはRNA分子、好ましくはDNA分子内の核酸と核酸の間の結合の加水分解(切断)を触媒できる、あらゆる野生型酵素またはバリアント酵素を指す。エンドヌクレアーゼは、DNAまたはRNA分子を、その配列と無関係には切断しないが、DNAまたはRNA分子を特異的なポリヌクレオチド配列で認識かつ切断し、該特異的なポリヌクレオチド配列を「標的配列」または「標的サイト」とも呼ぶ。エンドヌクレアーゼは、典型的には、ポリヌクレオチド認識サイトの長さが12塩基対(bp)超、より好ましくは14〜55bpである場合、レアカットエンドヌクレアーゼとして分類される。レアカットエンドヌクレアーゼは、所定の位置におけるDNA二本鎖切断(DSB)を誘発することにより、HRを著しく増大させる(Perrin,Buckleら、1993;Rouet,Smihら、1994;Choulika,Perrinら、1995;PingoudおよびSilva、2007)。レアカットエンドヌクレアーゼは、例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼ(PaquesおよびDuchateau、2007)、遺伝子操作ジンクフィンガードメインと、FokIなどの制限酵素の触媒ドメインとの融合により得られるキメラジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)(PorteusおよびCarroll、2005)、CRISPRシステム由来のCas9エンドヌクレアーゼ(Gasiunas,Barrangouら、2012;Jinek,Chylinskiら、2012;Cong,Ranら、2013;Mali,Yangら、2013)、または化学的エンドヌクレアーゼ(Eisenschmidt,Lanioら、2005;Arimondo,Thomasら、2006)であり得る。化学的エンドヌクレアーゼにおいて、化学的またはペプチド性切断因子が、特異的な標的配列を認識する核酸のポリマーまたは別のDNAのいずれかに連結され、それによって切断活性が特異的な配列に標的化される。化学的エンドヌクレアーゼは、DNA切断分子であるo−フェナントロリンと、特異的なDNA配列と結合することが知られている三重鎖形成性オリゴヌクレオチド(TFO)とのコンジュゲートのような、合成ヌクレアーゼも包含する(KalishおよびGlazer、2005)。このような化学的エンドヌクレアーゼは、本発明による用語「エンドヌクレアーゼ」に含まれる。
【0120】
− 「TALEヌクレアーゼ」(TALEN)とは、典型的には転写活性化因子様エフェクター(TALE)に由来する核酸結合ドメインと、核酸の標的配列を切断する1つのヌクレアーゼ触媒ドメインとからなる融合タンパク質を意図する。触媒ドメインは、好ましくはヌクレアーゼドメイン、より好ましくは、例えばI−TevI、ColE7、NucAおよびFok−Iのようなエンドヌクレアーゼ活性を有するドメインである。特定の実施形態において、TALEドメインは、例えばI−CreIおよびI−OnuI、またはその機能性バリアントのようなメガヌクレアーゼに融合していてもよい。より好ましい実施形態において、前記ヌクレアーゼは、単量体TALEヌクレアーゼである。単量体TALEヌクレアーゼは、特異的な認識および切断のために二量体形成が不要なTALEヌクレアーゼであり、例えば国際公開第2012138927号パンフレットに記載の、遺伝子操作TALリピートとI−TevIの触媒ドメインとの融合物などである。転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、バクテリア種であるXanthomonasに由来する、複数の反復配列を含むタンパク質であり、各反復配列は、核酸の標的配列の各ヌクレオチド塩基に特異的な、12位および13位の2残基(RVD)を含む。類似のモジュラー塩基対塩基核酸結合(MBBBD)特性を有する結合ドメインもまた、本出願人によって異なるバクテリア種で先頃発見された、新たなモジュラータンパク質から得ることができる。この新たなモジュラータンパク質は、TALリピートよりも多くの配列多様性を示すという利点を有する。好ましくは、種々のヌクレオチドの認識に関連するRVDは、Cの認識にはHD、Tの認識にはNG、Aの認識にはNI、G、またはAの認識にはNN、A、C、G、またはTの認識にはNS、Tの認識にはHG、Tの認識にはIG、Gの認識にはNK、Cの認識にはHA、Cの認識にはND、Cの認識にはHI、Gの認識にはHN、Gの認識にはNA、G、またはAの認識にはSN、Tの認識にはYG、Aの認識にはTL、AまたはGの認識にはVT、およびAの認識にはSWである。別の実施形態において、決定的なアミノ酸12および13を、ヌクレオチドA、T、C、およびGに対する特異性を調節するために、特にこの特異性を高めるために、他のアミノ酸残基に変異させてもよい。TALEヌクレアーゼは、遺伝子ターゲティングおよび遺伝子改変を促進するために、既に記載され、使用されている(Boch,Scholzeら、2009;MoscouおよびBogdanove、2009;Christian,Cermakら、2010;Li,Huangら、2011)。特注のTALヌクレアーゼが、商品名TALEN(商標)で市販されている(Cellectis,8 rue de la Croix Jarry,75013、パリ、フランス)。
【0121】
本発明によるレアカットエンドヌクレアーゼは、Cas9エンドヌクレアーゼでもあり得る。近時、タイプII原核生物CRISPR(クラスター化等間隔短鎖回分リピート(Clustered Regularly Interspaced Short palindromic Repeats))適応免疫系に由来する、RNAにガイドされたCas9ヌクレアーゼに基づいて、新たなゲノム工学ツールが開発された(Gasiunas,Barrangou、2012、Jinek,Chylinski、2012、Cong,Ran、2013、Mali,Yang、2013)(総説(Sorek,Lawrence、2013)を参照のこと)。CRISPR関連(Cas)システムは、バクテリアで最初に発見され、外来DNA(ウイルス性またはプラスミドのいずれも)に対する防御として機能する。CRISPR介在ゲノム工学は、まず、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる短い配列モチーフによって多くの場合隣接する、標的配列を選択することによって進行する。標的配列の選択に続いて、この標的配列に相補的な特異的crRNAを遺伝子操作する。CRISPRタイプIIシステムに必要なトランス活性型crRNA(tracrRNA)をcrRNAとペアにし、準備したCas9タンパク質に結合させる。Cas9は、tracRNAとcRNAとの塩基対形成を促進する分子アンカーとして働く(Deltcheva,Chylinskiら、2011)。この三者複合体において、2成分のtracrRNA:crRNA構造は、エンドヌクレアーゼCas9を同族の標的配列に方向付けるガイドRNAとして働く。Cas9−tracrRNA:crRNA複合体による標的の認識は、標的配列を、標的配列とcrRNAとの間の相同性についてスキャニングすることによって開始される。標的配列−crRNA間の相補性に加えて、DNAターゲティングには、プロトスペーサーに隣接する短いモチーフ(プロトスペーサー隣接モチーフ、PAM)の存在が必要である。2成分RNAと標的配列との間の対形成に続いて、Cas9は、次いでPAMモチーフの3塩基上流に二本鎖平滑末端断面を生じさせる(Garneau,Dupuisら、2010)。
【0122】
レアカットエンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼという名称でも知られているホーミングエンドヌクレアーゼであってもよい。このようなホーミングエンドヌクレアーゼは、本技術分野でよく知られている(Stoddard、2005)。ホーミングエンドヌクレアーゼは、DNA標的配列を認識し、一本鎖、または二本鎖切断を生じさせる。ホーミングエンドヌクレアーゼは特異性が高く、12〜45塩基対(bp)の範囲の長さ、通常14〜40bpの範囲の長さのDNA標的サイトを認識する。本発明によるホーミングエンドヌクレアーゼは、例えば、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼに相当し、HNHエンドヌクレアーゼに相当し、またはGIY−YIGエンドヌクレアーゼに相当し得る。好ましくは、本発明によるホーミングエンドヌクレアーゼは、I−CreIバリアントであり得る。
【0123】
− 「送達ベクター」または「送達ベクター(複数)」とは、本発明において必要とされる薬剤/化学物質および分子(タンパク質または核酸)と、細胞とを接触させる(すなわち「接触」)ために、または細胞もしくは細胞内コンパートメント内に送達する(すなわち「導入」)ために、本発明において使用し得るあらゆる送達ベクターを意図する。送達ベクターとしては、リポソーム送達ベクター、ウイルス送達ベクター、薬物送達ベクター、化学的担体、高分子担体、リポプレックス、ポリプレックス、デンドリマー、マイクロバブル(超音波造影剤)、ナノ粒子、エマルジョン、または他の適切な移送ベクターがあげられるが、これらに限定されない。これらの送達ベクターは、分子、化学物質、巨大分子(遺伝子、タンパク質)、またはDiatos社によって開発されたプラスミド、ペプチドなどの他のベクターの送達を可能にする。これらの場合、送達ベクターは分子担体である。「送達ベクター」または「送達ベクター(複数)」は、トランスフェクションを行うための送達方法も意図する。
【0124】
− 用語「ベクター」または「ベクター(複数)」は、連結している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。本発明の「ベクター」としては、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、または染色体の核酸、非染色体の核酸、半合成の核酸もしくは合成の核酸からなってもよい直鎖もしくは環状のDNA分子もしくはRNA分子があげられるが、これらに限定されない。好ましいベクターは、自律複製できるベクター(エピソームベクター)、および/または連結している核酸を発現させることができるベクター(発現ベクター)である。多数の適切なベクターが当業者に知られており、市販されている。
【0125】
ウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ関連ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルスおよび水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹ウイルスおよびセンダイウイルス)など、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルスおよびアルファウイルスなど、ならびに二本鎖DNAウイルス、例えばアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルスおよびカナリア痘瘡ウイルス)などがあげられる。他のウイルスとしては、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポーバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスがあげられる。レトロウイルスの例としては、トリ白血病肉腫、哺乳動物C型ウイルス、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV−BLVグループ、レンチウイルス、スプーマウイルスがあげられる(Coffin,J.M.,Retroviridae:The viruses and their replication,In Fundamental Virology,Third Edition,B.N.Fieldsら共編、Lippincott−Raven Publishers、Philadelphia、1996)。
【0126】
− 「レンチウイルスベクター」とは、HIVベースレンチウイルスベクターを意味し、これは、相対的にパッケージング容量が大きく、免疫原性が低減されており、広範囲の異なる細胞タイプに対して高効率で安定的に形質導入する能力があるため、遺伝子送達のために有望である。レンチウイルスベクターは、一般に、プロデューサー細胞内への、以下の3種(パッケージングプラスミド、エンベローププラスミド、およびトランスファープラスミド)またはそれ以上のプラスミドの一過性トランスフェクションによって作成される。HIVと同様に、レンチウイルスベクターは、ウイルス表面糖タンパク質と細胞表面上のレセプターとの相互作用によって標的細胞に侵入する。侵入の際に、ウイルスRNAは逆転写され、逆転写はウイルス逆転写酵素複合体によって媒介される。逆転写産物は、二本鎖の直鎖ウイルスDNAであり、これは、感染細胞のDNA中へのウイルス組み込みの基質である。「組み込みレンチウイルスベクター(すなわち、LV)」とは、非限定的例として、標的細胞ゲノムへの組み込みを起こし得るベクターを意味する。逆に、「非組み込みレンチウイルスベクター(すなわち、NILV)」とは、ウイルスインテグラーゼの作用による標的細胞ゲノムへの組み込みを起こさない、効率的な遺伝子送達ベクターを意味する。
【0127】
− 送達ベクターおよびベクターは、任意の細胞透過処理手法、例えばソノポレーションもしくはエレクトロポレーション、またはその派生的な手法と、結びつけてもよく、または組み合わせてもよい。
【0128】
− 細胞または細胞(複数)とは、これら微生物に由来する、in vitro培養のための、任意の真核生物生細胞、初代細胞、および細胞系を意図する。
【0129】
− 「初代細胞」または「初代細胞(複数)」とは、生組織から直接採取し(すなわちバイオプシー材料)、かつ集団倍加数が非常に少なく、したがって起源となる組織の主要な機能的構成部分および特徴を、連続継代性(continuous tumorigenic)細胞系または人工的に不死化した細胞系と比較して、より典型的に示す、in vitro成長のために樹立した細胞を意味する。
【0130】
非限定的な例として、細胞系は、CHO−K1細胞;HEK293細胞;Caco2細胞;U2−OS細胞;NIH3T3細胞;NSO細胞;SP2細胞;CHO−S細胞;DG44細胞;K−562細胞、U−937細胞;MRC5細胞;IMR90細胞;Jurkat細胞;HepG2細胞;HeLa細胞;HT−1080細胞;HCT−116細胞;Hu−h7細胞;Huvec細胞;およびMolt4細胞からなる群から選択することができる。
【0131】
非限定的な例として、これらの全ての細胞系を本発明の方法によって改変することによって、目的とする遺伝子またはタンパク質を産生、発現、定量、検出、研究するための細胞系モデルを提供することができ、これらの細胞系モデルは、研究、生産、ならびに化学、バイオ燃料、治療学、および農学などの種々の分野において、目的とする生物学的に活性な分子をスクリーニングするために使用することもできる。
【0132】
− 「変異」とは、ポリヌクレオチド(cDNA、遺伝子)またはポリペプチド配列における、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、40、50、または50超までのヌクレオチド/アミノ酸の置換、欠失、挿入を意図する。変異は、遺伝子のコード配列または遺伝子の制御配列に影響を及ぼし得る。変異は、ゲノム配列の構造、またはコードされるmRNAの構造/安定性にも影響を及ぼし得る。
【0133】
− 「バリアント(単数および複数)」とは、親分子のアミノ酸配列中の少なくとも1つの残基の変異または交換によって得られる、反復配列のバリアント、バリアント、DNA結合バリアント、TALEヌクレアーゼバリアント、ポリペプチドバリアントを意図する。
【0134】
− 「機能性バリアント」とは、タンパク質またはタンパク質ドメインの触媒的に活性な変異体を意図し、そのような変異体は、その親タンパク質またはタンパク質ドメインと比較して同じ活性を有するか、追加の特性を有するか、またはより高いもしくはより低い活性を有する。
【0135】
− 「同一性」とは、2つの核酸分子間、または,ポリペプチド間の配列同一性を指す。同一性は、各配列における位置を比較することによって決定することができ、各配列は、比較するためにアラインしてもよい。比較対象の位置を同じ塩基が占めている場合、その位置について、それらの分子は同一である。核酸配列間またはアミノ酸配列間の類似性または同一性の程度は、それらの核酸配列が共有する位置における、同一のヌクレオチドまたは適合するヌクレオチドの数と相関関係にある。種々のアライメントアルゴリズムおよび/またはプログラム、例えば、FASTAまたはBLASTを、2配列間の同一性を計算するために使用することができ、FASTAまたはBLASTはGCG配列解析パッケージ(ウィスコンシン大学、マディソン、ウィスコンシン州)の一部として利用することができ、例えば、初期設定で使用することができる。例えば、本明細書で説明した特定のポリペプチドと、少なくとも70%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有し、好ましくは実質的に同じ機能を示すポリペプチド、ならびにそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが意図される。別段の指定がない限り、類似性スコアは、BLOSUM62を使用に基づくものであろう。BLASTPを使用する場合、類似性のパーセントはBLASTPポジティブスコアに基づき、配列同一性のパーセントはBLASTP同一性スコアに基づく。BLASTP「同一性」は、ハイスコア配列ペアにおける、同一である残基全体の数および割合を示し、BLASTP「ポジティブ」は、アライメントスコアがポジティブな値であり、互いに類似する残基の数および割合を示す。これらの程度の同一性もしくは類似性を有するアミノ酸配列、または本明細書に開示されたアミノ酸配列に対して中程度の類似性の同一性を有するアミノ酸配列は、本開示によって意図され、本開示の範囲に含まれる。類似するポリペプチドのポリヌクレオチド配列は、遺伝暗号を用いて推定され、通常の手段によって、特に遺伝暗号を用いたアミノ酸配列の逆翻訳によって得ることができる。
【0136】
− 「シグナル伝達ドメイン」、または「共刺激リガンド」は、T細胞上の同族の共刺激分子と特異的に結合し、それによって、例えば、TCR/CD3複合体とペプチドが結合したMHC分子との結合によって生じる一次シグナルに加えて、T細胞応答(増殖活性化、分化などを含むが、これらに限定されない)を媒介するシグナルを生じさせる、抗原提示細胞上の分子を指す。共刺激リガンドとしては、CD7、B7−1(CD80)、B7−2(CD86)、PD−L1、PD−L2、4−1BBL、OX40L、誘導性共刺激イガンド(ICOS−L)、細胞間接着分子(ICAM、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA−G、MICA、M1CB、HVEM、リンホトキシンβレセプター、3/TR6、ILT3、ILT4、Tollリガンドレセプターに結合するアゴニストまたは抗体、およびB7−H3と特異的に結合するリガンド、があげられ得るが、これらに限定されない。共刺激リガンドは、なかでも、T細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体、例えば、限定されないが、CD27、CD28、4−IBB、OX40、CD30、CD40、PD−1、ICOS、白血球機能関連抗原1(LFA−1)、CD2、CD7、LTGHT、NKG2C、B7−H3、CD83と特異的に結合するリガンド、も包含する。
【0137】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それによって細胞による共刺激反応、例えば、限定されないが、増殖、を媒介するT細胞上の同族の結合パートナーを指す。共刺激分子としては、MHCクラスI分子、BTLA、およびTollリガンドレセプターがあげられるが、これらに限定されない。
【0138】
本明細書で使用する場合、「共刺激シグナル」は、TCR/CD3ライゲーションなどの一次シグナルと共に、T細胞増殖および/またはキー分子のアップレギュレーションもしくはダウンレギュレーションをもたらすシグナルを指す。
【0139】
用語「細胞外リガンド結合ドメイン」は、本明細書で使用する場合、リガンドを結合できるオリゴペプチドまたはポリペプチドと定義される。好ましくは、該ドメインは、細胞表面分子と相互作用できるであろう。例えば、細胞外リガンド結合ドメインは、特定の病状と関連する標的細胞上の細胞表面マーカーの働きをするリガンドを認識するように選択してもよい。よって、リガンドとして働き得る細胞表面マーカーの例としては、ウイルス感染、バクテリア感染、および寄生虫感染、自己免疫疾患、ならびにがん細胞に関連するリガンドがあげられる。
【0140】
用語「対象」または「患者」には、非ヒト霊長目およびヒトを含む動物界の全てのメンバーが含まれる。
【0141】
本発明の上記に記載した説明は、あらゆる当業者による本発明の実施および使用が可能になるように、本発明を製造および使用する様式およびプロセスを提供し、この実施可能性は、特に添付の特許請求の範囲の主題のために提供され、これは本来の本説明の一部を構成する。
【0142】
本明細書において、数値限定または数値範囲が記載されている場合、端点が含まれる。また、数値限定または数値範囲内の全ての値およびサブレンジは、あたかも明示的に記載されているように、具体的に含まれる。
【0143】
上記の説明は、当業者による本発明の実施および使用を可能にするために示されており、特定の適用と、その必要性との関係で提供されている。好ましい実施形態に対する種々の改変が当業者にはきわめて明白であろうし、本明細書に規定された一般的な原理は、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、他の実施形態および用途に適用可能である。よって、本発明は、示された実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示された原理および特徴と矛盾しない最も広い範囲を認められるべきである。
【0144】
本発明は一般的に説明されているため、ある特定の実施例を参照することによってさらなる理解を得ることができるが、この実施例は、本明細書において例示だけの目的で示されており、別段の定めがない限り限定することを意図しない。
【0145】
一般的方法
初代細胞
末梢血単核球を、健康なボランティアのドナーに由来するバフィーコート(フランス血液機構)から、密度勾配遠心法によって単離した。次いで、Tリンパ球をEasySepヒトT細胞分離キット(Stemcell Technologies社)を用いて精製し、20ng/mlのIL−2(Miltenyi社)および5%のヒト血清AB型(Seralab社)を添加したX−vivo15培地(Lonza社)中で、DynabeadsヒトT細胞アクチベーターCD3/CD28(Life Technologies社)によって活性化した。
【0146】
細胞系
K562、Jeko−1、MDA−MB−231、PC−3、およびMCF−7細胞系は、アメリカ培養細胞系統保存機関から入手した。K562細胞は、10%の熱不活性化FCS、2mmol/LのL−グルタミン、ならびに100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを添加したIMDM中で培養した。Jeko−1細胞は、20%の熱不活性化FCS、2mmol/LのL−グルタミン、ならびに100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを添加したRPMI1640中で培養した。MDA−MB−231細胞は、10%の熱不活性化FCS、2mmol/LのL−グルタミン、ならびに100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを添加したDMEM中で培養した。PC−3細胞は、10%の熱不活性化FCS、2mmol/LのL−グルタミン、ならびに100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを添加したF−12K中で培養した。MCF−7細胞は、10%の熱不活性化FCS、2mmol/LのL−グルタミン、100単位/mLのペニシリン、および100μg/mLのストレプトマイシン、ならびに0.01mg/mlのヒトインシュリンを添加したDMEM中で培養した。
【0147】
ROR1細胞表面発現の定量
種々のヒト細胞系上のROR1表面分子数は、モノクローナル抗ROR1抗体クローン2A(Miltenyi社)およびDako社のQiFIKITを用い、メーカーの指示書に従って、飽和結合によって決定した。
【0148】
scCARをコードするDNAの合成
scCARをコードするDNAを、GenScriptによって合成した。
【0149】
scCARをin vitroでmRNAに転写するベクターの構築
scCARをコードするDNAを、プラスミドpCLS9632中のT7プロモーターとBGHポリAとの間にクローニングした。
【0150】
RNAのin vitro転写
scCARをコードするmRNAを、mMessage mMachine T7 Ultraキット(Life Technologies社)を用いて、メーカーの指示書に従って、in vitroで転写し、ポリアデニル化した。RNAをRNeasyカラム(Qiagen社)で精製し、Cytoporation Medium T (Harvard Apparatus社)中に溶出させて、Nanodrop ND−1000分光光度計を用いて260nmにおける吸光度測定によって定量した。RNAの品質は、ホルムアルデヒド/MOPS変性アガロースゲルで確認した。
【0151】
T細胞のRNAエレクトロポレーション
活性化させてから4〜5日または11〜12日後、AgilePulse MAXシステム(Harvard Apparatus社)用いて、エレクトロトランスファーによって、メッセンジャーRNAをTリンパ球にトランスフェクトした。l.5(l.5)×10の細胞を、15μgのscCARをコードするmRNAと混合し、0.4cmのキュベットに入れた。エレクトロポレーションは、国際公開第2013176915号パンフレットに記載されたプロトコルに従って実施した。エレクトロポレーションに続き、細胞を培養液中に希釈して、37°C/5%COでインキュベートした。
【0152】
scCARの検出
フローサイトメトリー法による検出:T細胞をPE標識ポリクローナルヤギ抗マウス(Fab)2;抗体(Jackson Immunoresearch社)またはビオチン標識プロテインL(GenScript社)、次いでフィコエリトリン標識ストレプトアビジン(BD pharmingen)で染色し、最後にMACSQuantフローサイトメーター(Miltenyi社)を用いて分析した。
【0153】
ウェスタンブロッティング法による検出:1×10のT細胞を、1mMのオルトバナジン酸塩、3μg/mlのプロテアーゼ阻害剤、および2mMのPMSFを含む、50μlのRIPAバッファーで溶解した。細胞溶解物を、Any kD(商標)アクリルアミドゲル(BioRad社)上でSDS−PAGE法によって分離した。ニトロセルロース膜に転写した後、マウス抗ヒトCD3z(pharmingen)とインキュベートし、次いでヤギ抗マウスIgGホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート化抗体(Sigma)とインキュベートした。抗体の結合を、ECLキット(Pierce)を用いて明らかにした。
【0154】
脱顆粒アッセイ
5×10のT細胞を、5×10のROR1陽性細胞またはROR1陰性細胞と共に、96ウェルプレートで1ウェルあたり0.1mlで共培養した。1μg/mlの抗CD49d(BD Biosciences社)、1μg/mlの抗CD28(Miltenyi社)、およびMonensin溶液(1×)(eBioscience社)に加えて、共培養の初めにAPC標識抗CD107a(BD Biosciences社)を添加した。6時間インキュベーションした後、細胞をFixable Viability Dye(eBioscience社)およびVioBlue標識抗CD8(Miltenyi社)で染色し、MACSQuantフローサイトメーター(Miltenyi社)を用いて分析した。脱顆粒細胞障害性T細胞は、CD8+CD107a+細胞に相当する。
【0155】
サイトカイン放出アッセイ
5×10のT細胞を、5×10のROR1陽性細胞またはROR1陰性細胞と、96ウェルプレートで1ウェルあたり0.1mlで共培養した。24時間インキュベーションした後、培養上清を収集し、IFNγROR1陽性細胞であるか、ROR1陰性細胞であるかについて分析した。
【0156】
細胞毒性アッセイ
付着性の標的細胞を用いたアッセイ:2×10のROR1陽性細胞またはROR1陰性細胞を、96ウェルプレートに1ウェルあたり0.1mlで播種した。播種の翌日、ROR1陽性細胞およびROR1陰性細胞をCellTrace CFSEで標識し、4×10のT細胞と4時間共培養した。細胞を採取し、Fixable Viability Dye(eBioscience社)で染色してMACSQuantフローサイトメーター(Miltenyi社)を用いて分析した。
【0157】
特異的な溶解のパーセンテージは、以下の式を用いて算出した。
【0158】
【数1】
【0159】
浮遊性の標的細胞を用いたアッセイ:ROR1陽性細胞およびROR1陰性細胞を、それぞれCellTrace CFSEおよびCellTrace Violetで標識した。約2×10のROR1陽性細胞を、2×10のROR1陰性細胞と、4×10のT細胞と共に、96ウェルプレートで1ウェルあたり0.1mlで共培養した。4時間インキュベーションした後、細胞を採取し、Fixable Viability Dye(eBioscience社)で染色してMACSQuantフローサイトメーター(Miltenyi社)を用いて分析した。
【0160】
特異的な溶解のパーセンテージは、上記の式を用いて算出した。
実施例
CARポリペプチド配列の例:
以下に、60種のROR1scCARの配列である配列番号79〜138(シグナルペプチドを含む)を示す。これらは、V1〜V6というCAR構造、ならびに8種の異なる抗体である2A2、4A5、D10、G6、G3、H10、2A4、および1C11に由来するscFvを有する。
【0161】
バージョンV1、V3、およびV5(CD8α膜貫通ドメインを含むscCAR)を、2A2scFvを含むscCARを除き、以下の実験でアッセイし、2A2scFvを含むscCARについてはV1バージョンのみ(比較の基準として)試験し、この2A2scFvを含むscCARは、Hudecekら(2013)によって記載された通りの構造を有していた。
【0162】
枠で囲んだ配列は、好ましいVH配列およびVL配列に相当する。しかしながら、VHおよびVLは、本発明によるCARの有効性を改善するために交換され得る。
【0163】
【数2】
【0164】
【数3】
【0165】
【数4】
【0166】
【数5】
【0167】
【数6】
【0168】
【数7】
【0169】
【数8】
【0170】
【数9】
【0171】
【数10】
【0172】
【数11】
【0173】
【数12】
【0174】
【数13】
【0175】
【数14】
【0176】
【数15】
【0177】
【数16】
【0178】
【数17】
【実施例1】
【0179】
実施例1:ROR1陽性細胞系および陰性細胞系の選択
異なるROR1細胞表面発現レベルを示す細胞系を同定するために、12種のヒト細胞系を、Qifikit(Dako)および抗ヒトROR1mAbクローン2A2を用いて、フローサイトメトリー法で分析した(材料および方法を参照のこと)。これらの細胞系のうち9種については、mRNAまたはタンパク質レベルでROR1がポジティブであることが既に文献に記載されている(表10)。
【0180】
【表10】
【0181】
フローサイトメトリー結果は、MDA−MB−231(ATCC(登録商標)HTB−26)、MDA−MB−468(ATCC(登録商標)HTB.132)、Hs746T(ATCC(登録商標)HTB−135)、およびHT−29(ATCC(登録商標)HTB−38)細胞が、最も高いROR1細胞表面発現レベルを示したことを表している。PC−3(ATCC(登録商標)CRL−1435)、NCI−H1993(ATCC(登録商標)CRL5909)、A549(ATCC CCL−185)、およびJeko−1(ATCC CRL−3006)細胞において、より低いレベルのROR1細胞表面発現、すなわち高発現する細胞系のおよそ半分の発現が検出された(図5)。
【0182】
結果から、細胞表面に、MCF−7、K562、およびT細胞はROR1を発現しないこと、およびCal51は非常に低いレベルのROR1を発現しているにすぎないことが認められる。
【0183】
これらの細胞系から、3種の接着性の細胞系、すなわちROR1発現レベルが異なるPC−3細胞およびMDA−MB−231細胞と、ROR1陰性のMCF−7細胞とを、抗ROR1scCAR活性をスクリーニングするために選択した。
【0184】
また、2種の浮遊性の細胞系、すなわちROR1陽性のJeko−1細胞と、ROR1陰性のK562細胞とを、抗ROR1scCAR活性をスクリーニングするために選択した。
【実施例2】
【0185】
実施例2:抗ROR1scCARの世代
第2世代のROR1特異的scCARを18種1セット(図1C)作製し、以下の実験で試験した。
【0186】
これらは、以下の表1〜2の構成単位を融合させることによって得られる。
− D10、G6、G3、H10、2A4、または1C11からのマウス起源またはヒト化形態に由来するscFv、
− 1つのスペーサーである、ヒトFcγRIIIα、CD8α、またはIgG1ヒンジ、
− ヒトCD8αの膜貫通ドメイン、およびヒト41BBの共刺激ドメイン、
− ヒトCD3ζの活性化ドメイン
種々のscFVを、scCARに用いて、種々の結合親和性および種々のエピトープ特異性を有するレセプターが作成された。
【0187】
mAb D10およびG6は、3’Ig様領域、およびIg様ドメインとROR1のCRDドメインとの間のリンカー領域(図2)を標的とする。
【0188】
mAb G3、H10、および2A4は、ROR1のIgG様領域(図2)を標的とする。
【0189】
mAb 1C11は、ROR1のCRDドメイン(図2)を標的とする。
ROR1の近位エピトープと遠位エピトープの両方によるscCAR連結の最適化を試みるために、長さが異なる3種のスペーサー(16AA、45AA、および231AA)をscCARに使用した(Guestら、2005)。
【実施例3】
【0190】
実施例3:抗ROR1scCARのin vitro試験
上記のように設計された抗ROR1scCARを、図6に示す2ステップスクリーニング方法を用いて、ヒト初代(primay)T細胞で試験した。
【0191】
スクリーニングプロセスの第1ステップにおいて、抗CD28/CD3ビーズおよびIL−2で予め4〜5日間活性化した初代ヒトT細胞に、上述した18種の抗ROR1scCARをコードするmRNAをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの1日後、scCAR発現をフローサイトメトリー法およびウエスタンブロット法で評価し、scCAR改変T細胞の活性をT細胞の脱顆粒を測定することによって評価した。ウエスタンブロット法で検出され、かつ少なくとも1つのROR1陽性細胞系と共培養した際にT細胞の特異的な脱顆粒を著しく誘発(≧20%)したscCARを選択し、スクリーニングプロセスの第2ステップを行った。
【0192】
スクリーニングプロセスの第2ステップにおいて、抗CD28/CD3ビーズおよびIL−2で予め11〜12日間活性化した初代ヒトT細胞に、第1のスクリーニングステップ後に選択した抗ROR1scCARをコードするmRNAをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの1〜2日後、フローサイトメトリー法によってscCAR発現を評価し、scCAR改変T細胞の活性をT細胞のエフェクター機能(脱顆粒、IFNg産生、および細胞毒性(cytotolytic)活性)を測定することによって評価した。少なくとも1つのROR1陽性細胞系と共培養した際に、T細胞の特異的な脱顆粒を著しく誘発(≧20%)し、T細胞の特異的な細胞毒性を著しく誘発(≧20%の標的細胞溶解)し、かつT細胞によるIFNgの産生を著しく誘発(≧1500pg/ml)したscCARを、可能性のあるscCARの候補として選択した。
【0193】
上記scCARを、短いヒンジと融合した2A2scFVを含む、基準となるscCAR(配列番号79)と統一的に比較したが、このscCARが、Hudecekら(2013)によって機能的であることが既に示されているからである。
【0194】
a)scCARの1次スクリーニング:
scCAR発現
まず、抗ROR1scCARの総発現量を、T細胞で、抗ヒトCD3ζmAbを用いたウエスタンブロット法によって評価した。中程度の長さのスペーサー(CD8αヒンジ)、または長いスペーサー(IgG1ヒンジ)を含むscCARは、どのようなscFVを含んでいる場合でも、T細胞溶解物中に強く検出されることが観察された。しかしながら、短いスペーサー(FcγRIIIα)を含むscCARについては、G6、G3、およびH10のscFvを含むものは良好に検出されたが、D10、2A4、および1C11のscFvを含むものは、弱く検出されるか、または検出されなかった(図7Aおよび7B)。
【0195】
次いで、抗ROR1scCARの、T細胞表面上の発現を、抗FabまたはプロテインLを用いて、フローサイトメトリー法で評価した(図8Aおよび8B)。
【0196】
以下のことが観察された。
− T細胞溶解物中に、ウエスタンブロット法によって良好に検出されたscCARであるD10−v3、D10−v5、G6−v3、G6−v5、G3−v3、G3−v5、H10−v3、H10−v5、2A4−v3、および2A4−v5は、T細胞表面上にも、フローサイトメトリー法によって良好に検出された。
【0197】
− T細胞溶解物中に、ウエスタンブロット法によって検出されなかったか、またはほとんど検出されなかったscCARであるD10−v1、2A4−v1、および1C11−v1は、T細胞表面上にも、フローサイトメトリー法によって検出されなかった。
【0198】
scCAR活性
scCAR活性を評価するために、ROR1陽性(MDA−MB−231およびPC−3)細胞またはROR1陰性(MCF−7)細胞と共培養した際の、scCAR改変T細胞の脱顆粒を分析した。
【0199】
scCARであるD10−v1、D10−v3、D10−v5、H10−v1、H10−v3、およびH10−v5で改変したT細胞は、MCF−7細胞と共培養した際よりも、MDA−MB−231細胞およびPC−3細胞と共培養した際の方が、脱顆粒が著しく多い(≧20%)ことが観察された(図9Aおよび9B)。
【0200】
図9Aおよび図9Bは、非改変T細胞ならびにscCARであるH10およびD10で改変したT細胞は、scCARであるG6、G3、2A4、および1C11で改変した場合よりも、MDA−MB−231細胞、PC−3細胞、およびMCF−7細胞と共培養した際の脱顆粒が、全てにおいてはるかに良好であることを示す。
【0201】
1次スクリーニングの結論:
これらの結果は全体として、本発明の範囲内で設計された18種の抗ROR1scCARのうち、6種(D10−v1、D10−v3、D10−v5、H10−v1、H10−v3、およびH10−v5)が、スクリーニングプロセスの第2ステップを行うための選択基準を満たしたことを実証した。
【0202】
b)scCARの2次スクリーニング
scCAR発現
抗ROR1scCARの、T細胞表面上の発現を、プロテインLを用いて、フローサイトメトリー法で評価した。
【0203】
活性化させてから4〜5日後にエレクトロポレーションしたT細胞上に良好に検出されるscCARであるD10−v3、D10−v5、H10−v3、およびH10−v5(図8Aおよび8B)は、活性化させてから11〜12日後にエレクトロポレーションしたT細胞上には検出されないか、または弱く検出されるだけであることが観察された(図10)。
【0204】
scCAR活性
まず、scCAR活性を評価するために、ROR1陽性(MDA−MB−231、PC−3、およびJeko−1)細胞、またはROR1陰性(MCF−7およびK562)細胞と共培養した際の、scCAR改変T細胞の脱顆粒を分析した。
【0205】
scCARであるD10−v1、H10−v1、およびH10−v5で改変したT細胞とは逆に、scCARであるD10−v3、D10−v5、およびH10−v3で改変したT細胞は、MCF−7細胞と共培養した際、または培地のみの場合よりも、MDA−MB−231細胞およびPC−3細胞と共培養した際の方が、脱顆粒が著しく多い(≧20%)ことが観察された(図11)。
【0206】
次いで、ROR1陽性(MDA−MB−231、PC−3、およびJeko−1)細胞、またはROR1陰性(MCF−7およびK562)細胞と共培養した際の、scCAR−改変(modifiied)T細胞によるIFNγ産生を分析した。
【0207】
scCARであるD10−v1、H10−v1、およびH10−v5で改変したT細胞とは逆に、scCARであるD10−v3、D10−v5、およびH10−v3で改変したT細胞は、MCF−7細胞、K562細胞と共培養した際、または培地のみの場合よりも、MDA−MB−231細胞、PC−3細胞、およびJeko−1細胞と共培養した際の方が、IFNγ産生が著しく多い(≧1500pg/ml)ことが観察された(図12)。
【0208】
最後に、ROR−1陰性(MCF−7およびK562)細胞、またはROR1陽性(MDA−MB−231、PC−3、およびJeko−1)細胞と共培養した際の、scCAR改変T細胞の細胞毒性活性を分析した。
【0209】
scCARであるD10−v1、H10−v1、およびH10−v5で改変したT細胞とは逆に、scCARであるD10−v3、D10−v5、およびH10−v3で改変したT細胞は、共培養中のPC−3細胞の20%超を特異的に死滅させたことが観察された(図13)。scCARであるD10−v3およびH10−v3で改変したT細胞も、共培養中のMDA−MB−231細胞およびJeko−1細胞の20%超を死滅させたが、scCARであるD10−v5で改変したT細胞については、これとは異なる結果となった(図13および図14)。
【0210】
2次スクリーニングの結論:
これらの結果は全体として、全てのscCAR試験から、D10−v3、D10−v5、およびH10−v3が最も有益なscCARを表すことを実証した。
【0211】
バージョンV2の2種のCARは、細胞毒性の誘発に関してわずかに優位であることを指摘することができる(試験した種々のROR1陽性細胞系に対して、より反応性が高かった)。
【実施例4】
【0212】
実施例4:ROR1CARを発現するTCRα不活性化細胞の増殖
図15は、レアカットエンドヌクレアーゼ用いたTCRα不活性化の概略図を示す。T細胞レセプターα定常鎖領域(TRAC)遺伝子内の、15bpのスペーサーで隔てられた、長さが17bpである2つの配列(半標的と呼ぶ)を標的とするヘテロダイマーのTALEヌクレアーゼを設計して、産生させた。各半標的は、表11に列挙した半TALEヌクレアーゼの反復配列によって認識される。
【0213】
【表11】
【0214】
各TALEヌクレアーゼ構築物を、制限酵素消化を用いて、T7プロモーターの制御下にある哺乳動物発現ベクターにサブクローニングした。TRACゲノム配列を切断するTALEヌクレアーゼをコードするmRNAを、T7プロモーターの下流にコード配列を保持するプラスミドによって合成した。
【0215】
抗CD3/CD28コーティングビーズによって72時間にわたって前もって活性化した精製T細胞を、半TRAC_T01TALEヌクレアーゼの双方をコードする2種のmRNAのそれぞれでトランスフェクトした。トランスフェクションしてから48時間後、同じドナー由来の異なるT細胞グループに、上記で説明したROR1CAR(配列番号79〜138)の1つをコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。形質導入してから2日後に抗CD3磁気ビーズを用いてCD3NEG細胞を精製し、形質導入してから5日後に可溶性抗CD28(5μg/ml)を用いて細胞を再活性化した。
【0216】
続いて、1週間に2回、細胞数をカウントすることによって、再活性化後30日まで細胞を増殖させた。ROR1CARを発現するTCRα不活性化細胞の増殖が、特に抗CD28で再活性化した場合に、非形質導入細胞と比べて増大することが観察された。
【0217】
ROR1CARを発現するヒトT細胞が活性化状態を示すかどうかを研究するために、形質導入してから7日後に、活性化マーカーCD25の発現をFACSによって分析した。ROR1CARをコードするレンチウイルスベクターで形質導入した精製細胞について、非形質導入細胞と比較して活性化しているかを評価するために、細胞表面におけるCD25発現をアッセイした。CD25発現の増大によって、抗CD28再活性化、または非再活性化状態が示された。
【0218】
参考文献
【0219】
【表12-1】
【0220】
【表12-2】
【0221】
【表12-3】
【0222】
【表12-4】
【0223】
【表12-5】
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]