【実施例】
【0058】
実施例1:N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)及びN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)のコポリマーの調製
NIPAMから、及びDMAから誘導される構造単位のモル比率に関して異なる数平均分子量及び異なる組成のN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)及びN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)のランダムコポリマーを、それぞれ、連鎖移動剤(CTA)として、4−シアノ−4−(プロピルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸(CPP)もしくは4−シアノ−4−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸(CDP)のいずれかを使用する制御されたラジカル重合によって、またはいずれのCTAも使用しないフリーラジカル重合によって調製した。
【0059】
抽出後の乾燥のためにMgSO
4の代わりにNa
2SO
4が使用されたことを除いて、Macromolecules 2008,41,8429−8435に記載されている手順に従って、CPPを合成した。NIPAM(≧99%)、DMA(99%)、CDP(97%)、及び開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、98%)は、Aldrichから得られ、さらに精製することなく使用した。アニソール(≧99%)は、Flukaから得られ、さらに精製することなく使用した。ジメチルスルホキシド(DMSO、99.9%)をFisherから受け入れたままの状態で使用した。1,4−ジオキサン(99+%、5〜30ppmのブチル化ヒドロキシトルエンによって安定化されたエキストラピュア)をAcros Organicsから受け入れたままの状態で使用した。
【0060】
実施例1−1〜1−16について、異なる組成を有するNIPAM及びDMAのコポリマーを、作動パラメータを示すLibrary Studioソフトウェア及び反応器を作動させるAutomation Studioソフトウェアを用いて半連続並列圧力反応器(FreeslateからのScPPR)中で調製した。合成ごとに、表1に列挙したNIPAM、AIBN、CDP、アニソール、及びDMSOのそれぞれの量を10mLの反応管にジオキサン中溶液として導入した。沈殿前の粗反応混合物についてモノマー転化を算出するための内部標準として使用し、全供給溶液の、40重量%を構成するNIPAM及び4重量%を構成するアニソールをともにジオキサン中に導入した。同様に、DMA及びDMSO(内部標準)を全供給溶液の、40重量%を構成するDMA及び4重量%を構成するDMSOとともにジオキサン中に一緒に導入した。ジオキサン中0.398重量%溶液としてAIBNを導入した。ジオキサン中2重量%溶液としてCDPを導入した。追加のジオキサンを各バイアルに添加し、表1に列挙された総量を得た。45分間、窒素を反応混合物に通してバブリングさせた。その後、恒温スチール反応器ホルダにおいて反応バイアルを70℃に加熱し、7時間、この温度で保持した。続いて、反応混合物を0℃に冷却して、バイアルを空気に開放した。THF300mL中の沈殿によって、各形成されたポリマーを反応混合物から単離した。このように得られた沈殿した固体生成物をメタノール5mL中に再溶解させ、前述のように2回THF中に沈殿させ、真空下で濾過した。固体生成物をジエチルエーテル10〜15mLを用いて洗浄し、続いて、約10mTorrの真空下で少なくとも12時間乾燥して、それぞれ精製されたNIPAM−co−DMAポリマーを得た。
【0061】
実施例1−17〜1−20について、NIPAM、DMA、及びCPPを表1に示されたそれぞれの量で、一つ口ナシ形フラスコに装入した。14.5mLの1,4−ジオキサンをフラスコに添加し、均質な溶液が形成されるまで、反応混合物を超音波処理した。続いて、50mgのAIBNを1mLの1,4−ジオキサン中に溶解することによって作製された原液の対応する量を添加することによって、表1に列挙されたAIBNのそれぞれの量を反応混合物に添加した。45分間、窒素を溶液に通してバブリングさせた後、反応混合物を恒温油浴によって70℃の温度に加熱し、この温度で6時間撹拌した。その後、ジエチルエーテル約300mL中に沈殿させることによって、得られたコポリマーを反応混合物から沈殿させた。得られた沈殿物をテトラヒドロフラン(THF)中にそれを溶解させ、ジエチルエーテル約300mL中に再沈殿させることによって精製し、精製されたNIPAM−co−DMAポリマーを得た。
【0062】
フリーラジカル重合を実施し、制御されたラジカル重合に製造された実施例と比較した実施例1−24について、実施例1−17〜1−20のために使用された手順と同様の手順を以下の修正によって進めた。7.2mLのジオキサンを使用し、70℃で7時間反応物を撹拌した。
【0063】
比較する理由のために、NIPAM及びDMAの混合物の代わりにモノマーとしてNIPAMのみまたはDMAのみのいずれかを使用する、実施例1−17〜1−20と同様にNIPAM及びDMAのホモポリマーを調製した(表1の実施例1−22及び1−23を参照)。
【0064】
最初に、マクロ開始剤のホモポリマーPNIPAM−CPPを調製し、その後DMAを重合させることによって、実施例1−21についてNIPAM及びDMAのブロックコポリマーを以下の通りに合成した。50mlの円形三角フラスコにNIPAM(5g、44.9mmol)、CPP(357mg、0.88mmol)、AIBN(7.2mg、0.044mmol)、及び1,4−ジオキサン(22mL)を装入した。窒素をバブリングすることによって、反応混合物を45分間脱気した。70℃で6時間、反応フラスコを予熱された油浴に供した。ペンタン(400mL)への沈殿、THF中のポリマーの再溶解、及びペンタン(400mL)中の2回目の沈殿、次いで、水に対する透析によって、PNIPAM−CPPを単離した。凍結乾燥による水の除去によって最終的な固体生成物を単離した。PNIPAM−CPPの算出されたM
nは、SEC(THF)により6kDaであった。ブロックコポリマーを合成するために、フラスコにPNIPAM−CPP(1g、0.167mmol)、AIBN(5.5mg、0.033mmol)、DMA(3.31g、33mmol)、及び1,4−ジオキサン(16.7mL)を装入した。窒素をバブリングすることによって、反応混合物を45分間脱気した。70℃で5時間、反応フラスコを予熱された油浴に供した。1000Daのカットオフ膜チューブにおいて反応混合物を水に対して透析させた。凍結乾燥による水の除去によって最終的な固体生成物を単離した。PNIPAM−b−PDMAの算出されたM
nは、SEC(THF)により25.6kDaであった。
【0065】
実施例2:N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)及び4−ビニルピロリドン(VP)のランダムコポリマーの調製
N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)及び4−ビニルピロリドン(VP)の一連のコポリマーを以下の通りに得た:合成ごとに、NIPAM(Aldrich、>99%)及びVP(Aldrich、≧99.9%、真空下で蒸留によって精製し、窒素下−20℃で保存した)を10mgのAIBN(Aldrich、98%)及び15mLのジメチルホルムアミド(DMF、Aldrich、≧99.8%)とともに表2に示されるそれぞれの量で丸底フラスコに導入した。反応混合物を少なくとも30分間窒素ガスでフラッシュした。続いて、撹拌された反応混合物を恒温油浴によって70℃に加熱し、5時間この温度で維持した。その後、反応混合物を0℃に冷却して、フラスコを空気に開放した。ジエチルエーテル約500mLを用いて沈殿させ、その後、ブフナー漏斗で真空濾過することによって、得られたコポリマーを反応混合物から単離した。得られた固体生成物をメタノール中で再溶解し、沈殿させ、前述のように2回真空下で濾過した。このように得られた固体生成物をジエチルエーテル約300mLで3回洗浄し、残留モノマー及びDMFを除去し、40℃で少なくとも24時間真空下で乾燥して、それぞれのNIPAM−co−VPポリマーを得た。
【0066】
【表1-1】
【0067】
【表1-2】
【0068】
【表2】
【0069】
実施例3:NIPAM及びアクリルアミド(AA)のランダムコポリマーの調製
異なる組成を有するN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM、Aldrich、≧99%)及びアクリルアミド(AA、Aldrich、≧98%)のいくつかのコポリマーを実施例1−1〜1−16と同様に半連続並行圧力反応器(FreeslateからのScPPR)において調製した。合成ごとに、表3に列挙されたNIPAM、AIBN(Sigma、98%)、CDP、アニソール、及びDMSOを7:3v:vのジメチルホルムアミド(DMF、Fisher Scientific、99.9%):脱イオン水の溶媒混合物中溶液として、10mLの反応管に導入した。沈殿前の粗反応混合物についてモノマー転化を算出するための内部標準として使用し、全供給溶液の40重量%を構成するNIPAM及び全供給溶液の2重量%を構成するアニソールをDMF:水の7:3(v:v)混合物中にともに導入した。AA及びDMSOを全供給溶液の40重量%を構成するAA及び全供給溶液の2重量%を構成するDMSOとともに7:3(v:v)のDMF:水の第2の混合物中に一緒に導入した。7:3(v:v)DMF:水中0.398重量%溶液としてAIBNを導入した。DMF中2重量%溶液としてCDPを導入した。追加の水及びDMF:水(7:3v:v)混合物を添加し、各構成成分の全質量を表3に示される値にした。THF300mL中の沈殿によって、各形成されたポリマーを反応混合物から単離した。このように得られた沈殿した固体生成物をメタノール5mL中に再溶解させ、前述のように2回THF中に沈殿させ、真空下で濾過した。固体生成物をジエチルエーテル10〜15mlのmLで洗浄し、続いて、約10mTorrの真空下で少なくとも12時間乾燥して、それぞれ精製されたNIPAM−co−AAポリマーを得た。
【0070】
実施例4:NIPAM及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)のランダムコポリマーの調製
アクリルアミドの代わりにHEMAを使用し、DMF−水混合液の代わりの溶媒としてジオキサン(Aldrich、99.8%)を使用し、かつTHFの代わりにジエチルエーテル(Aldrich、≧99%)を使用して沈殿を行ったという点で異なる実施例3の文脈において上記の手順に従って、異なる組成を有するN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM、Aldrich、≧99%)及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、Aldrich、≧99%)のコポリマーを調製した。N−イソプロピルアクリルアミド及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの異なるコポリマーの調製において使用された物質の量を表4に要約する。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
実施例5:N,N−ジエチルアクリルアミド(DEA)及びN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)のランダムコポリマーの調製
NIPAMの代わりにDEAを使用し、アクリルアミドの代わりにDMAを使用し、DMF−水混合液の代わりの溶媒としてジオキサン(Aldrich、99.8%)を使用し、かつTHFの代わりにヘキサン(Aldrich、95%)を使用して沈殿を行ったという点で異なる実施例3の文脈中の上記の手順に従って、異なる組成を有するN,N−ジメチルアクリルアミド(DEA、Aldrich、99%)及びN,N−ジメチルアクリルアミド)(DMA、Aldrich、99%)のコポリマーを調製した。N,N−ジエチルアクリルアミド及びN,N−ジメチルアクリルアミドの異なるコポリマーの調製において使用された物質の量を表5に要約する。
【0074】
【表5】
【0075】
調製されたポリマーの特性評価
核磁気共鳴(NMR)分光分析及びサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって、ならびに以下に記載する手順に従って、それらの熱応答性特性に関して、それぞれ、調製されたポリマーを調査し、それらの化学組成、分子量分布、及びLCSTについての情報を得た。
【0076】
A)NMR分光分析による特性評価
CDCl
3(実施例1−1〜1−24及び実施例2−1〜2−5について)、重水素化メタノール(実施例3−1〜3−6及び実施例4−1〜4−2について)、またはD
2O(実施例5−1〜5−5について)において、それぞれ、信号対雑音比を減少させるために、スピンさせることなく10秒の緩和遅延及び少なくとも16個のトランジェントを使用して、22℃でz軸勾配を有する5mmのProdigy TCIクライオプローブを装備したBruker Avance III HD500分光計で
1H−NMRスペクトルを取得した。ポリ(DEA−co−DMA)について、重水素化クロロホルム中のさらなる
13C−NMRスペクトルは、少なくとも672の走査、40秒の緩和遅延、12.1ms90°パルス長、スペクトル中心:100ppm、スペクトル幅:250ppm(実施例5−1及び5−2について)を使用して、25℃で試料スピンすることなく、10mmのクライオプローブを備えたBruker AVANCE 400MHz分光計で、または少なくとも1600の走査、40秒の緩和遅延、12.1ms90°パルス長、スペクトル中心:100ppm、スペクトル幅:250ppm(実施例5−3、5−4、及び5−5について)を使用して、25℃で試料スピンすることなく、標準的な10mmのクライオプローブを有するBruker AVANCE III HD 600MHz分光計で、取得した。ピークは、77.2ppmでクロロホルムを参照した。
【0077】
それぞれのコポリマーを調製するために使用される異なるモノマーから誘導される構造単位のモル含有量(ホモポリマー:ホモポリマーを調製するために使用されるモノマーから誘導される構造単位の100モル%)をある特定の構造要素に起因する積分ピーク面積の比から算出した。
a)ポリ(NIPAM−co−DMA):コポリマー骨格中のNIPAMまたはDMAから誘導される構造単位のモル分率をそれぞれ
1H−NMRスペクトル中のDMA単位(6H)のN−(CH
3)
2部分のプロトンに関連する約2.8〜3.3ppmの範囲で、ピークの積分面積に比例して、NIPAM単位(1H)のN−CH部分のプロトンに関連する約4.1ppmのピークの積分面積から算出した。例証のために、
図1は、CDCl
3における実施例1−6のコポリマーの
1H−NMRスペクトルを示す。示された積分ピーク面積は、約4.1ppmのピークの積分面積に関連して報告される(積分ピーク面積:1.00)。DMA単位のN−(CH
3)
2部分のプロトンに起因する約2.8〜3.3ppmの範囲のピークの積分ピーク面積は、約2.86である。DMA構造単位当たりN−CH
3タイプの6つのプロトンが存在するために、このようなプロトン当たり0.48の集積面積値を算出することができる。このように両方のタイプの熟慮した構造単位についてプロトン当たりの相対的な積分ピーク面積から、コポリマー中のNIPAM誘導構造単位のモル分率は、1.00/(1.00+0.48)=68モル%として推論することができ、コポリマー中のDMA誘導構造のモル比率は、0.48/(1.00+0.48)=32モル%として生じる。
b)ポリ(NIPAM−co−VP):ポリマー骨格においてNIPAMまたはVPから誘導される構造単位のモル分率をそれぞれポリ(NIPAM−co−DMA)について上記の手順に類似した
1H−NMRスペクトルにおいて約3.2ppm(VPのC=CH
2部分のプロトン、2H)のピークの積分面積に比例して、約1.1ppm(NIPAM単位のC−(CH
3)
2部分のプロトン、6H)のピークの積分面積から算出した。
c)ポリ(NIPAM−co−HEMA):ポリマー骨格においてNIPAMまたはHEMAから誘導される構造単位のモル分率をそれぞれ、約0.6〜2.4ppmの範囲でポリマー骨格及びメチル基に関連したすべてのピークの積分面積に関して、約3.8ppm(HEMA単位のCH
2OH部分の炭素結合プロトン、2H)のピークの積分面積から算出した。例証のために、
図2は、重水素化メタノールにおける実施例4−1のコポリマーの
1H−NMRスペクトルを示す。示された積分ピーク面積は、約3.8ppmのピークの積分面積に関連して報告される(積分ピーク面積:1.0)。0.6〜2.4ppmの領域のピークは、HEMAの−CH
2−C(CH
3)−骨格部分のプロトン及び−CH
2−CH−骨格部分のプロトン、ならびにNIPAMの2つのメチル基のプロトンに起因している。それ故、0.6〜2.4ppmの領域の積分ピーク面積は、HEMAの5つのプロトン及びNIPAMの9つのプロトンに由来する。3.8ppmのピークから、0.5の値は、HEMA構造単位のプロトン当たりの積分ピーク面積のために生じる。このように、0.6〜2.4ppmの領域の積分ピーク面積の5×0.50=2.5の値は、HEMAの−CH
2−C(CH
3)−骨格部分の5つのプロトンに起因し得る。そのとき、11.6−2.50=9.1の残りの価は、NIPAM単位の上述の9つのプロトンに起因し得る。したがって、9.1/9=1.01の積分ピーク面積は、NIPAMユニットのプロトンごとに推論される。その結果、両方のタイプの熟慮した構造単位についてプロトン当たりの相対的な積分ピーク面積から、コポリマー中のNIPAM誘導構造単位のモル分率は、1.01/(0.50+1.01)=67モル%として推論することができ、コポリマー中のHEMA誘導構造単位のモル比率は、0.50/(0.50+1.01)=33モル%として生じる。
d)ポリ(NIPAM−co−AA):ポリマー骨格においてNIPAMまたはAAから誘導される構造単位のモル分率をそれぞれポリ(NIPAM−co−HEMA)について上記の手順と類似した約0.6〜2.5ppm(AA骨格による3H、NIPAM骨格による3H、及びNIPAMのメチル基による6H)の範囲でポリマー骨格及びメチル基に関連したすべてのピークの積分面積に比例して、NIPAM単位(1H)のN−CH部分のプロトンに起因する約4.0ppmのピークの積分面積から算出した。
e)ポリ(DEA−DMA):ポリ(DEA−co−DMA)についてモノマー組み込みの定量化のために、
13Cピークのすべてからの積分を結果(12〜16ppm、DEAのCH
3、32〜39.5ppm、両方のモノマーのためのポリマー骨格、及びDMAのCH
3、39.5〜43.5ppm、DEAのNCH
2、174ppm、DEAのCO、175ppm、DMAのCO)を算出する際に使用した。12〜16ppm(2CH
3基)のピークの半分の積分、39.5〜43.5ppm(2CH
2基)のピークの半分の積分、及び174ppm(1CO基)の積分の平均を算出することによって、DEAの相対的なモル数を決定した。175ppm(1CO基)の積分の平均及び32〜39.5ppmのピークの積分の合計と上記のように算出されるDEAの相対的なモル数の2倍との差の1/4を算出することによって、DMAの相対的なモル数を決定した。両方のモノマーの相対的なモル数の合計によって、それぞれ、各モノマーの相対的なモル数を割ることによって、各モノマーのモル分率を算出した。
【0078】
ポリマーの調製において使用された異なるモノマーから誘導される構成構造単位のモル分率についてのこのように得られた値が表1−5に含まれる。
【0079】
B)サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)による特性評価
調製されたポリマーについての絶対数平均分子量(M
n)及び多分散指数(PDI)をサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって決定した。
【0080】
実施例1−1〜1−24、実施例2−1〜2−5のポリマー、実施例4−1〜4−2のポリマー、及び実施例5−1〜5−5のポリマーの場合、100〜10,000,000g/モルの有効分子量を有する材料に好適なポアサイズを有する1つのWaters Styragelガードカラム及び3つのWaters Styragelカラム(HR6、HR4、及びHR1)を装備したAgilent 1260 Infinity高速液体クロマトグラフィシステムでSECを実施した。分析のために使用されるSECシグナルは、254nm(80Hzのデータ収集周波数)のモニタリング波長で設定されたAgilent 1260 Infinity Variable Wavelength Detector、663.6nm(10°〜160°の18の角度)のレーザ波長で作動されるWyatt Dawn Heleos II多角レーザ散乱(MALS)検出器、及び658nmの波長で作動されるWyatt Optilab T−rEX屈折率検出器を含んだ。それぞれのポリマーの約6〜7mgをTHF1mL中に溶解し、0.2μmのメンブランフィルタによって濾過した。カラムが、25℃の温度に維持された、クロマトグラフィシステムにこのように得られた検体を導入し、1.0mL/分の流速においてテトラヒドロフランで溶出した。ポリマーのそれぞれについてのdn/dc値をOptilab T−rEX屈折計を用いてオフラインで決定し、ASTRA(登録商標)6ソフトウェアを使用して絶対M
n及びPDIを算出するために使用した。
【0081】
実施例3−1〜3−6のポリマーの場合、30℃の温度で保持されたEprogenカラム(CATSEC1000(7μm、50×4.6mm)、CATSEC100(5μm、250×4.6mm)、CATSEC300(5μm、250×4.6mm)、及びCATSEC1000(7μm、250×4.6mm))を装備したAgilent 1260高速液体クロマトグラフィシステムでSECを実施した。分析のために使用されたSECシグナルは、662nmの波長で作動されるWyatt Heleos II光散乱検出器及び658nmの波長で作動されるOptilab rEX屈折計を含んだ。それぞれのポリマーの約6〜7mgを酢酸水溶液(1.0%v/v)において1mLのNa
2SO
4の0.1M溶液中に溶解し、0.2μmのメンブランフィルタにより濾過した。このように得られた検体をクロマトグラフィシステムに導入し、0.4mL/分の流速で、酢酸水溶液(1%v/v)においてNa
2SO
4の0.1M溶液で溶出した。ポリマーのそれぞれについてのdn/dc値をOptilab rEX屈折計を用いてオフラインで決定し、ASTRA(登録商標)5ソフトウェアを使用して絶対M
nを算出するために使用した。
【0082】
得られたM
n及び多分散指数(PDI=M
w/M
n)についての値を表1−5に記載する。
【0083】
C)LCSTの決定
調製されたポリマーのいくつかについて、コロイド状凝集体/ミセルの分子的に溶解したまたは光学的に透明な分散体(LCST未満)からより大きな粒子(LCST超)の不透明な分散体への可逆的転移が起こった温度としての下限臨界溶解温度(LCST)を以下のように決定する。
【0084】
実施例1−17〜1−20、1−22、及び2−1から2−5のポリマーの場合、加熱システム及び温度制御装置を装備したCARY 100 Bio UV−Vis分光光度計において、LCST測定を実施した。水及び/またはpH6.5の絶食状態模擬腸液(FaSSIF)0.5重量%を有するリン酸緩衝生理食塩水中のそれぞれのポリマーの1.0重量%溶液を提供した。ミリポア水200mlにおいて、NaCl0.96g、二塩基性リン酸ナトリウム七水和物(Na
2HPO
4・7H
2O)1.07g、及び一塩基性リン酸カリウム(KH
2PO
4)1.28gを溶解することによって、82mMのNaCl、20mMのNa
2HPO
4・7H
2O、47mMのKH
2PO
4のリン酸緩衝生理食塩水を調製した。PBSにおけるLCST測定ごとに、SIF粉末9mgを上記の調製された溶液(pH6.5)1.8mLに添加し、絶食状態模擬腸液0.5重量%を有するリン酸緩衝生理食塩水0.5重量%を得た。セル(Semi−Micro Rectangular Cells、経路長10mm)をそれぞれのポリマー溶液で充填し、分光光度計に挿入し、溶液の温度を0.2K/分の加熱速度で25℃から70℃に上昇させた。本明細書において、450nmの波長で溶液の透過率を測定した。透過率[%]対温度プロットにおいて測定されたデータに適合した最小自乗の変曲点として、LCSTを決定した。
【0085】
実施例1−1〜1−16、3−1〜3−6、及び5−1〜5−5のポリマーの場合、LCSTは、脱イオン水及び/または0.5重量%の絶食模擬腸液粉末(Biorelevant.com、UK)を有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH6.5)中のそれぞれのポリマーの1.0重量%溶液について測定した。塩化ナトリウム(Fisher、≧99.0%)82mM、二塩基性リン酸ナトリウム七水和物(Fisher、98%)20mM、及び一塩基性リン酸カリウム(J.T.Baker、≧99.0%)47mMの溶液としてPBSを調製した。測定ごとに、それぞれのポリマー溶液の0.7mLのアリコートを1.0mLのガラスバイアルに移動させた。振動するための振動ステージ上の垂直パネルに取り付けられる51個の試料バイアルを有する加熱ステージ、QImaging QICAM Fast 1394カメラ、及びキャプチャした画像を分析するための内部開発ソフトウェアを備える、温度走査濁り度測定のための社内構築システムに、充填されたバイアルを設置した。平坦で一様な白色発光パネルをバイアル保持パネルの後ろに配置した。円形の光学窓内の対象領域は、バイアルごとにソフトウェアで規定した。溶液を0.5K/分の速度で、24℃〜97℃に加熱させた。本明細書において、カメラは、1分間隔で、画像を記録した。LCSTを曇り点温度として決定した、すなわち、平均光透過率が24℃で対象領域内の完全に溶解された溶液の光透過率の95%未満に低下した。
【0086】
このように得られたLCST値は、表1、2、3、及び5に含まれる。
【0087】
ポリマー溶解度試験
異なるpH価の水性媒体中の実施例1−12及び1−15のポリマーの溶解度を試験した。試験ごとに、バイアルにおいて、ポリマー及び溶媒の総量に対して、それぞれのポリマーを1重量%に対応する量でpH4.0、4.4、5.0、5.4、及び6.0のマッキルベン緩衝液に添加した。バイアルを30分間撹拌して、次いで、視覚の明快さについて調査した。各実施例は、視覚的に透明であり、pH条件のこの範囲内で完全な溶解度を示唆している。
【0088】
過飽和試験
過飽和溶液から薬物の沈殿または結晶化を阻害するための調製されたポリマー能力(すなわち「過飽和維持」)を以下のハイスループットな方法によって調査した:調査されたポリマーごとに、溶液の総重量に対して、それぞれのポリマーの1重量%の濃度を有するリン酸緩衝生理食塩水(NaOHによってpH6.5に調節された、82mMの塩化ナトリウム、20mMの二塩基性リン酸ナトリウム、47mMの一塩基性リン酸カリウム、0.5重量%のFaSSIF)中のポリマーの水溶液を調製した。Evo 2000プラットフォームを使用して、アルミニウム8×12ウェル配列に配列された個々のバイアルに、これらの溶液をそれぞれ、912μLの量で、機械的に送達した。続いて、メタノール1リットル当たり薬物20gの濃度を有するメタノール中薬物(フェニトインまたはNilutamide)溶液48μLを各ポリマー溶液に送達した。薬物及びポリマーの各それぞれの実験の組み合わせが4通りで実行されるように、薬液を送達した。Evo 2000ピペットを使用することによって、混合物を撹拌し、3サイクルの吸引及び分注を実施した。37℃の恒温アルミニウム試料ホルダ内に試料を置いた。ポリマー溶液に対する薬物の添加後のある特定の時点(30分、90分、及び180分)で、試料を4分間2,080×gで遠心分離に供し、30μLのアリコートを試料ごとに上澄み液から取り、メタノール150μLで希釈した。取った各アリコートの可溶化薬物濃度を逆相高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)分析によって決定した。この目的のために、逆相XDB−C8カラム(Eclipse、4.6×150mm、5.0μm、Agilent製、USA)を装備したAgilent 1100HPLCシステムに、取った2μLのそれぞれ希釈されたアリコートを注入した。2.0mL/分の流速で、移動相としてアセトニトリル及び水の混合物(ニルタミドについては50:50v/v及びフェニトインについては40:60v:v)を使用して、30℃の温度でシステムを作動した。220nmの波長で、ダイオードアレイ検出器(1100DAD、Agilent製、USA)によって、カラムからの廃液を検出した。薬物濃度をそれぞれの薬物についての直線較正曲線を使用することによって、測定された溶出プロファイルから決定し、直線較正曲線は、既知濃度(約250、500、750、及び1,000mg/L)の4つの溶液の濃度とメタノールにおいて2μLの各薬物の注射後に積分されたそれぞれのピーク面積との関係を記載した直線の最小二乗適合を決定することによって、作成した。比較の理由のために、前述の試験手順をa)中にいかなるポリマーも溶解されていないリン酸緩衝生理食塩水、またはb)1重量%の商業用の可溶化剤(それぞれ、BASFからのSoluplus、もしくはThe Dow Chemical CompanyからのHPMCAS AFFINISOL(商標)912G)を有するリン酸緩衝生理食塩水に添加された薬物を用いて同様に実行した。4通りの実行の平均値として報告される測定された薬物濃度を要約し、以下で考察する。機械的に少量(すなわち、48μLの薬液)の送達と関連した軽微な変動により、1000μg/mLの目標最大薬物濃度をときどき超えたことに留意されたい。
【0089】
【表6】
【0090】
表6から分かるように、調査されたNIPAM−co−DMAポリマーは、ベンチマーク可溶化剤として使用されたBASF Soluplus及びHPMCASと同様に可溶化フェニトインの量を著しく増加させる(フェニトイン自体と関連する2〜10以上の指数)。一連の実施例1−7〜1−16(同等のM
n:16,000±5,000でのモル組成の系統的変動)から、NIPAMから誘導される約60〜75モル%構造単位を含むコポリマーについて観察される最も効率的な可溶化を有するNIPAMから誘導される50モル%超の構造単位を含むそれらのコポリマーに対して特に効果的な可溶化(BASF SoluplusまたはHPMCASと比較して改善された可溶化)が実現されることが分かる(実施例1−2及び1−12〜1−14を参照)。NIPAM−co−DMAポリマーのこれらの可溶化能力は、実施例1−1〜1−6によって例証されるように、広範囲の分子量で入手可能であり、M
nは、約66±2モル%NIPAM誘導構造単位を含むコポリマーに対して約10,000〜約70,000g/モル系統的に変動した。過飽和状態は、基本的には、180分の調査期間全体にわたってNIPAM−co−DMAポリマーによって維持され得る。
【0091】
また、表7によって明示されるように、ニルタミドは、ベンチマークのBASF Soluplusによってより効率的に本発明によるNIPAM−co−DMAポリマーによって可溶化される。NIPAMから誘導される約60〜75モル%構造単位の上記の好ましい組成範囲において、完全に提供されたニルタミドの量(1,000mg/Lに対応する)は、PBS−FaSSIF緩衝溶液において可溶化され、過飽和状態は、180分の調査期間全体にわたって維持される。
【0092】
【表7】
【0093】
また、NIPAM−co−AAポリマーは、フェニトインに対する可溶化効果を有する(表8を参照)。実施例3−1〜3−6の比較が可溶化を示すように、効率は、調査された組成範囲(27モル%〜73モル%のNIPAM誘導構造単位)においてNIPAMから誘導される構造単位のモル分率によって、系統的に増加する。少なくとも、実施例3−6のコポリマーは、BASF Soluplus及びHPMCASと比較して明確に優れた可溶化容量を実現する。この発見は、ニルタミドについても検証された(図示せず)。一般に、NIPAM−co−DMAポリマーは、経時的に可溶化フェニトインの濃度の若干の減少を呈する、対応するNIPAM−co−AAポリマーよりも過飽和状態を安定させる上でいくらか効果的なようである。
【0094】
【表8】
【0095】
60〜75モル%のNIPAM誘導構造単位の上記の好ましい組成範囲においても、NIPAM−co−HEMA−ポリマーの可溶化能力は、調査された。表6と組み合わされた表9及び10から分かるように、NIPAM−co−HEMA−ポリマーは、PhenytoinについてだけでなくNilutamideについても試験されたベンチマーク可溶化剤よりも良好な可溶化を実現する。可溶化薬物の濃度は、180分の調査期間にわたって測定精度内で安定なままである。
【0096】
【表9】
【0097】
【表10】
【0098】
DEA−co−DMAポリマーは、NIPAM−co−DMAポリマーと同様に挙動し、BASF Soluplus及びHPMCASに対して、50モル%以上のDEAから誘導される構造単位を含む組成物に対して、少なくとも同等またはさらに改善されたフェニトインの可溶化をもたらすことが見出された(参照表11)。これは、ニルタミドについても検証された(図示せず)。
【0099】
【表11】
【0100】
固体ポリマー薬物混合物の調製
難水溶性薬物(プロブコールまたはフェニトイン)と、表1によるポリマーとの固体混合物、表2によるポリマーとの固体混合物、及びベンチマーク賦形剤としてThe Dow Chemical CompanyからのHPMCAS AFFINISOL(商標)912Gとの固体混合物をそれぞれBend Research Mini Spray Dryer(Bend,OR)を使用する噴霧乾燥によって調製した:いずれの場合も、溶液の総重量に対して、2重量%のポリマー及び薬物の総濃度を有するアセトンまたはアセトン−メタノール混合物(1:1、v/v)中のそれぞれのポリマー及び薬物の溶液は、固体構成成分を溶媒に添加し、均質溶液が形成されるまで、厳密な撹拌によって調製した。薬物の量は、それぞれ、例えば、ポリマー及び薬物の総重量の10重量%、25重量%、または50重量%に対応するように本明細書において選択した。例えば、薬物20mgを溶媒9.8g中のポリマー180mgと組み合わせて、10重量%の薬物充填を有する2重量%の総溶質含有量を有する溶液を調製した。0.65mL/分の供給速度を有する噴霧乾燥器に、調製された溶液を20mLのシリンジで注入した。窒素ガスを1分当たり12.8標準リットルの速度で、噴霧乾燥器に供給した。噴霧乾燥器の入口温度を90℃に維持し、出口温度は、制御せず、24〜29℃の範囲に及んだ。固体ポリマー薬物混合物を1.5”ワットマン濾紙上の出口で収集し、帯電防止バーの補助によってそこから除去し、少なくとも12時間真空下(10mTorr)で乾燥した。乾燥固体混合物をさらに使用するために22℃でデシケータ中に保存した。
【0101】
固体ポリマー薬物混合物の特性評価
調製された固体ポリマー薬物混合物を粉末X線回折によって分析した。シンチレーションカウンタ検出器を装備した、2.2kWの密封されたCu(λ=1.54Å)源を有するBruker−AXS(Siemens)D5005回折計で粉末X線回折実験を実施した。試料(〜50mg)を標準的なガラスホルダに均一に詰めた。40kWの電圧及び45mAの電流で測定した。0.02のステップ幅及び0.5秒のスキャンステップ時間で5〜40°の2θ角度範囲において試料を分析した。混合物のXRDパターンは、ガラス状態の近距離秩序に関連する広範な「ハロ」シグナルを呈すに過ぎないが、結晶相について特徴的である鋭いピークはない。
図3は、実施例1−17〜1−20のコポリマーの固体混合物の例示的なXRDパターンを示し、実施例1−22及び1−23のホモポリマーを比較する理由のために、それぞれの結晶性純薬と比較して、25重量%の薬物充填でフェニトイン(左)またはプロブコール(右)を有する。したがって、薬物は、アモルファス形態で調製された固体混合物中に存在する。調製されたNIPAM及び/またはDMA系ポリマーは、固体混合物における結晶化に対して、薬物のアモルファス形態を安定化させる。
【0102】
さらに、TA Instruments Discovery DSCを使用して調製された固体ポリマー薬物混合物について、示差走査熱量測定を実施した。すべての試料(〜5から10mg)をT−ゼロアルミニウムパンにおいて密封圧着した。2.5K/分の加熱速度を適用する22℃〜180℃の温度範囲で測定を実行した。TA TRIOSソフトウェア(バージョン2.2)を使用して、熱転移を分析した。第1の加熱ステップの間、MDSCにおける反転サーモグラムを使用して各混合物のガラス転移温度を決定した。
図4は、25重量%の薬物充填で、フェニトインを有する実施例1−17〜1−19のコポリマーの固体混合物について得られた例示的なDSC曲線を示す。DSC曲線はそれぞれ、ガラス転移を呈し、ガラス転移温度は、約66℃(実施例1−18)〜約76℃(実施例1−19)に対して約62℃(実施例1−17)からポリマー中のNIPAM誘導構造単位のモル含有量の増加とともに増加し、それは、コポリマー自体について観察される傾向と反対(NIPAMのモル含有量の増加とともにT
gの減少)である。フェニトインを有する混合物における観察された逆の挙動は、例えば、水素結合によってコポリマーのNIPAM誘導構造単位を有する薬物間に強い相互作用を示すと考えられている。混合物について単一のガラス転移温度の存在は、均質なポリマー薬物混合物、すなわちコポリマー中の薬物の固溶体の形成を示す。DSC曲線は、調製された混合物においてアモルファス形態での薬物の存在を立証する、約95℃〜130℃の結晶化ピークをさらに示す。10重量%の薬物充填レベルについての熱分析によって同様の結果を得た。
【0103】
固体ポリマー薬物混合物の溶解特性
水性媒体において調製された固体ポリマー薬物混合物の溶解特性は、以下の通りに調査した。いずれの場合においても、それぞれの固体ポリマー薬物混合物の量を2.0mLのプラスチック円錐マイクロ遠心機管に、慎重に量り入れた。0.5重量%のFaSSIF粉末(Biorelevant、UK)を有し、37℃の温度で保持されたリン酸緩衝生理食塩水(次いで、NaOHによってpH6.5に調節された、200mLのミリポア水中のPBS、82mMのNaCl、20mMのNa
2HPO
4・7H
2O、0.96gのNaClを溶解することによって調製された47mMのKH
2PO
4、1.07gの二塩基性リン酸ナトリウム七水和物(Na
2HPO
4・7H
2O)、及び1.28gの一塩基性リン酸カリウム(KH
2PO
4))を管に量り入れた固体ポリマー薬物混合物の薬物量全体が溶解された場合、1,000mg/Lの最終薬物濃度を実現するための量でマイクロ遠心機管に添加した。固体ポリマー薬物混合物の量は、例えば、合計で約1.8mLの試料液の量を得るために選択した。例えば、25重量%の薬物充填を有する固体ポリマー薬物混合物の場合、薬物1.8mg及びポリマー5.4mgからなる固体ポリマー薬物混合物7.2mgをマイクロ遠心機管に慎重に量り入れ、そこに1.8mLのPBS−FaSSIF溶液を添加した。PBS−FaSSIF溶液の添加後、試料を30秒間ボルテックスし(SI−V524 Vertical Microtube Holderを装備するScientific Industries Vortex Genie 2)、37℃で恒温アルミニウム加熱ブロック(VWR Digital Heatblock)においてインキュベートした。ポリマー溶液に対してPBS−FaSSIF溶液の添加後のある特定の時点(4、10、20、40、90、180、及び360分)で、試料を1分間16,000×gで遠心分離(Eppendorf Centrifuge 5415RまたはBeckman Coulter Microfuge 16)に供し、50μLのアリコートを上澄み液から取り、250μLのメタノールで希釈した。アリコートをそれぞれ取った後に、再度、残留試料を30秒間ボルテックスし、次のアリコートが取られるようになるまで、37℃で保持した。取った各アリコートの可溶化薬物濃度を逆相高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)分析によって決定した。この目的のために、逆相EC−C18カラム(Poroshell 120、4.6×50mm、2.7μm、Agilent製、USA)を装備したHPLCシステムに、取った10μLのそれぞれ希釈されたアリコートを注入した。1.0mL/分の流速で、移動相としてアセトニトリル及び水の混合物(96:4v:v)を使用して、30℃の温度でシステムを作動した。241nmの波長で、UV検出器(1260のInfinity Multiple Wavelength Detector、Agilent製、USA)によって、カラムからの廃液を検出した。薬物濃度をそれぞれの薬物についての較正曲線を使用することによって、測定された溶出プロファイルから決定した。25重量%の薬物充填のフェニトインを有するいくつかのNIPAM−co−DMAポリマーの典型的な固体混合物について測定された溶解プロファイルを
図5及び6に示す。加えて、
図7は、25重量%の薬物充填でフェニトインを有する表2に従ってNIPAM−co−VPポリマーの固体混合物について測定された溶解プロファイルを示す。比較の理由のために、賦形剤としてHPMCASを有するそれぞれの混合物の溶解プロファイルは、これらのプロットに含まれる。可溶化有効性の測定として、0〜360分(AUC
360分)の時間[分]プロットに対する濃度[mg/L]における曲線下面積は、台形法を使用して算出した。
【0104】
図5は、NIPAM−co−DMAポリマーを含有する固体混合物−ポリマーとしてNIPAM(実施例1−22)またはHPMCASのホモポリマーを有する混合物と同様に−が急速に溶解し、フェニトイン自体の溶解の場合に到達される約50mg/Lよりも相当に高い、200mg/Lを十分に上回る、さらに部分的に500mg/Lを上回る最初の4分可溶化薬物濃度の範囲内で提供することを示す。その対照において、DMA(実施例1−23)のホモポリマーは、ニート薬物の溶解と比較して、わずかに増加した可溶化薬物濃度のみをもたらす。DMA(実施例1−17及び1−18)から誘導される構造単位を大部分で含むコポリマーの場合、可溶化薬物濃度は、以下においてHPMCAS試料について観察された挙動と同様に、200mg/L未満の値まで連続的に減少する、すなわち、初期の高度な過飽和状態は、長期間にわたって保持されない。一方、NIPAMから誘導される50モル%超の構造単位を含有するポリマーを含む固体混合物は、異なる溶解プロファイルを呈し、可溶化薬物濃度は、進行時間が十分に長い期間に対する限界値に接近するに伴いさらに増加する。本明細書において、NIPAMから誘導される約60〜75モル%の構造単位の組成範囲のNIPAM−co−DMAポリマー(実施例1−2、1−12、1−13、1−14、及び1−19)は、1.0×10
5mg・分/Lを上回るAUC
360分値及び360分後に400mg/Lを上回る可溶化薬物濃度を実現する最も効率的な可溶化剤である(HPMCAS:6.2×10
4mg・分/LのAUC
360分、c
360分≒130mg/L)。コポリマー中のNIPAMから誘導される構造単位がより高い含有量の場合、実施例1−20の場合には、例えば、約290mg/L(t=360分)の可溶化薬物濃度のいくらか低い限界値を実現する。しかしながら、NIPAMホモポリマーは、関連した水性媒体中のLCSTは、それぞれの用途、例えば、ヒトまたは動物の体温において遭遇する温度未満または温度近傍であり得るので、約270mg/L(t=360分)に到達し、可溶化剤としてのその有用性は、多くの生物学的用途において限定されると考えられる。
【0105】
図6は、それぞれ、NIPAMから誘導される約66モル%の構造単位を含む、実施例1−1(M
n:10,950g/モル)、1−2(M
n:20,000g/モル)、及び1−5(M
n:69,000g/モル)のコポリマーの溶解プロファイルから分かるように、広い分子量範囲において、好ましい組成範囲におけるフェニトインとNIPAM−co−DMAポリマーとの固体混合物の前述の効果的な溶解及び可溶化特性が得られることを例証する。
【0106】
図7は、NIPAM−co−VPポリマーを有するフェニトインの固体混合物が、類似の固体フェニトイン−HPMCAS混合物と少なくとも同等の効果的な溶解及び可溶化特性を同様に可能にすることを示す。本明細書において、VPから誘導される構造単位を大部分で含む、NIPAM−co−VPポリマーを含有する混合物(実施例2−4及び2−5)は、賦形剤としてHPMCASを有する混合物と極めて同様の挙動をする、すなわち、最初の数分以内の500mg/L超の可溶化薬物の濃度を実現するイニシャルバースト溶解及びその後、360分後の250mg/L未満の値まで可溶化薬物濃度の安定した減少を呈する。NIPAM及びVPから誘導される構成構造単位とほぼ等しい割合(実施例2−3)、または適度な過剰のNIPAM誘導構造単位(実施例2−4)を有するNIPAM−co−VPポリマーを含むそれらの固体混合物は、それぞれ、最初の約60分以内の可溶化薬物濃度を約450mg/Lの最大値まで安定して増加させる異なる溶解挙動を示す。この過飽和状態は、実質的に少なくとも最大180分維持されるが、より長い時間で可溶化薬物濃度は減少する。それにもかかわらず、360分の調査期間全体にわたって、実施例2−3及び2−4に対応する混合物は、約1.4×10
5mg・分/LのAUC
360分値を実現し、それらがHPMCASと比較して実質的により高い積分量の可溶化薬物を提供し得ることを証明する。NIPAM誘導構造単位の最も高い調査含有量(74モル%)を有する実施例2−1のNIPAM−co−VPポリマーを含有する混合物は、可溶化薬物の初めの再沈殿を示すことなく、さらに360分の観察期間全体にわたって約280mg/Lのほぼ一定の可溶化薬物濃度を示す。
【0107】
上述の所見は、HPMCASのような確立された従来技術の可溶化剤と同等の固体混合物から急速及び制御様式において、難水溶性物質を溶解するだけでなく、水性媒体中の再沈殿に対してより効率的に可溶化物質も安定させて、かつ実質的により長い期間、高度な過飽和状態も維持するための本発明によるコポリマーの能力を例証する。
(態様)
(態様1)
a)骨格を有する少なくとも1つの非架橋コポリマーであって、前記骨格が、
i)N−アルキルまたはN,N−ジアルキル置換(アルキル)アクリルアミドモノマーである、1つ以上の第1のモノマーから誘導される複数の熱応答性構造単位、及び
ii)エチレン系不飽和モノマーである、1つ以上の第2のモノマーから誘導される複数の親水性構造単位を含む、非架橋コポリマーと、
b)23℃の温度及び1atmの大気圧で、pH7.0の脱イオン水において、それ自体で、200mg/L以下の溶解度を有する少なくとも1つの難水溶性物質と、を含む固体混合物を含む、組成物。
(態様2)
前記コポリマーが、ランダムコポリマーであり、かつ/または直鎖状コポリマーであり、かつ/または非イオン性コポリマーである、態様1に記載の組成物。
(態様3)
前記コポリマー中に含まれる前記熱応答性構造単位i)対前記親水性構造単位ii)のモル比が、1:1〜10:1、好ましくは、1.2:1〜5:1、より好ましくは、3:2〜4:1の範囲である、態様1または2に記載の組成物。
(態様4)
前記コポリマーが、前記コポリマーを構成するモノマー誘導構造単位の総量に対して、50モル%超〜90モル%以下、好ましくは、55モル%〜80モル%、より好ましくは、60〜75モル%の前記熱応答性構造単位i)、及び/または10モル%以上〜50モル%未満、好ましくは、20モル%〜45モル%、より好ましくは、25モル%〜40モル%の前記親水性構造単位ii)を含み、好ましくは、前記熱応答性構造単位i)と前記親水性構造単位ii)との量が、合計して100モル%になる、態様1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
(態様5)
前記熱応答性構造単位i)が誘導される前記N−アルキルまたはN,N−ジアルキル置換(アルキル)アクリルアミドモノマーが、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−tert−ブチルメタアクリルアミド、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、N−イソプロピルアクリルアミドである、態様1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
(態様6)
前記親水性構造単位ii)が誘導される前記エチレン系不飽和モノマーが、ビニル置換複素環式化合物及び/または構造:
【化1】
もしくは
【化2】
を有する1つ以上の化合物から選択され、式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6のそれぞれは独立して、水素及び1〜6個の炭素原子を有する一価の有機基から選択され、R6はまた、代替的に、グリコールからエステル化することによって誘導される部分であってもよく、好ましくは、R1及びR2は、水素であり、R3は、水素及びメチル基から選択され、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して、水素及び1〜4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される、態様1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
(態様7)
前記親水性構造単位ii)が誘導される前記エチレン系不飽和モノマーが、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ビニルピロリドン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様6に記載の組成物。
(態様8)
前記コポリマーが、2元コポリマーであり、好ましくは、ポリ[(N−イソプロピルアクリルアミド)−co−(N,N−ジメチルアクリルアミド)]である、態様1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
(態様9)
前記コポリマーが、サイズ排除クロマトグラフィによってそれぞれ測定した場合、3,000〜400,000g/モルの範囲で数平均分子量を有し、かつ/または2.5未満の多分散指数を有する、態様1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
(態様10)
前記少なくとも1つの難水溶性物質b)が、活性医薬成分、活性パーソナルケア剤、植物保護剤、殺虫剤、または食品から選択され、好ましくは、活性医薬成分である、態様1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
(態様11)
前記少なくとも1つの難水溶性物質b)が、少なくとも部分的に、好ましくは、大部分でまたは完全にアモルファス形態で存在する、態様1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
(態様12)
前記組成物が、前記組成物の総重量に対して、60〜95重量%の前記少なくとも1つのコポリマーa)及び5〜40重量%の前記少なくとも1つの難水溶性物質b)を含み、かつ/または前記固体混合物が、前記少なくとも1つのコポリマーa)中の前記少なくとも1つの難水溶性物質b)の固体分散体もしくは固溶体である、態様1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
(態様13)
充填剤、結合剤、pH調節剤、溶媒、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤、可塑剤、着色剤、香味剤、ミネラルアジュバント、緩和薬、滑沢剤、香料、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、態様1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
(態様14)
好ましくは、錠剤またはカプセルである、態様1〜13のいずれか一項に記載の組成物を含む、固体剤形。
(態様15)
水性媒体中の難水溶性物質の溶解度及び/もしくは溶解速度を増加させ、かつ/または難水溶性物質の結晶化を阻害し、かつ/または難水溶性物質のバイオアベラビリティを増加させるための固体混合物中の成分としての態様1〜9のいずれか一項に記載のコポリマーの使用であって、前記難水溶性物質が、態様1、10、もしくは11のいずれか一項に記載される、使用。