(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動輪歯と前記突起部との噛合い状態において前記踏面に対向しかつ前記駆動輪歯の歯幅方向に位置する前記駆動輪の外周面は、全周において前記駆動輪歯の刃先円直径以下の直径を有する、請求項1に記載の走行体。
前記突起部は、側面視において、前記突起部の頂部に位置する直線部と、前記直線部を挟む2つの円弧部とを有する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の走行体。
側面視において、前記歯溝の両側の溝端部を繋ぐ仮想の第1直線に対する前記溝端部から前記歯溝の底部側への立ち上がりの角度は、前記突起部の両側の根元部を繋ぐ仮想の第2直線に対する前記根元部から前記突起部の先端部側への立ち上がりの角度よりも小さい、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の走行体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記公報においては、履帯リンクのタンブラー係合面と駆動タンブラーの転動面との間ですべり摩耗が生じる。このため、履帯リンクのタンブラー係合面と駆動タンブラーの転動面との間の摩耗が他の部位の摩耗に比較して大きい。
【0008】
また駆動タンブラーに対する履帯リンクの巻き付き径は、(a)履帯リンクのタンブラー係合面と駆動タンブラーの転動面との接触、(b)履帯リンクの連結ピッチとタンブラー歯のピッチとの関係、のいずれかに依存している。このため、各部品の摩耗速度の違いから噛み合いピッチがずれて、噛み合い不良が生じやすい。この噛み合い不良は異常摩耗の原因となる。
【0009】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものである。本発明の目的は、駆動輪回転時のすべり摩耗を抑制し、かつ噛み合い不良による異常摩耗を抑制できる走行体および作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の走行体は、駆動輪と、履帯リンクとを備えている。駆動輪は、複数の駆動輪歯と、その駆動輪歯に隣接する歯溝とを有している。履帯リンクは、駆動輪歯に噛合う突起部と、その突起部の幅方向に位置する踏面とを有している。踏面からの突起部の高さは、歯溝の深さ以上である。
【0011】
本発明の走行体によれば、突起部は、歯溝の深さ以上の高さを有している。これにより突起部の先端が歯溝の底部に接触可能となる。このため、履帯リンクの踏面と、その踏面に対向する駆動輪の外周面とが互いに接触しないようにすることが可能となる。よって、履帯リンクの踏面と駆動輪の上記外周面との間でのすべり摩耗を防止することができる。
【0012】
また上記のように履帯リンクの踏面と駆動輪の外周面との間でのすべり摩耗を防止できるため、各部品の摩耗速度の違いに基づく噛み合いピッチのずれを抑制することができる。このため、噛み合い不良による異常摩耗を抑制することが可能となる。
【0013】
上記の走行体において、駆動輪歯と突起部との噛合い状態において踏面に対向しかつ駆動輪歯の歯幅方向に位置する駆動輪の外周面は、全周において駆動輪歯の刃先円直径以下の直径を有している。
【0014】
これにより履帯リンクの踏面と、その踏面に対向する駆動輪の外周面との接触を確実に防止することができる。このため、履帯リンクの踏面と駆動輪の上記外周面との間でのすべり摩耗を確実に防止することができる。
【0015】
上記の走行体において、駆動輪は、駆動輪本体と、駆動輪セグメントと、固定部とを含んでいる。駆動輪セグメントは、駆動輪本体とは別部品からなり、駆動輪本体の外周に配置され、かつ駆動輪歯を有している。固定部は、駆動輪本体に駆動輪セグメントを取り付けている。
【0016】
これにより履帯リンクと噛み合いなどにより駆動輪セグメントが破損、摩耗などした場合には、駆動輪セグメントを駆動輪本体から取り外して交換することができる。これにより駆動輪全体を交換する必要がなくなる。
【0017】
上記の走行体において、駆動輪本体は、外周部において内周側に窪んだ凹部を有している。駆動輪セグメントが駆動輪本体に取り付けられた状態において、凹部は駆動輪セグメントに当接している。
【0018】
これにより駆動輪セグメントが履帯リンクと噛み合って駆動する際に、駆動輪セグメントに履帯リンクから作用する負荷(たとえば落下負荷、牽引負荷)を駆動輪本体の凹部で受けることができる。このため、上記負荷が固定部に作用することを抑制でき、耐久性を向上させることができる。
【0019】
上記の走行体において、駆動輪本体は、外周部において外周側に突き出した複数の凸部を有している。駆動輪セグメントは、駆動輪セグメントの内周面から外周側に延びるように窪み、かつそれぞれが凸部を受け入れる複数の窪み部を有している。複数の窪み部の各々は駆動輪セグメントの外周面において開口している。
【0020】
このように駆動輪本体の凸部を受け入れる窪みが駆動輪セグメントの外周面に開口していることにより、駆動輪セグメントに作用した応力を開口にて逃がすことができ、駆動輪セグメントの破損を抑制することができる。
【0021】
上記の走行体において、複数の凸部の各々は、複数の駆動輪歯の各々に側面視において重畳するように配置されている。
【0022】
これにより、駆動輪本体の凸部と駆動輪歯とを互いに固定することができる。
上記の走行体において、固定部は、駆動輪歯と駆動輪本体の凸部とを互いに固定している。
【0023】
これにより歯溝を避けて固定部を配置することができるため、履帯リンクの突起部が歯溝に嵌ることを固定部が阻害することはない。
【0024】
上記の走行体において、履帯リンクは第1のリンク連結用孔と第2のリンク連結用孔とを有している。側面視において突起部は第1のリンク連結用孔と第2のリンク連結用孔との中央に配置されている。
【0025】
これにより駆動輪が順回転および逆回転のいずれ側に回転した場合でも、駆動輪に対する履帯リンクの相対すべりを抑制することができる。
【0026】
上記の走行体において、突起部は、側面視において、突起部の頂部に位置する直線部と、その直線部を挟む2つの円弧部とを有している。
【0027】
これにより、歯溝内に嵌められたすべての突起部を駆動輪歯と噛合わせることが可能となる。
【0028】
上記の走行体において、側面視において、歯溝の両側の溝端部を繋ぐ仮想の第1直線に対する溝端部から歯溝の底部側への立ち上がりの角度は、突起部の両側の根元部を繋ぐ仮想の第2直線に対する根元部から突起部の先端部側への立ち上がりの角度よりも小さい。
【0029】
これにより歯溝はスムーズに突起部を受け入れることができ、スムーズな噛み合せを実現することができる。
【0030】
本発明の作業車両は、上記のいずれかに記載の走行体を備えている。
本発明の作業車両によれば、上述したように、駆動輪回転時のすべり摩耗を抑制することができ、かつ噛み合い不良による異常摩耗を抑制することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように本発明によれば、駆動輪回転時のすべり摩耗を抑制し、かつ噛み合い不良による異常摩耗を抑制できる走行体および作業車両を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
まず、本発明の一実施の形態における作業車両の構成について説明する。以下、本発明の思想を適用可能な作業車両の一例として油圧ショベルについて
図1を用いて説明する。なお本発明は油圧ショベル以外にブルドーザなどの装軌式作業車両にも適用可能である。
【0034】
本例においては、運転室31内の運転席に着座したオペレータを基準として各部の位置関係について説明する。前後方向とは、運転席に着座したオペレータの前後方向をいう。左右方向(幅方向)とは、運転席に着座したオペレータの左右方向をいう。上下方向とは、運転席に着座したオペレータの上下方向をいう。
【0035】
運転席に着座したオペレータに正対する方向が前方向であり、前方向に対向する方向が後方向である。運転席に着座したオペレータが正面に正対したときの右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。運転席に着座したオペレータの足元側が下側、頭上側が上側である。
【0036】
図1は、本発明の一実施の形態における履帯装置を用いた装軌式作業車両の例として油圧ショベルの構成を示す概略側面図である。
図1に示されるように、本実施の形態の油圧ショベル50は、大型の油圧ショベルであって、走行体20と、旋回体30と、作業機40とを主に有している。走行体20と旋回体30とにより作業車両本体が構成されている。
【0037】
旋回体30は走行体20に対して旋回自在に設置されている。この旋回体30は、運転室31と、エンジンルーム32と、カウンタウェイト33と、アクセスシステム34とを主に有している。
【0038】
運転室31は、旋回体30のたとえば前方左側(車両前側)に配置されている。エンジンルーム32およびカウンタウェイト33の各々は、旋回体30の後方側(車両後側)に配置されている。エンジンルーム32は、エンジンユニット(エンジン、排気処理構造体など)を収納している。エンジンルーム32の上方はエンジンフードにより覆われている。カウンタウェイト33は、エンジンルーム32の後方に配置されている。
【0039】
アクセスシステム34は、旋回体30の側部であって、たとえば左側に配置されている。このアクセスシステム34は、オペレータが地上から運転室31に乗り込むために、また運転室31から地上へ降りるために設けられている。
【0040】
作業機40は、旋回体30の前方側に軸支されている。作業機40は、たとえばブーム41、アーム42、バケット43、油圧シリンダなどを有している。ブーム41の基端部は、旋回体30に回転可能に連結されている。またアーム42の基端部はブーム41の先端部に回転可能に連結されている。バケット43は、アーム42の先端部に回転可能に連結されている。ブーム41、アーム42およびバケット43の各々が油圧シリンダによって駆動されることにより作業機40は駆動可能である。
【0041】
走行体20は、左右一対の履帯装置10が回転駆動することにより作業車両(油圧ショベル)
50が走行するように構成されている。走行体20は、履帯装置10と、駆動輪(スプロケット)21と、遊動輪(アイドラ)22と、トラックフレーム23と、下転輪24と、上転輪25と、旋回装置26とを主に有している。
【0042】
駆動輪21はトラックフレーム23の後端部に回転駆動可能に設けられている。遊動輪22はトラックフレーム23の前端部に回転可能に設けられている。複数の下転輪24はトラックフレーム23の下側に設けられている。複数の上転輪25はトラックフレーム23の上側に設けられている。
【0043】
履帯装置10は駆動輪21と遊動輪22とに巻きかけられている。また履帯装置10は駆動輪21と遊動輪22との間に配置された下転輪24および上転輪25により支持されている。履帯装置10は、駆動輪21に噛み合わされている。この状態で駆動輪21が回転駆動されることにより履帯装置10が回転駆動する。これにより走行体20が自走する。また履帯装置10の回転駆動時に、遊動輪22、複数の下転輪24および複数の上転輪25の各々は履帯装置10に当接して従動回転可能である。
【0044】
図2は、
図1の装軌式作業車両における走行体の構成の一部を概略的に示す斜視図である。
図2に示されるように、履帯装置10は、複数の履帯リンク1が連結ピン7で無端状(環状)に連結されることにより構成されている。
【0045】
複数の履帯リンク1の各々は、踏面2aと、2つの突起部2bとを有している。2つの突起部(突起)2bは、踏面2aを有するプレート部を挟んで、そのプレート部の両側に配置されている。踏面2aと2つの突起部2bとは、無端状に連結された履帯装置10の内側の面(非接地面)に配置されている。
【0046】
踏面2aは、転輪(たとえば下転輪24)などが転動する面である。履帯装置10が回転駆動する際には、踏面2aに、転輪(たとえば下転輪24)の転動面24aなどが当接する。
【0047】
2つの突起部2bの各々は、駆動輪21の外周に設けられた駆動輪歯21ebに噛み合う部分である。周方向に隣り合う駆動輪歯21ebの間には、歯溝21eaが設けられている。突起部2bが駆動輪歯21ebに噛合う際には、この突起部2bは歯溝21ea内にはまっている。
【0048】
上記の突起部2bと歯溝21eaとの噛み合いにより、駆動輪21の回転駆動力が履帯装置10に伝達され、履帯装置10が回転駆動する。
【0049】
次に、本実施の形態の走行体20における駆動輪21の構成について
図3および
図4を用いて説明する。
【0050】
図3および
図4のそれぞれは、
図2の走行体における駆動輪の構成を示す分解斜視図、および駆動輪の回転軸に平行な方向の断面斜視図である。
【0051】
図3に示されるように、駆動輪21は、駆動輪本体21aと、駆動輪セグメント21bと、固定部21cとを有している。駆動輪本体21aと駆動輪セグメント21bとは、別部品からなっている。駆動輪セグメント21bは、固定部21cによって駆動輪本体21aに取り付けられている。
【0052】
駆動輪本体21aは、たとえば環形状を有している。環形状の駆動輪本体21aの外周部には、複数の凸部21abと、複数の凹部21aaとが設けられている。複数の凸部21abと複数の凹部21aaとは、凸部21abと凹部21aaとが周方向に交互に位置するように設けられている。凸部21abと凹部21aaとは互いに隣接している。
【0053】
複数の凸部21abの各々は、凹部21aaの底部21aa1よりも駆動輪本体21aの外周側へ突き出している。一方、複数の凹部21aaの各々は、凸部の頂部21ab1よりも駆動輪本体21aの内周側へ窪んでいる。
【0054】
駆動輪本体21aには、駆動輪本体21aを貫通する貫通孔21acが設けられている。この貫通孔21acは、駆動輪本体21aの軸方向(図中X方向)に貫通している。貫通孔21acは、凸部21abの内周側(頂部21ab1の内周側)に位置している。
【0055】
駆動輪セグメント21bは、駆動輪本体21aの外周に配置されている。駆動輪セグメント21bは、1対の端部21eと、中央部21dとを有している。中央部21dは、駆動輪21の幅方向(図中X方向)において1対の端部21eに挟まれている。
【0056】
1対の端部21eの各々は、複数の歯溝21eaと、複数の駆動輪歯21ebとを有している。複数の駆動輪歯21ebと複数の歯溝21eaとは、駆動輪歯21ebと歯溝21eaとが周方向に交互に位置するように設けられている。駆動輪歯21ebと歯溝21eaとは、互いに隣接している。
【0057】
複数の駆動輪歯21ebの各々は、歯溝21eaの底部よりも駆動輪本体21aの外周側へ突き出している。一方、複数の歯溝21eaの各々は、駆動輪歯21ebの頂部よりも駆動輪本体21aの内周側へ窪んでいる。
【0058】
中央部21dは、上記駆動輪歯21ebの歯幅方向(幅方向:図中X方向)に位置している。この中央部21dには、円周に沿った中央外周面21daがある。この中央外周面21daには、開口21dbと、外面窪み部21dcが設けられている。
【0059】
図4に示されるように、外面窪み部21dcは、中央外周面21daから内周側に窪んだ部分である。外面窪み部21dcは、駆動輪セグメント21bを径方向に貫通しておらず、底を有している。
【0060】
中央部21dには、駆動輪セグメント21bの内周面から中央外周面21da側へ延びる内面窪み部21ddが設けられている。この内面窪み部21ddの周方向の幅Wは、内周側から外周側へ向かうほど小さくなっている。
【0061】
この内面窪み部21ddは、上記の開口21dbと連通している。これにより内面窪み部21ddは、中央部21dの中央外周面21daにて開口し、駆動輪セグメント21bを内周側から外周側へと貫通している。
【0062】
図3に示されるように、駆動輪セグメント21bには、貫通孔21fが設けられている。この貫通孔21fは、駆動輪歯21ebの歯幅方向(幅方向:図中X方向)に駆動輪セグメント21bを貫通している。貫通孔21fは、歯溝21eaの部分ではなく、駆動輪歯21ebの部分に設けられている。
【0063】
固定部21cは、駆動輪セグメント21bを駆動輪本体21aに固定している。固定部21cは、固定ピン21caと、ボルト21cbと、筒状部材21ccと、環状部材21cdとを有している。
【0064】
固定ピン21caは、小径部21ca1と、大径部21ca2とを有している。大径部21ca2は、小径部21ca1の外径よりも大きな外径を有している。大径部21ca2は、小径部21ca1の一方端側に設けられている。大径部21ca2は、小径部21ca1の外周側にフランジ状に張り出している。小径部21ca1は、他方端に雌ネジ部を有している。
【0065】
小径部21ca1の外径は駆動輪本体21aの貫通孔21acの直径よりも小さく設定されている。一方、大径部21ca2の外径は、駆動輪本体21aの貫通孔21acの直径よりも大きく設定されている。また大径部21ca2の外径は、駆動輪セグメント21bの貫通孔21fの直径よりも小さく設定されている。
【0066】
ボルト21cbは、雄ネジ部を有している。ボルト21cbの雄ネジ部は、固定ピン21caの雌ネジ部に螺合可能である。ボルト21cbの頭部の最大径は、駆動輪セグメント21bの貫通孔21fの直径よりも小さく設定されている。
【0067】
筒状部材21ccは、固定ピン21caの小径部21ca1の外径よりも大きな内径を有している。これにより固定ピン21caの小径部21ca1を筒状部材21ccに挿通することが可能である。
【0068】
筒状部材21ccの外径は、駆動輪本体21aの貫通孔21acの直径よりも大きく設定されている。また筒状部材21ccの外径は、駆動輪セグメント21bの貫通孔21fの直径よりも小さく設定されている。
【0069】
環状部材21cdの内径は、固定ピン21caの小径部21ca1の外径よりも小さく、かつボルト21cbの雄ネジ部の呼び径よりも大きく設定されている。環状部材21cdの外径は、筒状部材21ccの内径よりも大きく設定されている。環状部材21cdの外径は、駆動輪セグメント21bの貫通孔21fの直径よりも小さく設定されている。
【0070】
次に、上記の駆動輪本体21aへの駆動輪セグメント21bの組立状態について
図4〜
図6を用いて説明する。
【0071】
図5は、
図2の走行体における駆動輪の回転軸に平行な方向の断面斜視図である。
図6は、駆動輪本体の複数の凸部の各々が複数の駆動輪歯の各々に側面視において重畳していることを説明するための側面図である。
【0072】
図4に示されるように、複数の駆動輪セグメント21bが、駆動輪本体21aの外周部に取付られている。この取付状態において、駆動輪本体21aの凸部21abが、駆動輪セグメント21bの内面窪み部21ddに受け入れられている。
【0073】
上記取付状態において、駆動輪セグメント21bは、駆動輪本体21aの凹部21aaの底部21aa1および側面21aa2の双方に当接している。凸部21abの頂部は、開口21dbを通じて駆動輪セグメント21bから露出している。
【0074】
図5に示されるように、上記取付状態において、駆動輪本体21aの貫通孔21acと駆動輪セグメント21bの貫通孔21fとは互いにほぼ同心となっている。この貫通孔21acと貫通孔21fとに固定部21cが挿入されている。この固定部21cにより、駆動輪セグメント21bと駆動輪本体21aとは互いに固定されている。
【0075】
固定ピン21caの小径部21ca1は貫通孔21ac内を貫通して、貫通孔21acの一方側に位置する貫通孔21f内に延びている。一方、貫通孔21acの他方側の貫通孔21f内には、大径部21ca2が位置している。
【0076】
筒状部材21ccは、貫通孔21acから突き出した小径部21ca1の外周に嵌められている。環状部材21cdは、貫通孔21acから突き出した小径部21ca1の端部に配置されている。ボルト21cbの雄ネジ部は、環状部材21cdを貫通して、小径部21ca1の雌ネジ部に螺合されている。これにより、小径部21ca1の端部とボルト21cbの頭部との間にて環状部材21cdが挟持されている。この環状部材21cdにより、筒状部材21ccが小径部21ca1から抜けることが防止されている。
【0077】
大径部21ca2と筒状部材21ccとで貫通孔21acを挟み込むことにより、固定部21cは駆動輪本体21aから外れないように駆動輪本体21aに固定されている。また筒状部材21ccなどが貫通孔21acの一方側の貫通孔
21f内に位置し、かつ大径部21ca2が貫通孔21acの他方側の貫通孔
21f内に位置している。これにより、駆動輪セグメント21bは駆動輪本体21aから外れないように駆動輪本体21aに固定されている。
【0078】
図6に示されるように、上記取付状態において、駆動輪本体21aにおける複数の凸部21abの各々は、駆動輪セグメント21bにおける複数の駆動輪歯21ebの各々に側面視にて重畳するように配置されている。
【0079】
具体的には、複数の凸部21abの各々は、複数の駆動輪歯21ebの各々と駆動輪21の中心Oから見て径方向の同じ角度位置に配置されている。また複数の凸部21abの各々の角度ピッチαと複数の駆動輪歯21ebの各々の角度ピッチαとは同じである。
【0080】
また中央部21dにおける中央外周面21daの直径A(または半径)は、全周において駆動輪歯21ebの直径B(または半径)以下に設定されている。本実施の形態においては、中央外周面21daの直径A(または半径)は、全周において駆動輪歯21ebの直径B(または半径)よりも小さく設定されている。
【0081】
次に、本実施の形態の履帯装置10の構成について
図7を用いて説明する。
図7は、
図2の走行体に含まれる履帯装置の構成の一部を概略的に示す分解斜視図である。
図7に示されるように、上記の履帯装置10は、複数の履帯リンク1と、複数の履帯リンク1を連結する連結ピン7とを主に有している。
【0082】
複数の履帯リンク1の各々は、踏面2aおよび突起部2bの摩耗部を有している。本実施の形態においては、この摩耗部(踏面2aおよび突起部2b)が履帯リンク1に対して着脱可能に構成されている。以下、その構成について具体的に説明する。
【0083】
複数の履帯リンク1の各々は、リンク取付体2と、リンク本体3と、取付ピン4とを主に有している。リンク取付体2は、踏面2aおよび突起部2bからなる摩耗部を有している。踏面2aは、突起部2bの幅方向に位置している。リンク取付体2は、取付部2cをさらに有している。取付部2cには、貫通孔2caが形成されている。
【0084】
リンク本体3は、リンク取付体2とは別部品からなっている。リンク本体3は、履板部3TSとリンク部とが一体的に形成されており、1つの部品からなっている。履板部3TSは、無端状の履帯装置10の外側の面(接地面)に位置している。履板部3TSは、履帯装置10の外側に突出するグローサ3TSgを有している。
【0085】
リンク本体3は、履帯装置10の内側の面(非接地面)に凹部3gを有している。ここで非接地面とは、履板部3TSが配置される側とは反対側であって、
図1および
図2に示されるように駆動輪21、遊動輪22、下転輪24および上転輪25と当接する側の面である。凹部3gは、リンク取付体2を嵌め込むためのものである。この凹部3gに連通するように貫通孔3pa(第2のピン挿入用孔)と貫通孔3pbとが形成されている。貫通孔3paと貫通孔3pbとは凹部3gを挟んで互いに分離されている。貫通孔3paと貫通孔3pbとは同心となるように形成されている。
【0086】
リンク取付体2は、リンク本体3の凹部3gに非接触面側から嵌め込まれている。リンク取付体2は、取付部2c側からリンク本体3の凹部3gに嵌め込まれている。リンク取付体2がリンク本体3の凹部3gに嵌め込まれた状態で、リンク本体3の貫通孔3paと貫通孔3pbとの間に、取付部2cの貫通孔2caが位置している。また貫通孔3pa、貫通孔3pbおよび貫通孔2caは互いに同心に配置されており、かつ連通している。
【0087】
これらの貫通孔3pa、3pb、2caに取付ピン4が取付ピン4の軸方向に挿入されている。この取付ピン4により、リンク取付体2は、上記プレート部に対して突起部2bとは反対側においてリンク本体3に取付固定されている。
【0088】
この取付ピン4の抜け防止のために、制限部材(たとえばボルト5とナット6)が用いられている。取付ピン4の挿入は、取付ピン4をその軸方向に貫通孔3pa、3pb、2ca内に挿入することにより行われる。制限部材5、6は、リンク本体3に取り付けられた状態で、取付ピン4の軸方向に位置している。この制限部材5、6により取付ピン4の軸方向の移動が制限されている。これにより取付ピン4は、貫通孔3pa、3pb、2ca内に挿通された状態で、その貫通孔3pa、3pb、2caから取付ピン4の軸方向へ抜けることが防止されている。
【0089】
なおボルト5はリンク本体3の貫通孔3a3内に非接触面側から挿入されている。貫通孔3a3から接触面側へ突き出したボルト5の先端にはナット6が螺合されている。これによりボルト5およびナット6がリンク本体3に固定されている。
【0090】
上記の取付ピン4を挿抜することにより、摩耗部(踏面2aおよび突起部2b)を有するリンク取付体2をリンク本体3に対して着脱可能である。また上記のリンク取付体2のリンク本体3に対する着脱は、履帯装置10を構成する履帯リンク1同士の結合を解くことなく可能である。
【0091】
また履帯リンク1同士は、連結ピン7により互いに連結可能に構成されている。以下、その構成について具体的に説明する。
【0092】
複数の履帯リンク1が1列に配置されている。複数の履帯リンク1の各々には、履帯リンク1の短手方向(図中Y方向)の一方端側に1対の連結部3b、3cが、たとえば2セット設けられている。連結部3bには、貫通孔3baが設けられている。連結部3cには、貫通孔3caが設けられている。1対の連結部3b、3cの貫通孔3baと貫通孔3caとは、履帯リンク1の長手方向(図中X方向)に延びており、互いに同心となるように配置されている。
【0093】
複数の履帯リンク1の各々には、履帯リンク1の短手方向Yの他方端側にたとえば2つの連結部3dが設けられている。連結部3dには、貫通孔3daが設けられている。貫通孔3daは、履帯リンク1の長手方向Xに延びている。
【0094】
一方の履帯リンク1の1対の連結部3b、3cの間に、他方の履帯リンク1の連結部3dが配置されている。1対の連結部3b、3cの間に連結部3dが配置された状態で、1対の連結部3b、3cの各貫通孔3ba、3caの間に、連結部3dの貫通孔3daが位置している。また連結部3b、3cの各貫通孔3ba、3caと、連結部3dの貫通孔3daとは同心に配置されており、かつ連通している。
【0095】
これらの貫通孔3ba、3ca、3daに連結ピン7が連結ピン7の軸方向に挿通されている。これにより、連結ピン7により一方の履帯リンク1と他方の履帯リンク1とは互いに連結されている。この連結状態において、一方の履帯リンク1と他方の履帯リンク1とは連結ピン7を中心として互いに相対的に回転可能である。
【0096】
この連結ピン7の抜け防止のために、制限部材(たとえばボルト8とナット9)が用いられている。制限部材8、9は、リンク本体3に取り付けられた状態で、連結ピン7の軸方向に位置している。この制限部材8、9により連結ピン7の軸方向の移動が制限されている。これにより連結ピン7は、貫通孔3ba、3ca、3da内に挿通された状態で、その貫通孔3ba、3ca、3daから連結ピン7の軸方向へ抜けることが防止されている。
【0097】
上記のように複数の履帯リンク1が順次連結されることにより、無端状に履帯リンク1を連結することが可能である。また上記の制限部材8、9をリンク本体3から取り外し、かつ連結ピン7を連結部3b〜3dに対して抜くことにより、履帯リンク1同士の連結を解くことが可能である。
【0098】
次に、本実施の形態の走行体20における駆動輪21の歯溝21eaと履帯リンク1の突起部2bとの形状について
図8および
図9を用いて説明する。
【0099】
図8は、駆動輪の歯溝の構成を説明するための側面図(A)、履帯リンクの突起部の構成を説明するための側面図(B)、および駆動輪の歯溝と履帯リンクの突起部との構成を説明するための側面図(C)である。
【0100】
図8(A)に示されるように、駆動輪21は、外周部に、複数の駆動輪歯21ebと、複数の歯溝21eaとを有している。駆動輪歯21ebと歯溝21eaとが周方向に互いに隣接している。
【0101】
歯溝21eaは、側面視において、底部21ea1に位置する直線部RAと、その直線部RAの両側に位置する2つの円弧部RBとを有している。円弧部RBの端部と駆動輪歯21ebの頂部21eb1とは滑らかな曲線によって接続されている。この滑らかな曲線と頂部21eb1との境界が、歯溝21eaの溝端部CNである。
【0102】
図8(B)に示されるように、履帯リンク1の突起部2bは、側面視において、頂部2b1に位置する直線部RCと、その直線部RCの両側に位置する2つの円弧部RDとを有している。円弧部RDの端部と履帯リンク1の平坦な表面とは滑らかな曲線によって接続されている。この滑らかな曲線と履帯リンク1の平坦な表面との境界が、突起部2bの根元部BPである。
【0103】
図8(A)および
図8(B)に示されるように、側面視において、歯溝21eaの両側の溝端部CNを繋ぐ仮想の第1直線SL1に対する円弧部RBの溝端部CN側から底部21ea1側への立ち上がりの角度θ1は、突起部2bの両側の根元部BPを繋ぐ仮想の第2直線SL2に対する円弧部RDの根元部BP側から頂部2b1側への立ち上がりの角度θ2よりも小さい。
【0104】
図8(C)に示されるように、突起部2bは、歯溝21eaの深さd以上の高さhを有している。本実施の形態においては、突起部2bの高さhは、歯溝21eaの深さdよりも大きく設定されている。
【0105】
歯溝21eaの深さdは、歯溝21eaの底部21ea1から駆動輪歯21ebの刃先円までの寸法である。このため、歯溝21eaの深さdは、刃先円直径から歯底円直径を差し引いた寸法であり、駆動輪歯21ebの歯たけに等しい。また突起部2bの高さhは、履帯リンク1の踏面2aから踏面2aに対して垂直な方向の最大寸法である。
【0106】
上記のように突起部2bの高さhは、歯溝の深さdよりも大きいため、突起部2bが駆動輪歯21ebに噛合った状態において、突起部2bの頂部2b1は歯溝21eaの底部21ea1に当接する。
【0107】
また
図6に示されるように、駆動輪セグメント21bにおける中央外周面21daの直径Aは、全周において駆動輪歯21ebの直径(刃先円直径)B以下に設定されている。このため、上記の突起部2bの高さhと歯溝の深さdとの関係により、噛み合い時において、
図8(C)に示されるように履帯リンク1の踏面2aは、駆動輪21の中央外周面21daに当接しない。この状態では、履帯リンク1の踏面2aと駆動輪21の中央外周面21daとの間には隙間がある。この隙間の寸法は、突起部の高さhから駆動輪21の中央外周面21daの高さdaを差し引いた寸法である。ここで中央外周面21daの高さdaとは、側面視において歯溝21eaの底部21ea1から中央外周面21daまでの駆動輪21の径方向の寸法である。
【0108】
以上より
図9に示されるように、駆動輪歯21ebに噛み合うすべての突起部2bは、歯溝21eaの底部に当接する。また上記噛み合い状態において、履帯リンク1の踏面2aと駆動輪21の中央外周面21daとは当接せずに、踏面2aと中央外周面21daとの間には隙間が生じている。
【0109】
また履帯リンク1の突起部2bは、側面視において第1のリンク連結用孔(貫通孔3ba、3ca)と第2のリンク連結用孔(貫通孔3da)との中央に配置されている。具体的には、第1のリンク連結用孔(貫通孔3ba、3ca)の中心から突起部2bの一方端部までの距離L1と、第2のリンク連結用孔(貫通孔3da)の中心から突起部2bの他方端部までの距離L2とが等しくなるように突起部2bが配置されている。
【0110】
また
図3に示される駆動輪セグメント21bおよび
図7に示されるリンク取付体2との各々は、鍛造により形成された鍛造品であることが好ましい。本実施の形態の作業車両は大型であるため、通常であれば、履帯リンクおよび駆動輪は、鋳造により形成された鋳造品からなっている。
【0111】
しかしながら本実施の形態では、駆動輪セグメント21bは駆動輪本体21aとは別部品であるため、駆動輪セグメント21bを小型の部品で準備することができる。またリンク取付体2もリンク本体3とは別部品であるため、リンク取付体2を小型の部品で準備することができる。このように駆動輪セグメント21bおよびリンク取付体2を小型の部品で準備することができるため、駆動輪セグメント21bおよびリンク取付体2を鍛造品で準備することが可能となる。
【0112】
また駆動輪セグメント21bおよびリンク取付体2を鍛造品で準備できるため、これらの部材を鋳造品で準備する場合に比較して部品形状における精度を向上することができる。このため、突起部2bと駆動輪歯21ebとの噛み合いの精度を高めることもできる。
【0113】
また上記においては、履帯リンク1としてリンク本体3とリンク取付体2とが別部品からなる構成について説明したが、履帯リンク1はリンク本体とリンク取付体とが同一部品からなる構成を有していてもよい。
【0114】
図10および
図11は、それぞれ
図2の走行体に含まれる履帯装置の他の構成の一部を概略的に示す斜視図および履帯リンクの構成を概略的に示す平面図である。
図10および
図11に示されるように、この履帯リンク1は、連結部3b、3c、3dを有するリンク本体部と、突起部2bを有するリンク取付体とが一体化された構成を有している。
【0115】
連結部3b、3c、3dは履帯リンク1同士を連結するために用いられる部分である。また突起部2bは、駆動輪の駆動輪歯と噛合う部分である。
【0116】
この履帯リンク1では、1対の履帯リンク1のうちの一方の履帯リンク1の連結部3dが他方の履帯リンク1の連結部3b、3cの間に差し込まれる。この状態で、3つの連結部3b、3c、3dの各々の貫通孔内に1本の連結ピンが差し込まれる。
【0117】
また他方の履帯リンク1の連結部3dが一方の履帯リンク1の連結部3b、3cの間に差し込まれる。この状態で、3つの連結部3b、3c、3dの各々の貫通孔内に1本の連結ピンが差し込まれる。
【0118】
以上のようにして1対の履帯リンク1同士が互いに連結され、その連結が繰り返されることにより履帯装置が構成される。
【0119】
なお
図10、
図11においては突起部2bが1つの履帯リンク1に対して1つ設けられた構成について説明したが、
図2、
図3などに示される駆動輪21に合わせて履帯リンク1に2つの突起部が設けられていてもよい。
【0120】
次に、本実施の形態の作用効果について、
図12に示す比較例と対比して説明する。
図12は、比較例の走行体における駆動輪歯と履帯リンクの突起部との噛み合いの様子を説明するための側面図である。
図12に示されるように、この比較例においては、履帯リンク101の突起部102bの高さh1が駆動輪121の歯溝121eaの深さd1よりも小さく設定されている。なお歯溝121eaの深
さd1は、駆動輪歯121ebの歯たけd1に等しい。
【0121】
このため履帯リンク101の突起部102bが駆動輪121の駆動輪歯121ebに噛合う際には、駆動輪121の転動面121daは履帯リンク101の踏面102aに当接する。
【0122】
この場合、駆動輪121に対する履帯リンク101の巻き付き径は、(a)履帯リンク101
の踏面102aと駆動輪121の転動面121daとの接触と、(b)履帯リンク101の連結ピッチ(連結ピン107間の距離)と駆動輪歯121ebのピッチとの関係、のいずれかに依存する。このため、各部品の摩耗速度の違いから噛み合いピッチがずれる。その結果、
図9に示されるように一部の突起部102のみが駆動輪歯121ebと噛み合い、他の突起部102が駆動輪歯121ebと噛み合わないという、噛み合い不良が生じやすくなる。この噛み合い不良は異常摩耗の原因となる。
【0123】
これに対して本実施の形態によれば、
図8および
図9(C)に示されるように、突起部2bは、歯溝21eaの深さd以上の高さhを有している。これにより突起部2bの先端が歯溝21eaの底部に接触可能となる。このため、履帯リンク1の踏面2aと、その踏面2aに対向する駆動輪21の中央外周面21daとが互いに接触しないようにすることが可能となる。よって、履帯リンク1の踏面2aと駆動輪21の上記中央外周面21daとの間でのすべり摩耗を防止することができる。
【0124】
また上記のように履帯リンク1の踏面2aと駆動輪21の中央外周面21daとの間でのすべり摩耗を防止できるため、各部品の摩耗速度の違いに基づく噛み合いピッチのずれを抑制することができる。このため、噛み合い不良による異常摩耗を抑制することが可能となる。
【0125】
また
図9(A)に示されるように本実施の形態においては、駆動輪21の中央外周面21daは、全周において駆動輪歯21ebの刃先円直径B以下の直径Aを有している。これにより履帯リンク1の踏面2aと、その踏面2aに対向する駆動輪21の中央外周面21daとの接触を確実に防止することができる。このため、履帯リンク1の踏面2aと駆動輪21の上記中央外周面21daとの間でのすべり摩耗を確実に防止することができる。
【0126】
また
図3に示されるように本実施の形態においては、駆動輪セグメント21bは、駆動輪本体21aとは別部品からなり、かつ固定部21cにより駆動輪本体21aに取り付けられている。これにより駆動輪セグメント21bが破損、摩耗などした場合には、駆動輪セグメント21bを駆動輪本体21aから取り外して交換することができる。これにより駆動輪21全体を交換する必要はなくなる。
【0127】
また
図4に示されるように本実施の形態においては、駆動輪セグメント21bが駆動輪本体21aに取り付けられた状態において、駆動輪セグメント21bは駆動輪本体21aの凹部21aaに当接している。これにより駆動輪セグメント21bが履帯リンク1と噛み合って駆動する際に、駆動輪セグメント21bに履帯リンク1から作用する負荷(たとえば落下負荷、牽引負荷)を駆動輪本体21aの凹部21aaで受けることができる。このため、上記負荷が固定部21cに作用することを抑制でき、耐久性を向上させることができる。
【0128】
また
図4および
図5に示されるように本実施の形態においては、駆動輪セグメント21bの窪み部21ddは駆動輪セグメント21bの中央外周面21daにおいて開口している。これにより、駆動輪セグメント21bに作用した応力を開口21dbにて逃がすことができ、駆動輪セグメント21bの破損を抑制することができる。
【0129】
また
図6に示されるように本実施の形態においては、駆動輪本体21aの複数の凸部21abの各々は、複数の駆動輪歯21ebの各々に側面視において重畳するように配置されている。これにより、駆動輪本体21aの凸部21abと駆動輪歯21ebとを、固定部21cを用いて互いに固定することができる。
【0130】
また
図6に示されるように本実施の形態においては、固定部21cは、駆動輪歯21ebと駆動輪本体21aの凸部21abとを互いに固定している。これにより歯溝21eaを避けて固定部21cを配置することができるため、履帯リンク1の突起部2bが歯溝21eaに嵌ることを固定部21cは阻害しない。
【0131】
また
図8に示されるように本実施の形態においては、側面視において履帯リンク1の突起部2bは第1のリンク連結用孔(貫通孔3ba、3ca)と第2のリンク連結用孔(貫通孔3da)との中央に配置されている。これにより駆動輪21が順回転および逆回転のいずれ側に回転した場合でも、駆動輪21に対する履帯リンク1の相対すべりを抑制することができる。
【0132】
図9(B)に示されるように本実施の形態においては、履帯リンク1の突起部2bは、側面視において、突起部2bの頂部に位置する直線部RCと、その直線部RCを挟む2つの円弧部RDとを有している。これにより、駆動輪21の歯溝21ea内に嵌められたすべての突起部2bを駆動輪歯21ebと噛合わせることが可能となる。
【0133】
また
図9(A)および
図9(B)に示されるように本実施の形態においては、側面視において、歯溝21eaの両側の溝端部CNを繋ぐ仮想の第1直線SL1に対する溝端部CNから歯溝21eaの底部21ea1側への立ち上がりの角度θ1は、突起部2bの両側の根元部BPを繋ぐ仮想の第2直線SL2に対する根元部BPから突起部2bの先端部側への立ち上がりの角度θ2よりも小さい。これにより歯溝21eaはスムーズに突起部2bを受け入れることができ、スムーズな噛み合せを実現することができる。
【0134】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。