(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記機械パルプが、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、砕木パルプまたは晒ケミサーモメカニカルパルプである、請求項5に記載の乾式混合生成物。
前記強化製品が、複合材料;セッコウ;セメント;コンクリート製品;繊維ボード;ペイント;およびコーティングからなる群から選択される、請求項16に記載のプロセス。
【背景技術】
【0002】
ii)先行技術の説明
Shatkinら(Tappi Journal,13(5):9−16および13(6):57−69(2014))によって記述されるように、既存の材料を改善するために、または多種多様な用途および市場において様々な全く新しい製品をデザインおよび開発するために、木材、植物、海洋動物、藻類および細菌に由来するセルロースベースのナノまたは準ナノ上部構造(suprastructure)を単離かつ製品化するためのかなりの研究および開発活動がなされている。本明細書で定義され、セルロースフィラメント(CF)と呼ばれる、Huaら(CA2,799,123)によって開示されているセルロースナノフィラメント(CNF)は、好ましい実施形態において、100μmを超える長さおよびサブミクロン範囲内の幅を有する。CFは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第20130017394号明細書においてHuaらによって記述されるように、晒針葉樹クラフトパルプなどの木材または植物繊維のマルチパス高コンシステンシー精砕によって製造することができる。互いに、かつ親繊維から物理的に分離された高アスペクト比のセルロースフィブリルを含み、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)またはナノフィブリル化セルロース(NFC)が、フィブリル束または通常1マイクロメーター未満の短フィブリルのいずれかである点から、CFはMFC、NFC、またはナノセルロースなどの他のセルロースフィブリルとは構造的に異なる。CFは、他の機械的方法(Turbakら1983,米国特許第4374702号明細書;Matsudaら2001,米国特許第6183596号明細書;Choiら2010,欧州特許第1859082B1号明細書;Laukkanenら2013,米国特許出願公開第2013/0345416A1号明細書)を用いて製造されたミクロフィブリル化またはナノフィブリル化セルロース、またはセルロースナノフィブリルよりもかなり高い、1000を超え得る、高いアスペクト比のために、並外れた強化特性を示す。CFは一般に、水を添加した繊維懸濁液中で20%を超える、好ましくは30〜45%のコンシステンシーにて製造される(米国特許出願公開第2013/0017394号明細書)。MFC/NFCを製造する大部分の他の方法は一般に、10%未満、好ましくは1〜6%の範囲の繊維コンシステンシーにて水性懸濁液中で行われる(Matsudaら2001,米国特許第6183596号明細書;米国特許第6214163号明細書;Liら2012,CN2012−10282759;Brasら2014,国際公開第2014/001699A1号パンフレット;Saitoら2006 Biomacromolecules,7:1687−1691;2007 Biomacromolecules,8:2485−2491;2009 Biomacromolecules,10:1992−1996;Da Sil Va Perezら2010 TAPPI Nano2)。低コンシステンシーで製造される、結果として得られるMFC/NFCの最終生成物は、ゲル状構造(Turbakら1983,米国特許第4374702号明細書)を有するのに対して、20%を超えるコンシステンシーで製造されたCFは、半乾燥木材パルプ様外観を有するが、製造後にかなりの量の残留水を含有する。
【0003】
理想的には、市販のナノセルロース系または準ナノセルロース系材料は、輸送費用を減らすため、かつ長い製品貯蔵寿命を提供するために、完全な乾燥状態で最終使用者の元に輸送されるべきである。しかしながら、水性媒体中でのその分散性を下げることなく、乾燥生成物を製造する難しさは、その製品化への成功に対する深刻な障害になる。すべてのセルロースミクロフィブリルおよびナノフィブリルに共通のこの乾燥問題は一般に、Dinizら(Wood Sc.Tehcnol,37:489−494,2004)によって記述されるように機械的性質を損なう、いわゆる角質化(hornification)現象によるものである。木材パルプ製造の分野において、角質化は、木材パルプ繊維が最初に乾燥された後の繊維モフォロジーの変化を表す。角質化は、不可逆的水素結合(H結合)の形成および/またはラクトン架橋の形成を含む多くの因子に起因する。これらの材料が従来の低および中コンシステンシーパルパーを使用して水中で再混合された場合には、角質化は、自己集合によってフィブリルの凝集を引き起こし、したがって、未乾燥(never−dried)セルロースフィブリルの擬似または真のナノメートル寸法の回復に対する障害となる。実際に、乾燥フィブリルの高密度なアセンブリは、透水を妨げ、互いの構造を保持する水素結合の破壊を妨げる。
【0004】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)またはナノフィブリル化セルロース(NFC)の角質化を防ぐために、いくつかの物理化学的アプローチ:(1)超臨界乾燥、噴霧乾燥または凍結乾燥、(2)水素結合を防ぐ、または低減する添加剤の使用、(3)化学修飾による、MFC/NFCへのより高い疎水性の付与、または(4)抄紙機での薄いウェブの形成;などが用いられる。
【0005】
最初のカテゴリーにおいて、Turbakらによって、ミクロフィブリル化セルロースが二酸化炭素臨界点乾燥によって乾燥される、ミクロフィブリル化セルロースの製造方法が開示されている(米国特許第4,374,702号明細書および米国特許第4,378,381号明細書)。この超臨界乾燥プロセスは、溶媒交換のために複雑となり、費用が高く、量産化は非現実的であると考えられる。
【0006】
オーブン乾燥、凍結乾燥、超臨界乾燥、および噴霧乾燥方法を用いて、ミクロフィブリル化またはナノフィブリル化セルロース懸濁液を乾燥させた(Vartiainenら,2011,Cellulose,18:775−786およびPengら,2012,Cellulose19(1):91−102)。MFCまたはNFCの角質化のために、これらの乾燥プロセス中にMFCまたはNFCの細かい、もしくは粗い凝集体が形成された。しかしながら、MFCまたはNFCの乾燥凝集体の水への再分散性は非常に低かった。
【0007】
添加剤のカテゴリーにおいて、Herrick(米国特許第4481076号明細書)によって、セルロースとフィブリルとの水素結合を実質的に防ぐことができる添加剤を使用して、再分散性ミクロフィブリル化セルロースを製造する方法が開示されている。その添加剤は、ショ糖、グリセリン、エチレングリコールおよびプロピレングリコール、糖誘導体、デンプン、リン酸またはホウ酸のアルカリ金属塩などの無機塩であり得る。それぞれの添加剤は、MFCの乾燥重量に対して一般に50〜100%の高い量で使用しなければならない。これらの化合物は、水溶性コーティングの厚い層でそれらを覆うことによって、水の除去中のフィブリルの合体を低減し、水に戻すと同時に溶解し、フィブリルを放出する。粘度などの未乾燥MFCの性質は、このアプローチで一部回復させることができるが、必要とされる添加剤の量が非現実的に多く、ミクロフィブリル化セルロース生成物にかなりの余分な費用が加わる。
【0008】
Nuopponenら(米国特許第0000855A1号明細書)は、ナノフィブリル化セルロースパルプの製造プロセスにおいて、スチルベン、クマリンおよびピラゾリン化合物などの光学増白剤(OBA)を加えて、セルロースとフィブリルとの水素結合を抑え、乾燥プロセス中に生じる繊維−水および繊維‐繊維結合を低減することによって、分散的な効果を得ることもできる。光学増白剤を含有する乾燥ナノフィブリル化セルロースパルプは、光学増白剤を含まないものよりも良く分散されることが示されたが、光学増白剤を含有する乾燥ナノフィブリル化セルロースパルプの分散性の程度は明らかではない。さらに、光学増白剤は非常に高価な添加剤である。
【0009】
化学修飾によりMFC/NFCをより疎水性にするアプローチにおいて、Gardnerら(米国特許第8,372,320B2号明細書)は、乾燥セルロースナノフィブリルを製造する乾燥方法であって、セルロースナノフィブリルの水性懸濁液を噴霧状にし、乾燥装置の乾燥チャンバ内に噴霧状水性懸濁液を導入することを含む方法を開示している。その水性懸濁液は、表面張力の低減によって、セルロースナノフィブリルの凝集を防ぐ、ケイ酸ナトリウム、フルオロシラン、またはエタノールなどの表面改質剤を含み得る。
【0010】
Laukkanenら(国際公開第2012/107642A1号パンフレットおよび米国特許出願公開第2013/0345416A1号明細書)は、水を除去するための有機溶媒交換に続いて乾燥プロセスを用いた、乾燥ナノフィブリルセルロースの製造方法を記述している。大量の有機溶媒が必要とされることから、乾燥ナノフィブリルセルロースを得るためのこのプロセスは、環境に優しくなく、経済的にも実行不可能である。
【0011】
さらに、Brasら(国際公開第2014/001699A1号パンフレット)は、水性媒体に分散されるのに適したフィブリル化セルロース粉末の製造プロセスを記述している。このプロセスにおいて、塩化ナトリウム、塩化カリウムおよび塩化リチウムの群からの一価塩(5〜20mmol/l)がフィブリル化セルロース懸濁液に添加され、凍結乾燥工程がこれに続く。フィブリル化セルロース懸濁液は、酵素的処理またはカルボキシメチル化などの化学的処理によって予備処理される。
【0012】
Eyholzerら(Cellulose,17:19−30,2010)およびCashら(米国特許第6,602,994B1号明細書)は、カルボキシル基などの様々な基を導入して、ミクロフィブリル化またはナノフィブリル化セルロースを誘導体化する方法を開示している。しかしながら、誘導体化には、多量の試剤を使用する必要があり、乾燥後に誘導体化MFCを水中に再分散することができることは立証されていない。
【0013】
添加剤を使用する必要なく、またはセルロースを誘導体化する必要なく、乾燥および再分散性CFを製造する方法が開示されている(参照により本明細書に組み込まれる、Dorrisら,国際公開第2014/071523A1号パンフレット)。その方法は、高速抄紙機で薄いウェブを形成し、乾燥させることを含む。この方法には、抄紙機、非常に高価な一台の装置が必要である。このような多くの機械がこの目的に利用されておらず、かつ利用可能ではあるが、これらの抄紙機の多くは最終的に取り除かれる。さらに、薄いウェブを形成するために、その生成物を再希釈する必要のある工程は、乾燥費用に加わる余分な工程である。
【0014】
したがって、水へのその再分散性を失うことなく、完成紙料、複合材料、または他の材料の製紙におけるその優れた強化能力を損なうことなく、セルロースナノフィラメントまたはセルロースフィラメント(CF)を乾燥させるための対費用効果が高い方法を開発することが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の開示内容には、天然繊維によって保持された乾燥および水再分散性フィブリル化セルロースフィラメントが化学添加物不含および誘導体化不含で製造されることが記載されている。
【0016】
本明細書に記載の一態様に従って、再分散性セルロースフィラメントおよび担体繊維を含む乾式混合生成物が提供され、その乾式混合生成物は、重量比約1/99〜約99/1、湿度30重量%未満で再分散性セルロースフィラメント/担体繊維を含み、かつ再分散性セルロースフィラメントは、担体繊維と物理的に結合され、可逆的に担体繊維と一体化され、水相に再分散性セルロースフィラメントを再分散することが可能となる。
【0017】
他の態様に従って、本明細書に記載の乾式混合生成物が提供され、再分散性セルロースフィラメント/担体の重量比は約1/99〜約50/50である。
【0018】
他の態様に従って、本明細書に記載の乾式混合生成物が提供され、再分散性セルロースフィラメント/担体の重量比は約10/90〜約30/70である。
【0019】
他の態様に従って、本明細書に記載の乾式混合生成物が提供され、その湿度は20重量%未満である。
【0020】
他の態様に従って、本明細書に記載の乾式混合生成物が提供され、その担体繊維は、機械パルプ、例えばサーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、砕木パルプまたは晒ケミサーモメカニカルパルプまたは化学パルプ、例えば晒針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、非晒クラフトパルプおよび/または亜硫酸パルプから選択される。
【0021】
本明細書に記載の他の態様に従って、再分散性セルロースフィラメントおよび担体繊維を含む乾式混合生成物を製造するプロセスであって、セルロースフィラメントを提供する工程;担体繊維を提供する工程;セルロースフィラメント、担体および水を混合して、混合セルロースフィラメント/担体懸濁液を生成する工程;混合セルロースフィラメント/担体懸濁液を濃縮して、セルロースフィラメント/担体混合パルプを生成する工程;セルロースフィラメント/担体混合パルプを毛羽立たせて、混合セルロースフィラメント/担体フラフ(fluff)を生成する工程;従来のパルプ乾燥プロセスにおいて混合セルロースフィラメント/担体フラフを乾燥させて、乾式混合生成物を生成する工程であって、セルロースフィラメントと担体の重量比が約1/99〜約99/1であり、かつ乾式混合生成物が湿度30重量%未満を有する工程;を含むプロセスが提供される。
【0022】
本明細書に記載のプロセスの他の態様に従って、濃縮工程後に、セルロースフィラメント/担体混合パルプは、固形分20〜50重量%のコンシステンシーである。
【0023】
本明細書に記載のプロセスの他の態様に従って、セルロースフィラメントと担体の重量比は約1/99〜約50/50である。
【0024】
本明細書に記載のプロセスの他の態様に従って、セルロースフィラメントと担体の重量比は約10/90〜約30/70である。
【0025】
本明細書に記載のプロセスの他の態様に従って、従来のパルプ乾燥機は、フラッシュ乾燥機、噴霧乾燥機および蒸気乾燥機からなる群から選択される。
【0026】
本明細書に記載のプロセスの他の態様に従って、従来のパルプ乾燥機は、フラッシュ乾燥機である。
【0027】
明細書に記載の他の態様に従って、強化紙、薄織物および/または包装用品を製造するプロセスであって、本明細書に記載の乾式混合生成物を提供する工程;製紙用パルプを提供する工程;乾式混合生成物からのセルロースフィラメントを水に再分散させて、混合生成物懸濁液を生成する工程;製紙用パルプを水で再パルプ化して、再パルプ化懸濁液を製造し、混合生成物懸濁液を再パルプ化懸濁液と合わせて、強化紙スラリーを製造し、その強化紙スラリーを沈殿させて、強化紙、薄織物および/または包装用品を製造する工程;を含むプロセスが提供される。
【0028】
本明細書に記載のプロセスの他の態様に従って、混合生成物懸濁液と再パルプ化懸濁液は、固形分の重量比1/99〜99/1にて合わせられる。
【0029】
強化製品を製造するプロセスの他の態様に従って、プロセスは、本明細書に記載の乾式混合生成物を提供する工程と、強化製品の出発原料と乾式混合生成物を混合する工程と、を含む。
【0030】
本明細書に記載のプロセスの他の態様に従って、強化製品は、複合材料;セッコウ;セメント;コンクリート製品;ファイバーボード;ペイント;およびコーティングからなる群から選択される。
【0031】
本明細書に記載のプロセスの他の態様に従って、混合生成物は、出発原料と共に懸濁液中にあり、固形分重量比1/99〜99/1で合わされる。
【0032】
意外なことに、セルロースフィラメントの分散液中の担体パルプが、乾燥プロセス中にセルロースフィラメント間の不可逆的水素結合の形成を抑えることから、担体パルプ中の乾燥セルロースフィラメントは、穏やかな機械攪拌下にて水中でのその分散性を失わない。
【0033】
さらに意外なことに、開示の方法から生成された再分散性セルロースフィラメント/担体の乾燥混合生成物は、未乾燥セルロースフィラメントと同様な性質を有し、CFが適用される、完成紙料、複合材料または他の材料の製紙において同じ、または優れた強化能力を有する。
【0034】
本明細書に記載の乾燥および水再分散性セルロースフィラメントは、化学的および機械的パルプ化などのいずれかの方法によって製造されたすべての木材および植物繊維を含む、天然繊維を含有する。セルロースフィラメントと天然繊維の比は、約1/99〜約99/1、好ましくは約1/99〜約50/50、最も好ましくは約10/90〜約30/70の範囲である。担体天然繊維中の乾燥および水再分散性セルロースフィラメントは、他の添加剤を含有せず、誘導体化を含まない。
【0035】
本明細書に記載の原料は、晒針葉樹クラフトパルプなどの木材または植物繊維のマルチパス高コンシステンシー精砕によって、Huaらの米国特許出願公開第20130017394号明細書に記載の方法によって製造される未乾燥セルロースフィラメントである。
【0036】
乾燥および水再分散性フィブリル化セルロースフィラメントは、平均長約200μm〜約2mm、平均幅30nm〜約500nm、および平均アスペクト比約200〜約5000を有する。
【0037】
乾燥および水再分散性CFを製造する方法は、未乾燥CFの水懸濁液をセルロース繊維パルプと混合し、続いてパルプマシーンのドライヤー缶またはフラッシュ乾燥機などの装置においてさらに処理および乾燥することができるように、適切な濃度へと濃縮することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の開示以前に、乾燥プロセス中にマクロフィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロースまたはフィブリル化セルロース材料の添加剤として天然繊維は使用されていなかった。天然繊維によって保持された乾燥および水再分散性フィブリル化セルロース材料は報告されていない。
【0040】
図1に示すように一定の貯蔵期間後に、未乾燥(湿潤)セルロースフィラメントでは、暗色の菌類が発生し、その物理的強度が損なわれ得る。
【0041】
限定されないが、空気乾燥、フラッシュ乾燥、噴霧乾燥、回転式空気乾燥などの従来のすべてのパルプ乾燥法は、高コンシステンシーの大量のセルロースフィラメントを乾燥するには大きな欠点を有する。
図2〜3に示すCF凝集塊から、これらの乾燥法で製造された乾燥CFは、水性システム中で一部のみ再分散される。したがって、従来の乾燥手法での乾燥セルロースフィラメントの強化力は、未乾燥セルロースフィラメントよりもかなり低い。
【0042】
乾燥セルロースフィラメント材料は、多くの潜在的用途において必要とされる。Huaら(米国特許出願公開第20130017394号明細書)の方法から製造された未乾燥セルロースフィラメントと比較すると、乾燥セルロースフィラメントは、貯蔵寿命が長く、輸送コストが低い。
【0043】
図4は、本発明の方法の一実施形態のプロセスの流動的ダイアグラム(fluid diagram)を例示する。セルロースフィラメント20はHuaらの方法に従って製造される。熱水21および機械攪拌が、セルロースフィラメント22の懸濁液の調製に一般に必要とされる。
【0044】
一般に天然繊維またはパルプである担体30もまた、乾燥または懸濁状態で提供される。一般に、担体懸濁液32が調製される。セルロースフィラメント懸濁液22および担体懸濁液32を混合する。次いで、懸濁液からいくらかの水54を除去し、湿潤セルロースフィラメント/担体懸濁液42を濃縮する。濃縮されたセルロースフィラメント/担体パルプ52を毛羽立たせる60。次いで、毛羽立たせたセルロースフィラメント/担体62を従来のパルプ乾燥機で乾燥させ70、それによって乾燥セルロースフィラメント/担体生成物72が生成される。
【0045】
記載の本発明の開示内容において、天然繊維によって保持された乾燥および水再分散性フィブリル化セルロースフィラメントが製造され、化学添加物を含まず、誘導体化を含まない。
【0046】
意外なことに、セルロースフィラメントの分散液中の天然繊維が、乾燥プロセス中にセルロースフィラメント間の不可逆的水素結合の形成(角質化)を抑えることから、開示の方法から製造された担体パルプ中の乾燥セルロースフィラメントは、穏やかな機械攪拌下での水中でのその分散性を失わないことが発見された。
【0047】
さらに意外なことに、開示の方法から製造された乾燥セルロースフィラメントは未乾燥セルロースフィラメントと類似しており、かつCFが適用される、完成紙料、複合材料または他の材料の製紙において、その優れた強化能力を失わない。
【0048】
本発明のプロセスから製造された乾燥および水再分散性セルロースフィラメントは、一定量の天然繊維を含有する。木材および植物繊維などのいずれかのタイプの天然繊維を使用して、乾燥プロセス中のセルロースフィラメント間の不可逆的水素結合の形成を抑えることができる。セルロースフィラメントと天然繊維の比は、1/99〜99/1、好ましくは約1/99〜約50/50、最も好ましくは約10/90〜約30/70の範囲であった。担体天然繊維中の乾燥および水再分散性セルロースフィラメントは、他の添加剤を含有しない。
【0049】
本明細書で使用される未乾燥セルロースフィラメントは、平均長約200μm〜約2mm、平均幅30nm〜約500nm、および平均アスペクト比約200〜約5000を有し、米国特許出願公開第20130017394号明細書に記載のように、晒針葉樹クラフトパルプなどの木材または植物繊維のマルチパス高コンシステンシー精砕によって製造される。このCFは、先行技術に記載の他の方法を用いた、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)またはナノフィブリル化セルロース(NFC)などの他のセルロースフィブリルと構造的にかなり異なる。例えば、セルロースフィラメントの長さおよびアスペクト比は、先行技術(米国特許第8,372,320B2号明細書、米国特許第4,378,381号明細書)に記載の他の方法を用いて製造されたMFCおよびNFCよりもかなり高い。フィブリル化セルロース材料の製造において、機械的手段を用いて製造された他のフィブリル化セルロース材料などのセルロースフィラメントは、寸法値(dimensional value)の分布を含むが、単一の寸法値を有する均一な材料ではないことが理解される。
【0050】
本明細書に記載の一態様に従って、乾燥セルロースフィラメントは、紙製品、複合材料、セメント、ペイントおよびコーティングの強化など、多くの用途において使用するために、水溶液/懸濁液に容易に再分散することができる。
【0051】
本明細書に記載のさらに他の態様に従って、セルロースフィラメント間の不可逆的水素結合を抑えるために使用される天然繊維としては、化学的および機械的パルプ化法などの既知の方法によって製造される、すべての木材および植物繊維が挙げられる。
【0052】
本明細書に記載のさらに他の態様に従って、化学添加物を含有せず、かつ誘導体化を含まない、乾燥セルロースフィラメントが提供される。
【0053】
本明細書に記載の一態様に従って、乾燥再分散性セルロースフィラメント(CF)/担体混合生成物を製造する方法が提供され、CFは水中でのその分散性を維持し、したがってCFが適用される、完成紙料、複合材料または他の材料の製紙において、その優れた強化能力を維持する。
【0054】
この方法は、(i)より低いコンシステンシーで未乾燥セルロースフィラメントを分散する工程と、(ii)一定量の天然パルプ繊維を分散し、分散パルプ繊維を分散セルロースフィラメント懸濁液と混合し、または乾燥天然繊維を分散セルロースフィラメント懸濁液に添加し、さらにセルロースフィラメントと天然繊維の混合物を分散させる工程と、(iii)セルロースフィラメントと天然繊維の一定量の混合物スラリーをコンシステンシー約20〜50%にプレス/増粘する工程と、(iv)セルロースフィラメントと天然繊維の一定量の増粘混合物を毛羽立たせる工程と、(v)セルロースフィラメントと天然繊維の一定量の毛羽立った混合物を乾燥させる工程と、を含む。
【0055】
他の実施形態に従って、セルロースフィラメントと天然繊維の比が、1/99〜99/1、好ましくは約1/99〜約50/50、最も好ましくは約10/90〜約30/70の範囲である、本明細書に記載の方法が提供される。
【0056】
他の実施形態に従って、いずれかの工業的パルプ乾燥プロセスによって、好ましくはフラッシュ乾燥機、噴霧乾燥機または蒸気乾燥機によって、最も好ましくはフラッシュ乾燥機によって、セルロースフィラメントと天然繊維の一定量の毛羽立った混合物を乾燥させる工程をさらに含む、本明細書に記載の方法が提供される。
【0057】
他の実施形態に従って、乾燥セルロースフィラメントと天然繊維の混合物中の乾燥セルロースフィラメントを、セルロースフィラメントと天然繊維の混合物中の乾燥セルロースフィラメントの割合に応じて、実験室用ブリティッシュディスインテグレーター、ヘリコパルパー、ハイドロパルパー、パイロットおよび工業用パルパー、リファイナーなど、実験室規模および工業規模の分散、パルプ化および/または精砕装置によって、水性懸濁液中に容易に再分散することができる、本明細書に記載の方法が提供される。
【0058】
他の実施形態に従って、乾燥前および後に、セルロースフィラメントと天然繊維の再分散混合物から製造されるハンドシートが製造される、本明細書に記載の方法が提供される。
【0059】
他の実施形態に従って、セルロースフィラメントと天然繊維の混合物中の乾燥セルロースフィラメントが、弱いパルプの強化材として使用される、本明細書に記載の方法が提供される。
【0060】
他の実施形態に従って、乾燥前および後に、セルロースフィラメントと天然繊維ならびに他の弱いパルプの再分散混合物から製造されるハンドシートが製造される、本明細書に記載の方法が提供される。
【0061】
他の実施形態に従って、乾燥前および後の両方で、製造されたハンドシートの物理的強度が測定され、比較される、本明細書に記載の方法が提供される。
【0062】
他の実施形態に従って、本明細書に記載の方法が提供され、その方法において、乾燥セルロースフィラメントと天然繊維の混合物中の乾燥セルロースフィラメントの強化力は、未乾燥セルロースフィラメントに匹敵することがその結果から示される。
【0063】
他の態様に従って、本明細書に記載の天然繊維によって保持される乾燥および水再分散性セルロースフィラメントは、CF材料の輸送、貯蔵またはその後の使用に関して利点を有する。
【0064】
さらに他の態様に従って、紙、薄織物および板紙などのセルロース繊維製品を強化するための添加剤として水性媒体中に再分散する場合に、本明細書に記載のセルロースフィラメントと天然繊維の乾燥および水再分散性混合物が、複合材および包装材の製造または他の用途のために使用される。他の消費者製品または工業製品を強化するために添加剤として、水性媒体中に再分散して、それらを使用することもできる。
【0065】
別段の指定がない限り、このセクションおよび他のセクションに記載の定義および実施形態は、当業者によって理解されるように、それらが適している、本明細書における本発明の開示内容のすべての実施形態および態様に適用可能であることが意図される。
【0066】
本発明の開示内容で使用される、「1つ(a)」、「1種(an)」、および「その(the)」の単数形は、内容に明確に示されていない限り、複数形を含む。
【0067】
「更なる」または「第2」成分を含む実施形態において、本明細書で使用される第2成分は、他の成分または第1成分と異なる。「第3」成分は、他の成分、第1および第2成分と異なり、さらに列挙される成分、もしくは「更なる」成分は同様に異なる。
【0068】
本明細書で使用される「約」および「およそ」などの程度を表す用語は、最終結果が著しく変化しないように、修飾語の偏差の適正な量を意味する。程度を表すこれらの用語は、それが修飾する用語の意味をこの偏差が否定しない場合には、修飾語の少なくとも±5%または少なくとも±10%の偏差を含むように解釈されるべきである。
【0069】
本明細書で使用される「セルロースフィラメント」または「CF」などの用語は、高いアスペクト比、例えば少なくとも約200の平均アスペクト比、例えば平均アスペクト比約200〜約5000、ナノメートル範囲の平均幅、例えば、平均幅約30nm〜約500nmおよびマイクロメートル範囲またはそれを超える平均長さ、例えば約10μmを超える平均長さ、例えば平均長さ約200μm〜約2mmを有するセルロース繊維から得られるフィラメントを意味する。かかるセルロースフィラメントは例えば、機械的手段のみ、例えば米国特許出願公開第2013/0017394号明細書に開示の方法を使用したプロセスから得ることができる。例えば、かかる方法から、例えば、少なくとも約20重量%の固体濃度(またはコンシステンシー)にて操作される従来の高コンシステンシーリファイナーを使用して、化学添加物を含有せず、かつ誘導体化を含み得ないセルロースフィラメントが生成される。これらの強いセルロースフィラメントは、例えば、適切な混合条件下にて、水性媒体中で再分散性である。例えば、セルロースフィラメントがそれから得られるセルロース繊維は、限定されないが、北部晒針葉樹クラフト(NBSK)などのクラフト繊維であり得るが、他の種類の適切な繊維も適用可能であり、その選択は当業者によってなされ得る。
【0070】
「未乾燥」CFは、そのセルロースフィラメントが全く乾燥されたことがなく、かつHuaら(米国特許出願公開第20130017394号明細書)の方法で木材または植物繊維から製造した後に、固形分60重量%までの湿潤段階に依然としてある状態として定義され、適切な処理によって、乾燥状態の再分散性セルロースフィラメントとなり得ることに留意されたい。
【0071】
「担体」という用語は、パルプ繊維の好ましい実施形態において一般に天然である繊維と定義される。そのパルプは木材または他の植物由来のパルプであることができ、CTMP、TMPまたはBCTMPなどの機械パルプ、またはNBSKなどの化学パルプであり得る。
【0072】
「物理的に連結された」という用語は本明細書において、再分散性セルロースフィラメントと担体の間の結合を意味するように使用される。
【0073】
「可逆的に一体化された」という用語は本明細書において、セルロースフィラメントと担体の間の「物理的連結」または「一体化」として定義され、穏やかな攪拌を含む。
【0074】
本明細書に記載のフィラメントに関して本明細書で定義される「乾燥」という用語は、セルロースフィラメントと天然繊維の混合物の固形分が70重量%以上、含水率が30重量%以下であることを意味する。特に好ましい実施形態において、セルロースフィラメントと天然繊維の混合物の固形分は80重量%以上、含水率が20重量%以下である。
【0075】
本明細書で定義される「水再分散性」という用語は、周囲温度または高温の水性媒体中で機械攪拌した場合に適切な水分散液を形成する、乾燥セルロースフィラメントの能力を意味する。
【0076】
「同様な強化力および/または強度特性」という表現は本明細書において、同量の未乾燥CFと比較して、紙の状態で、本明細書に記載のCFの前記強化力および/または強度特性の85%以上が得られることを示す、比較表現であると定義される。
【0077】
「添加剤を含有しない」という用語は本明細書において、角質化を減らすために、添加剤で処理されていないCFを説明するために使用される。他のセルロースフィブリルと共に使用される添加剤としては、ショ糖、グリセリン、エチレングリコール、デキストリン、カルボキシメチルセルロースまたはデンプン(米国特許第4481076号明細書)が挙げられる。
【0078】
「コンシステンシー」という用語は本明細書において、水、植物繊維またはセルロースフィラメント(CF)の混合物中の植物繊維またはセルロースフィラメント(CF)の重量パーセンテージとして定義される。
【0079】
「坪量」という用語は本明細書において、前記シート1平方メートル(m
2)当たりのパルプ繊維およびCFの重量(グラム(g))として定義される。
【0080】
オーブン乾燥(od)基準の重量とは、水の重量を排除した重量を意味する。CFなどの湿った材料に関しては、そのコンシステンシーから計算される材料の水不含重量である。
【0081】
本発明のプロセスは、限定されないが、以下の基本手順によって説明される。
【0082】
基本手順A:未乾燥CFの分散
オプション1−実験室での未乾燥CFの分散
別段の指定がない限り、PAPTAC Standard C.4およびC.5に基づいて、標準パルプディスインテグレーターを使用して、未乾燥CFを実験室で分散させた。晒針葉樹クラフトパルプのマルチパス高コンシステンシー精砕から製造された、平均長さ約200μm〜約2mm、平均幅30nm〜約500nmおよび平均アスペクト比約200〜約5000およびコンシステンシー20〜60%を有する、オーブン乾燥(od基準)CF24gをブリティッシュディスインテグレーター(British Disintegrator)において、その温度を80℃に上げておいた既知量の脱イオン水(DI H
2O)でコンシステンシー1.2%に希釈した。CFスラリーを3000rpmで15分間混合して、分散液を形成し、次いでそれをディスインテグレーターから取り出した。次いで、分散されたCFを所望のコンシステンシーに希釈した。
【0083】
オプション2−パイロットパルパーでの未乾燥CFの分散
別段の指定がない限り、基本手順A、オプション1に記載のCFを120kg(od基準)まで、パイロット抄紙機Press Broke Pulper(Beloit Vertical Tri−Dyne Pulper,Model No.5201,Serial No.BC−1100)またはDry−end Pulperにおいて、その温度を約50℃に上げておいた既知量の水道水でコンシステンシー3.0〜6.0%に希釈した。CFスラリーを480rpmで15分間混合して、分散液を形成し、パルパーからそれを取り出し、貯蔵タンクに保管した。
【0084】
基本手順B:パルプ砕解
オプション1−実験室でのパルプ担体の分散
別段の指定がない限り、PAPTAC Standard C.4およびC.5に基づいて、標準パルプディスインテグレーターを使用して、パルプを実験室で分散させた。砕解前に、オーブン乾燥(od基準)パルプ24gを最初に、少なくとも4時間水に浸し、ブリティッシュディスインテグレーター(British Disintegrator)において既知量の脱イオン水(DI H
2O)でコンシステンシー1.2%に希釈した。パルプが繊維束を含まなくなるまで、3000rpmでディスインテグレーターを起動させた。通常、砕解時間は25分を超えない。
【0085】
次いで、CF/パルプ担体比に従って、分散パルプ担体懸濁液を、予め分散されたCF懸濁液と混合した。CF/パルプ担体の比は、0/100、10/90、20/80、30/70、40/60、50/50、60/40、70/30、80/20、90/10、100/0と様々であった。
【0086】
オプション2A−パイロットパルパーでのパルプ担体の分散
別段の指定がない限り、パルプを120kg(od基準)まで、パイロット抄紙機Press Broke Pulper(Beloit Vertical Tri−Dyne Pulper,Model No.5201,Serial No.BC−1100)またはDry−end Pulperにおいて、その温度を約50℃に上げておいた既知量の水道水でコンシステンシー4.0〜10.0%に希釈した。パルプスラリーを480rpmで15分間混合して、分散液を形成し、パルパーからそれを取り出し、貯蔵タンクに保管した。
【0087】
次いで、CF/パルプ比に従って、分散パルプ担体を、予め分散されたCF懸濁液と混合した。CF/パルプ担体の比は、0/100、10/90、20/80、30/70、40/60、50/50、60/40、70/30、80/20、90/10、100/0と様々であった。
【0088】
オプション2B−パイロット抄紙機Press Broke PulperまたはDry−end Pulperにおいて、CF/パルプ比に基づいて、一定量のパルプのドライラップ(CF/BCTMP比に基づいて計算された)を既知量の水と共に、予め分散されたCF懸濁液に添加し、パルパーでさらに分散させた。
【0089】
基本手順C:CF/パルプ混合物の濃縮
オプション1−実験室でのCF/パルプ混合物の濃縮
別段の指定がない限り、実験室垂直型パルププレスを使用して、CF/パルプ混合物を濃縮/プレスした。既知量の湿潤CF/パルプを実験室布袋内に入れ、所望の圧力にてプレスした。プレス中、濾液の体積をモニターし、プレスされたパルプマットのコンシステンシーを計算した。所望のコンシステンシー(30〜35%)が得られたら、プレスを停止した。
【0090】
オプション2−パイロット規模スクリュープレスにおけるCF/パルプ混合物の濃縮
別段の指定がない限り、パイロットプラントスクリュープレスを用いて、十分に混合されたCF/パルプスラリーをコンシステンシー約4%から約20〜50%に濃縮した。セルロースフィラメントの水分保持の値が高いため、濃縮プロセスは、CF/パルプ混合物中のCFの割合によってかなり影響を受けた。CF/パルプ混合物を濃縮するための操作条件および生産速度は、各CF/パルプ比に対して調節された。コンシステンシー20〜50%を有する、CF/パルプ混合物のパルプマットがスクリュープレスの出口から得られた。
【0091】
基本手順D:乾燥前の毛羽立ったCF/パルプマット
別段の指定がない限り、プレスした後のCF/パルプ混合物の湿潤マットをパイロット規模の毛羽立て機(fluffer)に供給し、工業用パルプ繊維乾燥機で乾燥させる、毛羽立ったCF/パルプ混合物を得た。
【0092】
基本手順E:CF/パルプ混合物の乾燥
オプション1−実験室でのCF/パルプ混合物の乾燥
別段の指定がない限り、ホットプレート上に置かれたHobartミキサーで、毛羽立たせたCF/パルプ混合物を乾燥させ、中程度の混合速度で上から熱風を吹きつけた。この乾燥方法によって、CF含有パルプの乾燥微粒子が形成され、これは、フラッシュ乾燥機などの工業用パルプ乾燥機で製造された乾燥生成物と非常に類似していた。
【0093】
オプション2−パイロットフラッシュ乾燥機におけるCF/パルプ混合物の乾燥
別段の指定がない限り、その構成は乾燥粉末生成物に適用することができる、GEAのパイロットフラッシュ乾燥機を使用して、毛羽立ったCF/パルプ混合物を乾燥させた。GEA Canada Inc.の部門、Barr−Rosinのフラッシュ乾燥機に関する、機械の標準構成の詳細な説明は、GEA Canada Inc.の部門、Barr−Rosinによって「Drying Systems and Energy Integration」のレポートに示されている(2012年5月12日)。
【0094】
別段の指定がない限り、CF/パルプの供給量は100kg/時であり、供給材料の含水率は50〜75%であった。生産速度は、供給材料CF/パルプの初期含水率に応じて、30〜40kg/時の範囲内であった。入口温度は170〜191℃であり、出口温度は、最終的な水分目標値に達するように必要に応じて調節した。
【0095】
基本手順F:天然繊維によって保持される乾燥セルロースフィラメントの再分散
オプション1−通常の再分散手順
天然繊維によって保持された乾燥セルロースフィラメントは通常、未乾燥セルロースフィラメントの分散に用いられる基本手順Aに従って分散された。
【0096】
オプション2−精砕による天然繊維によって保持された乾燥CFの再分散
高い割合でセルロースフィラメントを含有する乾燥CF/パルプを基本手順Aで完全に分散することができない場合には、低コンシステンシーリファイナー(Escher Wyss R1L実験室リファイナー)を使用して、乾燥CF/パルプを分散させた。Escher Wyss R1L実験室リファイナーは、ジョルダン(Jordan)リファイナーをベースとするクローズドループのコニカルリファイナーである。低コンシステンシー精砕の前に、乾燥したCF/パルプ担体生成物を最低4時間浸漬した。精砕コンシステンシーは3%であり、分散時間は15〜30秒であった。すべての精砕が室温20〜23℃で行われ、目標の特定のエッジロード(SEL,J/m)は0.3J/mである。
【0097】
基本手順G:パルプ繊維によって保持された乾燥CFからのハンドシートの製造(乾燥前および後)ならびにHWKのCF強化について
別段の指定がない限り、ドライラップ状の広葉樹クラフトパルプ(HWKP)を最初に、脱イオン水(DI水)と合わせ、コンシステンシー10%、800rpmおよび50℃にてヘリコパルパーにおいて15分間再パルプ化/砕解した。次いで、再パルプ化されたHWKPを、基本手順A、オプション1に従って調製されたCF分散液の試料と、重量(od基準)比5/95(CF/HWKP)にて、または再分散された乾燥CF/パルプ懸濁液の試料と、および脱イオン水(DI H
2O)と合わせて、コンシステンシー0.33%でスラリーを形成した。PAPTAC Test Method,Standard C.4.に準拠して、ハンドシート(60g/m
2)を製造した。PAPTAC Test Method,Standard D.34に準拠して、引張り強さ、TEAおよび引裂き強度を決定した。個々の実験において、100%HWKPからのハンドシート(60g/m
2)も製造し、その引張り強さ、TEAおよび引裂き強度を測定した。
【実施例】
【0098】
本発明の生成物を説明するために、かつ天然繊維によって保持された前記乾燥および水再分散性セルロースフィラメントを製造する方法を行うために、以下の実施例を示す。これらの試料は例証として解釈されるべきであり、制限的であることを意味するものではない。
【0099】
実施例1.パイロット規模での、BCTMPによって保持された乾燥および水再分散性セルロースフィラメントの製造
従来のパルプ乾燥法を用いて乾燥させたセルロースフィラメントは、水性システム中でごく一部のみ再分散され、したがって、未乾燥セルロースフィラメントと比較すると、その強化力が低い。
【0100】
セルロースフィラメントの角質化を防ぐために、乾燥プロセス中にCF担体としてBCTMPパルプ繊維を使用し、それによって、最高のBCTMP市場向けパルプも製造され得る。
【0101】
異なる割合のCFを含有するBCTMPが従来のパルプフラッシュ乾燥機によって乾燥できるかどうかを評価し、フラッシュ乾燥されたCF/BCTMPの再分散性を評価し、かつ乾燥CF/BCTMPにおけるCFの性能を未乾燥CFと比較することが目的であった。
【0102】
平均長さ約200μm〜約2mm、平均幅30nm〜約500nmおよび平均アスペクト比約200〜約5000を有するように、セルロースフィラメント(CF)を製造し、米国特許出願公開第20130017394号明細書に記載の方法を用いて、特定の精砕総エネルギー8000〜約8500キロワット時/トン(パルプ)(kWh/t)で、マルチパス高コンシステンシー(30〜35%)精砕によって晒針葉樹クラフトパルプから製造した。コンシステンシー30〜35%で製造されたCFを未乾燥CFと呼ぶ。
【0103】
未乾燥CFの試料(od基準で120kgまで)を使用して、記載の基本手順A〜E、オプション2に従って乾燥CF/BCTMPを製造した。
【0104】
未乾燥CFの試料(od基準で24g)を、記載の基本手順A、オプション1に従って脱イオン水中に分散させた。CFの安定な懸濁液は、分散された未乾燥CFと呼ぶ。
【0105】
フラッシュ乾燥前のCF/BCTMPの試料(od基準で24g)を記載の基本手順A、オプション1に従って脱イオン水中に分散させた。CF/BCTMPの安定な懸濁液は、分散された未乾燥CF/BCTMPと呼ぶ。
【0106】
フラッシュ乾燥させたCF/BCTMPの試料(od基準で24g)を記載の基本手順A、オプション1に従って脱イオン水中に分散させた。CF/BCTMPスラリーを再スラッシュ化乾燥CF/BCTMPと呼ぶ。
【0107】
広葉樹クラフトパルプ(HWK)の試料(od基準で24g)を記載の基本手順B、オプション1に従って脱イオン水中に分散させ、分散された未乾燥CF、分散された未乾燥CF/BCTMPおよび再スラッシュ化乾燥CF/BCTMP4%をHWKにそれぞれ添加し、乾燥CF/BCTMPにおけるCFの強化力を未乾燥CFと比較した。
【0108】
CF/BCTMP(乾燥前および後)からのハンドシート、ならびにHWKの強化材としてCFを使用したハンドシートを基本手順Gに従って製造した。引張り強さおよび引裂き強度ならびにTEA指数をPAPTAC Test Method,StandardD.34に準拠して決定した。個々の実験において、100%HWKPから製造したハンドシート(60g/m
2)も製造し、その引張り強さ、TEAおよび引裂き強度を測定した。
【0109】
CF/BCTMPの重量比は、0/100、10/90、30/70、50/50、70/30、80/20、90/10、100/0と様々であった。これらの試料の中で、100%BCTMPの乾燥は、所望の含水率約15%を達成するのに必要なエネルギーが最も少なかった。CF/BCTMP(90/10)の乾燥に必要なエネルギーの量は、100%BCTMPの乾燥に必要なエネルギーの約1.4倍であった。
図5は、図に示すように、CF/BCTMP比10/90、30/70および50/50を有する、フラッシュ乾燥されたCF/BCTMPの写真を示す。
【0110】
表1は、分散された未乾燥CF/BCTMP(フラッシュ乾燥前)および再スラッシュ化乾燥CF/BCTMP(フラッシュ乾燥後)から製造されたハンドシートの引張り強さを示す。この結果から、CFの割合が30%未満である場合、再スラッシュ化乾燥CF/BCTMPの引張り強さは、分散された未乾燥CF/BCTMPの引張り強さと同等であったことが分かる。一方、CFの割合が30%を超える場合には、再スラッシュ化乾燥CF/BCTMPの引張り強さは、分散された未乾燥CF/BCTMPの引張り強さよりもかなり低かった。分散された未乾燥CF/BCTMPと再スラッシュ化乾燥CF/BCTMPの引張り強さの差は、CFの割合が高くなるにしたがって増加した。さらに、CFの割合が70%以上である場合に、非分散性CF束が再スラッシュ化乾燥CF/BCTMP中で確認された。CFの割合が高すぎる(70%を超える)場合には、乾燥中にセルロースフィラメント間の不可逆的水素結合の形成を抑えるのに十分な繊維がなく、CF束の形成が引き起こされる。
【0111】
【表1】
【0112】
CF/BCTMP比10/90および30/70にて、分散された未乾燥CF、分散された未乾燥CF/BCTMP(フラッシュ乾燥前)および再スラッシュ化乾燥CF/BCTMP(フラッシュ乾燥後)によって強化されたHWKから製造されたハンドシートの引張り強さおよび引裂き強度を列挙する。比較のために、CFの割合を4%でコントロールし、この実施例で使用されるCF/BCTMP比が異なるため、他のパルプ成分の割合を表に示すように変化させた。この結果から、CFの割合が30%未満の場合には、分散された未乾燥CFによって、または再スラッシュ化乾燥CF/BCTMPによって強化されたハンドシートの引張り強さおよび引裂き強度は非常に類似していることが分かる。したがって、再スラッシュ化乾燥CF/BCTMP中のCFの強化力は、分散された未乾燥CFの強化力と同等であった。
【0113】
【表2】
【0114】
再スラッシュ化乾燥CF/BCTMP(90/10)およびCF/BCTMP(100/0)は非分散性のCF束を含有することが確認された。したがって、乾燥CF/BCTMP(90/10)およびCF/BCTMP(100/0)は、記載の基本手順F、オプション2に準拠して、それぞれCF/BCTMP(90/10)に対しては120kWh/時にて、CF/BCTMP(100/0)に対しては200kWh/時にて、低コンシステンシーリファイナーを使用して精砕された。フラッシュ乾燥CF/BCTMP、低コンシステンシーリファイナープレートおよび精砕後のCF/BCTMPを
図6に示す。
【0115】
100%HWK、95%HWK+5%分散未乾燥CF、および95%HWK+5%精砕乾燥CF(CF/BCTMP:90/10および100/0)から製造されたハンドシートのTEAおよび引裂き強度を表3に示す。この結果から、5%精砕乾燥CF(CF/BCTMP(90/10)に関して特定のエネルギー約120kWh/時にて、かつCF/BCTMP(100/0)に関しては200kWh/時にて)によって強化されたハンドシートのTEAおよび引裂き強度は、分散された未乾燥CFによって強化されたハンドシートとほぼ同等であることが分かった。したがって、低コンシステンシーリファイナーによって、乾燥CFまたはCF/BCTMPを再分散することができる。
【0116】
【表3】
【0117】
実施例2.パイロット規模での、NBSKによって保持された乾燥および水再分散性セルロースフィラメントの製造
セルロースフィラメントの角質化を防ぐために、乾燥プロセス中にNBSKパルプ繊維をCF担体として使用し、それによって、最高の市場向けNBSKパルプも製造され得る。
【0118】
異なる割合のCFを含有するNBSKが従来のパルプフラッシュ乾燥機によって乾燥できるかどうかを評価し、フラッシュ乾燥されたCF/NBSKの再分散性を評価し、かつ乾燥CF/NBSKにおけるCFの性能を未乾燥CFと比較することが目的であった。
【0119】
この実施例に使用されるセルロースフィラメントおよび乾燥CF/NBSKを製造する手順は実施例1と同じである。
【0120】
表4に、分散された未乾燥CF/NBSK(フラッシュ乾燥前)および再スラッシュ化乾燥CF/NBSK(フラッシュ乾燥後)から製造されたハンドシートの引張り強さを示す。この結果から、CFの割合が30%未満の場合には、再スラッシュ化乾燥CF/NBSKの引張り強さは、分散された未乾燥CF/NBSKの引張り強さとほぼ同等であったことが分かる。一方、CFの割合が30%を超える場合には、再スラッシュ化乾燥CF/NBSKの引張り強さは、分散された未乾燥CF/NBSの引張り強さよりもかなり低かった。分散された未乾燥CF/NBSKと再スラッシュ化乾燥CF/NBSKの引張り強さの差は、CFの割合が増加するにしたがって増加した。さらに、
図7に示すように、CFの割合が70%以上である場合に、非分散性のCF束が再スラッシュ化乾燥CF/NBSK中で確認された。
図7aおよび
図7bは、それぞれが滑らかな表面を有する、100%NBSKおよび50%CF/50%NBSKで製造されたハンドシートを例示する。
図7cは、ハンドシートの表面からはみ出ている小塊として現れる、目に見えるCF束を含む、滑らかさが劣る表面を有する70%CF/30%NBSKのハンドシートを例示する。
【0121】
【表4】
【0122】
表5には、100%HWKから製造されたハンドシート、NBSKによって強化された、またはそれぞれCF/NBSK比10/90および30/70での再スラッシュ化乾燥CF/NBSKによって強化されたHWKから製造されたハンドシートの引張り強さおよび引裂き強度を示す。この結果から、NBSKによって、または乾燥CF/BCTMP中の乾燥CFによって強化されたハンドシートの引張り強さおよび引裂き強度は、CFの割合にしたがって増加したことが分かる。
【0123】
【表5】
【0124】
非分散性のCF束を含有するラッシュ乾燥CF/NBSK(90/10)を通常の分散手順で、記載の基本手順F、オプション2に準拠して低コンシステンシーリファイナーを200kWh/時で使用して再分散させた。
【0125】
分散された未乾燥CF/NBSK、通常の再分散手順での再スラッシュ化乾燥CF/NBSK、および精砕乾燥CF/NBSKから製造されたハンドシートのTEAおよび引裂き強度を表6に示す。この結果から、未分散のCF束のために、ハンドシートの引張り強さおよびTEA強度は、再スラッシュ化乾燥CF/NBSK(通常の再分散手順で再スラッシュ化された)に関しては25%減少したことが分かる。特定の精砕エネルギー約200kWh/時で低コンシステンシーリファイナーを使用して精砕することによって、乾燥CF/NBSK(90/10)は完全に再分散され、したがって、分散された未乾燥CF/NBSK(90/10)と同レベルまで、ハンドシートの引張り強さおよびTEA強度が増加した。
【0126】
【表6】
【0127】
実施例3.乾燥CFと乾燥NBSKとの混合物と、再スラッシュ化乾燥CF/NBSKとの比較
本発明の実施例では、フラッシュ乾燥CFと、フラッシュ乾燥NBSKとの混合物とのフラッシュ乾燥CF/NBSKの性能を比較する。この実施例で使用したセルロースフィラメント、および実施例1における乾燥CF/NBSK、乾燥CFおよび乾燥NBSKの製造手順。
【0128】
表7は、再スラッシュ化乾燥CF/NBSK(フラッシュ乾燥後)から製造されたハンドシートおよび乾燥CFと乾燥NBSKとの混合物から製造されたハンドシートの引張り強さを示す。この結果から、再スラッシュ化乾燥CF/NBSKの引張り強さは、乾燥CFと乾燥NBSKとの混合物の引張り強さよりもかなり高かったことが分かる。
図8は、多量の非分散性CF束を含む、非常に粗い表面を有する、乾燥CF(30%)と乾燥NBSK(70%)との混合物から製造されたハンドシートを例示する。
【0129】
【表7】