(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定金型および可動金型の一方が取り付けられる金型取付盤と、前記金型取付盤と型開閉方向に間隔をおいて連結される連結盤と、前記間隔を調整することで型厚調整を行う型厚調整機構と、前記型厚調整機構を制御する制御装置とを有し、
前記型厚調整機構は、前記金型取付盤と前記連結盤とを連結するロッドに形成されるねじ軸と、前記金型取付盤と前記連結盤の一方に保持されるねじナットと、互いに螺合する前記ねじ軸および前記ねじナットの一方を回転させる型厚調整モータとを有し、
前記制御装置は、前記ねじ軸に対する前記ねじナットの位置の基準位置を記憶し、前記位置が前記基準位置からずれると、前記位置を前記基準位置に戻す、射出成形機。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1は、一実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、一実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図1および
図2に示すように、射出成形機は、フレームFrと、型締装置10と、射出装置40と、エジェクタ装置50と、制御装置90とを有する。以下の説明では、型閉時の可動プラテン13の移動方向(
図1および
図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン13の移動方向(
図1および
図2中左方向)を後方として説明する。
【0011】
型締装置10は、金型装置30の型閉、型締、型開を行う。型締装置10は、型開閉方向が水平方向の横型である。型締装置10は、固定プラテン12、可動プラテン13、トグルサポート15、タイバー16、トグル機構20、型締モータ25および運動変換機構26を有する。
【0012】
固定プラテン12は、フレームFrに対し固定される。固定プラテン12における可動プラテン13との対向面に固定金型32が取り付けられる。
【0013】
可動プラテン13は、フレームFr上に敷設されるガイド(例えばガイドレール)17に沿って移動自在とされ、固定プラテン12に対し進退自在とされる。可動プラテン13における固定プラテン12との対向面に可動金型33が取り付けられる。
【0014】
固定プラテン12に対し可動プラテン13を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型32と可動金型33とで金型装置30が構成される。
【0015】
トグルサポート15は、固定プラテン12と間隔Lをおいて連結され、フレームFr上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート15は、フレームFr上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。トグルサポート15のガイドは、可動プラテン13のガイド17と共通のものでもよい。
【0016】
尚、本実施形態では、固定プラテン12がフレームFrに対し固定され、トグルサポート15がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート15がフレームFrに対し固定され、固定プラテン12がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
【0017】
タイバー16は、固定プラテン12とトグルサポート15とを間隔Lをおいて連結する。タイバー16は、複数本(例えば4本)用いられてよい。各タイバー16は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー16には型締力検出器18が設けられる。型締力検出器18は、タイバー16の歪みを検出することによって型締力を検出し、検出結果を示す信号を制御装置90に送る。
【0018】
尚、型締力検出器18は、歪みゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取り付け位置もタイバー16に限定されない。
【0019】
トグル機構20は、固定プラテン12に対し可動プラテン13を移動させる。トグル機構20は、可動プラテン13とトグルサポート15との間に配設される。トグル機構20は、クロスヘッド21、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク22および第2リンク23を有する。第1リンク22は可動プラテン13に対しピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク23はトグルサポート15に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク23は、第3リンク24を介してクロスヘッド21に結合される。クロスヘッド21を進退させると、第1リンク22および第2リンク23が屈伸し、トグルサポート15に対し可動プラテン13が進退する。
【0020】
尚、トグル機構20の構成は、
図1および
図2に示す構成に限定されない。例えば
図1および
図2では、節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク24の一端部が、第1リンク22と第2リンク23との節点に結合されてもよい。
【0021】
型締モータ25は、トグルサポート15に取付けられており、トグル機構20を作動させる。型締モータ25は、クロスヘッド21を進退させることにより、第1リンク22および第2リンク23を屈伸させ、可動プラテン13を進退させる。
【0022】
運動変換機構26は、型締モータ25の回転運動をクロスヘッド21の直線運動に変換する。運動変換機構26は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0023】
型締装置10の動作は、制御装置90によって制御される。制御装置90は、
図1や
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)91と、メモリなどの記憶媒体92と、入力インターフェイス93と、出力インターフェイス94とを有する。制御装置90は、記憶媒体92に記憶されたプログラムをCPU91に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置90は、入力インターフェイス93で外部からの信号を受信し、出力インターフェイス94で外部に信号を送信する。制御装置90は、型閉工程、型締工程、型開工程などを制御する。
【0024】
型閉工程では、型締モータ25を駆動してクロスヘッド21を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン13を前進させ、可動金型33を固定金型32にタッチさせる。クロスヘッド21の位置や速度は、例えば型締モータ25のエンコーダ25aなどを用いて検出する。エンコーダ25aは、型締モータ25の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置90に送る。
【0025】
型締工程では、型締モータ25をさらに駆動してクロスヘッド21を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型33と固定金型32との間にキャビティ空間34が形成され、射出装置40がキャビティ空間34に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間34の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
【0026】
型開工程では、型締モータ25を駆動してクロスヘッド21を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン13を後退させ、可動金型33を固定金型32から離間させる。その後、エジェクタ装置50が可動金型33から成形品を突出す。
【0027】
ところで、トグル機構20は、型締モータ25の駆動力を増幅して可動プラテン13に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク22と第2リンク23とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド21の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0028】
金型装置30の交換や金型装置30の温度変化などにより金型装置30の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型33が固定金型32にタッチする型タッチの時点でトグル機構20のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン12とトグルサポート15との間隔Lを調整する。
【0029】
型締装置10は、固定プラテン12とトグルサポート15との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構60を有する。型厚調整機構60は、タイバー16の後端部に形成されるねじ軸61と、トグルサポート15に回転自在に保持されるねじナット62と、ねじ軸61に螺合するねじナット62を回転させる型厚調整モータ63とを有する。
【0030】
ねじ軸61およびねじナット62は、タイバー16ごとに設けられる。型厚調整モータ63の回転は、ベルトやプーリなどで構成される回転伝達部64を介して複数のねじナット62に伝達されてよい。複数のねじナット62を同期して回転できる。尚、回転伝達部64の伝達経路を変更することで、複数のねじナット62を個別に回転することも可能である。
【0031】
尚、回転伝達部64は、ベルトやプーリなどの代わりに、歯車などで構成されてもよい。この場合、各ねじナット62の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ63の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート15の中央部に回転自在に保持される。
【0032】
型厚調整機構60の動作は、制御装置90によって制御される。制御装置90は、型厚調整モータ63を駆動して、ねじナット62を回転させることで、ねじナット62を回転自在に保持するトグルサポート15の固定プラテン12に対する位置を調整し、固定プラテン12とトグルサポート15との間隔Lを調整する。
【0033】
尚、本実施形態では、ねじナット62がトグルサポート15に対し回転自在に保持され、ねじ軸61が形成されるタイバー16が固定プラテン12に対し固定されるが、本発明はこれに限定されない。
【0034】
例えば、ねじナット62が固定プラテン12に対し回転自在に保持され、タイバー16がトグルサポート15に対し固定されてもよい。この場合、ねじナット62を回転させることで、間隔Lを調整できる。
【0035】
また、ねじナット62がトグルサポート15に対し固定され、タイバー16が固定プラテン12に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー16を回転させることで、間隔Lを調整できる。
【0036】
さらにまた、ねじナット62が固定プラテン12に対し固定され、タイバー16がトグルサポート15に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー16を回転させることで間隔Lを調整できる。
【0037】
型厚調整機構60は、互いに螺合するねじ軸61とねじナット62の一方を回転させることで、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構60が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ63が用いられてもよい。
【0038】
ここでは、固定プラテン12が特許請求の範囲に記載の金型取付盤に対応し、トグルサポート15が特許請求の範囲に記載の連結盤に対応し、タイバー16が特許請求の範囲に記載のロッドに対応する。
【0039】
制御装置90は、例えば、トグル機構20のリンク角度θを所定の角度とし且つ型締モータ25を停止した状態で型厚調整モータ63を駆動し、可動金型33が固定金型32にタッチする型タッチを検出する。型タッチを検出した時点の固定プラテン12とトグルサポート15との間隔Lが目標間隔L0(不図示)とされる。
【0040】
型タッチの検出は、例えば可動金型33が固定金型32から離れている状態から型厚調整モータ63を駆動してトグルサポート15を前進させ、トグルサポート15に連結された可動プラテン13を前進させる間に行われる。つまり、型タッチの検出は、金型装置30の型閉により行われる。
【0041】
可動金型33が固定金型32にタッチすると、型締力が上昇し始める。そこで、制御装置90は、型厚調整モータ63の駆動中に型締力を監視し、型締力に基づいて型タッチを検出する。制御装置90は、例えば、型締力検出器18の検出値が閾値になった時点で、型タッチが行われたと判断してよい。その判断には、型締力検出器18の検出値の時間微分などが用いられてもよい。
【0042】
また、可動金型33が固定金型32にタッチすると、型厚調整モータ63のトルクが上昇し始める。そこで、制御装置90は、型厚調整モータ63の駆動中に型厚調整モータ63のトルクを監視し、そのトルクに基づいて型タッチを検出してもよい。制御装置90は、トルク検出器65の検出値が閾値になった時点で、型タッチが行われたと判断してもよい。その判断には、トルク検出器65の検出値の時間微分などが用いられてもよい。
【0043】
制御装置90は、型厚調整モータ63によって金型装置30の型閉を行うことで型タッチを検出するが、型厚調整モータ63によって金型装置30の脱圧を行うことで型タッチを検出してもよい。金型装置30の脱圧は、型締状態から行われる。型締力検出器18の検出値が閾値になった時点で、金型装置30の状態が型タッチの状態に戻ったと判断してよい。あるいは、トルク検出器65の検出値が閾値になった時点で、金型装置30の状態が型タッチの状態に戻ったと判断してよい。
【0044】
型タッチの検出には、型締力検出器18およびトルク検出器65の一方のみが用いられてもよいし、両方が用いられてもよい。
【0045】
制御装置90は、型厚調整の完了後、型厚調整モータ63の駆動を停止する。
【0046】
型厚調整の完了後には、成形動作が繰り返し行われるため、型締モータ25によって金型装置30の昇圧や脱圧が繰り返し行われ、金型装置30の昇圧時にねじナット62が後方に押され、金型装置30の脱圧時にねじナット62が前方に押される。その結果、型厚調整の完了後に、ねじ軸61に対するねじナット62の位置(以下、単に「ねじナット62の位置」とも呼ぶ)がずれることがある。
【0047】
そこで、制御装置90は、型厚調整の完了時のねじナット62の位置を基準位置として記憶し、ねじナット62の位置を監視する。ねじナット62の位置は、例えば型厚調整モータ63のエンコーダ63aなどを用いて検出する。エンコーダ63aは、型厚調整モータ63の回転角や回転数、回転方向などを検出し、その検出結果を示す信号を制御装置90に送る。
【0048】
図3は、型厚調整の完了後に行われる制御装置による処理の一例を示すフローチャートである。
図3に示す処理は、例えば、型開完了後、型閉開始前に行われる。制御装置90は、
図3に示す処理を、サイクル毎に行ってもよいし、定期的に行ってもよい。
【0049】
制御装置90は、先ず、ねじナット62の位置が基準位置からずれているか否かを判断する(ステップS11)。ねじナット62の位置ずれが許容範囲外である場合にねじナット62の位置が基準位置からずれていると判断し、ねじナット62の位置ずれが許容範囲内である場合にねじナット62の位置が基準位置からずれていないと判断してよい。許容範囲は、エンコーダ63aの検出精度や型締力の許容できる変動の範囲などに基づいて予め設定される。
【0050】
制御装置90は、ねじナット62の位置が基準位置からずれていない場合(ステップS11、NO)、ステップS13に進み、ステップS13以降の処理を行う。
【0051】
一方、制御装置90は、ねじナット62の位置が基準位置からずれている場合(ステップS11、YES)、型厚調整モータ63を駆動してねじナット62の位置を基準位置に戻す(ステップS12)。ねじナット62の位置を基準位置に戻すことは、ねじナット62の位置ずれを許容範囲外から許容範囲内に収めることを含む。ねじナット62の位置を基準位置に戻すことで、型締力の安定性を向上できる。ねじナット62の位置を基準位置に戻すことで、ねじナット62の位置ずれが積み重なることで型締力のずれが大きくなることを防止できる。
【0052】
この効果は、型厚調整モータ63として、駆動停止時に出力軸の回転を制限するブレーキ付きのモータではなく、ブレーキ無しのモータを使用する場合に顕著である。ブレーキ無しのモータを使用することで、モータの小型化や低コスト化を図ることもできる。
【0053】
ところで、型厚調整の完了後に、金型装置30の温度が変化することなどにより、金型装置30の厚さが変わることがある。金型装置30の厚さが変わると、型締力がずれる。型締力がずれると、制御装置90は型締力を補正する処理を行う。
【0054】
制御装置90は、型締力のずれが許容範囲外であるか否かを判断する(ステップS13)。型締力のずれとは、型締力の検出値と、型締力の設定値との差のことである。型締力のずれが許容範囲内である場合(ステップS13、NO)、制御装置90は今回の処理を終了する。
【0055】
一方、制御装置90は、型締力のずれが許容範囲外である場合(ステップS13、YES)、型締力のずれに基づいて、ねじナット62の目標変位量を算出する(ステップS14)。型締力のずれと目標変位量との関係は予め記憶媒体92に記憶されており、記憶されたデータと型締力のずれとに基づいて制御装置90は目標変位量を算出する。型締力のずれが大きくなるほど、目標変位量が大きくなる。目標変位量は、現在のねじナット62の位置における型締力の検出値と型締力の設定値との差に基いて算出し、その差がなくなるように算出する。
【0056】
続いて、制御装置90は、算出した目標変位量に基づいて基準位置を補正する(ステップS15)。新基準位置は、目標変位量算出時の位置と目標変位量とから求められ、型締力の検出値と型締力の設定値との差がなくなるように、目標変位量算出時の位置から目標変位量移動させた位置とされる。型締力の検出値がその設定値よりも大きい場合、トグルサポート15と固定プラテン12との間隔Lが広くなる方向に、制御装置90が基準位置を変更する。一方、型締力の検出値がその設定値よりも小さい場合、トグルサポート15と固定プラテン12との間隔Lが狭くなる方向に、制御装置90が基準位置を変更する。
【0057】
続いて、制御装置90は、型厚調整モータ63を駆動してねじナット62の位置を補正後の基準位置に変位させ(ステップS16)、今回の処理を終了する。補正後の基準位置にねじナット62の位置を合わせることで、型締力の検出値が型締力の設定値に一致する。これにより、型締力の安定性をより向上できる。
【0058】
尚、型厚調整の完了後に行われる制御装置90による処理は、
図3に示す処理に限定されない。例えば、制御装置90は、ステップS11〜S12のみを行ってもよく、型締力を補正する処理を行わなくてもよい。
【0059】
図4は、型厚調整の完了後に行われる制御装置による処理の変形例を示すフローチャートである。
図4に示す処理は、例えば、型開完了後、型閉開始前に行われる。制御装置90は、
図4に示す処理を、サイクル毎に行ってもよいし、定期的に行ってもよい。
【0060】
制御装置90は、先ず、ねじナット62の基準位置を補正する型締力補正を使用中であるか否かを判断する(ステップS21)。型締力補正を使用するか否かは、例えばユーザによる入力操作によって切り替えられる。
【0061】
型締力補正を使用している場合(ステップS21、YES)、制御装置90は型締力のずれが許容範囲外であるか否かを判断する(ステップS13)。型締力のずれが許容範囲外である場合(ステップS13、YES)、制御装置90はステップS14に進みステップS14以降の処理を行う。
【0062】
ステップS14では、既述の如く、型締力のずれに基づいて、ねじナット62の目標変位量を算出する。型締力のずれと目標変位量との関係は予め記憶媒体92に記憶されており、記憶されたデータと型締力のずれとに基づいて制御装置90は目標変位量を算出する。型締力のずれが大きくなるほど、目標変位量が大きくなる。目標変位量は、現在のねじナット62の位置における型締力の検出値と型締力の設定値との差に基いて算出し、その差がなくなるように算出する。
【0063】
ステップS14に続くステップS15では、既述の如く、算出した目標変位量に基づいて基準位置を補正する。新基準位置は、目標変位量算出時の位置と目標変位量とから求められ、型締力の検出値と型締力の設定値との差がなくなるように、目標変位量算出時の位置から目標変位量移動させた位置とされる。型締力の検出値がその設定値よりも大きい場合、トグルサポート15と固定プラテン12との間隔Lが広くなる方向に、制御装置90が基準位置を変更する。一方、型締力の検出値がその設定値よりも小さい場合、トグルサポート15と固定プラテン12との間隔Lが狭くなる方向に、制御装置90が基準位置を変更する。
【0064】
ステップS15に続くステップS16では、既述の如く、型厚調整モータ63を駆動してねじナット62の位置を補正後の基準位置に変位させる。補正後の基準位置にねじナット62の位置を合わせることで、型締力の検出値が型締力の設定値に一致する。これにより、型締力の安定性をより向上できる。ステップS16の後、制御装置90は今回の処理を終了する。
【0065】
一方、型締力補正を使用していない場合(ステップS21、NO)、または、型締力補正を使用しており(ステップS21、YES)且つ型締力のずれが許容範囲内である場合(ステップS13、NO)、制御装置90はステップS11に進みステップS11以降の処理を行う。
【0066】
ステップS11では、既述の如く、ねじナット62の位置が基準位置からずれているか否かを判断する。ねじナット62の位置ずれが許容範囲外である場合にねじナット62の位置が基準位置からずれていると判断し、ねじナット62の位置ずれが許容範囲内である場合にねじナット62の位置が基準位置からずれていないと判断してよい。許容範囲は、エンコーダ63aの検出精度や型締力の許容できる変動の範囲などに基づいて予め設定される。
【0067】
ステップS11において、ねじナット62の位置が基準位置からずれていない場合(ステップS11、NO)、制御装置90は今回の処理を終了する。
【0068】
一方、ステップS11において、ねじナット62の位置が基準位置からずれている場合(ステップS11、YES)、制御装置90はステップS12に進む。
【0069】
ステップS12では、既述の如く、型厚調整モータ63を駆動してねじナット62の位置を基準位置に戻す。ねじナット62の位置を基準位置に戻すことは、ねじナット62の位置ずれを許容範囲外から許容範囲内に収めることを含む。ねじナット62の位置を基準位置に戻すことで、型締力の安定性を向上できる。ねじナット62の位置を基準位置に戻すことで、ねじナット62の位置ずれが積み重なることで型締力のずれが大きくなることを防止できる。
【0070】
この効果は、型厚調整モータ63として、駆動停止時に出力軸の回転を制限するブレーキ付きのモータではなく、ブレーキ無しのモータを使用する場合に顕著である。ブレーキ無しのモータを使用することで、モータの小型化や低コスト化を図ることもできる。
【0071】
図5は、一実施形態による型厚調整機構のねじ軸に対するねじナットの位置の時間変化を示す図である。
図5において、時間の経過は、ショット数で表す。尚、ねじナット62の位置は、
図5では直線的に変動するが、曲線的に変動することもある。
【0072】
型厚調整の完了後には、成形動作が繰り返し行われるため、型締モータ25によって金型装置30の昇圧や脱圧が繰り返し行われ、金型装置30の昇圧時にねじナット62が後方に押され、トグルサポート15が後方に押される。
【0073】
その結果、型厚調整の完了後に、ねじ軸61に対するねじナット62の位置がずれることがある。トグルサポート15が後退して間隔Lが大きくなる方向に、ねじナット62の位置がずれやすい。
【0074】
そこで、制御装置90は、型厚調整の完了時のねじナット62の位置を基準位置1として記憶し、ねじナット62の位置を監視する。ねじナット62の位置は、例えば型厚調整モータ63のエンコーダ63aなどを用いて検出する。エンコーダ63aは、型厚調整モータ63の回転角や回転数、回転方向などを検出し、その検出結果を示す信号を制御装置90に送る。
【0075】
制御装置90は、ねじナット62の位置が基準位置1からずれているか否かを監視する。ねじナット62の位置が基準位置1の許容範囲から外れる場合に、ねじナット62の位置が基準位置1からずれているとの判断がなされる。一方、ねじナット62の位置が基準位置1の許容範囲に収まる場合に、ねじナット62の位置が基準位置1からずれていないとの判断がなされる。許容範囲は、エンコーダ63aの検出精度や型締力の許容できる変動の範囲などに基づいて予め設定される。
【0076】
制御装置90は、
図5に示すように、ねじナット62の位置が基準位置1からずれていると判断する度に、型厚調整モータ63を駆動してねじナット62の位置を補正する。ねじナット62の位置補正は、
図5ではねじナット62の位置を基準位置1に正確に戻すことであるが、ねじナット62の位置を基準位置1の許容範囲に収めることであってもよい。ねじナット62の位置を基準位置1の許容範囲に収めることで、型締力の安定性を向上できる。
【0077】
この効果は、型厚調整モータ63として、駆動停止時に出力軸の回転を制限するブレーキ付きのモータではなく、ブレーキ無しのモータを使用する場合に顕著である。ブレーキ無しのモータを使用することで、モータの小型化や低コスト化を図ることもできる。
【0078】
ところで、型厚調整の完了後に、金型装置30の温度が変化することなどにより、金型装置30の厚さが変わることがある。金型装置30の温度は時間の経過と共に上昇する傾向にあるため、金型装置30の厚さは時間の経過と共に厚くなる傾向にある。但し、金型装置30の厚さが薄くなることもありうる。
【0079】
金型装置30の厚さが変わる場合、ねじナット62の位置が基準位置1に一致するときに、型締力が目標型締力からずれることがある。そのため、金型装置30の厚さが変わる場合、ねじナット62の位置を監視するだけでは、型締力の安定性が損なわれることがある。
【0080】
そこで、制御装置90は、ねじナット62の位置を監視するだけではなく、型締力を監視してよい。型締力は、型締力検出器18によって検出する。制御装置90は、型締力の検出値が設定値の許容範囲に収まるか否かを監視する。型締力の検出値が設定値の許容範囲に収まる場合に、型締力が目標型締力からずれていないとの判断がなされる。一方、型締力の検出値が設定値の許容範囲から外れる場合に、型締力が目標型締力からずれているとの判断がなされる。
【0081】
制御装置90は、型締力が目標型締力からずれていると判断すると、
図5に示すように、ねじナット62の基準位置を、基準位置1から基準位置2に変更する補正を行う。その補正量は、ねじナット62の位置が基準位置2に一致する場合に、型締力が目標型締力に一致するように設定される。これにより、金型装置30の厚さの変動に対応してねじナット62の基準位置を適切に変更でき、ねじナット62の位置を監視する効果を最大限得られる。
【0082】
基準位置の補正後、制御装置90は、ねじナット62の位置が基準位置2からずれているか否かを監視する。ねじナット62の位置が基準位置2の許容範囲から外れる場合に、ねじナット62の位置が基準位置2からずれているとの判断がなされる。一方、ねじナット62の位置が基準位置2の許容範囲に収まる場合に、ねじナット62の位置が基準位置2からずれていないとの判断がなされる。許容範囲は、エンコーダ63aの検出精度や型締力の許容できる変動の範囲などに基づいて予め設定される。
【0083】
制御装置90は、
図5に示すように、ねじナット62の位置が基準位置2からずれていると判断する度に、型厚調整モータ63を駆動してねじナット62の位置を補正する。ねじナット62の位置補正は、
図5ではねじナット62の位置を基準位置2に正確に戻すことであるが、ねじナット62の位置を基準位置2の許容範囲に収めることであってもよい。ねじナット62の位置を基準位置2の許容範囲に収めることで、型締力の安定性を向上できる。
【0084】
以上、射出成形機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0085】
上記実施形態の型締装置10は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0086】
竪型の型締装置は、下プラテン、上プラテン、トグルサポート、タイバー、トグル機構、型締モータ、型厚調整機構などを有する。下プラテンと上プラテンのうち、いずれか一方が固定プラテン、残りの一方が可動プラテンとして用いられる。下プラテンには下金型が取り付けられ、上プラテンには上金型が取り付けられる。下金型と上金型とで金型装置が構成される。下金型は、ロータリーテーブルを介して下プラテンに取り付けられてもよい。トグルサポートは、下プラテンの下方に配設される。トグル機構は、トグルサポートと下プラテンとの間に配設される。タイバーは、鉛直方向に平行とされ、下プラテンを貫通し、上プラテンとトグルサポートとを連結する。
【0087】
竪型の型厚調整機構は、金型装置の厚さの変化などに応じて、上プラテンとトグルサポートとの間隔を調整することで、型厚調整を行う。この型厚調整では、下金型と上金型とがタッチする型タッチの時点でトグル機構のリンク角度が所定の角度になるように、上プラテンとトグルサポートとの間隔を調整する。型閉完了時にリンク角度を所定の角度に調整でき、型締時に所定の型締力を得ることができる。型厚調整機構は、タイバーに形成されるねじ軸と、上プラテンおよびトグルサポートの一方に保持されるねじナットと、互いに螺合するねじ軸およびねじナットの一方を回転させる型厚調整モータとを有する。型厚調整機構は、上プラテンおよびトグルサポートの他方に保持されるねじナットをさらに有してもよい。上プラテンが特許請求の範囲に記載の金型取付盤に対応し、トグルサポートが特許請求の範囲に記載の連結盤に対応し、タイバーが特許請求の範囲に記載のロッドに対応する。
【0088】
上記実施形態の型締装置10は、トグル機構20およびトグル機構20を作動させる型締モータ25を有するが、型開閉用にリニアモータを、型締用に電磁石を有してもよい。
【0089】
電磁石式の型締装置は、例えば固定プラテン、可動プラテン、リヤプラテン、タイバー、吸着板、ロッド、および型厚調整機構などを有する。リヤプラテンは、可動プラテンを基準として固定プラテンとは反対側(つまり、可動プラテンの後方)に配設される。タイバーは、固定プラテンとリヤプラテンとを型開閉方向に間隔をおいて連結する。吸着板は、リヤプラテンの後方において、可動プラテンと共に進退自在とされる。ロッドは、リヤプラテンの貫通穴に挿通され、可動プラテンと吸着板とを連結する。リヤプラテンおよび吸着板の少なくとも一方には電磁石が形成され、電磁石による吸着力がリヤプラテンと吸着板との間に作用し、型締力が生じる。
【0090】
電磁石式の型厚調整機構は、可動プラテンと吸着板との間隔を調整することで、型厚調整を行う。この型厚調整では、可動金型と固定金型とがタッチする型タッチの時点で吸着板とリヤプラテンとの間に所定のギャップが形成されるように、可動プラテンと吸着板との間隔を調整する。型閉完了時に吸着板とリヤプラテンとの間に所定のギャップを形成でき、型締時に所定の型締力を得ることができる。型厚調整機構は、ロッドに形成されるねじ軸と、可動プラテンおよび吸着板の一方に保持されるねじナットと、互いに螺合するねじ軸およびねじナットの一方を回転させる型厚調整モータとを有する。型厚調整機構は、可動プラテンおよび吸着板の他方に保持されるねじナットをさらに有してもよい。可動プラテンが特許請求の範囲に記載の金型取付盤に対応し、吸着板が特許請求の範囲に記載の連結盤に対応する。
【0091】
本出願は、2016年3月25日に日本国特許庁に出願した特願2016−062418号に基づく優先権を主張するものであり、特願2016−062418号の全内容を本出願に援用する。