(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
保守対象ビルの設備を構成する機器と通信接続され、前記機器に対して制御信号を送信可能であるとともに、前記機器の運転状態を示す信号を受信可能な、設備管理用のローカルサーバと通信接続される、代行管理用センターサーバであって、
前記機器の運転異常が検知された際に出力される当該機器の識別情報及び異常内容が符号化されたエラーコードと、前記エラーコードの出力時における前記保守対象ビルでの保守作業内容とを含む代行依頼情報を、前記ローカルサーバから受信した際に、自身に通信接続された端末装置を操作する保守員の中から、前記端末装置から前記ローカルサーバへの遠隔操作による代行作業を請け負う保守員を選定する代行作業者選定部を備える、
代行管理用センターサーバ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に、本実施形態に係るローカルサーバ10及びセンターサーバ12を含む、設備保守管理システムを例示する。設備保守管理システムは、いわゆるファシリティマネジメントサービスシステムであって、ローカルサーバ10は、いわゆるビル・エネルギー・マネージメント・システム(Building Energy Management System、BEMS)の一部として構成される。
【0028】
ローカルサーバ10及びセンターサーバ12は、インターネットや専用通信回線等のネットワーク16を介して通信接続されている。また、センターサーバ12には、ローカルサーバ10に加えて、他の保守対象ビルの設備を管理するローカルサーバにも通信接続されている。
図1では他のローカルサーバについては図示を省略している。
【0029】
センターサーバ12は、コンピュータであって、ローカルサーバ10を含む複数のローカルサーバから受信した情報を集中管理したり、また、ローカルサーバ10を含む複数のローカルサーバに対して遠隔操作を行うことが可能となっている。
【0030】
センターサーバ12は、例えばファシリティサービスを提供するサービスセンターが置かれたセンタービル18に設置される、代行管理用のコンピュータ(代行管理用センターサーバ)である。センターサーバ12は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、メモリ、及び入出力インターフェースがシステムバスを介して接続される。
【0031】
メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリや、ハードディスク等のストレージデバイスを含む、揮発性及び不揮発性メモリ(記憶媒体)から構成される。
【0032】
後述するように、メモリには、センターサーバ12を
図2に例示する代行作業者選定部22として機能させるプログラムが記憶されている。なお、当該プログラムが記憶された、CD−ROMやDVD等の記憶媒体を読み込むことで、センターサーバ12を代行作業者選定部22として機能させてもよい。
【0033】
上記のプログラムが、センターサーバ12のCPUにより読み込まれ実行処理されることで、センターサーバ12は代行作業者選定部22として機能する。後述するように、代行作業者選定部22は、エラーコード及びエラーコード出力時の現地保守作業内容を受信した際に、センター端末26A〜26Zを操作するセンター保守員24A〜24Zの中から、センター端末26A〜26Zからローカルサーバ10への遠隔操作による代行作業を請け負う保守員を選定する。
【0034】
図2には、代行作業者選定部22の構成が例示されている。代行作業者選定部22は、機能部として、保守物件特定部22A、エラーコード解析部22B、代行保守員候補抽出部22C、依頼順設定部22D、端末稼動状態取得部22E、代行可否問合部22F,及び接続設定部22Gを備える。また代行作業者選定部22は、信号内容データベース22H、保守物件データベース22I、及び保守員データベース22Jを備える。これらのデータベースとして、センターサーバ12のメモリの少なくとも一部が割り当てられる。これらの機能部及びデータベースの作用については後述する。
【0035】
図1に戻り、センタービル18には、各保守員24A・・・24Zに割り当てられた端末装置26A・・・26Zが設置されている。なお、端末装置26A・・・26Zは、センタービル18内に設置されている場合に限らず、センタービル18の外部であって、インターネット等のネットワークを介してセンターサーバ12に通信接続可能となっていてもよい。以下では、端末装置26A・・・26Zを適宜「センター端末」と記載する。
【0036】
センター端末26A・・・26Zはいわゆるシンクライアント端末であってよく、例えば表示部と入力部等の、最小限の機能を備える。センターサーバ12にて生成された画像等がセンター端末26A・・・26Zの表示部にて表示される。例えば、センター端末26A・・・26Zの入力部を操作して当該画面に対する入力を行うと、入力情報がセンターサーバ12に送信され、当該装置にて入力情報に基づいた演算処理が行われる。
【0037】
また、センタービル18には、センターサーバ12に通信接続される入力部27及び表示部29が設けられる。入力部27は、例えばキーボードやマウス等で構成され、代行作業者選定部22の各種設定等を変更可能となっている。表示部29は例えばLCD等で構成される。表示部29は、ローカルサーバ10から受信した代行依頼や、代行作業者選定部22による代行問合せの結果等を表示可能となっている。
【0038】
ローカルサーバ10は保守対象ビル14に設置され、当該保守対象ビル14に設置された各種機器と通信接続される設備管理用のコンピュータ(設備管理用ローカルサーバ)である。具体的には、保守対象ビル14では、当該ビルの設備を構成する各種機器を管理するビル・エネルギー管理システム(BEMS)が構築される。
図3には、保守対象ビル14単棟におけるシステム構成図が例示されている。当該システムには、上位制御装置(B−OWS、BACnet Operator Workstation)であるところのローカルサーバ10が設けられる。
【0039】
ビル・エネルギー管理システムでは、設備の種類(空調、昇降機、防犯等)別に機器がグループ化され、各設備グループが一台の下位制御装置の配下に置かれる(制御対象となる)。この下位制御装置はB−BC(BACnet Building Controller)とも呼ばれる。
図3には、昇降設備30の下位制御装置として制御盤28Aが設けられ、空調設備32の下位制御装置として制御盤28Bが設けられる。
【0040】
昇降設備30では、当該設備を構成する機器であって、下位制御装置であるところの制御盤28Aの配下となる機器として、巻上機インバータ30A、エンコーダ30B、電流センサ30C、ゲートスイッチ30D、着床センサ30E、行先階ボタン30F、及び乗場ボタン30Gが例示されている。なお、これらの機器に加えて他の昇降機関連機器が制御盤28Aに接続され得る。
【0041】
空調設備32では、当該設備を構成する機器であって、下位制御装置であるところの制御盤28Bの配下となる機器として、まずダイレクトデジタルコントローラ32A(DDC)が接続される。ダイレクトデジタルコントローラ32Aを介して、各種機器が接続される。例えば、空調機32B、空調機センサ32C、熱源機32D、熱源機センサ32E、変風量ユニット32F、温度センサ32G、及び空調操作盤32H等がダイレクトデジタルコントローラ32Aに接続される。
【0042】
このようにビル・エネルギー管理システムでは、上記制御装置であるローカルサーバ10(B−OWS)、下位制御装置である制御盤28A,28B(B−BC)、及びその更に下位の制御装置であるダイレクトデジタルコントローラ32A(DDC)のように、制御手段が階層構造を採り、それぞれの制御手段で役割を異ならせている。
【0043】
例えば上位制御装置(B−OWS)であるローカルサーバ10は、これに通信接続された表示部50,72及び入力部48,70(
図1参照)を用いて、画面表示や設定操作を行う。例えば、ローカルサーバ10のブラウザソフトウェア等により、システム全体の管理情報を一元管理する。また後述するように、ローカルサーバ10は、センターサーバ12と協働して、センタービル18の保守員24A〜24Zによる代行保守作業を可能とする。
【0044】
下位制御装置(B−BC)である制御盤28A,28Bは、主に制御機能を担い、ダイレクトデジタルコントローラ32A(DDC)と連携して、各種計測ポイントのポイントデータやスケジュール制御等を管理する。また、制御盤28A,28Bは、その配下の機器との通信プロトコル(例えばLonWorks)とローカルサーバ10との通信プロトコル(BACnet)との間を仲介するゲートウェイとしての機能も備えている。
【0045】
ダイレクトデジタルコントローラ32Aは、スケジュール制御に応じた機器の起動/停止を制御する。また、制御盤28Bからの停止指令等を受けて、制御対象の機器への停止操作(電力供給の遮断やバルブの全閉等)を実行する。また、各種センサの検出値を制御盤28Bに送信する。
【0046】
下位制御装置(B−BC)である制御盤28A,28Bと上位制御装置(B−OWS)であるローカルサーバ10とはBACnet(Building Automation and Control networking)プロトコルに準拠したネットワーク31(BACnetネットワーク)によって相互に通信可能となっている。BACnetプロトコルは米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)の規格135−2012またはそのISO規格であるISO16484−5によって詳細が定められているため、以下では適宜説明を省略する。
【0047】
また、下位制御装置である制御盤28A,28Bとその配下の機器(ダイレクトデジタルコントローラ32Aや巻上機インバータ30A等の各種機器)とは、LonWorks(Local Operating Network for Works)等のネットワークや、設備を設置したベンダー仕様のネットワークによって通信可能となっている。
【0048】
上位制御装置であるローカルサーバ10及び下位制御装置である制御盤28A,28BはBACnetプロトコルに準拠したネットワーク31上で信号通信が行われる。さらにローカルサーバ10は、ゲートウェイ機器33等を介して、インターネット等のネットワーク回線16(
図1参照)を経由してセンターサーバ12に通信接続される。
【0049】
BACnetプロトコルでは、保守対象ビル14の設備を構成する各種機器が、物や機能等に抽象化されたオブジェクトにモデル化される。オブジェクトはプロパティと呼ばれる特性が与えられる。
【0050】
例えば、オブジェクトを識別するプロパティであるObject_Identifierには、機器名(例えば着床センサ)とインスタンスが与えられる。インスタンスは同種の機器同士を識別する識別記号(例えば着床センサ1、着床センサ2等)である。このように、BACnetプロトコルでは、所定の機器の識別情報が入手可能となっている。
【0051】
また、例えば一台の昇降機に対して、運転/停止オブジェクト、警報信号オブジェクト、緊急停止オブジェクト等の、複数の運転状態に関するオブジェクトが設定される。さらに各オブジェクトに対して、プロパティが与えられる。つまり、BACnetプロトコルでは、所定の機器の種々の運転状態が入手可能となっている。
【0052】
図4には、ローカルサーバ10の詳細が例示されている。ローカルサーバ10(設備管理用ローカルサーバ)は、CPU34、メモリ36、及び入出力インターフェースであるところの送受信部38が設けられる。
【0053】
メモリ36は、センターサーバ12と同様にして、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリや、ハードディスク等のストレージデバイスを含む、揮発性及び不揮発性メモリ(記憶媒体)から構成される。
【0054】
メモリ36には、ローカルサーバ10を
図4に例示する各機能部やデータベースとして機能させるプログラムが記憶されている。なお、当該プログラムが記憶された、CD−ROMやDVD等の記憶媒体を読み込むことで、ローカルサーバ10に各機能部やデータベースを構築させてもよい。
【0055】
上記のプログラムが、CPU34により読み込まれ実行処理されることで、ローカルサーバ10は設備管理制御部40及び代行作業管理部42として機能する。
【0056】
またメモリ36には、設備データベース44及び設定値記憶部46が構築される。設備データベース44には、ローカルサーバ10の配下にある全機器の情報が記憶されている。例えばBACnetプロトコルにおけるオブジェクトやプロパティと、それが示す具体的な機器名や運転状態とが対応付けられて設備データベース44に記憶されている。
【0057】
設定値記憶部46には、予め定めた各種機器の設定値が記憶される。例えば昇降設備を例に採ると、停止スキップ階や強制停止階等が記憶される。
【0058】
設備管理制御部40は、保守対象ビル14の設備管理システムを制御する基幹制御部である。設備管理制御部40は、その配下の各種機器を制御する。
【0059】
設備管理制御部40は、送受信部38を介して、制御盤28A,28Bが取得した各種機器の運転状態を示す各種信号を受信する。運転状態を示す各種信号は多岐に亘るが、例えば電流値、風量、温度、現在停止階、オン状態の行先階ボタンや乗場ボタン等の信号が設備管理制御部40に送られる。
【0060】
設備管理制御部40は、受信した各種機器の運転状態を示す各種信号をもとにして、送受信部38を介して、各種機器の制御信号を生成する。例えば上述したように、受信したObject_Identifierと設備データベース44とを照らし合わせて、信号の発信元機器を特定する。さらに同一のプロパティとインスタンスを含む信号についても、設備データベース44を参照してその信号内容を特定し、機器の運転状態を把握する。
【0061】
例えば発信元機器が、行先階を5階とする行先階ボタンであり信号内容がオン信号である場合に、設備管理制御部40は設定値記憶部46を参照して、停止スキップ階に5階が設定されているか否かを判定する。設定されていなければ設備管理制御部40は、制御盤28Aに対して、巻上機インバータ30Aを制御して昇降機のカゴを5階まで引き上げる旨の制御信号を送信する。
【0062】
また、設備管理制御部40は、設定値記憶部46に記憶された各種設定値を変更可能となっている。例えば、保守対象ビル14の保守点検に当たり、各種設定値が変更される。具体例を挙げると、保守対象ビル14の所定階が改修工事に入った場合に、一般利用者の進入を防ぐために当該所定階が停止階からスキップ階に変更される。
【0063】
図1または
図3を参照して、ローカルサーバ10には入力部48及び表示部50が通信接続される。入力部48は、例えばキーボードやマウス等で構成される。表示部50は例えばLCD等で構成される。入力部48及び表示部50は、保守対象ビル14の監視コンピュータの一部を構成してもよい。
【0064】
図5には、表示部50に表示された画像の例が示されている。すなわち、表示部50には、設定値記憶部46に記憶された各種機器の設定値が表示される。また当該表示の際には、設備データベース44に記憶された機器情報も併せて表示される。
【0065】
例えば
図5には、設定値変更画面として、機器の設置場所ボックス52、設備名ボックス54、機器名ボックス56、現在値ボックス58、設定変更ボタン60、及び最新警報メッセージボックス62が表示される。
【0066】
設置場所ボックス52には、設定値変更対象機器の設置場所(設置階)が入力される。設備名ボックス54には、設定値変更対象機器が含まれる設備名が入力される。機器名ボックス56には、選択された設備に含まれる機器名が入力される。ここで、いずれのボックス52、54、56についても、入力支援機能としてプルダウンメニューを備えてもよい。
【0067】
例えば
図5の例では、場所名が未入力であり、設備名として昇降設備が入力され、さらに機器名として行先階ボタンが選択される。
【0068】
現在値ボックス58には、選択された機器に設定された設定値が表示される。当該設定値を変更する際には、設定変更ボタン60が押下(クリック)される。
【0069】
図6には、設定変更画面が例示される。ここでは、
図5にて指定された昇降設備の行先階ボタンについての設定画面が表示される。
図5には、行先階ボタンについての設定値として、強制停止階と、その設定開始時刻及び設定終了時刻の入力ボックスが設けられている。加えて、非停止階であるスキップ階と、その設定開始時刻及び設定終了時刻の入力ボックスが設けられている。強制停止階及びスキップ階は複数設定可能であってよい。
【0070】
図6に示す画面にて強制停止階、スキップ階、及びこれらの設定開始時刻や設定終了時刻の設定変更を行う。その後、設定完了ボタン64が押下げられる(クリックされる)と、当該画面にて設定した内容に更新される。
【0071】
なお、上述の説明では、
図1に示す入力部48及び表示部50で示される監視コンピュータにて機器の設定変更を行っていたが、この形態に限らない。例えば、保守対象ビル14における保守作業(現地保守作業)においては、当該現地保守作業を行う保守員66(現地保守員)が設定変更対象の機器近傍に立会い、機器の動作確認を行いながら設定変更を行う場合がある。このような場合に対応して、現地保守員66が携帯する現地端末装置68(以下単に現地端末と記載する)の入力部70及び表示部72によっても、入力部48及び表示部50を用いたものと同様の作業が可能であってよい。
【0072】
例えば現地端末68は上述したシンクライアント端末であってよく、ローカルサーバ10で出力された画面が表示部72に表示される。この画面に対して適宜入力部70を介して設定値の変更が行われる。
【0073】
現地保守作業にて、設定値記憶部46にて記憶された設定値が変更された結果、設定値変更の対象機器に動作異常が発生する場合がある。
図7には、設定値変更後の設定値変更画面が例示されている。設備管理制御部40(出力部)は、下段の最新警報メッセージボックス62に、エラーコードを表示(出力)させる。
【0074】
エラーコードは、動作異常(異常運転)が検知されたときに、当該動作異常が生じた機器の識別情報及びその異常内容が符号化されたものである。例えば
図7の例では、エラーコードYYzzzが表示部50(または表示部72)に表示される。
【0075】
例えばエラーコードYYzzzには、異常運転状態の機器の識別ID(機器ID:YY)、及び、異常内容を示すコード(zzz)が含められている。例えば機器ID(YY)は、上述したBACnetプロトコルにおけるObject_Identifierに設定されたデバイス名とインスタンスが対応する。また異常内容を示すコード(zzz)には、異常信号を表すバイナリ・インプット・オブジェクトタイプ(BI)の現在値プロパティ(Present_Value)が対応する。
【0076】
例えば、保守作業に伴う設定変更として、行先階ボタンに設定されるスキップ階として5階を新規に設定したとする。このとき、5階の乗場ボタンが常時オン設定されていたとすると、両者の設定内容に矛盾が生じる。この場合、昇降設備30を休止状態から点検運転状態に切り替えたときに制御盤28Aには競合する信号、つまり5階スキップ設定信号と5階常時オン設定信号が入力され、その結果、制御盤28Aから昇降設備30の非常停止を示す異常信号が発報される。例えば非常停止を表すバイナリ・インプット・オブジェクトタイプ(BI)の現在値プロパティ(Present_Value)がINACTIVEからACTIVEに切り替わる。
【0077】
このとき、エラーコードが表示された現地保守員66がエラーコードの内容を熟知していれば、迅速に異常状態からの回復作業に取り掛かることが可能であるが、例えば現地保守員66が経験の浅い保守員である場合には、適切な回復作業が困難となる場合がある。
【0078】
このような場合に、ローカルサーバ10における代行作業管理部42は、センターサーバ12に代行保守作業を依頼可能となっている。具体的には後述するように、代行作業管理部42は、センターサーバ12と通信接続されたセンター端末26A〜26Zからの遠隔操作による代行保守作業を可能にする。
【0079】
例えば現地保守員66は、表示部50(または表示部72)に表示された設定値変更画面を最小化して、図示しない代行作業依頼アイコン等をクリックすることで、代行作業管理部42を起動させる。このとき、
図9に示すような代行作業依頼画面が表示部50(または表示部72)に表示される。
【0080】
以降、本実施形態に係る代行作業フローを
図8のフローチャートに沿って説明する。
図9の代行作業依頼画面には、エラーコード入力欄74A,74B、ファイル添付ボックス76、コメント記入欄78、及び送信ボタン80が表示される。また、現地保守員66のID及び氏名も表示されてよい。
【0081】
エラーコード入力欄74A,74Bには、
図7の最新警報メッセージボックス62に表示されたエラーコードが入力される。ここで、入力支援機能としてプルダウンメニューを設けてもよい。なお、
図9の実施形態では、エラーコード入力欄を2つ設けたが、1つであっても3以上であってもよい。
【0082】
エラーコードをエラーコード入力欄74A,74Bに入力する代わりに、ファイル添付ボックス76に画像データを添付してもよい。例えば
図7の設定値変更画面を入力部48(または入力部70)のスクリーンショット機能等でコピーして、当該画像データをファイル添付ボックス76に添付する。
【0083】
コメント記入欄78には、エラーコード出力時における現地保守作業内容が入力される。上述したように、エラーコードは、現地保守作業における設定値変更に伴って発生する場合があり、エラーコードの出力が結果であるとすると、設定値変更はその原因となる。このようにエラー発生の因果をセットにして代行作業を依頼することで、依頼を受ける側ではエラー復旧の作業内容の検討が容易となる。
【0084】
例えば上述の例では、エレベータカゴ内の行先階5階ボタンの設定として、スキップ階設定をオフ設定からオン設定に切り替えている。そこで、現地保守員66は、入力部48または入力部70を操作して、上記現地保守作業内容をコメント記入欄78に入力する(
図8、S10)。
【0085】
エラーコード及びエラーコード出力時点の現地保守作業内容を入力した後、
図9に示された送信ボタン80を押し下げる(クリックする)と、入力内容がローカルサーバ10の代行作業管理部42から送信される(S12)。なおこの送信の際に、エラーコード及びエラーコード出力時点の現地保守作業内容に加えて、ローカルサーバ10に設定された識別情報も送信される。識別情報は例えばローカルサーバ10に設定されたIPアドレスであってよい。
【0086】
代行作業管理部42から送信されたエラーコード、エラーコード出力時点の現地保守作業内容、及びローカルサーバ10の識別情報を、センターサーバの代行作業者選定部22(
図2)が受信する(S14)。代行作業者選定部22のエラーコード解析部22Bは、受信したエラーコードと信号内容データベース22Hとに基づいて、エラーコードの送信元機器及びその通信内容(異常内容)を特定する(S16)。
【0087】
信号内容データベース22Hには、保守対象ビル14に設置されローカルサーバ10の配下にあるすべての機器についてのBACnetオブジェクトが記憶されている。すなわち、符号化されたエラーコードと、当該符号化対象のエラー内容や、符号化された機器名と、当該符号化対象の機器名とが対応付けられて記憶されている。
【0088】
エラーコード解析部22Bは、例えば受信したエラーコードを機器部分(YY)とエラー内容部分(zzz)に分割する。さらに前者(YY)と信号内容データベース22H内に記憶された機器コードとを照らし合わせ、信号YYに対応する機器の識別情報(機器コードまたは機器名)を抽出する。機器コードは例えば機器の型番等であり、一見して機器の特定が可能な記号であってよい。
【0089】
さらにエラーコード解析部22Bは、エラー内容部分の信号zzzと信号内容データベース22H内に記憶された動作異常コードとを照らし合わせ、信号zzzに対応する動作異常内容(非常停止)を抽出する。抽出された機器コード(機器名)及び動作異常内容は代行保守員候補抽出部22Cに送信される。
【0090】
次に代行作業者選定部22の保守物件特定部22Aは、受信したローカルサーバ10の識別情報(IPアドレス)と保守物件データベース22Iとに基づいて、保守対象ビル14を特定する(S18)。
【0091】
保守物件データベース22Iには、保守対象ビルの識別情報(物件ID)、保守対象ビルの住所及び名称、ローカルサーバ10のIPアドレス、保守対象機器、保守作業履歴、保守物件端末等の情報が、保守対象ビル別に保存されている。保守物件特定部22Aは、受信したローカルサーバ10の識別情報(IPアドレス)に合致するIPアドレスを持つ保守対象ビル情報を呼び出し、当該保守対象ビルの物件ID、名称等を抽出する。抽出された物件IDや名称は代行保守員候補抽出部22Cに送信される。
【0092】
代行保守員候補抽出部22Cは、保守物件特定部22Aから受信した保守対象ビルの識別情報、名称と、エラーコード解析部22Bから受信した機器名及び動作異常内容と、保守員データベース22Jとに基づいて、現地保守作業の代行作業を行う候補者を抽出してそのリストを作成する(S20)。
【0093】
保守員データベース22Jには、センタービル18(
図1参照)に在籍する保守員24A〜24Zの、それぞれのデータが記憶されている。具体的には、
図10に例示されるように、各保守員24A〜24Zの識別情報(ID)、保守員名、所属組織、代行受理率、作業実績、保有資格、教育実績等が記憶される。
【0094】
上記記憶事項のうち、代行受理率とは、過去の代行作業依頼の際に受諾した割合を示すものであり、(受諾数/依頼数)を表している。代行受理率が高いほど、代行保守作業を依頼した際にこれを受諾する可能性が高いことになる。
【0095】
代行保守員候補抽出部22Cは、保守物件特定部22Aから受信した物件IDと、エラーコード解析部22Bから受信した機器名から、当該物件IDかつ当該機器が作業実績データに含まれる保守員を抽出する。つまり保守物件特定部22Aにより特定された保守対象ビル及びエラーコードの原因となった機器の保守経験を有する保守員が抽出される。
【0096】
抽出された保守員のデータは代行保守員候補リストとなって依頼順設定部22D及び端末稼動状態取得部22Eに送られる。この候補リストには、例えば保守員ID、保守員名及び代行受理率が含まれる。
【0097】
端末稼動状態取得部22Eは、センタービル18の、センターサーバ12と通信接続されたセンター端末26A〜26Zのうち、代行保守員候補リストに挙げられた保守員24の所有する(割り当てられた)センター端末26の稼動状態を確認する(S22)。
【0098】
具体的には端末稼動状態取得部22Eは、センター端末26のオペレーティングシステム(OS)の起動有無と、センター端末26への入力履歴を取得する。
【0099】
さらに端末稼動状態取得部22Eは、
図11に示す在席見込みリストを作成する。在席見込みリストの左列には、代行保守員候補リストに挙げられた保守員24(代行保守員候補)が並べられる。端末稼動状態取得部22Eは、オペレーティングシステムの起動有無を、在席見込みリストに挙げられた保守員24のセンター端末26別に確認する。オペレーティングシステムが起動しているときには、在席見込みリストのOS稼動状態が1に設定される。オペレーティングシステムが休止しているときには、在席見込みリストのOS稼動状態が0に設定される。
【0100】
また端末稼動状態取得部22Eは、センター端末26における入力部の入力有無(KB入力状態)を、在席見込みリストに挙げられた保守員24のセンター端末26別に確認する。例えば、直近の確認期間(例えば現在時から5分前までの期間)における、センター端末26の入力部の操作有無が確認される。例えば現在時から5分前までの確認期間に、キーボード操作やマウス操作があった場合には、在席見込みリストのKB入力状態が1に設定される。また確認期間中に、キーボード操作やマウス操作がない場合には、在席見込みリストのKB入力状態が0に設定される。
【0101】
さらに端末稼動状態取得部22Eは、OS稼動状態の値とKB入力状態との和を、代行保守員候補別に求め、これを在席見込みとする。例えばOS稼動状態とKB入力状態とがともに1である場合、在席見込みは2となる。これは現在時(代行依頼時)において保守員24がセンター端末26に在席中である可能性が高いことを示す。作成された在席見込みリストは依頼順設定部22Dに送られる。
【0102】
依頼順設定部22Dは、代行保守員候補抽出部22Cから受信した代行保守員候補リストと、端末稼動状態取得部22Eから受信した在席見込みリストから、代行作業を依頼する順番を定める問い合わせリストを作成する(S24)。
【0103】
まず依頼順設定部22Dは、在席見込みの高い順に、代行保守員候補を並べる(ソートする)。例えば
図12に示す代行保守員候補ID:XXX8とID:XXX2を比較すれば分かるように、オペレーションシステムが起動し、かつ確認期間中に入力部の操作があった代行保守員候補は、相対的に代行受理率が低くても、オペレーションシステムが起動し、かつ確認期間中に入力部の操作がない代行保守員候補よりも上位に並べられる。
【0104】
このように本実施形態では、受諾の可能性を示す代行受理率よりも、在席見込みを、代行保守員候補の並べ替えのキーとして重視している。すなわち、代行保守員候補がセンター端末26に在席しているのであれば、代行依頼の際にその受諾/拒否の回答を迅速に得ることができる。このように本実施形態では、短時間で効率よく回答を回収可能となる。
【0105】
さらに、在席見込みが同値であるグループは、代行受理率が高い順に並べ替えが行われる。これにより、受諾見込みが高く、かつ迅速に回答が得られそうな順に、問い合わせ順が定められる。作成された問い合わせリストは、代行可否問合部22Fに送信される。
【0106】
代行可否問合部は、問合せリストの順(降順)に、代行作業依頼の問合せを行う(S26)。例えば問い合わせ先のセンター端末26の表示部に、
図13に例示される問合せ画像が表示される。
【0107】
この問合せ画像では、代行作業の内容が把握可能となっており、問合せ先の保守員ID、保守員名、代行依頼者、対象物件名、エラー送信元機器、エラー内容、代行依頼者(現地保守員66)のコメント及び添付ファイル(
図9にて添付されたエラーコード発生時の画像)、代行作業の受諾ボタン82、拒否ボタン84が表示される。
【0108】
上述したように、
図13の代行作業依頼先は、エラー送信元機器を以前に取り扱った経験のある、つまりエラー送信元機器に精通する保守員24に限定されている。加えて、当該保守員24にエラー内容及びエラー発生時の現地保守作業を知らせることで、保守員24は、どのような作業を行えば復旧するかについてのおおよその見当を付け易くなる。
【0109】
図13に示された画面を参照し、代行作業が可能であるときには、保守員24により代行作業の受諾ボタン82が押し下げられる(クリックされる)。また代行作業が困難または不可能と判断されると、拒否ボタン84が押し下げられる。
【0110】
代行可否問合部22Fは、問合せ画面を送信した後、回答(受諾/拒否を問わず)を受信したか否かを判定する(S28)。未受信の場合、問合せから所定の待機時間(例えば5分)が経過したか否かを判定する(S30)。経過していない場合には、再びステップS28に戻る。
【0111】
問合せから待機時間が経過した場合、代行可否問合部22Fは、問い合わせ先を変更する。代行可否問合部22Fは、問合せリスト中、問い合わせていない代行保守員候補者の有無を判定する(S34)。問合せ未対応の代行保守員候補者がいる場合、代行可否問合部22Fは、代行作業依頼の問い合わせ先を変更する(S36)。例えば現在の問合せ先である代行保守員候補者の一つ下の候補者を問い合わせ先とする。
【0112】
ステップS28に戻り、代行可否問合部22Fが回答を受信したときに、当該回答が受諾であるか拒否であるかが判定される(S32)。拒否である場合には、ステップS34に進む。
【0113】
代行可否問合部22Fが受信した回答が、代行作業の受諾であった場合、代行可否問合部22Fは、接続設定部22Gに受諾回答が送信されたセンター端末26の識別情報(IPアドレス)及び操作者である保守員24の識別情報及び名前等の、保守員情報を送る。また、代行作業依頼元の保守対象ビル14のローカルサーバ10の識別情報(IPアドレス)を接続設定部22Gに送る。
【0114】
接続設定部22Gは、受信したセンター端末26の識別情報とローカルサーバ10の識別情報とに基づいて両者を通信接続し(S38)、センター端末26からローカルサーバ10の設備管理システム(
図5参照)を操作可能にする(S40)。
【0115】
このとき、保守対象ビル14の現地端末68(
図1参照)の表示部50または表示部72には、代行作業管理部42により生成された、
図14のような代行受理画面が表示される。代行受理画面には、代行作業者の識別情報(ID)及び氏名が表示される。また、代行受理画面には、代行作業者の、センター端末26から行われる遠隔操作(代行作業)の内容が表示される代行作業記録コメントボックス86が表示される。代行作業記録コメントボックス86により、現地保守員66は復旧作業の内容を学習可能となる。
【0116】
また、代行受理画面には、代行保守員から現地保守員66宛に、現地における確認作業を指示する現地作業コメントボックス88が表示される。現地保守員66は、このコメントボックス88の指示に従って保守対象ビル14における確認作業を行う。
【0117】
代行保守員による代行作業及び現地保守員66による確認作業を経て、エラーコードが出力されなくなると、代行作業が終了する(S42)。代行保守員はセンター端末26から接続設定部22Gに対して切断指令を送信する。これを受けて接続設定部22Gは、センター端末26とローカルサーバ10との通信接続を切断する(S44)。
【0118】
また上記切断の際に、代行作業者選定部22に対して代行作業完了(成功)の旨の指令がセンター端末26から送信される。代行作業者選定部22は、今回の代行作業結果を踏まえて、保守員データベースを更新する(S46)。例えば各代行保守候補者の代行受理率を更新する。
【0119】
一方、ステップS34に戻り、代行作業依頼にて拒否回答が続き、問合せリスト中に未問合せの代行候補者がいない場合、現地端末68の表示部72または表示部50には、
図15に示すような、代行作業者が見つからなかった旨のメッセージが表示される。これを受けて現地保守員66は、エラーコードが出力された機器を含む設備を一旦使用中止にする等の処置を保守対象ビル14にて行う。
【0120】
また、現地端末68の表示部72または表示部50に表示された終了ボタン89が現地保守員66によって押し下げられる(クリックされる)と、代行作業(代行依頼作業)が終了する。終了ボタン89の押し下げに伴い、代行作業者選定部22に対して代行作業完了(失敗)の旨の指令が現地端末68から送信される。代行作業者選定部22では、一連の代行依頼の結果(受諾/拒否)を、保守員データベース22Jに反映、更新させる(S46)。
【0121】
<本実施形態の別例>
図1では、保守対象ビル14にローカルサーバ10(設備管理用ローカルサーバ)を設置し、センタービル18にセンターサーバ12(代行管理用センターサーバ)を設置したが、この形態に限らない。例えば
図16に例示するように、いわゆるクラウドサーバとして、ローカルサーバ10及びセンターサーバ12を統合したメインサーバ90をセンタービル18に設置してもよい。この場合、メインサーバ90では、適宜リソースが割り当てられて、仮想的にローカルサーバ10及びセンターサーバ12が構築される。
【0122】
この形態であっても、保守対象ビル14に設置された表示部50,72には、ローカルサーバ10による設備管理システムの画面やその変更画面が表示され、また代行作業依頼画面を表示することもできる。加えて入力部48,70から、これら画面に適宜データを入力することができる。入力されたデータはメインサーバ90のローカルサーバ10に送られ、適宜演算処理が行われる。
【0123】
また、上述の実施形態では、在席見込みリストや代行受理率をもとに、代行保守候補者の順番を定めていたが、この形態に限らない。例えば、
図8のステップS20にて代行保守員候補リストが作成されたのちに、リストアップされた候補者をランダムに抽出して、代行作業を依頼してもよい。